説明

(S)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン塩酸塩(デュロキセチン)の結晶化方法

式(I)の(S)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン塩酸塩は、非プロトン性溶媒とプロトン性溶媒の混合物中デュロキセチン懸濁液は、プロトン性溶媒の体積比の減少下で、同時に上昇した温度で撹拌されるような方法で、結晶化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、式Iの一般名デュロキセチンの下に知られている(S)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン塩酸塩の、定義された物理的パラメータを用いた結晶形態の調製方法に関する。
【0002】
【化1】

【背景技術】
【0003】
背景技術
デュロキセチンは、セロトニン及びノルアドレナリン再摂取の阻害剤であり、鬱病及び尿失禁の分野で治療に用いられている。
【0004】
デュロキセチン及びその中間体の調製は、例えば特許番号EP 0,273,658、US 5,362,886、WO 2004/005239、US 2003/0225153に記述される。用いられる主要な調製手順は、下記のスキーム1に示される。
【0005】
【化2】

【0006】
物質Iの調製は、US特許第5,362,886号の実施例2(調製2)に記述される。最終生成物は、酢酸エチル中デュロキセチン塩基の溶液に対する濃塩酸の作用により得られる。酸性化された反応混合物に、物質Iの接種結晶は添加され、混合物は、さらなる酢酸エチルで希釈され、30間撹拌後、混合物は元の容量まで濃縮され、続いて1時間、室温で1時間、0℃の温度で1時間撹拌された。
【0007】
物質Iの調製物はまた、WO 2005/108386の実施例4に記述される。アセトン中のデュロキセチン塩基の溶液に対する2‐プロパノール中20% HClの効果により、結晶性塩酸塩、すなわち、物質Iは得られる。
【0008】
しかしながら、これらの手順の再現において、得られるデュロキセチンは、不純物、特に式II
【0009】
【化3】

【0010】
の3‐アイソマー、及び反対の(R)‐エナンチオマーを含み、この方法により得られる物質はまた、呈色を示すことが示されている。別の不利益な点は、その技術的処理を難しくする、この方法で調製される物質の物理的性質に存する。デュロキセチンは通常、小さい針状形態で結晶化し、それは、結晶混合物の撹拌、及び続く濾過において、不具合を引き起こす。最終処理、すなわち、例えばふるい分けにおいて、大変扱い辛い大変軽い物質が作られる。
【0011】
従って、医薬的な目的のために質が必要とされるデュロキセチンの調製は、物理的及び化学的特性のさらなる処理を必要とすることは明らかである。
【0012】
特許出願番号WO 2006/099468の著者らは、水中、及び有機溶媒と水の混合物中での結晶化によるデュロキセチンの精製を記述する。有機溶媒と水の都合のよい体積比は、97:3〜98.25:1.75の範囲であると示される。デュロキセチンが、10倍量のアセトン/水混合物(アセトン:水比=49:1、実施例1c及び1d)中の還流下で溶解され、冷却後、結晶は吸引される、結晶化の最も好ましい実施形態では、著者らはそれぞれ80%及び73%の収率を言及した。高い水の含量(実施例2a、2b)に伴い、結晶化収率は、それぞれ68%まで、及びわずか36%まで下がった。この実施形態では、低い不純物の含量のデュロキセチンが調製され得る;しかしながら、質量の高損失が生じる。この特許は、調製されるデュロキセチンの物理的特徴を言及していない。
【0013】
医薬的な目的のための、全ての固体物質の、すなわち活性物質の物理的性質を特徴付ける重要な量の一つは、見かけの密度である(Czech Pharmacopoeia 2002, chapter 2.9.15を参照のこと)。見かけの密度は、液体と同様に、一定の体積を占める物質の重量として定義される(g/cm3)。見かけの密度は、物質が規定の体積を有するシリンダーに注がれるような方法で一般的に測定され、見かけの密度は、下記の式:
見かけの密度=物質の重量(g)/体積(cm3)
を用いて測定される。例えば、20 gの重量の物質が、100 cm3の体積を占める場合、その見かけの重量は、0.20 g/ cm3である。
【0014】
注ぐことが難しい、「フワフワした」しばしば静電的に容易に帯電する物質は、低い見かけの密度値、すなわち約0.25 g/ cm3未満を示す。別のパラメータは、粒子の大きさに応じてサンプル中に存在する粒子の相対量を定義する粒度分布である。粒度分布は、例えば、市販の装置(例えばMalvern Master seizer 2000)を用いるレーザー回折により測定され得る。この場合、粒子径は、分析される粒子と同じ体積の理論的な球である、相当球の直径の平均により表される。様々なサンプルの粒度分布の比較では、パーセンタイルの値、d(0.1)、d(0.5)、及びd(0.9)を観察することが便利である。これらのパーセンタイルは、粒子の10、50、及び90%がパーセンタイルの値より小さいことを表す。
【0015】
結晶の形状は、見かけの密度及び粒度分布に密接に関連する。しばしば束で結合する微小な針状又は棒状から成る物質は、低い見かけの密度のような不便な性質、及び困難な注入特性(pouring characteristic)を示す。結晶の外観は、一般的に光学顕微鏡で観察されることができ、それらの形状及び大きさは、パターン解析の形態学的パラメータで記述されることができる。結晶面積は、粒子の形状及び大きさの双方に関連するパラメータである。このパラメータは、較正された画像における粒子投影の実際の面積で表す。結晶の形状は、最大及び最小のフェレ径(Feret's diameter)の比として定義される、伸長の形態学的パラメータをよく特徴付ける。最大及び最小のフェレ径は、測定される粒子に適用される二つの平行の間のそれぞれの最大及び最小距離である。伸長パラメータの値が高くなると、粒子はより長くなる。立方体又は球の形状を有する粒子について、伸長パラメータの値は1に近い。針様粒子の場合、伸長パラメータの値は、比較的高い。
【0016】
これらの特徴的な量は、物質の一般的な性質に直接的に関連し、それは、全ての製造プロセス、例えば、濾過の速度、乾燥、注入、投与形態の調製等における処理のために重要である。
【0017】
入手可能な文献は、それらの調製の技術のための、及びその後の製剤化、すなわち投与形態の調製のための、使い勝手のよい物理的特性を備えたデュロキセチンの調製を記述していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、高収率において最小量の不純物を含み、同時に物理的特性、例えば、医薬品製造において使用のために有利な、結晶の見かけの重量、及び大きさ及び形状を備えた、デュロキセチンの調製の方法を記述する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例2(従前の方法)により調製された結晶デュロキセチンの粒度分布である。
【図2】図2は、実施例3により調製された結晶デュロキセチンの粒度分布である。
【図3】図3は、実施例6により調製された結晶デュロキセチンの粒度分布である。
【図4】図4は、実施例2(従前の方法)により調製された結晶デュロキセチンである。
【図5】図5は、実施例3により調製された結晶デュロキセチンである。
【図6】図6は、実施例6により調製された結晶デュロキセチンである。
【図7】図7は、実施例2(従前の方法)により調製された結晶デュロキセチンの粒子の伸長である。
【図8】図8は、実施例3により調製された結晶デュロキセチンの粒子の伸長である。
【図9】図9は、実施例6により調製された結晶デュロキセチンの粒子の伸長である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の開示
本発明の本質は、使い勝手のよい物理的及び化学的特性を備えた、式I
【0021】
【化4】

【0022】
の、一般名デュロキセチンの下に知られている、(S)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン塩酸塩の結晶形態の調製のための方法を含む。
【0023】
EP特許第1 758 879号特許(ZENTIVA)は、何らかの詳細を言及することなく、エチルメチルケトンからデュロキセチンの結晶化を、実施例7で記述する。WO 2006/099468は、水の含量が少なくとも1.75%である有機溶媒及び水の混合物中での、沸騰下でのデュロキセチンの溶解、及び続く冷却による、デュロキセチンの結晶化を記述する。好ましい溶媒は、アセトン、及び水、又は2‐プロパノールである。
【0024】
これらの手順を再現することにおいて、我々は、下記の課題に直面した。エチルメチルケトン中のデュロキセチンの低い溶解性のために、著しく過剰な溶媒が用いられなければならず、それは生産能力利用性及び経済的な観点から不都合である。水の少量の添加(数%程度)は、有機溶媒におけるデュロキセチンの溶解度を著しく増加させる。しかしながら、上昇した温度(通常、沸点未満)で、高温である間、極性の低い非プロトン性溶媒(例えば、アセトン)と極性の高いプロトン性溶媒(例えば、水)の混合物中に、物質が溶解され、溶液の冷却後、結晶が沈殿する(WO 2006/099468に言及される実施例を参照のこと)、通常の方法で結晶化を行う場合では、かなりの収率損失が、デュロキセチンの場合に生じる。加えて結晶化混合物の冷却の際に、デュロキセチンは、結晶化混合物が撹拌することが大変困難であり、濾過ケーキの濾過及び洗浄時間が結果として長くなるような、長い繊維又は針状の形態で沈殿する。乾燥後、得られる物質のふるい分けは困難であり、最終生成物は、低い見かけの密度(典型的に、約0.2 g/cm3)を有し、非常に細かい。
【0025】
我々は驚くべきことに、好適な溶媒又は溶媒の混合物中で、上昇した温度でのデュロキセチンの再結晶において、優れた沈殿及び優れた濾過能力を示す比較的大きい結晶が生成されることを発見した。同時に、化学的純度が改良される。これは、このプロセスにおいて物理的特性が改良されることを意味し、それは、結晶の単離(濾過及びふるい分け速度)における、得られる物質及び最終物質の純度において、しかし、特にその性質(結晶の大きさ及び形状、見かけの密度、粒度分布、注入特性など)において、明らかにされる。
【0026】
既知の方法により調製されるデュロキセチンの見かけの密度は、典型的には、0.18〜0.25 g/cm3の範囲で変化する。本明細書に記述される結晶化手順に従って調製されるデュロキセチンは、典型的には、0.30〜0.40 g/cm3の値を達成する。物質の見かけの密度は、特定の物質の粒子の大きさ及び形状に関連する。
【0027】
既知の方法に従って調製されるデュロキセチンの粒度分布(Malvern Mastersizer 2000 deviceで測定される)の例は、図1に示される。再結晶されたデュロキセチンの粒度分布の例は、図2及び3に示される。三つの図は、本明細書で記述されるデュロキセチンの再結晶化方法の使用に伴い、粒度分布の粒子d(0.5)及びd(0.9)の値は大幅に変化することを示す。既知の手順に従って調製されるデュロキセチン(図1)は、値d(0.5) = 19μm及びd(0.9) = 59μmを示し、すなわちそれは、19μmより大きい粒子を50%、59μmより大きい粒子を10%含む。他方では、再結晶されたデュロキセチン(それぞれ図2又は3)は、値d(0.5) = 73μm及びd(0.9) = 174μm、すなわち、50%の粒子が72μmより大きく、10%の粒子が、174μmより大きい、及びd(0.5 ) = 47μm及びd(0.9) = 129μm、すなわち、50%の粒子が47μmより大きく、10%の粒子が129μmより大きい、をそれぞれ達成する。これは、本明細書で記述される再結晶化を用いて、比較的大きい粒子を非常に高い割合で有するデュロキセチンが調製され得ることを意味する。
【0028】
結晶の投影面積を測定する場合、我々は、以前に記述された手順に従って調製されたデュロキセチンは、最大約90μm2の値を得られる一方で、新規の手順に従って調製されたデュロキセチンは、二倍超高い値を得られることを発見した(図5及び6と比較して図4を参照のこと)。粒子の大きさに加えて、適切に行われた再結晶化はまた、それらの形状に影響を与え、それは写真(図4、5、及び6)、及び伸長の形態学的パラメータ(図3及び4を参照のこと)により実証される。既知の手順に従って調製されたデュロキセチンは、棒形状粒子を比較的高い割合で含む。そのような物質では(図7)、粒子の33%のみが、1〜2の区間内の伸長パラメータを有する。他方では、再結晶されたデュロキセチンの粒子は、滑らかで且つ透明で、薄板形状である(図5及び6)。それらの伸長パラメータ(図8及び9)は、粒子の74%について、1〜2の区間内である。従って、再結晶されたデュロキセチンの粒子は、従来技術の方法により得られるデュロキセチン粒子よりも大幅に小さい伸長を示す。
【0029】
再結晶に用いられる溶媒は、一般的に、それらの化学構造にOH基を含むプロトン性溶媒と非プロトン性溶媒に分けられる。一般的なプロトン性溶媒は、水及びアルコール、例えばメタノール、エタノール、2‐プロパノールを含む。デュロキセチンは、プロトン性溶媒及びそれらの混合物に大変よく溶解する。他方で、デュロキセチンは、非プロトン性溶媒、例えばケトン(例えば、アセトン、エチルメチルケトン)、又はエステル(例えば、酢酸エチル)に難溶性であり、デュロキセチンは、炭化水素(例えば、ヘプタン)、又はエーテル(例えば、ジエチルエーテル、tert‐ブチルメチルエーテル)に実質的に不溶である。
【0030】
デュロキセチンの再結晶化のための好適な溶媒は、中でも、プロトン性溶媒、例えば水、メタノール、エタノール、又は2‐プロパノールとの混合物中の、比較的極性の低いC3〜6ケトン類、又はC3〜6エステル類、例えば、エチルメチルケトン、酢酸エチルを含む。溶媒の混合物中の極性の高い溶媒の好適な含量は、およそ50体積%〜0体積%であり、都合のよいことには、結晶化の最中、高い値から0まで減少し得る。結晶化の最中では、水含量は、1.70体積%から0体積%の範囲で変化する。混合物中のプロトン性溶媒の含量の減少は、以下の方法:
(a) 混合物に非プロトン性溶媒を添加することにより、
(b) 蒸留により混合物からプロトン性溶媒を取り除くことにより、
(c) 蒸留により混合物からプロトン性溶媒を取り除き、且つ非プロトン性溶媒を添加することにより、
達成され得る。
【0031】
結晶化は、溶媒の混合物中のデュロキセチンの懸濁液を加熱し、それらの割合を調整し、及び続いて冷却することにより、又は溶媒の高温の混合物中のデュロキセチンを調製し、それらの割合を調整し、及び続いて冷却することにより、行われ得る。デュロキセチン結晶の大きさ及び形状は、撹拌時間及び温度に依存する。懸濁液の好適な撹拌時間は、0.5時間〜24時間、より好ましくは、1時間〜6時間の範囲である。デュロキセチン溶液が、35℃未満に冷却された場合、物質は、比較的小さい結晶、又は小さい結晶の塊で結晶化する傾向がある。従って、結晶化のための好適な温度は、約30℃〜120℃、より好ましくは、40℃から溶媒又は溶媒の混合物の沸点の範囲である。デュロキセチン懸濁液の再結晶の好ましい実施形態は、溶媒の沸騰温度又は溶媒の混合物の沸点で0.5〜1時間混合物を撹拌すること、続いて30〜40℃に冷却すること、及び混合物を撹拌することに存する。
【0032】
得られる物質の物理的特性の変化をもたらす適切に行われる結晶化により、デュロキセチン結晶の大きさ及び形状を、著しく変化させることは、それ故可能である。これらの物理的特性は、様々な方法により、例えば、見かけの密度、粒子の分布、伸長パラメータなどを測定することにより、特徴付けられ得る。物理的特性は、デュロキセチンの調製の範囲内で用いられるプロセス(例えば、濾過又は乾燥速度)、及び投与形態の調製に用いられるプロセス(例えば、物質の注入、顆粒化、直接圧搾、均一化、又は補助物質との混合)の双方に重要な影響を与える。
【0033】
本発明は、下記の実施例の使用と併せて、より詳細な方法で説明される。本発明によるデュロキセチンの調製の好ましい代替手法を説明するこれらの実施例は、排他的な例示的特性を有するが、いずれの態様においても本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0034】
実施例1(従前の方法)
(S)‐N‐メチル‐3‐(ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン塩酸塩(デュロキセチン)の調製
トルエン(1200 ml)中(S)‐N,N‐ジメチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン(311 g)に、ジイソプロピルアミン(210 ml)は添加され、続いて、フェニルクロロホルマート(150 ml)が60℃で添加される。80℃で2時間の撹拌後、混合物は、冷却され、塩酸、水、及び2%溶液の炭酸水素ナトリウムの希釈された溶液で振盪される。有機相は、硫酸ナトリウムで乾燥され、蒸発される。蒸発残余物は、ジメチルスルホキシド(300 ml)に溶解され、還流下で5 M溶液の水酸化カリウムは液滴添加される。60℃で2時間後、混合物は水(1000 ml)で希釈され、デュロキセチン塩基は、tert‐ブチルメチルエーテル(300 ml)で抽出される。溶液は、エチルメチルケトン(ブタノン)で希釈され、0℃に冷却される。その後、pHは、濃縮塩酸の液滴添加により、約5の値に調整される。その後、沈殿した淡茶色結晶は吸引される。未精製デュロキセチンの収率は、183 g (55%)、m.p. 167〜169℃である。
見かけの密度 0.18 g/cm3
d(0.5) = 22μm、及びd(0.9) = 65μm。
区間1〜2の伸長パラメータを有する粒子の含量:29%
【0035】
実施例2(従前の方法)
(S)‐N,N‐ジメチル‐3‐(ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン塩酸塩(デュロキセチン)の再結晶
エチルメチルケトン(1100 ml)中デュロキセチン(183 g)の懸濁液は、1時間還流される。混合物はその後、10℃に冷却され、濾過される。収率:178 g (97%)、m.p. 169〜171℃。
見かけの密度 0.20 g/cm3
d(0.5) = 19μm、及びd(0.9) = 59μm。
区間1〜2の伸長パラメータを有する粒子の含量:33%。
【0036】
実施例3
(S)‐N,N‐ジメチル‐3‐(ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン塩酸塩(デュロキセチン)の再結晶
デュロキセチン(160 g)は、500 mlのエチルメチルケトン中で撹拌され、8.5 mlの水が添加される。混合物は沸点まで加熱され、懸濁液は30分間還流される。その後、300 mlのMEK (ブタノン)は30分間の還流下で液滴添加される。添加後、懸濁液は1時間、35℃に冷却され、1時間撹拌される。結晶は吸引され、エチルメチルケトン及びtert‐ブチルメチルエーテルで洗浄される。収率:144 g (90%)、m.p. 170.5〜171.5℃。
見かけの密度 0.31 g/cm3
d(0.5) = 72μm、及びd(0.9) = 174μm。
区間1〜2の伸長パラメータを有する粒子の含量:74%。
【0037】
実施例4
(S)‐N,N‐ジメチル‐3‐(ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン塩酸塩(デュロキセチン)の再結晶
デュロキセチン(160 g)は、750 mlのエチルメチルケトン及び75 mlのメタノール中で撹拌され、混合物は沸点まで加熱される。その後、150 ml(メタノール/エチルメチルケトンの共沸性混合物)は、30分間の蒸留により取り除かれ、続いて150 mlのエチルメチルケトンが液滴添加される。懸濁液は1時間、30℃に冷却され、1時間この温度で撹拌される。結晶は吸引され、エチルメチルケトン及びtert‐ブチルメチルエーテルで洗浄される。収率:146 g (90%)、m.p. 170.5〜171.5℃。
見かけの密度 0.32 g/cm3
d(0.5) = 38μm、及びd(0.9) = 94μm。
区間1〜2の伸長パラメータを有する粒子の含量:71%。
【0038】
実施例5
(S)‐N,N‐ジメチル‐3‐(ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン塩酸塩(デュロキセチン)の再結晶
デュロキセチン(160 g)は、1200 mlのエチルメチルケトン中で撹拌され、19 mlの水が添加される。その後、300 ml(水/エチルメチルケトンの共沸性混合物)は、1時間の蒸留により取り除かれる。懸濁液は1時間、30℃に冷却され、1時間撹拌される。結晶は吸引され、エチルメチルケトン及びtert‐ブチルメチルエーテルで洗浄される。収率:144 g (90%)、m.p. 170.5〜171.5℃。
見かけの密度 0.31 g/cm3
d(0.5) = 51μm、及びd(0.9) = 112μm。
区間1〜2の伸長パラメータを有する粒子の含量:72%。
【0039】
実施例6
(S)‐N,N‐ジメチル‐3‐(ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン塩酸塩(デュロキセチン)の再結晶
デュロキセチン(160 g)は、750 mlのエチルメチルケトン及び75 mlのエタノール中で撹拌され、混合物は沸点まで加熱される。その後、150 ml(メタノール/エチルメチルケトンの共沸性混合物)は、60分間の蒸留により取り除かれ、同時に150 mlのエチルメチルケトンが液滴添加される。懸濁液は1時間、30℃に冷却され、この温度で1時間撹拌される。結晶は吸引され、エチルメチルケトン及びtert‐ブチルメチルエーテルで洗浄される。収率:146 g (90%)、m.p.:170.5〜171.5℃。
見かけの密度 0.38 g/cm3
d(0.5) = 47μm、及びd(0.9) = 129μm。
区間1〜2の伸長パラメータを有する粒子の含量:75%。
【0040】
見かけの密度は、物質が、100 cm3の容量のメスシリンダーに自由に注がれ(振盪されることなく)、その重量が測定されるような方法で測定された。
【0041】
粒度分布は、下記の条件下で、湿式レーザー回折により測定された:
【0042】
【表1】

【0043】
20回の測定の平均が、分析の結果として見なされる。
【0044】
結晶の面積及び伸長のパラメータは、NIS‐Elementsパターン解析ソフトウェアによるサンプルの顕微鏡写真から得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン水酸化物、すなわち式I
【化1】

のデュロキセチンが、非プロトン性溶媒及びプロトン性溶媒の混合物から結晶化されることを特徴とする、結晶デュロキセチンの調製のための方法。
【請求項2】
酢酸エチル、アセトン、又はエチルメチルケトン(2‐ブタノン)が前記非プロトン性溶媒として用いられ、且つ水、メタノール、エタノール又は2‐プロパノールが前記プロトン性溶媒として用いられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結晶化が、30℃から溶媒の混合物の沸点までの範囲の温度で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
結晶化の間、水の含量が、1.70体積%〜0体積%に及ぶことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
結晶化の間、メタノール、エタノール、又は2‐プロパノールの含量が、50体積%〜0体積%に及ぶことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
結晶化の間、非プロトン性とプロトン性溶媒の体積比が、非プロトン性溶媒の段階的な添加により調整されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
プロトン性溶媒の、すなわち、水、メタノール、エタノール、又は2‐プロパノールの含量が、蒸留による、プロトン性溶媒の、又は水、メタノール、エタノール、又は2‐プロパノールを含む溶媒の共沸性混合物の段階的除去により、結晶化の間減少することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
プロトン性溶媒の、すなわち、水、メタノール、エタノール、又は2‐プロパノールの含量が、蒸留及び非プロトン性溶媒の同時添加による、プロトン性溶媒の、又は水、メタノール、エタノール、又は2‐プロパノールを含む溶媒の共沸性混合物の段階的除去により、結晶化の間減少することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
デュロキセチンの結晶化後、懸濁液が20〜40℃に冷却され、且つデュロキセチンが濾過より取り除かれることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
見かけの密度が、0.25 g/cm3超であることを特徴とする、結晶デュロキセチン。
【請求項11】
見かけの密度が、0.30〜0.40 g/cm3の範囲であることを特徴とする、結晶デュロキセチン。
【請求項12】
平滑で透明な結晶を含むことを特徴とする、結晶デュロキセチン。
【請求項13】
少なくとも80μmの、レーザー回折により測定されるd(0.9)パーセンタイルの値を有する、結晶デュロキセチン。
【請求項14】
90〜190μmの範囲で、レーザー回折により測定されるd(0.9)パーセンタイルの値を有する、結晶デュロキセチン。
【請求項15】
少なくとも30μmの、レーザー回折により測定されるd(0.5)パーセンタイルの値を有する、結晶デュロキセチン。
【請求項16】
35〜80μmの範囲で、レーザー回折により測定されるd(0.5)パーセンタイルの値を有する、結晶デュロキセチン。
【請求項17】
少なくとも10μmの、レーザー回折により測定されるd(0.1)パーセンタイルの値を有する、結晶デュロキセチン。
【請求項18】
10〜30μmの範囲で、レーザー回折により測定されるd(0.1)パーセンタイルの値を有する、結晶デュロキセチン。
【請求項19】
90μmより大きい結晶を少なくとも10%を含むことを特徴とする、結晶デュロキセチン。
【請求項20】
50μmより大きい結晶を少なくとも33%を含むことを特徴とする、結晶デュロキセチン。
【請求項21】
10μmより大きい結晶を少なくとも90%を含むことを特徴とする、結晶デュロキセチン。
【請求項22】
結晶の少なくとも65%が、1〜2の範囲の伸長パラメータ値を有することを特徴とする、結晶デュロキセチン。
【請求項23】
結晶の少なくとも85%が、1〜3の範囲の伸長パラメータ値を有することを特徴とする、結晶デュロキセチン。
【請求項24】
150μm2超の平均面積値を有する結晶を含むことを特徴とする、結晶デュロキセチン。
【請求項25】
請求項10〜24のいずれか一項に定義されるようなデュロキセチン、及びさらなる医薬的に許容される賦形剤を含むことを特徴とする、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−503823(P2013−503823A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527196(P2012−527196)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/CZ2010/000099
【国際公開番号】WO2011/026449
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512049982)
【Fターム(参考)】