説明

1液型歯科用組成物

【課題】エアブローの終点を容易に判別できる1液型歯科用組成物を提供する。
【解決手段】溶媒(A)、酸性化合物(B)、および色素(C)を含み、当該溶媒(A)を蒸散させた場合に色調が変化する1液型歯科用組成物とする。当該歯科用組成物においては、前記溶媒(A)をエアブローにより蒸散させた場合に、前記溶媒(A)の蒸散前後の色差ΔE*が3以上であることが好ましい。前記溶媒(A)の含有量は、歯科用組成物中5〜70質量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒を含み、1液型歯科用ボンディング材、1液型歯科用プライマー、1液型歯科用コーティング材等に好適な1液型歯科用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1液型歯科用ボンディング材、1液型歯科用プライマー、1液型歯科用コーティング材等に用いられる、溶媒を含む1液型歯科用組成物は、臨床では、エアブローによって溶媒を蒸散させて使用される。しかしながら、エアブローが不十分で、溶媒が残存した場合には、接着強度の低下などの臨床上の問題が生じる。この問題に対して、医師は十分な時間をかけてエアブローすることで対応しているが、エアブローの終点が判りにくいという課題がある。
【0003】
歯科治療時の操作の終了を判別する方法として、特許文献1には、酸感受性色素および水を含む液体で歯科構造の表面を湿潤させ、その上に、エッチング組成物、セルフエッチング接着剤、粘着性組成物等の酸性材料を塗布し、塗布された歯科構造表面の部分に視覚的に確認可能な色の変化を生じさせる方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、口腔環境において使用するための接着剤であって、充填剤、硬化性樹脂、硬化剤、および着色剤を含み、化学放射線に露光する前に初期色を有し、そして化学放射線への露光に続いて最終色を有し、前記初期色が前記最終色とは異なる接着剤が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ラジカル重合性単量体と光重合開始剤とを含み、当該光重合開始剤が、α−ジケトンと特定の色素から構成され、光硬化によりその色素の色調が脱色されることを特徴とする光重合変色性組成物が開示されている。
【0006】
しかし、これらは、酸性材料の所望の位置への塗布終了を判別する技術、および光硬化終了を判別する技術であり、現在のところ、エアブローの終了を判別する技術は開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−505924号公報
【特許文献2】特表2004−510796号公報
【特許文献3】特開平2−245003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、エアブローの終点を容易に判別できる1液型歯科用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成した本発明は、溶媒(A)、酸性化合物(B)、および色素(C)を含み、当該溶媒(A)を蒸散させた場合に色調が変化する1液型歯科用組成物である。
【0010】
前記歯科用組成物においては、前記溶媒(A)をエアブローにより蒸散させた場合に、前記溶媒(A)の蒸散前後の色差ΔE*が3以上であることが好ましい。前記溶媒(A)の含有量は、歯科用組成物中5〜70質量%であることが好ましい。前記歯科用組成物の好適な一実施態様においては、前記溶媒(A)の含有量が、歯科用組成物中5〜70質量%であり、前記溶媒(A)を、その含有量が3質量%となるまでエアブローにより蒸散させた場合に、前記溶媒(A)の蒸散前後の色差ΔE*が3以上である。
【0011】
前記色素(C)は、pH0.1〜5.0に変色域を有する化合物であることが好ましい。前記酸性化合物(B)は、酸性基を有する重合性単量体であることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上記の1液型歯科用組成物を用いたボンディング材である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エアブローの終点を容易に判別できる1液型歯科用組成物が提供される。本発明の1液型歯科用組成物を歯科治療に用いることにより、エアブロー作業を確実に効率よく行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者が鋭意検討した結果、溶剤を含む1液型歯科用組成物に特定の色素を配合することによって、エアブローの終点を目視で判別できることを見出した。具体的には、本発明の基本原理は、酸性化合物と溶剤とを含む1液型歯科用組成物をエアブローして溶媒を蒸散させた際には、酸性化合物の濃度が高くなることにより歯科用組成物のpHが低下するが、pHに応じて変色する色素を1液型歯科用組成物に配合することによって、エアブローの進行に伴うpH変化を利用して色素を変色させ、エアブローの終点を知らせるというものである。
【0015】
溶媒(A)
溶媒(A)としては、水、有機溶媒およびこれらの混合溶媒を使用することができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル等を用いることができる。これらの中でも、生体に対する安全性と、揮発性に基づく除去の容易さの双方を勘案した場合、有機溶媒が水溶性有機溶媒であることが好ましく、具体的には、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、アセトン、及びテトラヒドロフランが好ましく用いられる。
【0016】
溶媒(A)の含有量としては、歯科材料を構成できる限り特に制限はないが、歯科用組成物中、5〜70質量%が好ましく、5〜50質量%が好ましい。溶媒(A)の含有量が70質量%を超える場合、エアブローにかかる時間が長くなり、また、歯科用組成物の流動性が高くなりすぎて、エアブロー操作に支障をきたす場合がある。一方、溶媒(A)の含有量が5質量%未満の場合、歯科用組成物が象牙質のコラーゲン層に浸透しにくくなるとともに、溶媒蒸散前後で十分なpH変化が起こらなくなるおそれがある。
【0017】
溶媒(A)は、酸性化合物(B)を電離させるべきであることから、溶媒(A)は、極性を有する溶媒であることが好ましく、歯科用組成物がコラーゲン層に浸透しやすくなることから、水を含むことが好ましい。水は、悪影響を及ぼすような不純物を含有していないことが好ましく、蒸留水又はイオン交換水が好ましい。水の含有量としては、溶媒(A)中、0.1〜80質量%が好ましく、1〜60質量%がより好ましい。
【0018】
酸性化合物(B)
酸性化合物(B)は、歯科用組成物と歯質との接着を強固にするために、歯面をエッチングする機能を有する。歯科用組成物が、酸性化合物(B)を含むことによって、1液型の歯科材料を構成することができる。酸性化合物は、歯面(特に象牙質面)をエッチングできるものである限り特に制限はなく、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酸性基を有する重合性単量体(D)等を用いることができる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。酸性基を有する重合性単量体(D)を含む歯科用組成物は、酸性基を有する重合性単量体(D)自身が重合性基を有するため重合阻害物質とならず、接着性能の点で有利である。また、酸性基を有する重合性単量体(D)は、歯科用組成物にプライマー機能を付与し得る。
【0019】
酸性基を有する重合性単量体(D)は、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。酸性基を有する重合性単量体(D)としては、特に限定されないが、分子内に1個のカルボキシル基又はその酸無水物基を有する一官能性重合性単量体、分子内に複数のカルボキシル基又はその酸無水物基を有する一官能性重合性単量体、分子内にホスフィニルオキシ基又はホスホノオキシ基を有する一官能性重合性単量体(一官能性ラジカル重合性リン酸エステルと呼ぶことがある)、及びこれらの酸性基を有する多官能性(二官能性以上の)重合性単量体などが挙げられる。
【0020】
分子内に1個のカルボキシル基又はその酸無水物基を有する一官能性重合性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレート、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、O−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、p−ビニル安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸等及びこれらの化合物のカルボキシル基を酸無水物基化した化合物が挙げられる。
【0021】
分子内に複数のカルボキシル基又はその酸無水物基を有する一官能性重合性単量体の例としては、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−メタクリロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテートアンハイドライド、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸無水物、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−2,3,6−トリカルボン酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルカルボニルプロピオノイル−1,8−ナフタル酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,8−トリカルボン酸無水物、9−(メタ)アクリロイルオキシノナン−1,1−ジカルボン酸、13−(メタ)アクリロイルオキシトリデカン−1,1−ジカルボン酸、11−(メタ)アクリルアミドウンデカン−1,1−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0022】
分子内にホスフィニルオキシ基又はホスホノオキシ基を有する一官能性重合性単量体(一官能性ラジカル重合性リン酸エステルと呼ぶことがある)の例としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンフォスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリルアミドエチルジハイドロジェンフォスフェート等が挙げられる。
【0023】
その他の酸性基を有する一官能性重合性単量体として、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、10−スルホデシル(メタ)アクリレート等の分子内にスルホ基を有する一官能性重合性単量体などが挙げられる。
【0024】
前記多官能性の重合性単量体としては、特に限定されないが、ビス(6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル)ハイドロジェンフォスフェート、ビス(10−(メタ)アクリロイルオキシデシル)ハイドロジェンフォスフェート、ビス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル}ハイドロジェンフォスフェート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートハロドロジェンフォスフェート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートハロドロジェンフォスフェート等が好適なものとして例示される。
【0025】
酸性化合物(B)の含有量は、歯科用組成物中、0.1〜50質量%が好ましい。酸性化合物(B)の含有量が0.1質量%未満の場合、酸エッチング効果やプライマー処理効果(重合性単量体(D)使用時)が得られないおそれがあり、より好適には0.5質量%以上であり、さらに好適には1質量%以上である。一方、酸性化合物(B)の配合量が50質量%を超える場合、十分な硬化性が得られず、接着性能の低下を招くおそれがあり、より好適には40質量%以下であり、さらに好適には30質量%以下である。
【0026】
色素(C)
本発明において色素(C)には、溶媒(A)の蒸散前後のpH変化に応じて変色するものを使用し、好適には、pH0.1〜5.0に変色域を有する化合物を使用する。このような化合物は、pH0.1〜5.0に変色域を有する限り特に限定はなく、メチルオレンジ、メチルイエロー、メタクレゾールパープル、チモールブルー、クレゾールレッド、ピクリン酸、メチルバイオレット、コンゴーレッド、2,4−ジニトロフェノール、2,5−ジニトロフェノール、メタニルイエロー、パラキシレノールブルー、アシッドオレンジ、ペンタメトキシレッド、ベンジルオレンジ、テトラブロモフェノールブルー、ブロモクロロフェノールブルー、ブロモフェノールブルー、エチルオレンジ、ブロモクレゾールグリーン、アシッドレッド、ラクモイド、テトラブロモフェノールフタレインエチルエステルカリウム塩などが好適なものとして例示される。これらの中から、歯科用組成物の溶媒(A)蒸散前のpH値と、溶媒(A)蒸散後のpH値を勘案して、適切な変色域を有する色素(C)を採用すればよい。
【0027】
例えば、単純に、溶媒(A)が十分に蒸散したといえる歯科用組成物のpH値において変色する色素(C)を用いればよい。臨床においては、エアブローにより溶媒(A)を可能な限り蒸散させているが、実際には患者への負担を鑑み、塗布した歯科用組成物の表面がエアブローにより波打たなくなる程度に溶媒(A)を蒸散させた状態でエアブローを終了しており、若干量の溶媒(A)を含む状態となっている。溶媒含有量が少ないほど歯科用組成物の接着強度は良好になるものであり、患者の負担にならない程度の時間エアブローをさらに進めた場合には、溶媒(A)の含有量は3質量%以下にまで到達する。そこで、好適な一実施態様においては、塗布した歯科用組成物の表面が波打たなくなるようになる溶媒(A)の含有量であって、溶媒(A)の含有量が3質量%よりも高いときの歯科用組成物のpH値において変色する色素(C)を用いる。この実施態様では、歯科用組成物の色調が変化すれば、医師はエアブローを終了してよいことになる。
【0028】
別の実施態様として、医師にエアブローの終点が近いことを知らせるために、塗布した歯科用組成物の表面が波打たなくなるようになる直前の溶媒含有量の歯科用組成物のpH値において、変色する色素(C)を用いてもよい。この実施態様では、歯科用組成物の色調が変化すれば、医師は、エアブローの終点が近いことを認識し、あと数秒程度エアブローを実施すれば、エアブローを終了できることになる。
【0029】
さらに別の実施態様では、pH変色域と色調の異なる2種類以上の色素を併用して、溶媒の蒸散の程度を段階的に判別できるようにしてもよい。
【0030】
なお、適当な変色域の色素(C)がない場合には、酸性化合物(B)の種類と含有量を適宜変更することによって、歯科用組成物のpH値を調整することが可能である。
【0031】
色素(C)の含有量は、歯科用組成物中、0.000001〜1質量%が好ましい。色素(C)の含有量が0.000001質量%未満の場合、変色を判別し難くなるおそれがあり、より好適には0.00005質量%以上であり、さらに好適には0.0001質量%以上である。一方、色素(C)の含有量が1質量%を超える場合、着色による審美性が問題となるおそれがあり、より好適には0.05質量%以下であり、さらに好適には0.1質量%以下である。
【0032】
本発明の1液型歯科用組成物は、溶媒(A)を蒸散させた場合に色調が変化することに特徴がある。この色調の変化の程度に関して、溶媒(A)をエアブローにより蒸散させた場合に、溶媒(A)の蒸散前後の色差ΔE*が3以上であることが好ましい。このエアブローは、通常、室温(例、25℃)で行う。本発明において色差とは、L***表色系における座標L*、a*、b*を用いて、2つの試料(色刺激)について、式
ΔE*=((L1*−L2*2+(a1*−a2*2+(a1*−b2*21/2
より求められる色差ΔE*(ΔE*ab)のことをいう(JIS Z8729参照)。
【0033】
溶媒(A)をエアブローにより蒸散させて色調の変化を確認する場合、残存する溶媒(A)の含有量の基準は、例えば、3質量%とする。従って、本発明の1液型歯科用組成物の好適な実施態様は、溶媒(A)の含有量が、歯科用組成物中5〜70質量%であり、前記溶媒(A)を、その含有量が3質量%となるまでエアブローにより蒸散させた場合に、前記溶媒(A)の蒸散前後の色差ΔE*が3以上である1液型歯科用組成物である。
【0034】
本発明の1液型歯科用組成物は、用途に応じて、上記(A)〜(C)以外の成分を含んでいてもよい。上記以外の成分としては、1個の重合性基と1個以上の水酸基とを有する重合性単量体(E)(酸性基を有しない)、架橋性の重合性単量体(F)(酸性基を有しない)等の重合性単量体成分、及び重合開始剤(G)、重合促進剤(H)、フィラー(I)などが挙げられる。
【0035】
本発明の1液型歯科用組成物は、歯科材料として必要な硬化性を付与するために、重合性単量体を含むように構成される。そのためには、酸性化合物(B)に重合性単量体(D)を用いてもよいし、1個の重合性基と1個以上の水酸基とを有する重合性単量体(E)、架橋性の重合性単量体(F)等の重合性単量体を配合してもよい。複数種の重合性単量体を併用することもできる。
【0036】
重合性基1個と水酸基1個以上とを有する重合性単量体(E)
重合性単量体(E)は親水性が高く、象牙質のコラーゲン層へ浸透しやすいため、本発明の歯科用組成物が重合性単量体(E)を含む場合には、プライマー機能が付与され、接着強度も高くなる。重合性単量体(E)の重合性基としては、ラジカル重合が容易である観点から、(メタ)アクリル基、又は(メタ)アクリルアミド基が好ましい。重合性単量体(E)は歯科用組成物の成分として用いられるが、口腔内は湿潤な環境であるため、加水分解などにより重合性基が脱離するおそれがある。脱離した重合性基の生体への刺激性を考慮した場合、重合性基は、メタクリル基、又はメタクリルアミド基であることが好ましい。
【0037】
重合性単量体(E)は、歯科用途に使用可能なものである限り特に制限はなく、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。重合性単量体(E)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、これらの中でも、象牙質のコラーゲン層への浸透性の改善の観点からは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレートが好ましく、特に好ましくは2−ヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0038】
前記重合性単量体(E)の配合量は特に限定されないが、全重合性単量体成分中1〜90質量%が好ましい。重合性単量体(E)の配合量がこのような範囲にある歯科用組成物は、象牙質のコラーゲン層への浸透が良好であるとともに、接着強度が良好となる。重合性単量体(E)の配合量が1質量%未満の場合、重合性単量体(E)による象牙質のコラーゲン層への浸透の寄与が得られないおそれがあるとともに、接着強度が低下するおそれがある。重合性単量体(E)の配合量は、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、7質量%以上であることが特に好ましい。一方、重合性単量体(E)の配合量が90質量%を超える場合、十分な硬化性が得られずに硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。このため、接着強度が低下するおそれがある。重合性単量体(E)の配合量は、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。
【0039】
架橋性の重合性単量体(F)
本発明の歯科用組成物が架橋性の重合性単量体(F)を含む場合には、接着強度が高くなる等の利点を有する。
【0040】
架橋性の重合性単量体(F)は、歯科用途に使用可能なものである限り特に制限はなく、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。架橋性の重合性単量体(F)としては、特に限定されないが、芳香族化合物系の二官能性重合性単量体、脂肪族化合物系の二官能性重合性単量体、三官能性以上の重合性単量体などが挙げられる。
【0041】
芳香族化合物系の二官能性重合性単量体の例としては、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン(通称「Bis−GMA」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテートなどが挙げられる。
【0042】
脂肪族化合物系の二官能性重合性単量体の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)等が挙げられる。
【0043】
三官能性以上の重合性単量体の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、及び1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン等が挙げられる。
【0044】
架橋性の重合性単量体(F)の配合量は特に限定されないが、全重合性単量体成分中、1〜90質量%が好ましい。架橋性の重合性単量体(F)の配合量が1質量%未満の場合、充分な接着強度が得られないおそれがあり、より好適には2質量%以上であり、さらに好適には5質量%以上である。一方、架橋性の重合性単量体(F)の配合量が90質量%を超える場合、組成物の象牙質のコラーゲン層への浸透が不十分となり、高い接着強度が得られなくなるおそれがあり、より好適には80質量%以下であり、さらに好適には70質量%以下である。
【0045】
重合開始剤(G)
本発明の歯科用組成物が、重合開始剤(G)を含む場合には、硬化性が向上する。重合開始剤(G)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。特に、光重合及び化学重合の重合開始剤が、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用される。
【0046】
光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、水溶性アシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α−ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α−アミノケトン系化合物などが挙げられる。
【0047】
上記光重合開始剤として用いられる(ビス)アシルホスフィンオキサイド類のうち、アシルフォスフィンオキサイド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネートなどが挙げられる。ビスアシルフォスフィンオキサイド類としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0048】
上記光重合開始剤として用いられる水溶性アシルフォスフィンオキサイド類は、アシルフォスフィンオキサイド分子内にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ピリジニウムイオン又はアンモニウムイオンを有することが好ましい。例えば、水溶性アシルフォスフィンオキサイド類は、欧州特許第0009348号明細書又は特開昭57−197289号公報に開示されている方法により合成することができる。
【0049】
上記水溶性アシルフォスフィンオキサイド類の具体例としては、モノメチルアセチルフォスフォネート・ナトリウム、モノメチル(1−オキソプロピル)フォスフォネート・ナトリウム、モノメチルベンゾイルフォスフォネート・ナトリウム、モノメチル(1−オキソブチル)フォスフォネート・ナトリウム、モノメチル(2−メチル−1−オキソプロピル)フォスフォネート・ナトリウム、アセチルフォスフォネート・ナトリウム、モノメチルアセチルフォスフォネート・ナトリウム、アセチルメチルフォスフォネート・ナトリウム、メチル4−(ヒドロキシメトキシフォスフィニル)−4−オキソブタノエート・ナトリウム塩、メチル−4−オキソフォスフォノブタノエート・モノナトリウ厶塩、アセチルフェニールフォスフィネート・ナトリウム塩、(1−オキソプロピル)ペンチルフォスフィネート・ナトリウム、メチル−4−(ヒドロキシペンチルフォスフィニル)−4−オキソブタノエート・ナトリウム塩、アセチルペンチルフォスフィネート・ナトリウム、アセチルエチルフォスフィネート・ナトリウム、メチル(1,1−ジメチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム、(1,1−ジエトキシエチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム、(1,1−ジエトキシエチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム、メチル−4−(ヒドロキシメチルフォスフィニル)−4−オキソブタノエート・リチウム塩、4−(ヒドロキシメチルフォスフィニル)−4−オキソブタノイックアシッド・ジリチウム塩、メチル(2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−チアゾリディン−2−イル)フォスフォナイト・ナトリウム塩、(2−メチルパーヒドロ−1,3−ディアジン−2−イル)フォスフォナイト・ナトリウム塩、アセチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジエトキシエチル)フォスフォナイト・ナトリウム塩、(1,1−ジエトキシエチル)メチルフォスフォナイト・ナトリウム塩、メチル(2−メチルオキサチオラン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2,4,5−トリメチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1,1−プロポキシエチル)フォスフィネート・ナトリウム塩、(1−メトキシビニル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(1−エチルチオビニル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチルパーヒドロ−1,3−ジアジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチルパーヒドロ−1,3−チアジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−ジアゾリジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−チアゾリジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、(2,2−ジシアノ−1−メチルエチニル)フォスフィネート・ナトリウム塩、アセチルメチルフォスフィネートオキシム・ナトリウ厶塩、アセチルメチルフォスフィネート−O−ベンジルオキシム・ナトリウム塩、1−[(N−エトキシイミノ)エチル]メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−フェニルイミノエチル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−フェニルヒドラゾンエチル)フォスフィネート・ナトリウム塩、[1−(2,4−ジニトロフェニルヒドラゾノ)エチル]メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、アセチルメチルフォスフィネートセミカルバゾン・ナトリウム塩、(1−シアノ−1−ヒドロキシエチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(ジメトキシメチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、フォーミルメチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−オキソプロピル)フォスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルフォスフィネート・ドデシルグアニジン塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルフォスフィネート・イソプロピルアミン塩、アセチルメチルフォスフィネートチオセミカルバゾン・ナトリウム塩、1,3,5−トリブチル−4−メチルアミノ−1,2,4−トリアゾリウム(1,1−ジメトキシエチル)−メチルフォスフィネート、1−ブチル−4−ブチルアミノメチルアミノ−3,5−ジプロピル−1,2,4−トリアゾリウム(1,1−ジメトキシエチル)−メチルフォスフィネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドナトリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドカリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドのアンモニウム塩などが挙げられる。さらに、特開2000−159621号公報に記載されている化合物も挙げられる。
【0050】
これら(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類及び水溶性アシルフォスフィンオキサイド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドナトリウム塩が特に好ましい。
【0051】
上記光重合開始剤として用いられるチオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩としては、例えば、チオキサントン、2−クロルチオキサンセン−9−オン、2−ヒドロキシ−3−(9−オキシ−9H−チオキサンテン−4−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(1−メチル−9−オキシ−9H−チオキサンテン−4−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(1,3,4−トリメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドなどが使用できる。
【0052】
これらチオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩の中でも、特に好適なチオキサントン類は、2−クロルチオキサンセン−9−オンであり、特に好適なチオキサントン類の第4級アンモニウ厶塩は、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドである。
【0053】
上記光重合開始剤として用いられるケタール類の例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等が挙げられる。
【0054】
上記光重合開始剤として用いられるα−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ジベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。この中でも、可視光域に極大吸収波長を有している観点から、カンファーキノンが特に好ましい。
【0055】
上記光重合開始剤として用いられるクマリン化合物の例としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−チェノイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイルクマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3,5−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3−ベンゾイル−6−ブロモクマリン、3,3’−カルボニルビスクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3−カルボキシクマリン、3−カルボキシ−7−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−6−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−8−メトキシクマリン、3−アセチルベンゾ[f]クマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−ニトロクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノ)クマリン、7−メトキシ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−(4−ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3−(4−エトキシシンナモイル)−7−メトキシクマリン、3−(4−ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3−(4−ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3−[(3−ジメチルベンゾチアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3−[(1−メチルナフト[1,2−d]チアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3,3’−カルボニルビス(6−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジメチルアミノクマリン)、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−アセチル−7−(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、10−(2−ベンゾチアゾイル)−2,3,6、7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン等の特開平9−3109号公報、特開平10−245525号公報に記載されている化合物が挙げられる。
【0056】
上述のクマリン化合物の中でも、特に、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)及び3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)が好適である。
【0057】
上記光重合開始剤として用いられるアントラキノン類の例としては、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノンなどが挙げられる。
【0058】
上記光重合開始剤として用いられるベンゾインアルキルエーテル類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0059】
上記光重合開始剤として用いられるα−アミノケトン類の例としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0060】
これらの光重合開始剤の中でも、(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類及びその塩、α−ジケトン類、及びクマリン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、可視及び近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す歯科用組成物が得られる。
【0061】
重合開始剤(G)のうち化学重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。上記の化学重合開始剤に使用される有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0062】
上記化学重合開始剤として用いられるケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
【0063】
上記化学重合開始剤として用いられるハイドロパーオキサイドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0064】
上記化学重合開始剤として用いられるジアシルパーオキサイドとしては、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0065】
上記化学重合開始剤として用いられるジアルキルパーオキサイドとしては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等が挙げられる。
【0066】
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン及び4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等が挙げられる。
【0067】
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシエステルとしては、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート及びt−ブチルパーオキシマレリックアシッド等が挙げられる。
【0068】
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0069】
これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルパーオキサイドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルパーオキサイドが特に好ましく用いられる。
【0070】
重合開始剤(G)の配合量は特に限定されないが、歯科用組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体成分の全量100質量%に対して、0.001〜30質量%が好ましい。重合開始剤(G)の配合量が0.001質量%未満の場合、重合が十分に進行せず、接着力の低下を招くおそれがあり、より好適には0.05質量%以上である。一方、重合開始剤(G)の配合量が30質量%を超える場合、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、十分な接着強度が得られなくなるおそれがあり、さらには組成物からの析出を招くおそれがあるため、より好適には20質量%以下である。
【0071】
重合促進剤(H)
本発明の歯科用組成物が重合促進剤(H)を含む場合には、硬化性がさらに向上する。重合開始剤(G)との併用が特に効果的である。重合促進剤(H)としては、アミン類、スルフィン酸及びその塩、ボレート化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、銅化合物、スズ化合物、バナジウム化合物、ハロゲン化合物、アルデヒド類、チオール化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ尿素化合物などが挙げられる。
【0072】
重合促進剤(H)として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、組成物の硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、その中でもN−メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましく用いられる。
【0073】
また、芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル及び4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0074】
重合促進剤(H)として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0075】
重合促進剤(H)として用いられるボレート化合物は、好ましくはアリールボレート化合物である。好適に使用されるアリールボレート化合物を具体的に例示すると、1分子中に1個のアリール基を有するボレート化合物として、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−クロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−フロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、トリアルキル[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、トリアルキル(p−ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びトリアルキル(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基及びn−ドデシル基等からなる群から選択される少なくとも1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
【0076】
また、1分子中に2個のアリール基を有するボレート化合物としては、ジアルキルジフェニルホウ素、ジアルキルジ(p−クロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−フロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、ジアルキルジ[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、ジアルキルジ(p−ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びジアルキルジ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基及びn−ドデシル基等からなる群から選択される少なくとも1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
【0077】
さらに、1分子中に3個のアリール基を有するボレート化合物としては、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリ(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−フロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリ[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリ(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びモノアルキルトリ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基又はn−ドデシル基等から選択される1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
【0078】
さらに1分子中に4個のアリール基を有するボレート化合物としては、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フロロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素、(p−フロロフェニル)トリフェニルホウ素、(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルトリフェニルホウ素、(p−ニトロフェニル)トリフェニルホウ素、(m−ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(p−ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(m−オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素及び(p−オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
【0079】
これらアリールボレート化合物の中でも、保存安定性の観点から、1分子中に3個又は4個のアリール基を有するボレート化合物を用いることがより好ましい。また、これらアリールボレート化合物は1種又は2種以上を混合して用いることも可能である。
【0080】
重合促進剤(H)として用いられるバルビツール酸誘導体としては、バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジフェニルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−イソプロピルバルビツール酸、5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−n−ブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロペンチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−1−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、5−メチルバルビツール酸、5−プロピルバルビツール酸、1,5−ジエチルバルビツール酸、1−エチル−5−メチルバルビツール酸、1−エチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジエチル−5−ブチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−メチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−オクチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−ヘキシルバルビツール酸、5−ブチル−1−シクロヘキシルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸及びチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属類が好ましい)が挙げられ、これらバルビツール酸類の塩としては、例えば、5−ブチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム及び1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸ナトリウム等が例示される。
【0081】
特に好適なバルビツール酸誘導体としては、5−ブチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、及びこれらバルビツール酸類のナトリウム塩が挙げられる。
【0082】
重合促進剤(H)として用いられるトリアジン化合物としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,4−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(o−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−ブトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−エチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ジアリルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が例示される。
【0083】
上記で例示したトリアジン化合物の中で特に好ましいものは、重合活性の点で2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンであり、また保存安定性の点で、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。上記トリアジン化合物は1種又は2種以上を混合して用いても構わない。
【0084】
重合促進剤(H)として用いられる銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅等が好適に用いられる。
【0085】
重合促進剤(H)として用いられるスズ化合物としては、例えば、ジ−n−ブチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレートなどが挙げられる。特に好適なスズ化合物は、ジ−n−オクチル錫ジラウレート及びジ−n−ブチル錫ジラウレートである。
【0086】
重合促進剤(H)として用いられるバナジウム化合物は、好ましくはIV価及び/又はV価のバナジウム化合物類である。IV価及び/又はV価のバナジウム化合物類としては、例えば、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)等の特開2003−96122号公報に記載されている化合物が挙げられる。
【0087】
重合促進剤(H)として用いられるハロゲン化合物としては、例えば、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド等が好適に用いられる。
【0088】
重合促進剤(H)として用いられるアルデヒド類としては、例えば、テレフタルアルデヒドやベンズアルデヒド誘導体などが挙げられる。ベンズアルデヒド誘導体としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−メチルオキシベンズアルデヒド、p−エチルオキシベンズアルデヒド、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも、硬化性の観点から、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドが好ましく用いられる。
【0089】
重合促進剤(H)として用いられるチオール化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0090】
重合促進剤(H)として用いられる亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0091】
重合促進剤(H)として用いられる亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等が挙げられる。
【0092】
重合促進剤(H)として用いられるチオ尿素化合物としては、1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジ−n−プロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ−n−プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素等が挙げられる。
【0093】
重合促進剤(H)の配合量は特に限定されないが、歯科用組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体成分の全量100質量%に対して、0.001〜30質量%が好ましい。重合促進剤(H)の配合量が0.001質量%未満の場合、重合が十分に進行せず、接着力の低下を招くおそれがあり、より好適には0.05質量%以上である。一方、重合促進剤(H)の配合量が30質量%を超える場合、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、十分な接着強度が得られなくなるおそれがあり、さらには組成物からの析出を招くおそれがあるため、より好適には20質量%以下である。
【0094】
フィラー(I)
本発明の歯科用組成物は、実施態様によっては、さらにフィラー(I)を含んでいてもよい。このようなフィラーは、通常、有機フィラー、無機フィラー及び有機−無機複合フィラーに大別される。有機フィラーの素材としては、例えばポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。有機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる組成物のハンドリング性及び機械強度などの観点から、前記有機フィラーの平均粒子径は、0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
【0095】
無機フィラーの素材としては、石英、シリカ、アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−チタニア−酸化バリウム、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラス等が挙げられる。これらもまた、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。無機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる組成物のハンドリング性及び機械強度などの観点から、前記無機フィラーの平均粒子径は0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
【0096】
無機フィラーの形状としては、不定形フィラー及び球状フィラーが挙げられる。組成物の機械強度を向上させる観点からは、前記無機フィラーとして球状フィラーを用いることが好ましい。ここで球状フィラーとは、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略す)でフィラーの写真を撮り、その単位視野内に観察される粒子が丸みをおびており、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で割った平均均斉度が0.6以上であるフィラーである。前記球状フィラーの平均粒子径は好ましくは0.1〜5μmである。平均粒子径が0.1μm未満の場合、組成物中の球状フィラーの充填率が低下し、機械的強度が低くなるおそれがある。一方、平均粒子径が5μmを超える場合、前記球状フィラーの表面積が低下し、高い機械的強度を有する硬化体が得られないおそれがある。
【0097】
前記無機フィラーは、組成物の流動性を調整するため、必要に応じてシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。かかる表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0098】
本発明で用いられる有機−無機複合フィラーとは、上述の無機フィラーにモノマー化合物を予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕することにより得られるものである。前記有機−無機複合フィラーとしては、例えば、TMPTフィラー(トリメチロールプロパンメタクリレートとシリカフィラーを混和、重合させた後に粉砕したもの)などを用いることができる。前記有機−無機複合フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる組成物のハンドリング性及び機械強度などの観点から、前記有機−無機複合フィラーの平均粒子径は、0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
【0099】
本発明に用いられるフィラー(I)の配合量は特に限定されず、重合性単量体成分の全量100質量%に対して、1〜500質量%が好ましい。フィラー(I)の好適な配合量は、用いられる実施態様によって大幅に異なるので、後述する本発明の歯科用組成物の具体的な実施態様の説明と併せて、各実施態様に応じたフィラー(I)の好適な配合量を示すこととする。
【0100】
この他、本発明の歯科用組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲でpH調整剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、着色剤、抗菌剤、香料等を配合してもよい。
【0101】
次に本発明の1液型歯科用組成物の使用形態について説明する。本発明の1液型歯科用組成物は、使用時にエアブロー操作が行われる、例えば、1液型歯科用ボンディング材、1液型歯科用プライマー、1液型歯科用コーティング材等の歯科材料に好適に用いることができる。以下、1液型歯科用ボンディング材、1液型歯科用プライマー、および1液型歯科用コーティング材の構成例について記載する。
【0102】
1液型歯科用ボンディング材
本発明の歯科用組成物を1液型歯科用ボンディング材に用いる場合には、例えば、歯科用組成物は、歯科用組成物中(A)5〜50質量%、(B)として(D)0.1〜50質量%、(C)0.000001〜1質量%、(E)0〜50質量%、(F)0〜50質量を含んでよい。あるいは、歯科用組成物は、歯科用組成物中(A)5〜70質量%、(B)((D)以外)0.1〜50質量%、(C)0.000001〜1質量%、(E)10〜50質量%、(F)0〜50質量を含んでよい。この歯科用組成物は、さらに、重合性単量体成分の全量100質量%に対して、(G)0.001〜30質量%、(H)0.001〜30質量%、(I)1〜20質量%を含むことが好ましい。
【0103】
1液型歯科用プライマー
本発明の歯科用組成物を1液型歯科用プライマーに用いる場合には、例えば、歯科用組成物は、歯科用組成物中(A)5〜70質量%、(B)として(D)0.1〜50質量%、(C)0.000001〜1質量%、(E)0〜50質量%、(F)0〜50質量を含んでよい。あるいは、歯科用組成物は、歯科用組成物中(A)5〜70質量%、(B)((D)以外)0.1〜50質量%、(C)0.000001〜1質量%、(E)10〜50質量%、(F)0〜50質量を含んでよい。この歯科用組成物は、さらに、重合性単量体成分の全量100質量%に対して、(G)0.001〜30質量%、(H)0.001〜30質量%、(I)1〜20質量%を含むことが好ましい。
【0104】
1液型歯科用コーティング材
本発明の歯科用組成物を1液型歯科用コーティング材に用いる場合には、例えば、歯科用組成物は、歯科用組成物中(A)5〜50質量%、(B)として(D)0.1〜50質量%、(C)0.000001〜1質量%、(E)0〜50質量%、(F)0〜50質量を含んでよい。あるいは、歯科用組成物は、歯科用組成物中(A)5〜70質量%、(B)((D)以外)0.1〜50質量%、(C)0.000001〜1質量%、(E)10〜50質量%、(F)0〜50質量を含んでよい。この歯科用組成物は、さらに、重合性単量体成分の全量100質量%に対して、(G)0.001〜30質量%、(H)0.001〜30質量%、(I)1〜20質量%を含むことが好ましい。
【0105】
本発明の1液型歯科用組成物は、公知方法に準じて使用することができる。例えば、本発明の1液型歯科用組成物を公知方法に準じて、目的とする部位に塗布する。次いでエアブローにより、溶媒(A)を蒸散させる。エアブローは、本発明が歯科用の組成物であることから、歯科用エアーシリンジを用いてエアブローすることが好適である。エアブローの圧力は、0.001〜1MPaであることが好ましい。エアブローの圧力が、0.001MPa未満の場合、エアブローが弱すぎて溶媒を蒸散させるのに時間がかかりすぎるおそれがあり、より好適には0.02MPa以上であり、さらに好適には0.05MPa以上である。一方、エアブローの圧力が1MPaを越える場合、エアブローが強すぎて溶媒を蒸散させることが難しくなるおそれがあり、より好適には0.8MPa以下であり、さらに好適には0.5MPa以下である。
【0106】
本発明においては、エアブローにより溶媒(A)が蒸散した場合には、歯科用組成物の色調が変化する。従って、エアブローの時間は、色調の変化に基づき決定すればよく、エアブローの圧力および歯科用組成物の溶媒含有量等によって変わるが、通常は、0.1〜180秒程度でよい。
【0107】
エアブローした後は、重合性単量体を光照射等により重合硬化させればよく、治療形態に応じて、さらに、歯科用コンポジットレジン、歯科用セメントなどを用いればよい。
【0108】
本発明の1液型歯科用組成物を歯科治療に用いることにより、エアブローの終点が容易に判別でき、エアブロー作業を確実に効率よく行うことができる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0110】
(1)1液型ボンディング材の作製
各成分を常温下で混合して1液型ボンディング材組成物を作製した。その組成を表1に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート
Bis−GMA:2,2−ビス〔4−(3−メタアクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
BAPO:ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド
TMDPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
CQ:カンファーキノン
JJA:4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル
TTA:トリエタノールアミン
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール)
R972:無機フィラー、日本アエロジル製「R972」
【0113】
色素には、メチルオレンジ(実施例1,2)、メチルイエロー(実施例3,4)、メタクレゾールパープル(実施例5,6)、チモールブルー(実施例7,8)、クレゾールレッド(実施例9,10)を用いた。さらに、色素を加えなかったものを比較例1,2として準備した。
【0114】
(2)色差測定
色差測定試料の調製は、以下のように行った。ガラスプレート上にセロハンシール、直径1センチメートルの穴があいたドーナツ状の金属リングを順に設置した。その穴に、前記で調製した1液型ボンディング材組成物をスポイドで流し込み、その上からセロハンシール、ガラスプレートを順に載せた。最後に、クリップで2枚のガラスプレートを挟み込んで、固定した。その後、白色反射率標準(すなわち、白色背景)の上に、前記で作製した試料をおき、色測定を実施した。測定装置には、色差計Σ90(日本電色工業株式会社製品)を用いた。
【0115】
色の表現は、L*、a*、b*表色系を用いた。L*、a*、b*表色系は、赤を表示する正のX軸、緑を表示する負のX軸、黄色を表示する正のY軸、青を表示する負のY軸、さらに0(黒)から100(白)までの範囲で、開始点が50であるZ軸を有する、XYZ3次元色空間を基準とする。
【0116】
次に、遮光下、1液型ボンディング材組成物0.5gをプラスチック容器に秤量し、空気圧0.1MPaのエアーを10秒間ふきつけ、溶媒を蒸散させた。得られた組成物の溶媒含有量は3質量%であり、この組成物について、前記の方法に従って色測定を実施した。これらの結果より、ΔE*を求めた。ΔE*は、3次元色空間における総色変化の算定であり、次の式で示される。
ΔE*=((L1*−L2*2+(a1*−a2*2+(a1*−b2*21/2
前記式中、下付き数字の「1」はエアブロー前、「2」はエアブロー後の状態を示す。
【0117】
【表2】

【0118】
実施例の1液型ボンディング材は、比較例の1液型ボンディング材とは異なり、色差ΔE*がいずれも3以上となっており、エアブローによる蒸散前後での色調の変化が目視により容易に確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の1液型歯科用組成物は、使用時にエアブロー操作が行われる、例えば、1液型歯科用ボンディング材、1液型歯科用プライマー、1液型歯科用コーティング材等の歯科材料に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒(A)、酸性化合物(B)、および色素(C)を含み、当該溶媒(A)を蒸散させた場合に色調が変化する1液型歯科用組成物。
【請求項2】
前記溶媒(A)をエアブローにより蒸散させた場合に、前記溶媒(A)の蒸散前後の色差ΔE*が3以上である請求項1に記載の1液型歯科用組成物。
【請求項3】
前記溶媒(A)の含有量が、歯科用組成物中5〜70質量%である請求項1または2に記載の1液型歯科用組成物。
【請求項4】
前記溶媒(A)の含有量が、歯科用組成物中5〜70質量%であり、前記溶媒(A)を、その含有量が3質量%となるまでエアブローにより蒸散させた場合に、前記溶媒(A)の蒸散前後の色差ΔE*が3以上である請求項1に記載の1液型歯科用組成物。
【請求項5】
前記色素(C)が、pH0.1〜5.0に変色域を有する化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の1液型歯科用組成物。
【請求項6】
前記酸性化合物(B)が、酸性基を有する重合性単量体である請求項1〜5のいずれかに記載の1液型歯科用組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の1液型歯科用組成物を用いたボンディング材。

【公開番号】特開2010−215573(P2010−215573A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65233(P2009−65233)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(301069384)クラレメディカル株式会社 (110)
【Fターム(参考)】