説明

1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン系殺菌製剤

【課題】透明で貯蔵安定性がある保存剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、a)1、2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその誘導体の少なくとも一つ、b)2-メルカプトピリジンN-オキシド、その塩及びその誘導体の少なくとも一つ及びc)アルカリ化剤の少なくとも一つを含有する、或いは、成分a)乃至c)混合することによって調整され、少なくともpH11である、殺菌剤製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン系殺菌製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2-メルカプトピリジンN-オキシド(以下、ピリチオン)誘導体と組み合わせて、イソチアゾリン-3-オン(イソチアゾロン)を含有する保存剤製剤は公知であり、とりわけパック(pack)保存剤として使用されている。例えば、1,2-ベンズイソチアゾロンと2-メルカプトピリジンN-オキシドの亜鉛塩(ジンクピリチオン)との組み合わせは、水系乳濁液或いは分散液状態で公知である。しかしながら、ジンクピリチオンは、実質的に水及び有機溶媒に不溶であり、それ故1,2-ベンズイソチアゾロンと処方しても透明で均質な濃縮液を得ることはできない。それらは、不均一相を形成しやすく、適用が困難であるという理由で、分散液は、好んではパック保存剤には使用されない。
【0003】
特許文献1は、実施例において、1,2-ベンズイソチアゾロン、2-メルカプトピリジンN-オキシドのナトリウム塩(ソジウムピリチオン)、エチレンジアミン及び炭酸ナトリウム及び臭化ナトリウムを含有し、pHが11.8である、2成分から調製される水溶性組み合わせを切削液に使用することを開示している。エチレンジアミンを含有するために、このタイプの組み合わせは、不利益を負っている。例えば、エチレンジアミンは比較的揮発性であり、不快な臭気を有する。それは、気体相になると、環境領域に対して強アルカリ剤となり(即ち、例えばアルミニウム含有材料に対する腐食の危惧)、製剤の脱色をもたらす。殺菌製剤の更なる成分と反応して生じるエチレンジアミン誘導体からのニトロソアミンの生成は排除できない
特許文献2は、殺菌活性成分としてピリチオンを含み、更なる殺菌活性成分として、ヨードアルキルカルバメート或いは2-アルキルイソチアゾリン-3-オンを含有する殺菌組成物を開示している。特許文献2により、ピリチオンとして望ましいとされたジンクピリチオンの既述した不利益とは別に、2-アルキルイソチアゾロンとして望ましいとされた、2-n-オクチルイソチアゾロンの使用も不利益を伴っている。2-n-オクチルイソチアゾロンは、実質的に水に不溶であり、それ故、水を含有する組成物に均質に透明に溶解、分配するということはない。前述のごとく、パック保存のために必要とされ、これに加えて、2-アルキルイソチアゾロンはアルカリ媒質中では限定的な安定性しか有さず、それらは分解され、殺菌効果は不十分であることが見出されてきたという事実がある。
【0004】
特許文献3は、2-n-オクチルイソチアゾロンとソジウムピリチオン及び溶解促進剤との併用を説明している。しかしながら、アルキルイソチアゾロンを使用して、透明溶液を調製するために必要とされる溶解促進剤の量は、望ましくないほど高い。
【0005】
更に、ホルムアルデヒド或いはホルムアルデヒド供与化合物を含有する製剤も公知である。このタイプの製剤は、高殺菌効果を有する。殺菌効果のためにホルムアルデヒド或いはホルムアルデヒド供与化合物の存在を明らかに必要とする製剤は、その毒性のためにある種の用途には望ましくない。これはまた、特許文献4により処方された、N-、N-、N-トリアルキル-1,3,5-トリアジンである殺藻トリアジンについても同様である。
【特許文献1】EP 1013751 A1
【特許文献2】DE 10040814 A1
【特許文献3】DE 19534532 A1
【特許文献3】DE 10237264 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以下の性質を有する保存剤製剤を提供することが目的であった。
【0007】
-保存剤製剤は、特にアルカリpH域を含む、広範なpH範囲で、殺菌効果があり、
-保存剤製剤は、種々のpH値及び温度で、濃縮液としての高安定性、色安定性、低温安定性、活性成分安定性を含む高度な安定性を有し、
-保存剤製剤は、使用時の費用対効果がよく、
-保存剤製剤は、蒸気相で有効なアルコールと併用されることができ、
-保存剤製剤は、顧客、当局、評価機関(低アレルギー性を必要とする)に受け入れ可能であり、
-保存剤製剤は、透明濃縮物及び透明使用溶液として処方されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、これら及び他の目的は、
a)1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその誘導体の少なくとも一つ、
b)2-メルカプトピリジンN-オキシド、その塩及びその誘導体の少なくとも一つ及び
c)アルカリ化剤の少なくとも一つを含有する保存剤製剤
或いは、成分a)乃至c)を混合することによって調製される保存剤製剤であって、
ここで、製剤は、
i)pHが、少なくとも11であり、
ii)成分b)に対する成分a)の比が、2.1より大であるときは、エチレンジアミンを含まないものである保存剤製剤により達成されることが見出された。
【0009】
当業者には、本発明により処方される成分a)乃至成分c)は、互いに反応することは明らかである。例えば、a)1、2-ベンズイソチアゾロン及び/又はb)2-メルカプトピリジンN-オキシドと、c)アルカリ化剤とは塩を形成する。従って、本発明は、成分a)乃至c)を混合することによって調製される製剤をも提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、とりわけ、1,2-ベンズイソチアゾロンが高pH値で、2-メルカプトピリジンN-オキシドの存在下処方されると、透明な製剤を与えることができることという事実に基づいている。これは、特に、成分a)及びb)の含量が比較的低い場合でさえも、例えば芳香族アルコールのような溶解促進剤の存在に必ずしも依存しない。好適な具体例では、本発明による製剤は、前記した、例えば特許文献2でピリジンと併用された、2-アルキルイソチアゾロンは含有しない。2-アルキルイソチアゾロンは、本出願の実施例で示されるように、特に高pH値では、長期間に亘って貯蔵安定ではない。
【0011】
更に好適な具体例では、本発明による製剤は、気体相では高度に有効であるが、有毒であり、眼、呼吸器官及び皮膚を刺激するホルムアルデヒド或いはホルムアルデヒド供与化合物を含有しない。本発明による製剤は、ホルムアルデヒド或いはホルムアルデヒド供与化合物が存在しないときでさえ、例外的に有効であるという事実により特徴付けられる。
【0012】
更に好適な具体例では、本発明による製剤は、例えば特許文献4で、イソチアゾロンと併用することが公知の殺藻トリアジンを含有しない。殺藻トリアジンの使用は、負利益を付随するが、それは、殺藻トリアジンが実質的に細菌或いは真菌に実質的に効果がなく、パック殺菌剤には不必要であり、更に、比較的高価で実質的に水不溶性であるという理由からである。
【0013】
更に、好適な具体例では、本発明による製剤は、4級アンモニウム化合物を含有しない。4級アンモニウム化合物は、DE 10144187で公知なように、高pH値でも非常に効果があり、洗い落しに対して高度に抵抗性ではあるが、4級アンモニウム化合物の使用は、泡立ち傾向があり、また強アルカリ性水性媒質では限定された程度にしか水溶性がないという理由で、負利益を付随する。本発明による製剤を、例えば、家庭用製品に使用する時には、4級アンモニウム化合物は、そこで慣用される陰イオン性界面活性剤と適合しない。
【0014】
加えて、本発明による製剤は、好ましくは、ヨードプロピニルブチル化合物を含有しない。ヨードプロピニルブチル化合物は、きわめて僅かしか水に溶けず、加水分解に敏感であり、アルカリ媒質中で不安定である。それらは、製剤の(望ましくない)AOX含量に貢献し、脱色傾向を有する。
【0015】
更に、本発明による好適な製剤は、DE 4138090 A1による、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリス-アルキルアミンカルボン酸誘導体を含有しない。DE 4138090 A1のトリアジンカルボン酸誘導体は、本発明によるベンゾイソチアゾロン或いはピリチオン化合物と比較すると、細菌及び真菌に対する有効性が低い腐食防止剤である。例えば、トリアジン誘導体ベクロサン(Becrosan)2126(トリアジンアルカノールアミド)は、細菌及び真菌に対する有効性は不十分である。特許文献2DE 4138090のトリアジンカルボン酸誘導体のようなNH基を含む物質は、亜硝酸塩と反応して、ニトロソアミンを生じる。腐食防止剤は、本発明の組成物(パック保存剤)には必要とされない。
【0016】
最後に、本発明による好適な製剤は、炭酸水素塩、臭化物及び/又は炭酸塩を含有しない。好適な製剤は、a):b)の重量比とは無関係に、エチレンジアミンを含まない。
【0017】
好適な具体例では、製剤は、水を30重量%以上、好ましくは、50重量%以上、更に好ましくは、60〜90重量%、例えば、80〜85重量%で含有する。80重量%以上、例えば、77重量%以上の、特に、82重量%以上の水含量の製剤が、ここでは好ましい。更に好適な具体例では、製剤のpHは、少なくとも12、好ましくは、少なくとも12.2、更に好ましくは、12.6〜13.6、特に、12.8〜13.3である。
【0018】
a)ベンズイソチアゾリン-3-オン
本発明による製剤の成分a)は、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、その誘導体及びそれらの混合物から選択される。1,2-ベンズイソチアゾロン及び好適な誘導体は、下記式により与えられる。
【化1】

【0019】
ここで、Rは、H或いはC-C10-アルキル、Rはヒドロキシ、ハロゲン(特に塩素)、C-C10-アルキル或いはC-C10-アルコキシであり、nは、0〜4であり、2或いはそれ以上のRがあるときは、それらは同一か又は異なる。このタイプの化合物は、とりわけ、WO 01/92444 A1に開示されている。好適な具体例では、Rは、Hである。好適な誘導体は、ハロゲンを含まない。特に好適な成分a)は、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(即ち、nは0で、Rは、Hである。)である。
【0020】
好適な具体例では、a)成分の量は、1〜20重量%、好ましくは、3〜17重量%、更に好ましくは、6〜12重量%、例えば、5〜15重量%、特に、7.5〜9.5重量%である。
【0021】
本発明の本説明により、a)、b)、c)成分の量を計算する際には、1,2-ベンズイソチアゾロン及び/又は2-メルカプトピリジンN-オキシドは、製剤においてアルカリ化剤と塩を形成するか、塩として処方され製剤化することを考慮されるべきである。1,2-ベンズイソチアゾロンの塩の例は、Na、K、Li、Ca、Mg、アンモニウム、2-ヒドロキシエチルアンモニウム及びトリエチルアンモニウム塩のような、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びアミン塩或いは4級アンモニウム塩及びそれらの混合物である。更に、そのような塩の例は、1、2-ベンズイソチアゾロンとアルカリ化剤(1、2-ベンズイソチアゾロンと反応して、対応する塩を与える)との準安定な結合である。特に好適なものは、1,2-ベンズイソチアゾロンのナトリウム塩及びカリウム塩である。
【0022】
製剤において、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンの量を計算する際には、塩形成を導くことのできるアルカリ化剤の量は考慮されない、即ち、a)成分は、量を計算する際には、あたかもアルカリ化剤との塩形成が起こらないかのよう処理される。これは、本発明による製剤のa)成分は、通常1,2-ベンズイソチアゾロンとして添加され、塩としては添加されないという事実を考慮したものである。
【0023】
b)2-メルカプトピリジンN-オキシド
成分b)としては、下記式の2-メルカプトピリジンN-オキシド、その塩、誘導体(2,2´-ジチオビス(ピリジンN-オキシド)、ピリオンジスルフィド)及びそれらの混合物を使用することができる。
【化2】

【0024】
2-メルカプトピリジンN-オキシドの塩の例は、Na、K、Li、Ca、Mg、アンモニア、2-ヒドロキシエチルアンモニウム及びトリエチルアンモニウム塩のような、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びアミン塩そして4級アンモニウム塩及びそれらの混合物である。好適なものはナトリウム塩であり、例えば、40%濃度の水溶液として使用される。
【0025】
特に好適な具体例では、成分b)は塩として、例えば、ソジウムピリチオンとして、添加される。したがって、2-メルカプトピリジンN-オキシドが調剤において塩の形であるならば、成分b)の量を述べる際には、これは、アルカリ化剤の量だけが余計に存在する限り考慮され、アルカリ化剤成分c)の量を計算する際には、これを超える2-メルカプトピリジンN-オキシドの形成が考慮される。
【0026】
好適な具体例では、本発明の製剤による成分b)の量は、1〜20重量%、好ましくは、2〜15重量%、更に好ましくは、3〜12重量%、例えば、4〜10重量%、特に、5〜8重量%である。
【0027】
更に、好適な具体例では、成分b)に対する成分a)の重量比が、1:100〜100:1、好ましくは、1:10〜10:1、特に1:2〜2:1である。
【0028】
c)アルカリ化剤
アルカリ化剤の例は、NaOH、KOH、LiOH、のようなアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、エタノールアミンの如きアルカノールアミンのようなアミン、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属珪酸塩(水ガラスの如き)である。
【0029】
本発明により好適に使用されるアルカリ化剤は、アルカリ金属水酸化物であり、ここで、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム或いは水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合物が特に成分c)として好ましい。水酸化ナトリウムと水酸化カリウムからなる混合物がアルカリ化剤として使用される一つの具体例では、水酸化カリウムは、好ましくは、混合物の20〜95重量、更に好ましくは、50〜90重量%、例えば70〜85重量%、特に、約80重量%である。(したがって混合物中の水酸化ナトリウム画分は、5〜80重量%、10〜50重量%、15〜30重量%、特に、約20重量%である。)
本発明による調剤中のc)成分の量は、好ましくは、0.3〜10重量%、更に好ましくは、0.5〜8重量%、特に、1〜7重量%、例えば、1.5〜6重量%、例えば2.0〜4.5重量%である。
【0030】
本発明による調剤を調整する際には、成分c)を別に添加することは絶対的に必要ではなく、成分a)及び/又は成分b)と共にアルカリ化剤を導入することにより、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンの塩を使用して(好ましくはないが、可能である)、或いは、2-メルカプトピリジンN-オキシドの塩を使用して(好ましい具体例はまさにこの場合で、特にソジウムピリチオンである)、本発明により処方された調剤の高pHを確保することも可能である。
【0031】
一つの特別な具体例では、2-メルカプトピリジンN-オキシドは、アルカリ金属塩(特に、ナトリウム塩)として存在し、或いは、アルカリ金属塩として使用され、成分a)と成分c)の等モル量が、製剤中に存在する。好ましい更なる具体例では、成分a)の量に基づいて、アルカリ化剤の過剰モル量(2-メルカプトピリジンN-オキシドのアルカリ金属塩、特に、ナトリウム塩に加えて)が製剤中に存在する。アルカリ化剤が過剰に存在することが、高pHと相俟って、安定な液体濃縮物の処方に対する、特に良い前提条件となる。また、NaOH、KOH或いはそれらの混合物をアルカリ化剤として選択することが、特に有利である。
【0032】
本発明による好適な製剤は、また、低温度安定性及び気体相の殺菌効果に更なる貢献をする、d)1又はそれ以上の芳香族アルコールを含有する。適当な芳香族アルコールは、(i)アリールオキシアルカノール(グリコールモノアリールエーテル)、(ii)アリールアルカノール及び(iii)オリゴアルカノールアリールエーテルから選択される。
【0033】
(i)本発明により使用されるアリールオキシアルカノールは、式Ar-O-(CHR)-OHで、ここで、Rは、独立してH(nが2以上の時)或いはC-C-アルキルであり、nは、整数であり、好ましくは、2〜10、更に好ましくは、2〜6、特に、2或いは3である。ここで、Ar基は、置換環或いは非置換環アリール基、非置換アリールであり、例えば、フェニル或いはナフチルが特に好ましい。本発明により使用されるアリールオキシアルカノールの例は、フェノキシエタノールとフェノキシプロパノールである。好ましいフェノキシプロパノールは、1-フェノキシプロパノール-2、2-フェノキシプロパノール-1或いはそれらの混合物、及び3-フェノキシプロパノール-1である。
【0034】
(ii)本発明により使用されるアリールアルカノールは、式Ar-(CHR)-OHであり、ここで、Rは、独立してH或いはC-C-アルキルであり、nは、整数であり、好ましくは、1〜10、更に好ましくは、1〜6、特に、1、2、3或いは4である。ここで、Ar基は、置換環或いは非置換環アリール基、非置換アリールであり、例えば、フェニル或いはナフチルが特に好ましい。アリールアルカノールの例は、3-フェニルプロパノール-1、フェニルエチルアルコール、ベラチルアルコール(3、4-ジメトキシフェニルメチルアルコール)、ベンジルアルコール、及び2-メチル-1-フェニル-2-プロパノールである。(iii)オリゴアルカノールアリールエーテルは、例えば、フェノキシ-ジ-、-トリ-、及び-オリゴエタノール及びフェノキシ-ジ-、-トリ-、及び-オリゴプロパノールである。フェノキエタノールに加えて、特に好適な芳香族アルコールは、フェノキシプロパノール、ベンジルアルコール及びそれらの混合物を含む。
【0035】
本発明による好ましい製剤は、1〜25重量%、好ましくは、3〜20重量%、更に好ましくは、5〜15重量%、例えば、7〜13重量%、特に、約10重量%である、d)成分を含有する。
【0036】
特に好適な具体例において、製剤は以下から調整される。
【0037】
a)7〜8重量%のベンズイソチアゾロン、
b)7〜8重量%の2-メルカプトピリジンN-オキシドのナトリウム塩、
c)約2.0重量%の水酸化ナトリウム及び残部水。
【0038】
別の特に好適な具体例において、製剤は以下から調整される。
【0039】
a)約9重量%のベンズイソチアゾロン、
b)5〜6重量%の2-メルカプトピリジンN-オキシドのナトリウム塩、
c)約4.5重量%の水酸化カリウム(或いは、約3.6重量%の水酸化カリウムと約0.9重量%の水酸化ナトリウムを供給する混合物)及び残部水。
【0040】
これらの製剤は、少なくとも3月の非常に良好な貯蔵安定性を有する。
【0041】
本発明は、とりわけ、1,2-ベンズイソチアゾロンがアルカリ金属水酸化物と水溶性塩を形成し、一方、2-n-オクチルイソチアゾロンのような2-アルキルイソチアゾロンは、アルカリ金属水酸化物と塩を形成せず、また、アルカリ媒質中で実質的に水に不溶であり、不安定であることを見出したという事実に基づいている。本発明による製剤が高pHであることにより、溶解促進剤の存在下で低pHでも達成されないような、良好な貯蔵安定性が達成される。
【0042】
本発明による製剤は、それらが、高水含量の製品において良好な溶解性と分配性を有し、顧客及び評価機関におおいに受け入れられるという事実により特徴付けられる。加えて、成分は一緒になって相乗的に作用する。更に、本発明による製剤は、良好な貯蔵安定性を有する。更に、本発明は、b)成分(随意に、水溶液として)を最初に水に導入し、ついでa)成分を添加し、その後c)成分を添加し、存在するなら、最後にd)成分を添加する、本発明による製剤を調製する方法に関するものである。
【0043】
方法の別の具体例は、a)成分を最初に水に導入し、ついでc)成分を添加し、その後b)成分を添加し、そしてその後、混合物は、水で所望の濃度に希釈される。
【0044】
更に、本発明は、特に、化粧料或いは医薬製品、家庭用品或いは原末のような、水系製品の保存或いは貯蔵のための、組成物への微生物の攻撃を防止し或いは減少させるための製剤の使用に関するものである。
【0045】
加えて、本発明は、組成物(例えば、水系製品)が本発明による製剤の有効量で処理される、組成物への微生物の攻撃を防止し或いは減少させる方法に関するものである。
【0046】
更に、本発明は、本発明による製剤を含有する、例えば、水系製品のような保存及び/又は貯蔵製品に関するものである。
【0047】
本発明による製剤に使用される更なる活性成分の例は、化粧品法令の付属文書6(Annexe6 of Cosmetic Ordinance)に規定される保存活性成分であり、エタノール、プロパノールの如きアルコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール-1,2,ヘキサンジオール-1,2,オクタンジオール-1,2,デカンジオール-1,2,オクトキシグリセロール(2-エチルヘキシルグルセロールエーテル)、オクチルグリセロール、ドデシルグリセロールを例とするポリール或いはそれらの誘導体、グリセロールモノラウレート、グリセロールカプリレート、グリセロールカプレートの如きグリセロールモノエステル、N-オクタノイルグリシンの如きN-アシルアミノ酸或いはそれらの誘導体、アルカリ金属亜硫酸塩、アルカリ金属亜硫酸水素塩或いはこれら物質の混合物である。
【0048】
好ましい、殺菌活性成分は、ブロノポール、ヨードプロピニルブチルカルバメート、ジブロモジシアノブタン、ジクロロベンジルアルコール、クロロフェネシンの如き有機ハロゲン化合物、ギ酸、ソルビン酸、サリチル酸、安息香酸、ジヒドロ酢酸、ウンデシレン酸の如きカルボン酸又はその塩、パラベン(例、メチル-、エチル-、ピロピル-及びブチル-パラベン)及びその塩、o-フェニルフェノール、p-クロロ-m-クレゾールの如きフェノール、ホルムアルデヒド、グルタルジアルデヒド、サクシナルアルデヒドの如きアルデヒド、ホルムアルデヒド供与化合物(例、エチレングリコールビスヘミホルマール、ベンジルアルコールビスヘミホルマール、グロタン(Grotan)BK、グロタン(Grotan)OX、グロタン(Grotan)OF、グロタン(Grotan)OK、テトラメチロールアセチレンジウレア、ジメチロールジメチルヒダントイン、ジアゾリジニルウレア、ジメチロールウレアの如きO-或いはN-ホルマール)の如きアルデヒド供与化合物、サクシナルアルデヒド供与化合物(例、ジメトキシテトラヒドロフラン)、グルタルアルデヒド供与化合物(アルコキシジヒドロピラン、アルコキシテトラヒドロフラン)、メチル-、クロロメチル-、オクチルイソチアゾロンの如きイソチアゾロン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、バントシル(Vantocil)IB、バルダック(Bardac)22、クロルヘキシジン塩、アレキシジン塩の如き陽イオン性化合物及び4級アンモニウム塩化合物、H、メチルエチルケトン過酸化物、t-ブチルヒドロパーオキサイド、過酢酸及びその混合物の如き過酸化物である。
【0049】
活性成分の例は、ETDA、NTAの如き錯化剤、クエン酸、燐酸の如きpH変更剤或いはpH緩衝剤、ビタミンE、フェノール誘導体の如き抗酸化剤、グリコール、グルコールエーテルの如き低温安定剤、アルコール、グリコール、グルコールエーテル、例、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコールの如き溶解促進剤、結晶化防止剤、粘度変性剤、増粘剤或いはそれらの塩或いはこれら物質の混合物である。
【0050】
本発明の利点は、以下の実施例から特に明らかである。
【0051】
実施例1
2-n-オクチルイソチアゾロンのpH約13での分解
1.1重量%のカソン(Kathon)893F(2-n-オクチルイソチアゾロン、グリコール中45%濃度)と48.89重量%のメタノールと50重量%の水酸化ナトリウム水溶液(c=0.5mol/l)が、pH約13の混合物を調製するために使用され、それの活性成分含量(重量%)が35日間以上HPLCを使って監視された。
【0052】
結果は、以下に示される。
【表1】

【0053】

【0054】
これは、2-n-オクチルイソチアゾロンのような2-アルキルイソチアゾロンは、アルカリ条件下では安定でないことを示している。
【0055】
実施例2
次の製剤が、定められた成分を混合することにより調製された。表の定量データは、活性成分の量を意味する。2-メルカプトピリジンN-オキシドは、ナトリウム塩としてソジウムピリチオン(水溶液中40%濃度)で使用され、1、2-ベンズイソチアゾロンは、85%濃度の含水固体として使用された。水酸化カルシウムと水酸化ナトリウムは、夫々の場合、45%濃度の水溶液として使用された。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその誘導体の少なくとも一つ、b)2-メルカプトピリジンN-オキシド、その塩及びその誘導体の少なくとも一つ及びc)アルカリ化剤の少なくとも一つを含有する、或いは、成分a)乃至c)を混合することによって調製される保存剤製剤であって、
ここで、製剤は、(i)pHが、少なくとも11であり、(ii)成分b)に対する成分a)の重量比が、2.1より大であるときは、エチレンジアミンを含まない保存剤製剤。
【請求項2】
請求項1記載の製剤であって、水を、30重量%以上、好ましくは、50重量%以上、更に好ましくは、60〜90重量%、例えば、80〜85重量%で含有する製剤。
【請求項3】
請求項1或いは2記載の製剤であって、N-アルキルイソチアゾリン-3-オンを含有しない製剤。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項記載の製剤であって、そのpHが少なくとも12、好ましくは、少なくとも12.2、更に好ましくは、12.6〜13.6、特に、12.8〜13.3であることを特徴とする製剤。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項記載の製剤であって、a)成分が、1、2-ベンズイソチアゾリン-3-オンであることを特徴とする製剤。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項記載の製剤であって、a)成分の量は、1〜20重量%、好ましくは、3〜17重量%、更に好ましくは、5〜15重量%、例えば、6〜12重量%、特に7.5〜9.5重量%であることを特徴とする製剤。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項記載の製剤であって、2-メルカプトピリジンN-オキシドの塩が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩或いは亜鉛塩であり、ここで、b)成分として、2-メルカプトピリジンN-オキシドのナトリウム塩が特に好ましいものであるであることを特徴とする製剤。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項記載の製剤であって、b)成分の量は、1〜20重量%、好ましくは、2〜15重量%、更に好ましくは、3〜12重量%、例えば、4〜10重量%、特に5〜8重量%であることを特徴とする製剤。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項記載の製剤であって、アルカリ化剤が、アルカリ金属水酸化物であり、ここで、c)成分として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム或いは水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合物が特に好ましいものであるであることを特徴とする製剤。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項記載の製剤であって、c)成分の量は、0.3〜10重量%、好ましくは、0.5〜8重量%、更に好ましくは、1〜7重量%、例えば、1.5〜6重量%、特に、2.0〜4.5重量%であることを特徴とする製剤。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項記載の製剤であって、d)(i)アリールオキシアルカノール(グリコールモノアリールエーテル)、(ii)アリールアルカノール及び(iii)オリゴアルカノールアリールエーテルから選択される1又はそれ以上の芳香族アルコールをも含有し、ここでd)成分として、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、ベンジルアルコール及びそれらの混合物が特に好ましいものであることを特徴とする製剤。
【請求項12】
請求項11記載の製剤であって、d)成分の量は、1〜25重量%、好ましくは、3〜20重量%、更に好ましくは、5〜15重量%、例えば、7〜13重量%、特に、約10重量%であることを特徴とする製剤。
【請求項13】
請求項2乃至12の何れか1項記載の水含有製剤の調製方法であって、b)成分を最初に水に導入し、ついでa)成分を添加し、その後c)成分を添加し、随意に最後にd)成分を添加する調製方法。
【請求項14】
請求項2乃至12の何れか1項記載の水含有製剤の調製方法であって、a)成分を最初に水に導入し、ついでc)成分を添加し、その後b)成分を添加し、そしてその後混合物は、随意に水で所望の濃度に希釈される調製方法。
【請求項15】
請求項1乃至12の何れか1項記載の製剤の使用であって、組成物への微生物の攻撃を防止し或いは減少させるための使用。
【請求項16】
組成物への微生物の攻撃を防止し或いは減少させる方法であって、組成物は、請求項1乃至12の何れか1項記載の製剤の有効量で処理されるものである方法。
【請求項17】
最終殺菌製品であって、請求項1乃至12の何れか1項記載の製剤を含有する製品。

【公開番号】特開2008−74850(P2008−74850A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244189(P2007−244189)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(399035504)エール・リキード・サンテ(アンテルナスィオナル) (26)
【Fターム(参考)】