説明

1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとヨウ化メチルの共沸混合物様組成物

【課題】臭化メチルに代わる燻蒸剤であって、ドロップイン代替品としても機能でき、それによって既存の臭化メチル装置及びシステムの使用が可能になる燻蒸剤を提供する。
【解決手段】ヨウ化メチルと、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、所望により一種又は複数種のフルオロカーボン及び/又はハイドロフルオロカーボンとの混合物を含む共沸組成物又は共沸混合物様組成物。前記組成物は約30℃以下の温度で気体として存在する。組成物は、臭化メチルに代わって、様々な用途で有用な非オゾン層破壊性の気体状燻蒸剤として役立つ。これらの組成物は、気体状臭化メチルのドロップイン代替品として役立ち、ヨウ化メチル燻蒸剤の利益を提供すると同時に、既存の臭化メチル装置も利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書中に援用する2007年2月16日付けで出願された米国特許出願第11/707,498号の一部継続出願である。
本発明は燻蒸剤に関し、特に、臭化メチルと同様の性質を有しながら臭化メチルのオゾン層破壊性は持たない燻蒸剤組成物に関する。具体的には、本発明は、ヨウ化メチルと、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1233zd(E))と、所望により一種又は複数種のフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンとの共沸組成物又は共沸混合物様組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
臭化メチルは、1900年代初期から商業的に使用されている気体状燻蒸剤である。除草剤、抗線虫剤、殺虫剤及び殺真菌剤として極めて効果的であることが知られている。臭化メチルは、多数の作物に対する様々な害虫駆除のための土壌燻蒸用としてだけでなく、輸入品及び輸出品の商品検疫処理剤としても、建物表面に散布される構造物用燻蒸剤などとしても広く使用されている。
【0003】
しかしながら、臭化メチルは、散布者に対するその高い急性毒性のために制限使用農薬(RUP)である。臭化メチルはオゾン層破壊物質としても指定されているため、その生産及び使用はモントリオール議定書に従って厳しく制限されている。
【0004】
燻蒸剤として臭化メチルに代わる代替品又は置換品の開発に努力がなされてきた。現在、慣用的な臭化メチルの代替品は、クロロピクリン、1,3−ジクロロプロペン、メタムナトリウム(N−メチルジチオカルバミン酸ナトリウム)、及びヨウ化メチルなど、ごくわずかしか存在しない。臭化メチルと同様の製品を製造するためには、これらの物質のうち二種以上を混合物として適用するのが一般的である。しかしながら、これらの可能性ある代替品のどれ一つとして、それらの物理的取扱い要件、性能、又は経済性に基づくと、臭化メチルの適切な“ドロップイン代替品(drop-in replacement)”となっていない。“ドロップイン代替品”という用語は、代替品を用いる場合に原品の方法論、装置、製造システムなどを著しく変更する必要がなく、原品と同じ目的なら同等量の代替品を使用すればよい場合に使用される。
【0005】
臭化メチルのドロップイン代替品としてのヨウ化メチルを評価するのに多くの研究が実施されてきた。ヨウ化メチルは、雑草、線虫、及び土壌病原体の駆除に臭化メチルと同等又はそれ以上であることが見出されている。さらに、ヨウ化メチルはオゾン層破壊を伴わず、有効濃度で使用された場合に植物毒性をもたらさない。しかしながら、臭化メチルは周囲温度及び圧力で気体であるのに、ヨウ化メチルは沸点42.5℃(108°F)の低沸点液体である。ヨウ化メチルは臭化メチルより低い蒸気圧及び高い密度を有している。従って、既存の臭化メチル装置でヨウ化メチルを使用すると、管類の詰まり、システムパイプ内の残留物、及び清掃のための長いラインパージ法といったいくつかの欠点に苦しめられる。さらに、ヨウ化メチルの使用は、臭化メチル装置が気体状燻蒸剤散布用に設計されているので、適合しない床での散布(missed bed application)といった問題ももたらす。このような適合しない床での散布は、土壌燻蒸において著しい作物損失を引き起こしうる。従って、ヨウ化メチルは燻蒸剤として良く機能しうるが、臭化メチルの適切なドロップイン代替品ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
臭化メチルに代わる燻蒸剤であって、ドロップイン代替品としても機能でき、それによって既存の臭化メチル装置及びシステムの使用が可能になる燻蒸剤を提供することが望ましいであろう。本発明はこの問題に対する解決策を提供する。
【0007】
今回、ヨウ化メチルを1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1233zd(E))及び所望により一種又は複数種のフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンと組み合わせることにより、得られた共沸組成物又は共沸混合物様組成物は約30℃未満の温度で気体として存在することが思いがけず見出された。得られた気体状組成物は臭化メチルのドロップイン代替品として機能し、既存の臭化メチル装置も利用しながらヨウ化メチル燻蒸剤の利益を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ヨウ化メチルと、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、所望により一種又は複数種のフルオロカーボン及び/又はハイドロフルオロカーボンとの混合物を含み、約30℃以下の温度で気体である共沸組成物又は共沸混合物様組成物を提供する。
【0009】
本発明はさらに、
a)ヨウ化メチルと、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、所望により一種又は複数種のフルオロカーボン及び/又はハイドロフルオロカーボンとの混合物を含み、約30℃以下の温度で気体である共沸組成物又は共沸混合物様組成物を含む燻蒸剤を提供し;そして
b)前記燻蒸剤を燻蒸すべき材料に散布する
ことを含む燻蒸方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ヨウ化メチルと、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、所望により一種又は複数種のフルオロカーボン及び/又はハイドロフルオロカーボンとの混合物を含み、約30℃以下の温度で気体である共沸組成物又は共沸混合物様組成物に関する。
【0011】
本明細書において、“共沸混合物様”という用語は、広義には、厳密に共沸である組成物及び共沸混合物のように振舞う組成物の両方を含むものとする。基本原理からすると、流体の熱力学的状態は、圧力、温度、液組成、及び蒸気組成によって定義される。共沸混合物は、規定の圧力及び温度で液組成と蒸気組成が等しい二つ以上の成分の系である。実際には、このことは、共沸混合物の諸成分は定沸で、蒸留中に分離できないということを意味する。
【0012】
共沸混合物様組成物は定沸又は本質的に定沸である。言い換えると、共沸混合物様組成物の場合、沸騰又は蒸発(実質的に等圧条件下)中に形成される蒸気の組成は元の液組成と同一又は実質的に同一である。従って、沸騰又は蒸発により、液組成は、仮にあったとしても最小限度又は無視できる程度しか変化しない。このことは、沸騰又は蒸発中に液組成が相当程度変化する非共沸混合物様組成物とは対照的である。示された範囲内の本発明のすべての共沸混合物様組成物のほか、これらの範囲外のある種の組成物も共沸混合物様である。
【0013】
異なる圧力で、所定の共沸混合物の組成は、組成物の沸点と同様、少なくともわずかに変動することはよく知られている。従って、AとBの共沸混合物は、独自のタイプの関係を示すが、温度及び/又は圧力に応じて変動する組成を有する。つまり、共沸混合物様組成物の場合、これらの成分を変動する割合で含有する共沸混合物様の一連の組成物があるということになる。すべてのそのような組成物も、本明細書中で使用されている共沸混合物様という用語によってカバーされるものとする。
【0014】
前述のように、本発明は、ヨウ化メチルと、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、所望により一種又は複数種のフルオロカーボン及び/又はハイドロフルオロカーボンとの混合物を含む共沸組成物又は共沸混合物様組成物を提供する。ヨウ化メチルは、ヨードメタンとしても知られ、一般的に“MeI”と省略され、式CHIを有する。ヨウ化メチルは、約42.5℃の沸点と約2.3g/ccの密度を有する。ヨウ化メチルは従来、有用な燻蒸剤として知られており、本発明の組成物においてもこの目的を果たす。ヨウ化メチルの更なる利益はオゾン層破壊に関係しないことである。
【0015】
フルオロカーボンは、本明細書中では、少なくとも1個の付加フッ素基を有する任意の炭素分子と定義される。ハイドロフルオロカーボンは本発明において特に有用である。本特許請求の範囲では、本発明の組成物は所望により少なくとも一種のフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンを含むことを要求している。HFO−1233zd(E)及び所望による少なくとも一種のフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンは本発明の組成物の総容量を増加させるので、組成物の散布が促進され、所定容量のヨウ化メチルが、それを接触させる材料に暴露される時間が増加する。さらに、HFO−1233zd(E)及び所望による少なくとも一種のフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンは、本発明の組成物のより均一で容易に制御された散布を可能にする。その上、HFO−1233zd(E)及び所望による少なくとも一種のフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンは、組成物の非毒性部分として機能するので、作業者の毒物への暴露を削減する。
【0016】
いくつかの異なるフルオロカーボン及びハイドロフルオロカーボンが本発明に従って形成される組成物に使用するのに適切であり得る。本発明で使用するのに適切なフルオロカーボンの例は、非排他的に、HFO−1233zd(Z)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFC−1233xd);2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン(HCFC−123);1,1,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル(HFE−245);及びシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)などである。本発明で使用するのに適切なハイドロフルオロカーボンの例は、非排他的に、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa);1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365);1,2−ジフルオロエタン(HFC−152);1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロパン(245ca);及び1,2,2−トリフルオロエタン(HFC−143)などである。好適な炭化水素は1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)で、これは不燃性及び非毒性化合物で、オゾン層破壊係数はゼロである。ヨウ化メチルとHFO−1233zd(Z)は、臭化メチルのいくつかの物理的性質(例えば比重及び密度)によく似た共沸混合物を形成することが思いがけず見出された。また、ヨウ化メチル;HFO−1233zd(Z);並びに1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa);1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365)及びシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)の少なくとも一種は、臭化メチルの性質に似た共沸混合物を形成することも見出された。好適な態様において、所望によるフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンは、約0℃〜約50℃の沸点を有する。
【0017】
好適な態様において、HFO−1233zd(E)及び所望によるフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンは、平均オゾン層破壊係数(ODP)が約0.05以下、好ましくは約ゼロである。ある化学化合物のオゾン層破壊係数(ODP)は、オゾン層に対してそれが引き起こしうる相対的分解量であり、トリクロロフルオロメタン(R−11)がODP 1.0に固定されている。例えば、クロロジフルオロメタン(R−22)は、0.05のODPを有する。
【0018】
さらに好適な態様において、HFO−1233zd(E)及び所望によるフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンは、100年地球温暖化係数(GWP)が約1,000以下、好ましくは20以下である。地球温暖化係数(GWP)は、所定質量の温室効果ガスがどのくらい地球温暖化に寄与しているかの尺度である。これは、問題のガスを同じ質量の二酸化炭素と比べた相対尺度で、二酸化炭素のGWPは定義により1とされている。GWPは特定の期間にわたって計算され、この値はGWPを引用するときはいつでも記載されなければならない。今日使用されている最も一般的な期間は100年である。
【0019】
本発明の組成物は、有効量のヨウ化メチル;HFO−1233zd(E)及び所望によるフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンを含む。本明細書中において“有効量”という用語は各成分の量を指すが、その各成分とは他の成分(一種又は複数種)と組み合わせると今回特許請求している共沸組成物又は共沸混合物様組成物の形成をもたらす成分のことである。ヨウ化メチルは、好ましくは本発明の組成物中に、組成物の約0.3〜約50重量パーセント、さらに好ましくは約1〜約30重量パーセント、最も好ましくは約2〜約10重量パーセントの量で存在する。
【0020】
本発明の組成物が所望によるフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンを何ら含有しない場合、HFO−1233zd(E)は、好ましくは組成物中に、組成物の約50〜約99.7重量パーセント、さらに好ましくは組成物の約70〜約99重量パーセント、最も好ましくは組成物の約90〜約98重量パーセントの量で存在する。
【0021】
本発明の組成物が所望によるフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンを含有する場合、HFO−1233zd(E)は、好ましくは組成物中に、組成物の約10〜約98.7重量パーセント、さらに好ましくは組成物の約35〜約94重量パーセント、最も好ましくは組成物の約60〜約88重量パーセントの量で存在する。この場合、フルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンは、好ましくは組成物中に、組成物の約1〜約40重量パーセント、さらに好ましくは組成物の約5〜約35重量パーセント、最も好ましくは組成物の約10〜約30重量パーセントの量で存在する。
【0022】
一態様において、本発明の組成物は、二成分系共沸組成物又は共沸混合物様組成物の形態で存在可能であり、該組成物は本質的にヨウ化メチル及びHFO−1233zd(E)からなる。別の態様において、本発明の組成物は、共沸組成物又は共沸混合物様組成物の形態で存在可能であり、該組成物は本質的にヨウ化メチル、HFO−1233zd(E)及び少なくとも一種のフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンからなる。
【0023】
本発明の燻蒸剤組成物は、所望により追加の成分又は添加剤を含んでいてもよい。本組成物のための適切な添加剤は、非排他的に、クロロピクリン、アクロレイン、1,3−ジクロロプロペン、ジメチルジスルフィド、フルフラール、及びプロピレンオキシドなどである。一種の好適な添加剤はクロロピクリンを含む。燻蒸剤組成物に含まれる所望による添加剤は、約0wt%〜約40wt%、好ましくは約0.5wt%〜約5wt%、さらに好ましくは約1wt%〜約3wt%の量で存在しうる。例えば、一つの好適な態様において、本発明の燻蒸剤組成物は33%のヨウ化メチル、33%のHFO−1233zd(E)、及び33%のクロロピクリンを含む。
【0024】
ヨウ化メチル、HFO−1233zd(E)、所望による少なくとも一種のフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボン、及び任意の所望による添加剤は、全成分の実質的に均一な混合物をもたらす任意の従来手段を用いて組み合わせることができる。組み合わせた場合、本発明の混合物は、好ましくは、約30℃以下の温度で気体の形態で存在する共沸組成物又は共沸混合物様組成物を形成する。
【0025】
本発明の組成物は、該組成物が室温で気体状態で散布でき、気体散布用に設計された臭化メチル装置システムを利用できるように、好ましくは、約30℃以下、ある態様においては好ましくは約25℃以下の温度で気体の形態で存在する。好適な態様において、本発明の組成物は、14.4psiaの圧力で約17℃〜約20℃、さらに好ましくは約17.5℃〜約18.5℃、最も好ましくは約17.7℃〜約18℃の範囲の沸点を有する。
【0026】
本発明の組成物は、該組成物が臭化メチル装置システムで詰まりなどを起こさずに使用されることを可能にする特別の密度を示すのが好ましい。好適な態様において、本発明の組成物は、20℃で約1.6g/cc〜約2.4g/cc、さらに好ましくは約1.7g/cc〜約2.2g/cc、最も好ましくは約1.6g/cc〜約2.0g/ccの密度を有する。
【0027】
本発明の組成物は様々な用途に使用できる。これらの組成物は燻蒸剤として又は燻蒸剤の成分としての使用に特に適している。本発明の組成物の燻蒸用途の例は、非排他的に、昆虫、シロアリ、齧歯類、雑草、線虫、及び土壌媒介病の駆除を含む。該組成物はさらに、農産物、穀物倉庫、ミル、船舶、衣類、家具、温室の燻蒸、及び建物の害虫駆除(構造物燻蒸)などにも使用できる。
【0028】
本発明の組成物は、好ましくは、臭化メチル用に設計された既存の燻蒸パイプ及びシステムを通じて汲み上げられる。本発明の気体状組成物は、液体ヨウ化メチルに通常付随する管類の詰まり、化学薬品の貯留堆積物の問題を排除し、システムから容易にパージできる。実際、ヨウ化メチルの適合しない床での散布という特別の困難は、本発明の共沸組成物又は共沸混合物様組成物が臭化メチルのように周囲温度で気体として存在し、既存の臭化メチルシステムの散布管類を容易に通過するので、もはや問題ではない。さらに、本発明の共沸組成物又は共沸混合物様組成物は、臭化メチルと非常に類似した環境効果及び活性スペクトルを有しながら、低いオゾン層破壊能力しか示さない。このように、本発明の組成物は、臭化メチルのドロップイン代替品として効果的に機能する。
【0029】
本発明はさらに燻蒸方法にも関する。この方法に従って、ヨウ化メチルと、HFO−1233zd(E)と、少なくとも一種のフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンとの混合物を含み、約30℃以下の温度で気体である共沸組成物又は共沸混合物様組成物を含む燻蒸剤を提供する。該燻蒸剤は好ましくは、上で詳細に説明した共沸組成物又は共沸混合物様組成物を含むか、又は本質的に共沸組成物又は共沸混合物様組成物からなる。次に、該燻蒸剤を燻蒸すべき材料に、好ましくは気体の形態で散布する。好適な態様において、燻蒸剤の散布は約0℃〜約50℃の周囲温度で実施される。燻蒸剤は、上記のような様々な燻蒸用途において、様々に異なる燻蒸すべき材料に散布できる。一つの好適な態様において、燻蒸剤は土壌に散布される。更なる好適な態様において、燻蒸剤は木材に散布される。なお別の好適な態様において、燻蒸剤は建物表面に散布される。
【0030】
以下の非限定的な実施例は本発明を例示する役割を果たす。本発明の成分の割合における変動及び構成要素における代替は、当業者には明らかであり、本発明の範囲内に含まれることは理解されるであろう。
【実施例】
【0031】
実施例1
上部に凝縮器を備えた真空ジャケット付き管で構成され、さらに水晶温度計も備えたエブリオメーター(ebulliometer)を使用した。約20gのHFO−1233zd(E)をエブリオメーターに入れ、次にヨウ化メチルを14.4psia(9.93×10Pa)の大気圧で少量ずつ、測定された増分で加えていった。ヨウ化メチルをHFO−1233zd(E)に加えると温度降下が観察され、二成分系の最低沸点共沸混合物が形成されたことが示された。ヨウ化メチルが0を超えて約30重量%までは、組成物の沸点の変化は約0.5℃未満で、沸点曲線における極小値は2〜6wt%のCHIの辺りである。従って、組成物はこれらの範囲で共沸混合物及び/又は共沸混合物様性質を示した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例2
本発明に従って、ヨウ化メチルとHFO−1233zd(E)を組み合わせ、共沸混合物又は共沸混合物様組成物を形成する。土壌への植え付け前に該組成物を燻蒸剤として田畑に散布する。散布は、土壌全体に引きまわしたシャンク搭載管を通じて注入することによって行う。その後土壌をプラスチックフィルムで覆う。燻蒸剤は、土壌中に見出される何らかの病気及び害虫を土壌から駆除するのに足る散布速度で散布する。燻蒸剤の散布後、土壌は燻蒸剤が土壌からすべての有害生物を駆除するのに足る時間静置される。土壌への散布には土壌条件に対する注意も含まれる。例えば、高い水分含有量、深さ20cm/8インチにおける土壌温度13℃/55°F未満、及び/又は植物/雑草ゴミを多く含有する土塊などである。処理された田畑は、植え付けの時間間隔の経過後、植え付けできる。
実施例3
本発明に従って、ヨウ化メチル、HFO−1233zd(E)、及びクロロピクリンを組み合わせ、共沸混合物又は共沸混合物様組成物を形成する。土壌への植え付け前に該組成物を燻蒸剤として田畑に散布する。散布は、土壌全体に引きまわしたシャンク搭載管を通じて注入することによって行う。その後土壌をプラスチックフィルムで覆う。燻蒸剤は、土壌中に見出される何らかの病気及び害虫を土壌から駆除するのに足る散布速度で散布する。燻蒸剤の散布後、土壌は燻蒸剤が土壌からすべての有害生物を駆除するのに足る時間静置される。土壌への散布には土壌条件に対する注意も含まれる。例えば、高い水分含有量、深さ20cm/8インチにおける土壌温度13℃/55°F未満、及び/又は植物/雑草ゴミを多く含有する土塊などである。処理された田畑は、植え付けの時間間隔の経過後、植え付けできる。
実施例4
本発明に従って、ヨウ化メチルとHFO−1233zd(E)を組み合わせ、共沸混合物又は共沸混合物様組成物を形成する。土壌への植え付け前に該組成物を燻蒸剤として田畑に散布する。散布は、プラスチックの防水シート下、水に入れてドリップ灌漑システムを通じて行う。燻蒸剤は、土壌中に見出される何らかの病気及び害虫を土壌から駆除処理するのに足る散布速度で散布する。燻蒸剤の散布後、土壌は燻蒸剤が土壌からすべての有害生物を駆除するのに足る時間静置されなければならない。土壌への散布には土壌条件に対する注意も含まれる。例えば、高い水分含有量、深さ20cm/8インチにおける土壌温度13℃/55°F未満、及び/又は植物/雑草ゴミを多く含有する土塊などである。処理された田畑は、植え付けの時間間隔の経過後、植え付けできる。
実施例5
本発明に従って、ヨウ化メチル、HFO−1233zd(E)、及びクロロピクリンを組み合わせ、共沸混合物又は共沸混合物様組成物を形成する。土壌への植え付け前に該組成物を燻蒸剤として田畑に散布する。散布は、プラスチックの防水シート下、水に入れてドリップ灌漑システムを通じて行う。燻蒸剤は、土壌中に見出される何らかの病気及び害虫を土壌から駆除処理するのに足る散布速度で散布する。燻蒸剤の散布後、土壌は燻蒸剤が土壌からすべての有害生物を駆除するのに足る時間静置されなければならない。土壌への散布には土壌条件に対する注意も含まれる。例えば、高い水分含有量、深さ20cm/8インチにおける土壌温度13℃/55°F未満、及び/又は植物/雑草ゴミを多く含有する土塊などである。処理された田畑は、植え付けの時間間隔の経過後、植え付けできる。
実施例6
本実施例は構造物燻蒸方法に関する。構造物燻蒸の前に、すべての直火及び白熱フィラメントはスイッチ又は接続を切る。本発明に従って、ヨウ化メチルとHFO−1233zd(E)を組み合わせ、共沸混合物又は共沸混合物様組成物を形成する。防水シートをかけた又は密閉した構造物に、該組成物を燻蒸剤として構造物からすべての有害生物を駆除するのに必要な暴露時間散布し、その後、未使用の燻蒸剤及び何らかの警告ガスを構造物から吹き飛ばすのに十分長い通風時間を置く。ヨウ化メチル/HFO−1233zd(E)混合物は無臭で眼や皮膚も刺激しないので、微量の警告剤(例えばクロロピクリン)を、警告剤として働かせるために燻蒸前に構造物に導入する。燻蒸剤の必要量は、害虫の場所の温度、暴露時間の長さ、封じ込め又は燻蒸剤が構造物から失われる速度、及び駆除される害虫の感受性によって影響される。
【0034】
本発明を好適な態様を参照しながら特定的に示し、記載してきたが、当業者であれば本発明の精神及び範囲から逸脱することなく多様な変更及び修飾をなしうることは容易に分かるであろう。特許請求の範囲は、開示された態様、これまでに議論してきた代替物及びそれらのすべての均等物をカバーすると解釈すべきであると意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ化メチルと、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、所望により一種又は複数種のフルオロカーボン及び/又はハイドロフルオロカーボンとの混合物を含む共沸組成物又は共沸混合物様組成物であって、約30℃以下の温度で気体である前記共沸組成物又は共沸混合物様組成物。
【請求項2】
請求項1の組成物を含む燻蒸剤であって、前記組成物は、約0.3〜約50重量パーセントのヨウ化メチル、約10〜約98.7重量パーセントの1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、及び約1〜約40重量パーセントの少なくとも一種のフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンを含み、約1.6g/cc〜約2.4g/ccの密度であり、前記組成物の少なくとも一種のフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンは、約0.05以下の平均オゾン層破壊係数、及び約1,000以下の100年地球温暖化係数を有する、前記燻蒸剤。
【請求項3】
クロロピクリン、アクロレイン、1,3−ジクロロプロペン、ジメチルジスルフィド、フルフラール、及びプロピレンオキシドのうち少なくとも一種をさらに含む、請求項2に記載の燻蒸剤。
【請求項4】
a)ヨウ化メチルと、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、所望により一種又は複数種のフルオロカーボン及び/又はハイドロフルオロカーボンとの混合物を含み、約30℃以下の温度で気体である共沸組成物又は共沸混合物様組成物を含む燻蒸剤を提供すること;および
b)前記燻蒸剤を燻蒸すべき材料に適用すること
を含む燻蒸方法。

【公開番号】特開2010−106021(P2010−106021A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−245578(P2009−245578)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】