1回拍出量の呼吸性変動解析装置におけるアーチファクト除去方法、血液量測定装置及びアーチファクト除去プログラム
【課題】高精度にアーチファクトの除去できるアーチファクト除去方法、血液量測定装置及びアーチファクト除去プログラムを実現する。
【解決手段】1呼吸周期毎の1回拍出量変動データを求めて第1のバッファにストアし、前記1呼吸周期毎に、過去に遡ってストアされているN1個の変動データを読み出して第2のバッファにストアし、前記第2のバッファに格納されたN1個の変動データから上下限を越える変動データを除去して第3のバッファにストアし、前記第3のバッファにストアされた変動データの中間値からの各データの偏差値を求めて、偏差値の上下限を越える変動データを除去したN2個の変動データを第4のバッファにストアし、前記N2/N1が許容値以内か否かの判断をするステップと、前記ステップの判断が許容値以内の場合のみ、前記第4のバッファにストアされた変動データに基づいて平均拍出量を算出する。
【解決手段】1呼吸周期毎の1回拍出量変動データを求めて第1のバッファにストアし、前記1呼吸周期毎に、過去に遡ってストアされているN1個の変動データを読み出して第2のバッファにストアし、前記第2のバッファに格納されたN1個の変動データから上下限を越える変動データを除去して第3のバッファにストアし、前記第3のバッファにストアされた変動データの中間値からの各データの偏差値を求めて、偏差値の上下限を越える変動データを除去したN2個の変動データを第4のバッファにストアし、前記N2/N1が許容値以内か否かの判断をするステップと、前記ステップの判断が許容値以内の場合のみ、前記第4のバッファにストアされた変動データに基づいて平均拍出量を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
患者の輸液応答性を判断したり、人工呼吸の適切な設定を実行するために患者の1回拍出量の呼吸性変動を解析する装置におけるアーチファクト除去方法、血液量測定装置及びアーチファクト除去プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の患者の1回拍出量の呼吸性変動を解析する方法としては以下のものが知られており、また考えられている。
・第1の方法は、脈波伝播時間と1回拍出量との相関関係を利用して脈波伝播時間変動から1回拍出量を測定し(特許文献1参照)、得られた1回拍出量から呼吸性変動を解析するというものである。
【0003】
次に、特許文献1に記載の従来の生体信号モニタ装置を、図を参照しながら詳細に説明する。
図8は従来の生体信号モニタ装置の構成を説明するためのブロック図であり、図9は、従来の生体信号モニタ装置による測定形態の一例を説明する模式図である。
また、図10は、図8の従来の生体信号モニタ装置で測定された各脈波の波形を示す図である。
【0004】
収縮・拡張期血圧測定手段20は、図9に示すように、カフ25、加圧ポンプ27、圧
力センサ28、カフ圧検出部29、A/D変換器22等により構成されている。
【0005】
具体的には、図9に示すように、カフ25を患者の上腕部に装着して測定を行う。
このカフ25は、生体信号モニタ装置本体10内に設けられた排気弁26によってその
内部が大気に対して開放または閉塞される。
また、カフ25には、生体信号モニタ装置本体10内に設けられた加圧ポンプ27によ
って空気が供給される。
生体信号モニタ装置本体10内には圧力センサ28(カフ脈波センサ)が取り付けられ
ており、このセンサ出力がカフ圧検出部29によって検出される。
このカフ圧検出部29の出力は、A/D変換器22によってディジタル信号に変換され
、心拍出量演算手段40に取り込まれる(図9においては、カフ圧検出部29、A/D変
換器22、心拍出量演算手段40は、生体信号モニタ装置本体10内に含まれる)。
【0006】
図10(a)は心電図波形であり、心臓から出た直後の大動脈圧は、図6(b)に示すような波形となる。
また、図10(c)(d)に示すような末梢側動脈波形及び末梢脈波波形が得られる。
【0007】
脈波伝播時間測定手段30は、図8に示すように、時間間隔検出基準点測定手段31、A/D変換器32、光電脈波検出センサ33、脈波検出部34、A/D変換器35、等により構成されている。
【0008】
時間間隔検出基準点測定手段31は、心電図のR波の発生時点を検出するためのもので
あり、この検出部の出力は、A/D変換器32によりディジタル信号に変換されて、心拍
出量演算手段40に取り込まれる。
この時間間隔検出基準点測定手段31は、具体的には、図9に示すような、被験者の胸
部に装着される心電図電極31a(心電図測定手段)からなる。
この心電図電極31aと電気的に接続された測定データ送信器50から、測定データが
生体信号モニタ装置本体10に無線送信される。
この送信された測定データは、生体信号モニタ装置本体10内のA/D変換器32によ
りディジタル信号に変換されて、心拍出量演算手段40に取り込まれる。このようにして
、図10(a)に示すような心電図波形が得られる。
【0009】
一方、光電脈波検出センサ33は、図9に示すように、指など患者の末梢部に装着し、
例えば、SPO2測定等を行い、脈波伝播時間を得るものである。
この光電脈波検出センサ33は、測定データ送信器50と電気的に接続され、測定デー
タ送信器50は、生体信号モニタ装置本体10に測定データを無線送信する。
この測定データが、生体信号モニタ装置本体10内の脈波検出部34に送られることで
、患者の装着部位の脈波(光電脈波)が検出される。
脈波検出部34の出力は、A/D変換器35によりディジタル信号に変換されて、心拍
出量演算手段40に取り込まれる。
このようにして、図10(d)に示すような光電脈波の波形(末梢部の波形)が得られる。
【0010】
次に、式、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算処理を図11のフローチャートを用いて説明する。
但し、esCO は推定心拍出量、PWTTは脈波伝播時間、HRは心拍数、α,β,Kは患者固有の係数である。
図11は、初期値のαKを用いて、βKを校正で求めて、推定心拍出量esCOを演算する手順である。
・αKの初期値を読み込む。(ステップS31)
・PWTT及びHRを取得する。(ステップS32)
・次に、βKはあるか否かの判断をする。(ステップS33)
・ステップS33の判断がNOの場合には、校正用のCO値の入力要求を表示する。(ステップS34)
・校正用のCO値が入力されたか否かの判断をする。(ステップS35)
・ステップS35の判断でYESの場合には、入力されたCO値と、取得したPWTT及びHRを、CO1,PWTT1及びHR1としてレジスタに格納する。(ステップS36)
・βK=CO1/HR1−αK*PWTT1の式によりβKを求める。(ステップS37)
・求めたβKを用いて、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算する。(ステップS38)
・ステップS33の判断がYESの場合も同様に、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算する。(ステップS38)
・演算で求めたesCOを表示する。(ステップS39)
上記処理を逐次繰り返す。
【0011】
上記esCOから推定1回拍出量esSVを次式で求める。
esSV=esCO/HR
【0012】
上記esSVから1回拍出量変動(SVV)を以下の式から求める。
SVV=2*(esSVmax−esSVmin)/(esSVmax+esSVmin)
【0013】
・第2の方法は、1回拍出量と血圧の相関関係を利用して、患者の血圧の脈圧を測定して、1回拍出量の呼吸性変動を測定する方法である。(特許文献2参照)
特許文献2には、動脈拍動圧変動(PPV)を以下の式から求めている。
PPV=2*(PPmax−PPmin)/(PPmax+PPmin)
(式中、PPmaxが機械的呼吸サイクルあたりの最大の動脈拍動圧(PP)であり、PPminが機械的呼吸サイクルあたりの最小の動脈拍動圧(PP)である。)
【0014】
PPVは、不整脈なしの呼吸サイクルについて算出される。少なくとも3つの連続したPPV値の変動性(動脈拍動圧変動PPVの平均値で割った標準偏差として定義される。)は、予め決められた閾値(例えば、15%)よりも大きい場合、対応するPPV値は妥当でないとして血圧動態解析から除外される。)
【0015】
・第3の方法は、末梢の脈波の振幅と1回拍出量との相関関係を利用して、脈波の振幅の変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定するPAD(Pulse amplitude deviation)法である。(特許文献3参照)
特許文献3には、脈波振幅変動(PAV)を、容積脈波の最大振幅Pmax、最小振幅Pmin、平均振幅meanPから以下の式で求めている。
PAV=100*(Pmax−Pmin)/ meanP
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−312947号公報
【特許文献2】特開2007−203041号公報
【特許文献3】特開2004−105682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記第1の方法である、脈波伝播時間と1回拍出量との相関関係を利用して、脈波伝播時間変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定するものでは、ECGとパルスオキシメトリープレチスモグラムの測定分解能に対して、脈波伝播時間の測定分解能との間に差がある。
例えば、ECGの測定分解能は4msec、パルスオキシメトリープレチスモグラムの測定分解能は8msecとした場合、脈波伝播時間の測定分解能は3〜7msecであり、測定分解能は不十分である。したがって、その処理には、さらに時間分解能の高い、例えば1msec程度の測定分解能を有するA/Dコンバータを必要とする。
また、ECGとパルスオキシメトリープレチスモグラムを用いているため、アーチファクトの影響を受け易いという問題がある。
【0018】
上記第2の方法である、1回拍出量と血圧の相関関係を利用して、患者の血圧の脈圧を測定して、1回拍出量の呼吸性変動を測定する方法では、臨床において通常用いられている血圧値の最小分解能は1mmHg 程度でよく、それ程高い分解能が要求されていないのに対して、この方法では動脈カテーテルを用いて直接血圧測定を行っているため、ゼロバランスやフラッシュなどによって血圧波形測定の中断が頻繁に起こり得、その中断した箇所を解析から除外する必要があるという問題がある。
【0019】
上記第3の方法である、末梢の脈波の振幅と1回拍出量との相関関係を利用して、脈波の振幅の変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定するPAD(Pulse amplitude deviation)法では、脈波振幅は末梢循環や血管運動神経支配により大きく変動して、100倍以上のレンジで変化するため、低振幅脈波にて必要となる分解能を確保しつつ、高振幅脈波にも対応するためには、広いダイナミックレンジと、高い分解能を持ったA/Dコンバータが必要とする。
また、パルスオキシメトリープレチスモグラムは信号レベルが小さい上に、体表からの測定であるのでアーチファクトの影響を承け易いという問題がある。
【0020】
本発明の課題(目的)は、患者の輸液応答性を判断したり、人工呼吸の適切な設定を実行するために患者の1回拍出量の呼吸性変動を解析する装置におけるアーチファクト除去
を、高価な分解能を備えたA/Dコンバータの使用を必要とせずに、高精度にアーチファクトを除去できるアーチファクト除去方法、血液量測定装置及びアーチファクト除去プログラムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を達成する本発明の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法は、
1呼吸周期毎の1回拍出量変動(SVV)データを求めて第1のバッファにストアするステップと、
前記1呼吸周期毎に、前記第1のバッファから現在から過去に遡ってストアされているN1個の1回拍出量変動データを読み出して第2のバッファにストアするステップと、
前記第2のバッファに格納されたN1個の1回拍出量変動データから予め設定された上下限を越える1回拍出量変動データを除去して第3のバッファにストアするステップと、
前記第3のバッファにストアされた1回拍出量変動データの中間値からの各データの偏差値を求めて、予め設定された偏差値の上下限を越える1回拍出量変動データを除去したN2個の1回拍出量変動データを第4のバッファにストアするステップと、
前記N2/N1が予め定めた許容値以内か否かの判断をするステップと、
前記ステップの判断が許容値以内の場合のみ、前記第4のバッファにストアされた1回拍出量変動データに基づいて平均1回拍出量変動データを算出するステップと、
を含むことを特徴とする。これにより、分解能はほぼ1/√N2に向上することが見込まれる。
【0022】
また、前記SVVデータは、1回拍出量と脈波伝播時間との相関関係に基づいて患者の脈波伝播時間を測定して算出されることを特徴とする。
また、前記SVVデータは、
SVV=2*(esSVmax−esSVmin)/(esSVmax+esSVmin)
式で求めることを特徴とする。
【0023】
また、前記1回拍出量変動データは、1回拍出量と血圧との相関関係に基づいて患者の血圧の脈圧を測定して算出された動脈拍動圧変動(PPV)データであることを特徴とする。
また、前記PPVデータは、
PPV=2*(PPmax−PPmin)/(PPmax+PPmin)
式で求めることを特徴とする。
【0024】
また、前記1回拍出量変動データは、1回拍出量と脈波振幅との相関関係に基づいて患者の脈波振幅を測定して算出された脈波振幅変動(PAV)データであることを特徴とする。
また、前記PAVデータは、
PAV=100*(std(P)max−std(P)min)/ mean(std(P))
式で求めることを特徴とする。
【0025】
上記課題を達成する本発明の1回拍出量検出手段及び呼吸周期検出手段を備えた血液量測定装置は、
1呼吸周期毎の1回拍出量変動データをストアする第1のバッファと、
前記第1のバッファから読出した複数個の1回拍出量変動データをストアする複数の領域に分割された第2のバッファと、
前記1回拍出量変動データ間の演算を実行する制御部と、を備え、
前記制御部には、1呼吸周期毎に過去の所定呼吸数分に遡った所定数の前記1回拍出量変動データに含まれる異常値を削除する異常値除去演算手段と、
前記異常値削除後の1回拍出量変動データに含まれる過大偏差値を削除する過大偏差値削除演算手段と、
前記過大値削除後の1回拍出量変動データの数と前記所定数とを対比する対比手段と、
前記対比手段の対比結果が所定割合以上の場合にのみ、
前記過大値削除後の1回拍出量変動データに基づいた平均拍出量の演算を実行する平均拍出量演算手段と、を含むことを特徴とする。
【0026】
上記課題を達成する本発明の1回拍出量検出手段及び呼吸周期検出手段を備えた血液量測定装置における1回拍出量変動データのアーチファクト除去プログラムは、
請求項1〜7に記載の各ステップを前記血液量測定装置に搭載されたコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の構成によって、患者の輸液応答性を判断したり、人工呼吸の適切な設定を実行するために患者の1回拍出量の呼吸性変動の解析する装置におけるアーチファクト除去
を高価な分解能を備えたA/Dコンバータを使用を必要とせずに、高精度にアーチファクトの除去できるアーチファクト除去方法、血液量測定装置及びアーチファクト除去プログラムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の生体信号モニタ装置の一実施形態の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】患者の脈拍に同期した1回拍出量データ(esSV)を求めてリングバッファ0に順次ストアする処理を示すフローチャートである。
【図3】患者の1呼吸周期における1回拍出量変動データ(SVV)を求めてリングバッファ1に順次ストアする処理を示すフローチャートである。
【図4】脈波伝播時間と1回拍出量との相関関係を利用して脈波伝播時間変動から得た1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクトの除去処理を説明するフローチャートである。
【図5】脈波伝播時間と1回拍出量との相関関係を利用して脈波伝播時間変動から1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクト除去の処理結果を示す図である。
【図6】1回拍出量と血圧の相関関係を利用して、患者の血圧の脈圧を測定して、1回拍出量の呼吸性変動を測定する方法における1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクト除去の処理結果を示す図である。
【図7】末梢の脈波の振幅と1回拍出量との相関関係を利用して、脈波の振幅の変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定するPAD(Pulse amplitude deviation)法における1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクト除去の処理結果を示す図である。
【図8】従来の生体信号モニタ装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図9】図8の従来の生体信号モニタ装置による測定形態の一例を説明する模式図である。
【図10】図8の従来の生体信号モニタ装置で測定された各脈波の波形を示す図である。
【図11】図8の従来の生体信号モニタ装置におけるesCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の血液量測定方法を適用した生体信号モニタ装置の実施形態を、図面を参
照しながら詳細に説明する。図8〜図11に示したものと同じものは同一の符号を付す。図1は本発明の生体信号モニタ装置の一実施形態の構成を説明するためのブロック図である。
【0030】
収縮・拡張期血圧測定手段は、図1に示すように、カフ25、加圧ポンプ27、圧力セ
ンサ28、カフ圧検出部29、A/D変換器22等により構成されている。
【0031】
具体的には、カフ25を患者の上腕部に装着して測定を行う。このカフ25は、生体信
号モニタ装置本体内に設けられた排気弁26によってその内部が大気に対して開放または
閉塞される。また、カフ25には、生体信号モニタ装置本体内に設けられた加圧ポンプ2
7によって空気が供給される。生体信号モニタ装置本体内には圧力センサ28(カフ脈波
センサ)が取り付けられており、このセンサ出力がカフ圧検出部29によって検出される
。このカフ圧検出部29の出力は、A/D変換器22によってディジタル信号に変換され
、1回拍出量呼吸性変動測定装置40に取り込まれる。
【0032】
脈波伝播時間測定手段は、時間間隔検出基準点測定手段31、A/D変換器32、光電
脈波検出センサ33、脈波検出部34、A/D変換器35、等により構成されている。
【0033】
時間間隔検出基準点測定手段31は、心電図のR波の発生時点を検出するためのもので
あり、この検出部の出力は、A/D変換器32によりディジタル信号に変換されて、心拍
出量演算手段40に取り込まれる。この時間間隔検出基準点測定手段31は、被験者の胸
部に装着される心電図電極31a(心電図測定手段)からなる。この心電図電極31aと
電気的に接続された測定データ送信器50から、測定データが生体信号モニタ装置本体1
0に無線送信される。この送信された測定データは、生体信号モニタ装置本体10内のA
/D変換器32によりディジタル信号に変換されて、1回拍出量呼吸性変動測定装置40に取り込まれる。このようにして心電図波形が得られる。
【0034】
一方、光電脈波検出センサ33は、指など患者の末梢部に装着し、例えば、SpO2測定等を行い、脈波伝播時間を得るものである。この光電脈波検出センサ33は、測定データが、生体信号モニタ装置本体10内の脈波検出部34に送られることで、患者の装着部位の脈波(光電脈波)が検出される。
脈波検出部34の出力は、A/D変換器35によりディジタル信号に変換されて、心拍
出量演算手段40に取り込まれる。このようにして、光電脈波の波形(末梢部の波形)が
得られる。
【0035】
17−1は入力手段1であって、患者の酸素代謝量に関連する個人特定情報としての体表面積,年齢,性別を入力する手段である。
17−2は別の入力手段2であって、校正のタイミング入力をする手段である。
【0036】
また、1回拍出量呼吸性変動測定装置40には、心拍出量演算手段の他に本発明の特徴とする、患者の輸液応答性を判断したり、人工呼吸の適切な設定を実行するために患者の1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクトの除去に使用するための構成として、40−1のリングバッファ0,40−2のリングバッファ1、40−3のバッファ0,40−4のバッファ1,40−5のバッファ2,40−6のバッファ3に領域が分割されたバッファ及び40−7の演算手段(CPU)を備えている。
また、50は呼吸性変動測定装置である。
【0037】
次に、本発明のおける患者の輸液応答性を判断したり、人工呼吸の適切な設定を実行するための、患者の1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクトの除去方法を説明する。
【0038】
患者の脈拍に同期した1回拍出量データ(esSV)を求めてリングバッファ0に順次ストアする処理を図2のフローチャートを用いて説明する。
・図1における脈拍同期検出手段36で、脈拍同期を検出したか否かの判断をする。(ステップS1)
・ステップS1でYの場合、esSV(図 のesCOに相当)を算出してリングバッファ0にストアする(ステップS2)
上記ステップS1及びS2を脈拍同期検出の都度繰り返すことによって、リングバッファ0には、患者の脈拍同期検出時毎のesSVが連続して蓄積される。(なお、記憶媒体がリングバッファ構成であるので、このesSVデータ数が所定量を超えると古いデータに上書きされる。)
【0039】
患者の1呼吸周期における1回拍出量データ(SVV)を求めてリングバッファ1に順次ストアする処理を図3のフローチャートを用いて説明する。
・図1における呼吸性変動測定装置50で、呼気終末を検出したか否かの判断をする。(ステップS11)
・ステップS11でYの場合、直前の呼気終末時点から現在の呼気終末時点までの前記リングバッファ0にストアされているesSVを読み出してバッファ0にストアする。(ステップS12)
・バッファ0にストアされた1呼吸分のesSVデータに基づいて以下の式で
SVV=2*(esSVmax −esSVmin)/(esSVmax +esSVmin)
SVVを算出する。(ステップS13)
・ステップS13で算出したSVVをリングバッファ1にストアする(ステップS14)
上記ステップS11及びS14を1呼吸毎に度繰り返すことによって、リングバッファ1には、患者の1呼吸毎のSVVが連続して蓄積される。(なお、記憶媒体がリングバッファ構成であるので、このSVVデータ数が所定量を超えると古いデータに上書きされる。)
【0040】
次に、患者の1回拍出量の呼吸性変動の解析におけるアーチファクトの除去処理を図4のフローチャートを用いて説明する。
・図1における呼吸性変動測定装置50で、呼気終末を検出したか否かの判断をする。(ステップS21)
・ステップS21の判断でYの場合、リングバッファ1にSVVデータがN1個(例えば、N1=64個)以上ストアされているか否かを判断する。(ステップS22)
・ステップS22の判断でYの場合、リングバッファ1にストアされている現在から過去に遡ってN1個のSVVデータをバッファ1にストアする。
・バッファ1にストアされたN1個のSVVデータから異常値として予め設定された上下限値を超えるSVVデータを除いたSVVデータをバッファ2にストアする。(ステップS24)
・バッファ2にストアされたSVVデータの中間値を求めて、各SVVデータの中間値からの偏差を求める。求めた各SVVデータの偏差が予め定めた上下限を越えたSVVデータを除いてバッファ3にストアする。(ステップS25)
・バッファ3にストアされたSVVデータの数をN2とする。(ステップS26)
・N2/N1が予め定めた許容範囲以内であるか否かの判断をする。(ステップS27)
・ステップS27の判断でYの場合、バッファ3にストアされたSVVデータを平均して平均SVVデータ(avgSVV)を算出する。
・ステップS27の判断でNの場合、バッファ3にストアされたSVVデータからの平均SVVデータ(avgSVV)を算出はしない。
【0041】
なお、図2〜4のフローチャートの患者の1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクトの除去処理の説明は、脈波伝播時間と1回拍出量との相関関係を利用して脈波伝播時間変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定する場合を例として説明しているが、1回拍出量と血圧の相関関係を利用して、患者の血圧の脈圧を測定して、1回拍出量の呼吸性変動を測定する方法でも、末梢の脈波の振幅と1回拍出量との相関関係を利用して、脈波の振幅の変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定するPAD(Pulse amplitude deviation)法でも適用可能であることはいうまでもない。
【0042】
次に、図2〜4のフローチャートの患者の1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクトの除去処理における処理結果を図5〜図7に示す。
図5は、脈波伝播時間と1回拍出量との相関関係を利用して脈波伝播時間変動から1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクト除去の処理結果である。
【0043】
図5のグラフにおける設定値は以下のとおりである。
・ステップS22におけるN1は、N1=64
・ステップS24における異常上下限値は、上限値=0.45,下限値=0
・ステップS25における偏差上下限値は、偏差上限値=0.1,偏差下限値=−0.1
・ステップS27における許容平均割合は、許容平均割合=0.75
【0044】
図5(a)は呼吸周期毎に取得したSVVデータを表示したグラフである。
この個々のSVVデータは、リングバッファ1にストアされている。
【0045】
図5(b)は、ステップS24で異常上下限値を、上限値=0.45,下限値=0と設定して処理した結果SVV1を表示したグラフである。
この個々のSVV1データは、リングバッファ2にストアされている。
【0046】
図5(c)は、ステップS25〜ステップS28で偏差上下限値を、偏差上限値=0.1,偏差下限値=−0.1,許容平均割合=0.75と設定して処理した処理結果avgSVVを表示したグラフである。
【0047】
図6は、1回拍出量と血圧の相関関係を利用して、患者の血圧の脈圧を測定して、1回拍出量の呼吸性変動を測定する方法における1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクト除去の処理結果である。
【0048】
図6のグラフにおける設定値は以下のとおりである。
・ステップS22におけるN1は、N1=64
・ステップS24における異常上下限値は、上限値=0.45,下限値=0
・ステップS25における偏差上下限値は、偏差上限値=0.1,偏差下限値=−0.1
・ステップS27における許容平均割合は、許容平均割合=0.75
【0049】
図6(a)は呼吸周期毎に取得したPPVデータを表示したグラフである。
この個々のPPVデータは、リングバッファ1にストアされている。
【0050】
図6(b)は、ステップS24で異常上下限値を、上限値=0.45,下限値=0と設定して処理した結果PPV1を表示したグラフである。
この個々のPPV1データは、リングバッファ2にストアされている。
【0051】
図6(c)は、ステップS25〜ステップS28で偏差上下限値を、偏差上限値=0.1,偏差下限値=−0.1,許容平均割合=0.75と設定して処理した処理結果avgPPVを表示したグラフである。
【0052】
図7は、末梢の脈波の振幅と1回拍出量との相関関係を利用して、脈波の振幅の変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定するPAD(Pulse amplitude deviation)法における1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクト除去の処理結果である。
【0053】
図7のグラフにおける設定値は以下のとおりである。
・ステップS22におけるN1は、N1=64
・ステップS24における異常上下限値は、上限値=0.45,下限値=0
・ステップS25における偏差上下限値は、偏差上限値=0.1,偏差下限値=−0.1
・ステップS27における許容平均割合は、許容平均割合=0.75
【0054】
図7(a)は呼吸周期毎に取得したPAVデータを表示したグラフである。
この個々のPAVデータは、リングバッファ1にストアされている。
【0055】
図7(b)は、ステップS24で異常上下限値を、上限値=0.45,下限値=0と設定して処理した結果PAV1を表示したグラフである。
この個々のPAV1データは、リングバッファ2にストアされている。
【0056】
図7(c)は、ステップS25〜ステップS28で偏差上下限値を、偏差上限値=0.1,偏差下限値=−0.1,許容平均割合=0.75と設定して処理した処理結果avgPAVを表示したグラフである。
【0057】
図7(a)〜(c)に示す如く、本発明の1回拍出量の呼吸性変動の解析では、アーチファクトがより除去されていることが理解できる。
【符号の説明】
【0058】
17 :入力手段
20 :収縮・拡張期血圧測定手段
22 :A/D変換器
25 :カフ
26 :排気弁
27 :加圧ポンプ
28 :圧力センサ
29 :カフ圧検出部
30 :脈波伝播時間測定手段
31 :時間間隔検出基準点測定手段
32 :A/D変換器
33 :光電脈波検出センサ
34 :脈波検出部
35 :A/D変換器
36 :脈拍周期検出手段
40 :心拍出量演算手段
40−1 :リングバッファ0
40−2 :リングバッファ1
40−3 :バッファ0
40−4 :バッファ1
40−5 :バッファ2
40−6 :バッファ3
40−7 :CPU
41 :表示部
42 :アラーム
【技術分野】
【0001】
患者の輸液応答性を判断したり、人工呼吸の適切な設定を実行するために患者の1回拍出量の呼吸性変動を解析する装置におけるアーチファクト除去方法、血液量測定装置及びアーチファクト除去プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の患者の1回拍出量の呼吸性変動を解析する方法としては以下のものが知られており、また考えられている。
・第1の方法は、脈波伝播時間と1回拍出量との相関関係を利用して脈波伝播時間変動から1回拍出量を測定し(特許文献1参照)、得られた1回拍出量から呼吸性変動を解析するというものである。
【0003】
次に、特許文献1に記載の従来の生体信号モニタ装置を、図を参照しながら詳細に説明する。
図8は従来の生体信号モニタ装置の構成を説明するためのブロック図であり、図9は、従来の生体信号モニタ装置による測定形態の一例を説明する模式図である。
また、図10は、図8の従来の生体信号モニタ装置で測定された各脈波の波形を示す図である。
【0004】
収縮・拡張期血圧測定手段20は、図9に示すように、カフ25、加圧ポンプ27、圧
力センサ28、カフ圧検出部29、A/D変換器22等により構成されている。
【0005】
具体的には、図9に示すように、カフ25を患者の上腕部に装着して測定を行う。
このカフ25は、生体信号モニタ装置本体10内に設けられた排気弁26によってその
内部が大気に対して開放または閉塞される。
また、カフ25には、生体信号モニタ装置本体10内に設けられた加圧ポンプ27によ
って空気が供給される。
生体信号モニタ装置本体10内には圧力センサ28(カフ脈波センサ)が取り付けられ
ており、このセンサ出力がカフ圧検出部29によって検出される。
このカフ圧検出部29の出力は、A/D変換器22によってディジタル信号に変換され
、心拍出量演算手段40に取り込まれる(図9においては、カフ圧検出部29、A/D変
換器22、心拍出量演算手段40は、生体信号モニタ装置本体10内に含まれる)。
【0006】
図10(a)は心電図波形であり、心臓から出た直後の大動脈圧は、図6(b)に示すような波形となる。
また、図10(c)(d)に示すような末梢側動脈波形及び末梢脈波波形が得られる。
【0007】
脈波伝播時間測定手段30は、図8に示すように、時間間隔検出基準点測定手段31、A/D変換器32、光電脈波検出センサ33、脈波検出部34、A/D変換器35、等により構成されている。
【0008】
時間間隔検出基準点測定手段31は、心電図のR波の発生時点を検出するためのもので
あり、この検出部の出力は、A/D変換器32によりディジタル信号に変換されて、心拍
出量演算手段40に取り込まれる。
この時間間隔検出基準点測定手段31は、具体的には、図9に示すような、被験者の胸
部に装着される心電図電極31a(心電図測定手段)からなる。
この心電図電極31aと電気的に接続された測定データ送信器50から、測定データが
生体信号モニタ装置本体10に無線送信される。
この送信された測定データは、生体信号モニタ装置本体10内のA/D変換器32によ
りディジタル信号に変換されて、心拍出量演算手段40に取り込まれる。このようにして
、図10(a)に示すような心電図波形が得られる。
【0009】
一方、光電脈波検出センサ33は、図9に示すように、指など患者の末梢部に装着し、
例えば、SPO2測定等を行い、脈波伝播時間を得るものである。
この光電脈波検出センサ33は、測定データ送信器50と電気的に接続され、測定デー
タ送信器50は、生体信号モニタ装置本体10に測定データを無線送信する。
この測定データが、生体信号モニタ装置本体10内の脈波検出部34に送られることで
、患者の装着部位の脈波(光電脈波)が検出される。
脈波検出部34の出力は、A/D変換器35によりディジタル信号に変換されて、心拍
出量演算手段40に取り込まれる。
このようにして、図10(d)に示すような光電脈波の波形(末梢部の波形)が得られる。
【0010】
次に、式、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算処理を図11のフローチャートを用いて説明する。
但し、esCO は推定心拍出量、PWTTは脈波伝播時間、HRは心拍数、α,β,Kは患者固有の係数である。
図11は、初期値のαKを用いて、βKを校正で求めて、推定心拍出量esCOを演算する手順である。
・αKの初期値を読み込む。(ステップS31)
・PWTT及びHRを取得する。(ステップS32)
・次に、βKはあるか否かの判断をする。(ステップS33)
・ステップS33の判断がNOの場合には、校正用のCO値の入力要求を表示する。(ステップS34)
・校正用のCO値が入力されたか否かの判断をする。(ステップS35)
・ステップS35の判断でYESの場合には、入力されたCO値と、取得したPWTT及びHRを、CO1,PWTT1及びHR1としてレジスタに格納する。(ステップS36)
・βK=CO1/HR1−αK*PWTT1の式によりβKを求める。(ステップS37)
・求めたβKを用いて、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算する。(ステップS38)
・ステップS33の判断がYESの場合も同様に、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算する。(ステップS38)
・演算で求めたesCOを表示する。(ステップS39)
上記処理を逐次繰り返す。
【0011】
上記esCOから推定1回拍出量esSVを次式で求める。
esSV=esCO/HR
【0012】
上記esSVから1回拍出量変動(SVV)を以下の式から求める。
SVV=2*(esSVmax−esSVmin)/(esSVmax+esSVmin)
【0013】
・第2の方法は、1回拍出量と血圧の相関関係を利用して、患者の血圧の脈圧を測定して、1回拍出量の呼吸性変動を測定する方法である。(特許文献2参照)
特許文献2には、動脈拍動圧変動(PPV)を以下の式から求めている。
PPV=2*(PPmax−PPmin)/(PPmax+PPmin)
(式中、PPmaxが機械的呼吸サイクルあたりの最大の動脈拍動圧(PP)であり、PPminが機械的呼吸サイクルあたりの最小の動脈拍動圧(PP)である。)
【0014】
PPVは、不整脈なしの呼吸サイクルについて算出される。少なくとも3つの連続したPPV値の変動性(動脈拍動圧変動PPVの平均値で割った標準偏差として定義される。)は、予め決められた閾値(例えば、15%)よりも大きい場合、対応するPPV値は妥当でないとして血圧動態解析から除外される。)
【0015】
・第3の方法は、末梢の脈波の振幅と1回拍出量との相関関係を利用して、脈波の振幅の変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定するPAD(Pulse amplitude deviation)法である。(特許文献3参照)
特許文献3には、脈波振幅変動(PAV)を、容積脈波の最大振幅Pmax、最小振幅Pmin、平均振幅meanPから以下の式で求めている。
PAV=100*(Pmax−Pmin)/ meanP
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−312947号公報
【特許文献2】特開2007−203041号公報
【特許文献3】特開2004−105682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記第1の方法である、脈波伝播時間と1回拍出量との相関関係を利用して、脈波伝播時間変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定するものでは、ECGとパルスオキシメトリープレチスモグラムの測定分解能に対して、脈波伝播時間の測定分解能との間に差がある。
例えば、ECGの測定分解能は4msec、パルスオキシメトリープレチスモグラムの測定分解能は8msecとした場合、脈波伝播時間の測定分解能は3〜7msecであり、測定分解能は不十分である。したがって、その処理には、さらに時間分解能の高い、例えば1msec程度の測定分解能を有するA/Dコンバータを必要とする。
また、ECGとパルスオキシメトリープレチスモグラムを用いているため、アーチファクトの影響を受け易いという問題がある。
【0018】
上記第2の方法である、1回拍出量と血圧の相関関係を利用して、患者の血圧の脈圧を測定して、1回拍出量の呼吸性変動を測定する方法では、臨床において通常用いられている血圧値の最小分解能は1mmHg 程度でよく、それ程高い分解能が要求されていないのに対して、この方法では動脈カテーテルを用いて直接血圧測定を行っているため、ゼロバランスやフラッシュなどによって血圧波形測定の中断が頻繁に起こり得、その中断した箇所を解析から除外する必要があるという問題がある。
【0019】
上記第3の方法である、末梢の脈波の振幅と1回拍出量との相関関係を利用して、脈波の振幅の変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定するPAD(Pulse amplitude deviation)法では、脈波振幅は末梢循環や血管運動神経支配により大きく変動して、100倍以上のレンジで変化するため、低振幅脈波にて必要となる分解能を確保しつつ、高振幅脈波にも対応するためには、広いダイナミックレンジと、高い分解能を持ったA/Dコンバータが必要とする。
また、パルスオキシメトリープレチスモグラムは信号レベルが小さい上に、体表からの測定であるのでアーチファクトの影響を承け易いという問題がある。
【0020】
本発明の課題(目的)は、患者の輸液応答性を判断したり、人工呼吸の適切な設定を実行するために患者の1回拍出量の呼吸性変動を解析する装置におけるアーチファクト除去
を、高価な分解能を備えたA/Dコンバータの使用を必要とせずに、高精度にアーチファクトを除去できるアーチファクト除去方法、血液量測定装置及びアーチファクト除去プログラムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を達成する本発明の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法は、
1呼吸周期毎の1回拍出量変動(SVV)データを求めて第1のバッファにストアするステップと、
前記1呼吸周期毎に、前記第1のバッファから現在から過去に遡ってストアされているN1個の1回拍出量変動データを読み出して第2のバッファにストアするステップと、
前記第2のバッファに格納されたN1個の1回拍出量変動データから予め設定された上下限を越える1回拍出量変動データを除去して第3のバッファにストアするステップと、
前記第3のバッファにストアされた1回拍出量変動データの中間値からの各データの偏差値を求めて、予め設定された偏差値の上下限を越える1回拍出量変動データを除去したN2個の1回拍出量変動データを第4のバッファにストアするステップと、
前記N2/N1が予め定めた許容値以内か否かの判断をするステップと、
前記ステップの判断が許容値以内の場合のみ、前記第4のバッファにストアされた1回拍出量変動データに基づいて平均1回拍出量変動データを算出するステップと、
を含むことを特徴とする。これにより、分解能はほぼ1/√N2に向上することが見込まれる。
【0022】
また、前記SVVデータは、1回拍出量と脈波伝播時間との相関関係に基づいて患者の脈波伝播時間を測定して算出されることを特徴とする。
また、前記SVVデータは、
SVV=2*(esSVmax−esSVmin)/(esSVmax+esSVmin)
式で求めることを特徴とする。
【0023】
また、前記1回拍出量変動データは、1回拍出量と血圧との相関関係に基づいて患者の血圧の脈圧を測定して算出された動脈拍動圧変動(PPV)データであることを特徴とする。
また、前記PPVデータは、
PPV=2*(PPmax−PPmin)/(PPmax+PPmin)
式で求めることを特徴とする。
【0024】
また、前記1回拍出量変動データは、1回拍出量と脈波振幅との相関関係に基づいて患者の脈波振幅を測定して算出された脈波振幅変動(PAV)データであることを特徴とする。
また、前記PAVデータは、
PAV=100*(std(P)max−std(P)min)/ mean(std(P))
式で求めることを特徴とする。
【0025】
上記課題を達成する本発明の1回拍出量検出手段及び呼吸周期検出手段を備えた血液量測定装置は、
1呼吸周期毎の1回拍出量変動データをストアする第1のバッファと、
前記第1のバッファから読出した複数個の1回拍出量変動データをストアする複数の領域に分割された第2のバッファと、
前記1回拍出量変動データ間の演算を実行する制御部と、を備え、
前記制御部には、1呼吸周期毎に過去の所定呼吸数分に遡った所定数の前記1回拍出量変動データに含まれる異常値を削除する異常値除去演算手段と、
前記異常値削除後の1回拍出量変動データに含まれる過大偏差値を削除する過大偏差値削除演算手段と、
前記過大値削除後の1回拍出量変動データの数と前記所定数とを対比する対比手段と、
前記対比手段の対比結果が所定割合以上の場合にのみ、
前記過大値削除後の1回拍出量変動データに基づいた平均拍出量の演算を実行する平均拍出量演算手段と、を含むことを特徴とする。
【0026】
上記課題を達成する本発明の1回拍出量検出手段及び呼吸周期検出手段を備えた血液量測定装置における1回拍出量変動データのアーチファクト除去プログラムは、
請求項1〜7に記載の各ステップを前記血液量測定装置に搭載されたコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の構成によって、患者の輸液応答性を判断したり、人工呼吸の適切な設定を実行するために患者の1回拍出量の呼吸性変動の解析する装置におけるアーチファクト除去
を高価な分解能を備えたA/Dコンバータを使用を必要とせずに、高精度にアーチファクトの除去できるアーチファクト除去方法、血液量測定装置及びアーチファクト除去プログラムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の生体信号モニタ装置の一実施形態の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】患者の脈拍に同期した1回拍出量データ(esSV)を求めてリングバッファ0に順次ストアする処理を示すフローチャートである。
【図3】患者の1呼吸周期における1回拍出量変動データ(SVV)を求めてリングバッファ1に順次ストアする処理を示すフローチャートである。
【図4】脈波伝播時間と1回拍出量との相関関係を利用して脈波伝播時間変動から得た1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクトの除去処理を説明するフローチャートである。
【図5】脈波伝播時間と1回拍出量との相関関係を利用して脈波伝播時間変動から1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクト除去の処理結果を示す図である。
【図6】1回拍出量と血圧の相関関係を利用して、患者の血圧の脈圧を測定して、1回拍出量の呼吸性変動を測定する方法における1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクト除去の処理結果を示す図である。
【図7】末梢の脈波の振幅と1回拍出量との相関関係を利用して、脈波の振幅の変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定するPAD(Pulse amplitude deviation)法における1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクト除去の処理結果を示す図である。
【図8】従来の生体信号モニタ装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図9】図8の従来の生体信号モニタ装置による測定形態の一例を説明する模式図である。
【図10】図8の従来の生体信号モニタ装置で測定された各脈波の波形を示す図である。
【図11】図8の従来の生体信号モニタ装置におけるesCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の血液量測定方法を適用した生体信号モニタ装置の実施形態を、図面を参
照しながら詳細に説明する。図8〜図11に示したものと同じものは同一の符号を付す。図1は本発明の生体信号モニタ装置の一実施形態の構成を説明するためのブロック図である。
【0030】
収縮・拡張期血圧測定手段は、図1に示すように、カフ25、加圧ポンプ27、圧力セ
ンサ28、カフ圧検出部29、A/D変換器22等により構成されている。
【0031】
具体的には、カフ25を患者の上腕部に装着して測定を行う。このカフ25は、生体信
号モニタ装置本体内に設けられた排気弁26によってその内部が大気に対して開放または
閉塞される。また、カフ25には、生体信号モニタ装置本体内に設けられた加圧ポンプ2
7によって空気が供給される。生体信号モニタ装置本体内には圧力センサ28(カフ脈波
センサ)が取り付けられており、このセンサ出力がカフ圧検出部29によって検出される
。このカフ圧検出部29の出力は、A/D変換器22によってディジタル信号に変換され
、1回拍出量呼吸性変動測定装置40に取り込まれる。
【0032】
脈波伝播時間測定手段は、時間間隔検出基準点測定手段31、A/D変換器32、光電
脈波検出センサ33、脈波検出部34、A/D変換器35、等により構成されている。
【0033】
時間間隔検出基準点測定手段31は、心電図のR波の発生時点を検出するためのもので
あり、この検出部の出力は、A/D変換器32によりディジタル信号に変換されて、心拍
出量演算手段40に取り込まれる。この時間間隔検出基準点測定手段31は、被験者の胸
部に装着される心電図電極31a(心電図測定手段)からなる。この心電図電極31aと
電気的に接続された測定データ送信器50から、測定データが生体信号モニタ装置本体1
0に無線送信される。この送信された測定データは、生体信号モニタ装置本体10内のA
/D変換器32によりディジタル信号に変換されて、1回拍出量呼吸性変動測定装置40に取り込まれる。このようにして心電図波形が得られる。
【0034】
一方、光電脈波検出センサ33は、指など患者の末梢部に装着し、例えば、SpO2測定等を行い、脈波伝播時間を得るものである。この光電脈波検出センサ33は、測定データが、生体信号モニタ装置本体10内の脈波検出部34に送られることで、患者の装着部位の脈波(光電脈波)が検出される。
脈波検出部34の出力は、A/D変換器35によりディジタル信号に変換されて、心拍
出量演算手段40に取り込まれる。このようにして、光電脈波の波形(末梢部の波形)が
得られる。
【0035】
17−1は入力手段1であって、患者の酸素代謝量に関連する個人特定情報としての体表面積,年齢,性別を入力する手段である。
17−2は別の入力手段2であって、校正のタイミング入力をする手段である。
【0036】
また、1回拍出量呼吸性変動測定装置40には、心拍出量演算手段の他に本発明の特徴とする、患者の輸液応答性を判断したり、人工呼吸の適切な設定を実行するために患者の1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクトの除去に使用するための構成として、40−1のリングバッファ0,40−2のリングバッファ1、40−3のバッファ0,40−4のバッファ1,40−5のバッファ2,40−6のバッファ3に領域が分割されたバッファ及び40−7の演算手段(CPU)を備えている。
また、50は呼吸性変動測定装置である。
【0037】
次に、本発明のおける患者の輸液応答性を判断したり、人工呼吸の適切な設定を実行するための、患者の1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクトの除去方法を説明する。
【0038】
患者の脈拍に同期した1回拍出量データ(esSV)を求めてリングバッファ0に順次ストアする処理を図2のフローチャートを用いて説明する。
・図1における脈拍同期検出手段36で、脈拍同期を検出したか否かの判断をする。(ステップS1)
・ステップS1でYの場合、esSV(図 のesCOに相当)を算出してリングバッファ0にストアする(ステップS2)
上記ステップS1及びS2を脈拍同期検出の都度繰り返すことによって、リングバッファ0には、患者の脈拍同期検出時毎のesSVが連続して蓄積される。(なお、記憶媒体がリングバッファ構成であるので、このesSVデータ数が所定量を超えると古いデータに上書きされる。)
【0039】
患者の1呼吸周期における1回拍出量データ(SVV)を求めてリングバッファ1に順次ストアする処理を図3のフローチャートを用いて説明する。
・図1における呼吸性変動測定装置50で、呼気終末を検出したか否かの判断をする。(ステップS11)
・ステップS11でYの場合、直前の呼気終末時点から現在の呼気終末時点までの前記リングバッファ0にストアされているesSVを読み出してバッファ0にストアする。(ステップS12)
・バッファ0にストアされた1呼吸分のesSVデータに基づいて以下の式で
SVV=2*(esSVmax −esSVmin)/(esSVmax +esSVmin)
SVVを算出する。(ステップS13)
・ステップS13で算出したSVVをリングバッファ1にストアする(ステップS14)
上記ステップS11及びS14を1呼吸毎に度繰り返すことによって、リングバッファ1には、患者の1呼吸毎のSVVが連続して蓄積される。(なお、記憶媒体がリングバッファ構成であるので、このSVVデータ数が所定量を超えると古いデータに上書きされる。)
【0040】
次に、患者の1回拍出量の呼吸性変動の解析におけるアーチファクトの除去処理を図4のフローチャートを用いて説明する。
・図1における呼吸性変動測定装置50で、呼気終末を検出したか否かの判断をする。(ステップS21)
・ステップS21の判断でYの場合、リングバッファ1にSVVデータがN1個(例えば、N1=64個)以上ストアされているか否かを判断する。(ステップS22)
・ステップS22の判断でYの場合、リングバッファ1にストアされている現在から過去に遡ってN1個のSVVデータをバッファ1にストアする。
・バッファ1にストアされたN1個のSVVデータから異常値として予め設定された上下限値を超えるSVVデータを除いたSVVデータをバッファ2にストアする。(ステップS24)
・バッファ2にストアされたSVVデータの中間値を求めて、各SVVデータの中間値からの偏差を求める。求めた各SVVデータの偏差が予め定めた上下限を越えたSVVデータを除いてバッファ3にストアする。(ステップS25)
・バッファ3にストアされたSVVデータの数をN2とする。(ステップS26)
・N2/N1が予め定めた許容範囲以内であるか否かの判断をする。(ステップS27)
・ステップS27の判断でYの場合、バッファ3にストアされたSVVデータを平均して平均SVVデータ(avgSVV)を算出する。
・ステップS27の判断でNの場合、バッファ3にストアされたSVVデータからの平均SVVデータ(avgSVV)を算出はしない。
【0041】
なお、図2〜4のフローチャートの患者の1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクトの除去処理の説明は、脈波伝播時間と1回拍出量との相関関係を利用して脈波伝播時間変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定する場合を例として説明しているが、1回拍出量と血圧の相関関係を利用して、患者の血圧の脈圧を測定して、1回拍出量の呼吸性変動を測定する方法でも、末梢の脈波の振幅と1回拍出量との相関関係を利用して、脈波の振幅の変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定するPAD(Pulse amplitude deviation)法でも適用可能であることはいうまでもない。
【0042】
次に、図2〜4のフローチャートの患者の1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクトの除去処理における処理結果を図5〜図7に示す。
図5は、脈波伝播時間と1回拍出量との相関関係を利用して脈波伝播時間変動から1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクト除去の処理結果である。
【0043】
図5のグラフにおける設定値は以下のとおりである。
・ステップS22におけるN1は、N1=64
・ステップS24における異常上下限値は、上限値=0.45,下限値=0
・ステップS25における偏差上下限値は、偏差上限値=0.1,偏差下限値=−0.1
・ステップS27における許容平均割合は、許容平均割合=0.75
【0044】
図5(a)は呼吸周期毎に取得したSVVデータを表示したグラフである。
この個々のSVVデータは、リングバッファ1にストアされている。
【0045】
図5(b)は、ステップS24で異常上下限値を、上限値=0.45,下限値=0と設定して処理した結果SVV1を表示したグラフである。
この個々のSVV1データは、リングバッファ2にストアされている。
【0046】
図5(c)は、ステップS25〜ステップS28で偏差上下限値を、偏差上限値=0.1,偏差下限値=−0.1,許容平均割合=0.75と設定して処理した処理結果avgSVVを表示したグラフである。
【0047】
図6は、1回拍出量と血圧の相関関係を利用して、患者の血圧の脈圧を測定して、1回拍出量の呼吸性変動を測定する方法における1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクト除去の処理結果である。
【0048】
図6のグラフにおける設定値は以下のとおりである。
・ステップS22におけるN1は、N1=64
・ステップS24における異常上下限値は、上限値=0.45,下限値=0
・ステップS25における偏差上下限値は、偏差上限値=0.1,偏差下限値=−0.1
・ステップS27における許容平均割合は、許容平均割合=0.75
【0049】
図6(a)は呼吸周期毎に取得したPPVデータを表示したグラフである。
この個々のPPVデータは、リングバッファ1にストアされている。
【0050】
図6(b)は、ステップS24で異常上下限値を、上限値=0.45,下限値=0と設定して処理した結果PPV1を表示したグラフである。
この個々のPPV1データは、リングバッファ2にストアされている。
【0051】
図6(c)は、ステップS25〜ステップS28で偏差上下限値を、偏差上限値=0.1,偏差下限値=−0.1,許容平均割合=0.75と設定して処理した処理結果avgPPVを表示したグラフである。
【0052】
図7は、末梢の脈波の振幅と1回拍出量との相関関係を利用して、脈波の振幅の変動から1回拍出量の呼吸性変動を測定するPAD(Pulse amplitude deviation)法における1回拍出量の呼吸性変動の解析においてアーチファクト除去の処理結果である。
【0053】
図7のグラフにおける設定値は以下のとおりである。
・ステップS22におけるN1は、N1=64
・ステップS24における異常上下限値は、上限値=0.45,下限値=0
・ステップS25における偏差上下限値は、偏差上限値=0.1,偏差下限値=−0.1
・ステップS27における許容平均割合は、許容平均割合=0.75
【0054】
図7(a)は呼吸周期毎に取得したPAVデータを表示したグラフである。
この個々のPAVデータは、リングバッファ1にストアされている。
【0055】
図7(b)は、ステップS24で異常上下限値を、上限値=0.45,下限値=0と設定して処理した結果PAV1を表示したグラフである。
この個々のPAV1データは、リングバッファ2にストアされている。
【0056】
図7(c)は、ステップS25〜ステップS28で偏差上下限値を、偏差上限値=0.1,偏差下限値=−0.1,許容平均割合=0.75と設定して処理した処理結果avgPAVを表示したグラフである。
【0057】
図7(a)〜(c)に示す如く、本発明の1回拍出量の呼吸性変動の解析では、アーチファクトがより除去されていることが理解できる。
【符号の説明】
【0058】
17 :入力手段
20 :収縮・拡張期血圧測定手段
22 :A/D変換器
25 :カフ
26 :排気弁
27 :加圧ポンプ
28 :圧力センサ
29 :カフ圧検出部
30 :脈波伝播時間測定手段
31 :時間間隔検出基準点測定手段
32 :A/D変換器
33 :光電脈波検出センサ
34 :脈波検出部
35 :A/D変換器
36 :脈拍周期検出手段
40 :心拍出量演算手段
40−1 :リングバッファ0
40−2 :リングバッファ1
40−3 :バッファ0
40−4 :バッファ1
40−5 :バッファ2
40−6 :バッファ3
40−7 :CPU
41 :表示部
42 :アラーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1呼吸周期毎の1回拍出量変動(SVV)データを求めて第1のバッファにストアするステップと、
前記1呼吸周期毎に、前記第1のバッファから現在から過去に遡ってストアされているN1個の1回拍出量変動データを読み出して第2のバッファにストアするステップと、
前記第2のバッファに格納されたN1個の1回拍出量変動データから予め設定された上下限を越える1回拍出量変動データを除去して第3のバッファにストアするステップと、
前記第3のバッファにストアされた1回拍出量変動データの中間値からの各データの偏差値を求めて、予め設定された偏差値の上下限を越える1回拍出量変動データを除去したN2個の1回拍出量変動データを第4のバッファにストアするステップと、
前記N2/N1が予め定めた許容値以内か否かの判断をするステップと、
前記ステップの判断が許容値以内の場合のみ、前記第4のバッファにストアされた1回拍出量変動データに基づいて平均1回拍出量変動データを算出するステップと、
を含むことを特徴とする1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項2】
前記SVVデータは、
1回拍出量と脈波伝播時間との相関関係に基づいて患者の脈波伝播時間を測定して算出されることを特徴とする請求項1に記載の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項3】
前記SVVデータは、
SVV=2*(esSVmax−esSVmin)/(esSVmax+esSVmin)
式で求めることを特徴とする請求項2に記載の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項4】
前記1回拍出量変動データは、
1回拍出量と血圧との相関関係に基づいて患者の血圧の脈圧を測定して算出された動脈拍動圧変動(PPV)データであることを特徴とする請求項1に記載の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項5】
前記PPVデータは、
PPV=2*(PPmax−PPmin)/(PPmax+PPmin)
式で求めることを特徴とする請求項4に記載の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項6】
前記1回拍出量変動データは、
1回拍出量と脈波振幅との相関関係に基づいて患者の脈波振幅を測定して算出された脈波振幅変動(PAV)データであることを特徴とする請求項1に記載の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項7】
前記PAVデータは、
PAV=100*(std(P)max−std(P)min)/ mean(std(P))
式で求めることを特徴とする請求項6に記載の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項8】
1回拍出量検出手段及び呼吸周期検出手段を備えた血液量測定装置であって、
1呼吸周期毎の1回拍出量データをストアする第1のバッファと、
前記第1のバッファから読出した複数個の1回拍出量変動データをストアする複数の領域に分割された第2のバッファと、
前記1回拍出量変動データ間の演算を実行する制御部と、
を備え、
前記制御部には、1呼吸周期毎に過去の所定呼吸数分に遡った所定数の前記1回拍出量変動データに含まれる異常値を削除する異常値除去演算手段と、
前記異常値削除後の1回拍出量変動データに含まれる過大偏差値を削除する過大偏差値削除演算手段と、
前記過大偏差値削除後の1回拍出量変動データの数と前記所定数とを対比する対比手段と、
前記対比手段の対比結果が所定割合以上の場合にのみ、
前記過大偏差値削除後の1回拍出量変動データに基づいた平均拍出量の演算を実行する平均拍出量演算手段と、
を含むことを特徴とする血液量測定装置。
【請求項9】
1回拍出量検出手段及び呼吸周期検出手段を備えた血液量測定装置における1回拍出量変動データのアーチファクト除去プログラムであって、
請求項1〜7に記載の各ステップを前記血液量測定装置に搭載されたコンピュータに実行させることを特徴とするアーチファクト除去プログラム。
【請求項1】
1呼吸周期毎の1回拍出量変動(SVV)データを求めて第1のバッファにストアするステップと、
前記1呼吸周期毎に、前記第1のバッファから現在から過去に遡ってストアされているN1個の1回拍出量変動データを読み出して第2のバッファにストアするステップと、
前記第2のバッファに格納されたN1個の1回拍出量変動データから予め設定された上下限を越える1回拍出量変動データを除去して第3のバッファにストアするステップと、
前記第3のバッファにストアされた1回拍出量変動データの中間値からの各データの偏差値を求めて、予め設定された偏差値の上下限を越える1回拍出量変動データを除去したN2個の1回拍出量変動データを第4のバッファにストアするステップと、
前記N2/N1が予め定めた許容値以内か否かの判断をするステップと、
前記ステップの判断が許容値以内の場合のみ、前記第4のバッファにストアされた1回拍出量変動データに基づいて平均1回拍出量変動データを算出するステップと、
を含むことを特徴とする1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項2】
前記SVVデータは、
1回拍出量と脈波伝播時間との相関関係に基づいて患者の脈波伝播時間を測定して算出されることを特徴とする請求項1に記載の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項3】
前記SVVデータは、
SVV=2*(esSVmax−esSVmin)/(esSVmax+esSVmin)
式で求めることを特徴とする請求項2に記載の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項4】
前記1回拍出量変動データは、
1回拍出量と血圧との相関関係に基づいて患者の血圧の脈圧を測定して算出された動脈拍動圧変動(PPV)データであることを特徴とする請求項1に記載の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項5】
前記PPVデータは、
PPV=2*(PPmax−PPmin)/(PPmax+PPmin)
式で求めることを特徴とする請求項4に記載の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項6】
前記1回拍出量変動データは、
1回拍出量と脈波振幅との相関関係に基づいて患者の脈波振幅を測定して算出された脈波振幅変動(PAV)データであることを特徴とする請求項1に記載の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項7】
前記PAVデータは、
PAV=100*(std(P)max−std(P)min)/ mean(std(P))
式で求めることを特徴とする請求項6に記載の1回拍出量変動データのアーチファクト除去方法。
【請求項8】
1回拍出量検出手段及び呼吸周期検出手段を備えた血液量測定装置であって、
1呼吸周期毎の1回拍出量データをストアする第1のバッファと、
前記第1のバッファから読出した複数個の1回拍出量変動データをストアする複数の領域に分割された第2のバッファと、
前記1回拍出量変動データ間の演算を実行する制御部と、
を備え、
前記制御部には、1呼吸周期毎に過去の所定呼吸数分に遡った所定数の前記1回拍出量変動データに含まれる異常値を削除する異常値除去演算手段と、
前記異常値削除後の1回拍出量変動データに含まれる過大偏差値を削除する過大偏差値削除演算手段と、
前記過大偏差値削除後の1回拍出量変動データの数と前記所定数とを対比する対比手段と、
前記対比手段の対比結果が所定割合以上の場合にのみ、
前記過大偏差値削除後の1回拍出量変動データに基づいた平均拍出量の演算を実行する平均拍出量演算手段と、
を含むことを特徴とする血液量測定装置。
【請求項9】
1回拍出量検出手段及び呼吸周期検出手段を備えた血液量測定装置における1回拍出量変動データのアーチファクト除去プログラムであって、
請求項1〜7に記載の各ステップを前記血液量測定装置に搭載されたコンピュータに実行させることを特徴とするアーチファクト除去プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−55961(P2011−55961A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207446(P2009−207446)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
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