説明

1成分の水分硬化性シーラントおよびその作製方法

1成分の水分硬化性シーラント組成物およびこれを作製する方法が提供される。上記組成物は、シラン末端化ポリチオエーテル成分および触媒を含む。上記シラン末端化ポリチオエーテル成分および触媒は、硬化を妨げるために水分から隔離される。上記組成物は、周囲温度において硬化に対しておよび水分を実質的に含まない条件下で安定である。上記組成物が基材に適用され、水分に曝される場合、上記組成物は硬化して、シーラントを形成する。シーラント組成物を作製する方法は、メルカプト末端化ポリチオエーテルと、シラン基を有する化合物とを反応させて、シラン末端化ポリチオエーテルを形成する工程を包含する。次いで、上記シラン末端化ポリチオエーテルは、触媒と合わせられ、硬化を妨げるために水分から隔離される。最後に、上記組成物は、基材に適用され、水分に曝され、このことから、上記組成物が硬化して、シーラントを形成することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、航空宇宙適用および他の適用において使用するためのシーラントに関する。より具体的には、本発明は、1成分の水分硬化性シーラントに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
航空宇宙適用および他の適用において有用なシーラントは、予備混合凍結組成物(pre−mixed frozen composition)(PMF)および2成分システムへと分類され得る。2成分システムにおいて、第1の成分は、多くのさらなる材料と一緒に、主なポリマー(例えば、ポリスルフィドポリマー)を含む。上記第1の成分は、硬化剤を含まず、上記硬化剤は、代わりに第2の成分中にある。上記2成分は、製造され、別個にパッケージされ、使用直前に一緒に混合される。
【0003】
上記硬化ペーストおよび上記基剤を使用前に混合することを必要とする2成分システムとは異なり、PMFは、外部因子(例えば、温度)によって硬化され得る。この理由のために、PMFは、例えば、−40°F〜−80°Fで、上記硬化反応を抑制するかもしくは遅くするために、凍結されねばならない。上記PMFが、後に室温にされる場合、上記硬化速度は、顕著に増大する。PMFは、混合することなく直ぐ使用できるという利便性を提供し、従って、特定の2成分システムよりコスト効率的かつ時間効率的である。しかし、既存のPMFは、制限された貯蔵寿命を有し、−40°F〜−80°Fという非常に低温での貯蔵を必要とする。実際に、既存のPMFは、上記基剤成分および活性化因子を混合し、続いて、上記硬化反応を遅らせるために直ぐに凍結することを必要とする。さらに、上記PMFは、硬化を遅らせるために使用する前に、凍結温度で貯蔵されなければならない。凍結の必要性は、少なくともさらなる労働力および装備において、かなりの製造コストを付加する。さらに、上記組成物は、輸送され、さらに高いコストを付加する低い凍結温度(すなわち、−40°F〜−80°F)で貯蔵されなければならない。また、上記組成物を凍結することは、上記硬化反応を遅らせるに過ぎないので、上記PMFは、制限された貯蔵寿命を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明の一実施形態によれば、1成分の水分硬化性シーラント組成物は、シラン末端化ポリチオエーテル成分、充填剤、および触媒を含む。上記シラン末端化ポリチオエーテル成分、充填剤および触媒は、合わせられ、硬化を実質的に妨げるために、水分シールされた容器(a moisture sealed container)の中にパッケージされる。上記組成物は、水分を実質的に含まない条件下で、および周囲温度で安定である。上記水分シールされた容器がシールされず、上記組成物が水分に曝される場合、上記水分は、上記組成物の硬化を促進して、シーラントを形成する。
【0005】
本発明の一実施形態によれば、1成分の水分硬化性シーラント組成物を調製する方法は、メルカプト末端化ポリチオエーテルと、シラン基を有する化合物とを反応させて、シラン末端化ポリチオエーテルを形成する工程を包含する。次いで、上記シラン末端化ポリチオエーテルは、充填剤および触媒と合わせられ、硬化を妨げるために水分から隔離される。最後に、上記組成物は、基材に適用され、適用の際に、上記組成物は、水分に曝され、硬化して、シーラントを形成することが可能になる。
【0006】
本発明の実施形態は、それらが凍結および低温での貯蔵を必要とせず、長期化した貯蔵寿命を有するという追加の利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明の例示的な一実施形態において、1成分の水分硬化性シーラント組成物は、シラン末端化ポリチオエーテル成分、充填剤、および触媒を含む。上記シラン末端化ポリチオエーテル成分、充填剤および触媒は、合わせられ、硬化を実質的に妨げるために、水分シールされた容器の中にパッケージされる。上記組成物は、水分を実質的に含まない条件下で、および周囲温度で安定である。本明細書で記載される場合、「水分を含まない」および「実質的に水分を含まない」とは、上記組成物がいくらかの水分を含み得るが、水分の量は、上記組成物の実質的な硬化をもたらすには十分でないことを意味する。上記水分シールされた容器がシールされておらず、上記組成物が基材に適用される場合、上記組成物は、水分に曝され、このことは、上記組成物の硬化を促進して、多くの適用(航空宇宙適用および類似の適用が挙げられるが、これらに限定されない)において有用なシーラントを形成する。
【0008】
上記シラン末端化ポリチオエーテル成分は、縮合可能でもある加水分解可能な基で末端化された任意のシラン末端化ポリチオエーテルであり得る。上記シラン末端化ポリチオエーテル成分は、単一のシラン末端化ポリチオエーテルであってもよいし、シラン末端化ポリチオエーテルの組み合わせであってもよい。上記シラン末端基としては、Si原子に結合した加水分解可能かつ縮合可能な基が挙げられる。上記シラン基のSi原子への結合に適した加水分解可能な基の非限定的例としては、アルコキシ基などが挙げられる。
【0009】
本発明の実施形態によれば、シラン末端化ポリチオエーテルは、メルカプト末端化ポリチオエーテルと、シラン基を有する化合物とを反応させることによって調製され得る。任意の適切なメルカプト末端化ポリチオエーテルが、使用され得る。本明細書で使用される場合、「ポリチオエーテル」とは、S原子を含むが、S−S結合を含まない骨格を有するポリマー(すなわち、上記ポリマー骨格は、−C−S−C−連結を有する)に言及する。シラン基を有する適切な化合物の非限定的例としては、シラン末端化ビニル化合物、シラン末端化イソシアネート化合物、およびシラン末端化エポキシ化合物が挙げられる。
【0010】
有用なメルカプト末端化ポリチオエーテルは、ジビニルエーテルもしくはジビニルエーテルの混合物と、過剰なジチオールもしくはジチオールの混合物とを反応させることによって生成され得る。いくつかの例示的実施形態において、上記シラン末端化ポリチオエーテルを作製するために上記反応において使用される上記メルカプト末端化ポリチオエーテルは、以下の式(1)によって表されるメルカプト末端化ポリチオエーテルであり得る。本発明の形成において有用なメルカプト末端化ポリチオエーテルは、少なくとも2個の末端メルカプト官能基を有する。
【0011】
H−[S−R−S−(CH−O−(−R−O−)−(CH−]−S−R−SH (1)
式1において、Rは、C〜C10 n−アルキレン基、C〜C分枝状アルキレン基、C〜Cシクロアルキレン基、C〜C10アルキルシクロアルキレン基(alkylcyloalkylene group)、複素環式基、−[(−CH−X]−(CH−基、および−[(−CH−X]−(−CH−基から選択され得、ここで少なくとも1個の−CH−ユニットは、メチル基で置換される。Rは、C〜C10 n−アルキレン基、C〜C分枝状アルキレン基、C〜Cシクロアルキレン基、C〜C14アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、および−[(−CH−X]−(CH−基から選択され得る。Xは、O原子、S原子、および−NR−基から選択され得る。Rは、H原子およびメチル基から選択され得る。また、式1において、mは、1〜50の範囲の整数であり、nは、1〜60の範囲の整数であり、pは、2〜6の範囲の整数であり、qは、1〜5の範囲の整数であり、rは、2〜10の範囲の整数である。一実施形態において、例えば、Rは、C〜Cアルキル基であり、Rは、C〜Cアルキル基である。
【0012】
例示的実施形態において、上記メルカプト末端化ポリチオエーテル成分は、式1のメルカプト末端化ポリチオエーテルによって表され得、ここでRは、−[(−CH−X]−(−CH−であり、pは2であり、XはO原子であり、qは2であり、rは2であり、Rは、エチレン基であり、mは2であり、そしてnは9である。上記メルカプト末端化ポリチオエーテルの代替の実施形態において、mは1であり、Rはn−ブチレンであり、Rは、エチレンでもn−プロピレンでもない。上記メルカプト末端化ポリチオエーテルの別の実施形態において、mは1であり、pは2であり、qは2であり、rは2であり、Rはエチレンであり、XはO原子ではない。
【0013】
適切なメルカプト末端化ポリチオエーテル化合物のさらなる非限定的例としては、米国特許第6,509,418号(Zookら、その全内容は、本明細書に参考として援用される)に開示されるものが挙げられる。
【0014】
本発明の実施形態によれば、上記メルカプト末端化ポリチオエーテルは、シラン基を有する化合物と反応させられて、シラン末端化ポリチオエーテル成分を作り出す。シラン基を有する適切な化合物の非限定的例としては、シラン末端化ビニル化合物、シラン末端化イソシアネート化合物、およびシラン末端化エポキシ化合物が挙げられる。上記シラン基は、上記Si原子に結合した加水分解可能な基を含む。特に、上記シラン基は、−Si(Y)によって表され得、ここでYは、加水分解可能かつ縮合可能な官能基であり、aおよびbの各々は、1〜3の範囲であり、a+bは、3である。適切な加水分解可能かつ縮合可能な基の非限定的例としては、アルコキシ基などが挙げられる。
【0015】
シラン基を有する適切な化合物の非限定的例としては、ZRSi(Y)によって表される化合物が挙げられ、ここでRは、任意の適切な有機鎖であり得、Zは、メルカプタンと反応し得る末端官能基であり、Aは、C〜C炭化水素基であり、aおよびbは、各々、1〜3であり、a+bは3である。例えば、Rは、C〜C炭化水素鎖であり得、Zは、ビニル基、イソシアネート基、エポキシ基などであり得る。シラン基を有する非限定的な例示的化合物としては、シラン末端化ビニル化合物、シラン末端化イソシアネート化合物、およびシラン末端化エポキシ化合物が挙げられる。一実施形態において、例えば、シラン末端化ビニル化合物は、CH=CH−R−Si(Y)によって表される。例示的な一実施形態において、シラン末端化イソシアネート化合物は、NCO−R−Si(Y)によって表される。例示的な一実施形態において、シラン末端化エポキシ化合物は、
【0016】
【化1】

によって表される。
【0017】
上記シラン基を有する化合物において、Yは、縮合もできる任意の加水分解可能な基であり得、Rは、上記のとおりであり、Rは、水素もしくは任意の適切な有機鎖であり得る。例えば、Rは、任意の適切な炭化水素鎖などであり得る。Yについての適切な加水分解可能な基の非限定的例としては、アルコキシ基などが挙げられる。いくつかの実施形態において、例えば、より小さなアルコキシ基(例えば、メトキシ基もしくはエトキシ基)が使用される。
【0018】
本発明の例示的実施形態において、シーラント組成物は、シラン末端化ポリチオエーテルポリマー、充填剤および触媒を含む。任意の適切な触媒が使用され得、単一の触媒もしくは触媒の混合物が使用され得る。一実施形態において、例えば、上記触媒は、スズ触媒である。適切なスズ触媒の非限定的例としては、有機スズ(例えば、ジブチルスズ ビス(アセチルアセトネート)およびジブチルスズジラウレート(Metacure T−12として、Air Products and Chemicals,Inc.,Allentown,Pennsylvaniaから入手可能)が挙げられる。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記シラン末端化ポリチオエーテル成分は、約30重量%〜80重量%の範囲に及ぶ量で上記シーラント組成物中に存在する。一実施形態において、例えば、上記シラン末端化ポリチオエーテル成分は、約55重量%〜75重量%の範囲に及ぶ量で上記組成物中に存在する。別の実施形態において、上記シラン末端化ポリチオエーテル成分は、約66〜67重量%の量で上記組成物中に存在する。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記触媒は、約0.1重量%〜5重量%の範囲に及ぶ量で上記組成物中に存在する。一実施形態において、例えば、上記触媒は、約0.1重量%〜2重量%の範囲に及ぶ量で上記組成物中に存在する。別の実施形態において、上記触媒は、約0.9重量%の量で上記組成物中に存在する。
【0021】
適切な充填剤の非限定的例としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、およびポリマー粉末が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記充填剤は、約5重量%〜60重量%の範囲に及ぶ量で上記組成物中に存在する。別の実施形態において、上記充填剤は、約28〜29重量%の量で上記組成物中に存在する。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、軽量の充填剤粒子を含む。本明細書で使用される場合、用語「軽量の」とは、このような粒子に言及しながら使用される場合、上記粒子が、0.7以下、いくつかの場合においては、0.25以下もしくは0.1以下の比重を有することを意味する。適切な軽量の充填剤粒子は、しばしば、2つのカテゴリー内に入る−マイクロスフェアおよびアモルファス粒子。上記マイクロスフェアの比重は、しばしば、0.1〜0.7の範囲であり、例えば、ポリスチレン発泡体、ポリアクリレートおよびポリオレフィンのマイクロスフェア、ならびに5〜100ミクロンの範囲に及ぶ粒径および0.25の比重を有するシリカマイクロスフェア(ECCOSPHERES(登録商標),W.R.Grace & Co.)が挙げられる。他の例としては、5〜300ミクロンの範囲の粒径および0.7の比重を有するアルミナ/シリカマイクロスフェア(FILLITE(登録商標),Pluess−Stauffer International)、約0.45〜約0.7の比重を有するケイ酸アルミニウムマイクロスフェア(Z−LIGHT(登録商標))、および0.13の比重を有する炭酸カルシウム被覆ポリビニリデンコポリマーマイクロスフェア(DUALITE 6001AE(登録商標),Pierce & Stevens Corp.)が挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、薄い被覆で被覆された外表面を含む軽量の充填剤粒子(例えば、米国特許出願第12/190,826号の[0016]−[0052](この引用部分は、本明細書に参考として援用される)において記載されるもの)を含む。
【0023】
上記組成物はまた、所望されるように、任意の数の添加剤を含み得る。適切な添加剤の非限定的例としては、可塑剤、色素、界面活性剤、接着促進剤、揺変剤、難燃剤、マスキング剤、およびこれらの混合物が挙げられる。使用される場合、上記添加剤は、約0重量%〜60重量%の範囲に及ぶ量で上記組成物中に存在し得る。いくつかの例示的実施形態において、上記添加剤は、約25重量%〜60重量%の範囲に及ぶ量で上記組成物中に存在する。
【0024】
いくつかの例示的実施形態において、上記組成物は、少なくとも1種の可塑剤を含む。適切な可塑剤の非限定的例は、HB−40(Solutia,Inc.,St.Louis,Missouriから市販される)である。HB−40は、水素化ターフェニル、部分的水素化クアテルフェニルおよび高次ポリフェニル、およびターフェニルを含む混合物である。しかし、任意の適切な可塑剤が使用され得る。いくつかの例示的実施形態において、上記可塑剤は、約0.1重量%〜40重量%の範囲に及ぶ量で上記組成物中に存在する。例示的実施形態において、上記可塑剤は、約0.1重量%〜8重量%の範囲に及ぶ量で上記組成物中に存在する。別の実施形態において、上記可塑剤は、約3〜4重量%の量で上記組成物中に存在する。可塑剤が使用される実施形態において、上記可塑剤および上記触媒は、上記触媒と、上記シラン末端化ポリチオエーテルとを合わせる前に、溶液中に入れられ得る。
【0025】
本発明の組成物の1つの利点は、別個の硬化剤(例えば、ポリオレフィン、ポリアクリレート、金属酸化物、およびポリエポキシド(米国特許第6,509,418号(Zookら(上記で言及される)に記載される)は、硬化性組成物を提供するために必須ではないことである。結果として、本発明の組成物は、いかなるこのような硬化剤をも、いくつかの実施形態においては実質的に、もしくはいくつかの例においては完全に、含まない。本明細書で使用される場合、用語「実質的に含まない」とは、あったとしても、ある物質が偶然の不純物として存在することを意味する。言い換えると、上記物質は、上記組成物の特性に影響を及ぼさない。本明細書で使用される場合、用語「完全に含まない」とは、上記組成物中にある物質がまったく存在しないことを意味する。
【0026】
貯蔵および輸送のために、上記シラン末端化ポリチオエーテル成分、充填剤および触媒を含む上記シーラント組成物は、水分密閉容器(moisture−tight container)中にシールされる。上記容器中で水分からシールされる間は、上記組成物は安定であり、実質的に硬化しないままである。
【0027】
上記シーラントを使用するために、上記水分密閉密容器が開けられ、上記組成物は、基材に適用され、上記シーラント組成物は、水分に曝される。上記水分は、上記シラン末端化ポリチオエーテル成分と反応し、以下の工程1の非化学量論的反応において示されるように、Si原子上の加水分解可能かつ縮合可能な基を、ヒドロキシド基で置き換える。上記触媒および水分の存在下で、上記組成物は、以下の工程2の非科学両論的反応に従って硬化し、それによって、多くの適用において有用なシーラントを形成する。
【0028】
【化2】

いくつかの実施形態において、シラン末端化ポリチオエーテル成分を作製する方法は、メルカプト末端化ポリチオエーテルを、シラン基を有する化合物と反応させる工程を包含する。上記メルカプト末端化ポリチオエーテルおよび上記シラン基を有する化合物は、上記のとおりである。反応の際に、上記メルカプト末端化ポリチオエーテルの上記メルカプト基は、上記シラン基を有する化合物のメルカプタンと反応し得る末端官能基と反応して、(Y)SiRZ’−R’−Z’RSi(Y)によって表されるシラン末端化ポリチオエーテル成分を形成する。R’は、少なくとも1個の−C−S−C−連結をその骨格の中に有し、ここで上記骨格は、S−S連結を含まないポリチオエーテル鎖であり、Yは、加水分解可能かつ縮合可能な官能基であり、Aは、C〜C炭化水素官能基からなる群より選択され、そしてZ’は、メルカプタンと上記Z官能基(すなわち、メルカプタンと反応し得る官能基(例えば、イソシアネート基、エポキシ基およびビニル基))との間の反応から生じる官能基である。一実施形態において、例えば、上記シラン末端化ポリチオエーテル成分は、以下の式(2)によって表される。
【0029】
(Y)SiRZ’−[−S−R−S−(CH−O−(−R−O−)−(CH−]−S−R−S−Z’RSi(Y) (2)
式2において、Z’は、上記Z官能基と上記メルカプタン官能基との反応生成物である。例えば、Zがビニル基である場合、Z’は、−CH−CH−であり、得られる末端官能基は、−CH−CHSi(Y)である。Zがイソシアネート基である場合、Z’は、
【0030】
【化3】

であり、得られる末端官能基は、−NHCO−Si(Y)である。Zがエポキシ基である場合、Z’は、
【0031】
【化4】

もしくは
【0032】
【化5】

であり、得られる末端官能基は、
【0033】
【化6】

である。
【0034】
次いで、上記得られるシラン末端化ポリチオエーテル成分は、充填剤および触媒と、水分を実質的に含まない環境において合わせられて、硬化されていないシーラント混合物を形成する。適切な触媒は、上記のとおりである。いくつかの実施形態によれば、添加剤は、上記組成物中に含まれる。適切な添加剤は、上記に記載され、可塑剤、色素、界面活性剤、接着促進剤、揺変剤、難燃剤、充填剤、マスキング剤、およびこれらの混合物が挙げられる。上記シラン末端化ポリチオエーテル、触媒および任意選択の添加剤は、上記に記載される量で上記組成物中に含まれ得る。
【0035】
上記組成物は、硬化を妨げるために水分から隔離される。いくつかの実施形態において、上記組成物は、実質的に水分を含まない容器中にシールされる。基材への適用の際に、上記組成物は、水分に曝され、このことから、上記に記載されるように、上記組成物が硬化して、シーラントを形成することが可能になる。
【0036】
以下の実施例は、例示目的で示されるに過ぎず、本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0037】
(実施例1:シラン末端化ポリチオエーテルの合成)
707.69gのPermapol(登録商標) P−3.1E(PRC−Desoto,Sylmar,Californiaから市販されるメルカプト末端化ポリチオエーテル)を、丸底フラスコに入れた。上記フラスコは、窒素ガスのための入口および出口を備えていた。上記ポリマーを、約5mmHgで40分間にわたって脱気した。次いで、窒素を導入した。攪拌している間、109.88gの3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランを添加した。上記混合物を、170〜176°Fで24時間にわたって加熱した。この時点で、上記混合物のメルカプタン当量は、30,931であった。さらに7.0gの3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランを添加し、15時間にわたって加熱を続けた。次いで、上記混合物を172〜174°Fおよび10mmHgにおいて脱気して、琥珀色のポリマーを得た。この時点で、上記混合物のメルカプタン当量は、67,500であった。その粘性は、Brookfield CAP 2000粘度計によって測定した場合、3,000RPMにおいて99Pであった。
【0038】
(実施例2:シラン末端化ポリチオエーテルの合成)
736.69gのPermapol(登録商標) P−3.1Eを、丸底フラスコの中に入れた。上記フラスコは、窒素ガスのための入口および出口を備えていた。上記ポリマーを、170°Fおよび約5mmHgで、1時間にわたって脱気した。次いで、窒素を導入した。攪拌している間に、70.56gのビニルトリメトキシシランを添加した。さらに1/2時間にわたって加熱を続けた。10.284g分のVazo−67(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(E.I.du Pont de Nemours and Companyから市販される)、フリーラジカル開始剤を、2時間間隔で添加した一方で、上記温度を、168〜172°Fに維持した。この時点で、上記混合物のメルカプタン当量は、25,670であった。さらに5.0gのビニルトリメトキシシランを添加し、続いて、4.343g分のVazo−67を2時間間隔で添加した。168〜172°Fで4時間にわたって、加熱を続けた。次いで、上記混合物を、172〜174°Fおよび10mmHgで脱気して、琥珀色のポリマーを得た。この時点において、上記混合物のメルカプタン当量は、32,644であり、その粘性は、3,000RPMにおいて44Pであった。
【0039】
(実施例3:シラン末端化ポリチオエーテルの合成)
715.70gのPermapol(登録商標) P−3.1Eを、丸底フラスコの中に入れた。上記フラスコは、窒素ガスのための入口および出口を備えていた。上記ポリマーを、160〜170°Fおよび約5mmHgで、1/2時間にわたって脱気した。次いで、窒素を導入した。攪拌している間に、88.01gのビニルトリエトキシシランを添加した。さらに40分間にわたって加熱を続けた。10.299g分のVazo−67を、2時間間隔で添加した一方で、上記温度を、168〜172°Fに維持した。この時点において、上記混合物のメルカプタン当量は、24,178であった。さらに7.0gのビニルトリエトキシシランを添加し、続いて、4.335g分のVazo−67を2時間間隔で添加した。168〜172°Fで3時間にわたって加熱を続けた。次いで、上記混合物を、168〜172°Fおよび10mmHgで脱気して、琥珀色のポリマーを得た。この時点において、上記混合物のメルカプタン当量は、40,225であり、その粘性は、3,000RPMにおいて34Pであった。
【0040】
(実施例4:シーラント組成物)
シラン末端化ポリチオエーテル化合物を、実施例1におけるとおりに(すなわち、上記シラン末端化ポリチオエーテル上のシラン基は、−Si(OCHCH基であった)製造した。15g カーボンブラックを、300°Fのオーブン中に5日間にわたって配置した。次いで、上記カーボンブラックが実質的に濡れるまで、35gの上記シラン末端化ポリチオエーテルを上記カーボンブラックと混合した。次いで、2.0g HB−40および0.5g Metacure T−12を、全ての成分が完全に混合されるまで、上記シラン末端化ポリチオエーテル/カーボンブラック混合物と合わせた。次いで、上記組成物を、水分シールされた容器中にパッケージした。
【0041】
(実施例5:シーラント組成物)
シラン末端化ポリチオエーテル化合物を、実施例2におけるとおりに(すなわち、上記シラン末端化ポリチオエーテル上のシラン基は、−Si(OCH基であった)製造した。15g カーボンブラックを、300°Fのオーブン中に5日間にわたって配置した。次いで、カーボンブラックが実質的に濡れるまで、35gの上記シラン末端化ポリチオエーテルを、上記カーボンブラックと混合した。次いで、2.0g HB−40および0.5g Metacure T−12を、すべての成分が完全に混合されるまで、上記シラン末端化ポリチオエーテル/カーボンブラック混合物と合わせた。次いで、上記組成物を、水分シールされた容器中にパッケージした。
【0042】
実施例4および5の上記組成物を、周囲条件において、約1ヶ月間にわたって、水分シールされた容器中に静置させた。1ヶ月間の貯蔵後、上記容器を開け、周囲条件において静置し、上記組成物を硬化させた。硬度測定を、Rexデュロメーターを使用して定期的に行った。硬化したサンプルの体積膨張パーセンテージおよび%重量減少を、SAE AS5127/1セクション7.4.に従って測定した。その結果を、表1〜4に示す。これらの表は、各サンプルの硬化時間、%重量減少、および体積膨張を報告する。特に、表1は、実施例4に従って調製したシーラント組成物のサンプルに関する硬度データを報告し、表2は、実施例5に従って調製したシーラント組成物のサンプルに関する硬度データを報告し、表3は、実施例4に従って調製したシーラント組成物のサンプルの体積膨張および%重量減少を報告し、表4は、実施例5に従って調製したシーラント組成物のサンプルの体積膨張および%重量減少を報告する。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

表1〜4に示される結果は、実施例4および5に従って調製したシーラント組成物が、上記組成物が水分から隔離される限り、重要な程度にまで硬化しないことを示す。驚くべきことに、上記組成物は、水分を含まない場合は、周囲条件ですら、硬化しないままである。このことは、上記組成物を−40°Fもしくは−80°Fにおいて貯蔵および輸送する必要性を排除する。上記結果はまた、水分に対してシールされた場合、上記組成物が、予測外の長い貯蔵寿命を有することを示す。さらに、上記体積膨張および重量減少の結果は、上記シーラント組成物が、燃料タンクシーラントとして使用するのに適していることを示す。
【0047】
本発明は、例示的な実施形態および局面を参照しながら詳述されてきたが、これらに限定されない。当業者は、他の改変および適用が、本発明の趣旨および範囲から大きく逸脱することなく行われ得ることを認識する。例えば、上記組成物は、燃料タンクシーラントとして有用であると記載されるが、それらは、他の適用においても同様に有用であり得る。さらに、特定の例示的ポリチオエーテル成分およびシラン基を有する化合物が特定の反応に適していると列挙されているが、他の適切なポリチオエーテルおよびシラン基を有する化合物が使用され得る。よって、前述の説明は、記載されるそのとおりの実施形態および局面に限定されると解釈されるべきではなく、最大かつ最も明瞭な範囲を有するべきである以下の特許請求の範囲と矛盾せず、その裏付けとして解釈されるべきである。
【0048】
上記本文全体を通して、値の範囲に関する語句「約」の使用は、全て、本発明が属する分野の当業者によって理解されるように、記載される高い値および低い値両方を修飾し、測定、有意な数字、および交換可能性と関連するバリエーションの周縁部を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラントを形成するための組成物であって、該組成物は、
(Y)SiRZ’−R’−Z’RSi(Y)によって表されるシラン末端化ポリチオエーテル成分であって、
ここで
R’は、少なくとも1個の−C−S−C−連結をその骨格の中に有し、ここで該骨格は、S−S連結を含まない、ポリチオエーテル鎖であり、
Yは、加水分解可能かつ縮合可能な官能基であり、
Aは、C〜C炭化水素官能基からなる群より選択され、そして
Z’は、メルカプタンと、イソシアネート基、エポキシ基およびビニル基からなる群より選択される官能基との間の反応から生じる官能基である、
シラン末端化ポリチオエーテル成分;
触媒;ならびに
充填剤、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記シラン末端化ポリチオエーテル成分は、式2:
(Y)SiRZ’−[−S−R−S−(CH−O−(−R−O−)−(CH−S−R−S−Z’RSi(Y) (2)
によって表される化合物を含み、ここで:
は、C〜C10 n−アルキレン基、C〜C分枝状アルキレン基、C〜Cシクロアルキレン基、C〜C10アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、−[(−CH−X]−(CH−基、および−[(−CH−X]−(−CH−基(ここで少なくとも1個の−CH−ユニットは、メチル基で置換される)からなる群より選択され;
は、C〜C10 n−アルキレン基、C〜C分枝状アルキレン基、C〜Cシクロアルキレン基、C〜C14アルキルシクロアルキレン基、複素環式基、および−[(−CH−X]−(CH−基からなる群より選択され;
Yは、加水分解可能かつ縮合可能な官能基であり;
Aは、C1〜C4炭化水素官能基からなる群より選択され;
Xは、O原子、S原子、および−NR−基からなる群より選択され、ここでRは、H原子およびメチル基からなる群より選択され;
Z’は、メルカプタンと、イソシアネート基、エポキシ基およびビニル基からなる群より選択される官能基との間の反応から生じる官能基であり;
は、C1〜C3炭化水素鎖であり;
mは、1〜50の範囲の整数であり;
nは、1〜60の範囲の整数であり;
pは、2〜6の範囲の整数であり;
qは、1〜5の範囲の整数であり;
rは、2〜10の範囲の整数であり;そして
aおよびbは、各々、0〜3の範囲の整数であり、そしてaとbの合計は3である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記シラン末端化ポリチオエーテルは、以下
【化7】

である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
mは1であり、Rは、n−ブチレンであり、そしてRは、エチレンでもn−プロピレンでもない、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
mは1であり、pは2であり、qは2であり、rは2であり、Rは、エチレンであり、そしてXは、O原子ではない、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
Yは、アルコキシ基である、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
Yは、メトキシ基もしくはエトキシ基である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記シラン末端化ポリチオエーテル成分は、シラン基を有する化合物とメルカプト末端化ポリチオエーテルとの反応生成物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記シラン基を有する化合物は、シラン末端化ビニル化合物、シラン末端化イソシアネート化合物、およびシラン末端化エポキシ化合物からなる群より選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記触媒は、スズ触媒を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、いかなるポリオレフィン、ポリアクリレート、金属酸化物、およびポリエポキシド硬化剤を実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物から形成されるシーラント。
【請求項13】
請求項12に記載のシーラントで少なくとも部分的にシールした開口部を含む、航空宇宙輸送手段。
【請求項14】
シーラント組成物を調製する方法であって、該方法は、
メルカプト末端化ポリチオエーテルと、シラン基を有する化合物とを反応させて、(Y)SiRZ’−R’−Z’RSi(Y)によって表されるシラン末端化ポリチオエーテルを形成する工程であって、ここで:
R’は、少なくとも1個の−C−S−C−連結をその骨格の中に有し、ここで該骨格は、S−S連結を含まない、ポリチオエーテル鎖であり、
Yは、加水分解可能かつ縮合可能な官能基であり、
Aは、C1〜C4炭化水素官能基からなる群より選択され、そして
Z’は、メルカプタンと、メルカプタンと反応し得る官能基との間の反応から生じる官能基であって、ここで該メルカプタンと反応し得る官能基は、イソシアネート基、エポキシ基およびビニル基からなる群より選択される、工程;
該シラン末端化ポリチオエーテルと、触媒とを合わせて、組成物を形成する工程;ならびに
該組成物を水分から隔離する工程であって、ここで該組成物は、水分から隔離された場合に、周囲温度で硬化されないままである、工程、
を含む、方法。

【公表番号】特表2012−532955(P2012−532955A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519575(P2012−519575)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/040307
【国際公開番号】WO2011/005614
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(502328466)ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド (29)
【Fターム(参考)】