(S)−N−メチルナルトレキソン、その合成方法およびその医薬用途
本発明は、S−MNTX、S−MNTXを製造する方法、S−MNTXを含む医薬製剤、およびそれらの使用のための方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、(S)−N−メチルナルトレキソン(S−MNTX)、S−MNTXの調製のための立体選択的合成方法、S−MNTXを含む医薬組成物およびその使用のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
メチルナルトレキソン(MNTX)は、純粋なオピオイドアンタゴニストであるナルトレキソンの第四級誘導体である。これは塩として存在する。文献においてMNTXの臭化物塩に使用される名称としては、以下が挙げられる:臭化メチルナルトレキソン;臭化N−メチルナルトレキソン;ナルトレキソンメトブロミド;ナルトレキソンメチルブロミド;MRZ 2663BR、MNTXは、70年代半ばに、Goldbergらによって、米国特許第4,176,186号に記載されるように報告された。環の窒素へのメチル基の添加が、ナルトレキソンよりも高い極性および低い脂溶性を有する荷電化合物を形成すると考えられる。MNTXのこの特徴は、ヒトにおいて血液脳関門の通過を防ぐ。結果として、MNTXは、中枢神経系よりも末梢において、中枢神経系におけるオピオイドの鎮痛作用を妨げない利点を伴ってこの効果を発揮する。
【0003】
MNTXはキラル分子であり、第四級の窒素はRまたはS立体配置であり得る。(図1参照。)MNTXの異なる立体異性体が、異なる生物学的特性および化学特性を示すか否かは知られていない。文献に記載され報告された機能の全てが、MNTXが末梢オピオイドアンタゴニストであることを示す。これらのアンタゴニスト機能のいくつかは、米国特許第4,176,186号、第4,719,215号、第4,861,781号、第5,102,887号、第5,972,954号、第6,274,591号、第6,559,158号、および6,608,075、ならびに米国特許出願第10/163,482号(2003/0022909A1)、第10/821,811号(20040266806)、第10/821,813号(20040259899)および第10/821,809号(20050004155)に記載されている。これらの用途は、オピオイドの効果を低下させることなくオピオイド副作用を減少させることを含む。かかる副作用は、吐き気、嘔吐、不快、掻痒、尿閉、腸の運動低下、便秘、胃の運動低下、遅発性胃内容排出および免疫抑制を含む。当該技術は、MNTXが、オピオイド鎮痛処置に起因する副作用を減少するだけでなく、内因性オピオイド類単独でまたは外因性オピオイド処置との組み合わせによって媒介される副作用をも減少させることを開示する。かかる副作用は、胃腸運動の阻害、術後胃腸機能障害、突発性便秘、および上記のものを含むがこれらに限定されない他の状態を含む。しかしながら、当該技術からは、これらの研究に使用されたMNTXが、R立体異性体とS立体異性体との混合物であったか単一の立体異性体であったかは明らかでない。
【0004】
当該技術は、化合物の単離された立体異性体が時に対照的な物理的および機能的特性を有する可能性があることを示唆するが、いかなる特定の状況においてこれが該当するかを予測することはできない。デキストロメトルファンは鎮咳剤であるが、その鏡像異性体であるレボメトルファンは強力な麻酔薬である。R,R−メチルフェニデートは、注意欠陥過活動性障害(ADHD)を処置する薬物であるが、この鏡像異性体であるS,S−メチルフェニデートは抗うつ剤である。S−フルオキセチンは、片頭痛に対して活性であるが、その鏡像異性体であるR−フルオキセチンは鬱病を処置するために使用される。シタロプラムのS鏡像異性体は、鬱病の処置のための治療上活性な異性体である。そのR鏡像異性体は不活性である。オメプラゾールのS鏡像異性体は、胸焼けの処置についてそのR鏡像異性体よりも強力である。
【0005】
Bianchetti et al, 1983 Life Science 33 (Sup I):415-418は、3対の四級麻酔性アンタゴニストのジアステレオ異性体およびそれらの親三級アミン類、レバロルファン、ナロルフィンおよびナロキソンについて研究し、キラル窒素に関する立体配置がどのようにインビトロおよびインビボでの活性に影響するかを確かめた。四級誘導体がどのように製造されたかに依存して、活性が著しく変化することを見出した。それぞれのシリーズにおいて、N−アリル−置換三級アミン(「N−メチルジアステレオマー」として言及される)のメチル化によって得られたジアステレオマーのみが、ラット脳膜からの3H−ナルトレキソンの置き換えおよびモルモット回腸におけるモルフィンアンタゴニストとしての作用において有効である。反対に、N−メチル−置換三級アミン類をハロゲン化アリルと反応させることにより得たジアステレオ異性体(「N−アリルジアステレオマー」として言及される)は、3H−ナルトレキソンを置き換えず、モルモット回腸において殆どアンタゴニスト活性を有さず、僅かなアゴニスト作用を有する。
インビボでの知見は一般的にインビトロでの知見と一致する。したがって、「N−メチルジアステレオマー」のみがモルフィン誘導性の便秘をラットにおいて阻害しアンタゴニストとして作用するが、「N−アリルジアステレオマー」は阻害しない。著者は、製造された材料が1Hおよび13C核磁気共鳴(NMR)分析によって純粋であるようにみえるとしているが、これらの方法は正確ではない。著者は、ナロルフィンの「N−メチルジアステレオマー」へのR立体配置の割当について、参考文献を引用している。レバロルファンおよびナロキソンのジアステレオマーに関しては、割当は提案されていない。これらのジアステレオマーへの立体配置を推定することは危険である(R.J. Kobylecki et al, J. Med. Chem. 25, 1278-1280, 1982)。
【0006】
Goldbergらの米国特許第4,176,186号、およびより最近のCantrellらの国際公開パンフレット2004/043964 A2は、MNTXの合成のプロトコルを説明している。いずれも、メチル化剤による三級N−置換モルフィナンアルカロイドの四級化によるMNTXの合成を記載する。GoldbergらおよびCantrellらはともに、合成によって製造される立体異性体(単数または複数)については言及していない。筆者らは、立体化学を先行技術に基づいて判断することが出来ないため、立体化学に関しても注意深く言及していない。ナルトレキソンにおけるシクロプロピルメチル側鎖は、先行技術の側鎖とは異なっており、温度や圧力などの他の多くの反応パラメーターのように、MNTXの合成における立体化学の結果に影響する可能性もある。それぞれに記載された合成の方法に基づいて製造されたMNRXが、Rであるか、Sであるか、または両方の混合物であるかは不明である。
【0007】
純粋な形態のS−MNTX、および純粋なS−MNTXの製造方法は、文献には記載されていない。標準物質としての純粋なS−MNTXを欠く状態で、研究者が、GoldbergらまたはCantrellらの合成によって得られた立体異性体(単数または複数)を明確に特徴付け、区別することは不可能であったであろう。
【発明の開示】
【0008】
発明の要旨
S−MNTXは、今や、高純度で提供され、このことにより、クロマトグラフィーにおける(R)−N−メチルナルトレキソン(R−MNTX)の保持時間に対するS−MNTXの相対的保持時間のキャラクタリゼーションが可能となる。S−MNTXは、文献において報告されたMNTXの活性と異なる活性を有することが見出された。
【0009】
本発明は、高純度のS−MNTX、高純度のS−MNTXの結晶およびその中間体、高純度のS−MNTXを製造するための新規方法、R−MNTXとS−MNTXとの混合物中のS−MNTXを分析するための方法、R−MNTXをS−MNTXから区別する方法、S−MNTXを定量する方法、同じものを含む医薬品およびこれらの物質の関連する使用を提供する。
S−MNTXおよびその塩が提供される。S−MNTXを得るためのプロトコルは、先行技術からは予測することが出来なかった。さらに、驚くべき事に、S−MNTXがオピオイドアゴニスト活性を有することを見出した。
【0010】
本発明の一局面によれば、組成物が提供される。組成物は、式Iの窒素についてS立体配置の単離された化合物である:
【化1】
式中、Xは対イオンである。
【0011】
S−MNTXは塩である。したがって、対イオンが存在し、対イオンは、本願に関して、双性イオンを含む。より代表的には、対イオンは、ハライド、硫酸、リン酸、硝酸、またはアニオン性に荷電された有機種である。ハライドは、フッ化物、塩化物、ヨウ化物および臭化物を含む。いくつかの重要な態様において、ハライドはヨウ化物であり、別の重要な態様において、ハライドは臭化物である。いくつかの態様において、アニオン性に荷電された種はスルホン酸またはカルボン酸である。スルホン酸の例として、メシレート、ベシレート、トシレートおよびトリフレートが挙げられる。カルボン酸の例として、ギ酸、酢酸、クエン酸、およびフマル酸が挙げられる。
【0012】
本発明によれば、S−MNTXは単離された形態において提供される。単離とは、少なくとも約50%純粋であることを意味する。重要な態様において、S−MNTXは75%の純度で、90%の純度で、95%の純度で、98%の純度で、および99%もの純度で、または99%より高い純度で、提供される。一つの重要な態様において、S−MNTXは結晶形態である。
【0013】
本発明の別の局面において、組成物が提供される。組成物はMNTXであり、組成物中に存在するMNTXは、10%より多くが窒素についてS立体配置である。より好ましくは、組成物中に存在するMNTXは、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、および99.9%より多くまでもが窒素についてS立体配置である。いくつかの態様において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定されるものとして検出可能なR−MNTXは存在しない。
いくつかの態様における組成物は溶液であり、別の態様においては油であり、別の態様においてはクリームであり、さらに別の態様においては固体または半固体である。一つの重要な態様において、組成物は結晶である。
【0014】
本発明の別の局面において、医薬製剤が提供される。医薬製剤は、上記のS−MNTXの組成物のいずれか一つを薬学的に受容可能なキャリア中に含む。医薬製剤は、S−MNTXの有効量を含む。いくつかの態様において、組成物中に検出可能なR−MNTXは殆どまたは全く存在しない。存在する場合、R−MNTXは、S−MNTXの有効量が被験体に投与されるようなレベルである。いくつかの態様において、医薬製剤は、MNTX以外の治療剤をさらに含む。一態様において、治療剤はオピオイドまたはオピオイドアゴニストである。オピオイドまたはオピオイドアゴニストの例は、アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾシン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルフィン(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、レボメサジルアセテート、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メサドン、モルフィン、モルフィン−6−グルクロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチン、トラマドールおよびこれらの組合せである。
【0015】
いくつかの態様において、オピオイドまたはオピオイドアゴニストは、血液脳関門を容易に超えず、したがって、全身投与された場合に中枢神経系(CNS)での活性を実質的に有さない(すなわち、これは、「末梢作用性」として知られるクラスの剤である)。他の態様において、治療剤はオピオイドアンタゴニストである。オピオイドアンタゴニストとしては、末梢μオピオイドアンタゴニストが挙げられる。末梢μオピオイドアンタゴニストの例としては、ノルオキシモルホンの四級誘導体(Goldbergら、米国特許第4,176,186号およびCantrellら、WO 2004/043964を参照)、米国特許第5,250,542号;同第5,434,171号;同第5,159,081号;同第5,270,328号;および同第6,469,030号などに記載のピペラジン−N−アルキルカルボキシレート、米国特許第4,730,048号;同第4,806,556号;および同第6,469,030号に記載のものなどのオピウムアルカロイド誘導体、米国特許第3,723,440号および同第6,469,030号に記載のものなどの四級ベンゾモルファン化合物が挙げられる。
【0016】
一態様において、末梢オピオイドアンタゴニストはR−MNTXである。R−MNTXは、先行技術において記載される製造手段によるMNTXの主な形態であるが、かかる調製物にはS−MNTXが混入していると考えられる。純粋なR−MNTXは、以下のプロトコルを用いて合成することができる。簡単に述べると、以下によってR−MNTXの立体選択的合成を行う:ヒドロキシル保護基をナルトレキソンに添加して3−O−保護ナルトレキソンを得;3−O−保護ナルトレキソンをメチル化して3−O−保護−R−MNTX塩を得;そしてヒドロキシ保護基を除去してR−MNTXを得る。ヒドロキシル保護基は、以下の各々または両方の存在下において添加してもよい:有機溶媒、例えばテトラヒドロフラン、および/またはナルトレキソンでない三級アミン、例えばトリメチルアミン。3−O−保護ナルトレキソンをヨウ化メチルと反応させて3−O−保護−R−MNTXヨウ化塩を生じることによって、ナルトレキソンをメチル化してもよい。イソブチリルなどのヒドロキシル保護基によってナルトレキソンを保護することができる。3−O−保護−R−MNTXヨウ化塩を臭化水素酸で処理して保護基を除去し、R−MNTX臭化物/ヨウ化物塩を生成してもよく、臭化物/ヨウ化物塩をアニオン交換樹脂カラム(臭化物形態)を通してR−MNTX臭化物を得てもよい。
【0017】
他の態様において、治療剤は、オピオイド、オピオイドアゴニストまたはオピオイドアンタゴニストではない。例えば、治療剤は、抗ウイルス剤、抗生剤、抗真菌剤、抗菌剤、防腐剤、抗原虫剤、抗寄生虫剤、抗炎症剤、血管収縮剤、局所的麻酔剤、止痢剤、抗痛覚過敏剤、またはこれらの組合せであってもよい。
【0018】
本発明の一つの局面において、S−MNTXは止痢剤と組み合わされ、止痢剤は、ロペラミド、ロペラミドのアナログ、ロペラミドおよびアナログのN−オキシド、それらの代謝物およびプロドラッグ、ジフェノキシレート、シサプリド、アンタシド、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ポリカルボフィル、シメチコン、ヒヨスチアミン、アトロピン、フラゾリドン、ジフェノキシン、オクトレオチド、ランソプラゾール、カオリン、ペクチン、活性炭、スルファグアニジン、スクシニルスルファチアゾール、フタリルスルファチアゾール、アルミン酸ビスマス、亜炭酸ビスマス、亜クエン酸ビスマス、クエン酸ビスマス、ビスマス酸二クエン酸三カリウム、酒石酸ビスマス、亜サリチル酸ビスマス、亜硝酸ビスマス、没食子酸ビスマス、オピウムチンキ(パレゴリック)、生薬、植物由来止痢剤、またはこれらの組合せである。
【0019】
本発明の一つの局面において、S−MNTXは抗炎症剤と組み合わされ、抗炎症剤は、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、腫瘍壊死因子阻害剤、バシリキシマブ、ダクリズマブ、インフリキシマブ、ミコフェノール酸、モフェチル、アザチオプリン、タクロリムス、ステロイド類、スルファサラジン、オルサラジン、メサラミン、またはこれらの組合せである。
【0020】
本発明の医薬製剤は、多様な形態をとってよく、そのような形態として、腸溶性コーティングされた組成物、徐放性(controlled release)処方物または持効性(sustained release)処方物である組成物、溶液である組成物、局所用処方物である組成物、坐剤である組成物、凍結乾燥されている組成物、吸入剤である組成物、鼻用スプレーデバイス中にある組成物などが挙げられるがこれらに限定されない。組成物は、経口投与、非経口投与、粘膜投与、経鼻投与、局所(topical)投与、眼投与、局所的(local)投与などのためのものであり得る。非経口である場合、投与は、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、髄腔内であってよい。
【0021】
本発明の別の局面によれば、S−MNTXの塩を合成するための方法が提供される。方法は、(ヨウ化メチル)シクロプロパンを第一の溶媒中でオキシモルホンと組み合わせてS−MNTXのヨウ化塩を生成することを包含する。次いで、必要に応じて、対イオンを置換してもよく、ヨウ化物については、ヨウ化塩S−MNTXを第二の溶媒中へ移して、ヨウ化物をヨウ化物以外の対イオンと交換する。一つの重要な態様において、S−MNTXのヨウ化物塩を第一の溶媒から第二の溶媒へと移して、第二の溶媒中でヨウ化物を臭化物と交換してS−MNTXの臭化物塩を生成する。好ましい第一の溶媒は、双極性非プロトン溶媒である。最も好ましいのはN−メチルピロリドン(NMP)である。好ましい第二の溶媒は、少なくともイソプロピルアセテートまたはジオキサンである。本発明の方法はまた、クロマトグラフィー、再結晶またはそれらの組合せによるS−MNTXの塩の精製を包含する。一態様において、精製は多重再結晶によるものである。広範な温度範囲および大気条件にわたり、反応を行ってもよい。重要な態様において、第一の溶媒中での反応は、65℃〜70℃の間、好ましくは約70℃で制御された反応温度下において行われ、第二の溶媒中での反応は室温で行われる。
【0022】
より広範には、方法は、シクロプロピルメチル誘導体を第一の溶媒中でオキシモルホンと組み合わせてS−MNTXプラス対イオンを生成することにより、S−MNTXプラス対イオンを合成することを包含する。シクロプロピルメチル誘導体は、脱離基を含む。好ましくは脱離基はハライドまたはスルホン酸である。好ましくは、脱離基はヨウ化物である。第一の溶媒は、双極性非プロトン溶媒であってもよい。かかる溶媒の例は、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、メチルホスホルアミド、アセトン、1,4−ジオキサン、およびアセトニトリルおよびこれらの組合せである。好ましいものは、N−メチルピロリドンである。第一の溶媒は双極性プロトン溶媒であってもよい。例は、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノールである。方法は、S−MNTXの対イオンを別の対イオンと交換することをさらに包含する。対イオンの例は、臭化物、塩化物、フッ化物、硝酸、スルホン酸、またはカルボン酸である。スルホン酸は、メシレート、ベシレート、トシレートまたはトリフレートであってもよい。カルボン酸は、ギ酸、酢酸、クエン酸、およびフマル酸であってもよい。方法は、S−MNTXの対イオンを第二の溶媒へ移し、その後S−MNTXの対イオンを別の対イオンと交換することを包含してもよい。方法は、S−MNTXプラス対イオンを、例えば再結晶によって、クロマトグラフィーによって、または両方によって精製することをさらに包含してもよい。
【0023】
本発明の別の局面によれば、被験体において下痢を抑制するための方法が提供され、これは、かかる処置を必要とする被験体に、S−MNTXを含む医薬組成物を、下痢を処置または予防するために有効な量で投与することによる。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。下痢は急性であっても慢性であってもよい。下痢は、単一のまたは組み合わされた任意の種々の状況、例えば感染因子、食物不耐性、食物アレルギー、吸収不全症候群、医薬に対する反応または不特定の病因によって引き起こされ得る。いくつかの態様において、下痢は過敏性腸疾患または炎症性腸疾患に関連する。一態様において、炎症性腸疾患は、セリアック病である。別の態様において、炎症性腸疾患は、クローン病である。さらに別の態様において、炎症性腸疾患は、潰瘍性腸炎である。他の態様において、下痢は、胃または腸の反応、胆嚢の切除、または器質性病変を原因とする。他の態様において、下痢は、カルチノイド腫瘍または血管作用性小腸ポリペプチド分泌腫瘍と関連する。なお他の態様において、下痢は慢性機能性(特発性)下痢である。
【0024】
本発明によれば、S−MNTXは、S−MNTXでない止痢剤と組み合わせて投与されてもよい。組合せとは、同時であること、または両剤が同時に状態を処置していることになるのに十分時間的に近いことを意味する。一態様において、剤は、オピオイドまたはオピオイドアゴニストである。別の態様において、剤は、オピオイドまたはオピオイドアゴニストではない。
【0025】
本発明の別の局面によれば、被験体においてイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の量を減少させるための方法が提供される。方法は、かかる減少を必要とする被験体に、S−MNTXを含む医薬組成物を、イレオストミーまたはコロストミーからの排泄の量を減少させるために有効な量で投与することを含む。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。
【0026】
本発明の別の局面によれば、被験体においてイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の速度を減少させるための方法が提供される。方法は、かかる減少を必要とする被験体に、S−MNTXを含む医薬組成物を、イレオストミーまたはコロストミーからの排泄の速度を減少させるために有効な量で投与することを含む。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。
【0027】
本発明の別の局面によれば、被験体における胃腸運動を抑制するための方法が提供される。方法は、かかる抑制を必要とする被験体に、S−MNTXを含む医薬組成物を、その被験体において胃腸運動を抑制するために有効な量で投与することを含む。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。本発明によれば、S−MNTXは、S−MNTXではない別の運動抑制剤と組み合わせて投与されてもよい。一態様において、剤はオピオイドまたはオピオイドアゴニストである。オピオイドまたはオピオイドアゴニストは、上に記載される。別の態様において、剤はオピオイドまたはオピオイドアゴニストではない。かかる胃腸運動抑制剤の例は、各々がこの発明の要旨において具体的に挙げられるように以下に記載される。
【0028】
本発明の別の局面によれば、過敏性腸症候群を処置するための方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする患者に、S−MNTXを含む医薬組成物を、過敏性腸症候群の少なくとも一つの症状を緩和するために有効な量で投与することを包む。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。一態様において、症状は下痢である。別の態様において、症状は、便秘下痢交代症、別の態様において、症状は、腹部疼痛、腹部膨満、異常な便頻度、異常な便の硬さ、またはこれらの組合せである。
【0029】
本発明の別の局面によれば、被験体において疼痛を抑制するための方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする被験体に、S−MNTXを含む医薬組成物を、疼痛を抑制するために有効な量で投与することを含む。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。方法は、被験体にS−MNTX以外の治療剤を投与することをさらにさらに包含する。一態様において、S−MNTX以外の治療剤はオピオイドである。別の態様において、S−MNTX以外の剤は非オピオイド性疼痛緩和剤である。非オピオイド性疼痛緩和剤として、コルチコステロイドおよび非ステロイド抗炎症薬が挙げられる。疼痛緩和剤は、本明細書においてこの要旨において挙げられるように、以下により詳細に記載される。別の態様において、S−MNTX以外の剤は、抗ウイルス剤、抗生剤、抗真菌剤、抗菌剤、防腐剤、抗原虫剤、抗寄生虫剤、抗炎症剤、血管収縮剤、局所的麻酔剤、止痢剤、抗痛覚過敏剤である。
【0030】
疼痛が末梢痛覚過敏である場合、例えば、咬傷、刺傷、火傷、ウイルスまたは細菌感染、口腔外科手術、抜歯、皮膚および肉体への損傷、切創、擦過傷、挫傷、外科切開術、日焼け、発疹、皮膚潰瘍、粘膜炎、歯肉炎、気管支炎、喉頭炎、咽頭炎、帯状疱疹、真菌過敏、単純ヘルペス、おでき、足底疣贅、膣の病変、肛門の病変、角膜剥離、後面放射角膜切除術(post-radial keratectomy)、または炎症からもたらされ得る。それはまた、手術後の快復とも関連し得る。手術は、例えば、放射状角膜切開術、抜歯、乳腺腫瘍摘出術、会陰切開術、腹腔鏡検査、関節鏡検査であり得る。
【0031】
いくつかの態様において、医薬組成物は、疼痛の部位へ局所的に投与される。いくつかの態様において、投与は関節内である。いくつかの態様において、投与は全身である。いくつかの態様において、投与は局所である。いくつかの態様において、組成物は眼に投与される。
【0032】
本発明の別の局面によれば、被験体において炎症を抑制するための方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする患者に、S−MNTXを含む医薬組成物を、炎症を抑制するために有効な量で投与することを包含する。医薬組成物は、上記の型のものであってよい。方法は、さらに、被験体にS−MNTX以外の治療剤を投与することを含む。S−MNTX以外の治療剤は、抗炎症剤であってもよい。投与は、例えば、炎症の部位での局所的投与、全身投与、または局所投与であり得る。
【0033】
いくつかの態様において、炎症は、歯周組織炎、歯科矯正による炎症(orthodontic inflammation)、炎症性結膜炎、痔および性器の炎症である。他の態様において、炎症は、皮膚の炎症状態である。例として、以下からなる群より選択される障害と関連する炎症が挙げられる:刺激性接触性皮膚炎、乾癬、湿疹、掻痒、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹、扁平苔癬、尋常性ざ瘡、面皰、多型(polymorph)、嚢胞性ざ瘡(nodulokystic acne)、凝塊性ざ瘡(conglobata)、老人性ざ瘡、二次性ざ瘡、医療行為によるざ瘡(medical acne)、角質化障害、および水疱性皮膚炎(blistery derma)、アトピー性皮膚炎、UV誘発性炎症。皮膚炎症状態はまた、皮膚の感作または過敏を引き起こす化粧品またはスキンケア製品の使用から生じる皮膚の感作または過敏に関連し得るか、または非アレルギー性の炎症性皮膚状態であり得る。それはまた、オールトランスレチノイン酸によって誘導され得る。
【0034】
他の態様において、炎症は、全身性炎症状態であり得る。例として、以下からなる群より選択される状態が挙げられる:炎症性腸疾患、関節リウマチ、悪液質、喘息、クローン病、エンドトキシンショック、成人呼吸促迫症候群、虚血/再灌流障害、移植片対宿主反応、骨吸収、移植および狼瘡。他の態様は、多発性硬化症、糖尿病、および後天性免疫不全症候群(AIDS)または癌に関連する萎縮からなる群より選択される状態と関連する炎症を含み得る。
【0035】
本発明の別の局面によれば、被験体において腫瘍壊死因子の産生を抑制するための方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする患者に、S−MNTXを含む医薬組成物を、腫瘍壊死因子の産生を抑制するために有効な量で投与することを包含する。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。方法はまた、被験体にS−MNTX以外の治療剤を投与することを含んでもよい。
【0036】
本発明の別の局面によれば、被験体において胃腸機能を調節するための方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする患者にS−MNTXを含む医薬組成物を投与すること、および該被験体に末梢μオピオイドアンタゴニストを投与することを含み、これらはいずれも胃腸機能を調節する量で投与される。一態様において、末梢μオピオイドアンタゴニストは、R−MNTXである。
本発明の別の局面によれば、方法が提供される。方法は、患者に、上記の組成物を、心因性の摂食障害または消化障害を予防または処置するために有効な量で投与することにより、心因性の摂食障害または消化障害を予防または処置することを含む。
【0037】
本発明の別の局面によれば、キットが提供される。キットは、S−MNTXを含む医薬組成物の密封容器を含むパッケージを含む。キットは、S−MNTX以外の治療剤をさらに含んでもよい。一態様において、S−MNTX以外の治療剤は、オピオイドまたはオピオイドアゴニストである。一局面において、オピオイドまたはオピオイドアゴニストは、全身投与された場合にCNSでの活性を実質的に有さない(すなわち、「末梢で作用する」)。別の態様において、S−MNTX以外の治療剤は、オピオイドアンタゴニストである。オピオイドアンタゴニストは、末梢μオピオイドアンタゴニストを含む。一態様において、末梢オピオイドアンタゴニストは、R−MNTXである。他の態様において、S−MNTX以外の剤は、抗ウイルス剤、抗生剤、抗真菌剤、抗菌剤、防腐剤、抗原虫剤、抗寄生虫剤、抗炎症剤、血管収縮剤、局所的麻酔剤、止痢剤、抗痛覚過敏剤、またはこれらの組合せである。
【0038】
本発明の別の局面によれば、R−MNTXとS−MNTXとの混合物中のS−MNTXを分析するための方法が提供される。方法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行うこと、およびS−MNTXをクロマトグラフィーカラムに標準物質として適用することを包含する。方法は、好ましくは、S−MNTXおよびR−MNTXの両方を標準物質として適用して相対的保持/溶出時間を決定することを含む。RとS−MNTXとの相対的保持時間は、そこにおいて開示される。本発明の一局面において、クロマトグラフィーは、2種の溶媒、溶媒Aおよび溶媒Bを用いて行われ、溶媒Aは水性溶媒であり、溶媒Bはメタノール性溶媒であり、AおよびBの両方がトリフルオロ酢酸(TFA)を含む。好ましくは、Aは0.1%水性TFAであり、Bは0.1%メタノール性TFAである。重要な態様において、カラムは、結合した、末端がキャップ(end-capped)されたシリカを含む。重要な態様において、カラムゲルの孔サイズは5マイクロメートルである。最も好ましい態様において、カラム、流速、および勾配のプログラムは、以下の通りである:
【0039】
【表1】
【0040】
また、前述のHPLCを使用して、作成されたクロマトグラム中の対応するRおよびSの曲線の下の面積を決定することによって、S−MNTXおよびR−MNTXの相対量を決定してもよい。
【0041】
本発明の別の局面によれば、(オピオイドアンタゴニストである)R−MNTXを含まない(オピオイドアゴニストである)S−MNTXの製造を確実にするための方法が提供される。方法は、アゴニスト活性を意図されるS−MNTXの医薬製剤が、S−MNTXの活性に相反する化合物を混入しないという保証を、初めて可能にする。本発明のこの局面において、S−MNTXを製造するための方法が提供される。
【0042】
方法は、以下を含む:(a)S−MNTXを含む第一の組成物を得ること、(b)クロマトグラフィー、再結晶、またはこれらの組合せによって、前記第一の組成物を精製すること、(c)R−MNTXを標準物質として使用して、精製された第一の組成物のサンプルについてHPLCを行うこと、ならびに(d)前記サンプル中のR−MNTXの存在または不在を決定すること。重要な態様において、R−MNTXおよびS−MNTXの両方を標準物質として使用して、例えば、R−MNTXとS−MNTXとの相対的保持時間を決定する。一態様において、精製は、多重再結晶の工程または多重クロマトグラフィーの工程である。別の態様において、精製は、HPLCによって決定されるものとしてのR−MNTXがサンプルから存在しなくなるまで行われる。
【0043】
しかし、本発明のいくつかの局面において「精製された第一の組成物」とは必ずしも検出可能なR−MNTXを含まないものではないことが理解されるべきである。かかるR−MNTXの存在は、例えば、純粋なS−MNTXを所望する場合はさらなる精製工程を行うべきであることを示し得る。方法は、HPLCで検出可能なR−MNTXを含まない精製された第一の組成物をパッケージすることをさらに含んでもよい。方法は、パッケージされた精製された第一の組成物に、またはそれと共に、該パッケージされた精製された第一の組成物がHPLCによって検出可能なR−MNTXを含まないことを示す証印を提供することをさらに含んでもよい。方法は、本明細書において記載される状態のいずれかを処置するための薬学的有効量をパッケージすることをさらに含んでもよい。S−MNTXを含む第一の組成物は、本明細書において記載される方法によって得ることができる。純粋なR−MNTXは、本明細書において記載される方法によって得ることができる。
【0044】
本発明の別の局面によれば、パッケージされた製品が提供される。パッケージは、S−MNTXを含む組成物を含み、組成物は、HPLCによって検出可能なR−MNTXを含まず、パッケージ上のまたはパッケージに含まれる証印は、組成物が検出可能なR−MNTXを含まないことを示す。組成物は、多様な形態を呈してよく、かかる形態として、実験室での実験における使用のための標準物質、製造プロトコルにおける使用のための標準物質、または医薬組成物が挙げられるが、これらに限定されない。組成物が医薬組成物である場合、証印の一つの重要な形態は、医薬製剤の特徴を記載するラベルへの書き込みまたはパッケージ挿入物である。
【0045】
証印は、組成物がR−MNTXを含まないことを直接的に示すか、または、同じことを、例えば組成物が純粋なまたは100%のS−MNTXであることを記すことによって、間接的に示す。医薬組成物は、本明細書において記載される状態のいずれを処置するためのものであってもよい。医薬組成物は、純粋なS−MNTXの有効量を含み、この要旨において記されるものとして以下に記載される形態のいずれをとってもよく、かかる形態として、溶液、固体、半固体、腸溶性コーティングされた材料などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のこれらの局面および他の局面を、以下により詳細に記載する。
【0046】
詳細な説明
本発明は、化合物であるS−MNTX、S−MNTXの立体選択的合成のための合成経路、実質的に純粋なS−MNTX、実質的に純粋なS−MNTXの結晶、S−MNTXの分析の方法、実質的に純粋なS−MNTXを含む医薬製剤、およびこれらの使用のための方法を提供する。
【0047】
S−MNTXは、(S)−N−(シクロプロピルメチル)−ノルオキシモルホンメチル塩とも称され、式Iの構造:
【化2】
を有する。
【0048】
ここで、Xは対イオンである。対イオンは、双性イオンを含む任意の対イオンであってよい。好ましくは対イオンは、薬学的に受容可能なものである。対イオンとして、ハライド、硫酸、リン酸、硝酸、またはアニオン性に荷電された有機種が挙げられる。ハライドは、ヨウ化物、臭化物、塩化物、フッ化物またはこれらの組合せであり得る。一態様において、ハライドはヨウ化物である。好ましい態様において、ハライドは臭化物である。アニオン性に荷電された種は、スルホン酸またはカルボン酸であり得る。
【0049】
S−MNTXの製造の方法およびアゴニスト特性は、ノルオキシモルホンのS−四級誘導体であって誘導体がシクロプロピルメチルでないものに対しても等価に適用できると見なされている。したがって、本発明は、ノルオキシモルホンのS−四級誘導体を包含することを意図され、ここで、シクロプロピルメチルは、部分Rで置換され、Rは、炭素と水素のみからなる1〜20炭素のヒドロカルビル基であり、かかるヒドロカルビル基として、無置換、または炭化水素で置換された、または窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、硫黄もしくはハロゲンなどの1個以上の原子で置換された、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリールが挙げられる(PCT出願WO 2004/043964において記載される)。重要な態様において、Rは、アリル、クロロアリル、またはプロパルギルである。重要な態様において、ヒドロカルビル基は、4〜10個の炭素を含む。
【0050】
「アルキル」は一般に、1〜約10個の炭素原子を鎖中に有する直鎖状、分枝または環状の脂肪族炭化水素基、ならびにその範囲の全ての組合せおよび副組合せを指す。「分枝」は、メチル、エチルまたはプロピルなどの低級アルキル基が直鎖アルキル鎖に付いている、アルキル基を指す。特定の好ましい態様において、アルキル基はC1〜C5アルキル基、すなわち1〜約5個の炭素を有する分枝または直鎖アルキル基である。他の好ましい態様において、アルキル基はC1〜C3アルキル基、すなわち1〜約3個の炭素を有する分枝または直鎖アルキル基である。例となるアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルを含む。「低級アルキル」は、1〜約6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。好ましいアルキル基は、1〜約3個の炭素の低級アルキル基を含む。
【0051】
「アルキル化剤」は、開始材料と反応し得、開始材料にアルキル基を結合し得、典型的には共有結合し得る化合物である。アルキル化剤は、典型的には、開始材料への付着の時にアルキル基から分離する脱離基を含む。脱離基は、例えば、ハロゲン、ハロゲン化スルホネートまたはハロゲン化アセテートであってもよい。アルキル化剤の例は、ヨウ化シクロプロピルメチルである。
【0052】
「有機溶媒」は、当業者にとって共通の一般的な意味を有している。本発明において有用な、例となる有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、ヘキサン、エーテル、クロロホルム、酢酸、アセトニトリル、クロロホルム、シクロヘキサン、メタノール、およびトルエンを含むが、これらに限られない。無水有機溶媒は含まれる。
【0053】
「双極性非プロトン性」溶媒は、不安定水素原子を供与することができず、永久双極子モーメントを示すプロトン受容溶媒である。例には、アセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびN−メチルピロリドンを含む。
【0054】
「双極性プロトン性」溶媒は、不安定水素原子を供与することができ、永久双極子モーメントを示すものである。例には、水、2−プロパノール、エタノール、メタノールなどのアルコール類、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸などのカルボン酸を含む。
【0055】
S−MNTXは、R−MNTXの特性とは異なる特性およびS−とR−MNTXとの混合物とは異なる特性を示す。これらの特性は、クロマトグラフィーカラム上での移動性、生物学的および機能的活性、ならびに結晶構造を含む。インビボでのクリアランス速度、副作用プロフィールなどもまた、R−MNTXまたはR−MNTXとS−MNTXとの混合物とは異なり得ることが考えられる。本明細書において発見され主張されるように、純粋なS−MNTXは、胃腸での通過の阻害によって示されるように、末梢オピオイド受容体のアゴニストとして振る舞う。結果として、S−MNTXの活性は、R−MNTXおよびS−MNTXの両方を含む混合物中のR−MNTXによって妨害または拮抗され得る。したがって、S−MNTXを、単離され、実質的に純粋な形態で有することが非常に望ましい。
【0056】
本発明の一局面において、S−MNTXの合成のための方法が提供される。S−MNTXは、クロマトグラフィー技術に基づいて、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、98.5%、99%、および99.5%の曲線下面積(AUC)より高いかこれらに等しい純度で提供され得る。好ましい態様において、S−MNTXの純度は98%またはそれより高い。精製されたS−MNTX中のR−MNTXの量は、約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、3%、2%、1%、0.5%、0.3%、0.2%、0.1%(AUC)より低いかまたはこれらに等しくても、または本明細書において記載されるクロマトグラフィー技術によって検出され得ないものであってもよい。当業者は、この方法の検出は、使用された技術の検出および定量化の限度に依存することを理解する。定量化の限度は、実験室、分析者、機器および試薬のロットの変化に関係なく一貫して測定され得、報告され得る、R−MNTXの最低量である。検出限度は、検出可能であるが必ずしも正確な値として定量されないサンプル中のR−MNTXの最低量である。本発明の一態様において、検出限度は0.1%であり、定量化の限度は0.2%である。なお別の態様において、検出限度は0.02%であり、定量化の限度は0.05%である。
【0057】
S−MNTXを合成するために多様な合成プロトコルが試みられた。合成の多くは、S−MNTXを製造することに失敗するか、許容可能な純度のレベルまたは収率でS−MNTXを合成することに失敗した。本発明の成功方法においては、S−MNTXは、オキシモルホンのフェノールのOH基を保護しないまま、オキシモルホンを直接的にアルキル化することを介して合成され得る(図2)。オキシモルホンを、メチルシクロプロパン種のインドメチルシクロプロパンと反応させた。生じるS−MNTXの塩は、ヨウ化物などの対イオンを含み、これを、次いで、臭化物などの好ましい対イオンと交換してもよい。S−MNTXの合成における開始材料であるオキシモルホンは、例えば三臭化ホウ素によるオキシコドンの脱メチル化を介して、約95%の収率で得ることができる。あるいは、オキシモルホンを市販で入手してもよい。
【0058】
アルキル化反応は、溶媒または溶媒系中で行われ得、溶媒または溶媒系は無水であってもよい。溶媒系は、単一の溶媒であっても2種類以上の溶媒の組合せを含んでもよい。好適な溶媒系として、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、アセトン、1,4−ジオキサン、およびアセトニトリルなどの双極性非プロトン溶媒、ならびに2−プロパノールなどの双極性プロトン溶媒が挙げられる。溶媒系はまた、双極性非プロトン溶媒を、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン(グリム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル(メチル1,1,−ジメチルエチルエーテル、または2−メチル−2−メトキシプロパン)ジエチルエーテルなどの脂肪族エーテルと組み合わせたものを含んでもよく、他の極性溶媒もまたいくつかの態様において含まれ得る。例えば、溶媒系は、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン(3−ペンタノン)、およびt−ブチルメチルケトン(3,3−ジメチルブタン−2−オン)を含んでもよい。アルキル化溶媒系はまた、上記の化合物のいずれかの脂肪族または脂環式の同族体を含んでもよい。溶媒系は、2種類以上の溶媒を任意の比率で含んでもよく、特定のアルキル化反応のための適当な比率は、通常の実験を介して決定することができる。前記にも関わらず、驚くべきことに、NMPが好ましい溶媒であると判明した。
【0059】
溶媒は、約1、2、3、4、5、10またはこれ以上の容積より少ないか、多いか、またはこれらの容積と等しい比率で使用され得る。いくつかの場合において、例えば、生成物が液液抽出を用いて溶媒から移動されることになっている場合、または生成物が結晶化されることになっている場合、または溶媒が生成物から取り除かれることになっている場合、使用される溶媒の量を最少化する事が好ましい。
【0060】
アルキル化剤は、多様なモル比、例えば、開始材料の1当量あたり8当量、12当量、16当量、20当量、または24当量より高くで、開始材料に添加してよい。いくつかの例において、反応効率(S−MNTXの製造)は、使用されるアルキル化剤の量に実質的に非依存的であり得ることを見いだした。
【0061】
一組の態様において、アルキル化を、フィンケルスタイン(Finkelstein)反応を使用して行ってもよい。塩化シクロプロピルメチルなどのアルキルハライドを、ヨウ化ナトリウムなどのハライド塩と組み合わせて、ヨウ化シクロプロピルメチルなどの反応性のハロゲン化されたアルキル化剤を連続的に供給してもよく、これは、消費されれば補充する。
【0062】
開始材料は、大気圧で開放容器中でアルキル化しても、圧力下でアルキル化してもよい。反応は、当該分野において公知であるような方法/設備を使用して、反応時間にわたって温度が規定の温度で維持されるかまたは制御されるように行われる。アルキル化反応を通して制御された温度を維持するための一つの装置は、加熱機/冷却機ユニットである。アルキル化反応を通して温度を制御することは、温度の変動を抑制するかまたは低減する。一態様において、温度は、110℃を超えず、好ましくは100℃を超えない。例えば、オキシモルホンは、開放容器または閉鎖容器中で、50〜100℃、60〜90℃、65〜75℃の範囲にわたって、アルキル化され得る。反応は、約22時間まで進行させられ、好ましくは約15〜22時間、より好ましくは約16〜20時間である。マイクロ波照射によって反応時間を短縮され得ることが企図される。一態様において、反応物を、閉鎖容器中に70℃で約17時間位置させ、約1:1のS−MNTXに対するオキシモルホンの比を有する生成物を生成する。好ましい態様においては、アルキル化は、70℃で約20時間、光への暴露を低減するために覆われた開放容器(大気圧)中で行う。
【0063】
いくつかの態様において、S−MNTXを、S−MNTXが生成された溶媒から単離する。例えば、S−MNTXを含有する残留物から溶媒を除去するか、または全てのS−MNTXをアルキル化溶媒から移動溶媒へ移動する。移動溶媒は、極性であっても非極性であってもよく、100℃より低い沸点を有してもよい。移動溶媒として、エステル、アルデヒド、エーテル、アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、およびハロゲン化炭化水素が挙げられる。具体的な移動溶媒として、例えば、ジオキサン、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、水、水性HBr、ヘプタン、およびMTBEが挙げられる。一態様において、イソプロピルアセテートとジオキサンとの混合物を、S−MNTXをNMPから少なくとも部分的に単離するために用いてもよい。これらの溶媒の1種以上をNMP中のS−MNTXの溶液と混合すると、明色の固体が生じ、これは時間と共に油となる。
【0064】
溶媒から得られるあらゆる残留物を精査(work up)し、生成物であるS−MNTXを精製して単離してもよい。精製および単離は、当業者に公知の方法を用いて、例えば、クロマトグラフィー、再結晶、または当該分野において公知の種々の分離技術の組合せなどの分離技術を用いることによって、行うことができる。一態様において、C18カラムを使用するフラッシュ・クロマトグラフィーを、0.2%のHBrで改変された水性メタノール溶媒とともに用いてもよい。メタノール含有量は、例えば、約2.5%から約50%まで変化してもよい。好ましい態様において、S−MNTXを再結晶を用いて精製する。生成物の所望の純度が得られるまでプロセスを繰り返してもよい。
【0065】
一態様において、所望の純度のレベルを達成するために、S−MNTXを、少なくとも2回、3回、または4回、またはそれ以上の回数再結晶する。例えば、クロマトグラフィー技術に基づいて、S−MNTXを、50%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、98.5%、99.8%(AUC)より高いかこれらと同等の純度で得ることができる。不純物として、開始材料、0.2%より低いオキシモルホンが挙げられるが、検出可能なR−MNTXは含まれない。再結晶は、単一の溶媒または溶媒の組合せを使用して達成する。好ましい再結晶は、S−MNTXを極性溶媒中で溶解し、次いでより極性の低い共溶媒を添加することによって達成する。より好ましい態様においては、S−MNTXを、メタノールおよび共溶媒CH2Cl2/IPA(6:1)からの再結晶によって精製する。再結晶を、所望の純度を達成するまで繰り返す。
【0066】
S−MNTXおよびその誘導体は、塩の形態において製造される。S−MNTXの双性イオンなどの誘導体が含まれる。S−MNTXは、図1に示すとおり、正に荷電した四級アンモニウム基を含んでもよく、一価または多価のアニオンなどの対イオンと対になっていてもよい。これらのアニオンは、例えば、ハライド、硫酸、リン酸、硝酸、ならびにスルホン酸およびカルボン酸などのアニオン性に荷電した有機種を含んでもよい。好ましいアニオンとして、臭化物、塩化物、ヨウ化物、フッ化物、及びこれらの組合せが挙げられる。いくつかの態様において、臭化物が最も好ましい。例えば、反応性、可溶性、安定性、活性、コスト、アベイラビリティおよび毒性などの要因に基づいて、特定のアニオンを選んでもよい。
【0067】
S−MNTX塩の対イオンを、代替的な対イオンと交換してもよい。代替的対イオンを所望する場合、S−MNTX塩の水性溶液を、アニオン交換樹脂カラムに通して、S−MNTX塩の対イオンの一部または全部を好ましい代替的対イオンと交換してもよい。アニオン交換樹脂の例として、Bio-Radから市販される100〜200のメッシュグレードのAG 1−X8が挙げられる。別の態様において、S−MNTXのカチオンをカチオン交換樹脂で保持して、次いで、臭素イオン、塩素イオンなどの好ましいアニオンを含む塩溶液でS−MNTXを樹脂から除去して、溶液中で所望のS−MNTX塩を形成することによって、S−MNTXのカチオン交換することができる。
【0068】
本発明のS−MNTXは、多数の用途を有する。本発明の一局面は、クロマトグラフィー分離においてS−MNTXをサンプル中の他の成分から同定して区別する際の、クロマトグラフィー標準物質としてのS−MNTXである。本発明の別の局面は、S−MNTXとR−MNTXとを含む混合物中のS−MNTXを同定して区別する際のクロマトグラフィー標準物質としてのS−MNTXの使用である。単離されたS−MNTXもまた、反応混合物中のR−MNTXからS−MNTXを精製して区別するためのプロトコルの開発において有用である。かかるプロトコルは、本明細書において、また、同日に出願された表題を「(R)−N−メチルナルトレキソンの合成」とした共係属中の出願(事件整理番号P0453.70119US00)において記載されている。
【0069】
S−MNTXはまた、キットの形態において、標準物質としての用途についての指示書と共に、提供されてもよい。キットは、標準(authentic)のR−MNTXを標準物質としてさらに含んでもよい。標準物質としての用途のためのS−MNTXは、好ましくは99.8%またはこれより高い純度を有し、検出可能なR−MNTXを含まない。
【0070】
本発明の一局面は、MNTXの溶液中のS−MNTXとR−MNTXとを分離して同定する方法である。S−MNTXはまた、組成物または混合物中のS−MNTXの量を定量するHPLCアッセイ法において有用であり、ここで、この方法は、組成物または混合物のサンプルをクロマトグラフィーカラムに適用すること、組成物または混合物の成分を分離すること、およびサンプル中の分離成分のパーセンテージをS−MNTXの標準濃度のパーセンテージと比較することによってサンプル中のS−MNTXの量を計算すること、を包含する。方法は、逆相クロマトグラフィーにおいて特に有用である。本発明のS−MNTXは、そのオピオイド受容体に対するアゴニスト活性の利点により、本明細書において記載されるようなインビトロおよびインビボのオピオイド受容体アッセイにおけるアゴニスト活性の標準物質として有用である。
【0071】
S−MNTXを、1種以上の末梢オピオイド受容体によって媒介される状態を調節するために、予防的にまたは治療的に、末梢オピオイド受容体、特に末梢μオピオイド受容体をアゴナイズ(agonize)するために用いてもよい。S−MNTXを投与される被験体は、急性的に、慢性的に、または必要性に基づいて処置を受けることができる。
【0072】
S−MNTXが投与される被験体は、脊椎動物、特に哺乳動物である。一態様において、哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ブタ、および齧歯類である。好ましい態様において、哺乳類はヒトである。
【0073】
μおよび他のオピオイド受容体は、胃腸管(gastrointestinal tract)中に存在する。GI管中のオピオイド受容体の主要なクラスのうち、μ受容体が主としてGIの活性の調節に関与する。κオピオイド受容体が役割を有する可能性がある(Manara Lら、 Ann.Rev.Phamacol.Toxicol,1985,25:249-73)。一般に、S−MNTXは、オピオイド受容体、特に末梢オピオイド受容体の活性化または調節の必要性と関連する状態を予防または処置するために使用される。重要であるのは、GI管中のオピオイド受容体、特にμオピオイド受容体の活性化または調節の必要性と関連する状態を予防または処置するためのS−MNTXの使用である。予防または処置され得るかかる状態として、下痢が挙げられ、炎症性腸症候群ならびに摂食および消化の障害の特定の形態を含む胃腸機能不全の特定の形態を予防または抑制するために使用される。
【0074】
一局面において、S−MNTXを、下痢を処置するために用いてもよい。胃腸機能は、1種以上のオピオイド受容体ならびに内因性オピオイドによって、少なくとも部分的に調節される。オピオイドアンタゴニストは、胃腸運動を増加させることが知られており、したがって、便秘のための処置として効果的に使用され得る。一方、オピオイドアゴニスト、特にロペラミドなどの末梢オピオイドアゴニストは、胃腸運動を低下させることが知られており、哺乳動物において下痢を処置する際に有用である。出願人らによって発見されたオピオイドアゴニストとしてのS−MNTXは、下痢のための処置を必要とする患者に投与することができる。下痢は、本明細書において使用される場合、以下の1つ以上として定義される:1)便の硬さがゆるい;2)1日当たり、3回より多くの便通;および/または3)1日当たり、200g(150ml)以上の便通。S−MNTXは、腸管内容物の通過時間を延長するために有効な量で投与する。腸管内容物の通過時間の延長は、排泄物の容積の減少、排泄物の粘性および容積密度の増加、ならびに体液および電解質の損失の減少をもたらす。
【0075】
本発明のS−MNTXは、そのオピオイドアゴニスト活性の利点により、慢性機能性(特発性)下痢を含む急性または慢性の形態の下痢を含む、多様な病因を有する下痢の予防および処置において有用である。
急性下痢または短期の下痢は、本明細書において使用される場合、続けて1週間未満、代表的には1〜3日続く下痢である。慢性下痢、継続的下痢または長期の下痢は、本明細書において使用される場合、1週間または1週間より長い期間続く下痢である。慢性下痢は、数ヶ月または数年もの間続き得、継続的または断続的であり得る。S−MNTXを使用する処置の恩恵を受け得る多様な形態及び原因の下痢として、以下に記載するものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0076】
任意のウイルスによって引き起こされるウイルス性胃腸炎または「胃インフルエンザ」は、S−MNTXを使用する処置に適しており、ロタウイルス、ノーウォーク様ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、およびアデノウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
細菌および寄生虫で汚染された食物を食べるまたは水を飲むことから生じる食中毒および旅行者下痢は、S−MNTXを使用する処置に適している。一般的に下痢を引き起こす細菌として、Escherichia coli、サルモネラ属、赤痢菌属、クロストリジウム属、カンピロバクター属、エルシニア属、およびリステリア属が挙げられる。下痢を引き起こし得る寄生虫として、Giardia lamblia、Entamaeba histolytica、およびクリプトストリジウム属が挙げられる。下痢を引き起こし得る真菌として、カンジダ属が挙げられる。
【0077】
特定の医学的状態もまた、下痢を引き起こし得、乳糖不耐性、セリアック病(スプルーまたはグルテン吸収不良)、嚢胞性線維症、牛乳または豆もしくは果実などの他の特定の食物中のタンパク質に対する不耐性などの吸収不良症候群が挙げられる。特定の食物に対するアレルギーは、下痢をもたらす胃腸刺激および/またはアレルギー反応を引き起こし得る別の状態である。代表的な食物アレルゲンとして、ピーナッツ、トウモロコシ、および貝が挙げられる。これらの医学的状態によって引き起こされるかまたは関連する下痢は、本発明のS−MNTXを使用する処置に適している。
【0078】
下痢、特に慢性下痢をもたらす他の医学的状態として、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患が挙げられ、刺激性腸症候群(IBS)および免疫不全もまた、下痢を予防または処置するためにS−MNTXの恩恵を受ける。
S−MNTXは、抗生物質、マグネシウムを含む緩下剤、癌の処置のための化学療法剤、および高用量の放射線治療などの医薬および/または治療によって引き起こされる下痢の予防または処置において有用である。
下痢はまた、ゾリンジャー・エリソン症候群、自律神経ニューロパシーまたは糖尿病性ニューロパシーなどの神経障害、カルチノイド症候群、血管作用性腸管ポリペプチド分泌腫瘍、ならびに、短腸症候群、胃切除術、イレオストミーまたはコロストミーを伴うまたは伴わない腸切除術、および胆嚢の除去を含む、胃腸管の解剖学的状態と関連する。かかる状態は、S−MNTXを使用する処置に適している。
【0079】
S−MNTXは任意の経路を通して、経口または非経口で投与することができ、下痢の予防または処置のためのかかる経路として、腹腔内、静脈内、膣内、直腸内、筋肉内、皮下、アエロゾル、鼻用スプレー、経粘膜、経皮、局所、結腸などが挙げられる。
S−MNTXはまた、被験体においてイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の容積を減少させる方法において有用である。S−MNTXは、オストミーからの排出物の容積を、S−MNTXの非存在下におけるオストミーからの排泄の容積と比較して減少させるために有効な量で提供される。S−MNTXはまた、オストミーからの排泄の速度を制御する上で有用であり、特に、排泄の速度の低下を必要とする被験体において排出の速度を低下させる上で有用である。
【0080】
本発明の別の局面によれば、被験体において胃腸運動を抑制させるための方法が提供される。方法は、かかる抑制を必要とする被験体に、S−MNTXを含む医薬組成物を、その被験体において胃腸運動を抑制するために有効な量で投与することを包含する。本発明によれば、S−MNTXは、S−MNTXでない別の運動抑制剤と組み合わせて投与されてもよい。一態様において、剤は、オピオイドまたはオピオイドアゴニストである。オピオイドまたはオピオイドアゴニストは、上に記載される。別の態様において、剤はオピオイドまたはオピオイドアゴニストではない。
【0081】
かかる非オピオイド胃腸運動抑制剤として、例えば、シサプリド、制酸剤、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ポリカルボフィル、シメチコン、ヒヨスチアミン、アトロピン、フラゾリドン、ジフェノキシン、オクトレオチド、ランソプラゾール、カオリン、ペクチン、活性炭、スルファグアニジン、スクシニルスルファチアゾール、フタリルスルファチアゾール、アルミン酸ビスマス、亜炭酸ビスマス、亜クエン酸ビスマス、クエン酸ビスマス、ビスマス酸二クエン酸三カリウム、酒石酸ビスマス、亜サリチル酸ビスマス、亜硝酸ビスマス、没食子酸ビスマスなどのビスマス含有調製物、オピウムチンキ(パレゴリック)、生薬、植物由来止痢剤が挙げられる。さらなるかかる剤として、ベンゾジアゼピン化合物、鎮痙剤、選択的セロトニン再取込阻害剤(SSRI)、コレシストキニン(CCK)受容体アンタゴニスト、ナチュラルキラー(NK)受容体アンタゴニスト、コルチコトロピン放出因子(CRF)受容体アンタゴニスト、GI弛緩剤、抗ガス化合物、多硫酸ペントサン、制吐性ドーパミンD2アンタゴニスト、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(ロイプロリド)、コルチコトロピン−1アンタゴニスト、ニューロキニン2受容体アンタゴニスト、コレシストキニン−1アンタゴニスト、ベータ遮断薬、抗食道逆流剤、抗炎症剤、5HT1アゴニスト、5HT3アンタゴニスト、5HT4アンタゴニスト、胆汁酸塩隔絶剤、バルク形成剤、α2アドレナリンアゴニスト、三環系抗うつ剤などの抗うつ剤が挙げられる。
【0082】
さらなるかかる剤として、抗ムスカリン剤、神経節遮断剤、ホルモンおよびホルモンアナログ、ならびにモチリン受容体アンタゴニストが挙げられる。抗ムスカリン剤として、ベラドンナアルカロイド、四級アンモニウム抗ムスカリン化合物、および三級アミン抗ムスカリン化合物が挙げられる。ベラドンナアルカロイドの例として、ベラドンナ葉抽出物、ベラドンナチンキ、およびベラドンナ抽出物が挙げられる。四級アンモニウム抗ムスカリン剤の例としては、アニソトロピン(Anisotropine)またはアニソトロピン臭化メチル(Valpin)、クリジニウム(Clidinium)または臭化クリジニウム(Quarzan)、グリコピロレート(Robinul)、ヘキソサイクリウム硫酸メチル(Tral)、ホマトロピン、イプラトロピウムまたは臭化イプラトロピウム、イソプロパミドまたはヨウ化イソプロパミド(Darbid)、メペンゾラートまたは臭化メペンゾラート(Cantil)、メタンテリンまたは臭化メタンテリン(Banthine)、メトスコポラミンまたは臭化メトスコポラミン(Pamine)、オキシフェノニウム、およびプロパンテリンまたは臭化プロパンテリンが挙げられる。
【0083】
三級アミン抗ムスカリン剤の例として、アトロピン、ジシクロミンまたは塩酸ジシクロミン(Bentylおよび他)、塩酸フラボキセート(Urispas)、オキシプチニンまたは塩化オキシブチニン(Ditropan)、オキシフェンサイクリミンまたは塩酸オキシフェンサイクリミン(Daricon)、プロピベリン、スコポラミン、トルテロジン、およびトリジヘキセチルまたは塩化トリジヘキセチル(Pathilon)が挙げられる。他の抗ムスカリン剤として、ピレンゼピン、テレンゼピン、AF-DX116、メトクトラミン、ヒンバシン(Himbacine)およびヘキサヒドロシルアジフェニドール(Hexahydrosiladifenidol)が挙げられる。神経節遮断剤として、ヘキサメトニウム、メカミラミン、テトラエチルアンモニウムおよびアセチルコリンなどの合成アミンが挙げられる。抗胃腸運動剤であるホルモンおよびホルモンアナログの例として:ソマトスタチンおよびソマトスタチン受容体アゴニストが挙げられる。ソマトスタチンのアナログの例として、オクトレオチド(例えば、Sandostatin(登録商標))およびバプレオチド(vapreotide)が挙げられる。モチリンアンタゴニストとして、(Phe3、Leu-13)ブタモチリンが挙げられる(214th American Chemical Society (ACS) Meeting (Part V);Highlights from Medicinal Chemistry Poster Session, Wednesday 10 September, Las Vegas, Nevada, (1997), Iddb Meeting Report September 7-11 (1997);およびANQ-1 1 125, Peeters T.L., et al., Biochern. Biophys. Res. Commun., Vol. 198(2), pp. 411-416 (1994))。
【0084】
別の局面において、S−MNTXを、摂食および消化の障害を処置するために使用してもよい。本発明によるS−MNTXを使用する処置に適している摂食障害および消化障害として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:例えば、妊娠、癌、インフルエンザ、HCVまたはHIVなどの感染症によって誘導されるか、異化、悪液質(cachexy)、食欲不振、特に神経性食欲不振症、食欲不振症(dysorexia)、ジスポンデローシス(dysponderosis)、体脂肪肥満、過食症、肥満、胃不全麻痺、特に、神経性胃不全麻痺、糖尿病性胃不全麻痺、筋原性胃不全麻痺、または薬物、胃アトニー、胃麻痺(gastroparalysis)もしくは腸不全麻痺(enteroparesis)によって誘導される胃不全麻痺、ならびに胃腸管の狭窄、特に幽門の狭窄の結果として誘導されるか、病的なバランスを欠いた食欲の調節、食欲の消失または減退。
【0085】
疼痛は、多様に定義されてきた。例えば、疼痛は、被験体による離脱(withdrawal)反応を引き起こす、被験体による侵害刺激の知覚として定義することができる。鎮痛は、疼痛知覚の減少である。強い刺激に対する動物の反応を、一般的な行動または運動機能を鈍らせることなく選択的に遮断する剤は、鎮痛剤と称される。オピエートおよびオピオイドアゴニストは、特定のオピオイド受容体との相互作用を介して、疼痛に作用する。S−MNTXがラットにおいて胃腸通過に対してオピエートアゴニスト活性を有するという発見により、S−MNTXを疼痛の治療において使用することについての論理的根拠が存在する。
【0086】
一般に、本発明によるS−MNTXおよびその誘導体の投与は、広範な障害、状態、または疾患のいずれかに関連する疼痛の管理を促進するために用いることができる。「疼痛」とは、本明細書において使用される場合、他に示されない限り、あらゆる持続期間および頻度の疼痛を包含することを意味し、急性疼痛、慢性疼痛、間欠的疼痛などが挙げられるがこれらに限定されない。疼痛の原因は、同定可能であっても同定不可能であってもよい。同定可能な場合、疼痛の原因は、例えば、悪性、非悪性、感染性、非感染性、または自己免疫性の原因である。一態様は、短期治療、例えば歯科治療、骨折、外来の外科術を要する疾患、障害または状態であって、治療が数時間から3日間の期間にわたる処置を含むものと関連する疼痛の管理である。
【0087】
特に重要であるのは、長期の治療を要する障害、疾患または状態であって、例えば慢性および/または持続性の疾患または状態であって、治療が数日(例えば、約3日間から10日間)、数週間(例えば、約2週間または4週間から6週間)、数ヶ月または数年まで、被験体の残りの人生までを含む期間にわたる処置を含むものと関連する疼痛の管理である。現在疾患または状態を罹患していないが、かかる疾患または状態に感受性である被験体もまた、本発明の組成物または方法を使用する(例えば、外傷の外科術に先立って)予防的疼痛管理の恩恵を受けることができる。本発明による治療に適している疼痛として、無痛の間期と交互の疼痛の長期エピソード、または重篤度が変化する実質的に緩解しない疼痛が挙げられる。
【0088】
一般に、疼痛は、侵害受容性、身体的(somatogenic)、神経因性、または心因性であり得る。身体的疼痛は、筋肉性または骨格性(すなわち、骨関節炎、腰背部痛、外傷後、筋肉膜痛)、内臓性(すなわち、膵臓炎、潰瘍、刺激性腸)、虚血性(すなわち、閉塞性動脈硬化症)、または癌の進行と関連するもの(例えば、悪性または非悪性のもの)であり得る。神経因性疼痛は、外傷後または手術後の神経痛に起因し得、ニューロパシーと関連し得(すなわち、糖尿病、毒性など)、ならびに、神経絞扼、顔面神経痛、会陰神経痛、切断術後、視床性、灼熱痛、および反射性交感神経性ジストロフィーに関連し得る。
【0089】
本発明による管理に適した疼痛の状態、疾患、および原因として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:癌の疼痛(例えば、悪性または非悪性の癌)、炎症性疾患の疼痛、ニューロパシーの疼痛、手術後の疼痛、医原性疼痛(例えば、侵襲法または高用量放射線治療の後の疼痛、例えば、運動しやすさの低下および実質的な疼痛をもたらす瘢痕組織形成)、複合性局所疼痛症候群、術後不安定性腰痛(failed back pain)、軟組織疼痛、関節および骨の疼痛、中枢性疼痛、損傷(例えば、衰弱性損傷(debilitating injury)、例えば、対麻痺、四肢麻痺など、ならびに(例えば、背部、頸部、脊椎、関節、脚、腕、手、足などへの)非衰弱性損傷)、関節炎性疼痛(例えば、関節リウマチ、骨関節炎、未知の病因の関節炎症候群など)、遺伝疾患(例えば、鎌状赤血球貧血)、感染性疾患およびその結果生じる症候群(例えば、ライム病、AIDSなど)、頭痛(例えば、偏頭痛)、灼熱痛、知覚過敏、交感神経性ジストロフィー、幻肢症候群、脱神経など。疼痛は、身体の任意の部分(単数または複数)、例えば、筋骨格系、内臓器官、皮膚、神経系などと関連し得る。
【0090】
本発明の方法を用いて、オピオイドに対してナイーブな患者またはオピオイドに対してもはやナイーブでない患者において疼痛を管理してもよい。例示的なオピオイドに対してナイーブな患者は、疼痛管理のための長期のオピオイド治療を受けたことがない患者である。例示的なオピオイドに対してもはやナイーブでない患者は、短期または長期のオピオイド治療を受けたことがあり、耐性、依存性、または他の副作用を発症している患者である。例えば、経口、静脈内もしくは髄腔内のモルヒネ、経皮フェンタニル貼付剤、または従来投与されているフェンタニル、モルヒネ、もしくは他のオピオイドの皮下注入によって難治性の悪性副作用を有する患者は、S−MNTXおよびその誘導体の送達により、良好な鎮痛を達成し、好ましい副作用プロフィールを維持することができる。
【0091】
用語「疼痛の管理または処置」とは、ここで使用される場合、主観的判断基準、客観的判断基準またはこれらの両方により、被験体をより快適にするような、疼痛の退縮、抑制または緩和を一般的に記載する。一般的に、疼痛は、患者の報告によって主観的に評価され、保健の専門家が、患者の年齢、文化的背景、環境、および疼痛に対する個人の主観的反応を変化させることが知られている他の心理学的背景要因を考慮する。
【0092】
上記の通り、S−MNTXを、疼痛緩和剤である治療剤を非限定的に含むS−MNTXではない治療剤とともに投与してもよい。一態様において、疼痛緩和剤は、オピオイドまたはオピオイドアゴニストである。別の態様において、疼痛緩和剤は、コルチコステロイドまたは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの非オピオイド性疼痛緩和剤である。疼痛緩和剤として、以下が挙げられる:塩酸アルフェンタニル;アミノベンゾエートカリウム;アミノベンゾエートナトリウム;アニドキシム(Anidoxime);アニレリジン;塩酸アニレリジン;塩酸アニロパム(Anilopam);アニロラク(Anirolac);アンチピリン;アスピリン;ベノキサロフェン;塩酸ベンジダミン;塩酸ビシファジン(Bicifadine);塩酸ブリフェンタニル;マレイン酸ブロマドリン(Bromadoline);ブロムフェナクナトリウム;塩酸ブプレノルフィン;ブタセチン;ブチキシレート(Butixirate);ブトルファノール;酒石酸ブトルファノール;カルバマゼピン;カルバスピリンカルシウム;塩酸カルビフェン(Carbiphene);クエン酸カルフェンタニル;コハク酸シプレファドール(Ciprefadol);シラマドール(Ciramadol);塩酸シラマドール;クロニキセリル(Clonixeril);クロニキシン(Clonixin);コデイン;リン酸コデイン;硫酸コデイン;塩酸コノルホン(Conorphone);シクラゾシン;塩酸デキソキサドロール(Dexoxadrol);デクスプレメドラク(Dexpemedolac);
【0093】
デゾシン:ジフルニサル;二酒石酸ジヒドロコデイン;ジメファダン(Dimefadane);ジピロン;塩酸ドクスピコミン(Doxpicomine);ドリニデン(Drinidene);塩酸エナドリン;エピリゾール;酒石酸エルゴタミン;塩酸エトキサゼン(Ethoxazene);エトフェナメート;オイゲノール;フェノプロフェン;フェノプロフェンカルシウム;クエン酸フェンタニル;フロクタフェニン;フルフェニサル(Flufenisal);フルニキシン(Flunixin);メグルミン酸フルニキシン;マレイン酸フルピルチン;フルプロカゾン(Fluproquazone);塩酸フルラドリン(Fluradoline);フルルビプロフェン;塩酸ヒドロモルホン;イブフェナク;インドプロフェン;ケタゾシン;ケトルファノール;ケトロラク;トロメタミン;塩酸レチミド(Letimide);酢酸レボメタジル;酢酸塩酸レボメタジル;塩酸レボナントラドール(Levonantradol);酒石酸レボルファノール;塩酸レフェミゾール;シュウ酸ロフェンタニル;ロルシナドール(Lorcinadol);ロルノキシカム(Lornoxicam);サリチル酸マグネシウム;メフェナム酸;塩酸メナビタン;塩酸メペリジン;塩酸メプタジノール;塩酸メタドン;酢酸メタジル;メトホリン;メトトリメメプラジン;酢酸メトケファミド(Metkephamid);塩酸ミンバン(Mimbane);塩酸ミルフェンタニル;
【0094】
モリナゾン(Molinazone);硫酸モルヒネ;モキサゾシン;塩酸ナビタン(Nabitan);塩酸ナルブフィン;塩酸ナルメキソン;ナモキシレート(Namoxyrate);塩酸ナントラドール(Nantradol);ナプロキセン;ナプロキセンナトリウム;ナプロキソール(Naproxol);塩酸ネフォパム(Nefopam);塩酸ナキセリジン(Nexeridine);塩酸ノラシメタドール(Noracymethadol );塩酸オクフェンタニル(Ocfentanil);オクタザミド(Octazamide);オルバニル;フマル酸オキセトロン;オキシコドン;;塩酸オキシコドン;テレフタル酸オキシコドン;塩酸オキシモルホン;パメドラク(Pemedolac);ペンタモルホン;ペンタゾシン;塩酸ペンタゾシン;乳酸ペンタゾシン;塩酸フェナゾピリジン;塩酸フェニルアミドール(Phenyramidol);塩酸ピセナドール;ピナドリン;ピルフェニドン;ピロキシカム;ピロキシカムオラミン(Piroxicam Olamine);マレイン酸プラバドリン(Pravadoline);塩酸プロジリジン(Prodilidine);塩酸プロファドール;フマル酸プロピラム;塩酸プロポキシフェン;ナプシル酸プロポキシフェン;プロキサゾール;クエン酸プロキサゾール;酒石酸プロキソルファン(Proxorphan);塩酸ピロリフェン;塩酸レミフェンタニル;サルコレックス(Salcolex);マレイン酸サレタミド(Salethamide);サリチルアミド;サリチル酸メグルミン;サルサラート;サリチル酸ナトリウム;メシル酸スピラドリン;スフェンタニル;クエン酸スフェンタニル;タルメタシン; タルニフルメート(Talniflumate);タロサレート(Talosalate);コハク酸タザゾレン(Tazadolene);テブフェロン(Tebufelone);テトリダミン(Tetrydamine);チフラックナトリウム(Tifurac);塩酸チリジン;チオピナク(Tiopinac);メシル酸トナゾシン(Tonazocine);塩酸トラマドール;塩酸トレフェンタニル;トロラミン(Trolamine);塩酸ベラドリン;塩酸ベリロパム(Verilopam);ボラゾシン(Volazocine); メシル酸キセルファノール(Xorphanol);塩酸キシラジン(Xylazine);メシル酸ゼナゾシン(Zenazocine);ゾメピラクナトリウム(Zomepirac Sodium);ズカプサイシン(Zucapsaicin)およびこれらの組合せ。
【0095】
痛覚過敏は、疼痛に対する感受性の増大または疼痛感覚の強度の増強を意味する。痛覚過敏は、被験体が刺激に対して感受性過剰である場合に起こり得、所与の刺激に対して強調された疼痛応答をもたらす。痛覚過敏は、しばしば、局所的炎症状態の結果であり、身体組織の外傷(trauma)または損傷(injury)の後で起こり得る。炎症は、局所的感染、疱疹、おでき、切創、掻傷、火傷、日焼け、擦過傷、外科的切開などの皮膚損傷、ツタウルシ皮膚炎、アレルギー性発疹、昆虫による咬傷および刺傷、ならびに関節炎などの炎症性皮膚状態の後に起こり得るか、またはこれらに関連し得る。末梢痛覚過敏を予防および処置するため、ならびに炎症から生じる疼痛および/または症状を低減するためにS−MNTXを用いてもよい。本明細書において使用される場合、痛覚過敏は、掻痒症または掻痒を含み、S−MNTXを、抗掻痒症処置として用いてもよい。
【0096】
本明細書における組成物および方法は、多数の炎症性状態および損傷と関連する痛覚過敏の予防および処置のために意図される。本明細書において提供される組成物および方法は、以下と関連する多様な痛覚過敏状態を処置するために用いてもよい:火傷(熱火傷、放射線火傷、化学物質火傷、日焼けおよび風焼けが挙げられるがこれらに限定されない)、擦過傷(例えば、角膜擦過傷、挫傷(bruise)、挫傷(contusion)、凍傷が挙げられる)、発疹(例えば、アレルギー熱、ならびに例えばツタウルシ皮膚炎およびおむつかぶれなどの接触性皮膚炎)、面皰、昆虫による咬傷/刺傷、皮膚潰瘍(糖尿病および辱瘡が挙げられるがこれらに限定されない)、粘膜炎、炎症、例えば、歯周炎、歯科矯正による炎症、化粧品またはスキンケア製品の使用から生じる炎症/刺激、炎症性結膜炎、痔核および性器の炎症、歯肉炎、気管支炎、喉頭炎、咽頭炎、帯状疱疹、真菌過敏、例えば、足白癬および頑癬、単純ヘルペス、おでき、足底疣贅、または例えば糸状菌および性交によって伝達される膣の病変。
【0097】
皮膚表面と関連する痛覚過敏状態として、以下が挙げられる:火傷(熱火傷、放射線火傷、化学物質火傷、日焼けおよび風焼けが挙げられるがこれらに限定されない)、例えば角膜擦過傷、挫傷(bruise)、挫傷(contusion)、凍傷などの擦過傷、発疹(アレルギー性、および熱接触性皮膚炎(例えばツタウルシ皮膚炎)およびおむつかぶれ)、面皰、昆虫による咬傷/刺傷、皮膚潰瘍(糖尿病および辱瘡が挙げられる)。口腔、喉頭および気管支の痛覚過敏状態として、粘膜炎、抜歯後、歯周炎、歯肉炎、歯科矯正による炎症、気管支炎、喉頭炎および咽頭炎が挙げられる。眼の痛覚過敏状態として、角膜の擦過傷、後面放射角膜切除術(post-radial keratectomy)、または結膜炎が挙げられる。直腸/肛門の痛覚過敏状態として、痔核および性器の炎症が挙げられる。感染性因子と関連する痛覚過敏状態として、帯状疱疹、真菌による刺激(足白癬および頑癬が挙げられる)、単純ヘルペス、おでき、足底疣贅ならびに膣の病変(糸状菌および性交によって伝達される病変が挙げられる)。痛覚過敏状態はまた、例えば、乳腺腫瘍摘出術、会陰切開術、腹腔鏡検査、関節鏡検査、放射状角膜切開術および抜歯の後の快復などの手術後の快復と関連し得る。
【0098】
末梢痛覚過敏のための予防薬または処置として、S−MNTXを、化合物を罹患領域に送達するために提供される任意の経路を用いて送達することができる。投与は、経口または非経口であり得る。投与の方法としてまた、局所(topical)または局所的(local)投与が挙げられる。S−MNTXを、皮膚、関節、眼、唇および粘膜を含むあらゆる身体表面へ適用することができる。
【0099】
S−MNTXを、本明細書において記載されるもののような、疼痛薬、掻痒薬、抗炎症剤などを含む、抗痛覚過敏作用を提供する他の化合物と組合せて送達してもよい。S−MNTXをまた、炎症を引き起こす状態を処置するために使用される他の化合物、例えば、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、および抗感染症剤などとともに投与してもよい。これらの他の化合物は、局所または全身で作用し得、投与され得、同一の組成物の部分であっても別個に投与されてもよい。かかる化合物は、以下により詳細に記載される。
【0100】
炎症は、しばしば腫瘍壊死因子(TNF)産生の増大と関連し、TNF産生の低下は炎症の低減をもたらすと考えられている。末梢で作用するオピオイドアゴニストはTNF産生を低下させることが示されている(米国特許第6,190,691号)。末梢で選択的なκオピオイドであるアシマドリンは、アジュバント誘導性関節炎動物モデルにおいて強力な抗関節炎剤であることが示されている(Binder, W. and Walker, J.S. Br. J. Pharma 124:647-654)。したがって、S−MNTXおよびその誘導体の末梢オピオイドアゴニスト活性は、炎症状態の予防および処置を提供する。理論に拘束されないが、S−MNTXおよびその誘導体の抗炎症作用は、直接的または間接的に、TNF産生の抑制を介するものであり得る。S−MNTXまたはその誘導体は、全身で投与されても局所で投与されてもよい。S−MNTXを、ロペラミドおよびジフェノキシレートなどの別のTNF阻害剤または本明細書において記載される他の抗炎症剤と組み合わせて投与してもよい。
【0101】
本発明の別の局面は、全身性炎症状態、好ましくは、炎症性腸疾患、関節リウマチ、悪液質、喘息、クローン病、エンドトキシンショック、成人呼吸促迫症候群、虚血/再灌流障害、移植片対宿主反応、骨吸収、移植および狼瘡の、S−MNTXまたはその誘導体を用いる予防および/または処置である。
さらに別群の態様において、S−MNTXまたはその誘導体を使用する処置に適している炎症性状態は、多発性硬化症、糖尿病、または後天性免疫不全症候群(AIDS)もしくは癌に関連する萎縮に関連する。
一群の態様において、皮膚炎症状態、好ましくは、乾癬、アトピー性皮膚炎、UV−誘発性炎症、接触性皮膚炎、または他の薬物(RETIN−A(オールトランスレチノイン酸)が挙げられるがこれに限定されない)によって誘発される炎症が、S−MNTXまたはその誘導体を用いる処置に適している。
【0102】
本発明の別の局面は、非アレルギー性炎症性皮膚状態を処置する方法であり、炎症状態を処置するために有効な量でのS−MNTXの投与を包含する。非アレルギー性炎症性皮膚状態は、刺激性接触性皮膚炎、乾癬、湿疹、掻痒、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹、扁平苔癬、尋常性ざ瘡、面皰、多型(polymorph)、嚢胞性ざ瘡(nodulokystic acne)、凝塊性ざ瘡(conglobata)、老人性ざ瘡、二次性ざ瘡、薬によるざ瘡(medicinaal acne)、角質化障害、および水疱性皮膚炎(blistery derma)、と関連する。
【0103】
処置に対して特に適している特定の患者は、前述の状態のいずれか一つの症状を有する患者である。患者は、他の治療を用いては、その症状の軽減を得ることが出来なかったか、またはその症状の軽減または一貫した程度の軽減を得られなくなっていてもよい。かかる患者は、従来の処置に対して抵抗性であるといわれる。状態は、引き起こされるか、または、疾患状態、身体的状態、薬物誘導性状態、生理学的不均衡、ストレス、不安などを非限定的に含む1種以上の多様な状態の結果である。
【0104】
被験体を、S−MNTXとS−MNTX以外の治療剤との組合せで処置してもよい。これらの状況において、S−MNTXおよび他の治療剤は、被験体が所望のとおりの種々の剤の効果を経験するように、時間的に十分近接して、代表的には同時に投与される。いくつかの態様においては、S−MNTXが時間的に最初に送達され、いくつかの態様においては時間的に二番目に送達され、いくつかのさらなる態様においては同時に送達される。以下により詳細に考察されるように、本発明は、S−MNTXが別の薬剤を含む処方物中で投与される医薬製剤を企図する。これらの処方物は、その全体が参考として本明細書において援用される米国特許第10/821,809号において記載されるようなものである。含まれるものは、固体、半固体、液体、徐放、および他のかかる処方物である。
【0105】
S−MNTXとともに予防および処置プロトコルの一部である一つの重要なクラスの薬剤は、オピオイドである。驚くべきことに、出願人らにより、オピオイドであるモルヒネと組み合わせて使用されるS−MNTXが、明らかに増強された相乗的な胃腸通過の抑制をもたらすことが見出された。したがって、本発明は、S−MNTXを1種以上のオピオイドと組み合わせて含む医薬組成物を提供する。このことが、これまで得ることが出来なかった変化を可能にする。例えば、特定の末梢で媒介される状態を処置するためにオピオイドのより低い用量が望ましい場合、これは今や、S−MNTX処置との組合せによって可能となる。
【0106】
オピオイドは、あらゆる薬学的に受容可能なオピオイドである。一般的なオピオイドは、以下からなる群より選択されるものである:アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾシン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルフィン(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、レボメサジルアセテート、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メサドン、モルフィン、モルフィン−6−グルクロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチン、およびトラマドール。
【0107】
達成するべき所望の効果に依存して、オピオイドは、非経口または他の全身経路で投与して、中枢神経系(CNS)および末梢オピオイド受容体の両方に作用させることができる。S−MNTXとの組み合わせにおけるオピオイドの所望の効果は、下痢の予防または処置、任意の原因または病因からの疼痛の予防または処置であり得、末梢痛覚過敏の予防または処置を含む。効能が末梢痛覚過敏の予防または処置である場合、同時のCNSでの作用を有さないオピオイドを提供すること、あるいは、オピオイドが血液脳関門を越えないが末梢オピオイド受容体に対して効果を提供するように、局所または局所的にオピオイドを投与することが望ましい。
【0108】
S−MNTXとの組合せにおいて、下痢の予防もしくは処置または末梢痛覚過敏の予防もしくは処置のために特に有用なオピオイドとして、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
(i)ロペラミド[4−(p−クロロフェニル)−4−ヒドロキシ−N−N−ジメチル−α,α−ジフェニル−1−塩酸ピペラジンブチルアミド]]、本明細書において定義されるようなロペラミドのアナログおよび関連化合物(米国特許第3,884,916号および同第3,714,159号を参照;また、米国特許第4,194,045号、同第4,116,963号、同第4,072,686号、同第4,069,223号、同第4,066,654号を参照)、本明細書において定義されるような、ロペラミドおよびアナログのN−オキシド、それらの代謝物およびプロドラッグならびに関連化合物(また、米国特許第4,824,853号を参照)、ならびに、以下の(a)、(b)および(c)などの関連化合物:
【0109】
(a)4−(アロイルアミノ)ピリジン−ブタンアミド誘導体および本明細書において定義されるようなそのN−オキシド(また、米国特許第4,990,521号を参照);
(b)5−(1,1−ジフェニル−3−(5−または6−ヒドロキシ−2−アザビシクロ−(2.2.2)オクト−2−イル)プロピル)−2−アルキル−1,3,4−オキサジアゾール類、5−(1,1−ジフェニル−4−(環式アミノ)ブト−2−トランス−エン−1−イル)−2−アルキル−1,3,4−オキサジアゾール類、2−[5−(環式アミノ)−エチル−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]−シクロヘプタン−5−イル]−5−アルキル−1,3,4−オキサジアゾール類]および関連化合物(米国特許第4,013,668号、同第3,996,214号および同第4,012,393号を参照);
(c)2−置換−1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン類(米国特許第4,125,531号を参照);
【0110】
(ii)3−ヒドロキシ−7−オキソモルフィナン類および3−ヒドロキシ−7−オキソイソモルフィナン類(例えば、米国特許第4,277,605号を参照)
(iii)本明細書において提供される尿素アミジノ類(また、米国特許第4,326,075号、同第4,326,074号、同第4203,920号、同第4,060,635号、同第4,115,564号、同第4,025,652号を参照)、および2−[(アミノフェニルおよびアミドフェニル)アミノ]−1−アザシクロアルカン類(米国特許第4,533,739号を参照);
【0111】
(iv)メトケファミド[H−L−Tyr−D−Ala−Bly−L−Phe−N(Me)Met−NH2;例えば、米国特許第4,430,327号;Burkhart et al. (1982) Peptides 3-869-871; Frederickson et al. (1991) Science 211:603-605を参照)、ならびに、血液脳関門を越えないH−Tyr−D−Nva−Phe−Orn−NH2、H−Tyr−D−Nle−Phe−Orn−NH2、H−Tyr−D−Arg−Phe−A2bu−NH2、H−Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2、およびH−Lys−Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2などの他の合成オピオイドペプチド、(米国特許第5,312,899号を参照;また、Gesellchen et al. (1981) Pept.: Synth., Struct., Funct., Proc. Am. Pept. Symp., 7th;Rich et al., (Eds), Pierce Chem. Co., Rochford, Ill., pp. 621-62を参照);
(v)米国特許第5,236,947号などに定義されるプロパンアミン。
【0112】
S−MNTXはまた、他の止痢性の化合物および組成物と組み合わせて、下痢を処置するために用いてもよい。例えば、S−MNTXを既知の止痢剤と組み合わせて被験体に投与してもよい。2種以上の化合物をカクテルとして投与しても、同一または異なる投与経路を用いて化合物を別個に投与してもよい。既知の止痢剤として、ロペラミド、ロペラミドのアナログ、ロペラミドおよびアナログのN−オキシド、それらの代謝物およびプロドラッグ、ジフェノキシレート、シサプリド、アンタシド、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ポリカルボフィル、シメチコン、ヒヨスチアミン、アトロピン、フラゾリドン、ジフェノキシン、オクトレオチド、ランソプラゾール、カオリン、ペクチン、活性炭、スルファグアニジン、スクシニルスルファチアゾール、フタリルスルファチアゾール、アルミン酸ビスマス、亜炭酸ビスマス、亜クエン酸ビスマス、クエン酸ビスマス、ビスマス酸二クエン酸三カリウム、酒石酸ビスマス、亜サリチル酸ビスマス、亜硝酸ビスマス、没食子酸ビスマス、オピウムチンキ(パレゴリック)、生薬、植物由来止痢剤が挙げられる。
【0113】
S−MNTXと共に処置プロトコルの部分であり得る他の治療剤は、刺激性腸症候群(IBS)剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗感染症剤、抗ヒスタミン剤を含む抗炎症剤、血管収縮薬、止痢剤などである。
【0114】
S−MNTXと組み合わせて用いることができるIBS治療剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ベンゾジアゼピン化合物、鎮痙剤、選択的セロトニン再取込阻害剤(SSRI)、コレシストキニン(CCK)受容体アンタゴニスト、ナチュラルキラー(NK)受容体アンタゴニスト、コルチコトロピン放出因子(CRF)受容体アンタゴニスト、GI弛緩剤、抗ガス化合物、ビスマス含有調製物、多硫酸ペントサン、制吐性ドーパミンD2アンタゴニスト、プロスタグランジンEアナログ、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(ロイプロリド)、コルチコトロピン−1アンタゴニスト、ニューロキニン2受容体アンタゴニスト、コレシストキニン−1アンタゴニスト、ベータ遮断薬、抗食道逆流剤、抗ムスカリン剤、止痢剤、抗炎症剤、抗運動剤、5HT1アゴニスト、5HT3アンタゴニスト、5HT4アンタゴニスト、5HT4アゴニスト、胆汁酸塩隔絶剤、バルク形成剤、α2アドレナリンアゴニスト、鉱物油、抗うつ剤、生薬。
【0115】
IBS治療剤の具体例として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
A型のγ−アミノブチル酸(GABA)受容体(GABAA)を介して発作を抑制するように作用するベンゾジアゼピン化合物およびアナログ、例えば、DIASTAT(登録商標)およびVALIUM(登録商標);LIBRIUM(登録商標)およびZANAX(登録商標)。
SSRI、例えば、フルボキサミン;フルオキセチン;パロキセチン;セルトラリン;シタロプラム;ベンラファキシン;セリクラミン(cericlamine);デュロキセチン;ミルナシプラン(milnacipran);ネファゾドン(nefazodone);およびシアノドチエピン(Prous J.R編、The Year Drugs News、1995年、47−48頁およびWO 97/29739を参照)。
【0116】
CCK受容体アンタゴニスト、例えば、デバゼピド(devazepide);ロルグルミド(lorglumide);デキシオキシグルミド(dexioxiglumide);ロキシグルミド(loxiglumide)、D'Amato, M.ら、Br. J. Pharmacol. Vol. 102(2), pp. 391-395 (1991);Cl 988;L364,718;L3637260;L740,093およびLY288,513;米国特許第5,220,017号、Bruley-Des-Varannes, S, et al. Gastroenterol. Clin. Biol. Vol.15.(10)9 pp. 744-757 (1991)、およびWorker C: EUPHAR'99- Second European Congress of Pharmacology (Part IV) Budapest, Hungary Iddb Meeting Report 1999 July 3-7において開示されるCCK受容体アンタゴニスト。
【0117】
例えば以下を含むモチリン受容体のアゴニストまたはアンタゴニスト:モチリンアゴニストABT-269、(エリスロマイシン、8,9−ジデヒドロ−N−ジメチルデオキソ−4”,6,12−トリデオキシ−6,9−エポキシ−N−エチル)、デ(Nメチル−N−エチル−8,9−無水エリスロマイシンA)およびデ(N−メチル)−N−イソプロピル−8,9無水エリスロマイシン、Sunazika T. et al., Chem. Pharm. Bull., Vol. 37(10), pp. 2687-2700 (1989);A-173508(Abbot Laboratories);モチリンアンタゴニスト(Phe3、Leu-13)ブタモチリン、214th American Chemical Society (ACS) Meeting (Part V); Highlights from Medicinal Chemistry Poster Session, Wednesday 10 September, Las Vegas, Nevada, (1997), Iddb Meeting Report September 7-11 (1997);およびANQ-1 1 125、Peeters T.L., et al., Biochern. Biophys. Res. Commun., Vol. 198(2), pp. 411-416 (1994)。
【0118】
例えば以下を含むNK受容体アンタゴニスト:FK 888(Fujisawa);GR 205171(Glaxo Wellcome);LY 303870(Lilly);MK 869(Merck);GR82334(Glaxo Wellcome);L758298(Merck);L 733060(Merck);L 741671(Merck);L 742694(Merck);PD 154075(Parke-Davis);S1 8523(Servier);S1 9752(Servier);OT 7100(Otsuka);WIN 51708(Sterling Winthrop);NKP-608A;TKA457;DNK333;CP-96345;CP-99994;CP122721;L-733060;L-741671;L742694;L-758298;L-754030;GR-203040;GR-205171;RP-67580;RPR-100893(dapitant);RPR-107880;RPR-111905;FK-888;SDZ-NKT-343;MEN-10930;MEN-11149;S-18523;S-19752;PD-154075(CAM-4261);SR-140333;LY-303870(lanepitant);EP-00652218;EP00585913;L-737488;CGP-49823;WIN-51708;SR-48968(saredutant);SR-144190;YM383336;ZD-7944;MEN-10627;GR-159897;RPR-106145;PD-147714(CAM-2291);ZM253270;FK-224;MDL-1 05212A;MDL-105172A;L-743986;L-743986のアナログ;S-16474;SR-1 42801(osanetant);PD-161182;SB-223412;およびSB-222200。
【0119】
例えばWO 99/40089にいおいて開示されるようなCRF受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、AXC 2219、アントアラルミン(Antalarmin)、NGD 1、CRA 0165、CRA 1000、CRA 1001。
ソマトスタチン受容体アゴニスト、例えば、オクトレオチド、バプレオチド、ランレオチド。
抗炎症性化合物、特に免疫調節型のもの、例えば、NSAIDS;腫瘍壊死因子(TNF、TNFa)阻害剤;バシリキシマブ(例えば、SIMULECT(登録商標));ダクリキシマブ(例えば、ZENAPAX(登録商標));インフリキシマブ(例えば、REMICADE(登録商標));エタネルセプト(例えば、ENBREL(登録商標))ミコフェノール酸モフェチル(例えば、CELLCEPT(登録商標));アザチオプリン(例えば、IMURAN(登録商標));タクロリムス(例えば、PROGRAF(登録商標));ステロイド類;メトトレキセートおよびGI抗炎症剤、例えばスルファサラジン(例えば、AZULFIDINE(登録商標));オルサラジン(例えば、DIPENTUM(登録商標));およびメサラミン(例えば、ASACOL(登録商標)、PENTASA(登録商標)、ROWASA(登録商標))。
【0120】
制酸薬、例えば、アルミニウム制酸薬およびマグネシウム制酸薬;およびMAALOX(登録商標)などの水酸化カルシウム。
抗ガス化合物、例えば、MYLANTA(登録商標)およびMYLICON(登録商標)の商品名で販売されるシメチコン; ならびにPHAZYME(登録商標)およびBEANO(登録商標)を含む調製酵素。
ビスマス含有調製物、例えばPEPTO-BISMOL(登録商標)としても知られる亜サリチル酸ビスマス。
多硫酸ペントサン、化学的および構造的にグリコサミノグリカンに類似したヘパリン様巨大分子炭化水素誘導体であり、ELMIRON(登録商標)の商品名で市販されている。
【0121】
ドンペリドンを含む、制吐性ドーパミンD2アンタゴニスト。
プロスタグランジンEアナログ、ゴナドトロフィン放出ホルモンアナログ(ロイプロリド)、コルチコトロピン−1アンタゴニスト、ニューロキニン2受容体アンタゴニスト、コレシストキニン−1アンタゴニスト、ベータ遮断薬。
PRILOSEC(登録商標)を非限定的に含む、抗食道逆流剤。
【0122】
以下を非限定的に含む鎮痙剤および抗ムスカリン剤:ジシクロミン、オキシブチン(oxybutyin)(例えば、塩酸オキシブチニン)、トルテロジン(例えば、酒石酸トルテロジン)、アルベリン、アニソトロピン、アトロピン(例えば、硫酸アトロピン)、ベラドンナ、ホマトロピン、メトシュウ酸ホマトロピン、ヒヨスチアミン(例えば、硫酸ヒヨスチアミン)メトスコポラミン、スコポラミン、(例えば、塩酸スコポラミン)、クリジニウム、シメトロピウム、ヘキソサイクリウム、ピナベリウム、オチロニウム、グリコピロレート、およびメベベリン。
【0123】
止痢剤として、イプラトロピウム、イソプロパミド、メペンゾラート、プロパンテリン、オキシフェンサイクリミン、ピレンゼピン、ジフェノキシレート(例えば、塩酸ジフェノキシレート)、硫酸アトロピン、塩酸アロセトロン、塩酸ジフェノキシン、亜サリチル酸ビスマス、ラクトバチルス・アシドフィルス、トリメブチン、アシマドリン、および酢酸オクトレオチドが挙げられるがこれらに限定されない。
抗炎症剤としてまた、メサラミン、スルファサラジン、バルサラジン二ナトリウム、ヒドロコルチゾン、およびオルサラジンナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0124】
5HT1アゴニストとして、ブスピロンが挙げられるがこれに限定されない。
5HT3アンタゴニストとして、オンダンセトロン、シランセトロンおよびアロセトロンが挙げられるがこれらに限定されない。
5HT4アンタゴニストとして、ピポスクロド(piposcrod)が挙げられるがこれに限定されない。
5HT4アゴニストとして、テガセロッド(tegaserod)(例えば、マレイン酸テガセロッド)およびポブカロプリド(povcalopride)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0125】
抗うつ剤として、デシプリミン(desiprimine)、アミトリプチリン、イミプリミン(imiprimine)、フルオキセチン、およびパロキセチンが挙げられるがこれらに限定されない。
他のIBS治療剤として、デキスロキシグルミド、TAK-637、タルネタント(talnetant)、SB 223412、AU 244、ニューロトロフィン−3、GT 160-246、免疫グロブリン(IgG)、ラモプラニン(ramoplanin)、リサキシミン(risaxmin)、リメチコン(rimethicone)、ダリフェナシン、ザミフェナシン(zamifenacin)、ロキシグルミド、ミソプロスチル(misoprostil)、ロイプロリド、ドンペリドン、ソマトスタチンアナログ、フェニトイン、NBI-34041、サレダタント(saredutant)、およびデキスロキシグルミドが挙げられる。
【0126】
抗生物質として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:テトラサイクリン抗生物質、例えば、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、ジメチルクロルテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、およびロリテトラサイクリン;例えば、カナマイシン、アミカシン、ゲンタマイシンC1a、C2、C2bまたはC1、シソマイシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ネオマイシンB、ジベカシンおよびカネンドマイシン(kanendomycin);マクロライド類、例えば、マリドマイシン、およびエリスロマイシン;リノマイシン類、例えば、クリンダマイシンおよびリンコマイシン; ペニシラン酸(6-APA)−およびセファロスポラニン酸(cephalosporanic acid)(7-ACA)−誘導体であって、(6β−または7β−アシルアミノ基を各々有するもの、発酵によって半合成的または完全合成的に得ることができる6β−アシルアミノペニシラン酸または7β−アシルアミノセファロスポラニン酸誘導体、および/または3位が修飾されている7β−アシルアミノセファロスポラニン酸誘導体、例えば、ペニシリンGまたはVの名称下において公知となったペニシラン酸誘導体、
【0127】
例えば、フェネチシリン、プロピシリン、ナフシリン、オキシシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、シクラシリン、エピシリン、メシリナム、メチシリン、アズロシリン、スルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン、ピペラシリン、カリンダシリン、アジドシリンまたはシクラシリン、ならびにセファクロル、セフロキシム、セファズラル(cefazlur)、セファセトリル、セファゾリン、セファレキシン、セファドロキシル、セファログリシン、セフォキシチン、セファロリジン、セフスロジン、セフォチアム、セフタジジム、セフォニシド、セフォタキシム、セフメノキシム、セフチゾキシム、セファロチン、セフラジン、セファマンドール、セファノン(cephanone)、セファピリン、セフロキサジン、セファトリジン、セファゼドン、セフトリキソン(ceftrixon)およびセフォラニドの名称で知られるようになったセファロスポリン誘導体;およびクラバム(clavam)、ペネムおよびカルバペネム型の他のβ−ラクタム抗生物質、例えば、モキサラクタム、クラブラン酸、ノカルジシン(nocardicine)A、スルバクタム、アストレオナムおよびチエナマイシン;ならびに、ビコザマイシン(bicozamycin)、ノボビオシン、クロラムフェニコールまたはチアンフェニコール、リファンピシン、ホスホマイシン、コリスチン、およびバンコマイシンなどの他の抗生物質。
【0128】
抗ウイルス剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ヌクレオシドアナログ、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、インテグラーゼ阻害剤であって、以下を含むもの:アセマンナン(acemannan);アシクロビル;アシクロビルナトリウム;アデフォビル;アロブジン;アルビルセプトスドトックス(alvircept sudotox);塩酸アマンタジン;アラノチン(aranotin);アリルドン(arildone);メシル酸アテビルジン(atevirdine);アビリジン(avridine);シドホビル;シパムフィリン(cipamfylline);塩酸シタラビン;メシル酸デラビルジン;デシクロビル;ディダノシン;ディソキサリル(disoxaril);エドクスジン;エンビラデン(enviradene);エンビロキシム(enviroxime);ファムシクロビル;塩酸ファモチン(famotine);フィアシタビン(fiacitabine);フィアルリジン(fialuridine);ホサリレート(fosarilate);ホスカネットナトリウム;ホスホネットナトリウム;ガンシクロビル;ガンシクロビルナトリウム;イドクスウリジン;インディナビル;ケトキサール(kethoxal);ラミブジン;ロブカビル(lobucavir);ロピノビル(lopinovir);塩酸メモチン(memotine);メチサゾン;ネルフィナビル;ネビラピン;ペンシクロビル;ピロダビル(pirodavir);リバビリン;塩酸リマンタジン;リトナビル;メシル酸サキナビル;塩酸ソマンタジン(somantadine);ソリブジン;スタトロン(statolon);スタブジン;テノホビル;塩酸チロロン;トリフルリジン;塩酸バラシクロビル;ビダラビン;ビダラビンリン酸;ビダラビンリン酸ナトリウム;ビロキシム(viroxime);ザルシタビン;ゼリット(zerit);ジドブジン(AZT);およびジンビロキシム(zinviroxime)。
【0129】
抗感染症剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:塩酸ジフロキサシン(difloxacin);ラウリルイソキノリニウム(isoquinolinium)ブロミド;モキサラクタム二ナトリウム;オルニダゾール;ペンチソマイシン(pentisomicin);塩酸サラフロキサシン(sarafloxacin);HIVおよび他のレトロウイルスのプロテアーゼ阻害剤;HIVおよび他のレトロウイルスのインテグラーゼ阻害剤;セファクロル(セクロール(ceclor));アシクロビル(ゾビラックス);ノルフロキサシン(ノロキシン(noroxin));セフォキシチン(メフォキシン(mefoxin));セフロキシムアキセチル(axetil)(セフチン(ceftin));シプロフロキサシン(シプロ);塩酸アミナクリン;塩化ベンゼトニウム:ビシオノレート(bithionolate)ナトリウム;ブロムクロレノン(bromchlorenone);過酸化カルバミド;塩化セタルコニウム;塩化セチルピリジニウム:塩酸クロルヘキシジン;クリオキノール;臭化ドミフェン;フェンチクロール(fenticlor);塩化フルダゾニウム(fludazonium);フクシン、塩基性;フラゾリドン;ゲンチアナバイオレット;ハルキノール(halquinol)類;ヘキサクロロフェン:過酸化水素;イクタモール;ヨウ化イミデシル;ヨウ素;イソプロピルアルコール;酢酸マフェナイド;メラレイン(meralein)ナトリウム;塩化メルクフェノール(mercufenol);水銀、アンモニア化;塩化メチルベンゼトニウム;ニトロフラゾン;ニトロメルゾール;塩酸オクテニジン(octenidine);オキシクロロセン(oxychlorosene);オキシクロロセンナトリウム;パラクロロフェノール、カンファー化;過マンガン酸カリウム;ポビドンヨード;塩化セパゾニウム(sepazonium);硝酸銀;スルファジアジン銀;シムクロセン(symclosene);チメルホネート(thimerfonate)ナトリウム;チメロサール:トロクロセン(troclosene)カリウム。
【0130】
抗真菌剤(抗生物質)として以下が挙げられる:アンホテリシンB、カンジシジン、ダルモスタチン(dermostatin)、フィリピン(filipin)、ファンギクロミン(fungichromin)、ハチマイシン、ハマイシン(hamycin)、ルセンソマイシン(lucensomycin)、メパルトリシン、ナタマイシン、ニスタチン、ペチロシン、ペリマイシン(perimycin)などのポリエン類;ならびに他のもの、例えば、アザセリン、グリセオフルビン、オリゴマイシン類、ピロルニトリン、シッカニン、ツベルシジンおよびビリジン(viridin)。抗真菌合成薬として以下が挙げられる:ナフチフィンおよびテルビナフィンなどのアリルアミン;ビホナゾール、ブトコナゾール、クロルダントイン(chlordantoin)、クロルミダゾール、クロコナゾール(cloconazole)、クロトリマゾール、エコナゾール、エニルコナゾール(enilconazole)、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、硝酸オキシコナゾール、スルコナゾール、およびチオコナゾールなどのイミダゾール類;フルコナゾール、イトラコナゾール、テルコナゾールなどのトリアゾール類。他のものとして、アクリゾルシン、アモロルフィン、ビフェナミン(biphenamine)、ブロモサリチルクロラニリド、ブクロサミド(buclosamide)、クロフェネシン(chlophenesin)、シクロピロクス、クロキシキン(cloxyquin)、コパラフィナート(coparaffinate)、ジアンタゾール(diamthazole)、ジヒドロ塩酸、エキサラミド(exalamide)、フルシトシン、ハレタゾール(halethazole)、ヘキセチジン(hexetidine)、ロフルカルバン(loflucarban)、ニフラテル、ヨウ化カリウム、プロピオネート、プロピオン酸、ピリチオン、サリチルアニリド、スルベンチン、テノニトロゾール、トルシクラート、トリンデート(tolindate)、トルナフテート、トリセチン(tricetin)、ウヨチオン(ujothion)、およびウンデシレン酸。抗真菌剤はまた、以下を含む:カスポファンギン、ミカファンギン、アニデュラファンギン、アミノカンジン(aminocandin)などを含むエキノカンジン(echinocandin)クラスの抗真菌剤のクラス。
【0131】
血管収縮剤は、以下を含むがこれらに限定されない:エピネフリン、ノルエピネフリン、プソイドエフェドリン、フェニレフリン、オキシメタゾリン、プロピルヘキセドリン、ナファゾリン、テトラヒドロロジン、キシロメタゾリン、エチルノルエピネフリン、メトキサミン、フェニルヘキセドリン、メフェンテルミン、メタラミノール、ドーパミン、ジピベフリン、ノルフェドリン(norphedrine)、およびシラクスゾリン(ciraxzoline)が本明細書における組成物および方法において有利に用いられる。かかる剤の使用は、活性な抗痛覚過敏剤の全身性送達を減少させる上で役立つ。
【0132】
本発明の医薬製剤は、単独またはカクテル中で使用される場合、治療上有効な量において投与される。治療上有効な量は、以下に議論されるパラメーターによって決定される;しかし、どのような場合においても、本明細書において記載される状態のいずれか一つを有する被験体(ヒト被験体など)を処置するために有効な薬物(単数または複数)のレベルを確立する量である。有効量とは、処置される状態またはそれに関連する症状の発症もしくは進行を遅らせるか、その重篤度を緩和するか、または完全に阻害するか、進行を緩和するか、完全に停止させるために必要な、単独もしくは複数用量での量または送達の速度である。
【0133】
下痢の場合、有効量は、例えば、以下の一つ以上をもたらす量である:1)腸の運動の頻度を低下させる;2)便の硬さを増大させる量;および/または3)便の量を1日当たり200g未満まで低下させる。一態様において、有効量は、1日当たり3回以下の腸運動、好ましくは1日あたり2回以下の腸運動、より好ましくは1日あたり1回の腸運動をもたらす量である。特定の例において、量は、投与の様式に依存して、MNTXの投与の後12時間以内、10時間以内、8時間以内、6時間以内、4時間以内、2時間以内、1時間以内、および投与の直後に腸運動を減少させるために十分な量である。静脈内投与により、即時効果をもたらすことができる。
【0134】
胃腸機能を回復させる上で、有効量は、例えば、口腔−盲腸の通過時間を増大するために必要な量であり得る。疼痛の管理または処置のためには、有効量は、例えば、主観的判断基準、客観的判断基準またはその両方によって被験体をより快適にするために十分な量であり得る。末梢痛覚過敏の症例においては、有効量は、例えば、疼痛または掻痒症への過敏症などの末梢痛覚過敏の症状を緩解する量であり得る。炎症の予防または処置のためには、有効量は、例えば、発赤、膨張、もしくは炎症に関連する組織の損傷を減少もしくは緩和するために、または関節などの罹患領域の運動性を高めるために十分な量であり得る。被験体に投与される場合、有効量は、勿論、特定の状態;状態の重篤度;個々の患者のパラメーター(年齢、身体的状態、大きさおよび体重を含む);同時の処置;処置の頻度;ならびに投与の様式に依存する。これらの要因は当業者に周知であり、通常の実験のみをもって取り組むことができる。
【0135】
一般的に、S−MNTXの経口用量は、体重1kgあたり1日あたり約0.05〜約40mg/kg、約0.05〜約20.0mg/kg、約0.05〜約10mg/kg、または約0.05〜約mg/kgである。一般的に、静脈内および皮下投与を含む非経口投与は、投与がボーラスとしてであるかまたはI.V点滴によるもののように長時間にわたるかに依存して、体重1kgあたり約0.001〜約1.0mg/kg、約0.01〜約1.0mg/kg、または約0,1〜約1.0mg/kgである。体重1kgあたり約0.05〜0.5mgの範囲の用量が所望の結果をもたらすと予測される。投与量を所望の局所的または全身の薬物レベルを達成するために、投与方法に依存して、適切に調整しても良い。
【0136】
例えば、腸溶性コーティングされた処方物におけるオピオイドアンタゴニストの経口投与の投与量は、即時放出経口処方物における場合よりも低いと予測される。かかる用量において患者における応答が不十分な場合には、より高い用量(または異なるより局所的な送達経路による、効果的により高い投与量)を患者の耐容性が揺する範囲まで用いても良い。一日当たり複数用量は、化合物の適切な全身レベルを達成するために検討される。適切な全身レベルは、例えば、患者の薬物のピークまたは持続的血漿レベルを測定することにより判断され得る。ある場合に、100ng/mlより低いピーク血漿レベルが望ましい。「用量」および「投与量」は本明細書中に同じ意味で用いられる。
【0137】
様々な投与経路が利用出来る。特定の方法は、もちろん、選択した薬物の特定の組合せ、処置または予防する状態の重症度、患者の状態、および治療効果に必要とされる投与量に依存して選択される。本発明の方法は、一般的に言えば、医学的に許容されるあらゆる投与方法を用いて行われてもよく、これは、臨床的に許容されない悪影響を引き起こすことなく活性化合物の有効レベルを作り出すあらゆる方法を意味する。 かかる投与方法は、経口、直腸、局所、経皮、舌下、静脈内注入、肺、動脈内、脂肪組織内、リンパ管内、筋肉内、腔内、エアロゾル、耳(例えば、点耳剤を介して)、鼻腔内、吸入、関節内、無針注射、皮下または皮内(例えば、経皮)送達を含む。持続注入に関しては、患者管理鎮痛法(PCA)デバイスまたは埋め込み薬物送達デバイスを用いても良い。経口、直腸または局所投与は、予防または長期処置に重要であり得る。好ましい直腸送達方法は、坐剤または浣腸洗浄剤としての投与を含む。
【0138】
医薬製剤は、都合良く単位投与量形態で提供されてもよく、医薬の分野で周知のあらゆる方法で調製されても良い。全ての方法は、本発明の化合物を1または2以上の副成分を構成するキャリアとの結合させる工程を含む。一般に、組成物は、本発明の化合物を均一におよび密接に液体キャリア、微粉化固体キャリア、または両方と結合させることにより調製し、そして必要であれば製品に形成する。
【0139】
投与の際、本発明の医薬製剤は、薬学的に受容可能な組成物において適用される。かかる調製物は通常、塩、緩衝剤、防腐剤、適合性キャリア、潤滑油、および任意に他の治療成分を含んでも良い。薬に用いられる場合、塩は薬学的に受容可能なものであるべきであるが、医薬的に許容され無い塩をその薬学的に受容可能な塩の調製のために都合良く用いても良く、本発明の範囲から除かれない。かかる薬理学的および薬学的に受容可能な塩は、以下の酸から製造されるものを含むが、これらに限定されない:塩酸、臭酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、パモン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸およびベンゼンスルホン酸。
【0140】
当然のことながら、MNTX、R−およびS−MNTX、ならびに本発明の治療剤(単数または複数)に言及する場合、その塩を包含することを意味する。かかる塩は多様であり当業者に周知である。医薬製剤において用いられる場合、塩は好ましくはヒトに用いるために、薬学的に受容可能な。臭化物はかかる塩の一例である。
【0141】
本発明の医薬製剤は、薬学的に受容可能なキャリア中に含まれるか、希釈されても良い。本明細書で用いられる「薬学的に受容可能なキャリア」の用語は、ヒトまたは非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタまたはヤギなどの他の哺乳類に投与するために適した、1または2以上の適合性の固体または液体充てん剤、希釈剤または封入物質を意味する。「キャリア」の用語は、活用を促進するために活性成分と組み合わされる、天然または合成の有機または無機の成分を意味する。キャリアは、所望の医薬的有効性や安定性を本質的に損なう相互作用が存在しないような方法で、本発明の調製物および互いと入り交じることができる。経口投与、坐剤薬および非経口的投与などに適したキャリア処方物は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Paで見出すことができる。
【0142】
水性処方物は、好ましくは3.0〜3.5にpH調整されたキレート剤、緩衝剤、酸化防止剤および任意に等張剤を含むことができる。蒸気殺菌法および長期保存に適するような処方物の例は、同時係属アメリカ出願第10/821,811号、表題「医薬処方物」に記載される。
【0143】
キレート剤は、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその誘導体、クエン酸およびその誘導体、ナイアシンアミドおよび誘導体、デソキシコール酸ナトリウムおよびその誘導体、ならびにL−グルタミン酸、N,N−アセト酢酸およびその誘導体を含む。
緩衝剤は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸、リン酸ナトリウムおよびリン酸、アスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、マレイン酸、グリシン、乳酸ナトリウム、乳酸、アスコルビン酸、イミダゾール、重炭酸ナトリウムおよび炭酸、コハク酸ナトリウム、ヒスチジン、および安息香酸ナトリウムおよび安息香酸からなる群、またはこれらの組合せから選択されるものを含む。
【0144】
酸化防止剤は、アスコルビン酸誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、アルキルガレート、メタ−重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム、ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム、トコフェラールおよびその誘導体、モノチオグリセロール、ならびに亜硫酸ナトリウムからなる群から選択されるものを含む。好ましい酸化防止剤は、モノチオグリセロールである。等張剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、ラクトース、デキストロース、グリセロールおよびソルビトールからなる群から選択されるものを含む。
【0145】
本組成物に用いることの出来る防腐剤は、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール、クロロブタノールおよび好ましくは塩化ベンザルコニウムを含む。典型的に、防腐剤は約2重量%までの濃度で組成物に存在する。しかしながら防腐剤の正確な濃度は、目的の用途に依存して変化し、当業者は容易に判断できる。
【0146】
本発明の化合物は、好ましくはマンニール、またはラクトース、デキストロース、ポリエチレングリコール、およびポリビニルピロリジンなどの凍結防止剤の存在下で、凍結乾燥組成物に調製できる。6.0以下の再構成pHをもたらす凍結防止剤が好ましい。本発明はしたがって、本発明の治療剤(単数または複数)の凍結乾燥製剤を提供する。調製物は、好ましくは水中において中性または酸性である、マンニトールまたはラクトースなどの凍結防止剤を含むことができる。
【0147】
薬剤の経口、非経口および坐剤薬処方物は周知であり、市販されている。本発明の治療剤(単数または複数)を、かかる周知の処方物に加えることができる。かかる処方物において溶液または半固体溶液で混ぜ合わせることができ、かかる処方物内に懸濁液で提供することができ、またはかかる処方物内に粒子で含むこともできる。
【0148】
本発明の治療剤(単数または複数)、および任意に1または2以上の他の活性薬剤を含む製品を経口製剤製剤として構成することができる。経口製剤は、液体、半固体または固体であり得る。オピオイドを任意に経口製剤に含んでも良い。経口製剤を、本発明の治療剤(単数または複数)を、他の薬剤(および/またはオピオイド)の前、後または同時に放出するように構成してもよい。経口製剤を、本発明の治療剤(単数または複数)および他の薬剤を胃で完全に放出する、一部を胃で放出し一部を腸で放出するか、腸で放出するか、結腸で放出するか、一部を胃で放出するか、または完全に結腸で放出するように構成してもよい。
【0149】
経口製剤を、本発明の治療剤(単数または複数)の放出を胃または腸に制限しながら、他の活性薬剤の放出をそれほど制限しないか本発明の治療剤(単数または複数)とは異なるように制限することによって構成してもよい。例えば、本発明の治療剤(単数または複数)は、他の薬剤を最初に放出し、本発明の治療剤(単数または複数)が胃を通過し腸へ至った後にのみ本発明の治療剤(単数または複数)を放出するピルまたはカプセル内に含まれた、腸溶性コーティングのコアまたはペレットであってもよい。
【0150】
本発明の治療剤(単数または複数)は持効性材料内にあってもよく、本発明の治療剤(単数または複数)を消化管を通して放出し、そして他の薬剤を同じまたは異なるスケジュールで放出する。本発明の治療剤(単数または複数)放出の同じ目的は、腸溶コーティング本発明の治療剤(単数または複数)と組み合わせた、本発明の治療剤(単数または複数)の即時放出で達成することができる。これらの場合において、他の薬剤を、胃で、消化管を通して、または腸のみで、即座に放出することができる。
【0151】
これらの異なる放出プロファイルを達成するために有用な材料は、当業者に周知である。即時放出は、胃で溶解する結合剤を有する従来のタブレットによって得られる。胃のpHで溶解するコーティングまたは高温で溶解するコーティングは同じ目的を達成する。腸でのみの放出は、腸のpH環境において溶解する(しかし胃では溶解しない)pH感受性コーティングのような従来の腸溶コーティングまたは時間とともに溶解するコーティングを用いて達成する。消化管を通しての放出は、持効性材料、および/または即時放出システムと持続性および/または遅延性の計画的放出システム(例えば、異なるpHで溶解するペレット)との組合せを用いて達成する。
【0152】
発明の治療剤(単数または複数)を最初に放出することが望ましい場合において、本発明の治療剤(単数または複数)を除放処方物の表面に、かかるコーティングに適し、本発明の治療剤(単数または複数)の放出を可能にするために適したあらゆる薬学的に受容可能なキャリアにおいて、例えば通常除放のために用いられる温度感受性の薬学的に受容可能なキャリアにおいて、コーティングすることができる。体内に入れられた場合に溶解する他のコーティングは、当業者に周知である。
【0153】
本発明の治療剤(単数または複数)は、除放処方物に完全に混合されてもよく、それによってこれは別の薬剤の前、後または同時に放出される。本発明の治療剤(単数または複数)は遊離、すなわち処方物の材料中で可溶性であってもよい。本発明の治療剤(単数または複数)は、処方物の材料全体に分散したワックスコーティングしたマイクロペレットなどの、小胞の形態であってもよい。コーティングしたペレットは、温度、pHなどに基づいて、本発明の治療剤(単数または複数)を即座に放出するために形作ることができる。ペレットを本発明の治療剤(単数または複数)の放出を遅らせ、本発明の治療剤(単数または複数)がその効果を発揮する前に他の薬剤を一定期間作用させるように構成することができる。本発明ペレットの治療剤(単数または複数)は、先行技術の、当業者に周知の材料を用いて、一次放出速度またはシグモイド放出速度を示すパターンを含む、事実上あらゆる持効性パターンで本発明の治療剤(単数または複数)を放出するように構成することもできる。
【0154】
本発明の治療剤(単数または複数)を除放処方物内のコア内に含むことも出来る。コアは、1またはあらゆる組合せの、ペレットに関して上記した特性を有してもよい。本発明の治療剤(単数または複数)は、例えば、材料でコーティングされるコア中にあっても、材料内に分散していても、材料にコーティングされても、または材料にもしくは材料にわたって吸着されてもよい。
【0155】
当然のことながらペレットまたはコアは事実上どのタイプであってもよい。放出材料でコーティングされた薬物、材料に散在する薬物 、材料に吸着された薬物などでありえる。材料は浸食可能であっても浸食不可能であってもよい。
【0156】
本発明の治療剤(単数または複数)は粒子で提供されてもよい。本明細書において粒子とはナノまたはマイクロ粒子(またはある場合はより大きいもの)を意味し、これは明細書に記載されるように本発明の治療剤(単数または複数)または他の薬剤の全体または一部を構成できる。粒子は、腸溶コーティングを含むがこれに限定されないコーティングに囲まれたコアにおける治療剤(単数または複数)を含んでもよい。治療剤(単数または複数)は粒子全体にわたって分散してもよい。治療剤(単数または複数)は粒子に吸着されても良い。粒子は、0次放出、1次放出、2次放出、遅延放出、持効性、即時放出およびこれらのあらゆる組合せなどを含む、あらゆる速度式のものであっても良い。粒子は、治療剤(単数または複数)に加えて、薬学および医薬の分野で通常的に用いられるあらゆる材料を含んでもよく、これは浸食可能、浸食不不可能、生物分解可能、または生物分解不可能な材料またはこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。粒子は、溶液中または半固体状態におけるアンタゴニストを含むマイクロカプセルであってもよい。粒子は事実上あらゆる形状であり得る。
【0157】
生物分解不可能および生物分解可能なポリマー材料の両方を治療剤(単数または複数)を送達するための粒子の製造に用いることが出来る。かかるポリマーは天然または合成ポリマーでありえる。ポリマーは、放出が望まれる時間に基づいて選択する。特定の目的の生体接着ポリマーは、H.S. Sawhney, C.P. Pathak and J.A. Hubell in Macromolecules, (1993) 26:581-587に記載されるインビボ分解性ヒドロゲルを含み、この教示は本明細書に組み込まれる。これらは、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、およびポリ(アクリル酸オクタデシル)を含む。
【0158】
治療剤(単数または複数)は、除放システムに含まれてもよい。「除放性(controlled release)」の用語は、処方物からの薬物放出の方法およびプロファイルが制御される処方物を含む、あらゆる薬物を指すことを意図する。これは、非即時放出処方物と同様に即時も指し、非即時放出処方物は持効性および遅延放出処方物を含むがこれらに限定されない。用語「持効性(sustained release)」(「持続放出」(extended release)ともいう)は、従来の意味において、長期間にわたって、徐々に放出するために提供し、必須ではないが好ましくは長期間にわたる一定の薬物の血中濃度をもたらす、薬物処方物を指して用いられる。用語「遅延放出(delayed release)」は、従来の意味において、処方物の投与とそこからの薬物の放出の間に時間自演が存在する薬物処方物を指す。「遅延放出」は長期間にわたる、緩やかな放出に関連しても、しなくてもよく、したがって、「持効性」であってもなくてもよい。これらの処方物は、あらゆる投与方法に対するものであってよい。
【0159】
消化管に対して特異的な送達システムは、大まかに3つのタイプに分けられる:第一は、例えばpHの変化に反応して、薬物を放出するように設計された遅延放出システム;第二は、あらかじめ定められた時間の後に薬物を放出するように設計された時限放出システム;そして第三は、消化管の下部における豊富な腸内細菌を利用したミクロフローラ酵素システム(例えば、結腸部向け放出処方物)である。
【0160】
遅延放出システムの例は、例えば、アクリルまたはセルロースコーティング材料を用い、pH変化で溶解するものである。調製が容易なことからかかる「腸溶コーティング」に関するたくさんの報告がなされてきた。一般的に、腸溶コーティングは、相当な量の薬物を胃で放出することなく(例えば胃において、10%の放出、5%の放出さらには1%の放出より少ない)、胃を通過し、(おおよそ中性またはアルカリ性の腸液と触れることによって)腸管において十分に崩壊し、腸管の壁を通じて活性薬物の(能動または受動)送達を可能にするものである。
【0161】
腸溶コーティングとしてコーティングが分類されるかを判断するための様々なインビトロ試験が、様々な国の薬局方において公開された。36〜38℃でpH1のHClなどの人工の胃液と接触して、少なくとも2時間原形を保ち、そしてその後、pH6.8のKH2PO4緩衝液などの人工の腸液中で30分以内に崩壊するコーティングが一例である。かかる周知のシステムは、市販の、Behringer,Manchester University,Saale Co.によって報告されたEUDRAGIT材料などである。腸溶コーティングを、以下にさらに論じる。
【0162】
時限放出システムは、Fujisawa Pharmaceutical Co.,Ltd.およびR. P. SchererによるPulsincap によるTime Erosion System(TES)に代表される。これらのシステムによると、薬物放出の部位は、消化管における製剤の通過の時間によって決められる。消化管における製剤の通過は、胃内容排出時間に主に影響されるので、放出システムも時に腸溶コーティングされる。
【0163】
腸内細菌を利用したシステムは、Ohio University(M. Saffran, et al., Science, Vol. 233: 1081 (1986))のグループおよびUtah University(J. Kopecek, et al., Pharmaceutical Research, 9(12), 1540-1545 (1992))のグループによって報告された、腸内細菌から生成されるアゾ還元酵素による芳香族アゾポリマーの分解を利用するもの;およびHebrew University(PCT出願に基づく未審査公開の日本特許出願番号5-50863)のグループおよびFreiberg University(K. H. Bauer et al., Pharmaceutical Research, 10(10), S218 (1993))のグループによって報告された、腸内細菌のベータ-ガラクトシダーゼによる多糖の分解を利用したものに分類することができる。さらに、Teikoku Seiyaku K.K.(未審査公開の日本特許出願番号4-217924および未審査公開の日本特許出願番号4-225922)による、キトサナーゼによるキトサン分解を利用したシステムも含まれる。
【0164】
腸溶コーティングは典型的に、必須ではないが、ポリマー材料である。好ましい腸溶コーティング材料は、インビボ分解性のポリマー、徐徐に加水分解するポリマーおよび/または徐徐に水に溶解するポリマーを含む。「コーティング量」またはカプセル当たりのコーティング剤の相対量は、一般的に摂取から薬物放出までの期間を定める。いずれのコーティングも腸溶コーティング全体がpH約5未満の胃腸液において溶解しないが、pH約5以上で溶解するようも、十分な厚さに適用するべきである。pH依存溶解プロファイルを示すアニオン性ポリマーを、本発明の実施における腸溶コーティングとして用いることが出来ると予想される。特定の腸溶コーティング材料の選択は以下の特性に依存する:胃での溶解および分解への耐性;胃内での胃液および薬物/キャリア/酵素の不浸透性;目的腸部での速やかな溶解および分解の能力;保管の間の物理的および化学的安定性;コーティングとしての適用の容易性(基質に優しい);および経済的実用性。
【0165】
好適な腸溶性コーティング材料として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:セルロースポリマー、例えば、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリテート(trimellitate)セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム;アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メチルアクリル酸アンモニウム、酢酸エチル、メタクリル酸メチル、および/またはメタクリル酸エチルから形成されるもの(例えば、商品名をEUDRAGITとして販売されるコポリマー);ビニルポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリビニルアセテート、フタル酸ポリビニルアセテート、クロトン酸ビニルアセテートコポリマー、およびエチレン−ビニルアセテートコポリマー;ならびにセラック(精製ラック)。
【0166】
異なるコーティング材料の組合せを使用してもよい。本明細書における使用のための周知の腸溶性コーティング材料は、Rohm Pharma(ドイツ)から商品名EUDRAGITとして市販のアクリル酸ポリマーおよびコポリマーである。EUDRAGITのシリーズE、L、S、RL、RSおよびNEのコポリマーは、有機溶媒中で可溶化されたもの、水性懸濁液、または乾燥粉末として市販されている。EUDRAGITのシリーズRL、NE、およびRSのコポリマーは、胃腸管内で不溶性であるが透過性であり、持続放出(extended release)のために主に使用される。EUDRAGITのシリーズEコポリマーは、胃内で溶解する。EUDRAGITのシリーズL、L-30DおよびSのコポリマーは、胃内では不溶性であり、小腸で溶解し、したがって本明細書において最も好ましい。
【0167】
具体的なメタクリル酸コポリマーは、EUDRAGIT L、特にL-30DおよびEUDRAGIT L 100-55である。EUDRAGIT L-30Dにおいて、エステルに対する遊離のカルボキシル基の比は、およそ1:1である。さらに、コポリマーは、5.5より低いpH、一般にpH1.5〜5.5、すなわち、上部消化管において一般的に存在するpHを有する胃腸液中で不溶性であるが、5.5より高いpH、すなわち下部消化管で一般的に存在するpHでは容易に可溶性であるか部分的に可溶性であることが知られている。別の特定のメタクリル酸ポリマーは、EUDRAGIT Sであり、これは、エステルに対する遊離カルボキシル基の比がおよそ1:2であることにおいてEUDRAGIT L-30Dと異なる。EUDRAGIT Sは、5.5より低いpHで不溶性であるが、EUDRAGIT L-30Dとは異なり、小腸においてのような5.5〜7.0の範囲のpHを有する胃腸液中で殆ど溶解しない。
【0168】
コポリマーは、pH7.0以上、すなわち、結腸において一般的に見出されるpHで可溶性である。EUDRAGIT Sを、単独で大腸における薬物送達を提供するためのコーティングとして使用してもよい。あるいは、EUDRAGIT Sは、pH7より低い腸液中で殆ど溶解しないので、活性剤を腸管の多様な区域へ送達するために処方され得る遅延放出組成物を提供するために、pH5.5より高い腸液中で可溶性のEUDRAGIT L-30Dと組み合わせて使用してもよい。EUDRAGIT L-30Dが多く使用されるほど、放出および送達がより近部で始まり、EUDRAGIT Sが多く使用されるほど、放出および送達がより末端で始まる。当業者は、EUDRAGIT L-30DおよびEUDRAGIT Sを、類似のpH可溶性の特徴を有する他の薬学的に受容可能なポリマーで置換してもよいことを理解する。本発明の特定の態様において、好ましい腸溶性コーティングは、ACRYL-EZE(登録商標)(メタクリル酸コポリマー型C;Colorcon,West Point,PA)である。
【0169】
腸溶性コーティングは、薬物放出が一般的に予測可能な位置で達成されるような活性剤の徐放を提供する。腸溶性コーティングはまた、口腔、咽頭、食道、および胃の上皮および粘膜組織への、ならびにこれらの組織と関連する酵素への、治療剤およびキャリアの暴露を予防する。したがって、腸溶性コーティングは、活性剤、キャリアおよび患者の内部組織を、所望の送達の部位での薬物放出に先立つ有害な事象から保護することに役立つ。さらに、本発明のコーティングされた材料は、薬物吸収、活性剤保護および安全性の至適化を可能にする。胃腸管内の多様な領域での活性剤の放出を目的とする多重腸溶性コーティングは、さらにより効果的で持続的な改善された胃腸管を通しての送達を可能にする。
【0170】
コーティングは、胃液の浸透を可能にする孔および亀裂の形成を予防するために、可塑剤を含有してもよく、通常含有する。好適な可塑剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:クエン酸トリエチル(citroflex 2)、トリアセチン(グリセリルトリアセタート)、クエン酸アセチルトリエチル(citroflec a2)、carbowax 400(ポリエチレングリコール400)、フタル酸ジエチル、クエン酸トリブチル、アセチル化モノグリセリド類、グリセロール、脂肪酸エステル、プロピレングリコール、およびフタル酸ジブチル。特に、アニオン性カルボン酸アクリル酸ポリマーは、通常、重量のおよそ10%〜25%の可塑剤、特にフタル酸ジブチル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチルやトリアセチンを含む。コーティングはまた、コーティング材料を可溶化または分散させるために、ならびにコーティングの性能およびコーティングされた製品を改善するために、他のコーティング賦形剤、例えば、粘着低下剤(detackifier)、消泡剤、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)および安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、酸および塩基)を含んでもよい。
【0171】
コーティングは、治療剤(単数または複数)の粒子、治療剤(単数または複数)の錠剤、治療剤(単数または複数)を含有するカプセルなどに、従来のコーティングの方法および設備を用いて適用することができる。例えば、腸溶性コーティングは、コーティング用のパン(pan)、無気噴霧技術、流動床コーティング設備などを用いて、カプセルに適用できる。コーティングされた投与形態を調製するための材料、設備、およびプロセスに関する詳細な情報は、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets、Liebermanら編(New York:Marcel Dekker,Inc.,1989)およびAnselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,6th Ed.(Media, PA:Williams & Wilkins,1995)において見出すことができる。コーティングの厚みは、上記の通り、経口投与形態が下部腸管内の所望の局所送達の部位に届くまで完全であり続けることを保証するために十分でなければならない。
【0172】
別の態様において、本発明の処方物を内包する腸溶性コーティングされた浸透圧によって活性化されるデバイスを含む薬物投与形態が提供される。この態様において、薬物含有処方物を、小さい開口部を含む半透性の膜または障壁中にカプセル化する。いわゆる「浸透圧ポンプ」薬物送達デバイスに関して当該分野において公知であるように、半透性膜は、両方向に水を通過させるが、薬物は通過させない。したがって、デバイスが水性の液体に暴露される場合、デバイスの内部と外部との浸透圧の差に起因して、水はデバイス内へ流入する。水がデバイスに流入すると、内部の薬物含有処方物は、開口部を通って外へ「ポンプ」される。薬物放出の速度は、水の流入速度に薬物濃度を乗算したものと等価である。水の流入および薬物流出の速度は、デバイスの開口部の組成および大きさによって制御され得る。
【0173】
半透性膜のための好適な材料として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ポリビニルアルコール、塩酸ポリビニル、半透性ポリエチレングリコール類、半透性ポリウレタン類、半透性ポリアミド類、半透性スルホン酸ポリスチレン類およびポリスチレン誘導体;半透性ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、半透性ポリ(塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム)、およびセルロース性ポリマー類、例えば、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、プロピオン酸セルロース、プロピオン酸セルロースアセテート、ブチル酸セルロースアセテート、三吉草酸セルロース、セルローストリルメート(trilmate)、三パルミチン酸セルロース、三オクタノン酸セルロース、三プロピオン酸セルロース、二コハク酸セルロース、二パルミチン酸セルロース、セルロースジシレート(dicylate)、コハク酸セルロースアセテート、プロピオン酸セルロースアセテートオクタノン酸セルロースアセテート、吉草酸パルミチン酸セルロース、ヘプタン酸セルロースアセテート、セルロースアセトアルデヒドジメチルアセタール、セルロースアセテートエチルカルバメート、セルロースアセテートメチルカルバメート、セルロースジメチルアミノアセテートおよびエチルセルロース。
【0174】
別の態様において、本発明の処方物を内包する持効性にコーティングされたデバイスを含む薬物投与形態を提供する。この態様において、薬物含有処方物を、持効性の膜またはフィルム中に被包する。膜は、上記の通り半透性である。半透性膜は、コーティングされたデバイス内部に水を通過させて薬物を溶解させる。溶解した薬物溶液は、半透性膜を通って拡散する。薬物放出の速度は、コーティングされたフィルムの厚さに依存し、薬物の放出は、GI管の任意の部分において開始させることができる。かかる膜のための好適な膜材料は、エチルセルロースである。
【0175】
別の態様において、本発明の処方物を内包する持効性デバイスを含む薬物投与形態を提供する。この態様において、薬物含有処方物は、持効性ポリマーと均質に混合される。これらの持効性ポリマーは、高分子量の水溶性ポリマーであり、水と接触した場合、膨張して、水が内部に拡散して薬物を溶解するためのチャネルを作る。ポリマーが膨張して水中に溶解すると、薬物のより多くが溶解のための水に曝される。かかる系は、一般的に持効性マトリックスと呼ばれる。かかるデバイスのための好適な材料として、ヒドロプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびメチルセルロースが挙げられる。
【0176】
別の態様において、本発明の持効性処方物を内包する腸溶性コーティングされたデバイスを含む薬物投与形態が提供される。この態様において、上記の薬物含有生成物は、腸溶性ポリマーでコーティングされる。かかるデバイスは胃においてはいかなる薬物も放出せず、デバイスが腸に到達すると腸溶性ポリマーが初めて溶解して、その後でのみ薬物の放出が開始される。薬物放出は、持効性の様式において行われる。
【0177】
腸溶性コーティングされ、浸透圧によって活性化されるデバイスは、従来の材料、方法、および設備を用いて製造することができる。例えば、浸透圧によって活性化されるデバイスは、第一に、薬学的に受容可能なソフトカプセル中に、前に記載される本発明の化合物の液体または半固体の処方物を被包することによって作ることができる。この内側のカプセルを、次いで、半透性膜組成物(例えば、セルロースアセテートおよびポリエチレングリコール4000を、好適な溶媒、例えば、塩化メチレン−メタノール混合物中に含む)で、例えば、気圧式装置を使用して、十分に厚い積層(例えば、約0.05mm)が形成されるまでコーティングする。半透性積層カプセルを、次いで、従来の技術を用いて乾燥させる。次いで、所望の直径(例えば、0.99mm)を有する開口部を、例えば機械穿孔、レーザー穿孔、機械断裂、またはゼラチン栓などの腐食可能なエレメントの腐食を用いて、半透性積層カプセルの壁を通して提供する。次いで、浸透圧によって活性化されるデバイスを、上記のように腸溶性コーティングしてもよい。
【0178】
液体または半固体のキャリアではなくむしろ固体のキャリアを含有する浸透圧によって活性化されるデバイスについては、内側のカプセルは随意である:半透性膜は、直接的にキャリア−薬物組成物の周囲に形成することができる。しかし、浸透圧によって活性化されるデバイスの薬物含有処方物における使用のための好ましいキャリアは、溶液、懸濁液、液体、非混合性液、エマルジョン、ゾル、コロイドおよび油である。特に好ましいものとして、液体または半固体の薬物含有処方物を含有する腸溶性コーティングされたカプセルに用いられるものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0179】
セルロースコーティングは、フタル酸セルロースアセテートおよびセルロースアセテートトリメリテート;メタクリル酸コポリマー類、例えば、メチルアクリル酸から誘導されるコポリマーおよびそれらのエステル類であって、少なくとも約40%のメチルアクリル酸を含むもの;ならびに特にフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースのものが挙げられる。メチルアクリル酸として、分子量100,000ダルトン以上の分子量のものであって、例えば、約1:1の比におけるメチルアクリル酸およびメチルまたはエチルメチルアクリル酸に基づくものが挙げられる。代表的な製品として、Rohm GmbH(ダルムシュタット、ドイツ)から市販されているEndragit L、例えば、L 100-55が挙げられる。代表的なフタル酸セルロースアセテートは、17〜26%のアセチル含有物、および30〜40%のフタル酸含有物を有し、粘度はおよそ45〜90cPである。代表的なセルロースアセテートトリメリテートは、17〜26%のアセチル含有物、および25〜35%のトリメリテート含有物を有し、粘度は15〜20cSである。セルロースアセテートトリメリテートの例は、市販の製品CAT(Eastman Kodak Company、USA)である。
【0180】
フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、代表的には、20,000〜130,000ダルトンの分子量を有し、5〜10%のヒドロキシプロピル含有物、18〜24%のメトキシ含有物、および21〜35%のフタル酸含有物を有する。フタル酸セルロースアセテートの例は、市販の製品CAP(Eastman Kodak、Rochester N.Y.、USA)である。フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースの例は、Shin-Etsu Chemical Co. Ltd., Tokyo, Japanから入手可能な6〜10%のヒドロキシプロピル含有物、20〜24%のメトキシ含有物、21〜27%のフタル酸含有物、84,000ダルトンの分子量を有し、HP50の商品名で市販される市販の製品、ならびに、各々5〜9%、18〜22%および27〜35%の、ヒドロキシプロピル含有物、メトキシ含有物およびフタル酸含有物、78,000ダルトンの分子量を有し、HP55の商品名で同じ供給者から入手可能な市販の製品である。
【0181】
治療剤を、カプセル中で、コーティングしてまたはコーティングしないで提供してもよい。カプセル材料は、硬質または軟質のいずれであってもよく、当業者に理解されるように、代表的には、ゼラチン、デンプン、またはセルロース性の材料などの無味で容易に投与される水溶性化合物を含有する。カプセルは、好ましくはゼラチン帯などで密封される。例えば、カプセル化医薬品の調製のための材料および方法を記載するRemington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Edition (Easton, Pa.: Mack Publishing Co., 1995)を参照。
【0182】
本発明の治療剤(単数または複数)を含有する生成物を、坐剤として形成してもよい。本発明の治療剤(単数または複数)を、治療剤(単数または複数)の相対的放出に好ましい影響を与えるように、坐剤中または坐剤上のどこに位置させてもよい。放出の性質はまた、所望の通り、ゼロ次であっても、一次であっても、またはシグモイドであってもよい。
【0183】
坐剤は、直腸を介する投与のために意図される医薬の固形投与形態である。坐剤は、体腔(約98.6°F)中で融解、軟化、または溶解し、それによって含有される医薬を放出するように配合される。坐剤の基剤は、安定、非刺激性、化学的不活性、および生理学的不活性であるべきである。多数の市販の坐剤は、カカオバター、ココナッツ油、パーム穀粒油などの油性または脂性のベース材料を含み、これらは、しばしば室温で融解または変形し、保冷または他の保存の制限を必要とする。Tanakaらへの米国特許第4,837,214号は、20またはそれより小さいヒドキシル値を有し、8〜18炭素原子を有する脂肪酸のグイセリドを含有する、80〜99重量%のラウリン酸型の脂質を、1〜20重量%の脂肪酸のジグリセリド(エルカ酸が例である)と組み合わせて含む、坐剤の基剤を記載する。これらの型の坐剤の有効期限は、分解に起因して制限される。他の坐剤の基剤は、アルコール、界面活性剤などを含有し、これらは融点を上昇させるが、また、医薬の吸収の低下、および局所粘膜の刺激に起因する副作用をもたらし得る(例えば、Hartelendyらへの米国特許第6,099,853号、 Ahmadらへの米国特許第4,999,342号、およびAbidiらへの米国特許第4,765,978号を参照)。
【0184】
本発明の医薬坐剤組成物において使用される基剤としては、一般に、主成分としてトリグリセリド、ココアバター、パーム油、パーム穀粒油、ココナッツ油、分別ココナッツ油(fractionated coconut oil)、ラードおよびWITEPSOL(登録商標)、ラノリンおよび還元ラノリンなどのワックス;VASELINE(登録商標)、スクアレン、スクアランおよび液体パラフィンなどの炭化水素;カプリル酸、ラウリル酸、ステアリン酸およびオレイン酸などの長鎖および中鎖の脂肪酸;ラウリルアルコール、セタノールおよびステアリン酸アルコールなどの高級アルコール;ステアリン酸ブチルおよびマロン酸ジラウリルなどの脂肪酸エステル;トリオレインおよびトリステアリンなどの中鎖から長鎖のグリセリンのカルボン酸エステル;グリセリンアセトアセテートなどのグリセリン置換カルボン酸エステル;ならびにマクロゴール類およびセトマクロゴールなどのポリエチレングリコールおよびその誘導体を含む油および脂質が挙げられる。これらは、単独で、または二つ以上の組み合わせのいずれかで使用することができる。所望の場合、本発明の組成物は、坐剤において通常用いられる表面活性剤、着色剤などをさらに含んでもよい。
【0185】
本発明の医薬組成物は、前もって決定された量の活性成分、吸収補助剤および必要に応じて基剤などを、スタラーまたは製粉機において、必要であれば高温で、均質に混合することによって調製することができる。生じる組成物を、例えば、混合物を鋳型に流延(cast)することによって、またはカプセル充填機を用いてゼラチンカプセル中に流し入れることによって、単位投与形態の坐剤を形成する。
【0186】
本発明による組成物はまた、鼻用スプレー、点鼻剤、懸濁液、ゲル、軟膏、クリームまたは散剤として投与してもよい。組成物の投与はまた、本発明の組成物を含有する鼻用タンポンまたは鼻用スポンジを用いることを含んでもよい。
【0187】
本発明とともに用いることができる経鼻送達系は、水性製剤、非水性製剤およびこれらの組み合わせを含む多様な形態をとることができる。水性製剤として、例えば、水性ゲル、水性懸濁液、水性リポソーム分散剤、水性エマルジョン、水性マイクロエマルジョンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。非水性製剤として、例えば、非水性ゲル、非水性懸濁液、非水性リポソーム分散剤、非水性エマルジョン、非水性マイクロエマルジョンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。経鼻送達系の種々の形態には、pHを維持するための緩衝液、薬学的に受容可能な増粘剤、および湿潤剤を含めることができる。緩衝液のpHは、鼻粘膜を越えての治療剤の吸収を至適化するために選択することができる。
【0188】
非水性鼻用処方物に関して、処方物が哺乳動物の鼻腔に送達された場合に、そこで例えば鼻粘膜と接触する際に選択されたpHの範囲が達成されるように、緩衝剤の好適な形態を選択してもよい。本発明において、組成物のpHは、約2.0〜約6.0に維持されるべきである。組成物のpHが、投与の際にレシピエントの鼻粘膜に著しい刺激を引き起こさないものであることが望ましい。
【0189】
本発明の組成物の粘度は、薬学的に受容可能な増粘剤を用いることによって、所望のレベルで維持することができる。本発明に従って用いることができる増粘剤としては、メチルセルロース、キサンタンゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸類、アラビアゴム、キトサン類、およびこれらの組み合わせが挙げられる。増粘剤の濃度は、選択された剤および所望の粘度に依存する。かかる剤はまた、上記の散剤処方物において使用してもよい。
【0190】
本発明の組成物はまた、粘膜の乾燥を低減または予防するため、およびその刺激を予防するために湿潤剤を含んでもよい。本発明において使用することができる好適な湿潤剤として、ソルビトール、鉱物油、植物油、およびグリセロール;無痛化剤;膜コンディショナー;甘味剤;およびこれらの組み合わせが挙げられる。本組成物中の湿潤剤の濃度は、選択される剤に依存して変化する。
1種以上の治療剤を経鼻送達系または本明細書中に記載の任意の他の送達系に組み込んでもよい。
【0191】
局所投与のために処方される組成物は、液体であっても半固体(例えば、ゲル、ローション、エマルジョン、クリーム、軟膏、スプレーまたはエアロゾルが挙げられる)であっても、「有限(finite)」のキャリア、例えばその形態を保持する非拡散性材料(例えば、貼付剤、生体接着材料、包帯剤または絆創膏が挙げられる)と組み合わせて提供してもよい。それは、水性であっても非水性であってもよい;それは、溶液、エマルジョン、分散剤、懸濁液または任意の他の混合物として処方してもよい。
【0192】
重要な投与の様式として、皮膚、眼または粘膜への局所適用が挙げられる。したがって、代表的なビヒクルは、新体表面への医薬適用または化粧品適用に好適なものである。本明細書において提供される組成物は、患者の身体における多様な領域に局所または局所的に適用することができる。上記のように、局所適用とは、到達可能な身体表面の組織、例えば、皮膚(外側の外皮または被覆物)および粘膜(粘液を産生、分泌および/または含有する表面)に適用することを指すことを意図する。例示的な粘膜表面として、眼、口(口唇、舌、歯茎、頬、舌下および口蓋など)、喉頭、食道、気管支、膣および直腸/肛門の粘膜表面が挙げられる;いくつかの態様においては、好ましくは、口、喉頭、食堂、膣および直腸/肛門である;他の態様においては、好ましくは、眼、喉頭、食道、気管支、鼻腔、および膣および直腸/肛門である。上記のように、本明細書において、局所的投与とは、身体の別々の領域、例えば、関節、軟組織領域(筋肉、腱、靱帯、眼内のまたは他の肉質の内部領域など)、または身体の他の内部領域などへの適用を指す。したがって、本明細書において使用される場合、局所的適用とは、身体の別々の領域への適用を指す。
【0193】
本組成物の局所および/または局所的投与に関して、望ましい効力は、例えば、痛覚過敏部位へ実質的に到達して所望の抗痛覚過敏性の疼痛緩和をもたらすような、本発明の治療剤(単数または複数)の皮膚および/または組織への浸透を含み得る。本組成物の効力は、例えば、中枢性オピオイドによって達成されるものとほぼ同じであってよい。しかし、本明細書において詳細に考察されるように、本発明の治療剤(単数または複数)は、血液脳関門を越えないので、本発明の治療剤(単数または複数)によって達成される効力は、好ましくは代表的に中枢性オピエートと関連する望ましくない作用(例えば、呼吸低下、鎮静、および中毒が挙げられる)なしで得ることができる。
【0194】
また、特定の好ましい態様(水性ビヒクルを含む態様を含む)においては、組成物はまた、2以上のヒドロキシル基を含む化合物であるグリコールを含んでもよい。組成物における使用のために特に好ましいグリコールは、プロピレングリコールである。これらの好ましい態様において、グリコールは、好ましくは、組成物の全重量に基づいて0重量%より多くから約5重量%までの濃度で、組成物中に含まれる。さらに好ましくは、組成物は、約0.1重量%から約5重量%未満までのグリコールを含み、約0.5〜約2重量%がさらにより好ましい。なおより好ましくは、組成物は約1重量%のグリコールを含む。
【0195】
関節内投与などの局所的内部投与のため、組成物を、好ましくは、等張性に緩衝化された食塩水などの水性ベースの媒体中で溶液または懸濁液として処方するか、または内部投与のために意図される生体適合性の支持体または生体接着物と組み合わせる。
【0196】
ローションは、例えば、懸濁液、分散剤またはエマルジョンの形態であり得、1種以上の化合物の有効濃度を含有する。有効濃度は、好ましくは、有効量をもたらすものであり、代表的には、本発明明細書において提供される1種以上の化合物の約0.1〜50%(重量)またはそれより高い濃度である。ローションはまた、(重量で)1%〜50%の軟化剤およびバランス水(balance water)、好適な緩衝剤、および上記の他の剤を含んでもよい。
【0197】
ヒトの皮膚への適用に適するとして当業者に公知のあらゆる軟化剤を使用することができる。これらは、以下を含むがこれらに限定されない:(a)炭化水素の油類およびワックス類(鉱物油、ワセリン、パラフィン、セレシン、オゾケライト、微晶質ワックス、ポリエチレンおよびペルヒドロスクアラン(perhydrosqualene)を含む)。b)シリコーンオイル類(ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、水溶性およびアルコール可溶性のシリコーン−グリコールコポリマーを含む)。(c)トリグリセリドの脂質類および油類(植物、動物、および海洋の供給源から誘導されるものを含む)。例として以下が挙げられるがこれらに限定されない:ヒマシ油、紅花油、綿実油、コーン油、オリーブ油、肝油(cod liver oil)、アーモンド油、アボガド油、パーム油、ゴマ油、および大豆油。
【0198】
(d)アセチル化モノグリセリドなどのアセトグリセリドエステル類。(e)エトキシ化モノステアリン酸グリセリルなどのエトキシ化グリセリド類。(f)10〜20の炭素原子を有する脂肪酸のアルキルエステル類。脂肪酸のメチル、イソプロピルおよびブチルエステルが、本明細書において有用である。例として以下が挙げられるがこれらに限定されない:ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、ミスチリン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸デシル、イソステアリン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソヘキシル、アジピン酸ジヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および乳酸セチル。(g)10〜20の炭素原子を有する脂肪酸のアルケニルエステル類。その例として以下が挙げられるがこれらに限定されない:ミリスチル酸オレイル、ステアリン酸オレイル、およびオレイン酸オレイル。
【0199】
(h)9〜22の炭素原子を有する脂肪酸類。好適な例として以下が挙げられるがこれらに限定されない:ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸(hydroxystearic)、オレイン酸、リノレン酸、リシノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸、およびエルカ酸。(i)10〜20の炭素原子を有する脂肪族アルコール類、例えば、非限定的に、ラウリル、ミリスチル、セチル、ヘキサデシル、ステアリル、イソステアリル、ヒドロキシステアリル、オレイル、リシノレイル(ricinoleyl)、ベヘニル(behenyl)、エルシル(erucyl)、および2−オクチルドデシルアルコール類。(j)以下を非限定的に含む脂肪族アルコールエステル類:10〜20の炭素原子のエトキシ化脂肪族アルコール、例えば、1〜50のエチレンオキシド基または1〜50のプロピレンオキシド基またはこれらの混合物が結合しているラウリル、セチル、ステアリル、イソステアリル、オレイル、およびコレステロールアルコールが挙げられるがこれらに限定されない。(k)エトキシ化脂肪族アルコールの脂肪酸エステル類などのエーテル−エステル類。
【0200】
(l)ラノリンおよび誘導体であって、以下を含むがこれらに限定されない:ラノリン、ラノリン油、ラノリンワックス、ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸、ラノリン酸(lanolate)イソプロピル、エトキシ化ラノリン、エトキシ化ラノリンアルコール類、エトキシ化コレステロール、プロポキシ化ラノリンアルコール類、アセチル化ラノリン、アセチル化ラノリンアルコール、リノレン酸ラノリンアルコール、リシノール酸(ricinoleate)ラノリンアルコール、リシノール酸ラノリンアルコール類のアセテート、エトキシ化アルコール−エステル類のアセテート、ラノリンの水素化分解物、エトキシ化水素分解ラノリン、エトキシ化ソルビトールラノリン、ならびに液体および半固体のラノリン吸収基剤。
【0201】
(m)多価アルコール類およびポリエステル誘導体(以下が挙げられるがこれらに限定されない:プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(M.W.2000〜4000)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール、グリセロール、エトキシ化グリセロール、プロポキシ化グリセロール、ソルビトール、エトキシ化ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ポリエチレングリコール(M.W.200〜6000)、メトキシポリエチレングリコール350、550、750、2000、5000、ポリ(エチレンオキシド)ホモポリマー類(M.W.100,000〜5,000,000)、ポリアルキレングリコール類および誘導体、ヘキシレングリコール(2−メチル−2,4−ペンタンジオール)、1,3−ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、エトヘキサジオールUSP(2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)、C.sub.15〜C.sub.18ビシナルグリコール(vicinal glycol)、ならびにトリメチルオールプロパンのポリオキシプロピレン誘導体)。
【0202】
(n)多価アルコールエステル類(以下が挙げられるがこれらに限定されない:エチレングリコールの一または二脂肪酸エステル、ジエチレングリコールの一または二脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(M.W.200〜6000)、一または二脂肪酸エステル、プロピレングリコールの一または二脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール2000モノオレイン酸、ポリプロピレングリコール2000モノステアリン酸、エトキシ化プロピレングリコールモノステアリン酸、グリセリルの一または二脂肪酸エステル、ポリグリセロールポリ脂肪酸エステル、エトキシ化グリセリルモノステアリン酸、1,3−ブチレングリコールモノステアリン酸、1,3−ブチレングリコールジステアリン酸、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ならびにポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)。
【0203】
(o)ワックスエステル類(以下が挙げられるがこれらに限定されない:蜜蝋、鯨蝋、ミリスチル酸ミリスチル、およびステアリン酸ステアリル、および蜜蝋誘導体(蜜蝋とエーテル−エステル類の混合物を形成する多様なエチレンオキシド含有物のエトキシ化ソルビトールとの反応生成物である、ポリオキシエチレンソルビトール蜜蝋が挙げられるがこれに限定されない))。(p)カルナバワックスおよびカンデリラワックスを非限定的に含む植物ワックス類。(q)レシチンおよび誘導体などのリン脂質類。(r)ステロール類(コレステロールおよびコレステロール脂肪酸エステル類が挙げられるがこれらに限定されない)。(s)脂肪酸アミド、エトキシ化脂肪酸アミド、および固体の脂肪酸アルカンオールアミドなどのアミド類。
【0204】
ローションは、好ましくは、(重量で)1%〜10%、より好ましくは2%〜5%の、乳化剤をさらに含む。乳化剤は、非イオン性、アニオン性またはカチオン性であってよい。良好な非イオン性の乳化剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:10〜20の炭素原子を有する脂肪族アルコール、10〜20の炭素原子を有する脂肪族アルコールであって、2〜20モルのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドで濃縮されたもの、アルキル鎖中に6〜12の炭素原子を有するアルキルフェノールであって、脂肪酸部分が10〜20の炭素原子を含有する2〜20モルのエチレンオキシド、エチレンオキシドの一および二脂肪酸エステル、エチレングリコールの一および二脂肪酸エステルで濃縮されたもの、ジエチレングリコール、分子量200〜6000のポリエチレングリコー、分子量200〜3000のルプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビトール、ポリオキシエチレンソルビタンならびに親水性ワックスエステル類。
【0205】
好適なアニオン性乳化剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:脂肪酸石鹸、例えば、ナトリウム、カリウム、およびトリエタノールアミンの石鹸であって、脂肪酸部分が10〜20の炭素原子を含むもの。他の好適なアニオン性乳化剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:アルカリ金属、アンモニウムまたは置換アンモニウムの硫酸アルキル、アルキルアリールスルホネート、およびアルキル部分において10〜30の炭素原子を有するアルキルエトキシエーテルスルホネート。アルキルエトキシエーテルスルホネートは、1〜50のエチレンオキシド単位を含む。良好なカチオン性乳化剤の中では、四級アンモニウム、モルホリン(morpholinium)化合物およびピリジニウム化合物である。先の段落において記載される軟化剤の特定のものもまた、乳化特性を有する。かかる軟化剤を含有するローションを処方する場合、さらなる乳化剤は必要でないが、組成物に含めてもよい。
【0206】
ローションのバランス(balance)は、水またはC2もしくはC3アルコール、または水とアルコールとの混合物である。ローションは、単純に全ての成分を共に混合することによって処方する。好ましくは、ロペラミドなどの化合物は、混合物中に溶解、懸濁、またはさもなくば均質に分散させる。
【0207】
かかるローションの他の従来の成分を含んでもよい。かかる添加物の一つは、組成物の1重量%〜10重量%のレベルでの増粘剤である。好適な増粘剤の例として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:架橋されたカルボキシポリメチレンポリマー類、エチルセルロース、ポリエチレングリコール類、トラガカントガム、カラヤガム(gum kharaya)、キサンタンガム、およびベントナイト、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロース。
【0208】
クリームは、本発明の治療剤(単数または複数)の有効量を処置される組織へ送達するために有効な濃度、代表的には、約0.1%、好ましくは1%より高くと50%より高くとの間で、好ましくは約3%と50%との間で、より好ましくは約5%と15%との間で、本発明の治療剤(単数または複数)を含むように処方され得る。クリームはまた、5%〜50%、好ましくは10%〜25%の軟化剤を含み、残りは水または等張性緩衝液などの他の好適な非毒性キャリアである。ローションのための上記の軟化剤を、クリーム組成物において使用してもよい。クリームはまた、上記のような好適な乳化剤を含んでもよい。乳化剤は、3%〜50%、好ましくは5%〜20%のレベルで、組成物中に含まれる。
【0209】
溶液または懸濁液として処方されるこれらの組成物は、皮膚に適用してもよく、または、エアロゾルもしくは泡体として処方してスプレー式(spray-on)として皮膚に適用してもよい。エアロゾル組成物は、代表的には、(重量で)25%〜80%、好ましくは30%〜50%の好適な噴霧剤を含む。かかる噴霧剤の例は、塩化、フッ化、および塩化フッ化された低分子炭化水素である。亜酸化窒素、二酸化炭素、ブタン、およびプロパンもまた、噴霧剤ガスとして使用される。これらの噴霧剤は、当該分野において理解されるように、容器の含有物を排出するために好適な量および圧力下において使用される。
【0210】
好適に調製された溶液および懸濁液はまた、代表的には、眼および粘膜に適用することができる。溶液、特に眼科での使用のために意図されるものは、0.01%〜10%の等張性溶液として、約5〜7のpHで、適当な塩を用いて処方され、好ましくは、本明細書中の1種以上の化合物を、約0.1%、好ましくは1%より高くから50%またはそれ以上までの濃度で含む。好適な眼科用溶液は、公知である(例えば、代表的な眼科用の洗浄溶液および局所適用のための溶液を記載する米国特許第5,116,868号を参照)。かかる溶液は、約7.4に調節されたpHを有し、例えば、90〜100mMの塩化ナトリウム、4〜6mMの二塩基リン酸カリウム、4〜6mMの二塩基リン酸ナトリウム、8〜12mMのクエン酸ナトリウム、0.5〜1.5mMの塩化マグネシウム、1.5〜2.5mMの塩化カルシウム、15〜25mMの酢酸ナトリウム、10〜20mMのD.L.−ナトリウム、β−ヒドロキシブチレート、および5〜5.5mMのブドウ糖を含む。
【0211】
ゲル組成物は、単純に、好適な増粘剤を先に記載した溶液または懸濁液の組成物に混合することによって処方することができる。好適な増粘剤の例は、ローションと関連して先に記載した。
ゲル化組成物は、本発明の治療剤の有効量を含み、代表的には、以下を含む:約0.1〜50重量%またはそれ以上の間の濃度での本明細書において提供される1種以上の化合物;約5%〜75%、好ましくは10%〜50%の前記のような有機溶媒;0.5%〜20%、好ましくは1%〜10%の増粘剤;バランス(balance)は、水または他の水性もしくは非水性のキャリア(例えば、有機性液体、またはキャリアの混合物など)である。
【0212】
処方物は、定常状態血漿レベルを作るために構築して準備してもよい。定常状態血漿レベル濃度は、当業者に公知であるように、HPLC技術を用いて測定することができる。定常状態は、薬物アベイラビリティの速度が循環からの薬物除去の速度と等しい場合に達成される。代表的な治療設定において、本発明の治療剤(単数または複数)は、周期的投与レジメンまたは一定注入レジメンを用いてのいずれかで、患者に投与される。血漿における薬物の濃度は、投与の開始の直後に上昇する傾向があり、細胞および組織中への分布によって、代謝によってまたは排出によって薬物が循環から除去されるにつれて、時間とともに低下する傾向がある。
【0213】
定常状態は、平均薬物濃度が長期間一定であり続ける場合に得られる。間欠的投与の場合において、薬物濃度周期のパターンは、用量間の各間期において同一に繰り返され、平均濃度は一定であり続ける。一定注入の場合において、平均薬物濃度は、一定であり続け、変動は非常に小さい。定常状態の達成は、血漿中の薬物の濃度を、周期が用量ごとに同一に繰り返されることを検証できるように、少なくとも一周期の投与に渡って測定することによって決定する。代表的には、間欠的投与レジメンにおいて、定常状態の維持は、別の用量の投与の直前での一周期の連続的なトラフでの薬物濃度を決定することによって検証することができる。濃度の変動が低い一定注入レジメンにおいて、定常状態は、任意の2回の薬物濃度の連続測定によって検証することができる。
【0214】
図7は、本発明によるキットを示す。キット10は、オピオイド錠剤を含有するバイアル12を含む。キット10はまた、S−MNTX錠剤(小丸薬を含み、その一部は、pH感受性材料で腸溶性コーティングされ、その一部は、胃中ですぐS−MNTXを放出するように構築されて準備される)を含有するバイアル14を含む。キットは、下痢を罹患する被験体または下痢の症状を有する被験体に錠剤を投与するための指示書20を含む。指示書は、S−MNTXがR−MNTXを含まない純粋なS−MNTXであることを示す証印、例えば書類を含む。
【0215】
本発明のいくつかの局面において、キット10は、必要に応じてまたは代替的に、医薬製剤バイアル16および医薬製剤希釈剤バイアル18を含んでもよい。医薬製剤のための希釈剤を含むバイアルは、随意的である。希釈剤バイアルは、S−MNTXの濃縮溶液または凍結乾燥粉末であり得るものを希釈するための生理食塩水などの希釈剤を含有する。指示書は、特定の量の希釈剤と特定の量の濃縮医薬製剤とを混合し、それによって注射または注入のための最終処方物を調製するための指示書を含む。指示書20は、患者をS−MNTXの有効量で処置するための指示書を含む。製剤を含む容器は、容器がボトルであっても、隔壁を有するバイアル、隔壁を有するアンプル、注入バッグなどであっても、製剤がオートクレーブされるかまたは凍結乾燥されると変色する従来の印などの、さらなる証印を含んでもよい。
【0216】
本発明は、その適用を、以下の記載に記述されるまたは図に示される説明の詳細および構成要素の配列に限定されない。本発明は、他の態様および多様な方法において実施および実行されることが可能である。また、本明細書において使用される語法および専門用語は、説明のためのものであり、限定するものとしてみなされるべきではない。本明細書における、「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する(having)」、「含有する(containing)」、「包含する(involving)」およびそれらの変化形は、以下に列挙される事項およびそれらの等価物ならびにさらなる事項を包含することを意味する。
【0217】
例
S−MNTXの製造および生成のための効率的な方法を見出すために、多数の異なる合成経路およびプロトコルを試した。これらのいくつかの説明を以下に提供する。また、試薬、中間体および開始材料を製造するための手順も提供する。
【0218】
例I
オキシモルホンへのオキシコドンの脱保護。オキシモルホンをオキシコドンから合成した。オキシモルホンへのオキシコドンの脱保護を、文献において先に記載される条件を用いて行った(Iijima, I.; Minamikawa, J.; Jacobson, A. E.; Brossi, A.; Rice, K. C. J. Med. Chem. 1978, 21(4), 398)。収率は、基線材料を除去するためにシリカゲルの栓を通すろ過からなる精製を用いて、58〜64%の範囲である。精製されたオキシモルホンをアルキル化反応のために使用した。精製なしで、95%までのオキシモルホンの収率を得た。この粗材料のHPLC精製率は、代表的には、約94%である。
【0219】
(インドメチル)シクロプロパンの調製。(インドメチル)シクロプロパンを、(ブロモメチル)シクロプロパンからフィンケルスタイン反応を通して調製した。代表的な収率は、約68〜70%の範囲であり、代表的な精製率は、GCによって89〜95%(AUC)であり、開始の臭化物が、唯一の主要な不純物であった。
【0220】
オキシモルホンの直接アルキル化。アルキル化剤としてヨウ化シクロプロピルメチルを用いるオキシモルホンの直接的なアルキル化は、生産性のある収率のS−MNTXをもたらすことを明らかにした。経路を、図2に示す。オキシモルホンの直接的なアルキル化は、HPLC(AUC)によって観察されるものとしてほぼ50%の変換率まで進行することを観察し、さらに調査した。
【0221】
オキシモルホンを、NMP(10体積)中のヨウ化シクロプロピルと組合せ、70℃まで加熱した。結果を表1に要約する。アルキル化剤の分解は、反応時間中に試薬を完全には消費しなかったので、反応が進行して完了することを限定しなかった。さらに、S−MNTXに対するオキシモルホンの比は、アルキル化剤の当量の数に関係なく、反応がほぼ1:1まで進行したことを示した。
【0222】
【表2】
【0223】
精査の手順。粗生成物中のNMPの存在が保持を妨げることを見出したので、それを除去する手段が必要となった。イソプロピルアセテートとジオキサンとの混合物は、綿状の明色の固体であって最終的に油となるものを形成した。イソプロピルアセテートおよびイソプロピルアセテート/ジオキサンの混合物の使用を比較して、NMPを除去する上でいずれがより効果的であるかを決定した。各々の場合において、生成物および開始材料が混合物から沈殿し、NMPは溶液中に残留した。HPLCによる上清溶液および沈殿材料の分析は、2種の間に有意差を示さなかった。
【0224】
精製。NMPを生成物から除去した後で、残留物を、C18カートリッジを備えたBiotageのフラッシュクロマトグラフィー系を使用する反復的な連続逆相クロマトグラフィーに供した。最初のクロマトグラフィーは、0.2%のHBrを調節剤(modifier)として含む50%水性メタノールを用いて行った。溶媒系は、5%水性メタノールに至るまで、メタノール含有量が徐々に減少させた。クロマトグラフィーを、S−MNTXが89%(AUC)の純度で単離されるまで繰り返した。対イオンは、MSによっては検出され得なかったが、ヨウ化物と臭化物との混合物であることが予測された。
【0225】
定義された精査および精製によって、化学反応を大規模化し、28gのオキシコドン・HClをプロセスに通した。第一の工程、脱メチル化を、文献において記載の手順を用いる一反応において行い、熱メタノール(10容積)からの再結晶の後で、17gのオキシモルホンを得た。第二の工程を、圧力管の大きさおよび加熱の様式に起因する設備の限度のために、5つの等価のより小さい反応において行った。別個に分析されたが、混合物を、同様の組成を示した分析の後で、精査および精製のために組合せた。イソプロピルアセテートの研和は、予想どおり進行し、沈殿した残留物を、0.2%のHBrを含む20%水性メタノール中へ溶解し、C18カートリッジを備えたBiotage Flash 40sでのクロマトグラフィーによって精製し、0.2%のHBrを含む5%水性メタノールで溶出した。画分を、HPLCによって分析し、同様の組成の画分を組合せ、<80%、80〜90%、および<90%の純度(AUC)へ分離した。組み合わされた画分を濃縮化し、C18カートリッジを備えたBiotage Flash 75Lで再クロマトグラフィーした。このクロマトグラフィーの手順を、純度を増強するために繰り返した。最終的に、HBr調製剤は不必要であったことを発見し、溶出液から除去した。6回のクロマトグラフィー精製の後で、ほぼ11gのS−MNTXヨウ化物を、およそ80%の純度(AUC)で単離した。
【0226】
画分の濃縮化の間になんらかの形態の分解が起こり、生成物の著しい黒ずみをもたらすことが明らかになった。分解は、ヨウ化物対イオンが原因であり、したがって、材料をアニオン交換カラムに通してヨウ化物を臭化物と交換した。生成物を含有する溶出液を収集した後で、濃縮化は、おなじみの黒ずみをもたらさないようであり、黄色の油を得た。クロマトグラフィーを続け、生成物の流出物を純度のレベル(HPLCによるAUC)で分離した。材料のバルクをおよそ90%の純度まで増強した後、2.5%水性メタノールを溶出液として使用してさらなるクロマトグラフィーを行い、最終的にいくらかの材料の純度を>95%(AUC)まで改善した。
【0227】
全ての生成物の流出物を組合せ、凍結乾燥して、流動(free-flowing)散剤を得、741gのS−MNTXを、95%の純度で、2.5gのS−MNTXを90%の純度で、および1.0gのS−MNTXを79%の純度(AUC)で単離した。回収されたオキシモルホンの分画を収集し、エタノールから再結晶し、2.4g(>99%の純度、AUC)を得た。
【0228】
試薬の調製。S−MNTXの製造を目的とする一連の実験において、開始材料および試薬を、以下に記載するように得るかまたは作製した。設備および器具のデータもまた、提供する。
【0229】
全ての非水性反応を、乾燥窒素下において行った。他に記されない限り、試薬を市販のソースより購入し、受領したとおりで使用した。Bruker Avance 300分光計で、300MHzで、テトラメチルシランを内部基準として使用して、プロトン核磁気共鳴スペクトルを得た。Bruker Avance 300分光計で、75MHzで、溶媒ピークを基準として、炭素核磁気共鳴スペクトルを得た。Perkin-Elmer Spectrum 1000分光光度計で、赤外線スペクトルを得た。Finnigan質量分析計で、質量スペクトルを得た。
【0230】
薄層クロマトグラフィー(TLC)を、2.5×10cmのAnaltechシリカゲルGFプレート(厚さ25マイクロメートル)を使用して行った。UVおよび過マンガン酸カリウム染色を用いて、TLCの可視化を行った。Varian Starソフトウェアによって制御されるVarian ProStar HPLCで、以下の方法を用いて、HPLC分析を行った。
【0231】
【表3】
【0232】
HPLC方法II:
クロマトグラフィーの条件およびパラメータ:分析カラムの記載:Phenomenex Inertsil ODS-3 150×4.6mm、5μm カラム 温度:50.0℃ 流速:1.5mL/分 注入容積:20μL 検出波長:280nm 移動相:A=水:MeOH:TFA(95:5:0.1%;v/v/v) B=水:MeOH:TFA(35:65:0.1%;v/v/v) 分析時間:50分
定量限界:0.05%
検出限界:0.02%
勾配プロフィール:
【0233】
【表4】
【0234】
S−MNTXの合成および精製を、上記のHPLCプロトコルを用いてモニタリングした。S−MNTXは、記載されるHPLC条件を使用してR−MNTXから区別する。標準物質としての用途のための標準(authentic)のR−MNTXを、本明細書において記載されるプロトコルを用いて作製した。代表的なHPLCの実行において、S−MNTXは、R−MNTXが溶出する約0.5分前に溶出する。S−MNTXの保持時間は、およそ9.3分であり;R−MNTXの保持時間は約9.8分である。
【0235】
ガスクロマトグラフィー(GC)分析を、HP 3365 ChemStationソフトウェアにより制御されたHP 5890 Series II GCで、以下の方法を使用して行った:GC方法:
カラム: J&W Scientific DB-1、30m×0.53mm、3μ
初期温度: 40℃
初期時間: 10.00分
速度: 20℃/分
最終温度: 250℃
最終時間: 2.00分
インジェクター温度:250℃
検出器: Flame-Ionization
【0236】
代表的なアルキル化反応。基質を、250−mLのParrフラスコに10容積のアルキル化剤とともに満たした。ジメチルホルムアミド(DMF)またはNMPを共溶媒として使用する場合、2.5容積を添加した。フラスコを、Parr振盪器(水素タンクは遮断されている)に置き、圧力下において振盪しつつ反応温度まで加熱した。圧力は、反応の間、代表的には10〜15psiであった。反応物を、周期的にサンプリングし、MSおよびHPLCによって分析し、反応の程度および生成物の性質を決定する。反応の終了時に、混合物を丸底フラスコにメタノールとともに移し、揮発物質を除去した。残留物を、次いで、シリカゲル上でクロマトグラフィーにかけ、90:10:0.1の塩化物/メタノール/水酸化アンモニウムで溶出した。
【0237】
イオン交換カラムの調製。AG 1−X8樹脂(Bio-Rad、分析用グレード、100〜200メッシュ、塩化物形態)を、ガラスのカラム(50mm×200mm)中に充填し、1NのHBrで洗浄した(1L、脱イオン化(DI)水で調製した)。溶出液が6〜7のpHに達するまで、カラムをDI水(およそ10L)で洗浄した。
【0238】
S−MNTXの調製。5個の螺子開閉式圧力管中に、オキシモルホン(3.6g、11.9 mmol)、ヨウ化シクロプロピルメチル(17.39g、95.6mmol)、およびN−メチルピロリドン(3.6mL)を組み合わせた。この管を、螺子式テフロン(登録商標)キャップで密封し、70℃に予熱された6ウェルの反応器ブロック中においた。24時間後、反応物は、目に見えて二相性であり、固相および液相をサンプリングしたHPLC分析は、反応がおよそ50%の転換まで進行したことを示す。加熱を停止し、5個の反応混合物を、1−Lの丸底フラスコに移した。混合物を移し、管を洗浄するためにメタノールを使用した。減圧下においてメタノールを除去し、生じるNMP溶液を、イソプロピルアセテート(900mL)で処理、これにより固体沈殿および油性沈殿の両方を生じた。油をスパテラで攪拌し、粘着性の固体を得た。上清の液体を、固体から縦溝付(fluted)の濾紙中へデキャンティングした。濾紙において収集される固体を、回収を助けるためにメタノールを使用して、元の固体に組合せた。生じる溶液を、暗色の粘性の油まで濃縮した。
【0239】
油を、0.2%のHBrを含有する20%水性メタノール(20mL)中に溶解し、C18カートリッジを備えたBiotage Flash 75Lでのクロマトグラフィーによって精製した。画分を、Luna C18(2)カラム(4×20mm)でのHPLCによって分析し、生成物分画を、組み合わせて濃縮した。生じる「精製」生成物を、DI水(およそ20mL)中に溶解し、クロマトグラフィーを繰り返し、純度がおよそ70%(AUC)まで増大するまでプロセスを繰り返した。およそ70%の純度の生成物(およそ18g)を、DI水(20mL)中に溶解し、AG 1-X8アニオン交換樹脂のカラムを通して、臭化物形態に変換した(さらなる手順を参照のこと)(5×25cm)。カラムを、溶出される流出物中にMNTXが検出されなくなるまで、DI水で溶出させ、これを、C18カートリッジを備えたBiotage Flash 75L系をさらに使用するクロマトグラフィーによって精製し、5%水性メタノールで溶出させる。
【0240】
画分をLuna C18(2)カラム(4.6×150mm)でのHPLCによって分析し、生成物の流出物を、純度(AUC)に基づいて4つの流出物へと分配した;>90%、早い不純物を有する50〜90%、遅い不純物を有する50〜90%、および<50%。より純度の低い材料を、純度を増大するためにクロマトグラフィーを通して再循環し、これによって、最終的に、90%純粋(AUC)な3.0gのS−MNTXを生じた。より純度の低い画分を、およそ1gの90%純粋な材料をさらに生成するために、クロマトグラフィーによって精製し、これを、先にC18カートリッジを備えたBiotage Flash 75Lで単離して精製し、2.5%水性メタノールで溶出させた、1.0gの90%の純度の材料と組み合わせた。>95%(AUC)に達するまで純度を増大させるために、クロマトグラフィーを繰り返した。結論として、生成物の流出物を水から凍結乾燥して、741mgのS−MNTXを95.6%の純度(AUC)で;2.45gのS−MNTXを90%の純度(AUC)で;および1.08gのS−MNTXを79%の純度(AUC)で得た。
【0241】
図3は、この方法によって製造されたS−MNTXのプロトンNMRスペクトルを提供する。図4は、S−MNTX生成物の赤外線スペクトルを提供する。図5は、S−MNTX生成物のHPLCクロマトグラムを提供する。図6は、S−MNTX生成物の質量スペクトログラムを提供する。これらの分析データは、95%より高い純度でのMNTXの「S」立体異性体を同定する。
【0242】
例II
S−MNTXの合成および精製の至適化
イオン交換カラムの調製。AG 1-X8樹脂(Bio-Rad、分析用グレード、100〜200メッシュ、塩化物形態、50重量当量)を、ガラスのカラム中に充填し、1NのHBrで洗浄した(およそ100容積、脱イオン化(DI)水で調製した)。溶出液が6〜7のpHに達するまで、カラムをDI水で洗浄した。
【0243】
S−MNTXの調製。250−mLの、ジャケット付の三頸フラスコを、オキシモルホン(5.0g、16.6mmol)、NMP(5mL)および銅線(1.2g、3〜4mm片に切断)で満たす。フラスコをアルミニウムホイルで覆い、前もって平衡化した70℃に設定された加熱器/冷却器に接続した。ヨウ化シクロプロピルメチル(24.16g、132.7mmol)を、混合物に添加し、反応を20時間攪拌する。反応アリコートのHPLCによる分析によって2と3とが1:1の比であることが明らかになった。反応混合物を、IPAc(250mL)を含有するエルレンマイヤーフラスコ中に移し、これを、オーバーヘッド機械攪拌機で激しく攪拌した。油性の材料が固化した後で、固体をろ過除去し、フラスコ中へ移し戻す;ろ過物をHPLCで分析して廃棄した。
【0244】
組み合わされた固体の残留物を、水性メタノール中に溶解し、イオン交換樹脂(Bio-Rad AG 1-X8、50重量当量、臭化物形態に変換される)のカラムを通してろ過した。カラムをDI水で溶出させ、UV活性材料が検出されなくなるまで洗浄した(254nm)。生じる水溶液を濃縮し、残留物を、溶液を得るために最小の量のメタノールで、IPA(5容積)中に溶解した。微量の水を除去するために溶媒を取り除き、生じる固体を熱メタノール中に(3容積、約50℃で)溶解した。塩化メチレン/イソプロピルアルコール(CH2Cl2/IPA)(6容積/1容積)の室温混合物を添加し、生じる溶液を、結晶化が始まるまで外界条件下に置いた。混合物を、次いで、−20℃の冷凍庫に2日間保存した。ろ過により固体を収集し、2.8gのほぼ1:1の2とS−MNTXとの混合物を得た。固体を、CH2Cl2/IPA(6容積/1容積)を添加することによって熱メタノール(MeOH)(3容積、およそ50℃)から再結晶させ、混合物を冷却させた。単離された固体(2.1g、重量に基づいて29%)は、HPLC分析によって94.1%の純度(AUC)であることを見出した。
【0245】
S−MNTXの精製。純度>94%のS−MNTXのロットを組合せ、熱メタノール中で(3容積、およそ50℃で)溶解し、次いで、CH2Cl2/IPA(6容積/1容積)混合物を添加する、再結晶の手順を通した。混合物を外気温まで冷却させ、固体をろ過によって収集した。S−MNTXの純度を94%から>99%まで改善するために、4回の反復が必要であり、総集合的回収率は60%であった。全体で、8.80gのS−MNTXを、HPLC分析によって決定されるものとして99.8%(AUC)まで精製した。1H NMR、13C NMR、およびMSスペクトルは、割り当てられた構造と一致した。Karl Fischer分析(KF):4.7%の水;
Anal. Calcd for C21H26BrNO4:C,57.80;H,6.01;N,3.21;Br,18.31.Found:C,54.58;H,6.10;N,2.82;Br,16.37。
【0246】
例III
(S)−N−メチルナルトレキソンのオピエート受容体結合
S−N−メチルナルトレキソンのμ−、κ−およびδ−オピエート受容体についての結合特異性を決定するために、科学文献から適応させた方法を使用して、放射性リガンド結合アッセイを行った(Simonin, F et al 1994, Mol. Pharmacol 46:1015-1021; Maguire, P. et al 1992, Eur. J. Pharmacol. 213:219-225; Simonin, F. et al PNAS USA 92(15):1431-1437; Wang, JB 1994,. FEBS Lett 338:217-222)。
【0247】
S−MNTXは、ヒト組み換えμオピオイド受容体とKi=0.198μMで;ヒト組み換えκオピオイド受容体とKi=1.76μMで結合し、ヒト組み換えδオピオイド受容体には結合しないことを示した。
【0248】
例IV
S−MNTXのインビトロ薬理学:μ(ミュー、MOP)受容体バイオアッセイ
実験条件。モルモットの末端の回腸の区域を、酸素化(95% O2および5% CO2)して予温(37℃)した以下の(mMでの)組成:NaCl 118.0、KCl 4.7、MgSO4 1.2、CaCl2 2.5、KH2PO4 1.2、NaHCO3 25.0およびブドウ糖11.0(pH 7.4)の生理食塩水で充填した20−mlの器官槽(organ bath)中で浮遊させた。さらなる実験条件は、Hutchinson et al. (1975) Brit. J. Pharmacol., 55 : 541-546において記載されるようなものであった。
【0249】
インドメタシン(1μM)、ノル−ビナトルフィミン(0.01μM)、メチセルジド(1μM)、オンダンセロトン(10μM)、およびGR113808(0.1μM)もまた、各々、プロスタノイド放出を予防するために、およびk−オピオイド受容体、5−HT2受容体、5−HT3受容体および5−HT4受容体を遮断するために、実験を通して存在した。組織を、等張記録のために、強制トランスデューサーに接続した。これらを、1gの静止張力まで伸展させ、次いで、60分間平衡化させ、この時間中に、これらを繰り返し洗浄し、張力を再調製した。その後、これらを、定流スティミュレータによって0.1Hzで送達される、最大の収縮を引き起こすための最小の強度のパルスで、1msの間電気的に刺激した。8個の器官槽を有し、マルチチャネルデータ取得を備えた、半自動化された単離器官システムを使用して、実験を行った。
【0250】
実験プロトコル
アゴニスト活性のための試験。組織を、基準アゴニストDAMGOの準最大濃度(0.1μM)に曝し、応答性を検証し、コントロール応答を得た。大規模な洗浄およびコントロール攣縮(twitch contraction)の快復の後で、組織をS−MNTXまたは同じアゴニストの増大する濃度に曝した。異なる濃度を累積的に添加し、各々を、安定した応答が得られるまでまたは最大15分間、組織と接触させておいた。アゴニスト様応答(攣縮の阻害)が得られた場合、基準アンタゴニストナロキソン(0.1μM)を、S−MNTXの最大濃度に対して試験し、この応答におけるμ受容体の関与を確認した。
【0251】
アンタゴニスト活性についての試験。組織を基準アゴニストDAMGOの準最大濃度(0.1μM)に曝し、コントロール応答を得た。DAMGO誘導性応答の安定化の後で、増大する濃度のS−MNTXまたは基準アンタゴニストナロキソンを累積的に添加した。各々の濃度を、安定した応答が得られるまでまたは最大15分間、組織と接触させておいた。起こった場合、S−MNTXによるDAMGO誘導性応答の阻害は、μ受容体でのアンタゴニスト活性を示す。
【0252】
結果の分析および発表。測定されたパラメータは、電気的に誘発させた攣縮の振幅の、各化合物濃度によって誘導された最大変化であった。結果を、DAMGOに対するコントロール応答の%として表す(平均値)。EC50値(半最大応答をもたらす濃度)またはIC50値(DAMGOに対する応答の半最大阻害を引き起こす濃度)を、濃度−応答曲線の直線回帰分析によって決定した。
【0253】
結果。モルモット回腸バイオアッセイにおいて、μ−オピオイド受容体でのアゴニスト活性およびアンタゴニスト活性について、1.0E−08 Mから1.0E−04 Mまでで調査されたS−MNTXの効果を、表IV.1に示す。ここで、基準化合物のものもまた報告する。S−MNTXについて決定されたEC50値およびIC50値を、表IV.2に示す。
電場刺激されたモルモット回腸において、μ受容体アゴニストであるDAMGOは、攣縮の振幅の濃度依存的減少を誘導し、これは、アンタゴニストであるナロキソンによって、濃度依存的な様式に置いて逆転された。
【0254】
未処置の組織において、S−MNTXはまた、濃度依存的でありナロキソン感受性の攣縮の振幅の減少を引き起こした。
先にDAMGOで抑圧された組織において、S−MNTXは攣縮の振幅の快復をもたらさなかったが、さらなる減少を引き起こした。
これらの結果は、この組織において、S−MNTXがμ−オピオイド受容体のアゴニストとして振る舞うことを示す。
【0255】
【表5】
【0256】
結果を、DAMGOに対するコントロール応答(攣縮の振幅の減少)の%として表す。
(平均値;n=2)
【0257】
【表6】
【0258】
例V
ラットの胃腸管でのS−N−メチルナルトレキソンの効果
ラットにおける胃腸管通過のモルヒネ誘導性の抑制に対する、S−N−メチルナルトレキソン(純度−99.81% S−N−メチルナルトレキソン;0.19% オキシモルホン;検出可能なR−MNTXなし)の効果、ならびにR−MNTXの基準のソース(純度99.9%)を、A. F. Green, Br. J. Pharmacol. 14: 26-34, 1959; L. B. Witkin, C. F. et al J. Pharmacol. Exptl. Therap. 133: 400 -408, 1961; D. E. Gmerek, et al J. Pharmacol. Exptl. Ther. 236: 8-13, 1986;および O. Yamamoto et al Neurogastroenterol. Motil. 10: 523-532, 1998に記載の方法を使用して決定した。
【0259】
S−MNTXおよびR−MNTXを、1.0、3.0または10.0mg/kgの濃度で、皮下でラット(Crl:CD(登録商標)(SD)BR;5〜8週齢;180〜250gの体重)に投与した。コントロール群のラットには、2mg/kgの0.9%食塩水溶液を与えた(n=10)。15分後、ラットに食塩水(1mL/kg)またはモルヒネ(3mg/kg)を皮下注入した。モルヒネまたは食塩水の皮下用量の20分(±2分)後、0.25%メチルセルロース中10%の活性炭の懸濁液を、10mL/kgでラットに経口で投与した。炭を与えてから25分(±3分)後、ラットを安楽死させ、腸を除去し、湿った紙の上でメートル尺に沿って軽く伸ばした。幽門括約筋から盲腸までの小腸を計測し、その長さの一部としての炭が移動した距離を、各々のラットについて評価した。
【0260】
統計学的に有意な効果をTukey HSD多重比較試験を用いるANOVAによって決定した。<0.05のp値を有する差を、統計学的に有意と考える。炭の移動度についての値を、%効果として表し、以下の様式において計算した。各々のラットについて、センチメートルでの炭が移動した個々の距離を、センチメートルでの腸の(幽門括約筋から盲腸までの)全長で割る。各々の群についての平均値を計算し、%効果を以下の式を用いて計算する:
【0261】
【数1】
【0262】
結果
GI通過研究からの結果を、表1に示す。中枢および末梢の両方のオピオイド受容体に影響を及ぼすことが知られているモルヒネは、文献に記載されるとおり、GIの運動性を低下させた。末梢で選択的なμオピオイド受容体アンタゴニストであるR−MNTXは、単独で投与された場合、GI通過に対する効果を有さなかった。モルヒネに先立つR−MNTXの投与は、オピオイドアンタゴニストから予測されるように、モルヒネのGI減速効果を逆転した。モルヒネに対するR−MNTXのアンタゴニスト活性は用量依存的であり、GI通過がコントロール値と統計学的に有意な差でない値まで戻る程度までの1mg/kgでの部分的逆転および3mg/kgまたは10mg/kgでの逆転を有する。R−MNTXのアンタゴニストとは対照的に、S−MNTXは、単独で使用された場合、アゴニスト活性を有した、すなわち、GI通過の統計学的に有意な減少において反映されるように、GI運動性の低下をもたらした。GI運動性の低下におけるS−MNTXのアゴニスト活性は、S−MNTXとモルヒネとを併用して、さらにより強調された。S−MNTX+モルヒネの組合せは、いずれの化合物を単独で用いても観察されないレベルまでGI運動性を低下させる上で、劇的な相乗的アゴニスト効果を有した。S−MNTXのアゴニスト活性は、それ自体で投与された場合のGI通過の減速として、およびまた、2剤が併用された場合のモルヒネの阻害効果の増大によって、顕著であった。
【0263】
【表7】
【0264】
例VI
止痢活性についての試験
(a)ラットにおけるひまし油試験(例えば、Niemegeers et al. (1972) Arzneim
Forsch 22:516-518;米国特許第4,867,979号;同第4,990,521号;同第4,824,853号を参照)
ラットを一晩絶食させた。各々の動物を、試験されるべき化合物の所望の用量で静脈内で処置した。その1時間後、動物に1mlのひまし油を経口で与えた。各々の動物を、個々のケージ内に置き、ひまし油処置の約2時間後に、各々の動物を下痢の存在または不在について評価した。ED50値を、体重1kgあたりのmgでの、試験動物の50%において下痢が存在しない用量として決定した。
【0265】
例えば、若齢のメスのウィスターラット(体重230〜250g)を、一晩絶食させ、朝に各々の動物を経口で試験されるべき化合物の用量レベルで経口で処置した。その1時間後、動物に1mgのひまし油を経口で与えた。各々の動物を、個々のケージに置いた。ひまし油処置の後、異なる選択された時間間隔(例えば、1、2、3、4、6および8時間)で、下痢の存在または不在を記した。500個体のコントロール動物の95%より多くで、ひまし油による処置の1時間後に、重篤な下痢が観察された。この全か無かの評価基準を使用して、ひまし油処置の1時間後に下痢が観察されない場合は、試験化合物を用いて有意な正の効果が生じる。最低でも5つの用量レベルを、薬物ごとに使用して、各用量レベルを10個体のラットに10の異なる日に与えた。式(II)の化合物などの化合物についてのED50値、すなわち、かかる効果が50%の動物において観察される用量レベルは、一般的に、約0.01〜約10mg/kgの範囲である。
【0266】
(b)マウスにおけるひまし油試験(例えば、米国特許第4,326,075号を参照)
マウスの群に、試験化合物を経口で投与し、1時間半後に、全てのマウスに0.3mlのひまし油を与えた。ひまし油投与の3時間後、全てのマウスを下痢についてチェックし、マウスの50%を下痢から保護した試験化合物の用量が、ED50用量である。
【0267】
(c)トウゴマ油試験(例えば、米国特許第4,990,521号を参照)
ラット、例えばメスのウィスターラットまたは他の実験系統を、一晩絶食させる。各々の動物を、試験化合物の用量レベルで経口で処置する。その1時間後、動物に、ある量、代表的には1mlのトウゴマ油を経口で与え、各々の動物を個々のケージ内におき、トウゴマ油処置の1時間後に、下痢の存在または不在を記す。ED50値を、体重1kgあたりのmgでの、試験動物の50%において下痢が存在しない用量として決定する。
【0268】
(d)マウスにおけるPGE2誘導性下痢の拮抗
止痢活性を、マウスにおけるPGE2誘導性下痢のアンタゴニストとしての化合物の効果を評価することによって決定することができる(例えば、Dajani et al. 1975) European Jour. Pharmacol. 34:105-113;およびDajani et al. (1977) J. Pharmacol. Exp. Ther. 203:512-526を参照;例えば、米国特許第4,870,084号を参照)。この方法は、他には処置されないマウスにおいて15分以内に確実に下痢を誘発する。予め試験剤で処置された動物であって、下痢を生じていないものを、試験剤によって保護されたと考える。試験剤の便秘作用を、「全か無か」の応答として測定し、下痢を、よく形成された巨丸(boluse)であり硬く比較的乾燥した通常の糞便と非常に異なる、水っぽい無定形の便として定義する。
【0269】
標準的な実験用マウス、例えばチャールズリバーCD−1系統のアルビノマウスを用いる。これらは、代表的には、グループケージ中に置く。試験されたときの動物の体重の範囲は、20〜25gの間である。ペレット状のラット固形飼料は、試験の18時間前まで不断で利用可能であり、この時点で食餌を回収する。動物を体重計測し、同定のためにマークする。各々の薬物処置群において、5個体の動物を通常使用し、コントロールと比較する。20〜25gの体重のマウスを、グループケージ内に収容し、試験に先立ち一晩絶食させる。水は利用可能である。試験薬物処置の1時間後に、動物をPGE2(5%のETOH中0.32mg/kg、腹腔内)に暴露し、速やかに、例えば透明なアクリルボックス内に個別におく。15分間の終わりに、ボックスの底の使い捨ての段ボールシートを、下痢について、全か無かの基準でチェックする。
【0270】
例VII
疼痛モデルにおけるS−MNTXの鎮痛作用
以下の疼痛モデルは、S−MNTXの鎮痛活性を決定するために有用である。
1.マウスにおける酢酸苦悶アッセイ
マウス(CD−1、雄)を、体重計測して個々のスクエアに置く。試験品またはコントロール品を投与し、適当な吸収時間の後で、酢酸溶液を腹腔内に投与する。酢酸の腹腔注入の10分後、苦悶の回数を5分間の期間にわたって記録する。
各々のマウスについて、苦悶の総数を記録する。コントロール品および各試験品についての苦悶の平均数を、ANOVAおよびその後の関連する多重比較試験を使用して比較し、%阻害を計算する。
【0271】
2.フェニルキノン(PPG)苦悶アッセイ
マウス(CD−1、雄)を、体重計測して個々のスクエアに置く。試験品またはコントロール品を投与し、適当な吸収時間の後で、PPQ溶液(0.02%水溶液)を腹腔内に投与する。各々の動物を、10分間、苦悶の現れについて近くで観察する。
各々のマウスについて、苦悶の総数を記録する。コントロール品および各試験品についての苦悶の平均数を、ANOVAおよびその後の関連する多重比較試験を使用して比較し、%阻害を計算する。
【0272】
3.ラットにおけるRandall-Selittoアッセイ
このアッセイの目的は、ラットの疼痛閾値での試験品の効果を決定することである。
一晩の絶食の後、ラットを10個体の群においた。20個体のラットをビヒクルコントロールとして用いる。ラットに、20%のビール酵母懸濁液を左後足の足底表面へ順次注入する。2時間後、ラットに、試験品、基準薬、またはコントロールビヒクルを投与する。用量投与の1時間後、炎症を起こした足および炎症を起こしていない足の疼痛閾値を、直線スケールに沿って一定の率で増大する力を与える「鎮痛メーター(Analgesia Meter)」により計測する。
【0273】
炎症を起こした足および炎症を起こしてない足についてのコントロール群の閾値および標準偏差を計算する。個々の疼痛閾値がコントロール群の平均閾値を平均の標準偏差二つ分で超える場合、試験品群および基準群のラットが保護されたと考える。
【0274】
4.ホットプレート鎮痛アッセイ
実験を通して、各々のマウス(CD−1、雄)を、その自己のコントロールとして利用した。マウスを順次ホットプレート鎮痛メーター(Hot Plate Analgesia Meter)(55℃±2℃に設定されている)に置く。マウスは、熱刺激に対して、以下によって特徴的に反応する:
1.前足を舐める
2.後足を速くかき立てること
3.ホットプレートから急に飛び降りること
【0275】
これらの3つの型の反応のいずれかを、熱刺激の終点として考える。終点を示したら速やかにマウスをホットプレートから除く。反応時間を、マウスをホットプレートに置いてから決定的な終点の提示までの間に経過する秒数として定量的に測定する。経過時間は、少なくとも1秒の1/5まで正確なストップウォッチにより測定する。コントロール反応時間が10.0秒またはそれ未満のマウスのみを使用する。試験品またはコントロール品の投与の15分、30分、60分および120分(±1〜5分)後に、反応時間を得、群について順次記録する。
【0276】
鎮痛応答は、熱刺激に対するマウスの反応時間の増加である。%鎮痛を、特定の時間間隔での用量レベルごとの10個体のマウスの群の平均的な応答から計算する:
【0277】
【数2】
【0278】
5.ラット尾の放射熱試験(テールフリック)
試験品がラットに置いて熱刺激に対する鎮痛応答をもたらす潜在能力を評価するため。
一晩の絶食の後、ラットを胆汁測定して10個体の群におく。試験品またはビヒクルコントロール品を投与する。テールフリック鎮痛メーターを使用する。経口投与の60分後(またはSponsorによって推奨されるように)、各々のラットの尾を、特定の強度の熱刺激に曝し、応答(特徴的なテールフリック)を誘発するために必要とされる時間を記録する。
%鎮痛を、平均試験品応答と比較した平均コントロール応答を用いて計算する。
【0279】
例VIII
末梢抗痛覚過敏剤としての用途のための化合物の同定
一般に、上記の方法はまた、試験化合物の末梢の抗痛覚過敏活性を評価するためにも有用である。抗痛覚過敏活性を評価するための方法のうちで最も好ましいものは、Niemegeers et al. (1974) Drug Res. 24:1633-1636において記載されるものである。
1尾の引き込み試験などのCNS効果の試験におけるED50値(B)に対する、ひまし油試験などの止痢活性のための試験におけるED50値(A)の比(C)の評価。
【0280】
方法および組成物における使用のために意図される剤は、それらの止痢剤としての活性、およびそれらのCNS効果の欠落によって同定することができる。特に、選択された化合物は、上記の標準的モデルのいずれにおいても抗痛覚過敏活性を示し、好ましくは、以下のいずれかである:(a)標準的なアッセイにおいて測定されるものとしてのこれらの活性の比(B/A)が、ジフェノキシレートについてのかかる活性の比より、実質的に大きいかもしくはそれと等価である(少なくとも等価であり、より好ましくは、少なくとも約2倍大きい);または(b)CNS活性を測定するアッセイにおける化合物の活性が、ジフェノキシレートより実質的に(少なくとも2倍、好ましくは3倍またはそれ以上)低い。
【0281】
例IX
S−MNTXのインビトロ薬理学:ヒトμ(ミュー、MOP)受容体を発現するCHO細胞におけるcAMPアッセイ
μオピオイド受容体は、Gi共役型であり、cAMPの増加を阻害することによって作用する。したがって、これらの実験において、細胞cAMPは、10μMのフォルスコリンの添加によって増加する。DAMGO、または類似のアゴニスト、例えばエンドモルフィン−1、フェンタニル、またはモルヒネの予めの添加は、このフォルスコリン誘導性の増大を阻害する。アゴニスト効果の不在は、フォルスコリン単独と等価の結果を生じる。したがって、アゴニスト濃度の増加は、cAMPレベルを低下させる。
【0282】
CTOP、ナロキソンおよびシプロジム(ciprodime)などのアンタゴニストは、cAMP阻害を阻害する。したがって、完全なアンタゴニスト効果は、μ−オピオイドアゴニストのいかなる添加も有さないフォルスコリンと等価である。これらの実験に置いて、アンタゴニストを添加し、次いで30μMのDAMGO、次いでフォルスコリンを添加した。したがって、アンタゴニスト濃度の増加は、cAMPを増加させた。
【0283】
実験プロトコル
アッセイの特徴:
EC50(DAMGO): 12nM
cAMP産生
(フォルスコリン&IBMX): 3.4pmol/ウェル
阻害(10uM DAMGO): 90%
【0284】
材料および方法:
細胞ソース: ヒト組み換え/CHO細胞
基準アゴニスト: DAMGO
基準阻害剤: CTOP(アンタゴニストSAPを参照)
基準曲線: DAMGO(細胞活性化)
cAMP(EIAコントロール曲線)
【0285】
細胞を、96ウェルプレートにおいてコンフルエンシーまで増殖させた。分析の前に細胞を洗浄して生理緩衝液中で平衡化した。20μlの薬物、100μMのIBMX、および10μMフォルスコリンを添加して、25分間室温でインキュベートし、次いで、0.1NのHClの添加によって反応を停止した。アルカリホスファターゼを利用する競合EIAアッセイを介して、抽出されたcAMPレベルを決定した。さらなる実験条件は、Toll L., J Pharmacol Exp Ther. (1995) 273(2): 721-7において記載される。
【0286】
結果
アゴニストアッセイ:S−MNTXは、600nMのEC50でアゴニスト応答を示した。表IX.1に示されるように(6.0E−7M)。アゴニスト応答は完全であった(部分的ではなかった)。
【表8】
【0287】
アンタゴニストアッセイ:表X.2において表される結果によって示されるように、S−MNTXはアンタゴニスト効果を示さなかった。
【表9】
【0288】
このように、本発明の少なくとも一つの態様のいくつかの局面を有することが記載されたことによって、当業者は、多様な変更、改変、および改善を容易に想起することが理解されるべきである。かかる変更、改変、および改善は、本発明の開示の一部であることが意図され、本発明の思想および範囲の中にあることが意図される。したがって、上の記載および図は、単なる例である。
【図面の簡単な説明】
【0289】
【図1】R−MNTXおよびS−MNTXの臭化物塩の化学構造を提供する。
【図2】本発明の代表的な反応スキームを示す。
【図3】S−MNTXのプロトンNMRスペクトルを提供する。
【図4】S−MNTXの赤外線スペクトルを提供する。
【図5】S−MNTXのHPLCクロマトグラムを提供する。
【図6】S−MNTXの質量スペクトログラムを提供する。
【図7】本発明によるキットを示す。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、(S)−N−メチルナルトレキソン(S−MNTX)、S−MNTXの調製のための立体選択的合成方法、S−MNTXを含む医薬組成物およびその使用のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
メチルナルトレキソン(MNTX)は、純粋なオピオイドアンタゴニストであるナルトレキソンの第四級誘導体である。これは塩として存在する。文献においてMNTXの臭化物塩に使用される名称としては、以下が挙げられる:臭化メチルナルトレキソン;臭化N−メチルナルトレキソン;ナルトレキソンメトブロミド;ナルトレキソンメチルブロミド;MRZ 2663BR、MNTXは、70年代半ばに、Goldbergらによって、米国特許第4,176,186号に記載されるように報告された。環の窒素へのメチル基の添加が、ナルトレキソンよりも高い極性および低い脂溶性を有する荷電化合物を形成すると考えられる。MNTXのこの特徴は、ヒトにおいて血液脳関門の通過を防ぐ。結果として、MNTXは、中枢神経系よりも末梢において、中枢神経系におけるオピオイドの鎮痛作用を妨げない利点を伴ってこの効果を発揮する。
【0003】
MNTXはキラル分子であり、第四級の窒素はRまたはS立体配置であり得る。(図1参照。)MNTXの異なる立体異性体が、異なる生物学的特性および化学特性を示すか否かは知られていない。文献に記載され報告された機能の全てが、MNTXが末梢オピオイドアンタゴニストであることを示す。これらのアンタゴニスト機能のいくつかは、米国特許第4,176,186号、第4,719,215号、第4,861,781号、第5,102,887号、第5,972,954号、第6,274,591号、第6,559,158号、および6,608,075、ならびに米国特許出願第10/163,482号(2003/0022909A1)、第10/821,811号(20040266806)、第10/821,813号(20040259899)および第10/821,809号(20050004155)に記載されている。これらの用途は、オピオイドの効果を低下させることなくオピオイド副作用を減少させることを含む。かかる副作用は、吐き気、嘔吐、不快、掻痒、尿閉、腸の運動低下、便秘、胃の運動低下、遅発性胃内容排出および免疫抑制を含む。当該技術は、MNTXが、オピオイド鎮痛処置に起因する副作用を減少するだけでなく、内因性オピオイド類単独でまたは外因性オピオイド処置との組み合わせによって媒介される副作用をも減少させることを開示する。かかる副作用は、胃腸運動の阻害、術後胃腸機能障害、突発性便秘、および上記のものを含むがこれらに限定されない他の状態を含む。しかしながら、当該技術からは、これらの研究に使用されたMNTXが、R立体異性体とS立体異性体との混合物であったか単一の立体異性体であったかは明らかでない。
【0004】
当該技術は、化合物の単離された立体異性体が時に対照的な物理的および機能的特性を有する可能性があることを示唆するが、いかなる特定の状況においてこれが該当するかを予測することはできない。デキストロメトルファンは鎮咳剤であるが、その鏡像異性体であるレボメトルファンは強力な麻酔薬である。R,R−メチルフェニデートは、注意欠陥過活動性障害(ADHD)を処置する薬物であるが、この鏡像異性体であるS,S−メチルフェニデートは抗うつ剤である。S−フルオキセチンは、片頭痛に対して活性であるが、その鏡像異性体であるR−フルオキセチンは鬱病を処置するために使用される。シタロプラムのS鏡像異性体は、鬱病の処置のための治療上活性な異性体である。そのR鏡像異性体は不活性である。オメプラゾールのS鏡像異性体は、胸焼けの処置についてそのR鏡像異性体よりも強力である。
【0005】
Bianchetti et al, 1983 Life Science 33 (Sup I):415-418は、3対の四級麻酔性アンタゴニストのジアステレオ異性体およびそれらの親三級アミン類、レバロルファン、ナロルフィンおよびナロキソンについて研究し、キラル窒素に関する立体配置がどのようにインビトロおよびインビボでの活性に影響するかを確かめた。四級誘導体がどのように製造されたかに依存して、活性が著しく変化することを見出した。それぞれのシリーズにおいて、N−アリル−置換三級アミン(「N−メチルジアステレオマー」として言及される)のメチル化によって得られたジアステレオマーのみが、ラット脳膜からの3H−ナルトレキソンの置き換えおよびモルモット回腸におけるモルフィンアンタゴニストとしての作用において有効である。反対に、N−メチル−置換三級アミン類をハロゲン化アリルと反応させることにより得たジアステレオ異性体(「N−アリルジアステレオマー」として言及される)は、3H−ナルトレキソンを置き換えず、モルモット回腸において殆どアンタゴニスト活性を有さず、僅かなアゴニスト作用を有する。
インビボでの知見は一般的にインビトロでの知見と一致する。したがって、「N−メチルジアステレオマー」のみがモルフィン誘導性の便秘をラットにおいて阻害しアンタゴニストとして作用するが、「N−アリルジアステレオマー」は阻害しない。著者は、製造された材料が1Hおよび13C核磁気共鳴(NMR)分析によって純粋であるようにみえるとしているが、これらの方法は正確ではない。著者は、ナロルフィンの「N−メチルジアステレオマー」へのR立体配置の割当について、参考文献を引用している。レバロルファンおよびナロキソンのジアステレオマーに関しては、割当は提案されていない。これらのジアステレオマーへの立体配置を推定することは危険である(R.J. Kobylecki et al, J. Med. Chem. 25, 1278-1280, 1982)。
【0006】
Goldbergらの米国特許第4,176,186号、およびより最近のCantrellらの国際公開パンフレット2004/043964 A2は、MNTXの合成のプロトコルを説明している。いずれも、メチル化剤による三級N−置換モルフィナンアルカロイドの四級化によるMNTXの合成を記載する。GoldbergらおよびCantrellらはともに、合成によって製造される立体異性体(単数または複数)については言及していない。筆者らは、立体化学を先行技術に基づいて判断することが出来ないため、立体化学に関しても注意深く言及していない。ナルトレキソンにおけるシクロプロピルメチル側鎖は、先行技術の側鎖とは異なっており、温度や圧力などの他の多くの反応パラメーターのように、MNTXの合成における立体化学の結果に影響する可能性もある。それぞれに記載された合成の方法に基づいて製造されたMNRXが、Rであるか、Sであるか、または両方の混合物であるかは不明である。
【0007】
純粋な形態のS−MNTX、および純粋なS−MNTXの製造方法は、文献には記載されていない。標準物質としての純粋なS−MNTXを欠く状態で、研究者が、GoldbergらまたはCantrellらの合成によって得られた立体異性体(単数または複数)を明確に特徴付け、区別することは不可能であったであろう。
【発明の開示】
【0008】
発明の要旨
S−MNTXは、今や、高純度で提供され、このことにより、クロマトグラフィーにおける(R)−N−メチルナルトレキソン(R−MNTX)の保持時間に対するS−MNTXの相対的保持時間のキャラクタリゼーションが可能となる。S−MNTXは、文献において報告されたMNTXの活性と異なる活性を有することが見出された。
【0009】
本発明は、高純度のS−MNTX、高純度のS−MNTXの結晶およびその中間体、高純度のS−MNTXを製造するための新規方法、R−MNTXとS−MNTXとの混合物中のS−MNTXを分析するための方法、R−MNTXをS−MNTXから区別する方法、S−MNTXを定量する方法、同じものを含む医薬品およびこれらの物質の関連する使用を提供する。
S−MNTXおよびその塩が提供される。S−MNTXを得るためのプロトコルは、先行技術からは予測することが出来なかった。さらに、驚くべき事に、S−MNTXがオピオイドアゴニスト活性を有することを見出した。
【0010】
本発明の一局面によれば、組成物が提供される。組成物は、式Iの窒素についてS立体配置の単離された化合物である:
【化1】
式中、Xは対イオンである。
【0011】
S−MNTXは塩である。したがって、対イオンが存在し、対イオンは、本願に関して、双性イオンを含む。より代表的には、対イオンは、ハライド、硫酸、リン酸、硝酸、またはアニオン性に荷電された有機種である。ハライドは、フッ化物、塩化物、ヨウ化物および臭化物を含む。いくつかの重要な態様において、ハライドはヨウ化物であり、別の重要な態様において、ハライドは臭化物である。いくつかの態様において、アニオン性に荷電された種はスルホン酸またはカルボン酸である。スルホン酸の例として、メシレート、ベシレート、トシレートおよびトリフレートが挙げられる。カルボン酸の例として、ギ酸、酢酸、クエン酸、およびフマル酸が挙げられる。
【0012】
本発明によれば、S−MNTXは単離された形態において提供される。単離とは、少なくとも約50%純粋であることを意味する。重要な態様において、S−MNTXは75%の純度で、90%の純度で、95%の純度で、98%の純度で、および99%もの純度で、または99%より高い純度で、提供される。一つの重要な態様において、S−MNTXは結晶形態である。
【0013】
本発明の別の局面において、組成物が提供される。組成物はMNTXであり、組成物中に存在するMNTXは、10%より多くが窒素についてS立体配置である。より好ましくは、組成物中に存在するMNTXは、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、および99.9%より多くまでもが窒素についてS立体配置である。いくつかの態様において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定されるものとして検出可能なR−MNTXは存在しない。
いくつかの態様における組成物は溶液であり、別の態様においては油であり、別の態様においてはクリームであり、さらに別の態様においては固体または半固体である。一つの重要な態様において、組成物は結晶である。
【0014】
本発明の別の局面において、医薬製剤が提供される。医薬製剤は、上記のS−MNTXの組成物のいずれか一つを薬学的に受容可能なキャリア中に含む。医薬製剤は、S−MNTXの有効量を含む。いくつかの態様において、組成物中に検出可能なR−MNTXは殆どまたは全く存在しない。存在する場合、R−MNTXは、S−MNTXの有効量が被験体に投与されるようなレベルである。いくつかの態様において、医薬製剤は、MNTX以外の治療剤をさらに含む。一態様において、治療剤はオピオイドまたはオピオイドアゴニストである。オピオイドまたはオピオイドアゴニストの例は、アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾシン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルフィン(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、レボメサジルアセテート、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メサドン、モルフィン、モルフィン−6−グルクロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチン、トラマドールおよびこれらの組合せである。
【0015】
いくつかの態様において、オピオイドまたはオピオイドアゴニストは、血液脳関門を容易に超えず、したがって、全身投与された場合に中枢神経系(CNS)での活性を実質的に有さない(すなわち、これは、「末梢作用性」として知られるクラスの剤である)。他の態様において、治療剤はオピオイドアンタゴニストである。オピオイドアンタゴニストとしては、末梢μオピオイドアンタゴニストが挙げられる。末梢μオピオイドアンタゴニストの例としては、ノルオキシモルホンの四級誘導体(Goldbergら、米国特許第4,176,186号およびCantrellら、WO 2004/043964を参照)、米国特許第5,250,542号;同第5,434,171号;同第5,159,081号;同第5,270,328号;および同第6,469,030号などに記載のピペラジン−N−アルキルカルボキシレート、米国特許第4,730,048号;同第4,806,556号;および同第6,469,030号に記載のものなどのオピウムアルカロイド誘導体、米国特許第3,723,440号および同第6,469,030号に記載のものなどの四級ベンゾモルファン化合物が挙げられる。
【0016】
一態様において、末梢オピオイドアンタゴニストはR−MNTXである。R−MNTXは、先行技術において記載される製造手段によるMNTXの主な形態であるが、かかる調製物にはS−MNTXが混入していると考えられる。純粋なR−MNTXは、以下のプロトコルを用いて合成することができる。簡単に述べると、以下によってR−MNTXの立体選択的合成を行う:ヒドロキシル保護基をナルトレキソンに添加して3−O−保護ナルトレキソンを得;3−O−保護ナルトレキソンをメチル化して3−O−保護−R−MNTX塩を得;そしてヒドロキシ保護基を除去してR−MNTXを得る。ヒドロキシル保護基は、以下の各々または両方の存在下において添加してもよい:有機溶媒、例えばテトラヒドロフラン、および/またはナルトレキソンでない三級アミン、例えばトリメチルアミン。3−O−保護ナルトレキソンをヨウ化メチルと反応させて3−O−保護−R−MNTXヨウ化塩を生じることによって、ナルトレキソンをメチル化してもよい。イソブチリルなどのヒドロキシル保護基によってナルトレキソンを保護することができる。3−O−保護−R−MNTXヨウ化塩を臭化水素酸で処理して保護基を除去し、R−MNTX臭化物/ヨウ化物塩を生成してもよく、臭化物/ヨウ化物塩をアニオン交換樹脂カラム(臭化物形態)を通してR−MNTX臭化物を得てもよい。
【0017】
他の態様において、治療剤は、オピオイド、オピオイドアゴニストまたはオピオイドアンタゴニストではない。例えば、治療剤は、抗ウイルス剤、抗生剤、抗真菌剤、抗菌剤、防腐剤、抗原虫剤、抗寄生虫剤、抗炎症剤、血管収縮剤、局所的麻酔剤、止痢剤、抗痛覚過敏剤、またはこれらの組合せであってもよい。
【0018】
本発明の一つの局面において、S−MNTXは止痢剤と組み合わされ、止痢剤は、ロペラミド、ロペラミドのアナログ、ロペラミドおよびアナログのN−オキシド、それらの代謝物およびプロドラッグ、ジフェノキシレート、シサプリド、アンタシド、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ポリカルボフィル、シメチコン、ヒヨスチアミン、アトロピン、フラゾリドン、ジフェノキシン、オクトレオチド、ランソプラゾール、カオリン、ペクチン、活性炭、スルファグアニジン、スクシニルスルファチアゾール、フタリルスルファチアゾール、アルミン酸ビスマス、亜炭酸ビスマス、亜クエン酸ビスマス、クエン酸ビスマス、ビスマス酸二クエン酸三カリウム、酒石酸ビスマス、亜サリチル酸ビスマス、亜硝酸ビスマス、没食子酸ビスマス、オピウムチンキ(パレゴリック)、生薬、植物由来止痢剤、またはこれらの組合せである。
【0019】
本発明の一つの局面において、S−MNTXは抗炎症剤と組み合わされ、抗炎症剤は、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、腫瘍壊死因子阻害剤、バシリキシマブ、ダクリズマブ、インフリキシマブ、ミコフェノール酸、モフェチル、アザチオプリン、タクロリムス、ステロイド類、スルファサラジン、オルサラジン、メサラミン、またはこれらの組合せである。
【0020】
本発明の医薬製剤は、多様な形態をとってよく、そのような形態として、腸溶性コーティングされた組成物、徐放性(controlled release)処方物または持効性(sustained release)処方物である組成物、溶液である組成物、局所用処方物である組成物、坐剤である組成物、凍結乾燥されている組成物、吸入剤である組成物、鼻用スプレーデバイス中にある組成物などが挙げられるがこれらに限定されない。組成物は、経口投与、非経口投与、粘膜投与、経鼻投与、局所(topical)投与、眼投与、局所的(local)投与などのためのものであり得る。非経口である場合、投与は、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、髄腔内であってよい。
【0021】
本発明の別の局面によれば、S−MNTXの塩を合成するための方法が提供される。方法は、(ヨウ化メチル)シクロプロパンを第一の溶媒中でオキシモルホンと組み合わせてS−MNTXのヨウ化塩を生成することを包含する。次いで、必要に応じて、対イオンを置換してもよく、ヨウ化物については、ヨウ化塩S−MNTXを第二の溶媒中へ移して、ヨウ化物をヨウ化物以外の対イオンと交換する。一つの重要な態様において、S−MNTXのヨウ化物塩を第一の溶媒から第二の溶媒へと移して、第二の溶媒中でヨウ化物を臭化物と交換してS−MNTXの臭化物塩を生成する。好ましい第一の溶媒は、双極性非プロトン溶媒である。最も好ましいのはN−メチルピロリドン(NMP)である。好ましい第二の溶媒は、少なくともイソプロピルアセテートまたはジオキサンである。本発明の方法はまた、クロマトグラフィー、再結晶またはそれらの組合せによるS−MNTXの塩の精製を包含する。一態様において、精製は多重再結晶によるものである。広範な温度範囲および大気条件にわたり、反応を行ってもよい。重要な態様において、第一の溶媒中での反応は、65℃〜70℃の間、好ましくは約70℃で制御された反応温度下において行われ、第二の溶媒中での反応は室温で行われる。
【0022】
より広範には、方法は、シクロプロピルメチル誘導体を第一の溶媒中でオキシモルホンと組み合わせてS−MNTXプラス対イオンを生成することにより、S−MNTXプラス対イオンを合成することを包含する。シクロプロピルメチル誘導体は、脱離基を含む。好ましくは脱離基はハライドまたはスルホン酸である。好ましくは、脱離基はヨウ化物である。第一の溶媒は、双極性非プロトン溶媒であってもよい。かかる溶媒の例は、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、メチルホスホルアミド、アセトン、1,4−ジオキサン、およびアセトニトリルおよびこれらの組合せである。好ましいものは、N−メチルピロリドンである。第一の溶媒は双極性プロトン溶媒であってもよい。例は、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノールである。方法は、S−MNTXの対イオンを別の対イオンと交換することをさらに包含する。対イオンの例は、臭化物、塩化物、フッ化物、硝酸、スルホン酸、またはカルボン酸である。スルホン酸は、メシレート、ベシレート、トシレートまたはトリフレートであってもよい。カルボン酸は、ギ酸、酢酸、クエン酸、およびフマル酸であってもよい。方法は、S−MNTXの対イオンを第二の溶媒へ移し、その後S−MNTXの対イオンを別の対イオンと交換することを包含してもよい。方法は、S−MNTXプラス対イオンを、例えば再結晶によって、クロマトグラフィーによって、または両方によって精製することをさらに包含してもよい。
【0023】
本発明の別の局面によれば、被験体において下痢を抑制するための方法が提供され、これは、かかる処置を必要とする被験体に、S−MNTXを含む医薬組成物を、下痢を処置または予防するために有効な量で投与することによる。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。下痢は急性であっても慢性であってもよい。下痢は、単一のまたは組み合わされた任意の種々の状況、例えば感染因子、食物不耐性、食物アレルギー、吸収不全症候群、医薬に対する反応または不特定の病因によって引き起こされ得る。いくつかの態様において、下痢は過敏性腸疾患または炎症性腸疾患に関連する。一態様において、炎症性腸疾患は、セリアック病である。別の態様において、炎症性腸疾患は、クローン病である。さらに別の態様において、炎症性腸疾患は、潰瘍性腸炎である。他の態様において、下痢は、胃または腸の反応、胆嚢の切除、または器質性病変を原因とする。他の態様において、下痢は、カルチノイド腫瘍または血管作用性小腸ポリペプチド分泌腫瘍と関連する。なお他の態様において、下痢は慢性機能性(特発性)下痢である。
【0024】
本発明によれば、S−MNTXは、S−MNTXでない止痢剤と組み合わせて投与されてもよい。組合せとは、同時であること、または両剤が同時に状態を処置していることになるのに十分時間的に近いことを意味する。一態様において、剤は、オピオイドまたはオピオイドアゴニストである。別の態様において、剤は、オピオイドまたはオピオイドアゴニストではない。
【0025】
本発明の別の局面によれば、被験体においてイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の量を減少させるための方法が提供される。方法は、かかる減少を必要とする被験体に、S−MNTXを含む医薬組成物を、イレオストミーまたはコロストミーからの排泄の量を減少させるために有効な量で投与することを含む。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。
【0026】
本発明の別の局面によれば、被験体においてイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の速度を減少させるための方法が提供される。方法は、かかる減少を必要とする被験体に、S−MNTXを含む医薬組成物を、イレオストミーまたはコロストミーからの排泄の速度を減少させるために有効な量で投与することを含む。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。
【0027】
本発明の別の局面によれば、被験体における胃腸運動を抑制するための方法が提供される。方法は、かかる抑制を必要とする被験体に、S−MNTXを含む医薬組成物を、その被験体において胃腸運動を抑制するために有効な量で投与することを含む。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。本発明によれば、S−MNTXは、S−MNTXではない別の運動抑制剤と組み合わせて投与されてもよい。一態様において、剤はオピオイドまたはオピオイドアゴニストである。オピオイドまたはオピオイドアゴニストは、上に記載される。別の態様において、剤はオピオイドまたはオピオイドアゴニストではない。かかる胃腸運動抑制剤の例は、各々がこの発明の要旨において具体的に挙げられるように以下に記載される。
【0028】
本発明の別の局面によれば、過敏性腸症候群を処置するための方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする患者に、S−MNTXを含む医薬組成物を、過敏性腸症候群の少なくとも一つの症状を緩和するために有効な量で投与することを包む。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。一態様において、症状は下痢である。別の態様において、症状は、便秘下痢交代症、別の態様において、症状は、腹部疼痛、腹部膨満、異常な便頻度、異常な便の硬さ、またはこれらの組合せである。
【0029】
本発明の別の局面によれば、被験体において疼痛を抑制するための方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする被験体に、S−MNTXを含む医薬組成物を、疼痛を抑制するために有効な量で投与することを含む。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。方法は、被験体にS−MNTX以外の治療剤を投与することをさらにさらに包含する。一態様において、S−MNTX以外の治療剤はオピオイドである。別の態様において、S−MNTX以外の剤は非オピオイド性疼痛緩和剤である。非オピオイド性疼痛緩和剤として、コルチコステロイドおよび非ステロイド抗炎症薬が挙げられる。疼痛緩和剤は、本明細書においてこの要旨において挙げられるように、以下により詳細に記載される。別の態様において、S−MNTX以外の剤は、抗ウイルス剤、抗生剤、抗真菌剤、抗菌剤、防腐剤、抗原虫剤、抗寄生虫剤、抗炎症剤、血管収縮剤、局所的麻酔剤、止痢剤、抗痛覚過敏剤である。
【0030】
疼痛が末梢痛覚過敏である場合、例えば、咬傷、刺傷、火傷、ウイルスまたは細菌感染、口腔外科手術、抜歯、皮膚および肉体への損傷、切創、擦過傷、挫傷、外科切開術、日焼け、発疹、皮膚潰瘍、粘膜炎、歯肉炎、気管支炎、喉頭炎、咽頭炎、帯状疱疹、真菌過敏、単純ヘルペス、おでき、足底疣贅、膣の病変、肛門の病変、角膜剥離、後面放射角膜切除術(post-radial keratectomy)、または炎症からもたらされ得る。それはまた、手術後の快復とも関連し得る。手術は、例えば、放射状角膜切開術、抜歯、乳腺腫瘍摘出術、会陰切開術、腹腔鏡検査、関節鏡検査であり得る。
【0031】
いくつかの態様において、医薬組成物は、疼痛の部位へ局所的に投与される。いくつかの態様において、投与は関節内である。いくつかの態様において、投与は全身である。いくつかの態様において、投与は局所である。いくつかの態様において、組成物は眼に投与される。
【0032】
本発明の別の局面によれば、被験体において炎症を抑制するための方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする患者に、S−MNTXを含む医薬組成物を、炎症を抑制するために有効な量で投与することを包含する。医薬組成物は、上記の型のものであってよい。方法は、さらに、被験体にS−MNTX以外の治療剤を投与することを含む。S−MNTX以外の治療剤は、抗炎症剤であってもよい。投与は、例えば、炎症の部位での局所的投与、全身投与、または局所投与であり得る。
【0033】
いくつかの態様において、炎症は、歯周組織炎、歯科矯正による炎症(orthodontic inflammation)、炎症性結膜炎、痔および性器の炎症である。他の態様において、炎症は、皮膚の炎症状態である。例として、以下からなる群より選択される障害と関連する炎症が挙げられる:刺激性接触性皮膚炎、乾癬、湿疹、掻痒、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹、扁平苔癬、尋常性ざ瘡、面皰、多型(polymorph)、嚢胞性ざ瘡(nodulokystic acne)、凝塊性ざ瘡(conglobata)、老人性ざ瘡、二次性ざ瘡、医療行為によるざ瘡(medical acne)、角質化障害、および水疱性皮膚炎(blistery derma)、アトピー性皮膚炎、UV誘発性炎症。皮膚炎症状態はまた、皮膚の感作または過敏を引き起こす化粧品またはスキンケア製品の使用から生じる皮膚の感作または過敏に関連し得るか、または非アレルギー性の炎症性皮膚状態であり得る。それはまた、オールトランスレチノイン酸によって誘導され得る。
【0034】
他の態様において、炎症は、全身性炎症状態であり得る。例として、以下からなる群より選択される状態が挙げられる:炎症性腸疾患、関節リウマチ、悪液質、喘息、クローン病、エンドトキシンショック、成人呼吸促迫症候群、虚血/再灌流障害、移植片対宿主反応、骨吸収、移植および狼瘡。他の態様は、多発性硬化症、糖尿病、および後天性免疫不全症候群(AIDS)または癌に関連する萎縮からなる群より選択される状態と関連する炎症を含み得る。
【0035】
本発明の別の局面によれば、被験体において腫瘍壊死因子の産生を抑制するための方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする患者に、S−MNTXを含む医薬組成物を、腫瘍壊死因子の産生を抑制するために有効な量で投与することを包含する。医薬製剤は、上記の型のものであってよい。方法はまた、被験体にS−MNTX以外の治療剤を投与することを含んでもよい。
【0036】
本発明の別の局面によれば、被験体において胃腸機能を調節するための方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする患者にS−MNTXを含む医薬組成物を投与すること、および該被験体に末梢μオピオイドアンタゴニストを投与することを含み、これらはいずれも胃腸機能を調節する量で投与される。一態様において、末梢μオピオイドアンタゴニストは、R−MNTXである。
本発明の別の局面によれば、方法が提供される。方法は、患者に、上記の組成物を、心因性の摂食障害または消化障害を予防または処置するために有効な量で投与することにより、心因性の摂食障害または消化障害を予防または処置することを含む。
【0037】
本発明の別の局面によれば、キットが提供される。キットは、S−MNTXを含む医薬組成物の密封容器を含むパッケージを含む。キットは、S−MNTX以外の治療剤をさらに含んでもよい。一態様において、S−MNTX以外の治療剤は、オピオイドまたはオピオイドアゴニストである。一局面において、オピオイドまたはオピオイドアゴニストは、全身投与された場合にCNSでの活性を実質的に有さない(すなわち、「末梢で作用する」)。別の態様において、S−MNTX以外の治療剤は、オピオイドアンタゴニストである。オピオイドアンタゴニストは、末梢μオピオイドアンタゴニストを含む。一態様において、末梢オピオイドアンタゴニストは、R−MNTXである。他の態様において、S−MNTX以外の剤は、抗ウイルス剤、抗生剤、抗真菌剤、抗菌剤、防腐剤、抗原虫剤、抗寄生虫剤、抗炎症剤、血管収縮剤、局所的麻酔剤、止痢剤、抗痛覚過敏剤、またはこれらの組合せである。
【0038】
本発明の別の局面によれば、R−MNTXとS−MNTXとの混合物中のS−MNTXを分析するための方法が提供される。方法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行うこと、およびS−MNTXをクロマトグラフィーカラムに標準物質として適用することを包含する。方法は、好ましくは、S−MNTXおよびR−MNTXの両方を標準物質として適用して相対的保持/溶出時間を決定することを含む。RとS−MNTXとの相対的保持時間は、そこにおいて開示される。本発明の一局面において、クロマトグラフィーは、2種の溶媒、溶媒Aおよび溶媒Bを用いて行われ、溶媒Aは水性溶媒であり、溶媒Bはメタノール性溶媒であり、AおよびBの両方がトリフルオロ酢酸(TFA)を含む。好ましくは、Aは0.1%水性TFAであり、Bは0.1%メタノール性TFAである。重要な態様において、カラムは、結合した、末端がキャップ(end-capped)されたシリカを含む。重要な態様において、カラムゲルの孔サイズは5マイクロメートルである。最も好ましい態様において、カラム、流速、および勾配のプログラムは、以下の通りである:
【0039】
【表1】
【0040】
また、前述のHPLCを使用して、作成されたクロマトグラム中の対応するRおよびSの曲線の下の面積を決定することによって、S−MNTXおよびR−MNTXの相対量を決定してもよい。
【0041】
本発明の別の局面によれば、(オピオイドアンタゴニストである)R−MNTXを含まない(オピオイドアゴニストである)S−MNTXの製造を確実にするための方法が提供される。方法は、アゴニスト活性を意図されるS−MNTXの医薬製剤が、S−MNTXの活性に相反する化合物を混入しないという保証を、初めて可能にする。本発明のこの局面において、S−MNTXを製造するための方法が提供される。
【0042】
方法は、以下を含む:(a)S−MNTXを含む第一の組成物を得ること、(b)クロマトグラフィー、再結晶、またはこれらの組合せによって、前記第一の組成物を精製すること、(c)R−MNTXを標準物質として使用して、精製された第一の組成物のサンプルについてHPLCを行うこと、ならびに(d)前記サンプル中のR−MNTXの存在または不在を決定すること。重要な態様において、R−MNTXおよびS−MNTXの両方を標準物質として使用して、例えば、R−MNTXとS−MNTXとの相対的保持時間を決定する。一態様において、精製は、多重再結晶の工程または多重クロマトグラフィーの工程である。別の態様において、精製は、HPLCによって決定されるものとしてのR−MNTXがサンプルから存在しなくなるまで行われる。
【0043】
しかし、本発明のいくつかの局面において「精製された第一の組成物」とは必ずしも検出可能なR−MNTXを含まないものではないことが理解されるべきである。かかるR−MNTXの存在は、例えば、純粋なS−MNTXを所望する場合はさらなる精製工程を行うべきであることを示し得る。方法は、HPLCで検出可能なR−MNTXを含まない精製された第一の組成物をパッケージすることをさらに含んでもよい。方法は、パッケージされた精製された第一の組成物に、またはそれと共に、該パッケージされた精製された第一の組成物がHPLCによって検出可能なR−MNTXを含まないことを示す証印を提供することをさらに含んでもよい。方法は、本明細書において記載される状態のいずれかを処置するための薬学的有効量をパッケージすることをさらに含んでもよい。S−MNTXを含む第一の組成物は、本明細書において記載される方法によって得ることができる。純粋なR−MNTXは、本明細書において記載される方法によって得ることができる。
【0044】
本発明の別の局面によれば、パッケージされた製品が提供される。パッケージは、S−MNTXを含む組成物を含み、組成物は、HPLCによって検出可能なR−MNTXを含まず、パッケージ上のまたはパッケージに含まれる証印は、組成物が検出可能なR−MNTXを含まないことを示す。組成物は、多様な形態を呈してよく、かかる形態として、実験室での実験における使用のための標準物質、製造プロトコルにおける使用のための標準物質、または医薬組成物が挙げられるが、これらに限定されない。組成物が医薬組成物である場合、証印の一つの重要な形態は、医薬製剤の特徴を記載するラベルへの書き込みまたはパッケージ挿入物である。
【0045】
証印は、組成物がR−MNTXを含まないことを直接的に示すか、または、同じことを、例えば組成物が純粋なまたは100%のS−MNTXであることを記すことによって、間接的に示す。医薬組成物は、本明細書において記載される状態のいずれを処置するためのものであってもよい。医薬組成物は、純粋なS−MNTXの有効量を含み、この要旨において記されるものとして以下に記載される形態のいずれをとってもよく、かかる形態として、溶液、固体、半固体、腸溶性コーティングされた材料などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のこれらの局面および他の局面を、以下により詳細に記載する。
【0046】
詳細な説明
本発明は、化合物であるS−MNTX、S−MNTXの立体選択的合成のための合成経路、実質的に純粋なS−MNTX、実質的に純粋なS−MNTXの結晶、S−MNTXの分析の方法、実質的に純粋なS−MNTXを含む医薬製剤、およびこれらの使用のための方法を提供する。
【0047】
S−MNTXは、(S)−N−(シクロプロピルメチル)−ノルオキシモルホンメチル塩とも称され、式Iの構造:
【化2】
を有する。
【0048】
ここで、Xは対イオンである。対イオンは、双性イオンを含む任意の対イオンであってよい。好ましくは対イオンは、薬学的に受容可能なものである。対イオンとして、ハライド、硫酸、リン酸、硝酸、またはアニオン性に荷電された有機種が挙げられる。ハライドは、ヨウ化物、臭化物、塩化物、フッ化物またはこれらの組合せであり得る。一態様において、ハライドはヨウ化物である。好ましい態様において、ハライドは臭化物である。アニオン性に荷電された種は、スルホン酸またはカルボン酸であり得る。
【0049】
S−MNTXの製造の方法およびアゴニスト特性は、ノルオキシモルホンのS−四級誘導体であって誘導体がシクロプロピルメチルでないものに対しても等価に適用できると見なされている。したがって、本発明は、ノルオキシモルホンのS−四級誘導体を包含することを意図され、ここで、シクロプロピルメチルは、部分Rで置換され、Rは、炭素と水素のみからなる1〜20炭素のヒドロカルビル基であり、かかるヒドロカルビル基として、無置換、または炭化水素で置換された、または窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、硫黄もしくはハロゲンなどの1個以上の原子で置換された、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリールが挙げられる(PCT出願WO 2004/043964において記載される)。重要な態様において、Rは、アリル、クロロアリル、またはプロパルギルである。重要な態様において、ヒドロカルビル基は、4〜10個の炭素を含む。
【0050】
「アルキル」は一般に、1〜約10個の炭素原子を鎖中に有する直鎖状、分枝または環状の脂肪族炭化水素基、ならびにその範囲の全ての組合せおよび副組合せを指す。「分枝」は、メチル、エチルまたはプロピルなどの低級アルキル基が直鎖アルキル鎖に付いている、アルキル基を指す。特定の好ましい態様において、アルキル基はC1〜C5アルキル基、すなわち1〜約5個の炭素を有する分枝または直鎖アルキル基である。他の好ましい態様において、アルキル基はC1〜C3アルキル基、すなわち1〜約3個の炭素を有する分枝または直鎖アルキル基である。例となるアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルを含む。「低級アルキル」は、1〜約6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。好ましいアルキル基は、1〜約3個の炭素の低級アルキル基を含む。
【0051】
「アルキル化剤」は、開始材料と反応し得、開始材料にアルキル基を結合し得、典型的には共有結合し得る化合物である。アルキル化剤は、典型的には、開始材料への付着の時にアルキル基から分離する脱離基を含む。脱離基は、例えば、ハロゲン、ハロゲン化スルホネートまたはハロゲン化アセテートであってもよい。アルキル化剤の例は、ヨウ化シクロプロピルメチルである。
【0052】
「有機溶媒」は、当業者にとって共通の一般的な意味を有している。本発明において有用な、例となる有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、ヘキサン、エーテル、クロロホルム、酢酸、アセトニトリル、クロロホルム、シクロヘキサン、メタノール、およびトルエンを含むが、これらに限られない。無水有機溶媒は含まれる。
【0053】
「双極性非プロトン性」溶媒は、不安定水素原子を供与することができず、永久双極子モーメントを示すプロトン受容溶媒である。例には、アセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびN−メチルピロリドンを含む。
【0054】
「双極性プロトン性」溶媒は、不安定水素原子を供与することができ、永久双極子モーメントを示すものである。例には、水、2−プロパノール、エタノール、メタノールなどのアルコール類、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸などのカルボン酸を含む。
【0055】
S−MNTXは、R−MNTXの特性とは異なる特性およびS−とR−MNTXとの混合物とは異なる特性を示す。これらの特性は、クロマトグラフィーカラム上での移動性、生物学的および機能的活性、ならびに結晶構造を含む。インビボでのクリアランス速度、副作用プロフィールなどもまた、R−MNTXまたはR−MNTXとS−MNTXとの混合物とは異なり得ることが考えられる。本明細書において発見され主張されるように、純粋なS−MNTXは、胃腸での通過の阻害によって示されるように、末梢オピオイド受容体のアゴニストとして振る舞う。結果として、S−MNTXの活性は、R−MNTXおよびS−MNTXの両方を含む混合物中のR−MNTXによって妨害または拮抗され得る。したがって、S−MNTXを、単離され、実質的に純粋な形態で有することが非常に望ましい。
【0056】
本発明の一局面において、S−MNTXの合成のための方法が提供される。S−MNTXは、クロマトグラフィー技術に基づいて、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、98.5%、99%、および99.5%の曲線下面積(AUC)より高いかこれらに等しい純度で提供され得る。好ましい態様において、S−MNTXの純度は98%またはそれより高い。精製されたS−MNTX中のR−MNTXの量は、約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、3%、2%、1%、0.5%、0.3%、0.2%、0.1%(AUC)より低いかまたはこれらに等しくても、または本明細書において記載されるクロマトグラフィー技術によって検出され得ないものであってもよい。当業者は、この方法の検出は、使用された技術の検出および定量化の限度に依存することを理解する。定量化の限度は、実験室、分析者、機器および試薬のロットの変化に関係なく一貫して測定され得、報告され得る、R−MNTXの最低量である。検出限度は、検出可能であるが必ずしも正確な値として定量されないサンプル中のR−MNTXの最低量である。本発明の一態様において、検出限度は0.1%であり、定量化の限度は0.2%である。なお別の態様において、検出限度は0.02%であり、定量化の限度は0.05%である。
【0057】
S−MNTXを合成するために多様な合成プロトコルが試みられた。合成の多くは、S−MNTXを製造することに失敗するか、許容可能な純度のレベルまたは収率でS−MNTXを合成することに失敗した。本発明の成功方法においては、S−MNTXは、オキシモルホンのフェノールのOH基を保護しないまま、オキシモルホンを直接的にアルキル化することを介して合成され得る(図2)。オキシモルホンを、メチルシクロプロパン種のインドメチルシクロプロパンと反応させた。生じるS−MNTXの塩は、ヨウ化物などの対イオンを含み、これを、次いで、臭化物などの好ましい対イオンと交換してもよい。S−MNTXの合成における開始材料であるオキシモルホンは、例えば三臭化ホウ素によるオキシコドンの脱メチル化を介して、約95%の収率で得ることができる。あるいは、オキシモルホンを市販で入手してもよい。
【0058】
アルキル化反応は、溶媒または溶媒系中で行われ得、溶媒または溶媒系は無水であってもよい。溶媒系は、単一の溶媒であっても2種類以上の溶媒の組合せを含んでもよい。好適な溶媒系として、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、アセトン、1,4−ジオキサン、およびアセトニトリルなどの双極性非プロトン溶媒、ならびに2−プロパノールなどの双極性プロトン溶媒が挙げられる。溶媒系はまた、双極性非プロトン溶媒を、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン(グリム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル(メチル1,1,−ジメチルエチルエーテル、または2−メチル−2−メトキシプロパン)ジエチルエーテルなどの脂肪族エーテルと組み合わせたものを含んでもよく、他の極性溶媒もまたいくつかの態様において含まれ得る。例えば、溶媒系は、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン(3−ペンタノン)、およびt−ブチルメチルケトン(3,3−ジメチルブタン−2−オン)を含んでもよい。アルキル化溶媒系はまた、上記の化合物のいずれかの脂肪族または脂環式の同族体を含んでもよい。溶媒系は、2種類以上の溶媒を任意の比率で含んでもよく、特定のアルキル化反応のための適当な比率は、通常の実験を介して決定することができる。前記にも関わらず、驚くべきことに、NMPが好ましい溶媒であると判明した。
【0059】
溶媒は、約1、2、3、4、5、10またはこれ以上の容積より少ないか、多いか、またはこれらの容積と等しい比率で使用され得る。いくつかの場合において、例えば、生成物が液液抽出を用いて溶媒から移動されることになっている場合、または生成物が結晶化されることになっている場合、または溶媒が生成物から取り除かれることになっている場合、使用される溶媒の量を最少化する事が好ましい。
【0060】
アルキル化剤は、多様なモル比、例えば、開始材料の1当量あたり8当量、12当量、16当量、20当量、または24当量より高くで、開始材料に添加してよい。いくつかの例において、反応効率(S−MNTXの製造)は、使用されるアルキル化剤の量に実質的に非依存的であり得ることを見いだした。
【0061】
一組の態様において、アルキル化を、フィンケルスタイン(Finkelstein)反応を使用して行ってもよい。塩化シクロプロピルメチルなどのアルキルハライドを、ヨウ化ナトリウムなどのハライド塩と組み合わせて、ヨウ化シクロプロピルメチルなどの反応性のハロゲン化されたアルキル化剤を連続的に供給してもよく、これは、消費されれば補充する。
【0062】
開始材料は、大気圧で開放容器中でアルキル化しても、圧力下でアルキル化してもよい。反応は、当該分野において公知であるような方法/設備を使用して、反応時間にわたって温度が規定の温度で維持されるかまたは制御されるように行われる。アルキル化反応を通して制御された温度を維持するための一つの装置は、加熱機/冷却機ユニットである。アルキル化反応を通して温度を制御することは、温度の変動を抑制するかまたは低減する。一態様において、温度は、110℃を超えず、好ましくは100℃を超えない。例えば、オキシモルホンは、開放容器または閉鎖容器中で、50〜100℃、60〜90℃、65〜75℃の範囲にわたって、アルキル化され得る。反応は、約22時間まで進行させられ、好ましくは約15〜22時間、より好ましくは約16〜20時間である。マイクロ波照射によって反応時間を短縮され得ることが企図される。一態様において、反応物を、閉鎖容器中に70℃で約17時間位置させ、約1:1のS−MNTXに対するオキシモルホンの比を有する生成物を生成する。好ましい態様においては、アルキル化は、70℃で約20時間、光への暴露を低減するために覆われた開放容器(大気圧)中で行う。
【0063】
いくつかの態様において、S−MNTXを、S−MNTXが生成された溶媒から単離する。例えば、S−MNTXを含有する残留物から溶媒を除去するか、または全てのS−MNTXをアルキル化溶媒から移動溶媒へ移動する。移動溶媒は、極性であっても非極性であってもよく、100℃より低い沸点を有してもよい。移動溶媒として、エステル、アルデヒド、エーテル、アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、およびハロゲン化炭化水素が挙げられる。具体的な移動溶媒として、例えば、ジオキサン、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、アセトニトリル、水、水性HBr、ヘプタン、およびMTBEが挙げられる。一態様において、イソプロピルアセテートとジオキサンとの混合物を、S−MNTXをNMPから少なくとも部分的に単離するために用いてもよい。これらの溶媒の1種以上をNMP中のS−MNTXの溶液と混合すると、明色の固体が生じ、これは時間と共に油となる。
【0064】
溶媒から得られるあらゆる残留物を精査(work up)し、生成物であるS−MNTXを精製して単離してもよい。精製および単離は、当業者に公知の方法を用いて、例えば、クロマトグラフィー、再結晶、または当該分野において公知の種々の分離技術の組合せなどの分離技術を用いることによって、行うことができる。一態様において、C18カラムを使用するフラッシュ・クロマトグラフィーを、0.2%のHBrで改変された水性メタノール溶媒とともに用いてもよい。メタノール含有量は、例えば、約2.5%から約50%まで変化してもよい。好ましい態様において、S−MNTXを再結晶を用いて精製する。生成物の所望の純度が得られるまでプロセスを繰り返してもよい。
【0065】
一態様において、所望の純度のレベルを達成するために、S−MNTXを、少なくとも2回、3回、または4回、またはそれ以上の回数再結晶する。例えば、クロマトグラフィー技術に基づいて、S−MNTXを、50%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、98.5%、99.8%(AUC)より高いかこれらと同等の純度で得ることができる。不純物として、開始材料、0.2%より低いオキシモルホンが挙げられるが、検出可能なR−MNTXは含まれない。再結晶は、単一の溶媒または溶媒の組合せを使用して達成する。好ましい再結晶は、S−MNTXを極性溶媒中で溶解し、次いでより極性の低い共溶媒を添加することによって達成する。より好ましい態様においては、S−MNTXを、メタノールおよび共溶媒CH2Cl2/IPA(6:1)からの再結晶によって精製する。再結晶を、所望の純度を達成するまで繰り返す。
【0066】
S−MNTXおよびその誘導体は、塩の形態において製造される。S−MNTXの双性イオンなどの誘導体が含まれる。S−MNTXは、図1に示すとおり、正に荷電した四級アンモニウム基を含んでもよく、一価または多価のアニオンなどの対イオンと対になっていてもよい。これらのアニオンは、例えば、ハライド、硫酸、リン酸、硝酸、ならびにスルホン酸およびカルボン酸などのアニオン性に荷電した有機種を含んでもよい。好ましいアニオンとして、臭化物、塩化物、ヨウ化物、フッ化物、及びこれらの組合せが挙げられる。いくつかの態様において、臭化物が最も好ましい。例えば、反応性、可溶性、安定性、活性、コスト、アベイラビリティおよび毒性などの要因に基づいて、特定のアニオンを選んでもよい。
【0067】
S−MNTX塩の対イオンを、代替的な対イオンと交換してもよい。代替的対イオンを所望する場合、S−MNTX塩の水性溶液を、アニオン交換樹脂カラムに通して、S−MNTX塩の対イオンの一部または全部を好ましい代替的対イオンと交換してもよい。アニオン交換樹脂の例として、Bio-Radから市販される100〜200のメッシュグレードのAG 1−X8が挙げられる。別の態様において、S−MNTXのカチオンをカチオン交換樹脂で保持して、次いで、臭素イオン、塩素イオンなどの好ましいアニオンを含む塩溶液でS−MNTXを樹脂から除去して、溶液中で所望のS−MNTX塩を形成することによって、S−MNTXのカチオン交換することができる。
【0068】
本発明のS−MNTXは、多数の用途を有する。本発明の一局面は、クロマトグラフィー分離においてS−MNTXをサンプル中の他の成分から同定して区別する際の、クロマトグラフィー標準物質としてのS−MNTXである。本発明の別の局面は、S−MNTXとR−MNTXとを含む混合物中のS−MNTXを同定して区別する際のクロマトグラフィー標準物質としてのS−MNTXの使用である。単離されたS−MNTXもまた、反応混合物中のR−MNTXからS−MNTXを精製して区別するためのプロトコルの開発において有用である。かかるプロトコルは、本明細書において、また、同日に出願された表題を「(R)−N−メチルナルトレキソンの合成」とした共係属中の出願(事件整理番号P0453.70119US00)において記載されている。
【0069】
S−MNTXはまた、キットの形態において、標準物質としての用途についての指示書と共に、提供されてもよい。キットは、標準(authentic)のR−MNTXを標準物質としてさらに含んでもよい。標準物質としての用途のためのS−MNTXは、好ましくは99.8%またはこれより高い純度を有し、検出可能なR−MNTXを含まない。
【0070】
本発明の一局面は、MNTXの溶液中のS−MNTXとR−MNTXとを分離して同定する方法である。S−MNTXはまた、組成物または混合物中のS−MNTXの量を定量するHPLCアッセイ法において有用であり、ここで、この方法は、組成物または混合物のサンプルをクロマトグラフィーカラムに適用すること、組成物または混合物の成分を分離すること、およびサンプル中の分離成分のパーセンテージをS−MNTXの標準濃度のパーセンテージと比較することによってサンプル中のS−MNTXの量を計算すること、を包含する。方法は、逆相クロマトグラフィーにおいて特に有用である。本発明のS−MNTXは、そのオピオイド受容体に対するアゴニスト活性の利点により、本明細書において記載されるようなインビトロおよびインビボのオピオイド受容体アッセイにおけるアゴニスト活性の標準物質として有用である。
【0071】
S−MNTXを、1種以上の末梢オピオイド受容体によって媒介される状態を調節するために、予防的にまたは治療的に、末梢オピオイド受容体、特に末梢μオピオイド受容体をアゴナイズ(agonize)するために用いてもよい。S−MNTXを投与される被験体は、急性的に、慢性的に、または必要性に基づいて処置を受けることができる。
【0072】
S−MNTXが投与される被験体は、脊椎動物、特に哺乳動物である。一態様において、哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ブタ、および齧歯類である。好ましい態様において、哺乳類はヒトである。
【0073】
μおよび他のオピオイド受容体は、胃腸管(gastrointestinal tract)中に存在する。GI管中のオピオイド受容体の主要なクラスのうち、μ受容体が主としてGIの活性の調節に関与する。κオピオイド受容体が役割を有する可能性がある(Manara Lら、 Ann.Rev.Phamacol.Toxicol,1985,25:249-73)。一般に、S−MNTXは、オピオイド受容体、特に末梢オピオイド受容体の活性化または調節の必要性と関連する状態を予防または処置するために使用される。重要であるのは、GI管中のオピオイド受容体、特にμオピオイド受容体の活性化または調節の必要性と関連する状態を予防または処置するためのS−MNTXの使用である。予防または処置され得るかかる状態として、下痢が挙げられ、炎症性腸症候群ならびに摂食および消化の障害の特定の形態を含む胃腸機能不全の特定の形態を予防または抑制するために使用される。
【0074】
一局面において、S−MNTXを、下痢を処置するために用いてもよい。胃腸機能は、1種以上のオピオイド受容体ならびに内因性オピオイドによって、少なくとも部分的に調節される。オピオイドアンタゴニストは、胃腸運動を増加させることが知られており、したがって、便秘のための処置として効果的に使用され得る。一方、オピオイドアゴニスト、特にロペラミドなどの末梢オピオイドアゴニストは、胃腸運動を低下させることが知られており、哺乳動物において下痢を処置する際に有用である。出願人らによって発見されたオピオイドアゴニストとしてのS−MNTXは、下痢のための処置を必要とする患者に投与することができる。下痢は、本明細書において使用される場合、以下の1つ以上として定義される:1)便の硬さがゆるい;2)1日当たり、3回より多くの便通;および/または3)1日当たり、200g(150ml)以上の便通。S−MNTXは、腸管内容物の通過時間を延長するために有効な量で投与する。腸管内容物の通過時間の延長は、排泄物の容積の減少、排泄物の粘性および容積密度の増加、ならびに体液および電解質の損失の減少をもたらす。
【0075】
本発明のS−MNTXは、そのオピオイドアゴニスト活性の利点により、慢性機能性(特発性)下痢を含む急性または慢性の形態の下痢を含む、多様な病因を有する下痢の予防および処置において有用である。
急性下痢または短期の下痢は、本明細書において使用される場合、続けて1週間未満、代表的には1〜3日続く下痢である。慢性下痢、継続的下痢または長期の下痢は、本明細書において使用される場合、1週間または1週間より長い期間続く下痢である。慢性下痢は、数ヶ月または数年もの間続き得、継続的または断続的であり得る。S−MNTXを使用する処置の恩恵を受け得る多様な形態及び原因の下痢として、以下に記載するものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0076】
任意のウイルスによって引き起こされるウイルス性胃腸炎または「胃インフルエンザ」は、S−MNTXを使用する処置に適しており、ロタウイルス、ノーウォーク様ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、およびアデノウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
細菌および寄生虫で汚染された食物を食べるまたは水を飲むことから生じる食中毒および旅行者下痢は、S−MNTXを使用する処置に適している。一般的に下痢を引き起こす細菌として、Escherichia coli、サルモネラ属、赤痢菌属、クロストリジウム属、カンピロバクター属、エルシニア属、およびリステリア属が挙げられる。下痢を引き起こし得る寄生虫として、Giardia lamblia、Entamaeba histolytica、およびクリプトストリジウム属が挙げられる。下痢を引き起こし得る真菌として、カンジダ属が挙げられる。
【0077】
特定の医学的状態もまた、下痢を引き起こし得、乳糖不耐性、セリアック病(スプルーまたはグルテン吸収不良)、嚢胞性線維症、牛乳または豆もしくは果実などの他の特定の食物中のタンパク質に対する不耐性などの吸収不良症候群が挙げられる。特定の食物に対するアレルギーは、下痢をもたらす胃腸刺激および/またはアレルギー反応を引き起こし得る別の状態である。代表的な食物アレルゲンとして、ピーナッツ、トウモロコシ、および貝が挙げられる。これらの医学的状態によって引き起こされるかまたは関連する下痢は、本発明のS−MNTXを使用する処置に適している。
【0078】
下痢、特に慢性下痢をもたらす他の医学的状態として、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患が挙げられ、刺激性腸症候群(IBS)および免疫不全もまた、下痢を予防または処置するためにS−MNTXの恩恵を受ける。
S−MNTXは、抗生物質、マグネシウムを含む緩下剤、癌の処置のための化学療法剤、および高用量の放射線治療などの医薬および/または治療によって引き起こされる下痢の予防または処置において有用である。
下痢はまた、ゾリンジャー・エリソン症候群、自律神経ニューロパシーまたは糖尿病性ニューロパシーなどの神経障害、カルチノイド症候群、血管作用性腸管ポリペプチド分泌腫瘍、ならびに、短腸症候群、胃切除術、イレオストミーまたはコロストミーを伴うまたは伴わない腸切除術、および胆嚢の除去を含む、胃腸管の解剖学的状態と関連する。かかる状態は、S−MNTXを使用する処置に適している。
【0079】
S−MNTXは任意の経路を通して、経口または非経口で投与することができ、下痢の予防または処置のためのかかる経路として、腹腔内、静脈内、膣内、直腸内、筋肉内、皮下、アエロゾル、鼻用スプレー、経粘膜、経皮、局所、結腸などが挙げられる。
S−MNTXはまた、被験体においてイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の容積を減少させる方法において有用である。S−MNTXは、オストミーからの排出物の容積を、S−MNTXの非存在下におけるオストミーからの排泄の容積と比較して減少させるために有効な量で提供される。S−MNTXはまた、オストミーからの排泄の速度を制御する上で有用であり、特に、排泄の速度の低下を必要とする被験体において排出の速度を低下させる上で有用である。
【0080】
本発明の別の局面によれば、被験体において胃腸運動を抑制させるための方法が提供される。方法は、かかる抑制を必要とする被験体に、S−MNTXを含む医薬組成物を、その被験体において胃腸運動を抑制するために有効な量で投与することを包含する。本発明によれば、S−MNTXは、S−MNTXでない別の運動抑制剤と組み合わせて投与されてもよい。一態様において、剤は、オピオイドまたはオピオイドアゴニストである。オピオイドまたはオピオイドアゴニストは、上に記載される。別の態様において、剤はオピオイドまたはオピオイドアゴニストではない。
【0081】
かかる非オピオイド胃腸運動抑制剤として、例えば、シサプリド、制酸剤、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ポリカルボフィル、シメチコン、ヒヨスチアミン、アトロピン、フラゾリドン、ジフェノキシン、オクトレオチド、ランソプラゾール、カオリン、ペクチン、活性炭、スルファグアニジン、スクシニルスルファチアゾール、フタリルスルファチアゾール、アルミン酸ビスマス、亜炭酸ビスマス、亜クエン酸ビスマス、クエン酸ビスマス、ビスマス酸二クエン酸三カリウム、酒石酸ビスマス、亜サリチル酸ビスマス、亜硝酸ビスマス、没食子酸ビスマスなどのビスマス含有調製物、オピウムチンキ(パレゴリック)、生薬、植物由来止痢剤が挙げられる。さらなるかかる剤として、ベンゾジアゼピン化合物、鎮痙剤、選択的セロトニン再取込阻害剤(SSRI)、コレシストキニン(CCK)受容体アンタゴニスト、ナチュラルキラー(NK)受容体アンタゴニスト、コルチコトロピン放出因子(CRF)受容体アンタゴニスト、GI弛緩剤、抗ガス化合物、多硫酸ペントサン、制吐性ドーパミンD2アンタゴニスト、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(ロイプロリド)、コルチコトロピン−1アンタゴニスト、ニューロキニン2受容体アンタゴニスト、コレシストキニン−1アンタゴニスト、ベータ遮断薬、抗食道逆流剤、抗炎症剤、5HT1アゴニスト、5HT3アンタゴニスト、5HT4アンタゴニスト、胆汁酸塩隔絶剤、バルク形成剤、α2アドレナリンアゴニスト、三環系抗うつ剤などの抗うつ剤が挙げられる。
【0082】
さらなるかかる剤として、抗ムスカリン剤、神経節遮断剤、ホルモンおよびホルモンアナログ、ならびにモチリン受容体アンタゴニストが挙げられる。抗ムスカリン剤として、ベラドンナアルカロイド、四級アンモニウム抗ムスカリン化合物、および三級アミン抗ムスカリン化合物が挙げられる。ベラドンナアルカロイドの例として、ベラドンナ葉抽出物、ベラドンナチンキ、およびベラドンナ抽出物が挙げられる。四級アンモニウム抗ムスカリン剤の例としては、アニソトロピン(Anisotropine)またはアニソトロピン臭化メチル(Valpin)、クリジニウム(Clidinium)または臭化クリジニウム(Quarzan)、グリコピロレート(Robinul)、ヘキソサイクリウム硫酸メチル(Tral)、ホマトロピン、イプラトロピウムまたは臭化イプラトロピウム、イソプロパミドまたはヨウ化イソプロパミド(Darbid)、メペンゾラートまたは臭化メペンゾラート(Cantil)、メタンテリンまたは臭化メタンテリン(Banthine)、メトスコポラミンまたは臭化メトスコポラミン(Pamine)、オキシフェノニウム、およびプロパンテリンまたは臭化プロパンテリンが挙げられる。
【0083】
三級アミン抗ムスカリン剤の例として、アトロピン、ジシクロミンまたは塩酸ジシクロミン(Bentylおよび他)、塩酸フラボキセート(Urispas)、オキシプチニンまたは塩化オキシブチニン(Ditropan)、オキシフェンサイクリミンまたは塩酸オキシフェンサイクリミン(Daricon)、プロピベリン、スコポラミン、トルテロジン、およびトリジヘキセチルまたは塩化トリジヘキセチル(Pathilon)が挙げられる。他の抗ムスカリン剤として、ピレンゼピン、テレンゼピン、AF-DX116、メトクトラミン、ヒンバシン(Himbacine)およびヘキサヒドロシルアジフェニドール(Hexahydrosiladifenidol)が挙げられる。神経節遮断剤として、ヘキサメトニウム、メカミラミン、テトラエチルアンモニウムおよびアセチルコリンなどの合成アミンが挙げられる。抗胃腸運動剤であるホルモンおよびホルモンアナログの例として:ソマトスタチンおよびソマトスタチン受容体アゴニストが挙げられる。ソマトスタチンのアナログの例として、オクトレオチド(例えば、Sandostatin(登録商標))およびバプレオチド(vapreotide)が挙げられる。モチリンアンタゴニストとして、(Phe3、Leu-13)ブタモチリンが挙げられる(214th American Chemical Society (ACS) Meeting (Part V);Highlights from Medicinal Chemistry Poster Session, Wednesday 10 September, Las Vegas, Nevada, (1997), Iddb Meeting Report September 7-11 (1997);およびANQ-1 1 125, Peeters T.L., et al., Biochern. Biophys. Res. Commun., Vol. 198(2), pp. 411-416 (1994))。
【0084】
別の局面において、S−MNTXを、摂食および消化の障害を処置するために使用してもよい。本発明によるS−MNTXを使用する処置に適している摂食障害および消化障害として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:例えば、妊娠、癌、インフルエンザ、HCVまたはHIVなどの感染症によって誘導されるか、異化、悪液質(cachexy)、食欲不振、特に神経性食欲不振症、食欲不振症(dysorexia)、ジスポンデローシス(dysponderosis)、体脂肪肥満、過食症、肥満、胃不全麻痺、特に、神経性胃不全麻痺、糖尿病性胃不全麻痺、筋原性胃不全麻痺、または薬物、胃アトニー、胃麻痺(gastroparalysis)もしくは腸不全麻痺(enteroparesis)によって誘導される胃不全麻痺、ならびに胃腸管の狭窄、特に幽門の狭窄の結果として誘導されるか、病的なバランスを欠いた食欲の調節、食欲の消失または減退。
【0085】
疼痛は、多様に定義されてきた。例えば、疼痛は、被験体による離脱(withdrawal)反応を引き起こす、被験体による侵害刺激の知覚として定義することができる。鎮痛は、疼痛知覚の減少である。強い刺激に対する動物の反応を、一般的な行動または運動機能を鈍らせることなく選択的に遮断する剤は、鎮痛剤と称される。オピエートおよびオピオイドアゴニストは、特定のオピオイド受容体との相互作用を介して、疼痛に作用する。S−MNTXがラットにおいて胃腸通過に対してオピエートアゴニスト活性を有するという発見により、S−MNTXを疼痛の治療において使用することについての論理的根拠が存在する。
【0086】
一般に、本発明によるS−MNTXおよびその誘導体の投与は、広範な障害、状態、または疾患のいずれかに関連する疼痛の管理を促進するために用いることができる。「疼痛」とは、本明細書において使用される場合、他に示されない限り、あらゆる持続期間および頻度の疼痛を包含することを意味し、急性疼痛、慢性疼痛、間欠的疼痛などが挙げられるがこれらに限定されない。疼痛の原因は、同定可能であっても同定不可能であってもよい。同定可能な場合、疼痛の原因は、例えば、悪性、非悪性、感染性、非感染性、または自己免疫性の原因である。一態様は、短期治療、例えば歯科治療、骨折、外来の外科術を要する疾患、障害または状態であって、治療が数時間から3日間の期間にわたる処置を含むものと関連する疼痛の管理である。
【0087】
特に重要であるのは、長期の治療を要する障害、疾患または状態であって、例えば慢性および/または持続性の疾患または状態であって、治療が数日(例えば、約3日間から10日間)、数週間(例えば、約2週間または4週間から6週間)、数ヶ月または数年まで、被験体の残りの人生までを含む期間にわたる処置を含むものと関連する疼痛の管理である。現在疾患または状態を罹患していないが、かかる疾患または状態に感受性である被験体もまた、本発明の組成物または方法を使用する(例えば、外傷の外科術に先立って)予防的疼痛管理の恩恵を受けることができる。本発明による治療に適している疼痛として、無痛の間期と交互の疼痛の長期エピソード、または重篤度が変化する実質的に緩解しない疼痛が挙げられる。
【0088】
一般に、疼痛は、侵害受容性、身体的(somatogenic)、神経因性、または心因性であり得る。身体的疼痛は、筋肉性または骨格性(すなわち、骨関節炎、腰背部痛、外傷後、筋肉膜痛)、内臓性(すなわち、膵臓炎、潰瘍、刺激性腸)、虚血性(すなわち、閉塞性動脈硬化症)、または癌の進行と関連するもの(例えば、悪性または非悪性のもの)であり得る。神経因性疼痛は、外傷後または手術後の神経痛に起因し得、ニューロパシーと関連し得(すなわち、糖尿病、毒性など)、ならびに、神経絞扼、顔面神経痛、会陰神経痛、切断術後、視床性、灼熱痛、および反射性交感神経性ジストロフィーに関連し得る。
【0089】
本発明による管理に適した疼痛の状態、疾患、および原因として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:癌の疼痛(例えば、悪性または非悪性の癌)、炎症性疾患の疼痛、ニューロパシーの疼痛、手術後の疼痛、医原性疼痛(例えば、侵襲法または高用量放射線治療の後の疼痛、例えば、運動しやすさの低下および実質的な疼痛をもたらす瘢痕組織形成)、複合性局所疼痛症候群、術後不安定性腰痛(failed back pain)、軟組織疼痛、関節および骨の疼痛、中枢性疼痛、損傷(例えば、衰弱性損傷(debilitating injury)、例えば、対麻痺、四肢麻痺など、ならびに(例えば、背部、頸部、脊椎、関節、脚、腕、手、足などへの)非衰弱性損傷)、関節炎性疼痛(例えば、関節リウマチ、骨関節炎、未知の病因の関節炎症候群など)、遺伝疾患(例えば、鎌状赤血球貧血)、感染性疾患およびその結果生じる症候群(例えば、ライム病、AIDSなど)、頭痛(例えば、偏頭痛)、灼熱痛、知覚過敏、交感神経性ジストロフィー、幻肢症候群、脱神経など。疼痛は、身体の任意の部分(単数または複数)、例えば、筋骨格系、内臓器官、皮膚、神経系などと関連し得る。
【0090】
本発明の方法を用いて、オピオイドに対してナイーブな患者またはオピオイドに対してもはやナイーブでない患者において疼痛を管理してもよい。例示的なオピオイドに対してナイーブな患者は、疼痛管理のための長期のオピオイド治療を受けたことがない患者である。例示的なオピオイドに対してもはやナイーブでない患者は、短期または長期のオピオイド治療を受けたことがあり、耐性、依存性、または他の副作用を発症している患者である。例えば、経口、静脈内もしくは髄腔内のモルヒネ、経皮フェンタニル貼付剤、または従来投与されているフェンタニル、モルヒネ、もしくは他のオピオイドの皮下注入によって難治性の悪性副作用を有する患者は、S−MNTXおよびその誘導体の送達により、良好な鎮痛を達成し、好ましい副作用プロフィールを維持することができる。
【0091】
用語「疼痛の管理または処置」とは、ここで使用される場合、主観的判断基準、客観的判断基準またはこれらの両方により、被験体をより快適にするような、疼痛の退縮、抑制または緩和を一般的に記載する。一般的に、疼痛は、患者の報告によって主観的に評価され、保健の専門家が、患者の年齢、文化的背景、環境、および疼痛に対する個人の主観的反応を変化させることが知られている他の心理学的背景要因を考慮する。
【0092】
上記の通り、S−MNTXを、疼痛緩和剤である治療剤を非限定的に含むS−MNTXではない治療剤とともに投与してもよい。一態様において、疼痛緩和剤は、オピオイドまたはオピオイドアゴニストである。別の態様において、疼痛緩和剤は、コルチコステロイドまたは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの非オピオイド性疼痛緩和剤である。疼痛緩和剤として、以下が挙げられる:塩酸アルフェンタニル;アミノベンゾエートカリウム;アミノベンゾエートナトリウム;アニドキシム(Anidoxime);アニレリジン;塩酸アニレリジン;塩酸アニロパム(Anilopam);アニロラク(Anirolac);アンチピリン;アスピリン;ベノキサロフェン;塩酸ベンジダミン;塩酸ビシファジン(Bicifadine);塩酸ブリフェンタニル;マレイン酸ブロマドリン(Bromadoline);ブロムフェナクナトリウム;塩酸ブプレノルフィン;ブタセチン;ブチキシレート(Butixirate);ブトルファノール;酒石酸ブトルファノール;カルバマゼピン;カルバスピリンカルシウム;塩酸カルビフェン(Carbiphene);クエン酸カルフェンタニル;コハク酸シプレファドール(Ciprefadol);シラマドール(Ciramadol);塩酸シラマドール;クロニキセリル(Clonixeril);クロニキシン(Clonixin);コデイン;リン酸コデイン;硫酸コデイン;塩酸コノルホン(Conorphone);シクラゾシン;塩酸デキソキサドロール(Dexoxadrol);デクスプレメドラク(Dexpemedolac);
【0093】
デゾシン:ジフルニサル;二酒石酸ジヒドロコデイン;ジメファダン(Dimefadane);ジピロン;塩酸ドクスピコミン(Doxpicomine);ドリニデン(Drinidene);塩酸エナドリン;エピリゾール;酒石酸エルゴタミン;塩酸エトキサゼン(Ethoxazene);エトフェナメート;オイゲノール;フェノプロフェン;フェノプロフェンカルシウム;クエン酸フェンタニル;フロクタフェニン;フルフェニサル(Flufenisal);フルニキシン(Flunixin);メグルミン酸フルニキシン;マレイン酸フルピルチン;フルプロカゾン(Fluproquazone);塩酸フルラドリン(Fluradoline);フルルビプロフェン;塩酸ヒドロモルホン;イブフェナク;インドプロフェン;ケタゾシン;ケトルファノール;ケトロラク;トロメタミン;塩酸レチミド(Letimide);酢酸レボメタジル;酢酸塩酸レボメタジル;塩酸レボナントラドール(Levonantradol);酒石酸レボルファノール;塩酸レフェミゾール;シュウ酸ロフェンタニル;ロルシナドール(Lorcinadol);ロルノキシカム(Lornoxicam);サリチル酸マグネシウム;メフェナム酸;塩酸メナビタン;塩酸メペリジン;塩酸メプタジノール;塩酸メタドン;酢酸メタジル;メトホリン;メトトリメメプラジン;酢酸メトケファミド(Metkephamid);塩酸ミンバン(Mimbane);塩酸ミルフェンタニル;
【0094】
モリナゾン(Molinazone);硫酸モルヒネ;モキサゾシン;塩酸ナビタン(Nabitan);塩酸ナルブフィン;塩酸ナルメキソン;ナモキシレート(Namoxyrate);塩酸ナントラドール(Nantradol);ナプロキセン;ナプロキセンナトリウム;ナプロキソール(Naproxol);塩酸ネフォパム(Nefopam);塩酸ナキセリジン(Nexeridine);塩酸ノラシメタドール(Noracymethadol );塩酸オクフェンタニル(Ocfentanil);オクタザミド(Octazamide);オルバニル;フマル酸オキセトロン;オキシコドン;;塩酸オキシコドン;テレフタル酸オキシコドン;塩酸オキシモルホン;パメドラク(Pemedolac);ペンタモルホン;ペンタゾシン;塩酸ペンタゾシン;乳酸ペンタゾシン;塩酸フェナゾピリジン;塩酸フェニルアミドール(Phenyramidol);塩酸ピセナドール;ピナドリン;ピルフェニドン;ピロキシカム;ピロキシカムオラミン(Piroxicam Olamine);マレイン酸プラバドリン(Pravadoline);塩酸プロジリジン(Prodilidine);塩酸プロファドール;フマル酸プロピラム;塩酸プロポキシフェン;ナプシル酸プロポキシフェン;プロキサゾール;クエン酸プロキサゾール;酒石酸プロキソルファン(Proxorphan);塩酸ピロリフェン;塩酸レミフェンタニル;サルコレックス(Salcolex);マレイン酸サレタミド(Salethamide);サリチルアミド;サリチル酸メグルミン;サルサラート;サリチル酸ナトリウム;メシル酸スピラドリン;スフェンタニル;クエン酸スフェンタニル;タルメタシン; タルニフルメート(Talniflumate);タロサレート(Talosalate);コハク酸タザゾレン(Tazadolene);テブフェロン(Tebufelone);テトリダミン(Tetrydamine);チフラックナトリウム(Tifurac);塩酸チリジン;チオピナク(Tiopinac);メシル酸トナゾシン(Tonazocine);塩酸トラマドール;塩酸トレフェンタニル;トロラミン(Trolamine);塩酸ベラドリン;塩酸ベリロパム(Verilopam);ボラゾシン(Volazocine); メシル酸キセルファノール(Xorphanol);塩酸キシラジン(Xylazine);メシル酸ゼナゾシン(Zenazocine);ゾメピラクナトリウム(Zomepirac Sodium);ズカプサイシン(Zucapsaicin)およびこれらの組合せ。
【0095】
痛覚過敏は、疼痛に対する感受性の増大または疼痛感覚の強度の増強を意味する。痛覚過敏は、被験体が刺激に対して感受性過剰である場合に起こり得、所与の刺激に対して強調された疼痛応答をもたらす。痛覚過敏は、しばしば、局所的炎症状態の結果であり、身体組織の外傷(trauma)または損傷(injury)の後で起こり得る。炎症は、局所的感染、疱疹、おでき、切創、掻傷、火傷、日焼け、擦過傷、外科的切開などの皮膚損傷、ツタウルシ皮膚炎、アレルギー性発疹、昆虫による咬傷および刺傷、ならびに関節炎などの炎症性皮膚状態の後に起こり得るか、またはこれらに関連し得る。末梢痛覚過敏を予防および処置するため、ならびに炎症から生じる疼痛および/または症状を低減するためにS−MNTXを用いてもよい。本明細書において使用される場合、痛覚過敏は、掻痒症または掻痒を含み、S−MNTXを、抗掻痒症処置として用いてもよい。
【0096】
本明細書における組成物および方法は、多数の炎症性状態および損傷と関連する痛覚過敏の予防および処置のために意図される。本明細書において提供される組成物および方法は、以下と関連する多様な痛覚過敏状態を処置するために用いてもよい:火傷(熱火傷、放射線火傷、化学物質火傷、日焼けおよび風焼けが挙げられるがこれらに限定されない)、擦過傷(例えば、角膜擦過傷、挫傷(bruise)、挫傷(contusion)、凍傷が挙げられる)、発疹(例えば、アレルギー熱、ならびに例えばツタウルシ皮膚炎およびおむつかぶれなどの接触性皮膚炎)、面皰、昆虫による咬傷/刺傷、皮膚潰瘍(糖尿病および辱瘡が挙げられるがこれらに限定されない)、粘膜炎、炎症、例えば、歯周炎、歯科矯正による炎症、化粧品またはスキンケア製品の使用から生じる炎症/刺激、炎症性結膜炎、痔核および性器の炎症、歯肉炎、気管支炎、喉頭炎、咽頭炎、帯状疱疹、真菌過敏、例えば、足白癬および頑癬、単純ヘルペス、おでき、足底疣贅、または例えば糸状菌および性交によって伝達される膣の病変。
【0097】
皮膚表面と関連する痛覚過敏状態として、以下が挙げられる:火傷(熱火傷、放射線火傷、化学物質火傷、日焼けおよび風焼けが挙げられるがこれらに限定されない)、例えば角膜擦過傷、挫傷(bruise)、挫傷(contusion)、凍傷などの擦過傷、発疹(アレルギー性、および熱接触性皮膚炎(例えばツタウルシ皮膚炎)およびおむつかぶれ)、面皰、昆虫による咬傷/刺傷、皮膚潰瘍(糖尿病および辱瘡が挙げられる)。口腔、喉頭および気管支の痛覚過敏状態として、粘膜炎、抜歯後、歯周炎、歯肉炎、歯科矯正による炎症、気管支炎、喉頭炎および咽頭炎が挙げられる。眼の痛覚過敏状態として、角膜の擦過傷、後面放射角膜切除術(post-radial keratectomy)、または結膜炎が挙げられる。直腸/肛門の痛覚過敏状態として、痔核および性器の炎症が挙げられる。感染性因子と関連する痛覚過敏状態として、帯状疱疹、真菌による刺激(足白癬および頑癬が挙げられる)、単純ヘルペス、おでき、足底疣贅ならびに膣の病変(糸状菌および性交によって伝達される病変が挙げられる)。痛覚過敏状態はまた、例えば、乳腺腫瘍摘出術、会陰切開術、腹腔鏡検査、関節鏡検査、放射状角膜切開術および抜歯の後の快復などの手術後の快復と関連し得る。
【0098】
末梢痛覚過敏のための予防薬または処置として、S−MNTXを、化合物を罹患領域に送達するために提供される任意の経路を用いて送達することができる。投与は、経口または非経口であり得る。投与の方法としてまた、局所(topical)または局所的(local)投与が挙げられる。S−MNTXを、皮膚、関節、眼、唇および粘膜を含むあらゆる身体表面へ適用することができる。
【0099】
S−MNTXを、本明細書において記載されるもののような、疼痛薬、掻痒薬、抗炎症剤などを含む、抗痛覚過敏作用を提供する他の化合物と組合せて送達してもよい。S−MNTXをまた、炎症を引き起こす状態を処置するために使用される他の化合物、例えば、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、および抗感染症剤などとともに投与してもよい。これらの他の化合物は、局所または全身で作用し得、投与され得、同一の組成物の部分であっても別個に投与されてもよい。かかる化合物は、以下により詳細に記載される。
【0100】
炎症は、しばしば腫瘍壊死因子(TNF)産生の増大と関連し、TNF産生の低下は炎症の低減をもたらすと考えられている。末梢で作用するオピオイドアゴニストはTNF産生を低下させることが示されている(米国特許第6,190,691号)。末梢で選択的なκオピオイドであるアシマドリンは、アジュバント誘導性関節炎動物モデルにおいて強力な抗関節炎剤であることが示されている(Binder, W. and Walker, J.S. Br. J. Pharma 124:647-654)。したがって、S−MNTXおよびその誘導体の末梢オピオイドアゴニスト活性は、炎症状態の予防および処置を提供する。理論に拘束されないが、S−MNTXおよびその誘導体の抗炎症作用は、直接的または間接的に、TNF産生の抑制を介するものであり得る。S−MNTXまたはその誘導体は、全身で投与されても局所で投与されてもよい。S−MNTXを、ロペラミドおよびジフェノキシレートなどの別のTNF阻害剤または本明細書において記載される他の抗炎症剤と組み合わせて投与してもよい。
【0101】
本発明の別の局面は、全身性炎症状態、好ましくは、炎症性腸疾患、関節リウマチ、悪液質、喘息、クローン病、エンドトキシンショック、成人呼吸促迫症候群、虚血/再灌流障害、移植片対宿主反応、骨吸収、移植および狼瘡の、S−MNTXまたはその誘導体を用いる予防および/または処置である。
さらに別群の態様において、S−MNTXまたはその誘導体を使用する処置に適している炎症性状態は、多発性硬化症、糖尿病、または後天性免疫不全症候群(AIDS)もしくは癌に関連する萎縮に関連する。
一群の態様において、皮膚炎症状態、好ましくは、乾癬、アトピー性皮膚炎、UV−誘発性炎症、接触性皮膚炎、または他の薬物(RETIN−A(オールトランスレチノイン酸)が挙げられるがこれに限定されない)によって誘発される炎症が、S−MNTXまたはその誘導体を用いる処置に適している。
【0102】
本発明の別の局面は、非アレルギー性炎症性皮膚状態を処置する方法であり、炎症状態を処置するために有効な量でのS−MNTXの投与を包含する。非アレルギー性炎症性皮膚状態は、刺激性接触性皮膚炎、乾癬、湿疹、掻痒、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹、扁平苔癬、尋常性ざ瘡、面皰、多型(polymorph)、嚢胞性ざ瘡(nodulokystic acne)、凝塊性ざ瘡(conglobata)、老人性ざ瘡、二次性ざ瘡、薬によるざ瘡(medicinaal acne)、角質化障害、および水疱性皮膚炎(blistery derma)、と関連する。
【0103】
処置に対して特に適している特定の患者は、前述の状態のいずれか一つの症状を有する患者である。患者は、他の治療を用いては、その症状の軽減を得ることが出来なかったか、またはその症状の軽減または一貫した程度の軽減を得られなくなっていてもよい。かかる患者は、従来の処置に対して抵抗性であるといわれる。状態は、引き起こされるか、または、疾患状態、身体的状態、薬物誘導性状態、生理学的不均衡、ストレス、不安などを非限定的に含む1種以上の多様な状態の結果である。
【0104】
被験体を、S−MNTXとS−MNTX以外の治療剤との組合せで処置してもよい。これらの状況において、S−MNTXおよび他の治療剤は、被験体が所望のとおりの種々の剤の効果を経験するように、時間的に十分近接して、代表的には同時に投与される。いくつかの態様においては、S−MNTXが時間的に最初に送達され、いくつかの態様においては時間的に二番目に送達され、いくつかのさらなる態様においては同時に送達される。以下により詳細に考察されるように、本発明は、S−MNTXが別の薬剤を含む処方物中で投与される医薬製剤を企図する。これらの処方物は、その全体が参考として本明細書において援用される米国特許第10/821,809号において記載されるようなものである。含まれるものは、固体、半固体、液体、徐放、および他のかかる処方物である。
【0105】
S−MNTXとともに予防および処置プロトコルの一部である一つの重要なクラスの薬剤は、オピオイドである。驚くべきことに、出願人らにより、オピオイドであるモルヒネと組み合わせて使用されるS−MNTXが、明らかに増強された相乗的な胃腸通過の抑制をもたらすことが見出された。したがって、本発明は、S−MNTXを1種以上のオピオイドと組み合わせて含む医薬組成物を提供する。このことが、これまで得ることが出来なかった変化を可能にする。例えば、特定の末梢で媒介される状態を処置するためにオピオイドのより低い用量が望ましい場合、これは今や、S−MNTX処置との組合せによって可能となる。
【0106】
オピオイドは、あらゆる薬学的に受容可能なオピオイドである。一般的なオピオイドは、以下からなる群より選択されるものである:アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾシン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルフィン(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、レボメサジルアセテート、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メサドン、モルフィン、モルフィン−6−グルクロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチン、およびトラマドール。
【0107】
達成するべき所望の効果に依存して、オピオイドは、非経口または他の全身経路で投与して、中枢神経系(CNS)および末梢オピオイド受容体の両方に作用させることができる。S−MNTXとの組み合わせにおけるオピオイドの所望の効果は、下痢の予防または処置、任意の原因または病因からの疼痛の予防または処置であり得、末梢痛覚過敏の予防または処置を含む。効能が末梢痛覚過敏の予防または処置である場合、同時のCNSでの作用を有さないオピオイドを提供すること、あるいは、オピオイドが血液脳関門を越えないが末梢オピオイド受容体に対して効果を提供するように、局所または局所的にオピオイドを投与することが望ましい。
【0108】
S−MNTXとの組合せにおいて、下痢の予防もしくは処置または末梢痛覚過敏の予防もしくは処置のために特に有用なオピオイドとして、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
(i)ロペラミド[4−(p−クロロフェニル)−4−ヒドロキシ−N−N−ジメチル−α,α−ジフェニル−1−塩酸ピペラジンブチルアミド]]、本明細書において定義されるようなロペラミドのアナログおよび関連化合物(米国特許第3,884,916号および同第3,714,159号を参照;また、米国特許第4,194,045号、同第4,116,963号、同第4,072,686号、同第4,069,223号、同第4,066,654号を参照)、本明細書において定義されるような、ロペラミドおよびアナログのN−オキシド、それらの代謝物およびプロドラッグならびに関連化合物(また、米国特許第4,824,853号を参照)、ならびに、以下の(a)、(b)および(c)などの関連化合物:
【0109】
(a)4−(アロイルアミノ)ピリジン−ブタンアミド誘導体および本明細書において定義されるようなそのN−オキシド(また、米国特許第4,990,521号を参照);
(b)5−(1,1−ジフェニル−3−(5−または6−ヒドロキシ−2−アザビシクロ−(2.2.2)オクト−2−イル)プロピル)−2−アルキル−1,3,4−オキサジアゾール類、5−(1,1−ジフェニル−4−(環式アミノ)ブト−2−トランス−エン−1−イル)−2−アルキル−1,3,4−オキサジアゾール類、2−[5−(環式アミノ)−エチル−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]−シクロヘプタン−5−イル]−5−アルキル−1,3,4−オキサジアゾール類]および関連化合物(米国特許第4,013,668号、同第3,996,214号および同第4,012,393号を参照);
(c)2−置換−1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン類(米国特許第4,125,531号を参照);
【0110】
(ii)3−ヒドロキシ−7−オキソモルフィナン類および3−ヒドロキシ−7−オキソイソモルフィナン類(例えば、米国特許第4,277,605号を参照)
(iii)本明細書において提供される尿素アミジノ類(また、米国特許第4,326,075号、同第4,326,074号、同第4203,920号、同第4,060,635号、同第4,115,564号、同第4,025,652号を参照)、および2−[(アミノフェニルおよびアミドフェニル)アミノ]−1−アザシクロアルカン類(米国特許第4,533,739号を参照);
【0111】
(iv)メトケファミド[H−L−Tyr−D−Ala−Bly−L−Phe−N(Me)Met−NH2;例えば、米国特許第4,430,327号;Burkhart et al. (1982) Peptides 3-869-871; Frederickson et al. (1991) Science 211:603-605を参照)、ならびに、血液脳関門を越えないH−Tyr−D−Nva−Phe−Orn−NH2、H−Tyr−D−Nle−Phe−Orn−NH2、H−Tyr−D−Arg−Phe−A2bu−NH2、H−Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2、およびH−Lys−Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2などの他の合成オピオイドペプチド、(米国特許第5,312,899号を参照;また、Gesellchen et al. (1981) Pept.: Synth., Struct., Funct., Proc. Am. Pept. Symp., 7th;Rich et al., (Eds), Pierce Chem. Co., Rochford, Ill., pp. 621-62を参照);
(v)米国特許第5,236,947号などに定義されるプロパンアミン。
【0112】
S−MNTXはまた、他の止痢性の化合物および組成物と組み合わせて、下痢を処置するために用いてもよい。例えば、S−MNTXを既知の止痢剤と組み合わせて被験体に投与してもよい。2種以上の化合物をカクテルとして投与しても、同一または異なる投与経路を用いて化合物を別個に投与してもよい。既知の止痢剤として、ロペラミド、ロペラミドのアナログ、ロペラミドおよびアナログのN−オキシド、それらの代謝物およびプロドラッグ、ジフェノキシレート、シサプリド、アンタシド、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ポリカルボフィル、シメチコン、ヒヨスチアミン、アトロピン、フラゾリドン、ジフェノキシン、オクトレオチド、ランソプラゾール、カオリン、ペクチン、活性炭、スルファグアニジン、スクシニルスルファチアゾール、フタリルスルファチアゾール、アルミン酸ビスマス、亜炭酸ビスマス、亜クエン酸ビスマス、クエン酸ビスマス、ビスマス酸二クエン酸三カリウム、酒石酸ビスマス、亜サリチル酸ビスマス、亜硝酸ビスマス、没食子酸ビスマス、オピウムチンキ(パレゴリック)、生薬、植物由来止痢剤が挙げられる。
【0113】
S−MNTXと共に処置プロトコルの部分であり得る他の治療剤は、刺激性腸症候群(IBS)剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗感染症剤、抗ヒスタミン剤を含む抗炎症剤、血管収縮薬、止痢剤などである。
【0114】
S−MNTXと組み合わせて用いることができるIBS治療剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ベンゾジアゼピン化合物、鎮痙剤、選択的セロトニン再取込阻害剤(SSRI)、コレシストキニン(CCK)受容体アンタゴニスト、ナチュラルキラー(NK)受容体アンタゴニスト、コルチコトロピン放出因子(CRF)受容体アンタゴニスト、GI弛緩剤、抗ガス化合物、ビスマス含有調製物、多硫酸ペントサン、制吐性ドーパミンD2アンタゴニスト、プロスタグランジンEアナログ、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(ロイプロリド)、コルチコトロピン−1アンタゴニスト、ニューロキニン2受容体アンタゴニスト、コレシストキニン−1アンタゴニスト、ベータ遮断薬、抗食道逆流剤、抗ムスカリン剤、止痢剤、抗炎症剤、抗運動剤、5HT1アゴニスト、5HT3アンタゴニスト、5HT4アンタゴニスト、5HT4アゴニスト、胆汁酸塩隔絶剤、バルク形成剤、α2アドレナリンアゴニスト、鉱物油、抗うつ剤、生薬。
【0115】
IBS治療剤の具体例として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
A型のγ−アミノブチル酸(GABA)受容体(GABAA)を介して発作を抑制するように作用するベンゾジアゼピン化合物およびアナログ、例えば、DIASTAT(登録商標)およびVALIUM(登録商標);LIBRIUM(登録商標)およびZANAX(登録商標)。
SSRI、例えば、フルボキサミン;フルオキセチン;パロキセチン;セルトラリン;シタロプラム;ベンラファキシン;セリクラミン(cericlamine);デュロキセチン;ミルナシプラン(milnacipran);ネファゾドン(nefazodone);およびシアノドチエピン(Prous J.R編、The Year Drugs News、1995年、47−48頁およびWO 97/29739を参照)。
【0116】
CCK受容体アンタゴニスト、例えば、デバゼピド(devazepide);ロルグルミド(lorglumide);デキシオキシグルミド(dexioxiglumide);ロキシグルミド(loxiglumide)、D'Amato, M.ら、Br. J. Pharmacol. Vol. 102(2), pp. 391-395 (1991);Cl 988;L364,718;L3637260;L740,093およびLY288,513;米国特許第5,220,017号、Bruley-Des-Varannes, S, et al. Gastroenterol. Clin. Biol. Vol.15.(10)9 pp. 744-757 (1991)、およびWorker C: EUPHAR'99- Second European Congress of Pharmacology (Part IV) Budapest, Hungary Iddb Meeting Report 1999 July 3-7において開示されるCCK受容体アンタゴニスト。
【0117】
例えば以下を含むモチリン受容体のアゴニストまたはアンタゴニスト:モチリンアゴニストABT-269、(エリスロマイシン、8,9−ジデヒドロ−N−ジメチルデオキソ−4”,6,12−トリデオキシ−6,9−エポキシ−N−エチル)、デ(Nメチル−N−エチル−8,9−無水エリスロマイシンA)およびデ(N−メチル)−N−イソプロピル−8,9無水エリスロマイシン、Sunazika T. et al., Chem. Pharm. Bull., Vol. 37(10), pp. 2687-2700 (1989);A-173508(Abbot Laboratories);モチリンアンタゴニスト(Phe3、Leu-13)ブタモチリン、214th American Chemical Society (ACS) Meeting (Part V); Highlights from Medicinal Chemistry Poster Session, Wednesday 10 September, Las Vegas, Nevada, (1997), Iddb Meeting Report September 7-11 (1997);およびANQ-1 1 125、Peeters T.L., et al., Biochern. Biophys. Res. Commun., Vol. 198(2), pp. 411-416 (1994)。
【0118】
例えば以下を含むNK受容体アンタゴニスト:FK 888(Fujisawa);GR 205171(Glaxo Wellcome);LY 303870(Lilly);MK 869(Merck);GR82334(Glaxo Wellcome);L758298(Merck);L 733060(Merck);L 741671(Merck);L 742694(Merck);PD 154075(Parke-Davis);S1 8523(Servier);S1 9752(Servier);OT 7100(Otsuka);WIN 51708(Sterling Winthrop);NKP-608A;TKA457;DNK333;CP-96345;CP-99994;CP122721;L-733060;L-741671;L742694;L-758298;L-754030;GR-203040;GR-205171;RP-67580;RPR-100893(dapitant);RPR-107880;RPR-111905;FK-888;SDZ-NKT-343;MEN-10930;MEN-11149;S-18523;S-19752;PD-154075(CAM-4261);SR-140333;LY-303870(lanepitant);EP-00652218;EP00585913;L-737488;CGP-49823;WIN-51708;SR-48968(saredutant);SR-144190;YM383336;ZD-7944;MEN-10627;GR-159897;RPR-106145;PD-147714(CAM-2291);ZM253270;FK-224;MDL-1 05212A;MDL-105172A;L-743986;L-743986のアナログ;S-16474;SR-1 42801(osanetant);PD-161182;SB-223412;およびSB-222200。
【0119】
例えばWO 99/40089にいおいて開示されるようなCRF受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、AXC 2219、アントアラルミン(Antalarmin)、NGD 1、CRA 0165、CRA 1000、CRA 1001。
ソマトスタチン受容体アゴニスト、例えば、オクトレオチド、バプレオチド、ランレオチド。
抗炎症性化合物、特に免疫調節型のもの、例えば、NSAIDS;腫瘍壊死因子(TNF、TNFa)阻害剤;バシリキシマブ(例えば、SIMULECT(登録商標));ダクリキシマブ(例えば、ZENAPAX(登録商標));インフリキシマブ(例えば、REMICADE(登録商標));エタネルセプト(例えば、ENBREL(登録商標))ミコフェノール酸モフェチル(例えば、CELLCEPT(登録商標));アザチオプリン(例えば、IMURAN(登録商標));タクロリムス(例えば、PROGRAF(登録商標));ステロイド類;メトトレキセートおよびGI抗炎症剤、例えばスルファサラジン(例えば、AZULFIDINE(登録商標));オルサラジン(例えば、DIPENTUM(登録商標));およびメサラミン(例えば、ASACOL(登録商標)、PENTASA(登録商標)、ROWASA(登録商標))。
【0120】
制酸薬、例えば、アルミニウム制酸薬およびマグネシウム制酸薬;およびMAALOX(登録商標)などの水酸化カルシウム。
抗ガス化合物、例えば、MYLANTA(登録商標)およびMYLICON(登録商標)の商品名で販売されるシメチコン; ならびにPHAZYME(登録商標)およびBEANO(登録商標)を含む調製酵素。
ビスマス含有調製物、例えばPEPTO-BISMOL(登録商標)としても知られる亜サリチル酸ビスマス。
多硫酸ペントサン、化学的および構造的にグリコサミノグリカンに類似したヘパリン様巨大分子炭化水素誘導体であり、ELMIRON(登録商標)の商品名で市販されている。
【0121】
ドンペリドンを含む、制吐性ドーパミンD2アンタゴニスト。
プロスタグランジンEアナログ、ゴナドトロフィン放出ホルモンアナログ(ロイプロリド)、コルチコトロピン−1アンタゴニスト、ニューロキニン2受容体アンタゴニスト、コレシストキニン−1アンタゴニスト、ベータ遮断薬。
PRILOSEC(登録商標)を非限定的に含む、抗食道逆流剤。
【0122】
以下を非限定的に含む鎮痙剤および抗ムスカリン剤:ジシクロミン、オキシブチン(oxybutyin)(例えば、塩酸オキシブチニン)、トルテロジン(例えば、酒石酸トルテロジン)、アルベリン、アニソトロピン、アトロピン(例えば、硫酸アトロピン)、ベラドンナ、ホマトロピン、メトシュウ酸ホマトロピン、ヒヨスチアミン(例えば、硫酸ヒヨスチアミン)メトスコポラミン、スコポラミン、(例えば、塩酸スコポラミン)、クリジニウム、シメトロピウム、ヘキソサイクリウム、ピナベリウム、オチロニウム、グリコピロレート、およびメベベリン。
【0123】
止痢剤として、イプラトロピウム、イソプロパミド、メペンゾラート、プロパンテリン、オキシフェンサイクリミン、ピレンゼピン、ジフェノキシレート(例えば、塩酸ジフェノキシレート)、硫酸アトロピン、塩酸アロセトロン、塩酸ジフェノキシン、亜サリチル酸ビスマス、ラクトバチルス・アシドフィルス、トリメブチン、アシマドリン、および酢酸オクトレオチドが挙げられるがこれらに限定されない。
抗炎症剤としてまた、メサラミン、スルファサラジン、バルサラジン二ナトリウム、ヒドロコルチゾン、およびオルサラジンナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0124】
5HT1アゴニストとして、ブスピロンが挙げられるがこれに限定されない。
5HT3アンタゴニストとして、オンダンセトロン、シランセトロンおよびアロセトロンが挙げられるがこれらに限定されない。
5HT4アンタゴニストとして、ピポスクロド(piposcrod)が挙げられるがこれに限定されない。
5HT4アゴニストとして、テガセロッド(tegaserod)(例えば、マレイン酸テガセロッド)およびポブカロプリド(povcalopride)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0125】
抗うつ剤として、デシプリミン(desiprimine)、アミトリプチリン、イミプリミン(imiprimine)、フルオキセチン、およびパロキセチンが挙げられるがこれらに限定されない。
他のIBS治療剤として、デキスロキシグルミド、TAK-637、タルネタント(talnetant)、SB 223412、AU 244、ニューロトロフィン−3、GT 160-246、免疫グロブリン(IgG)、ラモプラニン(ramoplanin)、リサキシミン(risaxmin)、リメチコン(rimethicone)、ダリフェナシン、ザミフェナシン(zamifenacin)、ロキシグルミド、ミソプロスチル(misoprostil)、ロイプロリド、ドンペリドン、ソマトスタチンアナログ、フェニトイン、NBI-34041、サレダタント(saredutant)、およびデキスロキシグルミドが挙げられる。
【0126】
抗生物質として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:テトラサイクリン抗生物質、例えば、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、ジメチルクロルテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、およびロリテトラサイクリン;例えば、カナマイシン、アミカシン、ゲンタマイシンC1a、C2、C2bまたはC1、シソマイシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ネオマイシンB、ジベカシンおよびカネンドマイシン(kanendomycin);マクロライド類、例えば、マリドマイシン、およびエリスロマイシン;リノマイシン類、例えば、クリンダマイシンおよびリンコマイシン; ペニシラン酸(6-APA)−およびセファロスポラニン酸(cephalosporanic acid)(7-ACA)−誘導体であって、(6β−または7β−アシルアミノ基を各々有するもの、発酵によって半合成的または完全合成的に得ることができる6β−アシルアミノペニシラン酸または7β−アシルアミノセファロスポラニン酸誘導体、および/または3位が修飾されている7β−アシルアミノセファロスポラニン酸誘導体、例えば、ペニシリンGまたはVの名称下において公知となったペニシラン酸誘導体、
【0127】
例えば、フェネチシリン、プロピシリン、ナフシリン、オキシシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、シクラシリン、エピシリン、メシリナム、メチシリン、アズロシリン、スルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン、ピペラシリン、カリンダシリン、アジドシリンまたはシクラシリン、ならびにセファクロル、セフロキシム、セファズラル(cefazlur)、セファセトリル、セファゾリン、セファレキシン、セファドロキシル、セファログリシン、セフォキシチン、セファロリジン、セフスロジン、セフォチアム、セフタジジム、セフォニシド、セフォタキシム、セフメノキシム、セフチゾキシム、セファロチン、セフラジン、セファマンドール、セファノン(cephanone)、セファピリン、セフロキサジン、セファトリジン、セファゼドン、セフトリキソン(ceftrixon)およびセフォラニドの名称で知られるようになったセファロスポリン誘導体;およびクラバム(clavam)、ペネムおよびカルバペネム型の他のβ−ラクタム抗生物質、例えば、モキサラクタム、クラブラン酸、ノカルジシン(nocardicine)A、スルバクタム、アストレオナムおよびチエナマイシン;ならびに、ビコザマイシン(bicozamycin)、ノボビオシン、クロラムフェニコールまたはチアンフェニコール、リファンピシン、ホスホマイシン、コリスチン、およびバンコマイシンなどの他の抗生物質。
【0128】
抗ウイルス剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ヌクレオシドアナログ、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、インテグラーゼ阻害剤であって、以下を含むもの:アセマンナン(acemannan);アシクロビル;アシクロビルナトリウム;アデフォビル;アロブジン;アルビルセプトスドトックス(alvircept sudotox);塩酸アマンタジン;アラノチン(aranotin);アリルドン(arildone);メシル酸アテビルジン(atevirdine);アビリジン(avridine);シドホビル;シパムフィリン(cipamfylline);塩酸シタラビン;メシル酸デラビルジン;デシクロビル;ディダノシン;ディソキサリル(disoxaril);エドクスジン;エンビラデン(enviradene);エンビロキシム(enviroxime);ファムシクロビル;塩酸ファモチン(famotine);フィアシタビン(fiacitabine);フィアルリジン(fialuridine);ホサリレート(fosarilate);ホスカネットナトリウム;ホスホネットナトリウム;ガンシクロビル;ガンシクロビルナトリウム;イドクスウリジン;インディナビル;ケトキサール(kethoxal);ラミブジン;ロブカビル(lobucavir);ロピノビル(lopinovir);塩酸メモチン(memotine);メチサゾン;ネルフィナビル;ネビラピン;ペンシクロビル;ピロダビル(pirodavir);リバビリン;塩酸リマンタジン;リトナビル;メシル酸サキナビル;塩酸ソマンタジン(somantadine);ソリブジン;スタトロン(statolon);スタブジン;テノホビル;塩酸チロロン;トリフルリジン;塩酸バラシクロビル;ビダラビン;ビダラビンリン酸;ビダラビンリン酸ナトリウム;ビロキシム(viroxime);ザルシタビン;ゼリット(zerit);ジドブジン(AZT);およびジンビロキシム(zinviroxime)。
【0129】
抗感染症剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:塩酸ジフロキサシン(difloxacin);ラウリルイソキノリニウム(isoquinolinium)ブロミド;モキサラクタム二ナトリウム;オルニダゾール;ペンチソマイシン(pentisomicin);塩酸サラフロキサシン(sarafloxacin);HIVおよび他のレトロウイルスのプロテアーゼ阻害剤;HIVおよび他のレトロウイルスのインテグラーゼ阻害剤;セファクロル(セクロール(ceclor));アシクロビル(ゾビラックス);ノルフロキサシン(ノロキシン(noroxin));セフォキシチン(メフォキシン(mefoxin));セフロキシムアキセチル(axetil)(セフチン(ceftin));シプロフロキサシン(シプロ);塩酸アミナクリン;塩化ベンゼトニウム:ビシオノレート(bithionolate)ナトリウム;ブロムクロレノン(bromchlorenone);過酸化カルバミド;塩化セタルコニウム;塩化セチルピリジニウム:塩酸クロルヘキシジン;クリオキノール;臭化ドミフェン;フェンチクロール(fenticlor);塩化フルダゾニウム(fludazonium);フクシン、塩基性;フラゾリドン;ゲンチアナバイオレット;ハルキノール(halquinol)類;ヘキサクロロフェン:過酸化水素;イクタモール;ヨウ化イミデシル;ヨウ素;イソプロピルアルコール;酢酸マフェナイド;メラレイン(meralein)ナトリウム;塩化メルクフェノール(mercufenol);水銀、アンモニア化;塩化メチルベンゼトニウム;ニトロフラゾン;ニトロメルゾール;塩酸オクテニジン(octenidine);オキシクロロセン(oxychlorosene);オキシクロロセンナトリウム;パラクロロフェノール、カンファー化;過マンガン酸カリウム;ポビドンヨード;塩化セパゾニウム(sepazonium);硝酸銀;スルファジアジン銀;シムクロセン(symclosene);チメルホネート(thimerfonate)ナトリウム;チメロサール:トロクロセン(troclosene)カリウム。
【0130】
抗真菌剤(抗生物質)として以下が挙げられる:アンホテリシンB、カンジシジン、ダルモスタチン(dermostatin)、フィリピン(filipin)、ファンギクロミン(fungichromin)、ハチマイシン、ハマイシン(hamycin)、ルセンソマイシン(lucensomycin)、メパルトリシン、ナタマイシン、ニスタチン、ペチロシン、ペリマイシン(perimycin)などのポリエン類;ならびに他のもの、例えば、アザセリン、グリセオフルビン、オリゴマイシン類、ピロルニトリン、シッカニン、ツベルシジンおよびビリジン(viridin)。抗真菌合成薬として以下が挙げられる:ナフチフィンおよびテルビナフィンなどのアリルアミン;ビホナゾール、ブトコナゾール、クロルダントイン(chlordantoin)、クロルミダゾール、クロコナゾール(cloconazole)、クロトリマゾール、エコナゾール、エニルコナゾール(enilconazole)、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、硝酸オキシコナゾール、スルコナゾール、およびチオコナゾールなどのイミダゾール類;フルコナゾール、イトラコナゾール、テルコナゾールなどのトリアゾール類。他のものとして、アクリゾルシン、アモロルフィン、ビフェナミン(biphenamine)、ブロモサリチルクロラニリド、ブクロサミド(buclosamide)、クロフェネシン(chlophenesin)、シクロピロクス、クロキシキン(cloxyquin)、コパラフィナート(coparaffinate)、ジアンタゾール(diamthazole)、ジヒドロ塩酸、エキサラミド(exalamide)、フルシトシン、ハレタゾール(halethazole)、ヘキセチジン(hexetidine)、ロフルカルバン(loflucarban)、ニフラテル、ヨウ化カリウム、プロピオネート、プロピオン酸、ピリチオン、サリチルアニリド、スルベンチン、テノニトロゾール、トルシクラート、トリンデート(tolindate)、トルナフテート、トリセチン(tricetin)、ウヨチオン(ujothion)、およびウンデシレン酸。抗真菌剤はまた、以下を含む:カスポファンギン、ミカファンギン、アニデュラファンギン、アミノカンジン(aminocandin)などを含むエキノカンジン(echinocandin)クラスの抗真菌剤のクラス。
【0131】
血管収縮剤は、以下を含むがこれらに限定されない:エピネフリン、ノルエピネフリン、プソイドエフェドリン、フェニレフリン、オキシメタゾリン、プロピルヘキセドリン、ナファゾリン、テトラヒドロロジン、キシロメタゾリン、エチルノルエピネフリン、メトキサミン、フェニルヘキセドリン、メフェンテルミン、メタラミノール、ドーパミン、ジピベフリン、ノルフェドリン(norphedrine)、およびシラクスゾリン(ciraxzoline)が本明細書における組成物および方法において有利に用いられる。かかる剤の使用は、活性な抗痛覚過敏剤の全身性送達を減少させる上で役立つ。
【0132】
本発明の医薬製剤は、単独またはカクテル中で使用される場合、治療上有効な量において投与される。治療上有効な量は、以下に議論されるパラメーターによって決定される;しかし、どのような場合においても、本明細書において記載される状態のいずれか一つを有する被験体(ヒト被験体など)を処置するために有効な薬物(単数または複数)のレベルを確立する量である。有効量とは、処置される状態またはそれに関連する症状の発症もしくは進行を遅らせるか、その重篤度を緩和するか、または完全に阻害するか、進行を緩和するか、完全に停止させるために必要な、単独もしくは複数用量での量または送達の速度である。
【0133】
下痢の場合、有効量は、例えば、以下の一つ以上をもたらす量である:1)腸の運動の頻度を低下させる;2)便の硬さを増大させる量;および/または3)便の量を1日当たり200g未満まで低下させる。一態様において、有効量は、1日当たり3回以下の腸運動、好ましくは1日あたり2回以下の腸運動、より好ましくは1日あたり1回の腸運動をもたらす量である。特定の例において、量は、投与の様式に依存して、MNTXの投与の後12時間以内、10時間以内、8時間以内、6時間以内、4時間以内、2時間以内、1時間以内、および投与の直後に腸運動を減少させるために十分な量である。静脈内投与により、即時効果をもたらすことができる。
【0134】
胃腸機能を回復させる上で、有効量は、例えば、口腔−盲腸の通過時間を増大するために必要な量であり得る。疼痛の管理または処置のためには、有効量は、例えば、主観的判断基準、客観的判断基準またはその両方によって被験体をより快適にするために十分な量であり得る。末梢痛覚過敏の症例においては、有効量は、例えば、疼痛または掻痒症への過敏症などの末梢痛覚過敏の症状を緩解する量であり得る。炎症の予防または処置のためには、有効量は、例えば、発赤、膨張、もしくは炎症に関連する組織の損傷を減少もしくは緩和するために、または関節などの罹患領域の運動性を高めるために十分な量であり得る。被験体に投与される場合、有効量は、勿論、特定の状態;状態の重篤度;個々の患者のパラメーター(年齢、身体的状態、大きさおよび体重を含む);同時の処置;処置の頻度;ならびに投与の様式に依存する。これらの要因は当業者に周知であり、通常の実験のみをもって取り組むことができる。
【0135】
一般的に、S−MNTXの経口用量は、体重1kgあたり1日あたり約0.05〜約40mg/kg、約0.05〜約20.0mg/kg、約0.05〜約10mg/kg、または約0.05〜約mg/kgである。一般的に、静脈内および皮下投与を含む非経口投与は、投与がボーラスとしてであるかまたはI.V点滴によるもののように長時間にわたるかに依存して、体重1kgあたり約0.001〜約1.0mg/kg、約0.01〜約1.0mg/kg、または約0,1〜約1.0mg/kgである。体重1kgあたり約0.05〜0.5mgの範囲の用量が所望の結果をもたらすと予測される。投与量を所望の局所的または全身の薬物レベルを達成するために、投与方法に依存して、適切に調整しても良い。
【0136】
例えば、腸溶性コーティングされた処方物におけるオピオイドアンタゴニストの経口投与の投与量は、即時放出経口処方物における場合よりも低いと予測される。かかる用量において患者における応答が不十分な場合には、より高い用量(または異なるより局所的な送達経路による、効果的により高い投与量)を患者の耐容性が揺する範囲まで用いても良い。一日当たり複数用量は、化合物の適切な全身レベルを達成するために検討される。適切な全身レベルは、例えば、患者の薬物のピークまたは持続的血漿レベルを測定することにより判断され得る。ある場合に、100ng/mlより低いピーク血漿レベルが望ましい。「用量」および「投与量」は本明細書中に同じ意味で用いられる。
【0137】
様々な投与経路が利用出来る。特定の方法は、もちろん、選択した薬物の特定の組合せ、処置または予防する状態の重症度、患者の状態、および治療効果に必要とされる投与量に依存して選択される。本発明の方法は、一般的に言えば、医学的に許容されるあらゆる投与方法を用いて行われてもよく、これは、臨床的に許容されない悪影響を引き起こすことなく活性化合物の有効レベルを作り出すあらゆる方法を意味する。 かかる投与方法は、経口、直腸、局所、経皮、舌下、静脈内注入、肺、動脈内、脂肪組織内、リンパ管内、筋肉内、腔内、エアロゾル、耳(例えば、点耳剤を介して)、鼻腔内、吸入、関節内、無針注射、皮下または皮内(例えば、経皮)送達を含む。持続注入に関しては、患者管理鎮痛法(PCA)デバイスまたは埋め込み薬物送達デバイスを用いても良い。経口、直腸または局所投与は、予防または長期処置に重要であり得る。好ましい直腸送達方法は、坐剤または浣腸洗浄剤としての投与を含む。
【0138】
医薬製剤は、都合良く単位投与量形態で提供されてもよく、医薬の分野で周知のあらゆる方法で調製されても良い。全ての方法は、本発明の化合物を1または2以上の副成分を構成するキャリアとの結合させる工程を含む。一般に、組成物は、本発明の化合物を均一におよび密接に液体キャリア、微粉化固体キャリア、または両方と結合させることにより調製し、そして必要であれば製品に形成する。
【0139】
投与の際、本発明の医薬製剤は、薬学的に受容可能な組成物において適用される。かかる調製物は通常、塩、緩衝剤、防腐剤、適合性キャリア、潤滑油、および任意に他の治療成分を含んでも良い。薬に用いられる場合、塩は薬学的に受容可能なものであるべきであるが、医薬的に許容され無い塩をその薬学的に受容可能な塩の調製のために都合良く用いても良く、本発明の範囲から除かれない。かかる薬理学的および薬学的に受容可能な塩は、以下の酸から製造されるものを含むが、これらに限定されない:塩酸、臭酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、パモン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸およびベンゼンスルホン酸。
【0140】
当然のことながら、MNTX、R−およびS−MNTX、ならびに本発明の治療剤(単数または複数)に言及する場合、その塩を包含することを意味する。かかる塩は多様であり当業者に周知である。医薬製剤において用いられる場合、塩は好ましくはヒトに用いるために、薬学的に受容可能な。臭化物はかかる塩の一例である。
【0141】
本発明の医薬製剤は、薬学的に受容可能なキャリア中に含まれるか、希釈されても良い。本明細書で用いられる「薬学的に受容可能なキャリア」の用語は、ヒトまたは非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタまたはヤギなどの他の哺乳類に投与するために適した、1または2以上の適合性の固体または液体充てん剤、希釈剤または封入物質を意味する。「キャリア」の用語は、活用を促進するために活性成分と組み合わされる、天然または合成の有機または無機の成分を意味する。キャリアは、所望の医薬的有効性や安定性を本質的に損なう相互作用が存在しないような方法で、本発明の調製物および互いと入り交じることができる。経口投与、坐剤薬および非経口的投与などに適したキャリア処方物は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Paで見出すことができる。
【0142】
水性処方物は、好ましくは3.0〜3.5にpH調整されたキレート剤、緩衝剤、酸化防止剤および任意に等張剤を含むことができる。蒸気殺菌法および長期保存に適するような処方物の例は、同時係属アメリカ出願第10/821,811号、表題「医薬処方物」に記載される。
【0143】
キレート剤は、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその誘導体、クエン酸およびその誘導体、ナイアシンアミドおよび誘導体、デソキシコール酸ナトリウムおよびその誘導体、ならびにL−グルタミン酸、N,N−アセト酢酸およびその誘導体を含む。
緩衝剤は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸、リン酸ナトリウムおよびリン酸、アスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、マレイン酸、グリシン、乳酸ナトリウム、乳酸、アスコルビン酸、イミダゾール、重炭酸ナトリウムおよび炭酸、コハク酸ナトリウム、ヒスチジン、および安息香酸ナトリウムおよび安息香酸からなる群、またはこれらの組合せから選択されるものを含む。
【0144】
酸化防止剤は、アスコルビン酸誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、アルキルガレート、メタ−重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム、ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム、トコフェラールおよびその誘導体、モノチオグリセロール、ならびに亜硫酸ナトリウムからなる群から選択されるものを含む。好ましい酸化防止剤は、モノチオグリセロールである。等張剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、ラクトース、デキストロース、グリセロールおよびソルビトールからなる群から選択されるものを含む。
【0145】
本組成物に用いることの出来る防腐剤は、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール、クロロブタノールおよび好ましくは塩化ベンザルコニウムを含む。典型的に、防腐剤は約2重量%までの濃度で組成物に存在する。しかしながら防腐剤の正確な濃度は、目的の用途に依存して変化し、当業者は容易に判断できる。
【0146】
本発明の化合物は、好ましくはマンニール、またはラクトース、デキストロース、ポリエチレングリコール、およびポリビニルピロリジンなどの凍結防止剤の存在下で、凍結乾燥組成物に調製できる。6.0以下の再構成pHをもたらす凍結防止剤が好ましい。本発明はしたがって、本発明の治療剤(単数または複数)の凍結乾燥製剤を提供する。調製物は、好ましくは水中において中性または酸性である、マンニトールまたはラクトースなどの凍結防止剤を含むことができる。
【0147】
薬剤の経口、非経口および坐剤薬処方物は周知であり、市販されている。本発明の治療剤(単数または複数)を、かかる周知の処方物に加えることができる。かかる処方物において溶液または半固体溶液で混ぜ合わせることができ、かかる処方物内に懸濁液で提供することができ、またはかかる処方物内に粒子で含むこともできる。
【0148】
本発明の治療剤(単数または複数)、および任意に1または2以上の他の活性薬剤を含む製品を経口製剤製剤として構成することができる。経口製剤は、液体、半固体または固体であり得る。オピオイドを任意に経口製剤に含んでも良い。経口製剤を、本発明の治療剤(単数または複数)を、他の薬剤(および/またはオピオイド)の前、後または同時に放出するように構成してもよい。経口製剤を、本発明の治療剤(単数または複数)および他の薬剤を胃で完全に放出する、一部を胃で放出し一部を腸で放出するか、腸で放出するか、結腸で放出するか、一部を胃で放出するか、または完全に結腸で放出するように構成してもよい。
【0149】
経口製剤を、本発明の治療剤(単数または複数)の放出を胃または腸に制限しながら、他の活性薬剤の放出をそれほど制限しないか本発明の治療剤(単数または複数)とは異なるように制限することによって構成してもよい。例えば、本発明の治療剤(単数または複数)は、他の薬剤を最初に放出し、本発明の治療剤(単数または複数)が胃を通過し腸へ至った後にのみ本発明の治療剤(単数または複数)を放出するピルまたはカプセル内に含まれた、腸溶性コーティングのコアまたはペレットであってもよい。
【0150】
本発明の治療剤(単数または複数)は持効性材料内にあってもよく、本発明の治療剤(単数または複数)を消化管を通して放出し、そして他の薬剤を同じまたは異なるスケジュールで放出する。本発明の治療剤(単数または複数)放出の同じ目的は、腸溶コーティング本発明の治療剤(単数または複数)と組み合わせた、本発明の治療剤(単数または複数)の即時放出で達成することができる。これらの場合において、他の薬剤を、胃で、消化管を通して、または腸のみで、即座に放出することができる。
【0151】
これらの異なる放出プロファイルを達成するために有用な材料は、当業者に周知である。即時放出は、胃で溶解する結合剤を有する従来のタブレットによって得られる。胃のpHで溶解するコーティングまたは高温で溶解するコーティングは同じ目的を達成する。腸でのみの放出は、腸のpH環境において溶解する(しかし胃では溶解しない)pH感受性コーティングのような従来の腸溶コーティングまたは時間とともに溶解するコーティングを用いて達成する。消化管を通しての放出は、持効性材料、および/または即時放出システムと持続性および/または遅延性の計画的放出システム(例えば、異なるpHで溶解するペレット)との組合せを用いて達成する。
【0152】
発明の治療剤(単数または複数)を最初に放出することが望ましい場合において、本発明の治療剤(単数または複数)を除放処方物の表面に、かかるコーティングに適し、本発明の治療剤(単数または複数)の放出を可能にするために適したあらゆる薬学的に受容可能なキャリアにおいて、例えば通常除放のために用いられる温度感受性の薬学的に受容可能なキャリアにおいて、コーティングすることができる。体内に入れられた場合に溶解する他のコーティングは、当業者に周知である。
【0153】
本発明の治療剤(単数または複数)は、除放処方物に完全に混合されてもよく、それによってこれは別の薬剤の前、後または同時に放出される。本発明の治療剤(単数または複数)は遊離、すなわち処方物の材料中で可溶性であってもよい。本発明の治療剤(単数または複数)は、処方物の材料全体に分散したワックスコーティングしたマイクロペレットなどの、小胞の形態であってもよい。コーティングしたペレットは、温度、pHなどに基づいて、本発明の治療剤(単数または複数)を即座に放出するために形作ることができる。ペレットを本発明の治療剤(単数または複数)の放出を遅らせ、本発明の治療剤(単数または複数)がその効果を発揮する前に他の薬剤を一定期間作用させるように構成することができる。本発明ペレットの治療剤(単数または複数)は、先行技術の、当業者に周知の材料を用いて、一次放出速度またはシグモイド放出速度を示すパターンを含む、事実上あらゆる持効性パターンで本発明の治療剤(単数または複数)を放出するように構成することもできる。
【0154】
本発明の治療剤(単数または複数)を除放処方物内のコア内に含むことも出来る。コアは、1またはあらゆる組合せの、ペレットに関して上記した特性を有してもよい。本発明の治療剤(単数または複数)は、例えば、材料でコーティングされるコア中にあっても、材料内に分散していても、材料にコーティングされても、または材料にもしくは材料にわたって吸着されてもよい。
【0155】
当然のことながらペレットまたはコアは事実上どのタイプであってもよい。放出材料でコーティングされた薬物、材料に散在する薬物 、材料に吸着された薬物などでありえる。材料は浸食可能であっても浸食不可能であってもよい。
【0156】
本発明の治療剤(単数または複数)は粒子で提供されてもよい。本明細書において粒子とはナノまたはマイクロ粒子(またはある場合はより大きいもの)を意味し、これは明細書に記載されるように本発明の治療剤(単数または複数)または他の薬剤の全体または一部を構成できる。粒子は、腸溶コーティングを含むがこれに限定されないコーティングに囲まれたコアにおける治療剤(単数または複数)を含んでもよい。治療剤(単数または複数)は粒子全体にわたって分散してもよい。治療剤(単数または複数)は粒子に吸着されても良い。粒子は、0次放出、1次放出、2次放出、遅延放出、持効性、即時放出およびこれらのあらゆる組合せなどを含む、あらゆる速度式のものであっても良い。粒子は、治療剤(単数または複数)に加えて、薬学および医薬の分野で通常的に用いられるあらゆる材料を含んでもよく、これは浸食可能、浸食不不可能、生物分解可能、または生物分解不可能な材料またはこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。粒子は、溶液中または半固体状態におけるアンタゴニストを含むマイクロカプセルであってもよい。粒子は事実上あらゆる形状であり得る。
【0157】
生物分解不可能および生物分解可能なポリマー材料の両方を治療剤(単数または複数)を送達するための粒子の製造に用いることが出来る。かかるポリマーは天然または合成ポリマーでありえる。ポリマーは、放出が望まれる時間に基づいて選択する。特定の目的の生体接着ポリマーは、H.S. Sawhney, C.P. Pathak and J.A. Hubell in Macromolecules, (1993) 26:581-587に記載されるインビボ分解性ヒドロゲルを含み、この教示は本明細書に組み込まれる。これらは、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、およびポリ(アクリル酸オクタデシル)を含む。
【0158】
治療剤(単数または複数)は、除放システムに含まれてもよい。「除放性(controlled release)」の用語は、処方物からの薬物放出の方法およびプロファイルが制御される処方物を含む、あらゆる薬物を指すことを意図する。これは、非即時放出処方物と同様に即時も指し、非即時放出処方物は持効性および遅延放出処方物を含むがこれらに限定されない。用語「持効性(sustained release)」(「持続放出」(extended release)ともいう)は、従来の意味において、長期間にわたって、徐々に放出するために提供し、必須ではないが好ましくは長期間にわたる一定の薬物の血中濃度をもたらす、薬物処方物を指して用いられる。用語「遅延放出(delayed release)」は、従来の意味において、処方物の投与とそこからの薬物の放出の間に時間自演が存在する薬物処方物を指す。「遅延放出」は長期間にわたる、緩やかな放出に関連しても、しなくてもよく、したがって、「持効性」であってもなくてもよい。これらの処方物は、あらゆる投与方法に対するものであってよい。
【0159】
消化管に対して特異的な送達システムは、大まかに3つのタイプに分けられる:第一は、例えばpHの変化に反応して、薬物を放出するように設計された遅延放出システム;第二は、あらかじめ定められた時間の後に薬物を放出するように設計された時限放出システム;そして第三は、消化管の下部における豊富な腸内細菌を利用したミクロフローラ酵素システム(例えば、結腸部向け放出処方物)である。
【0160】
遅延放出システムの例は、例えば、アクリルまたはセルロースコーティング材料を用い、pH変化で溶解するものである。調製が容易なことからかかる「腸溶コーティング」に関するたくさんの報告がなされてきた。一般的に、腸溶コーティングは、相当な量の薬物を胃で放出することなく(例えば胃において、10%の放出、5%の放出さらには1%の放出より少ない)、胃を通過し、(おおよそ中性またはアルカリ性の腸液と触れることによって)腸管において十分に崩壊し、腸管の壁を通じて活性薬物の(能動または受動)送達を可能にするものである。
【0161】
腸溶コーティングとしてコーティングが分類されるかを判断するための様々なインビトロ試験が、様々な国の薬局方において公開された。36〜38℃でpH1のHClなどの人工の胃液と接触して、少なくとも2時間原形を保ち、そしてその後、pH6.8のKH2PO4緩衝液などの人工の腸液中で30分以内に崩壊するコーティングが一例である。かかる周知のシステムは、市販の、Behringer,Manchester University,Saale Co.によって報告されたEUDRAGIT材料などである。腸溶コーティングを、以下にさらに論じる。
【0162】
時限放出システムは、Fujisawa Pharmaceutical Co.,Ltd.およびR. P. SchererによるPulsincap によるTime Erosion System(TES)に代表される。これらのシステムによると、薬物放出の部位は、消化管における製剤の通過の時間によって決められる。消化管における製剤の通過は、胃内容排出時間に主に影響されるので、放出システムも時に腸溶コーティングされる。
【0163】
腸内細菌を利用したシステムは、Ohio University(M. Saffran, et al., Science, Vol. 233: 1081 (1986))のグループおよびUtah University(J. Kopecek, et al., Pharmaceutical Research, 9(12), 1540-1545 (1992))のグループによって報告された、腸内細菌から生成されるアゾ還元酵素による芳香族アゾポリマーの分解を利用するもの;およびHebrew University(PCT出願に基づく未審査公開の日本特許出願番号5-50863)のグループおよびFreiberg University(K. H. Bauer et al., Pharmaceutical Research, 10(10), S218 (1993))のグループによって報告された、腸内細菌のベータ-ガラクトシダーゼによる多糖の分解を利用したものに分類することができる。さらに、Teikoku Seiyaku K.K.(未審査公開の日本特許出願番号4-217924および未審査公開の日本特許出願番号4-225922)による、キトサナーゼによるキトサン分解を利用したシステムも含まれる。
【0164】
腸溶コーティングは典型的に、必須ではないが、ポリマー材料である。好ましい腸溶コーティング材料は、インビボ分解性のポリマー、徐徐に加水分解するポリマーおよび/または徐徐に水に溶解するポリマーを含む。「コーティング量」またはカプセル当たりのコーティング剤の相対量は、一般的に摂取から薬物放出までの期間を定める。いずれのコーティングも腸溶コーティング全体がpH約5未満の胃腸液において溶解しないが、pH約5以上で溶解するようも、十分な厚さに適用するべきである。pH依存溶解プロファイルを示すアニオン性ポリマーを、本発明の実施における腸溶コーティングとして用いることが出来ると予想される。特定の腸溶コーティング材料の選択は以下の特性に依存する:胃での溶解および分解への耐性;胃内での胃液および薬物/キャリア/酵素の不浸透性;目的腸部での速やかな溶解および分解の能力;保管の間の物理的および化学的安定性;コーティングとしての適用の容易性(基質に優しい);および経済的実用性。
【0165】
好適な腸溶性コーティング材料として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:セルロースポリマー、例えば、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリテート(trimellitate)セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム;アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メチルアクリル酸アンモニウム、酢酸エチル、メタクリル酸メチル、および/またはメタクリル酸エチルから形成されるもの(例えば、商品名をEUDRAGITとして販売されるコポリマー);ビニルポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリビニルアセテート、フタル酸ポリビニルアセテート、クロトン酸ビニルアセテートコポリマー、およびエチレン−ビニルアセテートコポリマー;ならびにセラック(精製ラック)。
【0166】
異なるコーティング材料の組合せを使用してもよい。本明細書における使用のための周知の腸溶性コーティング材料は、Rohm Pharma(ドイツ)から商品名EUDRAGITとして市販のアクリル酸ポリマーおよびコポリマーである。EUDRAGITのシリーズE、L、S、RL、RSおよびNEのコポリマーは、有機溶媒中で可溶化されたもの、水性懸濁液、または乾燥粉末として市販されている。EUDRAGITのシリーズRL、NE、およびRSのコポリマーは、胃腸管内で不溶性であるが透過性であり、持続放出(extended release)のために主に使用される。EUDRAGITのシリーズEコポリマーは、胃内で溶解する。EUDRAGITのシリーズL、L-30DおよびSのコポリマーは、胃内では不溶性であり、小腸で溶解し、したがって本明細書において最も好ましい。
【0167】
具体的なメタクリル酸コポリマーは、EUDRAGIT L、特にL-30DおよびEUDRAGIT L 100-55である。EUDRAGIT L-30Dにおいて、エステルに対する遊離のカルボキシル基の比は、およそ1:1である。さらに、コポリマーは、5.5より低いpH、一般にpH1.5〜5.5、すなわち、上部消化管において一般的に存在するpHを有する胃腸液中で不溶性であるが、5.5より高いpH、すなわち下部消化管で一般的に存在するpHでは容易に可溶性であるか部分的に可溶性であることが知られている。別の特定のメタクリル酸ポリマーは、EUDRAGIT Sであり、これは、エステルに対する遊離カルボキシル基の比がおよそ1:2であることにおいてEUDRAGIT L-30Dと異なる。EUDRAGIT Sは、5.5より低いpHで不溶性であるが、EUDRAGIT L-30Dとは異なり、小腸においてのような5.5〜7.0の範囲のpHを有する胃腸液中で殆ど溶解しない。
【0168】
コポリマーは、pH7.0以上、すなわち、結腸において一般的に見出されるpHで可溶性である。EUDRAGIT Sを、単独で大腸における薬物送達を提供するためのコーティングとして使用してもよい。あるいは、EUDRAGIT Sは、pH7より低い腸液中で殆ど溶解しないので、活性剤を腸管の多様な区域へ送達するために処方され得る遅延放出組成物を提供するために、pH5.5より高い腸液中で可溶性のEUDRAGIT L-30Dと組み合わせて使用してもよい。EUDRAGIT L-30Dが多く使用されるほど、放出および送達がより近部で始まり、EUDRAGIT Sが多く使用されるほど、放出および送達がより末端で始まる。当業者は、EUDRAGIT L-30DおよびEUDRAGIT Sを、類似のpH可溶性の特徴を有する他の薬学的に受容可能なポリマーで置換してもよいことを理解する。本発明の特定の態様において、好ましい腸溶性コーティングは、ACRYL-EZE(登録商標)(メタクリル酸コポリマー型C;Colorcon,West Point,PA)である。
【0169】
腸溶性コーティングは、薬物放出が一般的に予測可能な位置で達成されるような活性剤の徐放を提供する。腸溶性コーティングはまた、口腔、咽頭、食道、および胃の上皮および粘膜組織への、ならびにこれらの組織と関連する酵素への、治療剤およびキャリアの暴露を予防する。したがって、腸溶性コーティングは、活性剤、キャリアおよび患者の内部組織を、所望の送達の部位での薬物放出に先立つ有害な事象から保護することに役立つ。さらに、本発明のコーティングされた材料は、薬物吸収、活性剤保護および安全性の至適化を可能にする。胃腸管内の多様な領域での活性剤の放出を目的とする多重腸溶性コーティングは、さらにより効果的で持続的な改善された胃腸管を通しての送達を可能にする。
【0170】
コーティングは、胃液の浸透を可能にする孔および亀裂の形成を予防するために、可塑剤を含有してもよく、通常含有する。好適な可塑剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:クエン酸トリエチル(citroflex 2)、トリアセチン(グリセリルトリアセタート)、クエン酸アセチルトリエチル(citroflec a2)、carbowax 400(ポリエチレングリコール400)、フタル酸ジエチル、クエン酸トリブチル、アセチル化モノグリセリド類、グリセロール、脂肪酸エステル、プロピレングリコール、およびフタル酸ジブチル。特に、アニオン性カルボン酸アクリル酸ポリマーは、通常、重量のおよそ10%〜25%の可塑剤、特にフタル酸ジブチル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチルやトリアセチンを含む。コーティングはまた、コーティング材料を可溶化または分散させるために、ならびにコーティングの性能およびコーティングされた製品を改善するために、他のコーティング賦形剤、例えば、粘着低下剤(detackifier)、消泡剤、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)および安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、酸および塩基)を含んでもよい。
【0171】
コーティングは、治療剤(単数または複数)の粒子、治療剤(単数または複数)の錠剤、治療剤(単数または複数)を含有するカプセルなどに、従来のコーティングの方法および設備を用いて適用することができる。例えば、腸溶性コーティングは、コーティング用のパン(pan)、無気噴霧技術、流動床コーティング設備などを用いて、カプセルに適用できる。コーティングされた投与形態を調製するための材料、設備、およびプロセスに関する詳細な情報は、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets、Liebermanら編(New York:Marcel Dekker,Inc.,1989)およびAnselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,6th Ed.(Media, PA:Williams & Wilkins,1995)において見出すことができる。コーティングの厚みは、上記の通り、経口投与形態が下部腸管内の所望の局所送達の部位に届くまで完全であり続けることを保証するために十分でなければならない。
【0172】
別の態様において、本発明の処方物を内包する腸溶性コーティングされた浸透圧によって活性化されるデバイスを含む薬物投与形態が提供される。この態様において、薬物含有処方物を、小さい開口部を含む半透性の膜または障壁中にカプセル化する。いわゆる「浸透圧ポンプ」薬物送達デバイスに関して当該分野において公知であるように、半透性膜は、両方向に水を通過させるが、薬物は通過させない。したがって、デバイスが水性の液体に暴露される場合、デバイスの内部と外部との浸透圧の差に起因して、水はデバイス内へ流入する。水がデバイスに流入すると、内部の薬物含有処方物は、開口部を通って外へ「ポンプ」される。薬物放出の速度は、水の流入速度に薬物濃度を乗算したものと等価である。水の流入および薬物流出の速度は、デバイスの開口部の組成および大きさによって制御され得る。
【0173】
半透性膜のための好適な材料として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ポリビニルアルコール、塩酸ポリビニル、半透性ポリエチレングリコール類、半透性ポリウレタン類、半透性ポリアミド類、半透性スルホン酸ポリスチレン類およびポリスチレン誘導体;半透性ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、半透性ポリ(塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム)、およびセルロース性ポリマー類、例えば、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、プロピオン酸セルロース、プロピオン酸セルロースアセテート、ブチル酸セルロースアセテート、三吉草酸セルロース、セルローストリルメート(trilmate)、三パルミチン酸セルロース、三オクタノン酸セルロース、三プロピオン酸セルロース、二コハク酸セルロース、二パルミチン酸セルロース、セルロースジシレート(dicylate)、コハク酸セルロースアセテート、プロピオン酸セルロースアセテートオクタノン酸セルロースアセテート、吉草酸パルミチン酸セルロース、ヘプタン酸セルロースアセテート、セルロースアセトアルデヒドジメチルアセタール、セルロースアセテートエチルカルバメート、セルロースアセテートメチルカルバメート、セルロースジメチルアミノアセテートおよびエチルセルロース。
【0174】
別の態様において、本発明の処方物を内包する持効性にコーティングされたデバイスを含む薬物投与形態を提供する。この態様において、薬物含有処方物を、持効性の膜またはフィルム中に被包する。膜は、上記の通り半透性である。半透性膜は、コーティングされたデバイス内部に水を通過させて薬物を溶解させる。溶解した薬物溶液は、半透性膜を通って拡散する。薬物放出の速度は、コーティングされたフィルムの厚さに依存し、薬物の放出は、GI管の任意の部分において開始させることができる。かかる膜のための好適な膜材料は、エチルセルロースである。
【0175】
別の態様において、本発明の処方物を内包する持効性デバイスを含む薬物投与形態を提供する。この態様において、薬物含有処方物は、持効性ポリマーと均質に混合される。これらの持効性ポリマーは、高分子量の水溶性ポリマーであり、水と接触した場合、膨張して、水が内部に拡散して薬物を溶解するためのチャネルを作る。ポリマーが膨張して水中に溶解すると、薬物のより多くが溶解のための水に曝される。かかる系は、一般的に持効性マトリックスと呼ばれる。かかるデバイスのための好適な材料として、ヒドロプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびメチルセルロースが挙げられる。
【0176】
別の態様において、本発明の持効性処方物を内包する腸溶性コーティングされたデバイスを含む薬物投与形態が提供される。この態様において、上記の薬物含有生成物は、腸溶性ポリマーでコーティングされる。かかるデバイスは胃においてはいかなる薬物も放出せず、デバイスが腸に到達すると腸溶性ポリマーが初めて溶解して、その後でのみ薬物の放出が開始される。薬物放出は、持効性の様式において行われる。
【0177】
腸溶性コーティングされ、浸透圧によって活性化されるデバイスは、従来の材料、方法、および設備を用いて製造することができる。例えば、浸透圧によって活性化されるデバイスは、第一に、薬学的に受容可能なソフトカプセル中に、前に記載される本発明の化合物の液体または半固体の処方物を被包することによって作ることができる。この内側のカプセルを、次いで、半透性膜組成物(例えば、セルロースアセテートおよびポリエチレングリコール4000を、好適な溶媒、例えば、塩化メチレン−メタノール混合物中に含む)で、例えば、気圧式装置を使用して、十分に厚い積層(例えば、約0.05mm)が形成されるまでコーティングする。半透性積層カプセルを、次いで、従来の技術を用いて乾燥させる。次いで、所望の直径(例えば、0.99mm)を有する開口部を、例えば機械穿孔、レーザー穿孔、機械断裂、またはゼラチン栓などの腐食可能なエレメントの腐食を用いて、半透性積層カプセルの壁を通して提供する。次いで、浸透圧によって活性化されるデバイスを、上記のように腸溶性コーティングしてもよい。
【0178】
液体または半固体のキャリアではなくむしろ固体のキャリアを含有する浸透圧によって活性化されるデバイスについては、内側のカプセルは随意である:半透性膜は、直接的にキャリア−薬物組成物の周囲に形成することができる。しかし、浸透圧によって活性化されるデバイスの薬物含有処方物における使用のための好ましいキャリアは、溶液、懸濁液、液体、非混合性液、エマルジョン、ゾル、コロイドおよび油である。特に好ましいものとして、液体または半固体の薬物含有処方物を含有する腸溶性コーティングされたカプセルに用いられるものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0179】
セルロースコーティングは、フタル酸セルロースアセテートおよびセルロースアセテートトリメリテート;メタクリル酸コポリマー類、例えば、メチルアクリル酸から誘導されるコポリマーおよびそれらのエステル類であって、少なくとも約40%のメチルアクリル酸を含むもの;ならびに特にフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースのものが挙げられる。メチルアクリル酸として、分子量100,000ダルトン以上の分子量のものであって、例えば、約1:1の比におけるメチルアクリル酸およびメチルまたはエチルメチルアクリル酸に基づくものが挙げられる。代表的な製品として、Rohm GmbH(ダルムシュタット、ドイツ)から市販されているEndragit L、例えば、L 100-55が挙げられる。代表的なフタル酸セルロースアセテートは、17〜26%のアセチル含有物、および30〜40%のフタル酸含有物を有し、粘度はおよそ45〜90cPである。代表的なセルロースアセテートトリメリテートは、17〜26%のアセチル含有物、および25〜35%のトリメリテート含有物を有し、粘度は15〜20cSである。セルロースアセテートトリメリテートの例は、市販の製品CAT(Eastman Kodak Company、USA)である。
【0180】
フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、代表的には、20,000〜130,000ダルトンの分子量を有し、5〜10%のヒドロキシプロピル含有物、18〜24%のメトキシ含有物、および21〜35%のフタル酸含有物を有する。フタル酸セルロースアセテートの例は、市販の製品CAP(Eastman Kodak、Rochester N.Y.、USA)である。フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースの例は、Shin-Etsu Chemical Co. Ltd., Tokyo, Japanから入手可能な6〜10%のヒドロキシプロピル含有物、20〜24%のメトキシ含有物、21〜27%のフタル酸含有物、84,000ダルトンの分子量を有し、HP50の商品名で市販される市販の製品、ならびに、各々5〜9%、18〜22%および27〜35%の、ヒドロキシプロピル含有物、メトキシ含有物およびフタル酸含有物、78,000ダルトンの分子量を有し、HP55の商品名で同じ供給者から入手可能な市販の製品である。
【0181】
治療剤を、カプセル中で、コーティングしてまたはコーティングしないで提供してもよい。カプセル材料は、硬質または軟質のいずれであってもよく、当業者に理解されるように、代表的には、ゼラチン、デンプン、またはセルロース性の材料などの無味で容易に投与される水溶性化合物を含有する。カプセルは、好ましくはゼラチン帯などで密封される。例えば、カプセル化医薬品の調製のための材料および方法を記載するRemington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Edition (Easton, Pa.: Mack Publishing Co., 1995)を参照。
【0182】
本発明の治療剤(単数または複数)を含有する生成物を、坐剤として形成してもよい。本発明の治療剤(単数または複数)を、治療剤(単数または複数)の相対的放出に好ましい影響を与えるように、坐剤中または坐剤上のどこに位置させてもよい。放出の性質はまた、所望の通り、ゼロ次であっても、一次であっても、またはシグモイドであってもよい。
【0183】
坐剤は、直腸を介する投与のために意図される医薬の固形投与形態である。坐剤は、体腔(約98.6°F)中で融解、軟化、または溶解し、それによって含有される医薬を放出するように配合される。坐剤の基剤は、安定、非刺激性、化学的不活性、および生理学的不活性であるべきである。多数の市販の坐剤は、カカオバター、ココナッツ油、パーム穀粒油などの油性または脂性のベース材料を含み、これらは、しばしば室温で融解または変形し、保冷または他の保存の制限を必要とする。Tanakaらへの米国特許第4,837,214号は、20またはそれより小さいヒドキシル値を有し、8〜18炭素原子を有する脂肪酸のグイセリドを含有する、80〜99重量%のラウリン酸型の脂質を、1〜20重量%の脂肪酸のジグリセリド(エルカ酸が例である)と組み合わせて含む、坐剤の基剤を記載する。これらの型の坐剤の有効期限は、分解に起因して制限される。他の坐剤の基剤は、アルコール、界面活性剤などを含有し、これらは融点を上昇させるが、また、医薬の吸収の低下、および局所粘膜の刺激に起因する副作用をもたらし得る(例えば、Hartelendyらへの米国特許第6,099,853号、 Ahmadらへの米国特許第4,999,342号、およびAbidiらへの米国特許第4,765,978号を参照)。
【0184】
本発明の医薬坐剤組成物において使用される基剤としては、一般に、主成分としてトリグリセリド、ココアバター、パーム油、パーム穀粒油、ココナッツ油、分別ココナッツ油(fractionated coconut oil)、ラードおよびWITEPSOL(登録商標)、ラノリンおよび還元ラノリンなどのワックス;VASELINE(登録商標)、スクアレン、スクアランおよび液体パラフィンなどの炭化水素;カプリル酸、ラウリル酸、ステアリン酸およびオレイン酸などの長鎖および中鎖の脂肪酸;ラウリルアルコール、セタノールおよびステアリン酸アルコールなどの高級アルコール;ステアリン酸ブチルおよびマロン酸ジラウリルなどの脂肪酸エステル;トリオレインおよびトリステアリンなどの中鎖から長鎖のグリセリンのカルボン酸エステル;グリセリンアセトアセテートなどのグリセリン置換カルボン酸エステル;ならびにマクロゴール類およびセトマクロゴールなどのポリエチレングリコールおよびその誘導体を含む油および脂質が挙げられる。これらは、単独で、または二つ以上の組み合わせのいずれかで使用することができる。所望の場合、本発明の組成物は、坐剤において通常用いられる表面活性剤、着色剤などをさらに含んでもよい。
【0185】
本発明の医薬組成物は、前もって決定された量の活性成分、吸収補助剤および必要に応じて基剤などを、スタラーまたは製粉機において、必要であれば高温で、均質に混合することによって調製することができる。生じる組成物を、例えば、混合物を鋳型に流延(cast)することによって、またはカプセル充填機を用いてゼラチンカプセル中に流し入れることによって、単位投与形態の坐剤を形成する。
【0186】
本発明による組成物はまた、鼻用スプレー、点鼻剤、懸濁液、ゲル、軟膏、クリームまたは散剤として投与してもよい。組成物の投与はまた、本発明の組成物を含有する鼻用タンポンまたは鼻用スポンジを用いることを含んでもよい。
【0187】
本発明とともに用いることができる経鼻送達系は、水性製剤、非水性製剤およびこれらの組み合わせを含む多様な形態をとることができる。水性製剤として、例えば、水性ゲル、水性懸濁液、水性リポソーム分散剤、水性エマルジョン、水性マイクロエマルジョンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。非水性製剤として、例えば、非水性ゲル、非水性懸濁液、非水性リポソーム分散剤、非水性エマルジョン、非水性マイクロエマルジョンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。経鼻送達系の種々の形態には、pHを維持するための緩衝液、薬学的に受容可能な増粘剤、および湿潤剤を含めることができる。緩衝液のpHは、鼻粘膜を越えての治療剤の吸収を至適化するために選択することができる。
【0188】
非水性鼻用処方物に関して、処方物が哺乳動物の鼻腔に送達された場合に、そこで例えば鼻粘膜と接触する際に選択されたpHの範囲が達成されるように、緩衝剤の好適な形態を選択してもよい。本発明において、組成物のpHは、約2.0〜約6.0に維持されるべきである。組成物のpHが、投与の際にレシピエントの鼻粘膜に著しい刺激を引き起こさないものであることが望ましい。
【0189】
本発明の組成物の粘度は、薬学的に受容可能な増粘剤を用いることによって、所望のレベルで維持することができる。本発明に従って用いることができる増粘剤としては、メチルセルロース、キサンタンゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸類、アラビアゴム、キトサン類、およびこれらの組み合わせが挙げられる。増粘剤の濃度は、選択された剤および所望の粘度に依存する。かかる剤はまた、上記の散剤処方物において使用してもよい。
【0190】
本発明の組成物はまた、粘膜の乾燥を低減または予防するため、およびその刺激を予防するために湿潤剤を含んでもよい。本発明において使用することができる好適な湿潤剤として、ソルビトール、鉱物油、植物油、およびグリセロール;無痛化剤;膜コンディショナー;甘味剤;およびこれらの組み合わせが挙げられる。本組成物中の湿潤剤の濃度は、選択される剤に依存して変化する。
1種以上の治療剤を経鼻送達系または本明細書中に記載の任意の他の送達系に組み込んでもよい。
【0191】
局所投与のために処方される組成物は、液体であっても半固体(例えば、ゲル、ローション、エマルジョン、クリーム、軟膏、スプレーまたはエアロゾルが挙げられる)であっても、「有限(finite)」のキャリア、例えばその形態を保持する非拡散性材料(例えば、貼付剤、生体接着材料、包帯剤または絆創膏が挙げられる)と組み合わせて提供してもよい。それは、水性であっても非水性であってもよい;それは、溶液、エマルジョン、分散剤、懸濁液または任意の他の混合物として処方してもよい。
【0192】
重要な投与の様式として、皮膚、眼または粘膜への局所適用が挙げられる。したがって、代表的なビヒクルは、新体表面への医薬適用または化粧品適用に好適なものである。本明細書において提供される組成物は、患者の身体における多様な領域に局所または局所的に適用することができる。上記のように、局所適用とは、到達可能な身体表面の組織、例えば、皮膚(外側の外皮または被覆物)および粘膜(粘液を産生、分泌および/または含有する表面)に適用することを指すことを意図する。例示的な粘膜表面として、眼、口(口唇、舌、歯茎、頬、舌下および口蓋など)、喉頭、食道、気管支、膣および直腸/肛門の粘膜表面が挙げられる;いくつかの態様においては、好ましくは、口、喉頭、食堂、膣および直腸/肛門である;他の態様においては、好ましくは、眼、喉頭、食道、気管支、鼻腔、および膣および直腸/肛門である。上記のように、本明細書において、局所的投与とは、身体の別々の領域、例えば、関節、軟組織領域(筋肉、腱、靱帯、眼内のまたは他の肉質の内部領域など)、または身体の他の内部領域などへの適用を指す。したがって、本明細書において使用される場合、局所的適用とは、身体の別々の領域への適用を指す。
【0193】
本組成物の局所および/または局所的投与に関して、望ましい効力は、例えば、痛覚過敏部位へ実質的に到達して所望の抗痛覚過敏性の疼痛緩和をもたらすような、本発明の治療剤(単数または複数)の皮膚および/または組織への浸透を含み得る。本組成物の効力は、例えば、中枢性オピオイドによって達成されるものとほぼ同じであってよい。しかし、本明細書において詳細に考察されるように、本発明の治療剤(単数または複数)は、血液脳関門を越えないので、本発明の治療剤(単数または複数)によって達成される効力は、好ましくは代表的に中枢性オピエートと関連する望ましくない作用(例えば、呼吸低下、鎮静、および中毒が挙げられる)なしで得ることができる。
【0194】
また、特定の好ましい態様(水性ビヒクルを含む態様を含む)においては、組成物はまた、2以上のヒドロキシル基を含む化合物であるグリコールを含んでもよい。組成物における使用のために特に好ましいグリコールは、プロピレングリコールである。これらの好ましい態様において、グリコールは、好ましくは、組成物の全重量に基づいて0重量%より多くから約5重量%までの濃度で、組成物中に含まれる。さらに好ましくは、組成物は、約0.1重量%から約5重量%未満までのグリコールを含み、約0.5〜約2重量%がさらにより好ましい。なおより好ましくは、組成物は約1重量%のグリコールを含む。
【0195】
関節内投与などの局所的内部投与のため、組成物を、好ましくは、等張性に緩衝化された食塩水などの水性ベースの媒体中で溶液または懸濁液として処方するか、または内部投与のために意図される生体適合性の支持体または生体接着物と組み合わせる。
【0196】
ローションは、例えば、懸濁液、分散剤またはエマルジョンの形態であり得、1種以上の化合物の有効濃度を含有する。有効濃度は、好ましくは、有効量をもたらすものであり、代表的には、本発明明細書において提供される1種以上の化合物の約0.1〜50%(重量)またはそれより高い濃度である。ローションはまた、(重量で)1%〜50%の軟化剤およびバランス水(balance water)、好適な緩衝剤、および上記の他の剤を含んでもよい。
【0197】
ヒトの皮膚への適用に適するとして当業者に公知のあらゆる軟化剤を使用することができる。これらは、以下を含むがこれらに限定されない:(a)炭化水素の油類およびワックス類(鉱物油、ワセリン、パラフィン、セレシン、オゾケライト、微晶質ワックス、ポリエチレンおよびペルヒドロスクアラン(perhydrosqualene)を含む)。b)シリコーンオイル類(ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、水溶性およびアルコール可溶性のシリコーン−グリコールコポリマーを含む)。(c)トリグリセリドの脂質類および油類(植物、動物、および海洋の供給源から誘導されるものを含む)。例として以下が挙げられるがこれらに限定されない:ヒマシ油、紅花油、綿実油、コーン油、オリーブ油、肝油(cod liver oil)、アーモンド油、アボガド油、パーム油、ゴマ油、および大豆油。
【0198】
(d)アセチル化モノグリセリドなどのアセトグリセリドエステル類。(e)エトキシ化モノステアリン酸グリセリルなどのエトキシ化グリセリド類。(f)10〜20の炭素原子を有する脂肪酸のアルキルエステル類。脂肪酸のメチル、イソプロピルおよびブチルエステルが、本明細書において有用である。例として以下が挙げられるがこれらに限定されない:ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、ミスチリン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸デシル、イソステアリン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソヘキシル、アジピン酸ジヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および乳酸セチル。(g)10〜20の炭素原子を有する脂肪酸のアルケニルエステル類。その例として以下が挙げられるがこれらに限定されない:ミリスチル酸オレイル、ステアリン酸オレイル、およびオレイン酸オレイル。
【0199】
(h)9〜22の炭素原子を有する脂肪酸類。好適な例として以下が挙げられるがこれらに限定されない:ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸(hydroxystearic)、オレイン酸、リノレン酸、リシノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸、およびエルカ酸。(i)10〜20の炭素原子を有する脂肪族アルコール類、例えば、非限定的に、ラウリル、ミリスチル、セチル、ヘキサデシル、ステアリル、イソステアリル、ヒドロキシステアリル、オレイル、リシノレイル(ricinoleyl)、ベヘニル(behenyl)、エルシル(erucyl)、および2−オクチルドデシルアルコール類。(j)以下を非限定的に含む脂肪族アルコールエステル類:10〜20の炭素原子のエトキシ化脂肪族アルコール、例えば、1〜50のエチレンオキシド基または1〜50のプロピレンオキシド基またはこれらの混合物が結合しているラウリル、セチル、ステアリル、イソステアリル、オレイル、およびコレステロールアルコールが挙げられるがこれらに限定されない。(k)エトキシ化脂肪族アルコールの脂肪酸エステル類などのエーテル−エステル類。
【0200】
(l)ラノリンおよび誘導体であって、以下を含むがこれらに限定されない:ラノリン、ラノリン油、ラノリンワックス、ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸、ラノリン酸(lanolate)イソプロピル、エトキシ化ラノリン、エトキシ化ラノリンアルコール類、エトキシ化コレステロール、プロポキシ化ラノリンアルコール類、アセチル化ラノリン、アセチル化ラノリンアルコール、リノレン酸ラノリンアルコール、リシノール酸(ricinoleate)ラノリンアルコール、リシノール酸ラノリンアルコール類のアセテート、エトキシ化アルコール−エステル類のアセテート、ラノリンの水素化分解物、エトキシ化水素分解ラノリン、エトキシ化ソルビトールラノリン、ならびに液体および半固体のラノリン吸収基剤。
【0201】
(m)多価アルコール類およびポリエステル誘導体(以下が挙げられるがこれらに限定されない:プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(M.W.2000〜4000)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール、グリセロール、エトキシ化グリセロール、プロポキシ化グリセロール、ソルビトール、エトキシ化ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ポリエチレングリコール(M.W.200〜6000)、メトキシポリエチレングリコール350、550、750、2000、5000、ポリ(エチレンオキシド)ホモポリマー類(M.W.100,000〜5,000,000)、ポリアルキレングリコール類および誘導体、ヘキシレングリコール(2−メチル−2,4−ペンタンジオール)、1,3−ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、エトヘキサジオールUSP(2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)、C.sub.15〜C.sub.18ビシナルグリコール(vicinal glycol)、ならびにトリメチルオールプロパンのポリオキシプロピレン誘導体)。
【0202】
(n)多価アルコールエステル類(以下が挙げられるがこれらに限定されない:エチレングリコールの一または二脂肪酸エステル、ジエチレングリコールの一または二脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(M.W.200〜6000)、一または二脂肪酸エステル、プロピレングリコールの一または二脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール2000モノオレイン酸、ポリプロピレングリコール2000モノステアリン酸、エトキシ化プロピレングリコールモノステアリン酸、グリセリルの一または二脂肪酸エステル、ポリグリセロールポリ脂肪酸エステル、エトキシ化グリセリルモノステアリン酸、1,3−ブチレングリコールモノステアリン酸、1,3−ブチレングリコールジステアリン酸、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ならびにポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)。
【0203】
(o)ワックスエステル類(以下が挙げられるがこれらに限定されない:蜜蝋、鯨蝋、ミリスチル酸ミリスチル、およびステアリン酸ステアリル、および蜜蝋誘導体(蜜蝋とエーテル−エステル類の混合物を形成する多様なエチレンオキシド含有物のエトキシ化ソルビトールとの反応生成物である、ポリオキシエチレンソルビトール蜜蝋が挙げられるがこれに限定されない))。(p)カルナバワックスおよびカンデリラワックスを非限定的に含む植物ワックス類。(q)レシチンおよび誘導体などのリン脂質類。(r)ステロール類(コレステロールおよびコレステロール脂肪酸エステル類が挙げられるがこれらに限定されない)。(s)脂肪酸アミド、エトキシ化脂肪酸アミド、および固体の脂肪酸アルカンオールアミドなどのアミド類。
【0204】
ローションは、好ましくは、(重量で)1%〜10%、より好ましくは2%〜5%の、乳化剤をさらに含む。乳化剤は、非イオン性、アニオン性またはカチオン性であってよい。良好な非イオン性の乳化剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:10〜20の炭素原子を有する脂肪族アルコール、10〜20の炭素原子を有する脂肪族アルコールであって、2〜20モルのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドで濃縮されたもの、アルキル鎖中に6〜12の炭素原子を有するアルキルフェノールであって、脂肪酸部分が10〜20の炭素原子を含有する2〜20モルのエチレンオキシド、エチレンオキシドの一および二脂肪酸エステル、エチレングリコールの一および二脂肪酸エステルで濃縮されたもの、ジエチレングリコール、分子量200〜6000のポリエチレングリコー、分子量200〜3000のルプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビトール、ポリオキシエチレンソルビタンならびに親水性ワックスエステル類。
【0205】
好適なアニオン性乳化剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:脂肪酸石鹸、例えば、ナトリウム、カリウム、およびトリエタノールアミンの石鹸であって、脂肪酸部分が10〜20の炭素原子を含むもの。他の好適なアニオン性乳化剤として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:アルカリ金属、アンモニウムまたは置換アンモニウムの硫酸アルキル、アルキルアリールスルホネート、およびアルキル部分において10〜30の炭素原子を有するアルキルエトキシエーテルスルホネート。アルキルエトキシエーテルスルホネートは、1〜50のエチレンオキシド単位を含む。良好なカチオン性乳化剤の中では、四級アンモニウム、モルホリン(morpholinium)化合物およびピリジニウム化合物である。先の段落において記載される軟化剤の特定のものもまた、乳化特性を有する。かかる軟化剤を含有するローションを処方する場合、さらなる乳化剤は必要でないが、組成物に含めてもよい。
【0206】
ローションのバランス(balance)は、水またはC2もしくはC3アルコール、または水とアルコールとの混合物である。ローションは、単純に全ての成分を共に混合することによって処方する。好ましくは、ロペラミドなどの化合物は、混合物中に溶解、懸濁、またはさもなくば均質に分散させる。
【0207】
かかるローションの他の従来の成分を含んでもよい。かかる添加物の一つは、組成物の1重量%〜10重量%のレベルでの増粘剤である。好適な増粘剤の例として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:架橋されたカルボキシポリメチレンポリマー類、エチルセルロース、ポリエチレングリコール類、トラガカントガム、カラヤガム(gum kharaya)、キサンタンガム、およびベントナイト、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロース。
【0208】
クリームは、本発明の治療剤(単数または複数)の有効量を処置される組織へ送達するために有効な濃度、代表的には、約0.1%、好ましくは1%より高くと50%より高くとの間で、好ましくは約3%と50%との間で、より好ましくは約5%と15%との間で、本発明の治療剤(単数または複数)を含むように処方され得る。クリームはまた、5%〜50%、好ましくは10%〜25%の軟化剤を含み、残りは水または等張性緩衝液などの他の好適な非毒性キャリアである。ローションのための上記の軟化剤を、クリーム組成物において使用してもよい。クリームはまた、上記のような好適な乳化剤を含んでもよい。乳化剤は、3%〜50%、好ましくは5%〜20%のレベルで、組成物中に含まれる。
【0209】
溶液または懸濁液として処方されるこれらの組成物は、皮膚に適用してもよく、または、エアロゾルもしくは泡体として処方してスプレー式(spray-on)として皮膚に適用してもよい。エアロゾル組成物は、代表的には、(重量で)25%〜80%、好ましくは30%〜50%の好適な噴霧剤を含む。かかる噴霧剤の例は、塩化、フッ化、および塩化フッ化された低分子炭化水素である。亜酸化窒素、二酸化炭素、ブタン、およびプロパンもまた、噴霧剤ガスとして使用される。これらの噴霧剤は、当該分野において理解されるように、容器の含有物を排出するために好適な量および圧力下において使用される。
【0210】
好適に調製された溶液および懸濁液はまた、代表的には、眼および粘膜に適用することができる。溶液、特に眼科での使用のために意図されるものは、0.01%〜10%の等張性溶液として、約5〜7のpHで、適当な塩を用いて処方され、好ましくは、本明細書中の1種以上の化合物を、約0.1%、好ましくは1%より高くから50%またはそれ以上までの濃度で含む。好適な眼科用溶液は、公知である(例えば、代表的な眼科用の洗浄溶液および局所適用のための溶液を記載する米国特許第5,116,868号を参照)。かかる溶液は、約7.4に調節されたpHを有し、例えば、90〜100mMの塩化ナトリウム、4〜6mMの二塩基リン酸カリウム、4〜6mMの二塩基リン酸ナトリウム、8〜12mMのクエン酸ナトリウム、0.5〜1.5mMの塩化マグネシウム、1.5〜2.5mMの塩化カルシウム、15〜25mMの酢酸ナトリウム、10〜20mMのD.L.−ナトリウム、β−ヒドロキシブチレート、および5〜5.5mMのブドウ糖を含む。
【0211】
ゲル組成物は、単純に、好適な増粘剤を先に記載した溶液または懸濁液の組成物に混合することによって処方することができる。好適な増粘剤の例は、ローションと関連して先に記載した。
ゲル化組成物は、本発明の治療剤の有効量を含み、代表的には、以下を含む:約0.1〜50重量%またはそれ以上の間の濃度での本明細書において提供される1種以上の化合物;約5%〜75%、好ましくは10%〜50%の前記のような有機溶媒;0.5%〜20%、好ましくは1%〜10%の増粘剤;バランス(balance)は、水または他の水性もしくは非水性のキャリア(例えば、有機性液体、またはキャリアの混合物など)である。
【0212】
処方物は、定常状態血漿レベルを作るために構築して準備してもよい。定常状態血漿レベル濃度は、当業者に公知であるように、HPLC技術を用いて測定することができる。定常状態は、薬物アベイラビリティの速度が循環からの薬物除去の速度と等しい場合に達成される。代表的な治療設定において、本発明の治療剤(単数または複数)は、周期的投与レジメンまたは一定注入レジメンを用いてのいずれかで、患者に投与される。血漿における薬物の濃度は、投与の開始の直後に上昇する傾向があり、細胞および組織中への分布によって、代謝によってまたは排出によって薬物が循環から除去されるにつれて、時間とともに低下する傾向がある。
【0213】
定常状態は、平均薬物濃度が長期間一定であり続ける場合に得られる。間欠的投与の場合において、薬物濃度周期のパターンは、用量間の各間期において同一に繰り返され、平均濃度は一定であり続ける。一定注入の場合において、平均薬物濃度は、一定であり続け、変動は非常に小さい。定常状態の達成は、血漿中の薬物の濃度を、周期が用量ごとに同一に繰り返されることを検証できるように、少なくとも一周期の投与に渡って測定することによって決定する。代表的には、間欠的投与レジメンにおいて、定常状態の維持は、別の用量の投与の直前での一周期の連続的なトラフでの薬物濃度を決定することによって検証することができる。濃度の変動が低い一定注入レジメンにおいて、定常状態は、任意の2回の薬物濃度の連続測定によって検証することができる。
【0214】
図7は、本発明によるキットを示す。キット10は、オピオイド錠剤を含有するバイアル12を含む。キット10はまた、S−MNTX錠剤(小丸薬を含み、その一部は、pH感受性材料で腸溶性コーティングされ、その一部は、胃中ですぐS−MNTXを放出するように構築されて準備される)を含有するバイアル14を含む。キットは、下痢を罹患する被験体または下痢の症状を有する被験体に錠剤を投与するための指示書20を含む。指示書は、S−MNTXがR−MNTXを含まない純粋なS−MNTXであることを示す証印、例えば書類を含む。
【0215】
本発明のいくつかの局面において、キット10は、必要に応じてまたは代替的に、医薬製剤バイアル16および医薬製剤希釈剤バイアル18を含んでもよい。医薬製剤のための希釈剤を含むバイアルは、随意的である。希釈剤バイアルは、S−MNTXの濃縮溶液または凍結乾燥粉末であり得るものを希釈するための生理食塩水などの希釈剤を含有する。指示書は、特定の量の希釈剤と特定の量の濃縮医薬製剤とを混合し、それによって注射または注入のための最終処方物を調製するための指示書を含む。指示書20は、患者をS−MNTXの有効量で処置するための指示書を含む。製剤を含む容器は、容器がボトルであっても、隔壁を有するバイアル、隔壁を有するアンプル、注入バッグなどであっても、製剤がオートクレーブされるかまたは凍結乾燥されると変色する従来の印などの、さらなる証印を含んでもよい。
【0216】
本発明は、その適用を、以下の記載に記述されるまたは図に示される説明の詳細および構成要素の配列に限定されない。本発明は、他の態様および多様な方法において実施および実行されることが可能である。また、本明細書において使用される語法および専門用語は、説明のためのものであり、限定するものとしてみなされるべきではない。本明細書における、「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する(having)」、「含有する(containing)」、「包含する(involving)」およびそれらの変化形は、以下に列挙される事項およびそれらの等価物ならびにさらなる事項を包含することを意味する。
【0217】
例
S−MNTXの製造および生成のための効率的な方法を見出すために、多数の異なる合成経路およびプロトコルを試した。これらのいくつかの説明を以下に提供する。また、試薬、中間体および開始材料を製造するための手順も提供する。
【0218】
例I
オキシモルホンへのオキシコドンの脱保護。オキシモルホンをオキシコドンから合成した。オキシモルホンへのオキシコドンの脱保護を、文献において先に記載される条件を用いて行った(Iijima, I.; Minamikawa, J.; Jacobson, A. E.; Brossi, A.; Rice, K. C. J. Med. Chem. 1978, 21(4), 398)。収率は、基線材料を除去するためにシリカゲルの栓を通すろ過からなる精製を用いて、58〜64%の範囲である。精製されたオキシモルホンをアルキル化反応のために使用した。精製なしで、95%までのオキシモルホンの収率を得た。この粗材料のHPLC精製率は、代表的には、約94%である。
【0219】
(インドメチル)シクロプロパンの調製。(インドメチル)シクロプロパンを、(ブロモメチル)シクロプロパンからフィンケルスタイン反応を通して調製した。代表的な収率は、約68〜70%の範囲であり、代表的な精製率は、GCによって89〜95%(AUC)であり、開始の臭化物が、唯一の主要な不純物であった。
【0220】
オキシモルホンの直接アルキル化。アルキル化剤としてヨウ化シクロプロピルメチルを用いるオキシモルホンの直接的なアルキル化は、生産性のある収率のS−MNTXをもたらすことを明らかにした。経路を、図2に示す。オキシモルホンの直接的なアルキル化は、HPLC(AUC)によって観察されるものとしてほぼ50%の変換率まで進行することを観察し、さらに調査した。
【0221】
オキシモルホンを、NMP(10体積)中のヨウ化シクロプロピルと組合せ、70℃まで加熱した。結果を表1に要約する。アルキル化剤の分解は、反応時間中に試薬を完全には消費しなかったので、反応が進行して完了することを限定しなかった。さらに、S−MNTXに対するオキシモルホンの比は、アルキル化剤の当量の数に関係なく、反応がほぼ1:1まで進行したことを示した。
【0222】
【表2】
【0223】
精査の手順。粗生成物中のNMPの存在が保持を妨げることを見出したので、それを除去する手段が必要となった。イソプロピルアセテートとジオキサンとの混合物は、綿状の明色の固体であって最終的に油となるものを形成した。イソプロピルアセテートおよびイソプロピルアセテート/ジオキサンの混合物の使用を比較して、NMPを除去する上でいずれがより効果的であるかを決定した。各々の場合において、生成物および開始材料が混合物から沈殿し、NMPは溶液中に残留した。HPLCによる上清溶液および沈殿材料の分析は、2種の間に有意差を示さなかった。
【0224】
精製。NMPを生成物から除去した後で、残留物を、C18カートリッジを備えたBiotageのフラッシュクロマトグラフィー系を使用する反復的な連続逆相クロマトグラフィーに供した。最初のクロマトグラフィーは、0.2%のHBrを調節剤(modifier)として含む50%水性メタノールを用いて行った。溶媒系は、5%水性メタノールに至るまで、メタノール含有量が徐々に減少させた。クロマトグラフィーを、S−MNTXが89%(AUC)の純度で単離されるまで繰り返した。対イオンは、MSによっては検出され得なかったが、ヨウ化物と臭化物との混合物であることが予測された。
【0225】
定義された精査および精製によって、化学反応を大規模化し、28gのオキシコドン・HClをプロセスに通した。第一の工程、脱メチル化を、文献において記載の手順を用いる一反応において行い、熱メタノール(10容積)からの再結晶の後で、17gのオキシモルホンを得た。第二の工程を、圧力管の大きさおよび加熱の様式に起因する設備の限度のために、5つの等価のより小さい反応において行った。別個に分析されたが、混合物を、同様の組成を示した分析の後で、精査および精製のために組合せた。イソプロピルアセテートの研和は、予想どおり進行し、沈殿した残留物を、0.2%のHBrを含む20%水性メタノール中へ溶解し、C18カートリッジを備えたBiotage Flash 40sでのクロマトグラフィーによって精製し、0.2%のHBrを含む5%水性メタノールで溶出した。画分を、HPLCによって分析し、同様の組成の画分を組合せ、<80%、80〜90%、および<90%の純度(AUC)へ分離した。組み合わされた画分を濃縮化し、C18カートリッジを備えたBiotage Flash 75Lで再クロマトグラフィーした。このクロマトグラフィーの手順を、純度を増強するために繰り返した。最終的に、HBr調製剤は不必要であったことを発見し、溶出液から除去した。6回のクロマトグラフィー精製の後で、ほぼ11gのS−MNTXヨウ化物を、およそ80%の純度(AUC)で単離した。
【0226】
画分の濃縮化の間になんらかの形態の分解が起こり、生成物の著しい黒ずみをもたらすことが明らかになった。分解は、ヨウ化物対イオンが原因であり、したがって、材料をアニオン交換カラムに通してヨウ化物を臭化物と交換した。生成物を含有する溶出液を収集した後で、濃縮化は、おなじみの黒ずみをもたらさないようであり、黄色の油を得た。クロマトグラフィーを続け、生成物の流出物を純度のレベル(HPLCによるAUC)で分離した。材料のバルクをおよそ90%の純度まで増強した後、2.5%水性メタノールを溶出液として使用してさらなるクロマトグラフィーを行い、最終的にいくらかの材料の純度を>95%(AUC)まで改善した。
【0227】
全ての生成物の流出物を組合せ、凍結乾燥して、流動(free-flowing)散剤を得、741gのS−MNTXを、95%の純度で、2.5gのS−MNTXを90%の純度で、および1.0gのS−MNTXを79%の純度(AUC)で単離した。回収されたオキシモルホンの分画を収集し、エタノールから再結晶し、2.4g(>99%の純度、AUC)を得た。
【0228】
試薬の調製。S−MNTXの製造を目的とする一連の実験において、開始材料および試薬を、以下に記載するように得るかまたは作製した。設備および器具のデータもまた、提供する。
【0229】
全ての非水性反応を、乾燥窒素下において行った。他に記されない限り、試薬を市販のソースより購入し、受領したとおりで使用した。Bruker Avance 300分光計で、300MHzで、テトラメチルシランを内部基準として使用して、プロトン核磁気共鳴スペクトルを得た。Bruker Avance 300分光計で、75MHzで、溶媒ピークを基準として、炭素核磁気共鳴スペクトルを得た。Perkin-Elmer Spectrum 1000分光光度計で、赤外線スペクトルを得た。Finnigan質量分析計で、質量スペクトルを得た。
【0230】
薄層クロマトグラフィー(TLC)を、2.5×10cmのAnaltechシリカゲルGFプレート(厚さ25マイクロメートル)を使用して行った。UVおよび過マンガン酸カリウム染色を用いて、TLCの可視化を行った。Varian Starソフトウェアによって制御されるVarian ProStar HPLCで、以下の方法を用いて、HPLC分析を行った。
【0231】
【表3】
【0232】
HPLC方法II:
クロマトグラフィーの条件およびパラメータ:分析カラムの記載:Phenomenex Inertsil ODS-3 150×4.6mm、5μm カラム 温度:50.0℃ 流速:1.5mL/分 注入容積:20μL 検出波長:280nm 移動相:A=水:MeOH:TFA(95:5:0.1%;v/v/v) B=水:MeOH:TFA(35:65:0.1%;v/v/v) 分析時間:50分
定量限界:0.05%
検出限界:0.02%
勾配プロフィール:
【0233】
【表4】
【0234】
S−MNTXの合成および精製を、上記のHPLCプロトコルを用いてモニタリングした。S−MNTXは、記載されるHPLC条件を使用してR−MNTXから区別する。標準物質としての用途のための標準(authentic)のR−MNTXを、本明細書において記載されるプロトコルを用いて作製した。代表的なHPLCの実行において、S−MNTXは、R−MNTXが溶出する約0.5分前に溶出する。S−MNTXの保持時間は、およそ9.3分であり;R−MNTXの保持時間は約9.8分である。
【0235】
ガスクロマトグラフィー(GC)分析を、HP 3365 ChemStationソフトウェアにより制御されたHP 5890 Series II GCで、以下の方法を使用して行った:GC方法:
カラム: J&W Scientific DB-1、30m×0.53mm、3μ
初期温度: 40℃
初期時間: 10.00分
速度: 20℃/分
最終温度: 250℃
最終時間: 2.00分
インジェクター温度:250℃
検出器: Flame-Ionization
【0236】
代表的なアルキル化反応。基質を、250−mLのParrフラスコに10容積のアルキル化剤とともに満たした。ジメチルホルムアミド(DMF)またはNMPを共溶媒として使用する場合、2.5容積を添加した。フラスコを、Parr振盪器(水素タンクは遮断されている)に置き、圧力下において振盪しつつ反応温度まで加熱した。圧力は、反応の間、代表的には10〜15psiであった。反応物を、周期的にサンプリングし、MSおよびHPLCによって分析し、反応の程度および生成物の性質を決定する。反応の終了時に、混合物を丸底フラスコにメタノールとともに移し、揮発物質を除去した。残留物を、次いで、シリカゲル上でクロマトグラフィーにかけ、90:10:0.1の塩化物/メタノール/水酸化アンモニウムで溶出した。
【0237】
イオン交換カラムの調製。AG 1−X8樹脂(Bio-Rad、分析用グレード、100〜200メッシュ、塩化物形態)を、ガラスのカラム(50mm×200mm)中に充填し、1NのHBrで洗浄した(1L、脱イオン化(DI)水で調製した)。溶出液が6〜7のpHに達するまで、カラムをDI水(およそ10L)で洗浄した。
【0238】
S−MNTXの調製。5個の螺子開閉式圧力管中に、オキシモルホン(3.6g、11.9 mmol)、ヨウ化シクロプロピルメチル(17.39g、95.6mmol)、およびN−メチルピロリドン(3.6mL)を組み合わせた。この管を、螺子式テフロン(登録商標)キャップで密封し、70℃に予熱された6ウェルの反応器ブロック中においた。24時間後、反応物は、目に見えて二相性であり、固相および液相をサンプリングしたHPLC分析は、反応がおよそ50%の転換まで進行したことを示す。加熱を停止し、5個の反応混合物を、1−Lの丸底フラスコに移した。混合物を移し、管を洗浄するためにメタノールを使用した。減圧下においてメタノールを除去し、生じるNMP溶液を、イソプロピルアセテート(900mL)で処理、これにより固体沈殿および油性沈殿の両方を生じた。油をスパテラで攪拌し、粘着性の固体を得た。上清の液体を、固体から縦溝付(fluted)の濾紙中へデキャンティングした。濾紙において収集される固体を、回収を助けるためにメタノールを使用して、元の固体に組合せた。生じる溶液を、暗色の粘性の油まで濃縮した。
【0239】
油を、0.2%のHBrを含有する20%水性メタノール(20mL)中に溶解し、C18カートリッジを備えたBiotage Flash 75Lでのクロマトグラフィーによって精製した。画分を、Luna C18(2)カラム(4×20mm)でのHPLCによって分析し、生成物分画を、組み合わせて濃縮した。生じる「精製」生成物を、DI水(およそ20mL)中に溶解し、クロマトグラフィーを繰り返し、純度がおよそ70%(AUC)まで増大するまでプロセスを繰り返した。およそ70%の純度の生成物(およそ18g)を、DI水(20mL)中に溶解し、AG 1-X8アニオン交換樹脂のカラムを通して、臭化物形態に変換した(さらなる手順を参照のこと)(5×25cm)。カラムを、溶出される流出物中にMNTXが検出されなくなるまで、DI水で溶出させ、これを、C18カートリッジを備えたBiotage Flash 75L系をさらに使用するクロマトグラフィーによって精製し、5%水性メタノールで溶出させる。
【0240】
画分をLuna C18(2)カラム(4.6×150mm)でのHPLCによって分析し、生成物の流出物を、純度(AUC)に基づいて4つの流出物へと分配した;>90%、早い不純物を有する50〜90%、遅い不純物を有する50〜90%、および<50%。より純度の低い材料を、純度を増大するためにクロマトグラフィーを通して再循環し、これによって、最終的に、90%純粋(AUC)な3.0gのS−MNTXを生じた。より純度の低い画分を、およそ1gの90%純粋な材料をさらに生成するために、クロマトグラフィーによって精製し、これを、先にC18カートリッジを備えたBiotage Flash 75Lで単離して精製し、2.5%水性メタノールで溶出させた、1.0gの90%の純度の材料と組み合わせた。>95%(AUC)に達するまで純度を増大させるために、クロマトグラフィーを繰り返した。結論として、生成物の流出物を水から凍結乾燥して、741mgのS−MNTXを95.6%の純度(AUC)で;2.45gのS−MNTXを90%の純度(AUC)で;および1.08gのS−MNTXを79%の純度(AUC)で得た。
【0241】
図3は、この方法によって製造されたS−MNTXのプロトンNMRスペクトルを提供する。図4は、S−MNTX生成物の赤外線スペクトルを提供する。図5は、S−MNTX生成物のHPLCクロマトグラムを提供する。図6は、S−MNTX生成物の質量スペクトログラムを提供する。これらの分析データは、95%より高い純度でのMNTXの「S」立体異性体を同定する。
【0242】
例II
S−MNTXの合成および精製の至適化
イオン交換カラムの調製。AG 1-X8樹脂(Bio-Rad、分析用グレード、100〜200メッシュ、塩化物形態、50重量当量)を、ガラスのカラム中に充填し、1NのHBrで洗浄した(およそ100容積、脱イオン化(DI)水で調製した)。溶出液が6〜7のpHに達するまで、カラムをDI水で洗浄した。
【0243】
S−MNTXの調製。250−mLの、ジャケット付の三頸フラスコを、オキシモルホン(5.0g、16.6mmol)、NMP(5mL)および銅線(1.2g、3〜4mm片に切断)で満たす。フラスコをアルミニウムホイルで覆い、前もって平衡化した70℃に設定された加熱器/冷却器に接続した。ヨウ化シクロプロピルメチル(24.16g、132.7mmol)を、混合物に添加し、反応を20時間攪拌する。反応アリコートのHPLCによる分析によって2と3とが1:1の比であることが明らかになった。反応混合物を、IPAc(250mL)を含有するエルレンマイヤーフラスコ中に移し、これを、オーバーヘッド機械攪拌機で激しく攪拌した。油性の材料が固化した後で、固体をろ過除去し、フラスコ中へ移し戻す;ろ過物をHPLCで分析して廃棄した。
【0244】
組み合わされた固体の残留物を、水性メタノール中に溶解し、イオン交換樹脂(Bio-Rad AG 1-X8、50重量当量、臭化物形態に変換される)のカラムを通してろ過した。カラムをDI水で溶出させ、UV活性材料が検出されなくなるまで洗浄した(254nm)。生じる水溶液を濃縮し、残留物を、溶液を得るために最小の量のメタノールで、IPA(5容積)中に溶解した。微量の水を除去するために溶媒を取り除き、生じる固体を熱メタノール中に(3容積、約50℃で)溶解した。塩化メチレン/イソプロピルアルコール(CH2Cl2/IPA)(6容積/1容積)の室温混合物を添加し、生じる溶液を、結晶化が始まるまで外界条件下に置いた。混合物を、次いで、−20℃の冷凍庫に2日間保存した。ろ過により固体を収集し、2.8gのほぼ1:1の2とS−MNTXとの混合物を得た。固体を、CH2Cl2/IPA(6容積/1容積)を添加することによって熱メタノール(MeOH)(3容積、およそ50℃)から再結晶させ、混合物を冷却させた。単離された固体(2.1g、重量に基づいて29%)は、HPLC分析によって94.1%の純度(AUC)であることを見出した。
【0245】
S−MNTXの精製。純度>94%のS−MNTXのロットを組合せ、熱メタノール中で(3容積、およそ50℃で)溶解し、次いで、CH2Cl2/IPA(6容積/1容積)混合物を添加する、再結晶の手順を通した。混合物を外気温まで冷却させ、固体をろ過によって収集した。S−MNTXの純度を94%から>99%まで改善するために、4回の反復が必要であり、総集合的回収率は60%であった。全体で、8.80gのS−MNTXを、HPLC分析によって決定されるものとして99.8%(AUC)まで精製した。1H NMR、13C NMR、およびMSスペクトルは、割り当てられた構造と一致した。Karl Fischer分析(KF):4.7%の水;
Anal. Calcd for C21H26BrNO4:C,57.80;H,6.01;N,3.21;Br,18.31.Found:C,54.58;H,6.10;N,2.82;Br,16.37。
【0246】
例III
(S)−N−メチルナルトレキソンのオピエート受容体結合
S−N−メチルナルトレキソンのμ−、κ−およびδ−オピエート受容体についての結合特異性を決定するために、科学文献から適応させた方法を使用して、放射性リガンド結合アッセイを行った(Simonin, F et al 1994, Mol. Pharmacol 46:1015-1021; Maguire, P. et al 1992, Eur. J. Pharmacol. 213:219-225; Simonin, F. et al PNAS USA 92(15):1431-1437; Wang, JB 1994,. FEBS Lett 338:217-222)。
【0247】
S−MNTXは、ヒト組み換えμオピオイド受容体とKi=0.198μMで;ヒト組み換えκオピオイド受容体とKi=1.76μMで結合し、ヒト組み換えδオピオイド受容体には結合しないことを示した。
【0248】
例IV
S−MNTXのインビトロ薬理学:μ(ミュー、MOP)受容体バイオアッセイ
実験条件。モルモットの末端の回腸の区域を、酸素化(95% O2および5% CO2)して予温(37℃)した以下の(mMでの)組成:NaCl 118.0、KCl 4.7、MgSO4 1.2、CaCl2 2.5、KH2PO4 1.2、NaHCO3 25.0およびブドウ糖11.0(pH 7.4)の生理食塩水で充填した20−mlの器官槽(organ bath)中で浮遊させた。さらなる実験条件は、Hutchinson et al. (1975) Brit. J. Pharmacol., 55 : 541-546において記載されるようなものであった。
【0249】
インドメタシン(1μM)、ノル−ビナトルフィミン(0.01μM)、メチセルジド(1μM)、オンダンセロトン(10μM)、およびGR113808(0.1μM)もまた、各々、プロスタノイド放出を予防するために、およびk−オピオイド受容体、5−HT2受容体、5−HT3受容体および5−HT4受容体を遮断するために、実験を通して存在した。組織を、等張記録のために、強制トランスデューサーに接続した。これらを、1gの静止張力まで伸展させ、次いで、60分間平衡化させ、この時間中に、これらを繰り返し洗浄し、張力を再調製した。その後、これらを、定流スティミュレータによって0.1Hzで送達される、最大の収縮を引き起こすための最小の強度のパルスで、1msの間電気的に刺激した。8個の器官槽を有し、マルチチャネルデータ取得を備えた、半自動化された単離器官システムを使用して、実験を行った。
【0250】
実験プロトコル
アゴニスト活性のための試験。組織を、基準アゴニストDAMGOの準最大濃度(0.1μM)に曝し、応答性を検証し、コントロール応答を得た。大規模な洗浄およびコントロール攣縮(twitch contraction)の快復の後で、組織をS−MNTXまたは同じアゴニストの増大する濃度に曝した。異なる濃度を累積的に添加し、各々を、安定した応答が得られるまでまたは最大15分間、組織と接触させておいた。アゴニスト様応答(攣縮の阻害)が得られた場合、基準アンタゴニストナロキソン(0.1μM)を、S−MNTXの最大濃度に対して試験し、この応答におけるμ受容体の関与を確認した。
【0251】
アンタゴニスト活性についての試験。組織を基準アゴニストDAMGOの準最大濃度(0.1μM)に曝し、コントロール応答を得た。DAMGO誘導性応答の安定化の後で、増大する濃度のS−MNTXまたは基準アンタゴニストナロキソンを累積的に添加した。各々の濃度を、安定した応答が得られるまでまたは最大15分間、組織と接触させておいた。起こった場合、S−MNTXによるDAMGO誘導性応答の阻害は、μ受容体でのアンタゴニスト活性を示す。
【0252】
結果の分析および発表。測定されたパラメータは、電気的に誘発させた攣縮の振幅の、各化合物濃度によって誘導された最大変化であった。結果を、DAMGOに対するコントロール応答の%として表す(平均値)。EC50値(半最大応答をもたらす濃度)またはIC50値(DAMGOに対する応答の半最大阻害を引き起こす濃度)を、濃度−応答曲線の直線回帰分析によって決定した。
【0253】
結果。モルモット回腸バイオアッセイにおいて、μ−オピオイド受容体でのアゴニスト活性およびアンタゴニスト活性について、1.0E−08 Mから1.0E−04 Mまでで調査されたS−MNTXの効果を、表IV.1に示す。ここで、基準化合物のものもまた報告する。S−MNTXについて決定されたEC50値およびIC50値を、表IV.2に示す。
電場刺激されたモルモット回腸において、μ受容体アゴニストであるDAMGOは、攣縮の振幅の濃度依存的減少を誘導し、これは、アンタゴニストであるナロキソンによって、濃度依存的な様式に置いて逆転された。
【0254】
未処置の組織において、S−MNTXはまた、濃度依存的でありナロキソン感受性の攣縮の振幅の減少を引き起こした。
先にDAMGOで抑圧された組織において、S−MNTXは攣縮の振幅の快復をもたらさなかったが、さらなる減少を引き起こした。
これらの結果は、この組織において、S−MNTXがμ−オピオイド受容体のアゴニストとして振る舞うことを示す。
【0255】
【表5】
【0256】
結果を、DAMGOに対するコントロール応答(攣縮の振幅の減少)の%として表す。
(平均値;n=2)
【0257】
【表6】
【0258】
例V
ラットの胃腸管でのS−N−メチルナルトレキソンの効果
ラットにおける胃腸管通過のモルヒネ誘導性の抑制に対する、S−N−メチルナルトレキソン(純度−99.81% S−N−メチルナルトレキソン;0.19% オキシモルホン;検出可能なR−MNTXなし)の効果、ならびにR−MNTXの基準のソース(純度99.9%)を、A. F. Green, Br. J. Pharmacol. 14: 26-34, 1959; L. B. Witkin, C. F. et al J. Pharmacol. Exptl. Therap. 133: 400 -408, 1961; D. E. Gmerek, et al J. Pharmacol. Exptl. Ther. 236: 8-13, 1986;および O. Yamamoto et al Neurogastroenterol. Motil. 10: 523-532, 1998に記載の方法を使用して決定した。
【0259】
S−MNTXおよびR−MNTXを、1.0、3.0または10.0mg/kgの濃度で、皮下でラット(Crl:CD(登録商標)(SD)BR;5〜8週齢;180〜250gの体重)に投与した。コントロール群のラットには、2mg/kgの0.9%食塩水溶液を与えた(n=10)。15分後、ラットに食塩水(1mL/kg)またはモルヒネ(3mg/kg)を皮下注入した。モルヒネまたは食塩水の皮下用量の20分(±2分)後、0.25%メチルセルロース中10%の活性炭の懸濁液を、10mL/kgでラットに経口で投与した。炭を与えてから25分(±3分)後、ラットを安楽死させ、腸を除去し、湿った紙の上でメートル尺に沿って軽く伸ばした。幽門括約筋から盲腸までの小腸を計測し、その長さの一部としての炭が移動した距離を、各々のラットについて評価した。
【0260】
統計学的に有意な効果をTukey HSD多重比較試験を用いるANOVAによって決定した。<0.05のp値を有する差を、統計学的に有意と考える。炭の移動度についての値を、%効果として表し、以下の様式において計算した。各々のラットについて、センチメートルでの炭が移動した個々の距離を、センチメートルでの腸の(幽門括約筋から盲腸までの)全長で割る。各々の群についての平均値を計算し、%効果を以下の式を用いて計算する:
【0261】
【数1】
【0262】
結果
GI通過研究からの結果を、表1に示す。中枢および末梢の両方のオピオイド受容体に影響を及ぼすことが知られているモルヒネは、文献に記載されるとおり、GIの運動性を低下させた。末梢で選択的なμオピオイド受容体アンタゴニストであるR−MNTXは、単独で投与された場合、GI通過に対する効果を有さなかった。モルヒネに先立つR−MNTXの投与は、オピオイドアンタゴニストから予測されるように、モルヒネのGI減速効果を逆転した。モルヒネに対するR−MNTXのアンタゴニスト活性は用量依存的であり、GI通過がコントロール値と統計学的に有意な差でない値まで戻る程度までの1mg/kgでの部分的逆転および3mg/kgまたは10mg/kgでの逆転を有する。R−MNTXのアンタゴニストとは対照的に、S−MNTXは、単独で使用された場合、アゴニスト活性を有した、すなわち、GI通過の統計学的に有意な減少において反映されるように、GI運動性の低下をもたらした。GI運動性の低下におけるS−MNTXのアゴニスト活性は、S−MNTXとモルヒネとを併用して、さらにより強調された。S−MNTX+モルヒネの組合せは、いずれの化合物を単独で用いても観察されないレベルまでGI運動性を低下させる上で、劇的な相乗的アゴニスト効果を有した。S−MNTXのアゴニスト活性は、それ自体で投与された場合のGI通過の減速として、およびまた、2剤が併用された場合のモルヒネの阻害効果の増大によって、顕著であった。
【0263】
【表7】
【0264】
例VI
止痢活性についての試験
(a)ラットにおけるひまし油試験(例えば、Niemegeers et al. (1972) Arzneim
Forsch 22:516-518;米国特許第4,867,979号;同第4,990,521号;同第4,824,853号を参照)
ラットを一晩絶食させた。各々の動物を、試験されるべき化合物の所望の用量で静脈内で処置した。その1時間後、動物に1mlのひまし油を経口で与えた。各々の動物を、個々のケージ内に置き、ひまし油処置の約2時間後に、各々の動物を下痢の存在または不在について評価した。ED50値を、体重1kgあたりのmgでの、試験動物の50%において下痢が存在しない用量として決定した。
【0265】
例えば、若齢のメスのウィスターラット(体重230〜250g)を、一晩絶食させ、朝に各々の動物を経口で試験されるべき化合物の用量レベルで経口で処置した。その1時間後、動物に1mgのひまし油を経口で与えた。各々の動物を、個々のケージに置いた。ひまし油処置の後、異なる選択された時間間隔(例えば、1、2、3、4、6および8時間)で、下痢の存在または不在を記した。500個体のコントロール動物の95%より多くで、ひまし油による処置の1時間後に、重篤な下痢が観察された。この全か無かの評価基準を使用して、ひまし油処置の1時間後に下痢が観察されない場合は、試験化合物を用いて有意な正の効果が生じる。最低でも5つの用量レベルを、薬物ごとに使用して、各用量レベルを10個体のラットに10の異なる日に与えた。式(II)の化合物などの化合物についてのED50値、すなわち、かかる効果が50%の動物において観察される用量レベルは、一般的に、約0.01〜約10mg/kgの範囲である。
【0266】
(b)マウスにおけるひまし油試験(例えば、米国特許第4,326,075号を参照)
マウスの群に、試験化合物を経口で投与し、1時間半後に、全てのマウスに0.3mlのひまし油を与えた。ひまし油投与の3時間後、全てのマウスを下痢についてチェックし、マウスの50%を下痢から保護した試験化合物の用量が、ED50用量である。
【0267】
(c)トウゴマ油試験(例えば、米国特許第4,990,521号を参照)
ラット、例えばメスのウィスターラットまたは他の実験系統を、一晩絶食させる。各々の動物を、試験化合物の用量レベルで経口で処置する。その1時間後、動物に、ある量、代表的には1mlのトウゴマ油を経口で与え、各々の動物を個々のケージ内におき、トウゴマ油処置の1時間後に、下痢の存在または不在を記す。ED50値を、体重1kgあたりのmgでの、試験動物の50%において下痢が存在しない用量として決定する。
【0268】
(d)マウスにおけるPGE2誘導性下痢の拮抗
止痢活性を、マウスにおけるPGE2誘導性下痢のアンタゴニストとしての化合物の効果を評価することによって決定することができる(例えば、Dajani et al. 1975) European Jour. Pharmacol. 34:105-113;およびDajani et al. (1977) J. Pharmacol. Exp. Ther. 203:512-526を参照;例えば、米国特許第4,870,084号を参照)。この方法は、他には処置されないマウスにおいて15分以内に確実に下痢を誘発する。予め試験剤で処置された動物であって、下痢を生じていないものを、試験剤によって保護されたと考える。試験剤の便秘作用を、「全か無か」の応答として測定し、下痢を、よく形成された巨丸(boluse)であり硬く比較的乾燥した通常の糞便と非常に異なる、水っぽい無定形の便として定義する。
【0269】
標準的な実験用マウス、例えばチャールズリバーCD−1系統のアルビノマウスを用いる。これらは、代表的には、グループケージ中に置く。試験されたときの動物の体重の範囲は、20〜25gの間である。ペレット状のラット固形飼料は、試験の18時間前まで不断で利用可能であり、この時点で食餌を回収する。動物を体重計測し、同定のためにマークする。各々の薬物処置群において、5個体の動物を通常使用し、コントロールと比較する。20〜25gの体重のマウスを、グループケージ内に収容し、試験に先立ち一晩絶食させる。水は利用可能である。試験薬物処置の1時間後に、動物をPGE2(5%のETOH中0.32mg/kg、腹腔内)に暴露し、速やかに、例えば透明なアクリルボックス内に個別におく。15分間の終わりに、ボックスの底の使い捨ての段ボールシートを、下痢について、全か無かの基準でチェックする。
【0270】
例VII
疼痛モデルにおけるS−MNTXの鎮痛作用
以下の疼痛モデルは、S−MNTXの鎮痛活性を決定するために有用である。
1.マウスにおける酢酸苦悶アッセイ
マウス(CD−1、雄)を、体重計測して個々のスクエアに置く。試験品またはコントロール品を投与し、適当な吸収時間の後で、酢酸溶液を腹腔内に投与する。酢酸の腹腔注入の10分後、苦悶の回数を5分間の期間にわたって記録する。
各々のマウスについて、苦悶の総数を記録する。コントロール品および各試験品についての苦悶の平均数を、ANOVAおよびその後の関連する多重比較試験を使用して比較し、%阻害を計算する。
【0271】
2.フェニルキノン(PPG)苦悶アッセイ
マウス(CD−1、雄)を、体重計測して個々のスクエアに置く。試験品またはコントロール品を投与し、適当な吸収時間の後で、PPQ溶液(0.02%水溶液)を腹腔内に投与する。各々の動物を、10分間、苦悶の現れについて近くで観察する。
各々のマウスについて、苦悶の総数を記録する。コントロール品および各試験品についての苦悶の平均数を、ANOVAおよびその後の関連する多重比較試験を使用して比較し、%阻害を計算する。
【0272】
3.ラットにおけるRandall-Selittoアッセイ
このアッセイの目的は、ラットの疼痛閾値での試験品の効果を決定することである。
一晩の絶食の後、ラットを10個体の群においた。20個体のラットをビヒクルコントロールとして用いる。ラットに、20%のビール酵母懸濁液を左後足の足底表面へ順次注入する。2時間後、ラットに、試験品、基準薬、またはコントロールビヒクルを投与する。用量投与の1時間後、炎症を起こした足および炎症を起こしていない足の疼痛閾値を、直線スケールに沿って一定の率で増大する力を与える「鎮痛メーター(Analgesia Meter)」により計測する。
【0273】
炎症を起こした足および炎症を起こしてない足についてのコントロール群の閾値および標準偏差を計算する。個々の疼痛閾値がコントロール群の平均閾値を平均の標準偏差二つ分で超える場合、試験品群および基準群のラットが保護されたと考える。
【0274】
4.ホットプレート鎮痛アッセイ
実験を通して、各々のマウス(CD−1、雄)を、その自己のコントロールとして利用した。マウスを順次ホットプレート鎮痛メーター(Hot Plate Analgesia Meter)(55℃±2℃に設定されている)に置く。マウスは、熱刺激に対して、以下によって特徴的に反応する:
1.前足を舐める
2.後足を速くかき立てること
3.ホットプレートから急に飛び降りること
【0275】
これらの3つの型の反応のいずれかを、熱刺激の終点として考える。終点を示したら速やかにマウスをホットプレートから除く。反応時間を、マウスをホットプレートに置いてから決定的な終点の提示までの間に経過する秒数として定量的に測定する。経過時間は、少なくとも1秒の1/5まで正確なストップウォッチにより測定する。コントロール反応時間が10.0秒またはそれ未満のマウスのみを使用する。試験品またはコントロール品の投与の15分、30分、60分および120分(±1〜5分)後に、反応時間を得、群について順次記録する。
【0276】
鎮痛応答は、熱刺激に対するマウスの反応時間の増加である。%鎮痛を、特定の時間間隔での用量レベルごとの10個体のマウスの群の平均的な応答から計算する:
【0277】
【数2】
【0278】
5.ラット尾の放射熱試験(テールフリック)
試験品がラットに置いて熱刺激に対する鎮痛応答をもたらす潜在能力を評価するため。
一晩の絶食の後、ラットを胆汁測定して10個体の群におく。試験品またはビヒクルコントロール品を投与する。テールフリック鎮痛メーターを使用する。経口投与の60分後(またはSponsorによって推奨されるように)、各々のラットの尾を、特定の強度の熱刺激に曝し、応答(特徴的なテールフリック)を誘発するために必要とされる時間を記録する。
%鎮痛を、平均試験品応答と比較した平均コントロール応答を用いて計算する。
【0279】
例VIII
末梢抗痛覚過敏剤としての用途のための化合物の同定
一般に、上記の方法はまた、試験化合物の末梢の抗痛覚過敏活性を評価するためにも有用である。抗痛覚過敏活性を評価するための方法のうちで最も好ましいものは、Niemegeers et al. (1974) Drug Res. 24:1633-1636において記載されるものである。
1尾の引き込み試験などのCNS効果の試験におけるED50値(B)に対する、ひまし油試験などの止痢活性のための試験におけるED50値(A)の比(C)の評価。
【0280】
方法および組成物における使用のために意図される剤は、それらの止痢剤としての活性、およびそれらのCNS効果の欠落によって同定することができる。特に、選択された化合物は、上記の標準的モデルのいずれにおいても抗痛覚過敏活性を示し、好ましくは、以下のいずれかである:(a)標準的なアッセイにおいて測定されるものとしてのこれらの活性の比(B/A)が、ジフェノキシレートについてのかかる活性の比より、実質的に大きいかもしくはそれと等価である(少なくとも等価であり、より好ましくは、少なくとも約2倍大きい);または(b)CNS活性を測定するアッセイにおける化合物の活性が、ジフェノキシレートより実質的に(少なくとも2倍、好ましくは3倍またはそれ以上)低い。
【0281】
例IX
S−MNTXのインビトロ薬理学:ヒトμ(ミュー、MOP)受容体を発現するCHO細胞におけるcAMPアッセイ
μオピオイド受容体は、Gi共役型であり、cAMPの増加を阻害することによって作用する。したがって、これらの実験において、細胞cAMPは、10μMのフォルスコリンの添加によって増加する。DAMGO、または類似のアゴニスト、例えばエンドモルフィン−1、フェンタニル、またはモルヒネの予めの添加は、このフォルスコリン誘導性の増大を阻害する。アゴニスト効果の不在は、フォルスコリン単独と等価の結果を生じる。したがって、アゴニスト濃度の増加は、cAMPレベルを低下させる。
【0282】
CTOP、ナロキソンおよびシプロジム(ciprodime)などのアンタゴニストは、cAMP阻害を阻害する。したがって、完全なアンタゴニスト効果は、μ−オピオイドアゴニストのいかなる添加も有さないフォルスコリンと等価である。これらの実験に置いて、アンタゴニストを添加し、次いで30μMのDAMGO、次いでフォルスコリンを添加した。したがって、アンタゴニスト濃度の増加は、cAMPを増加させた。
【0283】
実験プロトコル
アッセイの特徴:
EC50(DAMGO): 12nM
cAMP産生
(フォルスコリン&IBMX): 3.4pmol/ウェル
阻害(10uM DAMGO): 90%
【0284】
材料および方法:
細胞ソース: ヒト組み換え/CHO細胞
基準アゴニスト: DAMGO
基準阻害剤: CTOP(アンタゴニストSAPを参照)
基準曲線: DAMGO(細胞活性化)
cAMP(EIAコントロール曲線)
【0285】
細胞を、96ウェルプレートにおいてコンフルエンシーまで増殖させた。分析の前に細胞を洗浄して生理緩衝液中で平衡化した。20μlの薬物、100μMのIBMX、および10μMフォルスコリンを添加して、25分間室温でインキュベートし、次いで、0.1NのHClの添加によって反応を停止した。アルカリホスファターゼを利用する競合EIAアッセイを介して、抽出されたcAMPレベルを決定した。さらなる実験条件は、Toll L., J Pharmacol Exp Ther. (1995) 273(2): 721-7において記載される。
【0286】
結果
アゴニストアッセイ:S−MNTXは、600nMのEC50でアゴニスト応答を示した。表IX.1に示されるように(6.0E−7M)。アゴニスト応答は完全であった(部分的ではなかった)。
【表8】
【0287】
アンタゴニストアッセイ:表X.2において表される結果によって示されるように、S−MNTXはアンタゴニスト効果を示さなかった。
【表9】
【0288】
このように、本発明の少なくとも一つの態様のいくつかの局面を有することが記載されたことによって、当業者は、多様な変更、改変、および改善を容易に想起することが理解されるべきである。かかる変更、改変、および改善は、本発明の開示の一部であることが意図され、本発明の思想および範囲の中にあることが意図される。したがって、上の記載および図は、単なる例である。
【図面の簡単な説明】
【0289】
【図1】R−MNTXおよびS−MNTXの臭化物塩の化学構造を提供する。
【図2】本発明の代表的な反応スキームを示す。
【図3】S−MNTXのプロトンNMRスペクトルを提供する。
【図4】S−MNTXの赤外線スペクトルを提供する。
【図5】S−MNTXのHPLCクロマトグラムを提供する。
【図6】S−MNTXの質量スペクトログラムを提供する。
【図7】本発明によるキットを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
式中、Xは対イオンである、
窒素についてS立体配置の単離された化合物。
【請求項2】
対イオンがハライド、硫酸、リン酸、硝酸、またはアニオン性に荷電した有機種である、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項3】
対イオンがハライドである、請求項2に記載の単離された化合物。
【請求項4】
ハライドが臭化物である、請求項3に記載の単離された化合物。
【請求項5】
ハライドがヨウ化物である、請求項3に記載の単離された化合物。
【請求項6】
少なくとも75%の純度を有する、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項7】
少なくとも90%の純度を有する、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項8】
少なくとも95%の純度を有する、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項9】
少なくとも75%の純度を有する、請求項4に記載の単離された化合物。
【請求項10】
少なくとも90%の純度を有する、請求項4に記載の単離された化合物。
【請求項11】
少なくとも95%の純度を有する、請求項4に記載の単離された化合物。
【請求項12】
結晶形態である、請求項1〜11のいずれかに記載の単離された化合物。
【請求項13】
MNTXを含む組成物であって、該組成物中に存在するMNTXが10%より多く窒素についてS立体配置である、前記組成物。
【請求項14】
組成物中に存在するMNTXが30%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
組成物中に存在するMNTXが50%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
組成物中に存在するMNTXが75%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
組成物中に存在するMNTXが90%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
組成物中に存在するMNTXが95%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
組成物中に存在するMNTXが98%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
組成物中に存在するMNTXが99%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項21】
MNTXが、ハライド、硫酸、リン酸、硝酸、またはアニオン性に荷電された有機種である対イオンを有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項22】
対イオンがハライドである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
ハライドがヨウ化物である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
ハライドが臭化物である、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
溶液である、請求項13〜24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
固体である、請求項13〜24のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
請求項13〜24のいずれかに記載の組成物の有効量および薬学的に受容可能なキャリアを含む、医薬組成物。
【請求項28】
MNTX以外の治療剤をさらに含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
治療剤がオピオイドまたはオピオイドアゴニストである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
オピオイドが、アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾシン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルフィン(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、レボメサジルアセテート、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メサドン、モルフィン、モルフィン−6−グルクロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチン、トラマドールおよびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
オピオイドまたはオピオイドアゴニストが、中枢神経系(CNS)での活性を実質的に有さない、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
治療剤が、オピオイド、オピオイドアゴニストまたはオピオイドアンタゴニストでない、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項33】
治療剤が、抗ウイルス剤、抗生剤、抗真菌剤、抗菌剤、防腐剤、抗原虫剤、抗寄生虫剤、抗炎症剤、血管収縮剤、局所的麻酔剤、止痢剤、抗痛覚過敏剤、またはこれらの組合せである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項34】
治療剤が止痢剤であり、止痢剤が、ロペラミド、ロペラミドのアナログ、ロペラミドおよびアナログのN−オキシド類、それらの代謝物およびプロドラッグ、ジフェノキシレート、シサプリド、アンタシド、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ポリカルボフィル、シメチコン、ヒヨスチアミン、アトロピン、フラゾリドン、ジフェノキシン、オクトレオチド、ランソプラゾール、カオリン、ペクチン、活性炭、スルファグアニジン、スクシニルスルファチアゾール、フタリルスルファチアゾール、アルミン酸ビスマス、亜炭酸ビスマス、亜クエン酸ビスマス、クエン酸ビスマス、ビスマス酸二クエン酸三カリウム、酒石酸ビスマス、亜サリチル酸ビスマス、亜硝酸ビスマス、没食子酸ビスマス、オピウムチンキ(パレゴリック)、生薬、植物由来止痢剤、またはこれらの組合せである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項35】
治療剤が抗炎症剤であり、抗炎症剤が、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、腫瘍壊死因子阻害剤、バシリキシマブ、ダクリズマブ、インフリキシマブ、ミコフェノール酸、モフェチル、アザチオプリン、タクロリムス、ステロイド類、スルファサラジン、オルサラジン、メサラミン、またはこれらの組合せである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項36】
治療剤が抗ウイルス剤である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項37】
治療剤が抗菌剤である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項38】
治療剤が抗痛覚過敏剤である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項39】
腸溶性コーティングされている、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項40】
徐放性または持効性処方物である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項41】
溶液である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項42】
局所用処方物である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項43】
凍結乾燥されている、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項44】
坐剤である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項45】
請求項27に記載の医薬組成物を含む吸入剤。
【請求項46】
請求項27に記載の医薬組成物を含む鼻用スプレーデバイス。
【請求項47】
S−MNTXの塩を合成するための方法であって:
第一の溶媒中で(ヨードメチル)シクロプロパンをオキシモルホンと組み合わせてS−MNTXのヨード塩を生成することを含む、前記方法。
【請求項48】
ヨウ化塩S−MNTXを第二の溶媒へ移すこと;および
ヨウ化物をヨウ化物以外の対イオンと交換すること
をさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
S−MNTXのヨウ化塩を第二の溶媒へ移すこと;および
ヨウ化物を臭化物と交換してS−MNTXの臭化塩を生成すること
をさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
第一の溶媒がN−メチルピロリドンを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
第二の溶媒が少なくともイソプロピルアセテートまたはジオキサンを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
第一の溶媒がN−メチルピロリドンであり、第二の溶媒がイソプロピルアセテートまたはジオキサンである、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
クロマトグラフィー、再結晶、またはこれらの組合せによってS−MNTXの塩を精製することをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
クロマトグラフィー、再結晶、またはこれらの組合せによってS−MNTXの塩を精製することをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
精製が多重再結晶によるものである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
65℃〜75℃の間で制御された反応温度下において行われる、請求項47に記載の方法。
【請求項57】
65℃〜75℃の間で制御された反応温度下において行われる、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
第一の溶媒中で(ヨードメチル)シクロプロパンをオキシモルホンと組み合わせてS−MNTXのヨウ化塩を生成することが、65℃〜75℃の間で制御された反応温度下において行われ、ヨウ化物を臭化物と交換してS−MNTXの臭化塩を生成することが室温で行われ、第一の溶媒がN−メチルピロリドンであり、二の溶媒がイソプロピルアセテートまたはジオキサンである、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
被験体において下痢を抑制するための方法であって、かかる処置を必要とする被験体に請求項27に記載の医薬組成物を下痢を処置または予防するために有効な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項60】
S−MNTXでない止痢剤を被験体に投与することをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
S−MNTXでない止痢剤がオピオイドまたはオピオイドアゴニストである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
被験体においてイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の量を減少させる方法であって、かかる減少を必要とする被験体に請求項27に記載の医薬組成物をイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の量を減少するために有効な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項63】
被験体においてイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の速度を減少させる方法であって、かかる減少を必要とする被験体に請求項27に記載の医薬組成物をイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の速度を減少するために有効な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項64】
胃腸運動の抑制の処置を必要とする被験体において胃腸運動を抑制するための方法であって、該被験体に請求項27に記載の医薬組成物を該被験体において胃腸運動を抑制するために有効な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項65】
被験体にオピオイドまたはオピオイドアゴニストを投与することをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
過敏性腸症候群を処置するための方法であって、かかる処置を必要とする患者に請求項27に記載の医薬組成物を、過敏性腸症候群の少なくともひとつの症状を緩和するために有効な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項67】
被験体において疼痛を抑制するための方法であって、請求項27に記載の医薬組成物を疼痛を予防または処置するために十分な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項68】
被験体にS−MNTX以外の治療剤を投与することをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
S−MNTX以外の治療剤がオピオイドである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
S−MNTX以外の治療剤が、抗ウイルス剤、抗生剤、抗真菌剤、抗菌剤、防腐剤、抗原虫剤、抗寄生虫剤、抗炎症剤、血管収縮剤、局所的麻酔剤、止痢剤、または抗痛覚過敏剤である、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
疼痛が末梢の痛覚過敏である、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
医薬組成物が疼痛の部位に局所的に投与される、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
投与が関節内である、請求項67に記載の方法。
【請求項74】
投与が全身性である、請求項67に記載の方法。
【請求項75】
投与が局所である、請求項67に記載の方法。
【請求項76】
組成物が眼に投与される、請求項67に記載の方法。
【請求項77】
被験体において炎症を抑制するための方法であって、炎症の抑制を必要とする被験体に請求項27に記載の医薬組成物を炎症を抑制するために有効な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項78】
被験体にS−MNTX以外の治療剤を投与することをさらに含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
S−MNTX以外の治療剤が抗炎症剤である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
投与が炎症の部位での局所的投与である、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
投与が全身投与である、請求項77に記載の方法。
【請求項82】
投与が局所投与である、請求項77に記載の方法。
【請求項83】
被験体において腫瘍壊死因子(TNF)の産生を抑制する方法であって:
前記被験体に請求項27に記載の医薬組成物のTNF産生抑制量を含む組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項84】
請求項27に記載の医薬組成物および使用のための指示書を含む密封容器を含むパッケージを含むキット。
【請求項85】
S−MNTX以外の治療剤をさらに含む、請求項84に記載のキット。
【請求項86】
治療剤がオピオイドまたはオピオイドアゴニストである、請求項85に記載のキット。
【請求項87】
オピオイドまたはオピオイドアゴニストがCNSでの活性を実質的に有さない、請求項86に記載のキット。
【請求項88】
治療剤が、抗ウイルス剤、抗生剤、抗真菌剤、抗菌剤、防腐剤、抗原虫剤、抗寄生虫剤、抗炎症剤、血管収縮剤、局所的麻酔剤、止痢剤、もしくは抗痛覚過敏剤、またはこれらの組合せである、請求項86に記載のキット。
【請求項89】
治療剤が末梢オピオイドアンタゴニストである、請求項85に記載のキット。
【請求項90】
末梢オピオイドアンタゴニストがR−MNTXである、請求項89に記載のキット。
【請求項91】
末梢オピオイドアンタゴニストが、ピペラジンN−アルキルカルボキシレート、ノルオキシモルホンの四級誘導体、オピウムアルカロイド誘導体、または四級ベンゾモルファンである、請求項89に記載のキット。
【請求項92】
胃腸機能を調節するための方法であって、
胃腸機能の調節を必要とする被験体にS−MNTXを投与すること、および
該被験体に末梢μオピオイドアンタゴニストを投与すること
を含む、前記方法。
【請求項93】
末梢μオピオイドアンタゴニストがR−MNTXである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
末梢オピオイドが、ピペラジンN−アルキルカルボキシレート、ノルオキシモルホンの四級誘導体、オピウムアルカロイド誘導体、または四級ベンゾモルファンである、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
S−MNTXを製造するための方法であって、以下の工程、
(a)S−MNTXを含む第一の組成物を得ること
(b)クロマトグラフィー、再結晶、またはこれらの組合せによって、前記第一の組成物を精製すること
(c)S−MNTXを標準物質として使用して、精製された第一の組成物のサンプルについてHPLCを行うこと
(d)前記サンプル中のR−MNTXの存在または不在を決定すること
を含む、前記方法。
【請求項96】
精製が、多重再結晶の工程または多重クロマトグラフィーの工程を含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
HPLCによる決定としてサンプルにR−MNTXが存在しなくなるまで精製が行われる、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
HPLCによる決定としてサンプルにR−MNTXが存在しなくなるまで精製が行われる、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
HPLCによって検出可能なR−MNTXを含まない精製された第一の組成物をパッケージすることをさらに含む、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
HPLCによって検出可能なR−MNTXを含まない精製された第一の組成物をパッケージすることをさらに含む、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
パッケージされた精製された第一の組成物に、またはそれと共に、該パッケージされた精製された第一の組成物がHPLCによって検出可能なR−MNTXを含まないことを示す証印を提供することをさらに含む、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
パッケージされた精製された第一の組成物がHPLCによって検出可能なR−MNTXを含まないことを示すことをさらに含む、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
S−MNTXを含む組成物を含むパッケージであって、該組成物がHPLCによって検出可能なR−MNTXを含まず、該パッケージ上のまたは該パッケージ内に含まれる証印が、該組成物が検出可能なR−MNTXを含まないことを示す、パッケージ。
【請求項104】
組成物が医薬組成物である、請求項103に記載のパッケージ。
【請求項1】
式I:
【化1】
式中、Xは対イオンである、
窒素についてS立体配置の単離された化合物。
【請求項2】
対イオンがハライド、硫酸、リン酸、硝酸、またはアニオン性に荷電した有機種である、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項3】
対イオンがハライドである、請求項2に記載の単離された化合物。
【請求項4】
ハライドが臭化物である、請求項3に記載の単離された化合物。
【請求項5】
ハライドがヨウ化物である、請求項3に記載の単離された化合物。
【請求項6】
少なくとも75%の純度を有する、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項7】
少なくとも90%の純度を有する、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項8】
少なくとも95%の純度を有する、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項9】
少なくとも75%の純度を有する、請求項4に記載の単離された化合物。
【請求項10】
少なくとも90%の純度を有する、請求項4に記載の単離された化合物。
【請求項11】
少なくとも95%の純度を有する、請求項4に記載の単離された化合物。
【請求項12】
結晶形態である、請求項1〜11のいずれかに記載の単離された化合物。
【請求項13】
MNTXを含む組成物であって、該組成物中に存在するMNTXが10%より多く窒素についてS立体配置である、前記組成物。
【請求項14】
組成物中に存在するMNTXが30%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
組成物中に存在するMNTXが50%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
組成物中に存在するMNTXが75%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
組成物中に存在するMNTXが90%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
組成物中に存在するMNTXが95%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
組成物中に存在するMNTXが98%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
組成物中に存在するMNTXが99%より多く窒素についてS立体配置である、請求項13に記載の組成物。
【請求項21】
MNTXが、ハライド、硫酸、リン酸、硝酸、またはアニオン性に荷電された有機種である対イオンを有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項22】
対イオンがハライドである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
ハライドがヨウ化物である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
ハライドが臭化物である、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
溶液である、請求項13〜24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
固体である、請求項13〜24のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
請求項13〜24のいずれかに記載の組成物の有効量および薬学的に受容可能なキャリアを含む、医薬組成物。
【請求項28】
MNTX以外の治療剤をさらに含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
治療剤がオピオイドまたはオピオイドアゴニストである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
オピオイドが、アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾシン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルフィン(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、レボメサジルアセテート、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メサドン、モルフィン、モルフィン−6−グルクロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチン、トラマドールおよびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
オピオイドまたはオピオイドアゴニストが、中枢神経系(CNS)での活性を実質的に有さない、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
治療剤が、オピオイド、オピオイドアゴニストまたはオピオイドアンタゴニストでない、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項33】
治療剤が、抗ウイルス剤、抗生剤、抗真菌剤、抗菌剤、防腐剤、抗原虫剤、抗寄生虫剤、抗炎症剤、血管収縮剤、局所的麻酔剤、止痢剤、抗痛覚過敏剤、またはこれらの組合せである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項34】
治療剤が止痢剤であり、止痢剤が、ロペラミド、ロペラミドのアナログ、ロペラミドおよびアナログのN−オキシド類、それらの代謝物およびプロドラッグ、ジフェノキシレート、シサプリド、アンタシド、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ポリカルボフィル、シメチコン、ヒヨスチアミン、アトロピン、フラゾリドン、ジフェノキシン、オクトレオチド、ランソプラゾール、カオリン、ペクチン、活性炭、スルファグアニジン、スクシニルスルファチアゾール、フタリルスルファチアゾール、アルミン酸ビスマス、亜炭酸ビスマス、亜クエン酸ビスマス、クエン酸ビスマス、ビスマス酸二クエン酸三カリウム、酒石酸ビスマス、亜サリチル酸ビスマス、亜硝酸ビスマス、没食子酸ビスマス、オピウムチンキ(パレゴリック)、生薬、植物由来止痢剤、またはこれらの組合せである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項35】
治療剤が抗炎症剤であり、抗炎症剤が、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、腫瘍壊死因子阻害剤、バシリキシマブ、ダクリズマブ、インフリキシマブ、ミコフェノール酸、モフェチル、アザチオプリン、タクロリムス、ステロイド類、スルファサラジン、オルサラジン、メサラミン、またはこれらの組合せである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項36】
治療剤が抗ウイルス剤である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項37】
治療剤が抗菌剤である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項38】
治療剤が抗痛覚過敏剤である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項39】
腸溶性コーティングされている、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項40】
徐放性または持効性処方物である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項41】
溶液である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項42】
局所用処方物である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項43】
凍結乾燥されている、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項44】
坐剤である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項45】
請求項27に記載の医薬組成物を含む吸入剤。
【請求項46】
請求項27に記載の医薬組成物を含む鼻用スプレーデバイス。
【請求項47】
S−MNTXの塩を合成するための方法であって:
第一の溶媒中で(ヨードメチル)シクロプロパンをオキシモルホンと組み合わせてS−MNTXのヨード塩を生成することを含む、前記方法。
【請求項48】
ヨウ化塩S−MNTXを第二の溶媒へ移すこと;および
ヨウ化物をヨウ化物以外の対イオンと交換すること
をさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
S−MNTXのヨウ化塩を第二の溶媒へ移すこと;および
ヨウ化物を臭化物と交換してS−MNTXの臭化塩を生成すること
をさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
第一の溶媒がN−メチルピロリドンを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
第二の溶媒が少なくともイソプロピルアセテートまたはジオキサンを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
第一の溶媒がN−メチルピロリドンであり、第二の溶媒がイソプロピルアセテートまたはジオキサンである、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
クロマトグラフィー、再結晶、またはこれらの組合せによってS−MNTXの塩を精製することをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
クロマトグラフィー、再結晶、またはこれらの組合せによってS−MNTXの塩を精製することをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
精製が多重再結晶によるものである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
65℃〜75℃の間で制御された反応温度下において行われる、請求項47に記載の方法。
【請求項57】
65℃〜75℃の間で制御された反応温度下において行われる、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
第一の溶媒中で(ヨードメチル)シクロプロパンをオキシモルホンと組み合わせてS−MNTXのヨウ化塩を生成することが、65℃〜75℃の間で制御された反応温度下において行われ、ヨウ化物を臭化物と交換してS−MNTXの臭化塩を生成することが室温で行われ、第一の溶媒がN−メチルピロリドンであり、二の溶媒がイソプロピルアセテートまたはジオキサンである、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
被験体において下痢を抑制するための方法であって、かかる処置を必要とする被験体に請求項27に記載の医薬組成物を下痢を処置または予防するために有効な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項60】
S−MNTXでない止痢剤を被験体に投与することをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
S−MNTXでない止痢剤がオピオイドまたはオピオイドアゴニストである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
被験体においてイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の量を減少させる方法であって、かかる減少を必要とする被験体に請求項27に記載の医薬組成物をイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の量を減少するために有効な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項63】
被験体においてイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の速度を減少させる方法であって、かかる減少を必要とする被験体に請求項27に記載の医薬組成物をイレオストミーまたはコロストミーからの排泄の速度を減少するために有効な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項64】
胃腸運動の抑制の処置を必要とする被験体において胃腸運動を抑制するための方法であって、該被験体に請求項27に記載の医薬組成物を該被験体において胃腸運動を抑制するために有効な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項65】
被験体にオピオイドまたはオピオイドアゴニストを投与することをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
過敏性腸症候群を処置するための方法であって、かかる処置を必要とする患者に請求項27に記載の医薬組成物を、過敏性腸症候群の少なくともひとつの症状を緩和するために有効な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項67】
被験体において疼痛を抑制するための方法であって、請求項27に記載の医薬組成物を疼痛を予防または処置するために十分な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項68】
被験体にS−MNTX以外の治療剤を投与することをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
S−MNTX以外の治療剤がオピオイドである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
S−MNTX以外の治療剤が、抗ウイルス剤、抗生剤、抗真菌剤、抗菌剤、防腐剤、抗原虫剤、抗寄生虫剤、抗炎症剤、血管収縮剤、局所的麻酔剤、止痢剤、または抗痛覚過敏剤である、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
疼痛が末梢の痛覚過敏である、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
医薬組成物が疼痛の部位に局所的に投与される、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
投与が関節内である、請求項67に記載の方法。
【請求項74】
投与が全身性である、請求項67に記載の方法。
【請求項75】
投与が局所である、請求項67に記載の方法。
【請求項76】
組成物が眼に投与される、請求項67に記載の方法。
【請求項77】
被験体において炎症を抑制するための方法であって、炎症の抑制を必要とする被験体に請求項27に記載の医薬組成物を炎症を抑制するために有効な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項78】
被験体にS−MNTX以外の治療剤を投与することをさらに含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
S−MNTX以外の治療剤が抗炎症剤である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
投与が炎症の部位での局所的投与である、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
投与が全身投与である、請求項77に記載の方法。
【請求項82】
投与が局所投与である、請求項77に記載の方法。
【請求項83】
被験体において腫瘍壊死因子(TNF)の産生を抑制する方法であって:
前記被験体に請求項27に記載の医薬組成物のTNF産生抑制量を含む組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項84】
請求項27に記載の医薬組成物および使用のための指示書を含む密封容器を含むパッケージを含むキット。
【請求項85】
S−MNTX以外の治療剤をさらに含む、請求項84に記載のキット。
【請求項86】
治療剤がオピオイドまたはオピオイドアゴニストである、請求項85に記載のキット。
【請求項87】
オピオイドまたはオピオイドアゴニストがCNSでの活性を実質的に有さない、請求項86に記載のキット。
【請求項88】
治療剤が、抗ウイルス剤、抗生剤、抗真菌剤、抗菌剤、防腐剤、抗原虫剤、抗寄生虫剤、抗炎症剤、血管収縮剤、局所的麻酔剤、止痢剤、もしくは抗痛覚過敏剤、またはこれらの組合せである、請求項86に記載のキット。
【請求項89】
治療剤が末梢オピオイドアンタゴニストである、請求項85に記載のキット。
【請求項90】
末梢オピオイドアンタゴニストがR−MNTXである、請求項89に記載のキット。
【請求項91】
末梢オピオイドアンタゴニストが、ピペラジンN−アルキルカルボキシレート、ノルオキシモルホンの四級誘導体、オピウムアルカロイド誘導体、または四級ベンゾモルファンである、請求項89に記載のキット。
【請求項92】
胃腸機能を調節するための方法であって、
胃腸機能の調節を必要とする被験体にS−MNTXを投与すること、および
該被験体に末梢μオピオイドアンタゴニストを投与すること
を含む、前記方法。
【請求項93】
末梢μオピオイドアンタゴニストがR−MNTXである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
末梢オピオイドが、ピペラジンN−アルキルカルボキシレート、ノルオキシモルホンの四級誘導体、オピウムアルカロイド誘導体、または四級ベンゾモルファンである、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
S−MNTXを製造するための方法であって、以下の工程、
(a)S−MNTXを含む第一の組成物を得ること
(b)クロマトグラフィー、再結晶、またはこれらの組合せによって、前記第一の組成物を精製すること
(c)S−MNTXを標準物質として使用して、精製された第一の組成物のサンプルについてHPLCを行うこと
(d)前記サンプル中のR−MNTXの存在または不在を決定すること
を含む、前記方法。
【請求項96】
精製が、多重再結晶の工程または多重クロマトグラフィーの工程を含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
HPLCによる決定としてサンプルにR−MNTXが存在しなくなるまで精製が行われる、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
HPLCによる決定としてサンプルにR−MNTXが存在しなくなるまで精製が行われる、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
HPLCによって検出可能なR−MNTXを含まない精製された第一の組成物をパッケージすることをさらに含む、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
HPLCによって検出可能なR−MNTXを含まない精製された第一の組成物をパッケージすることをさらに含む、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
パッケージされた精製された第一の組成物に、またはそれと共に、該パッケージされた精製された第一の組成物がHPLCによって検出可能なR−MNTXを含まないことを示す証印を提供することをさらに含む、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
パッケージされた精製された第一の組成物がHPLCによって検出可能なR−MNTXを含まないことを示すことをさらに含む、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
S−MNTXを含む組成物を含むパッケージであって、該組成物がHPLCによって検出可能なR−MNTXを含まず、該パッケージ上のまたは該パッケージ内に含まれる証印が、該組成物が検出可能なR−MNTXを含まないことを示す、パッケージ。
【請求項104】
組成物が医薬組成物である、請求項103に記載のパッケージ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2008−542286(P2008−542286A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513706(P2008−513706)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/020232
【国際公開番号】WO2006/127898
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(505377108)プロジェニックス ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/020232
【国際公開番号】WO2006/127898
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(505377108)プロジェニックス ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】
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