説明

1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)−ペンタンを含有する三元共沸混合物及びそれから作製される組成物

1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)−ペンタンとトランス−1,2−ジクロロエチレンと第三構成成分とから本質的になる配合物を含む組成物が提供される。第三構成成分は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール及び1−プロパノールから選択される。この配合物は、三元共沸混合物を形成する。提供される組成物は、コーティング溶媒構成成分として、伝熱流体として、並びに、潤滑剤として、電子部品を洗浄するのに有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、トランス−1,2−ジクロロエチレンと、第三構成成分との三元共沸混合物を含有する組成物、並びに、基材洗浄、コーティング付着、熱エネルギー伝達、及び加工操作潤滑のためのこれらの組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロクロロカーボン(HCC、例えば1,1,1−トリクロロエタン及び四塩化炭素)は、乾燥、洗浄(例えば、プリント回路基板からのフラックス残渣の除去)及び蒸気脱脂のような広範な用途で溶媒として用いられている。これらの材料はまた、冷蔵及び伝熱プロセスでも用いられている。しかしながら、塩素含有炭素部位での光分解反応性及び均一反応性が、地球のオゾン層の破壊の一因であることが示されている。更に、CFCの大気寿命の長さは、地球温暖化と関連がある。結果として、CFCを代替する世界規模の動きが存在する。
【0003】
低オゾン破壊能に加えて、代替において求められている特徴としては、典型的には、様々な溶媒での洗浄用途に好適な沸点範囲、低燃焼性及び低毒性が挙げられる。いくつかの用途では、溶媒代替品はまた、炭化水素系の汚れ及びフルオロカーボン系の汚れの両方を溶解する能力を有する。一部の実施形態では、溶媒代替品は低毒性も有し、引火点を有さず(ASTM D3278−96 e−1、「小規模密閉式試験装置による液体の引火点(Flash Point of Liquids by Small Scale Closed-Cup Apparatus)」により測定したとき)、許容可能な安定性を有し、短い大気寿命を有し、低地球温暖化能を有する。
【0004】
ハイドロフルオロエーテル(HFE)は、CFC及びHCFCの代替品として使用されている。一般的に、HFEは化学的に安定であり、低毒性を有し、非燃焼性であり、非オゾン破壊性である。場合によっては、HFEは、1種以上の共溶媒と共沸混合物を形成して、HFEの溶媒特性を改良する又は強化することができる。多くの共沸混合物が、自身を有用な溶媒にする特性を保有する。例えば、共沸混合物は、加工及び使用中、沸点の変動を避ける一定の沸点を有する。更に、共沸混合物を溶媒として用いるとき、組成物は沸騰中又は還流中に変化しないため、性質は依然として変わらないままである。溶媒として用いられる共沸混合物は、蒸留により都合よく回収することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
良好な溶媒強度、低燃焼性を有し、非オゾン破壊性であり、並びに/又は比較的短い大気寿命を有し、その結果地球温暖化に有意に寄与しない(すなわち、低地球温暖化能)組成物が必要とされている。沸騰中又は還流中に一定のままでいる特性を有する溶媒も必要とされている。提供及び記載されている、HFEとトランス−1,2−ジクロロエチレンといくつかの一般的なアルコールの三元共沸混合物を含む組成物は、HFEにより網羅されている用途の範囲を拡大できることが発見された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡潔には、一態様では、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)−ペンタンとトランス−1,2−ジクロロエチレンと第三構成成分との配合物を含む組成物が提供される。第三構成成分は、(i)メタノール(この場合、本組成物は、分留されると、約18.6重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、73.0重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、8.4重量パーセントのメタノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、この蒸留留分は周囲気圧下で約40℃にて沸騰する)、(ii)エタノール(この場合、本組成物は、分留されると、約20.2重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、75.3重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、4.5重量パーセントのエタノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、この蒸留留分は周囲気圧下で約45℃にて沸騰する)、(iii)イソプロパノール(この場合、本組成物は、分留されると、約20.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、77.3重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、2.2重量パーセントのイソプロパノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、この蒸留留分は周囲気圧下で約45℃にて沸騰する)、(iv)t−ブタノール(この場合、本組成物は、分留されると、約21.0重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、77.8重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、1.2重量パーセントのt−ブタノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、この蒸留留分は周囲気圧下で約46℃にて沸騰する)、及び(v)1−プロパノール(この場合、本組成物は、分留されると、24.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、74.9重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、0.6重量パーセントの1−プロパノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、この蒸留留分は周囲気圧下で約46℃にて沸騰する)から選択される。
【0007】
別の態様では、表面の少なくとも一部分に上記組成物のうちの1つを含むコーティング材料を適用することを含むプロセスが、表面上にコーティング混合物を付着させるために提供され、ここで、少なくとも1つのコーティング材料は、提供されている組成物に可溶性又は分散性である。また、金属、サーメット又は複合材料を潤滑させるためのプロセスが提供され、ここで、上記プロセスは、上記の提供されている組成物のうちの1つを含む潤滑流体を使用する。
【0008】
更に別の態様では、汚染物質が組成物中に又は組成物により、溶解、分散又は移動するまで上記の提供されている組成物の1つ以上に基材を接触させることと、溶解、分散又は移動した汚染物質を含有する組成物を基材の表面から除去することと、を含むプロセスが、基材の表面からの汚染物質の除去を補助するために提供される。また、伝熱のためのプロセスが提供され、ここで、上記の提供されている組成物の1つ以上は伝熱流体として使用することができる。
【0009】
本出願において、
「から本質的になっている」又は「から本質的になる」は、配合物の三構成成分が組成物中で三元共沸混合物を形成するために存在する必要があることを示す。所望される三元共沸混合物の形成に干渉しない他の成分も、配合物中に存在し得る。並びに、
「周囲気圧」は、720〜740トル(95.9〜98.7kPa)の範囲の気圧を指す。
【0010】
提供されている組成物及びプロセスは、洗浄用溶媒の提供、コーティング付着用溶媒の提供及び伝熱流体としてなどの多数の用途において実用性を有する。提供されている組成物は、ハイドロフルオロエーテル(HFE)により提供される用途の範囲を拡大することができる比較的高強度の溶媒である。
【0011】
上記の要約は、本発明の全ての実施が開示された各実施形態を記載することを意図しない。図面の簡単な説明及び後に続く詳細な説明は、説明に役立つ実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】共沸混合物及び共沸混合物様領域を示す、構成成分Bの百分率対沸点の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、本明細書の説明の一部を構成しいくつかの特定の実施形態が例として示される添付の一連の図面を参照する。本発明の範囲又は趣旨を逸脱せずに、その他の実施形態が考えられ、実施され得ることを理解すべきである。したがって、以下の「発明を実施するための形態」は、限定する意味で理解すべきではない。
【0014】
他に指示がない限り、本明細書及び「特許請求の範囲」で使用される特徴サイズ、量、物理特性を表わす数字は全て、どの場合においても用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。それ故に、そうでないことが示されない限り、前述の明細書及び添付の「特許請求の範囲」で示される数値パラメータは、当業者が本明細書で開示される教示内容を用いて、目標対象とする所望の特性に応じて、変化し得る近似値である。終点による数の範囲の使用は、その範囲内(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)及びその範囲内の任意の範囲内の全ての数を含む。
【0015】
共沸混合物組成物、又は共沸混合物は、混合物の沸点において、液体共沸混合物組成物の部分蒸発により生じる蒸気が液体と同じ組成を有する、単一物質のように挙動する2種以上の物質の混合物を含む。三元共沸混合物は、蒸気が液体と同じ組成を有する、単一物質のように挙動する3種の物質の混合物を含む。提供されている組成物について、驚くべきことに、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール及び1−プロパノールを含む特定のアルコールがトランス−1,2−ジクロロエチレン及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと三元共沸混合物混合物を形成できることが判明した。
【0016】
共沸混合物組成物は、個々の成分それぞれより高い最高沸点又はそれより低い最低沸点のいずれかを示す一定沸点混合物である。専門用語を定義するために、図1を用いる。仮定的な混合物B’を図1に示す。混合物B’は、構成成分A及びBを含む。混合物B’は、構成成分Bの百分率対沸点としてプロットされ、曲線151として表わされる。図1では、個々の構成成分A及びBの沸点は、それぞれ95℃及び100℃である。混合物B’の共沸混合物は155によって表わされる。この共沸混合物は、構成成分A及びBのいずれよりも低い沸点を有する。共沸混合物を含む組成物は、個々の構成成分のそれぞれの沸点より高い温度、又は個々の成分のそれぞれの沸点より低い温度のいずれかで沸騰する。混合物B’の領域153(斜線領域により表示)における組成物は、0%超〜40%未満の構成成分Bを含み、構成成分A及びBのいずれよりも低い沸点を有する。図1において見ることができるように、共沸混合物組成物は、物質の特定の混合物の組成物の範囲内に含まれる。三元共沸混合物及びこの共沸混合物を含む組成物は、同様にプロットすると、領域153のような三次元体積を形成し得る。
【0017】
提供されている組成物は、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンとトランス−1,2−ジクロロエチレンと、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール及び1−プロパノールから選択される第三構成成分と、を含む。提供されている組成物中の3つの構成成分の濃度は、対応する共沸混合物組成物から大きく変動してもよく、この許容可能な変動の大きさは固有の第三構成成分に依存する。一部の実施形態では、提供されている組成物は、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、トランス−1,2−ジクロロエチレンと、第三構成成分とを、周囲気圧にてこれらの間で形成される共沸混合物を含むものと本質的に同じ濃度で含む。一部の実施形態では、提供されている組成物は、時間が経っても組成物の溶媒力に有意な変化を示さない。
【0018】
1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン、トランス−1,2−ジクロロエチレン及び第三構成成分に加えて、構成成分のいずれとも共沸混合物(すなわち、二元、三元又は更に大きな規模の共沸混合物)を形成しない他の化合物も存在し得る。典型的には、他の成分は、少量存在する。例えば、一部の実施形態では、共溶媒又は界面活性剤が存在して、例えば、提供されている組成物中の目的とされる溶質(水、汚れ又はコーティング材料(例えば、ペルフルオロポリエーテル潤滑剤及びフルオロポリマー)など)の分散性又は溶解度を高めることができる。一部の実施形態では、例えば、提供されている組成物の潤滑特性を強化させるために、少量の潤滑添加剤を存在させることができる。
【0019】
一部の実施形態では、提供されている組成物は、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンとトランス−1,2−ジクロロエチレンと第三構成成分の配合物を含む組成物を含み、ここで、第三構成成分は、(i)メタノール(この場合、本組成物は、分留されると、約18.6重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、73.0重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、8.4重量パーセントのメタノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、この蒸留留分は周囲気圧下で約40℃にて沸騰する)、(ii)エタノール(この場合、本組成物は、分留されると、約20.2重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、75.3重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、4.5重量パーセントのエタノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、この蒸留留分は周囲気圧下で約45℃にて沸騰する)、(iii)イソプロパノール(この場合、本組成物は、分留されると、約20.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、77.3重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、2.2重量パーセントのイソプロパノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、この蒸留留分は周囲気圧下で約45℃にて沸騰する)、(iv)t−ブタノール(この場合、本組成物は、分留されると、約21.0重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、77.8重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、1.2重量パーセントのt−ブタノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、この蒸留留分は周囲気圧下で約46℃にて沸騰する)、及び(v)1−プロパノール(この場合、本組成物は、分留されると、24.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、74.9重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、0.6重量パーセントの1−プロパノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、この蒸留留分は周囲気圧下で約46℃にて沸騰する)から選択される。
【0020】
他の実施形態では、提供されている組成物中の1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン、トランス−1,2−ジクロロエチレン及び第三構成成分の濃度は、対応する共沸混合物におけるそのような構成成分の濃度からの差が約10パーセントを超えない。換言すれば、提供されている組成物は、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンとトランス−1,2−ジクロロエチレンと第三構成成分とから本質的になる配合物を含み得、ここで、濃度は共沸混合物の濃度からの差が最大で約10パーセントである(任意の所与の圧力にて三元共沸混合物の濃度よりも高い又は低い)。第三構成成分がメタノールである場合、配合物は、約16.7〜約20.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約65.7〜約80.3重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約7.6〜約9.2重量パーセントのメタノールと、から本質的になる。この配合物は、分留されると、周囲気圧下で約40℃にて沸騰する共沸混合物である蒸留留分を形成する。第三構成成分がエタノールである場合、配合物は、約18.2〜約22.2重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約67.8〜約82.8重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約4.1〜約5.0重量パーセントのエタノールと、から本質的になる。この配合物は、分留されると、周囲気圧下で約45℃にて沸騰する共沸混合物である蒸留留分を形成する。第三構成成分がイソプロパノールである場合、配合物は、約18.5〜約22.6重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約69.6〜約85.0重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約2.0〜約2.4重量パーセントのイソプロパノールと、から本質的になる。この配合物は、分留されると、周囲気圧下で約45℃にて沸騰する共沸混合物である蒸留留分を形成する。第三構成成分がt−ブタノールである場合、配合物は、約18.9〜約23.1重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約70.0〜約85.6重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約1.1〜約1.3重量パーセントのt−ブタノールと、から本質的になる。この配合物は、分留されると、周囲気圧下で約46℃にて沸騰する共沸混合物である蒸留留分を形成する。最後に、第三構成成分が1−プロパノールである場合、配合物は、約22.1〜約27.0重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約67.4〜約82.4重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約0.5〜約0.7重量パーセントの1−プロパノールと、から本質的になる。この配合物は、分留されると、周囲気圧下で約46℃にて沸騰する共沸混合物である蒸留留分を形成する。
【0021】
他の実施形態では、提供されている組成物は、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンとトランス−1,2−ジクロロエチレンと第三構成成分とから本質的になる配合物を含み得、ここで、濃度は共沸混合物の濃度からの差が5パーセントを超えない。第三構成成分がメタノールである場合、配合物は、約17.7〜約19.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約69.4〜約76.7重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約8.0〜約8.8重量パーセントのメタノールと、から本質的になる。この配合物は、分留されると、周囲気圧下で約40℃にて沸騰する共沸混合物である蒸留留分を形成する。第三構成成分がエタノールである場合、配合物は、約19.2〜約21.2重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約71.5〜約79.1重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約4.3〜約4.7重量パーセントのエタノールと、から本質的になる。この配合物は、分留されると、周囲気圧下で約45℃にて沸騰する共沸混合物である蒸留留分を形成する。第三構成成分がイソプロパノールである場合、配合物は、約19.5〜約21.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約73.4〜約81.2重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約2.1〜約2.3重量パーセントのイソプロパノールと、から本質的になる。この配合物は、分留されると、周囲気圧下で約45℃にて沸騰する共沸混合物である蒸留留分を形成する。第三構成成分がt−ブタノールである場合、配合物は、約20.0〜約22.1重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約73.9〜約81.7重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約1.1〜約1.3重量パーセントのt−ブタノールと、から本質的になる。この配合物は、分留されると、周囲気圧下で約46℃にて沸騰する共沸混合物である蒸留留分を形成する。最後に、第三構成成分が1−プロパノールである場合、配合物は、約23.3〜約25.7重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約71.2〜約78.6重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約0.57〜約0.63重量パーセントの1−プロパノールと、から本質的になる。この配合物は、分留されると、周囲気圧下で約46℃にて沸騰する共沸混合物である蒸留留分を形成する。
【0022】
当該技術分野において既知であるように、提供されている共沸混合物を含む任意の共沸混合物の組成は、圧力により変化し、例えば、周囲圧力が上昇すると、液体の沸点も上昇し、同様に、周囲圧力が低下すると、液体の沸点も低下する。一部の実施形態では、提供されているものは、均質である、すなわち、周囲条件下で(すなわち、室温及び大気圧で)単相を形成する。
【0023】
提供されている組成物は、所望の量の1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン、トランス−1,2−ジクロロエチレン、及び第三構成成分、並びにいずれかの他の少量成分(例えば、界面活性剤又は潤滑添加剤)を、従来の混合手段を用いて一緒に混合することによって調製できる。構成成分は任意の順序で添加され得る。
【0024】
一部の実施形態では、提供されている組成物は、洗浄プロセスにおいて使用することができる。他の実施形態では、提供されている組成物は、伝熱プロセスにおいて、例えば、冷媒として、使用することができる。更に他の実施形態では、提供されている組成物は、潤滑流体として又はコーティング液として、使用することができる。種々の異なる溶媒洗浄及び/又は汚染除去技術が当該技術分野において既知である。一実施形態では、洗浄プロセスは、基材上の汚染物質が、提供されている組成物中又は組成物により、実質的に溶解、分散又は移動するまで、汚染された基材を本明細書に提供されている組成物の1つと接触させることにより、行うことができる。汚染物質は、新しい、汚染されていない本明細書で提供されている組成物で基材をすすぐことにより、又は、提供されている組成物中に浸漬した基材を槽から取り出して汚染された組成物が基材から流れ落ちるようにすることにより、除去することができる。提供されている組成物は、気体状態又は液体状態のいずれか(又は両方)で用いることができ、基材と「接触させる」ための任意の既知の技術を用いることができる。例えば、提供されている組成物は、液相である場合には、基材上に噴霧又はブラシ掛けすることができ、提供されている組成物が気相である場合には、基材全体に吹きかけることができ、あるいは、提供されている組成物が気相又は液相のいずれであっても基材を浸漬させることができる。一部の実施形態では、高温、超音波エネルギー及び/又は撹拌を用いて、洗浄を促進することができる。
【0025】
一部の実施形態では、提供されている組成物は、半導体製造中に汚染物質を除去するのに有用であり得る。例えば、集積回路又は他の小型構成品を、提供されている組成物に曝露して、フォトレジスト残渣、イオン注入後残渣、エッチング後残渣、微粒子、及び更には水などの、表面上の望ましくない物質を除去することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の代表的なプロセスを用いて有機及び/又は無機基材を洗浄することができる。代表的な基材の例としては、金属;セラミックス;ガラス;シリコンウエハー;ポリマー;天然繊維(及びそれに由来する布地)、例えば綿、絹、亜麻布、ウール、ラミー、毛皮、レザー及びスエード;合成繊維(及びそれに由来する布地)、例えばポリエステル、レーヨン、アクリル、ナイロン、ポリオレフィン、アセテート、トリアセテート及びこれらの配合物;天然及び合成繊維を含む布地;並びに前述の材料の組み合わせ(例えば、積層体、混合物、配合物など)が挙げられる。一部の実施形態では、本明細書に記載のプロセスは、電子部品(例えば、回路基板)、光学又は磁気媒体、並びに医療装置及び医療用物品、例えば注射器、手術用機器、埋め込み型装置及び人工装具の精密洗浄で特に有用であり得る。
【0026】
一部の実施形態では、提供されている組成物を含む、提供されている洗浄及び/又は汚染除去プロセスは、基材の表面からほとんどの汚染物質を溶解させる又は除去するのに使用することができる。例えば、軽質炭化水素汚染物質;鉱油、グリース、切削油及び鍛造油並びにワックスのような高分子量の炭化水素汚染物質;ペルフルオロポリエーテル、ブロモトリフルオロエチレンオリゴマー(ジャイロスコープ流体)及びクロロトリフルオロエチレンオリゴマー(水圧液、潤滑剤)のようなフルオロカーボン系汚染物質;シリコーン油及びグリース;フォトレジスト、はんだ付け用フラックス;微粒子;並びに精密、電子、金属及び医療装置洗浄において遭遇する汚染物質のような物質を除去できる。一部の実施形態では、提供されている洗浄プロセスは、炭化水素汚染物質(特に軽質炭化水素油)、フルオロカーボン系汚染物質、フォトレジスト及び微粒子の除去に特に有用であり得る。
【0027】
一部の実施形態では、提供されている組成物はコーティング付着用途に使用することもでき、ここで、提供されている組成物はコーティング材料の担体又は溶媒として機能し、材料を基材の表面上に付着させることができ、それにより提供されている組成物を含むコーティング混合物と、組成物を用いて基材表面上にコーティングを付着させるプロセスと、を提供する。提供されているプロセスは、提供されている組成物と、提供されている組成物中に可溶性又は分散性である少なくとも1つのコーティング材料と、を含むコーティング混合物のコーティングを基材の少なくとも一部分に適用することを含む。コーティング混合物は、1種以上の添加剤(例えば、界面活性剤、着色剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤及びこれらに類するもの)を更に含むことができる。典型的には、プロセスは、例えば、蒸発させることにより(例えば熱又は真空の適用によって促進せることができる)、付着させたコーティングから、提供されている組成物を除去する工程を更に含む。このプロセスにより付着させることができるコーティング材料としては、顔料、シリコーン潤滑添加剤、安定剤、接着剤、抗酸化剤、染料、ポリマー、医薬品、化粧品、剥離剤、無機酸化物及びこれらに類するもの並びにこれらの混合物が挙げられる。他の材料としては、ペルフルオロポリエーテル、炭化水素及びシリコーン潤滑添加剤;テトラフルオロエチレンの非晶質コポリマー;ポリテトラフルオロエチレン;及びこれらの組み合わせが挙げられる。プロセスで用いるのに好適な材料の代表的な例としては、二酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、ペルフルオロポリエーテル、ポリシロキサン、ステアリン酸、アクリル接着剤、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンの非晶質コポリマー及びこれらの組み合わせが挙げられる。上記基材のいずれかを(汚染除去用途のために)コーティングすることができる。一実施形態で特に有用なのは、ペルフルオロポリエーテル潤滑剤で電気コネクタを、又はシリコーン潤滑添加剤で医療装置をコーティングすることである。
【0028】
コーティング混合物を形成するために、混合物の成分(すなわち、提供されている組成物、コーティング材料及び使用される任意の添加剤)を、例えば機械的撹拌、超音波撹拌、手動撹拌及びこれらに類するものにより、コーティング材料を溶解する、分散する又は乳化するために用いられる、任意の従来の混合技術により組み合わせることができる。提供されている組成物及びコーティング材料は、コーティングの所望の厚さに応じて、任意の比で組み合わせることができる。一部の実施形態では、コーティング材料は、約0.1〜約10重量パーセントのコーティング組成物を含む。本開示の代表的な付着プロセスは、いずれかの従来の技術により基材にコーティング混合物を適用することにより実施できる。例えば、混合物を基材上にブラシ掛けする若しくは噴霧する(例えば、エアゾールとして)ことができ、又は基材をスピンコーティングすることができる。一部の実施形態では、基材は、組成物に浸漬することによりコーティングすることができる。浸漬は、任意の好適な温度で実施でき、任意の都合のよい時間維持することができる。基材が、カテーテルのような管であり、組成物を確実にカテーテルの管腔壁にコーティングするのが望ましい場合、減圧の適用により管腔に組成物を引くことが有利である場合がある。
【0029】
一部の実施形態では、コーティングを基材に適用した後、提供されている組成物を、沈着したコーティングから、蒸発により除去することができる。一部の実施形態では、蒸発速度は、減圧又は穏やかな加熱の適用により加速することができる。コーティングは、任意の所望の厚さであることができる。一般的に、厚さは、例えば、コーティング材料の粘度、コーティングが適用される温度及び引き上げ速度(浸漬を用いる場合)のような要因により決定される。
【0030】
一部の実施形態では、提供されている組成物は、伝熱流体が熱エネルギー(例えば、熱)を直接又は間接的方法で伝達することができる伝熱プロセスで、伝熱流体として用いられ得る。直接伝熱(時に「直接接触伝熱」と呼ばれる)とは、伝熱流体が、ヒートシンク若しくは熱源に流体を直接接触させることにより、ヒートシンク若しくは熱源に及び/又はヒートシンク若しくは熱源から、流体に熱を直接伝導する伝熱プロセスを指す。直接伝熱の例としては、電子部品の浸漬冷却又は内燃機関の冷却が挙げられる。
【0031】
間接伝熱とは、伝熱流体が、ヒートシンク若しくは熱源に流体を直接接触させることなく、ヒートシンク若しくは熱源に及び/又はヒートシンク若しくは熱源から、熱を伝導する伝熱プロセスを指す。間接伝熱の例としては、ビル、車及び据付機械装置で用いるような、冷蔵、空調及び/又は加熱(例えばヒートポンプを用いて)プロセスが挙げられる。一部の実施形態では、二次ループ冷媒として又は一次ループ冷媒として、提供されている組成物を使用することを含む、伝熱プロセスを提供する。これらの実施形態では、二次ループ冷媒(すなわち、広い温度範囲の液体流体)は、熱源と一次ループ冷媒との間で熱を伝達する手段を提供する(すなわち、例えば気体に膨張することにより熱を受容し、典型的には、コンプレッサを用いることにより、液体に液化されることにより熱を排除する、低温度沸騰流体)。提供されている組成物が有用である場合がある装置の例としては、遠心式冷凍機、家庭用冷蔵庫/冷凍庫、自動車用空調機器、冷蔵車、ヒートポンプ、スーパーマーケットの食品冷却機及び陳列ケース並びに冷凍倉庫が挙げられる。
【0032】
間接伝熱プロセスでは、伝熱のための潤滑添加剤は、可動部(例えば、ポンプ及び弁)が関与して、確実に可動部を長期間作動させ続ける伝熱流体に組み込むことができる。一般的に、これらの潤滑添加剤は、良好な熱及び加水分解安定性を有するべきであり、かつ伝熱流体において少なくとも部分的溶解度を呈するべきである。好適な潤滑添加剤の例としては、鉱油、脂肪族エステル、クロロトリフルオロエチレン含有ポリマーのような高度にハロゲン化された油及びアルキレンオキシドポリマーのような合成潤滑添加剤が挙げられる。提供されている組成物はまた、有機ランキンサイクルにおいて作動流体として機能し、例えば工業プロセスからの廃熱、地熱、又は太陽熱のような源からエネルギーを回収できる。
【0033】
一部の実施形態では、提供されている組成物を用いて、提供されている組成物及び少なくとも1種の完全に揮発性である潤滑添加剤を含む、作動流体又は潤滑剤を配合することができる。潤滑添加剤は、本明細書では、加工品及び用具の間の摩擦係数を改良する添加剤として定義される。一部の実施形態では、提供されている組成物は、潤滑活性剤と共に工具操作のための作動流体を形成する。加工操作における代表的な基材としては、金属、サーメット及び複合材料の加工品が挙げられる。サーメットは、いずれか一方のみの単独では見られない物理的特性を有する、セラミックと金属成分の混合物からなる半合成製品である。複合材料は、本明細書では、ポリマーマトリックス中の高温繊維、例えばエポキシ樹脂中のガラス又は炭素繊維の組み合わせ(例えば、積層体、混合物、配合物など)として記載される。代表的な基材の例としては、金属炭化物、酸化物及びケイ化物が挙げられる。代表的な金属としては、耐火金属(例えば、タンタル、ニオビウム、モリブデン、バナジウム、タングステン、ハフニウム、レニウム及びチタン);貴金属(例えば、銀、金及びプラチナ);高温金属(例えば、ニッケル、チタン合金及びニッケルクロム);例えば、マグネシウム、銅、アルミニウム、鋼(例えば、ステンレス鋼)を含む他の金属;合金(例えば、黄銅及び青銅)並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。典型的には、作動流体は、機械加工表面を潤滑させ、滑らかで、実質的に残留物を含まない機械加工された加工品の表面をもたらす。一部の実施形態では、これらの操作で用いられる代表的な作動流体はまた、例えば熱及び/又は微粒子物質を除去することにより、機械加工環境(例えば、加工品と機械加工用具との間の表面界面)を冷却する。
【0034】
一部の実施形態では、作動流体は、切削及び成形プロセスを潤滑させ、摩擦、用具若しくは加工品の発熱を低減し、及び/又は加工品から用具への物質移動を妨げるよう配合される。一部の実施形態では、作動流体は完全に加工工具を湿潤させる。一部の実施形態では、作動液に含まれる提供されている組成物は、加工工具及び加工品から蒸発する。一部の実施形態では、潤滑添加剤は、摩擦並びに用具及び加工品の表面上での発熱を低減し、及び/又は加工品から工具への物質移動を妨げる、薄膜として存在する。一般的に、潤滑添加剤は、あまりにも早く蒸発することなく、加工プロセスを潤滑させるのに十分高い沸点を有し、加工プロセスから完全に蒸発するのに十分低い沸点を有し、その結果、残留物がほとんど又は全く残らない(すなわち、揮発性である)ように、選択される。加工操作の潤滑添加剤の例としては、C〜C14脂肪酸のエステル、アルキレングリコールエーテル、炭化水素留出物及び乳酸が挙げられる。
【0035】
記載したそれぞれの用途では、提供されている組成物をそのままで用いてよく、あるいは、配合物が共沸混合物を形成することもできるのであれば、提供されている組成物の配合物を用いてもよい。同様に、添加が共沸混合物の挙動を乱さない限り、微量の共溶媒を、提供されている組成物に添加してもよい。有用な共溶媒としては、例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、炭化水素、ハイドロクロロカーボン(HCC)又は水を挙げることができる。好適な共溶媒の代表的な例としては、二酸化炭素、1,1−ジフルオロエタン、1−ハイドロペンタデカフルオロヘプタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、2−クロロプロパン、水、飽和ペルフルオロ化合物(例えば、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン及びペルフルオロ(N−メチルモルホリン)及びこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、提供されている組成物は、フッ化水素酸(HF)を更に含んでもよい。
【0036】
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。
【0037】
(実施例)
本開示の組成物の調製、同定及び試験について、以下の実施例に更に記載する。これらの実施例において列挙されるその特定の材料及び量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を過度に制限しないと解釈されるべきである。これらの実施例では、全ての百分率、割合及び比は、特に指示しない限り重量による。
【0038】
1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)−ペンタン(NOVEC 7300 Engineered Fluid)は3M Company(St.Paul,MN)から入手することができ、トランス−1,2−ジクロロエチレン及び様々なアルコールはAldrich Chemical Company,Inc.(Milwaukee,WI)から入手した。
【0039】
(実施例1〜5)
1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)−ペンタンと、トランス−1,2−ジクロロエチレンと、更にメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール又はt−ブタノールのいずれかと、の混合物を周囲気圧(720〜740トル(95.9〜98.7kPa))下で蒸留した。以下の手順を用いて、留出物留分を分析して、これらの混合物が三元共沸混合物を形成したかどうかを同定し、並びに、形成したのであれば、共沸混合物の組成(重量%による)及び沸点(b.p.℃)を同定した。混合物を調製し、同心円管蒸留塔(モデル933、Ace Glass(Vinland,NJ)から入手可能)内で周囲気圧(720〜740トル(95.9〜98.7kPa))にて蒸留した。それぞれの場合、蒸留により、少なくとも60分間全還流で平衡化させることが可能になった。それぞれの蒸留では、10〜1の液体還流比でカラムを操作しながら、5つの連続留出物サンプル(それぞれ、全液体電荷のおよそ10体積パーセント)を採取した。次に、NUKOL毛管カラム(Supelco(Bellefonte,PA)から入手可能)又はQUADREX 007シリーズのメチルシリコーン毛管カラム(Quadrex Corporation(New Haven,CT)から入手可能)と共にAGILENT 7890ガスクロマトグラフ及び熱伝導率検出器を用いて、留出物サンプルの組成を分析した。各留出物の沸点を、熱電対を用いて測定した。周囲気圧を、較正された圧力変換器(Omega Engineering,Inc.(Stamford,CT)から入手可能)を用いて、測定した。3つの個々の構成成分の沸点よりも低い留出物蒸気温度及び比較的一定の流出物組成により、共沸混合物の存在を確認した。各蒸留について、最終的な4つの流出物留分の平均組成及び温度を計算した。この平均組成を次に調製し、この方法に従って蒸留した。この手順を各混合物について3回繰り返した。この手順を用いて、以下の表1に列挙した共沸混合物を同定した。各共沸混合物について報告された組成及び沸点は、3回の連続的な蒸留の平均である。報告された圧力は、これらの蒸留中に測定された圧力の範囲を包含する。
【0040】
【表1】

【0041】
(実施例6)
2.5センチメートル×6センチメートルの寸法を有する回路基板にNC−SMQ230鉛不含はんだペースト(Indium Corporation(米国,Utica,NY)から入手可能)をコーティングした。はんだペーストを強制空気熱対流炉内で240℃にて5分にわたってリフローさせた。次いで、基板を室温まで冷却した。はんだ付けされた試験基板を次に2分にわたって、実施例2の共沸混合物(20.2重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)−ペンタン、75.3重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレン及び4.5重量パーセントのエタノール)を含有する沸騰混合物中に浸漬した。混合物から取り出したところ、基板の目視検査は、はんだフラックス残渣の全てが除去されたことを示した。
【0042】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変が、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する「特許請求の範囲」によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。本開示に引用された全ての参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンとトランス−1,2−ジクロロエチレンと第三構成成分との配合物を含む組成物であって、前記第三構成成分が、
(i)メタノール、
この場合、前記組成物は、分留されると、約18.6重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、73.0重量%のトランス−1,2−ジクロロエチレンと、8.4重量パーセントのメタノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、前記蒸留留分は周囲気圧下で約40℃にて沸騰する;
(ii)エタノール、
この場合、前記組成物は、分留されると、約20.2重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、75.3重量%のトランス−1,2−ジクロロエチレンと、4.5重量パーセントのエタノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、前記蒸留留分は周囲気圧下で約45℃にて沸騰する;
(iii)イソプロパノール、
この場合、前記組成物は、分留されると、約20.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、77.3重量%のトランス−1,2−ジクロロエチレンと、2.2重量パーセントのイソプロパノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、前記蒸留留分は周囲気圧下で約45℃にて沸騰する;
(iv)t−ブタノール、
この場合、前記組成物は、分留されると、約21.0重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、77.8重量%のトランス−1,2−ジクロロエチレンと、1.2重量パーセントのt−ブタノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、前記蒸留留分は周囲気圧下で約46℃にて沸騰する;
(v)1−プロパノール、
この場合、前記組成物は、分留されると、24.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、74.9重量%のトランス−1,2−ジクロロエチレンと、0.6重量パーセントの1−プロパノールと、から本質的になる共沸混合物である蒸留留分を形成し、前記蒸留留分は周囲気圧下で約46℃にて沸騰する;から選択される、組成物。
【請求項2】
前記組成物中の1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン、トランス−1,2−ジクロロエチレン及び第三構成成分の濃度が、対応する共沸混合物におけるそのような構成成分の濃度と約10パーセントを超えて異ならない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物中の1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン、トランス−1,2−ジクロロエチレン及び第三構成成分の濃度は、対応する共沸混合物におけるそのような構成成分の濃度と約5パーセントを超えて異ならない、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が共沸混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−メトキシ−プロパンとトランス−1,2−ジクロロエチレンと第三構成成分との配合物を含み、前記第三構成成分が、
(i)メタノール、
この場合、前記配合物は、約16.7〜約20.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約65.7〜約80.3重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約7.6〜約9.2重量パーセントのメタノールと、から本質的になる;
(ii)エタノール、
この場合、前記配合物は、約18.2〜約22.2重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約67.8〜約82.8重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約4.1〜約5.0重量パーセントのエタノールと、から本質的になる;
(iii)イソプロパノール、
この場合、前記配合物は、約18.5〜約22.6重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約69.6〜約85.0重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約2.0〜約2.4重量パーセントのイソプロパノールと、から本質的になる;
(iv)t−ブタノール、
この場合、前記配合物は、約18.9〜約23.1重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約70.0〜約85.6重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約1.1〜約1.3重量パーセントのt−ブタノールと、から本質的になる;
(v)1−プロパノール、
この場合、前記配合物は、約22.1〜約27.0重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約67.4〜約82.4重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約0.5〜約0.7重量パーセントの1−プロパノールと、から本質的になる;から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−メトキシ−プロパンとトランス−1,2−ジクロロエチレンと第三構成成分との配合物を含み、前記第三構成成分が、
(i)メタノール、
この場合、前記配合物は、約17.7〜約19.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約69.4〜約76.7重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約8.0〜約8.8重量パーセントのメタノールと、から本質的になる;
(ii)エタノール、
この場合、前記配合物は、約19.2〜約21.2重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約71.5〜約79.1重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約4.3〜約4.7重量パーセントのエタノールと、から本質的になる;
(iii)イソプロパノール、
この場合、前記配合物は、約19.5〜約21.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約73.4〜約81.2重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約2.1〜約2.3重量パーセントのイソプロパノールと、から本質的になる;
(iv)t−ブタノール、
この場合、前記配合物は、約20.0〜約22.1重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約73.9〜約81.7重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約1.1〜約1.3重量パーセントのt−ブタノールと、から本質的になる;
(v)1−プロパノール、
この場合、前記配合物は、約23.3〜約25.7重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと、約71.2〜約78.6重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと、約0.57〜約0.63重量パーセントの1−プロパノールと、から本質的になる;から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンとトランス−1,2−ジクロロエチレンと第三構成成分との配合物を含む共沸混合物を含む組成物であって、前記配合物が、
(i)約18.6重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと約73.0重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと約8.4重量パーセントのメタノール;
(ii)約20.2重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと約75.3重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと約4.5重量パーセントのエタノール;
(iii)約20.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと約77.3重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと約2.2重量パーセントのイソプロパノール;
(iv)約21.0重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと約77.8重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと約1.2重量パーセントのt−ブタノール;及び
(v)約24.5重量パーセントの1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンと約74.9重量パーセントのトランス−1,2−ジクロロエチレンと約0.6重量パーセントの1−プロパノール;から選択される、組成物。
【請求項8】
コーティング材料と、
請求項1に記載の組成物と、を含む、コーティング混合物。
【請求項9】
請求項8に記載のコーティング混合物を含む、コーティングされた物品。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物を含む、伝熱流体。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物を含む、洗浄流体。
【請求項12】
電子機器を洗浄するためのプロセスであって、
電子機器を供給することと、
前記機器を請求項1に記載の組成物と接触させることと、を含む、プロセス。
【請求項13】
基材上にコーティングを付着させるためのプロセスであって、請求項8に記載のコーティング混合物を前記基材の少なくとも一部分に適用することを含む、プロセス。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物と、潤滑添加剤と、を含む、作動流体。
【請求項15】
前記潤滑添加剤が揮発性である、請求項14に記載の作動流体。
【請求項16】
フッ化水素酸を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
金属、サーメット、又は複合材料を潤滑させるプロセスであって、前記プロセスが請求項14に記載の作動流体を用いて潤滑化される、プロセス。
【請求項18】
基材から汚染物質を除去するためのプロセスであって、
前記基材を請求項1に記載の1つ以上の組成物と接触させることと、
前記組成物中に又は前記組成物により溶解、分散又は移動させることと、
前記基材の表面から前記汚染物質を含有する前記組成物を除去することと、を含む、プロセス。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物の少なくとも1つが、伝熱流体として用いられる、伝熱のためのプロセス。

【図1】
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【公表番号】特表2013−504655(P2013−504655A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528820(P2012−528820)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/047226
【国際公開番号】WO2011/031581
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】