説明

1−フェネチルピペリジン誘導体及びオピオイド受容体リガンドとしてのその使用

本発明は、オピオイド受容体リガンドとして有用な式(I)の新規の1−フェネチルピペリジン誘導体に関する。より具体的には、本発明は、μオピオイド受容体リガンドとして有用な化合物を提供する。別の態様においては、本発明は、疼痛の治療などの治療方法におけるこれらの化合物の使用、及び本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オピオイド受容体リガンドとして有用な新規の1−フェネチルピペリジン誘導体に関する。より具体的には、本発明は、μオピオイド受容体リガンドとして有用な化合物を提供する。
【0002】
他の態様においては、本発明は、疼痛の治療などの治療方法におけるこれらの化合物の使用、及び本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
非常に多くのクラスのオピオイド受容体が存在する。これらのクラスは、様々なオピオイドリガンドへの親和性、並びに細胞分布及び臓器分布が異なる。更に、異なるクラスは、異なる生理的機能を果すと考えられるが、機能及び分布は相当に重複している。3つの異なる種類のオピオイド受容体、即ちミュー(μ)、デルタ(δ)及びカッパ(κ)が確認されている。これらの3つのオピオイド受容体の種類は、鎮痛効果を生じるオピオイドリガンドの作用点である。しかし、阻害される疼痛の種類及び二次的な機能は各受容体の種類で変わる。μ受容体は、主として鎮痛、及び嗜癖又はアルコール依存症などの、薬物又は他の化学物質依存症に関係していると一般的にみなされている。δ受容体及びκ受容体も鎮痛を媒介しうるが、δ受容体は行動作用に関係すると考えられる。
【0004】
各オピオイド受容体は、オピエートと結合した場合、その種類の受容体に特有な特定の生物学的反応を引き起こす。オピエートが複数の受容体を活性化する場合、各受容体の生物学的反応は影響され、それにより副作用を生じる。オピエートがより特異的且つ選択的でないほど、そのオピエートの投与による増加した副作用を引き起こす可能性が大きい。
【0005】
強いオピオイド鎮痛剤であるモルヒネは、μオピオイド受容体への作用(アゴニスト活性)によって強い疼痛に対する有効性を示すが、悪心並びに幻覚及び攪乱を含めた精神症状などの副作用があるという問題がある。更に、モルヒネは、精神的依存を形成し、重大な問題を生じる。報告されている他の副作用は、呼吸抑制、耐性、身体依存能、及び中枢神経受容体との非特異的相互作用によって引き起こされる誘発性禁断症候群である。
【0006】
WO03/004026は、とりわけ鎮痛剤として使用される置換1−フェネチルピペリジン化合物を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
オピテート受容体に作用する新規の化合物を提供することが本発明の目的である。
【0008】
本発明の更なる目的は、通常の局所作用鎮痛剤に伴う望ましくない副作用を実質的に回避する化合物の提供である。
【0009】
μオピオイド受容体に選択的に結合する化合物を提供することは更なる目的である。
【0010】
より更なる目的は、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害剤として活性を更に示す化合物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
その第1の態様においては、本発明は、式Iの化合物、
【化1】


任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供し、式中、n、R及びRは以下の通りに定義される。
【0012】
その第2の態様においては、本発明は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と共に、治療有効量の本発明の化合物、任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
更なる態様においては、本発明は、ヒトを含めた哺乳類の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は緩和用の医薬組成物の製造のための、本発明の化合物、任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容されるその塩の使用を提供し、この疾患、障害又は状態はオピオイド受容体のモジュレーションに応答する。
【0014】
より更なる態様においては、本発明は、ヒトを含めた生きている動物体の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は緩和方法に関し、この障害、疾患又は、状態はオピオイド受容体のモジュレーションに応答し、この方法は、治療有効量の本発明の化合物、任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容されるその塩を、それを必要とするこのような生きている動物体に投与するステップを含む。
【0015】
本発明の他の目的は、以下の詳細な説明及び実施例から当分野の技術者には明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
1−フェネチルピペリジン誘導体
その第1の態様においては、本発明は、式Iの化合物、
【化2】


任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する
[式中、
nは1又は2であり、
は、水素、アルキル又はRを表し、
このアルキルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で場合によって置換されており、
は、R又は−CH−Rを表し、
は、R、−CH=CH−R又は−CH=CHを表し、
互いに独立なR、R及びRは、アリール基を表し、
このアリール基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルコキシアルキル、シクロアルコキシアルキル、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、スルファニル、チオアルコキシ、−NR’R”、−(C=O)NR’R”又は−NR’(C=O)R”からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で場合によって置換され、
ここで、互いに独立なR’及びR”は水素又はアルキルである]。
【0017】
更なる態様においては、本発明は、式IIの化合物、
【化3】


任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する
[式中、
は、水素、アルキル又はRを表し、
このアルキルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で場合によって置換され、
互いに独立なR、R及びRは、アリール基を表し、
このアリール基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルコキシアルキル、シクロアルコキシアルキル、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、スルファニル、チオアルコキシ、−NR’R”、−(C=O)NR’R”又は−NR’(C=O)R”からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で場合によって置換されており、
ここで、互いに独立なR’及びR”は水素又はアルキルである]。
【0018】
式Iの化合物の一実施形態においては、nは1である。第2の実施形態においては、nは2である。
【0019】
式Iの化合物の更なる実施形態においては、Rはアルキルを表す。特別な実施形態においては、Rはメチル又はエチルを表す。
【0020】
式Iの化合物のより更なる実施形態においては、Rは、場合によって置換されたフェニルなどの、場合によって置換されたアリール基を表す。特別な実施形態においては、Rはフェニルを表す。更なる実施形態においては、Rは、フルオロフェニル、クロロフェニル、4−ハロフェニル又は3−ハロフェニル、特に4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル又は3−フルオロフェニルなどのハロフェニルを表す。更なる実施形態においては、Rは、4−アルコキシフェニル、3−アルコキシフェニル又はメトキシフェニル、特に4−メトキシフェニル又は3−メトキシフェニルなどのアルコキシフェニルを表す。より更なる実施形態においては、Rは、ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルなどの、メチレンジオキシで置換されたフェニルを表す。
【0021】
式Iの化合物の更なる実施形態においては、Rは、−CH−Rを表す。特別な実施形態においては、Rはベンジルを表す。
【0022】
式Iの化合物のより更なる実施形態においては、Rは、場合によって置換されたアリール基を表す。特別な実施形態においては、Rはフェニルを表す。更なる実施形態においては、Rは、フルオロフェニル、クロロフェニル、4−ハロフェニル又は3−ハロフェニル、特に4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル又は3−フルオロフェニルなどのハロフェニルを表す。より更なる実施形態においては、Rは、4−アルコキシフェニル又はメトキシフェニル、特に4−メトキシフェニルなどのアルコキシフェニルを表す。
【0023】
式Iの化合物の更なる実施形態においては、Rは−CH=CH−Rを表す。特別な実施形態においては、Rはフェニルを表す。
【0024】
式Iの化合物のより更なる実施形態においては、Rは−CH=CHを表す。
【0025】
特別な実施形態においては、本発明の化合物は、
N−(4−クロロ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−(3−メトキシ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−N−{1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミド;
N−(4−メトキシ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−{1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−(4−メトキシ−フェニル)−プロピオンアミド;
N−{1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−(3−メトキシ−フェニル)−プロピオンアミド;
N−(1−ブタ−3−エニル−ピペリジン−4−イルメチル)−N−フェニル−プロピオンアミド;
N−フェニル−N−[1−((E)−3−フェニル−アリル)−ピペリジン−4−イルメチル]−プロピオンアミド;
N−{1−[2−(4−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−フェニル−プロピオンアミド;
N{1−[2−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−フェニル−プロピオンアミド;
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミド;
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(4−メトキシ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミド;
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(4−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミド;
N−(3−フルオロ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−(3−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(4−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミド;
N−(3−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミド;
N−ベンジル−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−N−フェニル−アセトアミド;
N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イル−メチル)−N−フェニル−プロピオンアミド;
N−(1−ベンジル−ピペリジン−4−イルメチル)−N−フェニル−プロピオンアミド;
N−[1−(4−クロロ−ベンジル)−ピペリジン−4−イルメチル]−N−フェニル−プロピオンアミド;
N−{1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−フェニル−プロピオンアミド;
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0026】
本明細書で記載された実施形態の2つ以上の任意の組合せは、本発明の範囲内であると考えられる。
【0027】
置換基の定義
本発明の文脈においては、ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表す。
【0028】
本発明の文脈においては、アルキル基は、一価の、飽和、直鎖又は分枝炭化水素鎖を意味する。炭化水素鎖は、好ましくは、1から6個の炭素原子(C1〜6−アルキル)を含有し、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、三級ペンチル、ヘキシル及びイソヘキシルを含む。好ましい実施形態においては、アルキルは、ブチル、イソブチル、二級ブチル、及び三級ブチルを含めたC1〜4−アルキル基を表す。本発明の別の好ましい実施形態においては、アルキルは、特にメチル、エチル、ピロピル又はイソプロピルであってよいC1〜3−アルキル基を表す。
【0029】
本発明の文脈においては、アルケニル基は、ジエン、トリエン及びポリエンを含めた、1つ又は複数の二重結合を含有する炭素鎖を意味する。好ましい実施形態においては、本発明のアルケニル基は、2から6個の炭素原子(C2〜6−アルケニル)を含み、少なくとも1つの二重結合を含む。最も好ましい実施形態においては、本発明のアルケニル基は、エテニル;1−若しくは2−プロペニル;1−、2−若しくは3−ブテニル、又は1,3−ブタジエニル;1−、2−、3−、4−若しくは5−ヘキセニル、又は1,3−ヘキサジエニル、又は1,3,5−ヘキサトリエニルである。
【0030】
本発明の文脈においては、アルキニル基は、ジイン、トリイン及びポリインを含めた、1つ又は複数の三重結合を含有する炭素鎖を意味する。好ましい実施形態においては、本発明のアルキニル基は、2から6個の炭素原子(C2〜6−アルキニル)を含み、少なくとも1つの三重結合を含む。その最も好ましい実施形態においては、本発明のアルキニル基は、エチニル;1−、若しくは2−プロピニル;1−、2−、若しくは3−ブチニル、又は1,3−ブタジニル;1−、2−、3−、4−ペンチニル、又は1,3−ペンタジニル;1−、2−、3−、4−、若しくは5−ヘキシニル、又は1,3−ヘキサジニル又は1,3,5−ヘキサトリニルである。
【0031】
本発明の文脈においては、シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルを含めた、好ましくは3から7個の炭素原子を含有するシクロアルキル基(C3〜7−シクロアルキル)を意味する。
【0032】
アルコキシは−O−アルキルであり、ここで、アルキルは上記に定義された通りである。
【0033】
シクロアルコキシは、−O−シクロアルキルを意味し、ここで、シクロアルキルは上記に定義された通りである。
【0034】
シクロアルキルアルキルは、上記のシクロアルキル及び上記のアルキルを意味し、例えばシクロプロピルメチルを意味する。
【0035】
チオアルコキシは−S−アルキルであり、ここで、アルキルは上記に定義された通りである。
【0036】
本発明の文脈においては、アリール基は、フェニル、ナフチル(1−ナフチル若しくは2−ナフチル)又はフルオレニルなどの炭素環式芳香族環系を意味する。
【0037】
薬学的に許容される塩
本発明の化合物は、所望の投与に適した任意の形態で提供することができる。適切な形態には、本発明の化合物の、薬学的に(即ち生理学的に)許容される塩、及びプレドラッグ(predrug)又はプロドラッグの形態が含まれる。
【0038】
薬学的に許容される付加塩の例には、無制限に、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコニット酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエン−p−スルホン酸塩などの無毒の無機及び有機酸付加塩が含まれる。このような塩は、当技術分野で周知の記載された手法によって形成することができる。
【0039】
薬学的に許容されないと考えられるシュウ酸などの他の酸は、本発明の化合物及びその薬学的に許容される酸付加塩を得る際に、中間体として有用な塩の調製において有用であり得る。
【0040】
本発明の化合物の薬学的に許容されるカチオン塩の例には、無制限に、アニオン基を含有する本発明の化合物の、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウム、コリン、リシニウム、及びアンモニウム塩などが含まれる。このようなカチオン塩は、当技術分野で周知の記載された手法によって形成することができる。
【0041】
本発明の文脈においては、N含有化合物の「オニウム塩」も、薬学的に許容される塩として考えられる。好ましい「オニウム塩」には、アルキル−オニウム塩、シクロアルキル−オニウム塩、及びシクロアルキルアルキル−オニウム塩が含まれる。
【0042】
本発明の化合物のプレドラッグ又はプロドラッグの例には、親化合物の1つ又は複数の反応基又は誘導体化可能な基において修飾された化合物を含む本発明による物質の適切なプロドラッグの例が含まれる。特に興味深いのは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又はアミノ基において修飾された化合物である。適切な誘導体の例はエステル又はアミドである。
【0043】
本発明の化合物は、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒と共に、可溶性形態又は不溶性形態で提供することができる。可溶性形態は、一水和物、二水和物、半水和物、三水和物、四水和物などの水和形態も含むことができる。一般的に、可溶性形態は、本発明の目的のために不溶性形態と等価であると考えられる。
【0044】
立体異性体
本発明の化合物は、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びシス−トランス異性体を含めた、様々な立体異性体で存在しうることは、当分野の技術者には理解されよう。
【0045】
本発明には、すべてのこのような異性体及びラセミ混合物を含むその任意の混合物が含まれる。
【0046】
当分野の技術者に周知の光学異性体の分割(resolvation)方法は、使用することができ、当業者には明らかであろう。このような方法には、J.Jaques,A.Collet、及びS.Wilenによって「鏡像異性体、ラセミ体、及び分割(Enantiomers,Racemates,and Resolutions)」,John Wiley and Sons,New York(1981年)に記載されたものが含まれる。
【0047】
光学活性な化合物は、光学活性な出発原料から調製することもできる。
【0048】
標識化合物
本発明の化合物は、その標識形態又は非標識形態で使用することができる。本発明の文脈においては、標識化合物は、自然に通常見いだされる原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子により置換された1個又は複数の原子を有する。標識化は前記化合物の容易な定量的検出を可能にする。
【0049】
本発明の標識化合物は、種々の診断方法における診断用手段、放射性トレーサー、又はモニタリング剤(monitoring agent)として、及びインビボ受容体イメージング用に有用であり得る。
【0050】
本発明の標識異性体は、好ましくは少なくとも1つの放射性核種を標識として含有する。陽電子放出核種はすべて使用のための候補である。本発明に関して、放射性核種は、好ましくはH(重水素)、H(三重水素)、13C、14C、131I、125I、123I、及び18Fから選択される。
【0051】
本発明の標識異性体を検出するための物理的方法は、陽電子放出型断層撮影(PET)、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)、核磁気共鳴分光法(MRS)、核磁気共鳴映像法(MRI)、及びX線コンピュータ体軸断層撮影(CAT)、又はそれらの組合せから選択することができる。
【0052】
調製方法
本発明の化合物は、化学合成の通常の方法、例えば実施例に記載された方法により調製することができる。本出願に記載された方法のための出発原料は周知であるか、市販の化学物質から通常の方法によって容易に調製することができる。
【0053】
本発明の1種の化合物は、通常の方法を使用して本発明の別の化合物に変換することもできる。
【0054】
本明細書に記載された反応の最終生成物は、通常の技術、例えば抽出、結晶化、蒸留、クロマトグラフィーなどによって単離することができる。
【0055】
生物活性
本発明の化合物は、例えば、Simonin Fら[Simonin Fら、Mol.Pharmacol.、46(6)、1015〜21頁、1994年]、Simonin Fら[Simonin Fら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92(15)、7006〜10頁、1995年]、及びWang JBら[Wang JBら、FEBS Lett.、348(1)、75〜9頁、1994年]によって記載されたように、μ、δ、及びκオピオイド受容体に結合するその能力について試験することができる。
【0056】
オピエート受容体、特にμ受容体に結合する化合物は、疼痛、術後疼痛、慢性疼痛(癌性疼痛及び神経因性疼痛などの)、陣痛及び分娩痛、片頭痛、薬物嗜癖(ヘロイン嗜癖及びコカイン嗜癖などの)、及びアルコール中毒の治療に有用である可能性がある。
【0057】
更に、オピエート受容体に結合する化合物は、過敏性腸症候群、便秘、悪心、嘔吐、及びアレルギー性皮膚炎やアトピーなどの掻痒性皮膚病(そう痒)の治療にも有用である可能性がある。オピエート受容体に結合する化合物は、摂食障害、オピエート過剰摂取、うつ病、喫煙、性的機能不全、ショック、脳卒中、脊椎損傷、頭部外傷、下痢、尿失禁及び炎症反応の治療にも指示されている。
【0058】
したがって更なる態様においては、本発明の化合物は、オピオイド受容体、特にμオピオイド受容体のモジュレーションに応答する疾患、障害又は状態の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0059】
特別な実施形態においては、本発明の化合物は、疼痛、術後疼痛、慢性疼痛、癌性疼痛、神経因性疼痛、陣痛及び分娩痛、片頭痛、薬物嗜癖、ヘロイン嗜癖、コカイン嗜癖、アルコール中毒、過敏性腸症候群、便秘、悪心、嘔吐、掻痒性皮膚病、アレルギー性皮膚炎、アトピー、摂食障害、オピエート過剰摂取、うつ病、喫煙、性的機能不全、ショック、脳卒中、脊椎損傷、頭部外傷、下痢、尿失禁及び炎症反応の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0060】
更なる実施形態においては、本発明の化合物は、疼痛、術後疼痛、慢性疼痛、片頭痛、薬物嗜癖、アルコール中毒、及び過敏性腸症候群の治療、予防又は緩和に特に有用であると考えられる。
【0061】
より更なる実施形態においては、本発明の化合物は、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬としての活性も示す。本発明の化合物は、例えば、WO97/30997に記載されたように、シナプトソーム中のモノアミンのドーパミン、ノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込みを阻害するその能力について試験することができる。
【0062】
活性薬剤成分(API)の適切な用量は、厳密な投与様式、それが投与される形態、考えられる徴候、対象と特に関与する対象の体重、更に担当の医師又は獣医の好みと経験に応じるが、1日あたり約0.1から約1000mgのAPIの範囲、1日あたり約10から約500mgのAPIのより好ましい範囲、1日あたり約30から約100mgのAPIの最も好ましい範囲に含まれることが現在考えられている。
【0063】
医薬組成物
別の態様においては、本発明は、本発明の化合物の治療有効量を含む新規の医薬組成物を提供する。
【0064】
治療における使用のための本発明の化合物は、未加工の化合物の形態で投与することができるが、場合によっては、1種又は複数のアジュバント、賦形剤、担体、緩衝剤、希釈剤、及び/又は他の通例の製薬助剤と共に、活性成分を、場合によって生理学的に許容される塩の形態で、医薬組成物中に導入することが好ましい。
【0065】
1つの好ましい実施形態においては、本発明は、当技術分野で周知であり使用される、1種又は複数の薬学的に許容される担体、及び場合によっては、他の治療成分及び/又は予防成分と一緒に、本発明の化合物、又は薬学的に許容されるその塩若しくは誘導体を含む医薬組成物を提供する。この担体は、この製剤の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害でないという意味において「許容される」必要がある。
【0066】
本発明の医薬組成物は、経口投与、直腸投与、気管支内投与、経鼻投与、肺投与、局所投与(口腔投与と舌下投与を含む)、経皮投与、膣投与又は非経口投与(皮膚適用、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、動脈内投与、脳内投与、眼内注射又は眼内注入を含む)に適したもの、或いは粉末及び液体エアゾール投与を含めた、吸入若しくは吹送、又は持続放出系による投与に適した形態のものであってよい。持続放出系の適切な例には、本発明の化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは成形物品の形態、例えばフィルム又はマイクロカプセルであってよい。
【0067】
本発明の化合物は、通常のアジュバント、担体、又は希釈剤と共に、したがって、医薬組成物及びその単位剤形にすることができる。このような形態には、固体、特に錠剤、充てんカプセル、粉末形態とペレット形態、及び液体、特に水溶液と非水溶液、懸濁液、乳濁液、エリキシル剤、及びそれを充てんしたカプセル、経口使用のためのものすべて、直腸投与用坐剤、及び非経口使用のための滅菌注射液が含まれる。このような医薬組成物及びその単位剤形は、更なる活性化合物若しくは活性成分と一緒に、又は更なる活性化合物若しくは活性成分なしに、通常の割合で通常の成分を含むことができ、このような単位剤形は、用いる所望の日用量範囲に応じた任意の適切な有効量の活性成分を含有することができる。
【0068】
本発明の化合物は、多種多様の経口剤形及び非経口剤形で投与することができる。以下の剤形は、活性成分として本発明の化合物又は本発明の化合物の薬学的に許容される塩のいずれかを含むことができることは当分野の技術者には明らかであろう。
【0069】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するためには、薬学的に許容される担体は、固体又は液体のいずれかであってよい。固形製剤には、粉末、錠剤、丸剤、カプセル、カシェ剤、坐剤、分散性顆粒が含まれる。固体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤、保存料、錠剤崩壊剤、又は封入材としても作用しうる1種又は複数の物質であってよい。
【0070】
粉末においては、担体は微粉化した活性成分との混合物中にある微粉化した固体である。
【0071】
錠剤においては、活性成分は、適切な割合で必要な結合能力を有する担体と混合され、所望の形状とサイズに成形される。
【0072】
粉末及び錠剤は、好ましくは、5%又は10%から約70%の活性成分を含有する。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂などである。「製剤」という用語は、活性化合物とカプセルを提供する担体としての封入材料との配合物を含むものとし、このカプセルでは、担体を含むか又は含まない活性成分が担体によって取り囲まれており、したがってこれらは提携している。同様に、カシェ剤及びロゼンジが含まれる。錠剤、粉末、カプセル、丸剤、カシェ剤、及びロゼンジは経口投与に適した固体形態として使用することができる。
【0073】
坐剤を調製するためには、脂肪酸グリセリドの混合物又はカカオ脂などの低融点ワックスを最初に溶融し、活性成分をその中に攪拌しながら均一に分散させる。次いで、この溶融均一混合物を好都合なサイズの型に注ぎ入れ、冷却しそれにより固化させる。
【0074】
膣投与に適する組成物は、活性成分に加えて適切であることが当技術分野で周知である担体を含有する膣坐剤、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡沫又は噴霧として提供することができる。
【0075】
液体製剤には、溶液、懸濁液、及び乳濁液、例えば、水又は水−プロピレングリコール溶液が含まれる。例えば、非経口注射液製剤は、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液として配合することができる。
【0076】
本発明による化合物は、したがって、非経口投与(例えば注入、例えばボーラス注入法若しくは持続注入による)用に配合することができ、アンプル、予め充てんされた注射器、少量注入の単位剤形で、又は添加保存料を含む反復投与容器で提供することができる。組成物は、油性ビヒクル又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又は乳濁液としての形態をとることができ、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤などの製剤化剤を含むことができる。別法として、活性成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば無菌の、発熱物質を含まない水で構成されるための、無菌固体の無菌単離又は溶液からの凍結乾燥により得られる粉末形態であってよい。
【0077】
経口使用に適した水溶液は、活性成分を水中に溶解し、所望により適切な着色剤、着香剤、安定剤及び増粘剤を添加することによって調製することができる。
【0078】
経口使用に適した水性懸濁液は、天然ゴム若しくは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又は他の周知の懸濁化剤などの粘性材料と共に、微粉化した活性成分を水中に分散させることによって作製することができる。
【0079】
使用直前に経口投与用の液体形態製剤への変換を意図した固体形態製剤もまた同様に含まれる。このような液体形態には、溶液、懸濁液、及び乳濁液が含まれる。活性成分に加えて、このような製剤は、着色剤、着香剤、安定剤、緩衝剤、人工甘味料及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤、及び同様のものを含むことができる。
【0080】
表皮への局所投与用には、本発明の化合物は、軟膏、クリーム若しくはローション、又は経皮貼布として製剤化することができる。軟膏及びクリームは、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を添加して、水性又は油性ベースを用いて製剤化することができる。ローションは、水性又は油性ベースを用いて製剤化することができ、一般的に1種又は複数の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、又は着色剤も含む。
【0081】
口内の局所投与に適した組成物には、味付けされたベース(通常はショ糖とアラビアゴム若しくはトラガカント)中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン又はショ糖及びアラビアゴムなどの不活性なベース中に活性成分を含むパステル剤;並びに適切な液体担体中に活性成分を含む洗口剤が含まれる。
【0082】
溶液又は懸濁液は、通常の手段、例えば、スポイト、ピペット又は噴霧により鼻腔に直接適用される。組成物は単回投与形態又は多回投与形態で提供することができる。
【0083】
気道への投与も、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、若しくはジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガスなどの適切な噴射剤を含む加圧容器で、活性成分が提供されるエアゾール製剤を利用して達成することができる。エアゾールは、好都合に、レシチンなどの界面活性剤を含むこともできる。薬物の用量は、計量バルブの提供により制御することができる。
【0084】
別法として、活性成分は、乾燥粉末の形態、例えば乳糖、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのデンプン誘導体及びポリビニルピロリドン(PVP)などの適切な粉末ベース中の化合物の粉末混合物で提供することができる。都合よくは、粉末担体は鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、単位用量形態、例えば、ゼラチンのカプセル又はカートリッジ、又はブリスターパック(これから吸入器を利用して粉末を投与できる)で提供することができる。
【0085】
経鼻投与用組成物を含めた気道への投与を目的とした組成物においては、組成物は、一般的に、例えば5ミクロン以下のオーダーの小さな粒径を有する。このような粒径は、当技術分野で周知の手段、例えば微粉化によって得ることができる。
【0086】
必要に応じて、活性成分の持続放出をもたらすように適合された組成物を用いることができる。
【0087】
医薬製剤は、好ましくは単位剤形である。このような形態においては、製剤は適切な量の活性成分を含有する単位用量に再分割される。単位剤形は、包装製剤とすることができ、この包装は、別々の量の製剤、例えば、包装された錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル中の粉末を含む。同様に、単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェ剤、又はロゼンジ自体であってよく、或いは適切な数の包装形態のこれらのいずれかであってよい。
【0088】
経口投与用の錠剤又はカプセル、及び静脈内投与と持続注入用の液体は、好ましい組成物である。
【0089】
製剤及び投与のための技術の更なる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.、Easton、PA)の最新版に見いだすことができる。
【0090】
治療有効用量は、症状又は状態を改善する活性成分の量に相当する。治療効果及び毒性、例えばED50及びLD50は、細胞培養又は実験動物における標準の薬理学的手法によって求めることができる。治療効果と毒性作用との間の用量比は、治療指数であり、比LD50/ED50で表すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。
【0091】
投与される用量は、当然ながら、治療すべき個体の年齢、体重及び状態、並びに投与経路、剤形とレジメン、及び所望の結果に対して慎重に調節される必要があり、厳密な用量は当然ながら開業医によって決定されるべきである。
【0092】
実際の用量は、治療すべき疾患の性質と重症度によって決まり、医師の裁量の範囲に含まれ、本発明の特定の状況に所望の治療効果を生ずるための用量の設定によって変えることができる。しかしながら、各用量あたり約0.1から約500mgの活性成分、好ましくは約1から約100mgの活性成分、最も好ましくは約1から約10mgの活性成分を含む医薬組成物は、治療上の措置に適することが現在考えられる。
【0093】
活性成分は、1日あたり1回又は数回の用量で投与することができる。満足のいく結果は、特定の場合において、0.1μg/kgi.v.及び1μg/kg p.o.の低い用量で得ることができる。用量範囲の上限は、約10mg/kg i.v.及び100mg/kg p.o.であると現在考えられている。好ましい範囲は、約0.1μg/kgから約10mg/kg/日i.v.及び約1μg/kgから約100mg/kg/日p.o.である。
【0094】
治療方法
別の態様においては、本発明は、ヒトを含めた生きている動物体の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は緩和の方法を提供し、この疾患、障害又は状態は、オピオイド受容体のモジュレーションに応答し、この方法は、それを必要とするヒトを含むこのような生きている動物体に、治療有効量の本発明の化合物、任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。
【0095】
適切な用量範囲は、通常のように、厳密な投与様式、それが投与される形態、それに対して投与が指示される適用症、関係する対象と関係する対象の体重、更に担当の医師又は獣医の好みと経験に応じて、1日あたり0.1から1000mg、1日あたり10〜500mg、特に1日あたり30〜100mgであることが現在考えられる。
【実施例】
【0096】
本発明は、以下の実施例を参照して更に例証されるが、これらは特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を何ら制限することを意図しない。
【0097】
(実施例1)
ピペリジン−1,4−ジカルボン酸1−ベンジルエステル4−エチルエステル(1)
4−ピペリジンカルボン酸エチル(99.48g、632.78mmol)及びピリジン(56.8g、696mmol)をジクロロメタン(800mL)中に溶解し0℃に冷却した。ベンジルクロロホルメート(88.1mL、601mmol)を1滴ずつ添加し、この反応混合物を終夜放置して室温にした。反応を塩酸水溶液(1M)でクエンチし、ジクロロメタンで抽出し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮して黄色の油としてピペリジン−1,4−ジカルボン酸1−ベンジルエステル4−エチルエステル(165g、89%)を得た。
【0098】
(実施例2)
4−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(2)
ピペリジン−1,4−ジカルボン酸1−ベンジルエステル4−エチルエステル(1)(165g、567mmol)をテトラヒドロフラン(1500mL)に溶解し0℃に冷却した。5℃未満の温度に維持しながら、水素化アルミニウムリチウム(311mL、THF中1M)を1滴ずつ添加した。この反応混合物を1時間攪拌し、水酸化ナトリウム水溶液(4N)を1滴ずつ添加した。この混合物をろ過し、ろ過ケークをジエチルエーテルで洗浄した。この有機層を濃縮し、酢酸エチルに溶解し、水及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮して黄色の油として4−ヒドロキシメチルピペリジンカルボン酸ベンジルエステル(120g、85%)を得た。
【0099】
(実施例3)
4−ホルミル−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(3)
塩化オキサリル(59.1mL、674mmol)をジクロロメタン(500mL)中に溶解し−78℃に冷却した。ジメチルスルホキシド(68.3mL、963mmol)を添加し、この混合物を15分間攪拌した。ジクロロメタン(500mL)中に溶解した4−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(2)(120g、481mmol)を添加した。この混合物を放置して15分間−55℃に温めた。この混合物を再び−78℃に冷却し、ジクロロメタン(250ml)中のトリエチルアミン(205mL、1443mmol)を添加した。この懸濁液を放置して室温に温め、氷酢酸(100mL)でクエンチした。この溶液を水で洗浄し、この水相をジクロロメタン(2×200mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮して4−ホルミル−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(119g、100%)を得た。
【0100】
(実施例4)
4−[(3−フルオロ−フェニルアミノ)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(4)
4−ホルミル−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(3)(2.00g、8.09mmol)及び3−フルオロアニリン(1.16mL、12.1mmol)を1,2−ジクロロエタン(40mL)中に溶解した。硫酸ナトリウム(5.74g、40.4mmol)及びナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(2.74g、12.9mmol)を添加し、この反応物を室温で終夜攪拌した。水酸化ナトリウム水溶液を慎重に添加し、この反応混合物を更に30分間攪拌し、次いでジクロロメタンで抽出した。この有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮した。この粗生成物を、溶離液として酢酸エチル/ヘプタンを使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して4−[(3−フルオロ−フェニルアミノ)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(380mg、14%)を得た。
【0101】
(実施例5)
4−{[(3−フルオロ−フェニル)−プロピオニル−アミノ]−メチル}−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(5)
4−[(3−フルオロ−フェニルアミノ)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(4)(1.12g、3.27mmol)及びトリエチルアミン(0.70mL、4.90mmol)をジクロロメタン(50mL)中に溶解し、この混合物を0℃に冷却した。塩化プロピオニル(0.38mL、4.25mmol)を添加し、この反応物を室温で終夜攪拌した。炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、この水相をジクロロメタンで抽出した。この合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮した。この粗生成物を溶離液として酢酸エチル/ヘプタンを使用するフラッシュクロマトグラフィーで精製して4−{[(3−フルオロ−フェニル)−プロピオニル−アミノ]−メチル}−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(800mg、61%)を得た。
【0102】
(実施例6)
N−(3−フルオロ−フェニル)−N−ピペリジン−4−イルメチル−プロピオンアミド(6)
4−{[(3−フルオロ−フェニル)−プロピオニル−アミノ]−メチル}−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(5)(800mg、2.01mmol)をエタノール(30mL)中に溶解し、パラジウム(活性炭上10%)を添加した。この反応混合物を水素雰囲気下で3時間攪拌した。この混合物をケイソウ土のパッドを通してろ過し、この溶液を真空中で濃縮して無色の油としてN−(3−フルオロ−フェニル)−N−ピペリジン−4−イルメチル−プロピオンアミド(480mg、90%)を得た。
【0103】
(実施例7)
4−[(ベンジル−プロピオニル−アミノ)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(7)
4−(プロピオニルアミノ−メチル)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(9b)(530mg、1.96mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)中に溶解し、0℃に冷却した。水素化ナトリウム(86mg、2.16mmol)を少しずつ添加し、この反応混合物を0℃で45分間攪拌した。塩化ベンジル(0.24mL、2.35mmol)を添加し、この反応混合物を終夜還流加熱した。炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、この水相を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮して黄色の油として4−[(ベンジル−プロピオニル−アミノ)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(900mg、100%)を得た。
【0104】
(実施例8)
4−[(4−クロロ−フェニルアミノ)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(8a)
4−アミノメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(10.0g、46.7mmol)、4−ブロモクロロベンゼン(10.7g、56.0mmol)及びナトリウムtert−ブトキシド(6.73g、70.0mmol)をトルエン(150mL)中に溶解した。アルゴンを通気した。4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(Xanthphos)(810mg、1.40mmol)及びトリス(ジベンジリジンアセトンジパラジウム(Pd(dba))(427mg、0.47mmol)を添加し、この混合物を110℃で3時間攪拌した。炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、この混合物をろ過した。この有機層をブラインで洗浄し、活性炭と組み合わせた硫酸ナトリウム上で乾燥した。この混合物をケイソウ土のパッドを通してろ過し、濃縮して橙色の粘着性の油として粗生成物を得た。4−[(4−クロロ−フェニルアミノ)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(9.1g、60%)を酢酸エチル/ヘプタンから白色固体として結晶した。
【0105】
化合物8b〜8fを4−アミノメチルピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル及び下表に示された種々のアリールハロゲン化物から化合物8aに応じて調製した。
【化4】


【表1】

【0106】
(実施例9)
4−{[(4−クロロ−フェニル)−プロピオニル−アミノ]−メチル}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(9a)
4−[(4−クロロ−フェニルアミノ)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(8.8g、27.1mmol)及びトリエチルアミン(4.04mL、28.4mmol)をジクロロメタン(120mL)中に溶解し0℃に冷却した。ジクロロメタン(20mL)中の塩化プロピオニル(2.53mL、28.4mmol)を1滴ずつ添加し、この反応混合物を室温で2時間攪拌した。水を添加し、この有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液、水及びブラインで洗浄した。この有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮して黄色の油として4−{[(4−クロロ−フェニル)−プロピオニル−アミノ]−メチル}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(12g、100%)を得た。
【0107】
化合物9b〜9gを下表に示されたように化合物9aに応じて調製した。
【化5】


【表2】

【0108】
4−[(アセチル−フェニル−アミノ)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(9h)
8b及び塩化プロピオニルの代わりの塩化アセチルから実施例9に従って調製した。
【0109】
(実施例10)
N−(4−クロロ−フェニル)−N−ピペリジン−4−イルメチル−プロピオンアミド(10a)
4−{[(4−クロロ−フェニル)−プロピオニル−アミノ]−メチル}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(9a)(8.80gm、23.1mmol)をジクロロメタン(150mL)中に溶解し0℃に冷却した。ジクロロメタン(50mL)中のトリフルオロ酢酸(50mL、673mmol)を1滴ずつ添加し、この混合物を室温で1時間攪拌した。この反応混合物を濃縮し、トルエン、酢酸エチル及びジエチルエーテルで摩砕した。得られた固体をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄してトリフルオロ酢酸塩としてN−(4−クロロフェニル)−N−ピペリジン−4−イルメチルプロピオンアミド(9.2g、100%)を得た。
【0110】
化合物10b〜10gを下表に示したように化合物10aに応じて調製した。
【化6】


【表3】

【0111】
(実施例11)
メタンスルホン酸2−(3−フルオロ−フェニル)−エチルエステル(11)
3−フルオロフェネチルアルコール(0.89mL、7.13mL)及びピリジン(1.16mL、14.3mmol)をジクロロメタン(10mL)中に溶解した。塩化メタンスルホニル(0.67mL、8.56mL)を添加し、この反応混合物を室温で終夜攪拌した。この反応混合物を氷水中に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機相を塩酸(水中1M)及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗生成物を更に精製することなく使用した。
【0112】
(実施例12)
N−(4−クロロ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミドフマル酸塩(12a)
N−(4−クロロ−フェニル)−N−ピペリジン−4−イルメチル−プロピオンアミド(4.0g、10.1mmol)及び炭酸カリウム(3.64g、21.3mmol)を2−ブタノン(60mL)中に溶解した。(2−ブロモエチル)ベンゼン(1.46mL、10.6mmol)を添加し、この混合物を50℃で終夜攪拌した。炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、この水相をジクロロメタンで抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮した。この粗生成物を溶離液としてジクロロメタン/メタノールを使用するフラッシュクロマトグラフィーで精製してN−(4−クロロ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド(3.0g、77%)を得た。この生成物をジクロロメタンに溶解し、メタノール中に溶解したフマル酸を添加し、この混合物を濃縮して白色固体としてフマル酸塩としての生成物(3.48g、70%)を得た。
Mp=165〜166℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、385.2048Daを示す。計算値385.204666Da、偏差率0.3ppm。
【0113】
化合物12b〜12tを下表に示した通り化合物12aに応じて調製した。
【化7】


【表4】


【表5】

【0114】
N−(3−メトキシ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミドフマル酸塩(12b)
Mp139〜141℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、381.2538Daを示す。計算値381.254203Da、偏差率−1.1ppm。
【0115】
N−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミドフマル酸塩(12c)
Mp=85〜88℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、395.2325Daを示す。計算値395.233468Da、偏差率−2.4ppm。
【0116】
N−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−N−{1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミドフマル酸塩(12d)
Mp=125〜128℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、429.1958Daを示す。計算値429.194496Da、偏差率3ppm。
【0117】
N−(4−メトキシ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミドフマル酸塩(12e)
Mp=114〜116℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、381.2539Daを示す。計算値381.254203Da、偏差率−0.8ppm。
【0118】
N−{1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−(4−メトキシ−フェニル)−プロピオンアミドフマル酸塩(12f)
LC−ESI−HRMSは、415.2156Daを示す。計算値415.215231Da、偏差率0.9ppm。
【0119】
N−{1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−(3−メトキシフェニル)−プロピオンアミドフマル酸塩(12g)
Mp=136〜139℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、415.2166Daを示す。計算値415.215231Da、偏差率3.3ppm。
【0120】
N−(1−ブタ−3−エニル−ピペリジン−4−イルメチル)−N−フェニル−プロピオンアミドフマル酸塩(12h)
Mp=113〜116℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、301.2268Daを示す。計算値301.227988Da、偏差率−3.9ppm。
【0121】
N−フェニル−N−[1−((E)−3−フェニル−アリル)−ピペリジン−4−イルメチル]−プロピオンアミドフマル酸塩(12i)
Mp=38〜41℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、363.2436Daを示す。計算値363.243638Da、偏差率−0.1ppm。
【0122】
N−{1−[2−(4−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−フェニル−プロピオンアミドフマル酸塩(12j)
Mp=141〜143℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、369.2356Daを示す。計算値369.234216Da、偏差率3.7ppm。
【0123】
N−{1−[2−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−フェニル−プロピオンアミドフマル酸塩(12k)
Mp=142〜145℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、369.2339Daを示す。計算値369.234216Da、偏差率−0.9ppm。
【0124】
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミドフマル酸塩(12l)
Mp=126〜128℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、369.233Daを示す。計算値369.234216Da、偏差率−3.3ppm。
【0125】
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミドフマル酸塩(12m)
Mp=130〜133℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、387.2245Daを示す。計算値387.224794Da、偏差率−0.8ppm。
【0126】
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(4−メトキシ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミドフマル酸塩(12n)
Mp=132〜134℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、399.2453Daを示す。計算値399.244781Da、偏差率1.3ppm。
【0127】
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(4−フルオロフェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミドフマル酸塩(12o)
Mp=145〜147℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、387.225Daを示す。計算値387.224794Da、偏差率0.5ppm。
【0128】
N−(3−フルオロ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミドフマル酸塩(12p)
Mp=58〜60℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、369.2329Daを示す。計算値369.234216Da、偏差率−3.6ppm。
【0129】
N−(3−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(4−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミドフマル酸塩(12q)
Mp=65〜67℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、387.2256Daを示す。計算値387.224794Da、偏差率2.1ppm。
【0130】
N−(3−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミドフマル酸塩(12r)
Mp=142〜145℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、387.2233Daを示す。計算値387.224794Da、偏差率−3.9ppm。
【0131】
N−ベンジル−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミドフマル酸塩(12s)
Mp=46〜49℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、365.2591Daを示す。計算値365.259288Da、偏差率−0.5ppm。
【0132】
N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−N−フェニル−アセトアミドフマル酸塩(12t)
Mp=207〜208℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、337.2284Daを示す。計算値337.227988Da、偏差率1.2ppm。
【0133】
N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−N−フェニル−プロピオンアミド塩酸塩(12u)
N−フェニル−N−ピペリジン−4−イル−メチル−プロピオンアミド(0.30g、1.22mmol)、2−フェネチルブロミド(0.27g、1.46mmol)、鉱油中の60%水酸化ナトリウム(0.06g、1.5mmol)及びテトラヒドロフラン(15ml)を60℃で15時間、次いで室温で70時間攪拌した。水(20ml)を添加し、この混合物をジエチルエーテル(2×30ml)で抽出した。このジエチルエーテル相を水(20ml)で洗浄した。塩化水素エタノール溶液の添加によって塩酸塩を析出した。このゴム様の固体を水(20ml)の添加によって更に精製し、ジエチルエーテル(20ml)で洗浄した。水酸化ナトリウム水溶液(10ml、1M)の添加によって、この水性混合物をアルカリ性にし、ジエチルエーテル(2×20ml)で抽出した。エタノール中の塩化水素の添加によって、この塩酸塩を析出した。収量0.27g(63%)。Mp=152℃。
【0134】
化合物11v〜11yを下表に示された通り化合物11uに応じて調製した。
【化8】


【表6】

【0135】
N−(1−ベンジル−ピペリジン−4−イルメチル)−N−フェニル−プロピオンアミドフマル酸塩(12v)
Mp=58〜60℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、337.2267Daを示す。計算値337.227988Da、偏差率−3.8ppm。
【0136】
N−[1−(4−クロロ−ベンジル)−ピペリジン−4−イルメチル]−N−フェニル−プロピオンアミドフマル酸塩(12×)
Mp=148〜150℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、371.1897Daを示す。計算値371.189016Da、偏差率1.8ppm。
【0137】
N−{1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−フェニル−プロピオンアミドフマル酸塩(12y)
Mp=157〜158℃。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、385.2028Daを示す。計算値385.204666Da、偏差率−4.8ppm。
【0138】
(実施例13)
N−フェニル−N−ピペリジン−4−イル−メチル−プロピオンアミド(13)
4−[(フェニル−プロピオニル−アミノ)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(4.85g、14mmol)及び酢酸中の塩化水素(20ml、4M)の混合物を室温で5時間攪拌した。溶媒を蒸発した。水酸化ナトリウム水溶液(20ml、1M)を添加し、この混合物を酢酸エチル(3×30ml)、次いでジクロロメタン(30ml)で抽出した。この粗混合物を、溶離液としてジクロロメタン、メタノール及び濃アンモニア水の溶媒混合物(6:1+1%)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。無色の油としての収量0.30g(9%)。
【0139】
(実施例14)
4−[(フェニル−プロピオニル−アミノ)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(14)
4−フェニルアミノメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(4.07g、14mmol)、無水プロピオン酸(2.19g、16.8mmol)、トリエチルアミン(1.7g、16.8mmol)及びテトラヒドロフラン(80ml)の混合物を還流しながら15時間攪拌した。水(100ml)を添加し、この混合物をジエチルエーテル(2×60ml)で抽出した。このジエチルエーテル相を水(2×50ml)で洗浄した。収量5.05g(100%)。
【0140】
(実施例15)
4−フェニルアミノメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(15)
4−アミノメチル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(10.13g、47.3mmol)、ブロモベンゼン(8.2g、52mmol)、パラダサイクル(palladacycle)(0.30g、0.32mmol)、カリウムtert−ブトキシド(11.1g、99.3mmol)及びジオキサン(50ml)を100℃で15時間攪拌した。水(100ml)を添加し、次いでジエチルエーテル(3×50ml)で抽出した。このジエチルエーテル相を水(2×50ml)で洗浄した。この混合物を乾燥し、蒸発した。この粗混合物を、溶離液としてジクロロメタン、メタノール及び濃アンモニア水の溶媒混合物(6:1+1%)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。収量6.18g(45%)。
【0141】
試験実施例
結合データ
上記化合物を、ヒト組み換えオピエートδ−、κ−及びμ受容体を使用する結合アッセイにおいて試験した。Simonin Fら[Simonin Fら、Mol.Pharmacol.、46(6)、1015〜21頁、1994年]、Simonin Fら[Simonin Fら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92(15)、7006〜10頁、1995年]、及びWang JBら[Wang JBら、FEBS Lett.、348(1)、75〜9頁、1994年]によって先に記載されたように、このアッセイを行った。
【0142】
この試験結果は下記の表1に示されている。
【0143】
【表7】

【0144】
更に、1つの化合物(化合物12u)をモルモットの回腸における機能活性について試験した。このアッセイは、Maguire Pら[Maguire Pら、Eur.J.Pharmacol.、213(2)、219〜25頁、1992年]によって先に記載されたように行った。
【0145】
化合物12uは、92nMのEC50の有意なμアゴニスト活性を示した。
【0146】
インビトロ阻害活性
いくつかの化合物を、WO97/16451に記載されたように、シナプトソームにおけるモノアミン神経伝達物質のドーパミン(DA)、ノルアドレナリン(NA)及びセロトニン(5−HT)の再取り込みを阻害するその能力について試験した。
【0147】
試験値はIC50H−DA、H−NA、又はH−5−HTの特異的結合を50%阻害する試験物質の濃度(μM))として与えられる。
【0148】
本発明の選択した化合物を試験することによって得られた試験結果を下表に示す。
【0149】
【表8】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、
【化1】


任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容されるその塩
[式中、
nは1又は2であり、
は、水素、アルキル又はRを表し、
このアルキルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で場合によって置換されており、
は、R又は−CH−Rを表し、
は、R、−CH=CH−R又は−CH=CHを表し、
互いに独立なR、R及びRは、アリール基を表し、
このアリール基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルコキシアルキル、シクロアルコキシアルキル、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、スルファニル、チオアルコキシ、−NR’R”、−(C=O)NR’R”又は−NR’(C=O)R”からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で場合によって置換され、
ここで、互いに独立なR’及びR”は水素又はアルキルである]。
【請求項2】
式IIの化合物、
【化2】


任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容されるその塩
[式中、
は、水素、アルキル又はRを表し、
このアルキルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で場合によって置換され、
互いに独立なR、R及びRは、アリール基を表し、
このアリール基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルコキシアルキル、シクロアルコキシアルキル、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、スルファニル、チオアルコキシ、−NR’R”、−(C=O)NR’R”又は−NR’(C=O)R”からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で場合によって置換されており、
ここで、互いに独立なR’及びR”は水素又はアルキルである]
である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がアルキルを表す、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
が場合によって置換されたフェニルを表す、請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
が場合によって置換されたフェニルを表す、請求項1から4までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
N−(4−クロロ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−(3−メトキシ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−N−{1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミド;
N−(4−メトキシ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−{1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−(4−メトキシ−フェニル)−プロピオンアミド;
N−{1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−(3−メトキシ−フェニル)−プロピオンアミド;
N−(1−ブタ−3−エニル−ピペリジン−4−イルメチル)−N−フェニル−プロピオンアミド;
N−フェニル−N−[1−((E)−3−フェニル−アリル)−ピペリジン−4−イルメチル]−プロピオンアミド;
N−{1−[2−(4−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−フェニル−プロピオンアミド;
N{1−[2−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−フェニル−プロピオンアミド;
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミド;
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(4−メトキシ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミド;
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(4−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミド;
N−(3−フルオロ−フェニル)−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−(3−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(4−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミド;
N−(3−フルオロ−フェニル)−N−{1−[2−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−プロピオンアミド;
N−ベンジル−N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−プロピオンアミド;
N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イルメチル)−N−フェニル−アセトアミド;
N−(1−フェネチル−ピペリジン−4−イル−メチル)−N−フェニル−プロピオンアミド;
N−(1−ベンジル−ピペリジン−4−イルメチル)−N−フェニル−プロピオンアミド;
N−[1−(4−クロロ−ベンジル)−ピペリジン−4−イルメチル]−N−フェニル−プロピオンアミド;
N−{1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−ピペリジン−4−イルメチル}−N−フェニル−プロピオンアミド;
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
少なくとも1種の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と共に、治療有効量の、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物。
【請求項8】
ヒトを含めた哺乳類の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は緩和用の医薬組成物の製造のための、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容されるその塩の使用であって、該疾患、障害又は状態はオピオイド受容体のモジュレーションに応答するものである使用。
【請求項9】
オピオイド受容体のモジュレーションに応答する疾患、障害又は状態が、疼痛、術後疼痛、慢性疼痛、癌性疼痛、神経因性疼痛、陣痛及び分娩痛、片頭痛、薬物嗜癖、ヘロイン嗜癖、コカイン嗜癖、アルコール中毒、過敏性腸症候群、便秘、悪心、嘔吐、掻痒性皮膚病、アレルギー性皮膚炎、アトピー、摂食障害、オピエート過剰摂取、うつ病、喫煙、性的機能不全、ショック、脳卒中、脊椎損傷、頭部外傷、下痢、尿失禁及び炎症反応である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ヒトを含めた生きている動物体の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は緩和の方法であって、該障害、疾患又は状態はオピオイド受容体のモジュレーションに応答し、該方法が、それを必要とするこのような生きている動物体に、治療有効量の請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む上記方法。

【公表番号】特表2009−526815(P2009−526815A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554765(P2008−554765)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051400
【国際公開番号】WO2007/093603
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】