説明

1,3,4−チアジアゾール基を有する新規なモノマーおよびこれを重合して得られる新規なポリマー

【課題】1,3,4−チアジアゾール基を有する新規なモノマーおよびこれを重合することで得られる新規なポリマーを与えることを目的とし、水、アルコール等の極性溶媒に可溶性であり、コーティング材料として基体との間で高い接着性を示す水酸基を有する重合体とこれを得るためのモノマーを与える。
【解決手段】下記一般式Iで示されるチアジアゾール誘導体およびこれを重合して得られるポリマー。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3,4−チアジアゾール基を有する新規なモノマーおよびこれを重合することで得られる新規なポリマーに関し、高屈折率用プラスチックスの原料、金属表面処理剤、潤滑油添加剤の原料、感光性組成物の原料、医薬および農薬の原料およびそれらの中間体として有用である素材に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3,4−チアジアゾール基を有する化合物は、高屈折率用プラスチックスの原料モノマー、金属表面処理剤、潤滑油添加剤の原料、感光性組成物の原料、医薬および農薬の原料およびそれらの中間体として有用である。光学材料用途に関しては、例えば、特開平2−53783号公報(特許文献1)には2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを原料に用い、これにアルキレン基あるいはアルキレンオキシ基を介して、スチレン誘導体基もしくは(メタ)アクリロイル基を2個結合した1,3,4−チアジアゾール誘導体の合成方法とその利用について述べられている。この方法で得られるモノマーは2官能性であるため、これの重合により得られるポリマーは架橋体であって、溶媒に不溶であり、また熱可塑性でないため、得られたポリマーを利用して成形加工やコーティング用途に使用することが困難であった。
【0003】
溶媒に可溶性であり、また熱可塑性である直鎖状ポリマーを得るための方法として、特開平7−316143号公報(特許文献2)にはチアジアゾール基を介して1当量のスチレン誘導体基と1当量のアルキル基が結合したチアジアゾール誘導体の合成方法が記載されている。この場合において、1当量のアルカリ金属との塩を形成したチアジアゾール基は、さらにハロゲン化アルキル基などの脱離基含有化合物との反応により目的とされるスチレン誘導体が合成される。
【0004】
1,3,4−チアジアゾール基を有する化合物の別の例として、例えば特開平8−113763号公報(特許文献3)には、メルカプト基と、連結基を介してラジカル重合性不飽和結合基が結合した化合物の例が記載されている。この場合の連結基としてはアルキレン基やアルキレンオキシ基、あるいはエステル結合を有する有機基などが挙げられ、ラジカル重合性不飽和結合基としてスチレン誘導体基や(メタ)アクリル酸エステル基、アリル基などが例示されている。これらの化合物はラジカル重合性不飽和結合基を有しているが、同時にラジカル重合を阻害するメルカプト基が同一分子内に含まれるためラジカル重合性モノマーとしては機能し難く、この化合物を使用しても重合体は得られない。
【0005】
明確に重合性を示すチアジアゾール基を有するモノマーの感光性組成物への応用として、例えば特開2003−292535号公報(特許文献4)に記載されるチアジアゾール基に1当量のスチレン誘導体基とアルキル基などの置換基が結合した形の化合物が光重合性モノマーとして高い反応性を示すことが開示されている。
【0006】
特開2001−290271号公報(特許文献5)には、感光性組成物に関する別の応用例として、チアジアゾール基にメルカプト基とスチレン誘導体基を併せて有する化合物を用いてトリエチルアミンの存在下に重合を行い、側鎖にメルカプト基を有する直鎖状ポリマーを合成する例が示されている。
【0007】
上記のいずれの場合においても、チアジアゾール基にスチレン誘導体基が結合した場合において重合性であるモノマーを与えることが示されているが、スチレン誘導体以外のラジカル重合性不飽和結合基が結合したチアジアゾール基を有する化合物がラジカル重合性モノマーとして溶媒に可溶性である直鎖状ポリマーを得るために用いられる例は記載されていない。スチレンおよびその誘導体を他のモノマーとともに用いて共重合体を合成しようとする場合に、それらのモノマー間の共重合反応性比が問題になることがある。特に、スチレンおよびその誘導体はアクリルアミドおよびその誘導体や酢酸ビニルおよびその誘導体などとの共重合反応性に乏しく、もっぱらスチレンおよびその誘導体の重合性が高く、これらによる繰り返し単位の割合が高い重合体が生成し、均一な組成の共重合体が得られない場合がある。従って、チアジアゾール基を有するモノマーとしてスチレン誘導体以外のラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーが求められていた。
【0008】
さらに、上記のモノマーを重合して得られるポリマーの性質に関しても、特にコーティング材料用途として基材との接着性に優れた素材が求められている。ラジカル重合性モノマーとして例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のように水酸基を有するモノマーは水、アルコールなどの極性溶媒に対する溶解性が良好で、これらを含んで合成される水酸基を有する重合体はプラスチック、金属等様々な基体表面にコーティングした場合に良好な接着性を示すことが良く知られている。
【0009】
本発明の目的は1,3,4−チアジアゾール基を有する新規なモノマーおよびこれを重合することで得られる新規なポリマーを与えることを目的とし、かつ水、アルコール等の極性溶媒に可溶性であり、コーティング材料として基体との間で高い接着性を示す水酸基を有する重合体とこれを得るためのモノマーを与えることを意図し、さらに該モノマーとしてスチレン誘導体以外のラジカル重合性不飽和結合基と硫黄原子が同時に結合したチアジアゾール基を有する化合物を与えることを意図する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平2−53783号公報
【特許文献2】特開平7−316143号公報
【特許文献3】特開平8−113763号公報
【特許文献4】特開2003−292535号公報
【特許文献5】特開2001−290271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、1,3,4−チアジアゾール基を有する新規なモノマーおよびこれを重合することで得られる新規なポリマーを与えることを目的とし、特に水、アルコール等の極性溶媒に可溶性であり、コーティング材料として基体との間で高い接着性を示す水酸基を有するポリマーとこれを得るためのモノマーを与えることを目的とし、さらに該モノマーとして水酸基を有し、かつチアジアゾール基にスチレン誘導体基以外のラジカル重合性不飽和結合基と硫黄原子を併せ持つ新規なモノマーを与え、これを重合して得られる新規なポリマーを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は、下記一般式Iで示されるモノマーを用いることおよびこれを重合して得られる下記一般式IIで示されるポリマーを用いることで解決される。
【0013】
【化1】

【0014】
一般式IにおいてRは水素原子またはメチル基を表し、連結基Lは−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、−O−、−CH(−)−、−CH(OH)−および−CH−基から選ばれる基あるいはこれらの任意の組み合わせからなる基を表す。Rは水素原子またはアルキル基を表し、置換基Rと連結基Lは互いに結合して環を形成しても良い。Aはプロトン化されたアンモニア、有機アミン類、あるいは4級アンモニウム塩基を表す。
【0015】
【化2】

【0016】
一般式IIにおいてR、R、LおよびAは、それぞれ一般式IにおけるR、R、LおよびAと同一である。
【発明の効果】
【0017】
水、アルコール等の極性溶媒に可溶性であり、コーティング材料として基体との間で高い接着性を示す水酸基を有するポリマーとこれを得るためのモノマーが与えられ、該モノマーとして水酸基を有し、かつチアジアゾール基にスチレン誘導体基以外のラジカル重合性不飽和結合基と硫黄原子を併せ持つ新規なモノマーを与えられ、これを重合して得られる新規なポリマーが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一般式Iで示されるモノマーについて詳細に説明を行う。
【0019】
一般式IにおいてRは水素原子またはメチル基を表し、連結基Lは−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、−O−、−CH(−)−、−CH(OH)−および−CH−基から選ばれる基あるいはこれらの任意の組み合わせからなる基を表す。Rは水素原子またはアルキル基を表し、置換基Rと連結基Lは互いに結合して環を形成しても良い。Aはプロトン化されたアンモニア、有機アミン類、あるいは4級アンモニウム塩基を表す。
【0020】
一般式Iで示されるモノマーを重合することで前記一般式IIで示される繰り返し単位を有するポリマーが得られる。
【0021】
一般式Iで示されるモノマーを得るためには、まず下記一般式IIIで示される前駆体となる化合物を合成し、次いで一般式IIIの化合物に対して当モルもしくはそれ以上の量のアンモニアあるいは有機アミン、さらには4級アンモニウム塩基を加えることによって一般式Iで示されるモノマーを得ることが出来る。一般式IIIの化合物はメルカプト基がそのまま存在するためこの化合物を重合することは困難であり、重合体は得難い。
【0022】
【化3】

【0023】
一般式IIIにおいてR、R、およびLは一般式IにおけるR、R、およびLと同一である。
【0024】
一般式IIIで示される化合物の好ましい例を下記に示す。
【0025】
【化4】

【0026】
上記で示される化合物の合成方法は後述する合成例にて示す。これらの化合物はいずれもエポキシ基(グリシジル基)を有する化合物と2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを当モル量反応させることで合成される。該エポキシ基(グリシジル基)を有する化合物として、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキシド、リモネンモノオキシドなどを挙げることが出来る。これらのエポキシ基(グリシジル基)を有する化合物は、後述する合成方法に示すように、当モル量の2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールをアルコール等の極性溶媒中に溶解もしくは懸濁した状態で単に混合、加熱することで容易に収率良く合成することが出来、不純物、副生成物の混入も少なく合成的に極めて簡便かつ経済的であることから好ましく用いることが出来る。反応時において特に有機アミン類等は添加しない方が好ましい場合がある。
【0027】
一般式IIIで例示される化合物を使用して得られる本発明に関わる一般式Iで示されるモノマーの好ましい例を下記に示す。これらの例に見られる化合物を得るには、一般式IIIで示される化合物に対して当モルもしくはそれ以上の量のアンモニアあるいは有機アミン類、さらには4級アンモニウム塩基を加えることによって一般式Iのモノマーが合成されるが、重合に際して一般式IIIの化合物を原料に用い、こうしたアミン類等を加えてから重合を行うことも好ましく行われ、必ずしも一般式Iの構造のモノマーとして単離精製してから用いる必要はない。こうした目的で用いられる有機アミン類や4級アンモニウム塩の好ましい例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン類、ジメチルアミン、ジブチルアミンなどの2級アルキルアミン類、ブチルアミン、オクチルアミン等の1級アルキルアミン類、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ブチルジエタノールアミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの各種アルカノールアミン類を挙げることが出来、さらに、4級アンモニウム塩基の例としては、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、コリン、フェニルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド、ベンジルトリエチルアンモニウムハイドロキサイド、へキサデシルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムハイドロキサイド等の水酸化物を好ましく挙げることが出来る。これらの内で最も好ましい例はトリエチルアミンまたは上記のアルカノールアミンを用いる場合であり、この場合に得られるモノマーおよびこれを重合して得られるポリマーの水やアルコールなどの極性溶媒への溶解性が高く、安定な溶液が得られるため好ましい。さらには後者のアルカノールアミンの中でもジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノールのような3級アミンであるアルカノールアミンを用いた場合に、副反応が少なく、高分子量の線状ポリマーを収率良く得られることからさらに好ましく用いることが出来る。
【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
一般式IIIの化合物に対してアンモニアあるいは上記のような有機アミン類や4級アンモニウム塩を添加することで構造中のメルカプト基を塩の形に変換を行い、ラジカル重合に際してメルカプト基の連鎖移動性を封ずることが出来るため、溶媒に可溶性である直鎖状の高重合度ポリマーを得ることが出来る。ここで該有機アミン類や4級アンモニウム塩に換えて無機のアルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウムなどを使用して重合を行った場合、重合が生ぜず、モノマーが加水分解するのみで目的とする重合体が得られない。
【0033】
一般式Iで示されるモノマーを利用してポリマーを得る際の重合溶媒としては、水、アルコールなどの極性溶媒を用いて、一般式Iのモノマーを均一に溶解して重合を行うことが好ましい。特にアルコール、あるいはアルコールと水の混合溶媒を用いると、モノマーのみならず、生成するポリマーも、構造中に水酸基を有する効果も相まって、均一に溶解するため極めて好ましく利用することが出来る。
【0034】
一般式Iで示されるモノマーを重合するための重合開始剤としては特にアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩などのアゾ系重合開始剤が好ましく用いることが出来る。過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アンモニウム、過酸化カリウムなどの過酸化物などは副反応が生じやすく、場合によっては目的とするポリマーが得られないことがある。該アゾ系重合開始剤の使用量は使用するモノマーに対して0.1質量%から10質量%の範囲で用いることが好ましい。重合温度は使用する重合開始剤の分解温度によって適宜最適温度が決定されるが、通常は40℃から90℃の範囲であることが好ましく、さらには60℃から80℃の範囲であることが好ましい。
【0035】
一般式Iで示されるモノマーを重合してポリマーを得る場合に、連鎖移動剤を添加することで、生成するポリマーの分子量を適度な値に調整することが可能である。こうした目的で使用出来る連鎖移動剤としては特に脂肪族メルカプト化合物を使用することが好ましく、これらは一般式Iのモノマーを得るために使用される各種有機アミン類を添加した重合系においても脂肪族メルカプト基が中和されることなく存在し、有効な連鎖移動剤として機能するため好ましく用いることが出来る。このような脂肪族メルカプト化合物の例として、エタンチオール、ブタンチオール、デカンチオール、チオエタノール、チオグリセリン、チオグリコール酸、チオ酢酸、チオリンゴ酸、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)、3−メルカプトプロピル(ジメトキシメチル)シラン、3−メルカプトプロピル(トリメトキシ)シランなどの各種メルカプト化合物を好ましく用いることが出来る。こうした連鎖移動剤を用いる場合は、重合系に加えるモノマーの総量に対して0.1質量%から10質量%の範囲で添加することが好ましく、一般に添加する割合が多いほど生成するポリマーの分子量は低下するため、目的に応じて最適な添加量が選択される。
【0036】
一般式Iで示されるモノマーは単独で用いてポリマーを形成することも出来るが、他のモノマーとの共重合を行うため、混合して用いても良い。こうした目的で使用される他のモノマーの例としては、例えば、親水性モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン、アクリルアミド−N−グリコール酸等のカルボキシル基含有モノマーおよびこれらの塩、ビニルホスホン酸等のリン酸基含有モノマーおよびこれらの塩、アリルアミン、ジアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ジエチルアミノエチルアクリレート、2−ジエチルアミノエチルメタクリレート、3−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、3−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、4−アミノスチレン、4−アミノメチルスチレン、N,N−ジメチル−N−(4−ビニルベンジル)アミン、N,N−ジエチル−N−(4−ビニルベンジル)アミン等のアミノ基含有モノマーおよびこれらの4級アンモニウム塩、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環含有モノマーおよびこれらの4級アンモニウム塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基含有(メタ)アクリレート類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら水溶性モノマーは1種で用いても良いし、任意の2種類以上を用いても良い。
【0037】
あるいは、疎水性モノマーとして、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のアリール(メタ)アクリレート類またはアリールアルキル(メタ)アクリレート類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマーを挙げることが出来る。
【0038】
本発明で得られる一般式Iのモノマーを用いることによる特徴の一つとして、上記のような様々な種類のモノマーを併用して共重合を行った場合において、これらのモノマーとの共重合性が良好で、目的とする共重合体が収率良く得られることが特徴である。生成する共重合体あるいは一般式Iの単独重合によるポリマーの重合度も高いものが得やすく、極性溶媒に対する溶解性の高い線状の高分子量ポリマーが得られることが特徴の一つである。
【0039】
一般式Iのモノマーを用いて重合を行い一般式IIで示される繰り返し単位を有するポリマーを得た後に、酸として塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸などの酸を添加することで重合体側鎖に結合しているプロトン化されたアンモニアおよび有機アミン類、もしくは4級アンモニウム塩基の除去を行い、メルカプト基を側鎖に有する重合体を得ることも出来る。あるいは、酸を添加する代わりにハロゲン化アルキル誘導体等の種々の脱離基を有する化合物を重合体側鎖のメルカプト基に結合させることも出来る。いずれの場合においても得られるポリマーの側鎖には一般式Iの構造に由来する水酸基が含まれるため、該ポリマーは水、アルコール等の極性溶媒に親和性が高く、またコーティング用途に用いた場合においてプラスチック、金属などの種々の基材に対する接着性が良好であることが特徴である。本発明のモノマーを用いて重合を行うことで得られるポリマーの例を下記に示す。なおP−11〜P−14中の各々の共重合成分の比率は質量部を表す。
【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
本発明で得られる一般式IIで示される繰り返し単位を有するポリマーをコーティング材料として利用する場合の基材としては、紙、プラスチックおよび金属からなる種々の基材が利用可能であり、プラスチックとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリイミドなど様々なプラスチック材料の表面にコーティングして用いることが出来る。金属基材としては、鉄、銅、アルミニウム、亜鉛、銀その他様々な金属の合金や酸化物その他が利用出来る。本発明で得られるポリマーは側鎖にチアジアゾール基を有していることから銀や銅などの金属に配位して特異的に強固な接着性を示すと共に、チアジアゾール基に結合した硫黄原子あるいはメルカプト基の存在により様々な金属と結合することが特徴であり、金属表面の表面処理に用いることが出来る。この場合、一般式IIにおけるAとして、プロトン化されたアンモニアや揮発性の有機アミン類を使用した場合には、基材にコーティングを施した後に加熱することでこれらの揮発性有機アミンが蒸発し、残った硫黄原子と金属表面の間で強固な結合が生じることも可能である。
【0045】
以下、実施例および比較例をもとに、本発明の具体的な実施の方法およびその効果について詳細に説明を行う。
【実施例】
【0046】
(実施例1)化合物C−1およびモノマーM−1〜M−4の合成例
1リッターのフラスコ内に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールを150グラム(1モル)投入した。メタノール400グラムを加えて攪拌を行い、水浴上に移した。懸濁した溶液中にグリシジルメタクリレート142グラム(1モル)を徐々に添加することで内温が上昇し、約15分間をかけて滴下を終了した。内温は室温から上昇して滴下終了時には55℃付近まで上昇した。その後水浴の温度を上昇させ、反応混合物の温度を65℃まで上昇させると均一に溶解した溶液を得た。この状態で1時間攪拌を行った後、室温まで冷却し、さらに氷冷することで結晶が析出した。グラスフィルター上で吸引濾過を行い、水/メタノール(1/1)混合溶媒で数回洗浄を行い、乾燥させた。生成物の純度を検証するため、高速液体クロマトグラフィーを利用して、THFを移動相に用い、カラムとして東ソー株式会社製有機溶媒系SECカラムTSKgelG2500HXL3本を用いて生成物の分析を行ったところ、示差屈折率計検出器および紫外可視分光光度計検出器(254nm)の両方において分子量(ポリスチレン換算)300付近に単一のピークを示し、これ以外の成分の存在は認めなかった。さらに、プロトンNMRによる構造解析の結果、メタクリロイル基のメチレンに相当する5.5〜6.1ppmのダブレット、メチル基に由来する1.9ppmのシングレットの存在から化合物C−1の生成を確認した。収量は280グラムで収率は96%であった。次いで得られた化合物C−1を29.2グラム(0.1モル)秤取り、エタノール30グラムに懸濁した状態で氷冷下にジメチルアミノエタノール8.9グラム(0.1モル)を徐々に加えて均一な溶液とした。次いでジエチルエーテル200mlを加えて冷凍庫に一昼夜放置して、沈降した粘稠液体をデカンテーションにより分離した。真空乾燥後得られた粘稠液体は37グラムの収量であり、この一部を重水素化DMSOに溶解し、プロトンNMRにより構造解析を行った結果、モノマーM−1の構造と矛盾しないことを確認した。さらに、同様にしてジメチルアミノエタノールに換えてトリエチルアミンを当モル量使用することでモノマーM−2を得た。また同様に、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイドを用いることでM−3を得、あるいはアンモニア水を使用することでM−4を得た。M−2〜M−4のこれらの収率に関しては、いずれの場合についても大凡80%前後であった。
【0047】
(実施例2)化合物C−2およびモノマーM−5〜M−7の合成例
実施例1においてグリシジルメタクリレートに換えて3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル化学工業株式会社製CYCLOMER M100)196グラム(1モル)を用いた以外は同様にして反応を行い、目的とする化合物C−2を合成した。収率は大凡90%であった。化合物C−2は化4中に示すように2種類の異性体の混合物であった。生成物の純度および構造の確認は実施例1と同様に高速液体クロマトグラフィーおよびプロトンNMRを用いて行った。得られた化合物C−2に対して実施例1と同様にして当モル量のジメチルアミノエタノール、トリエチルアミンおよびアンモニア水を反応させることで各々モノマーM−5、M−6およびM−7を得た。これらの収率に関しては、いずれの場合についても大凡80%前後であった。
【0048】
(実施例3)化合物C−3およびモノマーM−8〜M−11の合成例
実施例1においてグリシジルメタクリレートに換えて4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成株式会社製4HBAGE)200グラム(1モル)を用いた以外は同様にして反応を行い、目的とする化合物C−3を合成した。生成物の収率は大凡85%であった。生成物の純度および構造の確認は実施例1と同様に高速液体クロマトグラフィーおよびプロトンNMRを用いて行った。得られた化合物C−3に対して実施例1と同様にして当モル量のジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイドおよびアンモニア水を反応させることで各々モノマーM−8、M−9,M−10およびM−11を得た。これらの収率に関しては、いずれの場合についても大凡80%前後であった。
【0049】
(実施例4)モノマーM−1の重合例(ポリマーP−1の合成例)
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却管を備えた300ミリリッターフラスコ内に実施例1で得たモノマーM−1を35グラム投入した。エタノール100グラムおよび蒸留水10グラムを加えて全体を水浴上に移し、攪拌を行いながら、窒素気流下に水浴の温度を75℃まで上昇させ、内温が72℃に上昇した時点で窒素雰囲気下にアゾビスイソブチロニトリル0.2グラムを添加して重合を開始した。75℃の温度で9時間攪拌を行い均一で透明、粘稠なポリマー溶液を得た。一部を取り出して塩酸を加えて中和を行い、析出したポリマーを濾過により回収し、乾燥させた後、高速液体クロマトグラフィーを利用してGPC解析により生成したポリマーの分子量分布の測定を行った。カラムとして、東ソー株式会社製有機溶媒系SECカラムTSKgel MultiporeHXL−Mカラム3本を連結したカラムを用いてTHFを移動相としてGPC解析を行ったところ、生成ポリマーの分子量として、重量平均分子量12万、数平均分子量6万のポリマーが生成していることが分かった。残りの溶液は室温で保管したが半年以上経過しても性状に変化は認められず、分子量および粘度も変化しておらず安定な溶液であることが確認された。同様にしてポリマーP−2〜P−10を合成した。
【0050】
(実施例5)ポリマーP−12の合成例
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却管を備えた500ミリリッターフラスコ内に実施例1で得た化合物C−1を22グラム投入した。さらにN,N−ジメチルアクリルアミド30グラムおよびエタノール100グラムおよび蒸留水50グラムを加えて全体を水浴上に移し、攪拌を行いながら、窒素気流下に徐々にトリエチルアミン7.6グラムを添加して化合物C−1をモノマーM−1に変換し、均一な溶液を得た。水浴の温度を75℃まで上昇させ、内温が72℃に上昇した時点で窒素雰囲気下にアゾビスイソブチロニトリル1グラムを添加して重合を開始した。75℃の温度で9時間攪拌を行い均一で透明、粘稠なポリマー溶液を得た。一部を取り出して塩酸を加えて中和を行った。ガスクロマトグラフィーを用いて残存するN,N−ジメチルアクリルアミドの定量を行ったところ、重合により97%のN,N−ジメチルアクリルアミドが消費されていることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを利用してGPC解析により生成したポリマーの分子量および残存する化合物C−1の定量を行った。カラムとして、東ソー株式会社製有機溶媒系SECカラムTSKgel MultiporeHXL−Mカラム3本を連結したカラムを用いてTHFを移動相としてGPC解析を行ったところ、生成ポリマーの分子量として、重量平均分子量8万5千、数平均分子量3万のポリマーが生成しており、また残存する化合物C−1は重合前と比較して99%が重合に消費されていることが分かった。さらに、このGPC測定において使用した示差屈折率計検出器および紫外可視分光光度計検出器(290nmの波長を使用することで共重合体組成中のモノマー単位M−1の存在を選択的に検出した)の両方において得られた溶出曲線は完全に一致しており、共重合体の組成について均一な組成分布を示していることが分かった。以上の結果から、モノマーM−1とN,N−ジメチルアクリルアミドの共重合体は均一な組成のポリマーが得られていることが分かった。同様にしてポリマーP−13およびP−14を合成した。
【0051】
(比較例1)
特開平8−113763号公報(特許文献3)中製造例9に記載される方法に従って下記化合物を合成した。
【0052】
【化13】

【0053】
上記化合物および本発明の化合物C−1をそれぞれ300ミリリッターフラスコ内に各々0.1モル量秤取り、エタノール100グラムおよび蒸留水50グラムを加えて懸濁させた状態で水酸化ナトリウム4グラム(0.1モル)を溶解した水溶液20グラムを加えて加熱を行ったところ、70℃の温度で1時間以内に加水分解が進み、両者ともほぼ全量が加水分解してメタクリル酸ナトリウム塩が生成していることが確認された。この結果から、上記化合物および本発明の化合物C−1の両方ともに、アルカリ金属塩の状態ではこれらの構造を保持したポリマーは得られないことが判明した。
【0054】
(比較例2)
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却管を備えた300ミリリッターフラスコ内に比較例1で得た上記化合物を35グラム投入した。エタノール100グラムおよび蒸留水50グラムを加えて全体を水浴上に移し、攪拌を行いながら、窒素気流下に水浴の温度を75℃まで上昇させ、内温が72℃に上昇した時点で窒素雰囲気下にアゾビスイソブチロニトリル0.2グラムを添加した。75℃の温度で9時間攪拌を行ったが、ポリマーは生成せず、低分子の様々な生成物の混合物であることが液体クロマトグラフィーによる解析で明らかとなった。
【0055】
(比較例3)
前述した特開2001−290271号公報(特許文献5)に記載されるチアジアゾール基にメルカプト基とスチレン誘導体基を併せて有する下記化合物を用いて重合を行い同様に解析した。即ち、攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却管を備えた500ミリリッターフラスコ内に下記化合物を52.6グラム投入した。さらにエタノール100グラムおよび蒸留水50グラムを加えて全体を水浴上に移し、攪拌を行いながら、窒素気流下に徐々にトリエチルアミン20グラムを添加して、均一な溶液を得た。水浴の温度を75℃まで上昇させ、内温が72℃に上昇した時点で窒素雰囲気下にアゾビスイソブチロニトリル0.5グラムを添加して重合を開始した。75℃の温度で9時間攪拌を行い均一で透明、わずかに粘度のあるポリマー溶液を得た。
【0056】
【化14】

【0057】
得られた溶液の一部を取り出して塩酸を加えて中和を行い、析出したポリマーを濾過により回収し、乾燥させた後、高速液体クロマトグラフィーを利用してGPC解析により生成したポリマーの分子量分布の測定を行った。カラムとして、東ソー株式会社製有機溶媒系SECカラムTSKgel MultiporeHXL−Mカラム3本を連結したカラムを用いてTHFを移動相としてGPC解析を行ったところ、生成ポリマーの分子量として、重量平均分子量1万8千、数平均分子量7500のポリマーが生成していることが分かった。
【0058】
(比較例4)
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却管を備えた500ミリリッターフラスコ内に比較例3のポリマーの合成で用いた、チアジアゾール基にメルカプト基とスチレン誘導体基を併せて有する化合物を22グラム投入した。さらに実施例5と同様にして、N,N−ジメチルアクリルアミド30グラムおよびエタノール100グラムおよび蒸留水50グラムを加えて全体を水浴上に移し、攪拌を行いながら、窒素気流下に徐々にトリエチルアミン8.4グラムを添加して均一な溶液を得た。水浴の温度を75℃まで上昇させ、内温が72℃に上昇した時点で窒素雰囲気下にアゾビスイソブチロニトリル0.6グラムを添加して重合を開始した。75℃の温度で9時間攪拌を行い均一で透明、やや粘稠なポリマー溶液を得た。一部を取り出して塩酸を加えて中和を行った。ガスクロマトグラフィーを用いて残存するN,N−ジメチルアクリルアミドの定量を行ったところ、重合により60%のN,N−ジメチルアクリルアミドが消費されていることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを利用してGPC解析により生成したポリマーの分子量および残存するチアジアゾール基にメルカプト基とスチレン誘導体基を併せて有する化合物の定量を行った。カラムとして、東ソー株式会社製有機溶媒系SECカラムTSKgel MultiporeHXL−Mカラム3本を連結したカラムを用いてTHFを移動相としてGPC解析を行ったところ、生成ポリマーの分子量として、重量平均分子量3万5千、数平均分子量1万のポリマーが生成しており、また残存する化合物(化14)は重合前と比較して97%が重合に消費されていることが分かった。さらに、このGPC測定において使用した示差屈折率計検出器と紫外可視分光光度計検出器(290nmの波長を使用することで、共重合体組成中のチアジアゾール基にメルカプト基とスチレン誘導体基を併せて有する化合物に由来する繰り返し単位の存在を選択的に検出した)の双方の溶出曲線は互いに大きく異なり、紫外可視分光光度計検出器で認められるチアジアゾール基に結合したメルカプト基とスチレン誘導体基を有する繰り返し単位は比較的高分子量側に偏り、低分子量側にはN,N−ジメチルアクリルアミドに基づく繰り返し単位が偏在することが分かった。これらの結果から共重合体の組成について非常に不均一な組成分布を示しており、共重合性が悪いことが分かった。
【0059】
(実施例6)コーティング材料としての基材との接着性評価
実施例4の方法を用いて合成したポリマーP−2および実施例5で得られたポリマーP−12を使用して、これらを各々固形分濃度で10質量%含む水溶液をそれぞれ調製した。基材として、銅張りポリイミドフィルム(厚みが50μmのポリイミドフィルム表面に厚みが18μmの銅箔を張り合わせた基材)の表面に、乾燥固形分質量が平米当たり10グラムとなるようにドクターバーを使用して塗布を行い、90℃に設定した乾燥機内で1時間加熱乾燥を行い、各々のポリマーがコーティングされた試料を作製した。各々の試料の塗布面表面にカッターナイフを用いて5mm間隔の碁盤目状の傷を付けて、この表面にニチバン(株)社製粘着テープ(セロテープ(登録商標)CT−24S)を強く貼り付けた。ニチバン(株)社製粘着テープ(セロテープ(登録商標)CT−24S)を勢いよく引きはがした際にコーティング膜の剥がれの有無を注意して観察したが、両方の試料共に剥がれは認められなかった。次いで各々の試料を塩化第二鉄飽和水溶液中に漬けて1時間放置したがコーティング膜表面およびその下部の銅箔への変化は認められず、両方の試料共に基材表面を良好に保護していることが分かった。
【0060】
(比較例5)コーティング材料としての基材との接着性評価
比較例3で得られたポリマー溶液を用いて実施例6と同様に銅張りポリイミドフィルム表面へのコーティングを行い、同様に評価を行ったところ、ニチバン(株)社製粘着テープ(セロテープ(登録商標)CT−24S)をはがした際に碁盤目状の傷の周辺部においてコーティング膜の剥がれが認められ、次いで塩化第二鉄水溶液中に漬けた場合に、この傷部分から銅箔の溶解が進行し、1時間後には銅箔が溶解除去される結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明で得られるモノマーおよびポリマーは1,3,4−チアジアゾール誘導体であり、高屈折率用プラスチックスの原料および製品、金属表面処理剤、潤滑油添加剤の原料、感光性組成物の原料、医薬および農薬の原料およびそれらの中間体として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式Iで示されるチアジアゾール誘導体。
【化1】

(一般式IにおいてRは水素原子またはメチル基を表し、連結基Lは−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、−O−、−CH(−)−、−CH(OH)−および−CH−基から選ばれる基あるいはこれらの任意の組み合わせからなる基を表す。Rは水素原子またはアルキル基を表し、置換基Rと連結基Lは互いに結合して環を形成しても良い。Aはプロトン化されたアンモニア、有機アミン類、あるいは4級アンモニウム塩基を表す。)
【請求項2】
上記一般式Iで示されるチアジアゾール誘導体を重合することで得られる一般式IIで示される繰り返し単位を有するポリマー。
【化2】

(一般式IIにおいてR、R、LおよびAは、それぞれ一般式IにおけるR、R、LおよびAと同一である。)

【公開番号】特開2011−42634(P2011−42634A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192867(P2009−192867)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】