説明

1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法

【課題】1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素でフッ素化してトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法であって、未反応原料や中間体を回収して再度原料として使用する際に、簡便な処理を追加することで触媒の活性低下を招くことのない製造方法を提供する。
【解決手段】1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとフッ化水素を反応させて得られた反応生成物から少なくとも酸性成分とトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを分離除去して得られた回収有機物について活性炭処理して得られる被処理有機物を前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの一部として使用する1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医農薬、機能性材料の中間原料、噴射剤、発泡剤、マグネシウム製造の保護ガス、エアゾールあるいは冷媒等に有用な1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法としては多くの方法が知られている。そのうち工業的に有利と思われる方法には、1,1,1,3,3ペンタフルオロプロパンの脱フッ化水素による方法(特許文献1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素でフッ素化する方法(特許文献2)などがある。前者の脱フッ化水素による方法は、工業的観点からは原料が持っていた高価なフッ素原子を捨てることとなり、特別に安価に原料を入手でき、または脱離したフッ素原子を再利用できる環境にない限り有利な方法とはいえない。
【0003】
それに対し、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素でフッ素化する方法は一般的なハロゲン交換によるフッ素化反応であり工業的には合理的な方法である。
【0004】
ところが、特許文献2では、目的物の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは得られるが、同時にフッ素化が更に進行して得られる高次フッ素化生成物、すなわち1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)が副生し、選択性が低下することがあった。
【0005】
【化1】

【0006】
また、特許文献2には1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素と反応させて得られたシス−およびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのうち、トランス体を製品とし、シス体と1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを反応系に原料として循環することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−140002号公報
【特許文献2】特開平10−7604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
オレフィンをフッ素化する反応は比較的副生成物の生成しやすい反応であることから、選択率を高めるよりはむしろ副生成物の生成を抑制し、未反応原料または中間体を回収して再度原料としてすることが多いが、反応に影響を及ぼす不純物を除去するために高度の精製処理が行われることがある。
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素でフッ素化する方法であって、未反応原料や中間体を回収して再度原料として使用する際に、簡便な処理を追加することで触媒の活性低下を招くことのない製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる課題を解決するため鋭意検討した結果、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを気相中でフッ化水素によりフッ素化して1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法において、未反応原料や中間体を回収して再度原料として使用すると触媒の活性低下を招くことがあるが、回収した1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを主成分とする回収有機物を活性炭と接触させることで触媒の活性低下の少ないことを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は次の通りである。
【0010】
[1]1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素と反応させて1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法において、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとフッ化水素を反応させて得られた反応生成物から少なくとも酸性成分とトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを分離除去して得られた回収有機物について活性炭処理して得られる被処理有機物を前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの一部に代えたリサイクル用原料として使用する1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【0011】
[2]リサイクル用原料として、反応生成物中の有機成分についてのトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのモル百分率と実質的に等しいモル百分率に相当する量の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと被処理有機物とを共に使用する[1]の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【0012】
[3]リサイクル用原料が、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン5〜20モル%を少なくとも含有する1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである[1]または[2]の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【0013】
[4]反応生成物中の有機成分についてトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが20〜50モル%である[1]〜[3]の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【0014】
[5]反応生成物中の有機成分について1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンが5〜20モル%である[1]〜[4]の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【0015】
[6]1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素と反応させて1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法における反応が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン/フッ化水素のモル比を1/1〜1/60とし、金属酸化物または金属化合物を担体に担持した担持触媒の存在下、100〜600℃の温度で行う反応である[1]〜[5]の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【0016】
[7]反応生成物を水と接触させて酸性成分を分離除去する[1]〜[6]の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【0017】
[8]1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを反応生成物から蒸留により分離除去する[1]〜[7]の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【0018】
[9]反応生成物が予め酸性成分を分離除去した反応生成物である[8]の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法によると、簡便な処理を施すだけで触媒活性の低下を軽減できることから、未反応原料を同一の反応に有効に再利用できるため工業的生産において無駄が無く廃棄物処理を軽減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の方法の1態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素と反応させて1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法において、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとフッ化水素を反応させて得られた反応生成物から少なくとも酸性成分とトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを分離除去して得られた回収有機物について活性炭処理して得られる被処理有機物を前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの一部に代えたリサイクル用原料として使用する1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法である。
【0022】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素と反応させて1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法は公知の方法を適用できる。
【0023】
原料の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンはどのような方法で製造したものであってもよいが、例えば、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンとフッ化水素を250℃のフッ素化した酸化クロム触媒に通じてフッ素化する方法(特開平9−183740号公報)、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンとフッ化水素を液相100kg/cm2(約10MPa)200℃で5時間反応させる方法(特開平11−180908号公報)、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンとフッ化水素を液相TiCl4触媒の存在下120℃で反応させる方法(WO2005/014521号パンフレット)などを挙げることができる。
【0024】
このようにして得られる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、二重結合を有する化合物であり、構造異性体としてシス体、トランス体が存在するが、本発明にかかる反応方法は、シス体、トランス体、またはシス体とトランス体の混合物であっても特に問題なく適用できる。
フッ化水素は、実質的に無水のものが好ましく、工業用途に製造されている無水フッ化水素を使用すればよい。
本発明において1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素と反応させて1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを得る方法は、気相流通系で行うことが好ましい。
【0025】
本発明にかかる反応は、フッ化水素に対して実質的に不活性な材質で造られた反応器を用い、温度が調節され、触媒が充填された反応領域へ1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとフッ化水素を実質的に同時に導入することでおこなわれる。容器は通常、管状であってステンレス鋼、ハステロイ(TM)、モネル(TM)、白金、炭素、フッ素樹脂またはこれらをライニングした材質で製作されたものが用いられる。
【0026】
この反応に使用する触媒は、反応により1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを1,3,3,3−テトラフルオロプロペンに変換させ得るものであればよい。そのようなものとして、特に金属酸化物または金属化合物を担体に担持した担持触媒が挙げられる。
【0027】
金属酸化物としては、アルミニウム、クロム、ジルコニウム、チタンおよびマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物であり、単独で使用することができ二種以上の金属を複合した酸化物として使用することもできる。
【0028】
触媒として使用する金属酸化物は、触媒の調製法として公知の方法で作成することができる。例えば、金属化合物の水溶性塩をアンモニアで中和して沈殿させた水酸化物ゾルを乾燥し、次いで得られた塊を粉砕・成型し、さらに焼成することで調製できる。このとき、主となる金属の化合物とともにその金属と異なるアルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、マグネシウム、ジルコニウムおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の化合物を併用することで複合酸化物を調製することができる。このような複合酸化物としては、例えば、アルミナとクロム、アルミナとジルコニア、アルミナとチタニア、アルミナとマグネシアの複合酸化物が好ましいものとして挙げられる。
【0029】
また、これらの金属酸化物は各種のものが触媒や乾燥剤として市販されているのでそれらのうちから選んで使用することもできる。これらの金属酸化物は粉状でもよいが通常粒状で使用し、その形状、大きさは特に限定されず、通常の知識をもって反応器の大きさを基準に決定することができる。一般的には、球形、棒状または錠剤状に成形された平均的に1〜10mm程度の直径または長さを有するものが取り扱いが容易なことから選ばれる。金属酸化物は一種以上の結晶形を取ることがあり、たとえば、アルミナにはγ−アルミナとα−アルミナ、チタニアにはアナターゼとルチルの結晶形のものがある。金属酸化物の結晶形はいずれであってもよいが、アルミナではγ−アルミナは表面積が大きく好ましい。
【0030】
本発明の方法において、金属酸化物は通常金属フッ素化酸化物として使用する。フッ素化されていない金属の酸化物を用いた場合には、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンや原料のフッ化水素などがフッ素化剤として作用するため、経時的に金属フッ素化酸化物に転化し、反応が安定しない傾向があるので、金属酸化物は予め金属フッ素化酸化物としたものか、反応の前にフッ素化剤と接触させたものが好ましい。
【0031】
金属酸化物は、その一部の酸素原子がフッ素原子で置換された金属フッ素化酸化物または全部の酸素原子がフッ素原子で置換したフッ化物であるのが好ましい。本明細書においては、「金属酸化物」はこの様な「金属フッ素化酸化物」および「フッ化物」をも含むことがある。酸素原子がフッ素原子に置換した比率は特に限定されず、広い範囲のものが使用できる。
【0032】
金属フッ素化酸化物の調製は、フッ化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化塩素化炭化水素などのフッ素化剤と接触させることにより行われる。フッ素化処理は、通常段階的におこなうのが好ましい。フッ化水素でフッ素化処理する場合、大きな発熱を伴うので、最初は希釈されたフッ酸水溶液やフッ化水素ガスにより比較的低温度でフッ素化し、徐々に濃度および/または温度を高くしながら行うのが好ましい。最終段階は、所望の反応の反応温度以上で行うのが好ましいが、この条件に加えて、反応中の経時変化を予防するためにはフッ素化温度は200℃以上で行い、400℃以上、さらに好ましくは500℃以上においてフッ化水素でフッ素化処理するのが好ましい。温度の上限は特にないが、900℃を超えるのはフッ素化処理装置の耐熱性の点から困難であり、実用的には600℃以下で行うのが好ましい。
【0033】
このような金属酸化物は、さらに反応中の触媒の組成変化を防止するために、使用の前に所定の反応温度以上の温度で予めフッ化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化塩素化炭化水素などのフッ素化剤で処理しておくことが好ましい。
【0034】
本発明で用いる金属を担持した担持触媒は、担体としては、炭素または前記した金属酸化物もしくは金属フッ素化酸化物が使用できる。
【0035】
担体の炭素としては通常活性炭を用いる。活性炭は、木材、のこくず、木炭、椰子殻炭、パーム核炭、素灰などを原料とする植物質系、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭などを原料とする石炭系、石油残渣、硫酸スラッジ、オイルカーボンなどを原料とする石油系あるいは合成樹脂を原料とするものなどがある。
【0036】
このような活性炭は、各種のものが市販されているのでそれらのうちから選んで使用すればよい。例えば、瀝青炭から製造された活性炭(例えば、カルゴン粒状活性炭CAL(東洋カルゴン(株)製)、椰子殻炭(例えば、粒状白鷺Gシリーズ(日本エンバイロケミカルズ製))などを挙げることができるが、当然これらの種類、製造業者に限られることはない。
【0037】
また、これらの活性炭は通常破砕炭、顆粒炭、造粒炭、球状炭などの粒状で使用するが、その形状、大きさは特に限定されず、通常の知識をもって反応器の大きさを基準に決定することができる。一般的には、球形に成形された平均的に1〜10mm程度の直径を有するものが取り扱いの容易なことから選ばれる。
【0038】
担持させる金属化合物の金属としては、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、マグネシウム、ジルコニウムおよびアンチモンなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、クロム、チタン、ジルコニウム、アンチモンが好ましい。これらの金属は酸化物、フッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、オキシフッ化塩化物等として用いられ、2種以上の金属化合物を併せて担持させてもよい。
【0039】
これらの金属の担持方法は限定されないが、担体をアルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、マグネシウム、ジルコニウムおよびアンチモンの中から選ばれる1種または2種以上の金属の可溶性化合物を溶解した溶液に含浸するか、スプレーし、乾燥させることで調製される。
【0040】
金属担持量(触媒の質量に対する金属の質量の割合で示す。以下同じ。)は0.1〜80質量%、好ましくは1〜50質量%である。0.1質量%未満では触媒効果が低く、80質量%を超えるのは安定に担持させることが困難であるので、それぞれ好ましくない。
【0041】
担持させる金属の可溶性化合物としては、水、エタノール、アセトンなどの溶媒に溶解する該当金属の硝酸塩、塩化物、酸化物などが挙げられる。しかし室温で液体である五塩化アンチモンなどを担持する場合は、溶媒を用いなくてもよい。
【0042】
具体的には、硝酸クロム、三塩化クロム、三酸化クロム、重クロム酸カリウム、三塩化チタン、硝酸マンガン、塩化マンガン、二酸化マンガン、塩化第二鉄、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸コバルト、塩化コバルト、五塩化アンチモン、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどまたはこれらの含水塩、溶媒和物を用いることができる。
【0043】
金属化合物を担持して調製した触媒は、担体の組成変化を防止するために金属酸化物について説明したのと同様の方法により、使用の前に所定の反応温度以上の温度で予めフッ化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化塩素化炭化水素などのフッ素化剤で処理しておくことが好ましい。
【0044】
また、本発明で使用する金属酸化物、担持触媒など何れの触媒の場合も、反応中に酸素、塩素、フッ素化炭化水素、フッ素化塩素化炭化水素、塩素化炭化水素などを反応器中に供給することは触媒寿命の延長、反応率、反応収率の向上に有効である。
【0045】
反応領域へ供給する1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン/フッ化水素のモル比は反応温度により変わりうるが、1/1〜1/60、好ましくは1/1〜1/30である。フッ化水素が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの60モル倍を超えると同一反応器における有機物処理量の減少ならびに反応系から排出された未反応フッ化水素と生成物との混合物の分離に支障をきたし、一方、フッ化水素が1モル倍よりも少ないと反応率が低下し、選択率が低下するので好ましくない。
【0046】
過剰量のフッ化水素を使用することは1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの転化率を高めることができるため好ましい。未反応のフッ化水素は未反応有機物および生成物から分離し、反応系へリサイクルする。フッ化水素と有機物の分離は、公知の手段で行うことができるが、後に詳細に説明する。
【0047】
本発明にかかる反応を行う温度は特に限定されないが、100〜600℃であり、200〜500℃が好ましく、250〜400℃がさらに好ましい。反応温度が100℃よりも低いと反応が遅く実用的ではない。一方、反応温度が600℃を超えると、タール化、触媒のコーキング、分解生成物の生成が多くなるので好ましくない。
【0048】
本発明にかかる反応において、反応領域へ供給する1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、反応に関与しない窒素、ヘリウム、アルゴンなどのガスと共に供給してもよい。このようなガスは、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンまたはそれを含む混合物からなる原料有機物1モル当たり100モル以下の比率とし、10モル以下が好ましく、通常は使用しないのがよい。
【0049】
本発明にかかる反応は、圧力については特に限定されないので、気相で行う場合は、常圧、すなわち、特に加圧または減圧などの圧力調節をすることなく行うことができるが、装置の面から0.01〜1MPa(絶対圧。本明細書において同じ。)で行うのが好ましい。加圧にすると付加反応の方向に平衡が傾くため、減圧で行うこともできる。圧力を決定する場合、系内に存在する原料などの有機物が、反応系内で液化しないような条件を選ぶことが望ましい。
【0050】
本発明にかかる反応の接触時間は標準状態において、通常0.1〜500秒、好ましくは10〜300秒である。接触時間が短いと反応率が低下し、接触時間が長すぎると副反応が起こるので好ましくない。
【0051】
反応器から流出する反応生成物には、塩化水素、フッ化水素などの酸性成分、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンなどの有機成分が含まれ、窒素などの任意の添加成分が含まれることがある。1,3,3,3−テトラフルオロプロペンにはシス体とトランス体とが存在するが本発明の方法においてはいずれの異性体であっても、またそれらの混合物であっても適用できる。
【0052】
この反応生成物から活性炭と接触させる回収混合物を調製することは、多段階の蒸留操作を組み合わせて行うこともできるが、対象物質の沸点が広範囲にわたるため次に述べるような方法を組み合わせるのが効率的であり好ましい。
【0053】
酸性成分は、蒸留により分離除去することもできるが、水と接触させることで容易に除去できる。水はアルカリ性水溶液として使用することもできる。アルカリ性水溶液としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属またはマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物を水に溶解させたものが使用できる。アルカリ性水溶液としては、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物の水溶液が取り扱いが容易であるので好ましい。接触の方法は、水またはアルカリ水溶液を貯留した容器へ反応器からの流出物を吹き込む方法、または流出物の流れに向流接触させるスクラバー方式など、公知の方法を適用できる。
【0054】
この接触は0〜100℃の温度で行う。20〜80℃程度が好ましい。0℃未満では水が固化するおそれがあり、100℃を超えると水が有機物成分に水蒸気またはミストとして同伴して後の操作で凝縮して装置を腐食させたり閉塞させたりするおそれがあるので好ましくない。酸性成分が水またはアルカリ性水溶液に吸収される際には大きな発熱が生じるので、この処理を100℃以下に保つには冷却することも好ましい。
【0055】
さらに酸性成分の各成分ごとに分離回収することもできる。フッ化水素は、硫酸を用いた吸収法や分別蒸留により除去または回収することが可能である。硫酸を用いる場合、硫酸を装入した容器へ反応生成物を吹き込みフッ化水素を吸収させる。硫酸の量は、上記反応生成物に含まれるフッ化水素の量に依存する為、当業者が適宜調整することができる。例えば、溶解度の温度に対するグラフを用いて、100%硫酸中のフッ化水素の溶解度から、必要とされる硫酸の最小量を決めることができる。その場合、例えば30℃では、約34gのフッ化水素が100gの100%硫酸に溶解する。
【0056】
硫酸の純度は特に限定されないが、好ましくは50%以上の純度であり、約98%〜100%の純度を有するものがさらに好ましい。通常は市販されている工業用硫酸(約98%)が使用できる。
【0057】
硫酸による処理は、反応生成物が液化しない温度であればよく、通常約20℃〜約100℃、好ましくは約25℃〜約50℃、より好ましくは約25℃〜約40℃で行われる。
【0058】
硫酸に吸収されたフッ化水素は加熱することで気化させて回収して再び利用することも可能である。すなわち、このフッ化水素を別の反応の出発原料として使用し、硫酸を再度フッ化水素の吸収に再利用することができる。
【0059】
反応器から流出した酸性成分を含む反応生成物は、凝縮器を備えた蒸留塔により、塩化水素およびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主として含む低沸成分と、その他の高沸成分に一旦分離し、前記のような処理をすることができる。低沸成分については水または塩基性水溶液により塩化水素をの吸収してトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを得ることができる。フッ化水素を含む高沸成分は、前記の同様に酸性成分を除去した後蒸留し、活性炭処理してリサイクル用原料として使用できる。さらに、フッ化水素を含む高沸成分は、フッ化水素を含んだまま活性炭処理後反応に供することもできる。
【0060】
反応器からの流出物(反応生成物)から酸性成分を除去したガスには有機物成分と場合により窒素などの添加成分が含まれる。この有機成分は冷却または圧縮することにより液化して非凝縮成分を除去できる。液化は蒸留と同時に行ってもよいが、一旦液化してから蒸留に付してもよい。蒸留の前には脱水操作を施すのが好ましい。脱水は、ゼオライト、アルミナ、無水塩化カルシウム、五酸化リン、芒硝などに気体または液体の状態で接触させることで行う。蒸留は公知の方法で行えばよく、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(沸点:約−19℃)を塔頂から回収し、その他の成分である、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペンを塔底(ボトム)から回収する。1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペンは塔頂または塔底の何れからでも回収することがきるが、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの収量を高めるためには塔底へ導くのが好ましい。塔頂から回収されたトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンはそのまま製品とすることができる。
【0061】
塔底から回収された回収有機物は、未反応原料の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを主成分としてシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペンを含むが、反応条件によりその他の有機成分を含むことがある。その他の有機物の多くは1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの前駆体であるが、それ以外の成分も含む。
【0062】
反応生成物から酸性成分とトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが除去され、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを主成分とする有機混合物は、そのままでも使用できるが、前記した方法で製造した(回収したものでない)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンや回収したものではあるが十分精製して純度を高めた1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを使用した場合と比較して触媒の活性低下が速く、反応持続時間が短くなる傾向が見られる。
【0063】
本発明の方法においては、蒸留により回収した有機混合物を活性炭と接触させた被処理有機物を反応原料の少なくとも一部としてとして再使用する。この被処理有機物は、主成分として1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含み、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、トランス−またはシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの前駆体なども含まれるが、その他にも特定されない成分が含まれる。
【0064】
回収有機物と活性炭の接触方法は特に限定されず、液体の乾燥や液体から微量成分を吸着除去する公知の方法が適用できる。例えば、流通方式、または有機混合物と活性炭を容器に装入し所定の時間放置または攪拌する方法が採用できる。これらのうち、流通方式が操作が他の方法と比較して煩雑でなく好ましい。
【0065】
流通方式は、管状の容器に充填した活性炭に回収有機物を通じて行う。流通方式において、有機混合物の活性炭への接触時間は0.1秒〜100時間であり、10秒〜10時間が好ましく、1分〜1時間がより好ましい。接触時間が0.1秒未満では触媒の活性低下を抑制できず、100時間を超えるのは装置の大型化を招き好ましくない。
【0066】
処理温度は、被処理物が液体状態を保てればよく、処理圧力により異なるが常圧(約0.1MPa)では−30〜40℃であり、−10〜30℃が好ましい。液体が固化しない限り−30℃未満でも処理効果には問題はないがエネルギーコストの点から好ましくなく、40℃以上ではシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンなどの低沸点成分が気化・揮散するので好ましくない。処理圧力は、被処理物が液体状態を保てればよく、処理温度により異なるが0.1〜1MPaで行う。
【0067】
有機混合物との接触に使用する活性炭は、特に限定されない。活性炭は、木材、のこくず、木炭、椰子殻炭、パーム核炭、素灰などを原料とする植物質系、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭などを原料とする石炭系、石油残渣、硫酸スラッジ、オイルカーボンなどを原料とする石油系あるいは合成樹脂を原料とするものなどがある。
【0068】
このような活性炭は、各種のものが市販されているのでそれらのうちから選んで使用すればよい。例えば、瀝青炭から製造された活性炭(東洋カルゴン製BPL粒状活性炭)、椰子殻炭(日本エンバイロケミカルズ(株)製、粒状白鷺GX、G2X、SX、CX、XRC、HL、KL、東洋カルゴン製PCB)等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの種類、製造業者に限られることはない。
【0069】
また、これらの活性炭は通常破砕炭、顆粒炭、造粒炭、球状炭などの粒状で使用するが、その形状、大きさは特に限定されず、通常の知識をもって反応器の大きさを基準に決定することができる。一般的には、球形に成形された平均的に1〜10mm程度の直径を有するものが取り扱いの容易なことから選ばれる。
【0070】
形状、大きさも通常粒状で用いられるが、球状、繊維状、粉体状、ハニカム状等反応器に適合すれば通常の知識範囲の中で使用することができる。本発明において使用する活性炭は比表面積の大きな活性炭が好ましい。活性炭の比表面積ならびに細孔容積は、市販品の規格の範囲で十分であるが、それぞれ400m2/gより大きく、0.1cm3/gより大きいことが望ましい。またそれぞれ800〜3000m2/g、0.2〜1.0cm3/gであればよい。さらに活性炭を担体に用いる場合、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性水溶液に常温付近で10時間程度またはそれ以上の時間浸漬するか、活性炭を触媒担体に使用する際に慣用的に行われる硝酸、塩酸、フッ酸等の酸による前処理を施し、予め担体表面の活性化ならびに灰分の除去を行うことが望ましい。また、有機混合物との接触で処理効果の低下した活性炭についても同様の処理を行うことで再度使用できることがある。
【0071】
本発明の方法で精製された1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに代えて被処理有機物を原料として使用する場合、反応生成物からトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンとして分離除去された比率に相当する新たな1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを被処理有機物に追加してリサイクル用原料とする。言い換えると、回収有機物を使用するリサイクル反応状態では、原料として、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンから生成する反応生成物中の有機成分についてのトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのモル百分率と実質的に等しいモル百分率に相当する量の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを被処理有機物と共に使用することになる。ここで、「実質的」とは、各工程の操作上のロス、分析の不正確性等の理由により原料が不足する場合に新たな1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの追加量が計算量より増加することにより厳密には等しいモル百分率とはならず、それを補償するための必要な範囲の値を含むことを言う。
【0072】
本発明の方法にかかる反応は、十分な接触時間の下は平衡が成立すると推測される。この平衡によるかどうかは明確ではないが、次のような条件で反応を行うのはトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの収率を高める上で好ましい。
【0073】
本発明の方法にかかる反応では、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに代わる被処理有機物を含む原料が、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを5〜20モル%を含むのが好ましく、8〜15モル%とするのがより好ましい。5モル%未満とすると1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンから1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンへの転換が進むので1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの原単位(トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの選択率)の低下が起こり好ましくない。
【0074】
反応生成物中の有機成分についてトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが20〜50モル%とするのが好ましく、30〜45モル%とするのが好ましい。20モル%以下では反応収率が低く生産量の拡大が困難であり、50モル%を超えると触媒活性の低下が著しく好ましくない。また、反応生成物中の有機成分について1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンが5〜20モル%であるのが好ましく、5〜15モル%であるのがより好ましい。
【実施例】
【0075】
本発明を実施例をもって説明するが、これらの実施態様に限られない。
【0076】
[調製例1]
粒状椰子殻炭100g(日本エンバイロケミカルズ(株)製粒状白鷺G2X、4〜6メッシュ)と別途60gの特級試薬Cr(NO32・9H2Oを100gの純水に溶かして調製した溶液とを混合攪拌し、一昼夜放置した。次に濾過して活性炭を取り出し、電気炉中で200℃に保ち、2時間焼成した。得られたクロム担持活性炭を電気炉を備えた内径27.2mm、長さ30cmの円筒形ステンレス鋼(SUS316L)製反応管に充填し、500ml/分の流量で窒素ガスを流しながら200℃まで昇温し、水の流出が見られなくなるまで加熱を継続した。
【0077】
[参考例1]
電気炉を備えた円筒形反応管(ステンレス鋼(SUS316L)製、内径27.2mm・長さ30cm)からなる気相反応装置にフッ素化触媒として調製例1で調製した触媒を150ml充填した。約10ml/分の流量で窒素ガスを流しながら反応管の温度を200℃に上げ、フッ化水素を約0.10g/分の速度を導入した。次に反応管の温度を350℃に上げ、窒素ガスを止め、フッ化水素を0.73g/分の供給速度とし、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを予め気化させて0.48g/分の速度で反応器へそれぞれ供給開始した。反応開始1時間後には反応は安定したので、その時から2時間にわたって、反応器から流出する生成ガスを水中に吹き込み酸性成分を除去した後ドライアイス−アセトンで冷却したトラップで捕集した、トラップされた有機物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234t)35.8%(「面積%」。以下同じ)、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234c)7.6%、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)10.2%、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233t)40.0%、シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233c)5.1%、その他1.3%であった。
【0078】

[比較例1]
<初回>
電気炉を備えた円筒形反応管(ステンレス鋼(SUS316L)製、内径27.2mm・長さ30cm)からなる気相反応装置に気相フッ素化触媒として調製例1で調製した触媒を150ml充填した。約10ml/分の流量で窒素ガスを流しながら反応管の温度を200℃に上げ、フッ化水素を約0.10g/分の速度で導入した。次に反応管の温度を350℃に上げ、窒素ガスを止め、フッ化水素を0.73g/分の供給速度とし、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを予め気化させて0.48g/分の速度で反応管へ供給開始した。反応管から流出する反応生成ガスを水中に吹き込み酸性成分を除去したガスを塩化カルシウムカラムに流通させて脱水し、ガラス製蒸留塔に導入して、反応と並行して連続蒸留を行った。蒸留は、真空ジャケット付カラム、真空ジャケット付分留器を用いて常圧、凝縮器温度−40℃、ボトム温度10〜15℃で行い、ボトム液はポンプにより連続的に抜き出した。塔頂からの留出液はトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのガスクロマトグラフィー純度が99.9%であった。抜き出したボトム液が約500gに到達したところで、ボトム液をガスクロマトグラフィーで分析し、蒸留によって除かれたトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと同モル数のトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを加えてリサイクル用原料を調製した。
【0079】
<リサイクル>
反応開始後約30時間経過した時から、精製されたトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに代えて調製されたリサイクル用原料を約0.45g/分の速度で供給し、フッ化水素を約0.73g/分の供給速度に変更した(リサイクル1)。連続反応、連続蒸留を継続してボトム液が約500g蓄積する毎にリサイクル用原料の調製、原料交換を4回繰り返し(それぞれ、リサイクル2、3、4という。)、約150時間継続した。原料切り替えの各時点での反応生成物組成と、調製されたリサイクル用原料をガスクロマトグラフィーで分析した結果を表1に示した。
【0080】
[実施例1]
ボトム液抜き出しポンプとボトム液貯め槽の間に活性炭カラムを設置した以外は比較例1と同様にリサイクル用原料を用いて反応を実施した。「初回」、「リサイクル1」等の名称は比較例1に従う。活性炭カラムは、内径1.61センチ、長さ10.0センチのステンレス製の管状容器に粒状椰子殻炭(日本エンバイロケミカルズ(株)製粒状白鷺G2X、4〜6メッシュ)を破砕した粒径1〜3mmのものを約6.5ml充填したカラムで、ボトム液を液状態で活性炭カラム下部から上方向に流通させた。リサイクル用原料の調製、原料交換を4回繰り返し、約150時間継続した。原料切り替えの各時点での反応生成物組成と、調製されたリサイクル用原料をガスクロマトグラフィーで分析した結果を表2に示した。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【符号の説明】
【0083】
1.有機物原料タンク 2.フッ化水素タンク 3.気化器 4.反応器 5.脱酸槽 6.塩化カルシウム脱水槽 7.蒸留塔 8.活性炭管状容器(カラム) 9.ボトム液貯め槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素と反応させて1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法において、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとフッ化水素を反応させて得られた反応生成物から少なくとも酸性成分とトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを分離除去して得られた回収有機物について活性炭処理して得られる被処理有機物を前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの一部に代えたリサイクル用原料として使用する1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【請求項2】
リサイクル用原料として、反応生成物中の有機成分についてのトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのモル百分率と実質的に等しいモル百分率に相当する量の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと被処理有機物とを共に使用する請求項1に記載の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【請求項3】
リサイクル用原料が、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン5〜20モル%を少なくとも含有する1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである請求項1または2に記載の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【請求項4】
反応生成物中の有機成分についてトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが20〜50モル%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【請求項5】
反応生成物中の有機成分について1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンが5〜20モル%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【請求項6】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素と反応させて1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法における反応が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン/フッ化水素のモル比を1/1〜1/60とし、金属酸化物または金属化合物を担体に担持した担持触媒の存在下、100〜600℃の温度で行う反応である請求項1〜5のいずれか1項に記載の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【請求項7】
反応生成物を水と接触させて酸性成分を分離除去する請求項1〜6のいずれか1項に記載の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【請求項8】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを反応生成物から蒸留により分離除去する請求項1〜7のいずれか1項に記載の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
【請求項9】
反応生成物が予め酸性成分を分離除去した反応生成物である請求項8に記載の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−180134(P2010−180134A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22313(P2009−22313)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】