説明

1成分型ウレタン系接着剤

【課題】
本発明は、高強度かつ柔軟な物性および耐熱性を有し、低温速硬化性を有する、自動車のルーフ部用1成分型ウレタン系接着剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
2種類のウレタンプレポリマー、アミン系潜在性硬化剤および硬化触媒を含む1成分型ウレタン系接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1成分型ウレタン系接着剤、詳しくは、高強度かつ柔軟な物性および耐熱性を有し、低温速硬化性を有する1成分型ウレタン系接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の軽量化のため、金属製のルーフやハッチバックといった準構造部位は、樹脂製品へ置き換えられている。これらの樹脂製ルーフ部を鋼板製の車両へ組み付けるために、通常、接着剤を用いる接着工法が用いられる。かかる工法に用いる接着剤として、2液硬化型接着剤が挙げられるが、2液硬化型接着剤は、主剤と硬化剤とを所定の比率で混合して吐出する必要があるため、煩雑な設備が必要である。また、熱硬化型接着剤は、高温加熱による硬化が必要であるため、樹脂製品の接着に適していないといった問題があった。
【0003】
そこで、1液型熱硬化性接着剤が提案されているが(特許文献1)、ハンドリング強度が発現するまでに時間かかり、十分な強度が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−78447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高強度かつ柔軟な物性および耐熱性を有し、低温速硬化性を有する、自動車のルーフ部用1成分型ウレタン系接着剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、2種類のウレタンプレポリマー、アミン系潜在性硬化剤および硬化触媒を含む1成分型ウレタン系接着剤により上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明には、以下の好適な実施態様が含まれる。
[1] (A)(1)テトラオール、トリオールおよび300〜800の数平均分子量を有するジオールを含むポリオール、および
(2)脂肪族ポリイソシアネート
を反応させることにより得られるウレタンプレポリマー、
(B)(1)ジオールおよび3官能性以上のポリオールを含むポリオール、および
(2)芳香族系ポリイソシアネート
を反応させることにより得られるウレタンプレポリマー、
(C)アミン系潜在性硬化剤、および
(D)硬化触媒
を含んでなる、自動車のルーフ部に用いる1成分型ウレタン系接着剤。
[2] ポリオール(A)(1)は、トリオール100重量部を基準として、7〜10重量部のテトラオールおよび30〜50重量部の300〜800の数平均分子量を有するジオールを含む、[1]に記載の1成分型ウレタン系接着剤。
[3] ポリオール(A)(1)および脂肪族ポリイソシアネート(A)(2)のNCO/OH当量比は、1.9〜2.1である、[1]または[2]に記載の1成分型ウレタン系接着剤。
[4] ポリオール(B)(1)および脂肪族ポリイソシアネート(B)(2)のNCO/OHの当量比は、1.9〜2.1である、[1]〜[3]のいずれかに記載の1成分型ウレタン系接着剤。
[5] ウレタンプレポリマー(A)とウレタンプレポリマー(B)の重量比は、35:65〜65:35である、[1]〜[4]のいずれかに記載の1成分型ウレタン系接着剤。
[6] 前記アミン系潜在性硬化剤(C)は、50℃において固体であるアミンを無機粉体で被覆した微粉体コーティングアミンである、[1]〜[5]のいずれかに記載の1成分型ウレタン系接着剤。
[7] 前記硬化触媒(D)は、錫系触媒である、[1]〜[6]のいずれかに記載の1成分型ウレタン系接着剤。
[8] 前記芳香族ポリイソシアネートは、TDIである、[1]〜[7]のいずれかに記載の1成分型ウレタン系接着剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の1成分型ウレタン系接着剤は、高強度かつ柔軟な物性および耐熱性を有し、低温速硬化性を有しているので、自動車の樹脂製のルーフ部、例えばルーフやハッチバック等を、車両へ接着するのに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、
(A)(1)テトラオール、トリオールおよび300〜800の数平均分子量を有するジオールを含むポリオール、および
(2)脂肪族ポリイソシアネート
を反応させることにより得られるウレタンプレポリマー、
(B)(1)ジオールおよび3官能性以上のポリオールを含むポリオール、および
(2)芳香族系ポリイソシアネート
を反応させることにより得られるウレタンプレポリマー、
(C)アミン系潜在性硬化剤、および
(D)硬化触媒
を含んでなる、自動車ルーフ部に用いる1成分型ウレタン系接着剤である。
【0009】
上記ウレタンプレポリマー(A)に用いるポリオール(A)(1)は、テトラオール、トリオールおよび300〜800の数平均分子量を有するジオールを含んでなる。
ポリオール(A)(1)が、テトラオール、トリオールおよび300〜800の数平均分子量を有するジオールを含むことにより、所望の強度を有する硬化物が得られる。
【0010】
ポリオール(A)(1)に含まれるポリオールとしては、多価アルコール、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖等の1種または2種に、プロピレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらのオリゴグリコール類;ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール類;ポリカプロラクトンポリオール類;ポリエチレンアジペートのようなポリエステルポリオール類;ポリブタジエンポリオール類;ヒマシ油のようなヒドロキシル基を有する高級脂肪酸エステル類;ポリエーテルポリオール類またはポリエステルポリオール類にビニルモノマーをグラフト化したポリマーポリオール類等が挙げられる。本発明では、ポリエーテルポリオール、例えばポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレンエチレンジオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンエチレントリオール、ポリオキシプロピレンテトラオール、ポリオキシプロピレンエチレンテトラオール等が、硬化物が高強度かつ柔軟な物性を有するため、好適である。
【0011】
上記ポリオール(A)(1)に用いるテトラオールは、好ましくは300以上、より好ましくは400以上の数平均分子量を有する。また、ポリオール(A)(1)に用いるテトラオールは、800以下、より好ましくは700以下の数平均分子量を有する。上記数平均分子量が300未満であると、所望の高伸長の硬化物が得られず、また800を越えると、所望の高強度の硬化物が得られない。
数平均分子量の測定は、KF806Lカラムを3本つなげたGPCを用い、ポリスチレン換算により求めた。
【0012】
上記ポリオール(A)(1)に用いるトリオールは、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上の数平均分子量を有する。また、ポリオール(A)(1)に用いるトリオールは、10000以下、より好ましくは7000以下の数平均分子量を有する。上記数平均分子量が3000未満であると、所望の高伸長の硬化物が得られず、また10000を越えると、所望の高強度の硬化物が得られない。
【0013】
上記ポリオール(A)(1)に用いるジオールは、300以上、好ましくは400以上の数平均分子量を有する。また、上記ジオールは、800以下、好ましくは700以下、の数平均分子量を有する。上記数平均分子量が300未満であると高伸張の硬化物が得られない、また、数平均分子量が800を越えると高強度の硬化物が得られない。
【0014】
上記ポリオール(A)(1)は、トリオール100重量部を基準として、好ましくは7〜10重量部のテトラオールおよび30〜50重量部の300〜800の数平均分子量を有するジオール、より好ましくは35〜45重量部の300〜800の数平均分子量を有するジオールを含んでなる。ポリオール(A)(1)が、上記範囲内の量でトリオール、テトラオールおよび300〜800の数平均分子量を有するジオールを含む場合、硬化物の強度の点において有利である。
【0015】
上記ウレタンプレポリマー(A)を製造するのに、脂肪族ポリイソシアネート(A)(2)を用いる。脂肪族ポリイソシアネートを用いると、所望の耐熱性を有する硬化物が得られる。
上記ウレタンプレポリマー(A)に用いる脂肪族ポリイソシアネート(A)(2)としては、特に限定されないが、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、これらのイソシアヌレート化物、カルボジイミド化物、ビューレット化物等が挙げられ、中でも、耐熱性の点から、IPDIが好適である。
上記脂肪族ポリイソシアネートの市販品の例としては、例えば、バイエル社製デスモジュールI(IPDI)等が挙げられる。
また、本発明による1成分型ウレタン系接着剤において、脂肪族ポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記ウレタンプレポリマー(A)は、ポリオール(A)(1)と脂肪族ポリイソシアネート(A)(2)とを、NCO/OHの当量比が、好適には1.9〜2.1、より好適には1.95〜2.05となるように反応させることにより得られる。NCO/OHの当量比が1.9未満であると貯蔵安定性が低下し、粘度上昇ないしゲル化する傾向がある。また2.1を越えると高強度の硬化物が得られない傾向がある。
【0017】
上記反応は、必要に応じて適当な反応溶媒、例えば酢酸エチル、トルエン、キシレン等、および反応触媒、例えばジブチル錫ジラウレート等の有機錫系触媒、オクチル酸ビスマス等のビスマス系触媒、1,4−ジアザ[2.2.2]ビシクロオクタン等の三級アミン系触媒等の存在下、通常常温乃至60〜90℃で1〜7時間の条件で行うことができる。得られるウレタンプレポリマーは通常、NCO含有量0.5〜5%(重量%、以下同様)、粘度5000〜100000cps/20℃を有し得る。
【0018】
本発明の1成分型ウレタン系接着剤は、上記ウレタンプレポリマー(A)に加えて、ウレタンプレポリマー(B)を含んでなる。
上記ウレタンプレポリマー(B)に用いるポリオール(B)(1)は、ジオールおよび3官能性以上のポリオールを含んでなる。
ポリオール(B)(1)が、ジオールおよび3官能性以上のポリオールを含むことにより、所望の強度を有する硬化物が得られる。
【0019】
ポリオール(B)(1)に含まれるポリオールとしては、多価アルコール、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖等の1種または2種に、プロピレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらのオリゴグリコール類;ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール類;ポリカプロラクトンポリオール類;ポリエチレンアジペートのようなポリエステルポリオール類;ポリブタジエンポリオール類;ヒマシ油のようなヒドロキシル基を有する高級脂肪酸エステル類;ポリエーテルポリオール類またはポリエステルポリオール類にビニルモノマーをグラフト化したポリマーポリオール類等が挙げられる。本発明では、ポリエーテルポリオール、例えばポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレンエチレンジオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンエチレントリオール、ポリオキシプロピレンテトラオール、ポリオキシプロピレンエチレンテトラオール等が、硬化物が高強度かつ柔軟な物性を有するため好ましい。
【0020】
上記ポリオール(B)(1)に用いるジオールは、好ましくは800以上、より好ましくは1000以上の数平均分子量を有する。また、ポリオール(B)(1)に用いるジオールは、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下の数平均分子量を有する。上記数平均分子量が800未満であると、所望の高伸長の硬化物が得られず、また4000を越えると、所望の高強度の硬化物が得られない。
【0021】
上記ポリオール(B)(1)に用いる3官能性以上のポリオールは、好ましくは3000以上、より好ましくは4000以上の数平均分子量を有する。また、ポリオール(B)(1)に用いる3官能性以上のポリオールは、好ましくは8000以下、より好ましくは7000以下の数平均分子量を有する。上記数平均分子量が3000未満であると、所望の高伸長の硬化物が得られず、また8000を越えると、所望の高強度の硬化物が得られない。
【0022】
本発明では、上記ウレタンプレポリマー(B)を製造するのに、芳香族ポリイソシアネート(B)(2)を用いる。芳香族ポリイソシアネートを用いると、所望の貯蔵安定性を有する硬化物が得られる。
上記ウレタンプレポリマー(B)に用いる芳香族ポリイソシアネート(B)(2)としては、特に限定されないが、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、等が挙げられ、中でも、貯蔵安定性および作業性(粘度)の点から、TDIが好適である。
上記芳香族ポリイソシアネートの市販品の例としては、例えば三井化学社製コスモネートT−80等が挙げられる。
また、本発明による1成分型ウレタン系接着剤において、芳香族ポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記ウレタンプレポリマー(B)は、ポリオール(B)(1)と芳香族ポリイソシアネート(B)(2)とを、NCO/OHの当量比が、好適には1.9〜2.1、より好適には1.95〜2.05となるように反応させることにより得られる。NCO/OHの当量比が1.9未満または、2.1を越えると高強度の硬化物が得られない傾向がある。
【0024】
上記反応は、必要に応じて適当な反応溶媒、例えば酢酸エチル、トルエン、キシレン等、および反応触媒、例えばジブチル錫ジラウレート等の有機錫系触媒、オクチル酸ビスマス等のビスマス系触媒、1,4−ジアザ[2.2.2]ビシクロオクタン等の三級アミン系触媒等の存在下、通常常温乃至60〜90℃で1〜7時間の条件で行うことができる。得られるウレタンプレポリマーは通常、NCO含有量0.5〜5%(重量%、以下同様)、粘度5000〜100000cps/20℃を有し得る。
【0025】
本発明による1成分型ウレタン系接着剤は、上記ウレタンプレポリマー(A)および(B)を、好ましくは35:65〜65:35、より好ましくは40:60〜60:40の重量比で含んでなる。ウレタンプレポリマー(A)および(B)を、上記範囲内の重量比で含む場合、硬化物の物性および貯蔵安定性の点から有利である。
【0026】
本発明の1成分型ウレタン系接着剤は、上記ウレタンプレポリマー(A)および(B)に加えて、アミン系潜在性硬化剤(C)を含んでなる。
【0027】
本発明におけるアミン系潜在性硬化剤(C)としては、融点50℃以上の芳香族または脂肪族に属する任意の固形アミンを用い得る。
上記固形アミンとしては、例えば4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノビフェニル、2,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,3−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,5−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、3,4−トリレンジアミン等の芳香族、1,12−ドデカンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン等の脂肪族が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用に供してよい。
【0028】
上記固形アミンは、中心粒径20μm以下、好ましくは3〜15μmに調整する。20μmを越える中心粒径では、加熱硬化したポリウレタンが不完全反応硬化となり、所望の物性が得られない傾向となる。
【0029】
本発明に用いるアミン系潜在性硬化剤(C)として、上述の固形アミンを所定の中心粒径範囲に粉砕しつつ、同時にこれに微粉体を加えて該微粉体が所定の中心粒径範囲となるように混合粉砕して、固形アミンの表面に微粉体を固着させるせん断摩擦式混合方式により製造された微粉体コーティングアミン、または予め微粉砕した固形アミンを微粉体と共に高速衝撃式混合攪拌機または圧縮せん断式混合攪拌機を用いることにより製造された微粉体コーティングアミンを好ましく用いる。後者の方式、特に高速衝撃式混合攪拌機を用いて製造された微粉体コーティングアミンが特に好ましい。
【0030】
上記微粉体としては、無機系または有機系の中から任意に使用することができ、たとえば無機系として酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ジルコニア、カーボン、アルミナ、タルク等、また有機系としてポリ塩化ビニル、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用に供する。 上記微粉体の使用量は、固形アミンと微粉体の重量比が1/0.001〜0.5、好ましくは1/0.002〜0.4となるように選定する。微粉体の比率が0.001未満であると、貯蔵安定性の効果が認められず、また0.5を越えても、貯蔵安定性がそれ以上に改善されなくなる。
このように固形アミンと微粉体を混合粉砕することにより、静電気が発生して固形アミンの表面に微粉体が固着するか、または混合撹拌機の機械力により、発生する摩擦、衝撃、圧縮せん断等による発熱によって固形アミンの局所的な溶融固着現象で微粉体が固着するか、あるいは固形アミンの表面に物理的に投錨ないし埋設固着するか、さらには化学的に活性化して固着することなどが予測される(すなわち、固形アミンの表面の活性アミノ基(NH)は、微粉体で被覆された状態となる)。なお、固着した微粉体の中心粒径は、2μm以下、好ましくは1μm以下に設定されていることが重要で、2μmを越えると、固形アミンの表面に固着しなくなる。
【0031】
かかる微粉体コーティングアミンは、上記イソシアネート成分(A)(2)および(B)(2)の硬化剤として作用するが、さらに液状イソシアネート化合物と反応させて(通常、融点以下の温度で行う)、残存する活性アミノ基を不活性化してもよい。上記液状イソシアネート化合物としては、例えばクルードMDI、p−トルエンスルホニルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、TDI、n−オクタデシルイソシアネート等が挙げられる。液状イソシアネート化合物の割合は通常、固形アミンのNHとNCOの当量比が1/0.01〜0.5となるように選定すればよい。かかる液状イソシアネート化合物による不活性化処理によって、前記微粉体による被覆処理のみの場合に比べて、貯蔵安定性がより向上する。なお、上記当量比において、NCOが0.01未満であると、貯蔵安定性の所望の向上効果が得られず、また0.5を越えると、貯蔵安定性のさらなる改善が得られなくなる傾向にある。
【0032】
このように微粉体による被覆処理、および必要に応じて液状イソシアネート化合物による不活性化処理によって得られる微粉体コーティングアミンは、硬化温度(通常、60〜100℃)で活性化され、加熱活性後に存在するNHが上記イソシアネート成分(A)(2)および(B)(2)のNCOとの硬化反応に関与する。従って、上記イソシアネート成分(A)(2)および(B)(2)とアミン系潜在性硬化剤(C)の配合比は通常、加熱活性後のNHとNCOの当量比が1/0.5〜2.0となるように選定すればよい。
【0033】
本発明の1成分型ウレタン系接着剤は、上記ウレタンプレポリマー(A)および(B)並びにアミン系潜在性硬化剤(C)に加えて、硬化触媒(D)を含んでなる。
【0034】
上記硬化触媒としては、DBU[1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7]、DBUフェノール塩、DBUオクチル酸塩、DBUギ酸塩などのDBU系;モノアミン(トリエチルアミン等)、ジアミン(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等)、トリアミン(テトラメチルグアニジン等)、環状アミン(トリエチレンジアミン等)、アルコールアミン(ジメチルアミノメタノール等)、エーテルアミン[ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等]等のアミン系;Sn系(ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫等)、Pb系(オクチル酸鉛等)、Zn系(オクチル酸亜鉛等)等の有機カルボン酸金属塩;2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール等のイミダゾール系が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。Sn系有機カルボン酸金属塩、例えばジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、オクチル酸錫等が、反応促進の観点から好ましい。
【0035】
本発明の1成分型ウレタン系接着剤は、硬化触媒(D)を、本発明の1成分型ウレタン系接着剤100重量部に対して、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.005〜0.05重量部含んでなる。
【0036】
本発明の1成分型ウレタン系接着剤は、さらに必要に応じて、通常の添加剤、例えば溶剤(例えば極性の小さい溶剤として、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、脂環族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、エーテル類、エステル類、ケトン類等が挙げられ、特に脂肪族炭化水素系の溶剤が望ましい)、可塑剤(例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、トリオクチルホスフェート、エポキシ系可塑剤、トルエン−スルホンアミド、クロロパラフィン、アジピン酸エステル、ヒマシ油等)、揺変剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、染顔料、密着剤、脱水剤等を適量配合されてよい。
【0037】
本発明の1成分型ウレタン系接着剤は、上記の各成分から構成され、これらの成分を、例えば、高速攪拌混合機、パールミルなどを用いて混合することによって製造することができる。
【0038】
本発明の1成分型ウレタン系接着剤は、60℃〜120℃、好ましくは80〜100℃の比較的低温で加熱することにより、10分〜60分以内、好ましくは15分〜30分以内の短い時間で硬化させることができる。
【実施例】
【0039】
以下、次に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない
【0040】
プレポリマー(A)および(B)の製造
表1に示す重量の配合資材を、プラネタリーミキサーを用いて、温度80℃で4〜6時間混合攪拌し、各種ポリオールとイソシアネートを反応させることにより、プレポリマーA1〜A16およびプレポリマーB1〜B8を得た。
【0041】
【表1−1】

【0042】
【表1−2】

【0043】
(注1)テトラオール、AGC社製Excenol410NE、分子量550
(注2A)トリオール、AGC社製Preminol7003、分子量6200
(注2B)トリオール、AGC社製Excenol5030、分子量5100
(注3A)ジオール、AGC社製Excenol1020、分子量1000
(注3B)ジオール、AGC社製Excenol2020、分子量2000
(注4)ジオール、AGC社製Excenol420、分子量400
(注5)ジオール、AGC社製Excenol720、分子量700
(注6)ジオール、ゴードー社製ジエチレングリコール、分子量100
(注7)ジオール、AGC社製Excenol1020、分子量1000
(注8)イソホロンジイソシアネート、EVONIK社製VestantIPDI、分子量222
(注9)トリレンジイソシアネート、三井化学社製コスモネートT−80、分子量174
【0044】
表2に示す重量の配合資材を、プラネタリーミキサーを用いて脱泡混合攪拌することにより接着剤を得た。
【0045】
【表2−1】

【0046】
【表2−2】

【0047】
【表2−3】

【0048】
(注10)アミン系潜在性硬化剤、サンスター技研社製RD−5102H、
(注11)DINP、ジェイプラス社製フタル酸ジイソノニル
(注12)表面処理炭酸カルシウム+重質炭酸カルシウム、白石カルシウム社製ホワイトンB、丸尾カルシウム社製シーレッツ200
(注13)カーボンブラック、EVONIK社製Hiblack#20
(注14)c−MDI+マロン酸ジイソプロピル、住化バイエルウレタン社製スミジュール44V20、東京化成工業社製マロン酸ジイソプロピル
(注15)ジブチル錫系、日東化成社製ネオスタンU−220H
【0049】
上記のように調製した各接着剤について、以下の性能試験を行った。その結果を表3に示す。
【0050】
[性能試験]
1.物性
接着剤を離型紙に挟んで圧締し、シート状(厚さ:2mm)に成型する。シート状に成型した接着剤を80℃に加温したオーブンまたはプレス機で15分間加熱して硬化させる。硬化した接着剤を、常温(20℃、65%RH)で3日間養生する。養生した接着剤のシートを、2号ダンベルを用いて打ち抜き、ダンベルシートを得る。打ち抜いたダンベルシートを、万能引張試験機を用いて評価する。
引張強度判定:○=7.5Mpa以上、△=7.5〜6.5MPa、×=6.5MPa以下
M50判定:○=3.0Mpa以上、×=3.0MPa以下
伸び判定:○=200%以上、×=200%以下
【0051】
2.耐熱性
上記1.物性評価において作製したダンベルシートを、オーブンを用いて100℃、30日間加熱する。次いで、オーブンから取り出したダンベルシートを、常温まで冷却し、上記1.物性評価と同様の試験を行い、破断時の強度を測定する。
判定:○=7.5Mpa以上、△=7.5〜6.5MPa、×=6.5MPa以下
【0052】
3.貯蔵安定性
上記のように調製した接着剤を70cc瓶に充填し、50℃に加熱したオーブン中で3日間加熱する。次いで、オーブンから取り出した瓶を20℃まで冷却し、BH型粘度計のNo.7ローターを用いて20rpmの粘度を測定する。
判定:○=初期からの粘度上昇率が50%以下、△=初期からの粘度上昇率が50%以上、×=ゲル化
【0053】
【表3−1】

【0054】
【表3−2】

【0055】
以上の結果から、本発明による実施例1乃至20おいて製造した接着剤は、硬化物の良好な物性および耐熱性、ならびに良好な貯蔵安定性を有することがわかる。
これに対し、硬化触媒を用いない比較例1からは、十分な引張強度を有する接着剤は得られなかった。
また、数平均分子量が200であるジオールを用いた比較例2による接着剤、および数平均分子量が900であるジオールを用いた比較例3による接着剤は、十分な引張強度が得られなかった。
ウレタンプレポリマー(A)のみを用いた比較例4による接着剤は、十分な貯蔵安定性が得られず、ウレタンプレポリマー(B)のみを用いた比較例5による接着剤は、十分な引張強度および耐熱性が得られなかった。
ウレタンプレポリマー(A)に芳香族ポリイソシアネートを用い、ウレタンプレポリマー(B)に脂肪族ポリイソシアネートを用いた比較例6による接着剤は、十分な耐熱性および貯蔵安定性が得られなかった。
比較例7の結果からは、ウレタンプレポリマー(B)に芳香族ポリイソシアネートを用いない場合、十分な貯蔵安定性が得られないことがわかる。また、比較例8の結果から、ウレタンプレポリマー(A)に脂肪族ポリイソシアネートを用いない場合、十分な耐熱性が得られないことがわかる。
ポリオール(A)(1)にテトラオールを用いない比較例9および300〜800の数平均分子量を有するジオールを用いない比較例10による接着剤は、十分な引張強度およびM50の値が得られなかった。
ポリオール(B)(1)にジオールを用いない比較例11および3官能性以上のポリオールを用いない比較例12による接着剤は、十分な引張強度およびM50の値が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(1)テトラオール、トリオールおよび300〜800の数平均分子量を有するジオールを含むポリオール、および
(2)脂肪族ポリイソシアネート
を反応させることにより得られるウレタンプレポリマー、
(B)(1)ジオールおよび3官能性以上のポリオールを含むポリオール、および
(2)芳香族系ポリイソシアネート
を反応させることにより得られるウレタンプレポリマー、
(C)アミン系潜在性硬化剤、および
(D)硬化触媒
を含んでなる、自動車のルーフ部に用いる1成分型ウレタン系接着剤。
【請求項2】
ポリオール(A)(1)は、トリオール100重量部を基準として、7〜10重量部のテトラオールおよび30〜50重量部の300〜800の数平均分子量を有するジオールを含む、請求項1に記載の1成分型ウレタン系接着剤。
【請求項3】
ポリオール(A)(1)および脂肪族ポリイソシアネート(A)(2)のNCO/OH当量比は、1.9〜2.1である、請求項1または2に記載の1成分型ウレタン系接着剤。
【請求項4】
ポリオール(B)(1)および脂肪族ポリイソシアネート(B)(2)のNCO/OHの当量比は、1.9〜2.1である、請求項1〜3のいずれかに記載の1成分型ウレタン系接着剤。
【請求項5】
ウレタンプレポリマー(A)とウレタンプレポリマー(B)の重量比は、35:65〜65:35である、請求項1〜4のいずれかに記載の1成分型ウレタン系接着剤。
【請求項6】
前記アミン系潜在性硬化剤(C)は、50℃において固体であるアミンを無機粉体で被覆した微粉体コーティングアミンである、請求項1〜5のいずれかに記載の1成分型ウレタン系接着剤。
【請求項7】
前記硬化触媒(D)は、錫系触媒である、請求項1〜6のいずれかに記載の1成分型ウレタン系接着剤。
【請求項8】
前記芳香族ポリイソシアネートは、TDIである、請求項1〜7のいずれかに記載の1成分型ウレタン系接着剤。

【公開番号】特開2013−72016(P2013−72016A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212468(P2011−212468)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】