説明

1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンの精製方法

【課題】1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンまたは1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン−1−オールに含まれるパーフルオロアルカン酸、パーフルオロアルカン酸エステル、およびパーフルオロアルキルヨウ化物の含量を低減させる方法を提供する。
【解決手段】パーフルオロアルカン酸、そのエステル、もしくはパーフルオロアルキルヨウ化物からなる不純物を含有する1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンまたは1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン−1−オールを、エタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロピルアルコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等の有機添加剤の存在下で少なくとも175℃の温度に加熱する上記不純物の含量低減方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微量のパーフルオロアルカン酸不純物がフッ素化アルコールの製造で使用される中間体に生じる恐れがある。フッ素化中間体において、さらにはこのような中間体を使用した様々なポリマー生成物の製造中においても、これらの不純物の形成が制限されることが望ましい。さらに、フッ素化中間体、ならびに2−パーフルオロアルキルエチルアルコールとのそのエステルやパーフルオロアルキルヨウ化物などの潜在的パーフルオロアルカン酸前駆体のポリマー生成物での発生をなくし、または大幅に低減させることも望ましい。これらの両クラスの化合物は加水分解および/または酸化によって容易に分解して、パーフルオロアルカン酸が形成される恐れがある。
【0003】
フッ素化アルコールは、硬質表面処理基材と軟質表面処理基材用の撥水・撥油剤、ならびに汚れおよび染みの落ちやすい組成物を調製するための中間体として広く使用されている。このような基材には、建築用石やタイルなどの建築材料;衣料およびカーペットで使用される天然および合成の繊維からのテキスタイルおよび布地;ならびに他の表面が含まれる。フルオロテロマーアルコールは、これらの用途で使用する特定のクラスのフッ素化アルコールである。フルオロテロマーアルコールを複数のプロセスで工業的に調製することができ、ペンタフルオロエチルヨウ化物とテトラフルオロエチレンとのテロメリゼーションによって、パーフルオロアルキルヨウ化物F(CFCFIが生じ;これらのパーフルオロアルキルヨウ化物とエチレンとの反応によって、構造F(CFCFCHCHIを有する1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンが生成し;続いて加水分解して、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン−1−オールF(CFCFCHCHOHが生じることが含まれる。
【0004】
米国特許公報(特許文献1)には、ブラデル(Bladel)らが乳化剤として有用な高フッ素化カルボン酸をフルオロポリマー分散液から回収する方法を開示している。フッ素化酸を生成物流から回収する方法では、フッ素化酸は破壊されず、相当の酸残渣が抽出液体生成物に残る恐れがある。
【0005】
(特許文献2)には、水に溶解して、200℃以下の温度で24時間後に、酸素または窒素で中断されているフルオロカーボンを有する水溶性フッ素含有カルボン酸を分解・除去する方法が記載されている。パーフルオロアルカン酸(特に、熱的により安定なその線状異性体)およびそのエステルは、これらの反応条件下で実質的により安定であり、比較的水不溶性である。この方法では、パーフルオロアルカン酸、そのエステル、およびパーフルオロアルキルヨウ化物不純物はフッ素化アルコールから選択的に除去されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/125421号明細書
【特許文献2】特開2003/267900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、パーフルオロアルカン酸、そのエステル、およびパーフルオロアルキルヨウ化物をフッ素化アルコールから除去する方法を開発することが望ましい。本発明は、このような方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フッ素化アルコール中のパーフルオロアルカン酸またはその塩、パーフルオロアルカン酸エステル、およびパーフルオロアルキルヨウ化物のレベルを選択的に低減させるための方法であって、前記酸、塩、エステル、および/もしくはヨウ化物を含有するフッ素化アルコールまたはその混合物を、水および少なくとも1つの塩基添加剤の存在下で少なくとも175℃の温度に加熱するステップを含む方法を含む。
【0009】
本発明は、1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンの存在下でパーフルオロアルカン酸およびその塩のレベルを選択的に低減させるための方法であって、1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン、または前記パーフルオロアルカン酸もしくはその塩を含有するその混合物を、少なくとも1つの有機添加剤の存在下で少なくとも175℃の温度に加熱するステップを含む方法をさらに含む。
【0010】
本発明は、上記の方法のそれぞれによって調製された生成物をさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、商標は大文字で示す。
【0012】
本明細書では、用語「(メタ)アクリル酸の」および「(メタ)アクリラート」は、アクリル酸のおよびメタクリル酸の;ならびにアクリラートおよびメタクリラートをそれぞれ表す。
【0013】
本明細書では、用語「フッ素化アルコール」は、式1の構造の化合物、またはその混合物:
−(CHOH 式1
(式中、mは2または3であり、Rは、線状または分枝状のC(2n+1)であり、nは2〜約20である)を表す。
【0014】
本明細書では、用語「フルオロテロマーアルコール」は、式1の構造の化合物(式中、m=2)を表す。
【0015】
本明細書では、用語「パーフルオロアルキルヨウ化物」は、式2の構造の1−ヨードパーフルオロアルカン、またはその混合物:
−I 式2
(式中、Rは上記に定義する通りである)を表す。
【0016】
本明細書では、用語「フルオロテロマーヨウ化物」は、式3の構造の化合物、またはその混合物:
−CH−CH−I 式3
(式中、Rは上記に定義する通りである)を表す。
【0017】
本明細書では、用語「パーフルオロアルカン酸」および「パーフルオロアルカン酸エステル」は、式4の構造の化合物、またはその混合物:
−COOR 式4
(式中、Rは上記に定義する通りであり、パーフルオロアルカン酸では、RはHであり、あるいはパーフルオロアルカン酸エステルでは、Rはエステル形成中の水の脱離反応後のフルオロアルコールを含めて、任意のアルコールの残基である)を表す。
【0018】
本発明の方法は、フッ素化アルコール中の特有のパーフルオロアルキル不純物のレベルを大幅に低減させる。これらの不純物には、パーフルオロアルカン酸またはその塩、パーフルオロアルキルヨウ化物、およびフルオロテロマーアルコールのパーフルオロアルカン酸エステル;ならびにイソプロピルアルコールなど、処理助剤として使用される他のアルコールのパーフルオロアルカン酸エステルも含まれる。
【0019】
本発明の第1の実施形態では、本発明の方法は、上記に指摘したような不純物を含有する単独または混合物のフッ素化アルコールを、水および少なくとも1つの塩基添加剤の存在下、約175℃を超える温度で熱処理するステップを含む。好ましくは、熱処理は、約185℃超、より好ましくは約195℃超である。不純物の分解は、温度が低いほど遅くなり、特に約175℃未満で実用的でなくなる。熱処理の上限温度は、約225℃、好ましくは約215℃である。この温度範囲を超えると、競合反応によって、さらなる望ましくない不純物が生成する恐れがある。熱処理を、水および1つまたは複数の塩基添加剤の存在下で実施する。任意選択的に、熱処理を水素原子供与体の存在下でも実施する。
【0020】
熱処理では、水が、処理対象のフルオロテロマーアルコールの重量を基準にして全量で好ましくは約5%〜約50%、好ましくは約10%〜約20%存在する。加水分解は、より高い水濃度の存在下で進行するが、反応体積が増大し、何の利点ももたらされない。水によって、パーフルオロアルカン酸エステルおよびパーフルオロアルキルヨウ化物の加水分解および除去が容易になる。ある種の場合には、いくらかの水が、処理対象のフルオロテロマーアルコール中に存在することがあり、この含水量を考慮に入れて、熱処理に必要とされる追加の水量を決定する。
【0021】
本発明の実施での使用に適した塩基添加剤は、パーフルオロアルカン酸との塩または錯体を形成することができるブレンステッド塩基であり、これには、アンモニア、および塩化アンモニウムなどその一般的な塩;第一級、第二級、および第三級アミン、ならびにその塩;アルカリ金属水酸化物;ならびに炭酸塩、重炭酸塩、および酢酸塩などのアルカリ金属塩;ならびにその混合物からなる群から選択されるものが含まられるが、これらに限定されない。最も有効的な塩基添加剤を、通常はフルオロテロマーアルコールの重量を基準にして約0.1重量%〜約5重量%のレベルで使用する。約0.1%〜約2%のレベルが好ましい。
【0022】
フッ素化アルコール、水、1つまたは複数の塩基添加剤、および任意選択の水素供与体(下記を参照のこと)を一緒に混合し、加熱中に撹拌する。
【0023】
熱処理の過程において着色をもたらす副反応を最小限に抑えることは、最終フルオロテロマーアルコールの品質を制御するのに有利な態様である。塩基添加剤の選択は、着色に影響を及ぼす。色は、微量に存在する窒素および硫黄の化合物からの複合副生物の形成の結果であり得る。例えば、エタノールアミンまたはジエタノールアミンとの熱処理によって、アンモニアなどのより強い塩基との熱処理の場合より明るい色を有するフルオロテロマーアルコールが生成する。
【0024】
塩基それ自体に加えて、少なくとも1つの水素原子供与体を、熱処理中に使用することもできる。これらの水素原子供与体によって、有機相と水相の相間移動が容易になり、パーフルオロアルキルヨウ化物の分解が促進される。任意選択の有効な水素供与体は、電子供与性置換基を含む有機分子である。好ましい置換基には、アミノ、アルコキシ、およびアルキル置換基が含まれるが、これらに限定されない。適切な水素原子供与体は、グリコール、アルキルアルコール、エーテル、酸、アミン、前述のそれぞれについてその塩、ならびに前述のそれぞれについてその金属錯体から選択される。任意選択の水素供与体は、処理対象のフルオロテロマーアルコールまたはフルオロテロマーヨウ化物材料の重量を基準にして通常は0%〜約20%、好ましくは0%〜約10%、最も好ましくは0重量%〜約5重量%で使用する。有効な水素原子供与体のいくつかの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジ(エチレングリコール)、トリ(1,2−プロピレングリコール)、およびテトラグリムなどのグリコール;2−プロパノールなどのアルキルアルコール;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミン、ジイソプロパノールアミン、N−エチル−N−エタノールアミン、およびトリエチルアミンなどのアルキルアミン、ならびにこれらのアミンの塩;アンモニア、および塩化アンモニウムなどその塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
熱処理に続いて、水、または水と希塩基もしくは希酸を組み合わせて用いて洗浄することによって、塩基添加剤、および任意選択の1つまたは複数の水素原子供与体添加剤をフッ素化アルコールから容易に分離する。このような水性抽出に続いて、約0.5〜約40kPa、約60℃〜約100℃で真空乾燥を行う。単離されたフルオロテロマーアルコール中に含まれる残留レベルの塩基添加剤および水素原子供与体は、生成物の品質に検出可能な影響を及ぼさないほど十分に低い。
【0026】
本発明の方法を用いて、パーフルオロアルカン酸またはその塩、パーフルオロアルカン酸エステル、およびパーフルオロアルキルヨウ化物不純物を個々のフッ素化アルコール、またはその同族体の混合物から除去する。本発明の方法によって、C〜C20パーフルオロアルキル不純物のレベルが低減される。アルコールをさらに使用して、ポリウレタン、(メタ)アクリラート、リン酸エステル、および他のポリマーなどの最終生成物を作製する。
【0027】
特定の理論に拘泥するものではないが、反応条件下で、大部分のパーフルオロアルキルラジカルおよび/またはパーフルオロアルキルラジカルアニオンは、供与体から水素原子を抽出して、1H−パーフルオロアルカンを形成すると考えられる。パーフルオロアルキル基は、パーフルオロアルカン酸および/またはその塩の脱カルボキシル化とパーフルオロアルキルヨウ化物のC−I結合の均一開裂とによって生成する。パーフルオロアルキルラジカルアニオンは、一電子移動(SET)機構によってパーフルオロアルキルヨウ化物から形成される。別の望ましくない反応は、脱フッ化水素であって、フルオロテロマーアルコールがフッ化水素を失って、不飽和アルコールを生成し、これが不純物としてフッ素化テロマーアルコール中に残留する(反応1)。
F(CFCHCHOH + OH → F(CF(n−1)CF=CHCHOH + F + H
反応1
(式中、nは2〜20である)。本発明では、アルカリ金属水酸化物の代わりにアルキルアミン、アンモニウム、またはアルカリ金属塩などの処理塩基試薬を慎重に選択することによって、反応1が最小限に抑えられる。
【0028】
本発明の別の実施形態では、単独または混合物のフルオロテロマーヨウ化物を、少なくとも1つの有機添加剤の存在下で熱処理することにより、パーフルオロアルキルヨウ化物、ならびにパーフルオロアルカン酸およびその塩をフルオロテロマーヨウ化物から除去することが可能になる。有機添加剤は、電子供与性置換基を有する。好ましい置換基は、アルコキシ−、アルキル−、アルケニル−、ジ(アルキルもしくはアリール)アミノ−、またはヒドロキシ−置換基である。本明細書での使用に適した有機添加剤には、グリコール、アルキルアルコール、アルキルエーテル、アミド、第三級アミン、およびその塩、ならびに飽和および不飽和の炭化水素が含まれる。1つまたは複数の有機添加剤は、フルオロテロマーヨウ化物の重量を基準にして約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは約0.1%〜約10%、より好ましくは約0.1重量%〜約5重量%のレベルで存在する。最も有効な有機添加剤は、フルオロテロマーヨウ化物の重量を基準にして約5%未満という非常に低い使用量で機能することが判明した。好ましい有機添加剤は、分子量が約28〜約1000である。
【0029】
1つまたは複数の有機添加剤は、好ましくは水溶性および/または比較的揮発性の材料であり、処理した後、水相との接触または蒸発によって容易に分離されて、精製フルオロテロマーヨウ化物が得られる。水相との接触によって容易に除去される有機添加剤の例は、アルコール、トリエタノールアミンなどのトリアルカノールアミン、またはポリエチレングリコールなどのポリアルキルエーテルグリコールである。蒸発によって容易に除去される有機添加剤の例は、エチレンまたはプロピレンである。特に好ましい有機添加剤はイソプロピルアルコールである。また、得られた精製フルオロテロマーヨウ化物を使用して、フルオロテロマーアルコールおよび他の誘導体を調製する。
【0030】
フルオロテロマーヨウ化物の処理についての熱条件は、フルオロテロマーアルコールについて上記に記載した通りである。熱処理は、1つまたは複数の有機添加剤の存在下、任意選択的に水を添加して実施する。任意選択的に、熱処理は、水素原子供与体を含んでもよい。単独または混合物のフルオロテロマーヨウ化物を、有機添加剤と共に、約175℃超、好ましくは約185℃超、より好ましくは約195℃超で加熱する。熱処理の上限温度は、約225℃、好ましくは約215℃である。この温度範囲を超えると、方法が経済的に魅力的でなくなり、望ましくない競合反応が顕著になる恐れがある。
【0031】
本発明の方法に由来する精製するフルオロテロマーアルコールは、実質的に低減された濃度のパーフルオロアルカン酸またはその塩、パーフルオロアルカン酸エステル、およびパーフルオロアルキルヨウ化物を含有する(メタ)アクリル酸エステル、ポリウレタンポリマー、および他の誘導体への変換に有用である。パーフルオロアルカン酸またはその塩、パーフルオロアルカン酸エステル、およびパーフルオロアルキルヨウ化物は、主に1H−パーフルオロアルカンに化学変換される。
【0032】
(材料および試験方法)
混合物1は、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン−1−オールを含むものであり、本願特許出願人から入手した。これ以降、混合物1と呼び、重量による組成を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンを、本願特許出願人から入手した。これ以降、混合物2と呼び、重量による組成を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカン−1−オール、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロオクチルヨウ化物、およびパーフルオロドデシルヨウ化物は、シン−クエスト・ラボラトリーズ、米国フロリダ州アラチュア(Syn−Quest Laboratories, Alachua, FL)から入手可能である。
【0037】
2−パーフルオロオクチル−エタノールのパーフルオロオクタン酸エステルは、直接エステル化によって調製した。
【0038】
(試験方法1)
液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(液体クロマトグラフィー/質量分析/質量分析、LC/MS/MS)を使用することによって、パーフルオロオクタン酸の定量的検出(検出閾値1〜2mg/kg)を行った。既知濃度のパーフルオロオクタン酸標準液を、実験試料の前後に実施して、MS積分領域対試料濃度の較正曲線を得た。既知量のパーフルオロオクタン酸でスパイクされた試料を分析することによって、各実験試料の測定も検証した。液体クロマトグラフィータンデム質量分析法を使用することによって、他のパーフルオロアルカン酸同族体:C11COOHからC19COOHのレベルをパーフルオロオクタン酸の量(単位mg/kg)に比べて確立した。対応するパーフルオロアルカン酸標準液を使用することによって、ピークの同定を検証した。この試験方法のさらに詳細は、B.S.ラーセン(Larsen)ら、「ポリテトラフルオロエチレンポリマーからのパーフルオロオクタン酸の抽出、およびLC/MS/MSによる測定(Extraction of perfluorooctanoic acid from polytetrafluoroethylene polymers and determination by LC/MS/MS)」、228回ACSナショナルミーティング抄録集、米国ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia, PA, United States)、2004年8月22〜26日(2004)、FLUO−021(米国化学会、米国ワシントンDC(American Chemical Society, Washington, DC))に提供されている。
【0039】
(試験方法2)
質量選択検出器を用いたガスクロマトグラフィー(GC/MS)によって、出発材料および最終生成物中のパーフルオロオクチルヨウ化物、パーフルオロドデシルヨウ化物、および2−パーフルオロオクチル−エタノールのパーフルオロオクタン酸エステルの定量的検出を検出閾値1〜2mg/kgで行った。既知濃度のこれらの材料の標準液を使用して、実験試料の前後にGC/MS較正曲線を得た。既知量のこれらの材料の標準液でスパイクされた試料を分析することによって、各実験試料の測定も検証した。
【実施例】
【0040】
パーフルオロオクタン酸および他の不純物の処理前の初期レベルは、プロセス不純物と任意選択のスパイク不純物の組合せであった。
【0041】
(実施例1)
様々な不純物でスパイクされた1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカン−1−オール(4g、シン−クエスト(Syn−Quest)から入手可能)、エタノールアミン(1.5重量%)、および水(10重量%)を、5mLのステンレス製振盪チューブに加え、振盪し、200℃に4時間加熱した。水相を分離した後、試験方法1および2に従って分析を実施した。パーフルオロオクタン酸のレベルは、311mg/kgから12mg/kgに下がった。パーフルオロオクチルヨウ化物のレベルは、161mg/kgから2mg/kg未満に下がった。パーフルオロオクタン酸エステルのレベルは、170mg/kgから2mg/kg未満に下がった。
【0042】
(実施例2)
1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン−1−オール4.5g(混合物1、平均MW=481、パーフルオロドデシルヨウ化物でスパイク)、ジエタノールアミン(1.7重量%)、および水(11重量%)の混合物を、5mLのステンレス製振盪チューブに加え、200℃に4時間加熱した。水相を分離した後、試験方法2に従って分析を実施した。1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン−1−オールの混合物中のパーフルオロドデシルヨウ化物のレベルは、188mg/kgから3mg/kgに下がった。
【0043】
(実施例3)
1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン−1−オール280g(混合物1、0.582mol、平均MW=481)、エタノールアミンNHCHCHOH(4.2g、0.069mol、1.5重量%)、水(28g、10重量%)、およびイソプロピルアルコール、MW=60(14g、5重量%)の混合物を、400mLのステンレス製振盪チューブに加え、振盪し、200℃に4時間加熱した。パーフルオロオクチルヨウ化物(190mg/kg)、およびパーフルオロオクタン酸エステル(80mg/kg)。処理後、水相を分離してから、試験方法1および2に従って分析を実施した。パーフルオロオクタン酸のレベルは、100mg/kgから6mg/kgに下がった。パーフルオロオクチルヨウ化物のレベルは、190mg/kgから2mg/kg未満に下がった。パーフルオロオクタン酸エステルのレベルは、80mg/kgから2mg/kg未満に下がった。
【0044】
(実施例4)
1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン−1−オール450g(混合物1、0.936mol、平均MW=481)、エタノールアミン(6.75g、1.5重量%)、および水(45g、10重量%)の混合物を、400mLのステンレス製振盪チューブに加え、振盪し、200℃に4時間加熱した。水相を分離した後、試験方法1および2に従って分析を実施した。パーフルオロオクタン酸のレベルは、100mg/kgから4mg/kgに下がった。パーフルオロオクチルヨウ化物のレベルは、190mg/kgから2mg/kg未満に下がった。パーフルオロオクタン酸エステルのレベルは、80mg/kgから2mg/kg未満に下がった。
【0045】
(実施例5)
1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン−1−オール4.17g(混合物1、平均MW=481)、ジエタノールアミンNH(CH2CH2OH)2(0.09g、2.1重量%)、水(0.2g、4.9重量%)の混合物を、5mLのステンレス製振盪チューブに加え、195℃に4時間加熱した。水相を分離した後、試験方法1および2に従って分析を実施した。1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン−1−オールの混合物中のパーフルオロオクタン酸のレベルは、80mg/kgから4mg/kgに下がった。C11COOHの最終レベルは5〜8mg/kgであり、C13COOHは4mg/kg未満であり、C17COOHおよびC19COOHは検出未満であった。パーフルオロオクチルヨウ化物のレベルは、90mg/kgから2mg/kg未満に下がった。
【0046】
(実施例6)
1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン250g(混合物2、平均MW=591)、およびイソプロパノール(5重量%)の混合物を、400mLのインコネル(Inconell)振盪チューブに加え、190℃に12時間加熱した。試験方法1および2に従って、分析を実施した。パーフルオロオクチルヨウ化物のレベルは、320から14mg/kgに下がり、パーフルオロオクタン酸のレベルは、45から2mg/kgに下がった。
【0047】
(実施例7)
1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン450g(混合物2、平均MW=591)、およびモノメトキシ−ポリエチレングリコール(MW=350、0.75重量%)の混合物を、400mLのステンレス製振盪チューブに加え、195℃に4時間加熱した。試験方法1および2に従って、分析を実施した。パーフルオロオクチルヨウ化物のレベルは、320から23mg/kgに下がり、パーフルオロオクタン酸のレベルは、45から12mg/kgに下がった。
【0048】
(実施例8〜18)
混合物1に対する重量パーセントとして表3に列挙された量の添加剤と組み合わせた1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン−1−オール(実施例8〜18では、3〜5g、混合物1、平均MW=481)の混合物を、振盪チューブに加え、表3に指定された温度に列挙した時間加熱した。分離した後、試験方法1および2に従って分析を実施した。不純物の出発レベルおよび最終レベルは、表3に列挙する通りであった。
【0049】
【表3】

【0050】
チタナートA(Titanate A)は、本願特許出願人から入手した80%のチタン(IV)(トリエタノールアミンアミナト)イソプロポキシドと20%のイソプロピルアルコールである;
DEA= ジエタノールアミン;
EA= エタノールアミン;
PEG−200= 平均MW=200のポリエチレングリコール;
IPA = イソプロピルアルコール;
iPr= イソプロピル;
ND= 検出不可能、検出限界1〜2mg/kg、試験方法1および2を参照のこと。
以下に、本発明の好ましい態様を示す。
1. フッ素化アルコール中のパーフルオロアルカン酸またはその塩、パーフルオロアルカン酸エステル、およびパーフルオロアルキルヨウ化物のレベルを選択的に低減させるための方法であって、前記酸、塩、エステル、もしくはヨウ化物を含有するフッ素化アルコールまたはその混合物を、水および少なくとも1つの塩基添加剤の存在下で少なくとも約175℃の温度に加熱するステップを含むことを特徴とする方法。
2. 前記フッ素化アルコールが、式Rf(CH2mOH(式中、Rfは−Cn(2n+1)であり、nは2〜約20、またはその混合であり、mは2〜3である)で表されることを特徴とする1.に記載の方法。
3. 前記塩基がブレンステッド塩基であることを特徴とする1.に記載の方法。
4. 前記塩基添加剤が、アンモニア、アンモニア塩、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、アミン塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩、およびその混合物からなる群から選択されることを特徴とする1.に記載の方法。
5. 前記塩基添加剤または塩基添加剤の混合物が、前記フッ素化アルコールの約0.1重量%〜約20重量%のレベルで存在することを特徴とする4.に記載の方法。
6. 少なくとも1つの追加の水素原子供与体の存在下で加熱するステップをさらに含むことを特徴とする1.に記載の方法。
7. 前記水素原子供与体が、電子供与性置換基を含む有機分子であることを特徴とする6.に記載の方法。
8. 前記水素原子供与体が、グリコール、アルキルアルコール、エーテル、酸、アミン、前述のそれぞれについてその塩、および前述のそれぞれについてその金属錯体からなる群から選択されることを特徴とする6.に記載の方法。
9. 前記水素原子供与体が、前記フッ素化アルコールの0〜約20重量%のレベルで存在することを特徴とする6.に記載の方法。
10. 前記フッ素化アルコールおよび塩基添加剤を、加熱中に撹拌することを特徴とする1.に記載の方法。
11. 前記フッ素化アルコールの分離をさらに含むことを特徴とする1.に記載の方法。
12. 前記塩基添加剤の選択によって、着色を最小限に抑えることを特徴とする1.または6.に記載の方法。
13. 前記加熱するステップが、約175℃〜約225℃の温度で行われることを特徴とする1.または6.に記載の方法。
14. 1.に記載の方法の生成物。
15. 1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンの存在下で、パーフルオロアルカン酸およびその塩のレベルを選択的に低減させるための方法であって、前記パーフルオロアルカン酸またはその塩を含有する1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンまたはその混合物を、少なくとも1つの有機添加剤の存在下で少なくとも175℃の温度に加熱するステップを含むことを特徴とする方法。
16. 前記1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンが、式RfCH2CH2I(式中、Rfは−Cn(2n+1)であり、nは2〜約20である)で表されることを特徴とする15.に記載の方法。
17. 前記有機添加剤が、電子供与性置換基を有する化合物であることを特徴とする15.に記載の方法。
18. 前記有機添加剤が、グリコール、アルキルアルコール、アルキルエーテル、アミド、第三級アミン、その塩、飽和および不飽和の炭化水素からなる群から選択されることを特徴とする15.に記載の方法。
19. 前記有機添加剤の分子量が、約28〜約1000であることを特徴とする15.に記載の方法。
20. 前記有機添加剤がイソプロピルアルコールであることを特徴とする15.に記載の方法。
21. 前記有機添加剤または有機添加剤の混合物が、1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンの0.1重量%〜約20重量%のレベルで存在することを特徴とする15.に記載の方法。
22. 前記加熱するステップが、約175℃〜約225℃の温度で行われることを特徴とする15.に記載の方法。
23. 水の存在下で加熱するステップをさらに含むことを特徴とする15.に記載の方法。
24. 前記パーフルオロアルカン酸、その塩、1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカン、および有機添加剤を、加熱中に撹拌することを特徴とする15.に記載の方法。
25. 前記1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンの分離をさらに含むことを特徴とする15.に記載の方法。
26. 15.に記載の方法の生成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンの存在下で、パーフルオロアルカン酸およびその塩のレベルを選択的に低減させるための方法であって、前記パーフルオロアルカン酸またはその塩を含有する1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンまたはその混合物を、少なくとも1つの有機添加剤の存在下で少なくとも175℃の温度に加熱するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンが、式RfCH2CH2I(式中、Rfは−Cn(2n+1)であり、nは2〜20である)で表されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記有機添加剤が、グリコール、アルキルアルコール、アルキルエーテル、アミド、第三級アミン、その塩、飽和および不飽和の炭化水素からなる群から選択される、分子量が28〜1000の化合物であり、前記1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンの0.1重量%〜20重量%のレベルで存在することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記有機添加剤がイソプロピルアルコールであることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
水の存在下で加熱するステップをさらに含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記1−ヨード−1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルカンを分離するステップをさらに含むことを特徴とする請求項に記載の方法。

【公開番号】特開2012−116862(P2012−116862A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−29513(P2012−29513)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【分割の表示】特願2007−540383(P2007−540383)の分割
【原出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】