説明

1日1回処置を使用する再発性口唇ヘルペスの処置のためのファムシクロビル

【課題】再発性口唇ヘルペスに対するファムシクロビルの投与方法の提供。
【解決手段】ヒトを含む哺乳動物における再発性口唇ヘルペスの処置法であって、このような処置を必要とする哺乳動物に有効量の9−(4−アセトキシ−3−アセトキシメチルブト−1−イル)−2−アミノプリン(ファムシクロビル)、または薬学的に許容されるその塩を1日の期間投与する。処置を前駆症状が発症して1時間以内に開始する、処置を前駆症状の24時間以内に開始する、処置期間が1日である、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1日処置レジメンを使用した再発性口唇ヘルペスの処置、および、その状態の1日処置レジメンに使用するための薬剤の製造における化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
EP−A−141927(Beecham Group p.l.c.)は、式(A):
【化1】

の化合物であるペンシクロビル、およびその塩、そのリン酸エステルおよびアシル誘導体を、抗ウイルス剤として開示している。ペンシクロビルのナトリウム塩水和物はEP−A−216459(Beecham Group p.l.c.)に開示されている。ペンシクロビルおよびその抗ウイルス活性はまた、Abstract P. V11-5, p.193 of Abstracts of 14th Int. Congress of Microbiology, Manchester, England, Sep. 7-13, 1986(Boyd et. al.)に開示されている。
【0003】
式(A)の経口で活性な生物学的前駆体は式(B):
【化2】

〔式中、XがC1−6アルコキシ、NHまたは水素である。〕
の化合物、および式(A)の下に定義の通りのその塩および誘導体である。XがC1−6アルコキシまたはNHである式(B)の化合物はEP−A−141927に開示され、EP−A−182024(Beecham Group p.l.c.)に開示のXが水素である式(B)の化合物は好ましいプロドラッグである。特に好ましい式(B)の化合物の例は、Xが水素であるもの、およびEP−A−182024の実施例2に記載の2個のOH基がアセチル誘導体であるもの(以後ファムシクロビルと呼ぶ)である。
【0004】
式(A)および(B)の化合物、ならびにそれらの塩および誘導体は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)、水痘帯状疱疹ウイルスおよびエプスタイン・バーウイルスのようなヘルペスウイルスが原因の感染症の処置に有効であることが記載されている。具体的に、HSV−1は口唇ヘルペスの主原因である。
【0005】
再発性口唇ヘルペスは、成人の40%までに起こる、一般的な疾患である。ほとんどが、通常小児期に獲得し、50歳を超えるヒトの90%も高い血清陽性率を示す、HSV−1が原因である。ほとんどの場合、口唇ヘルペスは、一過性であるが、著しい刺激、疼痛、および社会環境における不快感のような、現実的結果を伴い得る。新生児および免疫不全患者のような易感染性のヒトでは、HSVはかなりの致死率に至り得る。
【0006】
現在利用可能な局所または全身処置選択肢は、アシクロビルおよびペンシクロビルのようなヌクレオシド類似体を含む。アシクロビルまたはペンシクロビルいずれかを含む局所処置は、プラセボと比較して、速い病巣治癒および疼痛の解消を伴い、口唇ヘルペスエピソードの期間を短縮させる。典型的にそれらは数日間にわたり複数回の投与が必要であり、病巣の発生を阻止しない(Jensen 2004)。
【0007】
経口アシクロビルは、口唇ヘルペス感染の処置には承認されていない。しかしながら、アシクロビル(200mgまたは400mg、5日間にわたり1日5回)で処置した患者は、水疱病巣および疼痛の著しい、しかし限定された治癒期間の短縮を経験している(Jensen 2004)。治癒はいずれも静止病巣(aborted lesions)を有する患者の割合を増加させない。バラシクロビルは最近、2,000mg、1日2回、1日の指示用量(recommended)で口唇ヘルペスの処置に承認された。この処置の有効性は、前年に3回を超えるエピソードを有する免疫適格性成人患者での、2個の無作為、二重盲検、プラセボ対照試験で評価された。病巣治癒の中央時間は、プラセボと比較してバラシクロビルで1日短縮した(Spruance 2003)。ファムシクロビルはHIV感染患者の再発性口唇HSV感染の処置のために承認されている。無作為、二重盲検、用量漸増試験で、再発性口唇ヘルペスの病歴を有する免疫適格性成人患者は、プラセボと比較して、ファムシクロビル500mg、1日3回5日間で処置したとき、短い治癒時間および病巣サイズの減少を示した(Spruance 1999)。
【0008】
しかしながら、再発性口唇ヘルペスと関連する症状を軽減するまたは期間を短くする治療の必要性が残っている。このような処置の利点はまた、医療費の負担を減らすだけでなく、処置コンプライアンスを増加させ得る。
【発明の概要】
【0009】
発明の要約
本発明は、1日処置レジメンを使用した再発性口唇ヘルペスの処置のための、ここに記載の式(A)および(B)の化合物、好ましくはファムシクロビルまたはペンシクロビルの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な記載
本発明により、上記化合物が、高投与量1日処置として投与したときに、免疫適格性患者における再発性口唇ヘルペスの治癒時間または病巣存在期間の短縮に特に有効であることが判明した。
【0011】
従って、本発明はヒトにおける再発性口唇ヘルペスの処置法であって、そのような処置を必要とするヒトに1日の処置期間、有効量の式(A):
【化3】

の化合物または生物学的前駆体、または前記いずれかの薬学的に許容される塩、リン酸エステルおよび/またはアシル誘導体を投与することを含む、方法を提供する。
【0012】
用語“アシル誘導体”は、ここでは、1個以上のアシル基が存在する式(A)の化合物のすべての誘導体を含むために使用する。このような誘導体は、それ自体生物学的に活性である誘導体に加えて、式(A)の化合物の生物学的前駆体として含まれる。
【0013】
式(A)の化合物はEP−A−216459(Beecham Group p.l.c.)に開示の形態の一つであり得る。
【0014】
生物学的前駆体、薬学的に許容される塩および誘導体の例は、前記の欧州特許参考文献に記載されている通りであり、その対象を引用により本明細書に包含させる。
【0015】
興味のある特定の式(B)の化合物は、ペンシクロビル(PCV)の良く吸収される経口形であるファムシクロビル(FCV)として既知の9−(4−アセトキシ−3−アセトキシメチルブト−1−イル)−2−アミノプリンである。
【0016】
式(A)の化合物、生物学的前駆体、塩および誘導体は、上記欧州特許参考文献に記載の通り製造できる。
【0017】
本化合物、特に、ファムシクロビルは、ヒトに経口経路で投与でき、そして、シロップ、錠剤またはカプセルの形に配合できる。錠剤の形のとき、このような固体組成物の製剤に適当な医薬担体、例えば、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトース、グルコース、コメ、小麦およびチョーク、が使用され得る。本化合物はまた、化合物を含むための例えばゼラチン製の摂取可能なカプセルの形でもあり得るし、またはシロップ、溶液または懸濁液の形であり得る。適当な液体医薬担体は、エチルアルコール、グリセリン、塩水および水を含み、それにシロップを形成するために香味剤または着色剤を添加し得る。持続放出製剤、例えば腸溶性コーティングを含む錠剤もまた意図され得る。
【0018】
非経腸投与のためには、本化合物および滅菌媒体を含む流体単位投与形を製造する。本化合物は、媒体および濃度に依存して、懸濁していても溶解していてもよい。非経腸溶液は、通常化合物を媒体に溶解し、濾過滅菌して、その後適当なバイアルまたはアンプルに充填し、密封する。局所麻酔、防腐剤および緩衝剤のようなアジュバントも媒体に、有利に溶解させる。安定性を増加させるために、本組成物をバイアル充填後に凍結し、真空下で水を除去し得る。
【0019】
非経腸懸濁液は、化合物を溶解する代わりに懸濁し、滅菌媒体に懸濁させる前に酸化エチレンに暴露することにより滅菌する以外、実質的に同じ方法で製造する。界面活性剤または湿潤剤を本組成物中に有利に含め、本発明の化合物の均一な分散を促進する。
【0020】
好ましい非経腸製剤は、滅菌水または通常の塩水を、約7.4またはそれより高いpHで使用する、特に、ペンシクロビルナトリウム塩水和物を含む、水性製剤を含む。
【0021】
通常実施されている通り、本組成物は、通常、意図される医学的処置において使用するための手書きのまたは印刷された指示書を伴う。
【0022】
適当な投与単位は50−1,500mg、例えば、250−1,000mgの活性成分を含み得る。このような投与量は、250mgを1日6回、500mgを1日3回、750mgを1日2回または1,500mgを1日1回または1日に1,500mgの投与量をもたらす何らかの適当な投与計画のような、1日処置として投与し得る。
【0023】
処置期間は1日である。
【0024】
本発明の短期間処置は、好ましくは、再発性口唇ヘルペスの臨床徴候に先立つ前駆症状の発症後できるだけ直ぐに、通常可視病巣の何らかの臨床徴候のない、最初の前駆症状の24時間以内に、好ましくは12時間以内に、より好ましくは1時間以内に行う。
【0025】
古典的口唇ヘルペス病巣は、紅斑、丘疹、水疱、潰瘍、痂皮、痂皮の脱落および紅斑の喪失を含む段階を通って進行する。水疱性(古典的)口唇ヘルペス病巣の最も矛盾がない臨床評価は、抗ウイルス治療後の病巣治癒の時間である。
【0026】
“前駆症状”は、口唇ヘルペスが以前に起きた場所での、および対象患者(study patient)が、患者にとっての口唇ヘルペスの前駆であると感じた、限局性の掻痒、灼熱、刺痛および/または疼痛を意味する。
【0027】
“紅斑”は、何らかの、より進行した段階の証拠がない赤味を言う。エピソードの何らかの身体的徴候の存在は、例え、前駆症状と関連する掻痒、疼痛などが続いていても、前駆症状の終わりを示す。
【0028】
“丘疹”は、より進行した段階の証拠がない、何らかの皮膚の腫脹または固形の隆起を意味する。
【0029】
“水疱”は、より進行した段階の証拠がない、中の流体が角質層を介して見える、皮膚の水疱様隆起の存在を言う。水疱形成、潰瘍化または痂皮形成の何らかの事象の発症は、病巣を水疱性として定義し、また“古典的”とも呼ばれる。水疱、潰瘍および/または硬痂皮が一緒に存在するならば、水疱性(古典的)病巣の段階は、優勢な段階に従い記載すべきである。
【0030】
“潰瘍/軟痂皮”は、水疱がつぶれ、または破裂して潰瘍を形成することを意味する。潰瘍の底は湿っているか、またはある柔らかいケーキ様浸出物を含み得る。水疱、潰瘍および/または硬痂皮が一緒に存在するならば、(水疱性)古典的病巣の段階は、優勢な段階に従い記載すべきである。
【0031】
“硬痂皮”は、潰瘍の乾燥が続き、顕著に硬く、強固で、曲げにくい塊、または瘡蓋、焼痂が形成されていることを意味する。水疱、潰瘍および/または硬痂皮が一緒に存在するならば、(水疱性)古典的病巣の段階は、優勢な段階に従い記載すべきである。
【0032】
“後遺の異常”は、硬痂皮の喪失後に存在し得る腫脹、乾燥皮膚片および/または紅斑を意味する。
【0033】
“正常皮膚”は疾患の全徴候の完全な消失を意味する。
【0034】
“治癒した、(水疱性)古典的病巣”は、痂皮の完全な消失を意味する。後遺の異常はまだ存在し得る。
【0035】
“治癒した、静止した病巣(aborted lesion)”は、疾患の全ての徴候の完全な消失を意味する(正常皮膚)。
【0036】
本発明はまた、口唇ヘルペスの1日処置レジメンにおける、および特に口唇ヘルペス病巣の治癒時間の短縮に使用するための薬剤の製造における、式(A)の化合物または生物学的前駆体、または前記のいずれかの薬学的に許容される塩、リン酸エステルおよび/またはアシル誘導体の使用も提供する。このような処置はここに記載の方法で行い得る。
【0037】
本発明はさらに、有効量の式(A)の化合物または生物学的前駆体、または前記のいずれかの薬学的に許容される塩、リン酸エステルおよび/またはアシル誘導体、および薬学的に許容される担体を含む、再発性口唇ヘルペスの1日処置レジメンに、および特に口唇ヘルペス病巣の治癒時間の短縮に、使用するための医薬組成物も提供する。このような組成物は、以下に記載の方法により製造できる。
【0038】
式(A)の化合物およびそのプロドラッグはインターフェロンと併用して相乗的抗ウイルス効果を示し;そして、これら2成分を含む、同じまたは異なる経路での連続的または同時投与のための組み合わせ製品は、故に、本発明の範囲内である。このような製品はEP−A−271270(Beecham Group p.l.c.)に記載されている。
【0039】
下記臨床データは本発明を説明する。
【実施例】
【0040】
設計
本治験設計は、再発性口唇ヘルペスを有する成人免疫適格性患者における患者開始型(initiated)治療の並行群、二重盲検、ダブルダミー、無作為化プラセボ対照治験である。
【0041】
再発性口唇ヘルペスの病歴を有し、最近12ヶ月に少なくとも3回の発症を有する成人免疫適格性患者を選択する。これらの患者は、彼らの口唇ヘルペスエピソードの少なくとも50%に先立つ前駆症状の病歴およびこれらのエピソードの少なくとも50%で起こる水疱病巣の病歴を有する。
【0042】
スクリーニング後、合計900名の適格患者を3処置群の一つに無作為に割り振り、治験薬を投薬する。全体的な割り振り率は1:1:1である。患者に、口唇ヘルペスの再発性エピソードの臨床徴候が何もなして、最初の前駆症状の1時間以内に処置を開始するよう指示する。
【0043】
各患者は、1日試験処置中に下記の通り、合計9個のカプセルを摂取する;
・グループ1、毎日ファムシクロビル1500mg(1500mg po、続いて12時間後にプラセボ)
・グループ2、毎日ファムシクロビル1500mg(750mg po b.i.d.)または
・グループ3、対比プラセボカプセル(po b.i.d.)。
【0044】
治療開始後、患者に最初の臨床評価のために24時間以内に病院に戻るよう依頼する。1時間以内の処置開始ができない、または、口腔内病巣もしくは鼻腔内の病巣の症状または徴候を有する患者は、次の口唇ヘルペスまで待つよう指示する。口腔内病巣も鼻腔内病巣もこのプロトコールでは処置しない。
【0045】
最初の来院後、患者に連続3日間毎日、そしてその後病巣が治癒するまで1日おきに来院するように患者に依頼する。
【0046】
無作為化後の試験の最長期間は10ヶ月である。
【0047】
下記表1は、口唇ヘルペス処置のための試験設計を要約する。
【表1】

治験薬分配。
病巣を有する患者を、病巣の完全な治癒まで追跡。
【0048】
計測
評価の基準は一次効果変数および二次効果変数を含む。一次効果変数は、処置開始から痂皮が消失するまでの時間と定義する(紅斑は存在していてもよい)、進展が止まっていない一次病巣コンプレックスの治癒(再上皮化)までの治験医が評価する時間である。二次効果変数は、全ての進展が止まっていない病巣(一次病巣コンプレックスおよび二次病巣)の治癒時間、全病巣(進展が止まっていないおよび進展が止まった;後者は治癒時間0とする)、および進展が止まった病巣を有する患者の割合を含み得る。
【0049】
水疱病巣の病巣治癒は痂皮の消失と定義するが、紅斑はまだ存在し得る。来院2から開始して各来院時に、治験医は、現来院時の治験医の診察および前回の来院時以降の患者の日記記載の両方に基づき評価する。治癒が確認されたら、治癒の時期を、日記に報告され、継続的に維持された最も早い時と定義する。この取り決めは一次病巣コンプレックスおよび全水疱病巣の評価に適用する。
【0050】
計測した病巣のタイプは下記の通りである:
【0051】
“一次病巣コンプレックス”は、再発性エピソードの間に出現した第一の病巣、最初の病巣と同じ日に出現したさらなる病巣、または後の日に出現したが、先の病巣から1cm以内にある病巣を意味する。
【0052】
“二次病巣”は、一次病巣コンプレックスの1cm付近からはずれた24時間を超えて現れる病巣を意味する。
【0053】
“進展が止まっていない病巣”は、再上皮化が必要な全病巣(すなわち、水疱、潰瘍、軟痂皮および/または硬痂皮形成が行われている病巣)を意味する。
【0054】
“進展が止まった病巣”は、丘疹の段階を超えて進展しなかった病巣を意味する。
【0055】
病巣評価中、治験医は、診察および日記記載に基づいて、再発が口唇ヘルペス丘疹の段階を超えて進行しなかった患者を同定する。この決定が、来院および日記記入がなかったためにできなかったとき、該患者は、観察されなかった期間は古典的(水疱性)病巣を有していたものとみなす。
【0056】
病巣の変化は各来院時に記録し、そして病巣の段階を記録する。1つ以上の病巣の段階がある時点で存在し得るが、1つのみを記録に記載するから、該疾患を最良に特徴付ける病巣の段階を選択することが重要である(一つの病巣の段階は、その中に数個の病巣を有し得る)。本病巣段階同定は、本治験のために生物学的に非常に意味があることに相異ないが、一方また治験者にも実益がある。ある病巣段階は、短期間すぎるかまたは夜間に起こるため、患者および/または治験医が見落とすことがある。例えば、明確な硬痂皮が、入浴後一時的に潰瘍に戻り得る。
【0057】
一次病巣コンプレックスを評価するとき、下記基準も判断する:
(a)次に最も進んだ段階の存在;
(b)優勢な(>50%)段階;または
(c)段階の完全な不存在または消失。
【0058】
統計学的解析
本治験の一次効果解析は、各活性処置レジメンとプラセボの口唇ヘルペスの一エピソードにおける一次病巣コンプレックスの治癒時間の比較である。本比較は、治癒までの推定中央時間およびそれらの信頼区間、ならびに治癒時間の推定解析を使用して示す。
【0059】
一次結果の推定解析は、一次病巣コンプレックスの治癒時間の計測として、プラセボに対するファムシクロビル短期レジメンの優位性を評価する。全体的タイプ1誤差率(type-one error rate)を、これらの試験に関して5%レベルに維持する。
【0060】
二次解析は、安全性および耐容性;プラセボと比較した疼痛および圧痛の解消における効果;進展が止まった病巣を有する患者の比率の評価による口唇ヘルペス(水疱性(古典的)病巣)の発生の予防におけるそれらの効果;および全病巣(水疱性(古典的)および進展が止まった)の治癒時間の計測としてのそれらの効果について、プラセボと比較したファムシクロビルレジメンを評価する。
【0061】
データは患者の素質、統計およびベースラインの特徴、治験薬、併用治療、効果評価および安全性評価に関して要約する。全連続的変数は、記述統計学を使用して要約する(平均、中央、標準偏差、最小および最大)。カテゴリー変数は、度数分布表を使用して要約する。事象までの時間変数は、四分位数を使用して要約する。
【0062】
完全な統計学的解析プランを、本治験を非盲検とする前に作る。
【0063】
カプラン−マイヤー法を使用して各処置群の治癒時間の分布および治癒時間の中央値を評価する。評価された生存曲線をプロットする。治癒時間の中央値に関する95%信頼区間を、概算される生存時間関数の標準誤差を使用して、それらの標準誤差の一次テイラー・シリーズ近似に基づき構築する。処置中央値差異間の95%信頼区間を、標準誤差を使用して構築する。
【0064】
治癒時間の全体的分布を、説明変数として処置および施設と共に比例ハザードモデルを使用して、処置群間で比較する。エフロン擬似尤度法を関係の解明に使用する。
【0065】
上記比例ハザードモデルに基づいた下記の2つの比較を、一次効果解析に使用する(何らかの活性処置Tについて、θはプラセボと比較したそのlog−ハザード比を意味する):
(1)ファムシクロビル1500mg 1回投与対プラセボ
O1:θファムシクロビル1500mg=0、
(2)1日ファムシクロビル750mg b.i.d.対プラセボ
O2:θファムシクロビル750mg b.i.d.1日=0。
【0066】
(Hochberg 1988)により提案された多重比較のための改変したボンフェローニ法を、多重(全体的)有意性の5%水準を維持するために下記の通り使用する:両方の比較が同時に5%水準の有意性であるならば、両方の比較のヌル仮説は5%水準で棄却される。そうでなければ、各比較は2.5%の有意性レベルで別々に試験する。
【0067】
感受性および予備解析
一次効果仮説を、感受性の目的でパー・プロトコール(per−protocol)集団にわたり繰り返す。処置レジメンについての比例ハザードの仮説は、log−log生存時間プロットを使用して評価する。経時的な比例処置効果は、文献中のデータに基づき予測する。しかしながら、例えば、処置効果が最初の2−3日間に大きくその後小さいときのような、著しい非比例が判明したら、データの時間軸に沿った分割による提示が考慮される。
【0068】
共変数および相互作用を、それらの各項を別々に一次効果解析モデルに付加することにより評価する:共変数および相互作用は:性別、年齢、処置−性別相互作用、処置−施設相互作用、前年の口唇ヘルペス再発(二分する)を含み、何らかの他の共変数を解析プランに付加し得る。
【0069】
安全性評価
安全性の評価は、主に有害事象の頻度に基づく。有害事象は、各処置群について、何らかの有害事象を有する、各体組織に有害事象を有するおよび各個々の有害事象を有する患者の数および割合の提示により要約する。回収した何らかの他の情報(例えば、重症度または治験薬への関係性)を適宜列記する。
【0070】
安全性、包括解析(ITT)、および修飾ITT集団
安全性およびITT集団は、治験薬に曝された(何らかの治験薬を摂取する)全無作為化患者を含む。上記定義を使用して、安全性およびITT集団は同じ患者を含む。標準提示との互換性の為に、全安全性要旨は、安全性集団を使用して標準化し、一方適当な効果要旨(二次パラメータのために水疱および非水疱病巣の両方を含む)はITT集団を使用して標準化する。
【0071】
修飾ITT集団は、処置した再発の間に口唇ヘルペス水疱病巣を発症した全患者を含む。サンプルサイズおよび検出力評価に使用する評価が可能な集団は、治癒時間が決定できるまで治験に残る全修飾ITT患者を含む。
【0072】
パー・プロトコール(PP)集団
この集団は、治験法に何ら重大な違反をしていない全修飾ITT患者を含む。重大な違反と見なされるプロトコールからの逸脱は:最初の前駆症状後1時間を超えて以後の最初の治験薬の摂取;および最初の治験薬の投与の前日から一次病巣コンプレックスの治癒までの間の治験薬以外の抗ウイルス剤の摂取を含む。感受性および診査理由のため、一次効果解析をパー・プロトコール集団について繰り返す。
【0073】
素質
無作為化され、各解析集団内にある患者の数を処置により示す。ITT集団内の患者について、下記情報を要約する:治験薬の最初の投与から最後の来院までの測定としての治験期間、治験来院回数、治験を中止した患者数、中止理由ならびにプロトコール逸脱および違反。
【0074】
統計的およびバックグラウンド特徴
スクリーニング時の患者の統計的および他のバックグラウンド特徴の記述統計学、ならびにウイルスサンプルの試験結果をITT集団にわたる処理により示す。人口学的変数上の処置群の間の統計学的比較を行い、p値を得る。カテゴリー変数(例えば、性別、人種)について、比較は、施設により層を成すコクラン−マンテル−ヘンツェル検定に基づく。連続的尺度で測定する変数(例えば、年齢)について、分散分析(ANOVA)モデルを、計数としての処置および施設と共に使用する。これらのp値は説明目的であり、効果モデルにおける共変数参入の決定に使用しない。
【0075】
サンプルサイズおよび検出力考察
本治験の計画されたサンプルサイズは、処置群あたり150名の評価が可能な患者である。これは、一次水疱性病巣コンプレックスの中央治癒時間に基づき、プラセボと比較したファムシクロビルの2種のレジメン(1日1,500mgを1回量としてまたは750mg b.i.d.として)の処置効果の信頼ある評価を提供するために選択する。
【0076】
説明目的で、中央時間の信頼区間の幅を予測する。非仮説試験の非棄却領域としての信頼区間の定義を使用して、有意として検出される中央差異の最小サイズを見つける。中央差異に対するこの試験は、パラメータ表示によりハザード比のための同等な仮説試験へ変化できる。
【0077】
文献中のデータに基づき、プラセボでの再発性口唇ヘルペスの中央治癒時間は5〜5.5日間である。患者集団の治癒過程は、
S(t)=exp(−λtγ) (式中γ=22)
の形の生存関数を有し、ワイブル分布と一致する加速を示す傾向にある。
【0078】
各150名の患者を有する一つの活性処置群とプラセボの比較のために、log−rank検定の検出力の評価は下記の通りである。上記の分布仮定の下に、ハザード率の試験は、中央治癒時間の試験と同じであることに注意すべきである。
【表2】

形状パラメータγ=2を有するワイブル分布と仮定
n-Query Advisor(登録商標) 4.0から
【0079】
1日を超える中央値の何らかの差異が、少なくとも88%検出力で検出されることを見ることができる。結果として、各群150名の患者のサンプルサイズで、88%を超える確率で、中央生存時間の信頼区間が概算される中央値の1日以内に適合することが予測される。
【0080】
表2は一次効果変数に基づく下記の2つの仮説、一次病巣コンプレックスの治癒時間(何らかの活性処置Tについて、θプラセボと比較したそのlog−ハザード比を意味する)の検出力の評価に直接使用する:
(1)ファムシクロビル1,500mg 1回投与対プラセボ
O1:θファムシクロビル1500mg=0、
(2)1日ファムシクロビル750mg b.i.d.(bis in dieまたは1日2回)対プラセボ
O2:θファムシクロビル750mg b.i.d.1日=0。
【0081】
何らかの特定の活性処置群が1.45のハザード比を有するならば、ボンフェローニ−ホッホバーグ法に従うプラセボからのその差異を決定するための検出力は少なくとも82%である。
【0082】
効果評価
示す信頼区間は95%範囲に基づく。全統計学的試験はα=0.05を使用した両側である。
【0083】
一次効果変数
変数1である一次効果変数は、処置開始から痂皮の消失までの時間として定義する、一次病巣コンプレックスの治験医が評価する治癒時間である(水疱/潰瘍の段階のみを介して進行する水疱性(古典的)病巣については、紅斑は許される)。
【0084】
一次効果変数である一次病巣コンプレックスの治験医が評価する治癒時間は、2つのアプローチにおいて修飾ITT集団にわたり解析する:一次評価はカプラン−マイヤー法に基づき、統計学的試験は比例ハザードモデルに基づく。
【0085】
二次効果変数
二次効果変数は変数2−7を含む。変数2は一次病巣コンプレックスの治癒時間(痂皮の消失)である(非水疱病巣は時間0を指定する)。変数3は全水疱病巣の治癒時間(痂皮の消失)である(非水疱病巣は時間0を指定する)。変数4は、全病巣が正常皮膚に戻る時間である(紅斑なし)。変数5は進展が止まった病巣(すなわち、非水疱性)を有する患者の割合である。変数6は病巣圧痛および疼痛を有する患者の割合である。変数7は、発生から消失までと定義する病巣圧痛および疼痛の期間である。
【0086】
二次効果変数の解析は、多様性について調節せずに、0.05の名目αレベル上で行う。事象までの時間変数、上記の変数2、3、4および7は、説明変数として処置および施設を使用した比例ハザードモデルを使用して、ITT集団上の患者について解析する。エフロン擬似尤度法を関係の解明に使用する。各ファムシクロビルレジメンをプラセボに対して比較する。ハザード比および処置特異的中央時間の95%信頼区間を提供する。一次効果変数について記載の共変数および相互作用を、別々に、それらの各項を別々に一次効果解析モデルに付加することにより評価する。比例として測定した効果結果、変数5および6を、各ファムシクロビル処置群およびプラセボの間で、施設により層を成すコクラン−マンテル−ヘンツェル(CMH)検定を使用して比較する。
【0087】
一次および重要な二次効果結果を表3に示す。
【表3】

中央時間および中央時間の周りの95%信頼区間を示す
進展が止まった病巣は治癒時間0とする
NS=有意ではない
【0088】
修飾ITT集団について、1日ファムシクロビル750mg b.i.d.および1回投与としてのファムシクロビル1,500mgは、治験医が評価する一次病巣コンプレックスの治癒時間の軽減においてプラセボより優位である(p<0.001)。治癒時間についてのファムシクロビル750mgおよびファムシクロビル1,500mg−プラセボハザード比は、各々2.05および1.64であった。一次病巣コンプレックスの概算される治癒中央時間はファムシクロビル750mg、ファムシクロビル1500mgおよびプラセボで各々4.0、4.4および6.2日であった。同様の結果が、解析をPP集団で行ったときに見られる。全ての進展が止まっていない(一次および二次)病巣および全ての(進展が止まっていないおよび止まった)病巣の治癒時間は一次効果変数と一致する(表3)。いずれの処置群でも進展が止まった病巣を有する患者の割合に差はない(29−34%の範囲)。試験した全ての効果パラメータについて2つのファムシクロビル処置群間で差は見られない。
【0089】
考察
一次病巣(最初の日に出現する病巣)の治癒時間は、FCV 1回1,500mgおよび1日750mg2回について、プラセボと比較して有意に速く、各々4.4および4.0日対6.2日であった(p<.001)。同様に、全病巣(一次および二次複合)の治癒時間は、プラセボ群と比較して2つのFCV群で減少し、各々中央時間4.5および4.1日対6.6日間であった(p<.001)。病巣の治癒時間は両FCV レジメンで類似であった。進展が止まったエピソードを有する患者の割合については群間で差異はなかった。高投与量FCVは十分に耐容性であり、プラセボと同程度安全であった。
【0090】
再発性口唇ヘルペスの臨床徴候に先立つ前駆症状の発症から1時間以内に摂取すれば、750mg b.i.d.または1,500mg q.d.いずれかのファムシクロビルは、プラセボと比較して病巣の治癒時間を有意に減少させる。免疫適格性患者における再発性口唇ヘルペスのためのファムシクロビルでの1日処置は、再発性口唇ヘルペスの進展が止まっていない一次病巣、進展が止まっていない一次および二次病巣、および全(進展が止まっていないおよび進展が止まった)病巣の治癒時間の減少において、プラセボよりも優れた、安全で、十分に耐容性で、そして有効な処置である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とするヒトにおける再発性口唇ヘルペスの処置法であって、該ヒトに有効量の化合物9−(4−アセトキシ−3−アセトキシメチルブト−1−イル)−2−アミノプリン(ファムシクロビル)、または薬学的に許容されるその塩を1日の処置期間投与することを含む、方法。
【請求項2】
処置を前駆症状が発症して1時間以内に開始する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
処置を前駆症状の24時間以内に開始する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
処置期間が1日である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
処置を再発性口唇ヘルペスを有する免疫適格性ヒトで行う、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ファムシクロビルを1日の期間、1,500mgの投与量で投与する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ファムシクロビルを250mgの投与量で1日6回投与する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ファムシクロビルを500mgの投与量で1日3回投与する、請求項6記載の方法。
【請求項9】
ファムシクロビルを750mgの投与量で1日2回投与する、請求項6記載の方法。
【請求項10】
処置を、再発性口唇ヘルペスを有する免疫適格性ヒトで行う、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ファムシクロビルを経口で投与する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
化合物を非経腸的に投与する、請求項1記載の方法。

【公開番号】特開2013−49687(P2013−49687A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−232172(P2012−232172)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2008−504316(P2008−504316)の分割
【原出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】