説明

1軸延伸多層積層フィルム

【課題】従来よりもさらに正面方向の輝度の高い1軸延伸多層積層フィルムおよびそれからなる1軸延伸多層積層フィルム積層体を提供すること。
【解決手段】第1層と第2層とが交互に251層以上積層された1軸延伸多層積層フィルムであって、
1)第1層は2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含むポリエステルを構成成分とする厚み0.01μm以上0.5μm以下の層であり、
2)第2層はシンジオタクティックポリスチレンを構成成分とする厚み0.01μm以上0.5μm以下の層であり、
3)フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分について入射角0度および50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率がそれぞれ90%以上、
4)フィルム面を反射面とし、X方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が15%以下、入射角50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が50%以上
である1軸延伸多層積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の偏光成分を選択的に反射し、該偏光成分と垂直方向の偏光成分を選択的に透過する1軸延伸多層積層フィルムに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、一定の偏光成分についてフィルム正面および斜め方向からの入射角に対して選択的に反射し、該偏光成分と垂直方向の偏光成分についてフィルム正面方向からの入射角に対して選択的に透過し、フィルム斜め方向からの入射角に対して一定の反射率を有することにより、正面方向の輝度が大幅に向上した1軸延伸多層積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
屈折率の低い層と屈折率の高い層とを交互に多数積層したフィルムは、層間の構造的な光干渉によって、特定波長の光を選択的に反射または透過する光学干渉フィルムとすることができる。また、このような多層積層フィルムは、膜厚を徐々に変化させたり、異なる反射ピークを有するフィルムを貼り合せたりすることで金属を使用したフィルムと同等の高い反射率を得ることができ、金属光沢フィルムや反射ミラーとして使用することもできる。さらには、このような多層積層フィルムを1方向にのみ延伸することで、特定の偏光成分のみを反射する一方で、その直交方向の偏光成分はそのまま透過させることができ、偏光反射フィルムとして使用できることから、液晶ディスプレイなどの輝度向上フィルムとして使用されている。
【0003】
一般に、層厚みが0.05〜0.5μmであり、異なる屈折率を持った層で構成される多層光学フィルムは、一方の層を構成する層と他方の層を構成する層との屈折率差と膜厚および積層数により、特定の波長の光を反射する増反射といった現象がみられる。一般にその反射波長は、下記の式で示される。
λ=2(n×d+n×d
(上式中、λは反射波長(nm)、n、nはそれぞれの層の屈折率、d、dはそれぞれの層の厚み(nm)を表わす)
【0004】
例えば特許文献1に示されている通り、一方の層に正の応力光学係数をもった樹脂を使用することで、1軸方向の延伸によりかかる層の屈折率を複屈折化させて異方性を持たせ、フィルム面内の延伸方向における層間の屈折率差を大きくし、一方でフィルム面内の延伸方向と直交方向における層間の屈折率差を小さくする方法により、特定の偏光成分のみを反射することができる。
【0005】
この原理を利用して、例えば一方向の偏光(フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分)を反射し、その直交方向の偏光(フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分)を透過するといった反射偏光フィルムを設計することができ、そのときの望ましい複屈折性は下記の式で表される。
n1>n2、n1=n2
(上式中、n1、n2はそれぞれの層における延伸方向の屈折率、n1、n2はそれぞれの層における延伸方向に直交する方向の屈折率を表す)
【0006】
また、特許文献2には、屈折率の高い層にポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下、2,6−PENと称することがある)を使用し、屈折率の低い層に熱可塑性エラストマーやテレフタル酸を30mol%共重合したPENを使用した多層フィルムが例示されている。これは、一方の層に正の応力光学係数を有する樹脂を使用し、他方の層に応力光学係数が非常に小さい(延伸による複屈折の発現が極めて小さい)樹脂を使用することで、特定の偏光のみを反射する反射偏光フィルムを例示したものである。
【0007】
このような反射偏光フィルムの検討は、主として延伸方向の層間の屈折率差と、フィルム面内において延伸方向と直交方向の層間屈折率差に着目しており、このような反射偏光フィルムを液晶ディスプレイの輝度向上フィルムとして用いることで、透過しない偏光を光源側に反射させて光を再利用し、輝度向上性能を高めようとするものである。
一方、通過しない一偏光成分の再利用に着目した技術については、該偏光成分の反射率が100%近くに達しており、かかる偏光を再利用する方法だけでは輝度向上性能をさらに向上させることが困難な状況にある。
【0008】
また特許文献3にはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートとシンジオタクチックポリスチレンを交互に積層させた1軸延伸多層積層フィルムも開示されているものの、ある一部の波長ピークでのみ反射させ、フィルムとしての透過率の高いものであり、輝度向上フィルムの概念は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−268505号公報
【特許文献2】特表平9−506837号公報
【特許文献3】国際公開第01/47711号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来よりもさらに正面方向の輝度の高い1軸延伸多層積層フィルムおよびそれからなる1軸延伸多層積層フィルム積層体を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、従来よりもさらに正面方向の輝度が高く、かつ正面方向の色相ずれの小さい1軸延伸多層積層フィルムおよびそれからなる1軸延伸多層積層フィルム積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、1軸延伸多層積層フィルムの第1層、第2層の樹脂の組み合わせとして2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含むポリエステルとシンジオタクチックポリスチレン(以下、SPSと称することがある)を用い、可視光の波長域において従来の反射軸方向の偏光の高反射特性に加え、透過軸方向の偏光についてフィルム正面方向からの入射角に対しては選択的に透過し、フィルム斜め方向から入射する偏光成分は反射させることにより、斜め方向に出射する透過軸方向の偏光も再利用することが可能となり、正面輝度が大幅に向上することを見出した。
また、さらに第2層の平均層厚みに対する第1層の平均層厚みの比(第1層の平均層厚み/第2層の平均層厚み)を一定範囲にすることで、正面方向の輝度に加えて正面方向の色相も良好な1軸延伸多層積層フィルムが得られることを見出した。
【0012】
すなわち本発明によれば、本発明の目的は、第1層と第2層とが交互に251層以上積層された1軸延伸多層積層フィルムであり、
1)第1層は2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含むポリエステルを構成成分とする厚み0.01μm以上0.5μm以下の層であり、
2)第2層はシンジオタクティックポリスチレンを構成成分とする厚み0.01μm以上0.5μm以下の層であり、
3)フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分(以下、P偏光と称することがある)について入射角0度および50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率がそれぞれ90%以上、
4)フィルム面を反射面とし、X方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分(以下、S偏光と称することがある)について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が15%以下、入射角50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が50%以上である1軸延伸多層積層フィルムによって達成される。
【0013】
また本発明の第二の目的は、上記発明においてさらに第2層の平均層厚みに対する第1層の平均層厚みの比(第1層の平均層厚み/第2層の平均層厚み)が0.2以上3.0以下の範囲である1軸延伸多層積層フィルムによって達成される。
また本発明は、上記の1軸延伸多層積層フィルムの少なくとも片面にさらに耐熱性熱可塑性樹脂フィルムを積層してなる1軸延伸多層積層フィルム積層体に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、従来よりも正面輝度が大幅に向上する効果が得られ、液晶ディスプレイなどの輝度向上フィルムとして好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1軸延伸多層積層フィルム]
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、第1層と第2層とが交互に251層以上積層された1軸延伸多層積層フィルムである。ここで第1層は第2層より屈折率の高い層、第2層は第1層より屈折率の低い層をそれぞれ表す。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムを構成する第1層、第2層および反射特性について以下に説明する。
【0016】
[第1層]
本発明の第1層は、構成成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含むポリエステルである。2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含むポリエステルを用いることで、延伸により大きな複屈折を生じ、反射偏光フィルムに適した屈折率特性を示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含むポリエステルは、具体的にはポリエステルの全繰り返し単位を基準として90モル%以上の2,6−ナフタレンジカルボン酸をモノマー成分として重縮合して得られた結晶性ポリエステルであることが好ましく、さらに2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の含有量が95モル%以上であることが好ましい。ここで結晶性ポリエステルとは融点を有するポリエステルであることを意味する。
かかるポリエステルとして、具体的には、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリブチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリプロピレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートやその共重合体が挙げられる。中でも主たる繰返し単位がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなるポリエステルが好ましい。
【0017】
これらのポリエステルの中でも、配向状態を望ましい状態に保てることから、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートや、従たる酸成分として、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸または6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸をポリエステルの全繰り返し単位を基準として2モル%以上5モル%以下共重合したポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどが好ましい。その他の共重合成分として、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸のような他の芳香族カルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、などといった酸成分や、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール、などのグリコール成分を好ましく挙げることができる。
【0018】
第1層を構成する各層の厚みは0.01μm以上0.5μm以下である。かかる層厚みは透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真をもとに求めることができる。第1層を構成する各層がかかる範囲の層厚みを有することにより、400〜800nmの波長域において層間の光干渉による反射性能が発現する。第1層の層厚みが0.5μmを超えると反射帯域が赤外線領域になり、反射偏光フィルムとして有用性が得られない。一方、層厚みが0.01μm未満であると、ポリエステル成分が光を吸収し反射性能が得られなくなる。
【0019】
また、フィルムの1軸延伸方向(X方向)、フィルム面内で1軸延伸方向に直交する方向(Y方向)およびフィルム厚み方向(Z方向)において、第1層のY方向とZ方向の屈折率差が0.1以上であることが好ましい。
ここで、第1層のY方向の屈折率、Z方向の屈折率は、第1層を構成するポリエステルを単独で溶融させてダイより押出し、1軸方向に135℃で5倍の延伸を施して1軸延伸フィルムを作成して得られたフィルムのY方向、Z方向それぞれの方向について、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定した値で表わされる。
【0020】
第1層のY方向およびZ方向の屈折率差が大きく、かつ第1層として2,6−ナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル、第2層としてシンジオタクチックポリスチレンをそれぞれ用いることにより、Y方向では第1層と第2層との屈折率の差異が生じず、一方、透過軸方向(S偏光と平行な方向)の入射角50度付近の斜め方向では両層に屈折率の差異が生じ、かかる屈折率差によって透過軸方向にななめ方向に入射するS偏光について反射性能を高くすることができ、この斜め入射光を効率的に再利用して正面輝度を大幅に向上させることができる。
第1層のY方向およびZ方向の屈折率差を0.1以上にする方法として、第1層に複屈折性の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含むポリエステルを用い、フィルム製造方法に記載した範囲でフィルムを延伸する方法が挙げられる。
【0021】
[第2層]
本発明の第2層は、シンジオタクティックポリスチレンを構成成分とする厚み0.01μm以上0.5μm以下の層である。第2層を構成する各層の厚みは0.01μm以上0.5μm以下である。かかる層厚みは透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真をもとに求めることができる。第2層を構成する各層がかかる範囲の層厚みを有することにより、400〜800nmの波長域において層間の光干渉による反射性能が発現する。第2層の層厚みが0.5μmを超えると反射帯域が赤外線領域になり、反射偏光フィルムとして有用性が得られない。一方、層厚みが0.01μm未満であると、シンジオタクティックポリスチレン成分が光を吸収し反射性能が得られなくなる。
【0022】
シンジオタクティックポリスチレンとは、立体構造がシンジオタクティック構造、すなわち炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して、側鎖であるフェニル基や置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、そのタクティシティーは、同位体炭素による核磁気共鳴法により定量される。この方法で測定されるタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができるが、本発明でいうシンジオタクティックポリスチレンとしては、通常は、ラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、若しくはラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するポリスチレン、ポリアルキルスチレン、ポリハロゲン化スチレン、ポリアルコキシスチレン、ポリビニル安息香酸、あるいはこれらの水素化重合体およびこれらの共重合体を挙げることができる。これらの中で好ましいシンジオタクティックポリスチレンとしては、融点が220〜270℃の範囲にあるものである。更に好ましくは、240〜270℃の範囲にあるものである。またシンジオタクティックポリスチレンとして共重合体を用いることができ、p−メチルスチレンとの共重合体が好ましい。ここで、ホモシンジオタクティックポリスチレンの融点は、270℃である。この共重合体の融点を上記範囲とするには、p−メチルスチレンの共重合量を調整すれば良い。p−メチルスチレンが多いと融点は低下し結晶性も低下する。共重合量としては、0〜20モル%が好ましい。融点が、220℃より低いと、シンジオタクティックポリスチレンの結晶性が低下しすぎ、製膜が難しくなり、また耐熱性(熱処理を受けた時の寸法変化)が悪くなる。このシンジオタクティックポリスチレンからなる第2層には、光学的な特性が悪化しない範囲であれば、不活性粒子が添加されていても支障は無いが、不活性粒子は実質的に含有されないことが好ましい。アタクティックポリスチレンやアイソタクティックポリスチレンは、結晶性が低く製膜が難しく、また結晶構造を持たないか構造がルーズであるために、耐熱性が悪いので好ましくない。
【0023】
2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含むポリエステルは、延伸により延伸方向の屈折率は増加するが、シンジオタクティックポリスチレンは負の光学異方性を示すため、延伸方向の屈折率が逆に低下して、両層のX方向の屈折率差を大きくすることができる。
ここで、第2層の各方向の屈折率は、第2層を構成するシンジオタクティックポリスチレンを単独で溶融させてダイより押出し、1軸方向に135℃で5倍の延伸を施して1軸延伸フィルムを作成して得られたフィルムのX方向、Y方向、Z方向それぞれの方向について、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定した値で表わされる。
【0024】
シンジオタクティックポリスチレンは、負の光学異方性を示すため、第2層のX方向よりもY方向およびZ方向が大きくなる。かつ第1層として2,6−ナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル、第2層としてシンジオタクティックポリスチレンをそれぞれ用いることにより、Y方向では第1層と第2層との屈折率の差異が生じず、透過軸方向(S偏光と平行な方向)の入射角50度付近の斜め方向では両層に屈折率の差異が生じる。かかる屈折率差によって透過軸方向にななめ方向に入射するS偏光について反射性能を高くすることができ、この斜め入射光を効率的に再利用して正面輝度を大幅に向上させることができる。
【0025】
なお、2,6−ナフタレンジカルボン酸を含むポリエステルからなる層(第1層)とシンジオタクティックポリスチレンからなる層(第2層)との融点差は、30℃以内であることが好ましい。この差が30℃より大きくなると、溶融して積層した後、固化して未延伸シートを形成させる時点において、層間の剥離が生じたり、その後の延伸時に剥離が生じたりすることがある。
【0026】
[粒子]
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、かかる反射率特性を満たす範囲内で、フィルムの巻取り性を向上させるために、少なくとも一方の最外層にごく少量の粒子を含有してもよいが、第1層、第2層ともに粒子を含まないことが好ましい。粒子を含まないことにより、入射角0°で入射するS偏光に対する透過率が向上し、波長400〜800nmにおける平均反射率をより小さくすることができ、正面輝度がより向上する。
【0027】
[積層構成]
(積層数)
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、上述の第1層および第2層を交互に合計251層以上積層したものである。1軸延伸多層積層フィルムの積層数は、好ましくは301層以上、より好ましくは401層以上、さらに好ましくは501層以上、特に好ましくは551層以上である。積層数が下限値に満たないと、延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分の平均反射率特性について、波長400〜800nmにわたり一定の平均反射率を満足することができない。
積層数の上限値は、生産性およびフィルムのハンドリング性などの観点から2001層であることが好ましい。積層数の上限値は、本発明の平均反射率特性が得られれば生産性やハンドリング性の観点からさらに積層数を減らしてもよく、例えば1001層、801層であってもよい。
【0028】
(第1層と第2層の平均層厚み比)
本発明の1軸延伸多層積層フィルムにおいて、第2層の平均層厚みに対する第1層の平均層厚みの比(第1層の平均層厚み/第2層の平均層厚み)は0.1以上5.0以下の範囲であることが好ましい。この厚み比がこの範囲にあることにより、正面輝度の大幅向上が得られる。
また、第2層の平均層厚みに対する第1層の平均層厚みの比(第1層の平均層厚み/第2層の平均層厚み)は、0.2以上3.0以下の範囲であることが好ましく、0.3以上3.0以下の範囲であることがより好ましく、0.5以上2.0以下がさらに好ましく、0.7以上1.5以下が特に好ましい。この厚み比が0.2以上3.0以下の範囲をはずれると色相ずれが大きくなり、液晶ディスプレイの輝度向上フィルムとしてもちいたときに、映像の再現性に乏しくなり、視認性が低下することがある。
【0029】
(最大層厚みと最小層厚みの比率)
また、多層積層フィルムは、通常、屈折率、層数、層の厚みによって反射する波長が決まるが、積層された第1層および第2層のそれぞれが一定の厚みでは、特定の波長のみしか反射することができない。そのため、本発明の1軸延伸多層積層フィルムでは、第1層および第2層それぞれの最大層厚みと最小層厚みの比率が1.5以上5.0以下であり、下限値は好ましくは2.0、さらに好ましくは2.1であり、または上限値は好ましくは4.0、より好ましくは3.5、さらに好ましくは3.0である。
第1層および第2層それぞれの最大厚みと最小厚みの比率が下限値に満たないと、400〜800nmの波長域にわたり目的とする反射特性が得られない。一方で、第1層および第2層それぞれの最大厚みと最小厚みの比率が上限値を超えると反射帯域が広がりすぎ、400〜800nmの波長域における平均反射率が低下するために、目的とする反射特性が得られない。
第1層、第2層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みは、透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真をもとに求めることができる。
【0030】
第1層および第2層は、段階的に変化してもよく、連続的に変化してもよい。このように積層された第1層および第2層のそれぞれが変化することで、400〜800nmにわたる広い波長域の光を反射することができる。
かかる層厚み特性を得る方法として、例えば、第1層用樹脂と第2層用樹脂とを交互に積層させるに際し、多層フィードブロック装置を使用し、フィードブロックの流路の厚みを連続的に変化させる方法が挙げられる。また、その他の方法として、多層フィードブロック装置により均一な厚みの層を積層しておき、その積層された流動体をさらに1.0:1.3:2.0の比で積層された面に垂直に3分岐したのち再び積層して251層以上にするといった方法もある。また、両者を組み合わせた方法も考えられる。
【0031】
(その他の層)
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、かかる第1層、第2層以外に、かかる積層フィルムの表層や中間層に0.5umを越える厚膜層が存在してもよい。かかる厚みの層を第1層と第2層の交互積層構成の一部に有することにより、偏光機能に影響をおよぼすことなく、第1層および第2層を構成する各層厚みを均一に調整しやすくなる。かかる厚みの層は、第1層、第2層のいずれかと同じ組成、またはこれらの組成を部分的に含む組成であってもよく、層厚みが厚いため、反射特性には寄与しない。一方、透過する偏光光には影響することがあるため、層中に粒子を含有しないことが好ましい。
【0032】
(フィルム厚み)
本発明の1軸延伸多層積層フィルムのフィルム厚みは、15μm以上150μm以下であることが好ましく、30μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
【0033】
[1軸延伸フィルム]
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、目的とする反射偏光フィルムとしての光学特性を満足するために、少なくとも1軸方向に延伸されている。本発明における1軸延伸には、1軸方向にのみ延伸したフィルムの他、2軸方向に延伸されたフィルムであって、一方向により延伸されたフィルムも含まれる。1軸延伸方向(X方向)は、フィルム長手方向、幅方向のいずれの方向であってもよい。また、2軸方向に延伸されたフィルムであって、一方向により延伸されたフィルムの場合は、より延伸される方向(X方向)はフィルム長手方向、幅方向のいずれの方向であってもよく、延伸倍率の低い方向は、1.05〜1.20倍程度の延伸倍率にとどめることが偏光性能を高める点で好ましい。2軸方向に延伸され、一方向により延伸されたフィルムの場合、偏光光や屈折率との関係での「延伸方向」とは、より延伸された方向を指す。
延伸方法としては、棒状ヒータによる加熱延伸、ロール加熱延伸、テンター延伸など公知の延伸方法を用いることができるが、ロールとの接触によるキズの低減や延伸速度などの観点から、テンター延伸が好ましい。
【0034】
[反射特性]
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、フィルム面を反射面とし、X方向を含む入射面に対して平行な偏光成分について入射角0度および50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率がそれぞれ90%以上である。
また、フィルム面を反射面とし、X方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が15%以下であり、入射角50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が50%以上である。
ここで、入射面とは反射面と垂直の関係にあり、かつ入射光線と反射光線を含む面を指す。また、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分は、本発明においてP偏光とも称される。また、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分は、本発明においてS偏光とも称される。さらに入射角とは、フィルム面の垂直方向に対する入射角を表す。
【0035】
P偏光成分について、入射角0度および50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率は、好ましくは95%以上100%以下であり、より好ましくは98%以上100%以下である。
P偏光成分についてのかかる平均反射率が下限値に満たないと、反射偏光フィルムとしての偏光反射性能が不十分であり、液晶ディスプレイなどの輝度向上フィルムとして十分な性能を発現しない。
【0036】
P偏光成分についてかかる反射率特性を得るためには、各層厚み、積層数に加え、フィルム延伸方向(X方向)における第1層と第2層との屈折率差が好ましくは0.15以上と大きいことが挙げられる。具体的には第1層および第2層を構成する樹脂として挙げた種類のものを用いてX方向に一定の倍率の範囲で延伸処理を施し、第1層の複屈折性を高める方法が挙げられる。
【0037】
S偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率は、好ましくは5%以上13%以下である。また、S偏光成分について、入射角50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率は、好ましくは70%以上100%以下、より好ましくは80%以上99%以下である。
S偏光成分についての入射角0度での平均反射率をかかる範囲に抑えかつ、一方で入射角50度での平均反射率を0度での平均反射率よりも高い上述の範囲とすることで、斜め方向より入射したS偏光成分を光源側に反射させて再利用することができ、従来の反射偏光板以上の輝度向上性能を実現できる。
【0038】
S偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が上限値を超えると反射偏光フィルムとしての偏光透過率が低下するため、液晶ディスプレイなどの輝度向上フィルムとして十分な性能を発現しない。一方で、S偏光成分の入射角50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が下限値に満たないと斜め方向より入射したS偏光成分を再利用できず、従来の反射偏光フィルムを超える輝度向上性能が得られない。
【0039】
S偏光成分についてかかる反射率特性を得るためには、各層厚み、積層数に加え、Y方向における第1層と第2層との屈折率差を好ましくは0.02以下と小さくし、かつ第1層におけるY方向とZ方向との屈折率差を0.1以上にすることでZ方向における第1層と第2層との屈折率差を大きくすることが挙げられる。
【0040】
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、P偏光成分について波長400〜800nmの各波長における最大反射率と最小反射率の差が10%以内であり、かつS偏光成分について、波長400〜800nmの各波長における最大反射率と最小反射率の差が10%以内であることが好ましい。上記偏光成分の最大反射率と最小反射率の差が10%以上であると、反射または、透過する光の色相のずれが生じるために液晶ディスプレイなどに使用に問題が生じることがある。
【0041】
[1軸延伸多層積層フィルムの製造方法]
つぎに、本発明の1軸延伸多層積層フィルムの製造方法について詳述する。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、2,6−ナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル(第1の層用)と、シンジオタクティックポリスチレン(第2の層用)とを、溶融状態で交互に少なくとも251層重ね合わせた状態で押出し、多層未延伸フィルム(シート状物とする工程)とする。このとき、積層された251層以上の積層物は、各層の厚みが段階的または連続的に1.5倍〜5.0倍の範囲で変化するように積層される。
【0042】
このようにして得られた多層未延伸フィルムは、製膜方向、またはそれに直交する幅方向の少なくとも1軸方向(フィルム面に沿った方向)に延伸される。延伸温度は、第1層のポリエステルのガラス転移点温度(Tg)〜Tg+50℃の範囲が好ましい。このときの延伸倍率は2〜10倍であることが好ましく、さらに好ましくは2.5〜7倍、さらに好ましくは3〜6倍、特に好ましくは4.5〜5.5倍である。延伸倍率が大きい程、第1層および第2層における個々の層の面方向のバラツキが延伸による薄層化により小さくなり、延伸多層積層フィルムの光干渉が面方向に均一になり、また第1層と第2層の延伸方向の屈折率差、および厚み方向の屈折率差が大きくなるので好ましい。このときの延伸方法は、棒状ヒータによる加熱延伸、ロール加熱延伸、テンター延伸など公知の延伸方法を用いることができるが、ロールとの接触によるキズの低減や延伸速度などの観点から、テンター延伸が好ましい。また、かかる延伸方向と直交する方向(Y方向)にも延伸処理を施し、2軸延伸を行う場合は、1.05〜1.20倍程度の延伸倍率にとどめることが好ましい。Y方向の延伸倍率をこれ以上高くすると、偏光性能が低下することがある。また、延伸後にさらに熱固定処理を施すことが好ましい。
【0043】
[輝度向上フィルム]
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、P偏光成分を選択的に高反射し、該偏光成分と垂直方向のS偏光成分のうち入射角0度の光を選択的に高透過させ、かつ斜め方向に入射したS偏光を反射することから、液晶ディスプレイの輝度向上フィルムとして使用することにより、反射されたP偏光成分とS偏光成分を再利用することができ、S偏光の一部も再利用して正面輝度を従来よりも大幅に向上させることができる。
【0044】
[1軸延伸多層積層フィルム積層体]
本発明の1軸延伸多層積層フィルムを液晶ディスプレイなどの輝度向上フィルムとして用いる場合に平面性を確保するといった観点から、本発明の1軸延伸多層積層フィルムの少なくとも片面に耐熱性熱可塑性樹脂フィルムを積層することができる。
耐熱性熱可塑性樹脂フィルムを構成する樹脂については特に限定されないが、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂などがあげられる。この中でも特に透明性と耐熱性の観点からポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネートと総称される高分子材料は、その合成手法において重縮合反応が用いられて、主鎖が炭酸結合で結ばれているものを総称するが、これらの内でも、一般にフェノール誘導体と、ホスゲン、ジフェニルカーボネート等からの重縮合で得られるものを意味する。通常、ビスフェノール−Aと呼称されている2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンをビスフェノール成分とするポリカーボネートが好ましく選ばれるが、適宜各種ビスフェノール誘導体を選択することで、ポリカーボネート共重合体を構成することができる。
【0045】
かかる共重合成分としてこのビスフェノール−A以外に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン等を挙げることができる。
【0046】
かかる共重合成分の割合は、ポリカーボネート共重合体の全繰り返し単位中2〜20モル%であることが好ましく、5〜10モル%であることがさらに好ましい。
ここで用いられるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、10,000以上200,000以下であることが好ましい。粘度平均分子量が10,000より低いと得られるフィルムの機械的強度が不足する場合があり、また200,000以上の高分子量になるとドープの粘度が大きくなりすぎ、取り扱い性に乏しくなることがある。
【0047】
1軸延伸多層積層フィルムの少なくとも片面に耐熱性熱可塑性樹脂フィルムを積層させる方法として、耐熱性熱可塑性樹脂フィルムの片側にロールコーターなどで粘着層を塗工したのち、室温で1軸延伸多層積層フィルムを貼合する方法や耐熱性熱可塑性樹脂フィルムの片側にヒートシール層を塗工したのちラミネーターなどで加熱圧着する方法、また耐熱性熱可塑性樹脂フィルムの片側に紫外線硬化性の樹脂を塗工したのち紫外線を照射することで接着する方法など、適宜公知の技術を適用できる。
【実施例】
【0048】
実施例をもって、本発明をさらに説明する。なお、実施例中の物性や特性は下記の方法にて測定または評価した。
【0049】
(1)樹脂およびフィルムの融点(Tm)
樹脂またはフィルムサンプルを10mgサンプリングし、DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)を用い、20℃/minの昇温速度で、融点およびガラス転移点を測定する。
【0050】
(2)樹脂の特定ならびに共重合成分および各成分量の特定
フィルムサンプルの各層について、H−NMR測定よりそれぞれの樹脂成分ならびに共重合成分および各成分量を特定した。
【0051】
(3)各層の厚み
フィルムサンプルをフィルム長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)にて包埋した。包埋されたサンプルをミクロトーム(LEICA製ULTRACUT UCT)で幅方向に垂直に切断し、5nm厚の薄膜切片にした。透過型電子顕微鏡(日立S−4300)を用いて加速電圧100kVにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定した。
また、得られた各層の厚みをもとに、第1層における最小層厚みに対する最大層厚みの比率、第2層における最小層厚みに対する最大層厚みの比率をそれぞれ求めた。
また、得られた各層の厚みをもとに、第1層の平均層厚み、第2層の平均層厚みをそれぞれ求め、第2層の平均層厚みに対する第1層の平均層厚みを算出した。
なお、最外層または交互積層中に0.5μmを超える厚みの調整層が存在する場合は、それらは第1層と第2層から除外した。
【0052】
(4)フィルム全体厚み
フィルムサンプルをスピンドル検出器(安立電気(株)製K107C)にはさみ、デジタル差動電子マイクロメーター(安立電気(株)製K351)にて、異なる位置で厚みを10点測定し、平均値を求めフィルム厚みとした。
【0053】
(5)各方向の延伸後の屈折率
各層を構成する個々の樹脂について、それぞれ溶融させてダイより押出し、キャスティングドラム上にキャストして未延伸フィルムを得、次いで135℃にて一軸方向に5倍延伸した延伸フィルムをそれぞれ用意した。得られた延伸フィルムについて、延伸方向(X方向)とその直交方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)のそれぞれの屈折率(それぞれn、n、nとする)を、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定して求めた。また、3方向の屈折率の平均をもとめ、平均屈折率とした。
【0054】
(6)反射率、反射波長
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、光源側に偏光フィルタを装着し、各波長での積分球に対する全光線反射率を波長400nmから800nmの範囲で測定する。このとき、偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向(X方向)と合わせるように配置した場合の測定値をP偏光とし、偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向と直交するように配置した場合の測定値をS偏光とした。それぞれの偏光成分について、400−800nmの範囲での反射率の平均値を平均反射率とした。
【0055】
(7)輝度向上効果、色相
LCDパネル(松下電器製ビエラTH−32LZ80 2007年製)中の光学フィルム(拡散フィルム、プリズムシート)の代わりに得られた1軸延伸多層積層フィルムを偏光板と光源の間に挿入し、PCにて白色を表示したときの正面輝度をオプトデザイン社製FPD視野角測定評価装置(ErgoScope88)で測定し、比較例1に対する輝度の上昇率およびカラーを算出し、輝度向上効果を下記基準で評価した。
○:輝度向上効果が180%以上
△:輝度向上効果が160%以上、180%未満
×:輝度向上効果が160%未満
あわせてサンプルフィルムを挿入する前の正面輝度における色相xおよびyの値に対するサンプル挿入後の正面輝度における色相xおよびyの値の差異から、色相を下記基準で評価した。
◎: x、yともに差異が0.03未満
○: x、yのいずれかの最大変化が0.03以上
×: x、yともに最大変化が0.03以上
【0056】
(8)耐久評価試験
得られた1軸延伸多層積層フィルムの両面と光拡散性の耐熱性熱可塑性樹脂フィルム(恵和株式会社製:オパルスBS−912)のバックコート面とを140℃、275kPaにて2秒間圧着して貼り合わせて積層体フィルムを作成し、LCDパネル(松下電器製ビエラTH−32LZ80 2007年製)中の偏光板と光源の間に挿入し、バックライトを連続3000hr点灯後、取り出してシートの外観を肉眼で観察し、下記基準に基づき評価を行った。
◎ 連続点灯後のフィルムの外観に全く変化が見られないか、連続点灯後のフィルムに目視で変化が認められるものの0.5mm未満の高さの計測不能な凹凸である
○ 連続点灯後のフィルムに、1mm未満の高さの凹凸が見られる
× 連続点灯後のフィルムに、1mm以上の高さの凹凸が見られる
【0057】
[実施例1]
固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)を第1の層用ポリエステルとし、第2の層用熱可塑性樹脂としてp−メチルスチレンを8モル%共重合した、シンジオタクティックポリスチレン樹脂を準備した。
次に第1の層用ポリエステルを170℃で5時間、および第2の層用樹脂を100℃で3時間乾燥後、第1、第2の押出機に供給し、300℃まで加熱して溶融状態とし、第1の層用ポリエステルを276層、第2の層用樹脂を275層に分岐させた後、第1層と第2層が交互に積層され、かつ第1層と第2層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みが最大/最小で2.2倍まで連続的に変化し、かつ第1層と第2層の平均層厚みが1.0:1.0となるように設計された多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして第1層と第2層の平均層厚みが1.0:1.0である、第1層と第2層が交互に積層された総数551層の未延伸多層積層フィルムを作成した。
この多層未延伸フィルムを135℃の温度で幅方向に5.2倍に延伸し、150℃で3秒間熱固定処理を行った。得られたフィルムの厚みは55μmであった。
得られた1軸延伸多層積層フィルムの各層の樹脂構成、各層の特徴を表1に、また物性を表2に示す。
【0058】
[実施例2〜4]
表1に示すとおり、各層の樹脂組成、層厚み、および製造条件を変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、1軸延伸多層積層フィルムを得た。得られた1軸延伸多層積層フィルムの各層の樹脂構成、各層の特徴を表1に、また物性を表2に示す。
【0059】
[実施例5、6]
表1に示すとおり、各層の層厚みを変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、1軸延伸多層積層フィルムを得た。得られた1軸延伸多層積層フィルムの各層の樹脂構成、各層の特徴を表1に、また物性を表2に示す。
【0060】
[比較例1〜3]
表1に示すとおり、各層の樹脂組成、層厚み、および製造条件を変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、1軸延伸多層積層フィルムを得た。得られた1軸延伸多層積層フィルムの各層の樹脂構成、各層の特徴を表1に、また物性を表2に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、従来よりも正面輝度が大幅に向上する効果が得られるので、特に液晶ディスプレイの輝度向上フィルムとして好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層と第2層とが交互に251層以上積層された1軸延伸多層積層フィルムであって、
1)第1層は2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含むポリエステルを構成成分とする厚み0.01μm以上0.5μm以下の層であり、
2)第2層はシンジオタクティックポリスチレンを構成成分とする厚み0.01μm以上0.5μm以下の層であり、
3)フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分について入射角0度および50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率がそれぞれ90%以上、
4)フィルム面を反射面とし、X方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が15%以下、入射角50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が50%以上である
ことを特徴とする1軸延伸多層積層フィルム。
【請求項2】
第2層の平均層厚みに対する第1層の平均層厚みの比(第1層の平均層厚み/第2層の平均層厚み)が0.2以上3.0以下の範囲である請求項1に記載の1軸延伸多層積層フィルム。
【請求項3】
第1層のポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである請求項1または2に記載の1軸延伸多層積層フィルム。
【請求項4】
第1層、第2層ともに粒子を含まない請求項1〜3のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルム。
【請求項5】
液晶ディスプレイの輝度向上フィルムとして用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の1軸延伸多層積層フィルムの少なくとも片面にさらに耐熱性熱可塑性樹脂フィルムを積層してなる1軸延伸多層積層フィルム積層体。

【公開番号】特開2012−237853(P2012−237853A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106268(P2011−106268)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】