説明

1,3‐ジメチルー2−イミダゾリジノンの製造法

【課題】DMIを簡単な手段で、しかも連続的に製造できる方法を開発すること。
【解決手段】DMIを溶媒として、DEDと尿素とを反応させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3‐ジメチルー2−イミダゾリジノン(以下DMIという)の製造方法に関し、更に詳しくは、簡易な方法でしかも連続的にDMIを製造しうる方法を提供せんとするものである。
【背景技術】
【0002】
DMIは、極性非プロトン溶媒として広く使用されている極めて有用な物質である。特にポリアミド類、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリウレタン、フエノール樹脂などの高分子化合物の優れた溶媒であり、また無機塩類の多くのものと錯塩を形成して溶解し、多くの有機反応の溶媒としても用いられる有用な物質である。
【0003】
従来、DMIの製造方法は多数提案されている。たとえば、N,N’−ジメチルエチレンジアミンと二酸化炭素とを反応させる方法(特許文献1)や、エチレンジアミンと尿素を反応させて2−イミダゾリジノンを得、これにホルマリンを付加させた反応生成物をトリクロロ酢酸、ギ酸などで還元してN,N′−ジメチル化させる方法、またこの還元方法を改良して貴金属触媒を使用し、酸性下に水素添加する方法、さらにN,N′−ジメチルエチレンジアミンから、これとホスゲンもしくはトリクロロメチルクロロホーメートをホスゲンに分解しながら反応させる方法などが知られている。
【0004】
さらに特許文献2には、N,N′−ジメチルエチレンジアミンと尿素を加熱反応させた場合、中間体として1,1’−ジメチル−1,1’−ジメチレンビスウレアが生成することに着目し、極性非プロトン溶媒の存在下に、N,N′‐ジメチルエチレンジアミンに対し尿素を約2モル倍仕込み、初期反応の1,1’−ジメチル−1,1’−ジメチレンビスウレアの生成が完結するまでは140℃以下で反応させ、引き続き180℃以上でN,N′‐ジメチルエチレンジアミンを添加しながら反応させることを特徴とする2段階法が提案されている。
【特許文献1】特公平1−15505号
【特許文献2】特公平6−65666号
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DMIを製造する方法は、このように従来から各種の方法が知られているが、いずれの方法によっても収率が極めて低く、工業的方法としては到底満足できるものではなかった。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、工業的に有用なDMIを簡易な方法で、連続的に製造し得る方法を提供せんとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のこの課題は、DMIを溶媒として、N,N′‐ジメチルエチレンジアミン(以下DEDという)と尿素とを反応せしめて、DMIを製造することにより、解決される
そして特に溶媒としてのDMIを予め導入した反応釜1に、DEDと尿素とからなる原料混合物を徐々に添加して反応を行いつつ溢流せしめ、この溢流液を反応釜2に導入して充満後、該溢流液の導入を中止して反応を完結させると共に、他方反応釜3に反応釜1からの溢流液を導入移動し、以後反応釜2と同じ処理をすると共に、新たに取り替えた反応釜2に反応釜1からの溢流液を導入して、これを順次繰返して連続的に行うことによって好ましく達成される。
【発明の効果】
【0007】
上記の如く、本発明は、目的物DMIを、DEDと尿素との反応に際し、その溶媒として、使用することを最大の特徴としており、これ自体従来行われたことの全く無い新しい方法であって、この方法を採用することにより、簡単にしかも連続的に反応を続行することが出来るという優れた効果を得ることができる。
その結果簡単に極めて高収率で目的物DMIを製造することが出来、工業的に極めて優れた製造方法として、利用できるに至るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、DMIを反応溶媒として、DEDと尿素とを反応せしめることを、特徴としている。これを化学式で示せば以下の通りである

【0008】
【0009】
この反応に於いて、原料DEDと尿素とをDMIに加え、通常180〜230℃、好ましくは200〜220℃程度で、3〜5時間程度加熱する。DEDと尿素との割合は、1:1でもよいが、一方が過剰になってもよい。溶媒として使用するDMIは、DEDに対して通常1〜5倍程度である。尚原料の一つとして使用するDEDは、例えばエチレンジアミンとヨードメタンとから、通常の方法で製造することが出来る。
【0010】
本発明のもう一つの大きな特徴は、DMIを溶媒として使用することにより、この反応を連続的に行うことが出来ることである。この連続的な方法を図面を参照しつつ以下に説明する。
【0011】
撹拌モーター、冷却管、熱電対、ならびに滴下漏斗を取り付けた、反応釜1のコック4には反応釜2を、そしてコック5は同じ容量の反応釜3を接続し、それぞれの反応釜2及び3には撹拌モーター、冷却管、熱電対を取り付ける。
次いでコック4及び5を閉鎖した反応釜1にDMIを充填し、油浴に入れ、釜内部の温度を所定の温度に維持する。反応釜2及び3には各々DMIを充填し、同じく油浴に入れ、釜内部の温度を所定の温度に維持する。
【0012】
一方、 原料混合物としてDED、尿素及び溶剤のDMIを所定量混合し、撹拌しながら加熱して全体を液状化する。
【0013】
この原料混合物を反応釜1に取り付けた滴下漏斗に入れ、反応釜1へ滴下し、反応釜1中のDMIを溶剤として原料混合物中のDEDと尿素との反応を開始せしめる。同時に反応釜1中の反応液の液面が上昇し、液面が上昇してコックの部分まで到達したところで、コック4を開放する。反応液がコック4から溢れ、反応釜2の方へ滴下される。原料混合物を反応釜1に同じ速度にて滴下し続けると、反応釜2への滴下も続行され、反応釜1及び2で反応が進行していく。
【0014】
反応釜2の反応液が所定量に達したときにコック4を閉鎖し、同時にコック5を開放する。反応釜1中の反応液は、今度はコック5から溢れて反応釜3の方へ滴下される。原料混合物を反応釜1に同じ速度にて滴下し続けると反応釜3への滴下も続行され、反応釜1及び3で反応が進行していく。
【0015】
コック4を閉鎖された反応器2はそのまま所定時間加熱撹拌を続けた後、加熱を停止し、反応釜2をコック4から取り外し、そのまま蒸留して釜残の着色成分や高沸点物を除去して、高純度DMIを得る。
【0016】
反応釜2を取り外したコック4には、先に説明した反応釜2と同じものを新たに接続する。
【0017】
一方、反応釜3の反応液が所定量に達したときにコック5を閉鎖し、同時にコック4を開放し、反応釜1中の反応液を、今度はコック1から溢れて新たに取り付けた反応釜2の方へ滴下させる。原料混合物を反応釜1に同じ速度にて滴下し続けると反応釜2への滴下も続行され、反応釜1及び2で反応が進行していく。
【0018】
コック2を閉鎖された反応器3はそのまま所定時間加熱撹拌を続けた後、加熱を停止し、反応釜3をコック5から取り外し、そのままで弱減圧状態にて蒸留して釜残の着色成分や高沸点物を除去して、高純度DMIを得る。反応釜3を取り外したコック2には、先に説明した反応釜2と同じものを新たに接続する。
【0019】
反応釜1に滴下する原料混合物は、先と同様な方法にて随時作り、必要に応じて滴下装置に追加する。
この操作を繰り返して、高純度のDMIを連続的に合成することができる。
以下に実施例を示して本発明を詳しく説明する。
【実施例1】
【0020】
容量0.5Lの反応釜1に撹拌モーター、冷却管、熱電対、ならびに滴下漏斗を取り付けた。反応釜1のコック4には容量0.5Lの反応釜2を、そしてコック5は同じく容量0.5Lの反応釜3を接続し、それぞれの反応釜に撹拌モーター、冷却管、熱電対を取り付けた。次いでコック4及び5を閉鎖した反応釜1にDMI(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ネオス)0.5Lを充填し、油浴に入れ、釜内部の温度を210〜220℃に維持した。反応釜2及び3には各々0.15LのDMIを充填し、同じく油浴に入れ、釜内部の温度を210〜220℃に維持した。
【0021】
原料混合物としてDED100g、尿素(特級、関東化学)72g及び溶剤のDMI100gを混合し、撹拌しながら90℃に加熱し、全体を液状化させた。この原料混合物を反応釜1に取り付けた滴下漏斗に入れ、反応釜1への滴下を開始した。
【0022】
原料混合物を1時間あたり約50gの速度で滴下した。反応釜1中のDMIを溶剤として原料混合物中のDEDと尿素とが反応を開始し、同時に反応釜1中の反応液の液面が上昇した。液面が上昇してコックの部分まで到達したところで、コック1を開放した。反応液がコック1から溢れ、反応釜2の方へ滴下された。原料混合物を反応釜1に同じ速度にて滴下し続けると、反応釜2への滴下も続行され、反応釜1及び2で反応が進行していった。
【0023】
反応釜2の反応液が約0.5Lに達したときにコック1を閉鎖し、同時にコック2を開放した。反応釜1中の反応液は、今度はコック2から溢れて反応釜3の方へ滴下された。原料混合物を反応釜1に同じ速度にて滴下し続けると反応釜3への滴下も続行され、反応釜1及び3で反応が進行していった。
【0024】
コック1を閉鎖された反応器2はそのまま約4時間加熱撹拌を続けた。加熱を停止し、反応釜2をコック1から取り外し、そのまま120〜150℃で弱減圧状態にて蒸留して釜残の着色成分や高沸点物を除去して、純度99.8%の高純度DMIを原料に対する収率99%で得た。反応釜2を取り外したコック1には、先に説明した反応釜2と同じものを新たに接続した。
【0025】
一方、反応釜3の反応液が約0.5Lに達したときにコック2を閉鎖し、同時にコック1を開放した。反応釜1中の反応液は、今度はコック1から溢れて新たに取り付けた反応釜2の方へ滴下された。原料混合物を反応釜1に同じ速度にて滴下し続けると反応釜2への滴下も続行され、反応釜1及び2で反応が進行していった。
【0026】
コック2を閉鎖された反応器3はそのまま約4時間加熱撹拌を続けた。加熱を停止し、反応釜3をコック2から取り外し、そのまま120〜150℃で弱減圧状態にて蒸留して釜残の着色成分や高沸点物を除去して、純度99.8%の高純度DMIを原料に対する収率99%で得た。反応釜3を取り外したコック2には、先に説明した反応釜3と同じものを新たに接続した。
【0027】
反応釜1に滴下する原料混合物は、先と同様な方法にて随時作り、必要に応じて滴下装置に追加した。
この操作を繰り返して、純度99.8%のDMIを連続的に合成することができた。
【実施例2】
【0028】
温度計、撹拌装置、還流管を備えた500mlの四ツ口フラスコに、エチレンジアミン(東京化成社製、特級)100gと、尿素(関東化学社製、特級)101gと、エチレングリコール(東京化成社製、特級)108gとを仕込んだ。】
撹拌しながら昇温させて、反応液の温度が約130℃に到達した時点で、撹拌を停止させ、4時間還流を行った。反応液をさらに上昇させて、約210℃として、徐々に減圧しながらエチレングリコールを除去し、中間生成物である2−イミダゾリジノン(90g)を得た。
【0029】
次いで、得られた中間生成物に対して、パラホルムアルデヒド(関東化学社製、特級)75gと、ギ酸(関東化学社製、特級)480gとを添加して、撹拌しながら、反応液温度115℃を維持し、16時間反応させた。そのまま、還流管トップから流出させ常圧蒸留を行い、未反応のパラホルムアルデヒド及び二酸化炭素を留去した。次いで圧力39〜67hPa、温度120〜134℃で減圧蒸留し、未反応のギ酸及び水を留去し、約90%純度の粗DMIを60g得た。
【0030】
粗DMI中に含まれる、DMIに類似した構造を有する副生物を濾過により除去した。ついで粗DMI中に残るギ酸を圧力22.6hPa、温度105℃で減圧蒸留して留去し、最終生成物である1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン54gを得た。
得られた生成物をGC−FID(ガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出器)を用いて測定したところ、純度は99%以上であった。
この反応を化学式で示せば、以下の通りである。
【0031】


【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の一実施例を説明するための模擬的な説明図である。
【符号の説明】
1:反応釜
2:同上
3;同上
4:コック
5:同上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3ー‐ジメチルー2−イミダゾリジノンを溶媒として、N,N‐−ジメチルエチレンジアミンと尿素とを反応させることを特徴とする1,3‐ジメチルー2−イミダゾリジノンの製造法
【請求項2】
溶媒としての1,3ー‐ジメチルー2−イミダゾリジノンを、予め導入した反応釜1に、N,N‐−ジメチルエチレンジアミンと尿素とからなる原料混合物を徐々に添加して反応を行いつつ溢流せしめ、この溢流液を反応釜2に導入して充填後、該溢流液の導入を中止して反応を完結させると共に、他方反応釜3に反応釜1からの溢流液を導入し、以後反応釜2と同じ処理をすると共に、新たに取り替えた反応釜2に反応釜1からの溢流液を導入して、これを順次繰返して連続的に行う請求項1に記載の製造法
【請求項3】
使用するN,N‐−ジメチルエチレンジアミンとして、エチレンジアミンとヨードメタンとの反応により製造されたものを使用する請求項1又は2に記載の製造法

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−241011(P2012−241011A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124654(P2011−124654)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(511134838)株式会社油研 (1)