説明

1,2−プロパンジオールアセタール誘導体の製造方法

【課題】少ない工程数で所望の1,2−プロパンジオールアセタール誘導体を製造できる方法を提供する。
【解決手段】(1)3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール化合物を酸触媒存在下にアセタール化し、アジド化し、接触水素化することにより、式(1)


[R、Rは、独立して、水素原子、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、若しくはフェニル基であるか、又はR、Rは一緒になって炭素数4〜7のメチレン基。Rは水素原子又はメチル基。]の化合物を製造する方法。
(2) 3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを酸触媒下にアセタール化し、カルボン酸金属塩と反応させて塩基存在下に脱アシル化するか、又はアルコキシドと反応させて接触水素化することにより、式(6)


[R、Rは上記と同じ]
の化合物を得る方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬などの重要な合成中間体となりうる3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物、特にその光学活性体の製造方法に関する。また、本発明は、3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物の一つである3−アミノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールアセトナイドに関する。
【0002】
また本発明は、医薬、農薬などの合成中間体として有用な1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体、特にその光学活性体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、下記一般式(1)
【0004】
【化1】

【0005】
[式中、R、Rは、同一または異なって、水素原子、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、若しくはフェニル基を示すか、又はR、Rはその末端が結合することにより形成された炭素数4〜7のメチレン基を示し、Rは水素原子、またはメチル基を示す。]
で表される光学活性3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタールの製造法としては、下記式
【0006】
【化2】

【0007】
で表される光学活性3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセトナイドの製造法に集約され、以下の4例が報告されている。
(a) 3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンをアンモニアで開環後、得られた3,4−ジヒドロキシ酪酸アミドのジオールをアセトナイド化し、反応生成物を、塩基の存在下に次亜ハロゲン酸塩と反応させてホフマン転位により3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセトナイドを得る方法(特許文献1)。
(b) グリセロールアセトナイドをメシル化、アジド化、及び加水素分解することにより3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセトナイドを得る方法(非特許文献1)。
(c) L−アスコルビン酸の酸化開裂により得られたグリセルアルデヒドを還元、トシル化、アジド化、及び加水素分解することにより得る3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセトナイドを得る方法(非特許文献2)。
(d) D−マンニトールの酸化開裂により得られたグリセルアルデヒドをオキシム化し、続いてヒドリド還元することにより3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセトナイドを得る方法(非特許文献2)。
などが知られている。
【0008】
しかし、これらの製造法では、工業的に次のような問題点がある。即ち、(a)の方法では、出発原料の3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンを得るために、マルトースの1水和物を水酸化ナトリウム水溶液中、過酸化水素で処理して得られた(S)−3,4−ジヒドロキシブタン酸を加熱下、酸処理するか、また別法としてリンゴ酸をエステル化後、リチウムクロリド存在下、ナトリウムボロヒドリドでモノエステルとし、さらに酸処理しなければならない。このように、危険な過酸化物を使用したり、工程が長いという問題がある。
【0009】
また(b)の方法では、グリセロールアセトナイドを得るためにグリセリンとアセトナイド化剤とを反応させる必要があり、この場合、グリセリンの1位と2位との水酸基でアセタール化した生成物と、1位と3位との水酸基でアセタール化した生成物との混合物が得られるため、両者を分離するのが非常に困難である。また本法ではラセミ体だけしか合成できない。
【0010】
また(c)(d)の方法では、L−アスコルビン酸やD−マンニトールを四酢酸鉛、又は過ヨウ素酸ナトリウムを化学量論量用いて酸化開裂する必要があり、安全性とコストに問題がある。
【0011】
さらに、(a)(c)(d)の方法では、天然資源から得られる炭水化物原料を用いることができるものの、所望の光学活性体が天然物から得られる光学活性体とは逆の立体異性体である場合は、原料入手が困難である。
【0012】
これらのことから、より大きな生産スケールへの変換を困難にさせており、改良が望まれていた。
【0013】
また、光学活性1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体は医薬、農薬等の合成中間体として用いられている。殊に4位の炭素は4級炭素であり、近年その構造に由来する特異な生理活性から医薬品としての有用性が指摘されており、注目を集めている。その製法については、酵素を利用して光学分割する方法、不斉触媒反応を利用する方法、不斉補助基を用いる方法、市販の光学活性2−メチルグリシドールから得る方法が知られている。
【0014】
酵素を利用して光学分割する方法としては以下の方法が知られている。
(イ) その1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノールのラセミ体のエステルを酵素存在下で不斉に加水分解する方法(特許文献2,非特許文献3)。(ロ) 2−メチレン−1,3−プロパンジオールのジアセテートをエポキシ化した後、酵素存在下で不斉に加水分解し、遊離した水酸基をシリル化し、エポキシ基の水素添加反応を行い、アセタール化し、さらに脱シリル化することにより得る方法(非特許文献4)。
(ハ) ラセミ体の2−メチルグリシジルベンジルエーテルを酵素の存在下で不斉水和反応させて光学活性ジオール誘導体を得、アセタール化した後、水素添加による脱ベンジル化反応で得る方法(非特許文献5)。
【0015】
不斉触媒反応を利用する方法としては以下の方法が知られている。
(ニ) 2−ベンジルオキシメチルアリルアルコールをSharpless触媒存在下で不斉エポキシ化反応させ、エポキシ基を還元し、アセタール化し、さらに水素添加により脱ベンジル化することにより得る方法(非特許文献6)。
(ホ) メタクリル酸アミドのSharpless不斉ジオール化反応の後、アミド基をエステル基に変換し、アセタール化し、エステル還元することにより得る方法(非特許文献7)。
【0016】
不斉補助基を用いる方法としては以下の方法が知られている。
(ヘ) その1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノールのラセミ体をカンファニルクロリドと反応させ、HPLCで分割分取し、加水分解により得る方法(非特許文献8)。
(ト) l−メントンと1,3−ジヒドロキシアセトンとを反応させ、得られたアセタールをメチルグリニヤール試薬と立体選択的に反応させ、水酸基をシリル化し、アセタール環を開烈し、遊離したジオールをアセトニド化し、カリウムt−ブトキシドと処理することでl−メントンユニットを除去する方法(非特許文献9)。
【0017】
市販の光学活性2−メチルグリシドールから得る方法としては、(チ)市販の(S)−2−メチルグリシドールをベンジルエーテルとし、水和反応でジオール化し、アセトニド化、水素添加による脱ベンジル化反応で得る方法が知られている(非特許文献10)。
【0018】
しかし、これらの合成法は工業的に次のような問題点がある。すなわち、
酵素を利用して光学分割する方法(イ)、(ロ)、(ハ)は、水媒体を必要とし、水溶性の1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノールを単離する事は一般に困難であり、また、最も効率良く反応させたとしても収率が最大50%である。
【0019】
不斉触媒を利用する方法(ニ)、(ホ)は、多段階を要するため総収率が低く、触媒が入手し難く、高価であるという問題がある。
【0020】
不斉補助基を用いる方法(ヘ)、(ト)は、多段階であり、工程が煩雑で、工業的に実用可能とは言い難い。
【0021】
市販の光学活性2−メチルグリシドールを使用する方法(チ)は、工程数が多く、やはり工業化の点を考慮すると実用的とは言い難い。
【特許文献1】特表2002−516893
【非特許文献1】J. Org. Chem., 59, 7503 (1994).
【非特許文献2】Tetrahedron Asymmetry, 6, 1181 (1995).
【特許文献2】特許第3012273号公報
【非特許文献3】J.Org.Chem.,58,3980(1993).
【非特許文献4】Tetrahedron Lett.,33,7015(1992).
【非特許文献5】Synlett,2001,111.
【非特許文献6】Tetrahedron,42,5985(1986).
【非特許文献7】Tetrahedron:Asymmetry,12,1383(2001.
【非特許文献8】J.Org.Chem.,48,3592(1983).
【非特許文献9】J.Org.Chem.,57,720(1992).
【非特許文献10】J.Am.Chem.Soc.,121,2071(1999).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、入手し易い出発原料を用いて、少ない工程数で所望の3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタールを製造することができる方法を提供することを第1の課題とする。
【0023】
また本発明は、入手し易い出発原料を用いて、少ない工程数で所望の1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体を製造することができる方法を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね、以下の知見を得た。
(i) 下記一般式(1)
【0025】
【化3】

【0026】
[式中、R、Rは、同一または異なって、水素原子、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、若しくはフェニル基を示すか、又はR、Rはその末端が結合することにより形成された炭素数4〜7のメチレン基を示し、Rは水素原子、またはメチル基を示す。]
で表される3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物を製造するに当たり、出発原料として、下記一般式(2)
【0027】
【化4】

【0028】
[式中、Xはハロゲン原子を示し、Rは水素原子またはメチル基を示す。]で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール化合物を使用し、この化合物を酸触媒存在下にアセタール化し、さらにアジド化し、さらに触媒存在下に接触水素添加反応を行うことにより、上記一般式(1)の化合物を製造することができる。
(ii) 出発原料として一般式(2)の化合物の光学活性体を用いれば、容易に一般式(1)の化合物の光学活性体が得られる。
(iii) 下記一般式(6)
【0029】
【化5】

【0030】
[式中、R、Rは、同一または異なって、水素原子、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、若しくはフェニル基を示すか、又はR、Rはその末端が結合することにより形成された炭素数4〜7のメチレン基を示す。]
で表される1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体を製造するに当たり、
下記一般式(7)
【0031】
【化6】

【0032】
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを出発原料として用い、酸触媒の存在下、一般式(7)の化合物をアセタール化剤と反応させることにより下記一般式(8)
【0033】
【化7】

【0034】
[式中、R、R、及びXは上記と同じである。]
で表される4−ハロゲノメチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体を得、
次いで上記式(8)の化合物と下記一般式(9)

ROH (9)

[式中、Rは、炭素数2〜5の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族アシル基、芳香環上に、炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群より選ばれた1〜5個の置換基を有していてよい芳香族アシル基、炭素数7〜12のアラルキル基、またはアリル基を示す。]
で表されるカルボン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩、又は上記一般式(9)で表されるアルコールのアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアルコキシドとを反応させることにより下記一般式(10)
【0035】
【化8】

【0036】
[式中、R、RおよびRは上記と同じである。]
で表される化合物を得、
次いで上記一般式(10)の化合物において、Rがアシル基の場合には、塩基の存在下、脱アシル化し、Rがアラルキル基またはアリル基の場合には、還元触媒の存在下、水素添加することにより、一般式(6)の化合物が得られる。
(ii) 出発原料として一般式(7)の化合物の光学活性体を用いれば、容易に一般式(6)の化合物の光学活性体が得られる。
【0037】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の製造方法などを提供する。
【0038】
項1. 下記一般式(1)
【0039】
【化9】

【0040】
[式中、R、Rは、同一または異なって、水素原子、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、若しくはフェニル基を示すか、又はR、Rはその末端が結合することにより形成された炭素数4〜7のメチレン基を示し、Rは水素原子、またはメチル基を示す。]
で表される3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物を製造する方法であって、
下記一般式(2)
【0041】
【化10】

【0042】
[式中、Xはハロゲン原子を示し、Rは水素原子、またはメチル基を示す。]
で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール化合物を、酸触媒存在下、アセタール化剤と反応させることにより、下記一般式(3)
【0043】
【化11】

【0044】
[式中、R、R、R、及びXは上記と同じである。]で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物を得る第1工程と、
上記一般式(3)の化合物をアジド化剤と反応させることにより、下記一般式(4)
【0045】
【化12】

【0046】
[式中、R、R、及びRは上記と同じである]
で表される3−アジド−1,2−プロパンジオールアセタール化合物を得る第2工程と、
上記一般式(4)の化合物を、還元触媒存在下で接触水素化することにより上記一般式(1)の化合物を得る第3工程と
を含む方法。
【0047】
項2. 一般式(2)におけるハロゲン原子が、塩素原子、又は臭素原子である項1に記載の方法。
【0048】
項3. アセタール化剤として、一般式(3)においてRとRとが共にメチル基、エチル基、又はフェニル基である化合物を与える化合物を使用する項1又は2に記載の方法。
【0049】
項4. アセタール化剤として、アセトン、2,2−ジメトキシプロパン、及び2−メトキシプロペンからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用する項3に記載の方法。
【0050】
項5. アジド化剤が、金属アジ化物、アジ化ケイ素化合物、及びアジ化ホスホリル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である項1〜4のいずれかに記載の方法。
【0051】
項6. アジド化剤がアジ化ナトリウム、トリメチルシリルアジド、及びアジ化ジフェニルホスホリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である項5に記載の方法。
【0052】
項7. 還元触媒が貴金属触媒である項1〜6のいずれかに記載の方法。
【0053】
項8. 貴金属触媒がパラジウム系触媒である項7に記載の方法。
【0054】
項9. 一般式(2)で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール化合物として光学活性体を用いることにより、光学活性3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物を得る項1〜8のいずれかに記載の方法。
【0055】
項10. 下記式(5)
【0056】
【化13】

【0057】
で表される3−アミノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールアセトナイド。
【0058】
項11.
下記一般式(6)
【0059】
【化14】

【0060】
[式中、R、Rは、同一または異なって、水素原子、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、若しくはフェニル基を示すか、又はR、Rはその末端が結合することにより形成された炭素数4〜7のメチレン基を示す。]
で表される1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体の製造方法であって、
下記一般式(7)
【0061】
【化15】

【0062】
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを、酸触媒の存在下、アセタール化剤と反応させることにより下記一般式(8)
【0063】
【化16】

【0064】
[式中、R、R、及びXは上記と同じである。]
で表される4−ハロゲノメチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体を得る第1工程と、
上記式(8)の化合物と、下記一般式(9)

ROH (9)

[式中、Rは、炭素数2〜5の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族アシル基、芳香環上に、炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群より選ばれた1〜5個の置換基を有していてよい芳香族アシル基、炭素数7〜12のアラルキル基、またはアリル基を示す。]
で表されるカルボン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩、又は上記一般式(9)で表されるアルコールのアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアルコキシドとを反応させることにより、下記一般式(10)
【0065】
【化17】

【0066】
[式中、R、RおよびRは上記と同じである。]
で表される化合物を得る第2工程と、
上記一般式(10)の化合物において、Rがアシル基の場合には、塩基の存在下、脱アシル化し、Rがアラルキル基またはアリル基の場合には、還元触媒の存在下、水素添加して、上記一般式(6)の化合物を得る第3工程と
を含む方法。
【0067】
項12. 一般式(7)におけるハロゲン原子が、塩素原子、又は臭素原子である項11に記載の方法。
【0068】
項13. アセタール化剤として、一般式(8)においてRとRとが共にメチル基、エチル基、又はフェニル基である化合物を与える化合物を使用する項11又は12に記載の方法。
【0069】
項14. アセタール化剤がアセトン、2,2−ジメトキシプロパン、及び2−メトキシプロペンからなる群より選ばれる少なくとも1種である項13に記載の方法。
【0070】
項15. 一般式(9)の化合物がカルボン酸であり、第3工程において、塩基としてアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる項11〜14のいずれかに記載の方法。
【0071】
項16. 一般式(9)の化合物が、酢酸、プロピオン酸、又は安息香酸である項11〜15のいずれかに記載の方法。
【0072】
項17. 一般式(9)の化合物がアルコールであり、第3工程において、還元触媒として、貴金属触媒を使用する項11〜14のいずれかに記載の方法。
【0073】
項18. 貴金属触媒がパラジウム系触媒である項17に記載の方法。
【0074】
項19. 一般式(7)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールとして光学活性体を用いることにより、光学活性1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体を得る項11〜18のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0075】
本発明の第1の製造方法により、医薬、農薬の重要中間体となり得る3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物、特にその光学活性体を、容易に入手できる出発原料を用いて少ない工程数で得ることができる。また、各工程は操作が簡単で、危険な原料を用いる必要もない。本発明により、3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物、特に光学活性体の工業スケールでの製造が可能になった。
【0076】
本発明の第2の製造方法により、特異な生理活性を有する医薬品の合成中間体として有用な1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体、特にその光学活性体を、容易に入手できる出発原料を用いて、少ない工程数で得ることができる。また、各工程は操作が簡単で、危険な原料を用いる必要もない。本発明により、1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体、特に光学活性体の工業スケールでの製造が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタールの製造方法
本発明の第1の方法は、上記一般式(1)で表される3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物の製造方法である。
第1工程
出発原料としては、下記一般式(2)
【0078】
【化18】

【0079】
[式中、Xはハロゲン原子を示し、Rは水素原子、またはメチル基を示す。]
で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール化合物を用いる。
【0080】
上記一般式(2)のXの具体例として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。入手し易い化合物になる点で、塩素原子、または臭素原子であることが好ましい。塩素原子が最も好ましい。
【0081】
上記一般式(2)の化合物の製造方法は周知である。上記一般式(2)においてRがメチル基である化合物は、Xが塩素原子である3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを例にとって説明すると、メタリルクロリドを過酢酸などで酸化して2−メチルエピクロロヒドリンとし、これを酸性条件下で水和開裂する方法といった定法により容易に調製することができる。
【0082】
また、上記一般式(2)においてRが水素原子である化合物は、Xが塩素原子である3−クロロ−1,2−プロパンジオールを例にとって説明すると、アリルクロリドを過酢酸などで酸化してエピクロロヒドリンとし、これを酸性条件下で水和開裂する方法といった定法により容易に調製することができる。
【0083】
また、上記式(2)の化合物の光学活性体を用いることにより、一般式(1)の光学活性体を得ることができる。
【0084】
一般式(2)においてRがメチル基である化合物の光学活性体(S体)は、Xが塩素原子である3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを例にとって説明すると、特許第2567430号公報(特開昭63−150234号公報)に記載の方法により合成することができる。
【0085】
また、Xが塩素原子である3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを例にとって説明すると、R体は、ラセミ混合物と、シュードモナスsp.DS−K−436−1株(FERM BP-7079)、又はシュードモナスsp.OS−K−29株(FERM BP−994)とを接触させることにより得ることができる。また、S体は、ラセミ混合物と、シュードモナスsp.DS−SI−5株(FERM BP−7080)、シュードモナスニトロレデューセンスDS−S−RP8株(FERM BP−7793)、又はアルカリゲネスsp.DS−S−7G株(FERM BP−3098)とを接触させることにより得ることができる。また、これらの微生物の菌体破砕物、菌体から抽出された酵素などと、ラセミ混合物とを接触させてもよい。接触により光学分割反応が進行する。
【0086】
一般式(2)においてRが水素原子である化合物の光学活性体は市販されている。
【0087】
第1工程では、上記一般式(2)で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール類を、酸触媒存在下、アセタール化剤と反応させるアセタール化反応を行うことにより、下記一般式(3)
【0088】
【化19】

【0089】
[式中、R、R、R、及びXは上記と同じである]
で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールアセタールが得られる。
【0090】
アセタール化剤としては、アルデヒド系試薬、ケトン系試薬、ケトン類のジアルキルアセタール系試薬、及びケトン類のエノールエーテル系試薬などが挙げられる。いずれも、一般式(2)のジオールと反応して、一般式(3)においてR、Rがそれぞれ独立して、水素原子、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、若しくはフェニル基、又は互いの末端が結合することにより形成された炭素数4〜7のメチレン基である化合物を与える官能基を有する化合物であればよい。
【0091】
アルデヒド系試薬としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。
【0092】
ケトン系試薬としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロブタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、イソブチロフェノン、バレロフェノン、イソバレロフェノン、ピバレロフェノン、ベンゾフェノン(ジフェニルケトン))等が挙げられる。
【0093】
ケトン類のジアルキルアセタール系試薬としては、例えば、2,2−ジメトキシプロパン、2,2−ジメトキシペンタン等が挙げられる。
【0094】
ケトン類のエノールエーテル系試薬としては、例えば、2−メトキシプロペン等が挙げられる。
【0095】
中でも、一般式(3)においてRとRとが同じである化合物が得られるようなアセタール化試薬を用いることが好ましく、一般式(3)においてRとRとが共にメチル基、エチル基、又はフェニル基である化合物が得られるようなアセタール化試薬を用いることがより好ましい。特に、RとRとが共にメチル基である化合物が得られるようなアセタール化試薬を用いることが好ましい。
【0096】
例えば、一般式(3)においてRとRとが共に水素原子である化合物を合成するにはホルムアルデヒドを使用すればよく、RとRとが共にメチル基である化合物を合成するにはアセトン、2,2−ジメトキシプロパン、又は/及び2−メトキシプロペンを使用すればよく、RとRとが共にフェニル基である化合物を合成するにはベンゾフェノンを使用すればよく、R1とR2とが隣接する炭素と共に6員環を形成する化合物を合成するにはシクロヘキサノンを用いればよい。
【0097】
アセタール化剤の使用量は、一般式(2)で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール化合物に対して1〜2当量程度が好ましく、1.1〜1.5当量程度がより好ましい。上記範囲であれば、十分にアセタール化反応が進行する。また、アセタール化剤は溶媒として使用してもよく、その場合のアセタール化剤の使用量は、一般式(2)で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール化合物に対して5〜30倍量(v/w)程度が好ましく、10〜20倍量(v/w)程度がより好ましい。なお、ここでいう1倍量(v/w)は、3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール化合物の1gに対して溶媒を1mL使用することを意味する。
【0098】
アセタール化反応に使用する酸触媒としては、アセタール化反応に通常使用される公知の酸触媒を制限なく使用できる。このような公知の酸触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸のような鉱酸;カンファースルホン酸(CSA)、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸(PPTS)のような有機酸;三フッ化ホウ素のようなルイス酸が挙げられる。また水素イオン型(H型)イオン交換樹脂を用いることもできる。中でも、鉱酸、有機酸が好ましく、硫酸、塩酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸がより好ましい。p−トルエンスルホン酸は水和物であってもよい。酸触媒は1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
【0099】
アセタール化反応に使用する酸触媒の使用量は、特に限定されないが、一般式(2)で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール化合物に対して0.2〜20モル%程度が好ましく、1〜10モル%程度がより好ましい。
【0100】
アセタール化反応は、無溶媒で行ってもよく、溶媒を使用してもよい。反応点を阻害する恐れがない点で無溶媒で行うことが好ましい。但し、反応液の粘度が高く攪拌し難い場合などには溶媒を使用すればよい。溶媒は、アセタール化剤と反応するもの、例えばエチレングリコールのようなグリコール類を除き、公知の溶媒を制限なく使用できる。このような溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられる。溶媒は1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0101】
アセタール化反応は、0℃〜溶媒の還流温度で行うことができる。また、反応時間は、通常1〜12時間程度とすればよい。
【0102】
上記反応により反応液中に一般式(3)の化合物が生成する。溶媒を留去するか、分配クロマトグラフィーなどを用いて一般式(3)の化合物を単離すればよい。
第2工程
第2工程では、上記一般式(3)の化合物をアジド化剤を用いてアジド化することにより、下記一般式(4)
【0103】
【化20】

【0104】
[式中、R、R、及びRは上記と同じである]
で表される3−アジド−1,2−プロパンジオールアセタール化合物を得る。
【0105】
アジド化剤は公知のアジド化剤を制限なく使用できる。このような公知のアジド化剤としては、例えば、アジ化リチウム、アジ化ナトリウムような金属アジ化物;トリメチルシリルアジドのようなアジ化ケイ素化合物;アジ化ジフェニルホスホリルのようなアジ化ホスホリル化合物などを挙げることができる。
【0106】
汎用性がある点で、アジ化ナトリウム、トリメチルシリルアジド、及びアジ化ジフェニルホスホリルが好ましく、アジ化ナトリウムがより好ましい。アジド化剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0107】
アジド化剤の使用量は、一般式(3)で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物に対して1〜2当量程度が好ましく、1.1〜1.3当量程度がより好ましい。上記範囲であれば十分にアジド化反応が進行する。
【0108】
アジド化反応は、通常、溶媒中で行えばよい。溶媒の種類は特に限定されないが、非プロトン性極性溶媒が好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、例えば、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのような有機溶媒や水などが挙げられる。中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが好ましい。溶媒は1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0109】
溶媒の使用量は、上記一般式(3)で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールアセタールに対して1〜10倍量程度が好ましく、3〜5倍量程度がより好ましい。上記溶媒の使用量の範囲であれば、十分にアジド化反応が進行する。
【0110】
反応温度は、例えば60〜160℃程度とすることができる。特に、80〜150℃程度が好ましい。上記温度範囲であれば、十分にアジド化反応が進行する。また、反応時間は、5〜24時間程度とすればよい。
【0111】
アジド化反応は、特に添加剤が無くても円滑に進行するが、例えば出発原料として一般式(2)においてXが塩素原子である化合物を用いる場合は、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウムのような臭化物、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウムのようなヨウ化物などのアルカリ金属のハロゲン化物を添加することにより、一般式(3)の化合物中の塩素原子が臭素原子又はヨウ素原子に置換されて一般式(3)の化合物がより反応性の高いものとなる。
【0112】
アルカリ金属のハロゲン化物は、一般式(3)で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物に対して1〜2当量程度の比率で使用することができる。上記範囲であれば、十分にアジド化反応を促進することができる。
【0113】
上記反応により反応液中に一般式(4)の化合物が生成する。反応終了後は、例えば、反応中に副生した無機塩を濾去し、水を加え、酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出し、減圧下濃縮することにより、一般式(4)の化合物を分離することができる。さらに精製する場合は、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに供することにより一般式(4)の化合物を単離、精製すればよい。
第3工程
第3工程では、一般式(4)の3−アジド−1,2−プロパンジオールアセタール化合物を還元触媒存在下で接触水素化することにより、一般式(1)の3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタールを得る。この接触水素化により、一般式(4)の化合物のアジド基が水素化分解されてアミノ基になる。
【0114】
還元触媒としては、接触水素化反応に使用される公知の還元触媒を制限なく使用できる。このようなの還元触媒としては、代表的には、パラジウムカーボン、パラジウムアルミナ、パラジウムシリカ、プラチナカーボン、ルテニウムカーボン、ロジウムカーボンのような貴金属触媒などが挙げられる。特に、汎用性がある点で、パラジウムカーボンのようなパラジウム系触媒がより好ましい。還元触媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0115】
還元触媒として、貴金属触媒を用いる場合は、触媒中の貴金属の含有量は0.5〜10重量%程度が好ましい。前述のパラジウムカーボンの場合はパラジウム含量が5〜10重量%程度のものが好ましい。上記範囲であれば、十分に接触水素化反応が進行する。貴金属含有量が10重量%を超えてもよいが、経済的ではない。貴金属触媒は、安全性を向上させるために、50重量%程度の含水品を使用することもできる。
【0116】
還元触媒の使用量は、一般式(4)で表される3−アジド−1,2−プロパンジオールアセタール化合物に対して、0.5〜10重量%程度が好ましく、1〜5重量%程度がより好ましい。上記範囲であれば、十分に接触水素化反応が進行する。
【0117】
接触水素化反応は、水素加圧下、又は常圧で行うことができる。その際、窒素、希ガスの様な不活性ガスとの混合ガスを用いることができる。水素加圧下で反応を行う場合は、容器内圧は0.1〜10MPa程度が好ましく、0.5〜10Mpa程度がより好ましい。開放系で常圧下で反応を行う場合は、特に限定はしないが、例えばテフロン(登録商標)チューブのような耐溶媒性のホースを系中に挿入し、攪拌下水素ガスを通してバブリングを行えばよい。
【0118】
接触水素化反応は、通常、溶媒中で行えばよい。溶媒の種類は特に限定されず、公知の有機溶媒を使用できる。このような公知の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。中でも、酢酸エチル、メタノールが好ましく、酢酸エチルがより好ましい。溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0119】
溶媒の使用量は、上記式(4)で表される3−アジド−1,2−プロパンジオールアセタール化合物に対して、2〜10倍量程度が好ましく、3〜5倍量程度がより好ましい。上記範囲であれば、十分に接触水素化反応が進行する。
【0120】
接触水素化反応の反応温度は、−10〜50℃程度が好ましく20〜40℃程度がより好ましい。上記範囲であれば、十分に接触水素化反応が進行する。また、反応時間は、温度、圧力などとの関係で適宜決定することができる。
【0121】
上記反応により反応液中に一般式(1)の化合物が生成する。反応終了後、触媒を濾去し、濾液を減圧下濃縮することにより一般式(1)の化合物を分離することができる。さらに精製する場合は、濃縮残渣を、例えば減圧蒸留や、分配クロマトグラフィーによって単離、精製すればよい。
(II)3−アミノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールアセトナイド
前述した第1の製造方法において、一般式(2)の化合物としてRがメチル基である化合物を用い、アセタール化剤として、アセトン、2,2−ジメトキシプロパン、又は/及び2−メトキシプロペンなどを使用することにより、下記式(5)
【0122】
【化21】

【0123】
で表される3−アミノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールアセトナイドが得られる。
【0124】
本化合物は、その構造中にアミノ基やアセトナイド基を有しており、アセトナイド基は酸性条件下で容易に脱アセトナイド化反応が進行し、1,2−ジオール体を得ることができる。さらにアルコール部分は容易に脱離基に誘導可能であり、種々の構造へ展開可能である。また4位の炭素は4級炭素であり、近年その構造に由来する特異な生理活性から医薬、農薬としての有用性の面で注目を集めており、本化合物を用いれば、容易に4級炭素含有化合物を得ることが可能となる。
(III)1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体の製造方法
本発明の第2の製造方法は、下記一般式(6)
【0125】
【化22】

【0126】
[式中、R、Rは、同一または異なって、水素原子、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、若しくはフェニル基を示すか、又はR、Rはその末端が結合することにより形成された炭素数4〜7のメチレン基を示す。]
で表される1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体の製造方法であって、
下記一般式(7)
【0127】
【化23】

【0128】
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを、酸触媒の存在下、アセタール化剤と反応させることにより下記一般式(8)
【0129】
【化24】

【0130】
[式中、R、R、及びXは上記と同じである。]
で表される4−ハロゲノメチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体を得る第1工程と、
上記式(8)の化合物と下記一般式(9)

ROH (9)

[式中、Rは、炭素数2〜5の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族アシル基、芳香環上に、炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群より選ばれた1〜5個の置換基を有していてよい芳香族アシル基、炭素数7〜12のアラルキル基、またはアリル基を示す。]
で表されるカルボン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩、又は上記一般式(9)で表されるアルコールのアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアルコキシドとを反応させることにより下記一般式(10)
【0131】
【化25】

【0132】
[式中、R、RおよびRは上記と同じである。]
で表される化合物を得る第2工程と、
上記一般式(10)の化合物において、Rがアシル基の場合には、塩基の存在下、脱アシル化し、Rがアラルキル基またはアリル基の場合には、還元触媒の存在下、水素添加して、上記一般式(6)の化合物を得る第3工程と
を含む方法である。
【0133】
本発明の1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体の製造方法の反応行程は下記のごとく図示される。
【0134】
【化26】

【0135】
(式中、X、R、RおよびRは上記と同じ。)
第1工程
出発原料として用いる一般式(7)の3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールの製造方法は周知である。Xが塩素原子である3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを例にとって説明すると、メタリルクロリドを過酢酸などで酸化して2−メチルエピクロロヒドリンとし、これを酸性条件下で水和開裂する方法といった定法により容易に調製することができる。
【0136】
また、一般式(7)の3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールの光学活性体を使用すれば、一般式(6)の1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体の光学活性体が得られる。
【0137】
一般式(7)の化合物の光学活性体(S体)は、Xが塩素原子である3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを例にとって説明すると、特許第2567430号公報(特開昭63−150234号公報)に記載の方法により合成することができる。
【0138】
また、Xが塩素原子である3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを例にとって説明すると、R体は、ラセミ混合物と、シュードモナスsp.DS−K−436−1株(FERM BP-7079)、又はシュードモナスsp.OS−K−29株(FERM BP−994)とを接触させることにより得ることができる。また、S体は、ラセミ混合物と、シュードモナスsp.DS−SI−5株(FERM BP−7080)、シュードモナスニトロレデューセンスDS−S−RP8株(FERM BP−7793)、又はアルカリゲネスsp.DS−S−7G株(FERM BP−3098)とを接触させることにより得ることができる。また、これらの微生物の菌体破砕物、菌体から抽出された酵素などと、ラセミ混合物とを接触させてもよい。接触により光学分割反応が進行する。
【0139】
光学純度の高い3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを用いると反応中顕著なラセミ化反応は起こらず、高光学純度の1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体を製造することができる。
【0140】
第1工程では、一般式(7)の3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを、酸触媒の存在下でアセタール化することにより、一般式(8)の4−ハロゲノメチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体が得られる。
【0141】
一般式(7)のXの具体例として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。入手し易い化合物になる点で、塩素原子、又は臭素原子であることが好ましい。塩素原子が最も好ましい。
【0142】
アセタール化剤としては、本発明の第1の方法について説明したものが挙げられる。
【0143】
中でも、一般式(3)においてRとRとが同じである化合物が得られるようなアセタール化試薬を用いることが好ましく、一般式(3)においてRとRとが共にメチル基、エチル基、又はフェニル基である化合物が得られるようなアセタール化試薬を用いることがより好ましい。特に、RとRとが共にメチル基である化合物が得られるようなアセタール化試薬を用いることが好ましい。
【0144】
一般式(8)においてRとRとが共に水素原子である化合物を合成するにはホルムアルデヒドを使用すればよく、RとRとが共にメチル基である化合物を合成するにはアセトン、2,2−ジメトキシプロパン、又は/及び2−メトキシプロペンを使用すればよく、RとRとが共にフェニル基である化合物を合成するにはベンゾフェノンを使用すればよく、Rが水素原子でRがフェニル基である化合物を合成するにはベンズアルデヒドを使用すればよく、R1とR2とが隣接する炭素と共に6員環を形成する化合物を合成するにはシクロヘキサノンを用いればよい。
【0145】
アセタール化剤の使用量は、一般式(7)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールに対して1〜2当量程度が好ましく、1.1〜1.5当量程度がより好ましい。上記範囲であれば、十分にアセタール化反応が進行する。また、アセタール化剤は溶媒として使用してもよく、その場合のアセタール化剤の使用量は、一般式(7)で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールに対して5〜30倍量(v/w)程度が好ましく、10〜20倍量(v/w)程度がより好ましい。ここでいう1倍量(v/w)も、3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール化合物の1gに対して溶媒を1mL使用することを意味する。
【0146】
アセタール化反応に使用する酸触媒としては、アセタール化反応に通常使用される公知の酸触媒を制限なく使用できる。このような公知の酸触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸のような鉱酸;カンファースルホン酸(CSA)、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸(PPTS)のような有機酸;三フッ化ホウ素のようなルイス酸が挙げられる。また水素イオン型(H型)イオン交換樹脂を用いることもできる。中でも、鉱酸、有機酸が好ましく、硫酸、塩酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸がより好ましい。p−トルエンスルホン酸は水和物であってもよい。酸触媒は1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
【0147】
アセタール化反応に使用する酸触媒の使用量は、特に限定されないが、一般式(7)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールに対して0.2〜20モル%程度が好ましく、1〜10モル%程度がより好ましい。
【0148】
アセタール化反応は、無溶媒で行ってもよく、溶媒を使用してもよい。反応点を阻害する恐れがない点で無溶媒で行うことが好ましい。但し、反応液の粘度が高く攪拌し難い場合などには溶媒を使用すればよい。溶媒は、アセタール化剤と反応するもの、例えばエチレングリコールのようなグリコール類を除き、公知の溶媒を制限なく使用できる。このような溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、アセトン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。溶媒は1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0149】
アセタール化反応は、例えば0℃〜溶媒の還流温度の範囲で行うことができる。また、反応時間は、通常1〜12時間程度とすればよい。
【0150】
上記反応により反応液中に一般式(8)の4−ハロゲノメチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体が生成する。溶媒を留去するか、分配クロマトグラフィーなどを用いて一般式(8)の化合物を単離すればよい。
第2工程
第2工程では、一般式(8)の化合物と、一般式(9)
ROH (9)
[式中、Rは、炭素数2〜5の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族アシル基、芳香環上に、炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群より選ばれた1〜5個の置換基を有していてよい芳香族アシル基、炭素数7〜12のアラルキル基、またはアリル基を示す。]
で表されるカルボン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩、又は上記一般式(9)で表されるアルコールのアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアルコキシドとを反応させて、一般式(10)で表される化合物を得る。
【0151】
この反応は、通常、溶媒中で行えばよい。溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水のような非プロトン性極性溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、ジエチレングリコールモノメチルエーテルのようなエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒;アセトニトリルのようなニトリル系溶媒;ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタンのようなハロゲン系溶媒が挙げられる。中でも、非プロトン性極性溶媒が好ましい。溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0152】
一般式(9)においてRがアシル基である場合、即ち一般式(9)の化合物がカルボン酸である場合は、一般式(10)の4−アシルオキシメチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体(R=アシル基)が得られる。
【0153】
一般式(9)のカルボン酸には、炭素数2〜5の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族カルボン酸;又は芳香環上に、炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基を1〜5個有していてよい芳香族カルボン酸が含まれる。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環が挙げられる。
【0154】
中でも、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、安息香酸、3−クロロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、4−ニトロ安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸が好ましく、酢酸、プロピオン酸、安息香酸がより好ましい。即ち、一般式(9)において、Rがアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基であるカルボン酸が好ましい。
【0155】
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などが挙げられる。
【0156】
一般式(9)のカルボン酸塩の好ましい例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸バリウムが挙げられる。
【0157】
カルボン酸のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩の使用量は、一般式(8)の4−ハロゲノメチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体に対して1〜3当量程度が好ましく、1〜2当量程度がより好ましい。上記範囲であれば十分に反応が進行する。
【0158】
反応温度は、0℃〜溶媒の還流温度とすることができる。上記温度範囲であれば十分に反応が進行する。反応時間は5〜24時間程度とすればよい。
【0159】
一般式(9)においてRがアラルキル基又はアリル基である場合、即ち一般式(9)の化合物がアリールアルキルアルコール又はアリルアルコールである場合は、一般式(10)の4−アルコキシメチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体(R=アラルキルまたはアリル基)が得られる。
【0160】
一般式(9)のアルコールには、炭素数1〜6のアルキル基を有するフェニルアルキルアルコール、炭素数1〜2のアルキル基を有するナフチルアルキルアルコール、及びアリルアルコールが含まれる。
【0161】
中でも、炭素数1〜6のアルキル基を有するフェニルアルキルアルコール、アリルアルコールが好ましい。即ち、一般式(9)においてRが炭素数1〜6のアルキル基を有するフェニルアルキル基、アリル基であるアルコールが好ましい。特に、ベンジルアルコール、アリルアルコールが好ましい。
【0162】
金属アルコキシドとしては、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、カルシウムアルコキシド、バリウムアルコキシドなどが挙げられる。中でも、ナトリウムアルコキシドが好ましい。アルコキシドは、市販品を利用しても良いが、不安定なものもあるため、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムのような炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムのような水酸化物;水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カルシウムのような金属水素化物等とアルコールとの反応により合成することができる。特に、水酸化物、金属水素化物が好ましい。
【0163】
アルコキシドの使用量は、一般式(8)の4−ハロゲノメチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体に対して1〜4当量程度が好ましく、1〜2当量程度がより好ましい。
【0164】
第2工程の反応は、特に添加剤が無くても円滑に進行するが、例えば出発原料として一般式(7)においてXが塩素原子である化合物を用いる場合は、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウムのような臭化物、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウムのようなヨウ化物などのアルカリ金属のハロゲン化物を添加することにより、一般式(8)の化合物中の塩素原子が臭素原子又はヨウ素原子に置換されて一般式(8)の化合物がより反応性の高いものとなる。中でも、臭化ナトリウムが好ましい。添加剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0165】
上記反応により反応液中に一般式(10)の化合物が生成する。反応終了後、反応中に副生した無機塩を濾去し、溶媒を留去後、残渣に水を加え、トルエン等の有機溶媒で抽出し、減圧下濃縮することにより一般式(10)の化合物を分離することができる。さらに精製する場合は、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィーなどを用いて一般式(10)の化合物を単離、精製すればよい。
第3工程
第3工程では、一般式(10)の化合物においてRがアシル基である場合は、4−アシルオキシ−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体を、塩基で脱アシル化することにより、目的とする式(6)の1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体が得られる。
【0166】
この反応は、通常、溶媒中で行えばよい。溶媒は、極性溶媒であればよく特に限定されない。このような溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、水などが挙げられる。溶媒は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0167】
塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。中でも、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩が好ましい。
【0168】
塩基の使用量は、一般式(10)の4−アシルオキシ−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体に対して1〜3当量程度が好ましく、1〜1.5当量程度がより好ましい。上記範囲であれば十分に脱アシル化反応が進行する。
【0169】
反応温度は、0℃〜溶媒の還流温度程度で行える。上記範囲であれば十分に脱アシル化反応が進行する。また、反応時間は、1〜24時間程度とすることができる。
【0170】
また第3工程では、一般式(10)の化合物においてRがアラルキル基又はアリル基である場合は、一般式(10)の4−アルコキシ−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体を、水素雰囲気中で、接触還元することにより、即ち還元触媒の存在下に水素添加することにより、目的とする一般式(6)の1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体が得られる。
【0171】
還元触媒としては、接触水素化反応に使用される公知の還元触媒を制限なく使用できる。このようなの還元触媒としては、代表的には、パラジウムカーボン、パラジウムアルミナ、パラジウムシリカ、プラチナカーボン、ルテニウムカーボン、ロジウムカーボンのような貴金属触媒などが挙げられる。特に、汎用性がある点でパラジウムカーボンのようなパラジウム系触媒がより好ましい。還元触媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0172】
還元触媒として、貴金属触媒を用いる場合は、触媒中の貴金属の含有量は0.5〜10重量%程度が好ましい。前述のパラジウムカーボンの場合はパラジウム含量が5〜10重量%程度のものが好ましい。上記範囲であれば、十分に接触水素化反応が進行する。貴金属含有量が10重量%を超えてもよいが、経済的ではない。貴金属触媒は、安全性を向上させるために、50重量%程度の含水品を使用することもできる。
【0173】
還元触媒の使用量は、一般式(10)で表される4−アルコキシ−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体に対して、0.5〜50重量%程度が好ましく、1〜30重量%程度がより好ましい。上記範囲であれば、十分に接触水素化反応が進行する。
【0174】
接触水素化反応は、水素加圧下、又は常圧で行うことができる。その際、窒素、希ガスの様な不活性ガスとの混合ガスを用いることができる。水素加圧下で反応を行う場合は、容器内圧は0.1〜10MPa程度が好ましく、0.5〜10Mpa程度がより好ましい。開放系で常圧下で反応を行う場合は、特に限定はしないが、例えばテフロン(登録商標)チューブのような耐溶媒性のホースを系中に挿入し、攪拌下水素ガスを通してバブリングを行えばよい。
【0175】
接触水素化反応は、通常、溶媒中で行えばよい。溶媒の種類は特に限定されず、公知の有機溶媒を使用できる。このような公知の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。中でも、酢酸エチル、メタノールが好ましく、酢酸エチルがより好ましい。溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0176】
溶媒の使用量は、上記式(10)で表される4−アルコキシ−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体に対して、2〜10倍量程度が好ましく、3〜5倍量程度がより好ましい。上記範囲であれば、十分に反応が進行する。
【0177】
接触水素化反応の反応温度は、−10〜50℃程度が好ましく20〜40℃程度がより好ましい。上記範囲であれば、十分に反応が進行する。また、反応時間は、温度、圧力などとの関係で適宜決定することができる。
【0178】
上記反応により反応液中に一般式(6)の1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体が生成する。反応終了後、触媒を濾去し、濾液を減圧下濃縮することにより一般式(6)の化合物を分離することができる。さらに精製する場合は、濃縮残渣を、例えば減圧蒸留や、分配クロマトグラフィーによって単離、精製すればよい。
【0179】
実施例
以下に実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(I)3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物の製造

実施例1−1(S)−4−アミノメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(c)の合成)
第1工程((R)−4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(a)の合成)
1L4つ口フラスコに(R)−3−クロロ−1,2−プロパンジオール(市販品)180.0g(99.8%ee、1.628mol)、2,2−ジメトキシプロパン220.5g(2.117mol)、p−トルエンスルホン酸・1水和物15.5g(81mmol)を入れ、内温30℃で1時間攪拌した。その後、重炭酸ソーダ8.4g(100mmol)を入れて中和し、無機塩を濾別した。メタノールを減圧留去すると、目的物である(R)−4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン220.7g(1.466mol、収率90.0%)が得られた。
【0180】
生成物をH−NMRに供することにより下記式(a)で表される化合物であることが確認された。
【0181】
【化27】

【0182】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.37(3H,s)、1.44(3H,s)、3.47(1H,dd,J=10.8,7.6Hz)、3.58(1H,dd,J=10.8,4.3Hz)、3.88(1H,dd,J=8.6,5.1Hz)、4.11(1H,dd,J=9.5,6.5Hz)、4.27−4.34(1H,m).
第2工程((S)−4−アジドメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(b)の合成)
1L4つ口フラスコに(R)−4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン150.6g(1.000mol)、N,N−ジメチルホルムアミド452mLを入れ、アジ化ナトリウム78.0g(1.200mmol)を添加し、内温110℃で20時間攪拌した。反応終了後、反応混合物中の無機塩を濾別し、濾液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。水層を再度、酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を減圧濃縮し、目的物である(S)−4−アジドメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン118.0g(0.751mol、収率75.1%)を得た。
【0183】
生成物をH−NMRに供することにより下記式(b)で表される化合物であることが確認された。
【0184】
【化28】

【0185】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.37(3H,s)、1.47(3H,s)、3.30(1H,dd,J=12.4,5.1Hz)、3、41(1H,dd,J=12.7,4.6Hz)、3.78(1H,dd,J=8.4,5.9Hz)、4.07(1H,dd,J=8.6,6.2Hz)、4.28(1H,m).
工程3((S)−4−アミノメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(c)の合成)
1L4つ口フラスコに(S)−4−アジドメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン118.0g(0.751mmol)、酢酸エチル470mL、5%パラジウム−カーボン5.9g(N.E.CHEMCAT製、55.43重量%含水品)を添加した。攪拌下、水素ガスを吹き込みながら5時間反応させた。濾過後、濾液を濃縮した。濃縮残渣を、内温100℃以下、5mmHgで蒸留し、目的物である(S)−4−アミノメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン88.7g(0.676mol、収率90.0%)を得た。化学純度(GC)は99.8%、光学純度(GC)は99.8%eeであった。
【0186】
生成物をH−NMRに供することにより、下記式(c)の化合物であることが確認された。
【0187】
【化29】

【0188】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.36(3H,s)、1.43(3H,s)、2.74−2.89(2H,m)、3.67(1H,dd,J=7.8,6.2Hz)、4.04(1H,dd,J=7.6,6.3Hz)、4.08−4.18(1H,m).
【0189】
実施例1−2((R)−4−アミノメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン(f)の合成
(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールの調製
ペプトン10g/L、酵母エキス10g/L、グリセリン10g/Lからなる組成の培地100mL(pH7.0)を500mL容のバッフル付き三角フラスコに入れ、121℃で15分間、加圧蒸気滅菌した。次いで、予め同栄養培地プレートで生育させたシュードモナスsp.DS−SI−5株(国際寄託番号:FERM BP−7080)を1白金耳分植菌し、30℃で24時間好気的に培養した。得られた培養液を遠心し、菌体を回収した。
【0190】
上記三角フラスコ中に、菌体100mLを20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁し、懸濁液にラセミ体3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを2.5%(v/v)と炭酸カルシウムを3.6%とを加え、30℃、120rpmで48時間反応させた。反応終了後、反応液を取り出し、遠心操作により菌体を除去し、上清液を得た。この上清液をエバポレーターで濃縮し、エーテルにより抽出した。続いて無水硫酸マグネシウムにより脱水後、減圧下でエーテルを除去し、(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(ラセミ体の3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールからの残存率40.9%、光学純度99%ee)を得た。
工程1((S)−4−クロロメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン(d)の合成)
1L4つ口フラスコに、(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール22.9g(99.8%ee、0.184mol)、2,2−ジメトキシプロパン24.9g(0.239mol)、p−トルエンスルホン酸・1水和物1.8g(9.2mmol)を入れ、内温30℃で0.5時間攪拌した。その後、重炭酸ソーダ0.9g(11mmol)を入れて中和し、無機塩を濾別した。メタノールを減圧留去すると、目的物である(S)−4−クロロメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン27.2g(0.165mol、収率89.9%)が得られた。
【0191】
生成物をH−NMRに供することにより下記式(d)の化合物であることが確認された。
【0192】
【化30】

【0193】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.39(3H,s)、1.42(3H,s)、1.43(3H,s)、3.41(1H,dd,J=10.5,0.5Hz)、3.52(1H,d,J=10.8Hz)、3.73(1H,dd,J=8.9,1.1Hz)、4.09(1H,d,J=8.9Hz).
工程2((R)−4−アジドメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン(e)の合成)
1L4つ口フラスコに(S)−4−クロロメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン26.0g(0.158mol)、ヨウ化ナトリウム23.7g(0.158mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド78mLを入れ、アジ化ナトリウム12.3g(0.190mmol)を添加し、内温140℃で20時間攪拌した。反応終了後、反応混合物中の無機塩を濾別し、濾液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。水層を再度、酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を減圧濃縮し、目的物である(R)−4−アジドメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン19.7g(0.115mol、収率72.8%)を得た。
【0194】
生成物をH−NMRに供することにより、下記式(e)の化合物であることが確認された。
【0195】
【化31】

【0196】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.34(3H,s)、1.41(3H,s)、1.45(3H,s)、3.23(1H,d,J=12.4Hz)、3.28(1H,d,J=12.2Hz)、3.71(1H,d,J=8.9Hz)、3.94(1H,d,J=8.9Hz).
工程3((R)−4−アミノメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン(f)の合成)
1L4つ口フラスコに(R)−4−アジドメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン19.5g(0.114mmol)、酢酸エチル96.8mL、5%パラジウム−カーボン0.98g(N.E.CHEMCAT製、55.43重量%含水品)を添加した。攪拌下、水素ガスを吹き込みながら5時間反応させた。濾過後、濾液を濃縮した。濃縮残渣を、内温100℃以下、5mmHgで蒸留し、目的物である(R)−4−アミノメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン14.0g(0.096mol、収率84.5%)を得た。化学純度(GC)は99.7%、光学純度(GC)は99.8%eeであった。
【0197】
生成物をH−NMR、質量分析、元素分析、及び比旋光度測定に供することにより下記式(f)で表される化合物であることが確認された。
【0198】
【化32】

【0199】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ1.29(3H,s)、1.41(6H,s)、2.71(2H,s)、3.73(1H,d,J=8.6Hz)、3.91(1H,d,J=8.6Hz).
LRMS m/z:Calcd for C15NO(M+)145.
Found 145.
Anal.Calcd for C15NO:C,57.90;H,10.41;N,9.65
Found:C,55.32;H,10.26;N,9.01
[α]20=+2.51(MeOH,c=1).
【0200】
実施例1−3((R)−4−アミノメチル−2,2−ジエチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン(i)の合成)
工程1((S)−4−クロロメチル−2,2−ジエチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン(g)の合成)
1L4つ口フラスコに、実施例1−3で説明したようにして調製した(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール180.0g(99.2%ee、1.445mol)、ジエチルケトン161.8g(1.878mol)、p−トルエンスルホン酸・1水和物13.7g(72mmol)を入れ、内温30℃で3時間攪拌した。その後、重炭酸ソーダ7.6g(90mmol)を入れて中和し、無機塩を濾別した。ジエチルケトンを減圧留去すると、下記式(g)で表される(S)−4−クロロメチル−2,2−ジエチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン243.9g(0.876mmol、収率87.6%)が微黄色油状物質として得られた。
【0201】
【化33】

【0202】
工程2((R)−4−アジドメチル−2,2−ジエチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン(h)の合成)
1L4つ口フラスコに(S)−4−クロロメチル−2,2−ジエチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン192.7g(1.000mol)、N,N−ジメチルホルムアミド450mLを入れ、アジ化ナトリウム78.0g(1.200mmol)を添加し、内温110℃で20時間攪拌した。反応終了後、反応混合物中の無機塩を濾別し、濾液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。水層を再度、酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を減圧濃縮し、下記式(h)で表される(R)−4−アジドメチル−2,2−ジエチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン156.0g(0.783mol、収率78.3%)を得た。
【0203】
【化34】

【0204】
工程3((R)−4−アミノメチル−2,2−ジエチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン(i)の合成)
1L4つ口フラスコに(R)−4−アジドメチル−2,2−ジエチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン156.0g(0.783mmol)、酢酸エチル500mL、5%パラジウム−カーボン5.9g(N.E.CHEMCAT製、55.43重量%含水品)を添加した。攪拌下、水素ガスを吹き込みながら7時間反応させた。濾過後、濾液を濃縮した。濃縮残渣を、内温100℃以下、5mmHgで蒸留し、(R)−4−アミノメチル−2,2−ジエチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン124.8g(0.720mol、収率92.0%)を得た。化学純度(GC)は99.6%、光学純度(GC)は99.2%eeであった。
【0205】
H−NMRに供することにより下記式(i)で表される化合物であることが確認された。
【0206】
【化35】

【0207】
H−NMR(CDCl、270MHz):δ0.96(3H,t,J=4.5Hz)、0.98(3H,t,J=4.5Hz)、1.29(3H,s)、1.41(4H,s)、2.71(2H,s)、3.72(1H,d,J=8.5Hz)、3.90(1H,d,J=8.5Hz).
【0208】
(II)1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体の製造方法
実施例2−1
実施例1−2で説明したようにして調製した、(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(117.72g、0.945mol、99.2%ee)、アセトン(1500ml)の混合物にp−トルエンスルホン酸一水和物(1.79g、9.4mmol)を加え、25℃で12時間撹拌した。反応終了後、減圧下でアセトンを留去し、この粗生成物を蒸留することにより(S)−4−クロロメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン136.91g(収率88%、沸点48℃(5mmHg))を得た。
【0209】
続いてこの(S)−4−クロロメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン(64.21g,0.39mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(600ml)の混合物に臭化ナトリウム(43.01g、0.42mol)、安息香酸ナトリウム(60.24g、0.42mol)を加えて150℃で15時間撹拌した。放冷後塩をろ過し、N,N−ジメチルホルムアミドを減圧下留去して、残渣に水を加えてトルエンで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮して、(S)−4−ベンゾイルオキシメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン87.85g(収率90%)の粗生成物を得た。
【0210】
この粗(S)−4−ベンゾイルオキシメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン(50.81g,0.203mol)と水(100ml)の混合物に炭酸ナトリウム(32.22g,0.304mol)を加えて、100℃で8時間撹拌した。放冷後塩化メチレンで抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。この粗生成物を蒸留することにより(R)−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール24.33g(収率82%、沸点75℃(8mmHg)、旋光度[α]D20−10.4°(c=1,MeOH)、99.0%ee)を得た。
【0211】
実施例2−2
実施例2−1と同様にして(S)−4−クロロメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソランを得た。即ち、(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール (117.72g、0.945mol、99.2%ee)、アセトン(1500ml)の混合物にp−トルエンスルホン酸一水和物(1.79g、9.4mmol)を加え、25℃で12時間撹拌した。反応終了後、減圧下でアセトンを留去し、この粗生成物を蒸留することにより(S)−4−クロロメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン136.91g(収率88%、沸点48℃(5mmHg))を得た。
【0212】
この(S)−4−クロロメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソランを56.47g(0.343mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(400ml)の混合物に臭化ナトリウム(37.04g,0.36mol)、酢酸ナトリウム(29.53g,0.36mol)を加えて150℃で15時間撹拌した。放冷後塩をろ過し、N,N−ジメチルホルムアミドを減圧下留去した。残渣に水を加えてトルエンで抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。この粗生成物を蒸留することにより(S)−4−アセトキシメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン41.32g(収率64%、沸点83℃(12mmHg))を得た。
【0213】
続いて(S)−4−アセトキシメチル−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン(36.89g,0.196mol)とメタノール(200ml)の混合物に炭酸カリウム(40.63g,0.294mol)を加え、25℃で8時間撹拌した。反応終了後、塩をろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。この粗生成物を蒸留することにより(R)−2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール25.50g(収率89%、沸点75℃(8mmHg)、旋光度[α] D20−10.3°(c=1,MeOH)、99.1%ee)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0214】
本発明方法により得られる3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物、及び1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体は医薬品や農薬製造の出発原料として用いることができ、特にその光学活性体は医薬品製造の中間体として重要な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

[式中、R、Rは、同一または異なって、水素原子、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、若しくはフェニル基を示すか、又はR、Rはその末端が結合することにより形成された炭素数4〜7のメチレン基を示し、Rは水素原子、またはメチル基を示す。]
で表される3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物を製造する方法であって、
下記一般式(2)
【化2】

[式中、Xはハロゲン原子を示し、Rは水素原子、またはメチル基を示す。]
で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール化合物を、酸触媒存在下、アセタール化剤と反応させることにより、下記一般式(3)
【化3】

[式中、R、R、R、及びXは上記と同じである。]で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物を得る第1工程と、
上記一般式(3)の化合物をアジド化剤と反応させることにより、下記一般式(4)
【化4】

[式中、R、R、及びRは上記と同じである]
で表される3−アジド−1,2−プロパンジオールアセタール化合物を得る第2工程と、
上記一般式(4)の化合物を、還元触媒存在下で接触水素化することにより上記一般式(1)の化合物を得る第3工程と
を含む方法。
【請求項2】
一般式(2)におけるハロゲン原子が、塩素原子、又は臭素原子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アセタール化剤として、一般式(3)においてRとRとが共にメチル基、エチル基、又はフェニル基である化合物を与える化合物を使用する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アセタール化剤として、アセトン、2,2−ジメトキシプロパン、及び2−メトキシプロペンからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
アジド化剤が、金属アジ化物、アジ化ケイ素化合物、及びアジ化ホスホリル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
アジド化剤がアジ化ナトリウム、トリメチルシリルアジド、及びアジ化ジフェニルホスホリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
還元触媒が貴金属触媒である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
貴金属触媒がパラジウム系触媒である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
一般式(2)で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオール化合物として光学活性体を用いることにより、光学活性3−アミノ−1,2−プロパンジオールアセタール化合物を得る請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
下記式(5)
【化5】

で表される3−アミノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールアセトナイド。
【請求項11】
下記一般式(6)
【化6】

[式中、R、Rは、同一または異なって、水素原子、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、若しくはフェニル基を示すか、又はR、Rはその末端が結合することにより形成された炭素数4〜7のメチレン基を示す。]
で表される1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体の製造方法であって、
下記一般式(7)
【化7】

[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを、酸触媒の存在下、アセタール化剤と反応させることにより下記一般式(8)
【化8】

[式中、R、R、及びXは上記と同じである。]
で表される4−ハロゲノメチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン誘導体を得る第1工程と、
上記式(8)の化合物と、下記一般式(9)

ROH (9)

[式中、Rは、炭素数2〜5の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族アシル基、芳香環上に、炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群より選ばれた1〜5個の置換基を有していてよい芳香族アシル基、炭素数7〜12のアラルキル基、またはアリル基を示す。]
で表されるカルボン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩、又は上記一般式(9)で表されるアルコールのアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアルコキシドとを反応させることにより、下記一般式(10)
【化9】

[式中、R、RおよびRは上記と同じである。]
で表される化合物を得る第2工程と、
上記一般式(10)の化合物において、Rがアシル基の場合には、塩基の存在下、脱アシル化し、Rがアラルキル基またはアリル基の場合には、還元触媒の存在下、水素添加して、上記一般式(6)の化合物を得る第3工程と
を含む方法。
【請求項12】
一般式(7)におけるハロゲン原子が、塩素原子、又は臭素原子である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アセタール化剤として、一般式(8)においてRとRとが共にメチル基、エチル基、又はフェニル基である化合物を与える化合物を使用する請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
アセタール化剤がアセトン、2,2−ジメトキシプロパン、及び2−メトキシプロペンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
一般式(9)の化合物がカルボン酸であり、第3工程において、塩基としてアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
一般式(9)の化合物が、酢酸、プロピオン酸、又は安息香酸である請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
一般式(9)の化合物がアルコールであり、第3工程において、還元触媒として、貴金属触媒を使用する請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
貴金属触媒がパラジウム系触媒である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
一般式(7)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールとして光学活性体を用いることにより、光学活性1,3−ジオキソラン−4−メチル−4−メタノール誘導体を得る請求項11〜18のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2007−302591(P2007−302591A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131631(P2006−131631)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】