説明

(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法

【課題】
3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244fa)を含む(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(OF−1233Z)から実質的にHCFC−244faを含まないOF−1233Zを効率的に製造する。
【解決手段】
HCFC−244faを含むOF−1233Z組成物をトリエチルアミンなどの第三アミンと接触させてアミン処理組成物とする工程を含むOF−1233Zの製造方法。また、OF−1233Z組成物が2−クロロ−1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを含む組成物であるときは、第三アミンでアミン処理した後、さらに水酸化ナトリウムなどの無機塩基と接触させる工程を含むOF−1233Zの製造方法。これらの処理生成物は、さらに蒸留により精製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(以下、「HCFC−244fa」という。)を含む(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(以下、「OF−1233Z」という。)からHCFC−244faを除去する方法に関し、より詳しくは、塩基と接触させてHCFC−244faを含まないOF−1233Zを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
OF−1233Zは、洗浄剤、冷媒、ヒートポンプ用の熱媒体、高温作動流体などとして有用である。OF−1233Zは、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)をフッ化水素でフッ素化して得られる(特許文献1)。その際、得られたOF−1233Z組成物中には、異性体の(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(以下、「OF−1233E」という。)、過フッ素化生成物である1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234ze)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、前駆体である1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン、およびその他の塩素化フッ素化プロパンまたはプロペンが含まれる。
【0003】
この反応で得られるOF−1233Z組成物に対しても、最も汎用かつ確立された有機物の分離方法である蒸留が適用されるが、この様なハロカーボン類は相互に共沸組成物を形成することがあり、OF−1233Z(沸点39℃)は、HCFC−244fa(沸点42℃)、HCFC−235da(沸点38℃)と沸点が近接し、共沸様挙動を示すため通常の蒸留分離が困難である。
【0004】
飽和の(クロロ)フルオロヒドロアルカンに含まれるオレフィンの除去については、開始剤または触媒の存在下での塩素処理、触媒の存在下での水素化、フッ化水素との反応、酸素含有化合物との反応、その他試薬との反応などの飽和化合物とオレフィンの反応性の相違に基づく化学的な手法がある。
【0005】
しかし、OF−1233Z中のHCFC−244faまたはHCFC−235daのように、(クロロ)フルオロヒドロアルケン中の(クロロ)フルオロヒドロアルカンの除去についてはこれらの方法は適用できないため、複雑でコストの掛かる抽出蒸留が行われている(特許文献2)。
【0006】
また、飽和の(クロロ)フルオロヒドロアルカンに含まれるオレフィンの除去については、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)を2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(OF−1233xf)から融点の違いを利用して分離する方法が知られている(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−269105号公報
【特許文献2】特開2010−202640号公報
【特許文献3】特開2010−47573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
HCFC−244faを含むOF−1233Zから実質的にHCFC−244faを含まないOF−1233Zを効率的に製造する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
隣接する炭素原子に塩素原子と水素原子を有するハロゲン化炭化水素は、脱塩化水素され易く、とりわけ塩基性物質が存在すると反応は加速されることが知られている。HCFC−244faについて検討すると、塩基性物質が水酸化ナトリウムなどの金属水酸化物である場合、非常に効率よく脱塩化水素反応が起こり対応するプロペン類またはプロピン類が生成した。
【0010】
しかしながら、この知見に基づいて、HCFC−244fa含有のOF−1233Zを水酸化ナトリウム等の無機塩基と接触させたところ、HCFC−244faの脱塩化水素は効率的に起こるが、同時にOF−1233Zが脱塩化水素してトリフルオロプロピンが生成しこの処理ではOF−1233Z回収率が低下することが判明した。
【0011】
そこで、さらに検討したところ、塩基性物質として特定の有機塩基を用いると、OF−1233Zは脱塩化水素等の反応に受けず、HCFC−244faが十分に脱塩化水素して対応する含フッ素オレフィンに変換でき、この含フッ素オレフィンはOF−1233Zと十分な沸点差を有し、かつ共沸組成物の形成または共沸様の挙動を示さないため容易に蒸留分離できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明は、次の通りである。
【0013】
[発明1]
3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンを含む(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン組成物を第三アミンと接触させてアミン処理組成物とする工程を含む(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
【0014】
[発明2]
(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン組成物が、さらに2−クロロ−1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを含む組成物である、発明1の(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
【0015】
[発明3]
さらに、アミン処理組成物に含まれる有機成分を無機塩基と接触させる工程を含む発明2の(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
【0016】
[発明4]
さらに、アミン処理組成物に含まれる第三アミン/塩化水素塩から第三アミンを回収し、再使用する工程を含む発明1〜3の(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法は、HCFC−244faを効率的に脱塩化水素させてOF−1233Zと沸点差のある物質に変換でき、一方、目的物OF−1233Zを脱塩化水素しないため、HCFC−244faを含むOF−1233Zから実質的にHCFC−244faを含まないOF−1233Zを効率的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、第三アミンとの接触(以下において、「接触処理」、または単に「処理」ということがある。)を行うためのHCFC−244faを含むOF−1233Z組成物を「第一組成物」といい、第一組成物を第三アミンと接触(処理)させた後のOF−1233Z組成物を「アミン処理組成物」といい、「アミン処理組成物」に含まれる有機成分を「第二組成物」ということがある。
本発明に係る反応を模式的に次に示す。これは、本発明の方法に係る反応をこれらの反応系路に限定する目的ではなく、本発明の理解を容易にするために掲げるものである。
【0019】
HCC-240fa + HF
→ OF-1233Z + OF-1233E + HCFC-244fa + HCFC-235da (式1)
HCFC-224fa + 第三アミン → OF-1234ze (式2)
HCFC-235da + 無機塩基 → OF-1224 (式3)
OF-1233Z + 無機塩基 → トリフルオロプロピン(TFPy) (式4)
本発明で第三アミンと接触させるHCFC−244faを含むOF−1233Z組成物は、どの様な経緯で得られた組成物であってもよい。
【0020】
OF−1233Zは、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを酸化クロム、アルミナまたはこれらのフッ素化物などの触媒存在下気相でフッ化水素と反応させ、または無触媒液相加条件で反応させることでOF−1233Eと共に得られる。OF−1233Eのほかにも、この反応で得られるOF−1233Zには多種のフッ素化炭化水素(「フッ素化炭化水素」は水素原子を含んでもよく、フッ素以外のハロゲン原子を含んでもよい。)が前駆体または副生成物として含まれる。この反応生成物を蒸留するとOF−1233Eを含めて大部分の種類のフッ素化炭化水素を分離することができるが、HCFC−244faとHCFC−235daはそれぞれOF−1233Zと沸点差が小さく、共沸様の挙動を示すため分離効率が著しく低いことから、結果としてHCFC−244faまたはHCFC−235daを含むOF−1233Z組成物が得られる。
【0021】
この蒸留後に、またはこの蒸留に替えて抽出蒸留または固体吸着材による選択吸着によりOF−1233Zの純度を高めた組成物であってもよい。
【0022】
また、HCFC−244f組成物は、溶媒、洗浄剤、冷媒、熱媒などの用途のため混合調製した混合物であってもよい。
【0023】
第一組成物においては、HCFC−244faの含有量に限定はないが、0.001〜50質量%であり、0.001〜30質量%が好ましく、0.001〜10質量%がより好ましい。0.001質量%未満では、敢えて本発明の方法を適用するまでもない。50質量%以上とすることは、HCFC−244faはOF−1233Zの過フッ素化物であるので、脱塩化水素して廃棄することはHCC−240faからのOF−1233Z収率を低下させて好ましくない。
【0024】
第一組成物においては、その他の飽和または不飽和フッ素化炭化水素を含んでいてもよい。そのようなフッ素化炭化水素としては、本発明の処理条件において安定なもの、脱塩化水素に対して安定なもの、または脱塩化水素によりOF−1233Zと蒸留分離できる化合物に変換されるものであるのが好ましい。好ましいものを例示すると、OF−1233E、HCFC−235daなどが挙げられる。OF−1233Eは本発明の処理条件では殆ど反応しないため、特に制限なく含むことができる。しかし、OF−1233Zを製造する目的では、第一組成物は予めOF−1233Eの含有量を減らしておくのが効率的であるので、第一組成物に含まれるOF−1233Eは、10質量%未満とし、5質量%未満としておくのが好ましい。
【0025】
第三アミンとしては、特に限定されないが、一般式、

(R、R、Rは直鎖状、分岐状または環状のアルキル基であって、全炭素数が3〜15である。)で表される第三アミンであるのが好ましく、4〜12であるのがより好ましい。全炭素数が16以上の第三アミンであっても使用できるが、重量あたりの塩化水素捕捉量が小さく実用上避けるのが好ましい。
【0026】
具体的には、鎖状のアミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−イソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリ−tert−ブチルアミン、トリ−n−アミルアミン、トリ−イソアミルアミン、トリ−sec−アミルアミン、トリ−tert−アミルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、テトラメチルグアニジンなどの鎖状の対称第三アミン、N−メチルジエチルアミン、N−メチルジ−n−プロピルアミン、N−メチルジイソプロピルアミン、N−メチルジ−n−ブチルアミン、N−メチルジイソブチルアミン、N−メチルジ−tert−ブチルアミン、N,N−ジイソプロピルブチルアミン、N,N−ジメチル−n−オクチルアミン、N,N−ジメチルノニルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N−メチルジヘキシルアミンなどの非対称第三アミンなどが挙げられる。環式のアミンとしては、テトラメチルグアニジン、N,N′−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルなどが挙げられる。
【0027】
これらのうち、具体的には、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−イソブチルアミン、トリ−n−アミルアミン、トリ−イソアミルアミン、メチルジイソプロピルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)などが好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。これらの三級アミンは混合物としても使用できる。
【0028】
溶媒を用いることもできる。溶媒としては、有機塩基と反応せず、OF−1233Zと実質上相互に溶解しないかまたは蒸留で容易に分離できる溶媒であるのが好ましい。例えば、塩素系溶剤を挙げることができる。具体的には、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどが挙げられる。アミンとの接触の際には、容器内に水はないことが好ましいが、少量の水は許容される。したがって、第三アミンは約10質量%未満の水を含むことも差し支えない。
【0029】
第一組成物を第三アミンと接触させる方法は、特に限定されない。第一組成物と第三アミンは液−液で接触させるのが簡便であり好ましいが、第三アミンがトリメチルアミン、トリメチルアミンなどの沸点の低いアミンの場合は加圧下または低温状態で接触させる。接触方法としては、反応(処理)容器中に第一組成物と第三アミンを仕込み、攪拌する方法が挙げられる。攪拌方法としては、スクリュー型のほか公知の攪拌効率を高めた攪拌羽根を用いる方法、内部または外部のポンプによる液流攪拌、また、液流中にラインミキサーを設け、あるいは吐出部をスパージャーとするなどの攪拌方法を取ることができる。処理容器は、ガラス、ステンレス鋼、フッ素樹脂(PFA樹脂、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂など)などの材料またはこれらの材質でライニングされた材料で作成するのが好ましい。
【0030】
第一組成物の処理に必要な第三アミンの必要量は、第一組成物に含まれるHCFC−244fa1モルに対して1モルであるが、通常、1〜50モルを使用し、1〜20モルが好ましく、1〜10モルがより好ましい。50モルを超えるのは第三アミンの廃棄または回収処理が煩雑となり好ましくない。
【0031】
処理温度は、50〜200℃であり、80〜180℃が好ましい。50℃未満では処理に時間がかかり、HCFC−244faが残留することがあり好ましくない。また、200℃を超えると生成した第三アミン/塩化水素塩が分解してクロロエタンなどの塩素化炭化水素またはエナミンが生成するので好ましくない。処理圧力は、大気圧でよいが、沸点の低い第三アミンを用いる場合、または装置を密閉するために自圧下で行うことができる。したがって、通常0.1〜5MPaで行う。処理は、大気(空気)、窒素、アルゴンなどの雰囲気で行うことができる。
【0032】
処理に要する時間は、第三アミンと第一組成物の比率、処理温度等の処理条件に依存するが、1分〜100時間であり、10分〜50時間が好ましい。
【0033】
脱塩化水素の処理をした後の処理組成物(容器内容物)には、OF−1233Z、OF−1233EなどのほかにHCFC−244faが脱塩化水素した1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(式2)および第三アミン/塩化水素塩が含まれる。この処理組成物から第三アミン/塩化水素塩を除去する方法は特に限定されない。水と接触させて第三アミン/塩化水素塩を水層に移行させることで行うことが簡便で好ましい。有機層にはOF−1233Zなどの有機物を含み、HCFC−244faが実質上含まれず、新たに発生したOF−1234zeが含まれる。この組成物には、OF−1233Zと沸点が近接し、また共沸様挙動を示すHCFC−244faを含まないため容易に蒸留で精製することができる。
【0034】
有機層は蒸留の前または後に乾燥させることができる。乾燥は、合成ゼオライト、シリカゲル、無水塩化カルシウム、五酸化リンなどの固体乾燥剤を用いるのが簡便で好ましい。合成ゼオライトとしては、3A、4A、5A、13Xなどが使用できる。
【0035】
第三アミン/塩化水素塩を含む水層に無機塩基などの強塩基性物質を添加し、次いで、下部完溶温度以上とすることで第三アミンを遊離させ水層から分離することができる。無機塩基としては、特に限定されないが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、酸化物、水素化物などが挙げられる。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなど、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。無機塩基としては、具体的には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム(NaCO)、リン酸ナトリウム(NaPO)、酸化ナトリウム(NaO)、水素化ナトリウム(NaH)、水酸化カリウム、炭酸カリウム(KCO)、リン酸カリウム(KPO)、酸化カリウム(KO)、水素化カリウム(KH)、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが挙げられ、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物または炭酸塩が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。
【0036】
この様にして回収した第三アミンは、そのままで、または、乾燥した後、あるいはまた、蒸留精製した後に本発明のHCFC−244faの脱塩化水素による処理に使用することができる。
【0037】
OF−1233Z組成物が、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)をフッ化水素と反応させて得られたものである場合、HCFC−235daを含むことが多い。HCFC−244faとHCFC−235daを含むOF−1233Z組成物を第三アミンで処理すると、HCFC−244faは除去されるものの、HCFC−235daは脱塩化水素、脱フッ化水素などの化学変化は受けず、結果として、HCFC−235daの残留したOF−1233Z組成物(第二組成物)が得られる。
【0038】
HCFC−235daを含むOF−1233Z組成物(第二組成物)からHCFC−235daを蒸留分離するのは困難であるが、第二組成物を無機塩基と接触させることでHCFC−235daを2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(OF−1224)とした後、蒸留で除去することができる。
【0039】
第二組成物においては、HCFC−235daの含有量は充分に少量であることが好ましい。HCFC−235daの含有量は組成物の0.001〜5質量%であり、0.001〜3質量%が好ましく、0.001〜1質量%がより好ましい。0.001質量%未満では、敢えて本発明の方法を適用するまでもない。OF−1233Zは無機塩基との接触により分解することがあるので、HCFC−235daの含有量が5質量%を超えると比較的多量のOF−1233Zが分解することがあり、その様な条件は回避するのが好ましい。
【0040】
第二組成物においては、OF−1233ZとHCFC−235da以外の飽和または不飽和フッ素化炭化水素を含んでいることもある。そのようなフッ素化炭化水素としては、第三アミンとの接触で安定なOF−1233Eなどの化合物、第三アミンとの接触で生成したOF−1234などの化合物(式2)が挙げられる。これらの化合物は処理後の有機物を蒸留することで容易に分離できる。また、無機塩基との接触の前に予め蒸留塔の手段により除くこともでき、好ましい。
【0041】
無機塩基としては、特に限定されないが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、アルコキシド、酸化物、水素化物などが挙げられる。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなど、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。無機塩基としては、具体的には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム(NaCO)、リン酸ナトリウム(NaPO)、酸化ナトリウム(NaO)、水素化ナトリウム(NaH)、水酸化カリウム、炭酸カリウム(KCO)、リン酸カリウム(KPO)、酸化カリウム(KO)、水素化カリウム(KH)、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが挙げられ、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物または炭酸塩が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。
【0042】
第二組成物を無機塩基と接触させる方法は、特に限定されない。無機塩基は水または有機溶媒と共に溶液として用いるのが好ましく、水は特に好ましく、有機溶媒と共に用いることもできる。有機溶媒としては、アルコール類が好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール(各異性体)など、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
無機塩基の溶液の濃度は適宜であってよく、取り扱いが容易であるので、不溶解分のない状態とするのが好ましい。通常は0.1〜50質量%の濃度として用いる。
【0044】
第二組成物と無機塩基は液−液で接触させるのが簡便であり好ましい。接触方法としては、反応(処理)容器中に組成物と無機塩基および水などを仕込み、攪拌する方法が挙げられる。攪拌方法としては、スクリュー型のほか公知の攪拌効率を高めた攪拌羽根を用いる方法、内部または外部のポンプによる液流攪拌、また、液流中にラインミキサーを設け、あるいは吐出部をスパージャーとするなどの攪拌方法を取ることができる。処理容器は、ガラス、ステンレス鋼、フッ素樹脂(PFA樹脂、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂など)などの材料またはこれらの材質でライニングされた材料で作成するのが好ましい。
【0045】
組成物の処理に必要な無機塩基の必要量は、OF−1233組成物に含まれるHCFC−235da1モルに対して1モルであるが、通常、1〜50モルを使用し、1〜20モルが好ましく、1〜10モルがより好ましい。50モルを超えると、OF−1233Zが分解して処理での回収率が低下するので好ましくない。
【0046】
処理温度は、−10〜60℃であり、0〜40℃が好ましい。−10℃未満では処理に時間がかかり、HCFC−235daが在留することがあり好ましくない。また、60℃を超えるとOF−1233Zが分解して収率が低下するので好ましくない。処理圧力は、大気圧でよいが、または装置を密閉するために自圧下で行うことができる。したがって、通常0.1〜1MPaで行う。
【0047】
処理に要する時間は、無機塩基と第二組成物の比率、処理温度等の処理条件に依存するが、1分〜100時間であり、10分〜50時間が好ましい。
【0048】
処理後の容器内容物の有機層には、OF−1233Z、OF−1233Eなどのほかに、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(式2)、2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(式3)、トリフルオロプロピン(式4)などが含まれ、水層には金属フッ化物、未反応の無機塩基などが含まれる。有機層を水層から分離し、得られた有機層は、水洗、乾燥、蒸留などの公知の精製処理によりOF−1233Zが得られる。
【0049】
処理前にOF−1233Eを除去していない場合には、OF−1233Eが含まれるが、これは蒸留によりOF−1233Zから容易に分離することができるので、前記蒸留によって1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと共に除去し、OF−1233Eの含まないOF−1233Zとすることもできる。
【実施例】
【0050】
以下、具体的に、実施例を示して、より詳細に説明するが、実施態様はこれに限定されない。有機物の組成は、別途注釈のない限り、FID検出器によるガスクロマトグラフィにより測定し、記録された「面積%」を「GC%」と表示した。
【0051】
[実施例1]
圧力計、バルブ、撹拌子を備えたステンレス鋼製50mLオートクレーブ(耐圧硝子工業製TVS−1型 50mLポータプルリアクター)に、トリエチルアミン9.66g(0.096mol)と、3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244fa)10.7GC%、2−クロロ−1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−235da)1.56GC%、(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(OF−1233Z)86.4GC%を含む粗OF−1233Z25.07g(HCFC−244faを0.018mol、HCFC−235daを0.0002mol含有。)を仕込み、150℃のオイルバスで加熱し3時間撹拌した。反応終了後、氷水浴で0℃付近まで冷却したのち、ドライアイスアセトン浴で−50℃以下まで冷却した。オートクレーブを開放し、ポリエチレン製5mLシリンジで反応液を採取し、ディスポーサブルシリンジフィルター(孔径0.45μmPTFE製)でろ過した液をガスクロマトグラフ分析したところ、HCFC−244faは0.47GC%、HCFC−235daは0.71GC%、OF−1233Zは87.22GC%、OF−1234Eは6.98GC%、OF−1234Eは1.69GC%、2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(OF−1224)は0.73GC%であった。トリフルオロプロピン(TFPy)は、検出されなかった。HCFC−244faの変換率は96%、HCFC−235daの変換率は55%であった。
【0052】
[実施例2]
実施例1と同じ装置を用い、トリエチルアミン3.77g(0.037mol)、イオン交換水0.20g(トリエチルアミンに対して5重量%相当)、実施例1と同一の粗OF−1233Z25.47g(HCFC−244faとして0.018mol、HCFC−235daとして0.0002mol含有)を仕込み、150℃のオイルバスで3.5時間加熱撹拌した。反応終了後、実施例1と同じ操作をして、有機液をガスクロマトグラフ分析したところ、HCFC−244faは0.02GC%、HCFC−235daは0.52GC%、OF−1233Zは82.64GC%、OF−1234Eは6.88GC%、OF−1234Zは2.00GC%、OF−1224は0.54GC%、TFPyは0.02GC%であった。HCFC−244faの変換率は100%、HCFC−235daの変換率は67%であった。
【0053】
[実施例3]
実施例1と同一の粗OF−1233Zを同量用い、トリエチルアミンに替えて17.78gのトリブチルアミンを用いて実施例1と同様の操作を行った。処理した液を分析したところ、HCFC−244faは8.76GC%、HCFC−235daは1.44GC%、OF−1233Zは86.49GC%、OF−1234Eは1.28GC%、OF−1224は0.02GC%であった。OF−1234Z及びTFPyは検出されなかった。HCFC−244faの変換率は18%、HCFC−235daの変換率は8%であった。
【0054】
[実施例4]
実施例1と同一の粗OF−1233Zを同量用い、トリエチルアミンに替えて12.36gのメチルジイソプロピルアミンを用いて実施例1と同様の操作を行った。処理した液を分析したところ、HCFC−244faは8.44GC%、HCFC−235daは1.26GC%、OF−1233Zは86.74GC%、OF−1234Eは1.49GC%、OF−1234Zは0.35GC%、OF−1224は0.25C%であった。TFPyは検出されなかった。HCFC−244faの変換率は21%、HCFC−235daの変換率は19%であった。
【0055】
[実施例5]
容器内に撹拌子を、開放側にテドラー(登録商標)バックを取り付け−15℃の冷媒を流したジムロートを備えた100mLナスフラスコを氷水浴で冷却しながら、そこへ実施例1と同一の粗OF−1233Zを50.34g(HCFC−244faを0.018mol含有。)、次いで、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン)6.04g(DBU、0.040mol)を仕込み、氷水浴で冷却したまま30分撹拌した後、50℃の湯浴に替えて還流下、3時間攪拌を続けた。氷水浴で冷却した後、反応液をガスクロマトグラフ分析したところ、HCFC−244faは5.80GC%、HCFC−235daは0.83GC%、OFC−1233Zは88.51GC%、OF−1234Eは1.91GC%、OF−1234Zは0.87GC%、OF−1224は0.32GC%、TFPyは0.41GC%であった。HCFC−244faの変換率は46%、HCFC−235daの変換率は47%であった。テドラーパックで捕集されたガスを分析したところ、HCFC−244faは0.66GC%、HCFC−235daは0.07GC%、OF−1233Zは11.99GC%、OF−1234Eは55.94GC%、OF−1234Zは1.33GC%、OF−1224は0.19GC%、TFPyは29.36GC%であった。
【0056】
[実施例6]
真空ポンプで減圧状態にしたステンレス鋼製1000mLオートクレーブ(耐圧硝子工業製簡易型オートクレーブTEM−D1000M)に、実施例1と同一の粗OF−1233Zを501.11g(HCFC−244faを0.355mol、HCFC−235daを0.047mol含有。)、次いで、トリエチルアミン74.37g(0.736mol)をPFAチューブから吸引して仕込んだ。500rpmで撹拌し、約1時間かけ内温150℃に昇温し、その温度で3時間撹拌を継続した。3時間後の圧力は1.62MPaであった。反応後、氷水浴、次いでドライアイスアセトン浴で冷却し、内温が−50℃以下になったところで、オートクレーブを開放し、ポリエチレン製5mLシリンジで反応液を採取し、ディスポーサブルシリンジフィルター(孔径0.45μmのPTFE製)でろ過した液をガスクロマトグラフ分析したところ、HCFC−244faは0.06GC%、HCFC−235daは0.63GC%、OF−1233Zは84.58GC%、OF−1234Eは6.64GC%、OF−1234Zは1.90GC%、OF−1224は0.75GC%であり、TFPyは検出されなかった。HCFC−244faの変換率は99%、HCFC−235daの変換率は60%であった。
【0057】
[実施例7]
真空ポンプで減圧状態にしたステンレス鋼製1000mLオートクレーブ(耐圧硝子工業製簡易型オートクレーブTEM−D1000M)に、実施例1と同一の粗OF−1233Zを501.11g(HCFC−244faを0.355mol、HCFC−235daを0.047mol含有。)、次いで、トリエチルアミン150.02g(1.485mol)をPFAチューブから吸引して仕込んだ。500rpmで撹拌し、約1時間かけ内温100℃に昇温し、その温度で24時間撹拌を継続した。24時間後の圧力は0.49MPaであった。反応後、氷水浴、次いでドライアイスアセトン浴で冷却し、内温が−50℃以下になったところで、オートクレーブを開放し、ポリエチレン製5mLシリンジで反応液を採取し、ディスポーサブルシリンジフィルター(孔径0.45μmのPTFE製)でろ過した液をガスクロマトグラフ分析したところ、HCFC−244faは0.22GC%、HCFC−235daは0.85GC%、OF−1233Zは87.32GC%、OF−1234Eは6.64GC%、OF−1234Zは1.90GC%、OF−1224は0.59GC%であり、TFPyは検出されなかった。HCFC−244faの変換率は98%、HCFC−235daの変換率は45%であった。
【0058】
[実施例8]
真空ポンプで減圧状態にしたステンレス鋼製1000mLオートクレーブ(耐圧硝子工業製簡易型オートクレーブTEM−D1000M)に、実施例1と同一の粗OF−1233Zを501.11g(HCFC−244faを0.355mol、HCFC−235daを0.047mol含有。)、次いで、トリエチルアミン74.37g(0.736mol)をPFAチューブから吸引して仕込んだ。500rpmで撹拌し、約1時間かけ内温150℃に昇温し、その温度で3時間撹拌を継続した。3時間後の圧力は1.62MPaであった。
【0059】
水400gを仕込み0.6MPaに加圧した、ディップ管と圧力計を備えた500mLステンレス製シリンダーから、氷水浴で冷却して内温を2℃以下としたステンレス鋼製1000mLオートクレーブに水201.92gを内温が5℃を超えないように徐々に添加した。そのまま30分間撹拌したのち、分液ロートへ移液して5分静定し、下層有機層496.27g、上層水層269.74gを回収した。下層有機層をガスクロマトグラフ分析したところ、HCFC−244faは0.05GC%、HCFC−235daは0.61GC%、OF−1233Zは85.90GC%、OF−1234Eは5.95GC%、OF−1234Zは1.95GC%、OF−1224は0.81GC%であり、TFPyは検出されなかった。HCFC−244faの変換率は100%、HCFC−235daの変換率は61%であった。
【0060】
[実施例9]
−15℃の冷媒を流し外部側に風船を付けたジムロートを備えた100mLナスフラスコに、実施例7で得られた有機層25.38g(HCFC−235daを0.001mol含有。)、33%水酸化カリウム水溶液0.41g(0.002mol)、メタノール(MeOH)0.26gを仕込み、室温(約25℃、以下同じ。)下5時間撹拌した。内容液を分析したところ、HCFC−244faは0.05GC%、HCFC−235daは0.01GC%、OF−1233Zは85.05GC%、OF−1234Eは6.20GC%、OF−1234Zは1.99GC%、OF−1224は1.39GC%、TFPyは0.10GC%であった。HCFC−244faの変換率は1%、HCFC−235daの変換率は98%であった。
【0061】
[実施例10]
−15℃の冷媒を流し外部側に風船を付けたジムロートを備えた100mLナスフラスコに、実施例8で得られた有機層25.38g(HCFC−235daを0.001mol含有。)、33%水酸化カリウム水溶液0.39g(0.002mol)を仕込み、室温下5時間撹拌した。内容液を分析したところ、HCFC−244fa 0.04GC%、OF−1233Z 84.72GC%、OF−1234E5.89GC%、OF−1234Z1.90GC%、OF−1224 1.40GC%、TFPy 0.21GC%、HCFC−235daは検出されなかった。HCFC−244faの変換率は5%、HCFC−235daの変換率は100%であった。
【0062】
[実施例11]
真空ポンプで減圧状態にしたステンレス鋼製1000mLオートクレーブ(耐圧硝子工業製簡易型オートクレーブTEM−D1000M)に、10.44GC%のHCFC−244fa、1.83GC%のHCFC−235da、87.02GC%のOF−1233Zを含む粗OF−1233をZ502g(HCFC−244faを0.349mol、HCFC−235daを0.055mol含有。)、次いで、トリエチルアミン74.60g(0.739mol)をPFAチューブから吸引して仕込み、残圧は窒素で大気圧に復圧した。500rpmで撹拌し、約1時間かけ内温150℃に昇温し、その温度で3時間撹拌を継続した。3時間後の圧力は1.70MPaであった。
【0063】
水400gを仕込み0.6MPaに加圧した、ディップ管と圧力計を備えた500mLステンレス製シリンダーから、氷水浴で冷却して内温を2℃以下としたステンレス鋼製1000mLオートクレーブに水201.70gを内温が5℃を超えないように徐々に添加した。そのまま30分間撹拌したのち、分液ロートへ移液して5分静定し、下層有機層499.55g、上層水層266.53gを回収した。下層有機層をガスクロマトグラフ分析したところ、HCFC−244faは0.04GC%、HCFC−235daは0.67GC%、OF−1233Zは85.10GC%、OF−1234Eは6.15GC%、OF−1234Zは1.89GC%、OF−1224は0.98GC%、TFPyは0.004GC%であった。HCFC−244faの変換率は100%、HCFC−235daの変換率は63%であった。
【0064】
[実施例12]
真空ポンプで減圧状態にしたステンレス鋼製1000mLオートクレーブ(耐圧硝子工業製簡易型オートクレーブTEM−D1000M)に、10.44GC%のHCFC−244fa、1.83GC%のHCFC−235da、87.02GC%のOF−1233Zを含む粗OF−1233Z502g(HCFC−244faを0.349mol、HCFC−235daを0.055mol含有。)、次いで、トリエチルアミン76.18g(0.754mol)をPFAチューブから吸引して仕込み、残圧は窒素で大気圧に復圧した。500rpmで撹拌し、約1時間かけ内温150℃に昇温し、その温度で3時間撹拌を継続した。3時間後の圧力は1.70MPaであった。
【0065】
水400gを仕込み0.6MPaに加圧した、ディップ管と圧力計を備えた500mLステンレス製シリンダーから、氷水浴で冷却して内温を2℃以下としたステンレス鋼製1000mLオートクレーブに水220.98gを内温が5℃を超えないように徐々に添加した。そのまま30分間撹拌したのち、分液ロートへ移液して5分静定し、下層有機層500.36g、上層水層285.92gを回収した。下層有機層をガスクロマトグラフ分析したところ、HCFC−244faは0.04GC%、HCFC−235daは0.69GC%、OF−1233Zは85.65GC%、OF−1234Eは6.00GC%、OF−1234Zは1.88GC%、OF−1224は0.97GC%、TFPyは0.005GC%であった。HCFC−244faの変換率は100%、HCFC−235daの変換率は63%であった。
【0066】
[実施例13]
実施例10と11で得た有機層を混合して調合した粗OF−1233Z989.35gと33質量%水酸化カリウム水溶液12.2g(0.072mol)を撹拌子、温度計、出口側が風船でシールされたジムロートを備えた1000mL三口フラスコに仕込み、室温下、5時間撹拌した。5時間経過後ガスクロマトグラフ分析したところHCFC−244faは0.04GC%、HCFC−235daは0.05GC%、OF−1233Zは86.56GC%、OF−1234Eは5.07GC%、OF−1234Zは1.80GC%、OF−1224は1.59GC%、TFPyは0.04GC%であった。HCFC−235daの変換率は93%であった。
【0067】
この1000mL三口フラスコを高さ20cmの空塔を備えた単蒸留装置に組み替え、受け器を1000mL三口フラスコとし、その出口に、出口側を風船でシールしたドライアイスコンデンサを取り付け、蒸留した。徐々に加熱してオイルバス温度100℃までの留出液803.50gを回収した。この液をガスクロマトグラフ分析したところ、HCFC−244faは0.04GC%、HCFC−235daは0.007GC%、OF−1233Zは85.36GC%、OF−1234Eは6.66GC%、OF−1234Zは2.11GC%、OF−1224は1.80GC%、TFPyは0.13GC%であった。蒸留残渣は63.1gであった。留出液には僅かに水が浮遊し、有機層部分には630ppmが含まれていた。KOH処理と蒸留を通してのOF−1233Z回収率(留出液中のOF−1233Z/粗OF−1233Z中のOF−1233Zを示す百分率)は92%であった。
【0068】
[実施例14]
実施例12で得られた留出液800.0gを氷水浴で冷却し、孔径0.5μmPTFEフィルターを備えた加圧濾過器(アドバンテック製KST−142−UH)を用いて濾過し、濾液を1000mL高密度ポリエチレン製容器に回収した。そこへ、ゼオライト(東ソー ゼオラム(登録商標)3A)15gを投入して4℃で16時間乾燥した。定性濾紙No.1を備えた加圧濾過器(アドバンテック製KST−142−UH)を用いてゼオライトを濾別し、濾液を1000mL高密度ポリエチレン容器に783.4g回収した。乾燥後の水分は29ppmであった。
【0069】
[実施例15]
理論段数35段(充填材:ヘリパックNo.2)の蒸留塔を用いて、実施例14で得られた乾燥後の有機液739.29gを精密蒸留した。初留298.47gを留去した後、主留を387.9g回収した。蒸留残渣は47.16gであった。主留の組成は、OF−1233Zが99.57GC%、HCFC−244faが0.05GC%、HCFC−235daが0.003GC%、OF−1234Eが0.007GC%、OF−1234Zが0.05GC%、OF−1224が0.003GC%であった。蒸留でのOF−1233Z回収率(留出液中のOF−1233Z/有機液中のOF−1233Zを示す百分率)は61%であった。
【0070】
[実施例16]
[トリエチルアミンの回収]
実施例8と同様の操作を6回返して得た、水層1485.8g(トリエチルアミンとして297.2g(2.94mol)含有。)を、温度計、滴下ロート、撹拌子を備えた2L三口フラスコに入れ、撹拌しながら氷水浴で冷却した。滴下ロートより48質量%水酸化カリウム水溶液379.3g(水酸化カリウム:3.25mol)を40分かけて滴下し、その温度で30分撹拌を継続したのち、オイルバスで内温70℃まで加温した。この液を、60℃に加熱した2L滴下ロートへ移液し、直ちに2層分離して、上層の橙色透明な有機層229.5gを回収した。ガスクロマトグラフ分析したところ、トリエチルアミン98.2GC%、その他不純物としてOF−1233Zを0.5GC%、1−(N,N−ジエチルアミノ)−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンを1.1GC%含まれていた。水分は3.0質量%であった。
【0071】
[トリエチルアミンの蒸留回収]
回収した前記有機層120.3gを、6mmディクソンパッキンを充填した高さ30cm内径20mmφの蒸留塔を用い常圧蒸留した。留出温度90℃までの初留52.1gと、留出温度90℃の主留57.7gを回収し、蒸留残渣は7.0gであった。初留を分析したところ、トリエチルアミン98.9GC%であり、水分4.4質量%であった。主留を分析したところトリエチルアミン99.9%であり、水分0.2質量%であった。
【0072】
[再利用1]
実施例1と同一の粗OF−1233Zを同量用い、トリエチルアミンとして[トリエチルアミンの回収]で回収した水分3.0質量%を含むトリエチルアミン3.75g(0.036mol)を用いて実施例1と同様の操作(但し、150℃のオイルバスで3.5時間加熱撹拌した。)を行った。処理した液を分析したところ、HCFC−244faは0.05GC%、HCFC−235daは0.65GC%、OF−1233Zは84.05GC%、OFC−OF−1234Eは7.74GC%、OF−1234Zは2.03GC%、OF−1224は0.68GC%、TFPy0.02GC%であった。HCFC−244faの変換率は100%、HCFC−235daの変換率は59%であった。
【0073】
[再利用2]
実施例1と同一の粗OF−1233Zを同量用い、トリエチルアミンとして[トリエチルアミンの蒸留回収]で回収した水分0.2%を含むトリエチルアミン3.70g(0.036mol)を用いて実施例1と同様の操作(但し、150℃のオイルバスで3.5時間加熱撹拌した。)を行った。処理した液を分析したところ、HCFC−244faは0.12GC%、HCFC−235daは0.69GC%、OF−1233Zは84.32GC%、OF−1234Eは7.84GC%、OF−1234Zは2.00GC%、OF−1224は0.66GC%であり、TFPyは検出されなかった。HCFC−244faの変換率は99%、HCFC−235daの変換率は58%であった。
【0074】
[比較例1]
実施例1と同一の粗OF−1233Zを同量用い、トリエチルアミンに替えて7.6gのピリジンを用いて実施例1と同様の操作を行ったところ、黒色の粘稠物が生成した。処理した液を分析したところ、HCFC−244faは11.22GC%、HCFC−235daは1.66GC%、OF−1233Zは86.56GC%、OF−1234Eは0.07GC%、OF−1234Zは0.24GC%であり、OF−1224、TFPyは検出されなかった。HCFC−244fa、HCFC−235daの変換率は共に0%であった。
【0075】
[比較例2]
実施例1と同一の粗OF−1233Zを同量用い、トリエチルアミンに替えて10.07gの2,6−ルチジンを用いて実施例1と同様の操作を行ったところ、黒色の粘稠物が生成した。処理した液を分析したところ、HCFC−244faは10.30GC%、HCFC−235daは1.62GC%、OF−1233Zは86.57GC%、OF−1234Eは0.01GC%、OF−1234Zは0.01GC%、OF−1224は0.02GC%であり、TFPyは検出されなかった。HCFC−244fa、HCFC−235daの変換率は共に0%であった。
【0076】
[比較例3]
実施例1と同じオートクレーブに、33質量%水酸化ナトリウム水溶液5.65g(0.042mol)と、実施例1と同一の粗OF−1233Zを25.07g(HCFC−244faを0.018mol、HCFC−235daを0.0002mol含有。)を仕込み、室温下6時間撹拌した。反応終了後、氷水浴で0℃付近まで冷却したのち、オートクレーブを開放し、下層の有機層をガスクロマトグラフ分析したところ、HCFC−244faは1.64GC%、OF−1233Zは78.80GC%、OF−1234Eは4.62GC%、OF−1234Zは1.34GC%、OF−1224とOF−1233Eを併せて6.63GC%であり、TFPyは1.88GC%であり、HCFC−235daは検出されなかった。HCFC−244faの変換率は85%、HCFC−235daの変換率は100%であった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の製造方法により得られる高純度のOF−1233Zは洗浄剤、冷媒、ヒートポンプ用の熱媒体、高温作動流体などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンを含む(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン組成物を第三アミンと接触させてアミン処理組成物とする工程を含む(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
【請求項2】
(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン組成物が、さらに2−クロロ−1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを含む組成物である、請求項1に記載の(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
【請求項3】
さらに、アミン処理組成物に含まれる有機成分を無機塩基と接触させる工程を含む請求項2に記載の(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
【請求項4】
さらに、アミン処理組成物に含まれる第三アミン/塩化水素塩から第三アミンを回収し、再使用する工程を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。

【公開番号】特開2013−87066(P2013−87066A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226841(P2011−226841)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】