説明

1−[(3−シアノピリジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−アミノピペリジン−1−イル)キサンチンの塩酸塩及び水和物、その合成及びその薬剤としての使用

【課題】本発明の目的は、式(I)の新規な化合物、特に医薬用途に都合の良い性質を有する塩を提供することである。
【解決手段】本発明は1-[(3-シアノピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[3-アミノピペリジン-1-イル]キサンチンの塩酸塩、及びその鏡像異性体、その混合物及びその水和物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記式(I)の新規な置換キサンチン、
【化1】

互変異性体、鏡像異性体、それらの混合物、それらの塩及びそれらの水和物、特に無機酸又は有機酸との生理学的に許容できるそれらの塩、例えば塩酸塩であって、例えば有用な薬理的特性、とりわけ酵素ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP-IV)の活性に対して抑制作用を有するもの、それらの合成、DDP-IV活性の増大に関連した又はDPP-IV活性を低下させることによって予防又は軽減できる病気又は状態、とりわけI型又はII型糖尿病を予防又は治療するためのそれらの使用、一般式(I)の化合物又はその生理学的に許容できる塩を含有する医薬組成物及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DPP-IV抑制作用を有するキサンチン誘導体は、WO02/68420、WO02/02560、WO03/004496、WO03/024965、WO04/018468、WO04/048379、JP2003300977及びEP1338595から既に公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、式(I)の新規な化合物、特に医薬用途に都合の良い性質を有する塩を提供することである。
所望の適応症に対するその実際の効果に加えて、活性物質は、またその他の要求を満足し、医薬組成物として使用できなければならない。これらのパラメータは、活性物質の物理化学的性質に大きく関係している。
これに制限されるものではないが、これらのパラメータの例は、異なる周囲条件の下での活性物質の効果の安定性、医薬組成物の調製中の安定性及び医薬製剤の最終組成の安定性である。医薬組成物を調製するために使用される医薬活性物質は、したがって高い安定性を有していなければならず、それは異なる環境条件の下でさえ保証されなければならない。これは、活性物質自身に加えて、例えばその分解生成物を含む医薬組成物の使用を防止するために絶対に必要なものである。そのような場合に、医薬組成物に含まれている活性物質の含有量は、指定のものよりも少ないかもしれない。
水分の吸収は、水の取り込みによって生じる重量の増加の結果として医薬活性物質の含有量を減少させる。水分を吸収する傾向がある医薬組成物は、保存の際に、例えば適切な乾燥剤の添加によって、又はそれが水分から保護される環境に薬剤を保管することによって水分から保護されなければならない。さらに、水分の取り込みは、医薬物質が水分からまったく保護されない環境にさらされる場合、製造の際に医薬活性物質の含量を減少させるかもしれない。したがって、好ましくは医薬活性物質の吸湿性はほんのわずかでなければならない。
【0004】
活性物質の結晶変態は、製剤の活性物質含有量を再現可能にするのに重要であるため、結晶性形状で存在する活性物質の既存の多形をできる限り明らかにする必要がある。活性物質の異なる同質異像が存在する場合、後にそれから生成される医薬製剤において前記物質の結晶変態が変化しないことを保障するための注意が必要である。さもなければ、これは薬物の効果の再現性に悪影響を与える。このような背景の下、ほんのわずかな多形によって特徴付けられる活性物質が好ましい。
組成物の選択又は組成物の製造方法の選択に依存するある特定の環境の下で、非常に重要であるかもしれない別の特徴は、活性物質の溶解性である。例えば、医薬溶液が調製される場合(例えば、点滴のために)、活性物質は、生理学的に許容される溶媒に十分に溶解することが必須である。活性物質が十分に溶解することは、経口摂取される薬物にとっても非常に重要である。
本発明の課題は、薬理学的効能が高いという特徴だけでなく、上述の物理化学的要求をできる限り満足する医薬活性物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚いたことに、式(I)の化合物の塩酸との塩、その鏡像異性体、混合物及び水和物がこの要求を満足することが分かった。本発明の目的に特に適しているのは、一及び二塩酸塩並びにその鏡像異性体、混合物及び水和物である。
以下の用語は同意語として使用される:
塩酸との塩-塩酸塩。
したがって、本発明は、1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの塩酸との塩、並びにその鏡像異性体、混合物及び水和物に関する。このようなものとしては、例えば1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチン及び1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(S)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチンの一及び二塩酸塩及びこれらの混合物が挙げられ、ラセミ体を含む。本発明は、さらに上述の塩又はその水和物の少なくとも1つを含む医薬組成物及び医薬組成物の調製方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施例2(無水)のX線粉末ダイヤグラムを示す。
【図2】実施例2の熱分析を示す。
【図3】実施例2(一水和物)のX線粉末ダイヤグラムを示す。
【図4】1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの遊離塩基(実施例2)の吸収特性を示す。
【図5】実施例3のX線粉末ダイヤグラムを示す。
【図6】実施例3の熱分析を示す。
【図7】1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの一塩酸塩(実施例3)の吸収特性を示す。
【図8】実施例4のX線粉末ダイヤグラムを示す。
【図9】実施例4の熱分析を示す。
【図10】1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンの二塩酸塩(実施例4)の吸収特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
DPP-IV活性を阻害するその能力を考えると、本発明の一般式(I)の化合物及びその対応する薬剤として許容される塩は、DPP-IV活性の阻害によって影響を受け得る状態又は疾患に影響を及ぼすのに適している。したがって、本発明の化合物は、I型及びII型糖尿病、前糖尿病、空腹時血糖におけるブドウ糖耐性の低下又は変化、糖尿病性合併症(例えば、網膜症、ネフロパシー又はニューロパシー)、代謝性アシドーシス又はケトーシス、反応性低血糖、インスリン抵抗性、メタボリック症候群、種々の原因の脂質異常症、関節炎、アテローム性動脈硬化症及び関連疾患、肥満症、同種移植及びカルシトニンによって生じる骨粗しょう症のような疾患又は状態の予防又は治療に適していると考えられる。さらに、これらの物質は、例えばアポトーシス又は膵臓B細胞の壊死のようなB細胞変性の予防に適している。また、前記物質は、膵臓細胞の機能の改善又は回復、さらに膵臓B細胞の大きさ及び数の増大に適している。さらに、例えばGLP-1及びGLP-2のようなグルカゴン様ペプチドの役割及びそのDPP-IV阻害とのつながりに基づいて、本発明の化合物は、とりわけ鎮静薬又は鎮静効果の獲得、及び手術後の異化状態又はホルモン性のストレス反応への有利な効果を有すること又は心筋梗塞症後の死亡率及び合併症の発現頻度(morbidity)の低減可能性に適していると考えられる。さらに、それらは、上記効果及びGLP-1又はGLP-2によって媒介される効果と関連した状態の治療に適している。また、本発明の化合物は、利尿薬又は高血圧症薬としても使用でき、急性腎不全の予防及び治療に適している。また、本発明の化合物は、気道の炎症性の病状を治療するために使用できる。また、それらは、例えば過敏性腸症候群(IBS)、クローン病又は潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性大腸炎の予防及び治療に適しており、また膵炎の予防及び治療に適している。また、それらは、例えば大腸炎及び腸炎において生じるかもしれない消化管への損傷(injury or damage)のすべての種類に使用することができると考えられる。さらに、DPP-IV阻害剤、したがって本発明の化合物は、特に不妊症がインスリン抵抗性又は多嚢胞性卵巣症候群と関連している場合のヒト又は哺乳動物における不妊症の治療又は生殖能力の改善に使用できると考えられる。一方、これらの物質は、精子の運動性に影響を与えるのに適しており、したがって雄の避妊薬として使用するのに適している。さらに、前記物質は、制限された成長に関連した成長ホルモン欠乏症の治療に適しており、成長ホルモンが使用されてもよいすべての適応症で適度に使用されてもよい。また、本発明の化合物は、DPP-IVに対するその阻害効果に基づいて、例えば慢性関節リウマチ、多発性硬化症、甲状腺炎及びバセドウ病などのような種々の自己免疫疾患の治療に適している。また、それらは、ウイルス性疾患の治療のために、また例えばHIV感染において、血液生成を刺激するために、良性前立腺過形成において、歯肉炎の治療のために、及び神経欠陥及び例えばアルツハイマー病のような神経変性疾患の治療のために使用してもよい。また、前記化合物は、腫瘍の治療のために、特に腫瘍侵入及び転移を変更するために使用してもよく、例としては、T細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、細胞に基づいた甲状腺癌、基底細胞癌又は乳癌の治療におけるその使用である。その他の適応症は、脳卒中、種々の原因の虚血、パーキンソン病及び片頭痛である。さらに、別の適応症としては、小胞及び表皮の角質増殖症、ケラチノサイト増殖の増加、乾癬、脳脊髄炎、糸球体腎炎、脂肪異栄養症並びにすべての種類の心身症、抑うつ症及び神経精神病などが挙げられる。
【0008】
また、本発明の化合物は、その他の活性物質とともに使用してもよい。そのような組合せに適した治療剤としていは、例えばメトホルミン、スルホニル尿素(例えば、グリベンクラミド、トルブタミド、グリメピリド)、ナテグリニド、レパグリニド、チアゾリジンジオン類(例えば、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン)、PPAR-γアンタゴニスト(例えば、GI262570)及びアンタゴニスト、PPAR-γ/α調節因子(例えば、KRP297)、PPAR-γ/α/δ調節因子、AMPK活性薬、ACC1及びACC2阻害剤、DGAT阻害剤、SMT3受容体アゴニスト、11β-HSD阻害剤、FGF19アゴニスト又は模倣薬、α-グルコシダーゼ阻害薬(例えば、アカルボース、ボグリボース)、その他のDPPIV阻害剤、α2アンタゴニスト、インスリン及びインスリン類似体、GLP-1及びGLP-1類似体(例えば、エキセンディン-4)又はアミリンのような抗糖尿病薬などが挙げられる。また、T-1095又はKGT-1251(869682)のようなSGLT2阻害剤、タンパク質チロシンホスファターゼ1の阻害剤、肝臓中で調節されないグルコース産生に影響を及ぼす物質、例えばグルコース−6−ホスファターゼの阻害剤又はフルクトース−1,6−ビスホスファターゼの阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ、グルカゴン受容体アンタゴニスト及びホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの阻害剤、グリコゲンシンターゼキナーゼ又はピルビン酸デヒドロキナーゼ、脂質低下剤、例えばHMG-CoA-レダクターゼ阻害剤(例えば、シンバスタチン、アトロバスタチン)、フィブリン酸(例えば、ベザフィブラート、フェノフィブラート)、ニコチン酸及びその誘導体、PPAR-αアゴニスト、PPAR-δアゴニスト、ACAT阻害剤(例えば、アバシマイブ(avasimibe))、又は例えばエゼチミブのようなコレステロール吸収阻害剤、例えばコレスチラミンのような胆汁酸結合物質、回腸への胆汁酸輸送の阻害剤、例えばCETP阻害剤若しくはABC1調整剤又はLXRαアンタゴニスト、LXRβアゴニスト若しくはLXRα/β調整剤又はなどのHDLを上昇させる化合物、又は肥満治療の有効成分、例えばシブトラミン又はテトラヒドロリポスタチン、デックスフェンフルラミン、アクソキン、カンナビノイド1受容体のアンタゴニスト、MCH-1受容体アンタゴニスト、MC4受容体アゴニスト、NPY5又はNPY2アンタゴニスト、又はSB-418790若しくはAD-9677のようなβ3-アゴニスト、並びに5HT2c受容体のアゴニストとの組合せが可能である。
【0009】
また、前記化合物を、例えばAIIアンタゴニスト又はACE阻害剤、利尿薬、β-ブロッカー、Ca-アンタゴニストなど又はこれらの組合せのような高血圧の治療剤と組合せることも可能である。
前記効果を適切に得るために必要な服用量は、静脈内経路によって、1〜100mg、好ましくは1〜30mgであり、経口経路によって、1〜1000mg、好ましくは1〜100mgであり、それぞれ1日に1〜4回である。この目的のために、本発明に従って合成される式(I)の化合物は、必要によりその他の活性物質と組合せて、1又は複数の不活性な従来のキャリア及び/又は希釈剤、例えばコーンスターチ、ラクトース、グルコース、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、水/エタノール、水/グリセロール、水/ソルビトール、水/ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロース又は固い脂肪のような脂肪質の物質又はこれらの適した混合物と一緒に素錠又は被覆錠剤、カプセル剤、散剤、懸濁剤又は坐剤のような従来のガレヌス製剤に組み込んでもよい。
以下の実施例は、本発明を説明することを目的としている。
【実施例】
【0010】
(実施例1)
3-(フタルイミド)ピペリジンのR-鏡像異性体のD-酒石酸塩
a.水素化:
【化2】

【0011】
10.00kg(106.25モル)の3-アミノピリジン、500gの工業用グレードの活性炭及び65リットルの酢酸を水素化反応器に入れた。50gのニシムラ触媒(市販の混合ロジウム/白金触媒)を加え、2.5リットルの酢酸中で懸濁し、混合物を2.5リットルの酢酸ですすいだ。50℃及び100バール過剰の水素圧で、水素の取り込みが止まるまで水素化し、次いでさらに30分間50℃で水素化した。触媒及び活性炭を濾過し、10リットルの酢酸で洗浄した。
また、反応はそれほど極端でない圧力下でも進む。
【0012】
b.アシル化:
【化3】

【0013】
15.74kg(106.25モル)の無水フタル酸を反応器に入れ、水素化反応の濾液と混合した。この混合物を7.5リットルの酢酸ですすぎ、次いで反応混合物を還流し、使用した酢酸の約30%を1時間以内に蒸留した。反応溶液を90℃に冷却した。
【0014】
c.ラセミ化合物の分割:
【化4】

50℃に加熱した50リットルの無水エタノール中11.16kgのD-(-)-酒石酸(74.38モル)の溶液を90℃でアシル化反応溶液に加えた。これを10リットルの無水エタノールですすぎ、30分間90℃で攪拌して生成物を晶出した。5℃に冷却した後、生成物を遠心分離し、無水エタノールで洗浄した。
【0015】
d.再結晶:
湿った粗生成物を、50リットルのアセトンと90リットルの水の混合物中で、溶液が形成されるまで還流した。次いで、この混合物を5℃に冷却して生成物を晶出した。懸濁液を30分間5℃で攪拌し、生成物を遠心分離し、最後に20リットルのアセトンと10リットルの水の混合物で洗浄した。45℃で不活性状態としながら乾燥カップボードで乾燥させた。
収量:11.7〜12.5kg
【0016】
(実施例2)
1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチン塩基の調製
a.3-シアノ-2-(クロロメチル)-ピリジン
165.5g(0.98モル)の2-ヒドロキシメチル-3-ピリジンカルボキサミドを270mlのオキシ塩化リンとともに1時間90〜100℃で加熱した。反応混合物を周囲温度に冷却し、次いで約800mlの水に50〜60℃の温度で滴下した。オキシ塩化リンの加水分解後、この混合物を水酸化ナトリウム溶液で冷却しながら中和して、生成物を沈殿させた。濾過し、300mlの水で洗浄し、次いで35〜40℃で乾燥させた。
収量:122.6g(理論の82%)
【0017】
b.1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-ブロモ-キサンチン
【化5】

【0018】
202g(0.68モル)の3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-ブロモ-キサンチン、188.5g(1.36モル)の無水炭酸カリウム及び1.68リットルのN-メチル-2-ピロリドンを反応器に入れ、70℃に加熱した。次いで、240mlのN-メチル-2-ピロリジン(NMP)中119g(0.75モル)の2-クロロメチル-3-シアノ-ピリジンを滴下した。反応器の内容物を19時間70℃で攪拌した。反応終了後、2.8リットルの水を反応混合物に加え、25℃に冷却した。生成物を濾過し、2リットルの水で洗浄し、70℃で不活性状態としながら乾燥カップボードで乾燥させた。
収量:257.5g(理論の91%)
【0019】
c.1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-フタルイミド-ピペリジン-1-イル)-キサンチン
【化6】

【0020】
230g(0.557モル)の1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-ブロモ-キサンチン、318g(0.835モル)の3-(フタルイミド)ピペリジンD-酒石酸塩及び1.15リットルのN-メチル-2-ピロリドンを反応器に入れた。反応器の内容物を140℃に加熱した。この温度に達した後、478ml(2.78モル)のジイソプロピルエチルアミンを20分以内に加え、反応混合物を次いで2時間140℃で攪拌した。次いで、反応混合物を75℃に冷却し、720mlのメタノールで希釈した。2.7リットルの水を次いで68〜60℃で加え、この混合物を25℃に冷却した。生成物を濾過し、2リットルの水で洗浄した。70℃で不活性状態としながら乾燥カップボードで乾燥させた。こうして得られた粗生成物を次いで1リットルのメタノールに沸点温度で攪拌しながら加え、濾過し、200mlのメタノールで洗浄し、次いで70℃で不活性状態としながら乾燥させた。
収量:275g(理論の88%)
【0021】
d.1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン
【化7】

【0022】
412.5g(0.733モル)の1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-フタルイミド-ピペリジン-1-イル)-キサンチンを80℃に4125mlのトルエン中で加熱した。次いで、75〜80℃で、445mlのエタノールアミン(7.33モル)を前記懸濁液に加えた。反応を終らせるために、前記混合物をさらに2時間80〜85℃で攪拌し、前記固体を溶液にした。次いで、相を分離した。エタノールアミン相を暖かいトルエンで2回抽出した(それぞれ1リットル)。合わせたトルエン相をそのたびごとに2リットルの75〜80℃の温水で2回洗浄した。トルエン相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、次いで真空で蒸留することにより約430mlの容積にした。次いで、50〜55℃で、1リットルのtert.-ブチルメチルエテルを加え、混合物を次いで0〜5℃に冷却した。生成物を濾過により単離し、tert.-ブチルメチルエテルで洗浄し、60℃で乾燥カップボードで乾燥させた。
収量:273.25g(理論の86.2%)
融点:188±3℃(無水形)
無水形の1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンは、約50%まで(50%r.h.超)の相対湿度で安定である。図4の吸収ダイヤグラムからも明らかなように、この形態は約4%の水を吸収し、一水和物に変化する。相対湿度が実質的に50%以下に戻されると、無水形が再び形成される。すなわち、一水和物への変換は完全に可逆である。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
(実施例3)
1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチン一塩酸塩
5.00gの1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチン塩基を50mlのメタノールに溶解した。次いで、イソプロパノール中3.9モルの塩化水素溶液3.0mlを加えた。溶媒を蒸留し、残渣を40mlの酢酸エチルに懸濁し、還流して沈殿を形成した。周囲温度に冷却し、沈殿を濾過し、1リットルの酢酸エチルで洗浄し、乾燥させた。
次いで、生成物を無水エタノールから再結晶させた。
収量:2.7g(理論の50%)
融点:265±5℃(分解)
【0026】
一塩酸塩は顕著な吸湿性を示さず、50〜60%r.h.の遊離塩基で観測された水和物相への可逆変化は無い(図7の一塩酸塩の吸収特性を参照のこと)。また、一水和物のみが非常に高い相対湿度(>80%r.h.)で水を吸収する。湿度依存X線粉末イメージは、一水和物について80%r.h.超で相変化はないことを示す。
【0027】
【表3】

【0028】
(実施例4)
1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチン-二塩酸塩
1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチン塩基(1.00g;2.31ミリモル)を9.5mlの無水エタノール及び0.5mlのメチル-tert.-ブチルエテルに沸点温度で溶解した。次いで、イソプロパノール中3.9モルの塩化水素溶液1.2mlを加えた。沈殿を形成した。周囲温度に冷却した後、混合物を濾過し、1リットルのMTBEで洗浄し、乾燥させた。
収量:1.04g(理論の89.0%)
融点:205±5℃(分解);約150℃を超えるとガス状HClが放出される。
【0029】
また、二塩酸塩は目立たない吸湿性を示し、50〜60%r.h.の遊離塩基で観測された水和物相への可逆変化は無い(図10の二塩酸塩の吸収特性を参照のこと)。二塩酸塩は、相対湿度の全範囲にわたって連続的に一定量の水を吸収する。湿度依存X線粉末イメージは、10〜90r.h.の湿度範囲で相変化はないことを示す。
【0030】
【表4】

【0031】
融点はメトラートレドによって供給される装置(タイプ:DSC821)を用いるDSCによって決定された。使用された融解温度は、DSCダイヤグラムの対応する融点ピークの始まりの温度である。10K/分の加熱速度を使用し、窒素雰囲気下で実験を行った。
1つだけを例外とし、STOE Stadi P X線粉末回折計を用いてX線粉末ダイヤグラムを記録した。この回折計は、CuKα1線(λ=1.5406Å)及び位置敏感検出器とともに動作する。X線発生器を40mA及び40kVで動作させた。
遊離塩基の一水和物のX線粉末ダイヤグラムを、MRIによって作られた特殊空気湿度セルを配置したBruker D8 Advance X線粉末回折計で記録した。ダイヤグラムを約72%r.h.で記録した。Bruker D8 Advanceは、CuKα線(λ=1.5418Å)及び位置敏感検出器とともに動作する。X線発生器を30mA及び40kVで動作させた。
【0032】
(実施例5)
75mgの活性物質を含む被覆錠剤
1錠剤コア当たり:
活性物質 75.0mg
リン酸カルシウム 93.0mg
コーンスターチ 35.5mg
ポリビニルピロリドン 10.0mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 15.0mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg
230.0mg
【0033】
調製:
活性物質をリン酸カルシウム、コーンスターチ、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び示した量の半分のステアリン酸マグネシウムと混合した。直径約13mmのブランク(Blanks)を錠剤生成機で生成し、次いでこれらを適切な機械で1.5mmのメッシュサイズのスクリーンに通し、ステアリン酸マグネシウムの残りと混合した。この粒状物を錠剤生成機で圧縮して所望の形状の錠剤を形成した。
コアの重量:230mg
ダイ:9mm、凸状
こうして生成した錠剤コアをヒドロキシプロピルメチルセルロースから本質的になるフィルムで被覆した。出来上がったフィルム被覆錠剤を蜜蝋で磨いた。
被覆錠剤の重量:245mg
【0034】
(実施例6)
100mgの活性物質を含む錠剤
組成:
1錠剤当たり:
活性物質 100.0mg
ラクトース 80.0mg
コーンスターチ 34.0mg
ポリビニルピロリドン 4.0mg
ステアリン酸マグネシウム 2.0mg
220.0mg
【0035】
調製方法:
活性物質、ラクトース及びスターチを一緒に混合し、ポリビニルピロリドンの水溶液で均一に湿らせた。湿った組成物を篩(2.0mmメッシュサイズ)にかけ、50℃でラック型乾燥機で乾燥させた後、再度篩(1.5mmメッシュサイズ)にかけ、滑剤を加えた。出来上がった混合物を圧縮して錠剤を形成した。
錠剤の重量:220mg
直径:10mm、バイプラナー(biplanar)、両側に切子面を刻み、片側にノッチを付けた。
【0036】
(実施例7)
150mgの活性物質を含む錠剤
組成:
1錠剤当たり:
活性物質 150.0mg
粉末ラクトース 89.0mg
コーンスターチ 40.0mg
コロイダルシリカ 10.0mg
ポリビニルピロリドン 10.0mg
ステアリン酸マグネシウム 1.0mg
300.0mg
【0037】
調製:
ラクトース、スターチ及びシリカと混合した活性物質を、20%ポリビニルピロリドン水溶液で湿らせ、1.5mmのメッシュサイズの篩に通した。
45℃で乾燥させた粒状物を再度同じ篩に通し、示した量のステアリン酸マグネシウムと混合した。混合物から錠剤を圧縮した。
錠剤の重量:300mg
ダイ:10mm、フラット
【0038】
(実施例8)
150mgの活性物質を含む硬質ゼラチンカプセル
1カプセル当たり:
活性物質 150.0mg
コーンスターチ(乾燥) 約180.0mg
ラクトース(粉末) 約 87.0mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
約420.0mg
【0039】
調製:
活性物質を賦形剤と混合し、0.75mmのメッシュサイズの篩に通し、適切な装置を用いて均一に混合した。出来上がった混合物をサイズ1硬質ゼラチンカプセルに詰めた。
カプセル充填:約320mg
カプセルシェル:サイズ1硬質ゼラチンカプセル
【0040】
(実施例9)
150mgの活性物質を含む坐剤
1坐剤当たり:
活性物質 150.0mg
ポリエチレングリコール1500 550.0mg
ポリエチレングリコール6000 460.0mg
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート 840.0mg
2,000.0mg
【0041】
調製:
坐剤練薬を溶解した後、それに活性物質を一様に分布させ、溶解物を急冷モールドに流し込んだ。
【0042】
(実施例10)
50mgの活性物質を含む懸濁剤
100mlの懸濁剤当たり:
活性物質 1.00g
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 0.10g
メチルp-ヒドロキシベンゾアート 0.05g
プロピルp-ヒドロキシベンゾアート 0.01g
グルコース 10.00g
グリセロール 5.00g
70%ソルビトール溶液 20.00g
フレーバー 0.30g
蒸留水 ad 100ml
【0043】
調製:
蒸留水を70℃に加熱した。この中でメチル及びプロピルp-ヒドロキシベンゾアートをグリセロール及びカルボキシメチルセルロースナトリウム塩と一緒に攪拌して溶解した。この溶液を周囲温度に冷却し、活性物質を加え、攪拌して均一に分散させた。糖、ソルビトール溶液及びフレーバーを加えて溶解した後、懸濁剤から攪拌により空気を除去した。
5mlの懸濁剤は50mgの活性物質を含む。
【0044】
(実施例11)
10mgの活性物質を含むアンプル剤
組成:
活性物質 10.0mg
0.01Nの塩酸 q.s.
再蒸留水 ad 2.0ml
【0045】
調製:
活性物質を必要な量の0.01Nの塩酸に溶解し、塩化ナトリウムで等張にし、無菌濾過し、2mlのアンプルに移した。
【0046】
(実施例12)
50mgの活性物質を含むアンプル剤
組成:
活性物質 50.0mg
0.01Nの塩酸 q.s.
再蒸留水 ad 10.0ml
【0047】
調製:
活性物質を必要な量の0.01Nの塩酸に溶解し、塩化ナトリウムで等張にし、無菌濾過し、10mlのアンプルに移した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチンの塩酸塩。
【請求項2】
1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチンの一塩酸塩又は二塩酸塩。
【請求項3】
結晶性無水形の1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチンの一塩酸塩又は二塩酸塩。
【請求項4】
1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチン一塩酸塩。
【請求項5】
1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチン二塩酸塩。
【請求項6】
融点が265±5℃である1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチンの結晶性一塩酸塩。
【請求項7】
融点が205±5℃である1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチンの結晶性二塩酸塩。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の塩を含む、I型及びII型糖尿病、関節炎、肥満症、同種移植片移植及びカルシトニンに起因する骨粗しょう症の治療に適した医薬組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項記載の塩を含む、II型糖尿病又は肥満症の治療に適した医薬組成物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項記載の塩を含む医薬組成物であって、1以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を一緒に含んでもよい医薬組成物。
【請求項11】
1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチン一塩酸塩を含む医薬組成物であって、1以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を一緒に含んでもよい医薬組成物。
【請求項12】
1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチン二塩酸塩を含む医薬組成物であって、1以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を一緒に含んでもよい医薬組成物。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか1項記載の塩を1以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤に組み込むことを含む請求項12記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項4又は6記載の一塩酸塩を含むか、又は前記塩から作られる医薬組成物であって、1以上の不活性キャリア及び/又は希釈剤を一緒に含んでもよい医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−153723(P2012−153723A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−112773(P2012−112773)
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【分割の表示】特願2008−523353(P2008−523353)の分割
【原出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】