説明

(S)−エノキシモンスルホキシドおよびPDE−III媒介疾患の治療におけるその使用

本発明は、(S)-(-)エノキシモンスルホキシドエナンチオマー、ならびに精製(S)-(-)スルホキシドエナンチオマーの薬学的製剤を提供する。PDE-IIIの阻害が有益であり得る疾患を治療する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、概して心臓病学および医薬の分野に関する。より詳細には、本発明は心臓血管疾患、心不全、およびホスホジエステラーゼ-III(PDE-III)の阻害が有益であると考えられる様々な疾患を治療することにおける使用を目的とするエノキシモンスルホキシドの純粋なエナンチオマー製剤に関する。
【0002】
なお、本出願は、2004年3月22日に出願された米国特許仮出願第60/555,261号に対する優先権の恩典を主張し、そのすべての内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
2.関連技術の説明
ホスホジエステラーゼ(PDE)は、二次メッセンジャーヌクレオチド、サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)、およびサイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)の代謝に関与する細胞内酵素の類である(Doherty, 「Oral, Transdermal and Transurethral Therapies for Erectile Dysfunction」in Male Infertility and Dysfunction, Hellstrom, ed., Chapter 34 (New York, N.Y.: Springer-Verlag, 1997)を参照されたい)。多数のホスホジエステラーゼ阻害剤が、閉塞性肺疾患、アレルギー、高血圧、狭心症、鬱血性心不全、および鬱の治療を含む、様々な治療的使用のための文献において、以前から記載されている(Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics Tenth Edition, Chapter 34を参照されたい)。PDE-V阻害剤の経口および非経口の投与は、前記で暗に示されているように、勃起障害の治療のためにも使用されている(Doherty、前記;国際公開公報第96/16644号および国際公開公報第94/28902号も参照されたい)。
【0004】
Komas et al. (1996)によって説明されるように、その分野における初期労働者が、サイクリックヌクレオチドの3'結合を特異的に加水分解することに関与する単一酵素であると考えられていたものを部分的に精製した。しかしながら、ホスホジエステラーゼ阻害剤の複数の型が、異なる組織に存在するということが後に明らかになった;酵素は三つの主要な群に分類され、そのうちの一つは、cAMPに対する高親和性を示し、「低Km」cAMP PDEと呼ばれた。この「低Km」cAMP PDEは、物理的特性、速度論的性質、および阻害剤特異性を含む、全く異なる特性を有する二つの異なったアイソザイムからなることが最終的に発見された。一つのアイソザイムは、シロスタミドおよびcGMPによる阻害に対して非常に敏感であることが見出され、現在ではcAMP-特異的、cGMP-阻害性サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ(cGI-PDE)またはPDE IIIとして公知であり、一方で第二のアイソザイムはPDE IVとして分類された(Komas et al., 1996)。
【0005】
ホスホジエステラーゼは、現在は、アミノ酸またはDNA配列に基づいて、10の主要なファミリー、I〜X型、に分類されている。ファミリーのメンバーは、cAMPおよびcGMP経路へのそれらのリンクと同様に、それらの組織、細胞および細胞内分布において変化する。例えば、陰茎海綿体は以下を含む:III型ホスホジエステラーゼ、上記で説明したように、cAMP-特異的cGMP阻害可能である;IV型ホスホジエステラーゼ、高親和性、高特異性cAMP特異型;およびV型ホスホジエステラーゼ、cGMP特異型の一つ。
【0006】
ビンポセチン、ミルリノン、アムリノン、ピモベンダン、シロスタミド、エノキシモン、ピロキシモン、ベスナリノン、ロリプラム、RO20-1724、ザプリナスト、ジピリダモール、ペントキシフィリン、クエン酸シルデナフィル(Viagra(登録商標))、ドキサゾシン、パパベリン、プラゾシン、テラゾシン、トリマゾシン、およびヒドララジンを含む、様々な化合物が、ホスホジエステラーゼの阻害剤として公知である。国際公開公報第94/28902号は、ピラゾール[4,3-d]ピリミジン-7-オンcGMPホスホジエステラーゼ阻害剤のシリーズを開示している。国際公開公報第96/16644号も、グリセオリン酸(griseolic acid)誘導体、2-フェニルプリノン誘導体、フェニルピリドン誘導体、融合および縮合ピリミジン類、ピリムドピリミジン(pyrimdopyrimidine)誘導体、プリン化合物、キナゾリン化合物、フェニルピリミドン誘導体、イミダゾキノキサリノン誘導体またはそれらのアザ類似体、フェニルピリドン誘導体、およびその他を含む、様々なcGMPホスホジエステラーゼ阻害剤を開示している。
【0007】
PDE-IIIは、様々な心臓血管疾患を含む、様々な疾患における治療のための標的分子として関与している。例えば、心臓肥大は、PDE-IIIの阻害が適応される一つのそのような疾患である。心臓肥大は、高血圧、機械的負荷異常、心筋梗塞、弁障害、特定の心臓不整脈、内分泌障害、および心臓収縮タンパク質遺伝子における遺伝子突然変異を含む、心疾患の多くの型に対する心臓の適応反応である。肥大反応は、心仕事量を増やす初期代償メカニズムと考えられているが、持続性肥大は不適応で、心室拡張および心不全の臨床症候群を頻繁に引き起こす。従って、心臓肥大は、心疾患罹患および死亡に対する独立リスク因子として確立されている(Levy et al., 1990)。
【0008】
薬理学的薬剤を用いた治療は、心不全の徴候を軽減するまたは排除するための一次メカニズムに相当する。利尿薬は、軽度から中程度の心不全に対する治療の第一選択を構成する。不幸にも、一般的に使用される利尿薬(例えば、チアジド類)の多くは、多数の有害影響を有する。例えば、特定の利尿薬は、血清コレステロールおよびトリグリセリド類を増加させる可能性がある。さらに、利尿薬は、重度の心不全を患う患者に対しては概して効果がない。利尿薬が効果がない場合、血管拡張薬が使用され得る;アンジオテンシン変換(ACE)阻害剤(例えば、エナロプリルおよびリシノプリル)は、症状緩和を提供するだけでなく、死亡率を低下させると報告されてもいる(Young et al., 1989)。しかしながら、ACE阻害剤は先と同様に、特定の病状(例えば、腎動脈狭窄)を伴う患者においてそれらが禁忌である状態を引き起こす有害影響に関連する。同様に、変力剤治療(すなわち、心筋の筋収縮の力を増加させることによって心拍出量を改善する薬)は、胃腸問題および中枢神経系障害を含む、一揃いの(a panoply of)有害反応に関連する。
【0009】
従って、現在使用されている薬理学的薬剤の多くは、特定の患者集団において重度の欠点を有する。PDE-III阻害剤などの新しく、安全でかつ効果的な薬剤の有効性は、現在有効な薬理学的療法を使用できない患者、またはそれらの療法から十分な緩和を受けない患者に、間違いなく恩恵をもたらすと考えられる。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
従って、本発明に従って、薬学的エノキシモンのスルホキシドの純粋な(S)-(-)-エナンチオマーとして、下記化学式Iの化合物が提供される。

本発明のさらなる態様において、化合物は、純度70%を超える、純度75%を超える、純度80%を超える、純度85%を超える、純度90%を超える、純度95%を超える、純度97%を超える、純度98%を超える、または純度99%を超える。これらの態様において、(S)-(-)型は、(R)-(+)エナンチオマーの混入を実質的に含まないと考えられる。
【0011】
本発明の一つの態様において、化学式Iの化合物、およびすべての薬学的に許容されるそれらの塩を含む調合薬が提供される。
【0012】
さらなる態様において、薬学的製剤が、迅速な放出、定時放出、遅延放出、持続性放出、経口懸濁液、非経口送達を介して、坐薬として、静脈内投与、筋内投与を介して、腹腔内に、舌下に、経皮的に、または鼻咽頭経路を介して送達されると考えられる。また、薬学的製剤の固形および液状形態も考えられる。
【0013】
本発明のさらなる態様において、化合物が、素錠、カプセル、粉末、トローチ、顆粒、リポソーム、坐薬、溶液、コロイド、軟膏、クリーム、蒸気、噴霧、ナノ粒子、吸入抗原、点鼻溶液、静脈注射用混合調剤、表皮溶液、バッカル錠、シロップ、クリーム、ローション、ゲル、乳液、またはエリキシル剤として製剤されると考えられる。製剤は、錠剤結合剤、充填剤、防腐剤、錠剤分解物質、流量調整弁、可塑剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、溶剤、徐放剤、抗酸化物質、またはプロペラントガスの一つまたは複数をさらに含み得る。
【0014】
本発明の特定の態様において、製剤は、PDE-IIIの阻害が有益であると考えられる患者における病状を、患者に薬学的製剤を投与することによって治療するために使用されると考えられる。病状は、急性心不全、慢性心不全、血行動態不全、慢性心疾患、心臓肥大、血小板障害、腎疾患、腎不全、肺高血圧症、PAH、安定狭心症、不安定狭心症、勃起障害、心筋梗塞、抹消血管疾患、喘息、気管支痙攣肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、胃腸障害、高凝固状態(hypercoagulation states)、血小板増加症、子癇、または子癇前症を含むリストから選択され得る。
【0015】
本発明の製剤に加えて、第二の調合薬が第二の治療法として加えられ得ることがさらに企図される。第二の調合薬は、「ベータブロッカー」、降圧剤、強心剤、抗血栓剤、血管拡張剤、ホルモンアンタゴニスト、エンドセリン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害剤/ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、その他のホスホジエステラーゼ阻害剤、またはアンジオテンシン2型アンタゴニストを含むリストから選択され得る。第二の調合薬は、アンブリセンタンまたはダルセンタンという薬であってもよい。
【0016】
実施態様の説明
エノキシモンは、点滴製剤において、鬱血性心不全を治療するため、かつ心臓手術後または移植セッティング(setting)の患者を治療するために使用されている。エノキシモンは、イミダゾロン誘導体と呼ばれる薬の特異な化学的分類のメンバーで、陽性変力および血管拡張特性の両方を保有する。これらの二重作用は、心筋酸素消費量へのわずかな影響を伴ってまたは影響を伴わずに、増加した心拍出量を引き起こす、増加した収縮性に加えて軽減された前負荷および後負荷によって、臨床的に証明されている。これらの効果に対する分子的機序は、cAMPの細胞内レベルの増加およびその結果として生じる変力効果を引き起こす、PDE-IIIに対するエノキシモンの明確な阻害作用である。不幸にも、しばしば病院において、点滴治療は、典型的には熟練した医療従事者の関与を必要とする。患者の薬剤服用順守は、自己治療の問題にもなる。エノキシモンは、心不全の治療として使用され得る固体製剤薬として現在有効であるが、まだ認可された調合薬ではなく、従って、PDE-IIIの阻害が有益であると考えられる心不全および関係する病状を治療するために使用され得ると考えられる付加的な薬が、非常に望ましいと考えられる。エノキシモンは、荷電されずに、かつ生体内変換後に体から排除される。エノキシモンスルホキシドは、ヒトにおいて見出された主な代謝産物であり、摂取後の最初の変換として生じる。エノキシモンスルホキシドは、強心活性を保有もし、かつキラル分子である。エナンチオマー的に純粋なエノキシモンスルホキシドは、PDE-IIIの阻害が有益であると考えられる任意の病状と同様に、心不全の治療のために使用され得る新しい化合物およびそれらの製剤を提供する、本発明の新しい化合物である。
【0017】
I. 心不全
心不全は、世界における罹患および死亡の主要な原因の一つである。アメリカ合衆国単独では、300万人が心筋症を現在患っており、1年ごとに別の40万人が診断されると概算値は示す。「鬱血性心筋症」とも呼ばれる拡張型心筋症(DCM)は、心筋症の最も一般的な型であり、ほぼ10万人に40人の推定有病率を有する(Durand et al., 1995)。DCMのその他の原因があるが、家族性拡張型心筋症は、「特発性」DCMのおよそ20%に相当すると示されている。DCMの症例のおよそ半分は特発性であり、残りは公知の疾患プロセスに関連する。例えば、重篤な心筋損傷は、癌化学療法において使用される特定の薬(例えば、ドキソルビシンおよびダウノルビシン)、または慢性アルコール依存症に起因する可能性がある。分娩前後の心筋症は、伝染性続発症に関連する疾患のように、DCMの別の特発型である。つまり、DCMを含む心筋症は、重大な公衆衛生問題である。
【0018】
冠動脈疾患、心筋梗塞、鬱血性心不全、および心臓肥大を含む、心疾患およびその徴候は、今日のアメリカ合衆国において、主要な健康リスクを明らかに示す。これらの疾患を患う患者を診断、治療、および支援するための費用は、10億ドルに及ぶ。心疾患の二つの特に重度の徴候は、心筋梗塞および心臓肥大である。心筋梗塞に関して、典型的にはアテローム性動脈硬化症の結果として冠動脈において急性血小板冠動脈閉塞症が生じ、心筋細胞死を引き起こす。心筋細胞、心臓の筋肉の細胞は、最終分化していて概して細胞分裂できないので、急性心筋梗塞の進行の間に死ぬ際に、それらは概して瘢痕組織に置き換えられる。瘢痕組織は収縮性ではなく、心臓機能への貢献はできず、かつ心臓収縮の間に膨張することによって、または心室のサイズおよび有効半径を増加させる、例えば肥大性になることによって、心臓機能においてしばしば有害な役割を果たす。
【0019】
II. PDE-III
A. ホスホジエステラーゼ
ホスホジエステラーゼは、サイクリックヌクレオチド、サイクリックAMPおよびサイクリックGMPの対応する5'ヌクレオチド一リン酸への分解を触媒する酵素である。10の異なるホスホジエステラーゼのファミリーが、今日までに記載されている。これらの酵素は、ホモ二量体として存在し、異なるファミリーの間で構造的類似性がある。しかしながら、それらは、サイクリックヌクレオチドに対する選択性、阻害剤および活性剤に対する感受性、生理学的役割、ならびに組織分布などのいくつかの点で異なる。これらの酵素における関心が、シルデナフィル(Viagra)、勃起障害の治療のために最近導入された薬物の結果として、医学界および一般社会の両方において、最近は増加した。シルデナフィルは、PDE-IIIの近親体であるPDE-Vを阻害することによってその効果を媒介する。ホスホジエステラーゼによって媒介されるその他の機能は、PDE-III阻害剤に伴ってみられる副作用のいくつかである視覚障害、顔面紅潮、および低下した血圧を説明する。
【0020】
B. PDE-III阻害
1. 心肺疾患
PDE-III阻害は、陽性変力物質として公知の薬とともに達成された。陽性変力薬は、様々な作用メカニズムを有し、心疾患を治療するために以前に使用されていた多くの薬とは異なる作用をする。サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)-依存薬の長期使用は、心不全患者の予後に対する有害影響を有するが、ジゴキシンは死亡に対する中立的効果を有する。しかしながら、患者の転帰に対する変力薬の効果に関するデータはほとんどない。静脈内変力剤は、心臓緊急状態および難治性心不全の治療のために使用されている。β-アドレナリンアゴニストは、迅速に作用しかつ漸増しやすく、短い排出半減期を有する;しかしながら、それらは心筋酸素消費量を増加させ、従って心筋虚血の間は有害である。さらに、それらは、筋細胞アポトーシスを促進する可能性がある。エノキシモンなどのホスホジエステラーゼ(PDE)III阻害薬は、cAMPの分解を軽減することによって収縮性を増加させる。加えて、それらは血管拡張を介して、前負荷および後負荷の両方を軽減する。静脈内ミルリノン、別のPDE-III阻害剤の短期使用は、増加した死亡とは関連しておらず、PDE-III阻害剤が難治性心不全において使用される場合に、いくつかの症状の有益性がもたらされる可能性がある。さらに、PDE III阻害剤は、心臓手術後の心肺バイパス装置からの離脱を促進する。変力薬の薬物動態学は、例えば、長時間作用活性代謝産物のために、時々治療への反応を大いに修正しかつ延長する可能性がある。これらの薬は、それらの薬物動態学および薬物力学においてかなりの相違を示し、最も適切な変力薬の選択は、患者の臨床状態の慎重な考慮およびその薬の薬理学に基づくべきである。
【0021】
ヒトの細胞調製および組織のPDEプロフィールは、選択的PDE阻害剤および活性剤を使用した半定量法によって解析されてもいる。白血球、肺胞マクロファージ、および内皮細胞はPDE IIIを含み、マクロファージからの腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-アルファ)の放出か、または白血球増殖(PDE III/IV細胞)の完全な抑制のために、PDE IIIおよびPDE IVの両方が阻害されなければならないと実証されている。PDE阻害剤は、炎症細胞のPDEアイソザイム活性および機能を有効に(with potency)阻害することができ(Schudt et al., 1995)、従ってエノキシモンのようなPDE-III阻害剤は、肺または喘息の疾患の治療において有益であり得る。
【0022】
a. 心不全および肥大
冠動脈疾患、心筋梗塞、鬱血性心不全、および心臓肥大を含む心疾患およびその徴候は、今日のアメリカ合衆国において、主要な健康リスクを明らかに示す。これらの疾患を患う患者を診断、治療、および支援するための費用は、10億ドルに及ぶ。心疾患の一つの特に重度の徴候は、心臓肥大である。肥大に関して、一つの理論は、これを異常分化に似ている疾患とみなし、そのようなものとして、心臓における分化シグナルが肥大疾患に貢献し得るかどうかという問題を提起する。心臓肥大は、高血圧、機械的負荷、心筋梗塞、心臓不整脈、内分泌障害、および心臓収縮タンパク質遺伝子における遺伝子突然変異から生じる疾患を含む、心疾患の事実上すべての型に対する心臓の適応反応である。肥大反応は、初期は心仕事量を増やす代償メカニズムであるが、持続性肥大は、DCM、心不全、および突然死を引き起こす可能性がある。アメリカ合衆国では、毎年およそ50万人が心不全と診断され、死亡率は50%に達する。
【0023】
心臓肥大の原因および影響は、広範囲に文書化されているが、その基礎をなす分子メカニズムは完全に解明されていない。これらのメカニズムを理解することは、心疾患の予防および治療における主要な懸案事項であり、心臓肥大および心臓心不全を特異的に標的とする新しい薬を設計することにおいて治療法として重要になるであろう。心臓肥大の症状は、初期は心不全のそれらを模倣し、息切れ、労作による疲労、息切れにならずに寝そべることができない(起座呼吸)、発作性夜間呼吸困難、拡大した心臓容積、および/または下肢の腫れを含み得る。患者は、上昇した血圧、余分な心音、心雑音、肺および全身性の塞栓症、胸痛、肺鬱血、ならびに動悸もしばしば提示する。加えて、DCMは、駆出率の低下(すなわち、内因性の収縮機能およびリモデリングの両方の測定)を引き起こす。この疾患は、多くの患者において拡張型心不全を引き起こす、低下した心筋収縮性による心室拡張および著しく障害を受けた収縮機能によってさらに特徴付けられる。病変した心臓は、筋細胞/心筋障害の結果として、細胞/チャンバーリモデリングも経験し、「DCM表現型」へ貢献する。DCMを伴う患者は、心室頻脈および心室細動を含む、生命に関わる不整脈の大いに増加した発生率も有する。これらの患者において、失神(めまい)の発作は、突然死の前兆とみなされる。
【0024】
肥大の診断は、典型的には、拡大した心臓チャンバー、特に拡大した心室の実証に依存する。拡大は、一般的には胸部X線上で観測できるが、心エコー図を使用してより正確に評価される。DCMは、急性心筋炎、弁膜心疾患、冠動脈疾患、および高血圧性心疾患と区別するのがしばしば難しい。一度、拡張型心筋症の診断がなされると、改善可能な原因を同定して治療し、かつさらなる心臓損傷を予防するためにあらゆる努力がなされる。例えば、冠動脈疾患および弁膜心疾患は、除外されなければならない。貧血、異常な頻脈、栄養失調、アルコール依存症、甲状腺疾患、および/またはその他の問題は、対処されかつ制御される必要がある。
【0025】
前述のように、薬理学的薬剤を用いた治療もやはり、心不全の徴候を軽減するまたは排除するための一次メカニズムに相当する。利尿薬は、軽度から中程度の心不全に対する治療の第一選択を構成する。不幸にも、一般的に使用される利尿薬(例えば、チアジド類)の多くは、多数の有害影響を有する。例えば、特定の利尿薬は、血清コレステロールおよびトリグリセリド類を増加させる可能性がある。さらに、利尿薬は、重度の心不全を患う患者に対しては概して効果がない。
【0026】
利尿薬が効果がない場合、血管拡張薬が使用され得る;アンジオテンシン変換(ACE)阻害剤(例えば、エナロプリルおよびリシノプリル)は、症状緩和を提供するだけではなく、死亡率を減少させると報告されてもいる(Young et al., 1989)。しかしながら、再度、ACE阻害剤は、特定の病状(例えば、腎動脈狭窄)を伴う患者においてそれらが禁忌である状態を引き起こす有害影響に関連する。同様に、変力剤治療(すなわち、心筋の筋収縮の力を増加させることによって心拍出量を改善する薬)は、胃腸問題および中枢神経系障害を含む、一揃いの有害反応に以前から関連している。
【0027】
従って、現在使用されている薬理学的薬剤は、特定の患者集団において重度の欠点を有する。新しく、安全でかつ効果的な薬剤の有効性は、現在有効な薬理学的療法を使用できない患者、またはそれらの療法から十分な緩和を受けない患者に、間違いなく恩恵をもたらすと考えられる。
【0028】
b. 高血圧
肺動脈高血圧症は、心臓障害、COPDなどの肺障害、または両方の組み合わせによってしばしば引き起こされる二次的な事象である。極めて一般的であるが、肺高血圧症の発生率は、部分的に多くの患者が診断未確定であるという事実により、正確に決定されていない。しかしながら指標として、50歳よりも年上の個人において、肺性心、未治療の肺高血圧症の結末は、第三の最も一般的な心臓障害である。心疾患は、過負荷の体積または圧を介して肺高血圧症を起こす;しかし続いて起こる肺抵抗血管の血管内膜増殖は、閉塞要素を付加する。肺血管収縮に伴う血管周囲の実質の変化は、呼吸器疾患における肺高血圧症のメカニズムである。肺高血圧症の症状は、最小の労作による息切れ、疲労、胸痛、めまい、および失神を含む。現時点では、わずかな選択肢が、肺高血圧症の治療に対して有効である。エポプロステノール(Flolan)、またはプロスタサイクリンは、血小板凝集の阻害剤と同様に、有力な治療として研究されている。吸入一酸化窒素(NO)も、選択的な肺血管拡張剤として確立されているが、NO吸入の長期使用に関連する問題は、その潜在毒性および携帯型吸入における困難を含み、肺高血圧症の治療におけるその使用を制限する。従って、NOレベルまたはそのシグナル伝達経路の活性を増加させるためのその他の戦略が研究されている。NOはcGMPを増加させ、それによって血管拡張を媒介する。PDE-III、二次弛緩分子は、ヒトの肺血管系動脈において発現している。PDE-IIIの活性は、肺高血圧症のモデルにおいて増加する。低酸素動物から採取された動脈調製は、弛緩を伴ってPDE-III阻害(ミルリノンおよびSCA40)に反応するという観測を伴ったこの知見は、ヒトの高血圧疾患においてこの酵素を標的にすることを支持している。ごく最近、スコットランドの研究者が、慢性低酸素症の後にPDE-III活性が増加するメカニズムを研究した。PDE-IIIAは、プロテインキナーゼA依存性メカニズムを介して過剰発現することが見出された。データは、PDE-IIIを肺高血圧症の病態生理学にさらに関係させ、これらの酵素を標的にするための新しい戦略を描き、かつ治療的アプローチとしてそのような戦略の使用を支援する(Murray et al., 2002)。
【0029】
2. 勃起障害
インポテンスまたは勃起機能不全は、45歳未満の成人男性の約12%、60歳の男性の約20%、および75歳の男性の約55%に影響を及ぼすと考えられる広く知られた障害である。男性の性的障害と同様に、女性の性的障害の有病率は、年齢とともに上昇し、血管リスク因子の存在および更年期障害の進行に関連することが示されている。
【0030】
勃起障害の複数の原因がある。例えば、勃起障害は、不安または鬱に起因する、明確な肉体または器官の障害を伴わない、精神的なものである可能性がある。「心因性」と呼ばれるそのような勃起障害は、インポテンスの症例の約15から20%に関与する。その他の症例において、勃起障害は、陰茎に血液を供給する動脈のアテローム性動脈硬化症に関連する;そのような障害は「動脈性(arteriogenic)」または「アテローム性動脈硬化性」と呼ばれる。インポテンスの症例の約40から60%は、元来は動脈性である。
【0031】
さらにその他の症例において、陰茎の静脈からの漏出があるので、勃起のための十分な圧が獲得も維持もされ得ない。この障害は、「静脈漏出」または「異常排液」と呼ばれる。この病状は、陰茎への血液の供給が障害を受ける、ある動脈性障害の存在によって、しばしば悪化する。さらにその他の症例において、障害は、陰茎に影響を及ぼす神経系における、例えば手術または骨盤損傷から生じる神経損傷などのニューロパシーに関連する。そのような障害は「神経性」と呼ばれ、これはインポテンスの症例の約10から15%を占める。
【0032】
糖尿病患者、特にインシュリン依存性糖尿病を伴う患者の間でも、勃起機能不全の高い発生率がある。糖尿病患者における勃起障害は、「糖尿病誘発性」としてしばしば分類され、基礎をなす障害は通常は神経性であるが、しかし動脈性または神経性および動脈性であり得る。糖尿病の男性の約半分は勃起機能不全を患っており、神経性インポテンスの症例の約半分は糖尿病患者にみられる。
【0033】
さらに、勃起機能不全は、高血圧を患う人において血圧を下げるために投与されるベータ-ブロッカーなどの特定の薬、または鬱もしくは不安を治療するために投与される薬の副作用である。過度のアルコール消費も、勃起機能不全と関係がある。勃起機能不全のこれらの型は、神経性または心因性機能不全のサブセットとみなされ得る。
【0034】
ヒトにおいて、陰茎勃起は、陰茎海綿体の細胞における平滑筋緊張の弛緩に依存する。この弛緩は、ホスホジエステラーゼ(PDE)アイソザイムによって調節される、サイクリックグアノシン一リン酸(サイクリックGMP)およびサイクリックアデノシン一リン酸(サイクリックAMP)の十分なレベルの存在に依存する。サイクリックGMPおよびサイクリックAMPは、PDEアイソザイムによって分解され得る二次メッセンジャーである。二次メッセンジャーシグナル経路は、海綿体平滑筋弛緩にとって必要不可欠である。
【0035】
インポテンスを治療するための多くの方法が有効である。これらの治療は、薬理学的治療、手術を含み、心因性障害の症例においては、精神的カウンセリングが時には効果的である。機能不全が静脈漏出による身体的なものである稀な症例では、静脈の病巣を修復するために手術が通常は採用され、それによって機能不全を治し、または静脈の病巣の修復後に勃起機能不全が残る場合には、薬理学的方法による治療に対して機能不全を敏感にする。
【0036】
前述のように、治療の薬理学的方法は、有効であり、かつ非常に効果的であることが示される(米国特許第6,541,487号)。EDに対する治療は、様々な薬理学的薬剤、真空デバイス、および人工陰茎を含む。薬理学的薬剤の中で、パパベリン、フェントラミン、およびアルプロスタジルは、現在実際に使用されている。これらの薬剤は、直接の海綿体内または尿道内注射の後に効果的なだけであり、持続勃起症、線維症、陰茎痛、および注射部位の血腫などの副作用に関連する。真空デバイスは、EDに対する非侵襲的な別の治療である。これらのデバイスは、陰茎体の周囲に陰圧を作り、受動的な動脈拡張を介して陰茎海綿体への増加した血流を引き起こすことによって勃起を起こす。治療のこの型は、器官由来のEDにおいては頻繁に成功するが、不満として、自発性の欠乏および機械的デバイスの使用に関わる時間、ならびに射精に伴う困難および不快感が含まれる。様々な半剛性または膨張式人工陰茎が、特に糖尿病の男性において、ある程度成功して使用されている。これらのデバイスは、その他の治療選択肢が失敗した場合に概して考慮され、感染および虚血の増加したリスクに関連する。
【0037】
最近、選択的PDE-V阻害剤、シルデナフィル(Viagra.RTM.)は、EDの治療のための経口で効果的な薬物としてFDAによって認可された。シルデナフィル、5-[2-エトキシ-5-(4-メチルピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-6,7-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オンおよび多くの関係する類似体ならびに抗狭心症薬としてのそれらの使用は、米国特許第5,250,534号および第5,346,901号において記載される。男性勃起障害を治療するためのシルデナフィルおよび関係する類似体の使用は、1994年12月22日に刊行された、PCT国際出願刊行物、国際公開公報第94/28902号に記載される。臨床研究において、その薬は、心因性または器質的病因のEDを患う男性の約70%において性的機能を改善した。
【0038】
PDE-Vは、勃起障害に関わる唯一のPDEではない可能性が高い。阻害された場合に、体の異なる機能に影響を及ぼすホスホジエステラーゼアイソザイムの7つの公知の型がある。III型PDEは、V型とともに、阻害された場合に、ヒト陰茎海綿体に影響を及ぼすことが公知である(Stief et al., 1998)。例えば、PDE-IIIによる二次メッセンジャーサイクリックAMPの加水分解は、陰茎の海綿体平滑筋の弛緩において重要な調節的役割を果たすことが公知である(Kuthe et. al., 1999)。エノキシモンまたはエノキシモンスルホキシドのエナンチオマーと異なり、シルデナフィルは選択的PDE-V阻害剤である。シルデナフィルは、冠血管平滑筋組織において、サイクリックGMPレベルを選択的に増加させるが、サイクリックAMPレベルにおいては変化を起こさない。シルデナフィルは、エノキシモンによって標的にされた酵素であるPDE-IIIのごくわずかな阻害を示す(Wallis et al., 1999)。従って、エノキシモンおよびエノキシモンスルホキシドのエナンチオマーの両方は、勃起障害の治療に使用され得る。
【0039】
3. その他の疾患
PDE-III阻害は、様々なその他の病状に対しても適応されているまたは関係があるとされている。PDE-IIIは、血小板凝集に影響を及ぼすことが公知で、PDE-III阻害剤は、血小板障害、凝固および凝集障害を治療することにおいて有用であり得る(Sly et al., 1997)。PDE-IIIの阻害は、狭心症の症状を緩和するのに有益であり得るということが報告されている(Schlepper et al., 1991)。PDE-III阻害が、腎疾患の治療において有益であり得るだろうということを示す多くの報告がある(Wang et al., 2002; Wagner et al., 1998; Tsuboi et al., 1996;およびTakeda et al., 1991)。Yamaura et al (2001)は、PDE-III阻害が、胃腸障害の治療において有用であり得るということを示した。最後に、PDE-IIIの阻害は、様々な血管および循環障害にも適応されている(Ichioka et al., 1998; Shiraishi et al., 1998;およびBoldt et al., 1993)。
【0040】
III. エノキシモン
エノキシモン(1,3-ジヒドロ-4-メチル-5-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2H-イミダゾール-2-オン)は、心臓に存在しかつ心臓機能において重要な調節的役割を果たす酵素である、III型ホスホジエステラーゼ、またはPDE-IIIの高度に選択的な阻害を示す小さな有機分子である。PDE-III阻害剤は、この酵素の作用を遮断し、心臓の収縮の力を増加させ、それによって心拍出量を増加させる。エノキシモンのように心臓の収縮の力を増加させる化合物は、陽性変力物質と呼ばれる。エノキシモンは、血管を取り囲む平滑筋細胞への影響を介して、血管拡張、血管の直径における増加も引き起こし、心臓が拍出するはずであるより低い圧を引き起こす。陽性変力作用および血管拡張は、両方とも心不全の治療において治療的に有用であり得る。エノキシモンは、米国特許第4,505,635において詳細に記載されており、参照により本明細書に組み入れられる。
【0041】
進行性慢性心不全を伴う患者は、患者に望ましい症状緩和を提供し、かつ急性非代償性心不全の付加的な発作を遅らせることによって入院の頻度を軽減すると考えられる、経口変力剤の慢性使用から大いに恩恵を受け得る。これらの特徴を有する経口製品は、現在静脈内変力治療に依存している重度の心不全を伴う患者をそれらの薬剤から離脱させ、彼らが病院を去り、より正常な日常生活に戻る機会を可能にし得る。そのような薬剤は、心不全の治療に関連する全体的な費用を減少させると考えられる。エノキシモンはそのような薬剤に相当するが、エノキシモンスルホキシドのエナンチオマーは、慢性心不全だけではなく、PDE-IIIの阻害が適応される任意の病状を治療するために使用され得るであろう、別の活性のある新しいPDE-III阻害剤に相当する。
【0042】
A. スルホキシドエナンチオマー
前述のように、エノキシモンは、陽性変力および血管拡張活性を保有する化合物のイミダゾール類に属する。これらの薬理学的効果は、心臓におけるおよび血管の平滑筋におけるPDE-IIIの選択的阻害によって引き起こされる。無傷動物において獲得された結果は、心臓収縮力の用量依存的増加、および心拍のごくわずかな増加を伴う末梢動脈抵抗の軽減を示す。心不全を患う患者へのエノキシモンの急性投与の後、用量の増加に伴う心係数のほぼ直線的な増加が見出された。エノキシモンは、荷電されずに、かつ生体内変換後に体から排除される。スルホキシド生成は、人における主な代謝変換である。この代謝産物は、尿中に排出される。エノキシモンスルホキシドは、強心活性も保有する。エノキシモンスルホキシドのエノキシモンへの再転換は、肝臓において、かつある程度腎臓においても生じることが示された。3 mg/kgの単回経口投与後のエノキシモンの生体利用性は、約55%であるが、慢性治療後はより高い可能性がある。これはおそらく初回通過代謝の飽和によるものである。約10 ml/min/kgの平均クリアランスおよび6時間の平均半減期が、心不全を伴う患者において測定された。これらの値は、正常なボランティアにおいて測定されたものと異なり、これらの患者においてはエノキシモンの軽減されたクリアランスを示す。腎不全を伴う患者においては、エノキシモンスルホキシドは血漿中に蓄積する。エノキシモンの排除も軽減される(Jahnchen & Trenk, 1991)。
【0043】
以前に、様々な研究室が、エノキシモンの両方の単回経口投与後および短期慢性経口治療後の定常状態において、ヒトにおけるエノキシモンおよびエノキシモンスルホキシドの吸収および排出(disposition)動態を研究した(Ruder et al., 1991)。エノキシモンスルホキシドの血漿レベルは、すべてのサンプリング時間において、エノキシモンのそれらよりも大きく見られた。ピークのエノキシモンスルホキシド血漿濃度は、個々の患者に対して、ピークのエノキシモン血漿レベルの3.5から17.3倍の範囲であった(Ruder et al., 1991)。エノキシモンに対する平均定常状態血漿濃度は、8時間毎に50 mgおよび8時間毎に100 mg の用量に対して、それぞれ115+/-40 ng/mlおよび190+/-78 ng/mlであった(Ruder et al., 1991)。エノキシモンの吸収および排出動態は、かなり変わりやすいことが見出された。観測された定常状態血漿レベルと予測された定常状態血漿レベルとの間の関係と同様に、投与される用量と定常状態血漿レベルとの間の関係も研究された。予測された定常状態レベルと観測された定常状態レベルとの間の高い(good)相関と同様に、投与された用量と蓄積された血漿レベルとの間には直線的な関係があることが見出された。データは、エノキシモンの硫化代謝産物が経口治療の間に血漿に広範囲に蓄積し、エノキシモンのそれらよりもより高いレベルに達するという以前の報告を裏付けたが、早期の研究データは、薬としてのスルホキシドの使用を支援しなかった(Morita et al., 1995)。
【0044】
エノキシモンスルホキシドは、キラルである。現在では、本発明者らによって、エノキシモンスルホキシドの(S)-(-)-エナンチオマーが、(R)-(+)-エナンチオマーよりも活性であることが示されている。そのようなものとして、エノキシモンスルホキシドの(S)-(-)-エナンチオマーの精製バージョンが、PDE-IIIの阻害が有益であり得る様々な疾患の治療における使用のための治療的な化合物として、本発明において提示される。
【0045】
B. エノキシモンの合成
エノキシモンは、様々な手段で獲得され得る(米国特許第4,405,635号; Schnettler et al., J. Med. Chem., 25: 1477-1481,1982を参照されたい)。
【0046】
C. 1,3-ジヒドロ-4-メチル-5-[(4-メチルスルフィニル)-ベンゾイル]-2H-イミダゾール-2-オン水和物(エノキシモンスルホキシド)の合成
496グラム(2.0モル)のエノキシモンと34.7リットルの酢酸との混合物を、攪拌棒、温度計、および滴下漏斗を取り付けた72リットルフラスコに入れた。結果として生じる混合物に、227グラム(2.0モル)の30%過酸化水素をゆっくりと添加しながら、攪拌した。常温での攪拌を72時間維持した。ポット(pot)温度は、72時間の間、17℃の低温から25℃の高温の範囲であった。
【0047】
ヨウ素でんぷん紙を用いた過酸化試験は、72時間後では陰性であった。酢酸を40℃で真空にて蒸発させた。得られた固形残渣を、2リットルの水でスラリーにした。粗生成物を濾過し、水でよく洗浄し、次いで常温で風乾し、510グラム、dec. 273〜275℃を得た。
【0048】
前述のように調製された、総量995グラムの粗生成物を、10リットルのジメチルホルムアミドに146℃で溶かした。熱い溶液を、存在する不溶性物質を除去するために重力式濾過し、次いで6.5時間室温で保存した(終了時のポット温度は30℃であった)。生成物を濾過し、1リットルの冷ジメチルホルムアミドで3回洗浄し、次いで常温で乾燥し、790グラム、dec. 274〜275℃を得た。
【0049】
総量789グラム(2.98モル)の前述の半精製生成物を、5.544リットルの水とともに12リットル丸底フラスコに入れた。結果として生じる懸濁液を、1.544リットルの水に118.8グラム(2.97モル)の水酸化ナトリウムを溶解した溶液を30分かけて添加しながら、激しく攪拌した。一度溶液が得られたら、78.7グラムのNucharを添加し、その混合物を室温で15分間攪拌した。すすぎのために1.44リットルの水を使用して、セリットを介した濾過によって炭を除去した。結果として生じる濾液を、0.96リットルの10%塩酸を30分かけて添加しながら攪拌した。さらに30分の攪拌の後、生成物を濾過し、2リットルの氷水で3回洗浄し、次いで常温で風乾し、755グラム、dec. 276〜277℃、63.5%収率を得た。
元素分析:C12H12N2O3S・H2Oに対する計算値:C, 51.05; H, 5.00; N, 9.93; S, 11.36. 実測値: C, 50.90; H, 5.01; N, 9.92; S, 11.35
【0050】
D. 1,3-ジヒドロ-4-メチル-5-[(4-メチルスルフィニル)-ベンゾイル]-2H-イミダゾール-2-オン水和物(エノキシモンスルホキシド)の(R)-(+)-および(S)-(-)-エナンチオマーの合成
1. 方法A
エノキシモンスルホキシドの(R)-(+)-および(S)-(-)-エナンチオマーは、キラル固相を使用した分取クロマトグラフィー分離によって、ラセミ型エノキシモンスルホキシドから調製され得る。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、そのような分離に対して使用される最も一般的な技術である。高圧、中圧、低圧、および大気圧液体クロマトグラフィーが、そのような分離に対して使用され得る。多くの液相およびキラル固相が、この型の応用に有効である。方法の概論として、参照により本明細書に組み入れられる、Francotte (2001);およびAnderson and Allenmark (2002)を参照されたい。半調製的応用の概論として、すべてが参照により本明細書に組み入れられる、Inotsume and Nakano (2002);およびBoatto et al., (2003);および関係する例は、Dolle et al. (1997)において見出され得る;およびAlajarin et al. (1995)を参照されたい。
【0051】
方法Aのその他の態様において、ラセミ化合物は、分解および分離効率を促進するために、アキラルまたはキラル誘導体化剤によって最初に誘導体化され得る;固相は、分離されるために、エナンチオマーの一つまたはもう一方からインプリントポリマーとして調製され得る;ある場合では、分離は、液相におけるキラル添加剤とともにアキラル固相を使用して達成され得る;ある場合では、分離は、アキラル固相およびキラル試薬によって誘導体化されたラセミ化合物を使用して達成され得る(概論として、Toyo'oka, 2002を参照されたい)。
【0052】
2. 方法B
ラセミ型エノキシモンスルホキシドは、ジアステレオマーの混合物を得るために、キラル誘導体化剤と最初に反応し得る。これらのジアステレオマーは、次いで、結晶化またはクロマトグラフィーなどの標準的な技術を使用して、当業者によって分離され得る。個々のジアステレオマーの分離および単離の後、以前に付加されたキラル誘導体化群は、当業者に公知の方法を使用して除去され、個々の純粋なエナンチオマーが獲得され、必要であればさらに精製され、特徴付けられる(March, 1992)。
【0053】
3. 方法C
エノキシモンスルホキシドの望ましいエナンチオマーは、キラルまたは不斉合成の応用を介して、当業者によって調製され得る。この方法において、キラルおよび光学活性出発物質または合成の間に付加される基礎的要素(building block)が、合成されるエナンチオマーを決定する。方法Cの別の態様において、最終化合物には組み入れられないキラル試薬は、単一のエナンチオマーの構造を有する化合物において、キラリティーの選択的な構造を方向付けるために、合成の間に使用される(一般概論として、Burke and Henderson, 2002;Hillier and Reider, 2002;およびIida and Mase, 2002を参照されたい)。
【0054】
方法Cの別の態様において、当業者は、望ましいエナンチオマーの不斉合成に、バイオプロセスを適用でき得る(概論として、Patel, 2001;およびHuisman and Gray, 2002を参照されたい)。
【0055】
方法Cの別の態様において、当業者は、望ましいエナンチオマーの合成の間に、あるポイントで脱ラセミ化を使用でき得る。脱ラセミ化プロセスは、バイオプロセスまたは非バイオプロセス技術によって提供され得る(March, 1992)。方法Cの別の態様において、当業者は、望ましいエナンチオマーの不斉合成または分離を達成するために、速度論的分割を使用でき得る(March, 1992)。
【0056】
E. (S)-(-)エナンチオマーに対する旋光度
[α]D at 25C = -53.3°(c=0.5, DMSO)
【0057】
IV. 治療の方法
A. 心不全および肥大に対する例示的な治療計画
いつくかの型の心不全は治癒可能であり得、かつこれらは貧血または甲状腺中毒症などの初期疾患を治療することによって対処される。心臓弁異常などの解剖学的な問題によって引き起こされる型も、治癒可能である。これらの異常は、外科的に治され得る。しかしながら、心不全の最も一般的な型--損傷した心筋によるもの--に対しては、公知の治療法は存在しない。これらの疾患の症状を治療することは役立ち、その疾患のいくつかの治療は成功している。治療は、生活様式の変化および薬物治療を介した、患者の生活の質および生存の長さを改善することを試みる。患者は、心疾患に対するリスク因子を制御することによって、心不全の影響を最小にし得るが、生活様式の変化を伴っても、ほとんどの心不全患者は薬物を摂取しなければならず、その多くが二つまたはそれ以上の薬を受け取る。
【0058】
心不全の薬理学的治療は、PDE-III阻害剤がどのようにして任意の様々な疾患を治療するために使用され得るのか、ということの例として役に立ち得る。薬のいくつかの型は、心不全の治療において有用であることが分かったが、それらのうち、普遍的に効果的であるまたは疾患を完全に制御することが可能であるということが分かったものはない。利尿薬は、体内の液の量を軽減するのに役立ち得、体液うっ滞および高血圧を伴う患者に対して有用である;およびジギタリスは、心臓の収縮の力を増加させるのに使用され得、循環を改善するのに役立つ。最近の研究の結果は、ACE阻害剤の使用により強く重点を置いた(Manoria and Manoria, 2003)。いくつかの大きな研究は、ACE阻害剤が心不全患者の間で生存を改善し、心臓拍出活性の損失を遅くする、またはおそらく予防さえし得ることを示した(概論として、De Feo et al., 2003;DiBianco, 2003を参照されたい)。ACE阻害剤を摂取できない患者は、硝酸塩および/またはヒドララジンと呼ばれる薬を取ってもよく、どちらも血流を改善するために血管における緊張を弛緩させるのに役立つ(Ahmed, 2003)。しかし、前述のように、これらの薬は、治癒的ではなく、より良い調合薬が強く必要とされる。
【0059】
今まで、別のいかなる治療(外科的またはそれ以外)も、心不全を治癒するとは示されていないが、前述の薬物治療のように、いくつかの別の治療が、この疾患を患う人々に対して、少なくとも生活の質を改善しかつ寿命を延ばし得る。
【0060】
心不全と同様に、肥大に対する公知の治療法はない。心臓血管障害のセッティングにおいて、心臓肥大の現在の医学的処置は、少なくとも二つの型の薬の使用を含む:レンニン-アンジオテンシン系の阻害剤、およびβ-アドレナリン遮断薬(Bristow, 1999)。心不全のセッティングにおいて、病的肥大を治療するための治療薬は、アンジオテンシンII変換酵素(ACE)阻害剤およびβ-アドレナリン受容体遮断薬を含む(Eichhorn and Bristow, 1996)。心臓肥大の治療のために開示されているその他の薬学的薬剤は、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト(米国特許第5,604,251号)および神経ペプチドYアンタゴニスト(国際公開公報第98/33791号)を含む。
【0061】
非薬理学的治療は、主として薬理学的治療の補助として使用される。非薬理学的治療の一つの手法は、食事のナトリウムを軽減することに関与する。加えて、非薬理学的治療は、陰性変力剤(例えば、特定のカルシウムチャネルブロッカーおよびジソピラミドなどの抗不整脈薬)、心臓毒(例えば、アンフェタミン類)、および血漿増量剤(例えば、非ステロイド性抗炎症薬およびグルココルチコイド類)を含む、特定の沈殿薬の排除も必要とする。
【0062】
前述の議論から見られるように、心不全および肥大への成功する治療アプローチが大いに必要とされる。本発明の一つの態様において、精製されたエノキシモンスルホキシド(S)-(-)-エナンチオマーを含む製剤を利用した、心臓肥大または心不全の治療のための方法が開示される。本出願の目的のために、治療は、例えば心不全または心臓肥大において、PDE-IIIの阻害が有益であると考えられる任意の病状の症状の一つまたは複数を軽減することを含む。心疾患に対する症状は、軽減された運動能力、軽減された血液駆出量、増加した左心室拡張終期圧、増加した肺毛細血管楔入圧、軽減された心拍出量、心係数、増加した肺動脈圧、増加した左心室収縮末期経および拡張終期経、ならびに増加した左心室壁圧、壁緊張、および壁厚-右心室に対しても同じ、であり得るだろう。加えて、精製されたエノキシモンスルホキシドエナンチオマーなどのPDE-IIIの阻害剤の使用は、心臓肥大およびその関連する症状が生じるのを予防し得る。
【0063】
B. 組み合わせ治療
別の態様において、その他の治療法との組み合わせでエノキシモンスルホキシド(+)-エナンチオマーを使用することが想定される。従って、前述の治療に加えて、より「標準的な」薬学的心臓治療を患者に提供する可能性もある。その他の治療の例は、非限定的に、いわゆる「ベータブロッカー」、降圧剤、強心剤、抗血栓剤、血管拡張剤、ホルモンアンタゴニスト、その他の変力物質、利尿薬、エンドセリンアンタゴニスト、カルシウムチャネルブロッカー、ホスホジエステラーゼ阻害剤、ACE阻害剤、アンジオテンシン2型アンタゴニストおよびサイトカインブロッカー/阻害剤、ならびにHDAC阻害剤を含む。
【0064】
組み合わせは、心臓細胞を、単一の組成物もしくは両方の薬剤を含む薬理学的製剤に接触させることによって、または細胞を、一つの組成物は発現構成体を含み、もう一方は薬剤を含む、二つの異なった組成物もしくは製剤に同時に接触させることによって達成され得る。または、エノキシモンスルホキシド(S)-(-)-エナンチオマーを使用する治療は、数分から数週間の範囲の間隔で、もう一方の薬剤の投与に先行または追随し得る。もう一方の薬剤およびエノキシモンスルホキシドエナンチオマーが細胞に別々に適用される態様において、各々の送達の時間の間に、かなりの期間の時間が切れ(expire)ないことを概して確実にすると考えられるので、薬剤およびエノキシモンスルホキシドエナンチオマーが、細胞に有利に組み合わされた効果を与えることがさらに可能であると考えられる。そのような例において、典型的には、互いの約12〜24時間のうちに、より好ましくは互いの約6〜12時間のうちに、約12時間のみの遅延時間が最も好ましい状態で、両方の療法に細胞を接触させると考えられる。いくつかの状況において、治療のための期間をかなり伸ばすことが望ましい可能性があり、しかしながら数日間(2, 3, 4, 5, 6 または7)から数週間(1, 2, 3, 4, 5, 6, 7または8)がそれぞれの投与の間で経過する。
【0065】
エノキシモンスルホキシドエナンチオマーまたはもう一方の薬剤の複数回の投与が望ましいということも考えられる。これに関して、様々な組み合わせが採用され得る。実例として、エノキシモンスルホキシドエナンチオマーを「A」、もう一方の薬剤を「B」とし、全部で三回および四回の投与に基づく以下の順列が例示的である:

その他の組み合わせが、同様に考えられる。
【0066】
C. 組み合わせ治療のための補助治療薬
薬理学的治療薬および投与、用量などの方法は、当業者にとって周知であり(例えば、関連のある部分で参照により本明細書に組み入れられる「Physicians Desk Reference」、Goodman and Gilman's「The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition」「Remington's Pharmaceutical Sciences」、および「The Merck Index, Thirteenth Edition」を参照されたい)、本明細書における開示に照らして本発明と組み合わせられ得る。用量における一部の変更が、治療される対象の病状に応じて必ず生じるだろう。投与に関与する人は、任意の事象において、個々の対象に対する適切な用量を決定し、そのような個々の決定は当業者の技術の範囲内である。
【0067】
本発明において使用され得る薬理学的治療薬の非限定的な例は、抗高リポタンパク血症薬、抗動脈硬化薬、抗血栓/線維素溶解薬、血液凝固薬、抗不整脈薬、降圧薬、昇圧剤、鬱血性心不全のための治療薬、抗狭心症薬、抗生物質、またはそれらの組み合わせを含む。
【0068】
1. 抗高リポタンパク血症剤
特定の態様において、「抗高リポタンパク血症剤」として本明細書において公知である、複数の(more)血中脂質および/またはリポタンパク質のうちの一つの濃度を下げる薬剤の投与は、特にアテローム性動脈硬化症および血管組織の肥厚または閉塞の治療において、本発明に従って心臓血管治療と組み合わせられ得る。特定の局面において、抗高リポタンパク血症薬は、アリールオキシアルカン/フィブリン酸誘導体、樹脂/胆汁酸抑制薬、HMG CoA還元酵素阻害剤、ニコチン酸誘導体、甲状腺ホルモンもしくは甲状腺ホルモン類似体、混合型薬剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0069】
a. アリールオキシアルカン酸/フィブリン酸誘導体
アリールオキシアルカン/フィブリン酸誘導体の非限定的な例は、ベクロブレート、エンザフィブレート、ビニフィブレート、シプロフィブレート、クリノフィブレート、クロフィブレート(アトロマイド-S(atromide-S))、クロフィブリン酸、エトフィブレート、フェノフィブレート、ゲムフィブロジル(ロビッド(lobid))、ニコフィブレート、ピリフィブレート、ロニフィブレート、シムフィブレート、およびテオフィブレートを含む。
【0070】
b. 樹脂/胆汁酸抑制薬
樹脂/胆汁酸抑制薬の非限定的な例は、コレスチラミン(コリバー(cholybar)、クエストラン)、コレスチポール(コレスチド)、およびポリデキシドを含む。
【0071】
c. HMG CoA還元酵素阻害剤
HMG CoA還元酵素阻害剤の非限定的な例は、ロバスタチン(メバコール)、プラバスタチン(プラバコール)、またはシムバスタチン(ゾコール)を含む。
【0072】
d. ニコチン酸誘導体
ニコチン酸誘導体の非限定的な例は、ニコチン酸塩、アシピモクッス、ニセリトロール、ニコクロネート、ニコモール、およびオキシナイアシン酸を含む。
【0073】
e. 甲状腺ホルモンおよび類似体
甲状腺ホルモンおよびそれらの類似体の非限定的な例は、エチロキサート、チロプロピン酸、およびチロキシンを含む。
【0074】
f. 混合型抗高リポタンパク血症剤
混合型抗高リポタンパク血症剤の非限定的な例は、アシフラン、アザコステロール、ベンフルオレックス、b-ベンザルブチラミド、カルニチン、コンドロイチン硫酸、クロメストロン、デタクストラン、デキストラン硫酸ナトリウム、5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、エリタデニン、フラザボル、メグルトール、メリナミド、ミタトリエンジオール、オルニチン、g-オリザノール、パンテチン、四酢酸ペンタエリトリトール、a-フェニルブチラミド、ピロザジル、プロブコール(ロレルコ(lorelco))、b-シトステロール、スルトシル酸-ピペラジン塩、チアデノール、トリパラノール、およびキセンブシンを含む。
【0075】
2. 抗動脈硬化剤
抗動脈硬化剤の非限定的な例は、カルバミン酸ピリジノールを含む。
【0076】
3. 抗血栓/線維素溶解薬
特定の態様において、血栓の除去または予防において補助する薬剤の投与は、特にアテローム性動脈硬化症および血管系(例えば、動脈の)閉塞の治療において、モジュレータの投与と組み合わせられ得る。抗血栓および/または線維素溶解薬の非限定的な例は、抗凝固剤、抗凝固剤アンタゴニスト、抗血小板薬、血栓溶解剤、血栓溶解剤アンタゴニスト、またはそれらの組み合わせを含む。
【0077】
特定の局面において、例えば、アスピリンおよびワルファリン(クマジン)などの経口で投与され得る抗血栓薬が好ましい。
【0078】
a. 抗凝固剤
抗凝固剤の非限定的な例は、アセノクマロール、アンクロド、アニシンジオン、ブロミンジオン、クロリンジオン、クメタロール、シクロクマロール、デキストラン硫酸ナトリウム、ジクマロール、ジフェナジオン、ビスクマ酢酸エチル、エチリデンジクマロール、フルインジオン、ヘパリン、ヒルジン、リアポレートナトリウム、オキサジジオン、ペントサン多硫酸、フェニンジオン、フェンプロクモン、ホスビチン、ピコタミド、チオクロマロール、およびワルファリンを含む。
【0079】
b. 抗血小板薬
抗血小板薬の非限定的な例は、アスピリン、デキストラン類、ジピリダモール(ペルサンチン)、ヘパリン、スルフィンピラゾン(アンツラン)、およびチクロピジン(チクリッド(ticlid))を含む。
【0080】
c. 血栓溶解剤
血栓溶解剤の非限定的な例は、組織プラスミノゲン活性剤(アクチベース(activase))、プラスミン、プロウロキナーゼ、ウロキナーゼ(アボキナーゼ)、ストレプトキナーゼ(ストレプターゼ(streptase))、アニストレプラーゼ/APSAC(エミナーゼ)を含む。
【0081】
4. 血液凝固薬
患者が出血または出血の増加した可能性を患っている特定の態様において、血液凝固を促進し得る薬剤が使用され得る。血液凝固促進剤の非限定的な例は、血栓溶解剤アンタゴニストおよび抗凝固剤アンタゴニストを含む。
【0082】
a. 抗凝固剤アンタゴニスト
抗凝固剤アンタゴニストの非限定的な例は、プロタミンおよびビタミンK1を含む。
【0083】
b. 血栓溶解剤アンタゴニストおよび抗血栓剤
血栓溶解剤アンタゴニストの非限定的な例は、アミオカプロン酸(amiocaproic acid)(アミカー(amicar))およびトラネキサム酸(アムスタット(amstat))を含む。抗血栓剤の非限定的な例は、アナグレリド、アルガトロバン、シロスタゾール、ダルトロバン、デフィブロチド、エノキサパリン、フラキシパリン、インドブフェン、ラモパラン、オザグレル、ピコタミド、プラフィブリド、テデルパリン、チクロピジン、およびトリフルサルを含む。
【0084】
5. 抗不整脈薬
抗不整脈薬の非限定的な例は、クラスI抗不整脈薬(ナトリウムチャネルブロッカー)、クラスII抗不整脈薬(ベータ-アドレナリンブロッカー)、クラスII抗不整脈薬(再分極延長薬)、クラスIV抗不整脈薬(カルシウムチャネルブロッカー)、および混合型抗不整脈薬を含む。
【0085】
a. ナトリウムチャネルブロッカー
ナトリウムチャネルブロッカーの非限定的な例は、クラスIA、クラスIB、およびクラスIC抗不整脈薬を含む。クラスIA抗不整脈薬の非限定的な例は、ジソピラミド(ノルペース)、プロカイナミド(プロネスチル(pronestyl))、およびキニジン(キニデクス(quinidex))を含む。クラスIB抗不整脈薬の非限定的な例は、リドカイン(キシロカイン)、トカイニド(トノカード(tonocard))、およびメキシレチン(メキシチール)を含む。クラスIC抗不整脈薬の非限定的な例は、エンカイニド(エンカイド(enkaid))およびフレカイニド(タンボコール)を含む。
【0086】
b. ベータブロッカー
別名b-アドレナリンブロッカー、b-アドレナリンアンタゴニスト、またはクラスII抗不整脈薬として公知の、ベータブロッカーの非限定的な例は、アセブトロール(セクトラール)、アルプレノロール、アモスラロール、アロチノロール、アテノロール、ベフノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、ブクモロール、ブフェトロール、ブフラロール、ブニトロロール、ブプラノロール、塩酸ブチドリン、ブトフィロロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、セタモロール、クロラノロール、ジレバロール、エパノロール、エスモロール(ブレビブロック)、インデノロール、ラベタロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、メトプロロール、モプロロール、ナドロール、ナドキソロール、ニフェナロール、ニプラジロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プラクトロール、プロネタロール、プロパノロール(propanolol)(インデラル)、ソタロール(ベータペース(betapace))、スルフィナロール、タリノロール、テルタトロール、チモロール、トリプロロール、およびキシベノロールを含む。特定の局面において、ベータブロッカーは、アリールオキシプロパノールアミン誘導体を含む。アリールオキシプロパノールアミン誘導体の非限定的な例は、アセブトロール、アルプレノロール、アロチノロール、アテノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、ブニトロロール、ブトフィロロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、セタモロール、エパノロール、インデノロール、メピンドロール、メチプラノロール、メトプロロール、モプロロール、ナドロール、ニプラジロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロパノロール、タリノロール、テルタトロール、チモロール、およびトリプロロールを含む。
【0087】
c. 再分極延長薬
クラスIII抗不整脈薬としても公知の、再分極を延長する薬剤の非限定的な例は、アミオダロン(コルダロン)およびソタロール(ベータペース)を含む。
【0088】
d. カルシウムチャネルブロッカー/アンタゴニスト
別名クラスIV抗不整脈薬として公知の、カルシウムチャネルブロッカーの非限定的な例は、アリールアルキルアミン(例えば、ベプリジル、ジルチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、プレニラミン、テロジリン、ベラパミル)、ジヒドロピリジン誘導体(フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン)、ピペラジン誘導体(例えば、シンナリジン、フルナリジン、リドフラジン)、またはベンシクラン、エタフェノン、マグネシウム、ミベフラジルもしくはペルヘキシリンなどの混合型カルシウムチャネルブロッカーを含む。特定の態様において、カルシウムチャネルブロッカーは、長時間作用型ジヒドロピリジン(アムロジピン)カルシウムアンタゴニストを含む。
【0089】
e. 混合型抗不整脈薬
混合型抗不整脈薬の非限定的な例は、アデノシン(アデノカード)、ジゴキシン(ラノキシン)、アセカイニド、アジマリン、アモプロキサン、アプリンジン、ブレチリウムトシレート、ブナフチン、ブトベンジン、カポベン酸、シフェンリン、ジソピラミド、ヒドロキニジン、インデカイニド、臭化イプラトロピウム、リドカイン、ロラジミン、ロルカイニド、メオベンチン、モリシジン、ピルメノール、プラジマリン、プロパフェノン、ピリノリン、キニジンポリガラクツロネート、硫酸キニジン、およびビキジルを含む。
【0090】
6. 降圧薬
降圧薬の非限定的な例は、交感神経遮断薬、アルファ/ベータブロッカー、アルファブロッカー、抗アンジオテンシンII薬、ベータブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、血管拡張剤、および混合型降圧剤を含む。
【0091】
a. アルファブロッカー
a-アドレナリンブロッカーまたはa-アドレナリンアンタゴニストとしても公知の、アルファブロッカーの非限定的な例は、アモスラロール、アロチノロール、ダピプラゾール、ドキサゾシン、エルゴロイドメシレート類、フェンスピリド、インドラミン、ラベタロール、ニセルゴリン、プラゾシン、テラゾシン、トラゾリン、トリマゾシン、およびヨヒンビンを含む。特定の態様において、アルファブロッカーは、キナゾリン誘導体を含み得る。キナゾリン誘導体の非限定的な例は、アルフゾシン、ブナゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシン、およびトリマゾシンを含む。
【0092】
b. アルファ/ベータブロッカー
特定の態様において、降圧薬は、アルファおよびベータアドレナリンアンタゴニストの両方である。アルファ/ベータブロッカーの非限定的な例は、ラベタロール(ノルモダイン(normodyne)、トランデート)を含む。
【0093】
c. 抗アンジオテンシンII薬
抗アンジオテンシンII薬の非限定的な例は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤およびアンジオテンシンII受容体アンタゴニストを含む。アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)の非限定的な例は、アラセプリル、エナラプリル(バソテック)、カプトプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリレート、フォシノプリル、リシノプリル、モベルチプリル、ペリンドプリル、キナプリル、およびラミプリルを含む。アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、ANG受容体ブロッカーまたはANG-II1型受容体ブロッカー(ARBS)としても公知の、アンジオテンシンII受容体ブロッカーは、アンジオカンデサルタン(angiocandesartan)、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、およびバルサルタンを含む。
【0094】
d. 交感神経遮断薬
交感神経遮断薬の非限定的な例は、中枢作用性交感神経遮断薬または末梢作用性交感神経遮断薬を含む。中枢神経系(CNS)交感神経遮断薬としても公知の、中枢作用性交感神経遮断薬の非限定的な例は、クロニジン(カタプレス)、グアナベンズ(ワイテンシン(wytensin))、グアンファシン(テネックス(tenex))、およびメチルドーパ(アルドメット)を含む。末梢作用性交感神経遮断薬の非限定的な例は、神経節遮断薬、アドレナリン作動性神経遮断薬、β-アドレナリン遮断薬、またはアルファ1-アドレナリン遮断薬を含む。神経節遮断薬の非限定的な例は、メカミラミン(インバーシン(inversine))およびトリメタファン(アルフォナード)を含む。アドレナリン作動性神経遮断薬の非限定的な例は、グアネチジン(イスメリン)およびレセルピン(セルパシル)を含む。β-アドレナリンブロッカーの非限定的な例は、アセニトロール(acenitolol)(セクトラール)、アテノロール(テノルミン)、ベタキソロール(ケルロング(kerlone))、カルテオロール(カルトロール(cartrol))、ラベタロール(ノルモダイン、トランデート)、メトプロロール(ロプレッサー)、ナドロール(コルガード(corgard))、ペンブトロール(レバトール)、ピンドロール(ビスケン(visken))、プロプラノロール(インデラル)、およびチモロール(ブロカドレン)を含む。アルファ1-アドレナリンブロッカーの非限定的な例は、プラゾシン(ミニプレス)、ドキサゾシン(カルデュラ)、およびテラゾシン(ハイトリン)を含む。
【0095】
e. 血管拡張剤
特定の態様において、心臓血管治療薬は、血管拡張剤(例えば、脳血管拡張剤、冠拡張剤、または末梢血管拡張剤)を含み得る。特定の好ましい態様において、血管拡張剤は冠拡張剤を含む。冠拡張剤の非限定的な例は、アモトリフェン、ベンダゾール、ベンフロジルヘミスクシネート、ベンジオダロン、クロラシジン、クロモナール、クロベンフロール、クロニトレート、ジラゼップ、ジピリダモール、ドロプレニラミン、エフロキサート、四硝酸エリトリチル、エタフェノン、フェンジリン、フロレジル、ガングレフェン、ヘキセステロールビス(b-ジエチルアミノエチルエーテル)、ヘキソベンジン、イトラミントシレート、ケリン、リドフラジン、六硝酸マンニトール、メジバジン、ニトログリセリン、四硝酸ペンタエリトリトール、ペントリニトロール、ペルヘキシリン、ピメフィリン、トラピジル、トリクロミル、トリメタジジン、リン酸トロルニトレート、およびビスナジンを含む。
【0096】
特定の局面において、血管拡張剤は、慢性治療血管拡張剤または高血圧性緊急症血管拡張剤を含み得る。慢性治療血管拡張剤の非限定的な例は、ヒドララジン(アプレソリン)およびミノキシジル(ロニテン)を含む。高血圧性緊急症血管拡張剤の非限定的な例は、ニトロプルシド(ニプリド(nipride))、ジアゾキシド(ハイパースタットIV(hyperstat IV))、ヒドララジン(アプレソリン)、ミノキシジル(ロニテン)、およびベラパミルを含む。
【0097】
f. 混合型降圧剤
混合型降圧剤の非限定的な例は、アジマリン、ガンマ-アミノ酪酸、ブフェニオード(bufeniode)、シクレタニン、シクロシドミン、タンニン酸クリプテナミン類、フェノルドパム、フロセキナン、ケタンセリン、メブタメート、メカミラミン、メチルドーパ、メチル4-ピリジルケトンチオセミカルバゾン、ムゾリミン、パルギリン(pargyline)、ペムピジン、ピナシジル、ピペロキサン、プリマペロン、プロトベラトリン類、、ラウバシン、レスシメトール、リルメニデン、サララシン、ニトロプルシドナトリウム、チクリナフェン、カンシル酸トリメタファン、チロシナーゼ、およびウラピジルを含む。
【0098】
特定の局面において、降圧剤は、アリールエタノールアミン誘導体、ベンゾチアジアジン誘導体、N-カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、グアニジン誘導体、ヒドラジン/フタラジン、イミダゾール誘導体、四級アンモニウム化合物、レセルピン誘導体、またはスルホンアミド誘導体を含み得る。
【0099】
アリールエタノールアミン誘導体
アリールエタノールアミン誘導体の非限定的な例は、アモスラロール、ブフラロール、ジレバロール、ラベタロール、プロネタロール、ソタロール、およびスルフィナロールを含む。
【0100】
ベンゾチアジアジン誘導体
ベンゾチアジアジン誘導体の非限定的な例は、アルチアジド、ベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、ベンジルヒドロクロロチアジド、ブチアジド、クロロチアジド、クロルタリドン、シクロペンチアジド、シクロチアジド、ジアゾキシド、エピチアジド、エチアジド、フェンキゾン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチクロチアジド、メチクラン、メトラゾン、パラフルチジド、ポリチアジド、テトラクロルメチアジド、およびトリクロルメチアジドを含む。
【0101】
N-カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体
N-カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体の非限定的な例は、アラセプリル、カプトプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリレート、フォシノプリル、リシノプリル、モベルチプリル、ペリンドプリル、キナプリル、およびラミプリルを含む。
【0102】
ジヒドロピリジン誘導体
ジヒドロピリジン誘導体の非限定的な例は、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニソルジピン、およびニトレンジピンを含む。
【0103】
グアニジン誘導体
グアニジン誘導体の非限定的な例は、ベタニジン、デブリソキン、グアナベンズ、グアナクリン、グアナドレル、グアナゾジン、グアネチジン、グアンファシン、グアノクロル、グアノキサベンズ、およびグアノキサンを含む。
【0104】
ヒドラジン/フタラジン
ヒドラジン/フタラジンの非限定的な例は、ブドララジン、カドララジン、ジヒドララジン、エンドララジン、ヒドラカルバジン、ヒドララジン、フェニプラジン、ピルドララジン、およびトドララジンを含む。
【0105】
イミダゾール誘導体
イミダゾール誘導体の非限定的な例は、クロニジン、ロフェキシジン、フェントラミン、チアメニジン、およびトロニジンを含む。
【0106】
四級アンモニウム化合物
四級アンモニウム化合物の非限定的な例は、臭化アザメトニウム、塩化クロリソンダミン、ヘキサメトニウム、ペンタシニウムビス(メチル硫酸)、臭化ペンタメトニウム、酒石酸ペントリニウム、塩化フェナクトロピニウム、およびメト硫酸トリメチジニウムを含む。
【0107】
レセルピン誘導体
レセルピン誘導体の非限定的な例は、ビエタセルピン、デセルピジン、レシンナミン、レセルピン、およびシロシンゴピンを含む。
【0108】
スルホンアミド誘導体
スルホンアミド誘導体の非限定的な例は、アムブシド、クロパミド、フロセミド、インダパミド、キネタゾン、トリパミド、およびキシパミドを含む。
【0109】
7. 昇圧剤
昇圧剤は、外科的処置の間に起こり得る、ショックの間に血圧を上昇させるために概して使用される。抗低血圧剤としても公知の、昇圧剤の非限定的な例は、メチル硫酸アメジニウム、アンジオテンシンアミド、ジメトフリン、ドーパミン、エチフェルミン、エチレフリン、ゲペフリン、メタラミノール、ミドドリン、ノルエピネフリン、フォレドリン、およびシネフリンを含む。
【0110】
8. 鬱血性心不全のための治療薬
鬱血性心不全の治療のための薬剤の非限定的な例は、抗アンジオテンシンII薬、後負荷-前負荷軽減治療、利尿薬、および変力剤を含む。
【0111】
a. 後負荷-前負荷軽減
特定の態様において、アンジオテンシンアンタゴニストを許容できない動物患者は、組み合わせ治療によって治療され得る。そのような治療はヒドララジン(アプレゾリン)および二硝酸イソソルビド(イソルジル(isordil)、ソルビトレート(sorbitrate))の投与を組み合わせ得る。
【0112】
b. 利尿薬
利尿薬の非限定的な例は、チアジドまたはベンゾチアジアジン誘導体(例えば、アルチアジド、ベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、ベンジルヒドロクロロチアジド、ブチアジド、クロロチアジド、クロロチアジド、クロルタリドン、シクロペンチアジド、エピチアジド、エチアジド、エチアジド、フェンキゾン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチクロチアジド、メチクラン、メトラゾン、パラフルチジド、ポリチアジド、テトラクロルメチアジド、トリクロルメチアジド)、有機水銀化合物(例えば、クロルメロドリン、メラルリド、メルカムファミド、メルカプトメリンナトリウム、マーキュマリル酸(mercumallylic acid)、マーキュマチリンナトリウム(mercumatilin sodium)、塩化第一水銀、マーサリル)、プテリジン(例えば、フルテレン、トリアムテレン)、プリン類(例えば、アセフィリン、7-モルフォリノメチルテオフィリン、パマブロム、プロテオブロミン、テオブロミン)、アルドステロンアンタゴニストを含むステロイド類(例えば、カンレノン、オレアンドリン、スピロノラクトン)、スルホンアミド誘導体(例えば、アセタゾラミド、アムブシド、アゾセミド、ブメタニド、ブタゾラミド、クロルアミノフェナミド、クロフェナミド、クロパミド、クロレキソロン、ジフェニルメタン-4,4'-ジスルホンアミド、ジスルファミド、エトキシゾラミド、フロセミド、インダパミド、メフルシド、メタゾラミド、ピレタニド、キネタゾン、トラセミド、トリパミド、キシパミド)、ウラシル(例えば、アミノメトラジン、アミソメトラジン)、カリウム保持アンタゴニスト(例えば、アミロリド、トリアムテレン)、またはアマノジン、アルブチン、クロラザニル、エタクリン酸、エトゾリン、ヒドラカルバジン、イソソルビド、マンニトール、メトカルコン、ムゾリミン、ペルヘキシリン、チクリナフェン、および尿素などの混合型利尿薬を含む。
【0113】
c. その他の変力剤
強心剤としても公知の、陽性変力剤の非限定的な例は、アセフィリン、アセチルジギトキシン類、2-アミノ-4-ピコリン、アムリノン、ベンフロジルヘミスクシネート、ブクラデシン、セルベロシン(cerberosine)、カムフォタミド、コンバラトキシン、シマリン、デノパミン、デスラノシド、ジギタリン、ジギタリス、ジギトキシン、ジゴキシン、ドブタミン、ドーパミン、ドペキサミン、エリトロフレイン、フェナルコミン、ギタリン、ギトキシン、グリコシアミン、ヘプタミノール、ヒドラスチニン、イボパミン、ラナトシド類、メタミバム、ミルリノン、ネリフォリン、オレアンドリン、ウアバイン、オキシフェドリン、プレナルテロール、プロスシラリジン、レシブフォゲニン、シラレン、シラレニン、ストロファンチン、スルマゾール、テオブロミン、およびキサモテロールを含む。
【0114】
特定の局面において、変力剤は、強心配糖体、ベータ-アドレナリンアゴニスト、またはホスホジエステラーゼ阻害剤である。強心配糖体の非限定的な例は、ジゴキシン(ラノキシン)およびジギトキシン(クリストジギン(crystojigin))を含む。β-アドレナリンアゴニストの非限定的な例は、アルブテロール、バンブテロール、ビトルテロール、カルブテロール、クレンブテロール、クロルプレナリン、デノパミン、ジオキセテドリン、ドブタミン(ドブトレックス)、ドーパミン(イントロピン)、ドペキサミン、エフェドリン、エタフェドリン、エチルノルエピネフリン、フェノテロール、フォルモテロール、ヘキソプレナリン、イボパミン、イソエタリン、イソプロテレノール、マブテロール、メタプロテレノール、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ピルブテロール、プロカテロール、プロトキロール、レプロテロール、リミテロール、リトドリン、ソテレノール、テルブタリン、トレトキノール、ツロブテロール、およびキサモテロールを含む。ホスホジエステラーゼ阻害剤の非限定的な例は、アムリノン(イノコール(inocor))を含む。
【0115】
d. 抗狭心症薬
抗狭心症薬は、有機硝酸塩(organonitrates)、カルシウムチャネルブロッカー、ベータブロッカー、およびそれらの組み合わせを含み得る。ニトロ系血管拡張剤としても公知の、有機硝酸塩の非限定的な例は、ニトログリセリン(ニトロビッド、ニトロスタット)、二硝酸イソソルビド(イソルジル、ソルビトレート)、および硝酸アミル(アスピロール(aspirol)、バポロール(vaporole))を含む。
【0116】
9. 外科的治療薬
特定の局面において、二次治療薬は、ある型の手術を含んでいてもよく、例えば、予防的、診断的または病期診断的、治癒的および緩和的手術を含み得る。手術、および特に治癒的手術は、本発明および一つまたは複数のその他の薬剤などの、その他の治療と併せて使用され得る。
【0117】
血管および心臓血管の疾患および障害に対するそのような外科的治療薬は、当業者にとって周知であり、生体に手術を施すこと、機械的人工心臓血管、血管形成術、冠動脈再灌流、カテーテル焼灼術を提供すること、対象への植込み型除細動器、機械的循環支援を提供すること、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。本発明において使用され得る機械的循環支援の非限定的な例は、大動脈内バルーンカウンターパルゼーション法、左心室補助デバイス、またはそれらの組み合わせを含む。
【0118】
D. その他の薬剤に対する製剤および投与の経路
製剤および治療の方法の議論において、任意の化合物への言及は、薬学的組成物と同様に、薬学的に許容される塩も含むことが意図されるということが理解されると思われる。開示される治療方法が、本出願において述べられる任意の病状に適用され得るということがさらに理解される。臨床的な応用が熟慮される場合、薬学的組成物は、意図される適用に対して適切な形で調製される。概して、これには、発熱物質およびヒトまたは動物に有害である可能性があるその他の不純物を本質的に含まない組成物を調製することが必要とされる。
【0119】
送達ベクターを安定にし、かつ標的細胞による取り込みを可能にする適切な塩および緩衝液を採用することが概して望まれると考えられる。緩衝液は、患者に組換え細胞が導入される場合にも採用されると考えられる。本発明の水性組成物は、薬学的に許容される担体または水性媒質に溶解または分散された、ベクターまたは細胞の有効量を含む。「薬学的にまたは薬理学的に許容される」という句は、動物またはヒトに投与される場合に、有害な、アレルギーの、またはその他の厄介な反応を起こさない分子的実体および組成物を指す。本明細書において使用されるように、「薬学的に許容される担体」とは、ヒトへの投与に適した調合薬などの、調合薬を製剤することにおける使用に対して許容される、溶剤、緩衝液、溶液、分散媒質、コーティング、抗生物質および抗真菌薬、当張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的活性物質に対するそのような媒質および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒質または薬剤が、本発明の活性成分と混合できない場合を除いて、治療的組成物におけるその使用が熟慮される。組成物のベクターまたは細胞を不活性化しない場合は、補足活性成分も組成物に組み入れられ得る。
【0120】
本発明の特定の態様において、薬学的製剤は、迅速な放出を介した送達のために製剤され、熟慮されるその他の態様は、定時放出、遅延放出、および持続性放出を含むが、それらに限定されない。製剤は、固形または液状形態のどちらでも経口懸濁液であり得る。さらなる態様において、製剤は、点滴袋への希釈によって、非経口送達を介した送達のために調製され得る、または坐薬として使用され得る、または皮下の、静脈内の、筋内の、腹腔内の、舌下の、経皮の、もしくは鼻咽頭の送達のために製剤され得ると考えられる。
【0121】
活性成分を含む薬学的組成物は、例えば錠剤、トローチ、薬用キャンディー、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、乳液、硬もしくは軟カプセル、またはシロップもしくはエリキシル剤などの、経口使用に対して適した形であり得る。経口使用を意図された組成物は、薬学的組成物の製造に対する当技術分野に公知の任意の方法に従って調製され得、そのような組成物は、上品でかつ口に合う製剤を薬学的に提供するために、甘味剤、香料添加剤、着色剤、および保存薬からなる群より選択される一つまたは複数の薬剤を含み得る。錠剤は、錠剤の製造に適した、無毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合において活性成分を含む。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;例えば、コーンスターチ、またはアルギン酸などの造粒剤および分解剤;例えば、でんぷん、ゼラチン、またはアカシアなどの接着剤、および例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、または滑石などの潤滑剤であり得る。錠剤は、非コーティングであり得る、またはそれらは胃腸管における分解および吸収を遅らせるために公知の技術によってコーティングされ得、それによってより長い期間にわたる持続性作用を提供する。例えばモノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの時間遅延物質が採用され得る。それらは、制御放出のための浸透治療錠剤を形成するための米国特許第4,256,108号;第4,166,452号;および第4,265,874号に記載される技術によってコーティングされてもよい(参照により本明細書に組み入れられる)。
【0122】
経口使用のための製剤は、活性成分が、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンなどの不活性固体希釈剤と混合される硬ゼラチンカプセルとして、または活性成分が、水または例えばピーナッツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油などの油性媒質と混合される軟ゼラチンカプセルとして提示される可能性もある。
【0123】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合において活性物質を含む。そのような賦形剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴムなどの懸濁化剤である;分散または湿潤剤は、例えば、レシチンなどの天然由来のリン脂質、または例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレンなどの、脂肪酸とアルキレンオキシドの縮合生成物、または例えば、ヘプタデカエチレン-オキシセタノール(oxycetanol)などの、長鎖脂肪族アルコールとエチレンオキシドの縮合生成物、またはポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなどの、脂肪酸およびヘキシトール由来の部分的エステルとエチレンオキシドの縮合生成物、または例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエートなどの、脂肪酸および無水ヘキシトール由来の部分的エステルとエチレンオキシドの縮合生成物であり得る。水性懸濁液は、例えばエチルまたはn-プロピル、p-ヒドロキシ安息香酸などの一つまたは複数の防腐剤、一つまたは複数の着色剤、一つまたは複数の香料添加剤、およびスクロース、サッカリン、またはアスパルテームなどの一つまたは複数の甘味剤も含み得る。
【0124】
油性懸濁液は、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、もしくはココナッツ油などの植物油に、または流動パラフィンなどのミネラルオイルに活性成分を懸濁することによって製剤され得る。油性懸濁液は、たとえば蜜ろう、固形パラフィン、またはセチルアルコールなどの増粘剤を含み得る。上記のものなどの甘味剤、および香料添加剤は、口に合う経口調製を提供するために付加され得る。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化物質の付加によって保存され得る。
【0125】
水の付加による水性懸濁液の調製に適した分散性粉末および顆粒は、分散または湿潤剤、懸濁化剤、および一つまたは複数の防腐剤との混合において活性成分を提供する。適した分散または湿潤剤、および懸濁化剤は、すでに前述のものによって例示される。例えば甘味剤、香料添加剤、および着色剤などの付加的な賦形剤も存在し得る。
【0126】
薬学的組成物は、水中油型乳液の形でもあり得る。油相は、例えばオリーブ油もしくはラッカセイ油などの植物油、または例えば流動パラフィンなどのミネラルオイル、またはそれらの混合物であり得る。適した乳化剤は、例えば大豆、レシチンなどの天然由来のリン脂質、ならびに例えばソルビタンモノオレエートなどの、脂肪酸および無水ヘキシトール由来のエステルまたは部分的エステル、ならびに例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどの、エチレンオキシドと部分的エステルの縮合生成物であり得る。乳液は、甘味剤および香料添加剤を含んでもよい。
【0127】
シロップおよびエリキシル剤は、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはスクロースなどの甘味剤と製剤され得る。そのような製剤は、粘滑剤、防腐剤、ならびに香料添加剤および着色剤を含んでもよい。薬学的組成物は、無菌注射用水性また油性懸濁液の形であり得る。懸濁液は、前述のそれらの適した分散または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、公知の技術に従って製剤され得る。無菌注射物質調製は、例えば、1,3-ブタンジオールにおける溶液として、無毒性で非経口的に許容される希釈液または溶剤における無菌注射用溶液または懸濁液であってもよい。採用され得る許容される媒体および溶剤の中には、水、リンゲル溶液、および等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。加えて、無菌の、不揮発性油が、溶剤または懸濁媒質として通常は採用される。この目的のために、任意の無菌性の不揮発性油が、合成モノまたはジグリセリドを含んで採用され得る。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が、注射物質の調製における使用を見出す。
【0128】
化合物は、薬の直腸投与のために坐薬の形でも投与され得る。これらの組成物は、常温で固体であるが、直腸温度では液体であり、従って薬を放出するために直腸において溶けるような、適した無刺激性賦形剤と治療薬を混合することによって調製され得る。そのような物質は、ココアバターおよびポリエチレングリコールである。
【0129】
局所的な使用に対して、治療的化合物を含む、クリーム、軟膏、ゼリー、ゲル、表皮溶液または懸濁液などが採用される。この応用の目的のために、局所的応用は、洗口剤およびうがい薬を含むものとする。
【0130】
製剤は、ナノ粒子、リポソーム、顆粒、吸入抗原、点鼻溶液、または静脈注射用混合調剤として投与されてもよい。
【0131】
前述の製剤は、心不全または肥大を患う患者を治療することに対してすべて企図されている。任意の製剤における活性成分の量は、特定の治療および投与の様式に依存するであろう投薬形態を作り出すために変化し得る。患者に対する具体的な用量が、年齢、体重、全身的な健康、性別、食事、投与の時間、投与の経路、排泄の程度、薬の組み合わせ、および治療中の特定の疾患の重症度を含む、様々な因子に依存するであろうということがさらに理解される。
【0132】
V. 規定
本明細書において使用されるように、「心不全」という用語は、血液を拍出する心臓の能力を軽減する任意の病状を意味するために広く使用される。結果として、鬱血および浮腫が組織に発生する。より頻繁には、心不全は、軽減された冠血流量に起因する、心筋の低下した収縮性によって引き起こされる;しかしながら、心臓弁への損傷、ビタミン欠乏、および初期の心筋疾患を含む、多くのその他の因子が、心不全を引き起こす可能性がある。心不全の正確な生理学的メカニズムは完全に理解されていないが、心不全は、交感神経、副交感神経、および圧受容器反応を含む、いくつかの心臓自律神経特性における障害に関与すると概して信じられている。「心不全の徴候」という句は、心不全に関連する研究室の知見を含む、息切れ、圧痕水腫、拡大した肝圧痛、充血性頸静脈、肺ラ音などの心不全に関連するすべての続発症を包含するために広く使用される。
【0133】
「治療」という用語または文法的な等価物は、心不全の症状(すなわち、血液を拍出する心臓の能力)の改善および/または回復を包含する。心臓の「生理学的機能における改善」は、動物の生存に対する任意の効果と同様に、本明細書において記載される任意の測定(例えば、駆出率、短縮率、左心室内法、心拍などの測定)を使用して評価され得る。動物モデルの使用において、処置されたトランスジェニック動物および未処置のトランスジェニック動物の反応が、本明細書において記載される任意の検査を使用して比較される(加えて、処置および未処置の非トランスジェニック動物が、対照として含まれ得る)。本発明のスクリーニング方法において使用される、心不全に関連する任意のパラメータにおける改善を引き起こす化合物は、従って治療的化合物として同定され得る。
【0134】
本明細書において使用されるように、「心臓肥大」という用語は、成人の心筋細胞が肥大成長を介して圧力に反応するプロセスを指す。そのような成長は、細胞分裂を伴わない細胞サイズの増加、力発生を最大にするための細胞内の付加的なサルコメアの組み立て、および胎児心臓遺伝子プログラムの活性化によって特徴付けられる。心臓肥大は、罹患率および死亡率のリスク増加にしばしば関連しており、従って心臓肥大の分子的メカニズムを理解することを目的とした研究は、ヒトの健康にかなりの影響力を有し得ると考えられる。
【0135】
本明細書において使用されるように、「調節する」という用語は、生物活性における変化または変更を指す。調節は、アゴニスト(活性を刺激することが可能な薬剤)もしくはアンタゴニスト(活性を阻害することが可能な薬剤)の作用による、タンパク質活性における増加または減少、キナーゼ活性における変化、接着の特徴における変化、またはタンパク質もしくはその他の対象となる構造物の活性に関連する、生物学的、機能的、もしくは免疫学的特性における任意のその他の変化であり得る。「モジュレータ」という用語は、前述の生物活性を変化させるまたは変更させることが可能な任意の分子または化合物を指す。
【0136】
VI. 実施例
A. 材料および方法
外植されたヒトの心臓は、移植レシピエント(n=7)から、および欠陥のないドナーの心臓(n=1)から獲得した。切除術後、心臓を氷冷Tyrode溶液に即座に置き、95%O2および5%CO2で飽和した。幅1〜3 mmおよび長さ7〜10 mmの間の梁柱を、右心室自由壁から切除した。続いて、マルチチャンバー筋肉バス中に、酸素を豊富に含んだTyrode溶液中で37℃にて梁柱を埋め込んだ。梁柱を、1グラムの静止張力および1.0Hzの領域刺激下に置いた。2時間のインキュベーション期間後、梁柱をエノキシモンスルホキシドエナンチオマー(10-7から10-4)、イソプロテレノール(10-9から10-4)、および媒体対照(DMACおよびNaOH)の濃度を増加させ曝露した。ピーク収縮力を、全部で1時間半の間、10分間隔で記録した。追随する実験のため、梁柱を液体N2中で凍結した。
【0137】
B. データ
張力研究は、ピーク収縮値を、T=0において付加されるアゴニストがない状態において各々の対象によって生み出されるベースライン測定に対して基準化した。イソプロテレノールは、陽性対照として使用され、漸増された場合に収縮張力において際立った増加を示した(>1000 mgの張力)。次いで、各々のそれに続く測定値からT=0の値を差し引くことによって、純収縮力を決定した。エノキシモンは、575 mgの張力と等価のピーク収縮力を示した。収縮性においてかなり増加した、エノキシモンに対して測定されたのとほぼ同じ張力、550 mgを有した(S)-(-)-エナンチオマー異性体と比べた場合、スルホキシド代謝物27996、(R)-(+)-エナンチオマーは、増加が少ない収縮性、175 mgを有することが見出された。
【0138】
C. エナンチオマーのPDE3阻害
エノキシモンスルホキシドエナンチオマーは、ヒトの血小板から単離されたPDE-IIIの作用を阻害するその能力に対して試験された。基質は[3H]cAMP + cAMPであり、PDE-IIIによって[3H]アデノシンに変換され、次いで[3H]アデノシンが定量され得る。検査は、対数スケール上の3つの異なる濃度において3回行なわれ、IC50の半定量的測定を可能にした。エノキシモンスルホキシドの(S)-(-)-エナンチオマーに対するIC50は、この検査によって147μMに決定された。
【0139】
VII. 参照
以下の参照は、それらが本明細書において記載したものへの補足となる例示的な運用指針またはその他の詳細を提供するのと同程度に、具体的に参照により本明細書に組み入れられる。
米国特許第4,166,452号
米国特許第4,256,108号
米国特許第4,265,874号
米国特許第4,405,635号
米国特許第4,505,635号
米国特許第5,250,534号
米国特許第5,346,901号
米国特許第5,604,251号
米国特許第5,998,458号
米国特許第6,254,885号
米国特許第6,555,135号
米国特許第6,596,308号
米国特許第6,623,760号
米国特許第6,541,487号
米国特許第6,645,466号




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式Iを有する光学活性化合物を含む組成物であって:

(S)-(-)-型であり、かつ(R)-(+)-型を実質的に含まない組成物;および薬学的に許容されるそれらの塩。
【請求項2】
化合物の(S)-(-)エナンチオマーが、純度70%を超える、純度75%を超える、純度80%を超える、純度85%を超える、純度90%を超える、純度95%を超える、純度96%を超える、純度97%を超える、純度98%を超える、または純度99%を超える、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
化学式Iの化合物および薬学的に許容されるそれらの塩を含む薬学的製剤であって、該化合物が(S)-(-)-型であり且つ(R)-(+)-型を実質的に含まない、薬学的製剤。
【請求項4】
迅速な放出、定時放出、遅延放出、持続性放出、経口懸濁液、非経口送達、坐薬、皮下の、静脈内の、筋内の、腹腔内の、舌下の、経皮の、または鼻咽頭の経路を介した送達のために処方される、請求項3記載の製剤。
【請求項5】
化合物が固形である、請求項4記載の製剤。
【請求項6】
化合物が液状形態である、請求項4記載の製剤。
【請求項7】
化合物が、素錠として、コーティングされた錠剤、カプセル、粉末、トローチ、顆粒、リポソーム、坐薬、溶液、コロイド、軟膏、クリーム、蒸気、噴霧、ナノ粒子、吸入抗原、点鼻溶液、静脈注射用混合調剤、表皮溶液、バッカル錠、シロップ、クリーム、ローション、ゲル、乳液、またはエリキシル剤として処方される、請求項4記載の製剤。
【請求項8】
錠剤結合剤、充填剤、防腐剤、錠剤分解物質、流量調整弁、可塑剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、溶剤、徐放剤、抗酸化物質、またはプロペラントガスの一つまたは複数をさらに含む、請求項7記載の製剤。
【請求項9】
化学式Iの化合物および薬学的に許容されるそれらの塩を含み、該化合物が(S)-(-)-型であり且つ(R)-(+)-型を実質的に含まない薬学的製剤の投与を含む、PDE-III阻害が有益である患者において病状を治療するための方法。
【請求項10】
病状が、急性心不全、慢性心不全、血行動態不全、慢性心疾患、または心臓肥大の一つまたは複数から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
病状が、血小板障害、腎疾患、腎不全、肺高血圧症、PAH、安定狭心症、不安定狭心症、勃起障害、心筋梗塞、末梢血管疾患、喘息、気管支痙攣肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、胃腸障害、高凝固状態(hypercoagulation states)、血小板増加症、子癇、または子癇前症の一つまたは複数から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
患者に付加的な薬学的組成物を提供することをさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
付加的な薬学的組成物が、「ベータブロッカー」、降圧剤、強心剤、抗血栓剤、血管拡張剤、ホルモンアンタゴニスト、エンドセリン受容体アンタゴニスト、サイトカイン阻害剤/ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、その他のホスホジエステラーゼ阻害剤、およびアンジオテンシン2型アンタゴニストからなる群より選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
エンドセリン受容体アンタゴニストがアンブリセンタンである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
エンドセリン受容体アンタゴニストがダルセンタンである、請求項12記載の方法。

【公表番号】特表2007−530563(P2007−530563A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505100(P2007−505100)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/009517
【国際公開番号】WO2005/092332
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506163526)ミオゲン インコーポレイティッド (5)
【Fターム(参考)】