(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形
本発明は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピンの結晶形、これを含んでいる組成物、その調製および使用に関する。本発明の化合物は好ましくは、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩半水和物である。この化合物は、より好ましくは、2θに関して、約13.7°および約14.9°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、5−HT2Cアゴニストである、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形、その組成物およびそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
セロトニン(5−HT)神経刺激伝達は、健康および精神障害の両方の多数の生理的プロセスにおいて、重要な役割を果たす。一例として、5−HTは、摂食行動の調節と関係付けられている。摂食をより早く停止させてより少ないカロリーが消費されるように、5−HTが満足感または満腹感を誘発すると考えられる。5−HT2Cレセプターは脳(辺縁系構造体、錐体外路経路、視床および視床下部(すなわち、PVNおよびDMH)において顕著に、そして、脈絡叢において優先的に)において高密度で発現され、そして、末梢組織には低密度で発現されるかまたは存在しないので、他の抗肥満薬および関連薬よりも効力および安全性が改善された選択的な5−HT2Cレセプターアゴニストの開発が望ましい。
【0003】
化合物(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン(その構造を以下の式Iに示す)は、5−HT2Cアゴニストのクラスに属する。5−HT2Cアゴニストは、多くの5−HT2C関連の疾患および障害(例えば、上記のもの)の処置に役立つ。この化合物の調製および特徴は、特許文献1に記載されている。特許文献1は、その全体が本明細書中に参考として援用される。この化合物の塩酸塩の調製および特徴はまた、国際出願番号PCT/US04/19279号に記載される。国際出願番号PCT/US04/19279は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【特許文献1】国際公開第2003/086306号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、改善された安定性、溶解性、貯蔵寿命およびインビボでの薬理を有する薬物化合物が一貫して求められているので、既存の薬物分子の、新規であるかまたはより純粋な、塩、水和物、溶媒和物および多形結晶形が必要とされ続けている。本明細書に記載される(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形は、この必要性および他の必要性を満たすのを助ける。
【0005】
【化1】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
いくつかの実施形態では、本発明は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩半水和物((R)−8−chloro−1−methyl−2,3,4,5−tetrahydro−1H−3−benzazepine hydrochloride hemihydrate)を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は、結晶形IIIを有する(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩半水和物を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩のI形を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩のII形を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の結晶形を含む組成物を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の結晶形を調製するためのプロセス、ならびにこのプロセスにより調製された結晶形を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書の結晶形と5HT2Cレセプターとを接触させる工程を包含する、5HT2Cレセプターを調節するための方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明は、必要のある患者に本明細書に記載される半水和物または結晶形の治療上有効な量を投与することによって、中枢神経系の障害、中枢神経系への損傷、心血管障害、胃腸障害、尿崩症または睡眠時無呼吸を処置する方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載される半水和物または結晶形の治療上有効な量を哺乳動物に投与する工程を包含する、哺乳動物の食物の摂食を減少させる方法を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載される半水和物または結晶形の治療上有効な量を哺乳動物に投与する工程を包含する、哺乳動物の満腹を誘導する方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載される半水和物または結晶形の治療上有効な量を哺乳動物に投与する工程を包含する、哺乳動物の体重増加を制御する方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載される半水和物または結晶形の治療上有効な量を患者に投与する工程を包含する、肥満症を処置するための方法を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療において使用するための、本発明の化合物または結晶形の使用を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療において使用するための医薬の調製において使用するための、本発明の化合物または結晶形の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(詳細な説明)
(結晶形)
本発明は、とりわけ、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の3つの結晶形を提供する。この3つの結晶形は、個々に、I形、II形およびIII形と命名される。I形およびII形は、無水の吸湿性形態であり、これらは両方とも、水分にさらすと容易にIII形(半水和物)に変わる。
【0021】
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩のさまざまな結晶形は、例えば、示差走査熱分析(DSC)、X線粉末回折(XRPD)、および他の固体状態方法に関するそれらの固有の固体状態シグナチャーによって確認され得る。結晶形の水または溶媒の含有量に関するさらなる特徴は、様々な慣用法(例えば、熱重量分析(TGA)、動的蒸気収着(DVS)、DSCおよび他の技術)のいずれによっても測定され得る。DSCについては、観察される温度が、温度変化速度ならびに使用した試料調製技術および特定の機器に依存することが知られている。このように、DSCサーモグラムに関して本明細書において報告される値は±約4℃変化し得る。XRPDについては、ピークの相対強度は、使用される試料調製技術、サンプル取り付け手順および特定の機器に依存して変化し得る。さらに、機器のバリエーションおよび他の要素が2θ値にしばしば影響を及ぼし得る。従って、回折パターンのピークの帰属は、±約0.2°変化し得る。本発明の3つの結晶形の各々を区別する物性を下記の表Iにまとめる。
【0022】
【表1】
TGAデータにおいて150℃未満で重量減少がないことは、I形およびII形の両方が無水の非溶媒和性の結晶形であることを示唆する。この結果は、半水和物についての3.7%という理論的な重量減少と一貫した3.7%の重量減少として算出される脱水特性を示すIII形と対照的である。DSCによる分析はTGAの結果をさらに確認する。TGAでは、III形のみが約95℃で脱水事象を示す。個々のDSCトレースは、3つの形の各々についての約200℃〜約201℃での融解/分解吸熱をさらに明らかにする。
【0023】
3つの結晶形の各々についてのDVSデータは、I形およびII形の両方の吸湿性の性質を明らかにする。I形およびII形は、約40%〜約60%のRHよりも高いRHで水分を容易に吸着する。さらに、I形およびII形は両方とも、約40%のRHと約80%のRHとの間で約3.8重量%の水分を吸着すると算出され、これは、半水和物(III形)への変換と一貫している。DVSサイクル後にI形およびII形の両方について実施されたXRPDは、この変換を確認した。対照的に、III形と関連したDVSデータは、それが実質的に吸湿性がなく、90%のRHにおいて0.5重量%未満の水を吸着することを示し、そしてXRPDパターンは、DVSサイクル後の結晶形が変化がないことを示した。
【0024】
3つの形の各々についてのX線粉末回折データは、類似のパターンを明らかにする。事実、II形が、I形の回折パターンに実質的に存在しない少なくとも一つの固有のピークを11.4°(2θ)に有することを除いて、I形およびII形の回折パターンは本質的に同じピークを共有する。I形およびII形は両方とも吸湿性であるので、これらの形について得られた回折パターンは、半水和物(III形)からのピークとしばしば合わされた。III形の回折パターンは、I形およびII形の両方の回折パターンと著しく異なり、いくつかの固有のピークを有する。III形に独特の例示的なピークを、上記の表1に示す。3つの形の各々についてのX線粉末回折ピークを、下記の表2において比較する。
【0025】
【表2】
(半水和物)
本発明の第1の局面において、本発明は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩半水和物である化合物を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、この半水和物は、2θに関して、約13.7°および約14.9°にピークを含む、III形に特有のX線粉末回折パターンを有する。さらなる実施形態において、この半水和物は、2θに関して、約13.7°、約14.9°、約15.4°、約15.8°および約16.7°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。なおさらなる実施形態において、この半水和物は、2θに関して、約13.7°、約14.9°、約15.4°、約15.8°、約16.7°、約20.1°または約21.4°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。なおさらなる実施形態において、この半水和物は、実質的に図11に示すとおりのX線粉末回折パターンを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたピークが約±0.2°変化し得ることを意味する。
【0027】
いくつかの実施形態では、この半水和物は、約90℃〜約110℃(例えば、約95℃)において比較的広い脱水吸熱を含む、示差走査熱分析トレースを有する。さらに、この示差走査熱分析トレースは、約200℃にさらなる吸熱を含む。なおさらなる実施形態において、この半水和物は、実質的に図10に示すとおりの示差走査熱分析トレースを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたDSC特徴が約±4°変化し得ることを意味される。
【0028】
いくつかの実施形態では、この半水和物は、棒状、薄板、ブロックまたはそれらの混合物である晶癖を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、この半水和物は、実質的に図8に示すとおりの動的蒸気収着プロフィールを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたDVS特徴が約±5%RH変化し得ることを意味する。
【0030】
いくつかの実施形態では、この半水和物は、水の損失に対応する約3.7%の重量減少を示す熱重量分析プロフィールを有する。さらなる実施形態において、この半水和物は、実質的に図9に示すとおりの熱重量分析プロフィールを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたTGA特徴が約±5℃変化し得ることを意味する。
【0031】
この半水和物は、化合物の水和物を調製することに関して当該技術分野で公知の適切な手順のいずれによっても調製され得る。いくつかの実施形態では、この半水和物は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を、水を含む結晶化溶媒に少なくとも部分的に溶解し、そしてこの結晶化溶媒からの半水和物の析出を誘導することにより調製され得る。
【0032】
結晶化溶媒は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を少なくとも部分的に溶解する任意の溶媒または溶媒混合物でもあり得、そして水を含む。いくつかの実施形態では、この結晶化溶媒は、アルコール、水および炭化水素を含む。適切なアルコールとしては、例えば、以下が挙げられる:メタノール、エタノール、2−ニトロエタノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、2‐エトキシエタノール、ジエチレングリコール、1−ペンタノール、2−ペンタノールまたは3−ペンタノール、ネオ−ペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェノールまたはグリセロール。いくつかの実施形態では、このアルコールは、イソプロパノール(2−プロパノール)である。適切な炭化水素としては、例えば、以下が挙げられる:ベンゼン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、エチルベンゼン、m−キシレン、o−キシレンまたはp−キシレン、オクタン、インダン、ノナンまたはナフタレン。いくつかの実施形態では、この炭化水素は、シクロヘキサンである。
【0033】
いくつかの実施形態では、結晶化溶媒中のアルコール:水の重量比は、約35:1〜約25:1、約32:1〜約27:1、または、約30:1〜約28:1である。いくつかの実施形態では、アルコール:水の重量比は、約29:1である。いくつかの実施形態では、結晶化溶媒中の(水+アルコール):炭化水素の重量比は、約5:1〜約2:1、約3:1〜約2:1または約2.5:1である。いくつかの実施形態では、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩:結晶化溶媒(例えば、アルコール+水+炭化水素)の重量比は、約1:2〜約1:15、約1:6〜約1:10または約1:8である。
【0034】
いくつかの実施形態では、結晶化溶媒および(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を含んでいる混合物は、析出を誘導する前に、約40℃〜約80℃、約50℃〜約70℃または約60℃の温度に維持されるか、そして/またはこの温度まで加熱される。
【0035】
いくつかの実施形態では、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩は、析出を誘導する前に、結晶化溶媒中に実質的に溶解される。実質的な溶解は、約40℃と約80℃との間(例えば、約60℃)のような適切な温度まで混合物を加熱することによって達成され得る。
【0036】
半水和物生成物の析出は、結晶化溶媒および(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を含んでいる混合物を冷却することにより誘導され得る。いくつかの実施形態では、この混合物は、約−15℃〜約15℃の温度まで冷却される。いくつかの実施形態では、この混合物は、約−5℃〜約10℃の温度まで冷却される。さらなる実施形態において、この混合物は、約0℃〜約5℃の温度まで冷却される。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩またはその水和物である化合物を提供し、ここで、この化合物または水和物は、動的蒸気収着サイクルを受けた後に約1.0%未満、約0.5%未満または約0.2%未満の重量が増える。(あるとしても)重量増加は、サイクルの最初とサイクルの終わりとのサンプル重量の違いとして測定され得る。これらの2点は、代表的に、同じ相対湿度(RH)値またはその付近で行われる。例えば、あるサイクルは、約0%RHから約20%RHで始まり得、約85%RH〜約100%RHに向かって行われ得、その後、開始時のRH点に戻り得る。いくつかの実施形態では、重量増加は、約5%RH、約10%RHまたは約15%RHの開始点/終了点で測定される。いくつかの実施形態では、このサイクルは、約85%、約90%、約95%または約100%の最大RHを通って行われる。いくつかの実施形態では、このサンプルは、約80%以上のRHでのサイクル中に、約1%より高いか、約2%より高いか、または約5%より高いの重量増加を示す。いくつかの実施形態では、本発明は、実質的に図12に示すとおりの動的蒸気収着プロフィールを有する、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩またはその水和物である化合物を提供する。
【0038】
(I形)
第2の局面において、本発明は、2θに関して、約6.5°、約9.6°および約10.2°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形(I形)に関する。いくつかの実施形態では、この結晶形は、2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°、約12.9°、約17.1°、約17.5°および約17.8°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。さらなる実施形態において、この結晶形は、2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°、約12.9°、約17.1°、約17.5°、約17.8°、約18.5°、約19.5°および約19.8°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。なおさらなる実施形態において、この結晶形は、約10.5°〜約11.5°に実質的にピークを含まない(例えば、ここで、強度が、最も強度の強いピークの約5%未満である)X線粉末回折パターンを有する。なおさらなる実施形態において、この結晶形は、約11.4°に実質的にピークを含まないX線粉末回折パターンを有する。なおさらなる実施形態において、この結晶形は、実質的に図3に示すとおりのX線粉末回折パターンを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたピークが約±0.2°変化し得ることを意味する。
【0039】
いくつかの実施形態では、この結晶形は、約201℃に吸熱を含む示差走査熱分析トレースを有する。さらなる実施形態において、この結晶形は、実質的に図2に示すとおりの示差走査熱分析トレースを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたDSC特徴が約±4°変化し得ることを意味する。
【0040】
いくつかの実施形態では、この結晶形は、粒状である晶癖を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、この結晶形は、実質的に図4に示すとおりの動的蒸気収着プロフィールを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたDVS特徴が約±5%RH変化し得ることを意味する。
【0042】
いくつかの実施形態では、この結晶形は、実質的に図1に示すとおりの熱重量分析プロフィールを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたTGA特徴が約±5℃変化し得ることを意味する。
【0043】
I形は、結晶多形相を調製することについて当該技術分野で公知の適切な手順のいずれによっても調製され得る。いくつかの実施形態では、I形は、結晶(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を加熱することにより調製され得、ここで、この結晶(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩は、I形以外の一つ以上の結晶形を含む。例えば、I形は、II形もしくはIII形(半水和物)またはそれらの混合物を含んでいるサンプルを加熱することにより調製され得る。いくつかの実施形態では、II形もしくはIII形またはそれらの混合物は、I形の形成に適した時間でかつ適した条件下で、少なくとも約60℃の温度に加熱され得る。いくつかの実施形態では、II形もしくはIII形またはそれらの混合物は、少なくとも約2時間にわたって少なくとも約60℃の温度に加熱され得る。
【0044】
(II形)
本発明の第3の局面において、本発明は、2θに関して、約11.4°に少なくとも一つのピークを含むX線粉末回折パターンを有する、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形(II形)を提供する。いくつかの実施形態では、この結晶形は、2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°および約11.4°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、この結晶形は、2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°、約11.4°、約12.9°、約17.1°、約17.5°および約17.7°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態において、この結晶形は、2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°、約11.4°、約12.9、約17.1°、約17.5°、約17.8°、約18.5°、約19.5°および19.8°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、この結晶形は、実質的に図7に示すとおりのX線粉末回折パターンを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたピークが約±0.2°変化し得ることを意味する。
【0045】
いくつかの実施形態では、II形は、約201℃に吸熱を含む示差走査熱分析トレースを有する。さらなる実施形態において、I形は、実質的に図6に示すとおりの示差走査熱分析トレースを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたDSC特徴が約±4℃変化し得ることを意味する。
【0046】
いくつかの実施形態では、II形は、棒状である晶癖を有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、II形は、実質的に図8に示すとおりの動的蒸気収着プロフィールを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたDVS特徴が約±5%RH変化し得ることを意味する。
【0048】
いくつかの実施形態では、II形は、実質的に図5に示すとおりの熱重量分析プロフィールを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたTGA特徴が約±5℃変化し得ることを意味する。
【0049】
II形は、結晶多形相を調製することについて当該技術分野で公知の適切な手順のいずれによっても調製され得る。例えば、II形は、無水結晶化溶媒中に(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を溶解し、そして例えば、冷却または反溶剤の添加によって析出を誘導することにより、調製され得る。いくつかの実施形態では、II形は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン(遊離塩基)を炭化水素溶媒中に組み込んで混合物を形成し;必要に応じて、この混合物から水を除去して、脱水された混合物を形成し;そしてHClおよびアルコールをこの脱水された混合物に添加することにより調製され得る。適切なアルコールおよび炭化水素溶媒は、上記に列挙される。いくつかの実施形態では、この炭化水素溶媒は、シクロヘキサンである。さらなる実施形態において、このアルコールは、イソプロパノールである。いくつかの実施形態では、このアルコールの添加は、約15分間〜約2時間の時間をかけて行われる。いくつかの実施形態では、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン:シクロヘキサンの重量比は、約1:20〜約1:10、約1:17〜約1:12または約1:10〜約1:5または約1:7〜1:8である。さらなる実施形態において、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン:アルコールの重量比は、約1:1〜約1:10、約1:2〜約1:5または約1:3である。
【0050】
溶媒混合物からの水の除去は、例えば、モレキュラーシーブとのインキュベーションによって、または、共沸蒸留によって、当該技術分野における慣用法のいずれによっても実施され得る。水の除去後の混合物の最終的な含水量は、約0.1重量%未満、好ましくは約0.05重量%未満またはより好ましくは約0.03重量%未満であり得る。溶媒混合物の含水量が十分に低い(例えば、約0.1重量%未満)場合、水除去工程を省略し得る。
【0051】
塩の形成の間、HCl(例えば、HClガス)は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピンに対してモル過剰に添加され得る。
【0052】
(組成物)
本発明は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の3つの結晶形のうちの一つ以上を含んでいる組成物をさらに提供する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも、約50重量%、約60重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%または約99重量%の半水和物(例えば、III形)を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも、約50重量%、約60重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%または約99重量%のI形を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも、約50重量%、約60重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%または約99重量%のII形を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、I形、II形およびIII形のうちの二つ以上の混合物を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、I形、II形または半水和物と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む。
【0053】
(方法)
本発明の結晶形は、5−HT2Cレセプターアゴニストとしての活性を有する。したがって、本発明の結晶形は、本明細書に記載される結晶形のうちのいずれか一つ以上またはその組成物と5−HT2Cレセプターとを接触させることによって、5−HT2Cレセプターと拮抗する(例えば、活性を刺激する、活性を増大させる、など)方法において使用され得る。さらなる実施形態において、本発明の結晶形は、治療上有効な量の本発明の結晶形を投与することによって、5−HT2Cレセプターと拮抗する必要のある個体において5−HT2Cレセプターと拮抗するために使用され得る。
【0054】
本発明は、5−HT2Cレセプターの投与のような処置を必要とする個体に治療上有効な量または用量の本発明の結晶形またはその薬学的組成物を投与することによって、個体(例えば、患者)の5−HT2Cレセプターと関連した疾患を処置する方法をさらに提供する。例示的な疾患としては、5−HT2Cレセプターの過小発現または異常に低い活性を含め、5−HT2Cレセプターの発現または活性と直接的または間接的に関連する、任意の疾患、障害または状態が挙げられ得る。
【0055】
例示的な疾患としては、中枢神経系の障害、中枢神経系への損傷、心血管障害、胃腸障害、尿崩症および睡眠時無呼吸が挙げられる。中枢神経系の例示的な障害としては、以下が挙げられる:鬱病、非定型鬱病、双極性障害、不安障害、強迫性障害、社会恐怖症またはパニック状態、睡眠障害、性的機能不全、精神病、精神分裂病、片頭痛および頭の痛みまたは他の痛みに関連した状態、上昇した頭蓋内圧、癲癇、人格障害、加齢性行動障害、痴呆に伴う行動障害、器質性精神障害、小児の精神障害、攻撃性、加齢性記憶障害、慢性疲労症候群、薬物嗜癖およびアルコール嗜癖、肥満、過食症、神経性食欲不振および月経前緊張症。
【0056】
本発明は、治療上有効な量の本発明の結晶形を投与することによって、哺乳動物の食物の摂食を減少させる方法をさらに提供する。
【0057】
本発明は、治療上有効な量の本発明の結晶形を投与することによって、哺乳動物の満腹を誘導するための方法をさらに提供する。
【0058】
本発明は、治療上有効な量の本発明の結晶形を投与することによって、哺乳動物の体重増加を制御する方法をさらに提供する。
【0059】
本発明は、治療上有効な量の本発明の結晶形を患者に投与することによって、肥満症を処置する方法をさらに提供する。
【0060】
いくつかの実施形態では、上記方法は、患者を同定する工程をさらに包含し、ここで、この患者は、処置される特定の疾患についての処置を必要とし、ここで、この同定する工程は、治療上有効な量の本発明の結晶形を患者へ投与する前に実施される。
【0061】
本明細書中で用いられる場合、「処置する」という用語は、例えば、個体における、疾患、状態または障害を予防、阻害、および改善することをいう。
【0062】
本明細書中で用いられる場合、交換可能に使用される、「個体」または「患者」という用語は、哺乳動物を含め、任意の動物をいい、好ましくはマウス、ラット、他の齧歯動物、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマまたは霊長類であり、最も好ましくはヒトである。
【0063】
本明細書中で用いられる場合、「治療上有効な量」という語句は、以下のうちの一つ以上を含め、研究者、獣医師、医学博士または他の臨床医によって求められる、組織、系、動物、個体またはヒトにおける生物学的応答または医薬応答を惹起する、活性な化合物または薬品の量をいう:
(1)疾患を予防すること;例えば、疾患、状態または障害の素因があり得るが、その疾患の病理もまたは総体的症状もまだ経験しておらず、示してもいない個体において、その疾患、状態または障害を予防すること;
(2)疾患を阻害すること;例えば、疾患、状態または障害の病理または総体的症状を経験しているかまたは示している個体において、その疾患、状態または障害を阻害すること(すなわち、病理および/または総体的症状のさらなる進展を停止させること)(例えばウイルス感染の場合、ウイルス量を安定させること);ならびに
(3)疾患を改善すること;例えば、疾患、状態または障害の病理または総体的症状を経験しているかまたは示している個体において、その疾患、状態または障害を改善すること(すなわち、病理および/または総体的症状を逆転させること)(例えばウイルス感染の場合、ウイルス量を減らすこと)。
【0064】
(薬学的処方物および投与形態)
医薬として使用される場合、本発明の結晶形は、薬学的組成物の形で投与され得る。これらの組成物は、経口経路、直腸経路、経皮経路、局所経路、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、および鼻腔内経路を含めた様々な経路により投与され得、そして製薬分野で周知の様式で調製され得る。
【0065】
本発明はまた、活性成分として、上記の本発明の結晶形のうちの一つ以上を、一つ以上の薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む薬学的組成物を含む。本発明の組成物の製造において、この活性成分は代表的に、賦形剤と混合されるか、賦形剤により希釈されるか、または例えば、カプセル、サシェ、紙もしくは他の容器の形態のキャリアに封入される。賦形剤が希釈液として作用する場合、これは、固体、半固体または液体の材料であり得、これは活性成分に対してビヒクル、キャリアまたは媒体として作用する。従って、この組成物は、錠剤、丸剤、散剤、舌下錠、サシェ、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳濁剤、液剤、シロップ剤、(固体として、または、液体培地中の)エアゾール剤、(例えば、10重量%までの活性化合物を含む)軟膏、軟質ゼラチンカプセルおよび硬質ゼラチンカプセル、坐剤、無菌の注射可能溶液ならびに無菌の包装された粉末の形態であり得る。
【0066】
処方物を調製する際に、この結晶形は、他の成分と合わせる前に、適切な粒径にするために粉砕され得る。この結晶形が実質的に不溶性である場合、この結晶形は、200メッシュ未満の粒径に粉砕され得る。結晶形が実質的に水溶性である場合、この粒径は、処方物において実質的に均質な分布(例えば、約40メッシュ)を提供するために粉砕により調整され得る。
【0067】
適切な賦形剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカントゴム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。この処方物は以下をさらに含み得る:滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱油);湿潤剤;乳化および懸濁剤;保存剤(例えば、安息香酸メチルおよびヒドロキシ安息香酸プロピル);甘味料;および矯味矯臭剤。本発明の組成物は、当該技術分野で公知の手順を使用することによって、患者への投与後に活性成分の迅速な放出、持続放出または遅延放出を提供するように処方され得る。
【0068】
この組成物は、単位投与形態で処方され得、この単位投与形態は、約5mg〜約100mg、より一般的には約10〜約30mgの活性成分を含む。「単位投与形態」という用語は、ヒト被験体および他の哺乳動物についての単位投与量として適切な物理的に別々の単位であって、各単位が、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を適切な薬学的賦形剤とともに含むものをいう。
【0069】
この結晶形は、広い投与量範囲にわたって有効であり得、そして一般に、治療上有効な量において投与される。しかしながら、実際に投与される結晶形の量が通常、処置されるべき状態、選択された投与経路、投与される実際の結晶形、個々の患者の年齢、体重および応答、患者の症状の重篤さなどを含めた関連した状況に従って医師によって決定されることが理解される。
【0070】
錠剤のような固体の組成物を調製するために、主要な活性成分は、薬学的賦形剤と混合されて、本発明の結晶形の均質な混合物を含んでいる固体の予備処方組成物を形成する。これらの予備処方組成物を均質という場合、この活性成分は代表的に、この組成物全体に均質に分散されており、その結果、この組成物は、等しく有効な単位投薬形態(例えば、錠剤、丸剤およびカプセル剤)へと容易にさらに分割され得る。次いで、この固体の予備処方物は、例えば、約0.1mg〜約500mgの本発明の活性成分を含む上記のタイプの単位投与形態にさらに分割される。
【0071】
本発明の錠剤または丸剤は、被覆されていてもよく、さもなければ、長期作用という利点を提供する投薬形態を提供するように配合されてもよい。例えば、錠剤または丸剤は、内側投薬成分および外側投薬成分を含み得、そして後者が前者を覆う膜の形態であり得る。これらの2つの成分は、胃での崩壊に抵抗して内側成分をインタクトなまま十二指腸へと通過させるかまたは放出を遅延させるのに役立つ腸溶性(enteric)層によって分離され得る。種々の物質がこのような腸溶性の層またはコーティングとして使用され得、このような物質としては、数多くのポリマー酸、ならびにポリマー酸と例えば、シェラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースのような物質との混合物が挙げられる。
【0072】
本発明の結晶形および組成物が経口投与または注入による投与のために組み込まれ得る液体状態としては、水溶液、適切に風味をつけたシロップ剤、水性懸濁剤または油性懸濁剤、および綿実油、ゴマ油、ヤシ油または落花生油のような食用油で風味をつけた乳濁剤、ならびにエリキシル剤および類似の薬学的ビヒクルが挙げられる。
【0073】
吸入またはガス注入のための組成物としては、薬学的に受容可能な、水性もしくは有機性の溶媒またはそれらの混合物中の液剤および懸濁剤、ならびに散剤が挙げられる。液体または固体の組成物は、上記のとおりの、適切な薬学的に受容可能な賦形剤を含み得る。いくつかの実施形態では、この組成物は、局所効果または全身効果のために、経口経路または鼻の呼吸経路により投与される。組成物は、不活性ガスを用いて霧状にされ得る。霧状にされた溶液は、霧状化デバイスから直接呼吸されてもよく、または霧状化デバイスは、顔面マスクテントもしくは間欠的陽圧呼吸機に取り付けられてもよい。液体、懸濁液または粉末の組成物は、処方物を適切な様式で送達するデバイスから、経口投与されてもよく、または鼻から投与されてもよい。
【0074】
患者に投与される結晶形または組成物の量は、投与されるもの、投与の目的(例えば、予防または処置)、患者の状態、投与様式などに依存して変化する。治療適用において、組成物は、すでに疾患を患っている患者に、その疾患およびその合併症の症状を治療するかまたは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与され得る。有効用量は、処置される疾患状態、ならびに疾患の重篤度、患者の年齢、体重および全般的な状態などのような要因に依存する担当の臨床医の判断に依存する。
【0075】
患者に投与される組成物は、上記の薬学的組成物の形態であり得る。これらの組成物は、従来の滅菌技術により滅菌されてもよく、または濾過滅菌されてもよい。水溶液は、そのまま使用するためにパックされてもよく、または凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥された調製物は、投与の前に無菌の水性キャリアと合わされる。この化合物の調製物のpHは、代表的には3と11との間にあり、より好ましくは5〜9であり、そして最も好ましくは7〜8である。上記の賦形剤、キャリアまたは安定剤の特定のものの使用が、薬学的な塩の形成をもたらすことが理解される。
【0076】
本発明の結晶形の治療用投薬量は、例えば、処置がなされる特定の使用、結晶形の投与様式、患者の健康および状態、ならびに処方医の判断に従って変化し得る。薬学的組成物中の本発明の結晶形の比率または濃度は、投薬量、化学的特性(例えば、疎水性)および投与経路を含めた多くの要因に依存して変化し得る。例えば、本発明の結晶形は、約0.1% w/v〜約10% w/vの化合物を含んでいる、非経口的投与のための水性生理的緩衝液で提供され得る。いくつかの代表的な用量の範囲は、1日につき体重1kgあたり約1μg〜約1gである。いくつかの実施形態では、用量範囲は、1日につき体重1kgあたり約0.01mg〜約100mgである。投薬量は、疾患または障害のタイプおよび進行程度、特定の患者の全般的な健康状態、選択される結晶形の相対的な生物的効力、賦形剤の処方およびその投与経路のような変動要因に依存するようである。有効用量は、インビトロまたは動物でのモデル試験系から導かれる用量応答曲線から外挿され得る。
【0077】
本発明の結晶形はまた、任意の医薬品(例えば、抗ウイルス剤、抗体、免疫抑制剤、抗炎症剤など)を含み得る一つ以上のさらなる活性成分と組み合わせて処方され得る。
【0078】
本明細書に開示される本発明がより効率的に理解され得るために、実施例が以下で提供されている。これらの実施例が例示の目的だけのためにあって、本発明を限定するとは決して解釈されないべきであることを理解すべきである。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
((R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の調製)
清潔で乾燥した25mLの丸底フラスコに、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン遊離アミン(220mg)、3mLの塩化メチレンおよび1.74mLのエーテル中1M HClを添加した。この混合物を室温で5分間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、白色固体のHCl塩を得た。この塩を塩化メチレン(3mL)に再溶解し、そしてさらに1.74mLの1M HClを添加し、そしてこの溶液を室温で5分間、再度攪拌した。溶媒を減圧下で除去して、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピンの所望のHCl塩(190mgの粗製重量、95%の収率)を得た。NMRデータは、所望の生成物と一貫していた。
【0080】
1H NMR(CDCl3):10.2(br s、1H)、9.8(br s、1H)、7.14(dd、1H、J=2、8Hz)、7.11(d、1H、J=2Hz)、7.03(d、1H、J=8Hz)、3.6(m、2H)、3.5(m、2H)、2.8〜3.0(m、3H)、1.5(d、3H、J=7Hz)。
【0081】
(実施例2)
((R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩半水和物(III形)の調製)
20℃〜25℃で、160gの689mM (R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を、359.36gのイソプロパノールを用いて、窒素雰囲気下で処理する。得られる混合物を60℃まで加熱して、透明の溶液を得る。所望の温度に達した後、12.43gの水を添加し、続いて960gのシクロヘキサンを添加する。水およびシクロヘキサンは、60℃〜40℃で添加される。その後、この溶液を、(160rpmで)ゆっくり攪拌しながら2時間かけて20℃〜25℃まで冷却する。生成物の結晶化が観察された後、得られる懸濁物を0℃〜5℃に冷却し、その後、0℃〜5℃において3時間撹拌する。懸濁液を濾過し、そして濾過ケークを反応器を通して160gのシクロヘキサンによって洗浄し、さらに160gのシクロヘキサンで洗浄する。このプロセスから、176.81gの無色の湿った生成物が得られた。この生成物を50mbarで35℃〜45℃(優先的には40℃)にて乾燥し、153.03g(95.3重量%)の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩半水和物が無色の結晶固体として得られた。
【0082】
(実施例3)
((R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形IIの調製)
約6.6gの遊離塩基(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピンを、約130mLの体積になるようにシクロヘキサンに溶解した。共沸蒸留によって、0.03%未満のレベルまで含水量を減少させた。さらなるシクロヘキサンを、必要に応じてフラスコに充填して同じ体積を維持した。この透明な溶液を濾過し、そして3.06g、83.9mmolの塩酸ガスおよび19.38gのイソプロパノールの混合物を、内部温度20℃において60分間かけて添加した。得られた懸濁液を少なくとも2時間撹拌し、その後、フィルターに通した。濾過ケークを、0℃〜10℃に冷却した60gのアセトンによって洗浄し、そして生成物(9.19g)を30mbarで60℃にて乾燥させて、5.88gのII形を得た。
【0083】
(実施例4)
((R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形Iの調製)
II形(例えば、実施例2に従って調製される)またはIII形(例えば、実施例1に従って調製される)のいずれかのサンプルをTGA炉中で約10℃/分の割合で加熱して約15分間、約160℃の温度まで加熱することにより、I形を調製した。I形への変換がXRPD分析により検出された。
【0084】
(実施例5)
((R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形Iの安定性)
I形のサンプルを、TGA炉中で約15分間、約10℃/分の割合で加熱して、160℃まで加熱した。XRPD分析は、加熱後に結晶形が変わらないことを示した。
【0085】
(実施例6)
((R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形IIIの安定性)
III形のサンプルを、少なくとも2時間にわたって60℃まで加熱した。XRPD分析は、加熱後に結晶形が実質的に変化しないことを示した。
【0086】
III形のサンプルを、1日間にわたって60℃まで加熱した。XRPD分析は、加熱後にI形に部分的に変換されたことを示した。
【0087】
III形のサンプルを、30分間にわたって80℃まで加熱した。XRPD分析は、加熱後にI形に部分的に変換されたことを示した。
【0088】
III形のサンプルを、1日間にわたって80℃まで加熱した。XRPD分析は、加熱後にI形に部分的に変換されたことを示した。
【0089】
本発明の様々な改変物は、本明細書に記載されたものに加えて、上記の記載から当業者にとって明らかである。このような改変物もまた、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。全ての特許、特許出願および論文を含め、本願において引用された各参考文献は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、本発明の結晶形Iについての熱重量分析(TGA)のサーモグラムを表す(オープンセルにおいて、TA Instruments TGA Q500;25〜350℃;10℃/分)。
【図2】図2は、本発明の結晶形Iについての示差走査熱分析(DSC)のサーモグラムを表す(TA Instruments DSC Q1000;25〜220℃;10℃/分)。
【図3】図3は、結晶形Iを含んでいるサンプルについての粉末X線回折パターン(XRPD)を表す(PANalytical X’Pert Plus Powder X−Ray Diffractometer;5.0°〜50.0° 2θ)。
【図4】図4は、本発明の結晶形Iについての動的蒸気収着(DV)走査(VTI動的蒸気脱着分析器)を表す。
【図5】図5は、本発明の結晶形IIについての熱重量分析(TGA)のサーモグラムを表す(オープンセルオープンセルにおけるTA Instruments TGA Q500;25〜350℃;10℃/分)。
【図6】図6は、本発明の結晶形IIについての示差走査熱分析(DSC)のサーモグラムを表す(TA Instruments DSC Q1000;25〜220℃;10℃/分)。
【図7】図7は、結晶形IIを含んでいるサンプルについての粉末X線回折パターン(XRPD)を表す(PANalytical X’Pert Plus Powder X−Ray Diffractometer;5.0°〜50.0° 2θ)。
【図8】図8は、本発明の結晶形IIについての動的蒸気収着(DV)走査(VTI動的蒸気脱着分析器)を表す。
【図9】図9は、本発明の結晶形IIIについての熱重量分析(TGA)のサーモグラムを表す(オープンセルオープンセルにおけるTA Instruments TGA Q500;25〜350℃;10℃/分)。
【図10】図10は、本発明の結晶形IIIについての示差走査熱分析(DSC)のサーモグラムを表す(TA Instruments DSC Q1000;25〜220℃;10℃/分)。
【図11】図11は、結晶形IIIを含んでいるサンプルについての粉末X線回折パターン(XRPD)を表す(PANalytical X’Pert Plus Powder X−Ray Diffractometer;5.0°〜50.0° 2θ)。
【図12】図12は、本発明の結晶形IIIについての動的蒸気収着(DV)走査を表す。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、5−HT2Cアゴニストである、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形、その組成物およびそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
セロトニン(5−HT)神経刺激伝達は、健康および精神障害の両方の多数の生理的プロセスにおいて、重要な役割を果たす。一例として、5−HTは、摂食行動の調節と関係付けられている。摂食をより早く停止させてより少ないカロリーが消費されるように、5−HTが満足感または満腹感を誘発すると考えられる。5−HT2Cレセプターは脳(辺縁系構造体、錐体外路経路、視床および視床下部(すなわち、PVNおよびDMH)において顕著に、そして、脈絡叢において優先的に)において高密度で発現され、そして、末梢組織には低密度で発現されるかまたは存在しないので、他の抗肥満薬および関連薬よりも効力および安全性が改善された選択的な5−HT2Cレセプターアゴニストの開発が望ましい。
【0003】
化合物(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン(その構造を以下の式Iに示す)は、5−HT2Cアゴニストのクラスに属する。5−HT2Cアゴニストは、多くの5−HT2C関連の疾患および障害(例えば、上記のもの)の処置に役立つ。この化合物の調製および特徴は、特許文献1に記載されている。特許文献1は、その全体が本明細書中に参考として援用される。この化合物の塩酸塩の調製および特徴はまた、国際出願番号PCT/US04/19279号に記載される。国際出願番号PCT/US04/19279は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【特許文献1】国際公開第2003/086306号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、改善された安定性、溶解性、貯蔵寿命およびインビボでの薬理を有する薬物化合物が一貫して求められているので、既存の薬物分子の、新規であるかまたはより純粋な、塩、水和物、溶媒和物および多形結晶形が必要とされ続けている。本明細書に記載される(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形は、この必要性および他の必要性を満たすのを助ける。
【0005】
【化1】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
いくつかの実施形態では、本発明は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩半水和物((R)−8−chloro−1−methyl−2,3,4,5−tetrahydro−1H−3−benzazepine hydrochloride hemihydrate)を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は、結晶形IIIを有する(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩半水和物を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩のI形を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩のII形を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の結晶形を含む組成物を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の結晶形を調製するためのプロセス、ならびにこのプロセスにより調製された結晶形を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書の結晶形と5HT2Cレセプターとを接触させる工程を包含する、5HT2Cレセプターを調節するための方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明は、必要のある患者に本明細書に記載される半水和物または結晶形の治療上有効な量を投与することによって、中枢神経系の障害、中枢神経系への損傷、心血管障害、胃腸障害、尿崩症または睡眠時無呼吸を処置する方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載される半水和物または結晶形の治療上有効な量を哺乳動物に投与する工程を包含する、哺乳動物の食物の摂食を減少させる方法を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載される半水和物または結晶形の治療上有効な量を哺乳動物に投与する工程を包含する、哺乳動物の満腹を誘導する方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載される半水和物または結晶形の治療上有効な量を哺乳動物に投与する工程を包含する、哺乳動物の体重増加を制御する方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載される半水和物または結晶形の治療上有効な量を患者に投与する工程を包含する、肥満症を処置するための方法を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療において使用するための、本発明の化合物または結晶形の使用を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療において使用するための医薬の調製において使用するための、本発明の化合物または結晶形の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(詳細な説明)
(結晶形)
本発明は、とりわけ、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の3つの結晶形を提供する。この3つの結晶形は、個々に、I形、II形およびIII形と命名される。I形およびII形は、無水の吸湿性形態であり、これらは両方とも、水分にさらすと容易にIII形(半水和物)に変わる。
【0021】
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩のさまざまな結晶形は、例えば、示差走査熱分析(DSC)、X線粉末回折(XRPD)、および他の固体状態方法に関するそれらの固有の固体状態シグナチャーによって確認され得る。結晶形の水または溶媒の含有量に関するさらなる特徴は、様々な慣用法(例えば、熱重量分析(TGA)、動的蒸気収着(DVS)、DSCおよび他の技術)のいずれによっても測定され得る。DSCについては、観察される温度が、温度変化速度ならびに使用した試料調製技術および特定の機器に依存することが知られている。このように、DSCサーモグラムに関して本明細書において報告される値は±約4℃変化し得る。XRPDについては、ピークの相対強度は、使用される試料調製技術、サンプル取り付け手順および特定の機器に依存して変化し得る。さらに、機器のバリエーションおよび他の要素が2θ値にしばしば影響を及ぼし得る。従って、回折パターンのピークの帰属は、±約0.2°変化し得る。本発明の3つの結晶形の各々を区別する物性を下記の表Iにまとめる。
【0022】
【表1】
TGAデータにおいて150℃未満で重量減少がないことは、I形およびII形の両方が無水の非溶媒和性の結晶形であることを示唆する。この結果は、半水和物についての3.7%という理論的な重量減少と一貫した3.7%の重量減少として算出される脱水特性を示すIII形と対照的である。DSCによる分析はTGAの結果をさらに確認する。TGAでは、III形のみが約95℃で脱水事象を示す。個々のDSCトレースは、3つの形の各々についての約200℃〜約201℃での融解/分解吸熱をさらに明らかにする。
【0023】
3つの結晶形の各々についてのDVSデータは、I形およびII形の両方の吸湿性の性質を明らかにする。I形およびII形は、約40%〜約60%のRHよりも高いRHで水分を容易に吸着する。さらに、I形およびII形は両方とも、約40%のRHと約80%のRHとの間で約3.8重量%の水分を吸着すると算出され、これは、半水和物(III形)への変換と一貫している。DVSサイクル後にI形およびII形の両方について実施されたXRPDは、この変換を確認した。対照的に、III形と関連したDVSデータは、それが実質的に吸湿性がなく、90%のRHにおいて0.5重量%未満の水を吸着することを示し、そしてXRPDパターンは、DVSサイクル後の結晶形が変化がないことを示した。
【0024】
3つの形の各々についてのX線粉末回折データは、類似のパターンを明らかにする。事実、II形が、I形の回折パターンに実質的に存在しない少なくとも一つの固有のピークを11.4°(2θ)に有することを除いて、I形およびII形の回折パターンは本質的に同じピークを共有する。I形およびII形は両方とも吸湿性であるので、これらの形について得られた回折パターンは、半水和物(III形)からのピークとしばしば合わされた。III形の回折パターンは、I形およびII形の両方の回折パターンと著しく異なり、いくつかの固有のピークを有する。III形に独特の例示的なピークを、上記の表1に示す。3つの形の各々についてのX線粉末回折ピークを、下記の表2において比較する。
【0025】
【表2】
(半水和物)
本発明の第1の局面において、本発明は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩半水和物である化合物を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、この半水和物は、2θに関して、約13.7°および約14.9°にピークを含む、III形に特有のX線粉末回折パターンを有する。さらなる実施形態において、この半水和物は、2θに関して、約13.7°、約14.9°、約15.4°、約15.8°および約16.7°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。なおさらなる実施形態において、この半水和物は、2θに関して、約13.7°、約14.9°、約15.4°、約15.8°、約16.7°、約20.1°または約21.4°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。なおさらなる実施形態において、この半水和物は、実質的に図11に示すとおりのX線粉末回折パターンを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたピークが約±0.2°変化し得ることを意味する。
【0027】
いくつかの実施形態では、この半水和物は、約90℃〜約110℃(例えば、約95℃)において比較的広い脱水吸熱を含む、示差走査熱分析トレースを有する。さらに、この示差走査熱分析トレースは、約200℃にさらなる吸熱を含む。なおさらなる実施形態において、この半水和物は、実質的に図10に示すとおりの示差走査熱分析トレースを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたDSC特徴が約±4°変化し得ることを意味される。
【0028】
いくつかの実施形態では、この半水和物は、棒状、薄板、ブロックまたはそれらの混合物である晶癖を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、この半水和物は、実質的に図8に示すとおりの動的蒸気収着プロフィールを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたDVS特徴が約±5%RH変化し得ることを意味する。
【0030】
いくつかの実施形態では、この半水和物は、水の損失に対応する約3.7%の重量減少を示す熱重量分析プロフィールを有する。さらなる実施形態において、この半水和物は、実質的に図9に示すとおりの熱重量分析プロフィールを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたTGA特徴が約±5℃変化し得ることを意味する。
【0031】
この半水和物は、化合物の水和物を調製することに関して当該技術分野で公知の適切な手順のいずれによっても調製され得る。いくつかの実施形態では、この半水和物は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を、水を含む結晶化溶媒に少なくとも部分的に溶解し、そしてこの結晶化溶媒からの半水和物の析出を誘導することにより調製され得る。
【0032】
結晶化溶媒は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を少なくとも部分的に溶解する任意の溶媒または溶媒混合物でもあり得、そして水を含む。いくつかの実施形態では、この結晶化溶媒は、アルコール、水および炭化水素を含む。適切なアルコールとしては、例えば、以下が挙げられる:メタノール、エタノール、2−ニトロエタノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、2‐エトキシエタノール、ジエチレングリコール、1−ペンタノール、2−ペンタノールまたは3−ペンタノール、ネオ−ペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェノールまたはグリセロール。いくつかの実施形態では、このアルコールは、イソプロパノール(2−プロパノール)である。適切な炭化水素としては、例えば、以下が挙げられる:ベンゼン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、エチルベンゼン、m−キシレン、o−キシレンまたはp−キシレン、オクタン、インダン、ノナンまたはナフタレン。いくつかの実施形態では、この炭化水素は、シクロヘキサンである。
【0033】
いくつかの実施形態では、結晶化溶媒中のアルコール:水の重量比は、約35:1〜約25:1、約32:1〜約27:1、または、約30:1〜約28:1である。いくつかの実施形態では、アルコール:水の重量比は、約29:1である。いくつかの実施形態では、結晶化溶媒中の(水+アルコール):炭化水素の重量比は、約5:1〜約2:1、約3:1〜約2:1または約2.5:1である。いくつかの実施形態では、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩:結晶化溶媒(例えば、アルコール+水+炭化水素)の重量比は、約1:2〜約1:15、約1:6〜約1:10または約1:8である。
【0034】
いくつかの実施形態では、結晶化溶媒および(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を含んでいる混合物は、析出を誘導する前に、約40℃〜約80℃、約50℃〜約70℃または約60℃の温度に維持されるか、そして/またはこの温度まで加熱される。
【0035】
いくつかの実施形態では、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩は、析出を誘導する前に、結晶化溶媒中に実質的に溶解される。実質的な溶解は、約40℃と約80℃との間(例えば、約60℃)のような適切な温度まで混合物を加熱することによって達成され得る。
【0036】
半水和物生成物の析出は、結晶化溶媒および(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を含んでいる混合物を冷却することにより誘導され得る。いくつかの実施形態では、この混合物は、約−15℃〜約15℃の温度まで冷却される。いくつかの実施形態では、この混合物は、約−5℃〜約10℃の温度まで冷却される。さらなる実施形態において、この混合物は、約0℃〜約5℃の温度まで冷却される。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩またはその水和物である化合物を提供し、ここで、この化合物または水和物は、動的蒸気収着サイクルを受けた後に約1.0%未満、約0.5%未満または約0.2%未満の重量が増える。(あるとしても)重量増加は、サイクルの最初とサイクルの終わりとのサンプル重量の違いとして測定され得る。これらの2点は、代表的に、同じ相対湿度(RH)値またはその付近で行われる。例えば、あるサイクルは、約0%RHから約20%RHで始まり得、約85%RH〜約100%RHに向かって行われ得、その後、開始時のRH点に戻り得る。いくつかの実施形態では、重量増加は、約5%RH、約10%RHまたは約15%RHの開始点/終了点で測定される。いくつかの実施形態では、このサイクルは、約85%、約90%、約95%または約100%の最大RHを通って行われる。いくつかの実施形態では、このサンプルは、約80%以上のRHでのサイクル中に、約1%より高いか、約2%より高いか、または約5%より高いの重量増加を示す。いくつかの実施形態では、本発明は、実質的に図12に示すとおりの動的蒸気収着プロフィールを有する、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩またはその水和物である化合物を提供する。
【0038】
(I形)
第2の局面において、本発明は、2θに関して、約6.5°、約9.6°および約10.2°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形(I形)に関する。いくつかの実施形態では、この結晶形は、2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°、約12.9°、約17.1°、約17.5°および約17.8°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。さらなる実施形態において、この結晶形は、2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°、約12.9°、約17.1°、約17.5°、約17.8°、約18.5°、約19.5°および約19.8°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。なおさらなる実施形態において、この結晶形は、約10.5°〜約11.5°に実質的にピークを含まない(例えば、ここで、強度が、最も強度の強いピークの約5%未満である)X線粉末回折パターンを有する。なおさらなる実施形態において、この結晶形は、約11.4°に実質的にピークを含まないX線粉末回折パターンを有する。なおさらなる実施形態において、この結晶形は、実質的に図3に示すとおりのX線粉末回折パターンを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたピークが約±0.2°変化し得ることを意味する。
【0039】
いくつかの実施形態では、この結晶形は、約201℃に吸熱を含む示差走査熱分析トレースを有する。さらなる実施形態において、この結晶形は、実質的に図2に示すとおりの示差走査熱分析トレースを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたDSC特徴が約±4°変化し得ることを意味する。
【0040】
いくつかの実施形態では、この結晶形は、粒状である晶癖を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、この結晶形は、実質的に図4に示すとおりの動的蒸気収着プロフィールを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたDVS特徴が約±5%RH変化し得ることを意味する。
【0042】
いくつかの実施形態では、この結晶形は、実質的に図1に示すとおりの熱重量分析プロフィールを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたTGA特徴が約±5℃変化し得ることを意味する。
【0043】
I形は、結晶多形相を調製することについて当該技術分野で公知の適切な手順のいずれによっても調製され得る。いくつかの実施形態では、I形は、結晶(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を加熱することにより調製され得、ここで、この結晶(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩は、I形以外の一つ以上の結晶形を含む。例えば、I形は、II形もしくはIII形(半水和物)またはそれらの混合物を含んでいるサンプルを加熱することにより調製され得る。いくつかの実施形態では、II形もしくはIII形またはそれらの混合物は、I形の形成に適した時間でかつ適した条件下で、少なくとも約60℃の温度に加熱され得る。いくつかの実施形態では、II形もしくはIII形またはそれらの混合物は、少なくとも約2時間にわたって少なくとも約60℃の温度に加熱され得る。
【0044】
(II形)
本発明の第3の局面において、本発明は、2θに関して、約11.4°に少なくとも一つのピークを含むX線粉末回折パターンを有する、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形(II形)を提供する。いくつかの実施形態では、この結晶形は、2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°および約11.4°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、この結晶形は、2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°、約11.4°、約12.9°、約17.1°、約17.5°および約17.7°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態において、この結晶形は、2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°、約11.4°、約12.9、約17.1°、約17.5°、約17.8°、約18.5°、約19.5°および19.8°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、この結晶形は、実質的に図7に示すとおりのX線粉末回折パターンを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたピークが約±0.2°変化し得ることを意味する。
【0045】
いくつかの実施形態では、II形は、約201℃に吸熱を含む示差走査熱分析トレースを有する。さらなる実施形態において、I形は、実質的に図6に示すとおりの示差走査熱分析トレースを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたDSC特徴が約±4℃変化し得ることを意味する。
【0046】
いくつかの実施形態では、II形は、棒状である晶癖を有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、II形は、実質的に図8に示すとおりの動的蒸気収着プロフィールを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたDVS特徴が約±5%RH変化し得ることを意味する。
【0048】
いくつかの実施形態では、II形は、実質的に図5に示すとおりの熱重量分析プロフィールを有し、ここで、「実質的に」により、報告されたTGA特徴が約±5℃変化し得ることを意味する。
【0049】
II形は、結晶多形相を調製することについて当該技術分野で公知の適切な手順のいずれによっても調製され得る。例えば、II形は、無水結晶化溶媒中に(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を溶解し、そして例えば、冷却または反溶剤の添加によって析出を誘導することにより、調製され得る。いくつかの実施形態では、II形は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン(遊離塩基)を炭化水素溶媒中に組み込んで混合物を形成し;必要に応じて、この混合物から水を除去して、脱水された混合物を形成し;そしてHClおよびアルコールをこの脱水された混合物に添加することにより調製され得る。適切なアルコールおよび炭化水素溶媒は、上記に列挙される。いくつかの実施形態では、この炭化水素溶媒は、シクロヘキサンである。さらなる実施形態において、このアルコールは、イソプロパノールである。いくつかの実施形態では、このアルコールの添加は、約15分間〜約2時間の時間をかけて行われる。いくつかの実施形態では、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン:シクロヘキサンの重量比は、約1:20〜約1:10、約1:17〜約1:12または約1:10〜約1:5または約1:7〜1:8である。さらなる実施形態において、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン:アルコールの重量比は、約1:1〜約1:10、約1:2〜約1:5または約1:3である。
【0050】
溶媒混合物からの水の除去は、例えば、モレキュラーシーブとのインキュベーションによって、または、共沸蒸留によって、当該技術分野における慣用法のいずれによっても実施され得る。水の除去後の混合物の最終的な含水量は、約0.1重量%未満、好ましくは約0.05重量%未満またはより好ましくは約0.03重量%未満であり得る。溶媒混合物の含水量が十分に低い(例えば、約0.1重量%未満)場合、水除去工程を省略し得る。
【0051】
塩の形成の間、HCl(例えば、HClガス)は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピンに対してモル過剰に添加され得る。
【0052】
(組成物)
本発明は、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の3つの結晶形のうちの一つ以上を含んでいる組成物をさらに提供する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも、約50重量%、約60重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%または約99重量%の半水和物(例えば、III形)を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも、約50重量%、約60重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%または約99重量%のI形を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも、約50重量%、約60重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%または約99重量%のII形を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、I形、II形およびIII形のうちの二つ以上の混合物を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、I形、II形または半水和物と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む。
【0053】
(方法)
本発明の結晶形は、5−HT2Cレセプターアゴニストとしての活性を有する。したがって、本発明の結晶形は、本明細書に記載される結晶形のうちのいずれか一つ以上またはその組成物と5−HT2Cレセプターとを接触させることによって、5−HT2Cレセプターと拮抗する(例えば、活性を刺激する、活性を増大させる、など)方法において使用され得る。さらなる実施形態において、本発明の結晶形は、治療上有効な量の本発明の結晶形を投与することによって、5−HT2Cレセプターと拮抗する必要のある個体において5−HT2Cレセプターと拮抗するために使用され得る。
【0054】
本発明は、5−HT2Cレセプターの投与のような処置を必要とする個体に治療上有効な量または用量の本発明の結晶形またはその薬学的組成物を投与することによって、個体(例えば、患者)の5−HT2Cレセプターと関連した疾患を処置する方法をさらに提供する。例示的な疾患としては、5−HT2Cレセプターの過小発現または異常に低い活性を含め、5−HT2Cレセプターの発現または活性と直接的または間接的に関連する、任意の疾患、障害または状態が挙げられ得る。
【0055】
例示的な疾患としては、中枢神経系の障害、中枢神経系への損傷、心血管障害、胃腸障害、尿崩症および睡眠時無呼吸が挙げられる。中枢神経系の例示的な障害としては、以下が挙げられる:鬱病、非定型鬱病、双極性障害、不安障害、強迫性障害、社会恐怖症またはパニック状態、睡眠障害、性的機能不全、精神病、精神分裂病、片頭痛および頭の痛みまたは他の痛みに関連した状態、上昇した頭蓋内圧、癲癇、人格障害、加齢性行動障害、痴呆に伴う行動障害、器質性精神障害、小児の精神障害、攻撃性、加齢性記憶障害、慢性疲労症候群、薬物嗜癖およびアルコール嗜癖、肥満、過食症、神経性食欲不振および月経前緊張症。
【0056】
本発明は、治療上有効な量の本発明の結晶形を投与することによって、哺乳動物の食物の摂食を減少させる方法をさらに提供する。
【0057】
本発明は、治療上有効な量の本発明の結晶形を投与することによって、哺乳動物の満腹を誘導するための方法をさらに提供する。
【0058】
本発明は、治療上有効な量の本発明の結晶形を投与することによって、哺乳動物の体重増加を制御する方法をさらに提供する。
【0059】
本発明は、治療上有効な量の本発明の結晶形を患者に投与することによって、肥満症を処置する方法をさらに提供する。
【0060】
いくつかの実施形態では、上記方法は、患者を同定する工程をさらに包含し、ここで、この患者は、処置される特定の疾患についての処置を必要とし、ここで、この同定する工程は、治療上有効な量の本発明の結晶形を患者へ投与する前に実施される。
【0061】
本明細書中で用いられる場合、「処置する」という用語は、例えば、個体における、疾患、状態または障害を予防、阻害、および改善することをいう。
【0062】
本明細書中で用いられる場合、交換可能に使用される、「個体」または「患者」という用語は、哺乳動物を含め、任意の動物をいい、好ましくはマウス、ラット、他の齧歯動物、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマまたは霊長類であり、最も好ましくはヒトである。
【0063】
本明細書中で用いられる場合、「治療上有効な量」という語句は、以下のうちの一つ以上を含め、研究者、獣医師、医学博士または他の臨床医によって求められる、組織、系、動物、個体またはヒトにおける生物学的応答または医薬応答を惹起する、活性な化合物または薬品の量をいう:
(1)疾患を予防すること;例えば、疾患、状態または障害の素因があり得るが、その疾患の病理もまたは総体的症状もまだ経験しておらず、示してもいない個体において、その疾患、状態または障害を予防すること;
(2)疾患を阻害すること;例えば、疾患、状態または障害の病理または総体的症状を経験しているかまたは示している個体において、その疾患、状態または障害を阻害すること(すなわち、病理および/または総体的症状のさらなる進展を停止させること)(例えばウイルス感染の場合、ウイルス量を安定させること);ならびに
(3)疾患を改善すること;例えば、疾患、状態または障害の病理または総体的症状を経験しているかまたは示している個体において、その疾患、状態または障害を改善すること(すなわち、病理および/または総体的症状を逆転させること)(例えばウイルス感染の場合、ウイルス量を減らすこと)。
【0064】
(薬学的処方物および投与形態)
医薬として使用される場合、本発明の結晶形は、薬学的組成物の形で投与され得る。これらの組成物は、経口経路、直腸経路、経皮経路、局所経路、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、および鼻腔内経路を含めた様々な経路により投与され得、そして製薬分野で周知の様式で調製され得る。
【0065】
本発明はまた、活性成分として、上記の本発明の結晶形のうちの一つ以上を、一つ以上の薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む薬学的組成物を含む。本発明の組成物の製造において、この活性成分は代表的に、賦形剤と混合されるか、賦形剤により希釈されるか、または例えば、カプセル、サシェ、紙もしくは他の容器の形態のキャリアに封入される。賦形剤が希釈液として作用する場合、これは、固体、半固体または液体の材料であり得、これは活性成分に対してビヒクル、キャリアまたは媒体として作用する。従って、この組成物は、錠剤、丸剤、散剤、舌下錠、サシェ、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳濁剤、液剤、シロップ剤、(固体として、または、液体培地中の)エアゾール剤、(例えば、10重量%までの活性化合物を含む)軟膏、軟質ゼラチンカプセルおよび硬質ゼラチンカプセル、坐剤、無菌の注射可能溶液ならびに無菌の包装された粉末の形態であり得る。
【0066】
処方物を調製する際に、この結晶形は、他の成分と合わせる前に、適切な粒径にするために粉砕され得る。この結晶形が実質的に不溶性である場合、この結晶形は、200メッシュ未満の粒径に粉砕され得る。結晶形が実質的に水溶性である場合、この粒径は、処方物において実質的に均質な分布(例えば、約40メッシュ)を提供するために粉砕により調整され得る。
【0067】
適切な賦形剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカントゴム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。この処方物は以下をさらに含み得る:滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱油);湿潤剤;乳化および懸濁剤;保存剤(例えば、安息香酸メチルおよびヒドロキシ安息香酸プロピル);甘味料;および矯味矯臭剤。本発明の組成物は、当該技術分野で公知の手順を使用することによって、患者への投与後に活性成分の迅速な放出、持続放出または遅延放出を提供するように処方され得る。
【0068】
この組成物は、単位投与形態で処方され得、この単位投与形態は、約5mg〜約100mg、より一般的には約10〜約30mgの活性成分を含む。「単位投与形態」という用語は、ヒト被験体および他の哺乳動物についての単位投与量として適切な物理的に別々の単位であって、各単位が、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を適切な薬学的賦形剤とともに含むものをいう。
【0069】
この結晶形は、広い投与量範囲にわたって有効であり得、そして一般に、治療上有効な量において投与される。しかしながら、実際に投与される結晶形の量が通常、処置されるべき状態、選択された投与経路、投与される実際の結晶形、個々の患者の年齢、体重および応答、患者の症状の重篤さなどを含めた関連した状況に従って医師によって決定されることが理解される。
【0070】
錠剤のような固体の組成物を調製するために、主要な活性成分は、薬学的賦形剤と混合されて、本発明の結晶形の均質な混合物を含んでいる固体の予備処方組成物を形成する。これらの予備処方組成物を均質という場合、この活性成分は代表的に、この組成物全体に均質に分散されており、その結果、この組成物は、等しく有効な単位投薬形態(例えば、錠剤、丸剤およびカプセル剤)へと容易にさらに分割され得る。次いで、この固体の予備処方物は、例えば、約0.1mg〜約500mgの本発明の活性成分を含む上記のタイプの単位投与形態にさらに分割される。
【0071】
本発明の錠剤または丸剤は、被覆されていてもよく、さもなければ、長期作用という利点を提供する投薬形態を提供するように配合されてもよい。例えば、錠剤または丸剤は、内側投薬成分および外側投薬成分を含み得、そして後者が前者を覆う膜の形態であり得る。これらの2つの成分は、胃での崩壊に抵抗して内側成分をインタクトなまま十二指腸へと通過させるかまたは放出を遅延させるのに役立つ腸溶性(enteric)層によって分離され得る。種々の物質がこのような腸溶性の層またはコーティングとして使用され得、このような物質としては、数多くのポリマー酸、ならびにポリマー酸と例えば、シェラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースのような物質との混合物が挙げられる。
【0072】
本発明の結晶形および組成物が経口投与または注入による投与のために組み込まれ得る液体状態としては、水溶液、適切に風味をつけたシロップ剤、水性懸濁剤または油性懸濁剤、および綿実油、ゴマ油、ヤシ油または落花生油のような食用油で風味をつけた乳濁剤、ならびにエリキシル剤および類似の薬学的ビヒクルが挙げられる。
【0073】
吸入またはガス注入のための組成物としては、薬学的に受容可能な、水性もしくは有機性の溶媒またはそれらの混合物中の液剤および懸濁剤、ならびに散剤が挙げられる。液体または固体の組成物は、上記のとおりの、適切な薬学的に受容可能な賦形剤を含み得る。いくつかの実施形態では、この組成物は、局所効果または全身効果のために、経口経路または鼻の呼吸経路により投与される。組成物は、不活性ガスを用いて霧状にされ得る。霧状にされた溶液は、霧状化デバイスから直接呼吸されてもよく、または霧状化デバイスは、顔面マスクテントもしくは間欠的陽圧呼吸機に取り付けられてもよい。液体、懸濁液または粉末の組成物は、処方物を適切な様式で送達するデバイスから、経口投与されてもよく、または鼻から投与されてもよい。
【0074】
患者に投与される結晶形または組成物の量は、投与されるもの、投与の目的(例えば、予防または処置)、患者の状態、投与様式などに依存して変化する。治療適用において、組成物は、すでに疾患を患っている患者に、その疾患およびその合併症の症状を治療するかまたは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与され得る。有効用量は、処置される疾患状態、ならびに疾患の重篤度、患者の年齢、体重および全般的な状態などのような要因に依存する担当の臨床医の判断に依存する。
【0075】
患者に投与される組成物は、上記の薬学的組成物の形態であり得る。これらの組成物は、従来の滅菌技術により滅菌されてもよく、または濾過滅菌されてもよい。水溶液は、そのまま使用するためにパックされてもよく、または凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥された調製物は、投与の前に無菌の水性キャリアと合わされる。この化合物の調製物のpHは、代表的には3と11との間にあり、より好ましくは5〜9であり、そして最も好ましくは7〜8である。上記の賦形剤、キャリアまたは安定剤の特定のものの使用が、薬学的な塩の形成をもたらすことが理解される。
【0076】
本発明の結晶形の治療用投薬量は、例えば、処置がなされる特定の使用、結晶形の投与様式、患者の健康および状態、ならびに処方医の判断に従って変化し得る。薬学的組成物中の本発明の結晶形の比率または濃度は、投薬量、化学的特性(例えば、疎水性)および投与経路を含めた多くの要因に依存して変化し得る。例えば、本発明の結晶形は、約0.1% w/v〜約10% w/vの化合物を含んでいる、非経口的投与のための水性生理的緩衝液で提供され得る。いくつかの代表的な用量の範囲は、1日につき体重1kgあたり約1μg〜約1gである。いくつかの実施形態では、用量範囲は、1日につき体重1kgあたり約0.01mg〜約100mgである。投薬量は、疾患または障害のタイプおよび進行程度、特定の患者の全般的な健康状態、選択される結晶形の相対的な生物的効力、賦形剤の処方およびその投与経路のような変動要因に依存するようである。有効用量は、インビトロまたは動物でのモデル試験系から導かれる用量応答曲線から外挿され得る。
【0077】
本発明の結晶形はまた、任意の医薬品(例えば、抗ウイルス剤、抗体、免疫抑制剤、抗炎症剤など)を含み得る一つ以上のさらなる活性成分と組み合わせて処方され得る。
【0078】
本明細書に開示される本発明がより効率的に理解され得るために、実施例が以下で提供されている。これらの実施例が例示の目的だけのためにあって、本発明を限定するとは決して解釈されないべきであることを理解すべきである。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
((R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の調製)
清潔で乾燥した25mLの丸底フラスコに、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン遊離アミン(220mg)、3mLの塩化メチレンおよび1.74mLのエーテル中1M HClを添加した。この混合物を室温で5分間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、白色固体のHCl塩を得た。この塩を塩化メチレン(3mL)に再溶解し、そしてさらに1.74mLの1M HClを添加し、そしてこの溶液を室温で5分間、再度攪拌した。溶媒を減圧下で除去して、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピンの所望のHCl塩(190mgの粗製重量、95%の収率)を得た。NMRデータは、所望の生成物と一貫していた。
【0080】
1H NMR(CDCl3):10.2(br s、1H)、9.8(br s、1H)、7.14(dd、1H、J=2、8Hz)、7.11(d、1H、J=2Hz)、7.03(d、1H、J=8Hz)、3.6(m、2H)、3.5(m、2H)、2.8〜3.0(m、3H)、1.5(d、3H、J=7Hz)。
【0081】
(実施例2)
((R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩半水和物(III形)の調製)
20℃〜25℃で、160gの689mM (R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩を、359.36gのイソプロパノールを用いて、窒素雰囲気下で処理する。得られる混合物を60℃まで加熱して、透明の溶液を得る。所望の温度に達した後、12.43gの水を添加し、続いて960gのシクロヘキサンを添加する。水およびシクロヘキサンは、60℃〜40℃で添加される。その後、この溶液を、(160rpmで)ゆっくり攪拌しながら2時間かけて20℃〜25℃まで冷却する。生成物の結晶化が観察された後、得られる懸濁物を0℃〜5℃に冷却し、その後、0℃〜5℃において3時間撹拌する。懸濁液を濾過し、そして濾過ケークを反応器を通して160gのシクロヘキサンによって洗浄し、さらに160gのシクロヘキサンで洗浄する。このプロセスから、176.81gの無色の湿った生成物が得られた。この生成物を50mbarで35℃〜45℃(優先的には40℃)にて乾燥し、153.03g(95.3重量%)の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩半水和物が無色の結晶固体として得られた。
【0082】
(実施例3)
((R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形IIの調製)
約6.6gの遊離塩基(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピンを、約130mLの体積になるようにシクロヘキサンに溶解した。共沸蒸留によって、0.03%未満のレベルまで含水量を減少させた。さらなるシクロヘキサンを、必要に応じてフラスコに充填して同じ体積を維持した。この透明な溶液を濾過し、そして3.06g、83.9mmolの塩酸ガスおよび19.38gのイソプロパノールの混合物を、内部温度20℃において60分間かけて添加した。得られた懸濁液を少なくとも2時間撹拌し、その後、フィルターに通した。濾過ケークを、0℃〜10℃に冷却した60gのアセトンによって洗浄し、そして生成物(9.19g)を30mbarで60℃にて乾燥させて、5.88gのII形を得た。
【0083】
(実施例4)
((R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形Iの調製)
II形(例えば、実施例2に従って調製される)またはIII形(例えば、実施例1に従って調製される)のいずれかのサンプルをTGA炉中で約10℃/分の割合で加熱して約15分間、約160℃の温度まで加熱することにより、I形を調製した。I形への変換がXRPD分析により検出された。
【0084】
(実施例5)
((R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形Iの安定性)
I形のサンプルを、TGA炉中で約15分間、約10℃/分の割合で加熱して、160℃まで加熱した。XRPD分析は、加熱後に結晶形が変わらないことを示した。
【0085】
(実施例6)
((R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形IIIの安定性)
III形のサンプルを、少なくとも2時間にわたって60℃まで加熱した。XRPD分析は、加熱後に結晶形が実質的に変化しないことを示した。
【0086】
III形のサンプルを、1日間にわたって60℃まで加熱した。XRPD分析は、加熱後にI形に部分的に変換されたことを示した。
【0087】
III形のサンプルを、30分間にわたって80℃まで加熱した。XRPD分析は、加熱後にI形に部分的に変換されたことを示した。
【0088】
III形のサンプルを、1日間にわたって80℃まで加熱した。XRPD分析は、加熱後にI形に部分的に変換されたことを示した。
【0089】
本発明の様々な改変物は、本明細書に記載されたものに加えて、上記の記載から当業者にとって明らかである。このような改変物もまた、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。全ての特許、特許出願および論文を含め、本願において引用された各参考文献は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、本発明の結晶形Iについての熱重量分析(TGA)のサーモグラムを表す(オープンセルにおいて、TA Instruments TGA Q500;25〜350℃;10℃/分)。
【図2】図2は、本発明の結晶形Iについての示差走査熱分析(DSC)のサーモグラムを表す(TA Instruments DSC Q1000;25〜220℃;10℃/分)。
【図3】図3は、結晶形Iを含んでいるサンプルについての粉末X線回折パターン(XRPD)を表す(PANalytical X’Pert Plus Powder X−Ray Diffractometer;5.0°〜50.0° 2θ)。
【図4】図4は、本発明の結晶形Iについての動的蒸気収着(DV)走査(VTI動的蒸気脱着分析器)を表す。
【図5】図5は、本発明の結晶形IIについての熱重量分析(TGA)のサーモグラムを表す(オープンセルオープンセルにおけるTA Instruments TGA Q500;25〜350℃;10℃/分)。
【図6】図6は、本発明の結晶形IIについての示差走査熱分析(DSC)のサーモグラムを表す(TA Instruments DSC Q1000;25〜220℃;10℃/分)。
【図7】図7は、結晶形IIを含んでいるサンプルについての粉末X線回折パターン(XRPD)を表す(PANalytical X’Pert Plus Powder X−Ray Diffractometer;5.0°〜50.0° 2θ)。
【図8】図8は、本発明の結晶形IIについての動的蒸気収着(DV)走査(VTI動的蒸気脱着分析器)を表す。
【図9】図9は、本発明の結晶形IIIについての熱重量分析(TGA)のサーモグラムを表す(オープンセルオープンセルにおけるTA Instruments TGA Q500;25〜350℃;10℃/分)。
【図10】図10は、本発明の結晶形IIIについての示差走査熱分析(DSC)のサーモグラムを表す(TA Instruments DSC Q1000;25〜220℃;10℃/分)。
【図11】図11は、結晶形IIIを含んでいるサンプルについての粉末X線回折パターン(XRPD)を表す(PANalytical X’Pert Plus Powder X−Ray Diffractometer;5.0°〜50.0° 2θ)。
【図12】図12は、本発明の結晶形IIIについての動的蒸気収着(DV)走査を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩半水和物である、化合物。
【請求項2】
2θに関して、約13.7°および約14.9°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項3】
2θに関して、約13.7°、約14.9°、約15.4°、約15.8°、約16.7°、約20.1°および約21.4°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項4】
実質的に図11に示したとおりのX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項5】
約90℃と約110℃との間の吸熱を含む示差走査熱分析トレースを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項6】
約90℃と約110℃との間の吸熱および約200℃の吸熱を含む示差走査熱分析トレースを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項7】
実質的に図10に示したとおりの示差走査熱分析トレースを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項8】
実質的に図12に示したとおりの動的蒸気収着プロフィールを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項9】
約150℃未満で約3.7%の重量減少を示す熱重量分析プロフィールを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項10】
実質的に図9に示すとおりの熱重量分析プロフィールを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項11】
請求項1に記載の半水和物を含む、組成物。
【請求項12】
前記半水和物が前記組成物の少なくとも約50重量%を構成する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記半水和物が前記組成物の少なくとも約90重量%を構成する、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記半水和物が前記組成物の少なくとも約99重量%を構成する、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の半水和物および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
【請求項16】
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形(I形)であって、2θに関して、約6.5°、約9.6°および約10.2°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する、結晶形。
【請求項17】
2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°、約12.9°、約17.1°、約17.5°、約17.8°、約18.5°、約19.5°および約19.8°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項16に記載の結晶形。
【請求項18】
実質的に図3に示すとおりのX線粉末回折パターンを有する、請求項16に記載の結晶形。
【請求項19】
請求項16に記載の結晶形を含む組成物。
【請求項20】
請求項16に記載の結晶形および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
【請求項21】
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形(II形)であって、2θに関して、約11.4°に少なくとも一つのピークを含むX線粉末回折パターンを有する、結晶形。
【請求項22】
2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°、約11.4°、約12.9°、約17.1°、約17.5°および約17.7°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項21に記載の結晶形。
【請求項23】
実質的に図7に示すとおりのX線粉末回折パターンを有する、請求項21に記載の結晶形。
【請求項24】
請求項21に記載の結晶形を含む、組成物。
【請求項25】
請求項21に記載の結晶形および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
【請求項26】
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩またはその水和物である化合物であって、該化合物またはその水和物は、約10%のRHから約90%のRHまでの動的蒸気収着サイクルを受けた後に約1.0%未満の重量が増える、化合物。
【請求項27】
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩またはその水和物である化合物であって、実質的に図12に示すとおりの動的蒸気収着プロフィールを有する、化合物。
【請求項28】
5HT2C関連障害を処置する方法であって、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載のとおりの半水和物または結晶形の治療上有効な量を、必要のある患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項29】
前記5HT2C関連障害が、中枢神経系の障害、中枢神経系への損傷、心血管障害、胃腸障害、尿崩症および睡眠時無呼吸からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。。
【請求項30】
前記5HT2C関連障害が、鬱病、非定型鬱病、双極性障害、不安障害、強迫性障害、社会恐怖症またはパニック状態、睡眠障害、性的機能不全、精神病、精神分裂病、片頭痛および頭の痛みまたは他の痛みに関連した状態、上昇した頭蓋内圧、癲癇、人格障害、加齢性行動障害、痴呆に伴う行動障害、器質性精神障害、小児の精神障害、攻撃性、加齢性記憶障害、慢性疲労症候群、薬物嗜癖およびアルコール嗜癖、肥満、過食症、神経性食欲不振および月経前緊張症からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記5HT2C関連障害が肥満である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
治療によるヒトまたは動物の身体の処置方法に使用するための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形。
【請求項33】
治療によるヒトまたは動物の身体の5HT2C関連障害の処置方法に使用するための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形。
【請求項34】
処置によるヒトまたは動物の身体の中枢神経系の障害、中枢神経系への損傷、心血管障害、胃腸障害、尿崩症または睡眠時無呼吸の処置方法に使用するための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形。
【請求項35】
処置によるヒトまたは動物の身体の鬱病、非定型鬱病、双極性障害、不安障害、強迫性障害、社会恐怖症またはパニック状態、睡眠障害、性的機能不全、精神病、精神分裂病、片頭痛および頭の痛みまたは他の痛みに関連した状態、上昇した頭蓋内圧、癲癇、人格障害、加齢性行動障害、痴呆に伴う行動障害、器質性精神障害、小児の精神障害、攻撃性、加齢性記憶障害、慢性疲労症候群、薬物嗜癖およびアルコール嗜癖、肥満、過食症、神経性食欲不振または月経前緊張症の処置方法に使用するための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形。
【請求項36】
処置によるヒトまたは動物の身体の肥満症の処置のための方法に使用するための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形。
【請求項37】
5HT2C関連障害を処置するための医薬の製造のための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形の使用。
【請求項38】
中枢神経系の障害、中枢神経系への損傷、心血管障害、胃腸障害、尿崩症または睡眠時無呼吸を処置するための医薬の製造のための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形の使用。
【請求項39】
鬱病、非定型鬱病、双極性障害、不安障害、強迫性障害、社会恐怖症またはパニック状態、睡眠障害、性的機能不全、精神病、精神分裂病、片頭痛および頭の痛みまたは他の痛みに関連した状態、上昇した頭蓋内圧、癲癇、人格障害、加齢性行動障害、痴呆に伴う行動障害、器質性精神障害、小児の精神障害、攻撃性、加齢性記憶障害、慢性疲労症候群、薬物嗜癖およびアルコール嗜癖、肥満、過食症、神経性食欲不振または月経前緊張症を処置するための医薬の製造のための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形の使用。
【請求項40】
肥満症を処置するための医薬の製造のための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形の使用。
【請求項1】
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩半水和物である、化合物。
【請求項2】
2θに関して、約13.7°および約14.9°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項3】
2θに関して、約13.7°、約14.9°、約15.4°、約15.8°、約16.7°、約20.1°および約21.4°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項4】
実質的に図11に示したとおりのX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項5】
約90℃と約110℃との間の吸熱を含む示差走査熱分析トレースを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項6】
約90℃と約110℃との間の吸熱および約200℃の吸熱を含む示差走査熱分析トレースを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項7】
実質的に図10に示したとおりの示差走査熱分析トレースを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項8】
実質的に図12に示したとおりの動的蒸気収着プロフィールを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項9】
約150℃未満で約3.7%の重量減少を示す熱重量分析プロフィールを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項10】
実質的に図9に示すとおりの熱重量分析プロフィールを有する、請求項1に記載の半水和物。
【請求項11】
請求項1に記載の半水和物を含む、組成物。
【請求項12】
前記半水和物が前記組成物の少なくとも約50重量%を構成する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記半水和物が前記組成物の少なくとも約90重量%を構成する、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記半水和物が前記組成物の少なくとも約99重量%を構成する、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の半水和物および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
【請求項16】
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形(I形)であって、2θに関して、約6.5°、約9.6°および約10.2°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する、結晶形。
【請求項17】
2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°、約12.9°、約17.1°、約17.5°、約17.8°、約18.5°、約19.5°および約19.8°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項16に記載の結晶形。
【請求項18】
実質的に図3に示すとおりのX線粉末回折パターンを有する、請求項16に記載の結晶形。
【請求項19】
請求項16に記載の結晶形を含む組成物。
【請求項20】
請求項16に記載の結晶形および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
【請求項21】
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩の結晶形(II形)であって、2θに関して、約11.4°に少なくとも一つのピークを含むX線粉末回折パターンを有する、結晶形。
【請求項22】
2θに関して、約6.5°、約9.6°、約10.2°、約11.4°、約12.9°、約17.1°、約17.5°および約17.7°にピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項21に記載の結晶形。
【請求項23】
実質的に図7に示すとおりのX線粉末回折パターンを有する、請求項21に記載の結晶形。
【請求項24】
請求項21に記載の結晶形を含む、組成物。
【請求項25】
請求項21に記載の結晶形および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
【請求項26】
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩またはその水和物である化合物であって、該化合物またはその水和物は、約10%のRHから約90%のRHまでの動的蒸気収着サイクルを受けた後に約1.0%未満の重量が増える、化合物。
【請求項27】
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン塩酸塩またはその水和物である化合物であって、実質的に図12に示すとおりの動的蒸気収着プロフィールを有する、化合物。
【請求項28】
5HT2C関連障害を処置する方法であって、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載のとおりの半水和物または結晶形の治療上有効な量を、必要のある患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項29】
前記5HT2C関連障害が、中枢神経系の障害、中枢神経系への損傷、心血管障害、胃腸障害、尿崩症および睡眠時無呼吸からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。。
【請求項30】
前記5HT2C関連障害が、鬱病、非定型鬱病、双極性障害、不安障害、強迫性障害、社会恐怖症またはパニック状態、睡眠障害、性的機能不全、精神病、精神分裂病、片頭痛および頭の痛みまたは他の痛みに関連した状態、上昇した頭蓋内圧、癲癇、人格障害、加齢性行動障害、痴呆に伴う行動障害、器質性精神障害、小児の精神障害、攻撃性、加齢性記憶障害、慢性疲労症候群、薬物嗜癖およびアルコール嗜癖、肥満、過食症、神経性食欲不振および月経前緊張症からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記5HT2C関連障害が肥満である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
治療によるヒトまたは動物の身体の処置方法に使用するための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形。
【請求項33】
治療によるヒトまたは動物の身体の5HT2C関連障害の処置方法に使用するための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形。
【請求項34】
処置によるヒトまたは動物の身体の中枢神経系の障害、中枢神経系への損傷、心血管障害、胃腸障害、尿崩症または睡眠時無呼吸の処置方法に使用するための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形。
【請求項35】
処置によるヒトまたは動物の身体の鬱病、非定型鬱病、双極性障害、不安障害、強迫性障害、社会恐怖症またはパニック状態、睡眠障害、性的機能不全、精神病、精神分裂病、片頭痛および頭の痛みまたは他の痛みに関連した状態、上昇した頭蓋内圧、癲癇、人格障害、加齢性行動障害、痴呆に伴う行動障害、器質性精神障害、小児の精神障害、攻撃性、加齢性記憶障害、慢性疲労症候群、薬物嗜癖およびアルコール嗜癖、肥満、過食症、神経性食欲不振または月経前緊張症の処置方法に使用するための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形。
【請求項36】
処置によるヒトまたは動物の身体の肥満症の処置のための方法に使用するための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形。
【請求項37】
5HT2C関連障害を処置するための医薬の製造のための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形の使用。
【請求項38】
中枢神経系の障害、中枢神経系への損傷、心血管障害、胃腸障害、尿崩症または睡眠時無呼吸を処置するための医薬の製造のための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形の使用。
【請求項39】
鬱病、非定型鬱病、双極性障害、不安障害、強迫性障害、社会恐怖症またはパニック状態、睡眠障害、性的機能不全、精神病、精神分裂病、片頭痛および頭の痛みまたは他の痛みに関連した状態、上昇した頭蓋内圧、癲癇、人格障害、加齢性行動障害、痴呆に伴う行動障害、器質性精神障害、小児の精神障害、攻撃性、加齢性記憶障害、慢性疲労症候群、薬物嗜癖およびアルコール嗜癖、肥満、過食症、神経性食欲不振または月経前緊張症を処置するための医薬の製造のための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形の使用。
【請求項40】
肥満症を処置するための医薬の製造のための、請求項1、2、16、および21のいずれか1項に記載の化合物または結晶形の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−524262(P2008−524262A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547060(P2007−547060)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/046983
【国際公開番号】WO2006/069363
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(500478097)アリーナ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (97)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/046983
【国際公開番号】WO2006/069363
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(500478097)アリーナ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (97)
【Fターム(参考)】
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