説明

1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンを水素化することによる2,2−ジフルオロエチルアミンの調製方法

本発明は2,2−ジフルオロエチルアミンを調製する方法に関し、ここで、該方法は、1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンを接触水素化に付すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,2−ジフルオロエチルアミン及び/又はその酸付加塩を調製する方法に関し、ここで、該方法は、1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンを接触水素化することを含む。
【背景技術】
【0002】
2,2−ジフルオロエチルアミンは、活性成分の調製における重要な中間体化合物である。2,2−ジフルオロエチルアミンに関するさまざまな調製方法が知られている。
【0003】
Donettiら(J. Med. Chem. 1989, 32, 957−961)は、2,2−ジフルオロアセトアミドから出発する2,2−ジフルオロエチルアミン塩酸塩の合成について記載している。ここでは、所望のアミンは、テトラヒドロフラン(THF)中のジボラン溶液を用いて調製される。その収率は、48%である。
【0004】
Klugerら(JACS 1982, 104, 10, 2891−2897)は、アミドから出発してボロン酸ナトリウムと三フッ化ホウ素エーテラートを使用する2,2−ジフルオロエチルアミンの合成について記載している。その収率は、60%である。
【0005】
Kollonitsch(US 4,030,994)も、2,2−ジフルオロエチルアミンの合成について、即ち、UV照射下、フッ化水素中におけるエチルアミンとフルオロオキシトリフルオロメタンの反応について、記載している。
【0006】
2,2−ジフルオロエチルアミンの調製については、Dickeyら(Ind. Eng. Chem. 1956, 209−213)においても記載されている。そこでは、2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンを、オートクレーブ内で、28%水酸化アンモニウム(即ち、28%アンモニア水溶液)と反応させる。かくして、当該アミンは、65%の収率で得られた。
【0007】
これらの調製方法は、いずれも、経済的に実用的な工業規模で実施することができない。Donettiらによる調製方法及びKlugerらによる調製方法は、収率が低いこと及び高価で有害な化学物質(例えば、ボロン酸ナトリウム/BF又はジボラン)を使用することによって、2,2−ジフルオロエチルアミンの工業規模での調製には適さない。Kollonitschらによる調製方法は、有害な化学物質を使用し、そして、純粋ではない2,2−ジフルオロエチルアミンが得られる。Dickeyらによる調製方法も比較的低い収率に対して極めて長い反応時間を必要とするので、同様に、工業的使用に適していないか又は非経済的である。さらに、当該反応混合物は、極めて腐食性であり、従って、そのような理由によっても、経済的な実行可能性には疑問の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、2,2−ジフルオロエチルアミンの既知調製方法から出発して、2,2−ジフルオロエチルアミンを容易に且つ安価に調製することが可能な代替的な調製方法を見いだすことである。安価な調製方法とは、出発物質が例えば無害である並びに/又は所望の2,2−ジフルオロエチルアミンが充分に高い収率及び純度で得られるという理由により、大きな金銭的な投資をすることなく実施し得る調製方法を意味するものと理解される。同様に、対応する2,2−ジフルオロエチルアミン酸付加塩を得ることも有利であるが、それは、対応する2,2−ジフルオロエチルアミン酸付加塩が2,2−ジフルオロエチルアミンに直接変換され得るからである。
【0009】
1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンは、DE−A1−3305201に記載されている調製方法を用いて高い収率及び良好な純度で調製することが可能であるので、出発物質として容易に入手することができる。従って、1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンを所望のアミンに還元する調製方法を見いだすことは望ましいであろう。
【0010】
Knunyantsら(“Aliphatic Fluoro Nitro Compounds Communication 3”, Russian Chemical Bulletin (1964), Seiten 1538−1541)は、気体状水素の存在下においてアルコキシフルオロニトロプロパン類をラネーニッケル(アルミニウム−ニッケル合金の微粒子からなる固体触媒)上での接触水素化に付すことで1−(アルコキシメチル)−2,2,2−トリフルオロエチルアミンが得られるということについて記載している。特に、水素圧60気圧(約60バール)のオートクレーブ内における1−(エトキシメチル)−2,2,2−トリフルオロエチルアミンのラネーニッケル上での気体状水素による水素化が記載された。後処理後、1−(エトキシメチル)−2,2,2−トリフルオロエチルアミンが、77%の収率で、塩酸塩として単離された。
【0011】
Knunyantsら(「Izvestiya Akademii Nauk SSSR(1966),(2), pages 250−253」(ロシア語)、及び、「Russian Chemical Bulletin(1966), ”Aliphatic Fluoro Nitro Compounds Communication 4”, pages 226−228」(英語))は、対応するアミンを得るために金属パラジウム又は塩酸中の鉄を使用してフッ素化ニトロ炭化水素類(特に、1,1,1−トリフルオロ−2−ニトロエタン)を水素化する方法について記載している。1,1,1−トリフルオロ−2−ニトロエタンの還元において金属パラジウムを使用すると、単に、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)ヒドロキシルアミンが得られるが、塩酸中の鉄を使用した場合は、所望の2,2,2−トリフルオロエチルアミン塩酸塩を77%の収率で得ることができる。これは、1,1,1−トリフルオロ−2−ニトロエタンを塩酸及び鉄ヤスリ粉と一緒に90〜95℃で加熱し、次いで、水酸化ナトリウムを用いてアルカリ化し、蒸気を用いて当該トリフルオロエチルアミンを蒸留することを含む。生成物は、塩酸塩として単離される。
【0012】
しかしながら、Knunyantsら(1966)は、1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンの接触水素化について記載している。Knunyantsらにおいて記載された還元方法及び水素化方法は、1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンの還元に直接的に適用することはできないということが分かった。。かくして、Knunyantsにおいて記載されている条件下で塩酸中の鉄を用いて1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンを還元水素化しても、2,2−ジフルオロエチルアミンは得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第US 4,030,994号
【特許文献2】独国特許出願公開第DE−A1−3305201号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J. Med. Chem. 1989, 32, 957−961
【非特許文献2】JACS 1982, 104, 10, 2891−2897
【非特許文献3】Ind. Eng. Chem. 1956, 209−213
【非特許文献4】“Aliphatic Fluoro Nitro Compounds Communication 3”, Russian Chemical Bulletin (1964), Seiten 1538−1541
【非特許文献5】Izvestiya Akademii Nauk SSSR(1966),(2), pages 250−253
【非特許文献6】Russian Chemical Bulletin(1966), ”Aliphatic Fluoro Nitro Compounds Communication 4”, pages 226−228
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
その後に複雑な精製を一般に必要としないように、2,2−ジフルオロエチルアミン又は対応する酸付加塩を優れた収率及び高い純度で調製することが可能な、並びに、同時に、容易で安価な、1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンを接触水素化する方法が見いだされた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かくして、本発明は、2,2−ジフルオロエチルアミン及び/又はその酸付加塩を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンを接触水素化することを含む。
【0017】
本発明による調製方法は、例として、下記スキームにおいて例証される:
【化1】

【0018】
本発明の接触水素化は、触媒の存在下で、気体状水素を反応容器の中に導入して実施されるか、又は、気体状水素を反応容器の中でその場で生成させて実施される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による接触水素化に使用するのに適切な触媒は、周期表の第8〜10族の1種類以上の金属、特に、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム及び白金から選択される1種類以上の金属を含んでいる。適切な触媒は、それらが触媒活性を有していることに加えて、選択された反応条件下において、不活性である。該金属は、任意の化学形態で、例えば、元素、コロイド、塩若しくは酸化物の形態で、又は、キレートとして錯化剤と一緒に、又は、合金として(この場合、該合金は、他の金属、例えば、アルミニウムや上記で挙げられている金属なども、含み得る)、存在し得る。該金属は、担持された形態で存在し得る。即ち、該金属は、任意の支持体(好ましくは、無機支持体)に適用し得る。適切な支持体の例は、炭素(木炭、又は、活性炭)、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム又は二酸化チタンである。本発明に従って好ましい触媒は、無機支持体上に周期表の第8〜10族の少なくとも1種類の金属を含んでいる。本発明に従って特に好ましいのは、白金及び/又はパラジウムを含んでいて、場合により無機支持体に適用されている触媒である。そのような触媒は、例えば、PtO、活性炭担持Pd(OH)(パールマン型触媒)及びリンドラー触媒である。ラネーニッケルは、酸性条件下では安定ではないので、ラネーニッケルを使用することは望ましくない。当該合金からニッケルが除去され、そのニッケルは当該酸のアニオンと一緒に対応するニッケル塩を形成する。従って、ラネーニッケルは、本発明による適切な触媒から除かれる。
【0020】
本発明による調製方法において、該触媒は、用いられる1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンに基づいて、約0.01〜約30重量%の濃度で使用する。該触媒は、好ましくは、約0.1〜約25重量%の濃度で使用する。
【0021】
本発明による調製方法においては、通常、第(i)段階において1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンと触媒を最初に入れ、第(ii)段階において、水素を導入するか又は生成させる。段階(i)と段階(ii)を逆にすることも可能である。水素化は、連続的に又はバッチ式で行うことも可能である。
【0022】
該接触水素化は、水素ガス雰囲気内で、標準圧力で実施することが可能であるか、又は、オートクレーブ内において高圧下(即ち、最大で約200バールまで)で実施することが可能である。特に、高反応温度では、高圧力下で実施するのが有用であり得る。そのような(付加的な)圧力上昇は、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスを供給することによって達成することができる。本発明の水素化は、好ましくは、約1〜約30バールの範囲内の圧力下で、さらに好ましくは、約5〜約25バールの範囲内の圧力下で、実施する。
【0023】
本発明の一実施形態では、水素化が完了した後、及び、場合により触媒を除去した後、充分な量の無機酸又は有機酸又はそれらの混合物を添加する。適切な酸は、例えば、塩酸、硫酸、ギ酸又は酢酸である。このことにより、2,2−ジフルオロエチルアミンの対応する酸付加塩を得ることが可能となり、次いで、この酸付加塩を本明細書中に記載されているようにして単離し、及び/又は、遊離2,2−ジフルオロエチルアミンに変換する。
【0024】
本発明のさらに別の実施形態では、該接触水素化は、充分な量の無機酸又は有機酸又はそれらの混合物の存在下で実施される。適切な酸は、例えば、塩酸、硫酸、ギ酸又は酢酸である。この実施形態では、触媒は、酸感受性であってはならない。従って、好ましい水素化触媒は、特に、白金及び/又はパラジウムを含んでいる触媒である。該酸は、濃厚形態で添加し得るか又は水と一緒に添加することができる。理想的な場合において溶媒酸混合物が存在するように、水素化の前に反応混合物に酸を添加するのが好ましい。酸が存在することにより、水素化によって形成された生成物が直ぐに2,2−ジフルオロエチルアミンの対応する酸付加塩に変換されるという効果が得られる。その結果、副生成物は低レベルしか形成されず、このことが収量を増大させる。20時間よりも短い反応時間でも、良好な収率が達成される。形成された酸付加塩を、次いで、本明細書中に記載されているようにして単離し、及び/又は、遊離2,2−ジフルオロエチルアミンに変換する。
【0025】
本発明によれば、無機酸又は有機酸又はそれらの混合物の充分な量は、それによって当該2,2−ジフルオロエチルアミン生成物が完全にプロトン化された形態で存在するような量を意味するものと理解される。使用する1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンに基づいて、一塩基酸(例えば、HCl)の場合は少なくとも1当量の酸が必要とされ、二塩基酸(例えば、HSO)の場合は少なくとも0.5当量の酸が必要とされる。
【0026】
本発明による調製方法は、溶媒(希釈剤)の存在下で実施するのが一般に有利である。しかしながら、該接触水素化は、溶媒無しで実施することも可能である。溶媒は、有利には、当該反応混合物がその調製方法全体を通して効率的に撹拌可能な状態にあるような量で使用する。有利には、使用する1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンに基づいて、1〜50倍の量の溶媒、好ましくは、2〜40倍の量の溶媒、さらに好ましくは、2〜30倍の量の溶媒を使用する。
【0027】
本発明による調製方法を実施するのに有用な溶媒には、当該反応条件下において不活性である全ての有機溶媒が包含され、使用する溶媒の種類は、反応手順のタイプに依存し、より特定的には、使用する触媒の種類及び/又は水素源(気体状水素の導入又はその場における生成)に依存する。溶媒は、本発明に従えば、純粋な溶媒の混合物を意味するものとも理解される。
【0028】
本発明に従って適切な溶媒は、特に、以下のものである:ハロ炭化水素類、例えば、クロロ炭化水素類、例えば、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン、塩化メチレン、ジクロロブタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ペンタクロロエタン、ジフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、トリクロロベンゼン;アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール;エーテル類、例えば、エチルプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、n−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロジエチルエーテル、並びに、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのポリエーテル;脂肪族、脂環式又は芳香族の炭化水素類、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、並びに、フッ素原子及び塩素原子で置換されていてもよい工業用品質の炭化水素類、例えば、塩化メチレン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、フルオロベンゼン、クロロベンゼン又はジクロロベンゼン;例えば、沸点が例えば40℃〜250℃の範囲内にある成分を有しているホワイトスピリット、シメン、70℃〜190℃の沸点範囲内にある石油流分、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、リグロイン、オクタン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、キシレン;エステル類、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、及び、さらに、炭酸ジメチル、炭酸ジブチル、又は、炭酸エチレン。本発明による別の溶媒は、水である。
【0029】
本発明による調製方法において、使用する溶媒は、好ましくは、クロロ炭化水素類又はアルコール類である。
【0030】
本発明による調製方法は、広い温度範囲内で(例えば、約−20℃〜約100℃の範囲内で)、実施することができる。該接触水素化は、約0℃〜約40℃の温度範囲内で実施するのが好ましい。
【0031】
本発明による水素化の反応時間は、一般に、30分間〜24時間である。さらに長い反応時間も可能であり、どのような悪影響もないが、そのような長い反応時間は、経済的な観点から有利ではない。
【0032】
接触水素化の後で2,2−ジフルオロエチルアミンが遊離形態で存在している場合、それは、必用に応じて、蒸留によって精製する。接触水素化の後で2,2−ジフルオロエチルアミンが酸付加塩として存在している場合、それは、必用に応じて、好ましくは結晶化によって、精製する。
【0033】
2,2−ジフルオロエチルアミンの水溶性酸付加塩は、一般に、水溶液から抽出することによって精製する。遊離2,2−ジフルオロエチルアミンは、対応する酸付加塩を有機塩基又は無機塩基(例えば、NaHCO、NaCO、又は、NaOH)と反応させることによって放出される。次に、その放出されたジフルオロエチルアミンを、水溶液から直接留去するか、又は、有機溶媒の中に抽出する。
【0034】
下記実施例を参照して、本発明について詳細に説明するが、該実施例は、本発明を限定するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0035】
調製実施例
実施例1
【化2】

【0036】
メタノールの中に、5mmolの1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンを最初に入れ、窒素下、20重量%のPtOを混合させる。その反応混合物を、20バールの水素圧下、室温(約20℃)で、16時間撹拌する。その水素化混合物を0℃まで冷却した後、圧力を開放し(即ち、減圧し)、触媒を濾去する。次いで、メタノールに溶解させた7.5mmolのHClを添加する。溶媒(この場合、メタノール)を減圧下に除去した後、2,2−ジフルオロエチルアミンの80%塩酸塩560mgが固体形態で得られる。これは、理論値の80%の収率に相当する。
【0037】
NMR(MeOD):6.19〜6.0ppm(m,1H),3.2〜3.13(m,2H); M:81。
【0038】
実施例2
メタノールの中に、1.5当量の塩酸と一緒に5mmolの1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンを最初に入れ、窒素下、20重量%のPtOを混合させる。その反応混合物を、20バールの水素圧下、室温(約20℃)で、7時間撹拌する。その水素化混合物を0℃まで冷却した後、圧力を開放し(即ち、減圧し)、触媒を濾去する。次いで、メタノールに溶解させた7.5mmolのHClを添加する。溶媒(この場合、メタノール)を減圧下に除去した後、2,2−ジフルオロエチルアミンの95%塩酸塩560mgが固体形態で得られる。これは、理論値の95%の収率に相当する。
【0039】
NMR(MeOD):6.19〜6.0ppm(m,1H),3.2〜3.13(m,2H); M:81。
【0040】
実施例3
25mL容水素化オートクレーブ(材料:ハステロイ,機械式プロペラ撹拌機)の中に、0.880g(0.009mol、1.3当量)の濃硫酸及び0.100gの活性炭担持20%Pd(OH)(パールマン型触媒)と一緒に9mLのエタノールの中の1.0g(0.007mol、1.0当量)のジフルオロニトロエタン(ジクロロメタン中の約80%溶液)を最初に入れる。水素を流した後、20バールの水素下、室温で、約3時間水素化する(撹拌速度 約600rpm)。濾過し、触媒を洗浄した後、16.6gの淡黄色の反応混合物が得られる。定量NMRを用いて分析した後、90%の収率が得られる。
【0041】
実施例4
25mL容水素化オートクレーブ(材料:ハステロイ,機械式プロペラ撹拌機)の中に、1.270g(0.013mol、1.3当量)の濃硫酸及び0.100gの活性炭担持20%Pd(OH)(パールマン型触媒)と一緒に9mLの水の中の2.0g(0.010mol、1.0当量)のジフルオロニトロエタン(ジクロロメタン中の約60%溶液)を最初に入れる。水素を流した後、20バールの水素下、室温で、約3時間水素化する(撹拌速度 約600rpm)。濾過し、触媒を洗浄した後、17.8gの淡黄色の反応混合物が得られる。定量NMRを用いて分析した後、88%の収率が得られる。
【0042】
比較実施例1
4:1の比率のメタノールと濃酢酸(=氷酢酸)の混合物の中に、5mmolの1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンを最初に入れ、窒素下、20重量%のラネーニッケルを混合させる。その反応混合物を、20バールの水素圧下、室温(約20℃)で、7時間撹拌する。その水素化混合物を0℃まで冷却した後、圧力を開放し(即ち、減圧し)、触媒を濾去する。次いで、溶媒(この場合、メタノール)を減圧下に除去し、それにより、560mgの95%2,2−ジフルオロエチルアミンが固体形態で得られる。これは、理論値の80%の収率に相当する。ここで、2,2−ジフルオロエチルアミンは、モノアセチル−2,2−ジフルオロエチルアミンとその酢酸塩の混合物として存在している。該ニッケルは該酢酸と反応して酢酸ニッケルとなるので、当該ラネーニッケル触媒を完全に回収することはできない。
【0043】
13C−NMR(MeOD)モノアセチル−2,2−ジフルオロエチルアミン:−CHF(115.3ppm);−CH(42.7ppm)、CO−(173.9ppm);−CH(22.3ppm)。
【0044】
13C−NMR(MeOD)酢酸塩としての2,2−ジフルオロエチルアミン:−CHF(115.4ppm);−CH(43ppm)、CO−(176.5ppm);−CH(21.7ppm)。
【0045】
比較実施例2
11.1g(0.1mol)のジフルオロニトロエタン、0.1gの塩化鉄、23gの鉄ヤスリ粉を、50mLの濃塩酸と80mLの水の混合物の中で、還流下に2時間加熱する。次に、その反応混合物に、100mLの水の中の32gのNaOHを混合させる。蒸気蒸留に付した後、その留出物を塩酸で酸性化し、減圧下に濃縮する。ジフルオロエチルアミン塩酸塩を単離することは不可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2−ジフルオロエチルアミンを調製する方法であって、1,1−ジフルオロ−2−ニトロエタンを接触水素化(ここで、該接触水素化において使用される触媒は、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム及び白金から選択される1種類以上の金属を含んでいるが、但し、ラネーニッケルは除外される)に付すことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記接触水素化が、無機酸又は有機酸の存在下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒が、パラジウム又は白金を含んでいる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が、PtO、活性炭担持Pd(OH)及びリンドラー触媒である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記接触水素化が、気体状水素を反応容器の中に導入すること又は気体状水素をその場で生成させることを含んでいる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2013−506700(P2013−506700A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532554(P2012−532554)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064700
【国際公開番号】WO2011/042376
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】