説明

1−フェニル−3−ジメチルアミノメチルシクロヘキサン化合物を抑うつ症状、苦痛及び尿失禁の治療に使用する方法

本発明は、遊離塩基として及び(又は)生理学的に許容し得る塩の形にある、[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミンの代謝物, 対応する医薬並びに[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン及びその代謝物をうつ病の治療用医薬の製造に使用する方法及びうつ病の治療法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離塩基として及び(又は)生理学的に許容し得る塩の形にある、[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミンの代謝物, 対応する医薬並びに[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン及びその代謝物をうつ病の治療用医薬の製造に使用する方法及びうつ病の治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
うつ病は、抑うつ性症候群が問題となる情動障害である。この際、これは不機嫌に気が滅入るか又は悲しい気分になることである。治療に使用される抗うつ剤は、特に慢性苦痛状態での苦痛治療に対する重要な佐薬でもある(非特許文献1) 。というのは持続する苦痛ストレスが患者に抑うつ的不機嫌をもたらしうるからである。このことは特に癌-苦痛患者にしばしばあてはまる(非特許文献2)。従来、臨床的に重要な抗うつ性有効成分を有する鎮痛剤が存在しないので、抗うつ薬を鎮痛剤-投与への補充薬物として追加しなければならない。慢性苦痛患者は多数の異なる医薬を必要とするので、抗うつ薬の追加投与が生体に別のストレスをもたらす。この理由から及びコンプライアンスの改善のために、鎮痛物質中にすでに存在する抑うつ性有効成分が特に有利であると考えられる。
【0003】
抗うつ作用の基本は、ノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込み阻害である。適度の取り込み阻害作用のオピオイド、たとえばトラマドールは長い間知られており、したがって僅かな嗜癖- 及び依存性ポテンシャルを有する有効な鎮痛薬として治療に使用されいる (非特許文献3)。しかしその取り込み阻害成分は、臨床上適切な抗うつ作用を生じさせるには極めて不十分である。
【0004】
退行性苦痛阻害路が脊髄の領域で活性化されるので、本来の抗うつ作用と共に、ノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込み阻害は独立した鎮痛作用ももたらす。同様に脊髄の領域で苦痛の別回路を阻害するオピエートを組み合わせて、これは苦痛阻害メカニズムの相互の相乗作用を生じ、そして同時に特定の有効な鎮痛剤をもたらす。
【0005】
したがって、これらの適応症で, 特にうつ病の治療で、まさに苦痛治療と組み合わせて、すなわちオピオイド物質と、抗うつ効果を示す(たとえば適当な動物実験の挙動モデルで確認される)比較的に強いNA- 及び(又は) 5HT-取り込み阻害成分の組み合わせて特に有利である。
【非特許文献1】R. van Schayck等、1998, MMP, 10, 304-313; Jung等、 1997, J.Gen.Intern.Med.12, 384-389; Onghena and Van Houdenhove 1992, Pain, 49, 205-219; Feuerstein 1997, Diagnostik und Therapie, 3, 213-225; Rowbotham 1997, The Pain Medicine Journal Club Journal, 3, 119-122。
【非特許文献2】Berard 1996, Int.Med.J., 3, 257-259。
【非特許文献3】Raffa等、1992, Journal of Pharmacology and experimental Therapeutics, 260, 275-285; Raffa and Friderichs 1996, Pain Review, 3, 249-271。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、うつ病の治療に適し、特にこの効果と鎮痛効果を一緒に有する物質, 特にオピオイド物質を見出した。
【0007】
驚くべきことに、本発明者は、2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル)-ジメチルアミン及びその代謝物並びにその際特に3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノールが治療に適切な抗うつ有効成分であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の対象は、
場合によりラセミ化合物, 純粋な立体異性体, 特に対掌体又はジアステレオマーの形に, 又は任意の混合割合で立体異性体、特に対掌体又はジアステレオマーの混合物の形に;
示された形に又はその酸又はその塩基の形に又はその塩, 特にその生理学的に許容し得る塩の形に,又はその溶媒和、特にその水和物の形にある、
・ 3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ (1R,2R)- 3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン,
・ (1R, 2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン,
・ 硫酸モノ-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステル,
・ 硫酸モノ-(1R,2R)-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステル,
・ 3-(2-メチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ (1R,2R)-3-(2-メチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ 3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシド,
・ (1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシド,
・ 6-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸,
・ 6-[(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸,
・ 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-カテコール,
・ (1R,2R)-4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-カテコール,
・ 3-(2-アミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ (1R,2R)-3-(2-アミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-ベンゼン-1,2-ジオール,
・ (1R,2R)- 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-ベンゼン-1,2-ジオール,
・ C-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシル]-メチルアミン,
・ (1R,2R)-C-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシル]-メチルアミン,
・ [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチル-アミン,
・ (1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチル-アミン,
・ [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシド 又は
・ (1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシド
をうつ病の治療用医薬の製造に使用する方法である。
【0009】
使用される化合物が、R, R, 好ましくは1R, 2R 立体異性体として存在する場合、特に好ましい。
【0010】
“塩”なる用語は、本発明の有効物質のあらゆる形態を意味し、この際これはイオン形をとるか又は荷電され、対向イオン(カチオン又はアニオン)とカップリングするか又は溶解された状態にある。この用語は有効物質と他の分子及びイオンの錯体、特にイオン相互作用を経て錯化された錯体を含むと解される。特に、生理学的に許容し得る塩(これは本発明の好ましい実施態様形でもある)、特にカチオン又は塩基との生理学的に許容し得る塩及びアニオン又は酸との生理学的に許容し得る塩あるいは生理学的に許容し得る酸又は生理学的に許容し得るカチオンと共に形成される塩を意味する。
【0011】
使用される化合物の好ましい塩は塩酸塩である。
【0012】
“生理学的に許容し得る”とは、物質、特に塩それ自体をヒト又は哺乳類に使用した場合許容し得る、すなわち非生理学的(たとえば有害)に作用しないことを意味しなければならない。
【0013】
アニオン又は酸との生理学的に許容し得る塩の概念は、本発明の範囲においてカチオンとして少なくとも1種の本発明の化合物 ------- ほとんど、たとえば窒素がプロトン化されている ------- と少なくとも1種のアニオンとの塩を意味し、これは生理学的に ---- 特にヒト及び(又は)哺乳類に使用した場合 ----- 許容し得る。特にこれは本発明の範囲において生理学的に許容し得る酸と共に形成される塩、すなわちそれぞれの有効物質と無機酸又は有機酸との塩を意味し、これは生理学的に ------- 特にヒト及び(又は)哺乳類に使用した場合 ------ 許容し得る。特定の酸の生理学的に許容し得る塩の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、グルタミン酸、1,1−ジオキソ−1,2−ジヒドロ1b6−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−オン(サッカリン酸)、モノメチルセバシン酸、5−オキソ−プロリン、ヘキサン−1−スルホン酸、ニコチン酸、2−、3−又は4−アミノ安息香酸、2,4,6−トリメチル安息香酸、a−リポン酸、アセチルグリシン、アセチルサリチル酸、馬尿酸及び(又は)又はアスパラギン酸の塩である。塩酸塩が特に好ましい。
【0014】
生理学的に許容し得る酸と共に形成される塩の概念は、本発明の範囲においてそれぞれの有効物質と無機酸又有機酸との塩を意味し、これは生理学的に ------- 特にヒト及び(又は)哺乳類に使用した場合 ----- 許容し得る。塩酸塩が特に好ましい。生理学的に許容し得る酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、マンデル酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、グルタミン酸、1,1−ジオキソ−1,2−ジヒドロ1λ6−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−オン(サッカリン酸)、モノメチルセバシン酸、5−オキソ−プロリン、ヘキサン−1−スルホン酸、ニコチン酸、2−、3−又は4−アミノ安息香酸、2,4,6−トリメチル安息香酸、a−リポン酸、アセチルグリシン、アセチルサリチル酸、馬尿酸及び(又は)又はアスパラギン酸である。
【0015】
カチオン又は塩基との生理学的に許容し得る塩の概念は、本発明の範囲においてアニオンとして少なくとも1種の本発明の化合物[大抵(脱プロトン化された)酸]と少なくとも1種のカチオン、好ましくは無機のカチオンとの塩を意味し、これは生理学的に ------- 特にヒト及び(又は)哺乳類に使用した場合 --------- 許容し得る。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩、しかもまたNH4+との塩、特に(モノ−)又は(ジ−)ナトリウム塩、(モノ−)又は(ジ−)カリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩が特に好ましい。
【0016】
生理学的に許容し得るカチオンと共に形成される塩の概念は、本発明の範囲においてアニオンとして少なくとも1種のそれぞれ化合物と少なくとも1種のカチオン、好ましくは無機のカチオンとの塩を意味し、これは生理学的に-------- 特にヒト及び(又は)哺乳類に使用した場合 -------- 許容し得る。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩、しかもまたNH4+との塩、特に(モノ−)又は(ジ−)ナトリウム塩、(モノ−)又は(ジ−)カリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩が特に好ましい。塩酸塩が特に好ましい。
【0017】
本発明の研究によれば、使用される物質及び特に(1R,2R)- 3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノールは強力な鎮痛薬及び抗うつ剤であって, したがって付加的に及び臨床上適切な抗うつ有効成分である。特に(1R,2R)- 3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール は 穏やかないし強い急性及び慢性苦痛で使用することができ、慢性苦痛で抑うつ性随伴症状の治療を可能にする。したがってこの化合物は慢性苦痛の治療に明らかな改善をもたらす。というのは従来、抗うつ剤が付加的な薬剤として苦痛治療のこの化合物に加えなければならなかったからである。(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール及びその他の本発明にしたがって使用される物質は、その鎮痛作用に関係なく本来の抗うつ剤としても使用することができる。
【0018】
本発明の別の対象は、特に、場合によりラセミ化合物, 純粋な立体異性体, 特に対掌体又はジアステレオマーの形に, 又は任意の混合割合で立体異性体、特に対掌体又はジアステレオマーの混合物の形に;
示された形に又はその酸又はその塩基の形に又はその塩, 特にその生理学的に許容し得る塩の形に,又はその溶媒和、特にその水和物の形にある、
・ 硫酸モノ-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステル,
・ 硫酸モノ-(1R,2R)-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステル,
・ 3-(2-メチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ (1R,2R)-3-(2-メチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ 3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシド,
・ (1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシド,
・ 6-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸,
・ 6-[(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸,
・ 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-カテコール,
・ (1R,2R)-4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-カテコール,
・ 3-(2-アミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ (1R,2R)-3-(2-アミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-ベンゼン-1,2-ジオール,
・ (1R,2R)- 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-ベンゼン-1,2-ジオール,
・ C-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシル]-メチルアミン,
・ (1R,2R)-C-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシル]-メチルアミン,
・ [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチル-アミン,
・ (1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチル-アミン,
・ [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシド 又は
・ (1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシド;
から選ばれる[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン 又は3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノールの代謝物である。
【0019】
R, R, 好ましくは1R, 2R 立体異性体として存在する本発明の代謝物が、特に好ましい。
【0020】
本発明の代謝物は有害でない。したがって本発明の別の対象は、有効物質として少なくとも1種の本発明の代謝物及び場合により添加物及び(又は)助剤を含む。特に、本発明の対応する対象は、有効物質として、場合によりラセミ化合物, 純粋な立体異性体, 特に対掌体又はジアステレオマーの形に, 又は任意の混合割合で立体異性体、特に対掌体又はジアステレオマーの混合物の形に;
示された形に又はその酸又はその塩基の形に又はその塩, 特にその生理学的に許容し得る塩の形に,又はその溶媒和、特にその水和物の形にある、
・ 硫酸モノ-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステル,
・ 硫酸モノ-(1R,2R)-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステル,
・ 3-(2-メチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ (1R,2R)-3-(2-メチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ 3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシド,
・ (1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシド,
・ 6-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸,
・ 6-[(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸,
・ 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-カテコール,
・ (1R,2R)-4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-カテコール,
・ 3-(2-アミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ (1R,2R)-3-(2-アミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-ベンゼン-1,2-ジオール,
・ (1R,2R)- 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-ベンゼン-1,2-ジオール,
・ C-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシル]-メチルアミン,
・ (1R,2R)-C-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシル]-メチルアミン,
・ [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチル-アミン,
・ (1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチル-アミン,
・ [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシド 又は
(1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシド;
から選ばれる化合物少なくとも1種及び場合により添加物及び(又は) 助剤を含む医薬である。
【0021】
得られた化合物がR, R, 好ましくは1R, 2R 立体異性体として存在する場合、特に好ましい。
【0022】
本発明の範囲の適当な添加物及び(又は)助剤は、当業者にとって公知技術から周知の、ガレヌス製剤を得るための物質である。これらの助剤の選択及びその使用量は、医薬が経口、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻腔内、バッカル又は局所に投与されねばならないかどうかによる。経口投与に、錠剤、咀嚼錠、糖衣丸、カプセル、顆粒、滴剤、液剤又はシロップの形の製剤、腸管外、外用及び吸入投与に、溶液、懸濁液、容易に再構成される乾燥製剤及びスプレーの形の製剤が適する。その他の可能性は、直腸投与用座剤である。溶解された形で、キャリヤーホイルの形で又は場合により主な浸透を促進する剤の添加下に硬膏剤の形でのデポ製剤の形の使用は、適する経皮適用製剤に対する例である。経口投与用助剤及び添加物は、たとえば崩壊剤、滑沢剤、結合剤、増量剤、離型剤、場合により溶剤、風味物質、糖、特にキャリヤー、希釈剤、染料、保存剤等である。座剤に対しては、特にロウ又は脂肪酸及び腸管外投与剤に対してはキャリヤー、保存剤、懸濁助剤等を使用することができる。患者に投与すべき有効量は、患者の体重、投与の種類及び病気の重さの度合にしたがって変化する。経口、直腸又は経皮から使用可能な製剤形は本発明の化合物を遅延させて遊離することができる。本発明の適応症(indication)において、特に“1日1回”調合物の形(1日1回しか服用する必要がない)での対応する徐放性製剤が特に好ましい。
【0023】
更に、少なくとも0,05 〜 90,0 %の有効物質を含有する医薬、特に副作用又は鎮痛作用を回避するために低い有効薬用量を含有する医薬が好ましい。通常、本発明にしたがって使用される化合物少なくとも1つを体重1kgあたり0,1 〜 5000 mg, 特に1 〜 500 mg, 好ましくは2 〜250 mg投与する。しかしまた体重1kgあたり0,01 〜 5 mg、特に0,03 〜 2 mg、好ましくは0,05 〜 1 mg投与するのが同様に好ましくかつ通常である。
【0024】
助剤はたとえば:水、エタノール、2−プロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グルコース、フルクトース、ラクトース、サッカロース、デキストロース、メラース(melasse) 、デンプン、化工デンプン、ゼラチン、ソルビトール、イノシトール、マンニトール、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、シェラック、セチルアルコール、ポリビニルピロリドン、パラフィン、ロウ、天然及び合成ゴム、アラビアゴム、アルギナート、デキストラン、飽和及び不飽和脂肪酸、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、食用油、ゴマ油、ヤシ油、ピーナッツ油、大豆油、レシチン、乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−及び−プロピレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビン酸、安息香酸、クエン酸、アスコルビン酸、タンニン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化チタン、二酸化チタン、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸カルシウム、炭酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、タルク、カオリン、ペクチン、クロスポビドン、寒天及びベントナイトであってよい。
【0025】
本発明の医薬及び薬学的調合物の製造は薬学的調合物の技術分野で周知の手段、装置、方法及び処理を用いて行われる。たとえばこれは“Remington's Pharmaceutical Sciences ”, Hrsg. A.R. Gennaro, 17. Ed., Mack Publishing Company,Easton, Pa. (1985), 特にTeil 8, Kapitel 76-93 に記載されている。
【0026】
たとえば固形製剤、たとえば錠剤に関して、医薬有効物質を医薬用担体、たとえば慣用の錠剤賦形剤、たとえばトウモロコシデンプン、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム又は薬学的に許容し得るゴム(gummi)、及び医薬用希釈剤、たとえば水と共に顆粒化して、有効物質を均一に分散して含有する固形の調合物を生じさせる。この場合均一な分散とは、有効物質を均一に調合物全体にわたって分散することを意味するので、この調合物をそのまま同様に有効な単位投薬形、たとえば錠剤、ピル又はカプセルに小分けすることができる。ついで固形の調合物を単位投薬形に小分けする。本発明の医薬又は本発明の調合物の錠剤又はピルは遅延された遊離の投薬形を調製するために積層されるか又は別の方法で配合されていてもよい。適当な積層剤は特にポリマー酸及びポリマー酸と材料、たとえばシェラック、セチルアルコール及び(又は)セルロースアセテートとの混合物である。
【0027】
本発明の医薬がほんの僅かな副作用しか示さない場合でも、たとえば依存性の特定の形態を回避するために、本発明の化合物と共にまたモルフィンアンタゴニスト、特にナロキソン、ナルトレキソン及び(又は)レバロルファンを使用するのも有利である。
【0028】
本発明の化合物は上述のように鎮痛に有効であるので、本発明の別の対象は本発明の化合物又は本発明の代謝物を苦痛、特に急性苦痛、内臓性苦痛, 慢性苦痛,又は神経障害性苦痛又は癌苦痛の治療用医薬の製造に使用する方法である。
【0029】
更に、本発明の化合物は、尿失禁で効果を示すので、本発明の別の対象は本発明の化合物又は本発明の代謝物を増加した尿意又は尿失禁の治療用医薬の製造に使用する方法である。
【0030】
この化合物は、更に優れた鎮痛薬であって、したがって本発明の別の対象は また、本発明は、本発明の化合物が使用される、増加した尿意又は尿失禁あるいは苦痛の治療方法にも関する。
【0031】
更に、本発明は、本発明にしたがって使用される化合物を使用する、うつ病の治療方法にも関する。
【0032】
同様に、本発明は、本発明の化合物又は代謝物を使用する、苦痛、特に急性苦痛, 内臓性苦痛, 慢性苦痛又は神経障害性苦痛又は癌苦痛の治療方法にも関する。
【0033】
同様に、本発明は、本発明の化合物又は代謝物を使用する、増加した尿意又は尿失禁の治療方法にも関する。
【0034】
2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル)-ジメチルアミン及び (1R, 2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン] 及びその製造は、ドイツ特許公開第195 25 137 (A1)号公報の例8 又は米国特許第5,733,936号明細書の例8 から公知である。この場合、化合物(-6) の絶対立体化学(die absolute Stereochemie)は、例 8にしたがって十分に適切に(1R,2R)を製造し、(1R,2S)を製造しない。3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール又は (1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール及びその製造も、ドイツ特許公開第195 25 137 (A1)号公報の例10 又は米国特許第5,733,936号明細書の例10から公知である。 この場合、化合物(-7) の絶対立体化学は例10にしたがって(1R,2R) を製造し、(1R,2S) を製造しない。
【0035】
その製造方法がドイツ特許公開第195 25 137 (A1)号公報又は米国特許第5,733,936号明細書からまだ公知でない化合物を実施例にしたがって製造した。
【実施例】
【0036】
以下に例によって本発明及び好ましい実施態様を説明するが、本発明の対象はこれに限定されない。
【0037】
一般に精製及び対掌体分離を、すべての例として挙げた方法で種々の工程でカラムクロマトグラフィー及び主にHPLCを用いて行う。
【0038】
例 1: (1R, 2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチルアミン, 塩酸塩の製造
[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチルアミン, 又は (1R, 2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチルアミン, 特にその塩酸塩を次のように製造した:
遊離塩基としての5,67 g (22,9 mmol)の(1R, 2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミンを、389,64 mlのトルエン中で 3,16 ml (25,2 mmol)のフェニルクロロホルマートと共に3時間加熱した。冷却し、洗浄後、有機残留物を蒸発させ、192,53 ml のエチレングリコール及び全体で 45,84 mlの 5N NaOH と共に全体で8,5時間、時折冷却下で110°Cで攪拌した。(1R, 2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチルアミンが生じた。 これを後処理し、TMCSを用いて塩酸塩として沈殿させた。
【0039】
例 2: (1R,2R)-3-(2-メチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール, 塩酸塩の製造
例 1による(1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチル-アミンの塩酸塩3,55 g (15,2 mmol)を、 4,59 ml (47-48%) の水性HBr中で 7,5 時間還流攪拌し、一晩冷却した。(1R,2R)-3-(2-メチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノールが生じた。これを後処理し、TMCSを用いて塩酸塩として沈殿させた。
【0040】
例 3: 硫酸 モノ-(1R,2R)-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステルの製造

硫酸 モノ-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステル又は硫酸 モノ-(1R,2R)-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステルを次のように製造した:
(1R,2R)- 3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール; 塩酸塩を、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いてH2SO4中で処理した。硫酸 モノ-(1R,2R)-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステルが生じた。
【0041】
例 4: 6-[(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸の製造
6-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸又は6-[(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸を次のように製造した:
(1R,2R)- 3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール; 塩酸塩を、3,4,5-トリ-O-アセチル-1-a-ブロモ-D-グルコロン酸メチルエステルと 1. LiOH 及び 2. HOAc を用いて処理した。6-[(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸が生じた。 精製をLobar-Lichoprep RP128 カラムMeOH:H2O-システムによって、ついで HPLC-分離を行った。
【0042】
例 5: [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシドの製造
[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシド及び(1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシドを次のように製造した:
(1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; 塩酸塩を溶解させ、室温でH2O2を用いて処理した。(1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシドが生じる。
【0043】
例 6: (1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシドの製造
3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシド 又は(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシドを次のように製造した:
(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール; 塩酸塩を溶解させ、室温でH2O2を用いて処理した。 (1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシドが生じた。
【0044】
例 7: 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-カテコール又は 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-ベンゼン-1,2-ジオールの製造
4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-カテコール又は 4-2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-ベンゼン-1,2-ジオールの製造を、次の反応式にしたがって行った:
【0045】
【化1】

【0046】
その際、そのほかの方法1 BuLi で、当業者によく知られた、BuLi-試薬を介する合成法及び方法2 グリニャールで、当業者によく知られた、Mg-試薬を介する合成法を示す。
【0047】
例 8: C-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシル]-メチルアミンの製造
C-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシル]-メチルアミンの製造を次の反応式にしたがって行った:
【0048】
【化2】

【0049】
例 9: (1R,2R)-3-(2-アミノメチル-シクロヘキシル)-フェノールの製造
3-(2-アミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール又は (1R,2R)-3-(2-アミノメチル-シクロヘキシル)-フェノールを次の反応式にしたがって行った:
【0050】
【化3】

【0051】
例 10 代謝物のインビトロ単離:
[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; 塩酸塩及び別の例で (1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール; 塩酸塩を、TRIS/HCl-緩衝液pH 7,4 に溶解させる。ついでMgCl 及び場合によりその他の文献公知の必須の、チトクロームP450 (CytP450)に対するコファクターを加え、ついで CytP450 3A4 (N-脱メチル化) 及び(又は) CytP450 2D6 (O-脱メチル化) と共に37°Cでインキュベートした。ついで仕込み物HPLCによって分離し、代謝物をフラクション中でNMRによって同定し、ついでフラクションを単離した。
【0052】
例 11 代謝物のインビトロ単離 :
哺乳類に、 [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; 塩酸塩及び別の例で (1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール; 塩酸塩を注射した。 哺乳類から血液を採取し、これを微粒子成分の分離後HPLCによって分離し, 代謝物をフラクション中で NMRによって同定し、ついでフラクションから単離する。
【0053】
例 12 μ-オピオイドレセプター親和性及びNA- 及び5HT-取り込み阻害成分:
オピオイド物質にとって決定的な、μ-オピオイドレセプターとの結合と共に、さらにNA- 及び5HT-取り込み阻害成分を、2種の臨床上使用される抗うつ剤:フルオキセチン及びデシプラミンに対して調べた。公知文献でその実施において十分に知られている標準テストの結果を、表1にまとめて示す:
表 1: 取り込み阻害及びオピオイドレセプター結合
【0054】
【表1】

【0055】
(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノールの5HT-再取り込み阻害はまさにこの物質のμ-オピオイドレセプター結合と同程度の値である。したがって、この物質はμ-オピオイド成分と取り込み阻害の正確に釣り合った関係を有し、同時に特定の有効な苦痛阻害に対する効力も有する。取り込み阻害は、臨床上使用される抗うつ剤の量にあって、それによって独自の抗うつ有効成分を生じる。この際この物質は、ノルアドレナリン- 及び特にセロトニン-再取り込みに比較的強い阻害作用を有する。
【0056】
例 13 “テイル サスペンジョン テスト(Tail Suspension-Test)”:
“テイル サスペンジョン”テストは、抗うつ活性及び抗不安活性を検出し、Porsolt等 (Porsolt R.D., Bertin A., Jalfre M., Behaviourial despair in mice: a primary screening test for antidepressants. Arch. Int. Pharmacodyn. Ther., 229, 327-336, 1977) 及びSteru 等(Steru L., Chermat R., Thierry B, Simon P. The Tail Suspension Test: a new method for screening antidepressants in mice. Psychopharmacology, 85, 367-370, 1985)の方法が行われる。ヒトが尾をもってぶら下げたげっ歯類動物は、すぐに動かなくなる。抗うつ剤は動かない時間を減少させ、 一方精神安定薬(Tranquilantien )は動かない時間を延長する。動物の挙動を6 分にわたって観察し、好ましくはSteru等(1985) (上記参照)によって開発されたコンピュター制御された装置(Itemac-TST)を用いて観察する。 数匹のマウスを並行して調べ、動かない時間を測定した。このパラメーターは、“behavioral despair”テスト (Steru L., Chermat R., Thierry B., Mico J.A., Lenegre A., Steru M., Simon P. Porsolt R.D., The automated Tail Suspension Test: a computerized device which differentiates psychotropic drugs. Prog. Neuropsychopharmacol. Exp. Psychiatry, 11, 659-671, 1987) で使用されるパラメーターと同様である。10-20匹のマウスをグループごとに調べた。モルフィン, (1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール;塩酸塩及びデシプラミンをテスト30分前に腹腔内(i.p.)、及びナロキソンを静脈内(i.v.)投与した。
【0057】
この挙動モデルは、取り込み阻害成分の抗うつ作用をオピオイド作用の同時の存在と共に示すことができる。この挙動モデルで、抗うつ剤はその他の挙動モデルにおけると同様に動かない段階の短縮を導き、一方、オピオイド、たとえばモルフィンは動かない段階を延長させる。双方の有効成分が存在する場合、双方の効果は重複して、自発的運動機能変化がますます僅かにしか生じない。 これはオピエート成分がナロキソンを用いる前処理によって失われることによって相殺される。ナロキソン前処理後、(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノールの刺激作用(これは前処理しない場合、ほんの僅かである。)が明らかに発現する。それ故、この物質は、特に苦痛治療薬との組み合わせた形で極めて適当である。参照物質と共にこれらの試験結果を、表2に要約する。
【0058】

表 2: マウス (10 - 20 動物/グループ)での“テイル サスペンジョン”テストで、(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール, イミプラミン及びモルフィンの作用
【0059】
【表2】

【0060】
表2に、 (1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール;塩酸塩がナロキソンでの前処理後初めて動かない時間の著しい減少を引き起こし、同様にこれはイミプラミンでも見出されたこと示す。オピオイドはモルフィンに対するのと同様に動かない時間の延長を示す。これは、なぜ (1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノールがナロキソン-前処理せずに取り込み阻害及びオピオイド作用の純粋な効果として溶剤コントロールに比べて動かない時間のほんの僅かの変化しか生じないか
を説明する。
【0061】
本発明の知見によれば、驚くべきことに(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノールが、適切な、明白な、また臨床上使用可能な抗うつ有効成分を有する、最初のオピオイド鎮痛薬である。
【0062】
例 14: 非経口投与形態
1 gの(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール、 塩酸塩を注射用水1リットルに室温で溶解させ、ついでNaClの添加によって等張条件に調整する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
場合によりラセミ化合物, 純粋な立体異性体, 特に対掌体又はジアステレオマーの形に, 又は任意の混合割合で立体異性体、特に対掌体又はジアステレオマーの混合物の形に;
示された形に又はその酸又はその塩基の形に又はその塩, 特にその生理学的に許容し得る塩の形に,又はその溶媒和、特にその水和物の形にある、
・ 3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ (1R,2R)- 3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン,
・ (1R, 2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン,
・ 硫酸モノ-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステル,
・ 硫酸モノ-(1R,2R)-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステル,
・ 3-(2-メチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ (1R,2R)-3-(2-メチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ 3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシド,
・ (1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシド,
・ 6-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸,
・ 6-[(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸,
・ 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-カテコール,
・ (1R,2R)-4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-カテコール,
・ 3-(2-アミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ (1R,2R)-3-(2-アミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-ベンゼン-1,2-ジオール,
・ (1R,2R)- 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-ベンゼン-1,2-ジオール,
・ C-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシル]-メチルアミン,
・ (1R,2R)-C-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシル]-メチルアミン,
・ [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチル-アミン,
・ (1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチル-アミン,
・ [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシド 又は
・ (1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシド
をうつ病の治療用医薬の製造に使用する方法。
【請求項2】
使用される化合物が、R, R, 好ましくは1R, 2R 立体異性体として存在する、請求項1記載の使用する方法。
【請求項3】
場合によりラセミ化合物, 純粋な立体異性体, 特に対掌体又はジアステレオマーの形に, 又は任意の混合割合で立体異性体、特に対掌体又はジアステレオマーの混合物の形に;
示された形に又はその酸又はその塩基の形に又はその塩, 特にその生理学的に許容し得る塩の形に,又はその溶媒和、特にその水和物の形にある、
・ 硫酸モノ-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステル,
・ 硫酸モノ-(1R,2R)-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェニル]エステル,
・ 3-(2-メチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ (1R,2R)-3-(2-メチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ 3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシド,
・ (1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール-N-オキシド,
・ 6-[3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸,
・ 6-[(1R,2R)-3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノキシ]-3,4,5-トリヒドロキシ-テトラヒドロピラン-2-カルボン酸,
・ 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-カテコール,
・ (1R,2R)-4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-カテコール,
・ 3-(2-アミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ (1R,2R)-3-(2-アミノメチル-シクロヘキシル)-フェノール,
・ 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-ベンゼン-1,2-ジオール,
・ (1R,2R)- 4-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-ベンゼン-1,2-ジオール,
・ C-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシル]-メチルアミン,
・ (1R,2R)-C-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシル]-メチルアミン,
・ [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチル-アミン,
・ (1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-メチル-アミン,
・ [2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシド 又は
・ (1R,2R)-[2-(3-メトキシ-フェニル)-シクロヘキシルメチル]-ジメチルアミン; N-オキシド;
から選ばれる3-(2-ジメチルアミノメチル-シクロヘキシル)-フェノールの代謝物。
【請求項4】
化合物が、R, R, 好ましくは 1R, 2R 立体異性体として存在する、請求項3記載の代謝物。
【請求項5】
有効物質として、請求項3 又は 4記載の化合物少なくとも1種並びに場合により添加物及び(又は)助剤を含む医薬。
【請求項6】
請求項3 又は 4記載の化合物を、苦痛、特に急性苦痛, 内臓性苦痛, 慢性苦痛又は神経障害性苦痛又は癌苦痛の治療用医薬の製造に使用する方法。
【請求項7】
請求項3又は4記載の化合物を、増加した尿意又は尿失禁の治療用医薬の製造に使用する方法。

【公表番号】特表2006−511453(P2006−511453A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−522472(P2004−522472)
【出願日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2003/007720
【国際公開番号】WO2004/009067
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(390035404)グリュネンタール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (127)
【Fターム(参考)】