説明

1−アルコキシイソキノリン誘導体又はその水和物の製造方法

【課題】 優れたPARP阻害活性を有し、有望な医薬品として開発が進められている4-(4-ジアルキルアミノメチル)フェニル-5-ヒドロキシ-1-イソキノリノン誘導体の有用な製造中間体である1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体又はその水和物の新規な製造法を提供する。
【解決手段】
一般式(I)
【化1】


で表されるイソキノリン N-オキシド誘導体に一般式(II)
【化2】


で表されるアシル化剤又はスルホン化剤と、一般式(III)
【化3】


で表されるアルコール体を反応させることを特徴とする一般式(IV)
【化4】


で表される1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体又はその水和物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ(ADP−リボース)合成酵素(poly(ADP-ribose)polymerase(以下、「PARP」と略す。)の活性化に起因する疾患、例えば種々の虚血性疾患(脳梗塞、心筋梗塞、急性腎不全等)、炎症性疾患(炎症性腸疾患、多発性脳硬化症、関節炎、慢性関節リューマチ等)、神経変性疾患(アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病等)、糖尿病、敗血症性ショック等の予防及び/又は治療剤として有用な4-(4-ジアルキルアミノメチル)フェニル-5-ヒドロキシ-1-イソキノリノン誘導体の製造中間体である1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体又はその水和物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の4-(4-ジアルキルアミノメチル)フェニル-5-ヒドロキシ-1-イソキノリノン誘導体の代表的化合物としては下記構造式で示される化合物(V)が挙げられる。
【0003】
【化1】

【0004】
化合物(V)は、優れたPARP阻害活性を有し、急性期脳梗塞の予防および/または治療薬に対する有望な医薬品として開発が進められている。化合物(V)の製造方法については、特許文献1、2の国際公開公報及び特許公開公報中に具体的に記載されている。
【0005】
スキーム1
【0006】
【化2】

【0007】
(式中、R、 R1は低級アルキル基又はアラルキル基を、Xは脱離基を示す。)
しかしながら、この特許文献に示された製造方法において、その製造中間体である1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体(IV)は5-アシルオキシイソキノリン(VI)を出発原料とし、過酸化物によるN-オキシド化(VI→VII)の後、無水酢酸を用いた熱転位(VII→VIII)、続いてアセチル基を除去(VIII→IX)することにより、イソキノリン母核の1位に酸素官能基を導入し、その後、酸化銀存在下、ヨウ化アルキルを用いて1位をアルキルエーテル化(IX→IV)して得ている(スキーム1)。この方法では、重要な医薬中間体となる1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体(IV)を得るまでに多工程を要し、高価な銀試薬の使用、生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する必要があり、製造の操作性、更には銀試薬を使用することで生じるコスト面や環境への影響に問題があり、本製造法を工業的規模で実施することが困難であった。そこで、これらの課題を解決するため、製造の操作性及び精製効率等について改善工夫を行い、実生産に適合する製造法を開発する必要があった。
【0008】
【特許文献1】WO2004/00945号パンフレット
【特許文献2】特開2004-43458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
医薬品中間体として有用な1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体を工業的に生産していくためには、製造工程の短縮に加え、カラムクロマトグラフィー精製工程の削減、製造工程の操作性や収率向上などの課題を解決する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、5-アシルオキシイソキノリン N-オキシドをアルコール体中で、アシル化剤又はスルホン化剤と反応させることによりわずか1工程で、重要な製造中間体となる1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体(IV)を得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0011】
すなわち本発明は、
一般式(I)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、Rは水酸基の保護基を示す。)
で表されるイソキノリン N-オキシド誘導体に一般式(II)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、Raは低級アルキルカルボニル基、低級アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールカルボニル基、低級アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を示し、Xは脱離基を示す。)
で表されるアシル化剤又はスルホン化剤と、一般式(III)
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、R1は低級アルキル基又はアラルキル基を示す。)
で表されるアルコール体を反応させることを特徴とする一般式(IV)
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、R及びR1は前記定義と同意義である。)
で表される1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体又はその水和物の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0020】
有用な医薬品中間体である1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体の新規で効率的な合成法を確立したことにより、従来開示された方法に比べて工程数が短縮され、更にシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を必要としないことから、操作性が改善されると共に廃棄物を削減することができ、かつ収率を大幅に向上させた。本発明により、医薬用途として有用な製造中間体である1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体の工業的製造法が提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本明細書中において表される「水酸基の保護基」とは、水酸基の保護基として知られている保護基であれば特に制限はなく、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等の三置換シリル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、1−(エトキシ)エチル基、メトキシイソプロピル基等の1−(アルコキシ)アルキル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等の2−オキサシクロアルキル基、t-ブチル基等のアルキル基、ベンジル基、パラメトキシベンジル基等のアラルキル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、パラメトキシフェニル基などのアリール基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基等の低級アルキルカルボニル基、ベンゾイル基、メチルベンゾイル基等のアリールカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、t-ブチルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メトキシベンジルオキシカルボニル基、ニトロベンジルオキシカルボニル基、クロロベンジルオキシカルボニル基、ブロモベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基等が挙げられ、中間体としての使い勝手の点から、低級アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が好ましく、例えばアセチル基、ベンゾイル基及びエトキシカルボニル基が好ましい。
【0022】
本明細書中において表される「低級アルキルカルボニル基」とは、炭素数2乃至7の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキルカルボニル基を意味し、具体的には例えばアセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基などが挙げられ、好ましくは、アセチル基、ピバロイル基が挙げられる。なお、アルキル基の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0023】
本明細書中において表される「低級アルコキシカルボニル基」とは、炭素数2乃至7の直鎖若しくは分岐鎖状のアルコキシカルボニル基を意味し、具体的には例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、i-プロピルオキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、i-ブチルオキシカルボニル基、t-ブチルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基等が挙げられ、好ましくはエトキシカルボニル基、t-ブチルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0024】
本明細書中において表される「アラルキルオキシカルボニル基」とは、アリール部が1乃至3個の置換基(例えば、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子等)により置換されてもよいフェニル基を意味し、かつアルキル部が炭素数1乃至6のアルキル基であるアリールアルキルオキシカルボニル基を意味し、具体的には例えばベンジルオキシカルボニル基、メトキシベンジルオキシカルボニル基、ニトロベンジルオキシカルボニル基、クロロベンジルオキシカルボニル基、ブロモベンジルオキシカルボニル基等が挙げられ、好ましくはベンジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0025】
本明細書中において表される「アリールカルボニル基」とは、炭素数6乃至10のアリール基が結合したカルボニル基を意味し、具体的には例えばベンゾイル基、ナフトイル基等(ここでフェニル基又はナフチル基は1乃至乃至3個の置換基(例えば、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子など)により置換されてもよい。)が挙げられ、好ましくは、ベンゾイル基が挙げられる。
【0026】
本明細書中において表される「低級アルキルスルホニル基」とは、炭素数1乃至6の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキルスルホニル基をいい、具体的には例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n-プロピルスルホニル基、i-プロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、i-ブチルスルホニル基、s-ブチルスルホニル基、t-ブチルスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等が挙げられ、好ましくはメチルスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基が挙げられる。
【0027】
本明細書中において表される「アリールスルホニル基」とは、炭素数6乃至10のアリール基が結合したスルホニル基を意味し、具体的には例えばベンゼンスルホニル基,p−トルエンスルホニル基等が挙げられる。
【0028】
本明細書中において表されるXの「脱離基」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられ、好ましくは、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
【0029】
本明細書中において表されるR1の「低級アルキル基」とは、炭素数1乃至6の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を意味し、具体的には例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i-プロピル基、n−ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基 、t-ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、i−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2 −トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基が挙げられる。
【0030】
本明細書中において表されるR1の「アラルキル基」とは、アリール部が1乃至3個の置換基(例えば、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子など)により置換されてもよいフェニル基を意味し、かつアルキル部が炭素数1乃至6の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基であるアリールアルキル基を意味し、具体的には例えばベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、フェニルプロピル基、ニトロベンジル基、フェニルブチル基、フェニルヘキシル基等が挙げられ、好ましくはベンジル基が挙げられる。
【0031】
本発明における前記一般式(IV)に示される1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体の製造方法は以下のように示すことができる(スキーム2)。
【0032】
スキーム2
【0033】
【化7】

【0034】
本発明で出発原料となるのは、前記一般式(I)で表される5位の水酸基が保護されたイソキノリン N-オキシド誘導体である。この誘導体(I)は、特許文献(特開 2004-43458号公報)に記載の方法により製造することができる。即ち、市販の5−ヒドロキシイソキノリンの水酸基に公知の方法に従って目的の保護基、例えばベンゾイル基などのアシル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などを導入し、続いて過酸化物、例えば過酸化水素、m-クロロ過安息香酸(m-CPBA)、モノペルオキシフタル酸マグネシウム(MMPP)等で酸化して得ることができる。
【0035】
本発明は前記一般式(I)で表されるイソキノリン N-オキシド誘導体に一般式(II)で表されるアシル化剤又はスルホン化剤を反応させた後、一般式(III)で表されるアルコール体を求核置換させ、1位にアルコキシ基を導入する方法である。反応は式(III)で表されるアルコール体又はアルコール体と他の溶媒との混合溶媒中、アシル化剤又はスルホン化剤を作用させる。反応条件は、通常-20℃〜150℃、好ましくは5℃〜40℃の温度で5分間〜48時間、好ましくは10分間〜10時間、さらに好ましくは0.5時間〜5時間である。
【0036】
また本反応は、有機塩基存在下で行っても良く、有機塩基は脱酸剤であれば特に制限はないが、好ましくはトリエチルアミン、N-メチルモルホリンや1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]-5-ウンデセン等が挙げられる。
以上により1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体(IV)を工業的スケールで製造することができる。
【0037】
(実施例)
次に本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
<参考例1> 5-ベンゾイルオキシイソキノリンの合成
【0038】
【化8】

【0039】
市販の5-ヒドロキシイソキノリン290g(2.00mol)を酢酸エチル 2.9Lに懸濁し、氷冷下、トリエチルアミン300mL(2.15mol)を加えて撹拌した。10℃以下でベンゾイルクロリド 240mL(2.07mol)を20分間かけて滴下し、その後常温で3時間撹拌した。反応液を水 2Lに加え分液し、有機層を0.5mol/L 水酸化ナトリウム水溶液 1L、水 1L、28wt/vol% 食塩水 500mLで順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去して橙色油状物の標記化合物を491g得た(収率98%)。
H-NMR(CDCl3、400MHz)δ: 7.57-7.67(6H,
m), 7.94(1H, d, J=8.1Hz)8.32-8.34(2H, m), 8.56(1H, d, J=5.9Hz),
9.33(1H, s).
<参考例2> 5-ベンゾイルオキシイソキノリン N-オキシドの合成
【0040】
【化9】

【0041】
5-ベンゾイルオキシイソキノリン491g(1.97mol)に2-プロパノール 1.2Lを加え、加熱して溶解した後、氷冷下、撹拌しながら水 1.2L、次いでモノペルオキシフタル酸マグネシウム(MMPP)6水和物927g(1.50mol)を10℃以下で添加し、常温で6時間15分攪拌した後、15時間静置した。反応液を氷冷し、10℃で撹拌しながら 1mol/L 水酸化ナトリウム溶液 3Lを加え、さらに10wt/vol%炭酸水素ナトリウム水溶液 2Lを加えた。これに氷水 5Lを加え、内温2℃で30分間撹拌し、析出晶をろ取した後、水 2Lで洗浄した。湿潤結晶に氷水 5Lを加えて懸濁し、1時間撹拌した後、ろ取して水 1Lで洗浄した。湿潤結晶にエタノール 3Lを加え、加熱し溶解させた後、活性炭 15gを加えて撹拌し、その後不溶物をろ別した。ろ液を約 2Lまで濃縮した後、氷冷下1時間撹拌し、結晶をろ取した後、エタノール 200mLで洗浄した。さらにろ取した結晶を10vol%含水エタノール 1.4Lを加え加熱して溶解し、活性炭2.80gを加えて撹拌した後、不溶物をろ別し、ろ液を冷却下18時間静置した。析出晶をろ取し、エタノール 100mLで洗浄した後、60℃で減圧下4時間乾燥することにより、微褐色針状晶の標記化合物を227g(収率43%)得た。
mp; 189.6-192.7℃(分解、熱板法).
H-NMR(CDCl3、400MHz)δ: 7.61-7.88(7H,
m), 8.15(1H, dd, J=2.0Hz, 7.3Hz), 8.27(2H, dd, J=1.5Hz, 7.3Hz), 9.08(1H, d, J=1.5Hz).
<実施例1> 5-ベンゾイルオキシ-1-エトキシイソキノリンの合成(A法)
【0042】
【化10】

【0043】
5-ベンゾイルオキシイソキノリン N-オキシド10.7g(40.0mmol)をエタノール120mLに懸濁し、氷冷下で撹拌しながら、内温5〜8℃でクロロギ酸エチル242mL(2.54mol)を滴下し、その後トリエチルアミン 15.2g(150mmol)を内温7〜17℃で滴下し、その後内温17〜23℃で15分間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣に酢酸エチル 100mL、精製水 100mLを加えて溶解し、有機層を分液した。有機層を精製水50mL、5wt/vol% 食塩水
50mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。得られた油状物にアセトン50mL及びエタノール10mLを加え溶解した後、精製水10mLを加え、室温で30分間撹拌した。析出した結晶をろ取し、30vol%アセトン水で洗浄した後、50℃で6時間送風乾燥し、褐色粉末の標記化合物を8.98g得た(収率77%)。
H-NMR(CDCl3、400MHz)δ: 1.52(3H,
t, J=7.1Hz), 4.58(2H, q, J=7.1Hz), 7.24-7.26(2H,m), 7.47-7.72(6H, m), 7.99(1H, d,
J=6.0Hz), 8.17-8.24(2H, m), 8.30-8.32(2H, m).
<実施例2> 5-ベンゾイルオキシ-1-エトキシイソキノリンの合成(B法)
【0044】
5-ベンゾイルオキシイソキノリン N-オキシド1.01 g(3.82 mmol)にエタノール10.0 mLを加え、氷水冷却撹拌下でベンゾイルクロリド670 μL(5.75 mmol)を滴下した後、続いてトリエチルアミン1.10 mL(7.89 mmol)を加え、外温45℃の油浴上で2時間撹拌した。反応液を氷水冷却撹拌下、精製水15.0 mL及び酢酸エチル15.0 mLを加え、有機層を分取した。水層を酢酸エチルで抽出後、有機層を合一した。得られた有機層を食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。不溶物をろ別し、得られたろ液を減圧濃縮して黄色油状物を得た。得られた油状物にエタノール10.0 mL、アセトニトリル5.00 mLを加え常温撹拌下、精製水10.0 mLを加え、そのまま常温撹拌した。析出結晶をろ取し、エタノール10.0 mLの精製水10.0 mL溶液で洗浄後、50℃で3時間30分減圧乾燥して微褐色粉末の標記化合物を621 mgを得た。
1H-NMR(CDCl3,400 MHz) δ:1.52(3H,t,J = 6.8 Hz), 4.58(2H,q,J = 6.8 Hz), 7.24-7.26(1H,m),
7.56-7.60(4H,m), 7.68-7.72(1H,m), 8.00(1H,d,J = 6.4 Hz), 8.20-8.25(1H,m),
8.30-8.33(2H,m).
<実施例3> 5-ベンゾイルオキシ-1-エトキシイソキノリンの合成(C法)
【0045】
5-ベンゾイルオキシイソキノリン N-オキシド1.00 g(3.78 mmol)にエタノール10.0 mLを加え、氷水冷却撹拌下p-トルエンスルホニルクロリド1.08 g(5.68 mmol)を滴下した後、続いてトリエチルアミン1.10 mL(7.89 mmol)を加え、外温45℃の油浴上で2時間撹拌した。反応液に氷水冷却撹拌下、精製水15.0 mL及び酢酸エチル15.0 mLを加え、有機層を分取した。水層を酢酸エチルで抽出後、有機層を合一した。得られた有機層を食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。不溶物をろ別し、得られたろ液を減圧濃縮して褐色油状物を得た。得られた油状物にエタノール10.0 mL、アセトニトリル5.00 mLを加え常温撹拌下、精製水10.0 mLを加え、そのまま常温撹拌した。析出結晶をろ取し、エタノール10.0 mLの精製水10.0 mL溶液で洗浄後、50℃で4時間減圧乾燥して淡褐色粉末の標記化合物を543 mgを得た。
1H-NMR(CDCl3,400 MHz) δ:1.52(3H,t,J = 6.8 Hz), 4.58(2H,q,J = 6.8 Hz), 7.24-7.26(1H,m),
7.55-7.60(4H,m), 7.68-7.72(1H,m), 8.00(1H,d,J = 6.4 Hz), 8.21-8.25(1H,m),
8.30-8.33(2H,m).
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、優れたPARP阻害活性を有し、有望な医薬品として開発が進められている4-(4-ジアルキルアミノメチル)フェニル-5-ヒドロキシ-1-イソキノリノン誘導体の有用な製造中間体である1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体を短工程で収率良く得、操作性、経済性に優れた製造方法を提供する。これにより4-(4-ジアルキルアミノメチル)フェニル-5-ヒドロキシ-1-イソキノリノン誘導体を効率良く工業的スケールで製造し、提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Rは水酸基の保護基を示す。)
で表されるイソキノリン N-オキシド誘導体に一般式(II)
【化2】

(式中、Raは低級アルキルカルボニル基、低級アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールカルボニル基、低級アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を示し、Xは脱離基を示す。)
で表されるアシル化剤又はスルホン化剤と、一般式(III)
【化3】

(式中、R1は低級アルキル基又はアラルキル基を示す。)
で表されるアルコール体を反応させることを特徴とする一般式(IV)
【化4】

(式中、R及び R1は前記定義と同意義である。)
で表される1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体又はその水和物の製造方法。
【請求項2】
Rが低級アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、低級アルコキシカルボニル基又はアラルキルオキシカルボニル基であり、Raは低級アルキルカルボニル基、低級アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアリールスルホニル基である請求項1記載の1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体又はその水和物の製造方法。
【請求項3】
Rがアリールカルボニル基であり、Raは低級アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基又はアリールスルホニル基であり、R1は低級アルキル基である請求項1記載の1-アルコキシ-5-ヒドロキシイソキノリン誘導体又はその水和物の製造方法。

【公開番号】特開2007−297292(P2007−297292A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124635(P2006−124635)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【Fターム(参考)】