説明

(R1R2R3R4R5Cp)2Mの製造方法、及び製造装置

【課題】効率良く、大量に、かつ、安価に、(RCp)M(MはMg又はBe)を製造する技術の提供。
【解決手段】固体状金属Mと気体状化合物RCp(R,R,R,R,RはH又は炭化水素基、Cpはシクロペンタジエニル基)との反応において、反応空間と保存空間との境界部に設けられた連通部を有する仕切板17上に固体状金属M2が供給されるM供給工程と、反応空間に気体状化合物が供給されるRCp供給工程と、前記仕切板上に存する固体状金属Mの下方側が加熱される加熱工程と、前記仕切板上に存する固体状金属Mの上方側が冷却される冷却工程と、前記仕切板上に存する固体状金属Mが少なくなった場合、固体状金属Mが仕切板上に補給されるM補給工程とを具備する製造方法とその装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビスアルキルシクロペンタジエニルマグネシウムやビスアルキルシクロペンタジエニルベリリウムと言った(RCp)Mに関する。
【背景技術】
【0002】
低電力消費量の観点から、最近、照明源に超高輝度発光ダイオード(LED)を用いることが提案されている。白色LEDは窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体薄膜で構成されている。GaN系化合物半導体薄膜の成膜には化学気相成方法(CVD)が用いられる。GaN系化合物半導体薄膜の活性層にはMgのドーピングが必要である。このドーピングもCVDによって行われている。LEDは、今後、大量に使用されることが予想される。従って、Mgドーピング材料(CVD原料)も大量に必要とされるであろう。前記Mgドーピング材料としては、例えばビスアルキルシクロペンタジエニルマグネシウム[(RCp)Mg:R,R,R,R,RはH又はアルキル基]が挙げられる。具体的には、例えばビスシクロペンタジエニルマグネシウム[(CMg:CpMg]やビスメチルシクロペンタジエニルマグネシウム[(CHMg:MeCpMg]等である。
【0003】
III−V族系化合物半導体の作製にはBeのドーピングが必要である。このドーピングもCVDによって行われている。このBeドーピング材料としては、例えばビスアルキルシクロペンタジエニルベリリウム[(RCp)Be:R,R,R,R,RはH又はアルキル基]が挙げられる。具体的には、例えばビスシクロペンタジエニルベリリウム[(CBe:CpBe]やビスメチルシクロペンタジエニルベリリウム[(CHBe:MeCpBe]等である。
【0004】
(RCp)Mgや(RCp)Beの合成方法として次の手法が知られている。すなわち、エーテル系溶媒中で、アルキルシクロペンタジエニルナトリウム(アルキルシクロペンタジエニルリチウム)とハロゲン化マグネシウム(ハロゲン化ベリリウム)とを反応させる方法が知られている。
MgCl+2CpNa→CpMg+2NaCl
BeCl+2CpNa→CpBe+2NaCl
【0005】
しかしながら、この方法は、バッチ式である。この為、大量生産には限界が有る。
【0006】
更に、Na(Li)やX(ハロゲン)を用いていることから、これ等の元素が含まれていると、半導体デバイスの特性が大幅に低下する。従って、これ等の成分は十分に除去されなければならない。この為、精製コストが高く付く。
【0007】
又、大量のエーテル系溶媒を用いなければならないので、この点からも高コストなものになる。
【0008】
上記問題点を改善する為、Mg(Be)とアルキルシクロペンタジエンとを気相で直接反応させる方法が提案(非特許文献1、特許文献1)されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】W. A. Barber, J. Inorg. & NuclearChem., 4, 373(1957)
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第2,788,377号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記提案の合成方法は、アルキルシクロペンタジエンの気体と、金属マグネシウム(金属ベリリウム)との接触が不十分である。この為、反応効率が低い。
【0012】
特に、反応が進行し、金属マグネシウム(金属ベリリウム)が減少して来ると、アルキルシクロペンタジエンの気体と、金属マグネシウム(金属ベリリウム)との接触は更に不十分となる。
【0013】
この為、最終的には、大量の未反応マグネシウム(ベリリウム)が残されたままとなり、ビスアルキルシクロペンタジエニルマグネシウム(ビスアルキルシクロペンタジエニルベリリウム)の生成が終了してしまう。
【0014】
従って、本発明が解決しようとする課題は、効率良く、大量に、かつ、安価に、ビスアルキルシクロペンタジエニルマグネシウム(ビスアルキルシクロペンタジエニルベリリウム)を製造できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決する為の研究が、鋭意、押し進められて行く中に、本発明者は、アルキルシクロペンタジエン[RCp]との反応でMg(Be)が消費されると、新たなMg(Be)を補給し、絶えず、RCpの気体とMg(Be)との接触面積を維持することによって、連続的に、(RCp)Mが製造できることに気付いた。特に、反応室に置かれているMg(Be)の下部側を加熱し、上部側を未加熱(冷却)することにより、反応で消費されたMg(Be)分に相当するMg(Be)が上側から下側に輸送(移送:移動)され、絶えず、RCpの気体とMg(Be)との接触(反応)が維持され、(RCp)Mが連続的に製造されることが判って来た。
【0016】
上記知見に基づいて本発明が達成された。
【0017】
すなわち、前記の課題は、
固体状金属M(MはMg又はBe)と気体状化合物RCp(R,R,R,R,RはH又は炭化水素基。Cpはシクロペンタジエニル基)との反応により(RCp)Mで表される化合物が製造される方法において、
反応空間と保存空間との境界部に設けられた連通部を有する仕切板上に固体状金属Mが供給されるM供給工程と、
反応空間に気体状化合物RCpが供給されるRCp供給工程と、
前記仕切板上に存する固体状金属Mの下方側が加熱される加熱工程と、
前記仕切板上に存する固体状金属Mの上方側が冷却される冷却工程と、
前記仕切板上に存する固体状金属Mが少なくなった場合、固体状金属Mが仕切板上に補給されるM補給工程
とを具備することを特徴とする(RCp)Mの製造方法によって解決される。
【0018】
又、上記(RCp)Mの製造方法であって、好ましくは、仕切板に振動が作用させられる振動工程を更に具備することを特徴とする(RCp)Mの製造方法製造方法によって解決される。すなわち、例えば超音波振動と言った振動を仕切板(引いては、仕切板上の固体状金属M)に作用させることにより、反応で消費された固体状金属Mの間隙が新たな固体状金属Mで効果的に埋められる。従って、絶えず、RCpの気体とMとの接触面積が維持され、連続的に、(RCp)Mが得られる。
【0019】
又、上記(RCp)Mの製造方法であって、好ましくは、M補給工程は仕切板の上方から固体状金属Mが補給される工程であり、固体状金属Mと気体状化合物RCpとの反応により出来た反応生成物(RCp)Mは連通部を介して下方の保存空間に移送されることを特徴とする(RCp)Mの製造方法によって解決される。すなわち、上方部に存する固体状金属Mの温度は低いから、RCpが上方から供給されて来ても、上方部では反応が起きず、反応は下方部でのみ起きる。そして、下方部において生成した反応生成物は、自然に、下方に輸送(移送)される。これに伴って、上方より下方に固体状金属Mが輸送(移送)され、ここで行われる加熱により反応が進行する。つまり、反応が連続的に進行し、(RCp)Mが、より効率良く連続的に得られる。
【0020】
又、上記(RCp)Mの製造方法であって、好ましくは、加熱工程が高周波誘導加熱による工程であることを特徴とする(RCp)Mの製造方法によって解決される。加熱は、一般的には、反応室の外側から行われる。そうすると、先ずは、反応室の壁が加熱されることになる。そうすると、反応室の壁に近い箇所に存する固体状金属Mが優先的に反応する。この結果、反応室の壁に近い箇所に存する固体状金属Mが消費され、恰も、空洞が出来てしまうかの如くになる。そうすると、上方から供給されて来た気体状化合物RCpは前記空洞(スルーホール)を介して通過してしまい、反応に寄与しない割合が増加する。そこで、全般的に加熱するようにしておけば、斯かる問題が大幅に解決される。このような加熱は誘導加熱によることが効果的であった。例えば、反応室の周囲に配されたコイルに高周波電流を流すことで実施される。
【0021】
前記の課題は、
固体状金属M(MはMg又はBe)と気体状化合物RCp(R,R,R,R,RはH又は炭化水素基。Cpはシクロペンタジエニル基)との反応が行われる反応空間と、
前記反応空間の下側に設けられ、固体状金属Mと気体状化合物RCpとの反応により出来た反応生成物が保存される保存空間と、
前記反応空間と前記保存空間との間に設けられた上下連通部を有する固体状金属Mが置かれる仕切手段と、
前記反応空間に気体状化合物RCpを不活性ガスキャリアによって供給する供給手段と、
前記反応空間に固体状金属Mを供給する為に該固体状金属Mを保存しておく予備空間と、
前記仕切手段上に存する固体状金属Mの下方側が加熱される加熱手段と、
前記仕切手段上に存する固体状金属Mの上方側が冷却される冷却手段
とを具備してなり、
固体状金属Mと気体状化合物RCpとの反応により出来た反応生成物(RCp)Mが仕切手段の上下連通部を介して下方の保存空間に移送されるよう構成されてなる
ことを特徴とする(RCp)Mの製造装置によって解決される。
【発明の効果】
【0022】
(RCp)M(ビスアルキルシクロペンタジエニルマグネシウム、ビスアルキルシクロペンタジエニルベリリウム)が、効率良く、大量に、かつ、安価に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(RCp)M製造装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1の発明は、(RCp)Mの製造方法である。前記Mは、特に、Mg又はBeである。前記R,R,R,R,Rは、H及び炭化水素基の群の中から選ばれる何れかである。炭化水素基は好ましくはアルキル基である。特に、炭素数が1〜10のアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基である。前記R,R,R,R,Rは、全てが同一でも、互いに異なるものでも良い。前記Cpはシクロペンタジエニル基である。前記(RCp)M(M=Mg)は、例えば発光ダイオード用薄膜のMgドーパントとして用いられる。前記(RCp)M(M=Be)は、例えばIII−V族化合物半導体用のBeドーパントとして用いられる。上記製造方法は、固体状金属Mと気体状化合物RCpとの反応により下記一般式[I]で表される化合物が製造される方法である。本製造方法は、反応空間(反応室)と保存空間(保存室)との境界部に設けられた連通部を有する仕切板上に固体状金属Mが供給されるM供給工程を有する。本製造方法は、反応空間に気体状化合物RCpが供給されるRCp供給工程を有する。本製造方法は、前記仕切板上に存する固体状金属Mの下方側が加熱される加熱工程を有する。本製造方法は、前記仕切板上に存する固体状金属Mの上方側が冷却される冷却工程を有する。本製造方法は、前記仕切板上に存する固体状金属Mが少なくなった場合、固体状金属Mが仕切板上に補給されるM補給工程を有する。本製造方法は、好ましくは、仕切板に振動が作用させられる振動工程を更に有する。本製造方法は、好ましくは、補給工程は仕切板の上方から固体状金属Mが補給される工程であり、固体状金属Mと気体状化合物RCpとの反応により出来た反応生成物(RCp)Mは連通部を介して下方の保存空間に移送される。本製造方法は、好ましくは、加熱工程が高周波誘導加熱による工程である。
一般式[I]

【0025】
第2の発明は、(RCp)Mの製造装置である。特に、上記(RCp)Mの製造方法が実施される装置である。本製造装置は、固体状金属Mと気体状化合物RCpとの反応が行われる反応空間(反応室)を有する。本製造装置は、前記反応空間の下側に設けられ、固体状金属Mと気体状化合物RCpとの反応により出来た反応生成物が保存される保存空間を有する。本製造装置は、前記反応空間と前記保存空間との間に設けられた上下連通部を有する固体状金属Mが置かれる仕切手段を有する。本製造装置は、前記反応空間に気体状化合物RCpを不活性ガスキャリアによって供給する供給手段を有する。本製造装置は、前記反応空間に固体状金属Mを供給する為に該固体状金属Mを保存しておく予備空間を有する。本製造装置は、前記仕切手段上に存する固体状金属Mの下方側が加熱される加熱手段を有する。本製造装置は、前記仕切手段上に存する固体状金属Mの上方側が冷却される冷却手段を有する。
【0026】
第3の発明は、上記製造方法または製造装置により製造されてなる(RCp)Mである。
【0027】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を説明する。但し、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0028】
図1は、本発明になる(RCp)Mの製造装置の概略図である。
【0029】
図1中、1は反応管(反応空間:反応室)である。2は反応管1内に供給された粉末状あるいは粒子状の金属M(M=Mg,Be)である。この粉末状あるいは粒子状の金属Mは、M落下防止用の目皿(仕切板)17上に載っている。この目皿(仕切板)17によって、反応室1と後述の保存室5とは仕切られている。
【0030】
3は冷却器である。この冷却器3の設置位置は、目皿(仕切板)17の上方である。4は加熱器である。この加熱器4の設置位置は、目皿(仕切板)17の上方であって、冷却器3の下方である。加熱器4の加熱方式は、反応管1の周囲を単に加熱する方式の装置である。勿論、他の方式による加熱器であっても良い。好ましくは、誘導加熱方式の装置である。冷却器3は、加熱器の上方位置に設置された管に冷却水を供給する方式のものである。
【0031】
6は、固体状金属Mと気体状化合物RCpとの反応により生成した粉末状(粒子状)の(RCp)Mである。この(RCp)Mは、目皿17の孔を介して輸送されて来たものであり、保存室5に貯えられる。7は冷却浴である。冷却浴7による冷却で、(RCp)Mが気化するのを防止している。
【0032】
8は排気塔、9は冷却器である。
【0033】
10はシャッタ、11は補給用金属M(M=Mg,Be)、12は補給用金属M(M=Mg,Be)が保存されている予備室、13はバルブ、14は窒素導入口(真空ポンプ排気口)、18は補給用金属Mの投入フランジである。
【0034】
15はバルブ、16はRCp及びキャリアガスの導入口である。
【0035】
19は振動装置である。この振動装置19による振動が目皿(仕切板)17上の粉末状あるいは粒子状の金属Mに作用するようになる。すなわち、振動作用によって、上方に位置する金属Mが反応消費された金属Mの空隙部に効果的に供給される。
【0036】
上記装置が用いられて(RCp)Mが製造される。その幾つかの例を挙げる。
【0037】
[実施例1]
大きさが212〜600μmで24.3gの固形粉末状Mgが反応管1の目皿17上に供給された。この供給は上方からの落下による。そして、反応系内が窒素で置換された。この後も導入口16より窒素が流された。捕集器5は冷却浴7によって0℃に冷却された。排気塔8も冷却器9によって冷却された。冷却器3にも冷却水が流され、目皿17上に供給された粉末状Mgは冷却されている。この冷却温度は0℃と言った温度である必要は無い。すなわち、固体状金属M(Mg)と気体状化合物RCpとの反応は、通常、400〜1000℃の反応温度で行われる。従って、前記反応が促進されない温度であれば良い。例えば、室温程度の温度でも十分である。しかしながら、冷却器3の直下位置には加熱器4が設置されていて、加熱が行われる。例えば、500℃の温度に加熱された。この加熱の影響を受けることから、積極的に、冷却器3が設けられたのである。
【0038】
加熱(500℃)・冷却の後、反応管1内に、冷却器3の上方に設けられた導入口16より、窒素ガスにキャリアさせたシクロペンダジエン(CpH)が導入された。
【0039】
これにより、CpHとMgとの反応が起こり、反応生成物(CpMg)が生成した。生成した白色で粉末状の反応生成物(CpMg)は目皿17を通過・落下し、保存室5に積もった。時間の経過(反応の進行)に伴って、目皿17上のMg粉末は減少して行った。2時間後には、保存室5に積もって行く白色粉体(反応生成物:CpMg)は減少して行った。
【0040】
上記において、即ち、反応開始より約2時間程度前の時点から、反応管1の内壁周辺に存するMgの消失が特に目立っていた。そして、当該箇所ではCpHの通過(透過)が容易であった。
【0041】
そこで、予備室12のフランジ18を開き、補給用のMgを24.3g入れた。この後、バルブ13を開け、予備室12内を真空に排気した。予備室12内が充分に排気された後、窒素が充填された。この後、シャッタ10が開かれ、反応管1内に24.3gのMgが落下・補給された。反応管1の内壁周辺部の隙間(空隙)も埋められた。この時、振動装置19による超音波振動が作用し、反応の進行に伴って出来た隙間(空隙)がMgによって効果的に埋められた。これに伴って、保存室5に積もって行く白色粉体(反応生成物:CpMg)の量が増加した。2時間程度経過すると、保存室5に積もって行く白色粉体(反応生成物:CpMg)が、再度、減少して行った。そこで、上記と同様に、再度、Mgの補給が行われた。これに伴って、保存室5に積もって行く白色粉体(反応生成物:CpMg)の量が、再度、増加した。
【0042】
これが繰り返されることによって、連続的にCpMgが合成される。
【0043】
尚、Mg量を測定した結果、使用Mg量は72.9g、残存未反応Mg量は5gであった。Mgの反応効率は93.1%である。生成された白色の粉体は431gであった。この白色粉末は、分析の結果、CpMgであることが確認された。合成されたCpMgは、使用Mgに対して84.1%、消費Mg67.9gに対して99.8%の収率であった。
【0044】
[実施例2〜6]
実施例1において、シクロペンダジエンの代わりに、メチルシクロペンタジエン(実施例2)、エチルシクロペンタジエン(実施例3)、イソプロピルシクロペンタジエン(実施例4)、ノルマルシクロペンタジエン(実施例5)、ターシャリーブチルシクロペンタジエン(実施例6)が用いられ、実施例1に準じて行なわれた。その結果は実施例1と同様な結果であった。
【0045】
[比較例1]
実施例1において、冷却器3による冷却が行われず、かつ、振動装置19はスイッチオフであり、更にMgの補給が行われなかった以外は、実施例1に準じて行なわれた。
【0046】
この場合、反応開始から10分程度経過すると、保存室5に積もって行く白色粉体(反応生成物:CpMg)が減少して行った。そして、この時点では、反応1の内壁周辺部分のMgが特に消失しており、CpHが通過できる程度の大きな隙間(空隙)が生じていた。
【0047】
反応開始から4時間程度経過した後で反応管1を冷却して取り出した処、使用Mg量は24.3g、残存未反応Mg量は13.6gであった。この結果は、CpMgの製造効率が非常に悪いことを示している。
【0048】
[実施例7]
実施例1における反応の為の500℃の加熱は、単なる、ヒータによる加熱であった。本実施例ではコイルに高周波電流を流すことによる誘導加熱で500℃に加熱された。それ以外は実施例1に準じて行なわれた。尚、本実施例では、Mgの補給は行われなかった。
【0049】
反応開始から4時間程度経過した後で反応管1を冷却して取り出した処、本実施例にあっては、使用Mg量は24.3g、残存未反応Mg量は1gであった。この結果は、CpMgの製造効率が非常に良いことを示している。
【0050】
[実施例8]
9.0gの薄片状固形粉末状Beが反応管1の目皿17上に供給された。この供給は上方からの落下による。そして、反応系内が窒素で置換された。この後も導入口16より窒素が流された。捕集器5は冷却浴7によって0℃に冷却された。排気塔8も冷却器9によって冷却された。冷却器3にも冷却水が流され、目皿17上に供給された粉末状Beは冷却されている。この冷却温度は0℃と言った温度である必要は無い。すなわち、固体状金属M(Be)と気体状化合物RCpとの反応は、通常、400〜1000℃の反応温度で行われる。従って、前記反応が促進されない温度であれば良い。例えば、室温程度の温度でも十分である。しかしながら、冷却器3の直下位置には加熱器4が設置されていて、加熱が行われる。例えば、誘導加熱によって500℃の温度に加熱された。この加熱の影響を受けることから、積極的に、冷却器3が設けられたのである。
【0051】
加熱(500℃)・冷却の後、反応管1内に、冷却器3の上方に設けられた導入口16より、窒素ガスにキャリアさせたシクロペンダジエン(CpH)が導入された。
【0052】
これにより、CpHとBeとの反応が起こり、反応生成物(CpBe)が生成した。生成した白色の反応生成物(CpBe)は目皿17を通過・落下し、保存室5に積もった。時間の経過(反応の進行)に伴って、目皿17上のBe粉末は減少して行った。2時間後には、保存室5に積もって行く白色粉体(反応生成物:CpBe)は減少して行った。
【0053】
そこで、予備室12のフランジ18を開き、補給用のBeを9.0g入れた。この後、バルブ13を開け、予備室12内を真空に排気した。予備室12内が充分に排気された後、窒素が充填された。この後、シャッタ10が開かれ、反応管1内に9.0gのBeが落下・補給された。反応管1の内壁周辺部の隙間(空隙)も埋められた。この時、振動装置19による超音波振動が作用し、反応の進行に伴って出来た隙間(空隙)がBeによって効果的に埋められた。これに伴って、保存室5に積もって行く白色粉体(反応生成物:CpBe)の量が増加した。2時間程度経過すると、保存室5に積もって行く白色粉体(反応生成物:CpBe)が、再度、減少して行った。そこで、上記と同様に、再度、Beの補給が行われた。これに伴って、保存室5に積もって行く白色粉体(反応生成物:CpBe)の量が、再度、増加した。
【0054】
これが繰り返されることによって、連続的にCpBeが合成される。
【0055】
尚、Be量を測定した結果、使用Be量は27.0g、残存未反応Be量は2gであった。Beの反応効率は92.6%である。生成された白色の粉体は380gであった。この白色粉体は、分析の結果、CpBeであることが確認された。合成されたCpBeは、使用Beに対して91%、消費Beに対して98.3%の収率であった。
【0056】
[実施例9]
実施例8において、シクロペンダジエンの代わりに、メチルシクロペンタジエンが用いられ、実施例8に準じて行なわれた。その結果は実施例8と同様な結果であった。
【符号の説明】
【0057】
1 反応管(反応空間:反応室)
2 金属M(M=Mg,Be)
3 冷却器
4 加熱器
5 保存室
6 反応生成物(RCp)
12 予備室
17 目皿(仕切板)
19 振動装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状金属M(MはMg又はBe)と気体状化合物RCp(R,R,R,R,RはH又は炭化水素基。Cpはシクロペンタジエニル基)との反応により(RCp)Mで表される化合物が製造される方法において、
反応空間と保存空間との境界部に設けられた連通部を有する仕切板上に固体状金属Mが供給されるM供給工程と、
反応空間に気体状化合物RCpが供給されるRCp供給工程と、
前記仕切板上に存する固体状金属Mの下方側が加熱される加熱工程と、
前記仕切板上に存する固体状金属Mの上方側が冷却される冷却工程と、
前記仕切板上に存する固体状金属Mが少なくなった場合、固体状金属Mが仕切板上に補給されるM補給工程
とを具備することを特徴とする(RCp)Mの製造方法。
【請求項2】
仕切板に振動が作用させられる振動工程を更に具備する
ことを特徴とする請求項1の(RCp)Mの製造方法。
【請求項3】
M補給工程は仕切板の上方から固体状金属Mが補給される工程であり、
固体状金属Mと気体状化合物RCpとの反応により出来た反応生成物(RCp)Mは連通部を介して下方の保存空間に移送される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の(RCp)Mの製造方法。
【請求項4】
加熱工程は高周波誘導加熱による工程である
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの(RCp)Mの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4いずれかの(RCp)Mの製造方法によって製造されてなる(RCp)M。
【請求項6】
固体状金属M(MはMg又はBe)と気体状化合物RCp(R,R,R,R,RはH又は炭化水素基。Cpはシクロペンタジエニル基)との反応が行われる反応空間と、
前記反応空間の下側に設けられ、固体状金属Mと気体状化合物RCpとの反応により出来た反応生成物が保存される保存空間と、
前記反応空間と前記保存空間との間に設けられた上下連通部を有する固体状金属Mが置かれる仕切手段と、
前記反応空間に気体状化合物RCpを不活性ガスキャリアによって供給する供給手段と、
前記反応空間に固体状金属Mを供給する為に該固体状金属Mを保存しておく予備空間と、
前記仕切手段上に存する固体状金属Mの下方側が加熱される加熱手段と、
前記仕切手段上に存する固体状金属Mの上方側が冷却される冷却手段
とを具備してなり、
固体状金属Mと気体状化合物RCpとの反応により出来た反応生成物(RCp)Mが仕切手段の上下連通部を介して下方の保存空間に移送されるよう構成されてなる
ことを特徴とする(RCp)Mの製造装置。


【図1】
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【公開番号】特開2011−178726(P2011−178726A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45044(P2010−45044)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(509182010)気相成長株式会社 (5)
【Fターム(参考)】