説明

1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドまたはその塩の製造方法

【課題】本発明は、汎用設備を用いて、より低温下であるにも拘わらず、短時間での反応が可能であり、安全かつ操作が簡易な安全な方法によって、1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドまたはその塩を高収率且つ高純度で製造する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の方法は、1−シアノ−3−オクチルグアニジンまたはその塩と、3,4−ジクロロベンジルアミンまたはその塩とを、エステル系有機溶媒中で反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドまたはその塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(1)
【0003】
【化1】

【0004】
で表される1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド(以下、単に「化合物A」という場合がある)またはその塩は、高い抗菌活性を有する化合物である。従って、当該化合物を有効成分とする殺菌剤について研究が進められている。
【0005】
従来、上記化合物Aは、特許文献1に記載の方法で製造されている。
【0006】
即ち、特許文献1には、式(2)
【0007】
【化2】

【0008】
で表される化合物と式(3)
【0009】
【化3】

【0010】
で表される化合物とを反応させて化合物Aを製造する方法が記載されている。
【0011】
特許文献1に記載の方法によれば、上記化合物(2)と化合物(3)との反応は、例えば2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール、o−ジクロロベンゼン、メシチレン等の溶媒の存在下または不存在下で行われる。
【0012】
しかしながら、上記溶媒のうち、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール、及びo−ジクロロベンゼンは、いずれも染色体試験で陽性を示す、変異原性、催奇性等の望ましくない性質を有しており、医薬品製造時の溶媒には適していない。さらにo−ジクロロベンゼンは、沸点が高い問題点も有している。従って、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール、及びo−ジクロロベンゼンは、化合物Aの工業的製造に用いることはできない。従って、特許文献1においても、具体的に実施例で用いられているのは、上記溶媒のうちメシチレンのみである。
【0013】
特許文献1の実施例1には、溶媒としてメシチレンを用い、化合物(2)と化合物(3)の塩酸塩とを還流下に加熱して化合物Aの1塩酸塩を製造する方法が具体的に記載されている。しかしながら、この方法における収率は、化合物(2)を基準にして53.1%、化合物(3)の塩酸塩を基準にして56.9%と低く、到底満足できるものではない。さらに、当該反応は、メシチレンの沸点である162−164℃という高温下で行うため、特殊な加熱装置が必要となり、汎用設備による工業化が極めて困難である。
【0014】
このように、上記の従来の方法では、化合物Aを工業的に製造することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平5−194361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、汎用設備を用いて、より低温下であるにも拘わらず、短時間での反応が可能であり、安全かつ操作が簡易な安全な方法によって、化合物Aまたはその塩を高収率且つ高純度で製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上記課題を解決するために、より安全で、取り扱いが容易な化合物Aまたはその塩の製造方法について鋭意研究を重ねて来た。特殊な加熱装置の使用を回避するために低沸点溶媒の使用が考えられるが、種々の低沸点溶媒の使用によっても化合物Aまたはその塩の収率を向上させることができなかった。本発明者は、低沸点溶媒についてさらに検討を加えた結果、特定のエステル系有機溶媒を用いた場合に限り、上記課題を一挙に解決できることを見出した。本発明はこのような知見に基づき完成されたものである。
【0018】
本発明は、下記項1〜7に示す、1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドまたはその塩の製造方法を提供する。
【0019】
項1.式(2)
【0020】
【化4】

【0021】
で表される1−シアノ−3−オクチルグアニジンまたはその塩と式(3)
【0022】
【化5】

【0023】
で表される3,4−ジクロロベンジルアミンまたはその塩とを、エステル系有機溶媒中で反応させる、式(1)
【0024】
【化6】

【0025】
で表される1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドまたはその塩の製造方法。
【0026】
項2.エステル系有機溶媒が、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル及びプロピオン酸n−プロピルからなる群より選ばれた少なくとも1種の溶媒である項1に記載の製造方法。
【0027】
項3.エステル系有機溶媒が酢酸n−ブチルである、項2に記載の製造方法。
【0028】
項4.酸の存在下で反応させる、項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【0029】
項5.酸が塩酸、硫酸、燐酸及び臭化水素酸からなる群より選択される少なくとも1種である項4に記載の製造方法。
【0030】
項6.式(4)
N−(CHCH (4)
で表されるn−オクチルアミンまたはその塩と式(5)
M−N(CN) (5)
[式中、Mはアルカリ金属を示す。]
で表される化合物またはその塩とを、エステル系有機溶媒中で反応させて、式(2)
【0031】
【化7】

【0032】
で表される1−シアノ−3−オクチルグアニジンまたはその塩を得る工程、及び
前記工程で得られる1−シアノ−3−オクチルグアニジンまたはその塩と式(3)
【0033】
【化8】

【0034】
で表される3,4−ジクロロベンジルアミンまたはその塩とを、エステル系有機溶媒中で反応させる工程、
を含む、式(1)
【0035】
【化9】

【0036】
で表される1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドまたはその塩の製造方法。
【0037】
項7.式(4)
N−(CHCH (4)
で表されるn−オクチルアミンまたはその塩と式(5)
M−N(CN) (5)
[式中、Mはアルカリ金属を示す。]
で表される化合物またはその塩とを、エステル系有機溶媒中で反応させて、式(2)
【0038】
【化10】

【0039】
で表される1−シアノ−3−オクチルグアニジンまたはその塩を生成させ、次いで1−シアノ−3−オクチルグアニジンまたはその塩を単離することなく引き続き反応溶液に式(3)
【0040】
【化11】

【0041】
で表される3,4−ジクロロベンジルアミンまたはその塩を加えて、1−シアノ−3−オクチルグアニジンまたはその塩と3,4−ジクロロベンジルアミンまたはその塩とを反応させる、式(1)
【0042】
【化12】

【0043】
で表される1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドまたはその塩の製造方法。
【0044】
本発明の1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドまたはその塩の製造方法を以下に説明する。
反応式−1
【0045】
【化13】

【0046】
化合物(1)またはその塩は、化合物(2)またはその塩と化合物(3)またはその塩とをエステル系有機溶媒中で反応させることによって得ることができる。
【0047】
ここで、用いられるエステル系有機溶媒としては、例えば、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−プロピル、炭酸ジエチル等が挙げられる。
【0048】
該エステル系有機溶媒の中でも、100−140℃付近の沸点を有するものが好ましい。
【0049】
また、該エステル系有機溶媒の種類としては、カルボン酸エステルが好ましい。
【0050】
本発明の方法において、好ましいカルボン酸エステルとしては、例えば、一般式(6)
COOR (6)
[式中、RはC1−3のアルキル基、RはC4−6のアルキル基を示す。]
で表されるカルボン酸エステルが挙げられる。一般式(6)のカルボン酸エステルの具体例としては、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−プロピル等を挙げることができる。さらに好ましくは酢酸n−ブチルを挙げることができる。このようなカルボン酸エステルを使用した場合には、化合物(1)を一段と高収率で製造することができる。
【0051】
上記反応において、化合物(3)は、化合物(2)1モルに対して、通常0.5〜1.5モル、好ましくは0.8〜1.1モル、より好ましくは0.9〜1.0モル用いられる。
【0052】
また、エステル系有機溶媒の使用量は、化合物(2)1gに対して、通常2〜20ml、好ましくは3〜10ml、より好ましくは5〜8mlである。
【0053】
化合物(3)が塩の形態(酸性塩)の場合、反応系内に酸を存在させないのが好ましい。
【0054】
化合物(3)がフリーの形態の場合、反応系内に酸を存在させるのが好ましい。
【0055】
酸の使用量は、化合物(3)に対して0.5〜1.5当量、好ましくは0.8〜1当量である。
【0056】
酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、グルタミン酸等の有機酸;または上記無機酸と有機酸の混合物等が挙げられる。好ましい酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸が挙げられ、さらに好ましくは塩酸が挙げられる。
【0057】
この反応は、加温下で行われ、通常50〜150℃程度、好ましくは100〜140℃程度にて行われ、一般に0.5〜15時間程度で終了する。
【0058】
上記反応式−1で得られる目的化合物は、反応混合物を、例えば、冷却、濾過、濃縮、抽出等の単離操作によって粗反応生成物を分離し、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の通常の精製操作によって、反応混合物から単離精製することができる。
【0059】
化合物(1)の塩が結晶として生成する場合、該化合物の塩の精製は、下記のような再結晶操作により行うのが好ましく、これによって目的物の純度を高くすることができる。再結晶操作は、再結晶溶媒を用いて行われる。再結晶溶媒としては、例えば、水、有機溶媒または水と有機溶媒との混合物が用いられる。有機溶媒としては、水と相溶するものが好適である。その具体例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール等)の他、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
【0060】
具体的には、再結晶操作は、化合物(1)の塩を溶媒に添加し、この混合物を攪拌しながらその再結晶溶媒の沸点の範囲まで加熱して化合物(1)の塩を溶解し、そして得られた溶液を所定の温度まで冷却して結晶を析出させることによって行われる。
【0061】
かくして析出した結晶を、濾過、遠心分離等により分離し、必要に応じて少量の冷溶媒で洗浄した後、乾燥することにより、精製された目的化合物を得ることができる。
【0062】
上記再結晶操作において結晶を析出させるための冷却工程の設定温度は、特に制限されないが、例えば、15%エタノールの場合を例に取れば、化合物(1)の塩の15%エタノール溶液は、好ましくは40℃付近以下、より好ましくは0〜35℃、さらに好ましくは10〜30℃まで冷却される。上記範囲の温度まで冷却することによって高純度の目的化合物を得ることができる。
【0063】
また、化合物(1)の塩が塩酸塩である場合、上記再結晶操作は、再結晶溶媒として、水とエタノール、イソプロパノールのようなアルコール類との混合溶媒を用いて実施するのが好ましい。
【0064】
さらに、上記反応式−1の方法に従って得られる化合物(1)の塩が2塩酸塩の結晶として生成する場合、その結晶は、水または水と有機溶媒との混合溶媒中で攪拌等処理することにより、容易に、1塩酸塩になり得る。
【0065】
より具体的には、溶媒中の化合物(1)の2塩酸塩を、攪拌しながらその溶媒の沸点の範囲まで加熱して溶解した後、得られた溶液を冷却することによって結晶を析出させ、その結晶を、濾過、遠心分離等により分離し、乾燥することにより化合物(1)の1塩酸塩を得ることができる。
【0066】
上記操作のうち冷却工程の温度設定は特に制限されないが、例えば、上記で加熱された化合物(1)の2塩酸塩の溶液は、40℃付近以下、好ましくは0〜35℃、さらに好ましくは10〜30℃まで冷却される。
【0067】
また溶媒中の化合物(1)の2塩酸塩を、加熱溶解せずに懸濁状態で、攪拌等処理し、その結晶を、濾過、遠心分離等により分離し、乾燥することによっても化合物(1)の1塩酸塩を得ることができる。
【0068】
この場合、化合物(1)の2塩酸塩の懸濁液は、特に制限されないが、通常、40℃付近以下、好ましくは0〜35℃、さらに好ましくは10〜35℃の温度で、攪拌される。
【0069】
上記した化合物(1)の2塩酸塩からその1塩酸塩を得る方法の中でも、化合物(1)の2塩酸塩を、溶媒中に加熱溶解せずに、10℃から35℃の水中で攪拌する方法が好ましい。
【0070】
この処理において用いられる有機溶媒としては、水と相溶するものが好適である。その具体例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール等)の他、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
【0071】
上記処理で得られた化合物(1)の1塩酸塩に水和物が付加されている場合、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールを15%以上、好ましくは30%以上含有するアルコール水溶液中で0〜60℃、好ましくは30〜50℃で0.5〜4時間、好ましくは1〜2時間攪拌等処理することにより、容易に、無水和物形になり得る。より具体的には、化合物(1)の1塩酸塩・1/2水和物を、30%以上のエタノール水溶液中、30〜50℃で2時間程度攪拌等処理することにより、化合物(1)の1塩酸塩・無水和物を得ることができる。また、15%のエタノール水溶液の場合40〜60℃以上で2時間程度攪拌等処理することで化合物(1)の1塩酸塩・無水和物を得ることができる。
【0072】
本発明において、出発原料化合物として用いられる式(2)の化合物は、例えば、以下に示す方法により製造される。
反応式−2
【0073】
【化14】

【0074】
[式中、Mはアルカリ金属を示す。]
化合物(2)またはその塩は、式(4)で表される化合物(以下、単に化合物(4)という場合がある)またはその塩と式(5)で表される化合物(以下、化合物(5)という場合がある)またはその塩を反応させて得ることができる。
化合物(5)の好適なアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
本反応は、不活性溶媒中または無溶媒下で行われる。ここで、用いられる不活性溶媒としては、例えば、水;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系有機溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、モノグライム、ジグライム等のエーテル系有機溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系有機溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等の低級アルコール系有機溶媒;酢酸等の脂肪酸系有機溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−プロピル、炭酸ジエチル等のエステル系有機溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶媒;アセトニトリル、ピリジン、DMF、DMSO、ヘキサメチルリン酸トリアミドまたはこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
【0075】
化合物(4)が塩の形態(酸性塩)の場合、反応系内に酸を存在させないのが好ましい。
【0076】
化合物(4)がフリーの形態の場合、反応系内に酸を存在させるのが好ましい。
【0077】
酸の使用量は、化合物(4)に対して0.5〜1.5当量、好ましくは0.8〜1当量である。
【0078】
酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、グルタミン酸等の有機酸;または上記無機酸と有機酸の混合物等が挙げられる。好ましい酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸が挙げられ、さらに好ましくは塩酸が挙げられる。
【0079】
前記の溶媒を用いる場合、その使用量は、化合物(4)1gに対して、通常5〜20ml、好ましくは8〜12ml、より好ましくは9〜11mlである。
【0080】
この反応は、通常50〜150℃程度、好ましくは70〜130℃程度にて行われ、一般に0.5〜40時間程度で終了する。
【0081】
上記の化合物(4)またはその塩と化合物(5)またはその塩との反応をエステル系有機溶媒中で行うことによって、上記反応式−2により示される化合物(2)の合成反応と、化合物(2)を原料として用いる上記反応式−1の反応とを連続して行うことができる。従って、これらの一連の反応工程を、化合物(2)またはその塩を中間体として取り出すことなく行うことが可能となり、大幅な収率向上を達成できる。
【0082】
上記各反応式において用いられる原料化合物は、適切な塩であってもよく、また各反応で得られる目的化合物も適切な塩を形成していてもよい。それらの適切な塩は以下に例示されている塩が挙げられる。
【0083】
適切な塩は、薬理的に許容される塩であって、例えば、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)等の金属塩、アンモニウム塩、炭酸アルカリ金属(例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等)、炭酸水素アルカリ金属(例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等)等の無機塩基の塩;例えば、トリ(低級)アルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン等)、ピリジン、キノリン、ピペリジン、イミダゾール、ピコリン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリン、N−(低級)アルキル−モルホリン(例えば、N−メチルモルホリン等)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等の有機塩基の塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩;ギ酸、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩、ピクリン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、グルタミン酸塩等の有機酸の塩等が挙げられる。
【0084】
また、各反応式において示された原料及び目的化合物には、それらの溶媒和物(例えば、水和物、エタノレート等)も含まれる。好ましい溶媒和物としては水和物が挙げられる。
【0085】
上記反応式−2で得られる目的化合物は、反応混合物を、例えば、冷却した後、濾過、濃縮、抽出等の単離操作によって粗反応生成物を分離し、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の通常の精製操作によって、反応混合物から単離精製することができる。
【発明の効果】
【0086】
本発明によれば、特殊な加熱装置を必要とすることなく、汎用設備を用いる低温下での反応にも拘わらず、短い反応時間で、安全かつ簡単な操作で、しかも高収率で、目的化合物である1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドまたはその塩を製造することができる。また、溶媒としてエステル系有機溶媒を用いることによって、化合物(4)と化合物(5)とを反応させて化合物(2)を合成する反応と、化合物(2)と化合物(3)とを反応させて化合物(1)を合成する反応とを、同一溶媒中及び同一反応容器中で行うことができるという利点も有する。さらに、本発明の方法においては、副生成物が殆ど生じないので、簡単な精製操作を施すことにより、一段と高純度の1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドまたはその塩を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下に参考例、実施例及び比較例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。
【0088】
参考例1 1−シアノ−3−n−オクチルグアニジン
化合物(4)7.00kg(54.16モル)を105リットルの酢酸エチルに溶解し、この溶液を5℃以下まで冷却し、これに濃硫酸2.66kg(27.12モル)を攪拌しながら40℃以下で滴下した。得られた化合物(4)の1/2硫酸塩の懸濁液中に、ナトリウムジシアナミド5.06kg(56.83モル)を加えて、この懸濁液を7時間加熱還流した。反応液を40℃以下に冷却し、これに水70リットルを加えた後、当該溶液を80〜90℃(内温)に加熱して、酢酸エチルを留去した。残留液を40℃以下まで冷却し、これにトルエン70リットルを加え、1−シアノ−3−n−オクチルグアニジンを約50℃で抽出した。分離したトルエン層を水35リットルを用いて約50℃で洗浄した後、このトルエン層を10℃以下に冷却して、約30分攪拌した。析出晶を分離し、トルエン7リットルで洗浄した。得られた結晶を40℃で7.5時間乾燥して、1−シアノ−3−n−オクチルグアニジンを得た。
収量9.11kg(化合物(4)を基準とした収率は85.7%であった)。
白色結晶 融点69−74℃(明確な融点を持たない)
IR(KBr)スペクトル:3439、3296、2916、2164、1659、1556、1160、718、572cm−1
熱重量測定/示差熱分析:73.5℃(弱い)、77.5℃に吸熱ピークが認められた。
H−NMR(CDC1)スペクトル:0.88ppm(t、J=6.6Hz、3H)、1.20−1.38ppm(m、10H)、1.43−1.62ppm(m、2H)、3.17ppm(dd、J=6.9Hz、J=6.0Hz、2H)、5.60−5.70ppm(bs、2H)、5.80−5.95ppm(bs、1H)。
【0089】
参考例2 1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・2塩酸塩の酸分解
1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・2塩酸塩1gを、10%エタノール15mlに溶解し、5時間還流した。下記の条件でHPLC分析した。
【0090】
1−[N−(3,4−ジクロロベンジル)カルバモイル−3−オクチル]グアニジン(保持時間9.84分)が0.91%、1−(N−オクチルカルバモイル)−3−(3,4−ジクロロベンジル)グアニジン(保持時間10.54分)が0.22%生成していた。
HPLC条件:
カラム YMC AM302 4.6mmI.D.×150mm
溶出液 MeCN/0.05M 1−オクタンスルホン酸ナトリウム水溶液/酢酸=700/300/1
検出器 UV 254nm
1−[N−(3,4−ジクロロベンジル)カルバモイル−3−オクチル]グアニジンの物性値は以下の通り:
NMR (DMSO−d) δ:0.86(3H、t、J=6.0Hz)、1.07−1.35(10H、m)、1.35−1.49(2H、m)、2.95−3.15(2H、m)、4.12(2H、d、J=6.3Hz)、6.78−7.40(4H、m)、7.23(1H、dd、J=2.1Hz、J=8.4Hz)、7.46(1H、d、J=2.1Hz)、7.54(1H、d、J=8.4Hz)
1−(N−オクチルカルバモイル)−3−(3,4−ジクロロベンジル)グアニジンの物性値は以下の通り:
NMR (DMSO−d) δ:0.85(3H、t、J=6.6Hz)、1.02−1.40(12H、m)、2.89−2.95(2H、m)、4.33(2H、bs)、5.76−7.00(4H、m)、7.28(1H、dd、J=2.1Hz、J=8.1Hz)、7.52(1H、d、J=2.1Hz)、7.58(1H、d、J=8.1Hz)。
【0091】
実施例1 1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩・1/2水和物
化合物(2)9.82g(0.05モル)と3,4−ジクロロベンジルアミン10.63g(0.05モル)とを酢酸ブチル49ml中に加え、6時間還流した。反応液を減圧濃縮し、残渣に水12mlとイソプロピルアルコール47mlとの混合液を加えて溶解し、この溶液に濃塩酸10.13gを滴下した。得られた混合物を28−30℃で30分攪拌し、析出晶を濾取した。結晶を少量のイソプロピルアルコールで洗浄して23.42g(未乾燥状態)の1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・2塩酸塩を得た。得られた結晶を乾燥することなく、水167ml中に懸濁し、懸濁液を25−27℃で2時間攪拌した後、結晶を濾取した。得られた結晶を少量の水で洗浄後、40℃で20時間乾燥すると、純度99.9%の1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩・1/2水和物が17.05g(81.6%)得られた。
【0092】
実施例2 1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・2塩酸塩
化合物(4)100g(0.774モル)を酢酸n−ブチル1リットル中に溶解し、この中に濃硫酸37.6g(0.383モル)を攪拌しながら加えた。得られた化合物(4)の1/2硫酸塩の懸濁液中に、ナトリウムジシアナミド68.9g(0.774モル)を加え、その懸濁液を3時間加熱還流した。反応液を20℃付近まで冷却し、各々約500mlの(i)5%塩酸、(ii)5%苛性ソーダ水溶液、(iii)5%重曹水液、及び(iv)水を使って、この順に有機層を洗浄した。
【0093】
このようにして得られた化合物(2)の酢酸n−ブチル溶液に、化合物(3)118.5g(0.673モル)、次いで濃塩酸58.4mlを攪拌しながら加えた。反応液を加熱し、約800mlの酢酸n−ブチルを常圧留去した後、この反応液を3.5時間加熱還流した。反応液を40℃付近まで冷却し、これにイソプロパノール900ml、水100ml、及び濃塩酸134mlを加えた。混合液を60〜70℃で1時間攪拌した後、10℃以下に冷却し、析出晶を分離した。得られた結晶をイソプロパノール200mlで洗浄した後、60℃で乾燥して、1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・2塩酸塩を得た。
収量 243.8g(化合物(3)を基準とした収率は81.3%であった)
融点:228.9℃
IR(KBr)スペクトル:2920、1682、1634、1337、1035、820、640cm−1
【0094】
実施例3 1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩・1/2H
化合物Aの2塩酸塩100g(0.225モル)を、15%イソプロパノール水溶液1リットルに加え、化合物Aが溶解するまで混合液を加熱した後、35℃付近まで冷却し、これに種晶0.2gを加え、溶液を25〜35℃で1時間攪拌した。攪拌後の溶液を10℃以下まで冷却し、析出晶を分離した。析出晶を水200mlで洗浄し、wet結晶を得た。
【0095】
このwet結晶を15%イソプロパノール水溶液1リットルから再結晶した後、40℃で乾燥して、1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩・1/2HOの粗結晶を得た。
収量90.54g(化合物Aの2塩酸塩を基準とした収率は96.5%であった)。
純度(HPLC)99.9%以上
粒度:870μmの篩を通過する程度であれば、支障なく目的の用途に使用することができる。
融点:173−174℃
H−NMR(DMSO−d)スペクトル:0.85ppm(t、J=6.8Hz、3H)、1.10−1.50ppm(m、12H)、2.92−3.08ppm(m、2H)、4.33ppm(d、J=6.3Hz、2H)、6.80−7.20ppm(bs、3H)、7.30ppm(d、J=8.4Hz、1H)、7.48−7.62ppm(m、3H)、7.70−7.90ppm(bs、0.5H)
IR(KBr)スペクトル:3316、3190、2928、1584、1549、1152、1032、723cm−1
熱重量測定/示差熱分析:40±10℃、90±10℃、170±5℃に3本の吸熱ピークが認められた。吸熱温度はロットによって多少変動するが、特徴的な3本のピークが認められる。
粉末X線回折スペクトル(2θ):3.6°、7.2゜、10.9゜、18.1°、25.5゜。
【0096】
実施例4 1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩・1/2H
化合物Aの2塩酸塩の粗結晶8.92kgを、15%エタノール水溶液(精製水114リットルとエタノール20リットルの混合溶液中)に加え、当該粗結晶が溶解するまでこの混合液を加熱した。得られた溶液を40℃付近まで冷却し、これに種晶90gを加え、30〜40℃で約2時間攪拌した。この溶液を約10℃まで冷却し、析出晶を遠心分離した。得られた結晶を40℃で乾燥して1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩・1/2HOを得た。
収量8.15kg(化合物Aの2塩酸塩の粗結晶を基準とした収率は97.4%であった)
純度(HPLC)99.6%以上
融点:173−174℃
H−NMR(DMSO−d)スペクトル:0.85ppm(t、J=6.8Hz、3H)、1.10−1.50ppm(m、12H)、2.92−3.08ppm(m、2H)、4.33ppm(d、J=6.3Hz、2H)、6.80−7.20ppm(bs、3H)、7.30ppm(d、J=8.4Hz、1H)、7.48−7.62ppm(m、3H)、7.70−7.90ppm(bs、0.5H)
IR(KBr)スペクトル:3316、3190、2928、1584、1549、1152、1032、723cm−1
熱重量測定/示差熱分析:40±10℃、90±10℃、170±5℃に3本の吸熱ピークが認められた。吸熱温度はロットによって多少変動するが、特徴的な3本のピークが認められる。
粉末X線回折スペクトル(2θ):3.6°、7.2゜、10.9゜、18.1°、25.5゜。
【0097】
実施例5 1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩・1/2H
化合物(4)9kg(69.64モル)を90リットルの酢酸n−ブチルに溶解し、この溶液を10℃以下に冷却し、これに濃硫酸3.35kg(34.16モル)を攪拌しながら40℃を超えないようにして加えた(約4分)。
【0098】
得られた化合物(4)の1/2硫酸塩の懸濁液中に、ナトリウムジシアナミド6.2kg(69.64モル)を加え、この混合液を約3時間加熱還流した。得られた反応液を20〜40℃付近まで冷却し、各々約45リットルの(i)5%苛性ソーダ水溶液、(ii)5%塩酸、(iii)5%重曹水液、(iv)5%食塩水を用いて、この順に有機層を洗浄した。
【0099】
このようにして得られた化合物(2)の酢酸n−ブチル溶液を15℃付近まで冷却し、これに化合物(3)11.6kg(65.89モル)、次いで濃塩酸6.7kgを撹枠しながら35℃を超えないようにして加えた。得られた溶液を加熱還流しながら、約6.5時間を要して約72リットルの溶媒を留去した。反応液を80℃付近まで冷却し、これにイソプロパノール72リットルと精製水18kgを加えた。一部析出した結晶が再溶解するまで反応液を60℃付近で加熱攪拌した後、44〜55℃付近で、これに濃塩酸14.1kgを加え、混合液を加熱しないで1時間攪拌した。得られた混合液を10℃以下に冷却し、析出晶を分離した。得られた結晶をそのままイソプロパノール54リットルに懸濁し、懸濁液を10℃以下で約1時間攪拌した後、結晶を分離した。この結晶(2塩酸塩)を乾燥することなく、精製水225リットル中に加え、混合液を25−35℃で約2時間攪拌した後、結晶を分離した。得られた結晶を精製水45リットルで洗浄した後、コニカルドライヤーを使って40℃付近で真空乾燥(15mmHg)し、1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩・1/2HOの粗結晶を得た。
収量21.26kg(化合物(3)を基準とした収率は77.2%であった)。
【0100】
実施例6(精製法)
化合物Aの1塩酸塩・1/2HO粗結晶19.0kgを、15%エタノール水溶液(精製水179リットルとエタノール32リットルの混合溶液)中に加え、当該粗結晶が溶解するまでこの混合液を加熱(80℃以下)した後、熱時濾過を行った。濾液を再還流して粗結晶の溶解を確認後、35℃付近まで冷却し、これに種晶(76g)を加え、混合液を1時間を要して20℃まで冷却し、さらに30分を要して、10℃まで冷却した。析出晶を遠心分離した。分離機上で、結晶を精製水(42リットル)で洗浄した。得られた結晶を40℃で22時間乾燥して、化合物Aの1塩酸塩・1/2HOを得た。
収量18.34kg(化合物Aの1塩酸塩・1/2HO粗結晶を基準とした収率は96.5%であった)
純度(HPLC)99.9%以上
粒度:870μmの篩を通過する程度であれば、支障なく目的の用途に使用することができる。
融点:173−174℃
H−NMR(DMSO−d)スペクトル:0.85ppm(t、J=6.8Hz、3H)、1.10−1.50ppm(m、12H)、2.92−3.08ppm(m、2H)、4.33ppm(d、J=6.3Hz、2H)、6.80−7.20ppm(bs、3H)、7.30ppm(d、J=8.4Hz、1H)、7.48−7.62ppm(m、3H)、7.70−7.90ppm(bs、0.5H)
IR(KBr)スペクトル:3316、3190、2928、1584、1549、1152、1032、723cm−1
熱重量測定/示差熱分析:40±10℃、90±10℃、170±5℃に3本の吸熱ピークが認められた。吸熱温度はロットによって多少変動するが、特徴的な3本のピークが認められる。
粉末X線回折スペクトル(2θ):3.6°、7.2゜、10.9゜、18.1°、25.5゜。
【0101】
実施例7 1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩
化合物Aの1塩酸塩・1/2HOが無水和物形(I形晶)に転移するのに及ぼすエタノール水溶液の濃度及び温度の影響を調べた。化合物Aの1塩酸塩・1/2HOを30%以上のエタノール水溶液に懸濁したところ、30℃では反応開始から2時間以内でI形晶への転移が完了し、25℃では反応開始から2時間でI形晶の生成が観察され、4時間後にI形晶への転移が完了した。20℃では反応開始から2時間でI形晶の生成が確認されたが、6時間後でもI形晶への転移が完了しなかった。
15%エタノール水溶液を用いて同様の試験を行った。35℃では反応開始から4時間後にI形晶の生成が確認され、40℃では2時間以内にI形晶への転移が完了した。10%エタノール水溶液を用いる場合には、57℃まで反応温度を上げたが6時間後でもI形晶への転移が完了しなかった。
以上の実験から、30%以上のエタノール水溶液に懸濁し、30℃−45℃で2時間以上攪拌すれば、無水晶(I形)へ完全に転移することが判明した。また、15%のエタノール水溶液に懸濁した場合でも、40℃で2時間以上攪拌すれば、無水晶(I形)へ完全に転移することが判明した。
(I形晶):
融点:177−179℃
粉末X線回折スペクトル(2θ): 3.9°、17.5°、21.9°、22.5°。
【0102】
比較例1 1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩
化合物(2)20g及び化合物(3)の塩酸塩20.2gにメシチレン200mlを加え、混合液を1.5時間加熱還流した。反応後の反応液を室温に戻し、メシチレンを除去した。残渣に10%エタノール水溶液200mlを加え、混合液を加熱し、これを10%エタノール液、水、次にイソプロピルエーテルで洗浄し、粗生成物28.1gを得た。これを酢酸エチルで再結晶し、白色稜状晶として1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩22.1gを得た。
【0103】
化合物(2)を基準とした収量は、53.1%であり、化合物(3)を基準とした収量は56.9%であった。
【0104】
比較例2 1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩
比較例1で得られた粗生成物4gを15%エタノール60ml中に加熱溶解後、40℃まで冷却し、その温度で4時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、3.6gの1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩を得た。
【0105】
粗生成物を基準とした収率は、90%であった。
融点:白色結晶 融点169−170℃
IR(KBr)スペクトル:3314、3176、2920、1595、1545、1146、1027、723cm−1
熱重量測定/示差熱分析:110±5℃、170±5℃付近に2本の強い吸熱ピークが認められる。吸熱温度はロットによって多少変動するが、特徴的な2本の吸熱ピークが認められる。
【0106】
比較例3 反応溶媒としてトルエンを用いた場合の処理
オクチルアミン塩酸塩1g(6.0ミリモル)とNaN(CN)2 0.56g(6.3ミリモル)を15mlのトルエン中、2時間還流した。得られた混合物中に3,4−ジクロロベンジルアミン1.2g(5.7ミリモル)を加えて、更に2.5時間還流した。得られた反応混合液を下記HPLCで分析すると、目的物である1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイド・1塩酸塩(5.85分、55%)の他に、1,5−ジオクチルビグアナイド(11.40分、9%)、1,5−ビス(3,4−ジクロロベンジル)ビグアナイド(3.46分、6%)、1−(3,4−ジクロロベンジル)−3−シアノグアニジン(2.1分、4%)、1−オクチル−3−シアノグアニジン(2.60分、11%)が含まれていた。
HPLC条件
カラム YMCAM302 4.6mmI.D.×150mm No.188
溶出液 MeCN/0.05M 1−オクタンスルホン酸ナトリウム水溶液/酢酸=700/300/1
検出器 UV 254nm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)
【化1】

で表される1−シアノ−3−オクチルグアニジンまたはその塩と式(3)
【化2】

で表される3,4−ジクロロベンジルアミンまたはその塩とを、エステル系有機溶媒中で反応させる、式(1)
【化3】

で表される1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドまたはその塩の製造方法。
【請求項2】
エステル系有機溶媒が、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル及びプロピオン酸n−プロピルからなる群より選ばれた少なくとも1種の溶媒である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
エステル系有機溶媒が酢酸n−ブチルである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
酸の存在下で反応させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
酸が塩酸、硫酸、燐酸及び臭化水素酸からなる群より選択される少なくとも1種である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
式(4)
N−(CHCH (4)
で表されるn−オクチルアミンまたはその塩と式(5)
M−N(CN) (5)
[式中、Mはアルカリ金属を示す。]
で表される化合物またはその塩とを、エステル系有機溶媒中で反応させて、式(2)
【化4】

で表される1−シアノ−3−オクチルグアニジンまたはその塩を得る工程、及び
前記工程で得られる1−シアノ−3−オクチルグアニジンまたはその塩と式(3)
【化5】

で表される3,4−ジクロロベンジルアミンまたはその塩とを、エステル系有機溶媒中で反応させる工程、
を含む、式(1)
【化6】

で表される1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドまたはその塩の製造方法。
【請求項7】
式(4)
N−(CHCH (4)
で表されるn−オクチルアミンまたはその塩と式(5)
M−N(CN) (5)
[式中、Mはアルカリ金属を示す。]
で表される化合物またはその塩とを、エステル系有機溶媒中で反応させて、式(2)
【化7】

で表される1−シアノ−3−オクチルグアニジンまたはその塩を生成させ、次いで1−シアノ−3−オクチルグアニジンまたはその塩を単離することなく引き続き反応溶液に式(3)
【化8】

で表される3,4−ジクロロベンジルアミンまたはその塩を加えて、1−シアノ−3−オクチルグアニジンまたはその塩と3,4−ジクロロベンジルアミンまたはその塩とを反応させる、式(1)
【化9】

で表される1−(3,4−ジクロロベンジル)−5−オクチルビグアナイドまたはその塩の製造方法。

【公表番号】特表2010−502567(P2010−502567A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509802(P2009−509802)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/JP2007/067107
【国際公開番号】WO2008/026757
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】