説明

1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンを生成するためのイタコン酸またはイタコン酸誘導体と第1級アミンとの混合物

本発明は、イタコン酸またはイタコン酸誘導体と式(I)の第1級アミンとを含有し、第1級アミン対イタコン酸またはイタコン酸誘導体のモル比が0.5:1〜20:1の範囲である混合物であって、該混合物が、使用するイタコン酸または使用するイタコン酸誘導体に対して50モル%以下の、式(II)の4−カルボキシピロリドン、式(II)の4−カルボキシピロリドンの誘導体、および式(III)の4−カルバミドピロリドンを含有することを特徴とし、[式中、Rは、1〜24個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状の飽和脂肪族基、または3〜24個の炭素原子を有する飽和脂環式基を表わす]混合物に関する。さらに本発明は、1,3−アルキルメチルピロリドンおよび/または1,4−アルキルメチルピロリドンを生成するための本発明による混合物の使用、および1,3−アルキルメチルピロリドンおよび/または1,4−アルキルメチルピロリドンを生成するための方法に関する。さらに本発明は、1,3−アルキルメチルピロリドンおよび/または1,4−アルキルメチルピロリドンと、1,3−アルキルメチルピロリジンとを含有し、1,3−アルキルメチルピロリジンの部分が10〜10,000ppmの範囲である混合物と、1,3−アルキルメチルピロリドンと1,4−アルキルメチルピロリドンとを含有し、1,3−アルキルメチルピロリドン対1,4−アルキルメチルピロリドンのモル比が1:1〜10:1の範囲であることを特徴とする混合物とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イタコン酸またはイタコン酸誘導体と第1級アミンとを含む混合物、ならびに1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンを製造するための出発物質としてのその使用に関する。
【0002】
さらに本発明は、本発明の混合物を水素化触媒の存在下で水素と反応させることによって、1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンを製造するための方法にも関する。さらに本発明は、1,3−アルキルメチルピロリドンと1,4−アルキルメチルピロリドとを含む混合物、およびこれらの混合物の使用を提供する。
【0003】
N−アルキルピロリドンは、化学工業における重要な生成物であり、数多くの用途に使用されている。
【0004】
N−アルキルピロリドンは、広く有用な、熱的に安定かつ化学的に実質的に不活性の無色で低粘性の非プロトン性溶媒である。例えば、N−メチルピロリドン(NMP)およびN−エチルピロリドン(NEP)、ならびにそれらの高級同族体は、溶媒、希釈剤、抽出剤、洗浄剤、脱脂剤、吸着剤、および/または分散剤として有用である。
【0005】
NMPは、石油化学プロセスにおける純炭化水素の抽出、アセチレン、1,3−ブタジエン、またはイソプレンなどのガスの精製および除去、例えばLURGI GmbHのDistapex法での芳香族化合物の抽出、酸性ガス洗浄、および潤滑油抽出において使用される。さらに、NMPは、ポリマー分散液、例えばポリウレタン分散液の溶媒としても使用することができる。
【0006】
また、NMPは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、アクリレート、またはブタジエン−アクリロニトリルコポリマーなどの多くのポリマーの良溶媒であり、それらのポリマーの加工に使用される。
【0007】
また、NMPは、塗料およびコーティングの残留物を除去する際の洗浄剤として、金属、セラミック、ガラス、およびプラスチックの表面用の酸洗剤および洗浄剤としても使用することができる。
【0008】
NMPは、さらに、作物保護における有効成分の配合のための溶媒または共溶媒でもある。
【0009】
NEPおよびその他のN−アルキルピロリドンは、多くの用途でNMPの代わりに使用でき、その上、多くの場合、さらなる有益な特性を示す(国際公開(A)第2005/090447号、BASF SE)。
【0010】
N−アルキルピロリドンの製造は周知である。
【0011】
N−アルキルピロリドンは、例えば、ガンマ−ブチロラクトン(γ−BL)をモノアルキルアミンと反応させて、1当量の水を除去することによって得ることができる。これは例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Volume A22, 5th ed., p. 459 (1993)と同様に、またはドイツ特許公開公報(A)第19 626 123号(BASF SE)と同様に行なうことができる。
【0012】
また、例えば欧州特許公開公報(A)第745 598号(Bayer AG)または国際公開(A)第02/102773号(BASF SE)に従って、水素および水素化触媒の存在下で、マレイン酸無水物またはその他のジカルボン酸誘導体とモノエチルアミンとからN−アルキルピロリドンを製造することも同様に可能である。
【0013】
N−アルキルピロリドンに加え、置換N−アルキルピロリドンも周知である。置換によって、N−アルキルピロリドンの適用性および加工性を改質することができる。
【0014】
そのような改質の一例には、ピロリドン環の3位または4位に結合した1つ以上のアルキル置換基によるN−アルキルピロリドンの改質がある。アルキル置換N−アルキルピロリドンは、例えば欧州特許公開公報(A1)第0027022号の開示に従って、ルテニウム触媒の存在下で、アルキルアミンと水素を置換環状無水物/イミドと反応させることによって製造することができる。
【0015】
国際公開(A1)第2005051907号は、ルテニウム触媒またはオスミウム触媒下における、ジカルボン酸またはその誘導体と水素およびアミンとの反応を開示している。
【0016】
米国特許第4,731,454号は、相当するN−アルキルピロリドンを得るための、コバルト触媒上での環状イミドの還元を記載している。
【0017】
炭素担持貴金属触媒存在下での飽和環状カルボキシミドまたはジカルボン酸の飽和アンモニウム塩の反応は、国際公開第02/102772号に開示されている。
【0018】
ドイツ特許公開公報(A1)第1620191号は、3位および/または4位の炭素原子がアルキル化されたα−ピロリドンの相当するN−置換誘導体を得るための、水素化触媒の存在下でのアルキルコハク酸と第1級アミンおよび水素との反応を記載している。
【0019】
上記に引用した参考文献は、ピロリドンの製造に適した出発物質としての、飽和ジカルボン酸およびジカルボン酸誘導体、ならびに不飽和主鎖を有するジカルボン酸およびジカルボン酸誘導体、例えばマレイン酸およびその誘導体の使用を開示しているだけである。不飽和の側鎖あるいはその側鎖中の末端二重結合を有するジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体を相当するピロリドンに転換することができるということは記載されていない。
【0020】
不飽和末端側鎖を有するジカルボン酸の一例は、イタコン酸である。
【0021】
イタコン酸と第1級アミンとの反応は、発熱反応において、相当する4−カルボキシピロリドンまたは4−カルバミドピロリドンを形成し、これは不飽和側鎖への第1級アミンの付加により形成されることが知られている(Imamura et al., Chemical & Pharmaceutical Bulletin (2004), 52(1), 63−73、Paytash et al., Journal of the American Chemical Society (1950), 72, 1415−1416、およびSouthwick et al., Journal of Organic Chemistry (1956), 21, 1087−1095を参照)。したがって、4−カルボキシピロリドンまたは4−カルバミドピロリドンの形成が、所望のピロリドンへの水素化が生じる前に開始するため、相当するピロリドンを得るためのイタコン酸と第1級アミンおよび水素との直接の反応は開示されていない。
【0022】
また、イタコン酸の窒素含有誘導体、例えばイタコン酸のアミドまたはイミンは、二重結合への窒素の付加による水素化条件下で反応して、望ましくない環状副生成物を生じうる。
【0023】
この反応性によって、イタコン酸およびその誘導体は、不飽和主鎖を有し、そのため上記の参考文献に記載されている方法によってアルキルメチルピロリドンに転換することができるそれらの構造異性体のシトラコン酸およびメサコン酸ならびにそれらの誘導体とは著しく異なる。
【0024】
それにもかかわらずイタコン酸をメチル置換されたN−アルキルピロリドンを製造するための出発物質として使用できるようにするためには、ドイツ特許公開公報(A1)第1620191号の教示にしたがって、2−メチルコハク酸を水素化触媒の存在下で、第1級アミンおよび水素と反応させることができる。次いで、イタコン酸の水素化によって2−メチルコハク酸を製造することができる(中国特許公開(A1)第1609089号)。しかしながら、このことは、ピロリドンを得るための2−メチルコハク酸と第1級アミンとの反応の前に、その前の反応段階で、出発物質の2−メチルコハク酸を得なければならないことを意味する。
【0025】
本発明の目的は、1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンを製造するための方法であって、高い選択性および収率で、イタコン酸またはイタコン酸誘導体を第1級アミンおよび水素と反応させることができる方法を提供することであった。より具体的には、望ましくない副生成物、特に4−カルボキシピロリドンまたは4−カルバミドピロリドンの形成は、極めて実質的に回避しなければならなかった。特に1,3−ジメチルピロリドンおよび/または1,4−ジメチルピロリドンを製造する場合、毒性N−メチルピロリドンの形成は回避なければならなかった。N−メチルピロリドンは、例えば、4−カルボキシピロリドンおよびその誘導体からのさらなる反応(脱カルボキシル化/水素化)によって形成しうる。
【0026】
本発明のさらなる目的は、イタコン酸をベースとするが、別途イタコン酸を相当する2−メチルコハク酸に水素化する必要がない、1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンを製造するための簡易化された方法を提供することであった。そのようにしてプロセス経済性が高い方法であって、さらに技術的にも実施が簡単な方法を提供するものとした。本発明のさらなる目的は、再生可能な原料をベースにして製造することができるイタコン酸またはイタコン酸誘導体を用いた、1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンの製造であった。再生可能な原料に戻すことで、限られた資源の維持に寄与することができ、また持続可能な経済活動を可能にする。
【0027】
本目的は、
イタコン酸またはイタコン酸誘導と、式(I)
R−NH2(I)
の第1級アミンとを含み、第1級アミン対イタコン酸またはイタコン酸誘導体のモル比が0.5:1〜20:1の範囲の混合物であって、
前記混合物が、使用するイタコン酸または使用するイタコン酸誘導体に対して50モル%以下の、式(II)の4−カルボキシピロリドン、式(II)の4−カルボキシピロリドンの誘導体、および式(III)の4−カルバミドピロリドンを含み、
【化1】

[式中、Rは、1〜24個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状の飽和脂肪族基、または3〜24個の炭素原子を有する飽和脂環式基である]、混合物を提供することによって達成される。
【0028】
本発明の混合物は、一般式(I)
R−NH2(I)
[式中、
Rは、1〜24個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状の飽和脂肪族基、好ましくは、C1-12−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、シクロヘプチルメチル、n−ヘプチル、イソヘプチル、シクロヘキシルメチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、イソノニル、n−デシル、イソデシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、イソドデシル、
より好ましくは、C1-8−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、および2−エチルヘキシル、
最も好ましくは、C1-4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、
特に好ましくはメチルであるか、
あるいは、
3〜24個の炭素原子を有する飽和脂環式基、好ましくは、C4-8−シクロアルキル、例えばシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル、より好ましくは、シクロペンチル、およびシクロヘキシルである]の第1級アミンを含む。
【0029】
好適な第1級アミンは、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、イソペンチルアミン、および2−エチルヘキシルアミンである。
【0030】
極めて好適な第1級アミンは、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、およびtert−ブチルアミン、特にメチルアミンである。
【0031】
本発明の混合物は、イタコン酸またはイタコン酸誘導体をさらに含む。
【0032】
特に好適な実施形態において、本発明の混合物はイタコン酸を含む。イタコン酸は、好ましくは、再生可能な原料をベースにして製造する。イタコン酸は、例えばレモンの皮を蒸留することによって得ることができる。
【0033】
一般的に、イタコン酸は、未精製のサトウキビ糖もしくはビート糖から、または糖蜜から、炭水化物を発酵させることによって商業用に製造されている。典型的には、酵素のアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)またはアスペルギルス・イタコニカス(Aspergillus itaconicus)(Jakubowska, Smith and Pateman (eds.), Genetics and Physiology of Aspergilius, London: Academic Press 1977; Miall, Rose (ed.), Economic Microbiology, Vol. 2, p. 47−119, London: Academic Press 1978)の使用により、クエン酸からイタコン酸が形成されるが、これはクエン酸回路において形成される。クエン酸は、一般に、まずアコニット酸ヒドラターゼによってcis−アコニット酸に転換され、これは続いてアコニット酸デカルボキシラーゼによってイタコン酸に脱カルボキシル化される(米国特許第3,044,941号)。本発明の混合物中に、イタコン酸から得ることができる構造異性体のシトラコン酸およびメサコン酸が存在するかしないかは重要ではない。
【0034】
また、本発明の混合物は、イタコン酸誘導体を含んでいてもよい。
【0035】
イタコン酸誘導体は、好ましくは、イタコン酸エステルである。
【0036】
イタコン酸は、既知の方法でエステル化することができる。
【0037】
Cowie et al.(J.M. G. Cowie et al., Polymer 18 (1977), 612−616)は、イタコン酸のジエステルと相当する4−アルキルイタコネートとの生成物混合物が得られる、イタコン酸の酸触媒によるエステル化を開示している。また、4−アルキルイタコネートは、4位が2位よりも反応性が高いことから、一般に、無水物のエステル化において主生成物として形成される。
【0038】
好適なイタコン酸のジエステルは、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジ−n−プロピルイタコネート、ジ−n−ブチルイタコネート、ジ−n−ペンチルイタコネート、ジ−n−2−メチルペンチルイタコネート、ジ−n−ヘキシルイタコネート、およびジ−2−エチルヘキシルイタコネートである。
【0039】
好適なイタコン酸のモノエステルは、4−メチルイタコネート、4−エチルイタコネート、4−n−プロピルイタコネート、および4−n−ブチルイタコネート、4−n−ペンチルイタコネート、4−(2−メチルペンチル)イタコネート、4−n−ヘキシルイタコネート、および4−(2−エチルヘキシル)イタコネートである。
【0040】
さらなる好適なイタコン酸誘導体は、イタコン酸アミドである。
【0041】
イタコン酸アミドの合成は、Christine Ruedigerによる論文に記載されている("Synthesen und Untersuchungen zum Polymerisationsverhalten von Itaconsaeurederivaten" [Syntheses and Studies of the Polymerization Behavior of itaconic acid derivatives], University of Wuppertal, page 38 (http://elpub.bib.uni−wuppertal.de/edocs/dokumente/fb09/diss2000/ruediger; internal&action=buildframes.action))。
【0042】
イタコンアミドの合成のための出発物質は、一般にイタコン酸無水物であり、これをTHF中で適当な第1級アミンと反応させる。この生成物は、例えばシクロヘキサンからの再結晶化によって単離することができる。
【0043】
上記に説明したように、4位が2位よりも反応性が高いことから、一般的に、イタコン酸のモノアミド(イタコン酸4−アミド)が得られる。
【0044】
しかしながら、イタコン酸のジアミドまたはモノアミドとジアミドとの混合物を使用することも可能である。
【0045】
また、イタコン酸イミンもまた、本発明の混合物中の好適なイタコン酸誘導体として使用することができる。
【0046】
本方法において使用することができるその他のイタコン酸誘導体は、前述のイタコン酸誘導体のうちの1つ以上と挙動が化学的に類似しているイタコン酸誘導体、例えば相当するイタコン酸のハロゲン化物、例えばイタコン酸の塩化物またはイタコン酸の臭化物である。
【0047】
しかしながら、使用するイタコン酸誘導体は、イタコン酸の塩、またはイタコン酸の塩の混合物であってもよい。
【0048】
イタコン酸の塩は、例えば、イタコン酸の金属塩、例えばイタコン酸のアルカリ金属塩、イタコン酸のアルカリ土類金属塩、イタコン酸のアルミニウム塩、またはイタコン酸の鉄塩である。
【0049】
しかしながら、使用するイタコン酸の塩は、イタコン酸のアンモニウム塩、またはイタコン酸のアルキルアンモニウム塩であってもよい。
【0050】
アミン対使用するイタコン酸またはイタコン酸誘導体のモル比は、本発明によると、0.5:1〜20:1である。
【0051】
イタコン酸またはイタコン酸のモノエステルもしくはイタコン酸ジエステルを使用する場合、アミン対イタコン酸またはイタコン酸エステルのモル比は、好ましくは1:1〜20:1、より好ましくは1.5:1〜10:1、より好ましくは2:1〜8:1である。
【0052】
使用するイタコン酸誘導体が、イタコン酸のモノアミドまたはイタコン酸のモノイミドである場合、アミン対上記のイタコン酸の一置換誘導体のモル比は、好ましくは0.5:1〜20:1、より好ましくは1:1〜10:1、最も好ましくは2:1〜8:1である。
【0053】
使用するイタコン酸誘導体が、イタコン酸のジアミドまたはイタコン酸のジイミドである場合、アミン対上記のイタコン酸の二置換誘導体のモル比は、好ましくは0.5:1〜20:1、より好ましくは0.5:1〜10:1、最も好ましくは1:1〜8:1である。
【0054】
本発明の混合物は、使用するイタコン酸または使用するイタコン酸誘導体に対して50モル%未満の含分の、式(II)の4−カルボキシピロリドン、式(II)の4−カルボキシピロリドンの誘導体、および式(III)の4−カルバミドピロリドンを含み、これはそれぞれ使用するイタコン酸または使用するイタコン酸誘導体に対して、好ましくは30モル%未満、より好ましくは10モル%未満、さらに好ましくは5モル%未満、特に好ましくは1モル%未満である。
【0055】
一般的に、式(Il)の4−カルボキシピロリドンは、遊離酸の形態ではなく、本発明の混合物中に形成しうる式(II)の4−カルボキシピロリドンの相当する誘導体として、本発明の混合物中に存在する。
【0056】
そのような式(II)の4−カルボキシピロリドンの誘導体は、一般式(IX)
【化2】

[式中、
nは、整数1〜4であり、
Xは、H、R、金属M、またはNH3Rであり、このときRは、上記に定義したとおりである]で表わすことができる。
【0057】
nは、好ましくは、整数1〜2であり、nは、より好ましくは1である。
【0058】
Xは、有機R基であってもよく、このときRは、上記に定義したとおりである。
【0059】
Mは、好ましくは1価から4価の金属、好ましくはアルカリ金属群またはアルカリ土類金属群の金属、例えばCaまたはMg、より好ましくはアルカリ金属群の金属、例えばLi、Na、またはKである。
【0060】
Xは、より好ましくはNH3Rであり、このときRは、上記に定義したとおりである。
【0061】
XがMまたはNH3Rである場合、一般式(VIII)の化合物は、好ましくは塩の形態で存在し、その場合、負電荷は好ましくはカルボキシレート基上に局在し(COO-)、正電荷は好ましくは置換基X上に局在する(例えば、M+またはN+RH3として)。
【0062】
従来技術において既知のイタコン酸またはイタコン酸誘導体と第1級アミンとの混合物は、比較的高い含分の式(II)の4−カルボキシピロリドンまたは式(III)の4−カルバミドピロリドンを含むが、これはこれらの化合物が、上述のように、イタコン酸の二重結合への第1級アミンの付加によって自発的に形成されるためである。
【0063】
比較的低い含分の式(II)の4−カルボキシピロリドン、式(II)の4−カルボキシピロリドンの誘導体、および式(III)の4−カルバミドピロリドンを含む、本発明の第1級アミンとイタコン酸またはイタコン酸誘導体との混合物は、接触時の温度100℃以下で、第1級アミンをイタコン酸またはイタコン酸誘導体と接触させることによって得ることができるということが発見された。
【0064】
したがって、本発明は、イタコン酸またはイタコン酸誘導体と、式(I)
R−NH2(I)
の第1級アミンとを含み、第1級アミン対イタコン酸またはイタコン酸誘導体のモル比が0.5:1〜20:1の範囲の混合物であって、
この混合物が、使用するイタコン酸または使用するイタコン酸誘導体に対して50モル%以下の、式(II)の4−カルボキシピロリドン、式(II)の4−カルボキシピロリドンの誘導体、および式(III)の4−カルバミドピロリドンを含み、
【化3】

[式中、Rは、1〜24個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状の飽和脂肪族基、または3〜24個の炭素原子を有する飽和脂環式基である]、混合物を製造する方法であって、第1級アミンをイタコン酸またはイタコン酸誘導体に接触させ、この接触時の温度が100℃以下である方法に関する。
【0065】
イタコン酸またはイタコン酸誘導体を第1級アミンと、好ましくはこれら2つの成分を混合することによって接触させる。
【0066】
イタコン酸またはイタコン酸誘導体と第1級アミンとの混合は、好ましくは均一混合物を生じるべきである。均一化は、例えば、好ましくは撹拌機、例えば遊星攪拌機、アンカー攪拌機、ビーム攪拌機、プロペラ、パドル攪拌機、ディソルバーディスク、またはIntermig撹拌機による、徹底的な攪拌によって実施することができる。さらなる好適な攪拌機形態は、当業者に既知である。
【0067】
本発明によると、イタコン酸またはイタコン酸誘導体と第1級アミンとの接触時の温度は、100℃以下、好ましくは75℃以下、さらに好ましくは50℃以下、特に好ましくは25℃以下である。イタコン酸またはイタコン酸誘導体と第1級アミンとの接触時の温度は、好ましくは−10〜100℃の範囲、好ましくは−5〜75℃の範囲、より好ましくは0〜50℃の範囲、特に好ましくは0〜25℃の範囲である。
【0068】
典型的には、イタコン酸またはイタコン酸誘導体と第1級アミンとの接触は、冷却ジャケット付き容器内で実施する。
【0069】
第1級アミンとイタコン酸またはイタコン酸誘導体とは、好ましくは溶媒中で接触させる。この溶媒は、使用する第1級アミンとの十分な混和性を有するべきである。
【0070】
この溶媒は、好ましくは、イタコン酸またはイタコン酸誘導体と第1級アミンとの混合物との良好な混和性も有するべきである。このような溶媒は、第1級アミンをイタコン酸またはイタコン酸誘導体と接触させる適当な温度で、第1級アミンと溶媒との溶解試験を行なうことによって見出すことができる。
【0071】
好適な溶媒は、水、メタノール、エタノール、n−/イソプロパノール、n−/イソブタノール、THF、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アルキルメチルピロリドン、またはN−アルキルピロリドンである。水を溶媒として使用することが特に好ましい。
【0072】
溶媒中のイタコン酸またはイタコン酸誘導体の含分は、使用する溶媒に対して一般に5〜95質量%であり、それぞれ使用する溶媒に対して、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%である。
【0073】
一般的に、第1級アミンを最初に装填して、イタコン酸またはイタコン酸誘導体を添加する。
【0074】
上記に記載したように、第1級アミンは、溶媒と一緒に最初に装填することができる。イタコン酸またはイタコン酸誘導体も同様に溶媒に溶解させてもよい。この溶媒は、好ましくは、第1級アミンの溶解に使用したものと同じものである。しかしながら、2つの溶媒が互いに混和性であるならば、この溶媒は別の溶媒であってもよい。しかしながら、イタコン酸またはイタコン酸誘導体は、固体の状態で、第1級アミンまたは第1級アミンと溶媒との混合物に添加してもよい。
【0075】
特に好適な実施形態において、本発明の混合物は、一般式[A2-][B+][C+]の塩を含み、このとき[A2-]は、式(IV)
【化4】

のアニオンであり、
[B+]は、式(V)
【化5】

のカチオンであり、
[C+]は、式(V)のカチオンまたは[H+]であり、Rは、上記に定義したとおりである。
【0076】
一般式[A2-][B+][C+]を有するイタコン酸のアンモニウム塩は、溶媒和された形態または解離された形態で存在してよいが、固体塩の状態で存在してもよい。一般式[A2-][B+][C+]のイタコン酸のアンモニウム塩は、接触時温度100℃以下で、イタコン酸と第1級アミンとを接触させることによって得ることができる。
【0077】
第1級アミン対イタコン酸のモル比は、一般に1:1〜2:1である。
【0078】
第1級アミンのイタコン酸に対する比が1:1である場合、一般に、イタコン酸の単塩が形成される([B+]=式(V)のカチオン、[C+]=[H+])。
【0079】
第1級アミンのイタコン酸に対する比が2:1である場合、一般に、イタコン酸の複塩が形成される([B+]および[C+]=式(V)のカチオン)。
【0080】
第1級アミンのイタコン酸に対する比が1:1〜2:1である場合、一般に、単塩と複塩との混合物が得られる。
【0081】
また、第1級アミンのイタコン酸に対する比は、2:1を超えてもよい。一般的に、その場合、本発明のイタコン酸のアンモニウム塩と過剰の第1級アミンとの溶液または混合物が得られる。アミンのイタコン酸に対する比は、好ましくは1:1〜20:1、より好ましくは1.5:1〜10:1、より好ましくは2:1〜8:1である。
【0082】
イタコン酸と第1級アミンとは、好ましくはこれら2つの成分を混合することによって接触させる。イタコン酸と第1級アミンとの混合は、好ましくは均一混合物を生じるべきである。均一化は、例えば、好ましくは撹拌機、例えば遊星攪拌機、アンカー攪拌機、ビーム攪拌機、プロペラ、パドル攪拌機、ディソルバーディスク、またはIntermig撹拌機による、徹底的な攪拌によって実施することができる。さらなる適切な攪拌機形態は、当業者に既知である。
【0083】
本発明によると、イタコン酸と第1級アミンとの接触時の温度は、100℃以下、好ましくは75℃以下、さらに好ましくは50℃以下、特に好ましくは25℃以下である。イタコン酸と第1級アミンとの接触時の温度は、好ましくは−10〜100℃の範囲、好ましくは−5〜75℃の範囲、より好ましくは0〜50℃の範囲、特に好ましくは0〜25℃の範囲である。
【0084】
典型的には、イタコン酸と第1級アミンとの接触は、冷却ジャケット付き容器内で実施する。
【0085】
特に好適な実施形態において、第1級アミンとイタコン酸とは、溶媒中で接触させる。この溶媒は、使用する第1級アミンとの十分な混和性を有するべきである。
【0086】
この溶媒は、好ましくは、イタコン酸と第1級アミンとの混合物との良好な混和性も有するべきである。このような溶媒は、第1級アミンをイタコン酸と接触させる適当な温度で、第1級アミンと溶媒との溶解試験を行なうことによって見出すことができる。
【0087】
好適な溶媒は、水、メタノール、エタノール、n−/イソプロパノール、n−/イソブタノール、THF、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アルキルメチルピロリドン、またはN−アルキルピロリドンである。
【0088】
水を溶媒として使用することが特に好ましい。
【0089】
溶媒中のイタコン酸の含分は、使用する溶媒に対して一般に5〜95質量%であり、それぞれ使用する溶媒に対して、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%である。
【0090】
一般的に、第1級アミンを最初に装填して、イタコン酸を添加する。
【0091】
上記に記載したように、第1級アミンは、溶媒と一緒に最初に装填することができる。イタコン酸も同様に溶媒に溶解させてもよい。この溶媒は、好ましくは、第1級アミンの溶解に使用したものと同じものである。しかしながら、2つの溶媒が互いに混和性であるならば、この溶媒は別の溶媒でもよい。
【0092】
しかしながら、イタコン酸は、固体の状態で、第1級アミンまたは第1級アミンと溶媒との混合物に添加してもよい。
【0093】
本発明のイタコン酸のアンモニウム塩は、典型的には、溶媒和された形態または解離された形態で、溶媒または過剰の第1級アミンとの混合物として存在する。
【0094】
本発明のイタコン酸のアンモニウム塩は、例えば、イタコン酸塩の溶解性が低い液体を添加することにより、塩を沈殿させて単離することができる。
【0095】
また、これらの塩は、溶媒を蒸発させることによって単離することもできるが、この場合、蒸発時の副生成物の形成を防止するために、蒸発過程の温度は100℃を上回るべきではなく、好ましくは0〜100℃の範囲、より好ましくは5〜75℃の範囲、最も好ましくは10〜50℃の範囲である。
【0096】
しかしながら、極めて好適な実施形態において、溶媒とイタコン酸塩との混合物であって、イタコン酸塩が好ましくは解離された形態で存在する混合物は、さらなるワークアップを行なわずに、水素化に直接使用される。
【0097】
また、イタコン酸またはイタコン酸誘導体と第1級アミンとを含む本発明の混合物は、水素の存在下で製造することもできる。本発明の混合物を水素の存在下で製造する場合、混合物の製造時の温度は、望ましくない副生成物の形成が生じないように選択すべきである。したがって、100℃以下、好ましくは75℃以下、より好ましくは50℃以下、特に好ましくは25℃以下で、混合物を水素の存在下で製造することが好ましい。水素の存在下でのイタコン酸またはイタコン酸誘導体と第1級アミンとの接触時の温度は、好ましくは−10〜100℃の範囲、好ましくは−5〜75℃の範囲、より好ましくは0〜50℃の範囲、特に好ましくは0〜25℃の範囲である。
【0098】
本発明の混合物は、さらなる処理を行なう前に保管することができる。これらは、好ましくは、望ましくない副生成物である4−カルボキシピロリドン、4−カルボキシピロリドンの誘導体、または4−カルバミドピロリドンへの混合物の転換が回避される条件下で保存する。
【0099】
これらは、−10〜100℃の温度、より好ましくは−5〜75℃の温度、より好ましくは0〜50℃の温度、特に周囲温度で保管することによって、副生成物の式(II)の4−カルボキシピロリドン、式(II)の4−カルボキシピロリドンの誘導体、または式(III)の4−カルバミドピロリドンの形成を減少させることが好ましい。
【0100】
本発明の1つの利点は、望ましくない副生成物、例えば式(II)の4−カルボキシピロリドン、4−カルボキシピロリドンの誘導体、または4−カルバミドピロリドンの形成が極めて実質的に防止される、イタコン酸またはイタコン酸誘導体と第1級アミンとの安定な混合物を提供できることである。これらの混合物は周囲温度で安定であり、したがって技術的な複雑さの程度を増すことなく、保管および輸送することができる。したがって、低い含分でしか4−カルボキシピロリドンまたは4−カルバミドピロリドンを含まない本発明の混合物は、1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンの製造に適した新規の出発物質を構成する。この出発物質から開始して、使用するイタコン酸またはイタコン酸誘導体に対して、高い選択性および収率で、相当する1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンを得ることができる。
【0101】
したがって本発明は、イタコン酸またはイタコン酸誘導体と式(I)
R−NH2(I)
の第1級アミンとを含み、第1級アミン対イタコン酸またはイタコン酸誘導体のモル比が0.5:1〜20:1の範囲の混合物であって、使用するイタコン酸または使用するイタコン酸誘導体に対して50モル%以下の、式(II)の4−カルボキシピロリドン、式(II)の4−カルボキシピロリドンの誘導体、および式(III)の4−カルバミドピロリドン
【化6】

を含む混合物の、
一般式(VI)の1,3−アルキルメチルピロリドンおよび/または一般式(VII)の1,4−アルキルメチルピロリドン
【化7】

[式中、Rは、上記に定義したとおりである]を製造するための使用をさらに提供する。
【0102】
本発明は、さらに、イタコン酸またはイタコン酸誘導体と式(I)
R−NH2(I)
の第1級アミンとを含む混合物を、水素化触媒の存在下で水素と反応させることによる、一般式(VI)の1,3−アルキルメチルピロリドンおよび/または一般式(VII)の1,4−アルキルメチルピロリドン
【化8】

を製造するための方法にも関し、
このとき、第1級アミン対イタコン酸またはイタコン酸誘導体のモル比は、0.5:1〜20:1の範囲であり、前記混合物は、イタコン酸またはイタコン酸誘導体に対して50モル%以下の、式(II)の4−カルボキシピロリドン、式(II)の4−カルボキシピロリドンの誘導体、および式(III)の4−カルバミドピロリドンを含み、
【化9】

式中、Rは、上記に定義したとおりである。
【0103】
本発明による方法は、水素化触媒の存在下で実施する。使用する水素化触媒は、原則として全ての水素化触媒であってよく、これにはニッケル、コバルト、鉄、銅、ルテニウム、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、レニウム、および/または元素周期表(IUPACの周期表(2007年6月22日版))の第8族および/または第9族および/または第10族および/または第11族のその他の金属を含む。
【0104】
ルテニウム、ロジウム、コバルト、および/またはニッケルを含む水素化触媒を使用することが好ましい。ロジウム、ルテニウム、および/またはコバルトを含む触媒が特に好ましい。ロジウムを含む触媒は、極めて好ましい。
【0105】
上述の水素化触媒は、典型的には、助触媒、例えば、クロム、鉄、コバルト、マンガン、タリウム、モリブデン、チタン、および/またはリンでドーピングすることができる。
【0106】
触媒活性を有する金属は、非担持触媒の形態で、または支持体上で使用することができる。有用なこの種の支持体には、例えば、炭素、例えばグラファイト、カーボンブラック、および/または活性炭、酸化アルミニウム(ガンマ、デルタ、シータ、アルファ、カッパ、キー、またはそれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルミノケイ酸塩、またはそれらの混合物が含まれる。
【0107】
触媒活性を有する金属は、例えば、スポンジ触媒(いわゆるラネー触媒)の形態で使用することができる。使用するラネー触媒は、好ましくはラネーコバルト触媒、ラネーニッケル触媒、および/またはラネー銅触媒である。
【0108】
ラネー水素化触媒は、例えば、アルミニウム−金属合金を濃水酸化ナトリウム溶液で処理して、それによってアルミニウムを浸出させ、金属スポンジを形成することによって製造する。ラネー水素化触媒の製造は、例えば、Handbook of Heterogeneous Catalysis (M. S. Wainright in G. Ertl, H. Knoezinger, J. Weitkamp (eds.), Handbook of Heterogeneous Catalysis, Vol. 1, Wiley−VCH, Weinheim, Germany 1997, page 64 ff.)に記載されている。そのような触媒は、例えば、Raney(登録商標)触媒(Grace社)として、またはSponge Metal(登録商標)触媒(Johnson Matthey社)として入手可能である。
【0109】
また、本発明による方法において使用可能な水素化触媒は、触媒前駆体を還元することによっても製造することができる。
【0110】
この触媒前駆体は、1つ以上の触媒活性を有する成分を含む活性材料と、場合によっては支持材料とを含む。
【0111】
触媒活性を有する成分は、上述の活性金属のうちの金属の酸素化合物、例えばそれらの金属酸化物または水酸化物(適切な場合の例)、例えばCoO、NiO、Mn34、CuO、RuO(OH)x、および/またはそれらの混合酸化物である。
【0112】
本出願に関連して、「触媒活性を有する成分」という用語は、上述の酸素含有金属化合物に対して使用するが、これらの酸素化合物自体がすでに触媒活性を有することを示すものではない。触媒活性を有する成分は、一般に、本発明の反応において還元完了時にはじめて触媒活性を有する。
【0113】
触媒前駆体は、既知の方法によって、例えば、沈殿、沈殿塗布、または含浸によって製造することができる。
【0114】
好適な実施形態において、支持材料を含浸することによって製造される触媒前駆体を、本発明による方法に使用する(含浸触媒前駆体)。
【0115】
この含浸に使用する支持材料は、例えば、粉体の形態、または成形体、例えば押出成形体、板状小片、球体、または環状体の形態で使用することができる。流動床反応器に適した支持材料は、好ましくは噴霧乾燥によって得られる。有用な支持材料には、例えば、炭素、例えばグラファイト、カーボンブラック、および/または活性炭、酸化アルミニウム(ガンマ、デルタ、シータ、アルファ、カッパ、キー、またはそれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルミノケイ酸塩、またはそれらの混合物が含まれる。
【0116】
上述の支持材料は、常用の方法(A. B. Stiles, Catalyst Manufacture − Laboratory and Commercial Preparations, Marcel Dekker, New York, 1983)によって、例えば1つ以上の含浸段階で金属塩溶液を塗布することによって、含浸させることができる。有用な金属塩には、一般に、相当する触媒活性を有する成分またはドーピング元素の水溶性金属塩、例えば硝酸塩、酢酸塩、または塩化物、例えば硝酸コバルトまたは塩化コバルトが含まれる。その後、含浸させた支持材料は、一般に、乾燥させ、適切な場合にはか焼する。
【0117】
また、含浸は、支持材料をその吸水能による飽和状態を限度として含浸溶液で湿らせる、いわゆる「初期湿潤法」によって実施することもできる。しかしながら、含浸は上澄み溶液中で実施することもできる。
【0118】
多段階含浸法の場合、個々の含浸工程の間に、乾燥させ、適切な場合にはか焼することが適切である。多段階含浸は、支持材料を比較的多量の金属塩に接触させる場合に、有利に利用することができる。
【0119】
複数の金属成分を支持材料に塗布する目的で、含浸は、全ての金属塩で同時に実施しても、任意の所望の個々の金属塩の順序で連続して実施してもよい。
【0120】
さらに好適な実施形態において、触媒前駆体は、それらの成分全ての共沈によって製造する。このために、一般的には、適当な活性成分の可溶性化合物、ドーピング元素の可溶性化合物、および適切な場合には支持材料の可溶性化合物を、高温条件下で攪拌しながら沈殿剤と混合して、沈殿を完了させる。
【0121】
使用する液体は、一般に水である。
【0122】
有用な活性成分の可溶性化合物には、典型的には、元素周期表(IUPACの周期表(2007年6月22日版))の第8族および/または第9族および/または第10族および/または第11族の金属の適当な金属塩、例えば硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、または塩化物が含まれる。
【0123】
使用する支持材料の水溶性化合物は、一般に、Ti、Al、Zr、Siなどの水溶性化合物、例えばこれらの元素の水溶性の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、または塩化物である。
【0124】
使用するドーピング元素の水溶性化合物は、一般に、例えばこれらの元素の水溶性の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、または塩化物などのドーピング元素の水溶性化合物である。
【0125】
また、触媒前駆体は、沈殿塗布によって製造することもできる。
【0126】
沈殿塗布は、難溶性または不溶性の支持材料を液体に懸濁させ、その後適当な金属酸化物の可溶性化合物、例えば可溶性金属塩を添加し、次に沈殿剤を添加することによってこれを懸濁している支持体上に沈殿させる製造法を意味するものと理解される(例えば、欧州特許公開公報(A2)第1 106 600号の第4頁、およびA. B. Stiles, Catalyst Manufacture, Marcel Dekker, Inc., 1983, page 15に記載されている)。
【0127】
有用な難溶性または不溶性の支持材料には、例えば、炭素化合物、例えばグラファイト、カーボンブラック、および/または活性炭、酸化アルミニウム(ガンマ、デルタ、シータ、アルファ、カッパ、キー、またはそれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルミノケイ酸塩、またはそれらの混合物が含まれる。
【0128】
支持材料は、一般に、粉体または破片の形態で存在する。
【0129】
使用する液体であって、支持材料を懸濁させる液体は、典型的には水である。
【0130】
有用な可溶性化合物には、前述の活性成分の可溶性化合物またはドーピング元素の可溶性化合物が含まれる。
【0131】
沈殿反応において、使用する可溶性金属塩の種類は、一般に重要ではない。この手順における主要な要因は塩の水溶性であることから、1つの基準はそれらの良好な水溶性であり、これはこれらの比較的高濃度の塩溶液を製造するために要求される。個々の成分の塩を選択する際に、当然ながら、望ましくない沈殿反応を生じることによる中断であるか、錯体形成により沈殿を困難にする、または阻止することによる中断であるかに関わらず、中断に至らないアニオンを有する塩のみが選択されることは明らかであろう。
【0132】
典型的には、沈殿反応において、沈殿剤の添加によって、可溶性化合物を難溶性または不溶性の塩基性塩として沈殿させる。
【0133】
使用する沈殿剤は、好ましくはアルカリ、特に無機塩基、例えばアルカリ金属塩基である。沈殿剤の例には、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、または水酸化カリウムがある。
【0134】
また、使用する沈殿剤は、アンモニウム塩、例えばハロゲン化アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、またはカルボン酸アンモニウムであってもよい。
【0135】
沈殿反応は、例えば、20〜100℃、好ましくは30〜90℃、特に50〜70℃の温度で実施することができる。
【0136】
沈殿反応で得られる沈殿物は、一般に化学的に不均一であり、また一般に使用した金属の酸化物、酸化物水和物、水酸化物、炭酸塩、および/または炭酸水素塩の混合物を含む。適切な場合には高温条件下で、または通風しながら、沈殿物を寝かせた場合、すなわち沈殿物を沈殿後一定期間放置した場合、沈殿物の濾過性にとって有利となることがわかるであろう。
【0137】
これらの沈殿法で得た沈殿物は、典型的には、これらを洗浄、乾燥、か焼、および調質することによって加工する。
【0138】
洗浄後、沈殿物を一般に80〜200℃、好ましくは100〜150℃で乾燥させ、その後か焼する。
【0139】
か焼は、一般に300〜800℃、好ましくは400〜600℃、特に450〜550℃の温度で実施する。
【0140】
か焼後、沈殿反応で得た触媒前駆体を、典型的には調質する。
【0141】
調質は、例えば、粉砕により、沈殿した触媒を特定の粒子サイズに調節することによって実施することができる。
【0142】
粉砕後、沈殿反応で得た触媒前駆体をグラファイトまたはステアリン酸などの成形助剤と混合して、さらに加工して成形体にしてもよい。
【0143】
成形の一般的な方法は、例えば、Ullmann[Ullmann’s Encyclopedia Electronic Release 2000, chapter: "Catalysis and Catalysts", pages 28−32]に、またErtl et al.[Ertl, Knoezinger, Weitkamp, Handbook of Heterogeneous Catalysis, VCH Weinheim, 1997, pages 98 ff]によって、記載されている。
【0144】
引用した参考文献に記載されているように、成形のための方法によって、任意の三次元形状、例えば丸型、角型、細長型などの成形体を、例えば押出成形体、板状小片、顆粒、球体、円柱体、または粒状体の形態で提供することができる。成形の一般的な方法は、例えば、押出し、小片化、すなわち機械プレス成形またはペレット化、すなわち円運動および/または回転運動による圧縮である。調質または成形の後、一般に、熱処理を行なう。熱処理における温度は、典型的には、か焼における温度と一致する。
【0145】
沈殿反応によって得た触媒前駆体は、触媒活性を有する成分をその酸素化合物の混合物の形態で、すなわち特に酸化物、混合酸化物、および/または水酸化物として含む。そのようにして製造した触媒前駆体は、そのまま保管することができる。
【0146】
これらを水素化触媒として使用する前に、上記に記載したように含浸または沈殿によって得た触媒前駆体を、一般に、か焼または調質後に水素で処理することによって前還元する。
【0147】
この前還元のために、一般に、触媒前駆体をまず150〜200℃の窒素−水素雰囲気に12〜20時間置き、その後200〜400℃の水素雰囲気中で、さらに最長およそ24時間処理する。この前還元は、触媒前駆体中に存在する酸素含有金属化合物の一部を相当する金属に還元し、それによりそれらが異なる種類の酸素化合物と一緒に、水素化触媒の活性形態中に存在するようになる。
【0148】
好適な実施形態において、触媒前駆体の前還元は、続いて水素化を実施するのと同じ反応器内で行なう。
【0149】
そのようにして形成した水素化触媒は、前還元後に、不活性ガス下、例えば窒素下で取り扱いおよび保管してもよく、あるいは不活性液体、例えばアルコール、水、またはその特定の反応の生成物のもとで、水素化触媒に使用することができる。しかしながら、この水素化触媒は、前還元後に、酸素を含むガス流、例えば空気または空気と窒素との混合物で不動態化させる、すなわち保護酸化物層を設けることができる。
【0150】
触媒前駆体の前還元によって得た水素化触媒の不活性物質下での保管、またはその水素化触媒の不動態化は、触媒の簡単かつ安全な取り扱いおよび保管を可能にする。適切な場合には、その後、実際の反応を開始する前に、水素化触媒から不活性液体を取り除かなければならないか、あるいは例えば水素または水素を含むガスで処理することによって、不動態化層を除去しなければならない。
【0151】
水素化に使用する前に、水素化触媒から不活性液体または不動態化層を取り除くことができる。これは例えば、水素化触媒を水素または水素を含むガスで処理することによって行なう。水素または水素を含むガスによる水素化触媒の処理を実施した同じ反応器内で、水素化触媒の処理直後に水素化を始めることが好ましい。
【0152】
しかしながら、触媒前駆体は、前還元を行なわずに本方法において使用することもできる。この場合、触媒前駆体は、反応器内に存在する水素による水素化条件下で還元され、これにより一般に水素化触媒がin situで形成する。
【0153】
本発明による方法において、水素を使用する。
【0154】
水素は、一般に、技術グレードの純度で使用する。また、水素は、水素を含むガスの形態で、すなわち別の不活性ガス、例えば窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、または二酸化炭素との混合物として使用することもできる。使用する水素を含むガスは、例えば、それらのガスが水素化触媒に対するいかなる触媒毒(例えばCO)も含まない場合は、リフォーマのオフガスや製油所ガスなどであってよい。しかしながら、本方法において、純粋な水素または本質的に純粋な水素、例えば水素含有量が99質量%を上回る、好ましくは水素含有量が99.9質量%を上回る、より好ましく水素含有量が99.99質量%を上回る、特に水素含有量が99.999質量%を上回る水素を使用することが好ましい。
【0155】
本発明による方法にさらに使用されるものは、イタコン酸またはイタコン酸誘導体と、式(I)
R−NH2(I)
の第1級アミンとを含み、第1級アミン対イタコン酸またはイタコン酸誘導体のモル比が0.5:1〜20:1の範囲の混合物であって、使用するイタコン酸または使用するイタコン酸誘導体に対して50モル%以下の、式(II)の4−カルボキシピロリドン、式(II)の4−カルボキシピロリドンの誘導体、および式(III)の4−カルバミドピロリドンを含み、
【化10】

式中、Rは、上記に定義したとおりである、上述の本発明による混合物である。
【0156】
本発明の混合物は、好ましくは、すでに溶媒を含んでいる。一般的には、混合物がすでに溶媒を含んでいて、溶媒中のイタコン酸またはイタコン酸誘導体の含分が、使用する溶媒に対して5〜95質量%であり、それぞれ使用する溶媒に対して好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%である場合、本発明の混合物にさらなる溶媒を添加しない。イタコン酸またはイタコン酸誘導体の含分が、使用する溶媒に対して95質量%を上回る場合、混合物に溶媒を添加することが好ましい。本発明の混合物を製造するためにすでに使用した同じ溶媒を添加することが好ましい。
【0157】
好適な溶媒は、水、メタノール、エタノール、n−/イソプロパノール、n−/イソブタノール、THF、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アルキルメチルピロリドン、またはN−アルキルピロリドン、特に水である。
【0158】
水素化は、典型的には、50〜300バール、好ましくは80〜280バール、より好ましくは100〜270バールの反応圧力、最も好ましくは120〜250バールの圧力で実施する。この圧力は、一般に、水素の計量添加によって維持または制御する。
【0159】
水素化は、一般に、反応温度100〜300℃、好ましくは120〜280℃、より好ましくは150〜250℃、最も好ましくは180〜220℃で実施する。
【0160】
本発明の水素化は、連続式、バッチ式、または半連続式で実施することができる。
【0161】
したがって、適切な反応器は攪拌槽型反応器および管型反応器の両方である。
【0162】
典型的な反応器は、例えば、高圧攪拌槽型反応器、オートクレーブ、固定床反応器、流動床反応器、移動床、循環流動床、塩浴反応器、反応器としてのプレート型熱交換器、複数の段階を有し、場合によっては段階間の熱交換および副流の除去/供給を伴う多段反応器(半径流もしくは軸流反応器としての可能な実施形態において)、連続攪拌槽、気泡反応器などであり、それぞれの場合に使用する反応器は、所望の反応条件、例えば温度、圧力、および滞留時間に適したものである。
【0163】
本発明の水素化は、高圧攪拌槽型反応器、固定床反応器、または流動床反応器内で実施することが好ましい。
【0164】
水素化をバッチ式で実施する場合、好ましくは高圧攪拌槽型反応器で反応を行なう。特に好適な実施形態において、本発明の混合物を製造した同じ反応器内で水素化を実施する。あるいは、本発明の混合物を別の反応器内で製造し、水素化を実施する反応器に移してもよい。典型的には、本発明の混合物は、圧力1〜100バール、好ましくは5〜80バールの水素下で、反応温度まで急速に加熱する。一般的に、反応温度に到達したときに、圧力を反応圧力まで上昇させる。
【0165】
水素化を連続式で実施する場合、好ましくは固定床反応器で反応を行なう。この場合、本発明の混合物を好ましくは液体の状態で反応ゾーンに供給する。本発明の混合物は、反応ゾーンへの供給の直前または最中にはじめて反応温度まで加熱することが好ましい。
【0166】
バッチ法で実施する場合、水素化における滞留時間は、一般に15分〜96時間、好ましくは60分〜72時間、より好ましくは2時間〜48時間である。
【0167】
連続法で実施する場合、この滞留時間は、一般に0.1秒〜24時間、好ましくは1分〜10時間である。連続法の場合、この文脈での「滞留時間」は、触媒上での滞留時間を意味し、したがって固定床触媒の場合は触媒床における滞留時間を意味し、流動床反応器の場合は反応器の合成部分(触媒が配置される反応器の部分)を考慮する。
【0168】
本方法の好適な実施形態において、滞留時間は、水素化が、それぞれ使用するイタコン酸または使用するイタコン酸誘導体に対して、99%以上、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.8%以上、特に好ましくは99.9%以上の転換を達成するように選択する。この好適な実施形態は、反応混合物中の1,3−アルキルメチルスクシンイミド二次成分が、1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンに、また適切な場合には1,3−アルキルメチルピロリジンに、完全に水素化されるという利点を有する。1,3−アルキルメチルスクシンイミド二次成分を利用した1,3−アルキルメチルピロリドン二次成分の形成は、その後のワークアップ、特にその後の蒸留において、有用な生成物(1,3−アルキルメチルピロリドン)から1,3−アルキルメチルピロリジン二次成分をより良好に除去できるという利点を有する。
【0169】
したがって、本発明は、一般式(VI)の1,3−アルキルメチルピロリドンおよび/または一般式(VIl)の1,4−アルキルメチルピロリドンと、一般式(VIII)の1,3−アルキルメチルピロリジンとを含み、
【化11】

1,3−アルキルメチルピロリジンの含分が10〜10,000ppmの範囲である混合物をさらに提供する。
【0170】
本発明による方法は、一般に、4−カルボキシ−1−メチルピロリドン、4−カルバミド−1−メチルピロリドン、4−ヒドロキシメチル−1−メチルピロリドン、および4−メチルアミノメチル−1−メチルピロリドンからなる群から選択される1つ以上の二次成分を合計2質量%未満、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満含む反応流出物を生じる。
【0171】
この反応流出物は、式(VI)の1,3−アルキルメチルピロリドンと式(VII)の1,4−アルキルメチルピロリドンとの混合物を含む。
【化12】

【0172】
反応流出物中の1,3−アルキルメチルピロリドン対1,4−アルキルメチルピロリドンのモル比は、好ましくは、1:1〜10:1の範囲であり、より好ましくは1.2:1〜5:1、特に好ましくは1.3:1〜4:1である。
【0173】
したがって、本発明は、1,3−アルキルメチルピロリドンと1,4−アルキルメチルピロリドンとを含み、1,3−アルキルメチルピロリドン対1,4−アルキルメチルピロリドンのモル比が1:1〜10:1の範囲である混合物をさらに提供する。
【0174】
本発明による方法によって得ることができる本発明の1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンの混合物は、石油化学プロセスにおける純炭化水素の抽出、アセチレン、1,3−ブタジエン、またはイソプレンなどのガスの精製および除去、例えばLURGI GmbHのDistapex法での芳香族化合物の抽出、酸性ガス洗浄、および潤滑油抽出において、有機溶媒、希釈剤、抽出剤、洗浄剤、脱脂剤、吸着剤、および/または分散剤として使用することができる。
【0175】
また、本発明の1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンの混合物は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、アクリレート、またはブタジエン−アクリロニトリルコポリマーなどの多くのプラスチックの溶媒として、およびそれらのポリマーの加工にも使用することができる。さらに、これらは、塗料およびコーティングの残留物を除去する際の洗浄剤として、金属、セラミック、ガラス、およびプラスチックの表面用の酸洗剤および洗浄剤としても使用することができる。
【0176】
本発明による方法によって得ることができる本発明の1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンの混合物は、さらに、作物保護における有効成分の配合のための溶媒または共溶媒として使用することもできる。
【0177】
本発明による方法によって得ることができる本発明の1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンの混合物は、多くの用途でNMPの代わりに使用できる。
【0178】
反応流出物の精製、例えば、使用した溶媒または望ましくない副生成物の除去は、当業者に既知の方法によって、例えば蒸留または精留によって実施することができる。
【0179】
本発明の利点は、イタコン酸またはイタコン酸誘導体と第1級アミンとの安定な混合物であって、低い含分でしか望ましくない副生成物、特に式(II)の4−カルボキシピロリドン、4−カルボキシピロリドンの誘導体、または4−カルバミドピロリドンしか含まない混合物を作成することが可能であることである。
【0180】
特に、1,3−ジメチルピロリドンおよび/または1,4−ジメチルピロリドンを製造する場合、毒性N−メチルピロリドンの形成は極めて実質的に回避される。N−メチルピロリドンは、例えば、4−カルボキシピロリドンからのさらなる反応(脱カルボキシル化/水素化)によって形成しうる。
【0181】
これらの混合物は周囲温度で安定であり、技術的な複雑さの程度を増すことなく、保管および輸送することができる。
【0182】
これらの混合物において、イタコン酸またはイタコン酸誘導体の上述の副生成物への転換は、極めて実質的に回避され、それによりイタコン酸またはその誘導体は、その後の水素化において事実上完全に反応して、所望の1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンを生じることができる。したがって、本発明の混合物は、1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンを製造するための方法であって、使用するイタコン酸またはその誘導体に対して、高い収率および選択性で、1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンが得られる方法における使用に適している。
【0183】
本発明による方法は、別の反応段階でイタコン酸を2−メチルコハク酸に水素化する必要なく、イタコン酸またはその誘導体から、1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンを製造することを可能にする。本発明の混合物の製造は技術的に実施が簡単であるため、1,3−および1,4−アルキルメチルピロリドンを製造するための本発明による方法は、高いプロセス経済性を有する。本発明のさらなる利点は、本発明の混合物が、再生可能な原料をベースにして製造したイタコン酸またはイタコン酸誘導体を用いて製造できることである。再生可能な原料に戻すことで、限られた資源の維持に寄与することができ、また持続可能な経済活動を可能にする。
【0184】
以下に詳述する実施例によって、本発明による方法を詳細に説明する。
【0185】
実施例:
分析
反応流出物および留出物を、場合によっては規定量の内部標準物質(ジエチレングリコールジメチルエーテル)を用いて、ガスクロマトグラフィーによって分析した。混合物を希釈せずにGCクロマトグラフ(HP社、キャリアガス:水素)の30mのDB1カラム(J+W社)に注入し、オーブン温度60℃〜300℃(加熱速度は、220℃まで8ケルビン/分、その後300℃まで20ケルビン/分)で、水素炎イオン化検出器(温度:290℃)を用いて分析した。クロマトグラムのシグナルを積分することによって、組成を決定した。内部標準物質を使用した場合、内部標準物質(ジエチレングリコールジメチルエーテル)を用いて事前に実施した較正を用いて、シグナル強度を質量比に換算した。
【0186】
また、反応混合物は、核共鳴分光法によっても分析した。この目的で、混合物を重水素化溶媒(D2O)で希釈するかまたは希釈せずに、外部標準物質を用いて、分光計(Bruker DPX400)で分析した。1Hスペクトルにおけるシグナルを積分することによって、成分の量比を決定した。
【0187】
含水量の決定は、カール・フィッシャー滴定によって実施した。この目的で、カール・フィッシャー法により含水量を決定するための装置(Metrohm Karl Fischer Coulometer KF756)に、試料溶液1〜3mlを注入した。測定は、電量法によって実施し、カール・フィッシャー反応(ヨウ素と二酸化硫黄との水を介した反応)に基づいた。
【0188】
実施例1
イタコン酸(1.9kg)を氷で冷却しながら、40%のメチルアミン水溶液(2.6l、2.3kg)に導入した。この均一溶液を攪拌機を備えた9リットルのステンレススチール製オートクレーブに移し、ロジウム(5%)/活性炭触媒(98g、湿潤(およそ50%の水を含む))[製造者:Aifa Aesar]と混合した。オートクレーブを閉じ、周囲温度で100バールの圧力まで水素を注入した。この混合物をこれらの条件下で2時間攪拌した。続いて、この混合物を200℃まで加熱し、この温度で65時間維持した。さらなる水素を連続的に注入し、圧力250バールを維持した。続いて、オートクレーブを冷却し、減圧し、内容物を取り出した。濾過によって触媒を除去し、この粗生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。以下の組成(有機成分に基づき、すなわち水は無視する)が判明した:
49% 1,3−ジメチルピロリドン
27% 1,4−ジメチルピロリドン
8% 1,3−ジメチルピロリジン
11% モノメチルアミン
2% ジメチルアミン
1% トリメチルアミン
(残部:同定されず)。
【0189】
4−カルボキシ−1−メチルピロリドン、4−カルバミド−1−メチルピロリドン、4−ヒドロキシメチル−1−メチルピロリドン、4−メチルアミノメチル−1−メチルピロリドンは、検出されなかった。
転換率:100%
選択性(イタコン酸に対して):88%。
【0190】
不規則充填物を有するカラム(長さ:110cm、直径:2cm、不規則充填物:ラシヒリング、3mm)内で減圧下で蒸留することによって、粗生成物を分留した。大気圧で水と過剰のアミンを除去した後、反応生成物を4hPaで蒸留した(カラム頂部における沸点範囲54〜57℃)。99.5%を上回る(ガスクロマトグラフィーによって測定)有用な生成物を含んでいた全分画を混合した。
【0191】
1.1kgのジメチルピロリドン(全収率67%、1,3−ジメチルピロリドン:1,4−ジメチルピロリドンの異性体比2:1)を得た。
【0192】
実施例2
イタコン酸(0.65kg)を氷で冷却しながら、40%のメチルアミン水溶液(1.1l、0.97kg)に導入した。この均一溶液を攪拌機を備えた3.5リットルのステンレススチール製オートクレーブに移し、ロジウム(5%)/活性炭触媒(33g、乾燥)[製造者:Aifa Aesar]と混合した。オートクレーブを閉じ、周囲温度で50バールの圧力まで水素を注入した。続いて、この混合物を200℃まで加熱し、この温度で72時間維持した。さらなる水素を連続的に注入し、圧力250バールを維持した。続いて、オートクレーブを冷却し、減圧し、内容物を取り出した。濾過によって触媒を除去し、この粗生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。以下の組成(有機成分に基づき、すなわち水は無視する)が判明した:
52% 1,3−ジメチルピロリドン
25% 1,4−ジメチルピロリドン
4% 3−メチルピロリドン
4% 4−メチルピロリドン
2% 1,3−ジメチルピロリジン
2% モノメチルアミン
1% ジメチルアミン
4% トリメチルアミン
2% N.N−ジメチルメチルスクシンイミド
(残部:同定されず)。
【0193】
4−カルボキシ−1−メチルピロリドン、4−カルバミド−1−メチルピロリドン、4−ヒドロキシメチル−1−メチルピロリドン、4−メチルアミノメチル−1−メチルピロリドンは、検出されなかった。
転換率:100%
選択性(イタコン酸に対して):83%。
【0194】
実施例3
イタコン酸(0.65kg)を氷で冷却しながら、40%のメチルアミン水溶液(1.1l、0.97kg)に導入した。この均一溶液を攪拌機を備えた3.5リットルのステンレススチール製オートクレーブに移し、ロジウム(5%)/活性炭触媒(33g、乾燥)[製造者:Aifa Aesar]と混合した。オートクレーブを閉じ、周囲温度で50バールの圧力まで水素を注入した。続いて、この混合物を200℃まで加熱し、この温度で72時間維持した。さらなる水素を連続的に注入し、圧力250バールを維持した。続いて、オートクレーブを冷却し、減圧し、内容物を取り出した。濾過によって触媒を除去し、この粗生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。以下の組成(有機成分に基づき、すなわち水は無視する)が判明した:
33% 1,3−ジメチルピロリドン
15% 1,4−ジメチルピロリドン
6% 3−メチルピロリドン
3% 4−メチルピロリドン
1% 1,3−ジメチルピロリジン
3% モノメチルアミン
4% ジメチルアミン
13% トリメチルアミン
9% N.N−ジメチルメチルスクシンイミド
(残部:同定されず)。
【0195】
4−カルボキシ−1−メチルピロリドン、4−カルバミド−1−メチルピロリドン、4−ヒドロキシメチル−1−メチルピロリドン、4−メチルアミノメチル−1−メチルピロリドンは、検出されなかった。
転換率:100%
選択性(イタコン酸に対して):60%。
【0196】
実施例4
イタコン酸(2.0kg)を氷で冷却しながら、40%のメチルアミン水溶液(2.6l、2.3kg)に導入した。この均一溶液を攪拌機を備えた9リットルのステンレススチール製オートクレーブに移し、DMPの合成にすでに使用し、反応後に濾別したロジウム(5%)/活性炭触媒(98g、湿潤(およそ50%の水を含む))[製造者:Aifa Aesar]と混合した。オートクレーブを閉じ、周囲温度で100バールまで水素を注入した。2時間後、この混合物を200℃まで加熱し、この温度で65時間維持した。さらなる水素を連続的に注入し、圧力200バールを維持した。続いて、オートクレーブを冷却し、減圧し、内容物を取り出した。濾過によって触媒を除去し、この粗生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。以下の組成(有機成分に基づき、すなわち水は無視する)が判明した:
54% 1,3−ジメチルピロリドン
29% 1,4−ジメチルピロリドン
1% 3−メチルピロリドン
7% 1,3−ジメチルピロリジン
6% モノメチルアミン
2% ジメチルアミン
1% トリメチルアミン
(残部:同定されず)。
【0197】
4−カルボキシ−1−メチルピロリドン、4−カルバミド−1−メチルピロリドン、4−ヒドロキシメチル−1−メチルピロリドン、4−メチルアミノメチル−1−メチルピロリドンは、検出されなかった。
転換率:100%
選択性(イタコン酸に対して):91%。
【0198】
実施例5
イタコン酸(26kg)を氷で冷却しながら、40%のメチルアミン水溶液(18ml、16g)に導入し、水(23ml)で希釈した。この均一溶液を攪拌機を備えた300ミリリットルのステンレススチール製オートクレーブに移し、ロジウム(5%)/活性炭触媒(1.3g、乾燥)[製造者:Aifa Aesar]と混合した。オートクレーブを閉じ、周囲温度で50バールの圧力まで水素を注入した。続いて、この混合物を200℃まで加熱し、この温度で24時間維持した。さらなる水素を連続的に注入し、圧力200バールを維持した。続いて、オートクレーブを冷却し、減圧し、内容物を取り出した。濾過によって触媒を除去し、この粗生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。以下の組成(有機成分に基づき、すなわち水は無視する)が判明した:
15% 1,3−ジメチルピロリドン
7% 1,4−ジメチルピロリドン
5% 3−メチルピロリドン
3% 4−メチルピロリドン
1% N.N−ジメチルメチルスクシンイミド
(残部:同定されず)。
【0199】
4−カルボキシ−1−メチルピロリドン、4−カルバミド−1−メチルピロリドン、4−ヒドロキシメチル−1−メチルピロリドン、4−メチルアミノメチル−1−メチルピロリドンは、検出されなかった。
転換率:100%
選択性(イタコン酸に対して):21%。
【0200】
実施例6
イタコン酸(52g)を氷で冷却しながら、40%のメチルアミン水溶液(87ml、78g)に導入した。この均一溶液を攪拌機を備えた300ミリリットルのステンレススチール製オートクレーブに移し、ロジウム(5%)/活性炭触媒(2.6g、乾燥)[製造者:Aifa Aesar]と混合した。オートクレーブを閉じ、周囲温度で100バールの圧力まで水素を注入した。続いて、この混合物を200℃まで加熱し、この温度で65時間維持した。さらなる水素を連続的に注入し、圧力200バールを維持した。続いて、オートクレーブを冷却し、減圧し、内容物を取り出した。濾過によって触媒を除去し、この粗生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。以下の組成(有機成分に基づき、すなわち水は無視する)が判明した:
55% 1,3−ジメチルピロリドン
23% 1,4−ジメチルピロリドン
7% 1,3−ジメチルピロリジン
3% モノメチルアミン
2% ジメチルアミン
6% トリメチルアミン
3% 3−メチルピロリドン
1% 4−メチルピロリドン
(残部:同定されず)。
【0201】
4−カルボキシ−1−メチルピロリドン、4−カルバミド−1−メチルピロリドン、4−ヒドロキシメチル−1−メチルピロリドン、4−メチルアミノメチル−1−メチルピロリドンは、検出されなかった。
転換率:100%
選択性(イタコン酸に対して):88%。
【0202】
比較例1
実施例6と同様の手順であるが、ただし水素化反応の全実施時間にわたって、反応物を100℃に維持した。
【0203】
以下の組成(有機成分に基づき、すなわち水は無視する)が判明した:
0% 1,3−ジメチルピロリドン
0% 1,4−ジメチルピロリドン
7% 1,3−ジメチルスクシンイミド
34% モノメチルアミン
8% トリメチルアミン
35% メチルコハク酸
3% 4−カルボキシ−1−メチルピロリドン
7% N.N−ジメチルメチルスクシンイミド
(残部:同定されず)。
転換率:100%
選択性(イタコン酸に対して):0%。
【0204】
比較例2
実施例6と同様の手順であるが、ただし使用する出発混合物は、100℃を上回る温度で、メチルアミンとイタコン酸とを接触させることによって得た4−カルボキシ−1−メチルピロリドン(比較例4と同様に製造)(20g)を水(80g)に加えた溶液とし、またロジウム(5%)/活性炭(1g)とした。
【0205】
以下の組成(有機成分に基づき、すなわち水は無視する)が65時間後に判明した:
40% 1,3−ジメチルピロリドン
24% 1,4−ジメチルピロリドン
3% N−メチルピロリドン(NMP)
16% 1,3−ジメチルスクシンイミド
2% 4−カルボキシ−1−メチルピロリドン
7% 4−ヒドロキシメチル−1−メチルピロリドン
1% 4−カルバミド−1−メチルピロリドン
(残部:同定されず)。
転換率:98%
選択性(イタコン酸に対して):65%。
【0206】
実施例7
イタコン酸(32g)を氷で冷却しながら、40%のメチルアミン水溶液(43ml、39g)に導入した。この均一溶液を攪拌機を備えた100ミリリットルのステンレススチール製オートクレーブに移し、ロジウム(5%)/活性炭触媒(1.6g、乾燥、イタコン酸に対して5質量%)[製造者:Aifa Aesar]と混合した。オートクレーブを閉じ、周囲温度で50バールの圧力まで水素を注入した。続いて、この混合物を200℃まで加熱し、この温度で24時間維持した。さらなる水素を連続的に注入し、圧力200バールを維持した。続いて、オートクレーブを冷却し、減圧し、内容物を取り出した。濾過によって触媒を除去し、この粗生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。以下の組成(有機成分に基づき、すなわち水は無視する)が判明した:
49% 1,3−ジメチルピロリドン
18% 1,4−ジメチルピロリドン
8% 1,3−ジメチルスクシンイミド
1% 1,3−ジメチルピロリジン
4% モノメチルアミン
1% ジメチルアミン
<1% トリメチルアミン
1% 3−メチルピロリドン
1% 4−メチルピロリドン
(残部:同定されず)。
【0207】
4−カルボキシ−1−メチルピロリドン、4−カルバミド−1−メチルピロリドン、4−ヒドロキシメチル−1−メチルピロリドン、4−メチルアミノメチル−1−メチルピロリドンは、検出されなかった。
転換率:100%
選択性(イタコン酸に対して):71%。
【0208】
実施例8(50℃でのフィード混合物の製造)
メチルアミンの水溶液(水中41%、水溶液に対して21.5g、0.284mol、2.0当量)に、イタコン酸(18.5g;0.142mol)を水浴で冷却しながらゆっくりと少量ずつ添加するが、これは混合作業中の温度が、常に50℃未満に保たれるように実施する。続いて、この混合物を50℃で1時間攪拌する。イタコン酸(アンモニウム塩として存在)のオレフィンシグナル(化学シフト5.3ppmおよび5.7ppm)、および4−カルボキシ−1−メチルピロリドンの窒素原子の隣のメチレン官能基のシグナル(化学シフト3.6〜3.8ppm)に基づいて、1H NMR(溶媒:外部標準物質としてのD2O)により、混合物の組成を分析する。イタコン酸:4−カルボキシ−1−メチルピロリドンの比は、100:0であった。
【0209】
実施例9(100℃でのフィード混合物の製造)
実施例8に記載したように、イタコン酸とメチルアミンとを混合し、その後100℃まで1時間加熱した。NMR分析は、イタコン酸:4−カルボキシ−1−メチルピロリドン比が、76:24であることを示した。
【0210】
比較例3(150℃でのフィード混合物の製造)
実施例8に記載したように、イタコン酸とメチルアミンとを混合し、その後150℃まで1時間加熱した。NMR分析は、イタコン酸:4−カルボキシ−1−メチルピロリドン比が、0:100であることを示した。
【0211】
実施例10(50℃での1:1イタコン酸/メチルアミンフィード混合物の製造)
イタコン酸(18.5g;0.142mol)と、メチルアミン(水中41%、水溶液に対して10.7g、0.142mol、1.0当量)とを実施例8と同様に混合した。さらに、50℃で沈殿物の形成を防ぐために、20mlの水の添加が必要であった。NMR分析は、イタコン酸:4−カルボキシ−1−メチルピロリドン比が、100:1であることを示した。
【0212】
比較例4(沸点での1:1イタコン酸/メチルアミンフィード混合物の製造)
イタコン酸(100g、0.78mol)と、メチルアミン(水中41%、水溶液に対して60.0g、0.80mol、1.0当量)とを実施例8と同様に混合した。この懸濁液を標準圧力で1時間、還流下で加熱して沸騰させた(この過程で、沸点がおよそ115℃まで上昇する)。これにより、固体を完全に溶解した。周囲温度まで冷却して、沈殿物を形成した。この均一溶液および沈殿した結晶のNMR分析(溶媒:D2O)は、イタコン酸:4−カルボキシ−1−メチルピロリドン比が、両相において、0:100であることを示した。
【0213】
4−カルボキシ−1−メチルピロリドン生成物を酢酸エチルからの再結晶化により精製し、これを無色結晶の形態で得た(収率:59g、67%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イタコン酸またはイタコン酸誘導体と、式(I)
R−NH2(I)
の第1級アミンとを含み、
第1級アミン対イタコン酸またはイタコン酸誘導体のモル比が0.5:1〜20:1の範囲である混合物において、前記混合物が、使用する前記イタコン酸または使用する前記イタコン酸誘導体に対して50モル%以下の、式(II)の4−カルボキシピロリドン、式(II)の4−カルボキシピロリドンの誘導体、および式(III)の4−カルバミドピロリドンを含む
【化1】

[式中、Rは、1〜24個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状の飽和脂肪族基、または3〜24個の炭素原子を有する飽和脂環式基である]
ことを特徴とする、前記混合物。
【請求項2】
前記混合物が、一般式[A2-][B+][C+]の塩を含み、ここで[A2-]は、式(IV)
【化2】

のアニオンであり、
[B+]は、式(V)
【化3】

のカチオンであり、
[C+]は、式(V)のカチオンまたは[H+]であり、前記式中、Rは請求項1において定義したとおりであることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記イタコン酸誘導体として、イタコン酸エステル、イタコン酸アミン、イタコン酸の塩、またはイタコン酸イミンを使用することを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
前記第1級アミンとしてメチルアミンを使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項5】
第1級アミン対イタコン酸のモル比が2:1〜8:1の範囲であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項6】
前記混合物が溶媒を含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項7】
前記溶媒が水であることを特徴とする、請求項6に記載の混合物。
【請求項8】
前記イタコン酸または前記イタコン酸誘導体が、再生可能な原料をベースにして製造されたことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項9】
前記第1級アミンと前記イタコン酸または前記イタコン酸誘導体とを接触させることによって得ることができる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の混合物であって、前記接触時の温度が100℃以下であることを特徴とする、前記混合物。
【請求項10】
一般式(VI)の1,3−アルキルメチルピロリドンおよび/または一般式(VII)の1,4−アルキルメチルピロリドン
【化4】

[式中、Rは、請求項1において定義したとおりである]
を製造するための、請求項1から9までのいずれか1項に記載の混合物の使用。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の混合物の製造方法において、前記第1級アミンと前記イタコン酸または前記イタコン酸誘導体とを接触させ、前記接触時の温度が100℃以下である工程を含む、前記製造方法。
【請求項12】
イタコン酸またはイタコン酸誘導体と、式(I)
R−NH2(I)
の第1級アミンとを含む混合物を、水素化触媒の存在下で水素と反応させることによる、一般式(VI)の1,3−アルキルメチルピロリドンおよび/または一般式(VII)の1,4−アルキルメチルピロリドン
【化5】

の製造方法。
【請求項13】
前記混合物が、イタコン酸またはイタコン酸誘導体に対して50モル%以下の、式(II)の4−カルボキシピロリドン、式(II)の4−カルボキシピロリドンの誘導体、および式(III)の4−カルバミドピロリドンを含む
【化6】

[式中、Rは、請求項1において定義したとおりである]
ことを特徴とする、請求項12に記載のアルキルメチルピロリドンの製造方法。
【請求項14】
温度が100〜300℃の範囲内であり、圧力が50〜300バールの範囲内であることを特徴とする、請求項12または13に記載のアルキルメチルピロリドンの製造方法。
【請求項15】
前記水素化触媒が、ロジウム、ルテニウム、またはコバルトを含むことを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項に記載のアルキルメチルピロリドンの製造方法。
【請求項16】
前記生成物混合物が、副生成物としてN−メチルピロリドンを1%未満含むことを特徴とする、請求項12から15までのいずれか1項に記載のアルキルメチルピロリドンの製造方法。
【請求項17】
使用する前記イタコン酸または使用する前記イタコン酸誘導体に対する転換率が99%以上であることを特徴とする、請求項12から16までのいずれか1項に記載のアルキルメチルピロリドンの製造方法。
【請求項18】
一般式(VI)の1,3−アルキルメチルピロリドンと一般式(VII)の1,4−アルキルメチルピロリドンと
【化7】

を含む混合物において、
1,3−アルキルメチルピロリドン対1,4−アルキルメチルピロリドンのモル比が1:1〜10:1の範囲であり、Rは、請求項1において定義したとおりであることを特徴とする、前記混合物。
【請求項19】
一般式(VI)の1,3−アルキルメチルピロリドンおよび/または一般式(VII)の1,4−アルキルメチルピロリドンと、一般式(VIII)の1,3−アルキルメチルピロリジンと
【化8】

を含む混合物であって、1,3−アルキルメチルピロリジンの含分が10〜10,000ppmの範囲であり、Rは、請求項1において定義したとおりである、前記混合物。
【請求項20】
前記水素化の際に、使用する前記イタコン酸または使用する前記イタコン酸誘導体に対して99%以上の転換率が達成されることを特徴とする、請求項12から17までのいずれか1項に記載の方法による、請求項19に記載の混合物の製造方法。
【請求項21】
石油化学プロセスにおける純炭化水素の抽出、ガスの精製および除去、芳香族化合物の抽出、酸性ガス洗浄、および潤滑油抽出における、溶媒、希釈剤、抽出剤、洗浄剤、脱脂剤、吸着剤、および/または分散剤として、プラスチック用の溶媒として、塗料およびコーティングの残留物を除去する際の洗浄剤として、金属、セラミック、ガラス、およびプラスチックの表面用の酸洗剤および洗浄剤として、作物保護における有効成分配合のための溶媒または共溶媒として、ならびにNMPの代用物としての、請求項18または19に記載の混合物の使用。

【公表番号】特表2012−510970(P2012−510970A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538953(P2011−538953)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065751
【国際公開番号】WO2010/063617
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】