説明

(R/S)リファマイシン誘導体、その調製、および医薬組成物

以下の一般式(I)(式中、好ましいRは、水素またはアセチルを含み、好ましいRは、水素、メチル、または他の低級アルキルを含み、ここで星印()は、キラル中心を持つ炭素を表し、ここで絶対配置は、RまたはSに帰属される)の構造を有するリファマイシン誘導体(ヒドロキノンおよび対応するキノン(C〜C)形態の両方)、またはその塩、水和物、もしくはそのプロドラッグ。上述のリファマイシン誘導体の調製も記載する。この化合物は、薬剤耐性微生物に対する活性を含む抗菌活性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年1月22日に出願された「4H−4−Oxoquinolizine Derivatives Having Improved Target selectivity」という名称の米国仮特許出願60/590190に基づく優先権を主張するものであり、その内容全体を、本発明の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0002】
本発明は、抗菌活性を有するリファマイシン由来の化合物、その組成物、調製方法、および感染症を治療または予防するための方法に関する。より詳細には、本発明のリファマイシン誘導体は、リファマイシン部分のC−3炭素がリンカーに共有結合しているリファマイシン部分を含み、今度はこのリンカーが、4H−4−オキソキノリジン部分に共有結合しているというものである。本発明は、この化合物の抗菌活性に寄与する、このリンカーのプロキラル炭素中心における好ましいキラリティーに関する。本発明は、リンカーのキラリティーに関する化学的方法およびこの化合物の合成も同様に包含する。本発明のリファマイシン誘導体は薬剤耐性微生物に対する活性を有しており、突然変異により耐性を獲得する頻度を低減させる。
【背景技術】
【0003】
リファマイシンは、強力な抗菌活性を有する天然物である。天然に存在するリファマイシンとしては、例えば、リファマイシンB、リファマイシンO、リファマイシンR、リファマイシンU、リファマイシンS、リファマイシンSV、およびリファマイシンYが挙げられる(Brufani,M.、Cerrini,S.、Fedeli,W.、Vaciago,A.、J.Mol.Biol.、1974年、第87巻、pp.409〜435)。天然に存在するリファマイシンは、薬物動態および経口投与時のバイオアベイラビリティーに劣り、病原性グラム陰性菌に対する活性が弱く、感染組織内への分布の程度が低いことから、その治療用途が限られている。化学修飾を行うことによってスペクトルおよび薬理学的特性が改善された多くの半合成リファマイシン誘導体が得られている。この半合成化合物の中から治療薬に発展したのがリファンピン、リファブチン、およびリファペチン(rifapetine)であり、現在は、結核症その他の微生物感染の治療に用いられている(Farr,B.M.著、Rifamycins、Principles and Practice of Infectious Diseasesに収録、Mandell,G.L.、Bennett,J.E.、Dolin,R.編、Churchhill Livingstone、Philadelphia、pp.348〜361)。
【0004】
しかしながら、現在使用されているリファンピン等のリファマイシン系抗菌薬には不利な点が付随し、その重要なものの1つに、耐性菌の出現が早いことがある。リファマイシン耐性微生物の出現頻度が非常に高いことの主な原因は、抗菌剤の標的となるRNAポリメラーゼが突然変異することにある。したがって、リファマイシンの不利な点に対処する新規な化合物が必要とされている。本発明の化合物は、リファマイシンおよびキノロンの抗菌性のファーマコフォアを安定な2価のリンカーを介して化学結合させることによって、リファマイシン系およびキノロン系の両方の抗生剤に対する薬剤耐性に対処するような化学設計がなされている。本発明の新規なリファマイシン化合物は、細菌のRNAポリメラーゼ、DNAギラーゼ、およびDNAトポイソメラーゼIVを標的とする多種多様な抗菌機序によって抗菌活性を呈し、したがって、耐性頻度を低下させ、薬剤耐性の出現を遅らせるかまたはなくすものである。
【0005】
PCT出願WO03/045319 A2を参照すると、リファマイシンと治療薬とを結合させることにより形成されるリファマイシン誘導体およびその治療薬の送達媒体としてのその使用が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この参考文献には、リファマイシン分子のC−3位に導入される薬剤が記載されていない。さらに、この参考文献は、キノロン系抗生剤またはそのファーマコフォア構造がリファマイシン分子のどこかの位置に結合していることを実施例によって実証できていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、一般式Iの化合物(ヒドロキノンまたは対応するキノン(C〜C)形態のいずれか)、またはその塩、水和物、もしくはそのプロドラッグ
【0008】

(式中、好ましいRは、水素またはアセチルを含み、好ましいRは、水素、メチル、または他の低級アルキルを含み、ここで星印()は、キラル中心を持つ炭素を表し、ここで絶対配置は、RまたはSに帰属される)に関する。
【0009】
これらの新規な化合物は抗菌性を示す。これらは、ヒトおよびヒト以外の哺乳類の感染症の管理および予防に使用することができる。特にこれらは、多剤耐性微生物株、例えばキノロンおよびリファマイシン耐性株にさえも顕著な抗菌活性を示す。また、この化合物を、相乗作用を示す知られている抗菌物質と組み合わせて投与することもでき、知られている抗菌物質としては、例えば、ベータ−ラクタム系のもの(セフトリアキソン等)、オキサゾリジノン系のもの(リネゾリド等)、抗菌ペプチド(バンコマイシン、ダルババンシン、ダプトマイシンおよびポリマイシン(polymycin)B等)が挙げられる。
【0010】
一般式(I)の化合物は、星印()で印を付けたキラル中心を有し、その立体配置は(R)または(S)のいずれであってもよい。本発明はまた、一般式(I)の化合物の(R/S)形態の両方を調製するための新規な化学的方法を開示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一態様は、一般式Iの化合物(ヒドロキノンおよび対応するキノン(C〜C)形態の両方)、またはその塩、水和物、もしくはそのプロドラッグ
【0012】

(式中、
は、水素またはアセチルを含み、
は、水素、メチル、または2〜10個の炭素を有する他の低級アルキルを含み、
ここで星印()は、キラル中心を持つ炭素を表し、ここで絶対配置はRまたはSに帰属される)に関する。
【0013】
これらの化合物は抗菌性を示す新規なものである。これらは、ヒトおよびヒト以外の両方の哺乳類の感染症の管理および予防に使用することができる。特にこれらは、多剤耐性微生物株、特にリファンピン耐性およびキノロン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)にさえも顕著な抗菌活性を示す。また、この化合物は、相乗作用を示す知られている抗菌物質と組み合わせて投与することもでき、その抗菌物質としては、例えば、ベータ−ラクタム系のもの(セフォトリゾール(cephotrizole)等)、オキサゾリジノン系のもの(リナゾリド(Linazolid)等)、抗菌ペプチド(バンコマイシン、ダルババンシン、ダプトマイシンおよびポリマイシンB等)が挙げられる。
【0014】
本発明の1つの目的は、式Iの化合物、その容易に加水分解可能なプロドラッグ形態(例えばエステル)、およびその医薬的に許容可能な塩、ならびに治療上有効な物質としての使用;場合によっては他の分類の抗生剤と組み合わせたこれらの物質をベースとする医薬品およびその製造;これらの物質の医薬品としての使用および抗菌活性を有する医薬品の製造のための使用;ならびに式Iの化合物ならびにその医薬的に許容可能な塩および中間体の調製を提供することにある。
【0015】
「低級アルキル」という用語は、対象とする基の炭素原子の数が10以下であることを意味する。好ましい低級アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびその異性体、ならびにn−ペンチルおよびその異性体が挙げられる。シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルも同様に低級アルキルとして例示される。本発明のアルキル基は、場合によっては、1〜3個の置換基で置換されていてもよい。
【0016】
本明細書において使用される「水和物」という用語は、水和されているかまたは水和反応において水と反応した分子を指す。水和反応において、水分子は化合物と反応するが、H−OH結合は開裂しない。この水は通常、水和した化合物から熱によって分離して、無水の化合物となる。
【0017】
本明細書において使用される「プロドラッグ」という用語は、毒性、炎症、アレルギー反応等が許容可能なものであり、妥当な利益対危険比に見合っており、かつ目的の用途に有効な、ヒトおよび動物に使用するのに好適な本発明の化合物のプロドラッグを指す。本明細書において使用される「プロドラッグ」という用語は、生体内において、上に定義した式(I)の活性化合物に変換されることができる化合物を表す。
【0018】
本明細書において使用される「塩」という用語は、毒性、炎症、アレルギー反応等が許容可能なものであり、かつ妥当な利益対危険比に見合う、ヒトおよび動物に使用するのに好適な塩を指す。医薬的に許容可能な塩は当該技術分野において知られている。この塩は、本発明の化合物を単離および精製する最終工程の際にin situで調製しても、あるいは本発明の化合物を酸または塩基と反応させることによって別個に調製してもよい。塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸等の無機酸または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸等の有機酸を用いて形成されたアミノ基の塩が挙げられる。塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等の無機塩基を用いて形成された酸基の塩が挙げられる。他の金属塩としては、リチウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムが挙げられる。さらなる医薬的に許容可能な塩としては、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、低級アルキルスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオン等の対イオンとアンモニウム陽イオンとで形成されたものが挙げられる。
【0019】
式(I)の化合物の好ましい群には、RがHまたはアセチルであり、RがHまたはメチルであるものが含まれる。最も好ましい化合物は、ヒドロキノン形態にあって、RがHまたはアセチルであり、RがHまたはメチルであり、星印()が(R)型キラル配置を表すものである。
【0020】
具体的には、本発明の一態様は、以下の化合物:(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチルエニル]−リファマイシンSV、(S)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチルエニル]−リファマイシンSV、(R/S)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチルエニル]−リファマイシンSV、(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチルエニル]−リファマイシンS、(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチルエニル]−25−デアセチル−リファマイシンSV、または(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−アミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチルエニル]−リファマイシンSVに関するものである。
【0021】
式(I)の化合物は、以下の経路Aに示す方法に従い調製することができ、ここで、R、R、および星印()は、本明細書全体を通して上記と同義である。
【0022】

【0023】
この方法は、式(AF2)のヒドラジンを、水、エタノール、メタノール、THF、アセトン、酢酸、またはその混合物等の溶媒中において、0〜50℃の温度で、式(3FRF)の3−ホルミルリファマイシンにカップリングさせることを含む。任意的な添加剤としては、NaOH、アスコルビン酸またはその塩、および酢酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。式(A2)のヒドラジンは、その遊離塩基形態であってもその酸(HCl等)塩であってもよい。このヒドラジンは、アルカリ性溶媒(1NのNaOH水溶液等)中において、HNOSOH等のアミノ化剤を用いて、式(AF1)のジアミノ酸からin situで調製することができる。
【0024】
式(AF2)のヒドラジンおよびその前駆体である式(AF1)のジアミノ酸ならびにこれらのエナンチオマーはいずれも新規なものである。式(AF1)のジアミノ酸の調製を経路Bに例示する(Rは、Hまたは低級アルキルである)。
【0025】

【0026】
式(AF1)のジアミノ酸は、選択的に保護された式(BF1)のトリアミンから調製することができる。トリアミンと知られている式(BF2)の4H−4−オキソキノリジン(これは、知られている方法に従い調製することができる(Li,Qunら、Hetereocycles、1999年、第51巻、pp.1345〜1353参照))とをアセトニトリル等の溶媒中においてNaHCO等の塩基の存在下に20〜100℃の温度で反応させることによって、式(BF3)の化合物が生成する。必要に応じてエタノール等のアルコール性溶媒中においてLiOH等の塩基による加水分解を達成することにより、式(BF4)の化合物を生成させることができる。保護基は、トリフルオロ酢酸等の酸を用いて都合よく取り除くことができ、それによって式(AF1)の化合物が生成する。
【0027】
保護された式(BF1)のトリアミンおよび式(BF3)、(BF4)の化合物ならびにこれらのエナンチオマーも同様に新規なものである。保護された式(BF1)のトリアミンの調製を経路Cに例示する。
【0028】

【0029】
式(BF1)のトリアミンの調製は、市販の1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンを反応させることによって達成することができる。1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンのR型およびS型エナンチオマーはいずれも市販されている。式(BF1)のR型およびS型エナンチオマーは、1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンのS型またはR型エナンチオマーのいずれかを出発物質として調製することができる。シアノ置換反応において立体化学の反転が起こり、この段階でトリアミンの絶対配置が定まる。したがって、1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンを、トルエンや酢酸エチル等の溶媒中において、トリエチルアミン等の塩基の存在下に、塩化メシルや無水メシル酸(mesyl anhydride)等のメシル化剤(mesylating agent)を用いて、そのメシレートに変換することができる。それに続くメシレートのシアノ置換は、アセトニトリルやDMSO等の溶媒中において、テトラブチルアンモニウムシアニド等の相間移動触媒の存在下に、テトラブチルアンモニウムシアニド、トリエチルベンジルアンモニウムシアニド、無機シアン化物(シアン化ナトリウム等)等のシアン化物を用いて、約20℃〜約70℃の温度で実施することができる。シクロプロピルアミンを得るためのシクロプロパン化反応は、チタンテトライソプロポキシドの存在下に臭化エチルマグネシウムを用いた後、BFエーテル錯体等のルイス酸で処理することによって達成することができる。この反応は、THF、エーテル、ジオキサン、またはこれらの混合物等の溶媒中において、約−78℃〜室温の範囲の温度で実施することができる。このシクロプロピルアミンの生成過程はエナンチオ選択的であり、シクロプロピルアミンのエナンチオ選択性は、80%eeから最大95%ee超の間で変化するであろう。THF、ジクロロメタン、酢酸、またはこれらの混合物等の溶媒中において、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム等の還元ヒドリドを用い、シクロプロピルアミンとN−BOC 4−ピペリドンとを還元的アミノ化に付した後、アルデヒドを添加することによって、式(CF1)の化合物が生成する。水素化脱ベンジル反応は、エタノール、メタノール、酢酸、またはこれらの混合物等の溶媒中において、炭素上10%パラジウムや20%水酸化パラジウム等のパラジウム触媒を用いて達成することができ、水素圧は60〜100PSIの雰囲気とすることができる。アミンはいずれも、HCl、酢酸、MeSOH等の酸を添加することによってその酸塩に変換することができる。
【0030】
シクロプロピルアミンおよび式(CF1)の化合物ならびにこれらのエナンチオマーならびにこれらに対応する塩も同様に新規なものである。
【0031】
塩基性部分(これらに限定されるものではないが、アミン等)を含んでいてもよい式Iの化合物は、様々な有機および無機酸と塩を形成していてもよい。酸付加塩としては、例えば、酢酸塩(酢酸またはトリハロ酢酸、例えばトリフルオロ酢酸を用いて形成されたものなど)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩(塩酸を用いて形成されたもの)、臭化水素酸塩(臭化水素を用いて形成されたもの)、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩(マレイン酸を用いて形成されたもの)、メタンスルホン酸塩(メタンスルホン酸を用いて形成されたもの)、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩(硫酸を用いて形成されたものなど)、スルホン酸塩(本明細書において述べられているものなど)、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシレート等のトルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩等が挙げられる。
【0032】
酸性部分(これらに限定されるものではないが、カルボン酸等)を含んでいてもよい式Iの化合物は、様々な有機または無機塩基と塩を形成していてもよい。塩基性塩としては、例えば、アンモニウム塩、ナトリウム、リチウム、およびカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、ベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラバミン(N,N−ビス(デヒドロアビエチル)エチレンジアミンを用いて形成されたもの)、N−メチル−D−グルカミン、N−メチル−D−グルカミド、t−ブチルアミン等の有機塩基(例えば有機アミン)との塩、ならびにアルギニンやリジン等のアミノ酸との塩が挙げられる。塩基性含窒素基を、低級アルキルハライド(例えば、塩化、臭化、およびヨウ化メチル、エチル、プロピル、およびブチル)、硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミル)、長鎖ハライド(例えば、塩化、臭化、およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリル)、アリールアルキルハライド(例えば、臭化ベンジルおよびフェネチル)等の試剤を用いて四級化してもよい。
【0033】
本発明の化合物の個々の立体異性体は、例えば、実質的に他の異性体を含まなくてもよいし、あるいは、例えばラセミ体として、他のすべての立体異性体または選択された他の立体異性体と混合されていてもよい。本発明のキラル中心は、IUPAC 1974勧告(Recommendations)に定義されているSまたはR配置をとることができる。
【0034】
さらに、式(I)の化合物は、プロドラッグ形態であってもよい。生体内で変換されることにより生理活性物質(すなわち式Iの化合物)となるであろうあらゆる化合物がプロドラッグである。例えば、式Iのプロドラッグ化合物は、カルボン酸エステル部分であってもよい。カルボン酸エステルは、カルボン酸をエステル化することによって好都合に形成される場合も、別個の調製において生成する場合もある。
【0035】
式Iの化合物は、リファマイシン誘導体であり、ヒドロキノン形態およびそのC−1およびC−4位がキノン形態にあるものの両方がある。式Iには、説明目的でC−1、C−3、C−4、およびC−25位が標識されている。式Iの化合物のヒドロキノンおよびキノン形態は酸化状態が異なっており、アスコルビン酸や過マンガン酸カリウム(KMnO)等の試剤を作用させることによる酸化または還元反応を利用することによって相互変換が可能である。
【0036】
生理活性:
既に述べたように、式Iの化合物またはその塩は、リファンピンおよびキノロン耐性株に対する抗菌性および活性を有する。これらは、多くの病原微生物、例えば、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)、インフルエンザ菌(H.influenzae)等に対し活性を示した。代表的な式(I)の化合物の抗菌活性を以下のように測定した:NCCLSガイドライン(米国臨床検査標準委員会(National Committee for Clinical Laboratory Standards)、2000年)によるマイクロブロス希釈法(microbroth dilution method)により、最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。成長培養はすべて37℃で実施した。以下の細菌用培地で菌液を試験した:黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)を陽イオン調整ミュラーヒントンブロス(Cation−Adjusted Mueller−Hinton Broth)中、肺炎連鎖球菌を、5%CO雰囲気中においてカタラーゼ1mg/mlを補充したTHYブロス中、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)をTHYブロス中、腸球菌(E.faecalis)をBHIブロス中、インフルエンザ菌を、1mg/mlのNADを5ml当たり0.75μlおよび1mg/mlのヘマチンを5ml当たり150μl補充したBHIブロス中。本発明の実施例の抗菌活性を表1に示す。
【0037】
黄色ブドウ球菌ATCC29213、表皮ブドウ球菌ATCC12228、肺炎連鎖球菌ATCC6303、化膿レンサ球菌ATCC19615、および腸球菌ATCC29212は、リファンピン感受性グラム陽性菌株である。リファンピンはこれらの微生物に対し、MICが0.008〜1μg/mlという極めて優れた活性を示す。本発明の化合物は、これらの菌株に対し同様の活性を示す。インフルエンザ菌ATCC10211はグラム陰性細菌である。これらの微生物に対するリファンピンの活性は本質的により低く、MICは0.24〜16μg/mlである。本発明の化合物は、これらの菌株に対しても同様の活性を示す。最も重要なことは、本発明の化合物がリファンピン耐性微生物に対しても極めて優れた活性を示すということである。黄色ブドウ球菌ATCC29213RpoBD417Yは、RNAポリメラーゼが突然変異するため、リファンピンに対するMICが256μg/mlを超えるリファンピン高耐性菌株である。本発明の化合物はリファンピン高耐性菌株に非常に有効であり、MICが0.5μg/ml程度である。さらに、本発明の化合物は、キノロン耐性菌株である黄色ブドウ球菌MT1222に対してもMICが0.06〜0.24μg/mlという極めて優れた活性を示した(これに対し、シプロフロキサシンは8μg/ml)。
【0038】
式(I)の化合物の抗菌活性はリンカーのキラリティーに影響される。驚くべきことに、(R)型絶対配置をとる(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンSV(実施例1)は、星印()で印を付けたリンカーのプロキラル炭素上で(S)型絶対配置をとる(S)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンSV(実施例2)よりも活性が高い。
【0039】
【表1】

【0040】
本発明の化合物は、医薬品として、例えば、単位投与形態の経腸または非経口投与用医薬品製剤として使用することができる。例えば、式Iの化合物を、例えば、錠剤、有核錠剤、糖衣錠剤、硬または軟ゼラチンカプセル剤、溶液剤、エマルジョン剤、または懸濁剤の単位投与形態で経口的に、例えば坐剤形態で直腸から、または例えば注射液剤形態で非経口的に投与することができる。
【0041】
医薬品製剤の製造は、本発明による物質を、場合によっては他の治療上価値のある物質と組み合わせて、非毒性かつ不活性な治療上適合性のある好適な固体または液体担体材料および所望により通常の医薬品助剤を一緒に用いるかまたは用いずに投与形態とすることによる、当業者によく知られているであろう方法で実施することができる。通常の防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香料、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、マスキング剤、およびアスコルビン酸やホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム等の酸化防止剤が医薬品助剤として考慮される。無機および有機担体材料はいずれもこの種の担体材料として好適である。したがって、例えば、乳糖、コーンスターチまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩を、錠剤、有核錠剤、糖衣錠剤、および硬ゼラチンカプセルの担体材料として使用することができる。軟ゼラチンカプセルに好適な担体は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、および半固体状および液状ポリオールである(しかしながら、軟ゼラチンカプセルの場合は、有効成分の性質によっては担体が不要である)。溶液剤およびシロップ剤の製造に好適な担体材料は、例えば、水、ポリオール、ショ糖、転化糖、およびブドウ糖である。注射液剤に好適な担体材料は、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、および植物油である。坐剤に好適な担体材料は、例えば、天然または硬化油、ワックス、油脂、および半液状または液体状ポリオールである。
【0042】
非経口投与の場合、好ましくは、式Iの化合物およびその塩は、水や等張食塩水等の通常の担体で希釈される凍結乾燥物または乾燥粉末として提供される。通常の防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、着色剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、マスキング剤、およびアスコルビン酸やホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム等の酸化防止剤を医薬品助剤として考慮することができる。
【0043】
したがって、例えば、式Iの化合物をエタノールで湿潤させ、これをナトリウム塩に変換する量の1Mの炭酸ナトリウム溶液またはNaOH水溶液と混合することによって、無菌の凍結乾燥物を調製することができる。次いで、この溶液にホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムを加え、凍結および凍結乾燥させることにより、医薬品が得られる。
【0044】
本発明の化合物を局所または経皮投与するための剤形としては、軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、溶液剤、スプレー剤、吸入剤、またはパッチ剤が挙げられる。活性成分を、医薬的に許容可能な担体と、必要な任意の防腐剤または必要とされ得る緩衝剤と一緒に、無菌状態で混合する。眼用製剤、点耳剤、眼軟膏剤、散剤、および溶液剤も同様に、本発明の範囲に包含されるものと考えられる。軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、およびゲル剤は、本発明の活性化合物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、および酸化亜鉛、またはこれらの混合物等の賦形剤を含有していてもよい。
【0045】
散剤およびスプレー剤は、本発明の化合物に加えて、乳糖、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物等の賦形剤を含有していてもよい。スプレー剤は、塩化フッ化炭化水素等の慣用の噴射剤をさらに含有していてもよい。
【0046】
経皮パッチ剤は、化合物を体内へ制御送達させるというさらなる利点を有する。このような剤形は、化合物を適切な媒体に溶解させるかまたは分注することによって作製することができる。化合物の皮膚透過を高めるために吸収促進剤を使用することもできる。速度制御膜を設けるかまたは化合物を高分子基材もしくはゲルに分散させるかのいずれかによって速度を制御することができる。
【0047】
本発明の治療方法によれば、患者や患畜等に対し治療上有効な量の本発明の化合物を所望の治療効果を達成するのに必要な量および時間投与することによって、患者や患畜の細菌感染または感染症が治療または予防される。本発明の化合物の「治療上有効な量」という用語は、任意の治療に適用可能な妥当な利益対危険比で細菌感染を治療するのに十分な化合物の量を意味する。しかしながら、本発明の化合物および組成物の1日の総使用量は、信頼できる医学的判断の範囲内で担当医によって決定されるであろうことを理解されたい。任意の特定の患者に対する具体的な治療上有効な用量は、治療すべき疾患およびその疾患の重症度;使用される具体的な化合物の活性;使用される具体的な組成;患者の年齢、体重、総体的な健康状態、性別、食事;使用される具体的な化合物の投与時間、投与経路、および排出速度;治療期間;使用される具体的な化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬剤;および医療分野においてよく知られている類似の要素等の様々な要素に依存するであろう。
【0048】
式Iの化合物は、3種の細菌酵素を阻害する能力が他とは異なっており、したがって、高い抗菌活性を示し、それぞれ、他の分類の知られている抗菌剤と相乗効果を示すであろう。その例として、ベータ−ラクタム系(セフトリアキソン等)、オキサゾリジノン系(リネゾリド等)、抗菌ペプチド(バンコマイシン、ダルババンシン、ダプトマイシンおよびポリマイシンB等)が挙げられる。これらは、大腸菌(E.coli)や緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)等のグラム陰性細菌によって引き起こされる感染の治療において、コリスチン等の膜作用性(membrance−active)ポリカチオン性ペプチドであるポリマイシンと相乗作用するであろう。人類医薬において1種またはそれ以上の本発明による式Iの化合物とこのような組合せをするには、経口、経腸、および非経口投与が考慮される。式Iの化合物対知られている抗生剤の混合比は広範囲に変化させてもよく、それぞれの具体的な場合に応じた個々の要件に合わせることができる。
【0049】
ヒトまたは動物に単回または分割投与される本発明の化合物の1日の総投与量は、例えば、0.1〜100mg/kg体重、好ましくは、0.25〜25mg/kg体重とすることができる。平均的な成人の場合は、1日の投与量を約10mg〜約2gとして本化合物を投与することができる。1回分の投与組成物には、そのような量か、あるいは、合計して1日量になるような約数が含まれていてもよい。一般に、本発明に従う治療計画は、このような治療をする感染患者に本発明の化合物を単回または複数回の投与で1日当たり約10mg〜約2000mg投与することを含む。本発明の化合物は、経口投与、経腸投与、非経口投与、大槽内投与、経膣投与、腹腔内投与、局所投与、口腔投与するかまたは経口噴霧剤もしくは点鼻剤として投与することができる。
【0050】
略語
本明細書において使用される略語の意味は当業者に知られているものである。具体的には、Acはアセチル基を表し、AOCはアリルオキシカルボニル基を表し、BOCはt−ブトキシカルボニル基を表し、Bnはベンジル基を表し、Buはブチル基を表し、Bzはベンゾイル基を表し、Cbzはベンジルオキシカルボニル基を表し、CDIはカルボニルジイミダゾールを表し、DCMはジクロロメタンを表し、DMAPは4−N,N−ジメチルアミノピリジンを表し、DMEは1,2−ジメトキシエタンを表し、DMFはN,N−ジメチルホルムアミドを表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表し、Etはエチル基を表し、EtOAcは酢酸エチルを表し、Meはメチル基を表し、MEMは2−メトキシエトキシメチル基を表し、MOMはメトキシメチル基を表し、NMPはN−メチルピロリジノンを表し、Phはフェニル基を表し、Prはプロピル基を表し、TEAはトリエチルアミンを表し、TFAはトリフルオロ酢酸を表し、THFはテトラヒドロフランを表し、TMSはトリメチルシリル基であり、Tsはp−トルエンスルホニル基を表す。
【0051】
具体的な組成物
本発明の化合物は、本発明を限定することを意図しない、いくつかの本発明の実施形態を代表する、以下の実施例を参照することによって、一層理解されるであろう。
【0052】
これらの実施例において使用される出発物質はいずれも、市販品を購入するかまたは公開されている手順に従い調製したもののいずれかである。感湿性および/または酸素感受性物質が関与する操作は窒素雰囲気中で実施される。フラッシュクロマトグラフィーは、順相吸着剤としてシリカゲル60を用いるかまたは逆相吸着剤としてC18シリカゲルを用いて実施される。薄層クロマトグラフィー(「TLC」)および分取薄層クロマトグラフィー(「PTLC」)は、E.Merckから購入した予備コーティングしたプレートを用いて実施し、紫外光に続いて適切な染色試薬を用いてスポットを可視化する。核磁気共鳴(「NMR」)スペクトルは、Varian 400MHz磁気共鳴分光計で記録する。HNMR化学シフトはTMSから低磁場側のppm(δ)とし、内部標準として残留溶媒(CHCl=δ7.27、CHOH=δ3.31)のシグナルを用いる。HNMRの情報を以下の構成で一覧にする:プロトン数、多重性(s、シングレット;d、ダブレット;t、トリプレット;q、カルテット;m、マルチプレット;td、トリプルダブレット;dt、ダブルトリプレット)、カップリング定数(J)(ヘルツ)。接頭辞appは、シグナルの本来の多重度が分解されていない場合に付記されることがあり、接頭辞brはシグナルが幅広であることを示している。エレクトロスプレーイオン化質量スペクトルをフィネガン(Finnegan)LCQアドバンテージ・スペクトロメーター(advantage spectrometer)で記録する。
【実施例1】
【0053】
(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンSV
【0054】

ステップ1.(S)−メタンスルホン酸1−ベンジル−ピロリジン−3−イルエステル:
【0055】

(S)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジン(20.2g、114mmol)をトルエン(200ml)に溶解した。この溶液を攪拌しながら、トリエチルアミン(20ml、142mmol)に続いて、塩化メタンスルホニル(10.5ml、136mmol)を0℃で40分間かけて加えた。結果として得られたスラリーを0℃で2時間攪拌した後、7%炭酸水素ナトリウム(200ml)を反応混合物に加えた。有機層を分離し、水層をトルエン(3×100ml)で抽出した。有機層を合一し、飽和炭酸水素ナトリウム(3×200ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下に濃縮して、(S)−メタンスルホン酸−1−ベンジル−ピロリジン−3−イルエステルを黄色油状物(28g、96%)として得た。この物質を精製することなく、そのまま次のステップに使用した。
【0056】

【0057】
ステップ2.(R)−1−ベンジル−3−シアノピロリジン:
【0058】

(S)−メタンスルホン酸1−ベンジル−ピロリジン−3−イルエステル(28g、110mmol)を無水アセトニトリル(60ml)に溶解し、固体のテトラブチルアンモニウムシアニド(59g、220mmol)を室温で一度に加えた。結果として得られた混合物を65℃で16時間加熱した後、室温に冷却した。飽和NaHCO溶液(100ml)を加えた。有機層を分離し、水層をトルエン(3×100ml)で抽出した。有機層を合一して水(3×100ml)、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下に濃縮して、(R)−1−ベンジル−3−シアノピロリジンを褐色油状物(21g)として得た。これを150℃/5mmHgで減圧蒸留することにより無色の液体(19g、85%)を得た。
【0059】

【0060】
ステップ3.(R)−1−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イル)−シクロプロピルアミン:
【0061】

(R)−1−ベンジル−3−シアノピロリジン(10g、53.4mmol)の無水エーテル(200ml)溶液にTi(OiPr)(17.2ml、58.8mmol)を加え、結果として得られた溶液を−78℃に冷却した。EtMgBr(3.0M、EtO中、35ml、105mmol、アルドリッチ(Aldrich))を40分間かけて−78℃で滴下した。結果として得られた黄色懸濁液に無水THF(50ml)を加えて攪拌しやすくし、この溶液を−78℃で20分間攪拌した。反応混合物の温度を除々に室温まで上昇させた後、BF・EtO(13.4ml、107mmol)を加え、結果として得られた暗褐色の懸濁液を室温で2時間攪拌した。次いで、1NのHCl(100ml)およびEtO(200ml)の両方を反応混合物に導入し、有機相および水相の両方が透明になるまで20分間攪拌を継続した。これを20%NaOH水溶液(100ml)を用いて塩基性にした後、30分間攪拌した。有機相を分離し、水相をEtO(2×100ml)で抽出した。有機相を合一してNaSOで乾燥し、減圧下に濃縮して、(R)−1−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イル)−シクロプロピルアミンを褐色油状物(10.5g、90%)として得た。これを減圧蒸留して、無色の液体(9g、77%)を得た。この生成物の純度は次のステップに使用するのに十分である。特性評価を行うため、NHOH/MeOH/CHCl(1/60/340)を溶媒として用いて、少量の試料をPTLCで精製した。
【0062】

【0063】
ステップ4.(R)−4−{[1−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イル)−シクロプロピル]−メチル−アミノ}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル:
【0064】

(R)−1−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イル)−シクロプロピルアミン(18.6g、87mmol)および4−オキソ−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(22.7g、113mmol)のTHF(500ml)溶液に氷酢酸(31ml)を加えた。この溶液を室温で1時間攪拌した後、NaBH(OAc)(65g、306mmol)を加えた。結果として得られた懸濁液を室温で一夜攪拌した後、ホルムアルデヒドの37%水溶液(30ml、262mmol)を加えた。反応混合物を3時間攪拌し、完了後に、20%NaOH水溶液(300ml)を0℃で加えた。この混合物を2時間攪拌し、層を分離した。水層をEtOAc(3×300ml)で抽出した。有機相を合一し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離、1%〜10%のジクロロメタン中メタノール)で精製して、標題化合物を淡黄色油状物(27g)として得た。
【0065】

生成物の光学純度をキラルセル(Chiral−Cel)ODカラム(0.46cm×25cm、ダイセル化学工業株式会社(Daicel Chemical industries,Ltd)、カラムカタログ番号OD00CE−E1031)を用いて、0.1%ジエチルアミンを含むアセトニトリルを移動相として(流速1ml/min、所期の保持時間5.23分、異性体5.93分)分析した結果、95%eeであった。
【0066】
ステップ5.(R)−4−[メチル−(1−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル)−アミノ]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル:
【0067】

水素化フラスコ内において、(R)−4−{[1−(1−ベンジル−ピロリジン−3−イル)−シクロプロピル]−メチル−アミノ}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(14g)を室温で氷酢酸150mlに加え、脱気した後、窒素を充填した。ここに30%Pd/C(5g)を加え、フラスコをパール(Parr)振とう装置に装着し、窒素を吸引して水素を充填し、混合物をパール内において60psiの水素雰囲気中で18時間振とうした。反応混合物をトルエン(300ml)で希釈し、セライトパッドで濾過した。濾液を減圧下に濃縮し、残渣を冷30%NaOHを用いて0℃で分解し、生成物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル溶液を合一し、炭50g(ダルコ(Darco)G−60)を装入して2時間攪拌した後、濾過して濃縮し、淡黄色の油状物を得た。これを減圧蒸留に付すと、透明な油状物(9.6g)を得ることができる。
【0068】

【0069】
ステップ6.8−(3−{1−[(1−tert−ブトキシカルボニル−ピペリジン−4−イル)−メチル−アミノ]−シクロプロピル}−ピロリジン−1−イル)−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸エチルエステル:
【0070】

丸底フラスコ内で、8−クロロ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジノン−3−カルボン酸エチル(8.4g、25mmol)および4−[メチル−(1−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル)−アミノ]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(10.6g、25mmol)のアセトニトリル(150ml)溶液を炭酸水素ナトリウム(8g)の存在下に攪拌しながら環流下で5時間加熱した。溶媒を減圧下に除去し、残渣を1NのNaOHおよび酢酸エチルで分液し、よく振とうした。有機層を分離し、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(75%のヘキサン中酢酸エチル、次いで、10%のジクロロメタン中MeOH)で精製し、黄色固体(15g、99%)を得た。
【0071】

【0072】
ステップ7.8−(3−{1−[(1−tert−ブトキシカルボニル−ピペリジン−4−イル)−メチル−アミノ]−シクロプロピル}−ピロリジン−1−イル)−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸:
【0073】

丸底フラスコ内において、8−(3−{1−[(1−tert−ブトキシカルボニル−ピペリジン−4−イル)−メチル−アミノ]−シクロプロピル}−ピロリジン−1−イル)−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸エチルエステル(15g、24mmol)のエタノール(200ml)溶液に、LiOH(10g、238mmol)の水(100ml)溶液を加えた。この溶液を60℃で1時間加熱した。結果として得られた溶液をジクロロメタン(400ml)および飽和NHCl水溶液(200ml)で分液し、よく振とうした。有機層を分離し、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に濃縮して、黄色固体(14g)を得た。これを、さらなる精製を行うことなく使用した。
【0074】
ステップ8.1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−8−{3−[1−(メチル−ピペリジン−4−イル−アミノ)−シクロプロピル]−ピロリジン−1−イル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸:
【0075】

8−(3−{1−[(1−tert−ブトキシカルボニル−ピペリジン−4−イル)−メチル−アミノ]−シクロプロピル}−ピロリジン−1−イル)−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸(14g)のジクロロエタン(100ml)溶液を攪拌しながら、トリフルオロ酢酸(30ml)を0℃でゆっくりと加えた。結果として得られた溶液を0℃から室温で1時間攪拌した。溶媒を減圧下に除去し、黄色油状物を得た。これを、20%のジクロロメタン中IPAに溶解し、この溶液を飽和NaHCO水溶液で中和し、透明な2相を得、この2相をよく振とうした。有機層を分離し、水相を20%IPA/CHClで抽出した。有機抽出物を合一し、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に濃縮して、黄色固体(10g)を得た。この固体をメタノール/水から結晶化し、結晶性固体(8g)を得た。
【0076】

【0077】
ステップ9.(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンSV:
1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−8−{3−[1−(メチル−ピペリジン−4−イル−アミノ)−シクロプロピル]−ピロリジン−1−イル}−4−オキソ−4H−キノリジン−3−カルボン酸(9.2g、19mmol)を1NのNaOH溶液(120ml)に室温で溶解した。これをアルゴン雰囲気中で0℃に冷却した。この均質な溶液に、調製直後のヒドロキシルアミン−O−硫酸(HN−OSOH、2g、18.5mmol)のHO(10ml)溶液を0℃で滴下した。結果として得られた溶液を同温度で1時間攪拌し、過剰の酢酸(22ml)を加えてpH5に酸性化した後、アスコルビン酸(1g)を加えた。次いで、この溶液をメタノール(280ml)で希釈した。結果として得られた溶液を室温で攪拌しながら、均質な3−ホルミルリファマイシン(8.2g、11.3mmolのメタノール/THF(3:1)(40ml)溶液を30分間でゆっくりと加えた。均質な反応混合物から生成物がゆっくりと析出する。添加終了後、反応混合物を攪拌しながら30分間室温に維持し、0℃で1時間冷却し、析出物を回収し、冷メタノール(3×20ml)で洗浄し、9.5gを得た。回収した析出物をジクロロメタン(100ml)に溶解し、この溶液を0.5%アスコルビン酸の存在下に5%クエン酸溶液(100ml)と一緒に2時間攪拌し、2相を振とうした。有機相を分離し、同じ水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した濾液にその半量のエタノールを加えて減圧下に濃縮し、橙色固体(8.5g)を得た。橙色固体1gを以下に示すように結晶化させた:固体(1グラム)をアセトンおよび水(95:5)5mlに溶解し、この溶液を攪拌しながら均質になるまで油浴上で55〜60℃に加熱した。この溶液を攪拌(200rpm)しながら室温までゆっくりと冷却した。析出物の形成が開始したら混合物を室温で2時間攪拌した後、氷浴中で0℃で2時間冷却し、冷溶媒を用いて析出物をブフナー漏斗で集めた。この固まりを押しつけながら乾燥(pressed−dry)させ、冷アセトン/水(95:5)5mlで洗浄し、再び押しつけながら乾燥させた。この固まりの重量が一定になるまで真空乾燥して(830mgが得られた)、標題化合物を得た。
【0078】

ESI m/z 1173.6(M−MeO、最大)、1205.6(M+H、親);HPLC分析:保持時間:17.8分、均一濃度溶離:47%B、30分(分析カラム:アジレント(Agilent)、ゾルバックス(Zorbax)SB−aq、5mc−m、4.6×150mm;溶媒A:0.1%TFAを含むHPLC用水;溶媒B:0.1%TFAを含むHPLC用アセトニトリル)
【実施例2】
【0079】
(S)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンSV
【0080】

実施例1のステップ1において、(S)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンに替えて(R)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンを使用したことを除いて、(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンSVの調製と同じ経路に従い標題化合物を調製した。HPLC分析:保持時間:20.5分、均一濃度溶離:47%B、30分(分析カラム:アジレント、ゾルバックスSB−aq、5mc−m、4.6×150mm;溶媒A:0.1%TFAを含むHPLC用水;溶媒B:0.1%TFAを含むHPLC用アセトニトリル)
【実施例3】
【0081】
(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンS:
【0082】

(R)−3−[(4−{1−{1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−9−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンSV(250mg、0.207mmol)の酢酸エチル(50ml)溶液に、ヘキサシアノ鉄酸(III)カリウム(500mg、1.52mmol)をpH7.4の水性リン酸塩緩衝液(50ml)に溶解した溶液を加えた。この混合物を23℃で1時間激しく攪拌した後、さらにヘキサシアノ鉄酸(III)カリウム(500mg、1.52mmol)を加え、攪拌を1時間継続した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、生成物を暗色油状物として得た。この油状物をジクロロメタンに溶解し、ヘキサンで希釈し、ゆっくりと濃縮して、生成物を暗色微粉末177mg(71%)として得た。ESI MS m/z 1171(M−MeO、最大)、1203.3(M+H);HPLC分析:保持時間:14.45分、均一濃度溶離:47%B、30分(分析カラム:アジレント、ゾルバックスSB−aq、5μm、4.6×150mm;溶媒A:0.1%TFAを含むHPLC用水:溶媒B:0.1%TFAを含むHPLC用アセトニトリル)
【0083】

【実施例4】
【0084】
(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−25−デアセチル−リファマイシンSV
【0085】

上述したように調製された(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンS(267mg、0.22mmol)をMeOH(5.0ml)およびTHF(5.0ml)に溶解した溶液に、LiOH・HO(37.0mg、0.88ml)のHO(2.0ml)溶液を0℃で加えた。結果として得られた溶液を同温度で約5時間攪拌し、CHClで希釈し、5%AcOH/HO溶液で2回洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を除去し、残渣を10%MeOH/CHClを用いて分取薄層クロマトグラフィーで精製し、暗褐色固体を得た。この固体をMeOH(10ml)に加えて、アスコルビン酸(100mg、0.57mmol)のHO(2.0ml)溶液を加えた。この混合物を室温で2時間攪拌し、CHClで希釈し、HOで3回洗浄し、NaSOで乾燥した。ソベント(sovent)を除去して、標題化合物を橙色固体(136mg、収率53%)として得た。
【0086】

HPLC分析:保持時間:9.3分、均一濃度溶離:47%B、30分(分析カラム:アジレント、ゾルバックスSB−aq、5μm、4.6×150mm;溶媒A:0.1%TFAを含むHPLC水;溶媒B:0.1%TFAを含むHPLCアセトニトリル)
【実施例5】
【0087】
(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−アミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンSV:
【0088】

実施例1の調製のステップ4においてホルムアルデヒドを添加しなかったことを除いて、(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンSV(実施例1)の調製と同じ経路に従い、標題化合物を調製した。
【0089】

【実施例6】
【0090】
(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンSV,二ナトリウム(医薬品)
(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンSV(115mg、0.095mmol)を丸底フラスコに装入し、ここにエタノール(0.2ml)を室温で加えて十分にかき混ぜ、1Mの炭酸ナトリウム溶液0.22mlを加え、混合物を5分間攪拌し、水4.5mlで希釈し、30分間または均質になるまで攪拌し、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(HOCHSONa・2HO)(1.2mg)を加え、5分間攪拌し、均質な溶液を濾過した。窒素中で濾液をドライアイス−アセトン浴に30分間浸けた。凍結した固体を凍結乾燥し、綿状の橙色固体(137mg、82.7%、薬効)を得た。
【実施例7】
【0091】
凍結乾燥
式Iの化合物、例えば、(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチレニル]−リファマイシンSVを以下の表7.1に示す成分と一緒に混合することにより、凍結乾燥した。
【0092】
【表2】

【0093】
次いで、この成分の混合物を凍結させて凍結乾燥した。
【0094】
ここに開示した発明が、上述および固有の目的を果たすのに十分に適合することは、当業者によって容易に理解される。本明細書に記載された実施例、医薬組成物、医薬品、方法、手順、および技法は、好ましい実施形態の代表的なものとして提示されたものであって、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。したがって、当業者は、ここに記載された発明の主旨および範囲に包含される他の使用も考えつくであろう。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】式Iの化合物を調製するための経路Aを示す図である。
【図2】式(AF1)の化合物を調製するための経路Bを示す図である。
【図3】式(BF1)の化合物を調製するための経路Cを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iの化合物(ヒドロキノンまたは対応するキノン(C〜C)形態のいずれか)、またはその塩、水和物、もしくはそのプロドラッグ

(式中、
は、水素またはアセチルを含み、
は、水素、メチル、または他の低級アルキルを含み、
ここで星印()は、キラル中心を持つ炭素を表し、ここで絶対配置は、RまたはSに帰属される)。
【請求項2】
a.(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチルエニル]−リファマイシンSV:

b.(S)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチルエニル]−リファマイシンSV:

c.(R/S)−3−[(4−(1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチルエニル}−リファマイシンSV:

d.(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチルエニル]−リファマイシンS:

e.(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチルエニル]−25−デアセチル−リファマイシンSV:

f.(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−アミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチルエニル]−リファマイシンSV:

g.(R)−3−[(4−{1−[1−(3−カルボキシ−1−シクロプロピル−7−フルオロ−9−メチル−4−オキソ−4H−キノリジン−8−イル)−ピロリジン−3−イル−シクロプロピル]−メチルアミノ}−ピペリジン−1−イルイミノ)−メチルエニル]−リファマイシンSV:

からなる群から選択される式を有する化合物。
【請求項3】
一般式Iの化合物のヒドロキノンまたは対応するキノン(C〜C)形態のいずれか、またはその塩、水和物、もしくはそのプロドラッグの調製方法であって、

(式中、
は、水素またはアセチルを含み、
は、水素、メチル、または他の低級アルキルを含み、
ここで星印()は、キラル中心を持つ炭素を表し、ここで絶対配置は、RまたはSに帰属される)、
式AF2

のヒドラジンを、溶媒中において、約0℃〜約50℃の範囲の温度で、式3FRF

の3−ホルミルリファマイシンとカップリングさせることを含む方法。
【請求項4】
前記溶媒が、水、エタノール、メタノール、THF、アセトン、酢酸、またはこれらの混合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水酸化ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される添加剤を添加することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
式AF1のジアミノ酸の調製方法であって、

式BF1

のトリアミンを、溶媒中において、第1塩基の存在下に、約20℃〜約100℃の範囲の温度で、式BF2

の4H−4−オキソキノリジンと反応させることによって、式BF3

の化合物を生成させることと、
アルコール性溶媒中において、式BF3の化合物に第2塩基を添加することによって、式BF4

の化合物を生成させることと、
式BF4の化合物に酸を添加することによって、式AF1のジアミノ酸を生成させることと
を含む方法。
【請求項7】
前記溶媒がアセトニトリルであり、前記第1塩基がNaHCOであり、前記第2塩基がLiOHであり、前記アルコール性溶媒がエタノールであり、かつ前記酸がトリフルオロ酢酸である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式BF1の保護されたトリアミンの調製方法であって、

1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンを、塩基の存在下で第1溶媒中においてメシル化剤と反応させることによって、メシレートを生成させることと、
前記メシレートを、相間移動触媒の存在下で第2溶媒中において約20℃〜約70℃の範囲の温度でシアン化物と反応させることによって、シアノ化合物を生成させることと、
前記シアノ化合物を、チタンテトライソプロポキシドの存在下で臭化エチルマグネシウムと反応させることによって、中間体であるシアノ化合物を生成させることと、
前記中間体であるシアノ化合物を、第3溶媒中において約−78℃〜約室温の範囲の温度でルイス酸と反応させることによって、シクロプロピルアミンを生成させることと、
前記シクロプロピルアミンをN−BOC 4−ピペリドンと反応させることによって、中間体であるアミノ化されたシクロプロピルアミンを生成させることと、
前記中間体である活気づけられたシクロプロピルアミンを、第4溶媒中において還元ヒドリドと反応させることによって、式CF1

の化合物を生成させることと、
式CF1の化合物を、第5溶媒中においてパラジウム触媒と反応させることによって、前記保護されたトリアミンを生成させることと
を含む方法。
【請求項9】
前記メシル化剤が塩化メシルまたは無水メシル酸であり、前記塩基がトリエチルアミンであり、かつ前記第1溶媒がトルエンまたは酢酸エチルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シアン化物がテトラブチルアンモニウムシアニド、トリエチルベンジルアンモニウムシアニド、または無機シアン化物であり、前記相間移動触媒がテトラブチルアンモニウムシアニドであり、かつ前記第2溶媒がアセトニトリルである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ルイス酸がBFエーテル錯体であり、かつ前記第3溶媒がTHF、エーテル、ジオキサン、またはこれらの混合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記還元ヒドリドがトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムであり、かつ前記第4溶媒がTHF、ジクロロメタン、酢酸、またはこれらの混合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記パラジウム触媒が木炭上10%パラジウムまたは20%水酸化パラジウムであり、かつ前記第5溶媒がエタノール、メタノール、酢酸、またはこれらの混合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物を含み、治療上不活性な成分を含むかまたは含まない医薬品。
【請求項15】
感染症の治療および予防のための、請求項1に記載の化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−507548(P2008−507548A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522765(P2007−522765)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/025924
【国際公開番号】WO2006/012443
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(507020082)カムブァ、ファーマスーティクルズ、インク (2)
【Fターム(参考)】