説明

1,3−ジオキソラン化合物及びその製造方法

【課題】安全に、安定かつ大量に製造が可能なオセルタミビルの製造方法に有用な中間体である1,3−ジオキソラン化合物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 式(7)で表される1,3−ジオキソラン化合物。


(R、Rは同一又は相異してそれぞれアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基を示す。ただしR、Rは同時にメチルではない。Rはアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3−ジオキソラン化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オセルタミビル(Oseltamivir)は、酵素であるノイラミニダーゼ(neuraminidase,
NA)を阻害することにより、インフルエンザウイルスが感染細胞表面から遊離することを阻害し、他の細胞への感染・増殖を抑制することが知られており、大変有用な化合物である。
オセルタミビルの製造方法としては、キナ皮から発見された環式ヒドロキシ酸であるキナ酸(quinic acid)あるいはシキミ酸(shikimic acid)を出発原料とした製造方法が知られている(特許文献1)。しかし、該化合物は天然に存在する化合物で供給量は限られたものであり、オセルタミビルをより大量に得るためには不向きである。また、製造において毒性や爆発性のあるアジド試薬やアジド中間体を経由するという問題点がある。
オセルタミビルを製造するにあたり、毒性や爆発性のあるアジド試薬を使用するという上記問題に対しては、アジド試薬を用いない方法(特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−517306号公報
【特許文献2】特開2001−031631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、オセルタミビルを製造するにあたり、原料として極めて潤沢な化合物を出発原料とし、かつ、毒性や爆発性のあるアジド試薬やアジド中間体を用いない、安全、安定かつ大量に目的物の製造が可能な方法が望まれている。
【0005】
本発明の課題は、安全に、安定かつ大量に製造が可能なオセルタミビルの製造方法に有用な中間体である1,3−ジオキソラン化合物、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の発明に係る。
1. 式(1)で表される1,3−ジオキソラン化合物。
【0007】
【化1】

〔R、Rは同一又は相異してそれぞれアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基を示す。ただしR、Rは同時にメチルではない、RはCOOR、CH(OAc)C(=CH)COOR、R、Rは同一又は相異してそれぞれアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基、RはCOOH、CHOH、CHOD、Dは水酸基の保護基である。〕
【発明の効果】
【0008】
本発明のオセルタミビルの製造方法は、天然資源あるいは工業原料として極めて潤沢な酒石酸(D−tartaric acid)を出発原料とすることにより、オセルタミビルをより安全に、安定かつ大量に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、オセルタミビルの製造方法に関して、重要な前駆体である新規な1,3−ジオキソラン化合物、及びその製造方法に関する。
本発明の1,3−ジオキソラン化合物は、式(1)で表わされる。
【0010】
【化2】

【0011】
〔R、Rは同一又は相異してそれぞれアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基を示す。ただしR、Rは同時にメチルではない、RはCOOR、CH(OAc)C(=CH)COOR、R、Rは同一又は相異してそれぞれアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基、RはCOOH、CHOH、CHOD、Dは水酸基の保護基である。〕
【0012】
、Rで示される基はアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基を示す。
【0013】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を挙げることができる。
好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が良い。より好ましくは、エチル基が良い。
【0014】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基を挙げることができる。好ましいアリール基としては、フェニル基が良い。
置換アリール基の置換基としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−CORで示されるカルボニル含有基(R=C〜Cのアルキル基、アリール基、C〜Cのアルコキシ基、アリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。
【0015】
アラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルブチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等の炭素数7〜20のアラルキル基を挙げることができる。好ましいアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基が良い。
置換アラルキル基の置換基としては、上記置換アリール基の置換基と同じ基を挙げることができる。
【0016】
芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、ピロール基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
【0017】
で示される基としては、COOR、CH(OAc)C(=CH)COOR、R、Rは同一又は相異してそれぞれアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基を挙げることができる。ここでAcはアセチル基であり、R、Rは上記R、Rで示される基と同様の、アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基を示す。これらの基の例は上記R、Rで示される基と同じ基を挙げることができる。好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が良く、より好ましくは、エチル基が良い。
で示される基としては、COOH、CHOH、CHOD、Dは水酸基の保護基を挙げることができる。
【0018】
Dで示される水酸基の保護基としては、炭素数1〜10のオキシアルキル基、置換基を有していても良い炭素数6〜10のアリール基、置換基を有していても良い炭素数7〜14の、炭素数1〜8のアルキル基又はアリール基を有するシリル基などを挙げることができる。
炭素数1〜10のオキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基等の炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状又は環状のオキシアルキル基を挙げることができる。
置換基を有していても良い炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、トリル基等のアルキル置換基を有するものの他、側鎖置換基にヘテロ原子を含むもの、またアリール基の環の構成原子としてヘテロ原子を含むものを挙げることができる。
置換基を有していても良い炭素数7〜14のアラルキル基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基で置換された、分岐鎖状又は環状のアルキル基を挙げることができる。また置換基にヘテロ原子を含むもの、またアリール基の環の構成原子としてヘテロ原子を含むものを挙げることができる。
【0019】
炭素数1〜8のアルキル基又はアリール基を有するシリル基としては、トリルメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。
具体的なアルキル基、アリール基、アラルキル基としては上記R、Rで示した基を例示することができる。
好ましい保護基としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のオキシアルキル基が良い。より好ましくは、テトラヒドロピラニル基が良い。
【0020】
式(1)で表される1,3−ジオキソラン化合物としては、具体的には、式(2)〜式(7)で表される1,3−ジオキソラン化合物を挙げることができる。
【0021】
【化2】

(R、R、Rは上記と同じ。)、
【0022】
【化3】

(R、R、Rは上記と同じ。)、
【0023】
【化4】

(R、R、R及びDは上記と同じ。)
【0024】
【化5】

(R、R、R及びDは上記と同じ。Acはアセチル基を示す。)
【0025】
【化6】

(R、R、R及びDは上記と同じ。)
【0026】
【化7】

(R、R、Rは上記と同じ。)
【0027】
式(2)で表される化合物としては、具体的には、2,2−ジエチル−[1,3]ジオキソラン−4,5−ジカルボン酸モノメチルエステル、2−メチル−2−オクチル−[1,3]ジオキソラン−4,5−ジカルボン酸モノブチルエステル、1,4−ジオキサスピロ[4,5]デカン−2,3−ジカルボン酸モノオクチルエステル、2−ブチル−2−フェニル−[1,3]ジオキソラン−4,5−ジカルボン酸モノベンジルエステル、2−ベンジル−2−メチル−[1,3]ジオキソラン−4,5−ジカルボン酸モノピリジン−2−イルメチルエステル、2−エチル−2−ピリジン−2−イル−[1,3]ジオキソラン−4,5−ジカルボン酸モノフラン−2−イルメチルエステル等を挙げることができる。
【0028】
式(3)で表される化合物としては、具体的には、2,2−ジエチル−5−ヒドロキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4−カルボン酸メチルエステル、5−ヒドロキシメチル−2−メチル−2−オクチル−[1,3]ジオキソラン−4−カルボン酸ブチルエステル、3−ヒドロキシメチル−1,4−ジオキサスピロ[4,5]デカン−2−カルボン酸オクチルエステル、2−ブチル−5−ヒドロキシメチル−2−フェニル−[1,3]ジオキソラン−4−カルボン酸ベンジルエステル、2−ベンジル−5−ヒドロキシメチル−2−メチル−[1,3]ジオキソラン−4−カルボン酸ピリジン−2−イルメチルエステル、2−エチル−5−ヒドロキシメチル−2−ピリジン−2−イル−[1,3]ジオキソラン−4−カルボン酸フラン−2−イルメチルエステル等を挙げることができる。
【0029】
式(4)で表される化合物としては、具体的には、2,2−ジエチル−5−(テトラヒドロピラン−2−イロキシメチル)−[1,3]ジオキソラン−4−カルボン酸メチルエステル、2,2−ジエチル−5−(4−メトキシベンジロキシメチル)−[1,3]ジオキソラン−4−カルボン酸メチルエステル、5−(tert−ブチルジメチルシロキシメチル)−2−メチル−2−オクチル−[1,3]ジオキソラン−4−カルボン酸メチルエステル、3−メトキシメトキシメチル−1,4−ジオキサスピロ[4,5]デカン−2−カルボン酸オクチルエステル、2−ブチル−2−フェニル−5−(テトラヒドロピラン−2−イロキシメチル)−[1,3]ジオキソラン−4−カルボン酸ベンジルエステル、2−ベンジル−2−メチル−5−(テトラヒドロピラン−2−イロキシメチル)−[1,3]ジオキソラン−4−ピリジン−2−イルメチルエステル、2−エチル−5−メトキシメトキシメチル−2−ピリジン−2−イル−[1,3]ジオキソラン−4−カルボン酸フラン−2−イルメチルエステル等を挙げることができる。
【0030】
式(5)で表される化合物としては、具体的には、2−{アセトキシ−[2,2−ジエチル−5−(テトラヒドロピラン−2−イロキシメチル)−[1,3]ジオキソラン−4−イル]メチル}アクリル酸エチルエステル、2−{アセトキシ−[2,2−ジエチル−5−(4−メトキシベンジロキシメチル)−[1,3]ジオキソラン−4−イル]メチル}アクリル酸メチルエステル、2−{アセトキシ−[5−(tert−ブチルジメチルシロキシメチル)−2,2−ジエチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル]メチル}アクリル酸tert−ブチルエステル、2−[アセトキシ−(3−メトキシメトキシメチル−1,4−ジオキサスピロ[4,5]デカ−2−イル)メチル]アクリル酸tert−ブチルエステル、2−{アセトキシ−[2−ブチル−2−フェニル−5−(テトラヒドロピラン−2−イロキシメチル)−[1,3]ジオキソラン−4−イル]メチル}アクリル酸ベンジルエステル、2−{アセトキシ−[2−ベンジル−2−メチル−5−(テトラヒドロピラン−2−イロキシメチル)−[1,3]ジオキソラン−4−イル]メチル}アクリル酸エチルエステル、2−[アセトキシ−(2−エチル−5−メトキシメトキシメチル−2−ピリジン−2−イル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)メチル]アクリル酸メチルエステル等を挙げることができる。
【0031】
式(6)で表される化合物としては、具体的には、3−[2,2−ジエチル−5−(テトラヒドロピラン−2−イロキシメチル)−[1,3]ジオキソラン−4−イル]−2−(2−ニトロエチル)アクリル酸エチルエステル、3−[2,2−ジエチル−5−(4−メトキシメトキシメチル)−[1,3]ジオキソラン−4−イル]−2−(2−ニトロエチル)アクリル酸メチルエステル、3−[5−(tert−ブチルジメチルシロキシメチル)−2,2−ジエチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル]−2−(2−ニトロエチル)アクリル酸tert−ブチルエステル、3−(3−メトキシメトキシメチル−ジオキサスピロ[4,5]デカ−2−イル)−2−(2−ニトロエチル)アクリル酸tert−ブチルエステル、3−[2−ブチル−2−フェニル−5−(テトラヒドロピラン−2−イロキシメチル)−[1,3]ジオキソラン−4−イル]−2−(2−ニトロエチル)アクリル酸ベンジルエステル、3−[2−ベンジル−2−メチル−5−(テトラヒドロピラン−2−イロキシメチル)−[1,3]ジオキソラン−4−イル]−2−(2−ニトロエチル)アクリル酸エチルエステル等を挙げることができる。
【0032】
式(7)で表される化合物としては、具体的には、3−(2,2−ジエチル−5−ヒドロキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−2−(2−ニトロエチル)アクリル酸エチルエステル、3−(2,2−ジエチル−5−ヒドロキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−2−(2−ニトロエチル)アクリル酸メチルエステル、3−(3−ヒドロキシメチル−1,4−ジオキサスピロ[4,5]デカ−2−イル)−2−(2−ニトロエチル)アクリル酸tert−ブチルエステル、3−(2−ブチル−5−ヒドロキシメチル−2−フェニル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−2−(2−ニトロエチル)アクリル酸ベンジルエステル、3−(2−エチル−5−ヒドロキシメチル−2−ピリジン−2−イル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−2−(2−ニトロエチル)アクリル酸tert−ブチルエステル、3−(2−ベンジル−5−ヒドロキシメチル−2−メチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)−2−(2−ニトロエチル)アクリル酸エチルエステル等を挙げることができる。
【0033】
本発明においては、化合物(1)の代表例として、式(14)のヒドロキシニトロエステル化合物の製造方法の1例を以下に示す。
【0034】
【化8】

【0035】
D−酒石酸をケトンでアセタール化して、式(8)で表される酒石酸メチルエステル−ペンタノンアセタールを得る。これにアルカリ金属の水酸化物を作用させ、加水分解して式(9)で表されるモノカルボン酸化合物を得る。これにBH−S(ジアルキル)を反応させて、式(10)で表されるヒドロキシエステル化合物を得る。
これに3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(DHP)および(+)カンファースルホン酸(CSA)を反応させて、式(11)で表されるTHPエステル化合物を得る。
これに水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)を反応させ、次いで、反応生成物に、アクリル酸エチルおよび1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)を反応させ、更に反応生成物に、トリエチルアミン、無水酢酸およびN,N−ジメチルアミノピリジンを反応させて、式(12)で表されるアセトキシ不飽和エステル化合物を得る。
これにニトロメタン及びアルカリ金属の水酸化物を作用させてニトロメチル化して式(13)で表されるニトロエステル化合物を得る。
これにハロゲン化水素を作用させて脱テトラヒドロピラニル化して式(14)で表されるヒドロキシニトロエステル化合物を得る。
【0036】
下記式(8)で表される酒石酸メチルエステル−ペンタノンアセタールは公知化合物であり、例えば公知のD−酒石酸をエステル化およびアセタール化することにより得ることができる。
【0037】
【化9】

【0038】
具体的には、D−酒石酸をケトン類に対して、0.1〜10当量使用することができる。
ケトン類としては、RCOR(R、Rは、同一又は相異してそれぞれアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基である)で表されるケトン類を挙げることができる。上記アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基としては、上記R、Rで示した基を例示することができる。
具体的なケトン類としては、例えばジエチルケトン、メチルオクチルケトン、シクロヘキサノン、ブチルフェニルケトン、ベンジルメチルケトン、エチル−2−ピリジルケトンなどを例示することができる。
【0039】
溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル系溶媒、エタノール(EtOH)等のアルコール系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、トルエンあるいはヘキサンなどの炭化水素類、ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン等を挙げることができ、1〜200倍量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜100℃が望ましく、1〜24時間反応する。
【0040】
式(8)で表される酒石酸メチルエステル−ペンタノンアセタールから式(9)で表されるモノカルボン酸の製造方法は、酒石酸メチルエステル−ペンタノンアセタールに、水酸化カリウムを反応させることにより、モノカルボン酸(9)を製造することができる。
具体的には、酒石酸メチルエステル−ペンタノンアセタールを溶媒に溶解し、水酸化カリウムを反応させる。水酸化カリウムは、0.1〜10Nの水酸化カリウム水溶液を使用することができ、酒石酸メチルエステル−ペンタノンアセタールに対して、1〜10当量使用することができる。溶媒は、THFなどのエーテル系溶媒、EtOH等のアルコール系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、トルエンあるいはヘキサンなどの炭化水素類、DMF等のアミド系溶媒、DMSO、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン等を挙げることができ、1〜200倍量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜100℃が望ましく、1〜24時間反応する。反応終了後、0.01〜12N塩酸水溶液等で反応溶液を中和する。以下において、Meはメチル、Etはエチルを示す。THPはテトラヒドロピラニル、Acはアセチルを示す。
【0041】
【化10】

【0042】
式(9)で表されるモノカルボン酸から式(10)で表されるヒドロキシエステルの製造方法は、モノカルボン酸に、BHSMeを反応させることにより、ヒドロキシエステルを製造することができる。
具体的には、モノカルボン酸を溶媒に溶解し、BHSMeを反応させる。BHSMeは、モノカルボン酸1に対して、1〜10当量使用することができる。溶媒としては上記と同様の溶媒を使用することができ、1〜200倍量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜30℃が望ましく、1〜24時間反応するのが好ましい。
【0043】
【化11】

【0044】
式(10)で表されるヒドロキシエステルから式(11)で表されるTHPエステルの製造方法は、ヒドロキシエステルに、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(DHP)および(+)カンファースルホン酸(CSA)を反応させることにより、THPエステルを製造することができる。
具体的には、ヒドロキシエステルを溶媒に溶解し、DHPおよびCSAを反応させる。DHPは、ヒドロキシエステルに対して、1〜10当量使用することができる。CSAは、ヒドロキシエステルに対して、1〜10当量使用することができる。溶媒としては上記と同様の溶媒を使用することができ、1〜200倍量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜30℃が望ましく、1〜24時間反応するのが好ましい。反応終了後、飽和NaHCO水溶液等で反応溶液を中和する。
【0045】
【化12】

【0046】
式(11)で表されるTHPエステルから式(12)で表されるアセトキシ不飽和エステルの製造方法は、THPエステルに、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)を反応させる。次いで、反応生成物に、アクリル酸エチルおよび1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)を反応させる。更に、反応生成物に、トリエチルアミン、無水酢酸およびN,N−ジメチルアミノピリジンを反応させることにより、アセトキシ不飽和エステルを製造することができる。
具体的には、THPエステルを溶媒に溶解し、DIBAL−Hを反応させる。DIBAL−Hは、THPエステル3に対して、1〜10当量使用することができる。溶媒としては上記と同様の溶媒を使用することができ、1〜200倍量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜30℃が望ましく、1〜24時間反応するのが好ましい。
次いで、反応生成物に、アクリル酸エチルおよびDABCOを加え反応させる。アクリル酸エチルは、THPエステルに対して、1〜100当量使用することができる。DABCOは、THPエステルに対して、1〜100当量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜30℃が望ましく、1〜24時間反応するのが好ましい。
【0047】
更に、反応生成物に、トリエチルアミン、無水酢酸およびN,N−ジメチルアミノピリジンを加え反応させる。トリエチルアミンは、THPエステルに対して、1〜10当量使用することができる。無水酢酸は、THPエステルに対して、1〜10当量使用することができる。N,N−ジメチルアミノピリジンは、THPエステルに対して、1〜10当量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜30℃が望ましく、1〜24時間反応するのが好ましい。
【0048】
【化13】

【0049】
式(12)で表されるアセトキシ不飽和エステルから式(13)で表されるニトロエステルの製造方法は、アセトキシ不飽和エステルに、ニトロメタンおよび水酸化カリウムを反応させることにより、ニトロエステルを製造することができる。
具体的には、ニトロメタンを溶媒に溶解し、水酸化カリウムを反応させる。その後、該反応液に、溶媒に溶かしたアセトキシ不飽和エステルを加え反応させる。ニトロメタンは、アセトキシ不飽和エステルに対して、1〜100等量使用することができる。また、水酸化カリウムは、アセトキシ不飽和エステルに対して、0.1〜100等量使用することができる。溶媒としては上記と同様の溶媒を使用することができ、1〜200倍量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜30℃が望ましく、1〜24時間反応するのが好ましい。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液等で反応溶液を中和する。
【0050】
【化14】

【0051】
式(13)で表されるニトロエステルから式(14)で表されるヒドロキシニトロエステルの製造方法は、ニトロエステルに、HClを反応させることにより、ヒドロキシニトロエステルを製造することができる。
具体的には、ニトロエステルを溶媒に溶解し、HClを反応させる。HClは、0.01〜12NのHCl水溶液を使用することができ、ニトロエステルに対して、0.1〜100等量使用することができる。溶媒としては上記と同様の溶媒を使用することができ、1〜200倍量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜30℃が望ましく、1〜24時間反応するのが好ましい。反応終了後、飽和NaHCO水溶液等で反応溶液を中和する。
【0052】
【化15】

【0053】
上記それぞれの反応生成物は、反応終了後、有機化合物の単離・精製において通常行われる方法により単離・精製することができる。例えば、反応終了後、ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル等で抽出し、抽出液を濃縮して得られる濃縮物を蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどにより精製することができる。
【0054】
式(14)で表されるヒドロキシニトロエステルは、特開2001−031631号公報に記載されている式(18)で表されるアミノアルコールの製造前駆体であり、オセルタミビルを製造するにあたり有用な前駆体である。
【0055】
式(18)で表されるアミノアルコールは、式(14)で表されるヒドロキシニトロエステルにBHS(ジアルキル)及びBFO(ジアルキル)を反応させて還元的アセタール開裂反応式(15)で表されるジオールを得て、これに過ハロゲン酸を反応させて酸化的ジオール開裂反応により式(16)で表されるホルミルブテン酸エステル化合物を得て、アルカリ金属の炭酸水素塩を作用させて分子内環化して式(17)で表されるニトロシクロヘキセン化合物を得て、これに亜鉛及びHClを反応させて還元する方法を挙げることができる。
【0056】
式(14)で表されるヒドロキシニトロエステルから式(15)で表されるジオールの製造方法は、ヒドロキシニトロエステルに、例えば、BHSMeおよびBFOEtを反応させて還元的アセタール開裂反応を行うことにより、ジオールを製造することができる。
具体的には、ヒドロキシニトロエステルを溶媒に溶解し、BHSMeを反応させる。BHSMeは、ヒドロキシニトロエステルに対して、1〜10等量使用することができる。溶媒としては上記と同様の溶媒を使用することができ、1〜200倍量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜30℃が望ましく、1〜24時間反応する。その後、反応液にBFOEtを加え、反応させる。BFOEtは、ヒドロキシニトロエステル6に対して、0.1〜100等量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜30℃が望ましく、1〜24時間反応させるのが好ましい。
【0057】
【化16】

【0058】
式(15)で表されるジオールから式(16)で表されるホルミルブテン酸エステル化合物の製造方法は、ジオールに、例えば、HIOを反応させることによる酸化的ジオール開裂反応により製造することができる。
具体的には、ジオールを溶媒に溶解し、HIOを反応させる。HIOは、HIO2HO等の水和物を使用することができ、ジオールに対して、0.1〜10等量使用することができる。溶媒としては上記と同様の溶媒を使用することができ、1〜200倍量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜30℃が望ましく、1〜24時間反応させるのが好ましい。
【0059】
【化17】

【0060】
式(16)で表されるホルミルブテン酸エステルから式(17)で表されるニトロシクロヘキセンの製造方法は、例えば、ホルミルブテン酸エステルに、NaHCOを反応させ、分子内ニトロアルドール反応を行うことにより、ニトロシクロヘキセン8を製造することができる。
具体的には、ホルミルブテン酸エステルを溶媒に溶解し、NaHCOを反応させる。NaHCOは、ホルミルブテン酸エステルに対して、0.1〜100等量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜30℃が望ましく、1〜24時間反応するのが好ましい。溶媒としては上記と同様の溶媒を使用することができ、1〜200倍量使用することができる。
【0061】
【化18】

【0062】
式(17)で表されるニトロシクロヘキセンから式(18)で表されるアミノアルコールの製造方法は、ニトロシクロヘキセンに、例えば、亜鉛およびHClを反応させ還元することにより、アミノアルコールを製造することができる。
具体的には、ニトロシクロヘキセンを溶媒に溶解し、亜鉛およびHClを反応させる。亜鉛は、亜鉛粉末等を挙げることができ、ニトロシクロヘキセンに対して、0.1〜100等量使用することができる。HClは、0.01〜12NのHCl水溶液を使用することができ、ニトロシクロヘキセンに対して、0.1〜100等量使用することができる。
溶媒としては上記と同様の溶媒を使用することができ、1〜200倍量使用することができる。反応は、−78〜100℃であるが、0〜30℃が望ましく、1〜24時間反応するのが好ましい。反応終了後、飽和NaHCO水溶液等で反応溶液を中和する。
【0063】
式(17)で表されるニトロシクロヘキセンから製造される式(18)で表されるアミノアルコールは、特開2001−031631号公報に記載されているオセルタミビルの製造前駆体であり、オセルタミビルを製造するにあたり有用な前駆体である。
【0064】
【化19】

【0065】
上記それぞれの反応生成物は、反応終了後、有機化合物の単離・精製において通常行われる方法により単離・精製することができる。例えば、反応終了後、ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル等で抽出し、抽出液を濃縮して得られる濃縮物を蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどにより精製することができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を参考例、実施例に基づいて具体的に説明するが何らこれらに限定されるものではない。
【0067】
実施例1 モノカルボン酸(9)
酒石酸メチルエステル−ペンタノンアセタール(公知化合物、1.0g,4.06mmol)のMeOH(10mL)溶液に0.5M KOH(7.3mL,0.9equiv.)を室温で加え、10分間撹拌した。その後反応物に1Nの塩酸を加えて中和して溶媒を留去し、シリカゲルカラムで精製するとモノカルボン酸(9)(890.7mg,3.84mmol,収率94%)を無色の油状物質として得た。
【0068】
実施例2 ヒドロキシエステル(10)
モノカルボン酸(9)(200mg,0.86mmol)のTHF(2.9mL)溶液にのBHSMe(10M,0.26mL,3.0equiv.)を0℃で加え、室温で2時間撹拌した。その後反応混合物に水を加え、生成物を酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。混合物をろ過し、得られたろ液を濃縮溶媒留去後、粗生成物をシリカゲルカラムで精製するとヒドロキシエステル(10)(164mg,0.75mmol,収率87%)を無色の油状物質として得た。
[α]18 +2.02 (c 1.09, CHCl
H NMR (300MHz,CDCl) δ 4.34(1H,d,J=8.2Hz), 4.10(1H,ddd,J=8.23,4.12,3.02Hz), 3.87(1H,dd,J=12.08,3.02Hz), 3.70(3H,s), 3.66(1H,dd,J=12.07,4.12Hz), 2.56(1H,bs), 1.55−1.67(4H,m), 0.85(3H,t,J=7.41Hz), 0.84(3H,t,J=7.14Hz)
13C NMR (75MHz,CDCl) δ 170.9, 115.1, 79.3, 75.2, 61.8, 52.1, 29.5, 29.4, 7.9, 7.3.IR(neat) 3418, 2972, 1714, 1215cm−1
=3.66(hexane/AcOEt=2/1).
【0069】
実施例3 THPエステル(11)
ヒドロキシエステル(10)(2.31g,10.6mmol)のジクロロメタン(35mL)溶液に3,4−dihydro−2H−pyran(1.9mL,21.2mmol,2.0equiv.)、(+)カンファースルホン酸(123mg,0.5mmol,0.05equiv.)を0℃で加え、室温で30分撹拌した。その後反応混合物にNaHCO溶液を加えて中和し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。混合物をろ過し、ろ液を濃縮溶媒留去後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製するとTHPエステル(11)(3.2g,10.58mmol,>99%)のジアステレオマーの混合物を無色の油状物質として得た。
H NMR (300MHz,CDCl) δ 4.34(1H,d,J=8.2Hz), 4.10(1H,ddd,J=8.23,4.12,3.02Hz), 3.87(1H,dd,J=12.08,3.02Hz), 3.70(3H,s), 3.66(1H,dd,J=12.07,4.12Hz), 2.56(1H,bs), 1.55−1.65(4H,m), 0.85(3H,t,J=7.41Hz), 0.84(3H,t,J=7.14Hz)
=0.50(hexane/AcOEt=1/1).
【0070】
実施例4 アセトキシ不飽和エステル(12)
THPエステル(11)(730mg,2.30mmol)のトルエン(11.5mL)溶液にDIBAL−H(2.55mL,2.53mmol,1.1equiv.)を−48℃で加え、1時間撹拌した。反応混合物に0℃でエタノールと水を加え、セライトで固形物をろ過した。得られたろ液を濃縮溶媒留去すると無色の油状物質(690mg)が得られ、精製を行わず次の反応に用いた。続いて粗生成物(690mg)にアクリル酸エチル(1.15mL,10.6mmol,4.6equiv.)、1,4−diazabicyclo−[2,2,2]−octane(258mg,2.30mmol,1.0equiv.)を室温で加え、5日間撹拌した。その後反応混合物を濃縮溶媒留去留去すると無色の油状物質(725mg)が得られ、精製せずに次の反応に用いた。粗生成物(725mg)のTHF(4.6mL)溶液にトリエチルアミン(0.96mL,6.9mmol,3.0equiv.)、無水酢酸(0.3mL,4.6mmol,2.0equiv.)とN,N−ジメチルアミノピリジン(84.3mg,0.69mmol,0.3equiv.)を0℃で加え、そのまま30分撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出し、水で洗浄した。続いて無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、混合物をろ過し、得られたろ液を濃縮溶媒留去後、粗生成物をシリカゲルカラムで精製するとアセトキシ不飽和エステル(12)(504mg,1.21mmol,収率53%,3steps)のジアステレオマーの混合物を無色の油状物質として得た。
H NMR (300MHz,CDCl3) δ 6.41−6.39(1H,m), 5.77−5.76(2H,m), 4.65−4.61(1H,m), 4.33−3.98(8H,m), 3.93−3.37(6H,m), 2.12−2.10(3H,m), 1.0−1.60(4H,m), 0.96−0.86(6H,m)
=0.60(hexane/AcOEt=1/1).
【0071】
実施例5 ニトロエステル(13)
ニトロメタン(0.46mL,8.43mmol,15equiv.)のエタノール(1.0mL)溶液にKOH(0.61mmol,1.1equiv.)を0℃で加え、30分撹拌した。その後化合物(12)(233mg,0.56mmol)のエタノール(0.9mL)溶液を0℃で加え、室温で4時間撹拌した。濃縮溶媒留去後、飽和塩化アンモニウム水溶液で中和し、生成物を酢酸エチルで抽出した。抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮溶媒留去後、粗生成物をシリカゲルカラムで精製すると、ニトロエステル(13)(154mg,0.37mmol,収率66%)のジアステレオマーの混合物を無色の油状物質として得た。
H NMR (300MHz,CDCl) δ 6.41−6.39(1H,m), 5.77−5.76(2H,m), 4.654.61(1H,m), 4.33−3.98(8H,m), 3.93−3.37(6H,m), 2.12−2.10(3H,m), 1.70−1.60(4H,m), 0.96−0.86(6H,m)
=0.60(hexane/AcOEt=1/1).
【0072】
実施例6 ヒドロキシニトロエステル(14)
ニトロエステル(13)(27mg,0.065mmol)のエタノール(0.6mL)溶液に水(0.3mL)、1N HCl(0.2mL,0.6equiv.)を0℃で加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に飽和NaHCO水溶液を加えて中和し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。混合物をろ過し、ろ液を濃縮溶媒留去後、粗生成物をシリカゲルカラムで精製するとヒドロキシニトロエステル(14)(19.7mg,0.059mmol,収率92%)を無色の油状物質として得た。
[α]18 +18.26 (c 0.36,CHCl
H NMR (300MHz,CDCl) δ 6.83(1H,d,J=8.5Hz), 4.74(1H,t,J=8.5Hz), 4.57(2H,dt,J=7.4,1.4Hz), 4.25(4H,q,J=7.1Hz), 3.85−3.93(2H,m), 3.62(1H,m), 3.12(2H,t,J=6.9Hz), 1.71(4H,m), 1.33(3H,t,J=7.1Hz), 0.96(3H,t,J=7.4Hz), 0.94(3H,t,J=7.7Hz)
13C NMR (75MHz,CDCl) δ 166.2, 140.9, 131.7, 114.5, 81.8, 74.6, 74.0, 62.1, 61.4, 31.2, 31.1, 26.5, 15.0, 8.9, 8.8
IR(neat):3460,1709,1554 cm−1
=0.17(hexane/AcOEt=3/1).
【0073】
参考例1 ジオール(15)
ヒドロキシニトロエステル(14)(300mg,0.905mmol)の塩化メチレン(3mL)溶液にBHSMe(1M,0.99mL,0.995mmol,1.1equiv.)を0℃で加え、室温で1時間撹拌した。その後BFOEt(0.12mL,0.995mmol,1.1equiv.)を0℃で加え、30分撹拌し、さらに室温で30分撹拌した。反応混合物にメタノールを加え、濃縮溶媒留去後、粗生成物をシリカゲルカラムで精製するとジオール(15)(281mg,0.842mmol,収率93%)を無色の油状物質として得た。
[α]18 −18.76 (c 2.14,CHCl
H NMR(300MHz,CDCl) δ 6.80(1H,d,J=9.3Hz), 4.53−4.68(2H,m), 4.40(1H,dd,J=6.6,9.3Hz), 4.25(2H,m), 3.78(1H,dd,J=8.2,3.6Hz), 3.60(1H,dt,J=6.9,6.6Hz), 3.49(1H,dd,J=8.2, 3.6Hz), 3.09−3.25(2H,m), 2.90−2.99(1H,m), 1.39−1.64(4H,m), 1.33(3H,t,J=7.1Hz), 0.92(3H,t,J=7.4Hz), 0.88(3H,t,J=7.4Hz)
13C NMR (75MHz,CDCl) δ 165.7, 143.3, 130.1, 80.6, 74.4, 73.8, 73.6, 62.7, 61.4, 26.7, 25.8, 25.7, 14.2, 9.9, 9.2
IR(neat) 3425, 2969, 1705, 1554, 1215cm−1
=0.20(hexane/AcOEt=1/1).
【0074】
参考例2 ホルミルブテン酸エステル(16)
ジオール(15)(38mg,0.11mmol)のTHF(1.4mL)溶液にHIO2HO(31mg,0.13mmol,1.2equiv.)を0℃で加え、そのまま1時間撹拌した。反応後生成物を酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。混合物をろ過し、ろ液を濃縮溶媒留去すると、ホルミルブテン酸エステル(16)(33mg,0.11mmol,収率100%)を無色の油状物質として得た。
H NMR (300Hz, CDCl) δ 9.70(1H,d,J=3.8Hz),6.88−6.90(1H,m), 5.11−5.05(1H,m), 4.50−4.55(2H,m), 4.25(2H,q,J=7.1Hz), 3.44(1H,quin,J=5.5Hz), 3.14−3.00(2H,m), 1.45−1.64(4H,m), 1.32(3H,t,J=7.1Hz), 0.86−0.96(6H,m)
【0075】
参考例3 ニトロシクロヘキセン(17)
ホルミルブテン酸エステル(16)(33mg,0.11mmol)のTHF(1.4mL)溶液にNaHCO(96mg,1.13mmol,10equiv.)の水溶液(1.5mL)を加えて0℃で10分間撹拌し、さらに室温で4時間撹拌した。反応後生成物を酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。混合物をろ過し、ろ液を濃縮溶媒留去後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製するとニトロシクロヘキセン(17)(18.4mg,0.061mmol,収率56%)を無色の油状物質として得た。
[α]18−65.58 (c 0.61,CHCl
H NMR (300MHz,CDCl) δ 6.86−6.88(1H,m), 4.78(1H,ddd,J=1.9,5.8,10.2Hz), 4.54(1H,m), 4.25 (1H,q,J=7.1Hz), 4.24(1H,q,J=7.1Hz), 4.06−4.09(1H,m), 3.41(1H,quin,J=5.5Hz), 3.073.14(1H,m), 2.90−3.00(1H,m), 1.45−1.64(4H,m), 1.32(3H,t,J=7.1Hz), 0.86−0.96(6H,m)
13C NMR(75MHz,CDCl) δ 165.1, 133.6, 129.5, 82.6, 73.8, 68.6, 61.2, 26.8, 26.6, 24.9, 10.1, 9.6
IR(neat):3463, 2942, 2884, 1756, 1215cm−1
=0.4 (hexane/AcOEt=2/1)
【0076】
参考例4 アミノアルコール(18)
ニトロシクロヘキセン(17)(75mg,0.248mmol)のエタノール(2mL)溶液に亜鉛粉末(98mg,1.49mmol,6.0equiv.)と1N HCl(1mL,0.4equiv.)を室温で加え、12時間撹拌した。反応混合物に飽和NaHCO溶液を加えて中和し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。混合物をセライトろ過し、ろ液を濃縮溶媒留去後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製するとアミノアルコール(18)(81mg,収率100%)を得た。
H NMR(300MHz,CDOD) δ 6.77−6.80(1H, m), 4.20(2H,q,J=7.1Hz), 3.96(1H,t,J=3.8Hz), 3.82(1H,t,J=2.5Hz), 3.42(1H,quin,J=5.8 Hz), 3.13(1H,ddd,J=11.5,5.5,2.2Hz), 2.58(1H,dd,J=17.5,5.2Hz),2.202.30(1H,m), 1.62−1.45(4H,m), 1.29(3H,t,J=7.1Hz), 4.11(6H,q,J=7.4Hz)
IR(neat) 3450, 1760, 1275cm−1
=0.63(CHCl/MeOH=1/1).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(7)で表される1,3−ジオキソラン化合物。
【化1】

(R、Rは同一又は相異してそれぞれアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基を示す。ただしR、Rは同時にメチルではない。Rはアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基を示す。)
【請求項2】
、Rが同一又は相異してそれぞれ炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、又はピリジル基、ピロール基、フリル基およびチエニル基から選択される芳香族ヘテロ環基であり、Rが炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、又はピリジル基、ピロール基、フリル基およびチエニル基から選択される芳香族ヘテロ環基であり、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基における置換基は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−CORaで示されるカルボニル含有基(Ra=C〜Cアルキル基、アリール基、C〜Cアルコキシ基、アリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基から選択される基であり、R、Rは同時にメチルではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(2a)の化合物を加水分解して式(2)で表される化合物を製造し、式(2)の化合物のカルボン酸部を還元して式(3)で表される化合物を製造し、式(3)の化合物のヒドロキシ基を保護して式(4)で表される化合物を製造し、式(4)の化合物を還元し、アクリル酸エステルを付加して式(5)で表される化合物を製造し、式(5)の化合物をニトロメチル化して式(6)で表される化合物を製造し、式(6)の化合物をヒドロキシ化することを特徴とする式(7)で表される化合物の製造方法。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

(上記において、R、Rは同一又は相異してそれぞれアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基を示す。ただしR、Rは同時にメチルではない。R、Rは同一又は相異してそれぞれはアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基又は芳香族ヘテロ環基を示す。Dは水酸基の保護基である。)

【公開番号】特開2011−16784(P2011−16784A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202095(P2009−202095)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【分割の表示】特願2009−162840(P2009−162840)の分割
【原出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【特許番号】特許第4496351号(P4496351)
【特許公報発行日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】