説明

1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペンおよびフッ化水素を含む共沸組成物およびその使用

【課題】冷媒、溶剤、清浄剤、発泡膨張剤、エアロゾル噴射剤、伝熱媒体、誘電体、消火剤、滅菌剤およびパワーサイクル作動流体として機能するために必要な特性をも備える新規の化合物を特定する必要がある。
【解決手段】本願明細書においては、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンおよびフッ化水素を含む共沸組成物が開示されている。この共沸組成物は、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンを製造する方法および精製する方法において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書における開示は、Z−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンおよびフッ化水素を含む共沸組成物に関する。共沸組成物は、Z−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンを製造する方法および精製する方法において有用である。
【0002】
本出願は、特願2008−539002号の分割出願である。
【背景技術】
【0003】
クロロフルオロカーボン(CFC)などの塩素含有化合物は、地球のオゾン層に有害であるとみなされている。CFCの代わりに用いられるヒドロフルオロカーボン(HFC)の多くが、地球温暖化に寄与していることが見出された。従って、冷媒、溶剤、清浄剤、発泡膨張剤、エアロゾル噴射剤、伝熱媒体、誘電体、消火剤、滅菌剤およびパワーサイクル作動流体として機能するために必要な特性をも備える新規の化合物を特定する必要がある。1つまたは複数の水素を分子中に含有するフッ素化オレフィンが、例えば冷凍といった用途のいくつかにおける使用について検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,396,000号明細書
【特許文献2】米国特許第5,679,875号明細書
【特許文献3】米国特許第6,031,141号明細書
【特許文献4】米国特許第6,369,284号明細書
【特許文献5】米国特許第6,388,147号明細書
【特許文献6】米国特許第4,978,649号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】W.ショット社(W.Schotte Ind.)、「Eng.Chem.Process Des.Dev.」(1980年)19、432〜439頁
【非特許文献2】「プロセス設計における相平衡(Phase Equilibrium in Process Design)」、ウィリーインターサイエンスパブリッシャー(Wiley−Interscience Publisher)、1970年、ハロルドR.ナル(Harold R.Null)著、124〜126頁
【非特許文献3】「気体および液体の特性(The Properties of Gases and Liquids)」、第4版、マグローヒル(McGraw Hill)発行、レイド(Reid)、プラウスニッツ(Prausnitz)およびポーリング(Poling)著、241〜387頁
【非特許文献4】「化学工学における多相平衡(Phase Equilibria in Chemical Engineering)」、バターワースパブリッシャーズ(Butterworth Publishers)発行、1985年、スタンリーM.ワラス(Stanley M.Walas)著、165〜244頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様は、Z−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(Z−HFC−1225ye)およびフッ化水素(HF)を含む共沸物または近共沸組成物に関する。
【0007】
さらなる態様は、a)Z−HFC−1225yeと、HFC−236eaと、フッ化水素との混合物を形成する工程、およびb)前記混合物を蒸留工程に付し、HFC−236eaを本質的に含まない、フッ化水素およびZ−HFC−1225yeの共沸物または近共沸組成物を含む塔留出組成物を形成する工程を含むZ−HFC−1225yeを1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)から分離する方法に関する。
【0008】
さらなる態様は、Z−HFC−1225yeを、Z−HFC−1225yeおよびHFの共沸物または近共沸組成物を含む混合物分離する方法に関し、前記方法は、a)前記混合物を第1の蒸留工程に付する工程であって、(i)フッ化水素または(ii)Z−HFC−1225yeのいずれか一方が富化された組成物が第1の留出組成物として取り出され、第1の塔底組成物が前記構成成分(i)または(ii)の他方を富化する工程、およびb)前記第1の留出組成物を第1の蒸留工程とは異なる圧力で実施される第2の蒸留工程に付する工程であって、(a)において第1の塔底組成物として富化された成分が第2の留出組成物中に取り出され、第2の塔底組成物が第1の留出組成物において富化されたものと同一の成分を富化する工程を含む。
【0009】
さらなる態様は、Z−HFC−1225yeを、Z−HFC−1225yeと、HFC−236eaと、フッ化水素との混合物から精製する方法に関し、前記方法は、a)前記混合物を第1の蒸留工程に付して、Z−HFC−1225yeおよびフッ化水素を含有する共沸物または近共沸組成物を含む第1の留出物と、HFC−236eaを含む第1の塔底物とを形成する工程、b)前記第1の留出物を第2の蒸留工程に付する工程であって、(i)フッ化水素または(ii)Z−HFC−1225yeのいずれか一方が富化された組成物が第2の留出組成物として取り出され、第2の塔底組成物が前記構成成分(i)または(ii)の他方を富化する工程、およびc)前記第2の留出組成物を第2の蒸留工程とは異なる圧力で実施される第3の蒸留工程に付する工程であって、(b)において第2の塔底組成物中に富化された成分が第3の留出組成物中に取り出され、第3の塔底組成物が第2の留出組成物において富化されたものと同一の成分を富化する工程を含む。
【0010】
さらなる態様は、a)HFC−236eaを脱フッ化水素のための反応領域に供給して、Z−HFC−1225ye、未反応HFC−236eaおよびフッ化水素を含む反応生成物組成物を形成する工程、b)前記反応生成物組成物を第1の蒸留工程に付して、Z−HFC−1225yeおよびフッ化水素を含有する共沸物または近共沸組成物を含む第1の留出組成物と、HFC−236eaを含む第1の塔底組成物とを形成する工程、c)前記第1の留出組成物を第2の蒸留工程に付する工程であって、(i)フッ化水素または(ii)Z−HFC−1225yeのいずれか一方が富化された組成物が第2の留出組成物として取り出され、第2の塔底組成物が前記構成成分(i)または(ii)の他方を富化する工程、およびd)前記第2の留出組成物を第2の蒸留工程とは異なる圧力で実施される第3の蒸留工程に付する工程であって、(c)において第2の塔底組成物中に富化された成分が第3の留出組成物中に取り出され、第3の塔底組成物が第2の留出組成物において富化されたものと同一の成分を富化する工程を含むZ−HFC−1225yeを製造する方法に関する。
【0011】
さらなる態様は、HFC−236eaを、HFC−236eaおよびHFの共沸物または近共沸組成物を含む混合物から分離する方法に関し、前記方法は、a)前記混合物を第1の蒸留工程に付する工程であって、(i)フッ化水素または(ii)HFC−236eaのいずれか一方が富化された組成物が第1の留出組成物として取り出され、第1の塔底組成物が前記構成成分(i)または(ii)の他方を富化する工程、およびb)前記第1の留出組成物を第1の蒸留工程とは異なる圧力で実施される第2の蒸留工程に付する工程であって、(a)において第1の塔底組成物として富化された成分が第2の留出組成物中に取り出され、第2の塔底組成物が第1の留出組成物において富化されたものと同一の成分を富化する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】2塔共沸蒸留プロセスを実施するための一実施形態を示す概略的なフローチャートである。
【図2】Z−HFC−1225yeを製造する方法を実施するための一実施形態を示す概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一態様は、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFC−1225ye、CF3CF=CHF)を含有する組成物に関する。HFC−1225yeは、2つの立体配置異性体、EまたはZの一方として存在し得る。本願明細書において用いられるZ−HFC−1225yeは異性体E−HFC−1225ye(CAS登録番号5595−10−8)およびZ−HFC−1225ye(CAS登録番号5528−43−8)の混合物を指し、ここで、主たる異性体はZ−HFC−1225yeである。Z−HFC−1225yeは、そのすべてが本願明細書において参照により援用される、米国特許公報(特許文献1)、米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、および米国特許公報(特許文献4)に記載のものなど、当該技術分野において公知の方法により調製され得る。
【0014】
本願明細書において用いられるところ、主たる異性体とは、組成物中に、50モルパーセントを超える、好ましくは60モルパーセントを超える、より好ましくは70モルパーセントを超える、さらにより好ましくは80モルパーセントを超える、および最も好ましくは90モルパーセントを超える濃度で存在する異性体を意味することが意図される。
【0015】
無水フッ化水素(HF)はCAS登録番号7664−39−3を有すると共に、市販されている。
【0016】
本願明細書に開示の方法においては、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea、CAS登録番号431−63−0)もまた有用である。HFC−236eaは、当該技術分野において公知の方法により調製され得る。
【0017】
HFC−236eaのZ−HFC−1225yeおよびHFへの脱フッ化水素、ならびにZ−HFC−1225yeのこのようなプロセスからの単離についてのプロセスの考察において、ヒドロフルオロオレフィンZ−HFC−1225yeがHFと共に共沸物を形成することが意外にも発見された。
【0018】
一態様は、Z−HFC−1225yeおよび共沸組成物を形成するために有効量のフッ化水素(HF)を含む組成物を提供する。有効量とは、Z−HFC−1225yeと組み合わされたときに、共沸物または近共沸物混合物の形成をもたらす量を意味する。当該技術分野において認識されているとおり、共沸物または近共沸組成物は、所与の圧力下での液体形態では、個別の構成成分の沸点より高温または低温であり得る実質上一点の温度で沸騰することとなり、沸騰している液体組成物と本質的に同等の蒸気状の組成物をもたらすこととなる、2種以上の異なる構成成分の混和物である。
【0019】
本考察の目的について、近共沸組成物(普通、「共沸物様組成物」としても称される)とは、共沸物と同様に挙動する組成物を意味する(すなわち、一定の沸騰特徴または沸騰または蒸発で分別されない傾向を有する)。それ故、沸騰または蒸発の最中に形成される蒸気の組成は、元の液体の組成と同一または実質上同一である。それ故、沸騰または蒸発の最中には、液体の組成は、仮に変化するとしても、最低限しか、または無視可能な程度でしか変化しない。これが、沸騰または蒸発の最中に液体の組成が相当な程度に変化する非共沸組成物と対比されるべきである。
【0020】
さらに、近共沸組成物は、ほとんど圧力差のない露点圧および沸点圧を示す。換言すると、所与の温度での露点圧および沸点圧における差は小さい値であろう。露点圧および沸点圧の差が3パーセント以下(沸点圧に基づいて)である組成物が近共沸物としてみなされ得ると明記し得る。
【0021】
従って、共沸物または近共沸組成物の基本的な特徴は、所与の圧力では液体組成物の沸点が固定されており、沸騰している組成物上の蒸気の組成が本質的に沸騰している液体組成物のものである(すなわち、液体組成物の構成成分の分別は生じない)ことである。共沸組成物の各成分の沸点および重量パーセントの両方は、共沸物または近共沸物液体組成物が異なる圧力で沸騰されたときに変化し得ることもまた当該技術分野において認識されている。それ故、共沸物または近共沸組成物は、構成成分中に存在する固有の関係の観点、または構成成分の組成範囲の観点または、特定の圧力で固定された沸点により特徴付けられる組成物の各成分の正確な重量パーセントの観点で定義され得る。種々の共沸組成(特定の圧力でのそれらの沸点を含む)が計算され得ることもまた当該技術分野において認識されている(非特許文献1を参照のこと)。同一の構成成分を含む共沸組成物実験的認定が、このような計算の精度を確認するためおよび/または同一のまたは他の温度および圧力で計算を変更するために用いられ得る。
【0022】
フッ化水素とZ−HFC−1225yeとの共沸物の組み合わせを含む組成物が形成され得る。これらは、約31.0モルパーセント〜約35.5モルパーセントのHFおよび約69.0モルパーセント〜約64.5モルパーセントのZ−HFC−1225ye(これは、約−25℃〜約100℃の温度および約12.8psi(88.3kPa)〜約551psi(3799kPa)の圧力で共沸物を沸騰させる)を含む組成物を含む。
【0023】
さらに、HFおよびZ−HFC−1225yeを含有する近共沸組成物もまた形成され得る。このような近共沸組成物は、約61.0モルパーセント〜約78.4モルパーセントのZ−HFC−1225yeおよび約39.0モルパーセント〜約21.6モルパーセントのHFを、約−25℃〜約100℃の範囲の温度および約12psi(88kPa)〜約550psi(3792kPa)の圧力で含む。
【0024】
共沸物または近共沸組成物が所与の温度および圧力での構成成分の特定の比で存在し得る一方で、共沸組成物はまた、他の構成成分を含有する組成で存在し得ることが理解されるべきである。
【0025】
本質的に、フッ化水素とZ−HFC−1225yeとの共沸物の組み合わせからなる組成物が形成され得る。これらは、約31.0モルパーセント〜約35.5モルパーセントのHFおよび約69.0モルパーセント〜約64.5モルパーセントのZ−HFC−1225ye(これは約−25℃〜約100℃の間の温度および約12.8psi(88.3kPa)〜約551psi(3799kPa)の圧力で沸騰する共沸物を形成する)から本質的になる組成物を含む。
【0026】
約−25℃〜約100℃の範囲の温度および約12psi(88kPa)〜約550psi(3792kPa)の圧力で、約61.0モルパーセント〜約78.4モルパーセントのZ−HFC−1225yeおよび約39.0モルパーセント〜約21.6モルパーセントのHFから本質的になる近共沸組成物がまた形成され得る。
【0027】
大気圧では、フッ化水素酸およびZ−HFC−1225yeの沸点は、それぞれ、約19.5℃および−20℃である。72psi(479kPa)および19.5℃でのHFおよびZ−HFC−1225yeの相対的な揮発度は、34.4モルパーセントのHFおよび65.6モルパーセントのZ−HFC−1225yeに近接するに伴って、ほとんど1.0であると見出された。288psi(1987kPa)および70℃での相対的揮発度は、35.2モルパーセントのHFおよび64.8モルパーセントのZ−HFC−1225yeに近接するに伴って、ほとんど1.0であると見出された。これらのデータは、従来の蒸留手法の使用は、化合物の相対的揮発度の低い値のために、実質上純粋な化合物の分離をもたらさないであろうことを示している。
【0028】
HFのZ−HFC−1225yeとの相対的揮発度を判定するために、いわゆるPTx法を用いた。この手法においては、既知の体積のセル内の合計絶対圧が、一定の温度で、種々の既知の二成分系組成物について計測される。PTx法の使用は、その全開示が本願明細書において参照により援用されている非特許文献2により詳細に記載されている。蒸気および液体のサンプル、または、2つの液相が存在する場合には、これらの条件下での蒸気および2つの液相の各々のサンプルを得、分析して、これらのそれぞれの組成を検証した。
【0029】
これらの計測値を、非ランダム2液(Non−Random,Two−Liquid)(NRTL)式などの活量係数式モデルによってセル中の平衡蒸気および液体組成に換算して、液相非理想性を表すことが可能である。NRTL式などの活量係数式の使用は、非特許文献3、および非特許文献4(上記に示した文献の各々の全開示は本願明細書において参照により援用されている)により詳細に記載されている。
【0030】
理論または説明に束縛されることは望まないが、NRTL式は、HFおよびZ−HFC−1225yeの混合物が理想の態様で反応するかどうかを十分に予測することが可能であると共に、このような混合物における構成成分の相対的揮発性を十分に予測することが可能であると考えられている。それ故、低Z−HFC−1225ye濃度で、HFがZ−HFC−1225yeに比して良好な相対的揮発度を有する一方で、相対的揮発度は、19.5℃で65.6モルパーセントのZ−HFC−1225yeに近接するに伴って、ほとんど1.0となる。これにより、このような混合物からの従来の蒸留によって、Z−HFC−1225yeをHFから分離することが不可能である。相対的揮発度が1.0に近接する場合に、近共沸物または共沸組成物を形成するとして系が定義される。
【0031】
Z−HFC−1225yeおよびHFの共沸物は多様な温度および圧力で形成されることが見出された。共沸組成物は、88kPa(−25℃の温度で)〜3799kPa(100℃の温度で)の間で形成され得、前記組成物は、約31.0モルパーセントのHF(および69.0モルパーセントのZ−HFC−1225ye)〜約35.5モルパーセントのHF(および64.5モルパーセントのZ−HFC−1225ye)の範囲で、Z−HFC−1225yeおよびHFから本質的になる。HFおよびZ−HFC−1225yeの共沸物は、19.5℃および72.1psi(497kPa)で、約34.4モルパーセントのHFおよび約65.6モルパーセントのZ−HFC−1225yeから本質的になることが見出されている。HFおよびZ−HFC−1225yeの共沸物はまた、70℃および288psi(1987kPa)で、約35.2モルパーセントのHFおよび約64.8モルパーセントのZ−HFC−1225yeから本質的になることが見出されている。上記の知見に基づいて、他の温度および圧力での共沸組成を算出し得る。約31.0モルパーセントのHFおよび約69.0モルパーセントのZ−HFC−1225yeの共沸組成物は−25℃および12.8psi(88.3kPa)で形成されることが可能であり、および約35.5モルパーセントのHFおよび約64.5モルパーセントのZ−HFC−1225yeの共沸組成物は100℃および551psi(3797kPa)で形成されることが可能であると算出された。従って、一態様は、約31.0モルパーセント〜約35.5モルパーセントのHFおよび約69.0モルパーセント〜約64.5モルパーセントのZ−HFC−1225yeから本質的になる共沸組成物を提供し、前記組成物は、約−25℃(12.8psi(88.3kPa))〜約100℃(551psi(3797kPa))の沸点を有する。
【0032】
共沸物または近共沸組成物は、約12psi(88kPa)〜約550psi(3792kPa)の間で、約−25℃〜約100℃の範囲の温度で形成され得る、前記組成物は、約61.0モルパーセント〜約78.4モルパーセントのZ−HFC−1225yeおよび約39.0モルパーセント〜約21.6モルパーセントのHFから本質的になることがまた見出された。
【0033】
HF/Z−HFC−1225ye共沸物および近共沸組成物は、Z−HFC−1225yeを製造する方法において、およびZ−HFC−1225yeを精製する方法において有用である。実際には、HF/Z−HFC−1225ye共沸物および近共沸組成物は、Z−HFC−1225yeおよびHFを含有する組成物を生成するいずれの方法においても有用であり得る。
【0034】
共沸蒸留が、Z−HFC−1225yeを、Z−HFC−1225yeの製造のための出発材料であるHFC−236eaから分離するために、気相脱フッ化水素により実施され得る。次いで、2塔共沸蒸留が、共生成されたHFを所望のZ−HFC−1225ye生成物から分離するために実施され得る。および他の2塔共沸蒸留が、HFをHFC−236eaから分離するために実施され得る。HFは、生成物混合物のハロゲン化炭化水素構成成分から、例えば、標準的な水溶液洗浄技術を用いて除去され得る。しかしながら、相当量の洗浄廃液の産出が水性廃物廃棄問題を引き起こす可能性がある。それ故、HFをこのような生成物混合物から利用する方法が未だ必要とされている。
【0035】
本願明細書に開示の方法に従って処理される元の混合物は、Z−HFC−1225yeをHF含有組成物に添加することを含む、多様なソースから入手可能であるが、本方法を利用することの利点が、Z−HFC−1225yeの調製からの溶出物混合物の処理にある。
【0036】
Z−HFC−1225yeは、そのすべてが本願明細書において参照により援用される、米国特許公報(特許文献1)、米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、および米国特許公報(特許文献4)に記載のものなど、当該技術分野において公知の方法によるHFC−236eaの気相脱フッ化水素により調製され得る。
【0037】
他の態様は、a)Z−HFC−1225yeと、HFC−236eaと、フッ化水素との混合物を形成する工程、およびb)前記混合物を蒸留工程に付し、HFC−236eaを本質的に含まない、HFおよびZ−HFC−1225yeの共沸物または近共沸組成物を含む塔留出組成物を形成する工程を含むZ−HFC−1225yeをHFC−236eaから分離する方法を提供する。
【0038】
本願明細書に記載のとおり、「HFC−236eaを本質的に含まない」とは、組成物は、約100ppm未満(モル基準で)、好ましくは約10ppm未満および最も好ましくは約1ppm未満のHFC−236eaを含有することを意味する。
【0039】
この共沸蒸留は、Z−HFC−1225yeおよびHFにより形成される低沸点共沸組成物を活用する。共沸組成物は、純粋な成分のいずれかの沸点より低い、ならびにHFC−236eaの沸点より低い温度で沸騰する。
【0040】
既述したとおり、Z−HFC−1225yeと、HFC−236eaと、HFとの混合物は、いずれかの実用的な手段により形成され得る。一般的には、本方法は、Z−HFC−1225yeを、HFC−236eaの脱フッ化水素により生成される反応混合物から分離するために特に有用である。HFは、この脱フッ化水素反応において形成される副産物である。次いで、生成された反応混合物は、HFC−236eaを除去する本発明の方法により処理され得る。Z−HFC−1225yeは、Z−HFC−1225yeとHFとの共沸物または近共沸組成物として、蒸留塔から留出物として上部で抜き出される。HFC−236eaは、塔の底から塔底組成物として抜き出され、およびいくらかの量のHFをも含有し得る。蒸留塔の底からのHFC−236eaにおけるHFの量は、脱フッ化水素反応が実施される態様に応じて、約35モルパーセント〜1百万分率(ppm、モル基準)未満で異なり得る。実際には、脱フッ化水素反応が、HFC−236eaの50パーセント転換率をもたらすと共に、反応領域を出る反応混合物が直接的に蒸留工程に供給される態様で実施される場合、蒸留プロセスの底を出るHFC−236eaは、約34モルパーセントのHFを含有するであろう。
【0041】
一実施形態において、本共沸蒸留の操作は、過剰量のZ−HFC−1225yeの蒸留塔への提供を含む。適切な量のZ−HFC−1225yeが塔に供給される場合には、すべてのHFが、Z−HFC−1225yeおよびHFを含有する共沸組成物として上部で抜き出され得る。それ故、塔底物から除去されるHFC−236eaはHFを本質的に含まないこととなる。
【0042】
本願明細書に記載のとおり、「HFを本質的に含まない」とは、組成物が、約100ppm未満(モル基準で)、好ましくは約10ppm未満および最も好ましくは約1ppm未満のHFを含有することを意味する。
【0043】
蒸留工程において、HFおよびZ−HFC−1225yeを含む蒸留塔上部を出る留出物は、例えば標準的な還流凝縮器を用いて凝縮され得る。この凝縮物流の少なくとも一部分が、還流として塔の頂部に戻されてもよい。蒸留塔の頂部に還流として戻される凝縮された材料対留出物として取り出される材料の比が、普通、還流比として称される。蒸留工程を実施するために用いられ得る特定の条件は、とりわけ、蒸留塔の直径、供給点、および塔における分離段階の数などの多数のパラメータに応じる。蒸留塔の操作圧力は、約10psi圧力〜約200psi(1380kPa)、通常約20psi〜約50psiの範囲であり得る。蒸留塔は、典型的には、約25psi(172kPa)の圧力で、約22℃の塔底温度および約8℃の塔頂温度で操作される。通常、高い還流比が高い留出物流純度をもたらすが、一般的には、還流比は、0.2/1〜200/1の間の範囲である。塔の頂部に隣接して位置された凝縮器の温度は、通常、塔の頂部から排出される留出物を実質上完全に凝縮させるに十分であり、または部分的な凝縮により所望の還流比を達成するために必要とされる温度である。
【0044】
HFC−236eaを本質的に含まない、HFおよびZ−HFC−1225yeの共沸物または近共沸組成物を含む塔留出組成物は、HFを除去して、純粋なZ−HFC−1225yeを生成物として提供するために処理されなければならない。これは、例えば中和または本願明細書に記載の第2の蒸留プロセスにより達成され得る。
【0045】
さらなる態様は、Z−HFC−1225yeをZ−HFC−1225yeおよびHFの共沸物または近共沸組成物を含む混合物から分離する方法を提供し、前記方法は、a)前記混合物を第1の蒸留工程に付する工程であって、(i)フッ化水素または(ii)Z−HFC−1225yeのいずれか一方が富化された組成物が第1の留出組成物として取り出され、第1の塔底組成物が前記構成成分(i)または(ii)の他方を富化する工程、およびb)前記第1の留出組成物を第1の蒸留工程とは異なる圧力で実施される第2の蒸留工程に付する工程であって、(a)において第1の塔底組成物中に富化された成分が第2の留出組成物中に取り出され、第2の塔底組成物が第1の留出組成物において富化されたものと同一の成分を富化する工程を含む。
【0046】
上述の方法は、異なる圧力での共沸組成物の変化を利用して、Z−HFC−1225yeおよびHFの分離を達成する。第1の蒸留工程は、第2の蒸留工程に比して高圧で実施され得る。高圧では、HF/Z−HFC−1225ye共沸物はより少量のZ−HFC−1225yeを含有する。それ故、この高圧蒸留工程は、過剰量のZ−HFC−1225yeを生成し、これが共沸物より高温で沸騰し、純粋なZ−HFC−1225yeとしての塔底物として塔を出ることとなる。第1の塔留出物が、次いで、より低圧で操作される第2の蒸留工程に供給される。低圧では、HF/Z−HFC−1225ye共沸物は、HFより低い濃度にシフトする。従って、この第2の蒸留工程においては、過剰量のHFが存在する。共沸物より高い沸点を有する、過剰量のHFは、第2の蒸留塔を塔底組成物として出る。本方法は、HFを本質的に含まないZ−HFC−1225yeを生成するような態様で実施され得る。さらに、本方法は、Z−HFC−1225yeを本質的に含まないHFを生成するような態様で実施され得る。
【0047】
あるいは、第1の蒸留工程は、第2の蒸留工程に比して低圧で実施され得る。低圧力では、HF/Z−HFC−1225ye共沸物はより少量のHFを含有する。それ故、この低圧蒸留工程は過剰量のHFを生成し、これが共沸物より高温で沸騰し、純粋なHFとしての塔底物として塔を出ることとなる。第1の塔留出物は、次いで、より高圧で操作される第2の蒸留工程に供給される。高圧では、HF/Z−HFC−1225ye共沸物は、Z−HFC−1225yeより低い濃度にシフトする。従って、この第2の蒸留工程においては、過剰量のZ−HFC−1225yeが存在する。共沸物より高い沸点を有する、過剰量のZ−HFC−1225yeは、第2の蒸留塔を塔底物組成物として出る。本方法は、HFを本質的に含まないZ−HFC−1225yeを生成するような態様で実施され得る。さらに、本方法は、Z−HFC−1225yeを本質的に含まないHFを生成するような態様で実施され得る。
【0048】
本願明細書に記載のとおり、「Z−HFC−1225yeを本質的に含まない」とは、組成物が、約100ppm未満(モル基準で)、好ましくは約10ppm未満および最も好ましくは約1ppm未満のZ−HFC−1225yeを含有することを意味する。
【0049】
Z−HFC−1225yeを生成するHFC−236eaの吸熱脱フッ化水素反応は、例えば、管中に触媒を有すると共に、加熱媒体を反応器のシェル側に有する管型反応器において達成され得る。あるいは、断熱操作を可能とするために熱媒体が用いられ得る。共に本願明細書に記載の蒸留プロセスで生成された、純粋なHFC−236eaまたは純粋なZ−HFC−1225yeの一方は、熱媒体として作用するために反応器に戻されて再利用され得る。Z−HFC−1225yeの脱フッ化水素反応器への導入はHFC−236eaの単一パス転換での還元をもたらすこととなるため、HFC−236eaは好ましい熱媒体となるであろう。
【0050】
第1および第2の蒸留工程の両方において、HFおよびZ−HFC−1225yeを含む、蒸留塔上部を出る留出物は、例えば標準的な還流凝縮器を用いて凝縮され得る。この凝縮物流の少なくとも一部分が、還流として塔の頂部に戻されてもよい。蒸留塔の頂部に還流として戻される凝縮された材料対留出物として取り出される材料の比が、普通、還流比として称される。蒸留工程を実施するために用いられ得る特定の条件は、とりわけ、蒸留塔の直径、供給点、および塔における分離段階の数などの多数のパラメータに応じる。高圧(高圧蒸留塔が第1および第2の塔のいずれでも)蒸留塔の動作圧は、約50psi(345kPa)圧力〜約225psi(1550kPa)、通常は、約50psi(345kPa)〜約100psi(690kPa)の範囲であり得る。高圧蒸留塔は、典型的には、約75psi(520kPa)の圧力、約86℃の底部温度および約77℃の頂部温度で操作される。通常、高い還流比が高い留出物流純度をもたらすが、一般的には、還流比は、0.1/1〜100/1の間の範囲である。塔の頂部に隣接して位置された凝縮器の温度は、通常、塔の頂部から排出される留出物を実質上完全に凝縮させるに十分であり、または部分的な凝縮により所望の還流比を達成するために必要とされる温度である。
【0051】
低圧(低圧蒸留塔が第1および第2の塔のいずれでも)蒸留塔の操作圧力は、約5psi(34kPa)圧力〜約50psi(345kPa)、通常は、約5psi(34kPa)〜約20psi(138kPa)の範囲であり得る。低圧蒸留塔は、典型的には、約17psi(117kPa)の圧力、約86℃の底部温度および約77℃の頂部温度で操作される。通常、高い還流比が高い留出物流純度をもたらすが、一般的には、還流比は、0.1/1〜50/1の間の範囲である。塔の頂部に隣接して位置された凝縮器の温度は、通常、塔の頂部から排出される留出物を実質上完全に凝縮させるに十分であり、または部分的な凝縮により所望の還流比を達成するために必要とされる温度である。
【0052】
図1は、Z−HFC−1225yeおよびHFの本発明の2塔蒸留分離プロセスを実施するための一実施形態の例示である。図1を参照すると、共沸蒸留前に得られた、HFおよびZ−HFC−1225yeを含み、HF:Z−HFC−1225yeのモル比が約0.48:1(以下)である供給混合物が、導管(540)を介して、約77℃の温度および約335psi(2310kPa)の圧力で操作される多段蒸留塔(510)に移される。約86℃の温度および約337psi(2320kPa)の圧力で本質的に純粋なZ−HFC−1225yeを含有する蒸留塔(510)の塔底物が、塔(510)の底部から導管(566)を介して取り出される。HF/Z−HFC−1225ye共沸物(HF:Z−HFC−1225yeモル比が約0.54:1である)を約77℃の温度および約335psi(2310kPa)の圧力で含有する塔(510)からの留出物が、塔(510)の頂部から取り出され、導管(570)を介して多段蒸留塔(520)に送られる。HF/Z−HFC−1225ye共沸物(モル比は約0.47:1である)を約−19℃の温度および約17psi(117kPa)の圧力で含有する塔(520)からの留出物が、塔(520)から導管(585)を介して取り出され、塔(510)に戻されて再利用される。本質的に純粋なHFを約26℃の温度および約19psi(131kPa)の圧力で含有する塔(520)の塔底物が導管(586)を介して取り出される。
【0053】
本願明細書において参照により援用される米国特許公報(特許文献5)は、約31モルパーセント〜約60モルパーセントのHFC−236eaおよび約69モルパーセント〜約40モルパーセントのHFの範囲でHFC−236eaおよびHFから本質的になる共沸物および近共沸組成物を開示する。この共沸物の存在は、2塔共沸蒸留であるZ−HFC−1225yeのHFからの分離と類似の態様で達成されるべき、HFC−236eaのHFからの分離を許容する。
【0054】
さらなる態様は、HFC−236eaを、HFC−236eaおよびHFの共沸物または近共沸組成物を含む混合物から分離する方法を提供し、前記方法は、a)前記混合物を第1の蒸留工程に付する工程であって、(i)フッ化水素または(ii)HFC−236eaのいずれか一方が富化された組成物が第1の留出組成物として取り出され、第1の塔底組成物が前記構成成分(i)または(ii)の他方を富化する工程、およびb)前記第1の留出組成物を第1の蒸留工程とは異なる圧力で実施される第2の蒸留工程に付する工程であって、(a)において第1の塔底組成物として富化された成分が第2の留出組成物中に取り出され、第2の塔底組成物が第1の留出組成物において富化されたものと同一の成分を富化する工程を含む。
【0055】
既述の2塔共沸蒸留に同様に、第1および第2の蒸留工程の両方について、蒸留塔上部を出る、HFおよびHFC−236eaを含む留出物は、例えば標準的な還流凝縮器を用いて凝縮され得る。この凝縮物流の少なくとも一部分が、還流として塔の頂部に戻されてもよい。蒸留塔の頂部に還流として戻される凝縮された材料対留出物として取り出される材料の比が、普通、還流比として称される。蒸留工程を実施するために用いられ得る特定の条件は、とりわけ、蒸留塔の直径、供給点、および塔における分離段階の数などの多数のパラメータに応じる。低圧(低圧蒸留塔が第1および第2の塔のいずれであろうと)蒸留塔の操作圧力は、約5psi(34kPa)圧力〜約50psi(345kPa)、通常は、約10psi(70kPa)〜約30psi(209kPa)の範囲であり得る。低圧蒸留塔は、典型的には、約25psi(172kPa)の圧力で、約12℃の塔底物温度および約22℃の頂部温度を伴って操作される。通常、高い還流比が高い留出物流純度をもたらすが、一般的には、還流比は、0.1/1〜50/1の間の範囲である。塔の頂部に隣接して位置された凝縮器の温度は、通常、塔の頂部から排出される留出物を実質上完全に凝縮させるに十分であり、または部分的な凝縮により所望の還流比を達成するために必要とされる温度である。
【0056】
高圧(高圧蒸留塔が第1および第2の塔のいずれであろうと)蒸留塔の操作圧力は、約100psi(690kPa)圧力〜約300psi(2070kPa)、通常は、約200psi(1380kPa)〜約300psi(2070kPa)の範囲であり得る。高圧蒸留塔は、典型的には、約265psi(1830kPa)の圧力で、約125℃の塔底物温度および約92℃の頂部温度を伴って操作される。通常、高い還流比が高い留出物流純度をもたらすが、一般的には、還流比は、0.1/1〜50/1の間の範囲である。塔の頂部に隣接して位置された凝縮器の温度は、通常、塔の頂部から排出される留出物を実質上完全に凝縮させるに十分であり、または部分的な凝縮により所望の還流比を達成するために必要とされる温度である。
【0057】
図1はまた、HFC−236eaおよびHFの本発明の2塔蒸留方法を実施するための一実施形態の例示である。図1を参照すると、共沸蒸留前に得られた、HFC−236eaおよびHFを含み、HF:HFC−236eaのモル比が約0.52:1(以下)である供給混合物が、導管(540)を介して、約12℃の温度および約25psi(172kPa)の圧力で操作される多段蒸留塔(510)に移される。約22℃の温度および約27psi(186kPa)の圧力で本質的に純粋なHFC−236eaを含有する蒸留塔(510)の塔底物が、塔(510)の底部から導管(566)を介して取り出される。HF/HFC−236ea共沸物(HF:HFC−236eaモル比が約1.33:1である)を約12℃の温度および約25psi(172kPa)の圧力で含有する塔(510)からの留出物が、塔(510)の頂部から取り出され、導管(570)を介して多段蒸留塔(520)に送られる。HF/HFC−236ea共沸物(モル比は約1:1である)を約92℃の温度および約265psi(1830kPa)の圧力で含有する塔(520)からの留出物が、塔(520)から導管(585)を介して取り出され、塔(510)に戻されて再利用される。本質的に純粋なHFを約125℃の温度および約267psi(1840kPa)の圧力で含有する塔(520)の塔底物が導管(586)を介して取り出される。
【0058】
さらなる態様は、Z−HFC−1225yeを、Z−HFC−1225yeと、HFC−236eaと、HFとの混合物から精製する方法を提供し、前記方法は、a)前記混合物を第1の蒸留工程に付して、Z−HFC−1225yeおよびHFを含有する共沸物または近共沸組成物を含む第1の留出物と、HFC−236eaを含む第1の塔底物とを形成する工程、b)前記第1の留出物を第2の蒸留工程に付する工程であって、(i)フッ化水素または(ii)Z−HFC−1225yeのいずれか一方が富化された組成物が第2の留出組成物として取り出され、第2の塔底組成物が前記構成成分(i)または(ii)の他方を富化する工程、およびc)前記第2の留出組成物を第2の蒸留工程とは異なる圧力で実施される第3の蒸留工程に付する工程であって、(b)において第2の塔底組成物中に富化された成分が第3の留出組成物中に取り出され、第3の塔底組成物が第2の留出組成物において富化されたものと同一の成分を富化する工程を含む。
【0059】
さらなる態様は、a)HFC−236eaを脱フッ化水素のための反応領域に供給して、Z−HFC−1225ye、未反応HFC−236eaおよびフッ化水素を含む反応生成物組成物を形成する工程、b)前記反応生成物組成物を第1の蒸留工程に付して、Z−HFC−1225yeおよびHFを含有する共沸物または近共沸組成物を含む第1の留出組成物と、HFC−236eaを含む第1の塔底組成物とを形成する工程、c)前記第1の留出組成物を第2の蒸留工程に付する工程であって、(i)フッ化水素または(ii)Z−HFC−1225yeのいずれか一方が富化された組成物が第2の留出組成物として取り出され、第2の塔底組成物が前記構成成分(i)または(ii)の他方を富化する工程、およびd)前記第2の留出組成物を第2の蒸留工程とは異なる圧力で実施される第3の蒸留工程に付する工程であって、(c)において第2の塔底組成物中に富化された成分が第3の留出組成物中に取り出され、第3の塔底組成物が第2の留出組成物において富化されたものと同一の成分を富化する工程を含むZ−HFC−1225yeを製造する方法を提供する。任意選択的に、本方法は、前記第1の塔底組成物(HFC−236ea)の少なくとも一部を前記反応領域に再利用する工程をさらに含み得る。任意選択的に、本方法は、前記第2の塔底組成物または第3の塔底組成物の少なくとも一部を前記反応領域に再利用する工程をさらに含み得る。任意選択的に、本方法は、前記第2の塔底組成物または第3の塔底組成物の少なくとも一部を前記第1の蒸留工程に再利用する工程をさらに含み得る。任意選択的に、本方法は、前記第2の塔底組成物または第3の塔底組成物の少なくとも一部を、HFC−236eaおよびHFを本質的に含まないZ−HFC−1225yeとして回収する工程をさらに含み得る。
【0060】
本願明細書に記載のとおり、「本質的にHFC236eaおよびHFを含まない」とは、組成物は、約100ppm未満(モル基準で)、好ましくは約10ppm未満および最も好ましくは約1ppm未満でHFC−236eaおよびHFの各々を含有することを意味する。
【0061】
脱フッ化水素のための反応領域は、好ましくは脱フッ化水素触媒の固定床を含有する流通反応器を含み得る。本願明細書に開示されるすべての方法のためのプロセス器具および関連する供給ライン、溶出ラインおよび関連するユニットは、フッ化水素に耐性の材料で構成され得る。当該技術分野に周知である典型的な構成材料としては、ステンレス鋼、特にオーステナイト系のタイプのもの、およびモネル(Monel)(登録商標)ニッケル−銅合金、ハステロイ(Hastelloy)(登録商標)ニッケルベースの合金およびインコネル(Inconel)(登録商標)ニッケル−クロム合金などの周知の高ニッケル合金が挙げられる。
【0062】
図2は、本Z−HFC−1225yeの製造方法を実施するための一実施形態の例示である。HFC−236eaが導管(360)を介して反応器(320)に供給される。HF、HFC−236eaおよびZ−HFC−1225yeを含む反応器溶出液混合物が導管(450)を介して反応器から排出され、多段蒸留塔(410)に供給される。本質的に純粋なHFC−236eaを含有する蒸留塔(410)の塔底物が導管(466)を介して塔(410)の底部から排出され、反応器に戻されて再利用され得る。HF/Z−HFC−1225ye共沸物を含有する塔(410)からの留出物が、塔(410)の頂部から取り出され、導管(540)を介して第2の多段蒸留塔(510)に送られる。本質的に純粋なZ−HFC−1225yeである塔(510)からの塔底物が、導管(566)を介して塔(510)から取り出され、反応器(320)に熱媒体として戻されて再利用され得る。HF/Z−HFC−1225ye共沸物を含有する塔(510)からの留出物が、導管(570)を介して第3の多段蒸留塔(520)に供給される。HF/Z−HFC−1225yeを含む塔(520)からの留出物が、導管(585)を介して取り出され、第2の蒸留塔(510)に戻されて再利用され得る。塔(520)からの塔底組成物は本質的に純粋なHFであり、塔(520)から導管(586)を介して取り出される。この方法による本質的に純粋なHF生成物は、フルオロケミカル化合物の製造のためのフッ素化反応器への供給などの適切ないずれかの態様で用いられ得、または廃棄のために中和され得る。
【0063】
図には図示されていないが、プロセス器具の一定の部分が、最適化のために本願明細書に記載の方法において用いられ得ることが理解される。例えば、ポンプ、ヒータまたはクーラーが適切な場合に用いられ得る。一例として、供給物を、塔における供給物が供給される点と同一の温度で蒸留塔に送ることが望ましい。従って、温度を合わせるためにプロセス流の加熱または冷却が必要となり得る。
【0064】
さらなる詳細無しで、当業者は、本願明細書における記載を用いて、開示された組成物および方法を最大限に利用することが可能であると考えられている。以下の例示的な実施形態は、従って、単に例示として解釈されるべきであり、どのようにも一切開示の残りを制約しない。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
(炭素質触媒でのHFC−236eaのHFC−1225yeへの脱フッ化水素(EおよびZ異性体))
ハステロイ(Hastelloy)ニッケル合金反応器(1.0インチ OD×0.854インチ ID×9.5インチ L)に、本願明細書において参照により援用される米国特許公報(特許文献16)に実質的に記載のとおり調製した、14.32g(25mL)の球状(8メッシュ)三次元マトリックス多孔性炭素質材料を充填した。反応器の充填部分を、反応器の外側に締め付けた5インチ×1インチセラミックバンドヒータにより加熱した。反応器壁およびヒータの間に配置した熱電対で反応器温度を計測した。反応器を炭素質材料で充填下後、窒素(10mL/分)を反応器に通し、1時間かけて温度を200℃に昇温させ、およびこの温度でさらに4時間維持した。次いで、反応器温度を所望の操作温度に昇温させ、HFC−236eaおよび窒素流を反応器を通して流し始めた。
【0066】
合計反応器溶出液の一部分を、質量選択検出器(GC−MS)を備えるガスクロマトグラフィーを用いる有機生成物分析のためにライン上でサンプリングした。有機生成物およびHFなどの無機酸をも含有する反応器溶出物バルクを、水性苛性アルカリで処理して中和した。
【0067】
GCモルパーセントで得た結果が、表1にまとめられている。
【0068】
【表1】

【0069】
(実施例2)
(HFおよびZ−HFC−1225yeの混合物の相研究)
本質的にZ−HFC−1225yeおよびHFからなる組成物について相研究を実施し、ここで、19.5℃および70℃の両方で組成物を変更し、蒸気圧を計測した。相研究からのデータに基づいて、他の温度および圧力での共沸組成を算出した。
【0070】
表2は、HFおよびZ−HFC−1225yeについての、特定の温度および圧力での実験および算出共沸組成についてまとめたものを示す。
【0071】
【表2】

【0072】
(実施例3)
(露点および沸点蒸気圧)
本願明細書に開示の組成物についての露点および沸点蒸気圧を、計測したおよび算出した熱力学的特性から算出した。近共沸物範囲は、露点および沸点圧における差が3%以下(沸点圧基準で)であるZ−HFC−1225yeの最低濃度および最高濃度(モルパーセント、mol%)により示されている。結果が表3にまとめられている。
【0073】
【表3】

【0074】
(実施例4)
(Z−HFC−1225yeをHFC−236eaから分離するための共沸蒸留)
HF、Z−HFC−1225yeおよびHFC−236eaの混合物が、Z−HFC−1225yeを精製する目的のために蒸留塔に供給される。表4中のデータは、計測したおよび算出した熱力学的特性を用いて算出することにより得た。
【0075】
【表4】

【0076】
(実施例5)
(Z−HFC−1225yeをHFC−236eaから分離するための共沸蒸留)
HF、Z−HFC−1225yeおよびHFC−236eaの混合物が、Z−HFC−1225yeを精製する目的のために蒸留塔に供給される。表5中のデータは、計測したおよび算出した熱力学的特性を用いて算出することにより得た。
【0077】
【表5】

【0078】
(実施例6)
(Z−HFC−1225yeをHFC−236eaから分離するための共沸蒸留)
HF、Z−HFC−1225yeおよびHFC−236eaの混合物が、Z−HFC−1225yeを精製する目的のために蒸留塔に供給される。表6中のデータは、計測したおよび算出した熱力学的特性を用いて算出することにより得た。
【0079】
【表6】

【0080】
(実施例7)
(Z−HFC−1225yeをHFC−236eaから分離するための共沸蒸留)
HF、Z−HFC−1225yeおよびHFC−236eaの混合物が、Z−HFC−1225yeを精製する目的のために蒸留塔に供給される。表7中のデータは、計測したおよび算出した熱力学的特性を用いて算出することにより得た。
【0081】
【表7】

【0082】
(実施例8)
(Z−HFC−1225yeのHFからの分離のための2塔共沸蒸留)
HFおよびZ−HFC−1225yeの混合物が、Z−HFC−1225yeを精製する目的のために蒸留プロセスに供給される。表8中のデータは、計測したおよび算出した熱力学的特性を用いて算出することにより得た。塔の頂部の数字は図1を参照する。
【0083】
【表8】

【0084】
(実施例9)
(Z−HFC−1225yeのHFからの分離のための2塔共沸蒸留)
HFおよびZ−HFC−1225yeの混合物が、Z−HFC−1225yeを精製する目的のために蒸留プロセスに供給される。表9中のデータは、計測したおよび算出した熱力学的特性を用いて算出することにより得た。塔の頂部の数字は図1を参照する。
【0085】
【表9】

【0086】
(実施例10)
(Z−HFC−1225yeのHFからの分離のための2塔共沸蒸留)
HFおよびZ−HFC−1225yeの混合物が、Z−HFC−1225yeを精製する目的のために蒸留プロセスに供給される。表10中のデータは、計測したおよび算出した熱力学的特性を用いて算出することにより得た。塔の頂部の数字は図1を参照する。
【0087】
【表10】

【0088】
(実施例11)
(HFC−236eaのHFからの分離のための2塔共沸蒸留)
HFおよびHFC−236eaの混合物が、HFC−236eaを精製する目的のために蒸留プロセスに供給される。表11中のデータは、計測したおよび算出した熱力学的特性を用いて算出することにより得た。塔の頂部の数字は図1を参照する。
【0089】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)を、HFC−236eaおよびフッ化水素の共沸物または近共沸組成物を含む混合物から分離する方法であり、前記方法が
a)前記混合物を第1の蒸留工程に付する工程であって、(i)フッ化水素または(ii)HFC−236eaのいずれか一方が富化された組成物が第1の留出組成物として取り出され、第1の塔底組成物が前記構成成分(i)または(ii)の他方を富化する工程、および
b)前記第1の留出組成物を第1の蒸留工程とは異なる圧力で実施される第2の蒸留工程に付する工程であって、(a)において第1の塔底組成物として富化された成分が第2の留出組成物中に取り出され、第2の塔底組成物が第1の留出組成物において富化されたものと同一の成分を富化する工程
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−207045(P2012−207045A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−165143(P2012−165143)
【出願日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【分割の表示】特願2008−539002(P2008−539002)の分割
【原出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】