説明

(a)ホスホイノシタイド3−キナーゼ阻害剤および(b)Ras/Raf/Mek経路のモジュレーターの配合物

本発明は、(a)ホスホイノシタイド3−キナーゼ阻害剤化合物および(b)Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物を含む、増殖性疾患、特に固形腫瘍疾患の治療のための医薬配合物;当該配合物を含む医薬組成物;増殖性疾患治療用の医薬の調製のための当該配合物の使用;組み合わせ調製物として当該配合物を含む、同時、個別または連続的使用のための市販パッケージまたは製品;ならびに温血動物、特にヒトの治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)ホスホイノシタイド3−キナーゼ(PI3K)阻害剤化合物および(b)Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物、ならびに任意選択で少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体を含む医薬配合物であって、同時、個別または連続的使用のため、具体的には増殖性疾患、特にRas/Raf/Mek経路およびPI3K/Akt経路が同時に調節不全になる増殖性疾患の治療のための医薬配合物;当該配合物を含む医薬組成物;増殖性疾患治療用の医薬の調製のための当該配合物の使用;組み合わせ調製物として当該配合物を含む、同時、個別または連続的使用のための市販パッケージまたは製品;ならびに温血動物、特にヒトの治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2006/122806には、PI3−キナーゼなどの脂質キナーゼの活性を阻害すると報告されているイミダゾキノリン誘導体について記載されている。本発明に適切な具体的なイミダゾキノリン誘導体、それらの調製およびそれらを含む適切な医薬製剤は、WO2006/122806に記載されており、以下の式Iの化合物あるいはその互変異性体またはその薬学的に許容可能な塩またはその水和物もしくは溶媒和物を含む。
【0003】
【化1】

上式で、Rは、ナフチルまたはフェニルであり、ここで、該フェニルは、ハロゲン;非置換の低級アルキルまたはハロゲン、シアノ、イミダゾリルもしくはトリアゾリルによって置換された低級アルキル;シクロアルキル;低級アルキル、低級アルキルスルホニル、低級アルコキシおよび低級アルコキシ低級アルキルアミノからなる群から独立して選択される1または2個の置換基によって置換されたアミノ;非置換のピペラジニルまたは低級アルキルおよび低級アルキルスルホニルからなる群から独立して選択される1または2個の置換基によって置換されたピペラジニル;2−オキソ−ピロリジニル;低級アルコキシ低級アルキル;イミダゾリル;ピラゾリル;ならびにトリアゾリルからなる群から独立して選択される1または2個の置換基によって置換されており;
は、OまたはSであり;
は、低級アルキルであり;
は、非置換のピリジルまたはハロゲン、シアノ、低級アルキル、低級アルコキシまたは、非置換のピペラジニルもしくは低級アルキルによって置換されたピペラジニルによって置換されたピリジル;非置換または低級アルコキシによって置換されたピリミジニル;非置換またはハロゲンによって置換されたキノリニル;キノキサリニル;あるいはアルコキシで置換されたフェニルであり;
は、水素またはハロゲンであり;
nは、0または1であり;
は、n=1の場合、ラジカルRを有しているN原子が正電荷を帯びているという条件で、オキシドであり;
は、水素またはアミノである。
【0004】
式Iの化合物の定義に使用される場合、ラジカルおよび記号は、WO2006/122806に開示されるとおりの意味を有し、この公報を参照によって本願に引用したものとする。
【0005】
本発明の好適な化合物は、特にWO2006/122806に記載されている化合物である。本発明の非常に好適な化合物は、2−メチル−2−[4−(3−メチル−2−オキソ−8−キノリン−3−イル−2,3−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル)−フェニル]−プロピオニトリルおよびそのモノトシル酸塩(化合物A)である。2−メチル−2−[4−(3−メチル−2−オキソ−8−キノリン−3−イル−2,3−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル)−フェニル]−プロピオニトリルの合成については、例えば、実施例1としてWO2006/122806に記載されている。本発明の非常に好適な別の化合物は、8−(6−メトキシ−ピリジン−3−イル)−3−メチル−1−(4−ピペラジン−1−イル−3−トリフルオロメチル−フェニル)−1,3−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン(化合物B)である。8−(6−メトキシ−ピリジン−3−イル)−3−メチル−1−(4−ピペラジン−1−イル−3−トリフルオロメチル−フェニル)−1,3−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オンの合成については、例えば、実施例86としてWO2006/122806に記載されている。
【0006】
WO07/084786には、PI3−キナーゼなどの脂質キナーゼの活性が見いだされたピリミジン誘導体について記載されている。本発明に適切な具体的なピリミジン誘導体、それらの調製およびそれらを含む適切な医薬製剤については、WO07/084786に記載されており、以下の式Iの化合物またはそれらの立体異性体、互変異性体もしくは薬学的に許容可能な塩を含む。
【0007】
【化2】

上式で、Wは、CRまたはNであり、ここで、Rは、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ハロゲン、
(4)メチル、
(5)トリフルオロメチルおよび
(6)スルホンアミド
からなる群から選択され;
は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)置換および非置換アルキル、
(6)置換および非置換アルケニル、
(7)置換および非置換アルキニル、
(8)置換および非置換アリール、
(9)置換および非置換ヘテロアリール、
(10)置換および非置換複素環、
(11)置換および非置換シクロアルキル、
(12)−COR1a
(13)−CO1a
(14)−CONR1a1b
(15)−NR1a1b
(16)−NR1aCOR1b
(17)−NR1aSO1b
(18)−OCOR1a
(19)−OR1a
(20)−SR1a
(21)−SOR1a
(22)−SO1a、ならびに
(23)−SONR1a1b
からなる群から選択され、ここで、R1aおよびR1bは、
(a)水素、
(b)置換または非置換アルキル、
(c)置換および非置換アリール、
(d)置換および非置換ヘテロアリール、
(e)置換および非置換複素環、ならびに
(f)置換および非置換シクロアルキル
からなる群から独立して選択され;
は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)ヒドロキシ、
(6)アミノ、
(7)置換および非置換アルキル、
(8)−COR2aならびに
(9)−NR2aCOR2b
からなる群から選択され、ここで、R2aおよびR2bは、
(a)水素、および
(b)置換または非置換アルキル
からなる群から独立して選択され;
は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)置換および非置換アルキル、
(6)置換および非置換アルケニル、
(7)置換および非置換アルキニル、
(8)置換および非置換アリール、
(9)置換および非置換ヘテロアリール、
(10)置換および非置換複素環、
(11)置換および非置換シクロアルキル、
(12)−COR3a
(13)−NR3a3b
(14)−NR3aCOR3b
(15)−NR3aSO3b
(16)−OR3a
(17)−SR3a
(18)−SOR3a
(19)−SO3a、ならびに
(20)−SONR3a3b
からなる群から選択され、ここで、R3aおよびR3bは、
(a)水素、
(b)置換または非置換アルキル、
(c)置換および非置換アリール、
(d)置換および非置換ヘテロアリール、
(e)置換および非置換複素環、ならびに
(f)置換および非置換シクロアルキル
からなる群から独立して選択され;
は、
(1)水素、および
(2)ハロゲン
からなる群から選択される。
【0008】
式Iの化合物の定義に使用される場合、ラジカルおよび記号は、WO07/084786に開示されるとおりの意味を有し、この公報を参照によって本願に引用したものとする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好適な化合物は、WO07/084786に明らかに記載されている化合物である。本発明の非常に好適な化合物は、5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(化合物C)である。5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミンの合成については、実施例10としてWO07/084786に記載されている。
【0010】
Ras/Raf/Mekシグナル伝達経路は、RTKそれぞれの認識リガンドによる、最初のRTKの細胞外結合および刺激によって活性化される。RTKの細胞質ドメインにおいて特定のチロシン残基が自己リン酸化されると、Grb2−Sos複合体が細胞膜に移動し、不活性Ras・GDPを活性Ras・GTPに変化させる。特定のリン酸化チロシン配列を認識するシグナルタンパク質のSH2ドメインによって、Grb2と、活性化キナーゼまたはリン酸化レセプター関連タンパク質との間の相互作用が仲介される。GTPが結合すると、Rasは構造が変化し、細胞膜にRaf−1が動員され、そこで、さまざまなキナーゼによってリン酸化され、同時にプロテインホスファターゼ2Bによって重要な残基において脱リン酸化される。活性化されたRafが活性化ループの2つのセリン残基においてMekをリン酸化し、この結果、このタンパク質キナーゼの活性化が起こる。その後、Mekが、Erkをリン酸化し活性化することにより、Erkが核へ移動できるようになる。核において、Erkが転写因子をリン酸化し、これによりさまざまな遺伝子の発現が可能になる。このセクションで示したとおり、Raf/Mek/Erkカスケードのいくつかの構成成分は、癌治療、例えば、HRAS、KRAS、NRASもしくはBRAF変異または遺伝子増幅などの遺伝子改変に対する特有の可能性を示す。
【0011】
Nexavar(商標)またはBAY43−9006として知られるソラフェニブは、最初に販売承認を受けた進行腎細胞癌(RCC)治療用のRafキナーゼモジュレーターである。ソラフェニブは、以下の構造のビアリール尿素誘導体である。
【0012】
【化3】

ソラフェニブおよびその調製方法は、例えば、US7235576またはUS7351834に記載されている。
【0013】
RAF265(以前はCHIR−265として知られていた)は、経口で生物が利用可能な以下の構造の別のRafモジュレーターである。
【0014】
【化4】

RAF265およびその調製方法は、例えば、WO07/030377に記載されている。
【0015】
別のRafキナーゼモジュレーターとしては、例えば、SB590885、XL281、PLX4032が挙げられる。
【0016】
Mekキナーゼモジュレーターとしては、WO02/06213に記載されている化合物、具体的には、以下の構造を有する化合物PD−0325901が挙げられる。
【0017】
【化5】

【0018】
別の関連したMekキナーゼ阻害剤は、化合物PD−181461である。
【0019】
別のMekキナーゼモジュレーターとしては、WO03/077914に記載されている化合物、具体的には、以下の構造を有する化合物ARRY142886/AZD6244
【0020】
【化6】

およびARRY−509、ならびに過剰増殖性疾患の治療のためのMEK阻害剤として、N3アルキル化ベンゾイミダゾールおよび他の類似した複素環式誘導体を包含する、WO05/051906、WO05/023251、WO03/077855およびUS20050049419に記載の化合物が挙げられる。
【0021】
別のMekキナーゼモジュレーターとしては、例えば、XL518、JTP−74057、AS−701255、AS−701173が挙げられる。
【0022】
よって、本発明はさらに(a)ホスホイノシタイド3−キナーゼ(PI3K)阻害剤化合物および(b)Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物を含む組み合わせ調製物(combined preparation)または医薬組成物などの配合物(combination)に関する。より具体的には、第一の実施形態において、本発明は、(a)ホスホイノシタイド3−キナーゼ(PI3K)阻害剤化合物および(b)RafキナーゼモジュレーターまたはMekキナーゼモジュレーターを含む配合物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】A549細胞を化合物A、PD03251901(250nM)単独またはそれらの組み合わせと共に30分間インキュベートした後、細胞を回収し、通常のウエスタンブロッティング法によってAkt;p70S6KまたはERKいずれかのリン酸化レベルの評価を行った図である。
【図2】示した用量およびスケジュールにおいて、示した化合物を単独または組み合わせで用いて、BN472腫瘍を有するラットを処置した。試験の全期間を通じて、カリパスで測定することによって腫瘍の増殖の変化を追跡したグラフである。P<0.05(Dunnett法)。
【図3】示した用量およびスケジュールにおいて、示した化合物を単独または組み合わせで用いて、BN472腫瘍を有するラットを処置した。試験の全期間を通じて、体重の変化を追跡したグラフである。P<0.05(Dunnett法)。
【図4】KRAS変異型PANC1細胞を、Harlanのヌードマウスの側腹部皮下において増殖させ、化合物A、AZD6244単独または組み合わせで用いて12日間処置した。試験の全期間を通じて、腫瘍体積(A)および体重(B)の変化を測定したグラフである。p<0.05(Dunnett法)。
【図5】KRAS変異型MiaPaCa2細胞を、Harlanのヌードマウスの側腹部皮下において増殖させ、化合物A、AZD6244単独または組み合わせで用いて12日間処置した。試験の全期間を通じて、腫瘍体積(A)および体重(B)の変化を測定したグラフである。p<0.05(Dunnett法)。
【図6】KRAS変異型MiaPaCa2細胞を、Harlanのヌードマウスの側腹部皮下において増殖させ、5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(化合物C、ここではcpd Bと呼ぶ)、AZD6244単独または組み合わせで用いて12日間処置した。試験の全期間を通じて、腫瘍体積(A)および体重(B)の変化を測定したグラフである。p<0.05(Dunnett法)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で使用される場合「組み合わせ調製物」という用語は、特に、上で定義されたとおりの配合物パートナー(a)および(b)を、独立して、すなわち特定量の配合物パートナー(a)および(b)の異なる所定の配合物の使用によって、すなわち同時にもしくは異なる時点において投与することができるという意味で「パーツからなるキット(kit of parts)」と定める。その結果、パーツからなるキットのパーツは、例えば、パーツからなるキットの任意のパーツについて同時に、または時間をずらして、すなわち異なる時点において、同じ時間間隔もしくは異なる時間間隔で投与することができる。例えば、治療される患者の亜集団の必要性または1人の患者の必要性に対処するために、組み合わせ調製物における投与される配合物パートナー(a)と配合物パートナー(b)の総量比を変えてもよい。
【0025】
PI3K阻害剤と、raf−キナーゼまたはmekキナーゼ阻害剤とを含む配合物による療法の結果として腫瘍疾患の治療において予想外の改善をもたらすことがわかっている。同時に、連続的にまたは個別に投与されると、PI3K阻害剤と、raf−キナーゼまたはmekキナーゼ阻害剤とが相乗的に細胞増殖を抑制するよう相互作用する。この予想外の相乗作用により、各化合物の必要とされる用量を減少させることができ、副作用の軽減ならびに化合物および治療の臨床的有効性の強化につながる。
【0026】
1つまたは複数の構成成分間の相乗的な相互作用、効果についての最適範囲および効果についての各構成成分の絶対用量(absolute dose)の範囲を特定することは、異なるw/w比の範囲および用量についての構成成分を、治療を必要とする患者に投与することによって確実に特定することができる。患者に対する臨床試験を実施することの複雑さおよび費用から、相乗作用について試験する形式で主なモデルとしてヒトを使用することは現実的ではない。ただし、本明細書に記載されているとおり、1つの種における相乗作用を観察することにより、他の種および動物モデルにおいて生じる効果を予測して、相乗効果を特定することができる。さらに、そのような研究の結果を使い、薬物動態学的/薬力学的方法を適用することによって有効用量および血漿中濃度の割合の範囲ならびに他の種において必要とされる絶対用量および血漿中濃度を予測することもできる。腫瘍モデルとヒトで認められる効果との間に相関性が確立されると、動物、例えば、以下の実施例に記載されているとおりのBN472腫瘍モデルまたはPANC1およびMiaPaCa2膵臓腫瘍モデルにおける相乗作用を、明らかにできることが示唆される。
【0027】
一態様では、本発明は、ヒトに投与するための相乗作用のある配合物であって、(a)PI3K阻害剤化合物および(b)Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物または薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物とを、相乗的相互作用を確認するために使用される、例えば、以下の実施例に記載されているとおりの、腫瘍モデルにおいて観察される範囲に対応する配合範囲(w/w)で含む配合物を提供する。ヒトにおける比率の範囲は、50:1から1:50重量部、50:1から1:20重量部、50:1から1:10重量部、50:1から1:1重量部、20:1から1:50重量部、20:1から1:20重量部、20:1から1:10重量部、20:1から1:1重量部、10:1から1:50重量部、10:1から1:20重量部、10:1から1:10重量部、10:1から1:1重量部、1:1から1:50重量部、1.1から1:20重量部および1:1から1:10重量部の間から選択される非ヒトの範囲に対応することが適切である。ヒトの範囲は、10:1から1:1重量部または5:1から1:1重量部または2:1から1:1重量部程度の非ヒトの範囲に対応するのがより適切である。
【0028】
別の態様によると、本発明は、(a)PI3K阻害剤化合物および(b)Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物または薬学的に許容可能なその塩を含むヒトに投与するための相乗作用のある配合物を提供し、各構成成分の用量範囲は、相乗的な相互作用を確認するために主に使用される適切な腫瘍モデル、例えば、以下の実施例に記載されている腫瘍モデルにおいて観察される相乗作用のある範囲に対応する。適切には、ヒトにおけるPI3K阻害剤化合物の用量範囲は、適切な腫瘍モデル、例えば、以下の実施例に記載されているとおりのラットまたはマウスモデルにおける1〜50mg/kgの用量範囲に対応し、より適切には1〜30mg/kg(例えば、化合物Aについては1〜35mg/kgまたは1〜10mg/kg、化合物Bについては1〜25mg/kg)に対応する。
【0029】
Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物について、ヒトにおける用量範囲は、適切な腫瘍モデル、例えば、以下の実施例に記載されているとおりのラットまたはマウスモデルにおける相乗作用のある範囲1〜50mg/kgまたは1〜30mg/kg(例えば、1〜25mg/kg、1〜10mg/kgもしくは1〜2.5mg/kg)に対応することが適切である。
【0030】
適切には、ヒトに使用するための、PI3K阻害剤化合物の用量は、1日1回または1日2回(b.i.d.)または1日3回(t.i.d.)、1〜1200mg、1〜500mg、1〜100mg、1〜50mg、1〜25mg、500〜1200mg、100〜1200mg、100〜500mg、50〜1200mg、50〜500mg、または50〜100mg、適切には50〜100mgから選択される範囲であり、Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物の用量は、1日1回、b.i.dまたはt.i.d、1〜1000mg、1〜500mg、1〜200mg、1〜100mg、1〜50mg、1〜25mg、10〜100mg、10〜200mg、50〜200mgまたは100〜500mgから選択される範囲である。
【0031】
別の態様によると、本発明は、ヒトに投与するための相乗作用のある配合物であって、(a)PI3K阻害剤化合物が10%〜100%、好ましくは50%〜100%またはより好ましくは70%〜100%、80%〜100%もしくは90%〜100%の最大耐用量(MTD)で、かつ(b)Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物が10%〜100%、好ましくは50%〜100%またはより好ましくは70%〜100%、80%〜100%もしくは90%〜100%のMTDで含まれる配合物を提供する。好適な実施形態では、一方の化合物、好ましくはPI3K阻害剤化合物がMTDで投与され、他方の化合物、好ましくはRas/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物が50%〜100%のMTD、好ましくは60%〜90%のMTDで投与される。MTDは、容認できない副作用なく投与できる、薬の最高用量に相当する。MTDを特定することは、当該技術内にある。例えば、MTDは、用量制限毒性を明らかにするための用量漸増および生物学的活性耐用量レベル(biologically active tolerated dose level)の特定を含む第I相試験において適切に特定できる。
【0032】
本発明の一実施形態では、(a)ホスホイノシタイド3−キナーゼ(PI3K)阻害剤化合物阻害剤は、化合物A、化合物Bまたは化合物Cからなる群から選択される。
【0033】
本発明の一実施形態において、(b)Rafキナーゼモジュレーターは、ソラフェニブ、Raf265、SB590885、XL281およびPLX4032からなる群から選択される。別の実施形態において、(b)Mekキナーゼモジュレーターは、PD325901、PD−181461、ARRY142886/AZD6244、ARRY−509、XL518、JTP−74057、AS−701255、AS−701173、AZD8330、ARRY162、ARRY300、RDEA436、E6201、RO4987655/R−7167、GSK1120212およびAS703026からなる群から選択される。
【0034】
本明細書で使用される場合「治療する(treating)」または「治療(treatment)」という用語には、疾患の進行を遅らせる処置が含まれる。本明細書で使用される場合「進行を遅らせる」という用語は、治療すべき増殖性疾患の前段階または初期段階の患者に配合物を投与することを意味し、この場合の患者は、例えば、対応する疾患の前形態であると診断されているか、またはその患者が、例えば、医学的治療過程もしくは、事故によって生じる状態にあって対応する疾患が生じる可能性の高い状態にある。
【0035】
本発明の一実施形態では、増殖性疾患は、メラノーマ、肺癌、結腸直腸癌(CRC)、乳癌、例えば、腎細胞癌(RCC)などの腎癌、肝癌、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺癌(NSCLC)、甲状腺癌、膵癌、神経線維腫症または肝細胞癌である。
【0036】
本発明の別の実施形態では、増殖性疾患は固形腫瘍である。「固形腫瘍」という用語は、特に、乳癌、卵巣癌、結腸および概してGI(胃腸)管の癌、子宮頚癌、肺癌、具体的には、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、頭頚部癌、膀胱癌、前立腺の癌またはカポジ肉腫を意味する。本配合物は、固形腫瘍だけでなく、液性腫瘍の増殖も抑制する。さらに、腫瘍タイプおよび使用される特定の配合物に応じて、腫瘍体積が減少され得る。本明細書で開示される配合物は、腫瘍の転移拡大および微小転移の増殖または発生を予防するのにも適している。本明細書で開示される配合物は、具体的には、予後不良の患者、特に、転移性メラノーマまたは膵癌を有するそのような予後不良の患者の治療に適している。
【0037】
治療対象の癌は、例えば、HRAS、KRAS、NRASもしくはBRAF変異または遺伝子増幅などの、Ras/Raf/Mekシグナル伝達経路における遺伝子変化を有することがある。一実施形態では、治療対象の癌は、KRASの変異を有する、例えば、KRAS変異膵癌、結腸癌、肺癌(例えば、NSCLC)または白血病である。
【0038】
コード番号、一般名または商標名によって特定される活性薬剤の構造については、標準大要「The Merck Index」現行版またはデータベース、例えば、Patents International(例、IMS World Publications)から入手することができる。その対応する内容は参照によって引用したものとする。
【0039】
配合物パートナー(a)および(b)についての言及には薬学的に許容可能な塩も含まれることが意図されていることが理解される。この配合物パートナー(a)および(b)が、例えば、少なくとも1つの塩基性中心を有する場合、これらは酸付加塩を形成することができる。所望の場合、別に塩基性中心が存在する、対応の酸付加塩も形成することができる。酸性基(例えば、COOH)を有する配合物パートナー(a)および(b)は、塩基と共に塩を形成することもできる。配合物パートナー(a)もしくは(b)または薬学的に許容可能なその塩は、水和物の形態で使用されてもよく、または結晶化のために使用される他の溶媒を含んでもよい。
【0040】
(a)ホスホイノシタイド3−キナーゼ阻害剤化合物および(b)Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物、ならびに任意選択で少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体を含む、配合物であって、該活性成分は、それぞれの場合において遊離型または薬学的に許容可能な塩の形態で存在する配合物を「本発明の配合物」として以下に述べる。
【0041】
本発明の配合物は、有効性および安全性双方について相乗的および相加的利点がある。ホスホイノシタイド3−キナーゼ阻害剤化合物と、Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物の配合物との治療効果は、該配合物の各構成成分の安全な低用量範囲において得ることができる。
【0042】
本発明の配合物の薬理活性は、例えば、臨床試験または以下実質的に記載される試験手順において明らかにすることができよう。適切な臨床試験は、例えば、進行固形腫瘍を有する患者における非盲検非ランダム化用量漸増試験である。そのような試験により、本発明の配合物の活性成分についての相加作用または相乗作用を証明することができる。増殖性疾患に対する有益な効果は、これらの試験結果により直接、または当業者に公知の試験設計に変更することによって特定することができる。そのような試験は、具体的には、活性成分および本発明の配合物を使用する単剤療法の効果と比較するのが適切である。好ましくは、配合物パートナー(a)を固定用量で投与し、配合物パートナー(b)の用量を最大許容用量に達するまで増加させる。
【0043】
本発明の1つの目的は、本発明の配合物を含む、増殖性疾患に対する治療有効量を含む、医薬組成物を提供することである。この組成物では、配合物パートナー(a)および(b)は、一緒に、順に、または個別に1つの併用単位剤形または2つの個別の単位剤形で投与されてもよい。この単位剤形は、所定の(fixed)配合物であってもよい。
【0044】
本発明による医薬組成物は、それ自体が公知である方法において調製することができ、ヒトを含むほ乳類(温血動物)に経口または経直腸などの経腸および非経口投与するのに適したものである。あるいは、薬剤が個別に投与される場合、一方を腸溶性製剤として、他方を非経口投与してもよい。
【0045】
新規の本医薬組成物は、例えば、約10%から約100%、好ましくは約20%から約60%の活性成分を含有する。併用療法のための経腸または非経口投与用の医薬調製物は、例えば、糖衣錠剤、錠剤、カプセル剤または坐剤などの単位剤形、さらにアンプル剤である。特に指示がなければ、この調製物は、それ自体が公知である方法において、例えば、従来の混合、造粒、糖衣、溶解または凍結乾燥プロセスによって調製される。各剤形の個々の用量に含まれる配合物パートナーの単位量は、複数の用量単位を投与することによって必要な有効量に到達させることができるため、それ自体で有効量となる必要はないことを認識されたい。
【0046】
経口剤形のための本組成物の調製では、通常の任意の医薬媒体、例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味料、保存料、着色料;またはデンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤および同様のものなどの担体を用いてもよく、経口固形調製物の場合、液体調製物より好適な固形の経口調製物と共に、例えば、散剤、カプセル剤および錠剤などを用いてもよい。投与が容易であるため、固形の医薬担体が明らかに用いられる場合に錠剤およびカプセル剤は最も好都合な経口単位剤形であることを示す。
【0047】
具体的には、本発明の配合物の治療有効量の各配合物パートナーは、同時にまたは任意の順序で連続的に投与されてもよく、この構成成分は、個別に投与されるか、または所定の配合物として投与されてもよい。例えば、本発明による増殖性疾患の進行を遅らせるか、または治療する方法は、同時にまたは任意の順序で連続的に、併せて治療有効量、好ましくは相乗的に有効な量で(i)遊離型または薬学的に許容可能な塩の形態の第一の配合物パートナーを投与すること、および(ii)遊離型または薬学的に許容可能な塩の形態の第二の配合物パートナーを投与することを含んでもよい。本発明の配合物の個々の配合物パートナーは、治療過程の異なる時点で個別に、または分割された配合物もしくは単一の配合物の形態で同時に投与することができる。さらに、投与するという用語には、in vivoでそのような配合物パートナーに変化する配合物パートナーのプロドラッグを使用することも包含される。したがって、本発明は、同時処置または交互処置のすべてのそのような投与計画を包含するとして理解されるべきであり、「投与する」という用語は、それに応じて解釈されるべきである。
【0048】
本発明の配合物は、組み合わせ調製物または医薬組成物であり得る。
【0049】
さらに、本発明は、増殖性疾患を有する温血動物を治療する方法に関し、この方法は前記増殖性疾患に対する治療有効量で本発明の配合物を該動物に投与することを含む。
【0050】
さらに、本発明は、増殖性疾患の治療のため、および増殖性疾患治療用の医薬の調製のための、本発明の配合物の使用に関する。
【0051】
さらに、本発明は、増殖性疾患の進行の遅延または治療における同時、個別または連続的使用のための使用説明書と共に、活性成分として本発明の配合物を含む市販パッケージを提供する。
【0052】
本発明の好適な実施形態は、以下を含む配合物が代表とされる。
・化合物A、化合物Bまたは化合物Cおよびソラフェニブ、
・化合物A、化合物Bまたは化合物CおよびRAF265。
【0053】
別の好適な実施形態では、本発明は、以下を含む配合物を提供する。
・化合物Aおよびソラフェニブ、Raf265、SB590885、XL281またはPLX4032。
・化合物Bおよびソラフェニブ、Raf265、SB590885、XL281またはPLX4032。
・化合物Cおよびソラフェニブ、Raf265、SB590885、XL281またはPLX4032。
・化合物AおよびPD325901、PD−181461、ARRY142886/AZD6244、ARRY−509、XL518、JTP−74057、AS−701255、AS−701173、AZD8330、ARRY162、ARRY300、RDEA436、E6201、RO4987655/R−7167、GSK1120212またはAS703026。
・化合物BおよびPD325901、PD−181461、ARRY142886/AZD6244、ARRY−509、XL518、JTP−74057、AS−701255、AS−701173、AZD8330、ARRY162、ARRY300、RDEA436、E6201、RO4987655/R−7167、GSK1120212またはAS703026。
・化合物CおよびPD325901、PD−181461、ARRY142886/AZD6244、ARRY−509、XL518、JTP−74057、AS−701255、AS−701173、AZD8330、ARRY162、ARRY300、RDEA436、E6201、RO4987655/R−7167、GSK1120212またはAS703026。
【0054】
別の態様では、本発明は、以下を提供する。
・(a)本発明の配合物および任意選択で少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体を含む、同時、個別または連続的使用のための配合物であって、活性成分は、それぞれの場合において遊離型または薬学的に許容可能な塩もしくはその任意の水和物の形態で存在する、配合物;
・併せて増殖性疾患に対する治療的有効量である本発明の配合物および少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物;
・増殖性疾患の治療のための本発明の配合物の使用;
・増殖性疾患治療用の医薬の調製のための本発明の配合物の使用;
・PI3K阻害剤は、化合物A、化合物Bまたは化合物Cから選択される、本発明の配合物の使用;
・Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物は、Rafキナーゼ活性をモジュレートする化合物、例えば、ソラフェニブ、RAF265、SB590885、XL281、PLX4032である、本発明の配合物の使用;および
・Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物は、Mekキナーゼ活性をモジュレートする化合物、例えば、PD−0325901、PD−181461、ARRY142886/AZD6244、ARRY−509、XL518、JTP−74057、AS−701255、AS−701173、AZD8330、ARRY162、ARRY300、RDEA436、E6201、RO4987655/R−7167、GSK1120212またはAS703026である、本発明の配合物の使用。
【0055】
さらに、具体的には、本発明は、(a)ホスホイノシタイド3−キナーゼ阻害剤化合物の1または複数の単位剤形および(b)Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物を含む組み合わせ調製物に関する。
【0056】
さらに、具体的には、本発明は、増殖性疾患治療用の医薬の調製のための、(a)ホスホイノシタイド3−キナーゼ阻害剤化合物および(b)Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物を含む配合物の使用に関する。
【0057】
本発明の配合物に用いられる有効用量の各配合物パートナーは、用いられる特定の化合物または医薬組成物、投与方法、治療される症状、治療される症状の重症度によって変化することもある。このように、本発明の配合物の投与計画は、投与経路ならびに患者の腎機能および肝機能を含むさまざまな要因に従って選択される。通常の内科医、臨床医または獣医の技術により、症状の進行を防ぐ、逆行させる、または止めるのに必要とされる単一の活性成分の有効量を容易に決定し、処方することができる。最適な精度で、毒性がなく有効性が得られる範囲内の活性成分濃度を達成するためには、標的部位に対する活性成分の利用能の動態に基づく投与計画が必要である。
【0058】
本発明の配合物に用いられる配合物パートナーに単一の薬物として市販される形態が適用される場合、本明細書に記載の有益な効果をもたらすために、その用量および投与方法は、本明細書で特に述べていない場合は、販売される薬物それぞれの添付文書に提供される情報に従って実施できる。
【0059】
化合物Aは、約50から800mg/日にわたる用量範囲でヒトに投与することができる。
【0060】
化合物Bは、約25から800mg/日にわたる用量範囲でヒトに投与することができる。
【0061】
化合物Cは、約25から800mg/日にわたる用量範囲でヒトに投与することができる。
【0062】
ソラフェニブは、約75から800mg/日まで、より好ましくは1日2回、400mgの用量範囲でヒトに投与することができる。
【0063】
以下の実施例により、上記の本発明を説明するが、決して本発明の範囲を制限する意図はない。本発明の配合物の有益な効果は、当業者に公知の他の試験モデルによっても特定することができる。
【実施例1】
【0064】
MEK阻害剤であるPD0325901は、増殖抑制アッセイにおいて化合物Aと相乗作用を示す。標準的なメチレンブルーによる増殖アッセイにKRAS変異型NSCLC細胞株を使用した。このアッセイにおいて、化合物AおよびPD0325901は、それぞれGI50(すなわち、50%の増殖抑制が観察される濃度)が9.41および36.8nMにおいて増殖を抑制した(表1)。組み合わせて試験される場合、BEZ235のGI50は、3.2nMに低下した。すなわち、PD0325901の存在下では、同様の増殖低減が観察されるのには3分の1のBEZ235が必要とされるということである。反対に、PD0325901のGI50は、化合物Aの存在下では11.5nMに低下した。得られた組み合わせ指数(combination index)は、0.718であり、これは中程度の相乗作用に相当する(表2)。
【0065】
【表1】

【0066】
化合物AもしくはPD0325901(NVP−LBW624)単独またはそれらの組み合わせの量を増加させながら、72時間、A549細胞をインキュベートし、標準的なメチレンブルーアッセイを用いて増殖について評価した。GI50を測定し、CIをCalcuSynソフトウェアを用いて定量した。
【0067】
【表2】

【実施例2】
【0068】
単独で細胞内でインキュベートされる場合、MEK阻害剤および化合物Aは、それぞれの下流エフェクター(ERKおよびAkt)をブロックする。両阻害剤の存在下でA549細胞がインキュベートされると、双方の経路が効果的に同時に遮断される(図1)。
【実施例3】
【0069】
BN472腫瘍モデルにおいて、化合物Aを10mg/kg(p.o.、1q24h)の用量で、またはRaf阻害剤であるRaf265を(用量2.5mg/kg、po、&q24hで)投与すると、83および76のいずれかの弱くわずかな抗腫瘍活性(T/Cとして表す)がもたらされた。しかしながら、化合物A(10mg/kg)のRAF265との配合物により、T/Cが34%の強力かつ統計学的に有意な抗腫瘍活性がもたらされた(図2)。体重に対する影響が認められなかったため、配合物は良好な耐用性を示した(図3)。
【実施例4】
【0070】
KRAS変異型PANC1細胞を、Harlanのヌードマウスの側腹部皮下において増殖させた。その後、腫瘍を有する動物を、図4に示した化合物および投与計画によって処置した。動物を屠殺する12日目まで、試験の全期間を通じて、腫瘍体積(A)および体重(B)の変化を測定した。p<0.05、一元配置ANOVAに次ぐTukeyポストホックテストは、組み合わせ群において得られた抗腫瘍活性が、対照群および単剤処置群とは有意に異なっていることを示している(2つの化合物間の相乗作用活性)。
【実施例5】
【0071】
KRAS変異型MiaPaCa2細胞を、Harlanのヌードマウスの側腹部皮下において増殖させた。その後、腫瘍を有する動物を、図5および6に示した化合物および投与計画によって処置した。動物を屠殺する12日目まで、試験の全期間を通じて、腫瘍体積(A)および体重(B)の変化を測定した。p<0.05、一元配置ANOVAに次ぐTukeyポストホックテストは、組み合わせ群において得られた抗腫瘍活性が、対照群および単剤処置群とは有意に異なっていることを示している(2つの化合物間の相乗作用活性)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ホスホイノシタイド3−キナーゼ阻害剤化合物阻害剤および(b)Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物、ならびに任意選択で少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体を含む、同時、個別または連続的使用のための配合物であって、活性成分は、それぞれの場合において遊離型または薬学的に許容可能な塩もしくはその任意の水和物の形態で存在する、配合物。
【請求項2】
遊離型または薬学的に許容可能な塩もしくはその任意の水和物の形態の(a)ホスホイノシタイド3−キナーゼ阻害剤化合物阻害剤および(b)Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物を、相乗作用のある比率で含む相乗作用のある配合物。
【請求項3】
前記ホスホイノシタイド3−キナーゼ阻害剤化合物は、化合物A、化合物Bまたは化合物Cである、請求項1または2に記載の配合物。
【請求項4】
Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする前記化合物は、Rafキナーゼ活性をモジュレートする、請求項1から3のいずれかに記載の配合物。
【請求項5】
Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする前記化合物は、Mekキナーゼ活性をモジュレートする、請求項1から3のいずれかに記載の配合物。
【請求項6】
Rafキナーゼ活性をモジュレートする前記化合物は、ソラフェニブ、Raf265、SB590885、XL281またはPLX4032である、請求項4に記載の配合物。
【請求項7】
Mekキナーゼ活性をモジュレートする前記化合物は、PD325901、PD−181461、ARRY142886/AZD6244、ARRY−509、XL518、JTP−74057、AS−701255、AS−701173、AZD8330、ARRY162、ARRY300、RDEA436、E6201、RO4987655/R−7167、GSK1120212またはAS703026である、請求項5に記載の配合物。
【請求項8】
併せて増殖性疾患に対する治療的有効量の請求項1または7に記載の配合物と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項9】
増殖性疾患の治療における使用のための、請求項1または8に記載の配合物。
【請求項10】
前記増殖性疾患は、固形腫瘍である、請求項9に記載の配合物。
【請求項11】
前記増殖性疾患は、メラノーマ、肺癌、結腸直腸癌(CRC)、乳癌、例えば腎細胞癌(RCC)などの腎癌、肝癌、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺癌(NSCLC)、甲状腺癌、膵癌、神経線維腫症または肝細胞癌である、請求項9に記載の配合物。
【請求項12】
(a)1または複数の単位剤形のホスホイノサイト−3キナーゼ阻害剤および(b)1または複数の単位剤形の、Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物を含む、組み合わせ調製物。
【請求項13】
ヒトに投与するための相乗作用のある配合物であって、遊離型または薬学的に許容可能な塩もしくはその任意の水和物の形態のPI3K阻害剤化合物およびRas/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物を、BN472腫瘍モデルまたは膵臓腫瘍モデルPANC1およびMiaPaCa2において相乗作用のある配合範囲である10:1から1:1重量部に対応するw/w配合範囲で含む、配合物。
【請求項14】
ヒトに投与するための相乗作用のある配合物であって、遊離型または薬学的に許容可能な塩もしくはその任意の水和物の形態のPI3K阻害剤化合物と、Ras/Raf/Mek経路をモジュレートする化合物とを、BN472腫瘍モデルまたは膵臓腫瘍モデルPANC1およびMiaPaCa2において相乗作用のある配合範囲であるそれぞれ1〜50mg/kgおよび1〜30mg/kgに対応するw/w配合範囲で含む、配合物。
【請求項15】
PI3K阻害剤化合物をおよそMTDで含み、かつRas/Raf/Mekをモジュレートする化合物を前記MTDの50%〜100%で含む、ヒトに投与するための相乗作用のある配合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−527703(P2011−527703A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517641(P2011−517641)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/050192
【国際公開番号】WO2010/006225
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】