説明

1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物の製造方法

本発明は、1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物の製造方法に関する。
【0002】
1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物は、たとえば触媒を製造するために、たとえばそれ自体が触媒(成分)として使用することができるものであるゼオライトを合成する際のテンプレートとして重要である。従って、その経済的な製造方法に対する要求が存在する。
【0003】
有機アミンのアンモニウムを製造するためには、アミンを硫酸ジアルキルによりアルキル化することが以前から知られているが、しかしこの場合、通常は硫酸ジアルキルの1のアルキル基のみが消費されるために、相応するモノアルキル硫酸塩が生じる。
【0004】
WO2005/085207は、第四級sp2混成窒素原子を有するカチオンを含むイオン性化合物の製造方法を記載しており、この場合、二重結合した窒素原子を有する化合物を、高温および硫酸ジアルキルの両方のアルキル基の使用下に硫酸ジアルキルと反応させ、その際に、硫酸イオンを有するイオン性化合物が得られ、該化合物を場合によりアニオン交換に供する。アニオン交換はこの場合、プロトン交換、金属塩との反応、イオン交換クロマトグラフ、電解、またはこれらの措置の組合せによって行うことができる。
【0005】
WO2005/115969は、第四級アンモニウム化合物の製造方法に関するものであり、この場合、少なくとも1のsp3混成窒素原子を有するアミン化合物を、硫酸ジアルキルの両方のアルキル基の使用下に硫酸ジアルキルと反応させ、その際、硫酸イオンを有する第四級アンモニウム化合物が得られ、引き続き該硫酸イオンを、該イオンとは異なったアニオンと交換する。このアニオン交換は、WO2005/085207に記載されているとおりに行うことができる。
【0006】
BE646581は、アダマンタンの誘導体、その製造のために異なった方法、およびその医薬としての使用、たとえば抗ウイルス剤としての使用を記載している。従ってたとえばヨウ化メチルを用いて1−アミノアダマンタンが1−アダマンチルトリメチルアンモニウムヨウ化物へとアルキル化され、これをさらにアミノエタノールと反応させて1−アダマンチルジメチルアミンが得られ、これを過塩素酸の塩酸塩として単離することが記載されている。アルキル化のためにヨウ化メチルを使用する欠点は、常に異なったアルキル化度を有する生成物混合物が得られ、かつその価格が高価であることである。
【0007】
EP0139504A1は、少なくとも1のアダマンタン誘導体を含有する触媒の使用下での触媒反応によるパラフィン−オレフィンのアルキル化を記載している。適切なアダマンタン誘導体として、1−アダマンチルトリメチルアンモニウム塩も挙げられており、有利なアニオンとして硫酸イオンが言及されている。
【0008】
EP0231018A2は、結晶質ゼオライトと、アダマンタンの第四級アンモニウム化合物の使用下でのその製造を記載している。この文献の例1は、1−アミノアダマンタンをヨウ化メチルによりアルキル化し、引き続きヨウ化物イオンをOHイオンにより負荷されたイオン交換体を用いてイオン交換することにより1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物を製造することを記載している。
【0009】
意外なことに、1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物は、1−アダマンチルジメチルアミンから出発し、これを硫酸ジメチルによるアルキル化に供し、かつ該アルキル化生成物を引き続き、OHイオンにより負荷されたイオン交換体によるアニオン交換に供する場合に、有利な方法で製造することができることが判明した。この場合、硫酸ジメチルを用いたアルキル化の際に、硫酸メチル(メトスルフェート、CH3OSO3-)の塩ではなく、ほぼ硫酸(SO42-)の1−アダマンチルトリメチルアンモニウム塩を得ることができる。硫酸の1−アダマンチルトリメチルアンモニウム塩は、イオン交換体樹脂への高い親和性により優れており、かつ硫酸メチルの1−アダマンチルトリメチルアンモニウム塩よりも良好にアニオン交換に供することができる。
【0010】
従って本発明の対象は、1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物の製造方法であって、
A)1−アダマンチルジメチルアミンを準備し、硫酸ジメチルと反応させ、その際、硫酸ジメチルの両方のメチル基が実質的にすべて反応し、かつほぼ1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートが得られ、かつ
B)工程A)で得られた1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートを、OHイオンで負荷されたイオン交換体を用いたアニオン交換に供する
方法である。
【0011】
工程A)
工程A)において1−アダマンチルジメチルアミンを準備するために、1−アダマンチルアミンまたは1−アダマンチルアンモニウム塩を、ジメチル化の意味でのアルキル化に供する。硫酸ジメチルの両方のメチル基が実質的に全て反応する。「硫酸ジメチルの両方のメチル基が実質的に全て反応する」という記載は、本発明の範囲では、硫酸ジメチルの両方のメチル基の少なくとも90%、有利には少なくとも95%が反応することであると理解する。相応して、反応の際に得られるメチル化生成物は、最大で10質量%、有利には最大で5質量%、特に最大で1質量%のメトスルフェート(CH3OSO3-)を含有する。特別な実施態様では、メトスルフェートの含有率は明らかに1質量%を下回り、特に0.5質量%、または0.1質量%を下回る。
【0012】
有利には1−アダマンチルジメチルアミンを準備するためには、1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩から出発する。
【0013】
本発明による方法の特別な実施態様では、1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩をまず1−アダマンチルアミンへ変換する。このために、1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩を水性の塩基と反応させることができる。適切な塩基はたとえばアルカリ金属水酸化物、たとえばNaOHまたはKOHである。
【0014】
有利には1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩と水性の塩基との反応は、水と混和せず、かつ形成される1−アダマンチルアミンがその中に溶解する有機溶剤の存在下に行う。水と混和しない有機溶剤とは、本発明の範囲では、標準条件(20℃、1013ミリバール)下に、水100g中に最大で10g溶解し、かつ標準条件下に溶剤100g中に水が最大で10g溶解する溶剤であると理解される。適切な有機溶剤は、芳香族炭化水素、たとえばベンゼン、トルエン、エチルベンゼンまたはキシレン、ハロゲン化溶剤、たとえばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンまたはクロロベンゼン、脂肪族溶剤、たとえばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、リグロイン、石油エーテル、シクロヘキサンまたはデカリン、およびこれらの混合物である。有利であるのはトルエンまたはキシレンである。次いでこの反応は、抽出反応の意味で行い、その際、遊離されるアミンはほぼ完全に有機相となる。1−アダマンチルアミンを単離するために、有機溶剤を慣用の方法で、たとえば蒸発によって除去することができる。溶剤の蒸発は、このために慣用の装置中で行うことができる。溶剤の蒸発は有利には減圧下に、および/または高温下に行う。有利には1−アダマンチルアミンを有機溶剤中の溶液として、その後の反応で使用する。
【0015】
本発明による方法の第一の変法では、工程A)における1−アダマンチルジメチルアミンの準備のために、ホルムアルデヒドを、1−アダマンチルアミンまたは1−アダマンチルアンモニウム塩を用い、かつ水素を用いて、水素化触媒の存在下で還元アミン化に供する。
【0016】
第一の変法による還元アミン化のために1−アダマンチルアンモニウム塩を使用する場合、これは有利には1−アダマンチルアンモニウム水酸化物である。あるいはこれに代えて、第一の変法による還元アミン化のために、前記のとおり、あらかじめ1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩を水性の塩基と反応させることにより得られた1−アダマンチルアミンを使用する。
【0017】
第一の変法による還元アミン化のために、反応条件下で不活性溶剤または溶剤混合物を使用する。適切であるのは、水、有機溶剤、およびこれらの混合物である。さらに、互いに部分的に混和可能な、または全く混和しない溶剤からなる組合せも適切である。有利な実施態様では、2つの液相を有する系中で反応を行う。適切な有機溶剤は有利には、アルコール、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールまたはフェノール、ジオールおよびポリオール、たとえばエタンジオールおよびプロパンジオール、芳香族炭化水素、たとえばベンゼン、トルエン、エチルベンゼンまたはキシレン、ハロゲン化溶剤、たとえばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンまたはクロロベンゼン、脂肪族溶剤、たとえばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、リグロイン、石油エーテル、シクロヘキサンまたはデカリン、エーテル、たとえばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルまたはジエチレングリコールモノメチルエーテル、およびこれらの混合物から選択される。還元アミン化のために有利には、水および少なくとも1の、水と混和しない有機溶剤との混合物を使用する。有利であるのは、水と、少なくとも1の芳香族炭化水素、たとえばベンゼン、トルエン、エチルベンゼンまたはキシレンとを含有する混合物である。特別な実施態様では、水/キシレンの混合物を使用する。
【0018】
反応温度は有利には20〜250℃、特に50〜200℃の範囲である。
【0019】
圧力は、有利には1〜300バール、特に有利には5〜200バール、特に10〜150バールである。
【0020】
ホルムアルデヒドは、有利には水溶液の形で使用する。水溶液のホルムアルデヒド含有率は有利には約10〜40%、好ましくは約20〜35%(条件に応じて飽和のホルムアルデヒド水溶液は、36〜40%のホルムアルデヒド含有率を有する)である。
【0021】
水または水を含有する溶剤混合物を使用する第一の変法による還元アミン化のために、水相は、pH値を調整するための緩衝剤を添加することができる。有利には緩衝剤は、水相のpH値が、反応の間に、約5〜10、および有利には約7〜10の範囲であるように選択される。緩衝剤物質として有利であるのは、NaqH2PO4である。NaH2PO4の添加は、腐食を防止する被覆層を形成することにより腐食を防止することができるその特性によって有利であり得る。
【0022】
ホルムアルデヒド対1−アダマンチルアミン(または1−アダマンチルアンモニウム塩)のモル量比は、有利には1.8:1〜10:1、特に有利には2.0:1〜5:1、特に2.01:1〜3:1の範囲である。
【0023】
水素化触媒として、市販の触媒を使用することができる。特に適切であるのは、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、白金、鉄、コバルト、銅、ニッケルを水素化活性金属として含有している触媒である。
【0024】
水素化触媒として有利にはラネー金属、特に有利にはラネーニッケルを使用する。
【0025】
水素化触媒として、有利には、活性成分としてパラジウムを含有する触媒が適切である。パラジウム以外に、触媒はさらに、亜鉛、カドミウム、白金、銀、希土類金属およびこれらの混合物から選択される他の活性成分を含有していてもよい。適切な希土類金属はセリウムである。
【0026】
本発明による方法の第一の変法により得られる、還元アミン化の生成物は、その後に硫酸ジメチルと反応させる前に、後処理に供することもできる。有利であるのは蒸留による後処理である。
【0027】
1つの有利な実施態様は、
a)1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩を、塩基の水溶液を用いた反応によって1−アダマンチルアミンに変換し、
b)1−アダマンチルアミンをホルムアルデヒドおよび水素を用いて、水素化触媒の存在下に還元アミン化に供して1−アダマンチルジメチルアミンが得られ、
c)1−アダマンチルジメチルアミンを硫酸ジメチルとの反応に供し、その際、硫酸ジメチルの両方のメチル基はほぼ全て反応し、かつ1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートがほぼ得られ、かつ
d)1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートを、OHイオンが負荷されたイオン交換体を用いたアニオン交換に供する
方法である。
【0028】
工程a)およびb)に関して、1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩を1−アダマンチルアミンへ変換し、ホルムアルデヒドおよび水素を用いて触媒反応により還元アミン化することについての前記の記載は、全ての範囲で取り入れられる。工程c)およびd)に関しては、以下の、1−アダマンチルジメチルアミンと硫酸ジメチルとの反応、およびOHイオンで負荷されたイオン交換体を用いたアニオン交換(=工程B)についての記載が全ての範囲で取り入れられる。
【0029】
本発明による方法の第二の変法では、工程A)において1−アダマンチルジメチルアミンを準備するために、ホルムアルデヒドを、1−アダマンチルアミンまたは1−アダマンチルアンモニウム塩によるギ酸の存在下での還元アミン化に供する。ギ酸の存在下でのカルボニル化合物の還元アルキル化は、Leuckart反応の名称で文献から公知である。ギ酸の存在下での、カルボニル成分としてホルムアルデヒドを用いる還元アミンメチル化は、Eschweiler−Clark反応とよばれる。適切な反応条件は、たとえばJ.March、Advanced Organic Chemistry、John Wiley&Sons出版、第4版、第898〜900頁、およびここで引用されている文献に記載されており、この明細書ではこれを全ての範囲で取り入れる。
【0030】
第二の変法による還元アミン化のためには、有利には1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩を使用する。しかし、第二の変法によれば還元アミン化を1−アダマンチルアミンから出発することも可能である。
【0031】
第二の変法による還元アミン化のために、反応条件下で不活性な溶剤または溶剤混合物、たとえば前記で第一の変法においてごく一般的に、および具体的に記載したものを使用することができる。特別な実施態様では、水を使用する。たとえば第二の変法による反応のために、まず1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩をホルムアルデヒド水溶液中に溶解することができる。このために、ホルムアルデヒド水溶液を約30〜80℃の温度に加熱する。次いで引き続き、反応のためにギ酸を添加する。反応温度はギ酸の添加後に有利には20〜200℃、特に40〜150℃の範囲内である。
【0032】
水溶液のホルムアルデヒド含有率は、有利には約10〜40%、好ましくは約20〜35%である。
【0033】
ホルムアルデヒド対1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩(または1−アダマンチルアミン)のモル量比は、有利には2:1〜10:1の範囲、特に有利には2.01:1〜5:1、とりわけ2.1:1〜3:1の範囲である。
【0034】
生成物の単離は、最も簡単な場合には、有機相を水相から分離することにより行うことができる。有機溶剤、たとえば芳香族炭化水素、たとえばベンゼン、トルエンまたはキシレンを添加することも可能である。有機溶剤を添加することにより、必要に応じて、相分離を改善することができる。所望の場合には、有機生成物相を慣用の方法による後処理に供することができる。これにはたとえば水性媒体による洗浄、または添加した溶剤の分離、たとえば蒸発による分離が挙げられる。
【0035】
第二の変法によれば、1−アダマンチルジメチルアミンがアンモニウム塩の形で得られる。1−アダマンチルジメチルアミンへの変換は、水性塩基によって行うことができる。適切な塩基は、アルカリ金属水酸化物、たとえばNaOHまたはKOHである。
【0036】
本発明による方法の第三の変法では、工程A)で1−アダマンチルジメチルアミンを準備するために、1−アダマンチルアミンまたは1−アダマンチルアンモニウム塩をメタノールを用いた触媒反応によるメチル化に供する。
【0037】
有利には第三の変法による触媒反応によるメチル化のために、1−アダマンチルアミンを使用する。
【0038】
第三の変法による触媒反応によるメチル化のために、有利には少なくとも1の有機溶剤を使用する。有利には第三の変法による反応のために、メタノールを反応相手としてのみではなく、溶剤としても使用する。前記の、水と混和しない溶剤、特に芳香族炭化水素、たとえばベンゼン、トルエン、エチルベンゼンまたはキシレンもまた適切である。1つの特別な実施態様では、反応のために、キシレンおよびメタノールを含有しているか、またはキシレンとメタノールとからなる溶剤混合物を使用する。
【0039】
反応温度は有利には20〜300℃の範囲、特に有利には50〜270℃、とりわけ150〜250℃の範囲である。
【0040】
圧力は有利には1〜300バール、特に有利には5〜250バールの範囲である。反応の温度および圧力は、有利には、反応がその中で行われる相中に、十分な濃度の反応体が存在するように選択する(たとえば1−アダマンチルアミンが実質的に液状で、かつメタノールが実質的に気体状で存在するのではない)。
【0041】
特別な実施態様では、第三の変法による反応を複数の(たとえば2、3、4、5など)反応器中で行う。有利であるのは2つの反応器からなる組合せである。この場合、同じか、または異なった反応器を使用することができる。反応器は相互に任意の方法で接続されていてよく、たとえば並列または直列であってよい。有利な実施態様では、直列に接続された2つの反応器を使用する。複数の反応器を使用する場合、これらは同じか、または異なる温度を有していてよい。有利には温度はn個(第n番目)の反応器において、(n−1)個(n−第1番目)の反応器における温度よりも、少なくとも10℃、特に有利には少なくとも20℃、とりわけ少なくとも30℃高い。反応圧力は、複数の反応を使用する場合、個々の反応器中で、同じであっても、異なっていてもよい。この場合、特別な実施態様では、反応器の一部のみが触媒を含有している。たとえば2つの反応器からなる組合せを使用する場合、これらの反応器のうちの1の反応器のみが触媒を有している。この変法では、反応混合物をまず触媒を有していない1の反応器中で予熱し、かつ次いで引き続き反応のために、触媒を有する反応器へ移す。反応混合物を移すために、たとえば混合物が1の反応器から他の反応器へと圧送されるガスを使用することができる。さらにガスは所望の反応圧力を調整するために使用することができる。適切なガスは水素である。水素はこの場合、本来の反応には関与しないが、しかし使用される触媒を還元された形に維持するために役立つ。
【0042】
第三の変法のための触媒として、原則として水素化触媒、たとえば前記のものを使用することができる。有利には銅を含有する不均一系触媒を使用する。
【0043】
原則として、さらに主族の第I、第II、第III、第IVまたは第V族、副族の第I、第II、第IV、第V、第VI、第VIIまたは第VIII族、ならびにランタニド(IUPAC:1〜15族およびランタニド)の少なくとも1の別の元素、特にCa、Mg、Al、La、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Ni、Co、Znおよびこれらの組合せを含有していてよい多数の銅含有触媒が適切である。第三の変法で使用するために有利に適切な触媒の特別な実施態様は、ラネー触媒、特にラネー銅ならびにラネー触媒の形の、銅を含有する金属合金である。有利であるのは、その金属成分が、少なくとも95%、特に少なくとも99%が銅からなるラネー触媒である。ラネー銅は、自体公知の方法で銅アルミニウム合金をアルカリ金属水酸化物で処理することにより製造することができる。
【0044】
第三の変法で使用するために特に有利に適切である触媒のもう1つの特別な実施態様は、銅を酸化物の形で、ならびに場合によりさらに元素の形で含有している触媒である。
【0045】
適切であるのはたとえば、ケイ酸からなる担体上にニッケルおよび銅を活性成分としての他の金属とならんで含有している触媒である。このような触媒はたとえばDE−A2628987に記載されている。これらの触媒の活性組成物は、特に40〜80質量%のニッケル、10〜50質量%の銅、および2〜10質量%のマンガンを含有している。EP−A−0434062は、銅、アルミニウム、およびマグネシウム、亜鉛、チタン、ジルコニウム、スズ、ニッケルおよびコバルトから選択される少なくとも1の別の金属の酸化物からなる前駆体を還元することにより得られる水素化触媒を記載している。適切であるのはDE10218849に記載されている、か焼された触媒の全質量に対して、それぞれCr23として計算して0.1〜10質量%のクロム、CaOxとして計算して0.1〜10質量%のカルシウム、およびCuOとして計算して5〜20質量%の銅が、二酸化ケイ素担体材料上に析出している水素化触媒でもある。DE−A−4021230から、銅・酸化ジルコニウム触媒が公知であり、この場合、銅原子対ジルコニウム原子の比率は、質量比として記載して、1:9〜9:1である。DE−A−4028295は、適切な銅マンガン水素化触媒を記載している。EP−A−552463は、酸化物の形が実質的に組成CuaAlbZrcMndxに相応する触媒を記載しており、この場合、以下の関係が当てはまる:a>0、b>0、c≧0、d>0、a>b/2、b>a/4、a>c、a>dおよびxは、式の単位あたりの電子中和性の選択のために必要とされる酸素イオンの数である。EP−A−552463は、酸化アルミニウムの割合が低い触媒も記載している。この実施態様による触媒は、実質的に組成CuaAlbZrcMndxに相応し、この場合、以下の関係が当てはまる:a>0、a/40≦b≦a/4、c≧0、d>0、a>c、0.5d≦a≦0.95dおよびxは、式の単位あたりの電子中和性の選択のために必要とされる酸素イオンの数である。WO2006/005505は、本発明による方法において使用するために特に適切な触媒成形体を記載している。有利な実施態様では、酸化物触媒材料は、
(a)50≦x≦80質量%、有利には55≦x≦75質量%の範囲の割合での酸化銅、
(b)15≦y≦35質量%、有利には20≦y≦30質量%の範囲の酸化アルミニウム、
(c)2≦z≦20質量%、有利には3≦z≦15質量%の範囲の割合のランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの少なくとも1の酸化物、有利にはランタンおよび/またはタングステンの酸化物
を、そのつどか焼後の酸化物材料の全質量に対して含有しており、この場合、80<=x+y+z≦100、特に95≦x+y+z≦100である。
【0046】
第三の変法のために有利な触媒は、以下の金属を酸化物の形で、還元された形で(元素の形で)、またはこれらの組合せとして含有している。1より高い酸化状態ではもはや安定していない金属は、完全に、いずれかの酸化状態の1の状態で、または異なった酸化状態で使用することができる:
Cu
Cu、Ti
Cu、Zr
Cu、Mn
Cu、Al
Cu、Ni、Mn
Cu、Al、少なくとも1のLa、W、Mo、Mn、Zn、Ti、Zr、Sn、Ni、Coから選択される金属
Cu、Zn、Zr
Cu、Cr、Ca
Cu、Cr、C
Cu、Al、Mn、場合によりZr。
【0047】
本発明による触媒のための不活性担体材料として、実質的に従来技術の全ての担体材料が使用され、たとえば有利には担持触媒を製造するために使用されるもの、たとえばSiO2(石英)、磁器、酸化マグネシウム、二酸化スズ、炭化ケイ素、TiO2(ルチル、アナターゼ)、Al23(アルミナ)、ケイ酸アルミニウム、ステアタイト(ケイ酸マグネシウム)、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸セリウムまたはこれらの担体材料の混合物を使用することができる。有利な担体材料は、酸化アルミニウムおよび二酸化ケイ素である。
【0048】
触媒は、成形体として、たとえば球体、リング、円筒体、立方体、直方体またはその他の幾何学的な形状で使用することができる。担持されていない触媒を慣用の方法で、たとえば押出成形、タブレット成形等により成形することができる。担持された触媒の形は、担体の形によって決定される。これに代えて、担体を触媒活性成分の施与前または施与後に、成形法に供することもできる。触媒はたとえば圧縮された円筒体、タブレット、被覆錠、車輪型、リング、星形または棒状に押し出した成形体、たとえば中実ストランド、球状の突起物を有する(polyoval)ストランド、中空ストランド、およびハニカム成形体、またはその他の幾何学的な成形体の形で使用することができる。
【0049】
有利には工程A)において、1−アダマンチルジメチルアミンと硫酸ジメチルとの反応を、高温、つまり周囲温度(20℃)より高い温度で行う。有利には工程A)における温度は、少なくとも40℃、特に有利には少なくとも80℃である。有利には工程A)での反応は、100℃超〜220℃まで、特に有利には120〜200℃の範囲の温度で行う。
【0050】
有利な1実施態様では、工程A)においてまず、1−アダマンチルジメチルアミンを最大で30℃の温度において硫酸ジメチルと接触させ、引き続き得られた混合物をさらに反応させるために、少なくとも40℃の温度に加熱する。有利には1−アダマンチルジメチルアミンと硫酸ジメチルとの接触は、最大で20℃の温度で、特に最大で10℃の温度で行う。有利には1−アダマンチルジメチルアミンと硫酸ジメチルとの接触は少量ずつ行う。このために、アミンまたは硫酸ジメチルを装入し、かつそのつど他方の成分を少量ずつ添加する。有利には混合物をさらに反応させるために、少なくとも80℃、特に有利には100〜220℃、とりわけ120〜200℃の温度に加熱する。
【0051】
工程A)における1−アダマンチルジメチルアミンと硫酸ジメチルとの反応は有利には、反応条件下で不活性な溶剤の存在下に行う。適切な溶剤はたとえば水、水と混和可能な溶剤およびこれらの混合物である。有利な水と混和可能な溶剤は、アルコール、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびこれらの混合物である。有利には溶剤として水を使用するか、または少なくとも30体積%、有利には少なくとも50体積%、特に少なくとも80体積%の水を含有する溶剤混合物を使用する。特別な実施態様では、工程A)において、溶剤として水を使用する。
【0052】
有利には1−アダマンチルジメチルアミンおよび硫酸ジメチルの両方を液状の形で使用する。硫酸ジメチルは有利には純粋な形で使用する。1−アダマンチルジメチルアミンは有利には水と組み合わせて、または水および少なくとも1の水と混和可能な溶剤との混合物を組み合わせて使用する。有利には1−アダマンチルジメチルアミンを、場合により溶剤と組み合わせて装入し、かつ硫酸ジメチルを添加する。
【0053】
工程A)における反応は、有利には周囲圧力で、または高めた圧力で行う。特別な実施態様では、反応を反応条件下での反応混合物の固有圧力で行う。有利には工程A)における反応の際の圧力は一般に少なくとも1.1バール、特に有利には少なくとも2バール、特に少なくとも5バールである。所望の場合には、工程A)における反応の際の圧力は300バールまで、有利には100バールまでであってよい。適切な耐圧性反応器は、当業者に公知であり、かつたとえばUllmann’s Enzyklopaedie der technischen Chemie、第1巻、第3版、1951年、第769ページに記載されている。一般に本発明による方法を高圧下で実施するために、高圧下で圧力容器を使用し、これは所望の場合には撹拌装置および/または内部ライニングを備えていてもよい。
【0054】
1−アダマンチルジメチルアミン対硫酸ジメチルのモル量比は、有利には少なくとも2:1である。特に有利には1−アダマンチルジメチルアミン対硫酸ジメチルのモル量比は、2:1〜20:1の範囲、特に2.05:1〜10:1、特に2.1:1〜5:1の範囲である。
【0055】
所望の場合には、工程A)における反応を少なくとも1の不活性ガスの存在下に行うことができる。適切な不活性ガスは、たとえば窒素、ヘリウムおよびアルゴンである。
【0056】
工程A)における反応は連続的に、または不連続的に行うことができる。
【0057】
通常は、工程A)で得られた反応混合物は、1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートをあらかじめ単離することなく、工程B)でのイオン交換に使用することが可能である。
【0058】
工程A)で得られた反応混合物は、工程B)における反応の前に、少なくとも1の後処理工程に供することができる。これにはたとえば溶剤を部分的に、または完全に除去することが挙げられる。これにはさらに未反応の1−アダマンチルジメチルアミンまたは不所望の副生成物、たとえば1−アダマンチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェートの分離が挙げられる。通常、工程A)では、1−アダマンチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェートの形成は、得られる反応混合物が該化合物を少なくとも部分的に分離することなく、工程B)でのイオン交換に使用することができる程度まで回避する。
【0059】
工程A)で得られた反応混合物の後処理は、慣用の、当業者に公知の方法によって行うことができる。1−アダマンチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェートの濃縮のために、たとえば揮発性成分の蒸発による後処理が有利である。
【0060】
本発明による方法の1の実施態様では、工程A)で得られた反応混合物を、溶剤の部分的な、または完全な除去に供する。これは特に、工程B)におけるイオン交換が、工程A)におけるアルキル化とは別の溶剤中で行うべきである場合に該当する。これは、工程B)におけるイオン交換を大量の溶剤中で行うべきではない場合に該当する。溶剤はたとえば蒸発により、有利には減圧下での蒸発により部分的に、または完全に除去することができる。得られる1−アダマンチルトリメチルアンモニウム塩は、揮発性ではないので、使用される圧力範囲は通常、重要ではない。溶剤をできる限り完全に除去することが望ましければ、たとえば101〜10-1Paの中真空、または10-1〜10-5Paの高真空を使用することができる。真空を発生させるために、慣用の真空ポンプ、たとえば液体流真空ポンプ、回転ポンプおよび回転ピストン式真空ポンプ、膜真空ポンプ、拡散ポンプ等を使用することができる。溶剤の除去は所望の場合には、高温で行うことができる。有利には溶剤の除去は、150℃までの温度で、特に有利には100℃までの温度で行う。
【0061】
特別な実施態様では、工程A)における反応を溶剤としての水中で行い、かつ工程A)で得られた反応混合物を、水の一部、および存在する場合には、未反応の1−アダマンチルジメリルアミンを除去するために蒸留による後処理に供する。この実施後に、工程A)では、1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートの水溶液が得られる。
【0062】
有利には工程A)において、1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートおよび1−アダマンチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェートの全質量に対して、少なくとも95質量%、特に有利には少なくとも99質量%、とりわけ少なくとも99.9質量%の1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートを含有するメチル化生成物が得られる。
【0063】
工程B)
本発明によれば、工程A)において得られる1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートをイオン交換に供する。この場合、硫酸イオンと、交換に使用される出発材料がさらに硫酸メチルイオンを含有している場合には硫酸メチルイオンとを水酸化物イオンと交換する。
【0064】
イオン交換のために適切であるのは、原則として当業者に公知の、少なくとも1の固相に固定された塩基を有する塩基性イオン交換体である。この塩基性イオン交換体の固相はたとえばポリマーマトリックスを含有している。これにはたとえばスチレン以外に、少なくとも1の架橋性モノマー、たとえばジビニルベンゼン、ならびに場合により別のコモノマーが共重合されているポリスチレンマトリックスが挙げられる。さらに、少なくとも1の(メタ)アクリレート、少なくとも1の架橋性モノマー、ならびに場合により別のコモノマーの重合により得られるポリマーマトリックスが適切である。適切なポリマーマトリックスはフェノールホルムアルデヒド樹脂および、たとえばポリアミンとエピクロロヒドリンとの縮合によって得られるポリアルキルアミン樹脂である。
【0065】
固相に直接、またはスペーサー基を介して結合している前記のアンカー基(これらの緩く結合した対イオンは同等に荷電したイオンと交換することができる)は、有利には窒素を含有する基、有利には第三級アミノ基および第四級アミノ基から選択される。
【0066】
適切な官能基はたとえば以下のものである:
−CH2+(CH33OH-、たとえばDuolite A 101、Ambersep 900 OH、
−CH2+(CH32CH2CH2OH OH-、たとえばDuolite A 102、Amberlite IRA 410、
−CH2+(C373OH-、たとえばIonac SR7。
【0067】
本発明による方法にとって適切なものは、強塩基性ならびに弱塩基性イオン交換体である。有利であるのは強塩基性イオン交換体である。強塩基性(アニオン)イオン交換体は、荷電していない形で強塩基性の官能基、たとえば対イオンとして水酸化物イオンを有する第四級アンモニウム基を有するアニオン交換体である。弱塩基性アニオン交換体に対して、これらは通常、あらかじめプロトン化することなく、中性の、または塩基性の溶液中で使用することができる。強塩基性のアニオン交換体は、強塩基、たとえばNaOHまたはKOHの水溶液による処理によって再生することができる。弱塩基性のアニオン交換体は、弱塩基性の官能基を有するアニオン交換体である。これにはたとえば第一級、第二級または第三級アミノ基が挙げられる。これらは前記の強塩基によっても、あるいはまた弱塩基、たとえばアルカリ金属炭酸塩またはアンモニア溶液によっても再生することができる。弱塩基性イオン交換体の中では、第三級アミノ基を有するものが有利である。
【0068】
本発明による方法で使用するために有利であるのは、強塩基性のイオン交換体である。
【0069】
本発明による方法のために適切な、市販のイオン交換体はたとえばAmberlyst(登録商標)A27(第四級アンモニウム基、強塩基性)およびAmbersep(登録商標)900OH(強塩基性)である。その他の適切なアニオン交換体は、たとえばRohm&Haas社のAmberlite樹脂、Duolite樹脂およびPurolite樹脂、たとえばAmberlite IRA−402、IRA−458、IRA−900である。さらに、IMAC HP 555、Amberjet4200およびAmberjet4400が適切である。その他の適切なアニオン交換体は、たとえばBAYER AG社のLewatit樹脂、たとえばLewatit M 500、MP 500等である。その他の適切なアニオン交換体はたとえばDow社の登録商標Dowex、たとえばDOWEX SBR−P、SAR、MARATHON MSA、22等である。
【0070】
イオン交換のためには、イオン交換体を必要であればまずOHイオンにより負荷し、かつ引き続き、工程A)で得られた1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートを含有する溶液と接触させる。溶剤として有利には水を使用する。
【0071】
有利には工程B)におけるイオン交換のために、1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートを2〜20質量%、特に有利には5〜15質量%の濃度で含有する水溶液を使用する。
【0072】
アニオン交換体による処理は慣用の方法で、たとえば1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートを含有する水溶液を、容器中でイオン交換体と接触させるか、または有利にはイオン交換体の床に、特にイオン交換体が充填されたカラムに案内することによって行う。
【0073】
工程B)におけるイオン交換は連続的に、または不連続的に実施することができる。有利であるのは連続的な運転法である。このために複数(たとえば2、3、4、5等)のイオン交換カラムを使用することができ、その際、カラムの一部を同時にイオン交換のために使用し、かつ他方を再生に供する。
【0074】
本発明による方法の特別な実施態様では、工程B)において、1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物の水溶液が得られ、これを濃縮するために、水の部分的な分離に供することができる。
【0075】
通常、OHイオンで負荷されたイオン交換体によるアニオン交換の後に得られた1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物の水溶液は、溶液の全質量に対して少なくとも1質量%、有利には少なくとも3質量%、特に少なくとも5質量%の1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物の含有率を有している。
【0076】
水の部分的な分離は、慣用の、当業者に公知の方法によって行うことができる。このためには慣用の蒸発器、最も簡単な場合には加熱可能な熱交換面を有する容器を有する蒸発器が適切である。有利には薄膜式蒸発器、たとえば流下薄膜式蒸発器を使用する。さらに、可動の内部構造物を有し、内部でたとえばワイパーが蒸発器の内壁に薄い液膜を発生させる蒸発器が適切である。これには"LUWA"(登録商標)または"SAMBAY"(登録商標)タイプの薄膜式蒸発器が挙げられる。蒸発は有利には0〜150℃の範囲の温度で、特に有利には10〜120℃、とりわけ20〜100℃で行う。蒸発は有利には0.01〜1013ミリバールの範囲の圧力で、特に有利には0.1ミリバール〜500ミリバール、とりわけ1〜250ミリバールで行う。
【0077】
本発明による方法により(場合により部分的に水を分離した後で)得られる1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物溶液は溶液の全質量に対して少なくとも10質量%、特に有利には少なくとも15質量%、とりわけ少なくとも18質量%の1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物含有率を有している。
【実施例】
【0078】
例1:
水酸化ナトリウム溶液を用いた、1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩からの1−アダマンチルアミンの遊離
不活性ガス下での作業のための構成を備えた10m3の攪拌反応器中に(80%の充てん率)、1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩1380kgを窒素雰囲気下に装入し、かつキシレン5170lを添加する。雰囲気圧で撹拌下に20%の水酸化ナトリウム溶液1840lを30分以内に計量供給し、かつ反応混合物を引き続き2時間、後攪拌し、その際、塩酸塩が溶解し、かつ1−アダマンチルアミンが放出される。相分離の後で、水相を排出し、有機相を1%の水酸化ナトリウム溶液300lと共に撹拌する。水相をふたたび排出し、かつ有機相を水の除去のために50%の水酸化ナトリウム溶液300lと共に撹拌する。引き続き水相をふたたび排出する。残留含水率約0.13%を有する約32%の1−アダマンチルアミンのキシレン溶液4384lが得られる。合した水相をキシレン1720lと共に1回撹拌して、溶解している1−アダマンチルアミンを除去する。その際に得られる有機相を、1−アダマンチルアミンの次回のバッチの遊離の際に溶剤として使用する。
【0079】
遊離されたアダマンチルアミンの収率は99.8%である。
【0080】
例2:
1−アダマンチルアミンおよび水素を用いた、ラネーニッケルの存在下でのホルムアルデヒドの還元アミン化による1−アダマンチルジメチルアミンの製造
不活性ガス下での作業のための構成を備えた10m3の撹拌反応器(80%の充てん率)中に、窒素下で、例1からの25%の1−アダマンチルアミンのキシレン溶液5501kgを装入する。撹拌下に、触媒としてのラネーニッケル138kgおよび30%のNaH2PO4水溶液55kgを添加する。反応器に内部圧力が5バールに達するまで水素を充填し、かつその後、100℃に加熱する。水素をさらに添加することにより、反応器内部圧力を50バールに調整する。引き続き撹拌下に3時間以内で30%のホルムアルデヒド溶液1905kgを計量供給し、かつ引き続きさらに2時間、100℃で後攪拌する。反応混合物を冷却し、かつ反応器を放圧した後に、液状の反応器内容物を排出し、該排出液を濾過し、その際、2相の濾液が得られる。この濾液を容器中で、撹拌下に25%の水酸化ナトリウム水溶液溶液73kgと混合する。15分の撹拌後に、これらの相を分離し、かつ有機相をキシレンの分離のための蒸留に供する。その際、1−アダマンチルジメチルアミンが塔底生成物として得られる。収率は>99%である。
【0081】
例3:
1−アダマンチルアミンを用いた、ギ酸の存在下でのホルムアルデヒドの還元アミン化による1−アダマンチルジメチルアミンの製造(Eschweiler−Clark):
不活性ガス下での作業のための構成を備えた2.5m3の撹拌反応器中に、窒素下で1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩570kgを装入し、かつ撹拌下に30%のホルムアルデヒド溶液901kgを室温で添加する。引き続き反応混合物を60℃に加熱し、かつ塩酸塩を溶解するために1時間攪拌する。その後、ギ酸422kgを60℃で添加する。反応器を徐々に90℃まで加熱し、かつこの温度で115〜125時間撹拌し、その際、反応をガスクロマトグラフィーにより制御する。反応終了後に、反応器を45℃に冷却し、50%の水酸化ナトリウム溶液732kgを約100kg/時の供給速度で添加し、その際、内部温度は50℃を超えない。その後、反応器を25℃に冷却し、かつ相を分離する。有機相を単離し、かつ残留する水を分離するために、70ミリバールおよび80℃の塔底温度で蒸留に供する。蒸留の過程で、圧力をさらに5ミリバールに低下させ、かつ引き続き1−アダマンチルジメチルアミンが塔頂流として得られる。収率:97〜98%、ガスクロマトグラフィーによる純度:99.5〜99.6面積%。
【0082】
例4:
メタノールを用いた1−アダマンチルアミンの触媒反応によるメチル化による1−アダマンチルジメチルアミンの製造
4.1バッチ式の運転法:
反応は、相互に細い導管によって接続されている2つの270mlのオートクレーブ中で行う。第二のオートクレーブ中に、Al23上のCuO触媒10gを装入し、該触媒を200℃および200バールで2時間、水素で活性化する(触媒は、活性化による損失なしで3回再使用される)。第一のオートクレーブに1−アダマンチルアミン15%、キシレン35%およびメタノール50%からなる溶液を充填し、引き続き第一のオートクレーブを90℃に加熱し、第二のオートクレーブを220℃に加熱する。10分後に、反応混合物を水素により第一の反応器から第二の反応器へと搬送する。第二の反応器中では、反応を撹拌下に200℃および100バールで4時間実施する。1−アダマンチルアミンから1−アダマンチルジメチルアミンへの定量的な反応が行われる。収率:>99%。
【0083】
1−アダマンチルジメチルアミンを単離するために、反応生成物を、メタノール、キシレンおよび反応の際に遊離する水の除去のための蒸留による除去に供する。
【0084】
4.2連続的な運転法(実験室規模):
管型反応器(18×3×770mm)中に、Al23上のCuO触媒(タブレット)51.4gを充填する(触媒床の高さ:約500mm)。管型反応器に連続的に使用原料の混合物を貫流させ(塔底法、94.0g/h)、供給流の組成は、アダマンチルアミン15%、キシレン35%、およびメタノール50%である。アダマンチルアミン0.25kg/l*hの負荷で、80バールおよび230℃において99%超の1−アダマンチルジメチルアミンが得られる。
【0085】
4.3連続的な運転法(パイロットプラント):
管型反応器(4.85l)中に、Al23上のCuO触媒(タブレット)4394.0gを充填する。管型反応器に連続的に、使用原料の混合物を貫流させ(塔底法、9365.0g/h)、供給流の組成は、アダマンチルアミン13%、キシレン37%、およびメタノール50%である。アダマンチルアミン0.25kg/l*hの負荷で、80バールおよび195℃において99%超の1−アダマンチルジメチルアミンが得られる。
【0086】
例5:
硫酸ジメチルを用いた、1−アダマンチルジメチルアミンの四級化
2.5m3の撹拌反応器中に、水2.5tおよび1−アダマンチルジメチルアミン533kgを装入する。引き続き硫酸ジメチル191kgを計量供給し、かつ得られる反応混合物を、30〜50℃で2時間反応させる。引き続き該反応器を140℃に加熱し、その際、内部圧力は4バールであり、かつこの温度でさらに16時間反応させる。四級化生成物を蒸留により水の分離に供し、その際、1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートの30〜33質量%溶液が得られる。反応率は99%である。
【0087】
例6
イオン交換による1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートの製造
1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートを30%溶液として使用し、かつスタチックミキサー中で再循環された洗浄水と混合して10%の溶液が生じる。この溶液を周囲温度で下からイオン交換体カラムに通過させる。その量は約1.3床体積である。この場合、硫酸イオンおよび(存在する場合には)硫酸メチルイオンが水酸化物イオンと交換される。その後、該カラムを完全脱塩水および再循環された洗浄水(合計で約3床体積)を用いて生成物が残留しなくなるまで洗浄する。イオン交換体の排出流の一部を有価生成物として単離し、他方を洗浄水として捕集し、かつその後のサイクルで洗浄水もしくは希釈水として使用する。引き続き、イオン交換カラムを7質量%の水酸化ナトリウム溶液(3床体積)で再生し、かつ4.5床体積の完全脱塩水および再循環された洗浄水でアルカリ成分が残留しなくなるまで洗浄する。絶対圧130ミリバールおよび温度約50℃で水を留去することにより有価生成物を20%に濃縮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物の製造方法であって、
A)1−アダマンチルジメチルアミンを準備し、硫酸ジメチルと反応させ、その際、硫酸ジメチルの両方のメチル基をほぼすべて反応させ、かつほぼ1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートが得られ、かつ
B)工程A)で得られた1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートを、OHイオンで負荷されたイオン交換体を用いたアニオン交換に供する
1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物の製造方法。
【請求項2】
工程A)における1−アダマンチルジメチルアミンの準備のために、1−アダマンチルアミンまたは1−アダマンチルアンモニウム塩をジメチル化に供する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1−アダマンチルジメチルアミンの準備のために、1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩から出発する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩をまず、水性の塩基との反応によって1−アダマンチルアミンに変換する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
工程A)で1−アダマンチルジメチルアミンを準備するために、ホルムアルデヒドを、1−アダマンチルアミンまたは1−アダマンチルアンモニウム塩を用い、かつ水素を用いて、水素化触媒の存在下に還元アミン化に供する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
2つの液相を有する系中で反応を行う、請求項5記載の方法。
【請求項7】
反応のために、水および少なくとも1の芳香族炭化水素、特に水およびキシレンを含有する溶剤混合物を使用する、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
水素化触媒として、ラネーニッケルを使用する、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
還元アミン化の生成物を蒸留による後処理に供する、請求項5から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項5から9までのいずれか1項記載の方法であって、
a)1−アダマンチルアンモニウム塩酸塩を、塩基の水溶液を用いた処理によって1−アダマンチルアミンに変換し、
b)1−アダマンチルアミンをホルムアルデヒドおよび水素を用いて、水素化触媒の存在下に還元アミン化に供して1−アダマンチルジメチルアミンが得られ、
c)1−アダマンチルジメチルアミンを硫酸ジメチルとの反応に供し、その際、硫酸ジメチルの両方のメチル基はほぼ全て反応し、かつ1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートがほぼ得られ、かつ
d)1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートを、OHイオンが負荷されたイオン交換体を用いたアニオン交換に供する
請求項5から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
工程A)における1−アダマンチルジメチルアミンの準備のために、ホルムアルデヒドを、1−アダマンチルアミンまたは1−アダマンチルアンモニウム塩を用いてギ酸の存在下に還元アミン化に供する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程Aにおける1−アダマンチルジメチルアミンの準備のために、1−アダマンチルアミンまたは1−アダマンチルアンモニウム塩を、メタノールを用いた触媒反応によるメチル化に供する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
工程A)における硫酸ジメチルとの反応を、少なくとも40℃、特に有利には少なくとも80℃の温度で行う、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
工程A)において、1−アダマンチルジメチルアミン対硫酸ジメチルのモル量比が、少なくとも2:1である、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
工程A)において、1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートおよび1−アダマンチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェートの全質量に対して、少なくとも95質量%、特に有利には少なくとも99質量%、とりわけ少なくとも99.9質量%の1−アダマンチルトリメチルアンモニウムスルフェートを含有しているメチル化生成物が得られる、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
工程B)において、強塩基性のアニオン交換体を使用する、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
工程B)において、水性の1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物溶液が得られ、該溶液を場合により水の部分的な分離に供する、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
場合により水を部分的に分離した後で得られた1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物溶液が、該溶液の全質量に対して、少なくとも10質量%、有利には少なくとも15質量%、特に少なくとも18質量%の1−アダマンチルトリメチルアンモニウム水酸化物含有率を有する、請求項17記載の方法。

【公表番号】特表2012−520263(P2012−520263A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553452(P2011−553452)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053077
【国際公開番号】WO2010/103062
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】