説明

1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体、ならびに2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体の製造法

【課題】 医薬品や生理活性物質の合成中間体として重要な1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体およびその光学活性体の提供。
【解決手段】 下記式(1)


(式中、環Aは更なる1〜4個の置換基を有してもよく、該置換基はアルキル基、アラルキル基、芳香族基、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、アルカノイル基、アルキルカルバモイル基、シアノ基、またはニトロ基から選ばれた置換基を意味する。また該環Aは、縮合多環式炭化水素でもよい。R1はアルカノイル基またはアロイル基を表し、そしてR2は水素、アルカノイル基またはアロイル基を表すか、あるいはR1とR2が結合し、N原子と共に環状イミド基を形成してもよい。)で表される1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や生理活性物質の合成中間体として重要な1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体およびその光学活性体とその製造法、ならびに2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体およびその光学活性体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−アミノメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体、特に光学活性な2−アミノメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体は、中枢神経系の疾患(例えば鬱病、不安症、精神分裂病)治療薬などの各種医薬品製造において重要な合成中間体としての利用が見込まれる。
一般に光学活性な医薬品およびその中間体には高い化学純度でかつ高い光学純度であることが求められている。従って、2−アミノメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体の光学活性体を高い化学純度で、かつ高い光学純度で製造する方法の確立が重要な課題である。
これまでに開発されている2−アミノメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体の製造法のうち、本発明方法と比較的関連する製造法としては、
(1)塩基性条件下、5−ハロ−2−ヒドロキシベンズアルデヒドとグリシジルトシレートを反応させた後、ホルミル基の酸化などの工程を経て7−ハロ−2−ヒドロキシメチル−1,4−ベンゾジオキサンを得、更にトシル化、アミン誘導体による求核置換反応によって得る方法(特許文献1、非特許文献1参照)、および
(2)水素化ナトリウム存在下、2−ベンジロキシフェノールとエピクロロヒドリンまたはグリシジルトシレートより3段階で2−ヒドロキシメチル−1,4−ベンゾジオキサンを得、更に塩素化、フタルイミドの求核置換反応、イミド部分の分解によって得る方法(特許文献2参照)が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】国際公開第97/003071号パンフレット
【特許文献2】特開平6−9613号公報
【非特許文献1】Alan M. BIRCH等著、ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(J. Med. Chem.)、42巻、17号、3342−3355頁(1999年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方法(1)の場合、ホルミル基を酸化分解するために高価な酸化剤(m−クロロ過安息香酸)が多量に必要となり危険も伴う。また、上記方法(2)については収率が低く、満足できるものではない。従って上記方法により工業的に製造するのは問題点が多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体を開発し、この新規化合物を原料として用いることにより、温和な条件下で容易に2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体、殊にその光学活性体を高化学純度で、かつ高光学純度で得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、下記式(1)
【化1】

(式中、環Aは更なる1〜4個の置換基を有してもよく、該置換基は炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和アルキル基、アルキル部分の炭素数が1〜4のアラルキル基、芳香族基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜5のアルカノイル基、アルキル部分の炭素数が1〜4のモノもしくはジアルキルカルバモイル基、シアノ基、またはニトロ基から選ばれた置換基を意味し、そして該環Aの3位と6位、または4位と5位の置換基は互いに異なる置換基を意味する。また該環Aがその3位と4位、または5位と6位において他の環と融合してなる縮合多環式炭化水素を意味してもよい。R1はアルカノイル基またはアロイル基を表し、そしてR2は水素原子、アルカノイル基またはアロイル基を表すか、あるいはR1とR2が結合し、N原子と共に環状イミド基を形成してもよい。)
で表される1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体に関する。
【0007】
本発明は、下記式(2)
【化2】

(式中、環Aは前掲と同じ。R3は炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和アルキル基、またはアルキル部分の炭素数が1〜4のアラルキル基を表す。)
で表される2−アルコキシフェノール類と下記式(3)
【化3】

(式中、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表されるグリシジルアミドとを、フッ素塩、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩存在下、反応させ、次いで置換基R3を脱離させることを特徴とする下記式(1)
【化4】

(式中、環A、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表される1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体の製造法に関する。
【0008】
本発明は、下記式(4)
【化5】

(式中、環AおよびR3は前掲と同じ。)
で表される2−アルコキシフェニルグリシジルエーテルと下記式(5)
12NM (5)
(式中、Mは水素原子またはアルカリ金属を表し、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表されるアミド誘導体とをアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩または第4級アンモニウム塩存在下、反応させ、次いで置換基R3を脱離させることを特徴とする下記式(1)
【化6】

(式中、環A、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表される1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体の製造法に関する。
【0009】
本発明は、下記式(1)
【化7】

(式中、環A、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表される1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体の芳香族水酸基および2級水酸基を、それぞれアシロキシ基および脱離性置換基に変換した後、分子内環化反応させることを特徴とする下記式(6)
【化8】

(式中、環A、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表される2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体の製造法に関する。
更には、本発明はフッ素塩、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ金属炭酸水素塩存在下、下記式(2)
【化9】

(式中、環AおよびR3は前掲と同じ。)
で表される2−アルコキシフェノール類と下記式(3)
【化10】

(式中、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表されるグリシジルアミドとを反応させ、次いで置換基R3を脱離させるか、あるいは
アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩または第4級アンモニウム塩存在下、下記式(4)
【化11】

(式中、環AおよびR3は前掲と同じ。)
で表される2−アルコキシフェニルグリシジルエーテルと下記式(5)
12NM (5)
(式中、M、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表されるアミド誘導体を反応させ、次いで置換基R3を脱離させ、
【0010】
下記式(1)
【化12】

(式中、環A、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表される1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体を得、ついでこの化合物(1)の芳香族水酸基および2級水酸基を、それぞれアシロキシ基および脱離性置換基に変換した後、分子内環化反応させることを特徴とする下記式(6)
【化13】

(式中、環A、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表される2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体の製造法に関する。
【0011】
上記本発明係る方法を反応スキームで示すと以下の通りである。
【化14】

(上記各式の記号の定義は前掲に同じ。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体(6)を高化学純度で製造することができ、特にその光学活性体についてはラセミ化を伴わずに高光学純度で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る化合物の定義として、環Aは更に1〜4個の置換基を有してもよく、該環の3位と6位、または4位と5位の置換基は互いに異なる置換基である。これらの置換基は、本反応に影響を与えない基である限り特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アリル基などの炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和アルキル基、ベンジル基、フェネチル基、シンナミル基などのアルキル部分の炭素数が1〜4のアラルキル基、フェニル基、トリル基などの芳香族基、フッ素、塩素、臭素、塩素等のハロゲン原子、トリフルオロメチル基、クロロメチル基などの炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基などの炭素数2〜5のアルカノイル基、N−メチルカルバモイル基やN,N−ジエチルカルバモイル基などのアルキル部分の炭素数が1〜4のモノもしくはジアルキルカルバモイル基、シアノ基、またはニトロ基などが挙げられる。更には、環Aがその3位と4位、または5位と6位において他の環と融合してなる多環式炭化水素を表し、具体例としてはナフタレン、フェナントレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンなどが挙げられる。好ましい環Aはアルキル基、ハロゲン原子で置換された、より好ましくはハロゲン原子で置換されたベンゼン環である。
【0014】
本発明に係る化合物の定義として、R1はアルカノイル基またはアロイル基を表し、R2は水素原子、アルカノイル基またはアロイル基を表す。具体例としては、アセチル基、ブチリル基などの炭素数2〜5のアルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基が挙げられるがこれに限定されない。また、R1およびR2は互いに結合し、N原子と共に環状イミド基を形成していてもよく、例えばスクシニル基、フタロイル基などが具体例として挙げられる。
【0015】
1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体(1)は、2−アルコキシフェノール類(2)とグリシジルアミド(3)を縮合した後に置換基R3を脱離させる方法(便宜上、方法Aとする)と、2−アルコキシフェニルグリシジルエーテル(4)とアミド誘導体(5)を縮合した後に置換基R3を脱離させる方法(便宜上、方法Bとする)により製造することができる。
方法Aの出発原料である2−アルコキシフェノール類(2)のR3とは、炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和アルキル基またはアルキル鎖の炭素数が1〜4のアラルキル基を表す。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アリル基、ベンジル基、フェネチル基、またはシンナミル基などが挙げられるが、好ましくはメチル基、アリル基、ベンジル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0016】
方法Aの出発原料であるN−グリシジルアミド(3)の具体例としては、N−グリシジルアセトアミド、N−グリシジルヘキサンアミド、N−グリシジルベンズアミド、N−グリシジルジベンズアミド、N−グリシジルスクシンイミド、およびN−グリシジルフタルイミドなどが挙げられるが、好ましくはN−グリシジルフタルイミドである。
N−グリシジルアミド(3)の量は、2−アルコキシフェノール類(2)に対して0.5〜2当量が好ましい。
N−グリシジルアミド(3)は、例えば1−アミノ−3−クロロ−2−プロパノールのアミン部位のアシル化の後に塩基条件下で環化する方法(国際公開第99/024393号パンフレット参照)や、N−グリシジルフタルイミドの場合はフタルイミドとエピハロヒドリンを反応させて得る方法(米国特許第5608110号明細書参照)により製造することができる。
【0017】
方法Aの縮合過程で用いるフッ素塩とは、アルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩である。アルカリ金属塩の具体例としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属塩としては、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、フッ素塩をセライト、アルミナ、シリカゲル、モレキュラーシーブス等の適当な担体に担持させたものを用いてもよい。
方法Aの縮合過程で用いるアルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどが挙げられ、アルカリ炭酸水素塩としては、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
上記のフッ素塩、アルカリ金属炭酸塩、およびアルカリ金属炭酸水素塩は単独または混合したものを用いてもよい。使用量は2−アルコキシフェノール類(2)に対して化学量論量または触媒量のどちらでもよく、0.01〜3当量が適量である。
【0018】
方法Aの縮合過程で用いる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、アセトニトリルなどの非プロトン性極性溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル系溶媒、およびアセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒が挙げられが、好ましくはDMF、アセトニトリル、またはTHFであり、より好ましくはDMFである。これらは混合溶媒として用いてもよい。混合比については特に限定されない。溶媒の量は、2−アルコキシフェノール類(2)に対して2〜20倍(w/w)が適量である。
方法Aの縮合過程における反応温度は−10〜180℃が好ましく、更に好ましくは20〜150℃である。−10℃未満では反応が抑制されるので適切ではない。また、反応温度が180℃を超えると、副反応が進行して収率低下の原因になるので好ましくない。
【0019】
方法Bに用いられる出発原料である2−アルコキシフェニルグリシジルエーテル(4)は、例えば塩基存在下、非水溶性溶媒/水溶液の二層系中で2−アルコキシフェノール類(2)とエピハロヒドリンを縮合させる方法(国際公開第2004/002974号パンフレット参照)や、フッ素塩の存在下、2−アルコキシフェノール類(2)とグリシジルスルホナートを縮合させる方法(特許第3348860号明細書参照)により製造することができる。
【0020】
方法Bの原料であるアミド誘導体(5)の具体例としては、アセトアミド、ヘキサンアミド、ベンズアミド、ジベンズアミド、スクシンイミド、フタルイミドなどが挙げられる。また、これらのアルカリ金属塩を用いてもよい。好ましくはフタルイミドである。アミド誘導体(5)の使用量は、2−アルコキシフェニルグリシジルエーテル(4)に対して0.5〜2当量が好ましい。
方法Bの縮合過程で用いる第4級アンモニウム塩とは、互いに異なっていてもよい置換基(炭素数1〜16の飽和もしくは不飽和アルキル基、芳香族基、またはアラルキル基など)を有するアンモニウムイオンと対イオン(塩素イオン、臭素イオン、よう素イオン、硫酸水素イオンまたは水酸イオンなど)とから成る塩である。具体例としては、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化n−オクチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、よう化テトラn−ブチルアンモニウム、よう化β−メチルコリン、硫化水素テトラ−n−ブチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
方法Bの縮合過程で用いられるアルカリ金属炭酸塩およびアルカリ炭酸水素塩の具体例は、前記A方法で用いられるものと同じである。
上記の第4級アンモニウム塩、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属炭酸水素塩は、単独または混合したものを用いてもよい。使用量は、2−アルコキシフェニルグリシジルエーテル(4)に対して化学量論量または触媒量のどちらでもよく、0.01〜3当量が適量である。
方法Bの縮合過程で用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、THFなどのエーテル類、DMF、DMSO、ヘキサメチルホスホルアミド、アセトニトリルなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられ、好ましくはメタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、THF、DMF、およびアセトニトリルである。これらは混合溶媒として用いてもよい。混合比については特に限定されない。溶媒の量は、2−アルコキシフェニルグリシジルエーテル(4)に対して2〜20倍(w/w)が適量である。
方法Bの縮合過程における反応温度は−10〜180℃が好ましく、更に好ましくは20〜150℃である。−10℃未満では反応が抑制されるので適切ではない。また、反応温度が180℃を超えると、副反応が進行して収率低下の原因になるので好ましくない。
【0022】
方法AまたはBで得られる縮合体、3−(2−アルコキシフェノキシ)−1−アミド−2−プロパノール誘導体(1’)の置換基R3を脱離する方法の具体例としては、よう化トリメチルシリル、塩化トリメチルシリル−よう化ナトリウム、塩化トリメチルシリル−硫化ナトリウムなどケイ素試剤、三臭化ほう素、塩化アルミニウムなどの酸性試剤、tert−ブトキシカリウム−18クラウン6、ナトリウムチオエトキシド、ナトリウム N−メチルアニリンなどの塩基性試剤を用いる方法がある。置換基R3がアリル基やベンジル基の場合にはPd/Cを用いた水素化分解による方法などが挙げられる。
かくして得られる1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体(1)は、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステルや、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、更にはトルエン、ベンゼン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、および水に対する溶解度が低く、特にR1とR2がN原子と共にフタロイル基を意味するものについてはより溶解しにくい。従って、反応により得られた粗体をこれらの溶媒を用いて洗浄するだけで不純物のみが溶解し、その後ろ取することによって簡単に1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体(1)を高純度で得ることができるメリットを有する。
【0023】
かくして得られる1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体(1)について、環Aに結合する芳香属性水酸基を選択的にアシル化した後に2級水酸基のスルホニル化など該水酸基を脱離性置換基に変換した後、得られた化合物を分子内環化反応させることによって、簡単に2−アミド−1,4−ベンゾジオキサン誘導体(6)を高収率、高純度で得ることができる。
1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体(1)の芳香属性水酸基を選択的にアシル化する方法は、適当な溶媒中(例えば1,2−ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテルやTHFなどのエーテル系溶媒)、アルカリ金属炭酸塩やアルカリ土類金属炭酸塩、酢酸のアルカリ金属塩などの存在下で水酸基と酸無水物を反応させて行う。用いる酸無水物としては、無水酢酸、モノクロロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物などが挙げられる。また、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属炭酸水素塩の具体例は前記と同じであり、酢酸のアルカリ金属塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが挙げられる。
【0024】
アシル化体、即ち3−(2−アシロキシフェノキシ)−1−アミド−2−プロパノールの2級水酸基を脱離性置換基に変換する方法、例えばスルホニル化は、適当な塩基(例えばトリエチルアミンやピリジン等)の存在下、対応するスルホン酸塩化物や無水物を反応させる方法によって行うことができる。スルホン酸塩化物または無水物の具体例としては、塩化メタンスルホニル、塩化トリフルオロメタンスルホニル、塩化p−トルエンスルホニル、または塩化m−ニトロベンゼンスルホニル、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、トルエンスルホン酸無水物などが挙げられるがこれらに限らない。
【0025】
スルホニル化のかわりに、トリフェニルホスフィン−ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)等を用いてホスフィン化してもよい。
例えば、スルホニル化体、即ち3−(2−アシロキシフェノキシ)−1−アミド−2−スルホニルオキシプロパンの分子内環化反応は、メタノールやエタノールなどのアルコール溶媒中、塩基を添加する方法により行うことができる。塩基としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属アルコキシドなどが挙げられる。アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ炭酸水素塩の具体例としては前記と同じである。アルカリ金属アルコキシドの具体例としては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムn-プロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムtert-ブトキシド、およびカリウムtert-アミラートなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0026】
分子内環化の反応温度は、−30〜130℃が好ましく、更に好ましくは0〜100℃である。−30℃未満では反応が抑制されるので適切ではない。また、反応温度が130℃を超えると、副反応が進行して収率低下の原因になるので好ましくない。
2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体(6)は、環化反応後に得られた混合溶液に抽出溶媒を加えて水洗するという非常に簡便な操作により、純度よく、しかも高収率で得ることができる。必要であればカラムクロマトグラフィーや再結晶等によって精製するとよい。抽出溶媒としては、2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体(6)が溶解する非水溶性有機溶媒であれば特に限定されず、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステルや、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒が挙げられる。
【0027】
光学活性な2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体(6)が所望であれば、光学活性なグリシジルアミド(3)、または2−アルコキシフェニルグリシジルエーテル(4)、あるいは1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体(1)を用いるとよい。光学純度の高いこれらの化合物を用いると、その光学純度をほとんど保ったまま目的の2−アミノメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体(6)を高光学純度で得ることができる。
得られた2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体(6)のR1とR2は公知の方法で容易に外すことができる。その方法としては、塩酸水溶液中、加熱することによって加水分解を行う方法や、アルコール溶媒中、ヒドラジン水和物存在下で加熱した後、酸性水溶液中で加熱する方法、メチルアミン水溶液で処理する方法、水素化ほう素ナトリウムと反応させた後に酢酸で処理する方法、またはTHF水溶液中で硫化ナトリウムと反応させる方法などが挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下の実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
[実施例1]
(R)−1−(4−クロロ−2−ヒドロキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノール
(方法A)
反応槽にフタルイミド 4.00g (27.2mmol)、(R)−エピクロロヒドリン 4.52g (49.0mmol)、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム 126mg (0.68mmol)、およびイソプロパノール25mLを入れて40℃、24時間攪拌した。この混合溶液にカリウムtert-ブトキシド 3.66g(32.6mmol)とイソプロパノール15mLの混合溶液を滴下し、更に20℃、3時間攪拌した。溶媒を留去した後、濃縮残渣に酢酸エチルを加え水洗を行った。有機層を取り出し、再結晶することによって(R)−グリシジルフタルイミド 4.90g(収率89%、化学純度96%)を白色固体として得た。
1HNMR (CDCl3, 270MHz) δ2.70 (dd, 1H), 2.81 (dd, 1H), 3.21−3.28 (m, 1H), 3.81 (dd, 1H), 3.97 (dd, 1H), 7.27−7.91 (m, 4H)
13CNMR (CDCl3, 68MHz) δ39.8, 46.3, 49.2, 123.4, 131.9, 134.1, 167.9
【0030】
反応槽に上記で得た(R)−グリシジルフタルイミド 4.06g (20.0mmol)、4−クロロ−2−メトキシフェノール 3.17g (20.0mmol)、フッ化セシウム 0.608g (4.0mmol)、およびDMF 30mLを入れて80℃、38時間攪拌した。溶媒を留去した後、濃縮残渣に1,2−ジクロロエタンを加え、3% NaOH水溶液、1% HCl水溶液、5% NaCl水溶液で順次洗浄を行った。有機層を取り出し、溶媒を留去することによって目的の(R)−1−(4−クロロ−2−メトキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノールの粗体 6.21g(収率87%、化学純度96%)を淡黄色固体として得た。
1HNMR (CDCl3, 270MHz) δ3.17 (br, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.88-4.11 (m, 4H), 4.23−4.32 (m, 1H), 6.83-6.86 (m, 3H), 7.71−7.88 (m, 4H)
13CNMR (CDCl3, 68MHz) δ40.9, 55.9, 68.5, 72.5, 112.4, 116.0, 120.3, 123.2, 126.9, 131.8, 133.9, 146.6, 150.3, 168.3
【0031】
反応槽に上記で得た(R)−1−(4−クロロ−2−メトキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノールの粗体 724mg (2.00mmol)、よう化ナトリウム 899mg (6.00mmol)、および1,2−ジクロロエタン 5mLを入れた。これにクロロトリメチルシラン 435mg (4.0mmoL)を加えた後、60℃、35時間攪拌した(反応後の化学純度:62%)。室温下で冷却した後に5% チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、溶媒を留去した。濃縮残渣にトルエンを加え、十分に懸濁させた後、不溶物をろ取し、ろ取物をトルエンで洗浄、乾燥することによって(R)−1−(4−クロロ−2−ヒドロキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノール 521mg(収率75%、化学純度96%)を淡黄色粉末として得た。
融点 214-218℃
比旋光度 [α]D25 -28°(c0.05, CH3CN)
1HNMR (DMSO-d6, 270MHz) δ3.66-3.81 (m, 2H), 3.88-4.00 (m, 2H), 4.12-4.19 (m, 1H), 5.31 (br, 1H), 6.75-6.93 (m, 3H), 7.82−7.90 (m, 4H), 9.32 (br, 1H)
13CNMR (DMSO-d6, 68MHz) δ41.0, 66.3, 71.5, 114.9, 115.3, 118.5, 122.8, 124.5, 131.6, 134.1, 145.6, 147.7, 167.8
【0032】
[実施例2]
(方法A)
反応槽に(R)−グリシジルフタルイミド 5.80g (28.6mmol)、4−クロロ−2−メトキシフェノール 3.17g (20.0mmol)、炭酸カリウム 2.76g (20mmol)、およびDMF 60mLを入れて80℃、46時間攪拌した。溶媒を留去した後、濃縮残渣に1,2−ジクロロエタンを加え、3% NaOH水溶液、1% HCl水溶液、5% NaCl水溶液で順次洗浄を行った。有機層を取り出し、溶媒を留去することによって(R)−1−(4−クロロ−2−メトキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノール 4.20g(収率59%、化学純度90%)を淡黄色固体として得た。
【0033】
[実施例3]
(方法B)
反応槽に4−クロロ−2−メトキシフェノール 20.0g (126mmol)、(S)−エピクロロヒドリン 23.3g (252mmol)、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム 0.585g (3.15mmol)、トルエン40mL、および水40mLを入れた。これに24% NaOH水溶液 31.5g (189mmol)を氷浴中で滴下し、室温下、36時間攪拌した。水層を取り除いた後、有機層を5% HCl水溶液および5% NaCl水溶液で順次洗浄を行った。有機層を取り出し、溶媒を留去することによって(R)−グリシジル 4−クロロ−2−メトキシフェニルエーテルの粗体 22.1g (収率87%、化学純度93%)を白色固体として得た。
1HNMR (CDCl3, 270MHz) δ2.73 (dd, 1H), 2.90 (dd, 1H), 3.34−3.40 (m, 1H), 3.86 (s, 3H), 3.98 (dd, 1H), 4.24 (dd, 1H), 6.82−6.89 (m, 3H)
13CNMR (CDCl3, 68MHz) δ44.6, 50.0, 56.0, 70.4, 112.3, 114.8, 120.1, 126.4, 146.5, 150.0
反応槽にフタルイミド 442mg (3.00mmol)、(R)−グリシジル 4−クロロ−2−メトキシフェニルエーテルの粗体 664mg (3.00mmol)、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム 55.7mg (0.30mmol)、およびアセトニトリル 6mLを入れて70℃、24時間攪拌した。溶媒を留去した後、濃縮残渣に1,2−ジクロロエタンを加え水洗を行った。有機層を取り出し、溶媒を留去することによって目的の(R)−1−(4−クロロ−2−メトキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノールの粗体 1.14g(収率102%、化学純度86%)を淡黄色固体として得た。
(R)−1−(4−クロロ−2−メトキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノールの粗体を上記[実施例1](方法A)と同じ方法で処理を行うことにより、(R)−1−(4−クロロ−2−ヒドロキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノールを淡黄色粉末として得た。
【0034】
[実施例4]
(S)−1−(4−クロロ−2−ヒドロキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノール
(方法B)
4−クロロ−2−メトキシフェノール 60.0g (378mmol)および(R)−エピクロロヒドリン 70.0g (757mmol)を用いて[実施例3]と同じ操作を行うことにより、(S)−1−(4−クロロ−2−ヒドロキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノール79.3g(収率60%、化学純度98%)を淡黄色粉末として得た。
比旋光度 [α]D25 +31°(c0.05, CH3CN)
【0035】
[実施例5]
(S)−7−クロロ−2−(フタルイミドメチル)−1,4−ベンゾジオキサン
反応槽に(R)−1−(4−クロロ−2−ヒドロキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノール 348mg (1.00mmol)、炭酸ナトリウム 159mg (1.50mmol)、および1,2−ジクロロエタン4mLを入れ、これに無水酢酸 122mg (1.20mmol)を滴下した後、室温下で15時間攪拌した。水を加えて反応を停止し、水層を除いた後に有機層を5% HCl水溶液および5% NaCl水溶液で順次洗浄を行った。有機層を取り出し、溶媒を留去することによって(R)−1−(4−クロロ−2−アセトキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノールの粗体 372mg(収率92%、化学純度97%)を淡黄色固体として得た。
1HNMR (CDCl3, 270MHz) δ2.41 (s, 3H), 2.83 (br, 1H), 3.86-3.98 (m, 2H), 4.04-4.14 (m, 2H), 4.19-4.29 (m, 1H), 6.89-7.19 (m, 3H), 7.70-7.90 (m, 4H)
13CNMR (CDCl3, 68MHz) δ20.7, 40.9, 68.4, 76.5, 114.1, 123.1, 123.3, 125.9, 126.6, 131.8, 134.0, 140.1, 148.5, 168.5, 168.9
【0036】
反応槽に上記で得た(R)−1−(4−クロロ−2−アセトキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノールの粗体 364mg (0.90mmol)、トリエチルアミン 137mg (1.36mmol)、および酢酸エチル 2mLを入れた。これにメタンスルホニルクロリド 134mg (1.18mmol)を氷浴中でゆっくり滴下した後、室温下、3時間攪拌した。5% HCl水溶液および水で順次洗浄を行った後、有機層を取り出し、溶媒を留去することによって(R)−1−(4−クロロ−2−アセトキシフェノキシ)−2−メタンスルホニルオキシ−3−フタルイミドプロパンの粗体 213mg(収率98%、化学純度97%)を褐色固体として得た。
1HNMR (CDCl3, 270MHz) δ2.39 (s, 3H), 3.09 (s, 3H), 3.95 (dd, 1H), 4.18 (dd, 1H), 4.21 (dd, 2H), 5.25-5.33 (m, 1H), 6.87-7.21 (m, 3H), 7.73-7.90 (m, 4H)
13CNMR (CDCl3, 68MHz) δ20.6, 38.4, 38.5, 68.4, 75.4, 114.2, 123.4, 123.5, 126.4, 126.6, 131.6, 134.1, 140.2, 148.2, 167.8, 168.6
【0037】
反応槽に上記で得た(R)−1−(4−クロロ−2−アセトキシフェノキシ)−2−メタンスルホニルオキシ−3−フタルイミドプロパンの粗体 242mg (0.50mmol)、炭酸ナトリウム 58.3mg (0.60mmol)、およびメタノール 2mLを入れ、50℃、9時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加えてから水洗を行い、溶媒を留去した後に再結晶を行うことにより目的の(S)−7−クロロ−2−(フタルイミドメチル)−1,4−ベンゾジオキサン 114mg(収率70%、化学純度98%、光学純度98%ee)を白色固体として得た。
融点 174-176℃
比旋光度 [α]D25 -75°(c0.5, CH3CN)
1HNMR (DMSO-d6, 270MHz) δ3.88 (dd, 2H), 4.14 (dd, 1H), 4.33 (dd, 1H), 4.48-4.54 (m, 1H), 6.84-6.93 (m, 3H), 7.84-7.93 (m, 4H)
13CNMR (DMSO-d6, 68MHz) δ37.3, 64.9, 70.3, 116.7, 117.9, 120.8, 122.9, 124.4, 131.2, 134.2, 141.5, 142.7, 167.3
なお、光学純度(%ee)は高速液体クロマトグラフィー法を用い、そのエリア比より算出した。条件を以下に示す。
カラム:ダイセル化学工業(株)製 CHIRALPAC AD-RH (0.46cmφ × 15cmL)
移動相:アセトニトリル/水(50/50 (v/v))
流速:1.2mL/min.
検出器:UV 220nm
保持時間:(R)体=約19.7分、(S)体=21.8分
【0038】
[実施例6]
(R)−7−クロロ−2−(フタルイミドメチル)−1,4−ベンゾジオキサン
(S)−1−(4−クロロ−2−ヒドロキシフェノキシ)−3−フタルイミド−2−プロパノール 67.0g (193mmol)を用い、[実施例5]と同様な操作を行うことにより、(R)−7−クロロ−2−(フタルイミドメチル)−1,4−ベンゾジオキサン 44.8g(収率71%、化学純度99%、光学純度99%ee)を白色固体として得た。
比旋光度 [α]D25 +78°(c0.5, CH3CN)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、環Aは更なる1〜4個の置換基を有してもよく、該置換基は炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和アルキル基、アルキル部分の炭素数が1〜4のアラルキル基、芳香族基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜5のアルカノイル基、アルキル部分の炭素数が1〜4のモノもしくはジアルキルカルバモイル基、シアノ基、またはニトロ基から選ばれた置換基を意味し、そして該環Aの3位と6位、または4位と5位の置換基は互いに異なる置換基を意味する。また該環Aがその3位と4位、または5位と6位において他の環と融合してなる縮合多環式炭化水素を意味してもよい。R1はアルカノイル基またはアロイル基を表し、そしてR2は水素原子、アルカノイル基またはアロイル基を表すか、あるいはR1とR2が結合し、N原子と共に環状イミド基を形成してもよい。)
で表される1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体。
【請求項2】
下記式(2)
【化2】

(式中、R3は炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和アルキル基、またはアルキル部分の炭素数が1〜4のアラルキル基を表し、そして環Aは前掲と同じ。)
で表される2−アルコキシフェノール類と下記式(3)
【化3】

(式中、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表されるグリシジルアミドとを、フッ素塩、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩存在下、反応させ、次いで置換基R3を脱離させることを特徴とする下記式(1)
【化4】

(式中、環A、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表される1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体の製造法。
【請求項3】
下記式(4)
【化5】

(式中、環AおよびR3は前掲と同じ。)
で表される2−アルコキシフェニルグリシジルエーテルと下記式(5)
12NM (5)
(式中、Mは水素原子またはアルカリ金属を表し、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表されるアミド誘導体とをアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩または第4級アンモニウム塩存在下、反応させ、次いで置換基R3を脱離させることを特徴とする下記式(1)
【化6】

(式中、環A、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表される1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体の製造法。
【請求項4】
下記式(1)
【化7】

(式中、環A、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表される1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体の芳香族水酸基および2級水酸基を、それぞれアシロキシ基および脱離性置換基に変換した後、分子内環化反応させることを特徴とする下記式(6)
【化8】

(式中、環AおよびR1、R2は前掲と同じ。)
で表される2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体の製造法。
【請求項5】
下記式(1)
【化9】

(式中、環A、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表される1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体の芳香族水酸基を選択的にアシル化することを特徴とする請求項4に記載の2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体の製造法。
【請求項6】
脱離性置換基がスルホニルオキシ基である請求項4または5に記載の2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体の製造法。
【請求項7】
塩基存在下、アルコール溶媒中で分子内環化反応を行うことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体の製造法。
【請求項8】
グリシジルアミド(3)または2−アルコキシフェニルグリシジルエーテル(4)が光学活性体である請求項2〜7のいずれかに記載の1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体(1)の光学活性体、または2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体(6)の光学活性体の製造法。
【請求項9】
グリシジルアミド(3)がグリシジルフタルイミドである請求項2、4〜8のいずれかに記載の1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体(1)またはその光学活性体、あるいは2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体(6)またはその光学活性体の製造法。
【請求項10】
アミド誘導体(5)がフタルイミドである請求項3、4〜8のいずれかに記載の1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体(1)またはその光学活性体、あるいは2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体(6)またはその光学活性体の製造法。
【請求項11】
環A上の置換基がハロゲン原子である請求項2〜10のいずれかに記載の1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体(1)またはその光学活性体、あるいは2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体(6)またはその光学活性体の製造法。
【請求項12】
2−アルコキシフェノール類(2)または2−アルコキシフェニルグリシジルエーテル(4)のR3がメチル基である請求項2、3、8〜11のいずれかに記載の1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体(1)またはその光学活性体の製造法。
【請求項13】
フッ素塩、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩存在下、下記式(2)
【化10】

(式中、環AおよびR3は前掲と同じ。)
で表される2−アルコキシフェノール類と下記式(3)
【化11】

(式中、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表されるグリシジルアミドとを反応させ、次いで置換基R3を脱離させるか、あるいは
アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩または第4級アンモニウム塩存在下、下記式(4)
【化12】

(式中、環AおよびR3は前掲と同じ。)
で表される2−アルコキシフェニルグリシジルエーテルと下記式(5)
12NM (5)
(式中、M、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表されるアミド誘導体を反応させ、次いで置換基R3を脱離させ、
下記式(1)
【化13】

(式中、環A、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表される1−アミド−3−(2−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロパノール誘導体を得、ついでこの化合物(1)の芳香族水酸基および2級水酸基を、それぞれアシロキシ基および脱離性置換基に変換した後、分子内環化反応させることを特徴とする下記式(6)
【化14】

(式中、環A、R1およびR2は前掲と同じ。)
で表される2−アミドメチル−1,4−ベンゾジオキサン誘導体の製造法。

【公開番号】特開2006−28110(P2006−28110A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211087(P2004−211087)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】