説明

1,2−ジクロロエタンの製造方法

a)エタンの流れが接触オキシ脱水素にかけられ、エチレン、未転化エタン、水および二次成分を含有するガス混合物を生成する工程と、b)前記ガス混合物が場合により洗浄され、そして乾燥され、こうして乾燥ガス混合物を生成する工程と、c)任意の追加精製工程後に、乾燥ガス混合物が次に、エチレンの少なくとも10%が1,2−ジクロロエタンに転化されるように塩素の流れを供給される塩素化反応器に搬送される工程と、d)塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが塩素化反応器に由来する生成物の流れから場合により単離される工程と、e)1,2−ジクロロエタンが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れが、塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが予め抽出されなかった場合には場合により抽出される吸収/脱着工程e’)に場合により1,2−ジクロロエタンをかけた後に、エチレンの残りの大部分が1,2−ジクロロエタンに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される工程と、f)オキシ塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンがオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、そして塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンに場合により加えられる工程と、g)1,2−ジクロロエタンが抽出された、工程b)〜f)の1つに予め導入されたエタンのさらなる流れを場合により含有する、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れが、場合によりガスをパージされた後におよび/またはそれに含有される塩素化生成物を排除するための任意の追加処理後に工程a)に場合によりリサイクルされる工程とによるエタンの流れから出発する1,2−ジクロロエタンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2−ジクロロエタン(DCE)の製造方法、塩化ビニル(VC)の製造方法およびポリ塩化ビニル(PVC)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DCEは通常、塩化水素(HCl)および酸素源を使用するエチレンのオキシ塩素化によって、または塩素を使用するエチレンの直接塩素化によって製造される。熱分解によるDCEの脱塩化水素はこうしてHClの放出と共にVCの生成をもたらす。オキシ塩素化および塩素化は一般に並行して実施され、熱分解で生成したHClはオキシ塩素化に使用される。
今まで、99.8%純度より高いエチレンが普通はDCEの製造のために使用されている。この非常に高い純度のエチレンは、様々な石油製品の熱分解、引き続く分解の他の生成物からエチレンを単離し、そして非常に高い純度の製品を得るための多数の複雑な、費用のかかる分離操作によって得られる。
【0003】
かかる高純度のエチレンの生産に関連した高いコスト、そしてまた利用可能なエチレン設備のない好都合な地域でDCEによるVCの製造方法を想定する際に存在し得る利点を鑑みて、99.8%未満の純度を有するエチレンを使用するDCEの様々な製造方法が想定されてきた。これらの方法は、石油製品の分解から生じた生成物を分離する過程を簡略化することによって、こうしてDCEの製造にとって何の利益もない複雑な分離を放棄することによってコストを削減するという利点を有する。
こうして、エタンの簡略化分解によって製造された99.8%未満の純度を有するエチレンから出発するDCEの様々な製造方法が想定されてきた。
例えば、国際公開第00/26164号パンフレットは、エタンの簡略化分解によって得られたエチレンの塩素化によるDCEの製造方法を記載しており、塩素化は、いかなる他の精製もなくエタンの分解中に得られた不純物の存在下に行われる。
国際公開第03/48088号パンフレットそれ自体は、エタン、エチレンおよび水素をはじめとする不純物を含む画分であって、次に塩素化および/またはオキシ塩素加にかけられる画分の形成をもたらすエタンの脱水素によるDCEの製造方法を記載している。
【0004】
これらの方法は、オキシ塩素化反応中のそれらの存在が操作上の問題、すなわち重質生成物による触媒の被毒および存在する水素の非経済的な転化を引き起こす不純物をエチレンが含有することを考えると、得られたエチレンが組み合わせられたエチレン塩素化/オキシ塩素化プロセスのために使用できないという欠点を有する。この水素転化は高純度酸素を消費し、高純度酸素は望ましくない反応のためにこうして犠牲になり、そして水素の水への転化の間高い反応熱を放出するであろう。この転化は次に、一般に熱交換能力と結びついたオキシ塩素化反応器の能力を制限するであろう。従って、混合物中の水素の存在によって引き起こされる、非常に高い投資が、熱交換領域、ひいては反応器容量を保証するために費やされなければならない。
【0005】
国際公開第03/48088号パンフレットに記載されている、別個の反応器での水素の燃焼という講じられる選択肢は、それが大量の、水素に対して化学量論量の酸素、およびまた燃焼熱を除去するための交換用の大きな表面積を必要とするのでこの難点を解決しない。その結果として、それはかなりのエチレン消費を有し、それは安全性に関連した問題を生じるかもしれない。最終的に、生成した水の除去は生産コストの増加につながる。
VCが、エチレンではなくエタンのオキシ塩素化によって得られる方法もまた公知である。かかる方法は、それらが高温で行われるとき、それらが使用される反応体の損失によるあまり良くない選択性と、副生物の分離および破壊のためのコストとをもたらし、かつ、それらがまた腐食性オキシ塩素化媒体中での材料の挙動の問題で特徴付けられることを考えて、今まで工業的応用を見いだしてこなかった。最終的に、それらの成分の漸次蒸発のために使用触媒の挙動に関連した、そしてまた交換器束の低温表面上へのこれらの成分の沈着に関連した問題に通常直面する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明自体の一目的は、より高い純度のエチレンの生産に関連したコストの削減という利点を有し、かつ、上述の問題を回避するという利点を有する、99.8%未満の純度を有するエチレンを使用する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この趣旨で、本発明は、
a)エタンの流れが接触オキシ脱水素にかけられ、エチレン、未転化エタン、水および二次成分を含有するガス混合物を生成する工程と、
b)前記ガス混合物が場合により洗浄され、そして乾燥され、こうして乾燥ガス混合物を生成する工程と、
c)任意の追加精製工程後に、乾燥ガス混合物が次に、エチレンの少なくとも10%が1,2−ジクロロエタンに転化されるように塩素の流れを供給される塩素化反応器に搬送される工程と、
d)塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが塩素化反応器に由来する生成物の流れから場合により単離される工程と、
e)1,2−ジクロロエタンが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れが、塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが予め抽出されなかった場合には場合により抽出される吸収/脱着工程e’)に場合により1,2−ジクロロエタンをかけた後に、エチレンの残りの大部分が1,2−ジクロロエタンに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される工程と、
f)オキシ塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンがオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、そして塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンに場合により加えられる工程と、
g)1,2−ジクロロエタンが抽出された、工程b)〜f)の1つで予め導入されたエタンのさらなる流れを場合により含有する、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れが、場合によりガスをパージされた後におよび/またはその中に含有される塩素化生成物を排除するための任意の処理後に工程a)に場合によりリサイクルされる工程と
によるエタンの流れから出発するDCEの製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明によるDCEの製造方法の実施形態を概略的に表す。
【図2】本発明によるDCEの製造方法の別の実施形態を概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による方法の工程a)によれば、エタンの流れが接触オキシ脱水素にかけられ、エチレン、未転化エタン、水および二次成分を含有するガス混合物を生成する。
接触オキシ脱水素にかけられるエタンの流れは、化学的に純粋であってもなくてもよい。使用されるエタンの流れは、メタン、水素、エチレン、酸素、窒素および一酸化炭素などの70vol%以下の他のガスを含有してもよい。
使用されるエタンの流れは有利には、少なくとも80vol%、好ましくは少なくとも90vol%、特に好ましくは少なくとも95vol%、より特に好ましくは少なくとも98vol%のエタンを含有する。必要に応じて、エタンは、任意の公知デバイスで、例えば吸収、抽出、拡散または蒸留によって、より高い沸点を有する第2化合物から分離されてもよい。
接触オキシ脱水素にかけられるエタンの流れは、市場で入手可能であるものなどのエタン源、また1,2−ジクロロエタンが抽出された、工程b)〜f)の1つに加えられ、そして工程g)にリサイクルされるエタンのさらなる流れを場合により含有する、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れ、またはこれら2つの混合物であってもよい。
【0010】
接触酸化脱水素としても知られる、用語「接触オキシ脱水素(ODH)」は、触媒の存在下での酸素によるエタンの部分酸化を意味すると理解される。
ODHは、熱分解温度の範囲より下の、650℃より上で800℃以下の温度、または650℃未満以下の温度で行われてもよい。
工程a)が実施される圧力は有利には、少なくとも1、好ましくは少なくとも1.5、特に好ましくは少なくとも2バール絶対である。それは有利には、16バール絶対以下、好ましくは11バール絶対以下、特に好ましくは6バール絶対以下である。
【0011】
導入される酸素は、酸素または例えば空気などの、他の不活性ガスと共に酸素を含有するガスであってもよい。好ましくは酸素が使用される。酸素は化学的に純粋であってもなくてもよい。こうして、少なくとも99vol%の酸素を含有する非常に純粋な酸素源、また99vol%未満の酸素を含有する酸素源を使用することが可能である。後者の場合には、使用される酸素は有利には、90vol%より多くの、好ましくは95vol%より多くの酸素を含有する。95〜99vol%の酸素を含有する酸素源が特に好ましい。
導入される酸素の量は、エタンの量を基準として、有利には0.001〜1モル/モル、好ましくは0.005〜0.5モル/モル、特に好ましくは0.05〜0.3モル/モルである。
【0012】
ODHは任意の公知デバイスで実施されてもよい。有利には、ODHは、その間に熱調節工程が実施されてもよい、1つ以上の床を有する固定床タイプの1つの反応器もしくは一連の反応器で、または好ましくは断熱のもしくは反応器(多管型反応器もしくは触媒床に入れられた熱交換器)の内側でもしくは反応器の外側で補助流体を使用する温度調節付きの、流動床タイプの1つの反応器もしくは一連の反応器で実施される。反応体は、反応ゾーンへの導入前に予め混合されてもよい。1つ以上の反応体はまた、異なるように、例えば多床反応器の床間に加えられてもよい。反応器は、予熱手段をおよび反応温度を調節するために必要な任意の手段を備えていてもよい。クロス交換器は有利にも、形成された生成物の熱が回収されて入ってくる生成物を再加熱することを可能にする。
【0013】
様々な触媒系が本発明によるODHを実施するために使用されてもよい。
こうして、一般に600℃より上の温度で動作する、例えばLi/MgO触媒などの、アルカリ土類金属酸化物をベースとする触媒が挙げられてもよい。ニッケル(Ni)をベースとする触媒も挙げられてもよい。モリブデン(Mo)および/またはバナジウム(V)を含有する触媒が特別な利点を有する。これらの触媒は一般にこれらの元素の酸化物をベースとする。それらは有利には、加えて、例えばCr、Mn、Nb、Ta、Te、Ti、P、Sb、Bi、Zr、Ni、Ce、Al、CaまたはWなどの他の元素を含有する。
【0014】
バナジウム(V)をベースとする触媒がより特に有利である。
VとMo、W、Nb、Ta、Te、Ti、P、Sb、Bi、Zr、Ni、Ce、AlおよびCaから選択された少なくとも1つの他の元素とを含有する混合酸化物が好ましい。
MoおよびV、WおよびVまたはMo、WおよびVの両方を含有する混合酸化物が特に好ましい。
MoおよびVを含有するもののうち、Mo−V−O、Mo−V−Zr−O、Mo−V−Ta−Sb−Zr−O、Mo−V−Ta−Sb−O、Mo−V−Nb−Te−O、Mo−V−Nb−Bi−Ni−O、Mo−V−Nb−Bi−O、Mo−V−Nb−Ni−O、Mo−V−Nb−Sb−Ca−O、Mo−V−Ta−Al−O、Mo−V−Ta−O、Mo−V−Al−O、Mo−V−Sb−O、Mo−V−Nb−OおよびMo−V−Nb−Sbが挙げられてもよい。
【0015】
WおよびVを含有するもののうち、W−V−O、W−V−Nb−O、およびW−V−Ta−Oが挙げられてもよい。
Mo、WおよびVを含有するもののうち、Mo−W−V−Ta−Te−Ti−P−Ni−Ce−O、Mo−W−V−Ta−Te−Ti−P−O、Mo−W−V−Te−Ti−P−Ce−O、Mo−W−V−Te−Ti−P−Ni−O、Mo−W−V−Te−Ti−P−O、Mo−W−V−Te−Ti−O、Mo−W−V−Te−P−O、Mo−W−V−Te−O、Mo−W−V−Ta−Te−Ti−P−Ni−Ce−O、Mo−W−V−Ta−Te−Ti−P−O、Mo−W−V−Te−Ti−P−Ce−O、Mo−W−V−Te−Ti−P−Ni−O、Mo−W−V−Te−Ti−P−O、Mo−W−V−Te−Ti−O、Mo−W−V−Te−P−O、Mo−W−V−Te−O、Mo−W−V−Nb−O、Mo−W−V−Sb−O、Mo−W−V−Ti−Sb−Bi−O、Mo−W−V−Ti−Sb−O、Mo−W−V−Sb−Bi−O、Mo−W−V−Zr−O、Mo−W−V−Nb−Ta−O、Mo−W−V−Nb−OおよびMo−W−V−Oが挙げられてもよい。
Ta−Ni−O、Nb−Ni−OおよびNb−Ta−Ni−O触媒もまた使用することができよう。
【0016】
ODHのために使用される触媒は担持されてもされなくてもよい。それらが担持される場合には、場合により使用されてもよい担体には、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭化ケイ素、ジルコニアおよび混合酸化物などのそれらの混合物が含まれる。
ODHのために使用される触媒は有利には耐DCE性である。
使用される触媒は、温度調節がこれらのチューブを取り囲むかもしくはそれらを通リ抜ける流体によって得られるように床上にまたはチューブ中にもしくはそれらのチューブの外側に置かれてもよい。
【0017】
エタンの流れのODHは、エチレン、未転化エタン、水および二次成分を含有するガス混合物を与える。二次成分は、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、例えば、酢酸またはアルデヒドなどの様々な酸素含有化合物、窒素、メタン、酸素、場合によりアセチレンおよび場合により少なくとも3個の炭素原子を含む有機化合物であってもよい。
【0018】
本発明による方法の第1変形によれば、ODHは650℃より上で800℃以下の温度で行われる。
本発明による方法の第2変形によれば、ODHは650℃以下の温度で行われる。
有利には、ODHは次に、600℃以下、好ましくは550℃以下、特に好ましくは500℃以下、より特に好ましくは450℃以下、最も特に好ましくは400℃以下の温度で行われる。200〜400℃の温度が特に有利である。
この場合には、本発明による方法は、多くの欠点の原因である水素を非常に少量発生させるという利点を有する。
この第2変形によれば、有利にはODHにより、例えばプロピレンおよびその分子量がプロピレンのそれより高いオレフィンなどの、3個以上の数の炭素原子を有する重質化合物を好ましくない量で発生させることができなくなる。
本発明による方法の第2変形は第1変形より好ましい。
【0019】
本発明による方法の工程b)によれば、工程a)で得られた前記ガス混合物は場合により洗浄され、それは乾燥させられ、こうして乾燥ガス混合物を生成する。
工程a)で得られたガス混合物は洗浄されてもされなくてもよい。好ましくは、それは洗浄される。工程a)で得られたガス混合物の洗浄は、任意の公知方法によって実施されてもよい。好ましくは、それは、水性、好ましくはアルカリ性洗浄液を使用してか、または非水性液体を使用して実施される。水性洗浄液のうち、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化ナトリウムが挙げられてもよい。非水性液体のうち、メチルピロリドン、重質油およびメタノールが挙げられてもよい。この操作によって、石炭などの固形分、硫黄化合物、二酸化炭素、エチレンより重質な飽和または不飽和炭化水素、アセチレン、酢酸または塩化水素などの酸化学種、およびアルデヒドが有利に除去される。
【0020】
ガス混合物の乾燥が次に任意の公知方法によって実施されてもよい。好ましくは、乾燥は、ガスの圧縮の終わりに冷却することによって、および/またはモレキュラーシーブ、アルミナもしくは石灰などの固体乾燥剤上への吸着によって実施される。
行われる場合、洗浄工程と、乾燥工程とはいかなる順に行われてもよい。こうして、ガス混合物を洗浄し、次に乾燥させること、またはそれを乾燥させ、次にそれを洗浄することが可能である。好ましくは、工程a)で得られた前記ガス混合物は洗浄され、次にそれは乾燥させられ、こうして乾燥ガス混合物を生成する。
工程b)の後、乾燥ガス混合物中の水の量は有利には、500容量ppm以下、好ましくは10容量ppm以下、特に好ましくは1容量ppm以下である。
【0021】
乾燥ガス混合物の追加精製工程、好ましくは、化学精製工程が、塩素化で望ましくないいかなる化合物もそれから除去するためにそれが塩素化反応器へ入る前に想定されてもよい。これは、例えば、工程a)中に形成されたアセチレンに、また過剰なときに望ましくない酸素に当てはまるかもしれない。
アセチレンは、水素化によって、好ましくは混合物中に存在する水素を用いて有利に除去されてもよい。
【0022】
本発明による方法の工程c)によれば、前述の任意の追加精製工程の後に、乾燥ガス混合物は、エチレンの少なくとも10%がDCEに転化されるように塩素の流れを供給される塩素化反応器に搬送される。
塩素の流れは、エチレンの少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも40%がDCEに転化されるようなものである。塩素の流れは、有利にはエチレンの90%以下、好ましくは80%以下、特に好ましくは60%以下がDCEに転化されるようなものである。
【0023】
本発明の方法によれば、乾燥ガス混合物は有利には、塩素化反応器へ入る前に、乾燥ガス混合物の総容量に対して5vol%以上、好ましくは10vol%以上、特に好ましくは20vol%以上、より特に好ましくは25vol%以上のエタン含有率で特徴付けられる。
乾燥ガス混合物は有利には、塩素化反応器に入る前に、乾燥ガス混合物の総容量に対して95vol%以下、好ましくは90vol%以下、特に好ましくは80vol%以下のエタン含有率で特徴付けられる。
相対的なエタン含有率は、エチレン以外の化合物の好ましくは10vol%以上、好ましくは15vol%以上、特に好ましくは20vol%以上である。
相対的なエタン含有率は、エチレン以外の化合物の好ましくは90vol%以下、好ましくは85vol%以下、特に好ましくは80vol%以下である。
【0024】
乾燥ガス混合物は有利には、塩素化反応器に入る前に、乾燥ガス混合物の総容量に対して1vol%以上、好ましくは3vol%以上、特に好ましくは5vol%以上のエチレン含有率で特徴付けられる。
乾燥ガス混合物は有利には、塩素化反応器に入る前に、乾燥ガス混合物の総容量に対して50vol%以下、好ましくは25vol%以下のエチレン含有率で特徴付けられる。
【0025】
乾燥ガス混合物は有利には、塩素化反応器に入る前に、乾燥ガス混合物の総容量に対して20vol%以下、好ましくは15vol%以下、特に好ましくは10vol%以下の一酸化炭素含有率で特徴付けられる。
乾燥ガス混合物は有利には、塩素化反応器に入る前に、乾燥ガス混合物の総容量に対して30vol%以下、好ましくは25vol%以下、特に好ましくは20vol%以下の二酸化炭素含有率で特徴付けられる。
【0026】
乾燥ガス混合物は有利には、塩素化反応器に入る前に、乾燥ガス混合物の総容量に対して10vol%以下、好ましくは5vol%以下、特に好ましくは3vol%以下の酸素含有率で特徴付けられる。
乾燥ガス混合物は有利には、塩素化反応器に入る前に、乾燥ガス混合物の総容量に対して30vol%以下、好ましくは15vol%以下、特に好ましくは10vol%以下の窒素含有率で特徴付けられる。
乾燥ガス混合物は有利には、塩素化反応器に入る前に、乾燥ガス混合物の総容量に対して50vol%以下、好ましくは35vol%以下、特に好ましくは25vol%以下の水素含有率で特徴付けられる。
【0027】
塩素化反応は有利には、FeCl3または別のルイス(Lewis)酸などの溶解触媒を含有する液相(好ましくは主にDCE)で実施される。この触媒をアルカリ金属塩化物などの共触媒と有利に組み合わせることが可能である。良好な結果を与えたペアは、FeCl3とLiClとの錯体(リチウムテトラクロロフェラート−オランダ国特許出願第6901398号明細書に記載されている)である。
有利に使用されるFeCl3の量は、液体ストックの1kg当たり約1〜30gのFeCl3である。FeCl3対LiClのモル比は有利には約0.5〜2である。
【0028】
加えて、塩素化プロセスは好ましくは塩素化有機液体媒体中で行われる。より好ましくは、液体ストックとも呼ばれる、この塩素化有機液体媒体は主にDCEからなる。
本発明による塩素化プロセスは有利には30〜150℃の温度で実施される。良好な結果は、圧力にかかわらず沸点より下の温度(サブクール条件下の塩素化)および沸点そのもの(沸騰塩素化)の両方で得られた。
本発明による塩素化プロセスがサブクール条件下の塩素化プロセスであるとき、それは、有利には50℃以上、好ましくは60℃以上、しかし有利には80℃以下、好ましくは70℃以下の温度で、そして有利には1バール絶対以上、好ましくは1.1バール絶対以上、しかし有利には30バール絶対以下、好ましくは25バール絶対以下、特に好ましくは20バール絶対以下の気相での圧力で操作することによって良好な結果を与えた。
【0029】
必要に応じて、反応の熱を有効に回収することを可能にする、沸点での塩素化プロセスが特に好ましい。この場合、反応は有利には、60℃以上、好ましくは70℃以上、特に好ましくは85℃以上、しかし有利には150℃以下、好ましくは135℃以下の温度で、そして有利には0.2バール絶対以上、好ましくは0.5バール絶対以上、特に好ましくは1.1バール絶対以上、より特に好ましくは1.3バール絶対以上、しかし有利には20バール絶対以下、好ましくは15バール絶対以下の気相での圧力で行われる。
【0030】
塩素化プロセスはまた、沸点での塩素化のためのハイブリッド・ループ冷却プロセスであってもよい。表現「沸点での塩素化のためのハイブリッド・ループ冷却プロセス」は、形成されたDCEの少なくともその量を気相に生成しながら、反応媒体の冷却が、例えば反応媒体中に浸漬された交換器を用いてか、または交換器中を循環するループによって実施されるプロセスを意味すると理解される。有利には、反応温度および圧力は、生成されたDCEが気相で出て、そして反応媒体からの熱の残りが交換表面を用いて除去されるように調節される。
【0031】
エチレンおよびまた塩素(それ自体純粋かまたは希釈された)を含有する乾燥ガス混合物が、一緒にまたは別々に、任意の公知デバイスによって反応媒体へ導入されてもよい。乾燥ガス混合物の別々の導入は、その分圧を上げるために、およびこのプロセスの律速段階を多くの場合に構成するその溶解を容易にするために有利であるかもしれない。
得られた塩素化生成物は主にDCE、そしてまた1,1,2−トリクロロエタンなどの少量の副生物または少量のエタンもしくはメタン塩素化生成物を含有する。
【0032】
本発明による方法の工程d)によれば、塩素化反応器で形成されたDCEは場合により、塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離される。場合によっては、塩素化反応器に由来する生成物の流れから塩素化反応器で形成されたDCEを単離しないことが有利であるかもしれない。しかしながら好ましくは、塩素化反応器で形成されたDCEは塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離される。
それが行われる場合、塩素化反応器に由来する生成物の流れからの得られたDCEの分離は公知方法に従って実施され、塩素化反応の熱を利用することを一般に可能にする。それはそのとき好ましくは凝縮および気/液分離によって実施される。
【0033】
本発明による方法の工程e)によれば、DCEが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れは、塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが予め抽出されなかった場合には場合により抽出される、吸収/脱着工程e’)に1,2−ジクロロエタンを場合によりかけた後に、エチレンの残りの大部分がDCEに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される。
本発明の方法によれば、DCEが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れは有利には、オキシ塩素化反応器に入る前に、任意の工程e’)の後に、前記流れの総容量に対して5vol%以上、好ましくは25vol%以上のエタン含有率で特徴付けられる。
DCEが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れは有利には、オキシ塩素化反応器に入る前に、前記流れの総容量に対して95vol%以下、好ましくは90vol%以下、特に好ましくは85vol%以下、さらに特に好ましくは80vol%以下のエタン含有率で特徴付けられる。
【0034】
生成物の前記流れは有利には、オキシ塩素化反応器に入る前に、前記流れの総容量に対して1vol%以上、好ましくは2vol%以上のエチレン含有率で特徴付けられる。
前記流れは有利には、オキシ塩素化反応器に入る前に、前記流れの総容量に対して50vol%以下、好ましくは25vol%以下のエチレン含有率で特徴付けられる。
前記流れは有利には、オキシ塩素化反応器に入る前に、前記流れの総容量に対して70vol%以下、好ましくは60vol%以下、特に好ましくは55vol%以下の二酸化炭素、一酸化炭素および窒素の含有率で特徴付けられる。
前記流れは有利には、オキシ塩素化反応器に入る前に、前記流れの総容量に対して10vol%以下、好ましくは5vol%以下、特に好ましくは3vol%以下の酸素含有率で特徴付けられる。
前記流れは有利には、オキシ塩素化反応器に入る前に、前記流れの総容量に対して10vol%以下、好ましくは5vol%以下、特に好ましくは3.5vol%以下、より特に好ましくは2.5vol%以下の水素含有率で特徴付けられる。
【0035】
オキシ塩素化反応は有利には、不活性担体上に沈着された銅をはじめとする、活性元素を含む触媒の存在下に実施される。不活性担体は有利には、アルミナ、シリカゲル、混合酸化物、粘土および天然起源の他の担体から選択される。アルミナが好ましい不活性担体である。
数が有利には少なくとも2つであり、その1つが銅である活性元素を含む触媒が好ましい。銅以外の活性元素のうち、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属ならびにルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金および金からなる群からの金属が挙げられてもよい。以下の活性元素を含有する触媒が特に有利である:銅/マグネシウム/カリウム、銅/マグネシウム/ナトリウム、銅/マグネシウム/リチウム、銅/マグネシウム/セシウム、銅/マグネシウム/ナトリウム/リチウム、銅/マグネシウム/カリウム/リチウムおよび銅/マグネシウム/セシウム/リチウム、銅/マグネシウム/ナトリウム/カリウム、銅/マグネシウム/ナトリウム/セシウムおよび銅/マグネシウム/カリウム/セシウム。参照により援用される、欧州特許出願公開第255 156A号明細書、欧州特許出願公開第494 474A号明細書、欧州特許出願公開第657 212A号明細書および欧州特許出願公開第657 213A号明細書に記載されている触媒が最も特に好ましい。
【0036】
金属形態で計算される、銅含有率は有利には、触媒1kg当たり30〜90g、好ましくは触媒1kg当たり40〜80g、特に好ましくは触媒1kg当たり50〜70gの触媒である。
金属形態で計算される、マグネシウム含有率は有利には、触媒1kg当たり10〜30g、好ましくは触媒1kg当たり12〜25g、特に好ましくは触媒1kg当たり15〜20gである。
金属形態で計算される、アルカリ金属含有率は有利には、触媒1kg当たり0.1〜30g、好ましくは触媒1kg当たり0.5〜20g、特に好ましくは触媒1kg当たり1〜15gの触媒である。
Cu/Mg/アルカリ金属原子比は、有利には1/0.1〜2/0.05〜2、好ましくは1/0.2〜1.5/0.1〜1.5、特に好ましくは1/0.5〜1/0.15〜1である。
窒素でBET法に従って測定される、有利には25m2/g〜300m2/g、好ましくは50〜200m2/g、特に好ましくは75〜175m2/gを含む比表面積を有する触媒が特に有利である。
【0037】
触媒は固定床でまたは流動床で使用されてもよい。この第2選択肢が好ましい。オキシ塩素化プロセスは、この反応向けに通常推奨される範囲の条件下に操作される。温度は有利には150〜300℃、好ましくは200〜275℃、最も好ましくは215〜255℃である。圧力は有利には大気圧より大きい。2〜10バール絶対の値が良好な結果を与えた。4〜7バール絶対の範囲が好ましい。この圧力は、反応器で最適滞留時間を達成するために、および様々なスピードの操作について一定速度の通過を保つために有効に調節されてもよい。通常の滞留時間は1〜60秒、好ましくは10〜40秒の範囲である。
このオキシ塩素化のための酸素源は、空気、純酸素またはそれらの混合物、好ましくは純酸素であってもよい。未転化反応体の容易なリサイクリングを可能にする後者の解決策が好ましい。
【0038】
反応体は、任意の公知デバイスによって床へ導入されてもよい。安全上の理由から酸素を他の反応体とは別々に導入することが一般に有利である。また、これらの安全上の理由により、反応器を出るまたはそれにリサイクルされるガス混合物を、該当する圧力および温度で引火性の限度外に保つ必要がある。いわゆる濃混合気、言い換えれば、燃料と比較して点火するのには少なすぎる酸素を含有する混合物を維持することが好ましい。この関連で、水素の豊富な存在(2vol%より多い、好ましくは5vol%より多い)は、この化合物の幅広い引火性範囲を考えると不利となるであろう。
用いられる塩化水素/酸素比は有利には3〜6モル/モルである。エチレン/塩化水素比は有利には0.4〜0.6モル/モルである。
【0039】
得られた塩素化生成物は主にDCE、およびまた1,1,2−トリクロロエタンなどの少量の副生物を含有する。
場合によっては、オキシ塩素化反応器に入る前に、DCEが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れを、塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが予め抽出されなかった場合には場合により抽出される吸収/脱着工程e’)にかけることが有利であるかもしれない。
【0040】
表現「塩素化反応器で形成されたDCEが予め抽出されなかった場合には場合により抽出される工程e’)」は、塩素化反応器で形成されたDCEが、工程e’)が行われる場合およびそれが予め抽出されなかった場合にはこの工程中に抽出されてもよいことを意味すると理解される。好ましくは、塩素化反応器で形成されたDCEは、工程e’)が行われる場合およびそれが予め抽出されなかった場合にはこの工程中に抽出される。
工程e’)は、本発明による方法の第1変形の場合に有利に行われ、それによればODHは650℃より高い800℃以下の温度で行われ、そして塩素化反応器に由来する生成物の流れ中の水素含有率は高過ぎる。
【0041】
こうして、1,2−ジクロロエタンが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れ(本明細書では以下塩素化流れとして知られる)は有利には、吸収工程におよび脱着工程にかけられ、そこで前記流れはDCEを含有する洗浄剤と好ましくは接触させられる。
表現「DCEを含有する洗浄剤」またはより簡単に「洗浄剤」は、DCEが液体状態で存在する組成物を意味すると理解される。
従って、本発明に従って使用することができる洗浄剤は有利には、液体状態でのDCEを含有する。前記洗浄剤中の、他の化合物の存在は、本発明の範囲から決して除外されない。しかしながら、洗浄剤は少なくとも50vol%、より特に少なくとも80vol%、最も特に好ましくは少なくとも95vol%のDCEを含有することが好ましい。
【0042】
吸収工程のために使用される洗浄剤は、任意の起源の新しい洗浄剤、例えば塩素化装置を出る粗DCE、オキシ塩素化装置を出る粗DCEまたは精製されなかったこれら2つの混合物からなってもよい。それはまた、予め精製された前記DCEから、場合により新しい洗浄剤を添加した、下に説明されるような、エタンより重質な化合物の、DCE中の濃度を下げることを可能にする任意の処理後の、塩素化反応器で形成された、そして脱着工程で抽出されるDCEを場合により含有する下に説明される脱着工程中に回収された洗浄剤の全てかもしくは一部からなってもよい。
好ましくは、吸収工程のために使用される洗浄剤は、場合により新しい洗浄剤を添加した、上述の任意の処理後の、塩素化反応器で形成された、そして脱着工程で抽出されるDCEを場合により含有する脱着工程中に回収された洗浄剤の全てかもしくは一部からなる。塩素化反応で形成されたDCEが塩素化出口で塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離される場合、特に好ましい方法では、吸収工程のために使用される洗浄剤は、新しい洗浄剤(吸収および脱着工程中の洗浄剤の損失を補填するための)を添加した、前述の任意の処理後の、脱着工程中に回収された洗浄剤の全てかもしくは一部からなる。
【0043】
エタンより重質な化合物の、好ましくは少なくとも3個の炭素原子を含む化合物の洗浄剤中の濃度を下げることを可能にする上述の任意の処理は、エタンより重質で、そして洗浄剤より軽質な化合物を脱着する工程かまたは洗浄剤を蒸留する工程であってもよい。好ましくは、それは、エタンより重質で、そして洗浄剤より軽質な化合物を脱着する工程からなる。好ましくは、洗浄剤のこの処理が行われる。
本質的な利点は、DCEがオキシ塩素化または塩素化中に主に形成される化合物であるので、このDCEの存在が全く問題にならないという事実にある。
洗浄剤および塩素化流れのそれぞれのスループット間の比は決定的に重要であるわけではなく、大幅に変わることができる。それは実際には、洗浄剤の再生コストによって制限されるにすぎない。一般に、洗浄剤のスループットは、塩素化流れの1トン当たり少なくとも1、好ましくは少なくとも5、特に好ましくは少なくとも10トンである。一般に、洗浄剤のスループットは、塩素化流れから抽出されるべきエチレンおよびエタン混合物の1トン当たり100トン以下、好ましくは50トン以下、特に好ましくは25トン以下である。
【0044】
吸収工程は有利には、例えば、クライミングフィルムもしくは流下薄膜吸収器などの吸収器またはプレート塔、ランダム充填材の塔、構造化充填材の塔、前述のインターナルおよびスプレー塔の1つ以上を組み合わせた塔から選択された吸収塔を用いて実施される。吸収工程は好ましくは吸収塔を用いて、特に好ましくはプレート吸収塔を用いて実施される。
吸収塔は有利には、塔の内部または外部にある、例えば、少なくとも1つの凝縮器または冷却装置などの関連付属品を備えている。
上述の吸収工程は有利には、少なくとも15、好ましくは少なくとも20、特に好ましくは少なくとも25バール絶対の圧力で実施される。吸収工程は有利には、40バール絶対以下、好ましくは35バール絶対以下、特に好ましくは30バール絶対以下の圧力で実施される。
【0045】
吸収工程が実施される温度は有利には、吸収器または吸収塔の頂部で少なくとも−10、好ましくは少なくとも0、特に好ましくは少なくとも10℃である。それは有利には、吸収器または吸収塔の頂部で60℃以下、好ましくは50以下℃、特に好ましくは40℃以下である。
吸収器または吸収塔の底部での温度は、少なくとも0、好ましくは少なくとも10、特に好ましくは少なくとも20℃である。それは有利には、70℃以下、好ましくは60℃以下、特に好ましくは50℃以下である。
【0046】
エチレンより軽質な化合物から精製された塩素化流れである、吸収工程から生じた流れは、有利には脱着工程にかけられる。
塩素化反応器で形成された、その後抽出されるDCEを場合により含有する、脱着工程後に回収された洗浄剤は取り出され、このDCEがオキシ塩素化反応器で形成されたDCEと一緒になるオキシ塩素化部に完全にもしくは部分的に搬送されても、または場合により上述の処理後に、場合により新しい洗浄剤を添加して、吸収工程に完全にもしくは部分的に搬送されてもよい。好ましくは、脱着工程後に回収された洗浄剤は、上述の任意の処理後に、場合により新しい洗浄剤を添加して、吸収工程に、またはオキシ塩素化部に再搬送される。塩素化反応器で形成されたDCEが塩素化出口で塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離される場合、特に好ましい方法では、脱着工程後に回収された洗浄剤は、上述の任意の処理後に、新しい洗浄剤を添加して、吸収工程に完全にまたは部分的に再搬送される。
【0047】
脱着工程は有利には、例えば、クライミングフィルムもしくは流下薄膜脱着器などの脱着器、リボイラーまたはプレート塔、ランダム充填材の塔、構造化充填材の塔、前述のインターナルおよびスプレー塔の1つ以上を組み合わせた塔から選択された脱着塔を用いて実施される。脱着工程は好ましくは脱着塔を用いて、特に好ましくはプレート脱着塔を用いて実施される。
脱着塔は有利には、塔の内部または外部にある、例えば、少なくとも1つの凝縮器または冷却装置および少なくとも1つのリボイラーなどの関連付属品を備えている。
脱着圧力は有利には、脱着ガス中の少なくとも3個の炭素原子を有する化合物の含有率が100容量ppm未満、好ましくは50容量ppm以下、特に好ましくは20容量ppmm以下であるように選択される。
【0048】
上述の脱着工程は有利には、少なくとも1、好ましくは少なくとも2、特に好ましくは少なくとも3バール絶対の圧力で実施される。脱着工程は有利には、20バール絶対以下、好ましくは15バール絶対以下、特に好ましくは10バール絶対以下の圧力で実施される。
脱着工程が実施される温度は有利には、脱着器または脱着塔の頂部で少なくとも−10、好ましくは少なくとも0、特に好ましくは少なくとも10℃である。それは有利には、脱着器または脱着塔の頂部で60℃以下、好ましくは50℃以下、特に好ましくは45℃以下である。
脱着器または脱着塔の底部での温度は、少なくとも60、好ましくは少なくとも80、特に好ましくは少なくとも100℃である。それは有利には、200℃以下、好ましくは160℃以下、特に好ましくは150℃以下である。
吸収工程が吸収塔で、そして脱着工程が脱着塔で実施される場合が最も特に好ましい。
吸収工程の後に回収される水素は有利には、燃料としてまたは、場合により精製工程後に反応体として展開される。こうして、水素はDCE熱分解工程でのまたはODH工程a)での燃料として展開されてもよい。それはまた例えば水素化反応のための反応体として展開されてもよい。
【0049】
本発明による方法の工程f)によれば、オキシ塩素化反応器で形成されたDCEは、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、塩素化反応器で形成されたDCEに場合により加えられる。
オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れからの得られたDCEの分離は、公知方法に従って実施される。それは好ましくは先ず凝縮によって実施される。オキシ塩素化反応器の熱は蒸気状態で一般に回収され、それは分離のために、または任意の他の使用のために使用されてもよい。
【0050】
オキシ塩素化反応器から出た後、この反応器に由来する生成物の流れはまた有利には、未転化HClを回収するために洗浄される。この洗浄操作は有利にはアルカリ性洗浄工程である。それに好ましくは気/液分離工程が続き、それは液体形態で形成されたDCEを回収し、そして最終的にDCEを乾燥させることを可能にする。ODHに場合によりリサイクルされるガスは冷却によって乾燥させられる。
表現「塩素化反応器で形成されたDCEに場合により加えられる」は、塩素化反応器で形成されたDCEがこの反応器に由来する生成物の流れから単離される場合、塩素化反応器を出るとすぐにか、または工程e’)の後に、オキシ塩素化反応器で形成されたDCEがそれに加えられても加えられなくてもよいことを意味すると理解される。好ましくは、DCEはそれに加えられる。一方、この第1DCEが単離されない場合、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離されたDCEは有利には、回収されたDCEの唯一の流れである。
【0051】
本発明による方法の任意の工程g)によれば、DCEが抽出された、工程b)〜f)の1つに予め導入されたエタンのさらなる流れを場合により含有する、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れは、場合によりガスをパージされた後におよび/またはその中に含有される塩素化生成物を排除するための任意の処理後に工程a)に場合によりリサイクルされる。
DCEが抽出された、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れは、任意の工程g)の間、工程a)にリサイクルされてもされなくてもよい。好ましくは、DCEが抽出された、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れは、工程g)の間、工程a)にリサイクルされる。
従って、工程b)〜f)の1つに予め導入されたエタンのさらなる流れは、工程g)でリサイクルされるこの流れに見られてもよい。
こうして、例えば、30または40vol%のエタンを有する、希薄なエタン流れのみが利用可能である特殊な場合には、この流れを直接に工程a)へではなく、軽質ガスがそれから抽出され、そして残りの流れが工程g)の間ODHにリサイクルされるように、例えば、吸収/脱着工程e’)へ導入することが有利である。
【0052】
同様に、利用可能なエタンの流れが硫黄化合物に富む特殊な場合には、この流れを直接に工程a)へではなく、これらの好ましくない化合物をそれから除去するために、例えば、工程b)へ導入することが有利であるかもしれず、工程c)〜f)を受けた後に、エタンのこの流れは次に工程g)の間ODHにリサイクルされる。
DCEが抽出された、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れは有利には、前記流れの総容量に対して5vol%以上、好ましくは15vol%以上、特に好ましくは30vol%以上、より特に好ましくは40vol%以上のエタン含有率で特徴付けられる。
DCEが抽出された、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れは有利には、前記流れの総容量に対して95vol%以下、好ましくは90vol%以下、特に好ましくは85vol%以下、より特に好ましくは80vol%以下のエタン含有率で特徴付けられる。
DCEが抽出された、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れは有利には、前記流れの総容量に対して10vol%以下、好ましくは5vol%以下、特に好ましくは2vol%以下のエチレン含有率で特徴付けられる。
【0053】
DCEが抽出された、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れは有利には、前記流れの総容量に対して10vol%以下、好ましくは5vol%以下、特に好ましくは2vol%以下の水素含有率で特徴付けられる。
DCEが抽出された、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れは有利には、前記流れの総容量に対して70vol%以下、好ましくは60vol%以下、特に好ましくは55vol%以下の一酸化炭素、二酸化炭素および窒素の含有率で特徴付けられる。
DCEが抽出された、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れは有利には、前記流れの総容量に対して10vol%以下、好ましくは5vol%以下、特に好ましくは3vol%以下の酸素含有率で特徴付けられる。
本発明による好ましい方法の工程g)によれば、DCEが抽出された、工程b)〜f)の1つへ予め導入されたエタンのさらなる流れを場合により含有する、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れは、工程a)にリサイクルされる。
【0054】
工程a)へのリサイクリングはこの場合には、ガスの任意のパージ後におよび/または生成物の考慮される流れ中に含有される塩素化生成物(特に微量のDCEおよび/または塩化エチレンなどの他の塩素化生成物)を排除するための任意の追加処理後に行われる。追加処理は、それが行われる場合、活性炭または吸着剤を使用することによって行われてもよい。
ガスのパージか追加処理かのいずれかまたはそれらの両方が行われてもよい。より好ましくは、生成物の流れは、ガスをパージすることなく、そして中に含有される塩素化生成物を排除するためのいかなる追加処理もなしに工程a)にリサイクルされる。
実際、ODH工程a)への生成物のこの流れのリサイクリングは、ODH反応に対する塩素化生成物の有益な触媒効果から恩恵を受けるために興味深いかもしれない。
【0055】
本発明の範囲内で、
a)エタンの流れが650℃より上の温度で接触オキシ脱水素にかけられ、エチレン、未転化エタン、水および二次成分を含有するガス混合物を生成する工程と、
b)前記ガス混合物が場合により洗浄され、そして乾燥され、こうして乾燥ガス混合物を生成する工程と、
c)任意の追加精製工程後に、乾燥ガス混合物が次に、エチレンの少なくとも10%が1,2−ジクロロエタンに転化されるように塩素の流れを供給される塩素化反応器に搬送される工程と、
d)塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離される工程と、
e)1,2−ジクロロエタンが抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れが、1,2−ジクロロエタンを吸収/脱着工程e’)にかけた後に、エチレンの残りの大部分が1,2−ジクロロエタンに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される工程と、
f)オキシ塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンがオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、そして塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンに場合により加えられる工程と、
g)1,2−ジクロロエタンが抽出された、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れが工程a)にリサイクルされる工程と
による、エタンの流れから出発するDCEの製造方法が特に好ましい。
【0056】
本発明の範囲内で、
a)エタンの流れが650℃より上の温度で接触オキシ脱水素にかけられ、エチレン、未転化エタン、水および二次成分を含有するガス混合物を生成する工程と、
b)前記ガス混合物が場合により洗浄され、そして乾燥され、こうして乾燥ガス混合物を生成する工程と、
c)任意の追加精製工程後に、乾燥ガス混合物が次に、エチレンの少なくとも10%が1,2−ジクロロエタンに転化されるように塩素の流れを供給される塩素化反応器に搬送される工程と、
d)塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離される工程と、
e)1,2−ジクロロエタンが抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れが、エチレンの残りの大部分が1,2−ジクロロエタンに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される工程と、
f)オキシ塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンがオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、そして塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンに場合により加えられる工程と、
g)1,2−ジクロロエタンが抽出された、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れが工程a)にリサイクルされる工程と
による、エタンの流れから出発するDCEの製造方法もまた特に好ましい。
【0057】
エチレンの塩素化によっておよびオキシ塩素化によって得られるDCEは、次にVCへ転化されてもよい。
従って、本発明はまたVCの製造方法に関する。この趣旨で、本発明は、
a)エタンの流れが接触オキシ脱水素にかけられ、エチレン、未転化エタン、水および二次成分を含有するガス混合物を生成する工程と、
b)前記ガス混合物が場合により洗浄され、そして乾燥され、こうして乾燥ガス混合物を生成する工程と、
c)任意の追加精製工程後に、乾燥ガス混合物が次に、エチレンの少なくとも10%が1,2−ジクロロエタンに転化されるように塩素の流れを供給される塩素化反応器に搬送される工程と、
d)塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが塩素化反応器に由来する生成物の流れから場合により単離される工程と、
e)1,2−ジクロロエタンが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れが、塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが予め抽出されなかった場合には場合により抽出される吸収/脱着工程e’)に場合により1,2−ジクロロエタンをかけた後に、エチレンの残りの大部分が1,2−ジクロロエタンに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される工程と、
f)オキシ塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンがオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、そして塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンに場合により加えられる工程と、
g)1,2−ジクロロエタンが抽出された、工程b)〜f)の1つで予め導入されたエタンのさらなる流れを場合により含有する、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れが、場合によりガスをパージされた後におよび/またはその中に含有される塩素化生成物を排除するための任意の追加処理後に工程a)に場合によりリサイクルされる工程と、
h)得られた1,2−ジクロロエタンが熱分解にかけられ、こうしてVCを生成する工程と
を特徴とするVCの製造方法に関する。
【0058】
本発明によるDCEの製造方法について明示される特定の条件および好ましさは、本発明によるVCの製造方法に適用される。
熱分解が実施されてもよい条件は当業者に公知である。この熱分解は有利には、管状炉中気相での反応によって達成される。通常の熱分解温度は400〜600℃に広がり、480℃〜540℃の範囲が好ましい。滞留時間は有利には1〜60秒であり、5〜25秒の範囲が好ましい。DCEの転化率は有利には、副生物の形成および炉パイプの汚れを制限するために45〜75%に制限される。以下の工程は、任意の公知デバイスを使用して、精製VCとオキシ塩素化で好ましくは品質向上されるべき塩化水素とを集めることを可能にする。精製後に、未転化DCEは有利には熱分解炉に再搬送される。
【0059】
加えて、本発明はまたPVCの製造方法に関する。この趣旨で、本発明は、
a)エタンの流れが接触オキシ脱水素にかけられ、エチレン、未転化エタン、水および二次成分を含有するガス混合物を生成する工程と、
b)前記ガス混合物が場合により洗浄され、そして乾燥され、こうして乾燥ガス混合物を生成する工程と、
c)任意の追加精製工程後に、乾燥ガス混合物が次に、エチレンの少なくとも10%が1,2−ジクロロエタンに転化されるように塩素の流れを供給される塩素化反応器に搬送される工程と、
d)塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが塩素化反応器に由来する生成物の流れから場合により単離される工程と、
e)1,2−ジクロロエタンが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れが、塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが予め抽出されなかった場合には場合により抽出される吸収/脱着工程e’)に場合により1,2−ジクロロエタンをかけた後に、エチレンの残りの大部分が1,2−ジクロロエタンに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される工程と、
f)オキシ塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンがオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、そして塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンに場合により加えられる工程と、
g)1,2−ジクロロエタンが抽出された、工程b)〜f)の1つで予め導入されたエタンのさらなる流れを場合により含有する、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れが、場合によりガスをパージされた後におよび/またはその中に含有される塩素化生成物を排除するための任意の追加処理後に工程a)に場合によりリサイクルされる工程と、
h)得られた1,2−ジクロロエタンが熱分解にかけられ、こうしてVCを生成する工程と、
i)PVCを生成するためにVCが重合させられる工程と
を特徴とするPVCの製造方法に関する。
【0060】
本発明によるDCEの製造方法およびVCの製造方法について明示される特定の条件および好ましさは、本発明によるPVCの製造方法に適用される。
【0061】
PVCの製造方法は、バルク、溶液または水性分散重合法であってもよく、好ましくはそれは水性分散重合法である。
表現「水性分散重合」は、水性懸濁液でのラジカル重合ならびにまた水性エマルジョンでのラジカル重合および水性マイクロサスペンジョンでの重合を意味すると理解される。
表現「水性懸濁液でのラジカル重合」は、分散剤および油溶性ラジカル開始剤の存在下に水性媒体中で行われる任意のラジカル重合法を意味すると理解される。
表現「水性エマルジョンでのラジカル重合」は、乳化剤および水溶性ラジカル開始剤の存在下に水性媒体中で行われる任意のラジカル重合法を意味すると理解される。
均質化水性分散系での重合とも呼ばれる、表現「水性マイクロサスペンジョンでの重合」は、油溶性開始剤が使用され、モノマー小滴のエマルジョンが強力な機械撹拌および乳化剤の存在によって調製される任意のラジカル重合法を意味すると理解される。
【0062】
同様に簡略化された熱分解法との関連で、ODH工程を利用する本発明による方法は、吸熱工程(エチレンへ転化されるエタン)を発熱の水生成工程と組み合わせるという、中程度の温度で行われるという、および高温で反応の熱を提供しなければならないことを回避するという利点を有する。
本発明による方法はまた、DCEが抽出された、オキシ塩素化に由来する生成物の流れをODH工程にリサイクルすることを可能にし、こうしてエチレンへのエタンの転化率の増加を確実にするという利点を有する。さらに、熱分解と比較してODHの中程度の温度を考えると、たとえこのリサイクルされる流れがDCEなどの微量の塩素化有機生成物を含有しても、それらの存在は、800℃より上の熱分解の場合に起こるような材料挙動および腐食問題を引き起こさない。塩素化生成物の存在はさらに、それがODH反応の効率の増大を可能にする限りにおいて有利であるかもしれない。
【0063】
本発明による方法は、少なくとも3個の炭素原子を好ましくない量で含む化合物であって、一般にDCEの熱分解中にある種の阻害の原因である化合物を発生させないという利点を有する。この阻害は、1,2−ジクロロプロパンおよびモノクロロプロペンなどの誘導体の形成のためである。安定なアリル基を形成するそれらの能力が、ラジカルルートで実施されるDCEの熱分解に対するそれらの強力な阻害効果を説明する。3個の炭素原子を含有するこれらの副生物およびより重質な副生物の形成はさらに、オキシ塩素化でおよび塩素化で反応体の不必要な消費を構成するか、またはそれらを破壊するためのコストを発生させるであろう。さらに、これらの重質化合物は、塔およびエバポレーターの汚染にも寄与する。
【0064】
ODH反応は熱分解より低い温度で行われるので、本発明による方法は有利には、加えて、オリゴマー化による重質化合物の形成がはるかにより低いということを特徴とする。
ODH工程を利用する本発明による方法はまた、エチレン蒸留を必要とするものなどのコストの高い分離を用いることなくODHを通すことによって転化率を制限するという利点を有する。
本発明による方法の別の利点は、それが炭化水素源−すなわちエタン−から、この製造されたモノマーから出発して得られるポリマーまでに及ぶ完全に統合されたプロセスを、同じ工業用地で所有することを可能にすることである。
ODHが650℃以下の温度で行われる、本発明による方法の第2変形は、多くの欠点の原因である水素を非常に少量発生させるという利点を有する。
【0065】
ここで、本発明によるDCEの製造方法の第1変形は、本明細書に添付の図面に関連して例示される。この図面は、本発明によるDCEの製造方法の実施形態を概略的に表す、添付図1からなる。
エタンの流れ1および酸素源2は反応器3へ導入されてそこで650℃より上の温度でODHにかけられる。エチレン、未転化エタン、水およびODH工程中に生成された二次成分を含有するガス混合物4は、それから水(6)だけでなく副生物を除去するために5で洗浄および乾燥にかけられる。任意の追加精製工程後に、形成された乾燥ガス混合物は次に、エチレンの少なくとも10%がDCEに転化されるように塩素の流れ8を供給される塩素化反応器7に搬送される。塩素化反応器で形成されたDCE11は、塩素化反応器に由来する生成物の流れ9から10で分離される。DCEが抽出された塩素化反応器に由来する生成物の流れ12は次に、塩化水素15および酸素16を供給される、エチレンの残りの大部分がDCEに転化されるオキシ塩素化反応器14に搬送される前に、熱的に、化学的にまたは水圧的に価格設定されてもよい、エチレンより軽質な化合物、特に水素(13bis)を排除するために吸収/脱着工程13にかけられる。液化した副生物、特に水を伴うオキシ塩素化反応器で形成された液体DCE19は、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れ17から凝縮、引き続く洗浄および気/液分離によって18で単離される。DCE19が抽出されたオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れ20は最終的にODH工程にリサイクルされる。
【0066】
ここで、本発明によるDCEの製造方法の好ましい第2変形は、本明細書に添付の図面に関連して例示される。この図面は、本発明によるDCEの製造方法の実施形態を概略的に表す添付図2からなる。
エタンの流れ1および酸素源2は反応器3へ導入されてそこで650℃以下の温度でODHにかけられる。エチレン、未転化エタン、水およびODH工程中に生成された二次成分を含有するガス混合物4は、それから水(6)だけでなく副生物を除去するために5で洗浄および乾燥にかけられる。任意の追加精製工程後に、形成された乾燥ガス混合物は次に、エチレンの少なくとも10%がDCEに転化されるように塩素の流れ8を供給される塩素化反応器7に搬送される。塩素化反応器で形成されたDCE11は、塩素化反応器に由来する生成物の流れ9から10で分離される。DCEが抽出された塩素化反応器に由来する生成物の流れ12は次に、塩化水素14および酸素15を供給される、オキシ塩素化反応器13に搬送され、そこでエチレンの残りの大部分がDCEに転化される。液化した副生物、特に水を伴うオキシ塩素化反応器で形成された液体DCE18は、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れ16から凝縮、引き続く洗浄および気/液分離によって17で単離される。DCE18が抽出されたオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れ19は最終的にODH工程にリサイクルされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)エタンの流れが接触オキシ脱水素にかけられ、エチレン、未転化エタン、水および二次成分を含有するガス混合物を生成する工程と、
b)前記ガス混合物が場合により洗浄され、そして乾燥され、こうして乾燥ガス混合物を生成する工程と、
c)任意の追加精製工程後に、乾燥ガス混合物が次に、エチレンの少なくとも10%が1,2−ジクロロエタンに転化されるように塩素の流れを供給される塩素化反応器に搬送される工程と、
d)塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが塩素化反応器に由来する生成物の流れから場合により単離される工程と、
e)1,2−ジクロロエタンが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れが、塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが予め抽出されなかった場合には場合により抽出される吸収/脱着工程e’)に場合により1,2−ジクロロエタンをかけた後に、エチレンの残りの大部分が1,2−ジクロロエタンに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される工程と、
f)オキシ塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンがオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、そして塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンに場合により加えられる工程と、
g)1,2−ジクロロエタンが抽出された、工程b)〜f)の1つに予め導入されたエタンのさらなる流れを場合により含有する、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れが、場合によりガスをパージされた後におよび/またはそれに含有される塩素化生成物を排除するための任意の追加処理後に工程a)に場合によりリサイクルされる工程と
によるエタンの流れから出発する1,2−ジクロロエタンの製造方法。
【請求項2】
エタンの流れが少なくとも80vol%のエタンを含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エタンの流れが少なくとも98vol%のエタンを含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程a)の接触オキシ脱水素が650℃以下の温度で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程b)中に、前記ガス混合物が洗浄され、そして乾燥され、こうして乾燥ガス混合物を生成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程c)中に、塩素の流れが、エチレンの90%以下が1,2−ジクロロエタンに転化されるようなものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程c)中に、塩素の流れが、エチレンの少なくとも40%が1,2−ジクロロエタンに転化されるようなものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
a)エタンの流れが650℃以下の温度で接触オキシ脱水素にかけられ、エチレン、未転化エタン、水および二次成分を含有するガス混合物を生成する工程と、
b)前記ガス混合物が場合により洗浄され、そして乾燥され、こうして乾燥ガス混合物を生成する工程と、
c)任意の追加精製工程後に、乾燥ガス混合物が次に、エチレンの少なくとも10%が1,2−ジクロロエタンに転化されるように塩素の流れを供給される塩素化反応器に搬送される工程と、
d)塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離される工程と、
e)1,2−ジクロロエタンが抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れが、エチレンの残りの大部分が1,2−ジクロロエタンに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される工程と、
f)オキシ塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンがオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、そして塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンに場合により加えられる工程と、
g)1,2−ジクロロエタンが抽出された、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れが工程a)にリサイクルされる工程と
による、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
a)エタンの流れが接触オキシ脱水素にかけられ、エチレン、未転化エタン、水および二次成分を含有するガス混合物を生成する工程と、
b)前記ガス混合物が場合により洗浄され、そして乾燥され、こうして乾燥ガス混合物を生成する工程と、
c)任意の追加精製工程後に、乾燥ガス混合物が次に、エチレンの少なくとも10%が1,2−ジクロロエタンに転化されるように塩素の流れを供給される塩素化反応器に搬送される工程と、
d)塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離される工程と、
e)1,2−ジクロロエタンが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れが、塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが予め抽出されなかった場合には場合により抽出される吸収/脱着工程e’)に場合により1,2−ジクロロエタンをかけた後に、エチレンの残りの大部分が1,2−ジクロロエタンに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される工程と、
f)オキシ塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンがオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、そして塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンに場合により加えられる工程と、
g)1,2−ジクロロエタンが抽出された、工程b)〜f)の1つに予め導入されたエタンのさらなる流れを場合により含有する、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れが、場合によりガスをパージされた後におよび/またはそれに含有される塩素化生成物を排除するための任意の追加処理後に工程a)に場合によりリサイクルされる工程と、
h)得られた1,2−ジクロロエタンが熱分解にかけられ、こうして塩化ビニルを生成する工程と
による塩化ビニルの製造方法。
【請求項10】
a)エタンの流れが接触オキシ脱水素にかけられ、エチレン、未転化エタン、水および二次成分を含有するガス混合物を生成する工程と、
b)前記ガス混合物が場合により洗浄され、そして乾燥され、こうして乾燥ガス混合物を生成する工程と、
c)任意の追加精製工程後に、乾燥ガス混合物が次に、エチレンの少なくとも10%が1,2−ジクロロエタンに転化されるように塩素の流れを供給される塩素化反応器に搬送される工程と、
d)塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが塩素化反応器に由来する生成物の流れから場合により単離される工程と、
e)1,2−ジクロロエタンが場合により抽出された、塩素化反応器に由来する生成物の流れが、塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンが予め抽出されなかった場合には場合により抽出される吸収/脱着工程e’)に場合により1,2−ジクロロエタンをかけた後に、エチレンの残りの大部分が1,2−ジクロロエタンに転化されるオキシ塩素化反応器に搬送される工程と、
f)オキシ塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンがオキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れから単離され、そして塩素化反応器で形成された1,2−ジクロロエタンに場合により加えられる工程と、
g)1,2−ジクロロエタンが抽出された、工程b)〜f)の1つに予め導入されたエタンのさらなる流れを場合により含有する、オキシ塩素化反応器に由来する生成物の流れが、場合によりガスをパージされた後におよび/またはそれに含有される塩素化生成物を排除するための任意の追加処理後に工程a)に場合によりリサイクルされる工程と、
h)得られた1,2−ジクロロエタンが熱分解にかけられ、こうしてVCを生成する工程と、
i)塩化ビニルが重合させられてポリ塩化ビニルを生成する工程と
によるポリ塩化ビニルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−541426(P2009−541426A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517141(P2009−517141)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056268
【国際公開番号】WO2008/000705
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】