1つ又はそれ以上の固定部材を有する薬物デポー
患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーが提供されており、同薬物デポーは、薬物の治療有効量と、目標部位又はその付近での前記薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっている少なくとも1つの面と、を備えており、薬物デポーの少なくとも1つの領域は、薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる。幾つかの実施形態では、提供されている薬物デポーは、目標部位又はその付近に少なくとも1つの鎮痛薬と少なくとも1つの抗炎症薬の治療有効量を含むことができ、炎症及び/又は疼痛、特に術後疼痛を減少、予防、又は治療することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物は、経口的、静脈内的、筋肉内的、吸入的、局所的、皮下的な送達、又は治療部位への直接的又は局所的な送達(例えば、髄腔内的、脊髄内的、関節内的など)を含む様々な方法によって患者へ送達される。選定される送達法は、とりわけ、治療される病態、患者体内で実現させるべき薬物の所望治療濃度、及び維持されなければならない薬物濃度の持続時間によって異なる。
【0003】
最近では、薬物が長期に亘ってゆっくりと放出されるように、薬物を患者の皮膚の下層の部位へ導入又は投与できるようにする薬物デポーが開発されている。そのような薬物デポーは、薬物をデポーから比較的均一な用量で数週間又は数か月に亘って放出させることができ、放出は数年に及ぶことすらある。この薬物投与の方法は、皮下的に植え込まれる避妊用及び癌用薬物では特に重要になってきつつある。
【0004】
時には、薬物デポーは、治療部位に植え込まれた後、外科的閉合前に植え込み部位から移動したり(例えば、血液中に浮遊するか又は外科手術部位閉合時に組織の位置直しをすると位置が変わる)、又は生理学的状態が変化することで(例えば、細胞の修復又は再生、組織の内成長、植え込み部位の運動など)、移動することがある。この場合、時として、薬物デポーが植え込み部位から離れてゆき遠くの部位に留まってしまうことで、薬物の効能が低下する可能性がある。このような事が起きた場合、薬物デポーを遠くの部位から摘出して再挿入しなくてはならないため、患者には追加の肉体的及び精神的苦痛が生じる。場合によっては、薬物デポーが関節の中へ移動すると、その薬物デポーが運動を阻害する可能性がある。より深刻な事例では、薬物デポーが移動した場合、デポーは血流を絞り、患者にとって致命的な虚血性事象(例えば、塞栓症、壊死、梗塞症など)を引き起こす可能性がある。
【0005】
術後疼痛は、治療するのが難しい状態になる傾向があり、適切に治療されなければ患者にとって致命的となる可能性がある。外科手術の部位は、患者を苦める術後疼痛の度合いに深く影響する。一般に、胸部及び上腹部の手術は下腹部の手術に比べ痛みがより強く、下腹部の手術は四肢の末梢部手術に比べ痛みがより強い。しかしながら、体腔、大関節面、脊椎又は深部組織が係わる手術はどれも痛みを伴うと考えるべきである。特に、胸部又は上腹部の手術は、肺機能の広い範囲に及ぶ変化や腹筋緊張充進を生じさせ、これに附随して横隔膜機能が低下する可能性がある。結果的に、咳をしたり分泌物を吐き出したりする能力が奪われ、肺の虚脱や肺炎を招く可能性がある。疼痛が長引くと、身体活動が低下し、静脈鬱滞を招き、重症な静脈血栓症及びそれにより引き起こされる肺閉塞症のリスクが高まる恐れがある。更に、消化管及び尿路の運動性に広範囲に及ぶ影響が出る恐れがあり、そうなると、今度は術後腸閉塞、嘔気、嘔吐、及び尿閉を招く可能性がある。それらの問題は、患者にとって苦痛であり、入院を長引かせる可能性があり、薬物デポーが植え込み後に植え込み部位から離れてゆくと、問題はより深刻化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薬物デポーの正確且つ精密な設置が簡単に行えるようになる新しい薬物デポー組成及び方法が必要とされている。幾つかの薬物デポーを同時に植え込む時には、配置位置、正確な間隔の空き、及び薬物分布を最適化するやり方で、薬物デポーの設置を正確且つ精密に行えるようになる薬物デポー組成及び方法が必要とされている。術後疼痛を効果的に治療するのにも、新しい薬物デポー組成及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
薬物の効能を向上させ、薬物デポーの望まれない移動を低減する、新しい植え込むことのできる薬物デポーが提供されている。様々な実施形態では、疼痛を発生させている目標組織部位に一貫した鎮痛及び/又は抗炎症効能を発揮することにより、術後疼痛及び/又は炎症を効果的に予防、治療、又は減少させる、新しい薬物デポー組成及び方法が提供されている。様々な実施形態では、薬物デポーは、針及び縫合糸に事前に取り付けられていて、外科医がデポーを疼痛を発生させている目標組織部位に簡単に縫い付けられるようになるタイオフシステムを含んでいる。
【0008】
様々な実施形態では、外科医がすべきことが、針に軟組織を貫通させ、針と縫合糸を、薬物デポーを通して引き戻すことだけになるように、事前に結目が作られ、事前に糸通しされている薬物デポーが提供されている。結び目はデポーを所定位置に固定し、外科医が行う必要のあることは縫合糸を切断することだけである。この「プル・アンド・カット」システムでは、幾つかの外科手術工程(例えば結び目作成)が不要になり、外科手術時間の長さを短縮できる。
【0009】
幾つかの実施形態では、患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーが提供されており、同薬物デポーは、薬物の治療有効量と、目標部位又はその付近での薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっている少なくとも1つの面と、を備えており、薬物デポーの少なくとも1つの領域は、薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる。
【0010】
幾つかの実施形態では、薬物デポーの少なくとも1つの面は、1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネル、穴、溝、スリット、ループ、フック、逆棘、柱、及び/又はクリップを備えている。幾つかの実施形態では、薬物デポーは、固定部材として使用される1つ又はそれ以上の縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、及び/又はステープルを備えている。
【0011】
幾つかの実施形態では、患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーが提供されており、同薬物デポーは、薬物の治療有効量と、目標組織部位又はその付近での薬物デポーの運動が制限されるように1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネルと、を備えており、薬物デポーは、薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる。
【0012】
幾つかの実施形態では、患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーが提供されており、同薬物デポーは、薬物の治療有効量と、1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネルと、を備えており、1つ又はそれ以上の縫合糸は少なくとも2つの領域を備えていて、それぞれの領域は、縫合糸に1つ又はそれ以上のチャネルを通過させた時に薬物デポーの動きが目標組織部位又はその付近で制限されるように、1つ又はそれ以上のチャネルより大きい面を有しており、薬物デポーは、薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる。
【0013】
幾つかの実施形態では、患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーが提供されており、同薬物デポーは、薬物の治療有効量と、1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネルと、を備えており、1つ又はそれ以上の縫合糸は、互いに離間されている少なくとも2つの結び目付き、リム付き、ビーズ付き、リッジ付き、又はクリップ付きの領域を備えており、それぞれの結び目付き、リム付き、ビーズ付き、リッジ付き、又はクリップ付きの領域は、縫合糸に1つ又はそれ以上のチャネルを通過させた時にデポーが所定場所に固定され、薬物デポーの動きが目標組織部位又はその付近で制限されるように、1つ又はそれ以上のチャネルより大きい面積を有しており、薬物デポーは、薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる。
【0014】
幾つかの実施形態では、術後疼痛又は炎症の治療を必要としている患者のそのような術後疼痛又は炎症を治療又は予防する方法が提供されており、方法は、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の治療有効量を備えている1つ又はそれ以上の生体分解性薬物デポーを、皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に縫い付ける工程を備えており、薬物デポーは、目標組織部位又はその付近での薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている少なくとも1つの面を備えており、薬物デポーは、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる。
【0015】
様々な実施形態の更なる特徴及び利点は、以下の記載事項の中に部分的に述べられており、部分的にはその記載事項から明らかになるか又は様々な実施形態の実践を通して知ることができるであろう。様々な実施形態の目的及び他の利点は、特に記載事項及び付随の特許請求の範囲の中で言及されている要素及び組合せを利用することによって理解され、実現されるであろう。
【0016】
実施形態の他の態様、特徴、便益、及び利点は、部分的には、以下の説明、付随の特許請求の範囲、及び添付図面を参照すれば明らかとなるであろう。
図は、縮尺を合わせて描かれているわけではないことを了解されたい。また、図中の対象物同士の配置関係は縮尺が合わされているわけではなく、実際に、寸法については逆の関係になっていることがあるかもしれない。図は、図示されているそれぞれの対象物の構造が理解され、それらが明解になることを意図しており、よって、特徴の中には、構造の特定の特徴を説明するために誇張されているものがあるかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、例えば縫合糸又はステープルのような1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるためにデポーの中央に配置されている面、この事例ではチャネル、を有する薬物デポーを示している。
【図1A】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に縫い付けられるようにする固定部材としての縫合糸を受け入れるためにデポーの中央に配置されている面、この事例ではチャネル、を有する薬物デポーを示している。
【図2】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に縫い付けられるようにする固定部材としての縫合糸を受け入れるためにデポーの中央に設置されている面、この事例ではチャネル、を有する薬物デポーを示している。
【図2A】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、プル・アンド・カットシステムを示している。縫合糸は、縫合糸の他の領域より大きくされている2つの領域(結び目として図示)を有している。外科医は、針を使用して組織を穿通し、外科医は、その針と縫合糸を、チャネルを通して引き戻してデポーを所定場所に固定する。縫合糸は後で切断することができる。こうすればデポーを固定するのに結び目を縛るという時間のかかる工程は回避される。
【図2B】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、薬物デポーを通って引っ張られている縫合糸を示している。植え込みに際し、外科医が行う必要のあることは、縫合糸の当該領域を、デポーチャネルを通して引っ張り、それを所定場所に固定して縫合糸を切断することだけである。
【図3】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、薬物デポーの異なる端部に配置されていて、固定部材としての縫合糸を受け入れることができ、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に縫い付けられるようにする2つの面、この事例では2つのチャネル、を有する薬物デポーを示している。
【図4】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、薬物デポーの異なる端部に配置されていて、固定部材としての縫合糸を受け入れることができ、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に縫い付けられるようにする2つの面、この事例では2つのチャネル、を有する薬物デポーを示している。この図では、薬物デポーを目標組織に固定するのに同じ縫合糸が使用されている。
【図4A】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の拡大側面断面図であり、薬物デポーの異なる端部に配置されていて、固定部材としての縫合糸を受け入れ、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に縫い付けられるようにする2つの面、この事例では2つのチャネル、を有する薬物デポーを示している。この図では、薬物デポーを筋肉に固定するのに同じ縫合糸が使用されており、外科医は縫合糸に結び目を付けて薬物デポーを所定場所に維持する。
【図5】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、薬物デポーの異なる端部に配置されていて、縫合糸を受け入れることができる2つの面、この事例では2つのチャネル、を有する薬物デポーを示している。縫合糸は、2つの領域を有し、そのうちの一方は、縫合糸をデポーの中の所定の場所に保持するための領域であり、他方は、外科医が、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定するためにチャネルを通して引っ張る領域である。引っ張った後に外科医が行う必要のあることは、縫合糸を切断することだけである。こうすれば、デポーを固定するのに結び目を縛るという時間のかかる工程は回避される。
【図5A】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の正面図を示しており、薬物デポーの異なる端部に配置されていて縫合糸を受け入れることができる2つの面、この事例では2つのチャネル、を有する薬物デポーを示している。針に組織を貫通させ、次いでデポーの第2チャネルを通過させる。外科医は、縫合糸を、チャネルを通して引っ張り、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定する。
【図5B】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の背面図であって、縫合糸と針が第2チャネルを通過している状態を示している。外科医は、縫合糸を、チャネルを通して引っ張り、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定する。デポーのこの背面部は、組織面に当てて植え込まれる。
【図5C】図5B及び図5Dと共に、植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の背面図を示している。
【図5D】図5B及び図5Cと共に、植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の背面図を示している。
【図5E】外科医が、縫合糸を、チャネルを通して引っ張ってデポーを所定場所に固定する際の、植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の正面図を示している。引っ張った後、外科医が行う必要のあることは、縫合糸を切断することだけである。
【図5F】目標組織部位に植え込まれた薬物デポーの1つの実施形態の正面図を示している。
【図5G】薬物デポーの1つの実施形態の正面図を示している。この図は、切断された縫合糸と、目標組織部位に植え込まれた薬物デポーを示している。
【図6A】縫合糸を受け入れるようになっている面を有する植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、外科医は、縫合糸をデポーの一端に縛り、デポーの他端を目標組織部位又はその付近に縫い付けることができる。
【図6B】縫合糸を受け入れるようになっている面、この事例では溝、を有する植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、外科医は、縫合糸の一端をデポーに縛り、縫合糸の他端を、デポーを目標組織部位又はその付近に固定するのに使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書及び付随の特許請求の範囲の適用上、別途表記のない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用されている成分の量、材料のパーセンテージ又は比率、反応条件、及び他の数値を表している全ての数は、あらゆる事例において「約」という用語で丸められているものと理解されたい。従って、それとは反対の表記のない限り、以下の明細及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは近似であり、本発明によって獲得が模索される所望の特性に応じて異なっていてもよい。最低限として、但し特許請求の範囲による範囲への均等論の適用に制限を課そうとの意図からではなく、それぞれの数値パラメータは、少なくとも、報告されている有効数字の数に鑑み、そして普通の端数計算技法を適用することによって、解釈されるべきである。
【0019】
ここに記載されている数範囲及びパラメータ、本発明の広い範囲は近似であるにもかからわず、特定の例に記載されている数値は可能な限り精密に報告されている。とはいえ、何れの数値も、本質的に、それぞれ個別の試験手段に見られる標準偏差に必然的に起因する或る種の誤差を内包している。更に、ここに開示されている全ての値範囲は、ここに包含されているありとあらゆる部分範囲を網羅するものと理解されるべきである。例えば、「1から10」という範囲は、最小値である1と最大値である10の間の(それらも含めた)ありとあらゆる部分範囲、即ち、1以上の最小値と10以下の最大値を有するありとあらゆる部分範囲、例えば、5.5から10、を含んでいる。
【0020】
これより、本発明の或る特定の実施形態を詳細に参照してゆくが、それらの例は添付図面に示されている。本発明は、図示の実施形態に関連付けて説明してゆくが、それら実施形態は本発明をそれらに限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。そうではなく、本発明は、付随の特許請求の範囲によって定義されている本発明の中に含めることができる全ての代替、修正、及び等価物が適用対象とされることを意図している。
【0021】
以下の表題は、開示を何ら制限しようとするものではなく、実施形態は、何れの表題の下に記載されていようと、他の何れの表題の下に記載されている実施形態と関連付けて使用することができる。
定義
英語の単数を表す冠詞「a」、「an」及び「the」の対訳で「一」、「或る」、「当該」が、本明細書及び付随の特許請求の範囲に使用されている場合、それらは、明示的且つ明白に1個の指示対象という指定のない限り、複数の指示対象を含んでいることを特記しておく。よって、例えば「薬物デポー」という言及があった場合、これは、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の薬物デポーを含んでいる。
【0022】
「鎮痛薬」は、疼痛を減少、緩和、又は取り除くことができる薬剤又は化合物を指している。鎮痛薬の例としては、限定するわけではないが、アセトアミノフェン、例えばリドカイン、ブピビカイン、ロピバカインのような局部麻酔薬、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デキストロモラミド、デゾシン、デキストロプロポキシフェン、ジアモルヒネ、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ケトベミドン、レボメタジル、レボルファノール、メピリジン、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、オピウム、オキシコドン、パパベレタム、ペンタゾシン、ペチジン、フェノペリジン、ピリトラミド、デキストロプロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トラマドール、コデイン、ジヒドロコデイン、メプタジノール、デゾシン、エプタゾシン、フルピルチンのようなオピオイド系鎮痛薬、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0023】
「抗炎症薬」という句は、抗炎症作用を有する薬剤又は化合物を指している。それらの薬剤は、炎症を減少させることにより疼痛を改善する。抗炎症薬の例としては、限定するわけではないが、スタチン、スリンダク、サルファサラジン、ナロキシン(naroxyn)、ジクロフェナク、インドメタシン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、アクロフェナク、アロキシプリン、アプロキセン、アスピリン、ジフルニサル、フェノプロフェン、メフェナム酸、ナプロキセン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、メロキシカム、サリチルアミド、サリチル酸、デソキシスリンダック、テノキシカム、ケトララク、クロニジン、フルフェニサル、サルサレート、トリエタノールアミンサリチレート、アミノピリン、アンチピリン、オキシフェンブタゾン、アパゾン、シンタゾン、フルフェナム酸、クロニキセリル、クロニキシン、メクロフェナム酸、フルニキシン、コルチシン、デメコルシン、アロプリノール、オキシプリノール、塩酸ベンジダミン、ジメファダン、インドキソール、イントラゾール、塩酸ミムバン、塩酸パラニレン、テトリダミン、塩酸ベンズイミドピリン、フルプロフェン、イブフェナク、ナプロキソール、フェンブフェン、シンコフェン、ジフルミドンナトリウム、フェナモール、フルチアジン、メタザミド、塩酸レチミド、塩酸ネキセリジン、オクタザミド、モリナゾール、ネオシンコフェン、ニマゾール、クエン酸プロキサゾール、テシカム、テシミド、トルメチン、トリフルミダート、フェナメート類(メフェナム酸、メクロフェナム酸)、ナブメトン、セレコキシブ、エトドラク、ニメスリド、アパゾン、金、テポキサリン;ジチオカルバミン酸、又はそれらの組合せが挙げられる。抗炎症薬には、ステロイド類のような他の化合物も含まれ、例えば、フルオシノロン、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾンインターロイキン1受容体拮抗薬、サリドマイド(TNF−α放出阻害薬)、サリドマイド類似物(マクロファージによるTNF−α産生を減少させる)、骨形成タンパク質(BMP)タイプ2又はBMP−4(TNF−αアクチベータであるカスパーゼ8の阻害薬)、キナプリル(TNF−αを亢進するアンジオテンシンIIの阻害薬)、IL−11のようなインターフェロン(TNF−α受容体発現を調節する)、及びオーリントリカルボン酸(TNF−αを阻害する)、グアニジノエチルジサルフィド、又はそれらの組合せなどが含まれる。
【0024】
代表的な抗炎症薬としては、例えばナプロキセン;ジクロフェナク;セレコキシブ;スリンダク;ジフルサニル;ピロキシカム;インドメタシン;エトドラク;メロキシカム;イブプロフェン;ケトプロフェン;r−フルルビプロフェン;メフェナミク;ナブメトン;トルメチン、及び上記それぞれのナトリウム塩類;ケトロラクブロメタミン;ケトロラクトロメタミン;ケトロラク酸;トリサリチル酸コリンマグネシウム;ロフェコキシブ;バルデコキシブ;ルミラコキシブ;エトリコキシブ;アスピリン;サリチリ酸及びそのナトリウム塩;アルファ、ベータ、ガンマ−トコフェロール類及び−トコトリエノール類の酢酸エステル(及びそれらのd、1、及びラセミアイソマー全て);アセチルサリチル酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、セク−ブチル、t−ブチル、エステル類;テノキシカム;アセクロフェナク;ニメスリド;ネパフェナク;アンフェナク;ブロムフェナク;フルフェナメート;フェニルブタゾン、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0025】
代表的なステロイド類としては、例えば、21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾル、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン21−アセテート、デキサメタゾン21−ホスフェートジ−Na塩、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコート、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロンアセテート、フルプレドニジンアセテート、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、フルチカゾン、プロピオネート、フォルモコルタール、ハルシノニド、ハロベタゾルプロピオネート、ハロメタゾン、ハロプレドンアセテート、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾンフロアート、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25−ジエチルアミノ−アセテート、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレゾニバル、プレドニリデン、リメキソロン、チクソコルトル、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサアセトニド、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0026】
疼痛及び/又は炎症の治療に有用なスタチンの例として、限定するわけではないが、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン(米国特許第3,883,140号参照、同特許の開示全体を参考文献としてここに援用)、ベロスタチン(シンビノリンとも呼ばれる;米国特許第4,448,784号及び同第4,450,171号参照、それら特許の開示全体を参考文献としてここに援用)、フルバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、及びフルインドスタチン(Sandoz XU-62-320)、ダルバスタチン(欧州特許出願公開第738510A2号、同出願の開示全体を参考文献としてここに援用)、エプタスタチン、ピタバスタチン、又はそれらの薬学的に許容され得る塩、又はそれらの組合せが挙げられる。様々な実施形態では、スタチンは、スタチンの(+)Rエナンチオマーと(−)−Sエナンチオマーが混在していてもよい。様々な実施形態では、スタチンは、スタチンの1:1ラセミ混合物を備えていてもよい。抗炎症薬には、抗炎症性を有するもの、例えば、アミトリプチリン、カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリン、クロニジン、又はそれらの組合せなども含まれる。
【0027】
別途指定されるか又は文脈から自明である場合を除き、本明細書及び以下の一連の請求項の中で、薬物(例えば、抗炎症薬、鎮痛薬など)という言及があった場合、それは、発明者人(ら)によれば、ステレオアイオノマーを含め、前記薬物の薬学的に許容され得る塩をも指す。薬学的に許容され得る塩には、実質的に化合物の毒性を強めない、それらの塩を形成している酸と塩基が含まれる。適しているであろうと考えられる塩の幾つかの例として、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、及びアンモニウムのようなアルカリ金属の塩類、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、及び硫酸のような無機酸の塩類、並びに、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、グロン酸、コハク酸、アリールスルフォン酸、例えばp−トルエンスルフォン酸のような有機酸の塩類、又は類似物が挙げられる。
【0028】
疾患又は病態を「治療する」又は治療とは、プロトコルを実行することを指し、そこには疾患の兆候又は症状を緩和しようとの取り組みで患者(普通はヒト、そうでなければ他の哺乳類)に1つ又はそれ以上の薬物を投与することを含めてもよい。緩和は、疾患又は病態の兆候又は症状が現れた後はもとより、それらの出現前に起こることもあり得る。よって、「治療する」又は「治療」には、疾患又は望ましくない病態を「予防する」又はその「予防」が含まれる。更に、「治療する」又は「治療」は、兆候又は症状の完全緩和を必須としているわけでも、或いは治癒を必須としているわけでもなく、それは、厳密には、患者への極僅かな取り組みを有するプロトコルを含んでいる。「疼痛を減少させる」は、疼痛の低下を含んでおり、疼痛の兆候又は症状の完全な緩和を必須としているわけでもなく、或いは治癒を必須としてるわけでもない。様々な実施形態では、疼痛を減少させることには、疼痛の極僅かな低下さえも含まれる。一例として、疼痛及び/又は炎症の症状を予防、治療、又は軽減するのに、少なくとも1つの鎮痛薬と少なくとも1つの抗炎症薬の各有効用量の投与を使用してもよい。
【0029】
「局所的な」送達は、1つ又はそれ以上の薬物を、組織内、例えば神経系の神経根又は脳の領域又はそれらの密な近接範囲(例えば、約10cm以内、又は望ましくは約5cm以内)内に配置させる送達を含んでいる。「的を絞った送達システム」は、疼痛、炎症又は他の疾患や病態の治療での必要に応じて、目標部位又はその付近に配置させることのできる治療薬の或る量を有する1つ又はそれ以上の薬物デポーの送達を提供する。
【0030】
「哺乳類」という用語は、ヒトに限定されるわけではなく、チンパンジー、大型のサル、オランウータン、及び小型のサルのような他の霊長類、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウシ、ウマなどを含めた分類学上の部類である「哺乳類」に由来する有機体を指す。様々な実施形態では、哺乳類はヒト患者である。
薬物デポー
幾つかの実施形態では、患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーが提供されており、薬物デポーは、薬物の治療有効量と、目標部位又はその付近での薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっている少なくとも1つの面と、を備えており、薬物デポーの少なくとも1つの領域は、薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる。
【0031】
「薬物デポー」は、少なくとも1つの医薬品有効成分又は薬物を体内へ投与する組成を備えている。よって、薬物デポーは、所望の部位(例えば、患者の円板空間、脊柱管、組織、特に外科手術、疼痛の部位、又は炎症の部位など又はその付近)への植え込み又は保定がやり易くなる物理的構造を備えていてもよい。薬物デポーは、薬物そのものも備えている。ここで使用される「薬物」という用語は、一般に、患者の生理を改変する何らかの物質を指すものとする。「薬物」という用語は、ここでは、「治療薬」、「治療有効量」、及び「医薬品有効成分」又は「API」の各用語と入れ替え可能に使用されることもある。別途指定のない限り、「薬物」調合物は、2つ以上の治療薬を含んでいてもよいものと理解されたく、例示的な治療薬の組合せには、2つ又はそれ以上の薬物の組合せが含まれる。薬物は、部位に送達させるために治療薬の或る濃度勾配を提供している。様々な実施形態では、薬物デポーは、植え込み部位から最大約0.1cm乃至約5cmの距離において治療薬の最適薬物濃度勾配を提供し、少なくとも1つの抗炎症薬又はその薬学的に許容され得る塩、及び/又は少なくとも1つの鎮痛薬又はその薬学的に許容され得る塩を備えている。
【0032】
「デポー」は、限定するわけではないが、カプセル、コーティング、マトリクス、ウェーハ、シート、ストリップ、リボン、ピル、ペレット、又は他の薬学的送達形態又はそれらの組合せを含む。デポーに適した材料は、理想的には薬学的に許容され得る生体分解性材料及び/又はあらゆる生体吸収性材料であって、望ましくはFDA認可材料又はGRAS材料とされている材料である。これらの材料は、ポリマーであってもよいし、非ポリマーであってもよく、更には合成であっても天然素材であってもよいし、又はそれらの組合せであってもよい。通常、デポーは、生体分解性であってもよい生体適合性材料で構成されている固形乃至半固形の調合物になるであろう。「固形」という用語は、堅い材料を意味するものとし、「半固形」は、或る程度の可撓性を有し、それによりデポーを曲げたり周囲組織の要件に適合させられる材料を意味するものとする。
【0033】
「治療有効量」又は「有効量」は、薬物が投与されると、その結果、例えば、炎症の阻害、疼痛の減少又は緩和、筋肉弛緩による病態の改善などのような、生物活性の変化がもたらされるような量である。患者に投与される用量は、別途指定されるか文脈から自明である場合を除き、薬物の投与後の薬物動態学的特性、投与経路、患者の身体条件と特徴(性別、年齢、体重、健康、寸法など)、症状の程度、同時治療、治療頻度、及び所望される効果を含め、各種要因に応じて、単回用量であってもよいし多回用量であってもよい。幾つかの実施形態では、調合物は即時放出用に設計されている。幾つかの実施形態では、調合物は持続性放出用に設計されている。他の実施形態では、調合物は、1つ又はそれ以上の即時放出面と、1つ又はそれ以上の持続放出面を備えている。
【0034】
「持続性放出」又は「持続放出」(徐放又は制御放出とも呼ばれる)という句は、ここでは、1つ又はそれ以上の治療薬が、ヒト又は他の哺乳類の体内へ導入され、1つ又はそれ以上の治療薬の流れを、所定の期間に亘って、前記所定の期間の間中所望の治療効果を実現するのに十分な治療レベルで、継続的又は持続的に放出することを指すのに使用されている。継続的又は持続的放出の流れという言及があった場合、それは、薬物デポー又はその成分のマトリクスが体内で生体分解した結果として、又は(単数又は複数の)治療薬又はそれら治療薬の共役物の代謝転換又は溶解の結果として起こる放出を網羅するものとする。当業者には承知されているように、持続性放出調合物は、一例として、フィルム、スラブ、ペレット、マイクロパーティクル、マイクロスフェア、マイクロカプセル、スフェロイド、付形された誘導体、及びペーストとして作製されていてもよい。更に、調合物は、限定するわけではないが、非経口調合物、マイクロカプセル、ペースト、植え込み可能なロッド、ペレット、プレート、又はファイバーなどを含め、ここでの実施形態と関連付けて役立てるものとして当業者が評価するであろう何れの植え込み可能又は挿入可能なシステムと併用してもよい。
【0035】
「即時放出」という句は、ここでは、1つ又はそれ以上の治療薬が、体内へ導入され、且つそれらが、薬物の溶解又は吸収を遅延又は長期化させる意図なしに、投与された場所で溶け又は吸収されるようにすることを指す。即時放出は、投与後短時間内、例えば一般的には数分乃至約1〜2時間内の薬物の放出を指す。
【0036】
「放出速度プロフィール」という句は、固定の時間単位に亘って放出される有効成分のパーセンテージ、例えば、mcg/時、mcg/日、mg/時、mg/日、10日間につき日当たり10%などを指す。当業者には知られているように、放出速度プロフィールは、線形であってもよいが、必ずしもというわけではない。非限定的な例として、薬物デポーは、少なくとも1つの鎮痛薬を大量瞬時用量で、そして少なくとも1つの抗炎症薬を或る期間に亘って、放出するペレットであってもよい。
【0037】
「生体分解性」という用語は、薬物デポーの全部又は一部が、経時的に、酵素の働き、加水分解作用、及び/又は人体内の他の同様の機序によって分解してゆくことを含んでいる。様々な実施形態では、「生体分解性」は、デポーが、治療薬が放出された後又は放出中に、体内で無毒性成分へ崩壊又は分解され得ることを含む。「生体浸食性」とは、デポーが、経時的に、少なくとも一部には、周辺組織に見られる物質との接触、体液、又は細胞作用のせいで、浸食され又は分解してゆくという意味である。「生体吸収性」とは、デポーが、体内で、例えば細胞又は組織によって崩壊し吸収されてゆくという意味である。「生体適合性」は、デポーが、目標組織部位に実質的な組織刺激又は壊死を引き起こさないことを意味する。
【0038】
デポー及び/又は固定部材は、非生体分解性材料を備えていてもよい。非生体分解性ポリマーの例としては、限定するわけではないが、各種セルロース誘導体類(カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース類、及びアルキルセルロース類)、シリコン及びシリコンを基材とするポリマー類(ポリジメチルシロキサンなど)、ポリエチレン−コ−(ビニルアセテート)、ポロクサマー、ポリビニルピトリドン、ポロクサミン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリエチレン−クロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又は「Teflon(商標)」)、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド−ポリスチレン、ポリ−α−クロロ−p−キシレン、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、非分解性エチレン−ビニルアセテート(例えばエチレンビニルアセテートディスク類及びポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート))、及び他の関連の生体安定性ポリマー類が挙げられる。
【0039】
非分解吸収性ポリマー類には、限定するわけではないが、デルリン、ポリウレタン、シリコンとポリウレタンのコポリマー類、ポリオレフィン類(ポリイソブチレン及びポリイソプレンなど)、アクリルアミド類(ポリアクリル酸及びポリ(アクリロニトリル−アクリル酸))、ネオプレン、ニトリル、アクリレート類(ポリアクリレート類、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及びアクリレート類とN−ビニルピロリドンのコポリマー類)、N−ビニルラクタム類、ポリアクリロニトリル、グルコマンナンゲル、加硫ゴム、及びそれらの組合せを含めることもできる。ポリウレタン類の例としては、熱可塑性ポリウレタン類、脂肪族ポリウレタン類、セグメント化ポリウレタン類、親水性ポリウレタン類、ポリエーテル−ウレタン、ポリカーボネート−ウレタン、及びシリコンポリエーテル−ウレタンが挙げられる。他の適した非分解吸収性材料には、限定するわけではないが、2−ヒドロキシアルキルアクリレート類及び同メタクリレート類、N−ビニルモノマー類、及びエチレン性不飽和酸及び塩基のような親水性モノマー類の軽度又は重度に架橋結合された生体適合性ホモポリマー類及びコポリマー類;ポリシアノアクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー類、ポリガラクツロン酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、コラーゲン、スルホン化ポリマー類、ビニルエーテルモノマー類又はポリマー類、アルギネート、ポリビニルアミン類、ポリビニルピロリドン、及びポリビニルイミダゾールが含まれる。生体分解吸収性ポリマー内の架橋結合の量によっては、ポリマーの分解時間が削減されることもあり得るため、ポリマーは、本発明の適用上は、本発明用の材料が使用される時間枠に亘って非分解吸収性のように見えてしまうことになる。
【0040】
「疼痛管理薬物療法」という句は、1つ又はそれ以上の治療薬が、疼痛を完全に予防、緩和、又は取り除くために投与されることを含んでいる。これらの治療薬には、抗炎症薬、筋弛緩薬、鎮痛薬、麻酔薬など、及びそれらの組合せが含まれる。
【0041】
様々な実施形態では、デポーは、1つ又はそれ以上の治療薬の初期バースト用量を、植え込み後最初の24時間内に引き起こすように設計することができる。「初期バースト」又は「バースト効果」又は「大量瞬時用量」又は「パルス用量」とは、デポーが液体(例えば骨液、脳脊髄液など)に接触した後最初の24時間の間のデポーからの治療薬の放出を指す。バースト効果は、即時放出としてもよい。「バースト効果」は、デポーからの治療薬の放出増大に起因すると考えられている。初期バースト効果又は大量瞬時用量は、前もって、(i)デポー植え込み後の所定の初期期間中にデポー又は領域から放出させるべき治療薬の重量単位による有効量を(ii)植え込まれた組成物から送達されるはずの治療薬の合計量で割って得られる商を計算することによって、デポーを調合することにより確定してもよい。初期バーストは、インプラントの形状及び表面積によって変わる可能性があるものと理解されたい。
【0042】
当該領域又はデポーに関するバースト効果は、様々な実施形態では、所望の効果を実現させるべく短期間に亘って大きな初期用量が放出されるように設計することができる。例えば、薬物デポーが、48時間当たりモルヒネ15mgを放出するように設計されている場合、初期バースト用量又は大量瞬時用量領域又はデポーなら、前記用量の或るパーセンテージを最初の24時間内に(例えば、モルヒネ10mg即ち48時間用量の66%を24時間内に)放出するように設計されることになろう。こうして、薬物デポー又は領域のバースト効果により、持続性放出領域又はデポーよりも多量の治療薬が放出される。
【0043】
バースト効果又は大量瞬時用量を活用する領域又はデポーは、持続性放出領域又はデポーよりも多量の治療薬(例えば、鎮痛及び/又は抗炎症)を放出することになる。例えば、特に以下の病態を含む有痛慢性状態、即ち、関節リウマチ、変形性関節症、脊椎円板ヘルニア(例えば、座骨神経痛)、手根/足根管症候群、下背痛、下肢痛、上肢痛、癌、頸椎、胸椎、及び/又は腰椎や椎間板、回旋腱板、関節、TMJ、腱、靭帯、筋肉の損傷又は修復に伴う組織痛及び疼痛、脊椎辷り症、狭窄、椎間板起因の背痛、関節痛などの場合、薬物デポー又は同薬物デポーの当該領域の初期バースト効果は、薬物の大量瞬時量が目標部位又はその付近で放出され、疼痛及び/又は炎症の兆候又は症状の望ましい減少又は緩和がもたらされるので、より迅速な疼痛及び/又は炎症軽減を図ることができるということから好都合であろう。例えば、薬物デポー又は同薬物デポーの当該領域は、疼痛及び/又は炎症を減少、予防、及び/又は治療するのに、最初の1乃至12時間内に、1日の用量の51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67&、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を放出することができる。疼痛及び/又は炎症は、外科手術後の術後疼痛であってもよい。
【0044】
薬物デポーは、筋弛緩剤と共に同時投与してもよい、少なくとも1つの鎮痛薬及び/又はその薬学的に許容され得る塩、及び/又は少なくとも1つの抗炎症薬及び/又はその薬学的に許容され得る塩を備えることができる。同時投与には、別々の薬物デポーとして同時に投与すること、又は同一薬物デポーとして一体に調合することを含めてもよい。
【0045】
代表的な筋弛緩剤には、限定ではなく一例として、塩化アルクロニウム、アトラクリウムベシレート、バクロフェン、カルボロニウム、カリソプロドール、クロフェネシンカルバメート、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、ダントロレン、デカメソニウムブロミド、ファザジウム、ガラミン、トリエチオダイド、ヘキサフルオレニウム、メラドラジン、メフェンシン(mephensin)、メタキサロン、メソカルバモル、メトクリンイオダイド、ペンクロニウム、プリジノールメシレート、スチラメート、スキサメトニウム、スキセトニム、チオコルチコシド、チザニジン、トルペリゾン、ツボクラリン、ベクロニウム、又はそれらの組わせが含まれる。
【0046】
薬物デポーは、更に、少なくとも1つの鎮痛薬及び/又はその薬学的に許容され得る塩、及び/又は少なくとも1つの抗炎症薬及び/又はその薬学的に許容され得る塩に加え、他の治療薬又は有効成分を備えていてもよい。適した追加の治療薬には、限定するわけではないが、インテグリン拮抗薬、アルファ−4ベータ−7インテグリン拮抗薬、細胞付着阻害薬、インターフェロンガンマ拮抗薬、CTLA4−Ig作動薬/拮抗薬(BMS−188667)、CD40リガンド拮抗薬、ヒト化抗−IL−6mAb(MRA、中外製薬のトシリズマブ)、HMGB−1mAb(Critical Therapeutic Inc.社)、抗−IL2R抗体(ダクリズマブ、バシリシマブ)、ABX(抗IL−8抗体)、組み換えヒトIL−10、又はHuMaxIL−15(抗−IL15抗体)が含まれる。
【0047】
抗炎症薬及び鎮痛薬と同時投与してもよい他の適した治療薬には、Kineret(登録商標)(アナキンラ)のようなIL−1阻害薬が含まれ、これは、ヒトインターロイキン−1受容体拮抗薬(IL−1Ra)の組み換え非糖化型、即ちAMG108であり、IL−1の働きを阻止するモノクローナル抗体である。治療薬には、グルタミン酸やアスパラギン酸のような興奮性アミノ酸類、NMDA受容体、AMPA受容体、及び/又はカイネート受容体へのグルタミン酸結合の拮抗薬又は阻害薬も含まれる。望ましい場合には、上記のぺギレート化型を使用してもよいと考えられる。他の治療薬の例として、グルココルチコイド類のようなNFカッパB阻害薬、ジルヒオカルバメート(dilhiocarbamate)のような抗酸化剤が挙げられる。
【0048】
使用に適した追加の治療薬の具体例としては、限定するわけではないが、同化成長因子又は抗異化成長因子、鎮痛薬、又は骨誘導成長因子、又はそれらの組合せが挙げられる。
適した同化成長因子又は抗異化成長因子には、限定するわけではないが、骨形成タンパク質、成長分化因子、LIM鉱化タンパク質、CDMP、又は前駆細胞、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0049】
適した鎮痛薬としては、限定するわけではないが、アセトアミノフェン、ブピビカイン、アミトリプチリンのようなオピオイド系鎮痛薬、カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリン、クロニジン、オピオイド系鎮痛薬、又はそれらの組合せが挙げられる。オピオイド系鎮痛薬には、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベンジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デゾシン、ジアムプロミド、ジアモルフォン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアムブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ナルブフェン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロフェプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、トラマドール、又はそれらの組合せが含まれる。
【0050】
抗炎症薬及び鎮痛薬のそれぞれについて、幾つかの実施形態では、各化合物の放出は、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、又はそれ以上の期間に亘る。
【0051】
薬物デポーは、非有効成分を伴って投与されてもよい。これらの非有効成分には、(単数又は複数の)治療薬の放出の実施、安定化、及び制御を含め、多様な機能上の目的がある。持続性放出プロセスは、例えば、溶液−拡散機序によってもよいし、浸食−持続性プロセスにより統制されてもよい。
【0052】
様々な実施形態では、非有効成分は、予定の薬物送達期間に等しい期間(生体分解性成分に該当)又はそれより長い期間(非生体分解性成分に該当)の間、組織部位内で耐えることができるものであろう。例えば、デポー材料は、体温に近いか又はそれより高いが治療薬の溶解又は分解温度よりは低い融点又はガラス転移温度を有していてもよい。しかしながら、充填された(単数又は複数の)治療薬の放出を遅くするために、デポー材料の事前に確定された浸食を使用することもできる。
【0053】
様々な実施形態では、薬物デポーは、生体分解性でなくてもよいし、若しくは生体分解性ではない材料を備えていてもよい。非生体分解性ポリマー類としては、限定するわけではないが、各種セルロース誘導体類(カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース類、及びアルキルセルロース類)、シリコン及びシリコンを基材とするポリマー類(ポリジメチルシロキサンなど)、ポリエチレン−コ−(ビニルアセテート)、プロクサマー、ポリビニルピトリドン、ポリクサミン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリエチレン−クロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又は「Teflon(商標)」)、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド−ポリスチレン、ポリ−α−クロロ−p−キシレン、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、非分解性エチレン−ビニルアセテート(例えばエチレンビニルアセテートディスク類及びポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート))、及び他の関連の生体安定性ポリマー類、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0054】
薬物デポーは、同様に、非分解吸収性ポリマー類を備えていてもよい。これらの非分解吸収性ポリマー類には、限定するわけではないが、デルリン、ポリウレタン、シリコンとポリウレタンのコポリマー類、ポリオレフィン類(ポリイソブチレン及びポリイソプレンなど)、アクリルアミド類(ポリアクリル酸及びポリ(アクリロニトリル−アクリル酸))、ネオプレン、ニトリル、アクリレート類(ポリアクリレート類、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及びアクリレート類とN−ビニルピロリドンのコポリマー類)、N−ビニルラクタム類、ポリアクリロニトリル、グルコマンナンゲル、加硫ゴム、及びそれらの組合せを含めることができる。ポリウレタン類の例としては、熱可塑性ポリウレタン類、脂肪族ポリウレタン類、セグメント化ポリウレタン類、親水性ポリウレタン類、ポリエーテル−ウレタン、ポリカーボネート−ウレタン、及びシリコンポリエーテル−ウレタンが挙げられる。通常、非分解性薬物デポーは、摘出する必要があるかもしれない。
【0055】
幾つかの事例では、薬物デポーを使用後に摘出しなくてはいけないということを避けた方が望ましい場合もある。それらの事例では、デポーは、生体分解性材料を備えればよい。この目的に利用できる材料は、目標組織又はその付近に配置されると長期間に亘って崩壊又は壊変することができる特性を有するものがたくさんある。生体分解性材料の化学反応の関数として、分解プロセスの機序は、本質的に加水分解の場合もあれば酵素による場合もあり、若しくはそれらの両方による場合もあろう。様々な実施形態では、分解は、当該面で起こる(不均一又は面浸食)か、又は薬物送達システムデポー全体で均一的に起こる(均一又はバルク浸食)か、何れのやり方でも起こり得る。
【0056】
様々な実施形態では、デポーは、少なくとも1つの鎮痛薬及び少なくとも1つの抗炎症薬の即時放出又は持続性放出を提供することができる、生体吸収性及び/又は生体分解性のバイオポリマーを備えていてもよい。適した持続性放出バイオポリマー類の例としては、限定するわけではないが、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸類)、ポリ(ラクチド−コ−グリコライド)(PLGA又はPLG)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコライド(PG)、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸類)のポリエチレングリコール(PEG)共役物類、ポリオルトエステル類、ポリアスピリン類、ポリフォスファゲン類、コラーゲン、スターチ、プレゼラチン化スターチ、ヒアルロン酸、キトサン類、ゼラチン、アルギン酸塩類、アルブミン、フィブリン、アルファトコフェリルアセテートやd−アルファトコフェリルサクシネートのようなビタミンE類似物類、D,L−ラクチド又はL−ラクチド、ポリ(グリコライド−、−カプロラクトン)、−カプロラクトン、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA−g−PLGA、PEGT−PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート類、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、PEO−PPO−PEO(プルロニクス)、PEO−PPO−PAAコポリマー類、PLGA−PEO−PLGA、PEG−PLG、PLA−PLGA、ポロクサマー407、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー類、SAIB(スクロースアセテートイソブチレート)、又はそれらの組合せが挙げられる。当業者には承知されているように、mPEGは、PLGAの可塑剤として使用することができるが、同じ効果を実現するために他のポリマー類/賦形剤を使用してもよい。mPEGは、得られる調合物に展性を付与する。
【0057】
ポリマー類の異なる組合せ(ビポリマー類、トリポリマー類(例えばPLGA−PEO−PLGA)又はターポリマー類)が使用される場合、それらは異なるモル比、即ち、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6;1、7;1、8:1、9;1、又は10:1で使用されてもよい。例えば、130日放出薬物デポーでは、ポリマー構成は、50:50PLGA対100PLAである。分子量範囲は0.45乃至0.8dI/gである。
【0058】
様々な実施形態では、ポリマーの分子量は、広い数値範囲に及ぶこともある。ポリマーの平均分子量は、約1,000乃至約10,000,000;又は約1,000乃至約1,000,000;又は約5,000乃至約500,000;又は約10,000乃至約100,000;又は約20,000乃至50,000とすることができる。
【0059】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの生体分解性ポリマーは、ポリ(ポリ(乳酸‐コ‐グリコール酸)(PLA)又はポリ(オルトエステル)(POE)又はそれらの組合せを備えている。ポリ(乳酸‐コ‐グリコール酸)はポリグリコライド(PGA)とポリラクチドの混合物を備えていてもよいし、また幾つかの実施形態では、混合物中、ポリラクチドがポリグリコライドより多量に含まれていてもよい。様々な他の実施形態では、ポリラクチドとポリグリコライドは、100%ポリラクチドと0%ポリグリコライド;95%ポリラクチドと5%ポリグリコライド;90%ポリラクチドと10%ポリグリコライド;85%ポリラクチドと15%ポリグリコライド;80%ポリラクチドと20%ポリグリコライド;75%ポリラクチドと25%ポリグリコライド;70%ポリラクチドと30%ポリグリコライド;65%ポリラクチドと35%ポリグリコライド;60%ポリラクチドと40%ポリグリコライド;55%ポリラクチドと45%ポリグリコライド;50%ポリラクチドと50%ポリグリコライド;45%ポリラクチドと55%ポリグリコライド;40%ポリラクチドと60%ポリグリコライド;35%ポリラクチドと65%ポリグリコライド;30%ポリラクチドと70%ポリグリコライド;25%ポリラクチドと75%ポリグリコライド;20%ポリラクチドと80%ポリグリコライド;15%ポリラクチドと85%ポリグリコライド;10%ポリラクチドと90%ポリグリコライド;5%ポリラクチドと95%ポリグリコライド;及び0%ポリラクチドと100%ポリグリコライドの量で含まれている。
【0060】
ポリラクチドとポリグリコライドの両方を備えている様々な実施形態では、バイオポリマーには、少なくとも95%ポリラクチド;少なくとも90%ポリラクチド;少なくとも85%ポリラクチド;少なくとも80%ポリラクチド;少なくとも75%ポリラクチド;少なくとも70%ポリラクチド;少なくとも65%ポリラクチド;少なくとも60%ポリラクチド;少なくとも55%;少なくとも50%ポリラクチド;少なくとも45%ポリラクチド;少なくとも40%ポリラクチド;少なくとも35%ポリラクチド;少なくとも30%ポリラクチド;少なくとも25%ポリラクチド;少なくとも20%ポリラクチド;少なくとも15%ポリラクチド;少なくとも10%ポリラクチド;又は少なくとも5%ポリラクチドが含まれており、残りがポリグリコールである。
【0061】
幾つかの実施形態では、生体分解性ポリマーは、調合物の少なくとも10重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、又は少なくとも99重量%を占めている。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの生体分解性ポリマーと鎮静薬及び抗炎症薬だけが医薬品調合物の構成要素である。
【0062】
幾つかの実施形態では、粒子の少なくとも75%は、寸法が約1マイクロメートル乃至約250マイクロメートルである。幾つかの実施形態では、粒子の少なくとも85%は、寸法が約1マイクロメートル乃至約100マイクロメートルである。幾つかの実施形態では、粒子の少なくとも95%は、寸法が約1マイクロメートル乃至約30マイクロメートルである。幾つかの実施形態では、粒子の全ては、寸法が約1マイクロメートル乃至約30マイクロメートルである。
【0063】
幾つかの実施形態では、粒子の少なくとも75%は、寸法が約5マイクロメートル乃至約20マイクロメートルである。幾つかの実施形態では、粒子の少なくとも85%は、寸法が約5マイクロメートル乃至約20マイクロメートルである。幾つかの実施形態では、粒子の少なくとも95%は、寸法が約5マイクロメートル乃至約20マイクロメートルである。幾つかの実施形態では、粒子の全ては、寸法が約5マイクロメートル乃至約20マイクロメートルである。
【0064】
デポーは、随意的に、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウムのような緩衝剤及びpH調整剤;分解/放出改質剤;薬物放出調節剤;乳化剤;塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、酢酸フェニル水銀及び硝酸フェニル水銀、亜硫酸水素ナトリウム、重硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チメロサール、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、及びフェニルエチルアルコールのような保存剤;溶解性調節剤;安定化剤;及び/又は凝集改質剤のような非有効材料を含有していてもよい。通常、このような非有効材料が含まれる場合、それらは、0−75重量%の範囲内及び、より一般的には0−30重量%の範囲内で含まれることになる。デポーが脊椎領域に設置されることになっている場合、様々な実施形態では、デポーは無菌の保存剤無添加材料を備えることができる。
【0065】
デポーは、例えば、ストリップ、ロッド、シート、メッシュなどのような、異なる寸法、形状、及び構成とすることができる。薬物デポーの寸法、形状、及び構成を確定する際に考慮すべき要因が幾つかある。例えば、寸法と形状は共に、薬物デポーを植え込み部位として選択されている目標組織部位に配置する際の容易さを考慮してもよい。加えて、システムの形状と寸法は、薬物デポーが、植え込み又は注入後に移動するのを最小限に抑えるか又は防止するように選択されるべきである。様々な実施形態では、薬物デポーは、ペレット、スフィア、ロッドのような円柱体、ディスク、フィルム、又はシートのような平坦面、ストリップ、ロッド、メッシュのような形状とすることができる。薬物デポーの設置がやり易くなるように可撓性を考慮に入れてもよい。様々な実施形態では、薬物デポーは、異なる寸法とすることができ、例えば、長さが約2乃至4cm、幅が約1−2cm、厚さが約0.25乃至1mmであってもよいし、又は長さが約0.5mm乃至5cmで直径が約0.01乃至約2mmであってもよい。様々な実施形態では、デポーは、2.5cm×1.5cm×0.5mmの寸法を有するストリップである。様々な実施形態では、薬物デポーは、層の厚さが約0.005乃至1.0mm、例えば0.05乃至0.75mmなどであってもよい。
【0066】
幾つかの実施形態では、外科医は、目標組織部位にアクセスすると、針を使って縫合糸を薬物デポーの中へ通し、1つ又はそれ以上のチャネル、スリット、ループ、及び/又はクリップを通過させるか、又は縫合糸を1つ又はそれ以上の溝、フック、逆棘、柱、及び/又はクリップの周囲に縛り、次に縫合糸と針に目標組織部位を貫通させ、結び目を縛ることによって薬物デポーを目標組織部位又はその付近に固定して、過剰な血流のある区域、外科手術部位の閉合時に組織の位置が変化する区域、又は組織の強い運動がある区域(例えば、関節又は筋肉区域)においてさえも、薬物デポーの動きが制限されるようにする。針はその後抜去され、縫合糸は切断されて結び目が付けられ、縫合糸と薬物デポーが所望位置に残されることになる。
【0067】
図1は、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは面開口部12と13を有し、それら開口部は、デポーの中央に配置されていて、目標組織部位の中へ通してデポーを目標組織部位又はその付近に固定することのできる、例えば縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、又はステープルのような1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっているチャネル14へ通じている。よって、様々な実施形態では、面は固定部材(縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、又はステープル)を受け入れるのに十分な寸法であればよい。とはいえ、薬物デポーは、矩形形状であるものとして示されている。当業者又は当技術分野の普通の技量を有する者には理解されるであろうが、薬物デポーはどのような形状とすることもできる(例えば、ペレット、楕円、ストリップ、ロッド、シート、メッシュなど)。同様に当業者には理解されるであろうが、薬物デポーの取付面は、1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっているチャネル(図1に図示)の代わりに1つ又はそれ以上のポート、溝、スリット、ループ、フック、逆棘、柱、及び/又はクリップを含むこともできる。
【0068】
薬物デポーの取付面は、薬物デポー10からの延長部であってもよい。当業者には理解されるであろうが、1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、逆棘、柱、及び/又はクリップは、薬物デポーと同じ材料で作ることもできるし、又は薬物デポーとは異なる材料で作ることもできる。同様に当業者には理解されるであろうが、1つ又はそれ以上の固定部材(例えば、縫合糸、ヤーン、ラインなど)は、薬物デポーと同じ材料で作ることもできるし、又は薬物デポーとは異なる材料で作ることもできる。
【0069】
薬物デポーを目標組織部位又はその付近に取り付けるのに外科手術手法を用いることができる。そのような用途では、薬物デポーを貫いて配置されているチャネルに縫合糸が通される。縫合糸は、薬物デポー10を目標組織部位に固定する。
【0070】
薬物デポーは、それが解剖学的構造又は目標組織面へ付着される前に縫合糸に取り付けられてもよいし、付着後に取り付けられてもよい。針及び/又は縫合糸を薬物デポーに事前に取り付けておけば、縫合糸を薬物デポーに通す必要がなくなるため外科手術工程を省略でき、外科手術をより速いペースで行うことができるようになる。
【0071】
様々な実施形態では、薬物デポーは、患者の身体の内部で皮膚の下層に組織面に当てて配置することができ、縫合糸を有する針に薬物デポー面を通過させて解剖学的部位の中へ通し、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に固定する。針に体組織を穿通させた後、針を切り離し、外科的締結法に従って結び目を締結する。
【0072】
図1Aは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは、チャネル14へ通じる面開口部12と13を有し、同チャネルは、縫合糸16のような固定部材が取り付けられている針20を受け入れるようになっており、固定部材付きの針20は、薬物デポーの開口部12からチャネル14に通され、同チャネルを通過して開口部13から出される。針と縫合糸は、チャネルから延びており、この場合、針は目標組織部位を穿通することができる。ここで、縫合糸16は、縫合糸を所定場所に保持しながらピンと引っ張れるようにする部分又は領域(例えば、結び目、リム、ビード、クリップ、リッジ、タブなど)を備えることができる。縫合糸のこの部分は、縫合糸の両端が薬物デポーをすり抜けてしまうのを防止する。図1Aには結び目18が示されているが、この結び目は外科医が縛ってもよいし、又は結び目は、前もって、薬物デポーに縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、ワイヤ、又はステープルが事前に通される時に作られてもよい。こうすれば、外科医は、目標組織部位を針で穿通して、薬物デポーを結び目を介して目標組織部位に縛りさえすればよく、縫合糸を引っ張りすぎて、縫合糸がデポーから引き抜かれてしまう心配はない。
【0073】
図1Aには結び目が示されているが、縫合糸は、その一端が薬物デポーをすり抜けてしまわないように、その一部がチャネルの開口部より大きくされておればよいことが理解されるであろう。このようにすれば、縫合糸をピンと引っ張っても構わない。よって、縫合糸の一端は、縫合糸が薬物デポーのチャネルから引き抜かれるのを防止するべく、チャネルより大きくされた結び目、リム、ビード、又はクリップを備えることができる。
【0074】
図2は、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは、チャネル14へ通じる面開口部12と13を有し、同チャネルは、縫合糸16のような固定部材が取り付けられている針20を受け入れるようになっており、固定部材付きの針20は、薬物デポーの開口部12からチャネル14に通され、同チャネルを通過して開口部13から出される。これは、事前に糸通しされている薬物デポーの1つの例である。針と縫合糸は、チャネルから延びており、この場合、針は目標組織部位を穿通することができる。ここでは、縫合糸16は輪を作り目標組織に又はその付近に又はそこに当てて結び目が付けられる。図2に結び目18が示されているが、この結び目は外科医が縛ってもよいし、又は結び目は、前もって、薬物デポーに縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、ワイヤなどが事前に通される時に作られてもよい。こうすれば、外科医は、目標組織部位を針で穿通して、薬物デポーを結び目を介して目標組織部位に縛りさえすればよい。これは、薬物デポーの容易結束システムの1つの例であり、この場合、針と縫合糸とデポーは事前に糸通しされているため、針とデポーに糸通しする外科手術工程は省略される。
【0075】
図2には、円周及び/又は直径がデポーのチャネルより大きくされて、こうして縫合糸が薬物デポーから引き抜かれるのを防止する縫合糸の領域が18で示されている。幾つかの実施形態では、最初に、針に目標組織部位を穿通させることができ、次いで針と縫合糸を使用し、薬物デポーのチャネルに通してチャネルに外科医のための案内役の役目をさせるか、又は薬物デポーの周囲に縛ることができる。次に、外科医は、薬物デポーを目標組織部位へ縛って結び目を作り、そして縫合糸を切断して、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に固定することができる。
【0076】
図2Aは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図である。プル・アンド・カットシステムが示されている。薬物デポーは、固定部材としての縫合糸16を受け入れるためにデポーの中央に配置されている面、この事例ではチャネル14、を有している。この図の縫合糸は、事前に結び目が付けられている2つの領域17と18を有している。幾つかの実施形態では、縫合糸領域は、デポーを縫い付けられるように互いから或る距離だけ離間されていて、デポーの1つ又はそれ以上の面(例えばチャネル)上に、又は同面の中に、或いは同面を貫いて引っ張られる。幾つかの実施形態では、デポーは、目標組織部位の深さに応じて、互いから、0.5mm、1mm、5mm、10mm、20mm、50mm、100mm、又は1cm、5cm、又は10cm離間されている。
【0077】
一方の領域18は、縫合糸をデポーの内部の所定位置に保持しており、他方の領域17は、針が目標組織部位を穿通する時に針と共に進む。組織部位の穿通後、外科医は、縫合糸を開口部13に戻してチャネル14を通過させて開口部12から出す。縫合糸をピンと引っ張ると結び目17が開口部12を通って押し出され、縫合糸が所定場所に固定される。引っ張った後、外科医がすべきことは、デポーを植え込むために、露出している結び目に隣接して縫合糸を切断することだけである。様々な実施形態では、このプル・アンド・カットシステムは、デポーを固定するのに結び目を縛るという外科医にとって時間のかかる工程を省く。幾つかの実施形態では、外科医には結び目を縛る必要がないことから、薬物デポーは、腹腔鏡的、関節鏡的、神経内視鏡的、内視鏡的、直腸鏡的手法などに適する。
【0078】
薬物デポー面にはチャネルが示されているが、当業者には理解されるように、薬物デポーへの固定部材の取り付けをやり易くするのにどのような固定手段を使用してもよい。固定手段には、例えば、溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、タブ、クリップなどが含まれ、それらはチャネルと併用することもできるし、チャネルの代わりに使用することもできる。例えば、1つ又はそれ以上の溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、タブ、及び/又はクリップは、固定部材を薬物デポーに又は同薬物デポーを通して取り付けることがやり易くなるように、薬物デポーの上面又は下面の上に、中に、又は上方に配置することができる(例えば、外科医は、縫合糸領域に、薬物デポーから延びているクリップ、フック、タブ、又は逆棘の下を滑らせて、デポーを目標組織部位へ固定することができる)。
【0079】
図2Bは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図である。縫合糸がデポーを通して引っ張られる、プル・アンド・カットシステムが示されている。薬物デポーは、固定部材としての縫合糸16を受け入れるために、デポーの中央に配置されている面、この事例ではチャネル14、を有している。この図の縫合糸は、事前に結び目が付けられている2つの領域17と18を有している。一方の領域18は、縫合糸をデポーの内部の所定位置に保持しており、他方の領域17は、針が目標組織部位を穿通する時に針と共に進む。組織部位の穿通後、外科医は、縫合糸を開口部13に戻してチャネル14を通過させて開口部12から出す。縫合糸をピンと引っ張ると結び目17が開口部12を通って押し出され、縫合糸が所定場所に固定される。引っ張った後、外科医がすべきことは、デポーを植え込むために、露出している結び目に隣接して縫合糸を切断することだけである。
【0080】
同様に当業者には理解されるであろうが、縫合糸の1つ又はそれ以上の領域は1つ又はそれ以上の結び目として示されてはいても、縫合糸は、縫合糸をデポーの異なる位置に保持するようになっている他の固定手段を有することもできる。縫合糸の当該領域に沿って配置されるそのような固定手段としては、限定するわけではないが、縫合糸を所定場所に保持するようになっている1つ又はそれ以上のフック、逆棘、柱、ビード、タブ、リム、クリップ、及び/又はリッジなどが挙げられる。例えば、縫合糸に、チャネルより大きくされている2つのフック、逆棘、柱、ビード、タブ、リム、クリップ、又はリッジを設け、そのうちの一方には縫合糸をデポー内に保持させ、他方には、外科医が縫合糸をピンと引っ張ることによってデポーのチャネルから押し出し、デポーを目標組織部位に固定させるようにしてもよい。幾つかの実施形態では、これらのフック、逆棘、柱、ビード、タブ、リム、クリップ、及び/又はリッジなどは、デポー及び縫合糸と同様に生体分解性材料で作らていてもよい。
【0081】
図3は、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは、互いに反対側の端部の14と24として示されている2つのチャネルに通じる2つの面開口部13と15を有しており、2つのチャネルは、縫合糸16のような固定部材が取り付けられている針20を受け入れるようになっており、固定部材付きの針20は、薬物デポーの開口部12からチャネル14に通され、同チャネルを通過して開口部13から出される。これは、事前に糸通しされている薬物デポーの1つの例である。針と縫合糸は、チャネルから延びており、この場合、針は目標組織部位を穿通し、次いで空いている取付面開口部15に戻され、チャネル24を通され開口部22から出てゆくことができ、この時縫合糸は輪を作り、目標組織に又はその付近に又はそこに当てて結び目が付けられる。
【0082】
図3に結び目18が示されているが、この結び目は外科医が縛り、次いで針と縫合糸にチャネル14を通過させるようにしてもよいし、又は結び目は、前もって、薬物デポーに縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、ワイヤなどが事前に通される時に作られてもよい。こうすれば、外科医は、目標組織部位を針で穿通し、次に針と縫合糸を空いている開口部15に戻し、チャネル24によって案内されながら針と縫合糸に薬物デポーを通過させて面開口部22から出しさえすればよく、そこで薬物デポーは結び目を介して目標組織部位又はその付近に固定される。これは、薬物デポーの容易結束システムの1つの例であり、この場合、針と縫合糸とデポーは事前に糸通しされているため、針とデポーに糸通しする外科手術工程は省略される。
【0083】
図3には、寸法(例えば、円周及び/又は直径)がデポーのチャネルより大きくされて、縫合糸が薬物デポーから引き抜かれるのを防止する縫合糸の領域が18で示されている。幾つかの実施形態では、外科医は、針と縫合糸を使用して、目標組織部位を穿通し、次いで同じ針と縫合糸を、第2の開口部15に通し、第2のチャネル24に案内役の役目をさせて縫合糸を開口部22から出させることができ、そこで外科医によって結び目が縛られると、薬物デポーは目標組織部位又はその付近に縫い付けて固定される。図1及び図2と同じく、チャネルの開口部は、固定部材を通過させることができる幾何学形状を有している。
【0084】
図4は、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは、互いに反対側の端部の14と24として示されている2つのチャネルに通じる2つの面開口部13と15を有しており、2つのチャネルは、縫合糸16のような固定部材を有する針20を受け入れるようになっており、固定部材付きの針20は、薬物デポーの開口部12からチャネル14に通され、同チャネルを通過して開口部13から出される。針と縫合糸は、チャネルから延びており、この場合、針は目標組織部位を穿通し、次いで空いている取付面開口部15に戻され、チャネル24を通過して開口部22から出てゆくことができ、この時縫合糸は輪を作り、目標組織に又はその付近に又はそこに当てて結び目が付けられる。図4に結び目18が示されているが、この結び目は外科医が縛り、次いで針と縫合糸にチャネル14を通過させるようにしてもよいし、又は結び目は、前もって、薬物デポーに縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、ワイヤなどが事前に通される時に作られてもよい。こうすれば、外科医は、目標組織部位を針で穿通し、次に針と縫合糸を空いている開口部15に戻し、チャネル24によって案内されながら針と縫合糸に薬物デポーを通過させて面開口部22から出しさえすればよく、そこで結び目を付ければ、薬物デポーを固定することができる。これは、薬物デポーの容易結束システムの1つの例であり、この場合外科手術の工程は、針に縫合糸を事前に通す工程と薬物デポーに針を事前に通すという工程が削られる。図4には、デポーのチャネルの寸法(例えば、円周及び/又は直径)より大きくされて、縫合糸が薬物デポーから引き抜かれるのを防止する縫合糸の領域が18で示されている。幾つかの実施形態では、外科医は、針と縫合糸を使用して、目標組織部位を穿通し、次いで同じ針と縫合糸を、第2の開口部13に通し、第2のチャネル14に案内役の役目をさせて縫合糸を開口部12から出させることができ、そこで外科医によって結び目が縛られ、縫合糸がピンと引っ張られると、薬物デポーは目標組織部位又はその付近に縫い付けて固定される。
【0085】
幾つかの実施形態では、薬物デポーは、患者の身体の内部で皮膚の下層に組織面に当てて配置することができ、縫合糸を有する針に薬物デポーの面を通過させて解剖学的部位の中へ通し、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に固定する。針に体組織を穿通させた後、針と糸を使用して、第2のチャネル経由で薬物デポーに通し、外科的締結法に従って結び目を作り針を縫合糸から切り離す。
【0086】
幾つかの実施形態では、固定部材はステープルとすることができ、薬物デポー面はステープルを受け入れるようになっているか、或いはステープルに薬物デポーと目標組織部位を穿通させて薬物デポーを固定することもできる。例えば、外科医は、薬物デポーを目標組織部位に当てて設置し、次いでステープルで薬物デポーを目標組織部位に留め付けることもできる。こうすれば、外科医は薬物デポーを簡単に植え込むことができる。
【0087】
図4Aは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは、2つのチャネル(14と24)及び開口部22と12に通じる2つの面開口部13と15を有しており、2つのチャネルは、縫合糸16のような固定部材を有する針20を受け入れるようになっており、固定部材付きの針20は、薬物デポーの開口部12からチャネル14に通され、同チャネルを通過して開口部13から出される。針と縫合糸は、チャネルから延びており、この場合、針は皮膚22の下層の目標組織部位を穿通することができる。この事例では、目標組織部位は筋肉組織24から構成されている。針と縫合糸は筋肉組織を穿通し、他端の取付面のデポー開口部15に戻り、チャネル24を案内されて通過し、開口部22から出されるが、この時縫合糸は輪を作り、目標組織に又はその付近に又はそこに当てて結び目が縛られる。図4Aには、縫合糸を薬物デポーの一端に事前に取り付けるのに使用されているビード18が示されている。このビードは、縫合糸の或る領域に取り付けられていて、外科医が縫合糸のこの端部を薬物デポーから引き抜くことができないようにチャネル及び開口部よりも大きくされている。外科医は、筋肉組織24を針で穿通した後、次に針と縫合糸を第2の開口部15に戻し、チャネル24を案内されながら通過させて開口部22から出すと、縫合糸に結び目を付けてから針と縫合糸を切断し、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に固定させる。
【0088】
図4Aに示されている実施形態では、薬物デポーは生体分解性とすることができ、薬物デポーが分解してゆくと、薬物が目標組織部位で放出され、望まれない移動と一貫した薬物療法が、目標組織部位又はその付近で提供される。様々な実施形態では、縫合糸16は、薬物デポーよりも速く分解し、これにより、目標組織部位が治癒するにつれ、縫合糸が分解すると、薬物デポーは、目標組織部位の奥深くに取り残され、体液が薬物デポーに触れると薬物を放出し、時間を掛けて分解してゆくことになる。
【0089】
幾つかの実施形態では、幾つかの外科手術工程を省き、外科手術時間が短縮されるように、縫合糸は、外科用針に事前に取り付けられていて、縫合糸は、1つ又はそれ以上のチャネル、スリット、ループ、及び/又はクリップに事前に通されているか又はそれらに事前に取り付けられている、或いは1つ又はそれ以上の溝、フック、逆棘、柱、及び/又はクリップの周囲に事前に縛られているか又はそれらに事前に取り付けられている。
【0090】
図5は、植え込み可能な薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは、薬物デポーの異なる端部に配置されていて縫合糸16を受け入れることができる2つの面、この事例では12と22として示されている2つのチャネル開口部、を有している。縫合糸は、2つの領域を有し、そのうちの一方の領域18は、縫合糸をデポーの中の所定の場所に保持するための領域であり、他方の領域17は、(体組織を針20で穿通した後)外科医が、チャネル開口部22を通して引っ張り、領域17を開口部から押し出し、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定するための領域である。この図は、事前に糸通しされ、事前に結び目(17と18)が付けられているデポーを示している。縫合糸をチャネルを通して引っ張った後に外科医がすべきことは、縫合糸を切断することだけである。この「プル・アンド・カット」システムにより、外科手術中にデポーを固定するために結び目を縛るという時間のかかる工程は回避できる。
【0091】
図5Aは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面図であり、同薬物デポーは、薬物デポーの異なる端部に配置されていて縫合糸16を受け入れることができる2つの面、この事例では12と22として示されている2つのチャネル開口部、を有している。縫合糸は、2つの領域を有し、そのうちの一方の領域18は、縫合糸をデポーの中の所定の場所に保持するための領域であり、他方の領域17は、(体組織を針20で穿通した後)外科医が、チャネル開口部22を通して引っ張り、領域17を開口部から押し出し、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定するための領域である。この図は、事前に糸通しされ、事前に結び目(17と18)が付けられ、縫合針20がチャネル開口部22を通過しようとしているデポーを示している。縫合糸をチャネルを通して引っ張った後に外科医がすべきことは、縫合糸を切断することだけである。
【0092】
図5B、図5C、及び図5Dは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態において、縫合糸16と針20がチャネル開口部13を通過している状態の薬物デポー10の背面図を示している。縫合糸は、(体組織穿通後に)外科医が引っ張って開口部15を通して押し出し、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定できるようにする領域17を有している。この図は、事前に糸通しされ、事前に結び目が付けられ、縫合針がチャネル開口部15を通され、領域17が引き通されようとしているデポーを示している(図5Bと図5C)。図5Dは、縫合糸16と針20が薬物デポー10のチャネル開口部15を引き通された状態を示している。デポーのこの背面部は、幾つかの実施形態では、組織面に当てて植え込まれる。
【0093】
図5Eは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の正面図であり、同薬物デポーは、薬物デポーの異なる端部に配置されていて縫合糸16を受け入れることができる2つの面、この事例では12と22として示されている2つのチャネル開口部、を有している。縫合糸は、2つの領域を有し、そのうちの一方の領域18は、縫合糸をデポーの中の所定の場所に保持するための領域であり、他方の領域17は、(体組織を針20で穿通した後)外科医が、チャネル開口部22を通して引っ張り、領域17を開口部から押し出してデポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定するための領域である。この図は、事前に糸通しされ、事前に結び目(17と18)が付けられ、縫合針20が結び目17に隣接して切断されているデポーを示している。
【0094】
図5Fと図5Gは、皮膚(図5Gの22)の下層の目標組織部位(図5Gの筋肉24)に植え込まれている薬物デポー10の1つの実施形態の正面図を示している。薬物デポーは、薬物デポーの異なる端部に配置されていて縫合糸16を受け入れることができる2つの面、この事例では12と22として示されている2つのチャネル開口部、を有している。縫合糸は、2つの領域を有し、そのうちの一方の領域18は、縫合糸をデポーの中の所定の場所に保持するための領域であり、他方の領域17は、(体組織を針20で穿通した後)外科医が、チャネル開口部22を通して引っ張り、領域17を開口部から押し出して、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定するための領域である。図5Fの図は、事前に糸通しされ、事前に結び目(17と18)が付けられ、植え込まれ、縫合糸が結び目17に隣接して切断されているデポーを示している。図5Gは、植え込み後のデポーにおいて、余分な縫合糸部分と針が取り除かれた後のデポーを示している。
【0095】
当業者には理解されるであろうが、デポーは、穴、チャネル、溝、スリットなどが、製造業者によって事前にデポーに作成されていてもよい。或いは、穴、チャネル、溝、スリットなどは、ユーザーが針を使って作成することもできる。
【0096】
幾つかの実施形態では、穴、チャネル、溝、スリットなどは、打ち貫き加工、切りもみ加工、レーザーなどで作成することができる。縫合糸と針は、手作業で取り付けることもできるし、自動化された機械で取り付けることもできる。縫合糸の結び目は、手作業で作成することもできるし、自動化された機械で作成することもできる。他の捕捉手段又は機構(チャネル、穴、ポート、溝、スリット、ループ、フック、逆棘、柱、ビード、タブ、及び/又はクリップ)は、デポー植え込み形状へ事前に型成形することもできるし、機械加工しておくことも、或いは二次的に取り付けることもできる。
【0097】
当業者には理解されるであろうが、図1−図5Gでは、少なくとも1つの表面はチャネルとして示されているものの、薬物デポーの当該面は、同面が固定部材を薬物デポーへ又は薬物デポーを通して取り付けることをやり易くする限り、1つ又はそれ以上の溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱などとすることもできる。様々な実施形態では、薬物デポーの少なくとも1つの取付面は、薬物デポーの本体から、例えば、チャネル、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、構造物などとして延びていてもよい。
【0098】
幾つかの実施形態では、薬物デポーの1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、及び/又はクリップは、互いに等間隔に間離されていてもよい。例えば、1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、及び/又はクリップは、互いから0.5mm、1mm、5mm、10mm、20mm離間されていてもよい。
【0099】
図6Aは、縫合糸を受け入れるようになっている面を有する植え込むことのできる薬物デポー10の側面図であり、ここでは、外科医は縫合糸の一端の結び目18として示されているように縫合糸16をデポーに縛ることができ、縫合糸の他端22は針に取り付けることができ、その針を使って目標組織部位を穿刺することができ、縫合糸端22を結び目に縛ってから、針を切断して取り出すことができる。こうすれば、薬物デポーを目標組織又はその付近に固定することができる。
【0100】
図6Bは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面図であり、同薬物デポーは、その周囲周りに走っていて縫合糸16を受け入れるようになっている面、この事例では溝24、を有しており、ここでは、縫合糸は溝24の周囲に縛ることができ18、縫合糸22の一端は針に通すことができる。針と縫合糸は、目標組織部位を穿通することができ、その後、針と縫合糸は戻されて、縫合糸は結び目が付けられ、針は切断されて取り出される。こうすれば、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に縫い付けることができる。様々な実施形態では、薬物デポーは、縫合糸を事前に取り付けておくことができ、外科医が針と薬物デポーに糸を通す場合の外科手術工程と時間を省くことができる。
【0101】
薬物デポー上には、ユーザーがデポーを患者の目標部位へ正確に位置決めできるようにするために、放射線撮影マーカーを含めることができる。これらの放射線撮影マーカーは、ユーザーが当該部位のデポーの動き又は分解を経時的に追跡できるようにもするはずである。この実施形態では、ユーザーは、数ある診断的画像化手法の何れかを使って、デポーを当該部位に正確に位置決めするようにしてもよい。そのような診断的画像化手法としては、例えば、X線画像化、蛍光透視、又はMRIが挙げられる。そのような放射線撮影マーカーの例としては、限定するわけではないが、バリウム、リン酸カルシウム、及び/又は金属ビード又は粒子が挙げられる。様々な実施形態では、放射線撮影マーカーは、球状形状物、(単数又は複数の)線、又はデポーの周囲に配したリングであってもよい。
【0102】
幾つかの実施形態では、薬物デポーは、植え込まれた後ほどなくして薬物を放出させる初期バースト効果を有していてもよい。治療薬放出の初期バーストを実現するには、様々な要因を調節すればよい。第1に、初期バーストは、溶媒の水不混和性、ポリマー/溶媒比、及びポリマーの属性のような、デポーの属性に関係のある要因によって制御することができる。デポーに使用されている溶媒の水不混和性の程度は、水性の体液がデポーに浸透して治療薬を放出させる速度に影響する。一般に、水溶性が高ければ初期バーストは高くなり、水不混和性であれば初期バーストは低くなり、即ち治療薬の放出は緩慢になる(持続性放出)。
【0103】
初期バースト放出又は持続性放出を制御するのに使用される適した溶媒としては、限定するわけではないが、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、n−プロピルベンゾエート、イソプロピルベンゾエート、ブチルベンゾエート、イソブチルベンゾエート、セク−ブチルベンゾエート、ター−ブチルベンゾエート、イソアミルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、水、アルコール、低分子量PEG(1,000MW未満)、トリアセチン、ジアセチン、トリブチリン、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリエチルグリセライド類、トリエチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジエチルタルタレート、鉱油、ポリブテン、シリコン液、グリセリン、エチレングリコール、オクタノール、エチルラクテート、プロピレングリコール、プロピレンカルボナート、エチレンカルボナート、ブチロラクトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールフォーマル、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、グリコフロル、ジメチルスルホオキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクトン、ジチルメチルスルホオキシド、オレイン酸、1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オン、又はそれらの混合物が挙げられる。溶媒は、様々な実施形態では、所望の放出プロフィールを得るために、治療薬及び/又はポリマー類と混合することができる。
【0104】
デポーは、孔形成剤を有していてもよく、そのようなものとして、体液に触れると溶け、分散し、又は分解して、ポリマーマトリクスに孔又はチャネルを作り出す生体適合性材料が含まれる。代表的には、糖類(例えば、ショ糖、ブドウ糖)、水溶性塩類(例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウム、及び炭酸ナトリウム)、N−メチル−2−ピロリドン及びポリエチレングリコールのような水溶性溶媒、及び水溶性ポリマー類(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピル−セルロースなど)のような、水溶性である有機及び非有機材料を孔形成剤として使用するのが好都合である。そのような材料は、ポリマーの重量の約0.1%乃至約100%の様々な量で含まれていてもよいが、通常は、ポリマーの重量の50%未満、より典型的には10−20%未満である。
【0105】
また、デポー中のポリマーの分子量を変えること、又はデポー賦形剤中のポリマー材料の分子量分布を調節することで、初期バースト及びデポーからの治療薬の放出速度に影響を与えることができる。一般に、分子量の大きいポリマーでは、初期バーストは低くなり、治療薬の放出速度はより遅くなる。ポリマーは、酸及びエステル末端基のような異なる末端基を有していてもよい。当業者には承知されている通り、ポリマー類と異なる末端基との配合物を有する、植え込むことのできるエラストマー系デポー組成を使用すると、得られる調合物は、低いバースト指数と調節された送達持続時間を有することになろう。例えば、ポリマー類を酸(カルボン酸)及びエステル末端基(例えば、エチルエステル末端基のメチル)と共に使用してもよい。
【0106】
追加的に、ポリマーを形成している各種モノマー類のコモノマー比(例えば、所与のポリマーでのL/G(乳酸/グリコール酸)又はG/CL(グリコール酸/ポリカプロラクトン)比)を変えれば、調節されたバースト指数と送達持続時間を有するデポー組成が得られることになろう。例えば、L/G比が50:50のポリマーを有するデポー組成であれば、約2日間から約1カ月間までの範囲の短い送達持続時間を有することになり;L/G比が65:35のポリマーを有するデポー組成であれば、約2カ月間の送達持続時間を有することになり;L/G比が75:25又はL/CL比が75:25のポリマーを有するデポー組成であれば、約3カ月間乃至約4カ月間の送達持続時間を有することになり;L/G比が85:15のポリマー比を有するデポー組成であれば、約5カ月間の送達持続時間を有することになり;L/CL比が25:75又はPLAのポリマーを有するデポー組成であれば、6カ月間以上の送達持続時間を有することになり;CL/G/Lのターポリマーで、Gが50%より多く、Lが10%より多いターポリマーを有するデポー組成であれば、約1カ月間の送達持続時間を有することになり;CL/G/Lのターポリマーで、Gが50%未満、Lが10%未満のターポリマーを有するデポー組成であれば、最大6カ月間の持続月数を有することになろう。一般に、CL含量に比べG含量を増加すれば送達持続時間は短縮され、一方、G含量に比べCL含量を増加すれば、送達持続時間は長くなる。よって、とりわけ、異なる分子量、異なる末端基、及び異なるコポリマー比を有するポリマー類の配合物を有するデポー組成を使用すれば、低いバースト指数と調節された送達持続時間を有するデポー調合物を作り出すことができる。
【0107】
粒子の寸法、粒子状物質の壊変、粒子状物質の形態学(例えば、植え込み前の粒子状物質に孔が存在するか否か又は孔が体液侵食により簡単に形成されるか否か)、被覆類、治療薬による錯体形成、錯体結合の強さのような要因を操作すれば、所望の低い初期バースト及び放出速度を実現することができる。
縫合糸
縫合糸は、それが作られている材料の種類により、性質上、分解吸収性か又は永久かになる。「縫合糸」がここで使用されている場合、それは、2点間に張ることのできる何らかの可撓性を有する構造を指し、そのようなものには、限定するわけではないが、従来型の縫合材料、単ストランド又は多ストランドのスレッド、又はメッシュ構造が含まれる。縫合糸は、ベルトに見られる穴に似た多数の穴が開けられたストラップ状構造であってもよい。「縫合糸」は、更に、軟組織を再建させるために細胞の内成長用の足場又は支持母材を提供する無細胞のコラーゲン膜又は他の生物組織補強物の形態をとっていてもよい。外科用針に取り付けられる縫合糸としては、絹、ナイロン、リネン、綿、クロムガット、プレーンガット、キャットガット、バイクリル、ポリグラクチン、ポリエステル、ポリプロピレン、ステンレス鋼、ポリグリコール酸を含め吸収性成分と適合性のある無毒性組織へと加水分解されるグリコール酸エステル結合を有する合成ポリマー類が挙げられる。縫合糸は、モノフィラメントであってもよいし編まれていてもよく、吸収性であっても非吸収性であってもよい。縫合糸は、どんな長さであってもよい。様々な実施形態では、縫合糸は、デポーの設置部位から目標組織部位へ到達させられるだけの長さである。縫合糸は、薬物デポーへ又は薬物デポーを通して取り付けることができるならば、何れの厚さであってもよい。幾つかの実施形態では、縫合糸は薬物で被覆されている。
【0108】
縫合糸を作るのに各種生体吸収性ポリマーが使用できる。適した生体適合性生体吸収性ポリマー類の例としては、脂肪族ポリマー類、ポリ(アミノ酸類)、コポリ(エーテル−エステル類)、ポリアルキレン類オキサレート類、ポリアミド類、チロシン由来ポリカーボネート類、ポリ(イミノカーボネート類)、ポリオルトエステル類、ポリオキサエステル類、ポリアミドエステル類、アミン基含有ポリオキサエステル類、ポリ(アンハイドライド類)、ポリホスファゼン類、生体分子類(即ち、コラーゲン、エラスチン、生体吸収性スターチなどのようなバイオポリマー類)、又はそれらの配合物が挙げられる。ポリエステル類には、限定するわけではないが、ラクチド(乳酸、D−、L−、及びメソ・ラクチドを含む)、グリコライド(グリコール酸を含む)、カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカルボナート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカルボナートのアルキル誘導体類、デルタ−バレロラクトン、ベータ−ブチロラクトン、ガンマ−ブチロラクトン、エプシロン−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン(そのダイマー1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む)、1,5−ジオキセパン−2−ワン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−ワン2,5−ジケトモルホリン、ピバロラクトン、アルファ−ジエチルプロピオラクトン、エチレンカルボナート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−ワン、のホモポリマー類及びコポリマー類、又は上記物質のポリマー配合物類が挙げられる。
【0109】
幾つかの実施形態では、縫合糸は、各種ポリエーテル類、ポリアクリレート類、ポリアミド類、ポリシロキサン類、ポリウレタン類、ポリエーテルアミド類、ポリウレタン/尿素類、ポリエーテルエステル類、又はウレタン/ブタジエンコポリマー類、又はそれらの組合せを含む、形状記憶ポリマー類を備えていてもよい。
【0110】
幾つかの実施形態では、薬物デポーより速く縫合糸が分解する。幾つかの実施形態では、縫合糸より速く薬物デポーが分解する。
縫合糸は、施行される手技と植え込み部位に応じて異なる寸法であってもよい。縫合糸は、寸法が、#000000(#6−0又は#6/0)、#00(#2−0又は#2/0)、#0、#1、#2、#3、#4、#5、#6の範囲にあればよく、#000000が最小である。様々な実施形態では、薬物デポーは、1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、及び/又は逆棘を有することになろうが、それらは、縫合糸が薬物デポーの当該表面を通過することができるように、#000000、#00、#0、#1、#2、#3、#4、#5、又は#6範囲よりも大きくされているであろう。
針
幾つかの実施形態では、1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、及び/又はクリップは、縫合糸、ヤーン、スレッド、又はラインを有する針が、デポーを通って又はデポーの周囲を通過し、案内されるようにする寸法である。よって、1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、及び/又はクリップは、針の幅及び/又は厚さよりも大きくして、外科医が針を通過させられるようにする案内役の役目を果たさせてもよい。
【0111】
とりわけ、針の寸法は、植え込みの部位によって異なるであろう。例えば、筋肉面の幅は、異なる手技において1−40cmとばらつきがある。よって、針は、様々な実施形態では、これらの特定の面積に合わせて設計することができる。
【0112】
針は、例えば、半曲線状又はスキー形状、1/4円、3/8円、1/2円、5/8円、複合曲線などのような異なる形状を有していてもよい。よって、幾つかの実施形態では、薬物デポー面は、針と縫合糸が薬物デポーを通過することができるか又は縫合糸をその周囲に縛れるように、針と縫合糸を受け入れるべく設計されることになろう。
【0113】
針の厚さも、植え込みの部位によって異なるであろう。様々な実施形態では、厚さとしては、限定するわけではないが、約0.05乃至約1.655が含まれる。針のゲージは、ヒト又は動物の体内への挿入では、最大直径であっても最小直径であってもよいし、或いはそれらの間の直径であってもよい。最大直径は典型的には約14ゲージであり、一方、最小直径は約25ゲージである。様々な実施形態では、針又はカニューレのゲージは約18乃至約22ゲージである。
【0114】
同様に、1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、及び/又はクリップは、縫合糸を有する針がその中を通過できるようにこれより大きな寸法を有していてもよい。針がデポー及び目標身体組織に穿通された後、外科的締結法に従って結び目が作られ針が縫合糸から切り離されることになる。
【0115】
本用途において、例えば関節鏡的外科手術などの場合、縫合又はステッチを手作業によるか又は自動化された装置を介して施すための縫合用針を使用することができる。縫合用針は、通常、例えば、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエーテル(アミド)、PEBA、熱可塑性エラストマー系オレフィン、コポリエステル、並びにスチレン系熱可塑性エラストマー、鋼、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、非鉄金属含有率が高く且つ鉄の相対比率が低い金属合金類、炭素繊維、ガラス繊維、プラスチック類、セラミックス、又はそれらの組合せのような材料の切り出されたブランクから作られている。針は、随意的に、1つ又はそれ以上の先細領域を含んでいてもよい。様々な実施形態では、針は、一般的に、シャフト部と、縫合糸スレッドを固定するための開口部又はチャネルを有する後端部分と、皮膚を穿刺し組織を貫通させるための前端部分の針頭部を含んでいる。針頭部には、通常、その遠位端の尖った針先端と切刃が組み入れられている。代わりに、針先端は、先細の構成であってもよい。本技術においては、直線状の針又は多様な曲線構成を含む曲線状の針も知られている。縫合用針は、通常、尖った針端を組み入れている。より鋭利な針であれば、組織に貫入するのに要する力が少なくて済み、結果的に組織の外傷が軽くなる。加えて、より鋭利な針であれば、針自体の疲労が低減されるため、縫合中に曲がったり折れたりする可能性が低くなる。針の鋭利さは、通常、「貫入力」−即ち、針が組織を穿刺する又は貫入するのに必要な力、という用語で定義される。貫入力は、主として、針先端の設計と鋭利さ並びに針頭部に形成されている切刃によって決まる。同様に針の鋭利さは、針が組織を貫いて進んでゆく際に針に掛かる抵抗力によって影響される。同様に抵抗力は、針の設計と鋭利さ並びに潤滑用被覆の有無によって左右される。外科用針の材料の選定は、強度、柔軟性、及び針の曲げや折れに対する耐久性が最適化されるようになされる。とはいえ、針の物理的特性には針の断面形状と寸法が大きく寄与する。様々な実施形態では、針は、典型的に、325,000−350,000ポンド/平方インチの引張強度を有する「300」シリーズのステンレス鋼のようなステンレス鋼を含んでいる。縫合針が、例えばステンレス鋼のような金属である場合、針は、従来式の切断、コイニング、研ぎ出し、及び/又はスエージ加工により製造することができ、その強度と曲げに対する耐久性を更に強化するために熱処理を施してもよい。貫入及び抵抗特性を更に改善するためにシリコンのような潤滑性被覆を針本体に塗布してもよい。
滅菌処理
薬物デポー、薬物を投与するための医用装置、及び/又は固定部材(例えば、縫合糸)は、滅菌処置を施せるようになっていてもよい。様々な実施形態では、薬物デポー、薬物を投与するための医用装置、及び/又は固定部材(例えば、縫合糸)の1つ又はそれ以上の構成要素は、最終的に包装される段階での最終滅菌工程において放射線による滅菌処置を施せるようになっていてもよい。製品に最終滅菌処置を施すことで、滅菌性は、個々の製品構成要素を個別に滅菌して最終的包装物を滅菌環境で組み立てることが求められる無菌プロセスのようなプロセスによる場合よりも更に確実なものとなる。
【0116】
典型的には、様々な実施形態では、最終滅菌工程でガンマ放射線が使用されており、これには装置に深く浸透するガンマ線からのイオン化エネルギーを活用することが係わる。ガンマ線は、微生物類の殺傷に高い効果を発揮し、また残存量が残ることもなければ、装置に放射活性を付与するほどのエネルギーも持たない。ガンマ線は、装置を包装する際に採用することができ、ガンマ滅菌は高圧又は減圧条件を要しないので、包装物のシールや他の構成要素は応力を受けない。加えて、ガンマ放射線では、透過性包装材料の必要性がない。
【0117】
幾つかの実施形態では、縫合糸、デポー、及び針は、事前に組み立てられ、耐湿性の包装に詰められた後、最終的にガンマ照射によって滅菌される。使用の際、外科医は事前に組み立てられている薬物デポーを滅菌包装から取り出して使用する。
【0118】
様々な実施形態では、装置の1つ又はそれ以上の構成要素を滅菌するのに電子ビーム(e−ビーム)放射を使用してもよい。e−ビーム放射は、浸透度が低く線量率が高いことを特徴とするイオン化エネルギーの一形態を備えている。e−ビーム照射は、微生物類の生殖細胞を含め、それに触れた各種化学結合及び分子結合を改変するという点でガンマプロセスに似ている。e−ビーム滅菌用に作り出されるビームは、電気の加速と変換とによって生成される集中高電荷電子流である。
【0119】
デポー及び/又は装置の1つ又はそれ以上の構成要素を滅菌するのに、限定するわけではないが、例えば、エチレンオキシド又は蒸気による滅菌のようなガス滅菌を含め、他の方法を使用することもできる。
キット
様々な実施形態では、1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっている面を有する1つ又はそれ以上の薬物デポーを備えているキットが提供されている。キットは、薬物デポー及び/又は医用装置と共に、薬物デポー(例えば、ペレット、ストリップ、メッシュなど)を植え込むのに使用される追加部品を一体に組み合わせて備えていてもよい。キットは、第1の区画に薬物デポーを含んでいてもよい。第2の区画には、薬物デポーを保持しているキャニスターが含まれていてもよいし、或いは異なる放出プロフィールを有するそれぞれの薬物デポーにラベルを付けて異なる区画(例えば、大量瞬時用量デポー区画、持続性放出デポー区画など)に入れるようにしてもよく、また局所化された薬物送達用に必要な他の器具がある場合にはそれらが含まれていてもよい。第3の区画には、手袋、ドレープ、創傷包帯類、及び植え込みプロセスの滅菌性を維持するための他の処置用必需品、並びに手引書が含まれていてもよい。第4の区画には、追加の針及び/又は縫合糸が含まれていてもよい。それぞれの道具は、別々に、放射線滅菌処理されたプラスチックポーチに包装されていてもよい。第5の区画には、放射線撮影画像化用の薬剤が含まれていてもよい。キットのふたには、植え込み手順のイラストが含まれていてもよいし、滅菌性を維持するために透明なプラスチックのふたが構成要素に被せられていてもよい。
投与
様々な実施形態では、薬物デポーは非経口的に投与されてもよい。「非経口」という用語がここで使用される場合、それは、消化管を迂回する投与の形態を指し、例えば、筋肉内的、腹膜内的、胸骨内的、皮下的、術中的、髄腔内的、円板内的、円板周囲的、硬膜外的、脊椎周囲的、関節内的、又はそれらの組合せが含まれる。
【0120】
様々な実施形態では、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬の組合せは、局所的に投与されるので、治療有効用量は、他の経路(経口、表面塗布など)によって投与される場合の用量より少なくてもよい。これは、ひいては、例えば、肝臓のトランスアミナーゼの上昇、肝炎、肝不全、筋障害、便秘などのような全身性副作用を減少させ又はなくすことになる。
【0121】
薬物デポーは、皮膚の下層の何れの部位に送達させることもでき、そのような部位としては、限定するわけではないが、少なくとも1つの筋肉、靭帯、腱、軟骨、脊椎円板、脊椎椎間孔空間、脊椎神経根付近、又は脊柱管が含まれる。
【0122】
様々な実施形態では、術後疼痛又は炎症の治療を必要としている患者のそのような術後疼痛又は炎症を治療又は予防する方法が提供されており、同方法は、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の治療有効量を備えている1つ又はそれ以上の生体分解性薬物デポーを、皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に縫い付ける工程を備えており、薬物デポーは、目標組織部位又はその付近での薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている少なくとも1つの面を備えており、薬物デポーは、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩を少なくとも3日間の期間に亘って放出することができる。
【0123】
もう1つの実施形態では、炎症及び/又は疼痛に苦しんでいる哺乳類を治療するための方法が提供されており、同方法は、少なくとも1つの鎮痛薬及び/又は少なくとも1つの抗炎症薬の治療有効量を、皮膚の下層の目標部位又はその付近に投与する工程を備えている。少なくとも1つの鎮痛薬と少なくとも1つの抗炎症薬は、例えば、薬物デポーとして、目標組織部位に局所的に投与されてもよい。
【0124】
幾つかの実施形態では、治療有効投薬量と放出速度プロフィールは、炎症及び/又は疼痛を、少なくとも1日間、例えば、1−90日間、1−10日間、1−3日間、3−7日間、3−12日間、3−14日間、7−10日間、7−14日間、7−21日間、7−30日間、7−50日間、7−90日間、7−140日間、又は14−140日間の期間に亘って減少させるのに十分である。
【0125】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの鎮痛薬及び少なくとも1つの抗炎症薬、又は少なくとも1つの鎮痛薬及び少なくとも1つの抗炎症薬の一部は、少なくとも1つの鎮痛薬及び少なくとも1つの抗炎症薬の即時放出を提供するために、目標組織において大量瞬時用量として投与される。
【0126】
幾つかの実施形態では、炎症の治療にとって有用な組成として、例えば、疼痛又は炎症部位に投与することができる、少なくとも1つ鎮痛薬及び少なくとも1つの抗炎症薬の有効量を備えている組成がある。一例として、それらは、局所的に椎間孔背突起、脊椎周囲筋肉、又は皮下組織に投与されてもよい。
【0127】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの鎮痛薬及び/又は少なくとも1つの抗炎症薬は、外科手術中に空いている患者の腔部に挿置することによって投与される。幾つかの実施形態では、薬物デポーは、三角測量の戦略を使って、疼痛発生源の周囲の位置に設置することができる。
【0128】
三角測量の戦略は、多数のデポー医薬品調合物を投与する場合に有効である。よって、医薬品調合物を備えている複数(少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つなど)の薬物デポーは、目標組織部位(疼痛発生源又は疼痛発生部位としても知られている)の周囲に、調合物が2つの場合にはそれらの間の領域内に目標組織部位が納まるように、又は複数の調合物のセットによって周囲が画定される区域内に目標組織部位が納まるようにして、設置されてもよい。
【0129】
幾つかの実施形態では、調合物は、外科手術時に目標組織部位又はその付近に植え込むことができる。その場合、有効成分は、疼痛及び炎症に対処するために、持続性様式では、術後、例えば、1−3日間、3−15日間、5−10日間、又は7−10日間の期間に亘り溶解を介してデポーから放出させてもよい。
【0130】
幾つかの実施形態では、所望の放出プロフィールが、少なくとも3日間、少なくとも10日間、少なくとも20日間、少なくとも30日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、少なくとも135日間、少なくとも150日間、又は少なくとも180日間の間維持される。
【0131】
幾つかの実施形態では、薬物デポーは、薬物デポーに充填されている少なくとも1つの鎮痛薬又はその薬学的に許容され得る塩及び少なくとも1つの抗炎症薬又はその薬学的に許容され得る塩の全量に対する、少なくとも1つの鎮痛薬又はその薬学的に許容され得る塩及び少なくとも1つの抗炎症薬又はその薬学的に許容され得る塩の5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%を、少なくとも3日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも20日間、少なくとも30日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、少なくとも135日間、少なくとも150日間、又は少なくとも180日間の期間に亘って放出してもよい。様々な実施形態では、鎮痛薬は、初期バースト用量で放出されることになり、この時、鎮痛薬は3日間の間毎日放出されて止み(例えば、これは術後疼痛の減少、予防、又は治療に適しているであろう)、一方、抗炎症薬は、バースト用量を使わず、薬物デポーが目標組織部位に投与された後3乃至12日間、5乃至10日間、又は7乃至10日間の間毎日放出されることになる。
【0132】
様々な実施形態では、疼痛及び炎症の減少、予防、又は治療に有用な植え込むことのできる薬物デポーが、そのような治療を必要としている患者で提供されており、この植え込むことのできる薬物デポーは、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の治療有効量を備えていて、疼痛及び/又は炎症を減少、予防、又は治療するために皮膚の下層の部位に植え込むことができるようになっており、同薬物デポーは、(i)薬物デポーに充填されている鎮痛薬及び抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の全量に対する、鎮痛薬及び抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の約5%乃至約20%を、最大48時間の第1の期間に亘って放出することができる1つ又はそれ以上の即時放出層と、(ii)薬物デポーに充填されている鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の全量に対する、鎮痛薬及び抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の約21%乃至約99%を、最大3日間乃至6カ月間又は3日間乃至2週間の後続期間に亘って放出することができる1つ又はそれ以上の持続放出層と、を備えている。
【0133】
非限定的な例として、目標組織部位は、少なくとも1つの筋肉、靭帯、腱、軟骨、脊椎円板、脊椎神経根付近の脊椎椎間孔空間、椎間関節、又は脊柱管を備えていてもよい。目標組織は、急性疾患又は慢性疾患、或いは外科手術に関係付けられていてもよい。
【0134】
幾つかの実施形態では、植え込むことのできる薬物デポーが提供されており、同薬物デポーは、(i)少なくとも1つの鎮痛薬又はその薬学的に許容され得る塩及び少なくとも1つの抗炎症薬又はその薬学的に許容され得る塩の大量瞬時用量を、皮膚の下層の部位で放出する1つ又はそれ以上の即時放出層と、(ii)少なくとも1つの鎮痛薬又はその薬学的に許容され得る塩及び少なくとも1つの抗炎症薬又はその薬学的に許容され得る塩の有効量を、3日間乃至6カ月間の期間に亘って放出する1つ又はそれ以上の持続放出層と、を備えている。一例として、薬物デポーでは、1つ又はそれ以上の即時放出層は、ポリ(ラクチド−コ−グリコライド)(PLGA)を備えていてもよく、1つ又はそれ以上の持続放出層は、、ポリラクチド(PLA)を備えていてもよい。
製造方法
様々な実施形態では、有効成分を備えている薬物デポーは、生体適合性ポリマーと、有効成分又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量とを組み合わせ、組み合わせたものから植え込み可能な薬物デポーを形成することによって製造することができる。
【0135】
薬物デポーの少なくとも一部を、(単数又は複数の)生体適合性ポリマーと(単数又は複数の)治療薬と随意的な材料から形成する際は、溶液加工技法及び/又は熱可塑性プラスチック加工技法を含め様々な技法が利用できる。溶液加工技法が使用される場合、溶媒システムは、通常、1つ又はそれ以上の溶媒種を含有したものが選択される。溶媒システムは、一般に、少なくとも1つの関心対象の構成要素、例えば、生体適合性ポリマー及び/又は治療薬に良い溶媒である。溶媒システムを構成する特定の溶媒種は、乾燥速度及び表面張力を含む他の特性に基づいて選択することもできる。
【0136】
溶液加工技法には、溶媒キャスト技法、スピンコーティング技法、ウェブコーティング技法、溶媒噴霧技法、浸漬技法、空気懸濁(流動化コーティング)を含む機械的懸濁を介したコーティングを伴う技法、インクジェット技法、及び静電気技法が含まれる。適切な場合は、デポーを構築するのに、所望の放出速度と所望の厚さが得られるように、上に掲載されているような技法を繰り返すか又は組み合わせることもできる。
【0137】
様々な実施形態では、溶媒を含んだ溶液と生体適合性ポリマーを組み合わせて、所望の寸法と形状の金型に入れる。こうすれば、バリア層、潤滑層などを含んでいるポリマー領域を形成することができる。所望があれば、溶液は、更に、次のもの、即ち、(単数又は複数の)他の治療薬、及び(単数又は複数の)放射線撮影用薬剤のような他の随意的添加物など、のうちの1つ又はそれ以上を、溶解又は分散形態で備えることができる。こうすれば、溶媒除去後、ポリマーマトリクス領域にはこれらの種が含有されている。他の実施形態では、溶媒と溶解又は分散させた治療薬を含んでいる溶液が既存のポリマー領域に塗布されるが、これは、溶液加工技法及び熱可塑性プラスチック加工技法を含む各種技法を用いて形成することができ、その際、治療薬はポリマー領域に吸収同化される。
【0138】
デポー又はその部分を形成するための熱可塑性プラスチック加工技法には、モールド成形技法(例えば、射出モールド成形、回転モールド成形など)、押出成形技法(例えば、押出成形、同時押出成形、多層押出成形など)、及びキャスト法が含まれる。
【0139】
様々な実施形態による熱可塑性プラスチック加工は、1つ又はそれ以上の段階として、(単数又は複数の)生体適合性ポリマーと、以下のもの、即ち、有効成分、随意的な追加の(単数又は複数の)治療薬、(単数又は複数の)放射線撮影用薬剤などのうちの1つ又はそれ以上と、を混合又は化合する工程を備えている。得られた混合物は、次いで、植え込むことのできる薬物デポーに整形される。混合及び整形作業は、当技術で既知のそのような目的のための従来型の装置の何れを使用して行われてもよい。
【0140】
熱可塑性プラスチック加工時、(単数又は複数の)治療薬が、例えば、そのような加工に関係付けられる昇温及び/又は機械的剪断のせいで分解する可能性がある。例えば、或る種の治療薬は、普通の熱可塑性プラスチック加工条件下で実質的な分解を生じることがある。よって、加工は、(単数又は複数の)治療薬の実質的な分解を防止する修正された条件下で行われるのが望ましい。熱可塑性プラスチック加工中、或る程度の分解は不可避であることが理解されているが、分解は一般的には10%未満に留まる。加工時、(単数又は複数の)治療薬の実質的な分解を回避するために制御することができる加工条件の中には、温度、印加剪断速度、印加剪断応力、治療薬を含んでいる混合物の滞留時間、ポリマー材料と(単数又は複数の)治療薬を混合するのに用いられる技法がある。
【0141】
生体適合性ポリマーと(単数又は複数の)治療薬及び追加の添加物が含まれる場合に、それらを混合又は化合して実質的に均一な混合物を形成させることは当技術で既知であり、ポリマー材料と添加物との混合に従来的に使用されている何れの装置を用いて行われてもよい。
【0142】
熱可塑性プラスチック材料が採用されている場合、溶融ポリマーは、生体適合性ポリマーを熱することによって形成してもよく、これに各種添加物(例えば、(単数又は複数の)治療薬、非有効成分など)が混ぜ合わされて混合物となる。これを行う場合のよくあるやり方は、(単数又は複数の)生体適合性ポリマー及び(単数又は複数の)添加物の混合物に機械的剪断を加えることである。(単数又は複数の)生体適合性ポリマーと(単数又は複数の)添加物をこの様式で混ぜ合わせる装置には、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、高速ミキサー、ロスケトルなどのような装置が含まれる。
【0143】
(単数又は複数の)生体適合性ポリマーと各種添加物は何れも、所望であれば(例えば、様々な理由の中でもとりわけ治療薬の実質的な分解を防止するために)、最終的な熱可塑性プラスチック混合及び整形プロセスに先立ち、予混合されてもよい。
【0144】
例えば、様々な実施形態では、生体適合性ポリマーには、放射線撮影用薬剤(例えば、放射線不透過剤)が、これが存在した場合に治療薬の実質的な分解が引き起こされることになってしまう温度及び機械的剪断条件下で、事前に化合される。この事前に化合された材料に、次に、より低い温度と機械的剪断条件下で治療薬が混ぜ合わされ、得られた混合物が有効成分含有薬物デポーへと整形される。反対に、もう1つの実施形態では、生体適合性ポリマーには、低下させた温度と機械的剪断の条件下で治療薬を事前に化合することができる。この事前に化合された材料に、次に、例えば放射線不透過剤が、同様に低下させた温度と機械的剪断の条件下で混ぜ合わされ、得られた混合物が薬物デポーに整形される。
【0145】
生体適合性ポリマーと治療薬及び他の添加物との混合物を実現するのに使用される条件は、例えば、使用される(単数又は複数の)特定の生体適合性ポリマー及び添加物並びに混合用装置の種類を含め、数多くの要因によって異なる。
【0146】
一例として、異なる生体適合性ポリマーは、通常、異なる温度で軟化し混合が促進される。例えば、PLGA又はPLAポリマーと、放射線不透過剤(例えば、次炭酸ビスマス)と、熱及び/又は機械的剪断による分解が起こり易い治療薬(例えば、クロニジン)とを備えているデポーが形成される場合、様々な実施形態では、PGLA又はPLAは、例えば、約150℃乃至170℃の温度で放射線不透過剤と予混合することができる。次いで、治療薬が予混合された組成物と組み合わされ、PGLA又はPLA組成物にとって典型的な条件よりも低い温度及び機械的剪断の条件で更に熱可塑性プラスチック加工が施される。例えば、押出機が使用される場合、バレルの温度、出力量は、通常、剪断が制限され、よって(単数又は複数の)治療薬の実質的な分解が防止されるように制御される。例えば、治療薬と予混合組成物は、二軸押出機を使用して、実質的により低い温度(例えば、100−105℃)で、且つ実質的に出力量を落として(例えば、全能力の30%未満、これは概ね200cc/分の出力量に相当)、混合/化合することができる。なお、この加工温度は、抗炎症薬及び鎮痛薬のような或る特定の有効成分の融点を裕に下回っていることを特記するが、これは、この温度以上で加工した場合、治療薬に実質的に分解が引き起こされるからである。更に、或る特定の実施形態では、加工温度は、治療薬を含め組成物内の全ての生物活性化合物の融点を下回っていることを特記しておく。化合後、得られたデポーは、同様に低下させた温度と剪断の条件下で所望の形に整形される。
【0147】
他の実施形態では、(単数又は複数の)生体分解性ポリマーと1つ又はそれ以上の治療薬とは、非熱可塑性プラスチック技法を用いて予混合される。例えば、生体適合性ポリマーは、1つ又はそれ以上の溶媒種を有する溶媒システムに溶かすことができる。所望の薬剤(例えば、放射線不透過剤、治療薬、又は放射線不透過剤と治療薬の両方)がある場合にはそれらも、溶媒システム中に溶かす又は分散させることができる。次いで、得られた溶液/分散液から溶媒が除去されると、固形材料になる。この時、所望であれば、得られた固形材料を粗砕して更なる熱可塑性加工(例えば、押出成形)を施すことができる。
【0148】
もう1つの例として、治療薬を溶媒システム中に溶かすか又は分散させると、次に、これを既存の薬物デポー(既存の薬物デポーは、溶液加工や熱可塑性プラスチック加工の技法を含む各種技法を用いて形成することができ、放射線不透過剤及び/又は増粘剤を含む各種添加物を備えることができる)に塗布すれば、治療薬が薬物デポー上又はその中へ吸収同化される。以上と同じく、所望であれば、次に、得られた固形材料を粗砕して更なる加工を施すことができる。
【0149】
典型的には、(単数又は複数の)生体適合性ポリマー、(単数又は複数の)治療薬、及び(単数又は複数の)放射線不透過剤を備えている薬物デポーを形成するのに、押出成形プロセスが使用される。同時押出成形を採用することもでき、これは、同一又は異なる層又は領域(例えば、即時及び/又は持続性薬物放出を可能にする透水性を有する1つ又はそれ以上のポリマーマトリクス層又は領域を備えた構造)を備えている薬物デポーを製造するのに使用することができる整形プロセスである。多領域デポーは、同時射出モールド成形又は順次射出モールド成形技法のような他の加工及び整形技法によって形成することもできる。
【0150】
様々な実施形態では、熱可塑性プラスチック加工により形が現れてくるデポー(例えば、ペレット、ストリップなど)は冷却される。冷却プロセスには、空気冷却及び/又は冷却槽浸漬が含まれる。幾つかの実施形態では、押出成形されたデポーを冷却するのに水槽が使用されている。とはいえ、有効成分のような水溶性治療薬が使用されている場合、治療薬の水槽内への無益な流出を回避するために、浸漬時間は最小限に留められるべきである。
【0151】
様々な実施形態では、槽から出した後、大気又は暖気ジェットを使用して水又は水分を一気に除去すれば、薬物のデポー表面への再結晶化も防止することができ、こうすれば、植え込み又は挿入された直後の高薬物用量である「初期バースト」又は「大量瞬時用量」を、それが所望されていない放射プロフィールである場合には、制御又は最小限に抑えることができる。よって、薬物デポーの持続性放出領域は、様々な実施形態では、水又は水分を一気に除去することにより作られる。
【0152】
様々な実施形態では、薬物デポーは、薬物にポリマーを混合又は噴霧し、次いでこのデポーを所望の形状にモールド成形することによって調製することができる。様々な実施形態では、有効成分は、PLGA又はPEG550ポリマーと共に使用されており、それと混合するか又はそれを噴霧して、得られらたデポーを押出成形によって付形し、乾燥させてもよい。
【0153】
薬物デポーは、更に、生体適合性ポリマーと、少なくとも1つの鎮痛薬又はその薬学的に許容され得る塩及び少なくとも1つの抗炎症薬又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量とを組み合わせる工程と、この組合せから植え込み可能な薬物デポーを形成する工程を備えていてもよい。
【0154】
当業者には自明であろうが、ここに記載されている様々な実施形態に対し、ここでの教示の精神と範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を加えることができる。よって、様々な実施形態は、本教示の範囲内の様々な実施形態の他の修正及び変更を適用対象に含めるものとする。
【符号の説明】
【0155】
10 植え込むことのできる薬物デポー
12、13 開口部
14 チャネル
15 開口部
16 縫合糸
17、18 結び目、縫合糸の領域
20 針
22 開口部、皮膚
24 チャネル、溝、筋肉
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物は、経口的、静脈内的、筋肉内的、吸入的、局所的、皮下的な送達、又は治療部位への直接的又は局所的な送達(例えば、髄腔内的、脊髄内的、関節内的など)を含む様々な方法によって患者へ送達される。選定される送達法は、とりわけ、治療される病態、患者体内で実現させるべき薬物の所望治療濃度、及び維持されなければならない薬物濃度の持続時間によって異なる。
【0003】
最近では、薬物が長期に亘ってゆっくりと放出されるように、薬物を患者の皮膚の下層の部位へ導入又は投与できるようにする薬物デポーが開発されている。そのような薬物デポーは、薬物をデポーから比較的均一な用量で数週間又は数か月に亘って放出させることができ、放出は数年に及ぶことすらある。この薬物投与の方法は、皮下的に植え込まれる避妊用及び癌用薬物では特に重要になってきつつある。
【0004】
時には、薬物デポーは、治療部位に植え込まれた後、外科的閉合前に植え込み部位から移動したり(例えば、血液中に浮遊するか又は外科手術部位閉合時に組織の位置直しをすると位置が変わる)、又は生理学的状態が変化することで(例えば、細胞の修復又は再生、組織の内成長、植え込み部位の運動など)、移動することがある。この場合、時として、薬物デポーが植え込み部位から離れてゆき遠くの部位に留まってしまうことで、薬物の効能が低下する可能性がある。このような事が起きた場合、薬物デポーを遠くの部位から摘出して再挿入しなくてはならないため、患者には追加の肉体的及び精神的苦痛が生じる。場合によっては、薬物デポーが関節の中へ移動すると、その薬物デポーが運動を阻害する可能性がある。より深刻な事例では、薬物デポーが移動した場合、デポーは血流を絞り、患者にとって致命的な虚血性事象(例えば、塞栓症、壊死、梗塞症など)を引き起こす可能性がある。
【0005】
術後疼痛は、治療するのが難しい状態になる傾向があり、適切に治療されなければ患者にとって致命的となる可能性がある。外科手術の部位は、患者を苦める術後疼痛の度合いに深く影響する。一般に、胸部及び上腹部の手術は下腹部の手術に比べ痛みがより強く、下腹部の手術は四肢の末梢部手術に比べ痛みがより強い。しかしながら、体腔、大関節面、脊椎又は深部組織が係わる手術はどれも痛みを伴うと考えるべきである。特に、胸部又は上腹部の手術は、肺機能の広い範囲に及ぶ変化や腹筋緊張充進を生じさせ、これに附随して横隔膜機能が低下する可能性がある。結果的に、咳をしたり分泌物を吐き出したりする能力が奪われ、肺の虚脱や肺炎を招く可能性がある。疼痛が長引くと、身体活動が低下し、静脈鬱滞を招き、重症な静脈血栓症及びそれにより引き起こされる肺閉塞症のリスクが高まる恐れがある。更に、消化管及び尿路の運動性に広範囲に及ぶ影響が出る恐れがあり、そうなると、今度は術後腸閉塞、嘔気、嘔吐、及び尿閉を招く可能性がある。それらの問題は、患者にとって苦痛であり、入院を長引かせる可能性があり、薬物デポーが植え込み後に植え込み部位から離れてゆくと、問題はより深刻化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薬物デポーの正確且つ精密な設置が簡単に行えるようになる新しい薬物デポー組成及び方法が必要とされている。幾つかの薬物デポーを同時に植え込む時には、配置位置、正確な間隔の空き、及び薬物分布を最適化するやり方で、薬物デポーの設置を正確且つ精密に行えるようになる薬物デポー組成及び方法が必要とされている。術後疼痛を効果的に治療するのにも、新しい薬物デポー組成及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
薬物の効能を向上させ、薬物デポーの望まれない移動を低減する、新しい植え込むことのできる薬物デポーが提供されている。様々な実施形態では、疼痛を発生させている目標組織部位に一貫した鎮痛及び/又は抗炎症効能を発揮することにより、術後疼痛及び/又は炎症を効果的に予防、治療、又は減少させる、新しい薬物デポー組成及び方法が提供されている。様々な実施形態では、薬物デポーは、針及び縫合糸に事前に取り付けられていて、外科医がデポーを疼痛を発生させている目標組織部位に簡単に縫い付けられるようになるタイオフシステムを含んでいる。
【0008】
様々な実施形態では、外科医がすべきことが、針に軟組織を貫通させ、針と縫合糸を、薬物デポーを通して引き戻すことだけになるように、事前に結目が作られ、事前に糸通しされている薬物デポーが提供されている。結び目はデポーを所定位置に固定し、外科医が行う必要のあることは縫合糸を切断することだけである。この「プル・アンド・カット」システムでは、幾つかの外科手術工程(例えば結び目作成)が不要になり、外科手術時間の長さを短縮できる。
【0009】
幾つかの実施形態では、患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーが提供されており、同薬物デポーは、薬物の治療有効量と、目標部位又はその付近での薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっている少なくとも1つの面と、を備えており、薬物デポーの少なくとも1つの領域は、薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる。
【0010】
幾つかの実施形態では、薬物デポーの少なくとも1つの面は、1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネル、穴、溝、スリット、ループ、フック、逆棘、柱、及び/又はクリップを備えている。幾つかの実施形態では、薬物デポーは、固定部材として使用される1つ又はそれ以上の縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、及び/又はステープルを備えている。
【0011】
幾つかの実施形態では、患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーが提供されており、同薬物デポーは、薬物の治療有効量と、目標組織部位又はその付近での薬物デポーの運動が制限されるように1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネルと、を備えており、薬物デポーは、薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる。
【0012】
幾つかの実施形態では、患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーが提供されており、同薬物デポーは、薬物の治療有効量と、1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネルと、を備えており、1つ又はそれ以上の縫合糸は少なくとも2つの領域を備えていて、それぞれの領域は、縫合糸に1つ又はそれ以上のチャネルを通過させた時に薬物デポーの動きが目標組織部位又はその付近で制限されるように、1つ又はそれ以上のチャネルより大きい面を有しており、薬物デポーは、薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる。
【0013】
幾つかの実施形態では、患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーが提供されており、同薬物デポーは、薬物の治療有効量と、1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネルと、を備えており、1つ又はそれ以上の縫合糸は、互いに離間されている少なくとも2つの結び目付き、リム付き、ビーズ付き、リッジ付き、又はクリップ付きの領域を備えており、それぞれの結び目付き、リム付き、ビーズ付き、リッジ付き、又はクリップ付きの領域は、縫合糸に1つ又はそれ以上のチャネルを通過させた時にデポーが所定場所に固定され、薬物デポーの動きが目標組織部位又はその付近で制限されるように、1つ又はそれ以上のチャネルより大きい面積を有しており、薬物デポーは、薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる。
【0014】
幾つかの実施形態では、術後疼痛又は炎症の治療を必要としている患者のそのような術後疼痛又は炎症を治療又は予防する方法が提供されており、方法は、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の治療有効量を備えている1つ又はそれ以上の生体分解性薬物デポーを、皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に縫い付ける工程を備えており、薬物デポーは、目標組織部位又はその付近での薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている少なくとも1つの面を備えており、薬物デポーは、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる。
【0015】
様々な実施形態の更なる特徴及び利点は、以下の記載事項の中に部分的に述べられており、部分的にはその記載事項から明らかになるか又は様々な実施形態の実践を通して知ることができるであろう。様々な実施形態の目的及び他の利点は、特に記載事項及び付随の特許請求の範囲の中で言及されている要素及び組合せを利用することによって理解され、実現されるであろう。
【0016】
実施形態の他の態様、特徴、便益、及び利点は、部分的には、以下の説明、付随の特許請求の範囲、及び添付図面を参照すれば明らかとなるであろう。
図は、縮尺を合わせて描かれているわけではないことを了解されたい。また、図中の対象物同士の配置関係は縮尺が合わされているわけではなく、実際に、寸法については逆の関係になっていることがあるかもしれない。図は、図示されているそれぞれの対象物の構造が理解され、それらが明解になることを意図しており、よって、特徴の中には、構造の特定の特徴を説明するために誇張されているものがあるかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、例えば縫合糸又はステープルのような1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるためにデポーの中央に配置されている面、この事例ではチャネル、を有する薬物デポーを示している。
【図1A】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に縫い付けられるようにする固定部材としての縫合糸を受け入れるためにデポーの中央に配置されている面、この事例ではチャネル、を有する薬物デポーを示している。
【図2】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に縫い付けられるようにする固定部材としての縫合糸を受け入れるためにデポーの中央に設置されている面、この事例ではチャネル、を有する薬物デポーを示している。
【図2A】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、プル・アンド・カットシステムを示している。縫合糸は、縫合糸の他の領域より大きくされている2つの領域(結び目として図示)を有している。外科医は、針を使用して組織を穿通し、外科医は、その針と縫合糸を、チャネルを通して引き戻してデポーを所定場所に固定する。縫合糸は後で切断することができる。こうすればデポーを固定するのに結び目を縛るという時間のかかる工程は回避される。
【図2B】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、薬物デポーを通って引っ張られている縫合糸を示している。植え込みに際し、外科医が行う必要のあることは、縫合糸の当該領域を、デポーチャネルを通して引っ張り、それを所定場所に固定して縫合糸を切断することだけである。
【図3】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、薬物デポーの異なる端部に配置されていて、固定部材としての縫合糸を受け入れることができ、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に縫い付けられるようにする2つの面、この事例では2つのチャネル、を有する薬物デポーを示している。
【図4】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、薬物デポーの異なる端部に配置されていて、固定部材としての縫合糸を受け入れることができ、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に縫い付けられるようにする2つの面、この事例では2つのチャネル、を有する薬物デポーを示している。この図では、薬物デポーを目標組織に固定するのに同じ縫合糸が使用されている。
【図4A】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の拡大側面断面図であり、薬物デポーの異なる端部に配置されていて、固定部材としての縫合糸を受け入れ、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に縫い付けられるようにする2つの面、この事例では2つのチャネル、を有する薬物デポーを示している。この図では、薬物デポーを筋肉に固定するのに同じ縫合糸が使用されており、外科医は縫合糸に結び目を付けて薬物デポーを所定場所に維持する。
【図5】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、薬物デポーの異なる端部に配置されていて、縫合糸を受け入れることができる2つの面、この事例では2つのチャネル、を有する薬物デポーを示している。縫合糸は、2つの領域を有し、そのうちの一方は、縫合糸をデポーの中の所定の場所に保持するための領域であり、他方は、外科医が、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定するためにチャネルを通して引っ張る領域である。引っ張った後に外科医が行う必要のあることは、縫合糸を切断することだけである。こうすれば、デポーを固定するのに結び目を縛るという時間のかかる工程は回避される。
【図5A】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の正面図を示しており、薬物デポーの異なる端部に配置されていて縫合糸を受け入れることができる2つの面、この事例では2つのチャネル、を有する薬物デポーを示している。針に組織を貫通させ、次いでデポーの第2チャネルを通過させる。外科医は、縫合糸を、チャネルを通して引っ張り、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定する。
【図5B】植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の背面図であって、縫合糸と針が第2チャネルを通過している状態を示している。外科医は、縫合糸を、チャネルを通して引っ張り、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定する。デポーのこの背面部は、組織面に当てて植え込まれる。
【図5C】図5B及び図5Dと共に、植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の背面図を示している。
【図5D】図5B及び図5Cと共に、植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の背面図を示している。
【図5E】外科医が、縫合糸を、チャネルを通して引っ張ってデポーを所定場所に固定する際の、植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の正面図を示している。引っ張った後、外科医が行う必要のあることは、縫合糸を切断することだけである。
【図5F】目標組織部位に植え込まれた薬物デポーの1つの実施形態の正面図を示している。
【図5G】薬物デポーの1つの実施形態の正面図を示している。この図は、切断された縫合糸と、目標組織部位に植え込まれた薬物デポーを示している。
【図6A】縫合糸を受け入れるようになっている面を有する植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、外科医は、縫合糸をデポーの一端に縛り、デポーの他端を目標組織部位又はその付近に縫い付けることができる。
【図6B】縫合糸を受け入れるようになっている面、この事例では溝、を有する植え込むことのできる薬物デポーの1つの実施形態の側面断面図であり、外科医は、縫合糸の一端をデポーに縛り、縫合糸の他端を、デポーを目標組織部位又はその付近に固定するのに使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書及び付随の特許請求の範囲の適用上、別途表記のない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用されている成分の量、材料のパーセンテージ又は比率、反応条件、及び他の数値を表している全ての数は、あらゆる事例において「約」という用語で丸められているものと理解されたい。従って、それとは反対の表記のない限り、以下の明細及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは近似であり、本発明によって獲得が模索される所望の特性に応じて異なっていてもよい。最低限として、但し特許請求の範囲による範囲への均等論の適用に制限を課そうとの意図からではなく、それぞれの数値パラメータは、少なくとも、報告されている有効数字の数に鑑み、そして普通の端数計算技法を適用することによって、解釈されるべきである。
【0019】
ここに記載されている数範囲及びパラメータ、本発明の広い範囲は近似であるにもかからわず、特定の例に記載されている数値は可能な限り精密に報告されている。とはいえ、何れの数値も、本質的に、それぞれ個別の試験手段に見られる標準偏差に必然的に起因する或る種の誤差を内包している。更に、ここに開示されている全ての値範囲は、ここに包含されているありとあらゆる部分範囲を網羅するものと理解されるべきである。例えば、「1から10」という範囲は、最小値である1と最大値である10の間の(それらも含めた)ありとあらゆる部分範囲、即ち、1以上の最小値と10以下の最大値を有するありとあらゆる部分範囲、例えば、5.5から10、を含んでいる。
【0020】
これより、本発明の或る特定の実施形態を詳細に参照してゆくが、それらの例は添付図面に示されている。本発明は、図示の実施形態に関連付けて説明してゆくが、それら実施形態は本発明をそれらに限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。そうではなく、本発明は、付随の特許請求の範囲によって定義されている本発明の中に含めることができる全ての代替、修正、及び等価物が適用対象とされることを意図している。
【0021】
以下の表題は、開示を何ら制限しようとするものではなく、実施形態は、何れの表題の下に記載されていようと、他の何れの表題の下に記載されている実施形態と関連付けて使用することができる。
定義
英語の単数を表す冠詞「a」、「an」及び「the」の対訳で「一」、「或る」、「当該」が、本明細書及び付随の特許請求の範囲に使用されている場合、それらは、明示的且つ明白に1個の指示対象という指定のない限り、複数の指示対象を含んでいることを特記しておく。よって、例えば「薬物デポー」という言及があった場合、これは、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の薬物デポーを含んでいる。
【0022】
「鎮痛薬」は、疼痛を減少、緩和、又は取り除くことができる薬剤又は化合物を指している。鎮痛薬の例としては、限定するわけではないが、アセトアミノフェン、例えばリドカイン、ブピビカイン、ロピバカインのような局部麻酔薬、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デキストロモラミド、デゾシン、デキストロプロポキシフェン、ジアモルヒネ、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ケトベミドン、レボメタジル、レボルファノール、メピリジン、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、オピウム、オキシコドン、パパベレタム、ペンタゾシン、ペチジン、フェノペリジン、ピリトラミド、デキストロプロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トラマドール、コデイン、ジヒドロコデイン、メプタジノール、デゾシン、エプタゾシン、フルピルチンのようなオピオイド系鎮痛薬、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0023】
「抗炎症薬」という句は、抗炎症作用を有する薬剤又は化合物を指している。それらの薬剤は、炎症を減少させることにより疼痛を改善する。抗炎症薬の例としては、限定するわけではないが、スタチン、スリンダク、サルファサラジン、ナロキシン(naroxyn)、ジクロフェナク、インドメタシン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、アクロフェナク、アロキシプリン、アプロキセン、アスピリン、ジフルニサル、フェノプロフェン、メフェナム酸、ナプロキセン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、メロキシカム、サリチルアミド、サリチル酸、デソキシスリンダック、テノキシカム、ケトララク、クロニジン、フルフェニサル、サルサレート、トリエタノールアミンサリチレート、アミノピリン、アンチピリン、オキシフェンブタゾン、アパゾン、シンタゾン、フルフェナム酸、クロニキセリル、クロニキシン、メクロフェナム酸、フルニキシン、コルチシン、デメコルシン、アロプリノール、オキシプリノール、塩酸ベンジダミン、ジメファダン、インドキソール、イントラゾール、塩酸ミムバン、塩酸パラニレン、テトリダミン、塩酸ベンズイミドピリン、フルプロフェン、イブフェナク、ナプロキソール、フェンブフェン、シンコフェン、ジフルミドンナトリウム、フェナモール、フルチアジン、メタザミド、塩酸レチミド、塩酸ネキセリジン、オクタザミド、モリナゾール、ネオシンコフェン、ニマゾール、クエン酸プロキサゾール、テシカム、テシミド、トルメチン、トリフルミダート、フェナメート類(メフェナム酸、メクロフェナム酸)、ナブメトン、セレコキシブ、エトドラク、ニメスリド、アパゾン、金、テポキサリン;ジチオカルバミン酸、又はそれらの組合せが挙げられる。抗炎症薬には、ステロイド類のような他の化合物も含まれ、例えば、フルオシノロン、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾンインターロイキン1受容体拮抗薬、サリドマイド(TNF−α放出阻害薬)、サリドマイド類似物(マクロファージによるTNF−α産生を減少させる)、骨形成タンパク質(BMP)タイプ2又はBMP−4(TNF−αアクチベータであるカスパーゼ8の阻害薬)、キナプリル(TNF−αを亢進するアンジオテンシンIIの阻害薬)、IL−11のようなインターフェロン(TNF−α受容体発現を調節する)、及びオーリントリカルボン酸(TNF−αを阻害する)、グアニジノエチルジサルフィド、又はそれらの組合せなどが含まれる。
【0024】
代表的な抗炎症薬としては、例えばナプロキセン;ジクロフェナク;セレコキシブ;スリンダク;ジフルサニル;ピロキシカム;インドメタシン;エトドラク;メロキシカム;イブプロフェン;ケトプロフェン;r−フルルビプロフェン;メフェナミク;ナブメトン;トルメチン、及び上記それぞれのナトリウム塩類;ケトロラクブロメタミン;ケトロラクトロメタミン;ケトロラク酸;トリサリチル酸コリンマグネシウム;ロフェコキシブ;バルデコキシブ;ルミラコキシブ;エトリコキシブ;アスピリン;サリチリ酸及びそのナトリウム塩;アルファ、ベータ、ガンマ−トコフェロール類及び−トコトリエノール類の酢酸エステル(及びそれらのd、1、及びラセミアイソマー全て);アセチルサリチル酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、セク−ブチル、t−ブチル、エステル類;テノキシカム;アセクロフェナク;ニメスリド;ネパフェナク;アンフェナク;ブロムフェナク;フルフェナメート;フェニルブタゾン、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0025】
代表的なステロイド類としては、例えば、21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾル、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン21−アセテート、デキサメタゾン21−ホスフェートジ−Na塩、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコート、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロンアセテート、フルプレドニジンアセテート、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、フルチカゾン、プロピオネート、フォルモコルタール、ハルシノニド、ハロベタゾルプロピオネート、ハロメタゾン、ハロプレドンアセテート、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾンフロアート、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25−ジエチルアミノ−アセテート、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレゾニバル、プレドニリデン、リメキソロン、チクソコルトル、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサアセトニド、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0026】
疼痛及び/又は炎症の治療に有用なスタチンの例として、限定するわけではないが、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン(米国特許第3,883,140号参照、同特許の開示全体を参考文献としてここに援用)、ベロスタチン(シンビノリンとも呼ばれる;米国特許第4,448,784号及び同第4,450,171号参照、それら特許の開示全体を参考文献としてここに援用)、フルバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、及びフルインドスタチン(Sandoz XU-62-320)、ダルバスタチン(欧州特許出願公開第738510A2号、同出願の開示全体を参考文献としてここに援用)、エプタスタチン、ピタバスタチン、又はそれらの薬学的に許容され得る塩、又はそれらの組合せが挙げられる。様々な実施形態では、スタチンは、スタチンの(+)Rエナンチオマーと(−)−Sエナンチオマーが混在していてもよい。様々な実施形態では、スタチンは、スタチンの1:1ラセミ混合物を備えていてもよい。抗炎症薬には、抗炎症性を有するもの、例えば、アミトリプチリン、カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリン、クロニジン、又はそれらの組合せなども含まれる。
【0027】
別途指定されるか又は文脈から自明である場合を除き、本明細書及び以下の一連の請求項の中で、薬物(例えば、抗炎症薬、鎮痛薬など)という言及があった場合、それは、発明者人(ら)によれば、ステレオアイオノマーを含め、前記薬物の薬学的に許容され得る塩をも指す。薬学的に許容され得る塩には、実質的に化合物の毒性を強めない、それらの塩を形成している酸と塩基が含まれる。適しているであろうと考えられる塩の幾つかの例として、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、及びアンモニウムのようなアルカリ金属の塩類、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、及び硫酸のような無機酸の塩類、並びに、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、グロン酸、コハク酸、アリールスルフォン酸、例えばp−トルエンスルフォン酸のような有機酸の塩類、又は類似物が挙げられる。
【0028】
疾患又は病態を「治療する」又は治療とは、プロトコルを実行することを指し、そこには疾患の兆候又は症状を緩和しようとの取り組みで患者(普通はヒト、そうでなければ他の哺乳類)に1つ又はそれ以上の薬物を投与することを含めてもよい。緩和は、疾患又は病態の兆候又は症状が現れた後はもとより、それらの出現前に起こることもあり得る。よって、「治療する」又は「治療」には、疾患又は望ましくない病態を「予防する」又はその「予防」が含まれる。更に、「治療する」又は「治療」は、兆候又は症状の完全緩和を必須としているわけでも、或いは治癒を必須としているわけでもなく、それは、厳密には、患者への極僅かな取り組みを有するプロトコルを含んでいる。「疼痛を減少させる」は、疼痛の低下を含んでおり、疼痛の兆候又は症状の完全な緩和を必須としているわけでもなく、或いは治癒を必須としてるわけでもない。様々な実施形態では、疼痛を減少させることには、疼痛の極僅かな低下さえも含まれる。一例として、疼痛及び/又は炎症の症状を予防、治療、又は軽減するのに、少なくとも1つの鎮痛薬と少なくとも1つの抗炎症薬の各有効用量の投与を使用してもよい。
【0029】
「局所的な」送達は、1つ又はそれ以上の薬物を、組織内、例えば神経系の神経根又は脳の領域又はそれらの密な近接範囲(例えば、約10cm以内、又は望ましくは約5cm以内)内に配置させる送達を含んでいる。「的を絞った送達システム」は、疼痛、炎症又は他の疾患や病態の治療での必要に応じて、目標部位又はその付近に配置させることのできる治療薬の或る量を有する1つ又はそれ以上の薬物デポーの送達を提供する。
【0030】
「哺乳類」という用語は、ヒトに限定されるわけではなく、チンパンジー、大型のサル、オランウータン、及び小型のサルのような他の霊長類、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウシ、ウマなどを含めた分類学上の部類である「哺乳類」に由来する有機体を指す。様々な実施形態では、哺乳類はヒト患者である。
薬物デポー
幾つかの実施形態では、患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーが提供されており、薬物デポーは、薬物の治療有効量と、目標部位又はその付近での薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっている少なくとも1つの面と、を備えており、薬物デポーの少なくとも1つの領域は、薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる。
【0031】
「薬物デポー」は、少なくとも1つの医薬品有効成分又は薬物を体内へ投与する組成を備えている。よって、薬物デポーは、所望の部位(例えば、患者の円板空間、脊柱管、組織、特に外科手術、疼痛の部位、又は炎症の部位など又はその付近)への植え込み又は保定がやり易くなる物理的構造を備えていてもよい。薬物デポーは、薬物そのものも備えている。ここで使用される「薬物」という用語は、一般に、患者の生理を改変する何らかの物質を指すものとする。「薬物」という用語は、ここでは、「治療薬」、「治療有効量」、及び「医薬品有効成分」又は「API」の各用語と入れ替え可能に使用されることもある。別途指定のない限り、「薬物」調合物は、2つ以上の治療薬を含んでいてもよいものと理解されたく、例示的な治療薬の組合せには、2つ又はそれ以上の薬物の組合せが含まれる。薬物は、部位に送達させるために治療薬の或る濃度勾配を提供している。様々な実施形態では、薬物デポーは、植え込み部位から最大約0.1cm乃至約5cmの距離において治療薬の最適薬物濃度勾配を提供し、少なくとも1つの抗炎症薬又はその薬学的に許容され得る塩、及び/又は少なくとも1つの鎮痛薬又はその薬学的に許容され得る塩を備えている。
【0032】
「デポー」は、限定するわけではないが、カプセル、コーティング、マトリクス、ウェーハ、シート、ストリップ、リボン、ピル、ペレット、又は他の薬学的送達形態又はそれらの組合せを含む。デポーに適した材料は、理想的には薬学的に許容され得る生体分解性材料及び/又はあらゆる生体吸収性材料であって、望ましくはFDA認可材料又はGRAS材料とされている材料である。これらの材料は、ポリマーであってもよいし、非ポリマーであってもよく、更には合成であっても天然素材であってもよいし、又はそれらの組合せであってもよい。通常、デポーは、生体分解性であってもよい生体適合性材料で構成されている固形乃至半固形の調合物になるであろう。「固形」という用語は、堅い材料を意味するものとし、「半固形」は、或る程度の可撓性を有し、それによりデポーを曲げたり周囲組織の要件に適合させられる材料を意味するものとする。
【0033】
「治療有効量」又は「有効量」は、薬物が投与されると、その結果、例えば、炎症の阻害、疼痛の減少又は緩和、筋肉弛緩による病態の改善などのような、生物活性の変化がもたらされるような量である。患者に投与される用量は、別途指定されるか文脈から自明である場合を除き、薬物の投与後の薬物動態学的特性、投与経路、患者の身体条件と特徴(性別、年齢、体重、健康、寸法など)、症状の程度、同時治療、治療頻度、及び所望される効果を含め、各種要因に応じて、単回用量であってもよいし多回用量であってもよい。幾つかの実施形態では、調合物は即時放出用に設計されている。幾つかの実施形態では、調合物は持続性放出用に設計されている。他の実施形態では、調合物は、1つ又はそれ以上の即時放出面と、1つ又はそれ以上の持続放出面を備えている。
【0034】
「持続性放出」又は「持続放出」(徐放又は制御放出とも呼ばれる)という句は、ここでは、1つ又はそれ以上の治療薬が、ヒト又は他の哺乳類の体内へ導入され、1つ又はそれ以上の治療薬の流れを、所定の期間に亘って、前記所定の期間の間中所望の治療効果を実現するのに十分な治療レベルで、継続的又は持続的に放出することを指すのに使用されている。継続的又は持続的放出の流れという言及があった場合、それは、薬物デポー又はその成分のマトリクスが体内で生体分解した結果として、又は(単数又は複数の)治療薬又はそれら治療薬の共役物の代謝転換又は溶解の結果として起こる放出を網羅するものとする。当業者には承知されているように、持続性放出調合物は、一例として、フィルム、スラブ、ペレット、マイクロパーティクル、マイクロスフェア、マイクロカプセル、スフェロイド、付形された誘導体、及びペーストとして作製されていてもよい。更に、調合物は、限定するわけではないが、非経口調合物、マイクロカプセル、ペースト、植え込み可能なロッド、ペレット、プレート、又はファイバーなどを含め、ここでの実施形態と関連付けて役立てるものとして当業者が評価するであろう何れの植え込み可能又は挿入可能なシステムと併用してもよい。
【0035】
「即時放出」という句は、ここでは、1つ又はそれ以上の治療薬が、体内へ導入され、且つそれらが、薬物の溶解又は吸収を遅延又は長期化させる意図なしに、投与された場所で溶け又は吸収されるようにすることを指す。即時放出は、投与後短時間内、例えば一般的には数分乃至約1〜2時間内の薬物の放出を指す。
【0036】
「放出速度プロフィール」という句は、固定の時間単位に亘って放出される有効成分のパーセンテージ、例えば、mcg/時、mcg/日、mg/時、mg/日、10日間につき日当たり10%などを指す。当業者には知られているように、放出速度プロフィールは、線形であってもよいが、必ずしもというわけではない。非限定的な例として、薬物デポーは、少なくとも1つの鎮痛薬を大量瞬時用量で、そして少なくとも1つの抗炎症薬を或る期間に亘って、放出するペレットであってもよい。
【0037】
「生体分解性」という用語は、薬物デポーの全部又は一部が、経時的に、酵素の働き、加水分解作用、及び/又は人体内の他の同様の機序によって分解してゆくことを含んでいる。様々な実施形態では、「生体分解性」は、デポーが、治療薬が放出された後又は放出中に、体内で無毒性成分へ崩壊又は分解され得ることを含む。「生体浸食性」とは、デポーが、経時的に、少なくとも一部には、周辺組織に見られる物質との接触、体液、又は細胞作用のせいで、浸食され又は分解してゆくという意味である。「生体吸収性」とは、デポーが、体内で、例えば細胞又は組織によって崩壊し吸収されてゆくという意味である。「生体適合性」は、デポーが、目標組織部位に実質的な組織刺激又は壊死を引き起こさないことを意味する。
【0038】
デポー及び/又は固定部材は、非生体分解性材料を備えていてもよい。非生体分解性ポリマーの例としては、限定するわけではないが、各種セルロース誘導体類(カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース類、及びアルキルセルロース類)、シリコン及びシリコンを基材とするポリマー類(ポリジメチルシロキサンなど)、ポリエチレン−コ−(ビニルアセテート)、ポロクサマー、ポリビニルピトリドン、ポロクサミン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリエチレン−クロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又は「Teflon(商標)」)、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド−ポリスチレン、ポリ−α−クロロ−p−キシレン、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、非分解性エチレン−ビニルアセテート(例えばエチレンビニルアセテートディスク類及びポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート))、及び他の関連の生体安定性ポリマー類が挙げられる。
【0039】
非分解吸収性ポリマー類には、限定するわけではないが、デルリン、ポリウレタン、シリコンとポリウレタンのコポリマー類、ポリオレフィン類(ポリイソブチレン及びポリイソプレンなど)、アクリルアミド類(ポリアクリル酸及びポリ(アクリロニトリル−アクリル酸))、ネオプレン、ニトリル、アクリレート類(ポリアクリレート類、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及びアクリレート類とN−ビニルピロリドンのコポリマー類)、N−ビニルラクタム類、ポリアクリロニトリル、グルコマンナンゲル、加硫ゴム、及びそれらの組合せを含めることもできる。ポリウレタン類の例としては、熱可塑性ポリウレタン類、脂肪族ポリウレタン類、セグメント化ポリウレタン類、親水性ポリウレタン類、ポリエーテル−ウレタン、ポリカーボネート−ウレタン、及びシリコンポリエーテル−ウレタンが挙げられる。他の適した非分解吸収性材料には、限定するわけではないが、2−ヒドロキシアルキルアクリレート類及び同メタクリレート類、N−ビニルモノマー類、及びエチレン性不飽和酸及び塩基のような親水性モノマー類の軽度又は重度に架橋結合された生体適合性ホモポリマー類及びコポリマー類;ポリシアノアクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー類、ポリガラクツロン酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、コラーゲン、スルホン化ポリマー類、ビニルエーテルモノマー類又はポリマー類、アルギネート、ポリビニルアミン類、ポリビニルピロリドン、及びポリビニルイミダゾールが含まれる。生体分解吸収性ポリマー内の架橋結合の量によっては、ポリマーの分解時間が削減されることもあり得るため、ポリマーは、本発明の適用上は、本発明用の材料が使用される時間枠に亘って非分解吸収性のように見えてしまうことになる。
【0040】
「疼痛管理薬物療法」という句は、1つ又はそれ以上の治療薬が、疼痛を完全に予防、緩和、又は取り除くために投与されることを含んでいる。これらの治療薬には、抗炎症薬、筋弛緩薬、鎮痛薬、麻酔薬など、及びそれらの組合せが含まれる。
【0041】
様々な実施形態では、デポーは、1つ又はそれ以上の治療薬の初期バースト用量を、植え込み後最初の24時間内に引き起こすように設計することができる。「初期バースト」又は「バースト効果」又は「大量瞬時用量」又は「パルス用量」とは、デポーが液体(例えば骨液、脳脊髄液など)に接触した後最初の24時間の間のデポーからの治療薬の放出を指す。バースト効果は、即時放出としてもよい。「バースト効果」は、デポーからの治療薬の放出増大に起因すると考えられている。初期バースト効果又は大量瞬時用量は、前もって、(i)デポー植え込み後の所定の初期期間中にデポー又は領域から放出させるべき治療薬の重量単位による有効量を(ii)植え込まれた組成物から送達されるはずの治療薬の合計量で割って得られる商を計算することによって、デポーを調合することにより確定してもよい。初期バーストは、インプラントの形状及び表面積によって変わる可能性があるものと理解されたい。
【0042】
当該領域又はデポーに関するバースト効果は、様々な実施形態では、所望の効果を実現させるべく短期間に亘って大きな初期用量が放出されるように設計することができる。例えば、薬物デポーが、48時間当たりモルヒネ15mgを放出するように設計されている場合、初期バースト用量又は大量瞬時用量領域又はデポーなら、前記用量の或るパーセンテージを最初の24時間内に(例えば、モルヒネ10mg即ち48時間用量の66%を24時間内に)放出するように設計されることになろう。こうして、薬物デポー又は領域のバースト効果により、持続性放出領域又はデポーよりも多量の治療薬が放出される。
【0043】
バースト効果又は大量瞬時用量を活用する領域又はデポーは、持続性放出領域又はデポーよりも多量の治療薬(例えば、鎮痛及び/又は抗炎症)を放出することになる。例えば、特に以下の病態を含む有痛慢性状態、即ち、関節リウマチ、変形性関節症、脊椎円板ヘルニア(例えば、座骨神経痛)、手根/足根管症候群、下背痛、下肢痛、上肢痛、癌、頸椎、胸椎、及び/又は腰椎や椎間板、回旋腱板、関節、TMJ、腱、靭帯、筋肉の損傷又は修復に伴う組織痛及び疼痛、脊椎辷り症、狭窄、椎間板起因の背痛、関節痛などの場合、薬物デポー又は同薬物デポーの当該領域の初期バースト効果は、薬物の大量瞬時量が目標部位又はその付近で放出され、疼痛及び/又は炎症の兆候又は症状の望ましい減少又は緩和がもたらされるので、より迅速な疼痛及び/又は炎症軽減を図ることができるということから好都合であろう。例えば、薬物デポー又は同薬物デポーの当該領域は、疼痛及び/又は炎症を減少、予防、及び/又は治療するのに、最初の1乃至12時間内に、1日の用量の51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67&、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%を放出することができる。疼痛及び/又は炎症は、外科手術後の術後疼痛であってもよい。
【0044】
薬物デポーは、筋弛緩剤と共に同時投与してもよい、少なくとも1つの鎮痛薬及び/又はその薬学的に許容され得る塩、及び/又は少なくとも1つの抗炎症薬及び/又はその薬学的に許容され得る塩を備えることができる。同時投与には、別々の薬物デポーとして同時に投与すること、又は同一薬物デポーとして一体に調合することを含めてもよい。
【0045】
代表的な筋弛緩剤には、限定ではなく一例として、塩化アルクロニウム、アトラクリウムベシレート、バクロフェン、カルボロニウム、カリソプロドール、クロフェネシンカルバメート、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、ダントロレン、デカメソニウムブロミド、ファザジウム、ガラミン、トリエチオダイド、ヘキサフルオレニウム、メラドラジン、メフェンシン(mephensin)、メタキサロン、メソカルバモル、メトクリンイオダイド、ペンクロニウム、プリジノールメシレート、スチラメート、スキサメトニウム、スキセトニム、チオコルチコシド、チザニジン、トルペリゾン、ツボクラリン、ベクロニウム、又はそれらの組わせが含まれる。
【0046】
薬物デポーは、更に、少なくとも1つの鎮痛薬及び/又はその薬学的に許容され得る塩、及び/又は少なくとも1つの抗炎症薬及び/又はその薬学的に許容され得る塩に加え、他の治療薬又は有効成分を備えていてもよい。適した追加の治療薬には、限定するわけではないが、インテグリン拮抗薬、アルファ−4ベータ−7インテグリン拮抗薬、細胞付着阻害薬、インターフェロンガンマ拮抗薬、CTLA4−Ig作動薬/拮抗薬(BMS−188667)、CD40リガンド拮抗薬、ヒト化抗−IL−6mAb(MRA、中外製薬のトシリズマブ)、HMGB−1mAb(Critical Therapeutic Inc.社)、抗−IL2R抗体(ダクリズマブ、バシリシマブ)、ABX(抗IL−8抗体)、組み換えヒトIL−10、又はHuMaxIL−15(抗−IL15抗体)が含まれる。
【0047】
抗炎症薬及び鎮痛薬と同時投与してもよい他の適した治療薬には、Kineret(登録商標)(アナキンラ)のようなIL−1阻害薬が含まれ、これは、ヒトインターロイキン−1受容体拮抗薬(IL−1Ra)の組み換え非糖化型、即ちAMG108であり、IL−1の働きを阻止するモノクローナル抗体である。治療薬には、グルタミン酸やアスパラギン酸のような興奮性アミノ酸類、NMDA受容体、AMPA受容体、及び/又はカイネート受容体へのグルタミン酸結合の拮抗薬又は阻害薬も含まれる。望ましい場合には、上記のぺギレート化型を使用してもよいと考えられる。他の治療薬の例として、グルココルチコイド類のようなNFカッパB阻害薬、ジルヒオカルバメート(dilhiocarbamate)のような抗酸化剤が挙げられる。
【0048】
使用に適した追加の治療薬の具体例としては、限定するわけではないが、同化成長因子又は抗異化成長因子、鎮痛薬、又は骨誘導成長因子、又はそれらの組合せが挙げられる。
適した同化成長因子又は抗異化成長因子には、限定するわけではないが、骨形成タンパク質、成長分化因子、LIM鉱化タンパク質、CDMP、又は前駆細胞、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0049】
適した鎮痛薬としては、限定するわけではないが、アセトアミノフェン、ブピビカイン、アミトリプチリンのようなオピオイド系鎮痛薬、カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリン、クロニジン、オピオイド系鎮痛薬、又はそれらの組合せが挙げられる。オピオイド系鎮痛薬には、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベンジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デゾシン、ジアムプロミド、ジアモルフォン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアムブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ナルブフェン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロフェプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、トラマドール、又はそれらの組合せが含まれる。
【0050】
抗炎症薬及び鎮痛薬のそれぞれについて、幾つかの実施形態では、各化合物の放出は、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、又はそれ以上の期間に亘る。
【0051】
薬物デポーは、非有効成分を伴って投与されてもよい。これらの非有効成分には、(単数又は複数の)治療薬の放出の実施、安定化、及び制御を含め、多様な機能上の目的がある。持続性放出プロセスは、例えば、溶液−拡散機序によってもよいし、浸食−持続性プロセスにより統制されてもよい。
【0052】
様々な実施形態では、非有効成分は、予定の薬物送達期間に等しい期間(生体分解性成分に該当)又はそれより長い期間(非生体分解性成分に該当)の間、組織部位内で耐えることができるものであろう。例えば、デポー材料は、体温に近いか又はそれより高いが治療薬の溶解又は分解温度よりは低い融点又はガラス転移温度を有していてもよい。しかしながら、充填された(単数又は複数の)治療薬の放出を遅くするために、デポー材料の事前に確定された浸食を使用することもできる。
【0053】
様々な実施形態では、薬物デポーは、生体分解性でなくてもよいし、若しくは生体分解性ではない材料を備えていてもよい。非生体分解性ポリマー類としては、限定するわけではないが、各種セルロース誘導体類(カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース類、及びアルキルセルロース類)、シリコン及びシリコンを基材とするポリマー類(ポリジメチルシロキサンなど)、ポリエチレン−コ−(ビニルアセテート)、プロクサマー、ポリビニルピトリドン、ポリクサミン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリエチレン−クロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又は「Teflon(商標)」)、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド−ポリスチレン、ポリ−α−クロロ−p−キシレン、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、非分解性エチレン−ビニルアセテート(例えばエチレンビニルアセテートディスク類及びポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート))、及び他の関連の生体安定性ポリマー類、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0054】
薬物デポーは、同様に、非分解吸収性ポリマー類を備えていてもよい。これらの非分解吸収性ポリマー類には、限定するわけではないが、デルリン、ポリウレタン、シリコンとポリウレタンのコポリマー類、ポリオレフィン類(ポリイソブチレン及びポリイソプレンなど)、アクリルアミド類(ポリアクリル酸及びポリ(アクリロニトリル−アクリル酸))、ネオプレン、ニトリル、アクリレート類(ポリアクリレート類、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及びアクリレート類とN−ビニルピロリドンのコポリマー類)、N−ビニルラクタム類、ポリアクリロニトリル、グルコマンナンゲル、加硫ゴム、及びそれらの組合せを含めることができる。ポリウレタン類の例としては、熱可塑性ポリウレタン類、脂肪族ポリウレタン類、セグメント化ポリウレタン類、親水性ポリウレタン類、ポリエーテル−ウレタン、ポリカーボネート−ウレタン、及びシリコンポリエーテル−ウレタンが挙げられる。通常、非分解性薬物デポーは、摘出する必要があるかもしれない。
【0055】
幾つかの事例では、薬物デポーを使用後に摘出しなくてはいけないということを避けた方が望ましい場合もある。それらの事例では、デポーは、生体分解性材料を備えればよい。この目的に利用できる材料は、目標組織又はその付近に配置されると長期間に亘って崩壊又は壊変することができる特性を有するものがたくさんある。生体分解性材料の化学反応の関数として、分解プロセスの機序は、本質的に加水分解の場合もあれば酵素による場合もあり、若しくはそれらの両方による場合もあろう。様々な実施形態では、分解は、当該面で起こる(不均一又は面浸食)か、又は薬物送達システムデポー全体で均一的に起こる(均一又はバルク浸食)か、何れのやり方でも起こり得る。
【0056】
様々な実施形態では、デポーは、少なくとも1つの鎮痛薬及び少なくとも1つの抗炎症薬の即時放出又は持続性放出を提供することができる、生体吸収性及び/又は生体分解性のバイオポリマーを備えていてもよい。適した持続性放出バイオポリマー類の例としては、限定するわけではないが、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸類)、ポリ(ラクチド−コ−グリコライド)(PLGA又はPLG)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコライド(PG)、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸類)のポリエチレングリコール(PEG)共役物類、ポリオルトエステル類、ポリアスピリン類、ポリフォスファゲン類、コラーゲン、スターチ、プレゼラチン化スターチ、ヒアルロン酸、キトサン類、ゼラチン、アルギン酸塩類、アルブミン、フィブリン、アルファトコフェリルアセテートやd−アルファトコフェリルサクシネートのようなビタミンE類似物類、D,L−ラクチド又はL−ラクチド、ポリ(グリコライド−、−カプロラクトン)、−カプロラクトン、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA−g−PLGA、PEGT−PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート類、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、PEO−PPO−PEO(プルロニクス)、PEO−PPO−PAAコポリマー類、PLGA−PEO−PLGA、PEG−PLG、PLA−PLGA、ポロクサマー407、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー類、SAIB(スクロースアセテートイソブチレート)、又はそれらの組合せが挙げられる。当業者には承知されているように、mPEGは、PLGAの可塑剤として使用することができるが、同じ効果を実現するために他のポリマー類/賦形剤を使用してもよい。mPEGは、得られる調合物に展性を付与する。
【0057】
ポリマー類の異なる組合せ(ビポリマー類、トリポリマー類(例えばPLGA−PEO−PLGA)又はターポリマー類)が使用される場合、それらは異なるモル比、即ち、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6;1、7;1、8:1、9;1、又は10:1で使用されてもよい。例えば、130日放出薬物デポーでは、ポリマー構成は、50:50PLGA対100PLAである。分子量範囲は0.45乃至0.8dI/gである。
【0058】
様々な実施形態では、ポリマーの分子量は、広い数値範囲に及ぶこともある。ポリマーの平均分子量は、約1,000乃至約10,000,000;又は約1,000乃至約1,000,000;又は約5,000乃至約500,000;又は約10,000乃至約100,000;又は約20,000乃至50,000とすることができる。
【0059】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの生体分解性ポリマーは、ポリ(ポリ(乳酸‐コ‐グリコール酸)(PLA)又はポリ(オルトエステル)(POE)又はそれらの組合せを備えている。ポリ(乳酸‐コ‐グリコール酸)はポリグリコライド(PGA)とポリラクチドの混合物を備えていてもよいし、また幾つかの実施形態では、混合物中、ポリラクチドがポリグリコライドより多量に含まれていてもよい。様々な他の実施形態では、ポリラクチドとポリグリコライドは、100%ポリラクチドと0%ポリグリコライド;95%ポリラクチドと5%ポリグリコライド;90%ポリラクチドと10%ポリグリコライド;85%ポリラクチドと15%ポリグリコライド;80%ポリラクチドと20%ポリグリコライド;75%ポリラクチドと25%ポリグリコライド;70%ポリラクチドと30%ポリグリコライド;65%ポリラクチドと35%ポリグリコライド;60%ポリラクチドと40%ポリグリコライド;55%ポリラクチドと45%ポリグリコライド;50%ポリラクチドと50%ポリグリコライド;45%ポリラクチドと55%ポリグリコライド;40%ポリラクチドと60%ポリグリコライド;35%ポリラクチドと65%ポリグリコライド;30%ポリラクチドと70%ポリグリコライド;25%ポリラクチドと75%ポリグリコライド;20%ポリラクチドと80%ポリグリコライド;15%ポリラクチドと85%ポリグリコライド;10%ポリラクチドと90%ポリグリコライド;5%ポリラクチドと95%ポリグリコライド;及び0%ポリラクチドと100%ポリグリコライドの量で含まれている。
【0060】
ポリラクチドとポリグリコライドの両方を備えている様々な実施形態では、バイオポリマーには、少なくとも95%ポリラクチド;少なくとも90%ポリラクチド;少なくとも85%ポリラクチド;少なくとも80%ポリラクチド;少なくとも75%ポリラクチド;少なくとも70%ポリラクチド;少なくとも65%ポリラクチド;少なくとも60%ポリラクチド;少なくとも55%;少なくとも50%ポリラクチド;少なくとも45%ポリラクチド;少なくとも40%ポリラクチド;少なくとも35%ポリラクチド;少なくとも30%ポリラクチド;少なくとも25%ポリラクチド;少なくとも20%ポリラクチド;少なくとも15%ポリラクチド;少なくとも10%ポリラクチド;又は少なくとも5%ポリラクチドが含まれており、残りがポリグリコールである。
【0061】
幾つかの実施形態では、生体分解性ポリマーは、調合物の少なくとも10重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、又は少なくとも99重量%を占めている。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの生体分解性ポリマーと鎮静薬及び抗炎症薬だけが医薬品調合物の構成要素である。
【0062】
幾つかの実施形態では、粒子の少なくとも75%は、寸法が約1マイクロメートル乃至約250マイクロメートルである。幾つかの実施形態では、粒子の少なくとも85%は、寸法が約1マイクロメートル乃至約100マイクロメートルである。幾つかの実施形態では、粒子の少なくとも95%は、寸法が約1マイクロメートル乃至約30マイクロメートルである。幾つかの実施形態では、粒子の全ては、寸法が約1マイクロメートル乃至約30マイクロメートルである。
【0063】
幾つかの実施形態では、粒子の少なくとも75%は、寸法が約5マイクロメートル乃至約20マイクロメートルである。幾つかの実施形態では、粒子の少なくとも85%は、寸法が約5マイクロメートル乃至約20マイクロメートルである。幾つかの実施形態では、粒子の少なくとも95%は、寸法が約5マイクロメートル乃至約20マイクロメートルである。幾つかの実施形態では、粒子の全ては、寸法が約5マイクロメートル乃至約20マイクロメートルである。
【0064】
デポーは、随意的に、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウムのような緩衝剤及びpH調整剤;分解/放出改質剤;薬物放出調節剤;乳化剤;塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、酢酸フェニル水銀及び硝酸フェニル水銀、亜硫酸水素ナトリウム、重硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チメロサール、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、及びフェニルエチルアルコールのような保存剤;溶解性調節剤;安定化剤;及び/又は凝集改質剤のような非有効材料を含有していてもよい。通常、このような非有効材料が含まれる場合、それらは、0−75重量%の範囲内及び、より一般的には0−30重量%の範囲内で含まれることになる。デポーが脊椎領域に設置されることになっている場合、様々な実施形態では、デポーは無菌の保存剤無添加材料を備えることができる。
【0065】
デポーは、例えば、ストリップ、ロッド、シート、メッシュなどのような、異なる寸法、形状、及び構成とすることができる。薬物デポーの寸法、形状、及び構成を確定する際に考慮すべき要因が幾つかある。例えば、寸法と形状は共に、薬物デポーを植え込み部位として選択されている目標組織部位に配置する際の容易さを考慮してもよい。加えて、システムの形状と寸法は、薬物デポーが、植え込み又は注入後に移動するのを最小限に抑えるか又は防止するように選択されるべきである。様々な実施形態では、薬物デポーは、ペレット、スフィア、ロッドのような円柱体、ディスク、フィルム、又はシートのような平坦面、ストリップ、ロッド、メッシュのような形状とすることができる。薬物デポーの設置がやり易くなるように可撓性を考慮に入れてもよい。様々な実施形態では、薬物デポーは、異なる寸法とすることができ、例えば、長さが約2乃至4cm、幅が約1−2cm、厚さが約0.25乃至1mmであってもよいし、又は長さが約0.5mm乃至5cmで直径が約0.01乃至約2mmであってもよい。様々な実施形態では、デポーは、2.5cm×1.5cm×0.5mmの寸法を有するストリップである。様々な実施形態では、薬物デポーは、層の厚さが約0.005乃至1.0mm、例えば0.05乃至0.75mmなどであってもよい。
【0066】
幾つかの実施形態では、外科医は、目標組織部位にアクセスすると、針を使って縫合糸を薬物デポーの中へ通し、1つ又はそれ以上のチャネル、スリット、ループ、及び/又はクリップを通過させるか、又は縫合糸を1つ又はそれ以上の溝、フック、逆棘、柱、及び/又はクリップの周囲に縛り、次に縫合糸と針に目標組織部位を貫通させ、結び目を縛ることによって薬物デポーを目標組織部位又はその付近に固定して、過剰な血流のある区域、外科手術部位の閉合時に組織の位置が変化する区域、又は組織の強い運動がある区域(例えば、関節又は筋肉区域)においてさえも、薬物デポーの動きが制限されるようにする。針はその後抜去され、縫合糸は切断されて結び目が付けられ、縫合糸と薬物デポーが所望位置に残されることになる。
【0067】
図1は、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは面開口部12と13を有し、それら開口部は、デポーの中央に配置されていて、目標組織部位の中へ通してデポーを目標組織部位又はその付近に固定することのできる、例えば縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、又はステープルのような1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっているチャネル14へ通じている。よって、様々な実施形態では、面は固定部材(縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、又はステープル)を受け入れるのに十分な寸法であればよい。とはいえ、薬物デポーは、矩形形状であるものとして示されている。当業者又は当技術分野の普通の技量を有する者には理解されるであろうが、薬物デポーはどのような形状とすることもできる(例えば、ペレット、楕円、ストリップ、ロッド、シート、メッシュなど)。同様に当業者には理解されるであろうが、薬物デポーの取付面は、1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっているチャネル(図1に図示)の代わりに1つ又はそれ以上のポート、溝、スリット、ループ、フック、逆棘、柱、及び/又はクリップを含むこともできる。
【0068】
薬物デポーの取付面は、薬物デポー10からの延長部であってもよい。当業者には理解されるであろうが、1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、逆棘、柱、及び/又はクリップは、薬物デポーと同じ材料で作ることもできるし、又は薬物デポーとは異なる材料で作ることもできる。同様に当業者には理解されるであろうが、1つ又はそれ以上の固定部材(例えば、縫合糸、ヤーン、ラインなど)は、薬物デポーと同じ材料で作ることもできるし、又は薬物デポーとは異なる材料で作ることもできる。
【0069】
薬物デポーを目標組織部位又はその付近に取り付けるのに外科手術手法を用いることができる。そのような用途では、薬物デポーを貫いて配置されているチャネルに縫合糸が通される。縫合糸は、薬物デポー10を目標組織部位に固定する。
【0070】
薬物デポーは、それが解剖学的構造又は目標組織面へ付着される前に縫合糸に取り付けられてもよいし、付着後に取り付けられてもよい。針及び/又は縫合糸を薬物デポーに事前に取り付けておけば、縫合糸を薬物デポーに通す必要がなくなるため外科手術工程を省略でき、外科手術をより速いペースで行うことができるようになる。
【0071】
様々な実施形態では、薬物デポーは、患者の身体の内部で皮膚の下層に組織面に当てて配置することができ、縫合糸を有する針に薬物デポー面を通過させて解剖学的部位の中へ通し、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に固定する。針に体組織を穿通させた後、針を切り離し、外科的締結法に従って結び目を締結する。
【0072】
図1Aは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは、チャネル14へ通じる面開口部12と13を有し、同チャネルは、縫合糸16のような固定部材が取り付けられている針20を受け入れるようになっており、固定部材付きの針20は、薬物デポーの開口部12からチャネル14に通され、同チャネルを通過して開口部13から出される。針と縫合糸は、チャネルから延びており、この場合、針は目標組織部位を穿通することができる。ここで、縫合糸16は、縫合糸を所定場所に保持しながらピンと引っ張れるようにする部分又は領域(例えば、結び目、リム、ビード、クリップ、リッジ、タブなど)を備えることができる。縫合糸のこの部分は、縫合糸の両端が薬物デポーをすり抜けてしまうのを防止する。図1Aには結び目18が示されているが、この結び目は外科医が縛ってもよいし、又は結び目は、前もって、薬物デポーに縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、ワイヤ、又はステープルが事前に通される時に作られてもよい。こうすれば、外科医は、目標組織部位を針で穿通して、薬物デポーを結び目を介して目標組織部位に縛りさえすればよく、縫合糸を引っ張りすぎて、縫合糸がデポーから引き抜かれてしまう心配はない。
【0073】
図1Aには結び目が示されているが、縫合糸は、その一端が薬物デポーをすり抜けてしまわないように、その一部がチャネルの開口部より大きくされておればよいことが理解されるであろう。このようにすれば、縫合糸をピンと引っ張っても構わない。よって、縫合糸の一端は、縫合糸が薬物デポーのチャネルから引き抜かれるのを防止するべく、チャネルより大きくされた結び目、リム、ビード、又はクリップを備えることができる。
【0074】
図2は、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは、チャネル14へ通じる面開口部12と13を有し、同チャネルは、縫合糸16のような固定部材が取り付けられている針20を受け入れるようになっており、固定部材付きの針20は、薬物デポーの開口部12からチャネル14に通され、同チャネルを通過して開口部13から出される。これは、事前に糸通しされている薬物デポーの1つの例である。針と縫合糸は、チャネルから延びており、この場合、針は目標組織部位を穿通することができる。ここでは、縫合糸16は輪を作り目標組織に又はその付近に又はそこに当てて結び目が付けられる。図2に結び目18が示されているが、この結び目は外科医が縛ってもよいし、又は結び目は、前もって、薬物デポーに縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、ワイヤなどが事前に通される時に作られてもよい。こうすれば、外科医は、目標組織部位を針で穿通して、薬物デポーを結び目を介して目標組織部位に縛りさえすればよい。これは、薬物デポーの容易結束システムの1つの例であり、この場合、針と縫合糸とデポーは事前に糸通しされているため、針とデポーに糸通しする外科手術工程は省略される。
【0075】
図2には、円周及び/又は直径がデポーのチャネルより大きくされて、こうして縫合糸が薬物デポーから引き抜かれるのを防止する縫合糸の領域が18で示されている。幾つかの実施形態では、最初に、針に目標組織部位を穿通させることができ、次いで針と縫合糸を使用し、薬物デポーのチャネルに通してチャネルに外科医のための案内役の役目をさせるか、又は薬物デポーの周囲に縛ることができる。次に、外科医は、薬物デポーを目標組織部位へ縛って結び目を作り、そして縫合糸を切断して、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に固定することができる。
【0076】
図2Aは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図である。プル・アンド・カットシステムが示されている。薬物デポーは、固定部材としての縫合糸16を受け入れるためにデポーの中央に配置されている面、この事例ではチャネル14、を有している。この図の縫合糸は、事前に結び目が付けられている2つの領域17と18を有している。幾つかの実施形態では、縫合糸領域は、デポーを縫い付けられるように互いから或る距離だけ離間されていて、デポーの1つ又はそれ以上の面(例えばチャネル)上に、又は同面の中に、或いは同面を貫いて引っ張られる。幾つかの実施形態では、デポーは、目標組織部位の深さに応じて、互いから、0.5mm、1mm、5mm、10mm、20mm、50mm、100mm、又は1cm、5cm、又は10cm離間されている。
【0077】
一方の領域18は、縫合糸をデポーの内部の所定位置に保持しており、他方の領域17は、針が目標組織部位を穿通する時に針と共に進む。組織部位の穿通後、外科医は、縫合糸を開口部13に戻してチャネル14を通過させて開口部12から出す。縫合糸をピンと引っ張ると結び目17が開口部12を通って押し出され、縫合糸が所定場所に固定される。引っ張った後、外科医がすべきことは、デポーを植え込むために、露出している結び目に隣接して縫合糸を切断することだけである。様々な実施形態では、このプル・アンド・カットシステムは、デポーを固定するのに結び目を縛るという外科医にとって時間のかかる工程を省く。幾つかの実施形態では、外科医には結び目を縛る必要がないことから、薬物デポーは、腹腔鏡的、関節鏡的、神経内視鏡的、内視鏡的、直腸鏡的手法などに適する。
【0078】
薬物デポー面にはチャネルが示されているが、当業者には理解されるように、薬物デポーへの固定部材の取り付けをやり易くするのにどのような固定手段を使用してもよい。固定手段には、例えば、溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、タブ、クリップなどが含まれ、それらはチャネルと併用することもできるし、チャネルの代わりに使用することもできる。例えば、1つ又はそれ以上の溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、タブ、及び/又はクリップは、固定部材を薬物デポーに又は同薬物デポーを通して取り付けることがやり易くなるように、薬物デポーの上面又は下面の上に、中に、又は上方に配置することができる(例えば、外科医は、縫合糸領域に、薬物デポーから延びているクリップ、フック、タブ、又は逆棘の下を滑らせて、デポーを目標組織部位へ固定することができる)。
【0079】
図2Bは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図である。縫合糸がデポーを通して引っ張られる、プル・アンド・カットシステムが示されている。薬物デポーは、固定部材としての縫合糸16を受け入れるために、デポーの中央に配置されている面、この事例ではチャネル14、を有している。この図の縫合糸は、事前に結び目が付けられている2つの領域17と18を有している。一方の領域18は、縫合糸をデポーの内部の所定位置に保持しており、他方の領域17は、針が目標組織部位を穿通する時に針と共に進む。組織部位の穿通後、外科医は、縫合糸を開口部13に戻してチャネル14を通過させて開口部12から出す。縫合糸をピンと引っ張ると結び目17が開口部12を通って押し出され、縫合糸が所定場所に固定される。引っ張った後、外科医がすべきことは、デポーを植え込むために、露出している結び目に隣接して縫合糸を切断することだけである。
【0080】
同様に当業者には理解されるであろうが、縫合糸の1つ又はそれ以上の領域は1つ又はそれ以上の結び目として示されてはいても、縫合糸は、縫合糸をデポーの異なる位置に保持するようになっている他の固定手段を有することもできる。縫合糸の当該領域に沿って配置されるそのような固定手段としては、限定するわけではないが、縫合糸を所定場所に保持するようになっている1つ又はそれ以上のフック、逆棘、柱、ビード、タブ、リム、クリップ、及び/又はリッジなどが挙げられる。例えば、縫合糸に、チャネルより大きくされている2つのフック、逆棘、柱、ビード、タブ、リム、クリップ、又はリッジを設け、そのうちの一方には縫合糸をデポー内に保持させ、他方には、外科医が縫合糸をピンと引っ張ることによってデポーのチャネルから押し出し、デポーを目標組織部位に固定させるようにしてもよい。幾つかの実施形態では、これらのフック、逆棘、柱、ビード、タブ、リム、クリップ、及び/又はリッジなどは、デポー及び縫合糸と同様に生体分解性材料で作らていてもよい。
【0081】
図3は、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは、互いに反対側の端部の14と24として示されている2つのチャネルに通じる2つの面開口部13と15を有しており、2つのチャネルは、縫合糸16のような固定部材が取り付けられている針20を受け入れるようになっており、固定部材付きの針20は、薬物デポーの開口部12からチャネル14に通され、同チャネルを通過して開口部13から出される。これは、事前に糸通しされている薬物デポーの1つの例である。針と縫合糸は、チャネルから延びており、この場合、針は目標組織部位を穿通し、次いで空いている取付面開口部15に戻され、チャネル24を通され開口部22から出てゆくことができ、この時縫合糸は輪を作り、目標組織に又はその付近に又はそこに当てて結び目が付けられる。
【0082】
図3に結び目18が示されているが、この結び目は外科医が縛り、次いで針と縫合糸にチャネル14を通過させるようにしてもよいし、又は結び目は、前もって、薬物デポーに縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、ワイヤなどが事前に通される時に作られてもよい。こうすれば、外科医は、目標組織部位を針で穿通し、次に針と縫合糸を空いている開口部15に戻し、チャネル24によって案内されながら針と縫合糸に薬物デポーを通過させて面開口部22から出しさえすればよく、そこで薬物デポーは結び目を介して目標組織部位又はその付近に固定される。これは、薬物デポーの容易結束システムの1つの例であり、この場合、針と縫合糸とデポーは事前に糸通しされているため、針とデポーに糸通しする外科手術工程は省略される。
【0083】
図3には、寸法(例えば、円周及び/又は直径)がデポーのチャネルより大きくされて、縫合糸が薬物デポーから引き抜かれるのを防止する縫合糸の領域が18で示されている。幾つかの実施形態では、外科医は、針と縫合糸を使用して、目標組織部位を穿通し、次いで同じ針と縫合糸を、第2の開口部15に通し、第2のチャネル24に案内役の役目をさせて縫合糸を開口部22から出させることができ、そこで外科医によって結び目が縛られると、薬物デポーは目標組織部位又はその付近に縫い付けて固定される。図1及び図2と同じく、チャネルの開口部は、固定部材を通過させることができる幾何学形状を有している。
【0084】
図4は、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは、互いに反対側の端部の14と24として示されている2つのチャネルに通じる2つの面開口部13と15を有しており、2つのチャネルは、縫合糸16のような固定部材を有する針20を受け入れるようになっており、固定部材付きの針20は、薬物デポーの開口部12からチャネル14に通され、同チャネルを通過して開口部13から出される。針と縫合糸は、チャネルから延びており、この場合、針は目標組織部位を穿通し、次いで空いている取付面開口部15に戻され、チャネル24を通過して開口部22から出てゆくことができ、この時縫合糸は輪を作り、目標組織に又はその付近に又はそこに当てて結び目が付けられる。図4に結び目18が示されているが、この結び目は外科医が縛り、次いで針と縫合糸にチャネル14を通過させるようにしてもよいし、又は結び目は、前もって、薬物デポーに縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、ワイヤなどが事前に通される時に作られてもよい。こうすれば、外科医は、目標組織部位を針で穿通し、次に針と縫合糸を空いている開口部15に戻し、チャネル24によって案内されながら針と縫合糸に薬物デポーを通過させて面開口部22から出しさえすればよく、そこで結び目を付ければ、薬物デポーを固定することができる。これは、薬物デポーの容易結束システムの1つの例であり、この場合外科手術の工程は、針に縫合糸を事前に通す工程と薬物デポーに針を事前に通すという工程が削られる。図4には、デポーのチャネルの寸法(例えば、円周及び/又は直径)より大きくされて、縫合糸が薬物デポーから引き抜かれるのを防止する縫合糸の領域が18で示されている。幾つかの実施形態では、外科医は、針と縫合糸を使用して、目標組織部位を穿通し、次いで同じ針と縫合糸を、第2の開口部13に通し、第2のチャネル14に案内役の役目をさせて縫合糸を開口部12から出させることができ、そこで外科医によって結び目が縛られ、縫合糸がピンと引っ張られると、薬物デポーは目標組織部位又はその付近に縫い付けて固定される。
【0085】
幾つかの実施形態では、薬物デポーは、患者の身体の内部で皮膚の下層に組織面に当てて配置することができ、縫合糸を有する針に薬物デポーの面を通過させて解剖学的部位の中へ通し、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に固定する。針に体組織を穿通させた後、針と糸を使用して、第2のチャネル経由で薬物デポーに通し、外科的締結法に従って結び目を作り針を縫合糸から切り離す。
【0086】
幾つかの実施形態では、固定部材はステープルとすることができ、薬物デポー面はステープルを受け入れるようになっているか、或いはステープルに薬物デポーと目標組織部位を穿通させて薬物デポーを固定することもできる。例えば、外科医は、薬物デポーを目標組織部位に当てて設置し、次いでステープルで薬物デポーを目標組織部位に留め付けることもできる。こうすれば、外科医は薬物デポーを簡単に植え込むことができる。
【0087】
図4Aは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは、2つのチャネル(14と24)及び開口部22と12に通じる2つの面開口部13と15を有しており、2つのチャネルは、縫合糸16のような固定部材を有する針20を受け入れるようになっており、固定部材付きの針20は、薬物デポーの開口部12からチャネル14に通され、同チャネルを通過して開口部13から出される。針と縫合糸は、チャネルから延びており、この場合、針は皮膚22の下層の目標組織部位を穿通することができる。この事例では、目標組織部位は筋肉組織24から構成されている。針と縫合糸は筋肉組織を穿通し、他端の取付面のデポー開口部15に戻り、チャネル24を案内されて通過し、開口部22から出されるが、この時縫合糸は輪を作り、目標組織に又はその付近に又はそこに当てて結び目が縛られる。図4Aには、縫合糸を薬物デポーの一端に事前に取り付けるのに使用されているビード18が示されている。このビードは、縫合糸の或る領域に取り付けられていて、外科医が縫合糸のこの端部を薬物デポーから引き抜くことができないようにチャネル及び開口部よりも大きくされている。外科医は、筋肉組織24を針で穿通した後、次に針と縫合糸を第2の開口部15に戻し、チャネル24を案内されながら通過させて開口部22から出すと、縫合糸に結び目を付けてから針と縫合糸を切断し、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に固定させる。
【0088】
図4Aに示されている実施形態では、薬物デポーは生体分解性とすることができ、薬物デポーが分解してゆくと、薬物が目標組織部位で放出され、望まれない移動と一貫した薬物療法が、目標組織部位又はその付近で提供される。様々な実施形態では、縫合糸16は、薬物デポーよりも速く分解し、これにより、目標組織部位が治癒するにつれ、縫合糸が分解すると、薬物デポーは、目標組織部位の奥深くに取り残され、体液が薬物デポーに触れると薬物を放出し、時間を掛けて分解してゆくことになる。
【0089】
幾つかの実施形態では、幾つかの外科手術工程を省き、外科手術時間が短縮されるように、縫合糸は、外科用針に事前に取り付けられていて、縫合糸は、1つ又はそれ以上のチャネル、スリット、ループ、及び/又はクリップに事前に通されているか又はそれらに事前に取り付けられている、或いは1つ又はそれ以上の溝、フック、逆棘、柱、及び/又はクリップの周囲に事前に縛られているか又はそれらに事前に取り付けられている。
【0090】
図5は、植え込み可能な薬物デポー10の1つの実施形態の側面断面図であり、同薬物デポーは、薬物デポーの異なる端部に配置されていて縫合糸16を受け入れることができる2つの面、この事例では12と22として示されている2つのチャネル開口部、を有している。縫合糸は、2つの領域を有し、そのうちの一方の領域18は、縫合糸をデポーの中の所定の場所に保持するための領域であり、他方の領域17は、(体組織を針20で穿通した後)外科医が、チャネル開口部22を通して引っ張り、領域17を開口部から押し出し、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定するための領域である。この図は、事前に糸通しされ、事前に結び目(17と18)が付けられているデポーを示している。縫合糸をチャネルを通して引っ張った後に外科医がすべきことは、縫合糸を切断することだけである。この「プル・アンド・カット」システムにより、外科手術中にデポーを固定するために結び目を縛るという時間のかかる工程は回避できる。
【0091】
図5Aは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面図であり、同薬物デポーは、薬物デポーの異なる端部に配置されていて縫合糸16を受け入れることができる2つの面、この事例では12と22として示されている2つのチャネル開口部、を有している。縫合糸は、2つの領域を有し、そのうちの一方の領域18は、縫合糸をデポーの中の所定の場所に保持するための領域であり、他方の領域17は、(体組織を針20で穿通した後)外科医が、チャネル開口部22を通して引っ張り、領域17を開口部から押し出し、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定するための領域である。この図は、事前に糸通しされ、事前に結び目(17と18)が付けられ、縫合針20がチャネル開口部22を通過しようとしているデポーを示している。縫合糸をチャネルを通して引っ張った後に外科医がすべきことは、縫合糸を切断することだけである。
【0092】
図5B、図5C、及び図5Dは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態において、縫合糸16と針20がチャネル開口部13を通過している状態の薬物デポー10の背面図を示している。縫合糸は、(体組織穿通後に)外科医が引っ張って開口部15を通して押し出し、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定できるようにする領域17を有している。この図は、事前に糸通しされ、事前に結び目が付けられ、縫合針がチャネル開口部15を通され、領域17が引き通されようとしているデポーを示している(図5Bと図5C)。図5Dは、縫合糸16と針20が薬物デポー10のチャネル開口部15を引き通された状態を示している。デポーのこの背面部は、幾つかの実施形態では、組織面に当てて植え込まれる。
【0093】
図5Eは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の正面図であり、同薬物デポーは、薬物デポーの異なる端部に配置されていて縫合糸16を受け入れることができる2つの面、この事例では12と22として示されている2つのチャネル開口部、を有している。縫合糸は、2つの領域を有し、そのうちの一方の領域18は、縫合糸をデポーの中の所定の場所に保持するための領域であり、他方の領域17は、(体組織を針20で穿通した後)外科医が、チャネル開口部22を通して引っ張り、領域17を開口部から押し出してデポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定するための領域である。この図は、事前に糸通しされ、事前に結び目(17と18)が付けられ、縫合針20が結び目17に隣接して切断されているデポーを示している。
【0094】
図5Fと図5Gは、皮膚(図5Gの22)の下層の目標組織部位(図5Gの筋肉24)に植え込まれている薬物デポー10の1つの実施形態の正面図を示している。薬物デポーは、薬物デポーの異なる端部に配置されていて縫合糸16を受け入れることができる2つの面、この事例では12と22として示されている2つのチャネル開口部、を有している。縫合糸は、2つの領域を有し、そのうちの一方の領域18は、縫合糸をデポーの中の所定の場所に保持するための領域であり、他方の領域17は、(体組織を針20で穿通した後)外科医が、チャネル開口部22を通して引っ張り、領域17を開口部から押し出して、デポーを目標組織部位又はその付近の所定場所に固定するための領域である。図5Fの図は、事前に糸通しされ、事前に結び目(17と18)が付けられ、植え込まれ、縫合糸が結び目17に隣接して切断されているデポーを示している。図5Gは、植え込み後のデポーにおいて、余分な縫合糸部分と針が取り除かれた後のデポーを示している。
【0095】
当業者には理解されるであろうが、デポーは、穴、チャネル、溝、スリットなどが、製造業者によって事前にデポーに作成されていてもよい。或いは、穴、チャネル、溝、スリットなどは、ユーザーが針を使って作成することもできる。
【0096】
幾つかの実施形態では、穴、チャネル、溝、スリットなどは、打ち貫き加工、切りもみ加工、レーザーなどで作成することができる。縫合糸と針は、手作業で取り付けることもできるし、自動化された機械で取り付けることもできる。縫合糸の結び目は、手作業で作成することもできるし、自動化された機械で作成することもできる。他の捕捉手段又は機構(チャネル、穴、ポート、溝、スリット、ループ、フック、逆棘、柱、ビード、タブ、及び/又はクリップ)は、デポー植え込み形状へ事前に型成形することもできるし、機械加工しておくことも、或いは二次的に取り付けることもできる。
【0097】
当業者には理解されるであろうが、図1−図5Gでは、少なくとも1つの表面はチャネルとして示されているものの、薬物デポーの当該面は、同面が固定部材を薬物デポーへ又は薬物デポーを通して取り付けることをやり易くする限り、1つ又はそれ以上の溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱などとすることもできる。様々な実施形態では、薬物デポーの少なくとも1つの取付面は、薬物デポーの本体から、例えば、チャネル、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、構造物などとして延びていてもよい。
【0098】
幾つかの実施形態では、薬物デポーの1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、及び/又はクリップは、互いに等間隔に間離されていてもよい。例えば、1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、及び/又はクリップは、互いから0.5mm、1mm、5mm、10mm、20mm離間されていてもよい。
【0099】
図6Aは、縫合糸を受け入れるようになっている面を有する植え込むことのできる薬物デポー10の側面図であり、ここでは、外科医は縫合糸の一端の結び目18として示されているように縫合糸16をデポーに縛ることができ、縫合糸の他端22は針に取り付けることができ、その針を使って目標組織部位を穿刺することができ、縫合糸端22を結び目に縛ってから、針を切断して取り出すことができる。こうすれば、薬物デポーを目標組織又はその付近に固定することができる。
【0100】
図6Bは、植え込むことのできる薬物デポー10の1つの実施形態の側面図であり、同薬物デポーは、その周囲周りに走っていて縫合糸16を受け入れるようになっている面、この事例では溝24、を有しており、ここでは、縫合糸は溝24の周囲に縛ることができ18、縫合糸22の一端は針に通すことができる。針と縫合糸は、目標組織部位を穿通することができ、その後、針と縫合糸は戻されて、縫合糸は結び目が付けられ、針は切断されて取り出される。こうすれば、薬物デポーを目標組織部位又はその付近に縫い付けることができる。様々な実施形態では、薬物デポーは、縫合糸を事前に取り付けておくことができ、外科医が針と薬物デポーに糸を通す場合の外科手術工程と時間を省くことができる。
【0101】
薬物デポー上には、ユーザーがデポーを患者の目標部位へ正確に位置決めできるようにするために、放射線撮影マーカーを含めることができる。これらの放射線撮影マーカーは、ユーザーが当該部位のデポーの動き又は分解を経時的に追跡できるようにもするはずである。この実施形態では、ユーザーは、数ある診断的画像化手法の何れかを使って、デポーを当該部位に正確に位置決めするようにしてもよい。そのような診断的画像化手法としては、例えば、X線画像化、蛍光透視、又はMRIが挙げられる。そのような放射線撮影マーカーの例としては、限定するわけではないが、バリウム、リン酸カルシウム、及び/又は金属ビード又は粒子が挙げられる。様々な実施形態では、放射線撮影マーカーは、球状形状物、(単数又は複数の)線、又はデポーの周囲に配したリングであってもよい。
【0102】
幾つかの実施形態では、薬物デポーは、植え込まれた後ほどなくして薬物を放出させる初期バースト効果を有していてもよい。治療薬放出の初期バーストを実現するには、様々な要因を調節すればよい。第1に、初期バーストは、溶媒の水不混和性、ポリマー/溶媒比、及びポリマーの属性のような、デポーの属性に関係のある要因によって制御することができる。デポーに使用されている溶媒の水不混和性の程度は、水性の体液がデポーに浸透して治療薬を放出させる速度に影響する。一般に、水溶性が高ければ初期バーストは高くなり、水不混和性であれば初期バーストは低くなり、即ち治療薬の放出は緩慢になる(持続性放出)。
【0103】
初期バースト放出又は持続性放出を制御するのに使用される適した溶媒としては、限定するわけではないが、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、n−プロピルベンゾエート、イソプロピルベンゾエート、ブチルベンゾエート、イソブチルベンゾエート、セク−ブチルベンゾエート、ター−ブチルベンゾエート、イソアミルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、水、アルコール、低分子量PEG(1,000MW未満)、トリアセチン、ジアセチン、トリブチリン、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリエチルグリセライド類、トリエチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジエチルタルタレート、鉱油、ポリブテン、シリコン液、グリセリン、エチレングリコール、オクタノール、エチルラクテート、プロピレングリコール、プロピレンカルボナート、エチレンカルボナート、ブチロラクトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールフォーマル、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、グリコフロル、ジメチルスルホオキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクトン、ジチルメチルスルホオキシド、オレイン酸、1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オン、又はそれらの混合物が挙げられる。溶媒は、様々な実施形態では、所望の放出プロフィールを得るために、治療薬及び/又はポリマー類と混合することができる。
【0104】
デポーは、孔形成剤を有していてもよく、そのようなものとして、体液に触れると溶け、分散し、又は分解して、ポリマーマトリクスに孔又はチャネルを作り出す生体適合性材料が含まれる。代表的には、糖類(例えば、ショ糖、ブドウ糖)、水溶性塩類(例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウム、及び炭酸ナトリウム)、N−メチル−2−ピロリドン及びポリエチレングリコールのような水溶性溶媒、及び水溶性ポリマー類(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピル−セルロースなど)のような、水溶性である有機及び非有機材料を孔形成剤として使用するのが好都合である。そのような材料は、ポリマーの重量の約0.1%乃至約100%の様々な量で含まれていてもよいが、通常は、ポリマーの重量の50%未満、より典型的には10−20%未満である。
【0105】
また、デポー中のポリマーの分子量を変えること、又はデポー賦形剤中のポリマー材料の分子量分布を調節することで、初期バースト及びデポーからの治療薬の放出速度に影響を与えることができる。一般に、分子量の大きいポリマーでは、初期バーストは低くなり、治療薬の放出速度はより遅くなる。ポリマーは、酸及びエステル末端基のような異なる末端基を有していてもよい。当業者には承知されている通り、ポリマー類と異なる末端基との配合物を有する、植え込むことのできるエラストマー系デポー組成を使用すると、得られる調合物は、低いバースト指数と調節された送達持続時間を有することになろう。例えば、ポリマー類を酸(カルボン酸)及びエステル末端基(例えば、エチルエステル末端基のメチル)と共に使用してもよい。
【0106】
追加的に、ポリマーを形成している各種モノマー類のコモノマー比(例えば、所与のポリマーでのL/G(乳酸/グリコール酸)又はG/CL(グリコール酸/ポリカプロラクトン)比)を変えれば、調節されたバースト指数と送達持続時間を有するデポー組成が得られることになろう。例えば、L/G比が50:50のポリマーを有するデポー組成であれば、約2日間から約1カ月間までの範囲の短い送達持続時間を有することになり;L/G比が65:35のポリマーを有するデポー組成であれば、約2カ月間の送達持続時間を有することになり;L/G比が75:25又はL/CL比が75:25のポリマーを有するデポー組成であれば、約3カ月間乃至約4カ月間の送達持続時間を有することになり;L/G比が85:15のポリマー比を有するデポー組成であれば、約5カ月間の送達持続時間を有することになり;L/CL比が25:75又はPLAのポリマーを有するデポー組成であれば、6カ月間以上の送達持続時間を有することになり;CL/G/Lのターポリマーで、Gが50%より多く、Lが10%より多いターポリマーを有するデポー組成であれば、約1カ月間の送達持続時間を有することになり;CL/G/Lのターポリマーで、Gが50%未満、Lが10%未満のターポリマーを有するデポー組成であれば、最大6カ月間の持続月数を有することになろう。一般に、CL含量に比べG含量を増加すれば送達持続時間は短縮され、一方、G含量に比べCL含量を増加すれば、送達持続時間は長くなる。よって、とりわけ、異なる分子量、異なる末端基、及び異なるコポリマー比を有するポリマー類の配合物を有するデポー組成を使用すれば、低いバースト指数と調節された送達持続時間を有するデポー調合物を作り出すことができる。
【0107】
粒子の寸法、粒子状物質の壊変、粒子状物質の形態学(例えば、植え込み前の粒子状物質に孔が存在するか否か又は孔が体液侵食により簡単に形成されるか否か)、被覆類、治療薬による錯体形成、錯体結合の強さのような要因を操作すれば、所望の低い初期バースト及び放出速度を実現することができる。
縫合糸
縫合糸は、それが作られている材料の種類により、性質上、分解吸収性か又は永久かになる。「縫合糸」がここで使用されている場合、それは、2点間に張ることのできる何らかの可撓性を有する構造を指し、そのようなものには、限定するわけではないが、従来型の縫合材料、単ストランド又は多ストランドのスレッド、又はメッシュ構造が含まれる。縫合糸は、ベルトに見られる穴に似た多数の穴が開けられたストラップ状構造であってもよい。「縫合糸」は、更に、軟組織を再建させるために細胞の内成長用の足場又は支持母材を提供する無細胞のコラーゲン膜又は他の生物組織補強物の形態をとっていてもよい。外科用針に取り付けられる縫合糸としては、絹、ナイロン、リネン、綿、クロムガット、プレーンガット、キャットガット、バイクリル、ポリグラクチン、ポリエステル、ポリプロピレン、ステンレス鋼、ポリグリコール酸を含め吸収性成分と適合性のある無毒性組織へと加水分解されるグリコール酸エステル結合を有する合成ポリマー類が挙げられる。縫合糸は、モノフィラメントであってもよいし編まれていてもよく、吸収性であっても非吸収性であってもよい。縫合糸は、どんな長さであってもよい。様々な実施形態では、縫合糸は、デポーの設置部位から目標組織部位へ到達させられるだけの長さである。縫合糸は、薬物デポーへ又は薬物デポーを通して取り付けることができるならば、何れの厚さであってもよい。幾つかの実施形態では、縫合糸は薬物で被覆されている。
【0108】
縫合糸を作るのに各種生体吸収性ポリマーが使用できる。適した生体適合性生体吸収性ポリマー類の例としては、脂肪族ポリマー類、ポリ(アミノ酸類)、コポリ(エーテル−エステル類)、ポリアルキレン類オキサレート類、ポリアミド類、チロシン由来ポリカーボネート類、ポリ(イミノカーボネート類)、ポリオルトエステル類、ポリオキサエステル類、ポリアミドエステル類、アミン基含有ポリオキサエステル類、ポリ(アンハイドライド類)、ポリホスファゼン類、生体分子類(即ち、コラーゲン、エラスチン、生体吸収性スターチなどのようなバイオポリマー類)、又はそれらの配合物が挙げられる。ポリエステル類には、限定するわけではないが、ラクチド(乳酸、D−、L−、及びメソ・ラクチドを含む)、グリコライド(グリコール酸を含む)、カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカルボナート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカルボナートのアルキル誘導体類、デルタ−バレロラクトン、ベータ−ブチロラクトン、ガンマ−ブチロラクトン、エプシロン−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン(そのダイマー1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む)、1,5−ジオキセパン−2−ワン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−ワン2,5−ジケトモルホリン、ピバロラクトン、アルファ−ジエチルプロピオラクトン、エチレンカルボナート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−ワン、のホモポリマー類及びコポリマー類、又は上記物質のポリマー配合物類が挙げられる。
【0109】
幾つかの実施形態では、縫合糸は、各種ポリエーテル類、ポリアクリレート類、ポリアミド類、ポリシロキサン類、ポリウレタン類、ポリエーテルアミド類、ポリウレタン/尿素類、ポリエーテルエステル類、又はウレタン/ブタジエンコポリマー類、又はそれらの組合せを含む、形状記憶ポリマー類を備えていてもよい。
【0110】
幾つかの実施形態では、薬物デポーより速く縫合糸が分解する。幾つかの実施形態では、縫合糸より速く薬物デポーが分解する。
縫合糸は、施行される手技と植え込み部位に応じて異なる寸法であってもよい。縫合糸は、寸法が、#000000(#6−0又は#6/0)、#00(#2−0又は#2/0)、#0、#1、#2、#3、#4、#5、#6の範囲にあればよく、#000000が最小である。様々な実施形態では、薬物デポーは、1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、及び/又は逆棘を有することになろうが、それらは、縫合糸が薬物デポーの当該表面を通過することができるように、#000000、#00、#0、#1、#2、#3、#4、#5、又は#6範囲よりも大きくされているであろう。
針
幾つかの実施形態では、1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、及び/又はクリップは、縫合糸、ヤーン、スレッド、又はラインを有する針が、デポーを通って又はデポーの周囲を通過し、案内されるようにする寸法である。よって、1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、及び/又はクリップは、針の幅及び/又は厚さよりも大きくして、外科医が針を通過させられるようにする案内役の役目を果たさせてもよい。
【0111】
とりわけ、針の寸法は、植え込みの部位によって異なるであろう。例えば、筋肉面の幅は、異なる手技において1−40cmとばらつきがある。よって、針は、様々な実施形態では、これらの特定の面積に合わせて設計することができる。
【0112】
針は、例えば、半曲線状又はスキー形状、1/4円、3/8円、1/2円、5/8円、複合曲線などのような異なる形状を有していてもよい。よって、幾つかの実施形態では、薬物デポー面は、針と縫合糸が薬物デポーを通過することができるか又は縫合糸をその周囲に縛れるように、針と縫合糸を受け入れるべく設計されることになろう。
【0113】
針の厚さも、植え込みの部位によって異なるであろう。様々な実施形態では、厚さとしては、限定するわけではないが、約0.05乃至約1.655が含まれる。針のゲージは、ヒト又は動物の体内への挿入では、最大直径であっても最小直径であってもよいし、或いはそれらの間の直径であってもよい。最大直径は典型的には約14ゲージであり、一方、最小直径は約25ゲージである。様々な実施形態では、針又はカニューレのゲージは約18乃至約22ゲージである。
【0114】
同様に、1つ又はそれ以上のチャネル、溝、スリット、ループ、フック、小穴、逆棘、柱、及び/又はクリップは、縫合糸を有する針がその中を通過できるようにこれより大きな寸法を有していてもよい。針がデポー及び目標身体組織に穿通された後、外科的締結法に従って結び目が作られ針が縫合糸から切り離されることになる。
【0115】
本用途において、例えば関節鏡的外科手術などの場合、縫合又はステッチを手作業によるか又は自動化された装置を介して施すための縫合用針を使用することができる。縫合用針は、通常、例えば、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエーテル(アミド)、PEBA、熱可塑性エラストマー系オレフィン、コポリエステル、並びにスチレン系熱可塑性エラストマー、鋼、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、非鉄金属含有率が高く且つ鉄の相対比率が低い金属合金類、炭素繊維、ガラス繊維、プラスチック類、セラミックス、又はそれらの組合せのような材料の切り出されたブランクから作られている。針は、随意的に、1つ又はそれ以上の先細領域を含んでいてもよい。様々な実施形態では、針は、一般的に、シャフト部と、縫合糸スレッドを固定するための開口部又はチャネルを有する後端部分と、皮膚を穿刺し組織を貫通させるための前端部分の針頭部を含んでいる。針頭部には、通常、その遠位端の尖った針先端と切刃が組み入れられている。代わりに、針先端は、先細の構成であってもよい。本技術においては、直線状の針又は多様な曲線構成を含む曲線状の針も知られている。縫合用針は、通常、尖った針端を組み入れている。より鋭利な針であれば、組織に貫入するのに要する力が少なくて済み、結果的に組織の外傷が軽くなる。加えて、より鋭利な針であれば、針自体の疲労が低減されるため、縫合中に曲がったり折れたりする可能性が低くなる。針の鋭利さは、通常、「貫入力」−即ち、針が組織を穿刺する又は貫入するのに必要な力、という用語で定義される。貫入力は、主として、針先端の設計と鋭利さ並びに針頭部に形成されている切刃によって決まる。同様に針の鋭利さは、針が組織を貫いて進んでゆく際に針に掛かる抵抗力によって影響される。同様に抵抗力は、針の設計と鋭利さ並びに潤滑用被覆の有無によって左右される。外科用針の材料の選定は、強度、柔軟性、及び針の曲げや折れに対する耐久性が最適化されるようになされる。とはいえ、針の物理的特性には針の断面形状と寸法が大きく寄与する。様々な実施形態では、針は、典型的に、325,000−350,000ポンド/平方インチの引張強度を有する「300」シリーズのステンレス鋼のようなステンレス鋼を含んでいる。縫合針が、例えばステンレス鋼のような金属である場合、針は、従来式の切断、コイニング、研ぎ出し、及び/又はスエージ加工により製造することができ、その強度と曲げに対する耐久性を更に強化するために熱処理を施してもよい。貫入及び抵抗特性を更に改善するためにシリコンのような潤滑性被覆を針本体に塗布してもよい。
滅菌処理
薬物デポー、薬物を投与するための医用装置、及び/又は固定部材(例えば、縫合糸)は、滅菌処置を施せるようになっていてもよい。様々な実施形態では、薬物デポー、薬物を投与するための医用装置、及び/又は固定部材(例えば、縫合糸)の1つ又はそれ以上の構成要素は、最終的に包装される段階での最終滅菌工程において放射線による滅菌処置を施せるようになっていてもよい。製品に最終滅菌処置を施すことで、滅菌性は、個々の製品構成要素を個別に滅菌して最終的包装物を滅菌環境で組み立てることが求められる無菌プロセスのようなプロセスによる場合よりも更に確実なものとなる。
【0116】
典型的には、様々な実施形態では、最終滅菌工程でガンマ放射線が使用されており、これには装置に深く浸透するガンマ線からのイオン化エネルギーを活用することが係わる。ガンマ線は、微生物類の殺傷に高い効果を発揮し、また残存量が残ることもなければ、装置に放射活性を付与するほどのエネルギーも持たない。ガンマ線は、装置を包装する際に採用することができ、ガンマ滅菌は高圧又は減圧条件を要しないので、包装物のシールや他の構成要素は応力を受けない。加えて、ガンマ放射線では、透過性包装材料の必要性がない。
【0117】
幾つかの実施形態では、縫合糸、デポー、及び針は、事前に組み立てられ、耐湿性の包装に詰められた後、最終的にガンマ照射によって滅菌される。使用の際、外科医は事前に組み立てられている薬物デポーを滅菌包装から取り出して使用する。
【0118】
様々な実施形態では、装置の1つ又はそれ以上の構成要素を滅菌するのに電子ビーム(e−ビーム)放射を使用してもよい。e−ビーム放射は、浸透度が低く線量率が高いことを特徴とするイオン化エネルギーの一形態を備えている。e−ビーム照射は、微生物類の生殖細胞を含め、それに触れた各種化学結合及び分子結合を改変するという点でガンマプロセスに似ている。e−ビーム滅菌用に作り出されるビームは、電気の加速と変換とによって生成される集中高電荷電子流である。
【0119】
デポー及び/又は装置の1つ又はそれ以上の構成要素を滅菌するのに、限定するわけではないが、例えば、エチレンオキシド又は蒸気による滅菌のようなガス滅菌を含め、他の方法を使用することもできる。
キット
様々な実施形態では、1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっている面を有する1つ又はそれ以上の薬物デポーを備えているキットが提供されている。キットは、薬物デポー及び/又は医用装置と共に、薬物デポー(例えば、ペレット、ストリップ、メッシュなど)を植え込むのに使用される追加部品を一体に組み合わせて備えていてもよい。キットは、第1の区画に薬物デポーを含んでいてもよい。第2の区画には、薬物デポーを保持しているキャニスターが含まれていてもよいし、或いは異なる放出プロフィールを有するそれぞれの薬物デポーにラベルを付けて異なる区画(例えば、大量瞬時用量デポー区画、持続性放出デポー区画など)に入れるようにしてもよく、また局所化された薬物送達用に必要な他の器具がある場合にはそれらが含まれていてもよい。第3の区画には、手袋、ドレープ、創傷包帯類、及び植え込みプロセスの滅菌性を維持するための他の処置用必需品、並びに手引書が含まれていてもよい。第4の区画には、追加の針及び/又は縫合糸が含まれていてもよい。それぞれの道具は、別々に、放射線滅菌処理されたプラスチックポーチに包装されていてもよい。第5の区画には、放射線撮影画像化用の薬剤が含まれていてもよい。キットのふたには、植え込み手順のイラストが含まれていてもよいし、滅菌性を維持するために透明なプラスチックのふたが構成要素に被せられていてもよい。
投与
様々な実施形態では、薬物デポーは非経口的に投与されてもよい。「非経口」という用語がここで使用される場合、それは、消化管を迂回する投与の形態を指し、例えば、筋肉内的、腹膜内的、胸骨内的、皮下的、術中的、髄腔内的、円板内的、円板周囲的、硬膜外的、脊椎周囲的、関節内的、又はそれらの組合せが含まれる。
【0120】
様々な実施形態では、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬の組合せは、局所的に投与されるので、治療有効用量は、他の経路(経口、表面塗布など)によって投与される場合の用量より少なくてもよい。これは、ひいては、例えば、肝臓のトランスアミナーゼの上昇、肝炎、肝不全、筋障害、便秘などのような全身性副作用を減少させ又はなくすことになる。
【0121】
薬物デポーは、皮膚の下層の何れの部位に送達させることもでき、そのような部位としては、限定するわけではないが、少なくとも1つの筋肉、靭帯、腱、軟骨、脊椎円板、脊椎椎間孔空間、脊椎神経根付近、又は脊柱管が含まれる。
【0122】
様々な実施形態では、術後疼痛又は炎症の治療を必要としている患者のそのような術後疼痛又は炎症を治療又は予防する方法が提供されており、同方法は、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の治療有効量を備えている1つ又はそれ以上の生体分解性薬物デポーを、皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に縫い付ける工程を備えており、薬物デポーは、目標組織部位又はその付近での薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている少なくとも1つの面を備えており、薬物デポーは、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩を少なくとも3日間の期間に亘って放出することができる。
【0123】
もう1つの実施形態では、炎症及び/又は疼痛に苦しんでいる哺乳類を治療するための方法が提供されており、同方法は、少なくとも1つの鎮痛薬及び/又は少なくとも1つの抗炎症薬の治療有効量を、皮膚の下層の目標部位又はその付近に投与する工程を備えている。少なくとも1つの鎮痛薬と少なくとも1つの抗炎症薬は、例えば、薬物デポーとして、目標組織部位に局所的に投与されてもよい。
【0124】
幾つかの実施形態では、治療有効投薬量と放出速度プロフィールは、炎症及び/又は疼痛を、少なくとも1日間、例えば、1−90日間、1−10日間、1−3日間、3−7日間、3−12日間、3−14日間、7−10日間、7−14日間、7−21日間、7−30日間、7−50日間、7−90日間、7−140日間、又は14−140日間の期間に亘って減少させるのに十分である。
【0125】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの鎮痛薬及び少なくとも1つの抗炎症薬、又は少なくとも1つの鎮痛薬及び少なくとも1つの抗炎症薬の一部は、少なくとも1つの鎮痛薬及び少なくとも1つの抗炎症薬の即時放出を提供するために、目標組織において大量瞬時用量として投与される。
【0126】
幾つかの実施形態では、炎症の治療にとって有用な組成として、例えば、疼痛又は炎症部位に投与することができる、少なくとも1つ鎮痛薬及び少なくとも1つの抗炎症薬の有効量を備えている組成がある。一例として、それらは、局所的に椎間孔背突起、脊椎周囲筋肉、又は皮下組織に投与されてもよい。
【0127】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの鎮痛薬及び/又は少なくとも1つの抗炎症薬は、外科手術中に空いている患者の腔部に挿置することによって投与される。幾つかの実施形態では、薬物デポーは、三角測量の戦略を使って、疼痛発生源の周囲の位置に設置することができる。
【0128】
三角測量の戦略は、多数のデポー医薬品調合物を投与する場合に有効である。よって、医薬品調合物を備えている複数(少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つなど)の薬物デポーは、目標組織部位(疼痛発生源又は疼痛発生部位としても知られている)の周囲に、調合物が2つの場合にはそれらの間の領域内に目標組織部位が納まるように、又は複数の調合物のセットによって周囲が画定される区域内に目標組織部位が納まるようにして、設置されてもよい。
【0129】
幾つかの実施形態では、調合物は、外科手術時に目標組織部位又はその付近に植え込むことができる。その場合、有効成分は、疼痛及び炎症に対処するために、持続性様式では、術後、例えば、1−3日間、3−15日間、5−10日間、又は7−10日間の期間に亘り溶解を介してデポーから放出させてもよい。
【0130】
幾つかの実施形態では、所望の放出プロフィールが、少なくとも3日間、少なくとも10日間、少なくとも20日間、少なくとも30日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、少なくとも135日間、少なくとも150日間、又は少なくとも180日間の間維持される。
【0131】
幾つかの実施形態では、薬物デポーは、薬物デポーに充填されている少なくとも1つの鎮痛薬又はその薬学的に許容され得る塩及び少なくとも1つの抗炎症薬又はその薬学的に許容され得る塩の全量に対する、少なくとも1つの鎮痛薬又はその薬学的に許容され得る塩及び少なくとも1つの抗炎症薬又はその薬学的に許容され得る塩の5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%を、少なくとも3日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも20日間、少なくとも30日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、少なくとも135日間、少なくとも150日間、又は少なくとも180日間の期間に亘って放出してもよい。様々な実施形態では、鎮痛薬は、初期バースト用量で放出されることになり、この時、鎮痛薬は3日間の間毎日放出されて止み(例えば、これは術後疼痛の減少、予防、又は治療に適しているであろう)、一方、抗炎症薬は、バースト用量を使わず、薬物デポーが目標組織部位に投与された後3乃至12日間、5乃至10日間、又は7乃至10日間の間毎日放出されることになる。
【0132】
様々な実施形態では、疼痛及び炎症の減少、予防、又は治療に有用な植え込むことのできる薬物デポーが、そのような治療を必要としている患者で提供されており、この植え込むことのできる薬物デポーは、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の治療有効量を備えていて、疼痛及び/又は炎症を減少、予防、又は治療するために皮膚の下層の部位に植え込むことができるようになっており、同薬物デポーは、(i)薬物デポーに充填されている鎮痛薬及び抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の全量に対する、鎮痛薬及び抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の約5%乃至約20%を、最大48時間の第1の期間に亘って放出することができる1つ又はそれ以上の即時放出層と、(ii)薬物デポーに充填されている鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の全量に対する、鎮痛薬及び抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の約21%乃至約99%を、最大3日間乃至6カ月間又は3日間乃至2週間の後続期間に亘って放出することができる1つ又はそれ以上の持続放出層と、を備えている。
【0133】
非限定的な例として、目標組織部位は、少なくとも1つの筋肉、靭帯、腱、軟骨、脊椎円板、脊椎神経根付近の脊椎椎間孔空間、椎間関節、又は脊柱管を備えていてもよい。目標組織は、急性疾患又は慢性疾患、或いは外科手術に関係付けられていてもよい。
【0134】
幾つかの実施形態では、植え込むことのできる薬物デポーが提供されており、同薬物デポーは、(i)少なくとも1つの鎮痛薬又はその薬学的に許容され得る塩及び少なくとも1つの抗炎症薬又はその薬学的に許容され得る塩の大量瞬時用量を、皮膚の下層の部位で放出する1つ又はそれ以上の即時放出層と、(ii)少なくとも1つの鎮痛薬又はその薬学的に許容され得る塩及び少なくとも1つの抗炎症薬又はその薬学的に許容され得る塩の有効量を、3日間乃至6カ月間の期間に亘って放出する1つ又はそれ以上の持続放出層と、を備えている。一例として、薬物デポーでは、1つ又はそれ以上の即時放出層は、ポリ(ラクチド−コ−グリコライド)(PLGA)を備えていてもよく、1つ又はそれ以上の持続放出層は、、ポリラクチド(PLA)を備えていてもよい。
製造方法
様々な実施形態では、有効成分を備えている薬物デポーは、生体適合性ポリマーと、有効成分又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量とを組み合わせ、組み合わせたものから植え込み可能な薬物デポーを形成することによって製造することができる。
【0135】
薬物デポーの少なくとも一部を、(単数又は複数の)生体適合性ポリマーと(単数又は複数の)治療薬と随意的な材料から形成する際は、溶液加工技法及び/又は熱可塑性プラスチック加工技法を含め様々な技法が利用できる。溶液加工技法が使用される場合、溶媒システムは、通常、1つ又はそれ以上の溶媒種を含有したものが選択される。溶媒システムは、一般に、少なくとも1つの関心対象の構成要素、例えば、生体適合性ポリマー及び/又は治療薬に良い溶媒である。溶媒システムを構成する特定の溶媒種は、乾燥速度及び表面張力を含む他の特性に基づいて選択することもできる。
【0136】
溶液加工技法には、溶媒キャスト技法、スピンコーティング技法、ウェブコーティング技法、溶媒噴霧技法、浸漬技法、空気懸濁(流動化コーティング)を含む機械的懸濁を介したコーティングを伴う技法、インクジェット技法、及び静電気技法が含まれる。適切な場合は、デポーを構築するのに、所望の放出速度と所望の厚さが得られるように、上に掲載されているような技法を繰り返すか又は組み合わせることもできる。
【0137】
様々な実施形態では、溶媒を含んだ溶液と生体適合性ポリマーを組み合わせて、所望の寸法と形状の金型に入れる。こうすれば、バリア層、潤滑層などを含んでいるポリマー領域を形成することができる。所望があれば、溶液は、更に、次のもの、即ち、(単数又は複数の)他の治療薬、及び(単数又は複数の)放射線撮影用薬剤のような他の随意的添加物など、のうちの1つ又はそれ以上を、溶解又は分散形態で備えることができる。こうすれば、溶媒除去後、ポリマーマトリクス領域にはこれらの種が含有されている。他の実施形態では、溶媒と溶解又は分散させた治療薬を含んでいる溶液が既存のポリマー領域に塗布されるが、これは、溶液加工技法及び熱可塑性プラスチック加工技法を含む各種技法を用いて形成することができ、その際、治療薬はポリマー領域に吸収同化される。
【0138】
デポー又はその部分を形成するための熱可塑性プラスチック加工技法には、モールド成形技法(例えば、射出モールド成形、回転モールド成形など)、押出成形技法(例えば、押出成形、同時押出成形、多層押出成形など)、及びキャスト法が含まれる。
【0139】
様々な実施形態による熱可塑性プラスチック加工は、1つ又はそれ以上の段階として、(単数又は複数の)生体適合性ポリマーと、以下のもの、即ち、有効成分、随意的な追加の(単数又は複数の)治療薬、(単数又は複数の)放射線撮影用薬剤などのうちの1つ又はそれ以上と、を混合又は化合する工程を備えている。得られた混合物は、次いで、植え込むことのできる薬物デポーに整形される。混合及び整形作業は、当技術で既知のそのような目的のための従来型の装置の何れを使用して行われてもよい。
【0140】
熱可塑性プラスチック加工時、(単数又は複数の)治療薬が、例えば、そのような加工に関係付けられる昇温及び/又は機械的剪断のせいで分解する可能性がある。例えば、或る種の治療薬は、普通の熱可塑性プラスチック加工条件下で実質的な分解を生じることがある。よって、加工は、(単数又は複数の)治療薬の実質的な分解を防止する修正された条件下で行われるのが望ましい。熱可塑性プラスチック加工中、或る程度の分解は不可避であることが理解されているが、分解は一般的には10%未満に留まる。加工時、(単数又は複数の)治療薬の実質的な分解を回避するために制御することができる加工条件の中には、温度、印加剪断速度、印加剪断応力、治療薬を含んでいる混合物の滞留時間、ポリマー材料と(単数又は複数の)治療薬を混合するのに用いられる技法がある。
【0141】
生体適合性ポリマーと(単数又は複数の)治療薬及び追加の添加物が含まれる場合に、それらを混合又は化合して実質的に均一な混合物を形成させることは当技術で既知であり、ポリマー材料と添加物との混合に従来的に使用されている何れの装置を用いて行われてもよい。
【0142】
熱可塑性プラスチック材料が採用されている場合、溶融ポリマーは、生体適合性ポリマーを熱することによって形成してもよく、これに各種添加物(例えば、(単数又は複数の)治療薬、非有効成分など)が混ぜ合わされて混合物となる。これを行う場合のよくあるやり方は、(単数又は複数の)生体適合性ポリマー及び(単数又は複数の)添加物の混合物に機械的剪断を加えることである。(単数又は複数の)生体適合性ポリマーと(単数又は複数の)添加物をこの様式で混ぜ合わせる装置には、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、高速ミキサー、ロスケトルなどのような装置が含まれる。
【0143】
(単数又は複数の)生体適合性ポリマーと各種添加物は何れも、所望であれば(例えば、様々な理由の中でもとりわけ治療薬の実質的な分解を防止するために)、最終的な熱可塑性プラスチック混合及び整形プロセスに先立ち、予混合されてもよい。
【0144】
例えば、様々な実施形態では、生体適合性ポリマーには、放射線撮影用薬剤(例えば、放射線不透過剤)が、これが存在した場合に治療薬の実質的な分解が引き起こされることになってしまう温度及び機械的剪断条件下で、事前に化合される。この事前に化合された材料に、次に、より低い温度と機械的剪断条件下で治療薬が混ぜ合わされ、得られた混合物が有効成分含有薬物デポーへと整形される。反対に、もう1つの実施形態では、生体適合性ポリマーには、低下させた温度と機械的剪断の条件下で治療薬を事前に化合することができる。この事前に化合された材料に、次に、例えば放射線不透過剤が、同様に低下させた温度と機械的剪断の条件下で混ぜ合わされ、得られた混合物が薬物デポーに整形される。
【0145】
生体適合性ポリマーと治療薬及び他の添加物との混合物を実現するのに使用される条件は、例えば、使用される(単数又は複数の)特定の生体適合性ポリマー及び添加物並びに混合用装置の種類を含め、数多くの要因によって異なる。
【0146】
一例として、異なる生体適合性ポリマーは、通常、異なる温度で軟化し混合が促進される。例えば、PLGA又はPLAポリマーと、放射線不透過剤(例えば、次炭酸ビスマス)と、熱及び/又は機械的剪断による分解が起こり易い治療薬(例えば、クロニジン)とを備えているデポーが形成される場合、様々な実施形態では、PGLA又はPLAは、例えば、約150℃乃至170℃の温度で放射線不透過剤と予混合することができる。次いで、治療薬が予混合された組成物と組み合わされ、PGLA又はPLA組成物にとって典型的な条件よりも低い温度及び機械的剪断の条件で更に熱可塑性プラスチック加工が施される。例えば、押出機が使用される場合、バレルの温度、出力量は、通常、剪断が制限され、よって(単数又は複数の)治療薬の実質的な分解が防止されるように制御される。例えば、治療薬と予混合組成物は、二軸押出機を使用して、実質的により低い温度(例えば、100−105℃)で、且つ実質的に出力量を落として(例えば、全能力の30%未満、これは概ね200cc/分の出力量に相当)、混合/化合することができる。なお、この加工温度は、抗炎症薬及び鎮痛薬のような或る特定の有効成分の融点を裕に下回っていることを特記するが、これは、この温度以上で加工した場合、治療薬に実質的に分解が引き起こされるからである。更に、或る特定の実施形態では、加工温度は、治療薬を含め組成物内の全ての生物活性化合物の融点を下回っていることを特記しておく。化合後、得られたデポーは、同様に低下させた温度と剪断の条件下で所望の形に整形される。
【0147】
他の実施形態では、(単数又は複数の)生体分解性ポリマーと1つ又はそれ以上の治療薬とは、非熱可塑性プラスチック技法を用いて予混合される。例えば、生体適合性ポリマーは、1つ又はそれ以上の溶媒種を有する溶媒システムに溶かすことができる。所望の薬剤(例えば、放射線不透過剤、治療薬、又は放射線不透過剤と治療薬の両方)がある場合にはそれらも、溶媒システム中に溶かす又は分散させることができる。次いで、得られた溶液/分散液から溶媒が除去されると、固形材料になる。この時、所望であれば、得られた固形材料を粗砕して更なる熱可塑性加工(例えば、押出成形)を施すことができる。
【0148】
もう1つの例として、治療薬を溶媒システム中に溶かすか又は分散させると、次に、これを既存の薬物デポー(既存の薬物デポーは、溶液加工や熱可塑性プラスチック加工の技法を含む各種技法を用いて形成することができ、放射線不透過剤及び/又は増粘剤を含む各種添加物を備えることができる)に塗布すれば、治療薬が薬物デポー上又はその中へ吸収同化される。以上と同じく、所望であれば、次に、得られた固形材料を粗砕して更なる加工を施すことができる。
【0149】
典型的には、(単数又は複数の)生体適合性ポリマー、(単数又は複数の)治療薬、及び(単数又は複数の)放射線不透過剤を備えている薬物デポーを形成するのに、押出成形プロセスが使用される。同時押出成形を採用することもでき、これは、同一又は異なる層又は領域(例えば、即時及び/又は持続性薬物放出を可能にする透水性を有する1つ又はそれ以上のポリマーマトリクス層又は領域を備えた構造)を備えている薬物デポーを製造するのに使用することができる整形プロセスである。多領域デポーは、同時射出モールド成形又は順次射出モールド成形技法のような他の加工及び整形技法によって形成することもできる。
【0150】
様々な実施形態では、熱可塑性プラスチック加工により形が現れてくるデポー(例えば、ペレット、ストリップなど)は冷却される。冷却プロセスには、空気冷却及び/又は冷却槽浸漬が含まれる。幾つかの実施形態では、押出成形されたデポーを冷却するのに水槽が使用されている。とはいえ、有効成分のような水溶性治療薬が使用されている場合、治療薬の水槽内への無益な流出を回避するために、浸漬時間は最小限に留められるべきである。
【0151】
様々な実施形態では、槽から出した後、大気又は暖気ジェットを使用して水又は水分を一気に除去すれば、薬物のデポー表面への再結晶化も防止することができ、こうすれば、植え込み又は挿入された直後の高薬物用量である「初期バースト」又は「大量瞬時用量」を、それが所望されていない放射プロフィールである場合には、制御又は最小限に抑えることができる。よって、薬物デポーの持続性放出領域は、様々な実施形態では、水又は水分を一気に除去することにより作られる。
【0152】
様々な実施形態では、薬物デポーは、薬物にポリマーを混合又は噴霧し、次いでこのデポーを所望の形状にモールド成形することによって調製することができる。様々な実施形態では、有効成分は、PLGA又はPEG550ポリマーと共に使用されており、それと混合するか又はそれを噴霧して、得られらたデポーを押出成形によって付形し、乾燥させてもよい。
【0153】
薬物デポーは、更に、生体適合性ポリマーと、少なくとも1つの鎮痛薬又はその薬学的に許容され得る塩及び少なくとも1つの抗炎症薬又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量とを組み合わせる工程と、この組合せから植え込み可能な薬物デポーを形成する工程を備えていてもよい。
【0154】
当業者には自明であろうが、ここに記載されている様々な実施形態に対し、ここでの教示の精神と範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を加えることができる。よって、様々な実施形態は、本教示の範囲内の様々な実施形態の他の修正及び変更を適用対象に含めるものとする。
【符号の説明】
【0155】
10 植え込むことのできる薬物デポー
12、13 開口部
14 チャネル
15 開口部
16 縫合糸
17、18 結び目、縫合糸の領域
20 針
22 開口部、皮膚
24 チャネル、溝、筋肉
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーにおいて、薬物の治療有効量と、前記目標部位又はその付近での前記薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっている少なくとも1つの面と、を備えており、前記薬物デポーの少なくとも1つの領域は、前記薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる、薬物デポー。
【請求項2】
前記少なくとも1つの面は、前記1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネル、穴、ポート、溝、スリット、ループ、フック、逆棘、柱、タブ、及び/又はクリップを備えている、請求項1に記載の薬物デポー。
【請求項3】
前記薬物デポーは、本体と、前記薬物デポーの前記本体から延びる1前記1つ又はそれ以上のチャネル、穴、ポート、溝、スリット、ループ、フック、逆棘、柱、及び/又はクリップを備えている、請求項2に記載の薬物デポー。
【請求項4】
前記1つ又はそれ以上の固定部材は、生体分解性の縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、及び/又はステープルを備えている、請求項1に記載の薬物デポー。
【請求項5】
前記薬物デポーは、生体分解性であり、前記固定部材は、生体分解性の縫合糸を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネルを備えている、請求項1に記載の薬物デポー。
【請求項6】
前記薬物デポーは、生体分解性であり、前記固定部材は、前記デポーが目標組織部位又はその付近に固着されるように、生体分解性の縫合糸を、当該縫合糸が前記目標組織部位に接触した後に、受け入れるようになっている、請求項5に記載の薬物デポー。
【請求項7】
前記薬物デポーは、生体分解性であり、前記少なくとも1つの面は、前記薬物デポーよりも速く分解する生体分解性の縫合糸を受け入れるようになっている、請求項1に記載の薬物デポー。
【請求項8】
前記生体分解性の縫合糸は、前記1つ又はそれ以上のチャネルを取り囲み、前記縫合糸が前記1つ又はそれ以上のチャネルをすり抜けてしまうのを防止する領域を更に備えている、請求項5に記載の薬物デポー。
【請求項9】
前記縫合糸の前記領域は、前記縫合糸が前記1つ又はそれ以上のチャネルをすり抜けてしまうのを防止する結び目、リム、ビード、又はクリップを備えている、請求項8に記載の薬物デポー。
【請求項10】
前記少なくとも1つの面は、1つ又はそれ以上のチャネルを備え、前記1つ又はそれ以上の固定部材は、生体分解性の縫合糸が前記1つ又はそれ以上のチャネルに事前に通された状態になるように、前記生体分解性の縫合糸の一部が前記1つ又はそれ以上のチャネル内に配置されて備えられている、請求項1に記載の薬物デポー。
【請求項11】
前記薬物デポーは、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩を備えており、前記薬物デポーは、生体分解性であり、術後疼痛を治療するために前記薬物を少なくとも1日間の期間に亘って放出するようになっている、請求項1に記載の薬物デポー。
【請求項12】
患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーにおいて、薬物の治療有効量と、前記目標組織部位又はその付近での前記薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネルと、を備えており、前記薬物デポーは、前記薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる、薬物デポー。
【請求項13】
前記薬物デポーは、生体分解性であり、前記固定部材は、前記薬物デポーの第1端に配置されていて生体分解性の縫合糸を受け入れるようになっている第1のチャネルと、前記薬物デポーの第2端に配置されていて、前記デポーが目標組織部位又はその付近に固定されるように、前記の同じ生体分解性の縫合糸を、当該縫合糸が前記目標部位に接触した後に、受け入れるようになっている第2のチャネルと、を備えている、請求項12に記載の薬物デポー。
【請求項14】
前記薬物デポーは、生体分解性であり、前記少なくとも1つの面は、前記薬物デポーより速く分解する生体分解性の縫合糸を受け入れるようになっている、請求項12に記載の薬物デポー。
【請求項15】
前記生体分解性の縫合糸は、前記1つ又はそれ以上のチャネルを取り囲み、前記縫合糸が前記1つ又はそれ以上のチャネルをすり抜けてしまうのを防止する第1の領域と、第2の領域であって、引っ張られると前記縫合糸の当該領域が前記1つ又はそれ以上のチャネルを通って押し出され、前記デポーの動きを制限する第2の領域と、を更に備えている、請求項12に記載の薬物デポー。
【請求項16】
前記縫合糸の前記第1の領域は、前記縫合糸が前記チャネルをすり抜けてしまうのを防止する結び目、リム、ビード、リッジ、タブ、又はクリップを備えている、請求項15に記載の薬物デポー。
【請求項17】
前記1つ又はそれ以上のチャネルと、前記1つ又はそれ以上の固定部材は、生体分解性の縫合糸が前記1つ又はそれ以上のチャネルに事前に通された状態になるように、前記生体分解性の縫合糸の一部が前記1つ又はそれ以上のチャネル内に配置されて備えられている、請求項12に記載の薬物デポー。
【請求項18】
前記薬物は、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれら薬学的に許容され得る塩を備えており、前記薬物デポーは、生体分解性であり、術後疼痛を治療するために前記薬物を少なくとも1日間の期間に亘って放出するようになっている、請求項12に記載の薬物デポー。
【請求項19】
術後疼痛又は炎症の治療を必要としている患者のそのような術後疼痛又は炎症を治療又は予防する方法において、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の治療有効量を備えている1つ又はそれ以上の生体分解性薬物デポーを、皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に縫い付ける工程を備えており、前記薬物デポーは、前記目標組織部位又はその付近での前記薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている少なくとも1つの面を備えており、前記薬物デポーは、前記鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる、術後疼痛又は炎症を治療又は予防する方法。
【請求項20】
前記薬物デポーは、生体分解性であり、前記固定部材は、前記薬物デポーの第1端に配置されていて生体分解性の縫合糸を受け入れるようになっている第1のチャネルと、前記薬物デポーの第2端に配置されていて、前記デポーが目標組織部位又はその付近に固定されるように、前記の同じ生体分解性の縫合糸を、当該縫合糸が前記目標部位に接触した後に、受け入れるようになっている第2のチャネルと、を備えている、請求項19に記載の術後疼痛又は炎症の治療を必要としている患者のそのような術後疼痛又は炎症を治療又は予防する方法。
【請求項1】
患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーにおいて、薬物の治療有効量と、前記目標部位又はその付近での前記薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっている少なくとも1つの面と、を備えており、前記薬物デポーの少なくとも1つの領域は、前記薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる、薬物デポー。
【請求項2】
前記少なくとも1つの面は、前記1つ又はそれ以上の固定部材を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネル、穴、ポート、溝、スリット、ループ、フック、逆棘、柱、タブ、及び/又はクリップを備えている、請求項1に記載の薬物デポー。
【請求項3】
前記薬物デポーは、本体と、前記薬物デポーの前記本体から延びる1前記1つ又はそれ以上のチャネル、穴、ポート、溝、スリット、ループ、フック、逆棘、柱、及び/又はクリップを備えている、請求項2に記載の薬物デポー。
【請求項4】
前記1つ又はそれ以上の固定部材は、生体分解性の縫合糸、ヤーン、スレッド、ライン、及び/又はステープルを備えている、請求項1に記載の薬物デポー。
【請求項5】
前記薬物デポーは、生体分解性であり、前記固定部材は、生体分解性の縫合糸を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネルを備えている、請求項1に記載の薬物デポー。
【請求項6】
前記薬物デポーは、生体分解性であり、前記固定部材は、前記デポーが目標組織部位又はその付近に固着されるように、生体分解性の縫合糸を、当該縫合糸が前記目標組織部位に接触した後に、受け入れるようになっている、請求項5に記載の薬物デポー。
【請求項7】
前記薬物デポーは、生体分解性であり、前記少なくとも1つの面は、前記薬物デポーよりも速く分解する生体分解性の縫合糸を受け入れるようになっている、請求項1に記載の薬物デポー。
【請求項8】
前記生体分解性の縫合糸は、前記1つ又はそれ以上のチャネルを取り囲み、前記縫合糸が前記1つ又はそれ以上のチャネルをすり抜けてしまうのを防止する領域を更に備えている、請求項5に記載の薬物デポー。
【請求項9】
前記縫合糸の前記領域は、前記縫合糸が前記1つ又はそれ以上のチャネルをすり抜けてしまうのを防止する結び目、リム、ビード、又はクリップを備えている、請求項8に記載の薬物デポー。
【請求項10】
前記少なくとも1つの面は、1つ又はそれ以上のチャネルを備え、前記1つ又はそれ以上の固定部材は、生体分解性の縫合糸が前記1つ又はそれ以上のチャネルに事前に通された状態になるように、前記生体分解性の縫合糸の一部が前記1つ又はそれ以上のチャネル内に配置されて備えられている、請求項1に記載の薬物デポー。
【請求項11】
前記薬物デポーは、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩を備えており、前記薬物デポーは、生体分解性であり、術後疼痛を治療するために前記薬物を少なくとも1日間の期間に亘って放出するようになっている、請求項1に記載の薬物デポー。
【請求項12】
患者の皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に植え込むことのできる薬物デポーにおいて、薬物の治療有効量と、前記目標組織部位又はその付近での前記薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている1つ又はそれ以上のチャネルと、を備えており、前記薬物デポーは、前記薬物の治療有効量を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる、薬物デポー。
【請求項13】
前記薬物デポーは、生体分解性であり、前記固定部材は、前記薬物デポーの第1端に配置されていて生体分解性の縫合糸を受け入れるようになっている第1のチャネルと、前記薬物デポーの第2端に配置されていて、前記デポーが目標組織部位又はその付近に固定されるように、前記の同じ生体分解性の縫合糸を、当該縫合糸が前記目標部位に接触した後に、受け入れるようになっている第2のチャネルと、を備えている、請求項12に記載の薬物デポー。
【請求項14】
前記薬物デポーは、生体分解性であり、前記少なくとも1つの面は、前記薬物デポーより速く分解する生体分解性の縫合糸を受け入れるようになっている、請求項12に記載の薬物デポー。
【請求項15】
前記生体分解性の縫合糸は、前記1つ又はそれ以上のチャネルを取り囲み、前記縫合糸が前記1つ又はそれ以上のチャネルをすり抜けてしまうのを防止する第1の領域と、第2の領域であって、引っ張られると前記縫合糸の当該領域が前記1つ又はそれ以上のチャネルを通って押し出され、前記デポーの動きを制限する第2の領域と、を更に備えている、請求項12に記載の薬物デポー。
【請求項16】
前記縫合糸の前記第1の領域は、前記縫合糸が前記チャネルをすり抜けてしまうのを防止する結び目、リム、ビード、リッジ、タブ、又はクリップを備えている、請求項15に記載の薬物デポー。
【請求項17】
前記1つ又はそれ以上のチャネルと、前記1つ又はそれ以上の固定部材は、生体分解性の縫合糸が前記1つ又はそれ以上のチャネルに事前に通された状態になるように、前記生体分解性の縫合糸の一部が前記1つ又はそれ以上のチャネル内に配置されて備えられている、請求項12に記載の薬物デポー。
【請求項18】
前記薬物は、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれら薬学的に許容され得る塩を備えており、前記薬物デポーは、生体分解性であり、術後疼痛を治療するために前記薬物を少なくとも1日間の期間に亘って放出するようになっている、請求項12に記載の薬物デポー。
【請求項19】
術後疼痛又は炎症の治療を必要としている患者のそのような術後疼痛又は炎症を治療又は予防する方法において、鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩の治療有効量を備えている1つ又はそれ以上の生体分解性薬物デポーを、皮膚の下層の目標組織部位又はその付近に縫い付ける工程を備えており、前記薬物デポーは、前記目標組織部位又はその付近での前記薬物デポーの動きが制限されるように1つ又はそれ以上の縫合糸を受け入れるようになっている少なくとも1つの面を備えており、前記薬物デポーは、前記鎮痛薬及び/又は抗炎症薬又はそれらの薬学的に許容され得る塩を少なくとも1日間の期間に亘って放出することができる、術後疼痛又は炎症を治療又は予防する方法。
【請求項20】
前記薬物デポーは、生体分解性であり、前記固定部材は、前記薬物デポーの第1端に配置されていて生体分解性の縫合糸を受け入れるようになっている第1のチャネルと、前記薬物デポーの第2端に配置されていて、前記デポーが目標組織部位又はその付近に固定されるように、前記の同じ生体分解性の縫合糸を、当該縫合糸が前記目標部位に接触した後に、受け入れるようになっている第2のチャネルと、を備えている、請求項19に記載の術後疼痛又は炎症の治療を必要としている患者のそのような術後疼痛又は炎症を治療又は予防する方法。
【図1】
【図1A】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図4A】
【図5】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図6A】
【図6B】
【図1A】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図4A】
【図5】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図6A】
【図6B】
【公表番号】特表2011−503114(P2011−503114A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533347(P2010−533347)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/050477
【国際公開番号】WO2010/011526
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(506298792)ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド (366)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/050477
【国際公開番号】WO2010/011526
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(506298792)ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド (366)
【Fターム(参考)】
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