説明

1,3−ジオキソラン−4,6−ジオン系化合物、該化合物及びオキソノール化合物の製造方法

【課題】特定のオキソノール色素の製造に用いられる新規合成中間体である化合物を提供する。
【解決手段】
下記一般式(1)で表される化合物。
一般式(1)
【化1】


式(1)中、Ma1、Ma2およびMa3は各々独立に置換または無置換のメチン基を表す。Za2およびZa3は各々独立に酸性核を形成する原子群を表しnは0〜3の整数を表す。R1は置換基を表し、pは0〜5の整数を表す。R3は水素原子または置換基を表す。Yは2つの結合とともにπ共役系を形成しない2価の連結基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高エネルギー密度のレーザ光を用いて情報の書き込み(記録)や読み取り(再生)が可能なヒートモード型の情報記録媒体に用いられるオキソノール化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光により一回限りの情報の記録が可能な情報記録媒体(光ディスク)が知られている。該情報記録媒体は追記型CD(所謂CD−R)とも称され、従来のCDの作製に比べて少量のCDを手頃な価格でしかも迅速に提供できる利点を有しており、最近のパーソナルコンピュータの普及に伴ってその需要も増大している。CD−R型の情報記録媒体の代表的な構造は、透明な円盤状基板上に有機色素からなる記録層、金などの金属からなる反射層、更に樹脂製の保護層をこの順に積層したものである。そして光ディスクへの情報の記録は、近赤外域のレーザ光(通常780nm付近の波長のレーザ光)を照射して記録層を局所的に発熱変形させることにより行われる。一方情報の読み取り(再生)は通常、記録用のレーザ光と同じ波長のレーザ光を照射して、記録層が発熱変形された部位(記録部分)と変形されない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより行われている。また追記型デジタル・ビデオ・ディスク(所謂DVD−R)と称される光ディスクが提案されている。DVD−Rは可視レーザ光(通常600nm〜700nmの範囲の波長のレーザ光)を照射することにより記録及び再生が行われ、CD−R型の光ディスクよりも高密度の記録が可能である。
【0003】
特開昭63−209995号公報(特許文献1)には、オキソノール色素からなる記録層が基板上に設けられたCD−R型の情報記録媒体が開示されている。この色素化合物を用いることにより、長期間にわたり安定した記録再生特性を維持し得るとされている。 ここには分子内に塩の形でアンモニウムが導入されたオキソノール色素化合物が記載されている。また特開2000−52658号公報(特許文献2)には、DVD−R用色素として高い耐光性と耐久性を示し、良好な記録特性の光情報記録媒体を提供するオキソノール色素化合物が記載されている。
【0004】
特開平10−297103公報(特許文献3)、特開2000−52658号公報(特許文献4)および特開2002−249674号公報(特許文献5)には種々のオキソノール色素化合物の製造法が開示されている。しかしながら分子内に複数個のクロモフォアを有し、これらのクロモフォアが共役結合を介さずに結合してなるオキソノール色素の製造法は知られていない。
【特許文献1】特開昭63−209995号公報
【特許文献2】特開2000−52658号公報
【特許文献3】特開平10−297103号公報
【特許文献4】特開2000−52658号公報
【特許文献5】特開2002−249674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、分子内に複数個のクロモフォアを有し、これらのクロモフォアが共役結合を介さずに結合してなるオキソノール色素の新規な製造方法、およびその製造にあたって有用な新規な合成中間体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記の事情に鑑みオキソノール化合物の製造方法について鋭意研究した結果、分子内に複数個のクロモフォアを有し、これらのクロモフォアが共役結合を介さずに結合してなるオキソノール色素の製造にあたって有用な新規合成中間体、およびそれを用いる新規なオキソノール化合物の製造方法を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち本発明は下記の手段によって達成された。
[1] 下記一般式(1)で表される化合物。
一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
一般式(1)中、Ma1、Ma2およびMa3は各々独立に置換または無置換のメチン基を表す。Za2およびZa3は各々独立に酸性核を形成する原子群を表し、nは0〜3の整数を表す。R1は置換基を表し、pは0〜5の整数を表す。R3は水素原子または置換基を表す。Yは2つの結合とともにπ共役系を形成しない2価の連結基を表す。
[2] 一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物を反応させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製造方法。
一般式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
一般式(2)中、Ma1、Ma2およびMa3は各々独立に置換または無置換のメチン基を表す。nは0〜3の整数を表す。R1は置換基を表し、pは0〜5の整数を表す。R3は水素原子または置換基を表す。
一般式(3)
【0012】
【化3】

【0013】
一般式(3)中、Za2およびZa3は各々独立に酸性核を形成する原子群を表し、Yは2つの結合とともにπ共役系を形成しない2価の連結基を表す。L1は水素原子または離脱基を表す。
一般式(1)
【0014】
【化4】

【0015】
一般式(1)中、Ma1、Ma2、Ma3、n、R1、p及びR3は一般式(2)におけると同義であり、Za2、Za3およびYは一般式(3)におけると同義である。
[3] 一般式(1)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物を反応させ、必要に応じて塩交換を行うことを特徴とする一般式(5)で表される化合物の製造方法。
一般式(1)
【0016】
【化5】

【0017】
一般式(1)中、Ma1、Ma2およびMa3は各々独立に置換または無置換のメチン基を表す。Za2およびZa3は各々独立に酸性核を形成する原子群を表し、nは0〜3の整数を表す。R1は置換基を表し、pは0〜5の整数を表す。R3は水素原子または置換基を表す。Yは2つの結合とともにπ共役系を形成しない2価の連結基を表す。
一般式(4)
【0018】
【化6】

【0019】
一般式(4)中、Za1は酸性核を形成する原子群を表す。L2は水素原子または離脱基を表す。
一般式(5)
【0020】
【化7】

【0021】
一般式(5)中、Ma1、Ma2、Ma3、Za2、Za3、n、およびYは一般式(1)におけると同義である。Za1は一般式(4)におけると同義である。Qは電荷を中和するイオンを表し、yは電荷の中和に必要な数を表す。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、分子内に複数個のクロモフォアを有し、これらのクロモフォアが共役結合を介さずに結合してなるオキソノール色素の製造にあたって有用な新規合成中間体、およびそれを用いる新規なオキソノール化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下本発明の内容について説明する。なお本明細書において特定の部分を「基」と称した場合、特に断りのない限り一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても、置換されていなくてもよいことを意味する。例えば「アルキル基」とは、置換または無置換のアルキル基を意味する。本明細書において「置換されていてもよい」あるいは「置換基を有していてもよい」という場合には、置換基の個数及び種類は特に限定されず、複数個の置換基が存在する場合にはそれらは同一でも異なっていてもよい。
置換基としては、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、ジアルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキレンジオキシ基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。またこれらの置換基がさらに1個又は2個以上の置換基を有していてもよい。このような場合、置換基として上記に例示した置換基を好適に用いることができる。例えばアリールカルボニル基などアリール基を有する置換基は、そのアリール環上にアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基など1〜5個程度、好ましくは1〜2個有していてもよい。また本発明において特定の部分を「環」と称した場合、あるいは「基」に「環」が含まれる場合、特に断りのない限り単環でも縮環でもよく、置換されていても置換されていなくてもよい。
【0024】
本明細書において「ハロゲン原子」という場合にはフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のいずれでもよく、ハロゲン原子を含む置換基(例えばハロゲン原子置換アルキル基など)において2個以上のハロゲン原子が存在する場合にはそれらは同一でも異なっていてもよい。本明細書において「アルキル基」という場合には、例えば炭素数1〜22個、好ましくは炭素数1〜12個、より好ましくは炭素数1〜8個の直鎖、分岐状、若しくは環状、又はそれらの組み合わせからなるアルキル基を意味しており、好ましくは直鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味している。また、本明細書においてアルキル部分を含む置換基(例えばアルコキシ基、ハロゲン原子置換アルキル基、アリール基置換アルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基など)について言及する場合には、これらの置換基におけるアルキル部分が上記のアルキル基で構成されていることが好ましい。
【0025】
まず一般式(1)で表される化合物について説明する。
一般式(1)
【0026】
【化8】

【0027】
一般式(1)中、Ma1、Ma2およびMa3は各々独立に置換または無置換のメチン基を表す。Ma1、Ma2およびMa3が置換メチン基を表す場合、置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アシル基、カルバモイル基、アミノ基、置換アミノ基、スルホ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホンアミド基、ウレイド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルフィニル基、スルファモイル基等が挙げられる。好ましい置換基は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のヘテロ環基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、またはハロゲン原子であるが、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のヘテロ環基、炭素数6〜12のアリール基、またはハロゲン原子であり、更に好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜6のヘテロ環基、炭素数6〜12のアリール基、またはハロゲン原子である。好ましいMa1、Ma2およびMa3は無置換のメチン基または炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜6のヘテロ環基、ハロゲン原子、もしくは炭素数6〜12のアリール基で置換されたメチン基である。
【0028】
Za2およびZa3は各々独立に酸性核を形成する(に必要な)原子群を表す。
Za2およびZa3の具体例は、James 編、The Theory of the Photographic Process、第4版、マクミラン社、1977年、198頁により定義される。具体的にはピラゾロン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2−または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、イソローダニン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、テロラヒドロチオフェン−3−オン、テロラヒドロチオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ〔3,2−a〕ピリミジン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキソラン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリン−2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ〔1,5−b〕キナゾロン、ピラゾロピリドンなどの核が挙げられ、これらの酸性核は置換されていてもよい。好ましくはピラゾロン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、または1,3−ジオキソラン−4,6−ジオンであり、より好ましくは1,3−ジオキソラン−4,6−ジオンである。
【0029】
nは0〜3の整数を表す。より好ましくは2または3である。またnが2以上である時、複数存在するMa1、Ma2およびMa3は同じでも異なってもよい。
【0030】
R1は置換基を表す。置換基としては先に説明した範囲のものが挙げられるが、存在してもよい好ましい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、トリフルオロメチル基、またはニトロ基が挙げられ、好ましくはハロゲン原子(好ましくは塩素原子)、または炭素数1〜8のアルキル基(好ましくはトリフルオロメチル基)である。pは0〜5の整数を表す。pが2以上である時複数存在するR1は同じでも異なってもよいが、pは0または1であることが好ましい。
【0031】
R3は水素原子または置換基を表す。置換基としては先に説明した範囲のものが挙げられるが、好ましいR3は水素原子である。
【0032】
Yは2つの結合とともにπ共役系を形成しない2価の連結基を表す。Yの種類としてはそれらが結合したクロモフォア間でπ共役系を形成しない以外に特に限定はないが、好ましくは炭素数1〜20のアルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン等)、炭素数6〜26のアリーレン基(フェニレン、ナフチレン等)、炭素数2〜20のアルケニレン基(プロペニレン等)、炭素数2〜20のアルキニレン基(プロピニレン等)、-CO-N(R11)-、-CO-O-、-SO2-N(R12)-、-SO2-O-、-N(R13)-CO-N(R14)-、-SO2-、-SO-、-S-、-O- 、-CO-、炭素数1〜26のヘテリレン基(6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル、ピリミジン−2,4−ジイル等)、あるいはこれらを複数組み合わせて構成される炭素数1〜20の連結基である。
R11、R12、R13、R14は各々独立に水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。またYで表される連結基は、それらが連結する2つのクロモフォア間で1つ以上複数個存在していてもよく、複数個(好ましくは2つ)が結合して環を形成してもよい。Yとしてより好ましくは2つのアルキレン基が結合して環を形成したものであり、その中でも5または6員環を形成した場合がなおより好ましい。最も好ましくはシクロヘキシル環を形成したものである。
【0033】
一般式(1)で表される本発明の化合物は、置換基の種類によっては1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、こ(れら)の不斉炭素に基づく任意の光学異性体又はジアステレオ異性体はいずれも本発明の範囲に包含される。
また純粋な形態の異性体のほか、それらの任意の混合物、ラセミ体なども本発明の範囲に包含される。 本発明の化合物は複数個の二重結合を含むが、こ(れら)の二重結合に基づく任意の幾何異性体も本発明の範囲に包含される。さらに本発明の化合物は水和物または溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質も本発明の範囲に包含される。 溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコールなどの溶媒を例示することができる。
【0034】
以下に一般式(1)で表わされる本発明の化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお一般式(1)で表わされる化合物には互変異性体が存在するが、本明細書に記載された化学構造式は便宜上これらの互変異性体の1つを記載したものであることを理解すべきである。いずれの互変異性体も本発明の範囲に包含されることはいうまでもない。
【0035】
【化9】

【0036】
【化10】

【0037】
一般式(1)で表される本発明の化合物は、一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物を反応させることによって製造することができる。
【0038】
【化11】

【0039】
一般式(2)中Ma1、Ma2およびMa3、n、R1およびR3、pは前記と同義である。
【0040】
【化12】

【0041】
一般式(3)中Za2およびZa3、Yは前記と同義である。L1は水素原子または離脱基を表す。
【0042】
一般式(2)で表される化合物について、詳細は以下の通りである。一般式(2)中 Ma1、Ma2およびMa3、n、R1およびR3、pはQは前記一般式(1)において説明したものと同義であり、好ましい具体例、範囲も同一である。一般式(2)で表わされる化合物は酸付加塩として存在してもよく、本発明の好ましい実施形態の1つである。塩の種類としてはハロゲン化水素酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩)、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩などが挙げられるが、安定性、価格、工業スケールでの入手の容易さの観点から、好ましくは塩酸塩である。
【0043】
一般式(2)で表される化合物は、置換基の種類によっては1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、こ(れら)の不斉炭素に基づく任意の光学異性体又はジアステレオ異性体はいずれも本発明の範囲に包含される。 また純粋な形態の異性体のほか、それらの任意の混合物、ラセミ体なども本発明の範囲に包含される。一般式(2)で表される化合物は複数個の二重結合を含むが、こ(れら)の二重結合に基づく任意の幾何異性体も本発明の範囲に包含される。
さらに本発明の化合物は水和物または溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質も本発明の範囲に包含される。溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコールなどの溶媒を例示することができる。
【0044】
一般式(3)で表される化合物について、詳細は以下の通りである。一般式(3)中Za2およびZa3、Yは前記一般式(1)において説明したものと同義であり、好ましい具体例、範囲も同一である。L1は水素原子または離脱基を表す。脱離基の具体的な例としては、炭素数6〜20のアリールチオ基、炭素数1〜12のアルキルスルファモイル基、炭素数6〜20のアリールスルファモイル基などが挙げられる。好ましいL1は水素原子である。
【0045】
一般式(3)で表される化合物は、置換基の種類によっては1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、こ(れら)の不斉炭素に基づく任意の光学異性体又はジアステレオ異性体はいずれも本発明の範囲に包含される。また純粋な形態の異性体のほか、それらの任意の混合物、ラセミ体なども本発明の範囲に包含される。
一般式(3)で表される化合物が二重結合を含む場合、こ(れら)の二重結合に基づく任意の幾何異性体も本発明の範囲に包含される。さらに本発明の化合物は水和物または溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質も本発明の範囲に包含される。
【0046】
以下に一般式(2)及び一般式(3)で表わされる本発明の化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。互変異性体に関しては便宜上1つに統一して記載した。また分子内に存在するイオン性基は塩を形成していてもよいが、以下の具体例ではフリー体として記載した。
一般式(2)で表される化合物例
【0047】
【化13】

【0048】
一般式(3)で表される化合物例
【0049】
【化14】

【0050】
一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物の反応による一般式(1)で表される化合物への誘導は、所謂活性メチレン化合物とメチン源(メチン染料にメチン基を導入するために用いられる化合物)との縮合反応として知られている。例えば特公昭39−22069号公報、同43−3504号公報、同52−38056号公報、同54−38129号公報、同55−10059号公報、同58−35544号公報、特開昭49−99620号公報、同52−92716号公報、同59−16834号公報、同63−316853号公報、同64−4082号公報、英国特許第1133986号、米国特許第3247127 号、同4042397号、同4181225号、同5213956号、同5260179号各明細書等を参照することができる。
【0051】
反応において使用する一般式(2)で表される化合物は一般式(3)で表される化合物に対して1.6〜3.0倍モルの範囲であるが、大過剰に使用しても目的物の生成率/生成速度向上にはそれほど影響しない。逆にあまり過剰に一般式(2)で表される化合物を使用すると後の除去操作が煩雑になり、廃棄物量の増大やろ過性の悪化、晶析阻害等の原因となるので工業スケールの製造ではかえって障害となる。
本発明において一般式(3)で表される化合物に対する一般式(2)で表される化合物の好ましい量は1.8〜2.8倍モル、より好ましくは1.9〜2.5倍モル、更に好ましくは2.0〜2.4倍モルである。
【0052】
一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物の反応において使用しうる反応溶媒としては、工程操作上の問題等を引き起こさず、反応の進行を妨げず、かつ本発明の反応条件において分解して反応に悪影響を与えない限り特に制限はないが、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、N−メチルピロリドン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等の塩素系炭化水素などが好ましく挙げられる。これらの中でもアルコール系溶媒、非プロトン性極性溶媒、エステル系溶媒の使用が好ましく、メタノール、エタノール、2−プロパノール、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、酢酸エチルの使用がより好ましい。最も好ましい溶媒はメタノール、2−プロパノール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、酢酸エチルあるいはこれらの中から選択される2〜3種の溶媒の併用系である。
【0053】
一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物の反応では、塩基を用いることが好ましい。
塩基としては第3級の有機塩基(トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等)、ピリジン類(ピリジン、2−メチルピリジン、2,6−ルチジン等)、アルカリ金属アルコキシド(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド等)、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム等)、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。好ましい塩基は第3級アミン類であり、より好ましくはトリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンである。
使用する塩基の量は一般式(2)で表わされる化合物に対して2〜12当量が好ましく、より好ましいのは3〜8当量である。
【0054】
反応温度は通常0〜60℃の範囲であるが、好ましくは5〜45℃、より好ましくは10〜40℃である。反応時間は仕込み量、反応温度により異なるが通常0.5〜8時間であり、1〜6時間の範囲がより好ましい。工程では特に不活性な雰囲気は不要であるが、アルゴンまたは窒素気流下で反応を行なってもよい。
【0055】
一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物の反応により生成した一般式(1)で表される化合物は、必要に応じて常套の分離・精製手段、例えば晶析、シリカゲルやアルミナを用いたクロマトグラフィー、抽出などの手段で分離・精製することができる。多くの場合貧溶剤を添加することで一般式(1)で表される化合物が結晶として析出するので、通常の固液分離を行って目的物を単離する方法が有利である。あるいは分離・精製を省略して、他の製造工程の製造用中間体又として使用することも可能である。
【0056】
次に、上記で述べた一般式(1)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物を反応させて一般式(5)で表される化合物を製造する方法について説明する。
一般式(4)
【0057】
【化15】

【0058】
一般式(4)中 Za1は酸性核を形成する原子群を表す。L2は水素原子または離脱基を表す。
一般式(5)
【0059】
【化16】

【0060】
一般式(5)中Ma1、Ma2およびMa3、Za1、Za2およびZa3、n、Yは前記と同義である。 Qは電荷を中和するイオンを表し、yは電荷の中和に必要な数を表す。
【0061】
一般式(4)で表される化合物について、詳細に記載する。一般式(4)中Za1は一般式(1)及び一般式(3)のZa2およびZa3として説明したものと同義であり、好ましい具体例、範囲も同一である。L2は一般式(3)のL1として説明したものと同義であり、好ましい具体例、範囲も同一である。また一般式(4)で表される化合物は、置換基の種類によっては1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、こ(れら)の不斉炭素に基づく任意の光学異性体又はジアステレオ異性体はいずれも本発明の範囲に包含される。また純粋な形態の異性体のほか、それらの任意の混合物、ラセミ体なども本発明の範囲に包含される。一般式(4)で表される化合物が二重結合を含む場合、こ(れら)の二重結合に基づく任意の幾何異性体も本発明の範囲に包含される。さらに本発明の化合物は水和物または溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質も本発明の範囲に包含される。
一般式(4)で表される化合物は特願2004−166665号に記載され、これらの化合物は同特願に記載の方法で合成できる。
以下に一般式(4)で表わされる本発明の化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。互変異性体に関しては便宜上1つのみを記載した。
【0062】
【化17】

【0063】
一般式(5)で表される化合物について、詳細は以下の通りである。一般式(5)中Ma1、Ma2およびMa3、Za1、Za2およびZa3、n、Yは前記一般式(1)または一般式(4)で説明したものと同義であり、好ましい具体例、範囲も同一である。Qは電荷を中和するイオンを表し、yは電荷の中和に必要な数を表す。
ある化合物が陽イオン、陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を有するか否かはその化合物の置換基に依存する。Qで表されるイオンは、対する色素分子の電荷に応じて陽イオンを表す場合と陰イオンを表す場合がある。また色素分子が無電荷の場合にはQは存在しない。Qとして表されるイオンには特に制限は無く、無機イオンであっても有機イオンであってもよく、さらにQとして表されるイオンの電荷は1価であっても多価であっても構わない。Qとして表される陽イオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオンのような金属イオン、水素イオン、アンモニウムイオン(1級、2級、3級、4級のいずれであってもよい)、オキソニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオン、セレノニウムイオン、ヨードニウムイオンなどのオニウムイオン等が挙げられる。一方Qとして表される陰イオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオンのようなハロゲン化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオンなどのヘテロポリ酸イオン、コハク酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、芳香族ジスルホン酸イオンのような有機多価陰イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン等が挙げられる。Qで表される陽イオンとして好ましくは水素イオン、金属イオン、アンモニウムイオン(1級、2級、3級、4級のいずれであってもよいが3級または4級である場合がより好ましい)、オニウムイオンである。Qが水素イオンのときは中性のフリー体を表す。
【0064】
一般式(5)で表される化合物は、置換基の種類によっては1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、こ(れら)の不斉炭素に基づく任意の光学異性体又はジアステレオ異性体はいずれも本発明の範囲に包含される。また純粋な形態の異性体のほか、それらの任意の混合物、ラセミ体なども本発明の範囲に包含される。一般式(5)で表される化合物は複数個の二重結合を含むが、こ(れら)の二重結合に基づく任意の幾何異性体も本発明の範囲に包含される。さらに本発明の化合物は水和物または溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質も本発明の範囲に包含される。溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、メタノール、アセトン、イソプロピルアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの溶媒を例示することができる。
【0065】
以下に一般式(5)で表わされる本発明の化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。互変異性体に関しては便宜上1つのみを記載した。
【0066】
【化18】

【0067】
【化19】

【0068】
【化20】

【0069】
【化21】

【0070】
【化22】

【0071】
一般式(1)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物の反応による一般式(5)で表される化合物への誘導は、先に説明した一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物の反応と機構的には同一である。反応において使用する一般式(4)で表される化合物のモル比は一般式(1)で表される化合物に対して1.8〜4.0倍モルの範囲であるが、この範囲を超えて過剰に使用しても目的物の生成率/生成速度向上にはそれほど影響しない。本発明において一般式(1)で表される化合物に対する一般式(4)で表される化合物の好ましい量は1.8〜3.0倍モル、より好ましくは2.0〜2.5倍モルである。
【0072】
一般式(1)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物の反応において使用しうる反応溶媒としては、工程操作上の問題等を引き起こさず、反応の進行を妨げず、かつ本発明の反応条件において分解して反応に悪影響を与えない限り特に制限はないが、例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒、N−メチルピロリドン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒などが好ましく挙げられる。これらの中でもアルコール系溶媒、非プロトン性極性溶媒、エステル系溶媒の使用が好ましく、メタノール、2−プロパノール、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、酢酸エチルの使用がより好ましい。最も好ましい溶媒はメタノール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、酢酸エチルあるいはこれらの中から選択される2〜3種の溶媒の併用系である。
【0073】
一般式(1)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物の反応では、塩基を用いることが好ましい。塩基としては第3級の有機塩基(トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等)、ピリジン類(ピリジン、2−メチルピリジン、2,6−ルチジン等)、アルカリ金属アルコキシド(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド等)、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム等)、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。好ましい塩基は第3級アミン類であり、より好ましくはトリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンである。
使用する塩基の量は一般式(1)で表わされる化合物に対して2〜15当量が好ましく、より好ましいのは4〜12当量である。
【0074】
反応温度は通常−15℃〜40℃の範囲であるが、好ましくは−10〜30℃、より好ましくは−5〜15℃である。反応時間は仕込み量、反応温度により異なるが通常0.5〜8時間であり、1〜6時間の範囲がより好ましい。工程では特に不活性な雰囲気は不要であるが、アルゴンまたは窒素気流下で反応を行なってもよい。
【0075】
一般式(1)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物の反応により生成した一般式(5)で表される化合物は、必要に応じて塩交換を行うことができる。具体的にはQが水素イオン、アンモニウムイオンである化合物をオニウムイオンに塩交換する事例が挙げられる。Qがオニウムイオンである一般式(5)で表される化合物は結晶性が良く、常套の分離・精製手段、例えば通常の固液分離を行うことで目的物を容易に単離することが可能である。
【0076】
[実施例]
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0077】
化合物1の合成
化合物1は化合物13と化合物7の塩酸塩を反応させて合成した。まず化合物13の合成法について説明する。
無水酢酸(55g)とマロン酸(60g)の混合物に濃硫酸(1mL)を加え、引き続きシクロヘキサン−1,4−ジオン(20g)を内温30℃で分割添加した。反応混合物を55℃で10時間攪拌したのち2−プロパノール(40mL)と水(80mL)からなる混合媒体中に20℃で注加し、水酸化ナトリウム水溶液でpH4まで中和した。反応混合物を15℃で1時間攪拌ののち析出した結晶を濾過、2−プロパノール/水(体積比1/2)からなる混合溶液で洗浄、乾燥して31gの化合物13を淡褐色結晶として得た。 収率61.1%。
1H-NMR (TMS、DMSO−d6) δ(ppm):2.20 (s, 8H), 4.07 (s, 4H)
得られた化合物13(13.8g)を、1−フェニルアミノ−5−フェニルイミノ−1,3−ペンタジエン塩酸塩(化合物7の塩酸塩、30g)、DMAc(50mL)、IPA(50mL)、トリエチルアミン(42g)からなる混合液に、25℃で分割添加した。反応混合物を25〜35℃で4時間攪拌したのち希塩酸、次いで水を滴下すると結晶が析出した。反応混合物をそのまま1時間攪拌し、析出した結晶を濾過、メタノールで洗浄、乾燥して、18.7gの化合物1を暗赤色結晶として得た(収率65%)。
MS:(M-H)- 593.2012
【実施例2】
【0078】
化合物2の合成
1−フェニルアミノ−5−フェニルイミノ−1,3−ペンタジエン塩酸塩の替わりに1−フェニルアミノ−5−フェニルイミノ−3−メチル−1,3−ペンタジエン塩酸塩(化合物8の塩酸塩)を用いて合成例1に記載の方法にほぼ従って合成を行い、化合物2を暗赤色結晶として得た(収率59%)。
MS:(M-H)- 621.2331
【実施例3】
【0079】
化合物3の合成
1−フェニルアミノ−5−フェニルイミノ−1,3−ペンタジエン塩酸塩の替わりに1−フェニルアミノ−5−フェニルイミノ−3−フェニル−1,3−ペンタジエン塩酸塩(化合物9の塩酸塩)を、IPAの替わりにMeOHを用いて合成例1に記載の方法にほぼ従って反応を行った。反応終了後に析出した結晶を濾過して集め、MeOHで洗浄、乾燥して化合物3を暗赤紫色結晶として得た(収率57%)。
MS:(M-H)- 745.2612
【実施例4】
【0080】
化合物A−1/A−2の合成
まず2−メチル−2−プロピル−1,3−ジオキソラン−4,6−ジオンの合成方法について説明する。無水酢酸(68.7g)とマロン酸(50g)の混合物に濃硫酸(2mL)を加え、引き続き2−ペンタノン(41.4g)を内温10℃以下で滴下した。反応混合物を20℃で2時間攪拌したのちトルエン(200mL)と10%食塩水(70mL)を加えた。有機層を分取、濃縮し、残渣を2−プロパノール/水(体積比1/3、晶析温度5℃)から晶析、2−プロパノール/水(体積比1/3)からなる混合溶液で濾過、洗浄、乾燥して57.9gの2−メチル−2−プロピル−1,3−ジオキソラン−4,6−ジオンを無色結晶として得た(収率70%)。
融点:38〜39℃
得られた2−メチル−2−プロピル−1,3−ジオキソラン−4,6−ジオン(8.6 g)を、化合物1(11.9g)、DMF(150mL)、トリエチルアミン(12g)からなる混合液に、0℃で分割添加した。反応混合物を0〜10℃で4時間攪拌したのち希塩酸、次いで水を滴下すると結晶が析出した。反応混合物をそのまま2時間攪拌し、析出した結晶を濾過、水洗、乾燥して、12.1gの化合物1を暗緑色結晶性粉末として得た(収率83%)。
MS:(M-H)- 751.2311
なお反応終了後の希塩酸、水滴下を行わず、酢酸エチルで抽出、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うと化合物A-2を得ることができる。
【実施例5】
【0081】
化合物A−4の合成
まず2−メチル−2−(2’−エトキシカルボニルエチル)−1,3−ジオキソラン−4,6−ジオンの合成方法について説明する。無水酢酸(25.6g)とマロン酸(18.7g)の混合物に濃硫酸(1mL)を加え、引き続きレブリン酸エチル(28.9g)を内温30℃以下で滴下した。 反応混合物を35℃で2時間攪拌したのち酢酸エチル(150mL)と10%食塩水(100mL)を加え、有機層を分取した。10%食塩水(100mL)で2回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮し、残渣をエタノール/水(体積比1/3、晶析温度5℃)から晶析、濾過、洗浄、乾燥して27.7gの2−メチル−2−(2’−エトキシカルボニルエチル)−1,3−ジオキソラン−4,6−ジオンを無色結晶として得た(収率63%)。
融点:63〜64℃
得られた2−メチル−2−(2’−エトキシカルボニルエチル)−1,3−ジオキソラン−4,6−ジオンを用いて実施例4に記載の方法にほぼ従って合成を行い、化合物A−4を暗緑色結晶性粉末として得た(収率78.6%)。
MS:(M-H)- 867.2441
【実施例6】
【0082】
化合物B−1の合成
化合物B−1は、化合物A−1と下記式で表されるビピリジニウム化合物との塩交換反応により合成した。
【0083】
【化23】

【0084】
上記ビピリジニウム化合物(7.4g)のメタノール(120mL)懸濁液を還流し、ここに化合物A−1(10g)のメタノール(40mL)溶液を滴下した。反応混合物を3時間還流ののち室温まで冷却、析出した結晶を濾過、メタノールで洗浄、乾燥して16.6gの化合物B−1を光沢のある深緑色結晶性粉末として得た(収率90%)。
なお化合物A−1に替えて化合物A−2を用いても、全く同様に化合物B−1を合成することが可能である。
【実施例7】
【0085】
化合物B−4の合成
化合物A−1の替わりに化合物A−4を用いて合成例6に記載の方法にほぼ従って合成を行い、化合物B−4を光沢のある明緑色結晶性粉末として得た(収率88%)。
【実施例8】
【0086】
化合物A−1の一貫合成法
2−メチル−2−プロピル−1,3−ジオキソラン−4,6−ジオン(8.6g)を、化合物1(11.9g)、DMF(150mL)、トリエチルアミン(12g)からなる混合液に0℃で分割添加し、反応混合物を0〜10℃で4時間攪拌した。一方実施例6に記載のビピリジニウム化合物(10.1g)をメタノール(200mL)に懸濁、還流し、ここに2−メチル−2−プロピル−1,3−ジオキソラン−4,6−ジオンと化合物1を反応させた反応混合物を滴下した。反応混合物を3時間還流ののち室温まで冷却、析出した結晶を濾過、メタノールで洗浄、乾燥して22.5gの化合物B−1を光沢のある深緑色結晶性粉末として得た(収率84%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
一般式(1)
【化1】

一般式(1)中、Ma1、Ma2およびMa3は各々独立に置換または無置換のメチン基を表す。Za2およびZa3は各々独立に酸性核を形成する原子群を表し、nは0〜3の整数を表す。R1は置換基を表し、pは0〜5の整数を表す。R3は水素原子または置換基を表す。Yは2つの結合とともにπ共役系を形成しない2価の連結基を表す。
【請求項2】
一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物を反応させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製造方法。
一般式(2)
【化2】

一般式(2)中、Ma1、Ma2およびMa3は各々独立に置換または無置換のメチン基を表す。nは0〜3の整数を表す。R1は置換基を表し、pは0〜5の整数を表す。R3は水素原子または置換基を表す。
一般式(3)
【化3】

一般式(3)中、Za2およびZa3は各々独立に酸性核を形成する原子群を表し、Yは2つの結合とともにπ共役系を形成しない2価の連結基を表す。L1は水素原子または離脱基を表す。
一般式(1)
【化4】

一般式(1)中、Ma1、Ma2、Ma3、n、R1、p及びR3は一般式(2)におけると同義であり、Za2、Za3およびYは一般式(3)におけると同義である。
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物を反応させ、必要に応じて塩交換を行うことを特徴とする一般式(5)で表される化合物の製造方法。
一般式(1)
【化5】

一般式(1)中、Ma1、Ma2およびMa3は各々独立に置換または無置換のメチン基を表す。Za2およびZa3は各々独立に酸性核を形成する原子群を表し、nは0〜3の整数を表す。R1は置換基を表し、pは0〜5の整数を表す。R3は水素原子または置換基を表す。Yは2つの結合とともにπ共役系を形成しない2価の連結基を表す。
一般式(4)
【化6】

一般式(4)中、Za1は酸性核を形成する原子群を表す。L2は水素原子または離脱基を表す。
一般式(5)
【化7】

一般式(5)中、Ma1、Ma2、Ma3、Za2、Za3、n、およびYは一般式(1)におけると同義である。Za1は一般式(4)におけると同義である。Qは電荷を中和するイオンを表し、yは電荷の中和に必要な数を表す。

【公開番号】特開2006−52354(P2006−52354A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236346(P2004−236346)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】