説明

1,4−ジアリールピリミドピリダジン−2,5−ジオン類およびそれらの使用

本発明は、新規1,4−ジアリールピリミド[4,5−d]ピリダジン−2,5−ジオン誘導体、それらの製造方法、疾患の処置および/または予防のための、単独での、または組み合わせてのそれらの使用、並びに、疾患の処置および/または予防用、特に肺および心血管系の障害の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規1,4−ジアリールピリミド[4,5−d]ピリダジン−2,5−ジオン誘導体、それらの製造方法、疾患の処置および/または予防のための、単独での、または組み合わせてのそれらの使用、並びに、疾患の処置および/または予防用、特に肺および心血管系の障害の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト白血球エラスターゼ(HLE、EC 3.4.21.37)は、ヒト好中球エラスターゼ(HNE、hNE)とも呼ばれ、セリンプロテアーゼのファミリーに属する。このタンパク質分解酵素は、多形核白血球(PMN白血球)のアズール顆粒中に見出される。細胞内エラスターゼは、貪食により取り込まれた外来粒子を分解することにより、病原体に対する防御において重要な機能を果たす。活性化された好中球細胞は、HNEを顆粒から細胞外空間へ放出し(細胞外HNE)、放出されたHNEのいくらかは、好中球細胞膜の外側に留まる(膜結合HNE)。高度に活性な酵素は、多数の結合組織タンパク質、例えば、タンパク質エラスチン、コラーゲンおよびフィブロネクチンを分解できる。エラスチンは、高い弾性を示すすべての組織タイプに、例えば、肺および動脈に、高濃度で存在する。HNEは、多数の病態過程(例えば、組織損傷)に関連する組織の破壊および変形(組織リモデリング)に関与する。HNEは、また、炎症過程の重要なモジュレーターである。HNEは、例えば、インターロイキン−8(IL−8)の遺伝子発現の増加を誘導する。
【0003】
従って、HNEは、その形成および/または進行が、炎症性事象および/または増殖および肥大組織、並びに血管変形に関連する多くの障害、損傷および病変において、重要な役割を果たすと推定される。これは、特に肺または心血管系の障害および/または損傷であり得るか、または、それは、敗血症、癌障害または他の炎症性障害であり得る。
【0004】
これに関して言及され得る肺の障害および損傷は、特に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症(CF;またムコビシドーシス(mucoviscidosis)とも呼ばれる)、肺気腫および急性肺傷害(ALI)である。HNEが関与する心血管系の障害および損傷は、例えば、心不全の間の組織変形および急性心筋梗塞(AMI)後の再灌流傷害、心原性ショック、急性冠症候群(ACS)、および、動脈瘤である。敗血症に関連する疾患は、例えば、全身性炎症反応症候群(SIRS)、重症敗血症、敗血症性ショックおよび多臓器不全(MOF;多臓器機能不全、MODS)、および、また播種性血管内凝固症候群(DIC)である。癌の過程における組織破壊および変形の例は、癌細胞の健康な組織への移動(転移形成)および新しい供給血管の形成(血管新生)である。HNEが役割を果たす他の炎症性疾患は、リウマチ性障害、例えば、関節リウマチ、炎症性大腸疾患(IBD)、クローン病(CD);潰瘍性大腸炎(UC)およびアテローム性動脈硬化症である。
【0005】
エラスターゼに媒介される病的過程は、遊離エラスターゼと内在性エラスターゼ阻害タンパク質(主としてアルファ−1アンチトリプシン、AAT)との間の平衡のずれに基づくと一般的に考えられている[Neutrophils and protease/antiprotease imbalance, Stockley, Am. J. Respir. Crit. Care Med. 160, 49-52 (1999)]。AATは、血漿中に大過剰で存在し、従って、非常に迅速に遊離HNEを中和する。遊離エラスターゼの濃度は、様々な病的過程において上昇するので、プロテアーゼとプロテアーゼ阻害因子とのバランスに、プロテアーゼに有利な局所的なシフトがある。加えて、活性化PMN細胞の膜結合エラスターゼは、AATによる阻害から非常に実質的に保護される。同じことは、好中球細胞とその隣接する組織細胞(例えば、内皮細胞)の間の接近が困難な微小区画内に局在する遊離エラスターゼにも適用される。加えて、活性化白血球の近傍では、強力な酸化条件が優勢であり(酸化バースト)、従って、AATは酸化され、阻害作用を数桁の規模で失う。
【0006】
従って、新規のエラスターゼを阻害する活性化合物(外因的に投与されるHNEの阻害剤)は、膜結合HNEおよび保護された微小区画内に存在するHNE(上記参照)に到達し、阻害できるように、低分子量であるべきである。また、この目的のために必要なのは、物質の良好なインビボでの安定性(低いインビボクリアランス)である。加えて、これらの化合物は、病的過程で阻害力を失わないように、酸化条件下で安定であるべきである。
【0007】
肺動脈高血圧(PAH)は、進行性の肺障害であり、処置しないと、平均して診断後2.8年以内に死に至る。肺循環の収縮が増大すると、右心に対するストレスの増加を導き、右心不全に発展し得る。定義では、慢性肺高血圧症の場合、平均肺動脈圧(mPAP)は、休息時に>25mmHg、または、運動時に>30mmHgである(正常値<20mmHg)。肺動脈高血圧の病態生理は、肺血管の血管狭窄およびリモデリングを特徴とする。慢性PAHでは、当初は筋化していなかった肺血管の筋肉新生(neomuscularization)があり、そして既に筋化した血管の血管筋の周径が増大する。この増大する肺循環の閉塞は、右心への進行性ストレスをもたらし、それは、右心からの拍出量の減少を導き、最終的には右心不全に終わる(M. Humbert et al., J. Am. Coll. Cardiol. 2004, 43, 13S-24S)。PAHは、極めて稀な疾患であり、100万人あたり1〜2人の有病率である。患者の平均年齢は、36歳であると推定され、そして患者の10%のみが60歳を超える年齢であった。明らかに、男性よりも女性のほうが多く罹患している(G. E. D'Alonzo et al., Ann. Intern. Med. 1991, 115, 343-349)。
【0008】
肺動脈高血圧の治療におけるあらゆる進歩にもかかわらず、この深刻な障害の治療の見込みはまだない。市場で利用できる標準的な治療(例えば、プロスタサイクリン類似体、エンドセリン受容体アンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤)は、患者の生活の質、運動耐容能および予後を改善できる。これらの治療の原則は、主として血行力学的であり、血管緊張に影響を与えるが、病原性のリモデリング過程に直接的に影響を与えない。加えて、これらの医薬を使用する可能性は、時々起こる重大な副作用および/または複雑な投与様式によって制限されている。患者の臨床的状況が特定の単独療法によって改善または安定化されることが可能な期間は、限定されている(例えば、耐性の出現のために)。最終的には、治療は段階的に拡大し、従って複数の医薬が同時に与えられなければならない併用療法が適用される。
【0009】
新規の併用療法は、肺動脈高血圧の処置のための最も有望な将来の治療選択肢の一つである。これに関して、PAHの処置のための新規の薬理的メカニズムの発見は、特に関心が高いものである(Ghofrani et al., Herz 2005, 30, 296-302; E.B. Rosenzweig, Expert Opin. Emerging Drugs 2006, 11, 609-619; T. Ito et al., Curr. Med. Chem. 2007, 14, 719-733)。特に、リモデリング事象に直接介在する治療選択肢(アンチリモデリング機構、逆リモデリング機構)は、より原因的な処置への基礎を形成し得、従って患者にとって多大な利益となり得る。これに関して、既知および新規の治療を組み合わせることが可能であろう。そのような併用療法では、薬剤−薬剤の相互作用を妨害するリスクを最小限にするために、これらの新規の活性化合物は、非常に小規模でしか、または全く、代謝性P450 CYP酵素を阻害すべきではない。
【0010】
最近、ある者はエラスターゼが病的なリモデリングにおいて中心的な役割を果たすと仮定して進行している。肺動脈血圧が上昇している(肺動脈高血圧)動物モデルおよび患者で、結合組織(内弾性板)の断片化を見出すことが可能であり[Rabinovitch et al., Lab. Invest. 55, 632-653 (1986)]、そして、肺動脈高血圧の動物モデル(低酸素のラットおよびマウスモデル、モノクロタリンラットモデル)で、エラスターゼ活性が増大し、かつ結合組織の断片化に関連していることを示すことが可能であった[Todorovich-Hunter et al., Am. Rev. Respir. Dis. 146, 213-223 (1992)]。肺動脈高血圧の疾患過程で観察される組織リモデリングが、結合組織関連成長因子、例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)のエラスターゼに媒介される放出によって誘導されることが疑われている[Rabinovitch, Am. J. Physiol. 277, L5-L12 (1999)]。肺動脈高血圧の低酸素マウスモデルにおいて、過剰発現されたエラスターゼ阻害タンパク質を用いて、ポジティブな効果を示すことが可能であった[Zaidi et al., Circulation 105, 516-521 (2002)]。肺動脈高血圧のモノクロタリンラットモデルにおいて、合成低分子量のエラスターゼ阻害剤を用いて、ポジティブな効果を示すことが可能であった;この場合、組織リモデリングに対する有益な効果も注目された[Cowan et al., Nature Med. 6, 698-702 (2000)]。しかしながら、すべての過去に開示された低分子量エラスターゼ阻害剤は、低い選択性を有し、化学的に反応性があり、かつ/または、限られた経口利用性しかなく、従って、今日までこれらの適応症のための経口エラスターゼ阻害剤の臨床的開発は阻まれている。
【0011】
用語「肺動脈高血圧」は、例えば、世界保健機関(WHO)によって特定された肺高血圧症の特別なタイプを含む(Clinical Classification of Pulmonary Hypertension, Venice 2003; G. Simonneau et al., J. Am. Coll. Cardiol. 2004, 43, 5S-12S)。
【0012】
この分類によれば、肺動脈高血圧は、特発性肺動脈高血圧(IPAH、以前には原発性肺高血圧症、PPHとも呼ばれた)、家族性肺動脈高血圧(FPAH)、新生児の持続性肺高血圧症、並びに、膠原線維症(collagenoses)、先天性全身−肺シャント(congenital systemic-pulmonary shunt vitiae)、門脈圧亢進症、HIV感染症、特定の薬物および薬剤(例えば、食欲低下薬)の摂取に、肺静脈塞栓症および肺毛細血管血管腫症のような重大な静脈/毛細管の関与がある障害に、または、甲状腺障害、糖原病、ゴーシェ病、遺伝性毛細血管拡張症、ヘモグロビン異常症、骨髄増殖性疾患、および脾臓摘出術などの他の障害に関連して起こる、随伴性肺動脈高血圧(APAH)を含む。
【0013】
他のタイプの肺高血圧症には、例えば、左心障害(例えば、心室または弁膜障害)に関連する肺高血圧症、気道および/または肺の障害(例えば、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患または肺線維症)に関連する肺高血圧症、慢性血栓および/または塞栓障害(例えば、肺動脈の血栓塞栓性閉塞に伴うもの)に起因する肺高血圧症、および、一般的な炎症性疾患過程または特別な原因(例えば、住血吸虫症、サルコイドーシスおよび腫瘍性疾患に関連する)によって引き起こされる肺高血圧症が含まれる。
【0014】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、ゆっくりと進行し、肺気腫および/または慢性気管支炎に起因する呼吸の閉塞を特徴とする肺疾患である。この障害の最初の症状は、一般的には、40代ないし50代から現れる。その後数年で、息切れが高い頻度で悪化し、多量かつ長期にわたることもある分泌物、および、息切れするまで呼吸の妨害を伴う咳(呼吸困難)が現れる。COPDは、主として、喫煙者の疾患である:すべてのCOPDの症例の90%、そしてCOPDに起因するすべての死亡の80〜90%は、喫煙が原因である。COPDは、大きな医学的問題であり、そして世界中で6番目に多い死因である。45歳以上の人の約4〜6%が罹患している。
【0015】
呼吸の妨害は、部分的および一時的に過ぎないこともあるが、COPDは治療できない。従って、処置の目標は、生活の質を改善し、症状を改善し、急激な悪化を防止し、そして肺機能障害の進行を減速させることである。ここ20〜30年間にわたってほとんど変化していない既存の医薬療法は、気道の遮断を広げる気管支拡張剤の使用であり、そして、ある種の状況では、肺の炎症を制御するコルチコステロイドの使用である[P.J. Barnes, N. Engl. J. Med. 343, 269-280 (2000)]。喫煙または他の刺激物に起因する肺の慢性的炎症は、疾患の進展の背後にある力である。根底にあるメカニズムには、肺の炎症反応の過程で様々なケモカインを分泌する免疫細胞が含まれる。これは、好中球細胞、続いて肺胞マクロファージを、肺と内腔の結合組織に引き付ける。好中球細胞は、主としてHNEおよびプロテアーゼ3を含むプロテアーゼカクテルを分泌する。これは、局所的なプロテアーゼ/アンチプロテアーゼのバランスをプロテアーゼに有利にシフトさせ、とりわけ野放しのエラスターゼ活性をもたらし、その結果として肺胞細胞のエラスチンの過剰な分解をもたらす[J.E. Gadek et al., J. Clin. Invest. 68, 889-898 (1981); Z. Werb et al., J. Invest. Dermatol. 79, 154-159 (1982); A. Janoff, Am. Rev. Respir. Dis. 132, 417-433 (1985); P.J. Barnes, N. Engl. J. Med. 343, 269-280 (2000)]。この組織分解は、気管支を崩壊させる。これは、肺の弾力性の低下を伴い、呼吸閉塞および呼吸障害を導く。加えて、頻繁かつ持続的な肺の炎症は、気管支のリモデリング、および、その結果として病変の形成を導き得る。そのような病変は、慢性気管支炎の特徴である慢性の咳に寄与する。
【0016】
アルファ−1アンチトリプシン(AAT)は、小型の内在性タンパク質であり、上記の通り、最も重要な内在性エラスターゼ阻害因子である。このタンパク質の遺伝的欠損(AADT)を有する患者では、プロテアーゼ/アンチプロテアーゼのバランスがシフトしている。従って、AADT患者では、HNE作用の有効範囲および持続期間は、各々2.5倍および6.5倍に増加している[T.G. Liou and E.J. Campbell, Biochemistry 1995, 16171-16177]。AADT患者は、肺気腫またはCOPDを発症するリスクが高く、そして多くのAADT患者では、肺移植が指示される。
【0017】
気管支拡張症は、気管支木の異常な拡張と理解される。2つの形態が区別され得る:袋形の局所的気管支拡張症、および、全般的な円柱状気管支拡張症。気管支拡張症は、先天性であり得る;しかしながら、殆どの場合で、それらは後天性であり、特に喫煙者に見られる。拡張のために、気管分泌物の排出はより困難になり、保持された気管分泌物は感染を促進する。また、頻繁に、気管支拡張症は、気管分泌物の異常な粘性を伴う嚢胞性線維症などの粘膜の先天性障害の場合に、そして、線毛機能不全症候群の場合に、遭遇する。この症候群(カルタゲナー症候群)の場合、繊毛の構造と機能、そしてそれ故に分泌物の排出が損なわれる。気管支拡張症の他の原因は、例えば腫瘍または異物による拡張症の近位での閉塞であり得る。気管壁を弱める再発性および持続性の感染も、原因と考えられる。さらに、感染または外因性の病毒の状態に明白に関連づけられない気管支拡張症がある(特発性気管支拡張症)。
【0018】
気管支拡張症は、肺組織への好中球の遊走を特徴とする。患者は、好中球の活動と保護的阻害タンパク質との顕著な不均衡を示し、好中球により分泌されるプロテアーゼ(主にHNE)による肺組織の損傷を招く[Schaaf et al., Respiration 67, 52-59 (2000)]。
【0019】
閉塞性細気管支炎は、細気管支および隣接する肺胞における上皮の破壊およびフィブリンに富む浸出液の形成を伴う、細気管支の炎症である。浸出液の組織化は、細気管支から肺胞に届く結合組織の栓をもたらす。この疾患は、呼吸管における好中球数の増加、および、遊離エラスターゼと内在性エラスターゼ阻害タンパク質との不均衡を特徴とする[Elssner et al., Transpl. Infect. Dis. 3, 168-176 (2001)]。過去の感染および薬剤は、可能性のある原因として議論されている。この疾患は、また、移植拒絶に関連して生じ得る。
【0020】
急性肺傷害(ALI)およびそのより明白な形態、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、50〜60%の死亡率を伴う深刻な疾患である。1994年の the North American-European Consensus Conference (NAECC) の定義によれば、ALIおよびARDSは、急性発症、両側性の放射線学的に可視の浸潤、300mmHg(ALI)または200mmHg(ARDS)のPaO/FiO指数、<18mmHgの肺毛細血管楔入圧、および、左動脈高血圧症の臨床的証拠がないことにより定義される。
【0021】
急性肺傷害の発症には、肺障害および肺外障害の両方が先行し得る。胃内容物の吸引、肺炎、喫煙中毒、肺挫傷および溺水が、肺特異的な素因であると考えられる。特に胃内容物の吸引および肺炎は、肺起源のALI/ARDSの最初の障害として頻繁に見られる。最も頻繁な間接的な事象は、多発性外傷、敗血症、度重なる輸血、急性膵炎および熱傷である。罹患率は、100,000人の居住者当たり、1年でALIの場合は17.9、ARDSの場合は、13.5である[Luhr et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med. 159, 1849-1861 (1999)]。
【0022】
これらの障害の進行における中心的な役割は、肺における大規模な炎症的変化により果たされ、これは広く分岐したメディエーターの系によって誘発される。肺傷害の進行における重要な役割は、また、好中球顆粒球によって果たされ、この数は、炎症プロセスの間に永久的に増加する[Chollet-Martin et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med. 154, 594-601 (1996)]。このメディエーターの作用は、肺胞毛細血管膜に損傷を与え、これが、肺胞毛細血管関門の透過性の増加をもたらす。この透過性の増加のために、タンパク質に富む液が、肺胞および間質空間へ透過できる;低圧肺浮腫が発症する。ALI/ARDSに特徴的なことに、これは、非心原性浮腫である。この浮腫液は、主として、フィブリン、赤血球、白血球、ヒアリン膜および他のタンパク質を含む。活性化好中球の産物と共に、タンパク質に富む浸出液は、サーファクタントの機能不全を導く。この炎症性過程は、サーファクタントを形成するII型肺細胞の損傷および欠損を引き起こし、サーファクタント産生の減少をもたらす。サーファクタントの欠損は、肺胞における表面張力を上昇させ;肺胞は崩壊し、無気肺(atelectases)が形成される。灌流を維持すると、肺左右シャントの増大をもたらす換気/灌流の不均衡が生じる。さらに、換気する面積はあるが、肺高血圧症のために、もはや十分に灌流しないので、コンプライアンスは低下し、対照的に肺胞死腔は増大する。
【0023】
肺傷害の重篤度に相関するエラスターゼ活性の増大は、ARDS患者の気管支肺胞洗浄液(BALF)で測定し得る。肺に損傷のある(例えば、LPS投与による)動物モデルで、この効果を再現できる。ここで、エラスターゼ阻害剤(例えば、シベレスタットまたはエラフィン(下記参照))を用いる処置は、BALF中のエラスターゼ活性を顕著に減少させ、肺機能を改善する。
【0024】
日本および韓国においては、エラスターゼ阻害剤(シベレスタット、エラスポール(Elaspol(登録商標)))が、SIRSに関連する急性肺傷害の処置のために承認されている。可逆的であるが、反応性のある化合物は、HNEに対して比較的弱い(Ki 200nM)作用のみを有し、膵臓エラスターゼにも作用する(IC50 5.6μM)。活性化合物は静脈内投与され、経口投与は不可能である。
【0025】
エラフィンおよび構造的類似体は、また、治療的に有用なエラスターゼ阻害剤として研究されている。エラフィンは、内在性の低分子タンパク質であり、エラスターゼとプロテイナーゼ3の両方を阻害する。しかしながら、タンパク質作動性(proteinergic)の特性のため、エラフィンの経口投与は不可能である。
【0026】
本発明の目的は、特に肺障害および心血管系の障害の処置および/または予防に適する、ヒト好中球エラスターゼ(HNE)の、低分子量、非反応性、かつ、選択的阻害剤として作用する新規物質を提供することである。
【0027】
WO2004/024700、WO2004/024701、WO2005/082863、WO2005/082864およびWO2008/003412は、慢性閉塞性肺疾患、急性冠症候群、心筋梗塞および心不全の処置のためのHNE阻害剤としての様々な1,4−ジアリールジヒドロピリミジン−2−オン誘導体を開示している。呼吸器障害の処置用のそのような化合物の二量体および多量体は、WO2006/082412、WO2006/136857、WO2007/042815およびWO2008/030158で特許請求されている。4−アリールジヒドロピリミジン−2−オン誘導体は、高血圧症の処置のためのカルシウムチャネル機能の阻害剤として、WO2005/009392に記載されている。WO2007/129060およびWO2008/135537は、テトラヒドロピロロピリミジンジオン類およびその多量体を、HNE阻害剤として開示している。
【0028】
驚くべきことに、この度、ある種の1,4−ジアリールピリミド[4,5−d]ピリダジン−2,5−ジオン誘導体は、障害の処置および/または予防に特に適することが見出された。下記のこれらの化合物は、低分子量、非反応性かつ選択的なヒト好中球エラスターゼ(HNE)の阻害剤であり、さらに、それらのバイオアベイラビリティー、半減期および/またはタンパク質結合に関して、有利な薬物動態特性を有する。従って、これらの物質は、特に肺および心血管系の障害の処置および/または予防用の新規薬剤のために、有望な出発点である。
【発明の概要】
【0029】
本発明は、一般式(I)
【化1】

[式中、
Aは、CHまたはNを表し、
は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、(C−C)−アルキル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノを表すか、
または、式−NH−C(=O)−R、−NH−C(=O)−NHR、−NH−SO−Rまたは−S(O)−Rの基を表し
{式中、
は、水素または(C−C)−アルキルを表し、
は、(C−C)−アルキルを表し、
は、(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、(C−C)−シクロアルキルまたはフェニルにより置換されていてもよいか、または、(C−C)−アルケニル、(C−C)−シクロアルキルまたはフェニルを表し
(ここで、上述の(C−C)−シクロアルキル基は、(C−C)−アルキル、ヒドロキシルおよび(C−C)−アルコキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよく、
そして、上述のフェニル基は、フッ素、塩素、シアノ、(C−C)−アルキル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシ、ジフルオロメトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)、
そして、nは、0、1または2の数を表す}、
【0030】
は、水素を表すか、(C−C)−アルキルまたは(C−C)−アルケニル{これらの各々は、3個までのフッ素により置換されていてもよい}を表すか、または、フェニル、ピリジルまたはピリミジニルを表し
{ここで、フェニル、ピリジルおよびピリミジニルは、フッ素、塩素、シアノ、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシおよびトリフルオロメトキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい}、
または、
は、式−C(=O)−O−R、−L−C(=O)−O−R10、−L−C(=O)−NR1112、−L−SO−NR1112、−L−C(=O)−NR13−NR1112または−L−SO−R14の基を表し
{式中、
は、(C−C)−アルカンジイルを表し、
は、結合または(C−C)−アルカンジイルを表し、
は、(C−C)−アルキルを表し、
10は、水素または(C−C)−アルキルを表し、
11およびR12は、同一であるかまたは異なり、相互に独立して、水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキルまたは4員ないし6員の複素環を表し
(ここで、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキルおよび4員ないし6員の複素環は、フッ素、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、オキソ、アミノ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノ、ヒドロキシカルボニル、(C−C)−アルコキシカルボニルおよびアミノカルボニルからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよく、(C−C)−アルキル中、CH基は、化学的に安定な化合物をもたらすならば、酸素原子に置き換えられていてもよい)、
または、R11およびR12は、それらが結合している窒素原子と一体となって4員ないし6員の複素環を形成し、これは、N、O、S、SOおよびSOからなる群からさらなる環内ヘテロ原子を含有してもよく、(C−C)−アルキル、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、オキソ、アミノ、モノ−およびジ−(C−C)−アルキルアミノからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよく
(ここで、(C−C)−アルキルは、ヒドロキシルまたは(C−C)−アルコキシにより置換されていてもよい)、
13は、水素または(C−C)−アルキルを表し、
そして、
14は、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキル、フェニルまたは5員または6員のヘテロアリールを表す
(ここで、(C−C)−アルキルは、フッ素、塩素、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノにより置換されていてもよく、
そして、フェニルおよび5員または6員のヘテロアリールは、フッ素、塩素、シアノ、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシおよびトリフルオロメトキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)}、
【0031】
は、(C−C)−アルキルまたは(C−C)−アルケニルを表し、これらの各々は、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノ、ヒドロキシカルボニル、(C−C)−アルコキシカルボニル、アミノカルボニルまたはモノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノカルボニルにより置換されていてもよいか、
または、式−L−R15の基を表し
{式中、
は、結合または(C−C)−アルカンジイルを表し、
そして、
15は、(C−C)−シクロアルキル、4員ないし7員の複素環、フェニルまたは5員または6員のヘテロアリールを表す
(ここで、(C−C)−シクロアルキルおよび4員ないし7員の複素環は、(C−C)−アルキル、オキソ、ヒドロキシルおよび(C−C)−アルコキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよく、
そして、フェニルおよび5員または6員のヘテロアリールは、フッ素、塩素、シアノ、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシおよびアミノからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)}、
は、ニトロまたはトリフルオロメチルを表し、
そして、
は、水素、フッ素または塩素を表す]
の化合物、並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明による化合物は、式(I)の化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、下記に挙げられる式の、式(I)に包含される化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、並びに、例示的実施態様として下記で挙げられ、式(I)に包含される化合物、それらの塩、溶媒和物およびその塩の溶媒和物である(式(I)に包含され、下記で挙げられる化合物が、すでに塩、溶媒和物および塩の溶媒和物ではない場合)。
【0033】
本発明による化合物は、それらの構造によっては、立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)で存在し得る。従って、本発明は、エナンチオマーおよびジアステレオマー並びにそれらの各々の混合物に関する。立体異性的に純粋な構成成分は、そのようなエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物から、公知の方法で単離できる。
本発明による化合物が互変異性体で存在し得るならば、本発明は、すべての互変異性体形態を包含する。
【0034】
本発明の目的上、好ましいは、本発明による化合物の生理的に許容し得る塩である。それ自体は医薬的使用には適さないが、例えば、本発明による化合物の単離または精製に使用できる塩も包含される。
【0035】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩には、鉱酸、カルボン酸およびスルホン酸の酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩が含まれる。
【0036】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩には、また、常套の塩基の塩、例えば、そして好ましくは、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)、および、アンモニアまたは1個ないし16個の炭素原子を有する有機アミン(例えば、そして好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、アルギニン、リシン、エチレンジアミンおよびN−メチルピペリジン)から誘導されるアンモニウム塩が含まれる。
【0037】
本発明の目的上、溶媒和物は、固体または液体状態で、溶媒分子との配位により複合体を形成している、本発明による化合物の形態を表す。水和物は、配位が水と起こる、溶媒和物の特別な形態である。水和物は、本発明に関して好ましい溶媒和物である。
【0038】
本発明は、さらに、本発明の化合物のプロドラッグを包含する。用語「プロドラッグ」は、それら自体は、生物学的に活性でも不活性でもよいが、それらの体内滞留時間中に、本発明による化合物に(例えば、代謝または加水分解により)変換される化合物を包含する。
【0039】
本発明に関し、置換基は、断りのない限り、以下の意味を有する:
(C−C)−アルキルおよび(C−C)−アルキルは、本発明の目的上、各々1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルを表す。1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルが好ましい。好ましく言及し得る例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、1−エチルプロピル、n−ペンチル、ネオペンチルおよびn−ヘキシルである。
【0040】
(C−C)−アルカンジイルおよび(C−C)−アルカンジイルは、本発明の目的上、各々1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の二価のアルキルラジカルを表す。1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルカンジイルラジカルが好ましい。好ましく言及し得る例は、メチレン、エタン−1,2−ジイル(1,2−エチレン)、エタン−1,1−ジイル、プロパン−1,3−ジイル(1,3−プロピレン)、プロパン−1,1−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−1,4−ジイル(1,4−ブチレン)、ブタン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−2,3−ジイル、ペンタン−1,5−ジイル(1,5−ペンチレン)、ペンタン−2,4−ジイル、3−メチルペンタン−2,4−ジイルおよびヘキサン−1,6−ジイル(1,6−ヘキシレン)である。
【0041】
(C−C)−アルケニルおよび(C−C)−アルケニルは、本発明の目的上、各々2個ないし6個および2個ないし4個の炭素原子および二重結合を有する直鎖または分枝鎖のアルケニルラジカルを表す。2個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルケニルラジカルが好ましい。好ましく言及し得る例は、ビニル、アリル、イソプロペニル、n−ブト−2−エン−1−イル、n−ブト−3−エン−1−イル、n−ペント−2−エン−1−イル、n−ペント−3−エン−1−イル、n−ペント−4−エン−1−イル、3−メチルブト−2−エン−1−イルおよび4−メチルペント−3−エン−1−イルである。
【0042】
(C−C)−アルコキシおよび(C−C)−アルコキシは、本発明の目的上、各々1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルを表す。1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルが好ましい。好ましく言及し得る例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、1−エチルプロポキシ、n−ペントキシ、ネオペントキシおよびn−ヘキソキシである。
【0043】
(C−C)−アルコキシカルボニルは、本発明の目的上、カルボニル基を介して結合している、1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルを表す。好ましく言及し得る例は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニルおよびtert−ブトキシカルボニルである。
【0044】
モノ−(C−C)−アルキルアミノおよびモノ−(C−C)−アルキルアミノは、本発明の目的上、各々1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル置換基を有するアミノ基を表す。1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のモノアルキルアミノラジカルが好ましい。好ましく言及し得る例は、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、tert−ブチルアミノ、n−ペンチルアミノおよびn−ヘキシルアミノである。
【0045】
ジ−(C−C)−アルキルアミノおよびジ−(C−C)−アルキルアミノは、本発明の目的上、各々1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する2個の同一かまたは異なる直鎖または分枝鎖のアルキル置換基を有するアミノ基を表す。各場合で1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のジアルキルアミノラジカルが好ましい。好ましく言及し得る例は、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチル−N−メチルアミノ、N−メチル−N−n−プロピルアミノ、N−イソプロピル−N−メチルアミノ、N−イソプロピル−N−n−プロピルアミノ、N,N−ジイソプロピルアミノ、N−n−ブチル−N−メチルアミノ、N−tert−ブチル−N−メチルアミノ、N−メチル−N−n−ペンチルアミノおよびN−n−ヘキシル−N−メチルアミノである。
【0046】
モノ−およびジ−(C−C)−アルキルアミノカルボニルは、本発明の目的上、カルボニル基を介して結合しており、各場合で1個ないし4個の炭素原子を有する各々1個の直鎖または分枝鎖の、および、2個の同一かまたは異なる直鎖または分枝鎖のアルキル置換基を有するアミノ基を表す。好ましく言及し得る例は、メチルアミノカルボニル、エチルアミノカルボニル、n−プロピルアミノカルボニル、イソプロピルアミノカルボニル、n−ブチルアミノカルボニル、tert−ブチルアミノカルボニル、N,N−ジメチルアミノカルボニル、N,N−ジエチルアミノカルボニル、N−エチル−N−メチルアミノカルボニル、N−メチル−N−n−プロピルアミノカルボニル、N−イソプロピル−N−メチルアミノカルボニル、N−n−ブチル−N−メチルアミノカルボニルおよびN−tert−ブチル−N−メチルアミノカルボニルである。
【0047】
(C−C)−シクロアルキルおよび(C−C)−シクロアルキルは、本発明の目的上、各々3個ないし7個および3個ないし6個の環内炭素原子を有する単環式飽和シクロアルキル基を表す。好ましく言及し得る例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルである。
【0048】
4員ないし7員の複素環は、本発明の目的上、全部で4個ないし7個の環内原子を有し、N、O、S、SOおよびSOからなる群から1個または2個の環内ヘテロ原子を含み、環内炭素原子を介して結合しているか、または、必要に応じて、環内窒素原子を介して結合している、単環式飽和複素環を表す。好ましいのは、N、OおよびSからなる群から1個または2個の環内ヘテロ原子を有する4員ないし6員の複素環である;特に好ましいのは、NおよびOからなる群から1個または2個の環内ヘテロ原子を有する5員または6員の複素環である。言及し得る例は、アゼチジニル、オキセタニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、テトラヒドロフラニル、チオラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ヘキサヒドロアゼピニルおよびヘキサヒドロ−1,4−ジアゼピニルである。好ましいのは、アゼチジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニルおよびモルホリニルである;特に好ましいのは、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニルおよびモルホリニルである。
【0049】
ピロリジノ、ピペリジノ−またはモルホリノラジカルは、本発明の目的上、各々環内窒素原子を介して結合しているピロリジノ、ピペリジノ−またはモルホリノ環を表す。
【0050】
5員または6員のヘテロアリールは、本発明の目的上、全部で5個または6個の環内原子を有し、N、OおよびSからなる群から1個または2個の環内ヘテロ原子を含み、環内炭素原子を介して、または、必要に応じて、環内窒素原子を介して結合している、芳香族性複素環(複素芳香族)を表す。言及し得る例は、フリル、ピロリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニルおよびピラジニルである。好ましいのは、チエニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニルおよびピラジニルである。
【0051】
ハロゲンは、本発明の目的上、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。好ましいのは、塩素、フッ素または臭素である;特に好ましいのは、フッ素または塩素である。
本発明の目的上、オキソ置換基は、二重結合を介して炭素原子に結合している酸素原子である。
【0052】
本発明による化合物中のラジカルが置換されているならば、そのラジカルは、断りの無い限り、一置換または多置換されていてよい。本発明の目的上、1個より多く存在するすべてのラジカルの意味は、相互に独立している。好ましいのは、1個または2個の同一かまたは異なる置換基による置換である。特に好ましいのは、1個の置換基による置換である。
【0053】
本発明は、特に、式中、AがCHを表す式(I)の化合物、並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物を提供する。
本発明は、さらに、特に、式中、Rがトリフルオロメチルを表し、そして、Rが水素またはフッ素を表す、式(I)の化合物、並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物を提供する。
【0054】
本発明の目的上、好ましいのは、式中、
AがCHを表し、
が、水素、フッ素、塩素、シアノ、ニトロ、(C−C)−アルキル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノを表すか、
または、式−NH−C(=O)−R、−NH−SO−Rまたは−SO−Rの基を表し
{式中、
およびRは、各々(C−C)−アルキルを表し、
そして、Rは、(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、(C−C)−シクロアルキルまたはフェニルにより置換されていてもよいか、または、(C−C)−シクロアルキルまたはフェニルを表す
(ここで、上述のフェニル基は、フッ素、塩素、シアノ、メチル、トリフルオロメチル、メトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)}、
が、水素、(C−C)−アルキルまたは(C−C)−アルケニルを表すか、
または、式−L−C(=O)−O−R10、−L−C(=O)−NR1112または−L−SO−R14の基を表し
{式中、
は、メチレンまたはエタン−1,2−ジイルを表し、
は、結合、メチレン、エタン−1,1−ジイルまたはエタン−1,2−ジイルを表し、
10は、水素または(C−C)−アルキルを表し、
11は、水素または(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシルまたは(C−C)−アルコキシにより置換されていてもよく、
12は、水素、(C−C)−アルキルまたは(C−C)−シクロアルキルを表し
(ここで、(C−C)−アルキルは、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、ヒドロキシカルボニル、(C−C)−アルコキシカルボニルおよびアミノカルボニルからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよく、そして、(C−C)−アルキル中、CH基は、化学的に安定な化合物をもたらすならば、酸素原子に置き換えられていてもよい)、
または、R11およびR12は、それらが結合している窒素原子と一体となって5員または6員の複素環を形成し、それは、N、OおよびSからなる群からさらなる環内ヘテロ原子を含有してもよく、(C−C)−アルキル、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシまたはオキソにより置換されていてもよく
(ここで、(C−C)−アルキルは、ヒドロキシまたは(C−C)−アルコキシにより置換されていてもよい)、
そして、
14は、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキルまたはフェニルを表す
(ここで、フェニルは、フッ素、塩素、シアノ、メチル、トリフルオロメチル、メトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)}、
が、(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、ヒドロキシカルボニル、(C−C)−アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノカルボニルまたは5員または6員のヘテロアリールにより置換されていてもよいか、(C−C)−アルケニルを表すか、または、式−L−R15の基を表し
{式中、
は、結合または(C−C)−アルカンジイルを表し、
そして、R15は、(C−C)−シクロアルキル、4員ないし6員の複素環またはフェニルを表す
(ここで、4員ないし6員の複素環は、オキソにより置換されていてもよく、
そして、フェニルは、フッ素、塩素、シアノ、メチル、トリフルオロメチル、メトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)}、
が、トリフルオロメチルを表し、
そして、
が、水素またはフッ素を表す、
式(I)の化合物、並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0055】
本発明の目的上、特に好ましいのは、式中、
AがCHを表し、
が、水素、フッ素、塩素、ニトロ、メチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシまたは式−SO−Rの基を表し
{式中、Rは、(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシル、メトキシまたはエトキシにより置換されていてもよい}、
が、水素、(C−C)−アルキルまたは式−CH−C(=O)−O−R10もしくは−CH−C(=O)−NR1112の基を表し
{式中、
10は(C−C)−アルキルを表し、
11は、水素またはメチルを表し、
12は、水素または(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシル、メトキシまたはエトキシにより置換されていてもよいか、
または、
11およびR12は、それらが結合している窒素原子と一体となって、ピロリジノ、ピペリジノまたはモルホリノ環を形成する}、
が、(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノまたはピリジルにより置換されていてもよいか、アリルを表すか、または、式−L−R15の基を表し
{式中、
は、結合、メチレンまたはエタン−1,2−ジイルを表し、
そして、R15は、(C−C)−シクロアルキルまたはフェニルを表す
(ここで、フェニルは、フッ素、塩素、シアノ、メチルおよびトリフルオロメチルからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)}、
が、トリフルオロメチルを表し、
そして、
が水素を表す、
式(I)の化合物、並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0056】
本発明の目的上、ことさら特に好ましいのは、式中、
AがCHを表し、
が、水素、トリフルオロメチルまたはメチルスルホニルを表し、
が、水素または式−CH−C(=O)−NR1112の基を表し
{式中、
11およびR12は、相互に独立して、水素またはメチルを表すか、
または、
11およびR12は、それらが結合している窒素原子と一体となって、ピロリジノ環を形成する}、
が、メチル、エチル、2−ヒドロキシエチルまたは2−(モルホリン−4−イル)エチルを表し、
が、トリフルオロメチルを表し、
そして、
が水素を表す、
式(I)の化合物、並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0057】
特に関係があるのは、ジヒドロピリミジノン環の4位で式(I−ent)
【化2】

(式中、A、R、R、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
で示す配置を有する式(I)による化合物、並びに、それらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0058】
ラジカルの各々の組合せまたは好ましい組合せにおける特定のラジカルの定義は、各場合で与えられたラジカルの組合せから独立して、他の組合せのラジカルの定義によっても置き換えられる。
2個またはそれ以上の上述の好ましい範囲の組合せがことさら特に好ましい。
【0059】
本発明による式(I)の1,4−ジアリールピリミド[4,5−d]ピリダジン−2,5−ジオン類は、様々な互変異性体で存在できる(下記スキーム1参照);本発明は、全ての互変異性体を明示的に含む。
スキーム1
【化3】

【0060】
本発明は、さらに、本発明による式(I)の化合物の製造方法を提供し、それは、先ず、式(II)
【化4】

(式中、AおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物を、酸または酸無水物の存在下で、3成分ワンポット反応で、または、連続的に、式(III)
【化5】

(式中、Tは、メチルまたはエチルを表す)
のアセト酢酸エステル、および、式(IV)
【化6】

(式中、RおよびRは、上記の意味を有する)
のフェニルウレア誘導体と縮合させ、式(V−A)
【化7】

(式中、A、T、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、次いで、この化合物を、
【0061】
[A]式(I)中のRが水素を表す場合、不活性溶媒中でブロム化し、式(VI−A)
【化8】

(式中、A、T、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、式(VII)
−NH−NH (VII)
(式中、Rは上記の意味を有する)
のヒドラジン誘導体と、6員環の形成を伴って反応させ、式(I−A)
【化9】

(式中、A、R、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得るか、
または、
【0062】
[B]式(I)中のRが水素ではない場合、先ず、式(VIII)
2A−X (VIII)
(式中、R2Aは、上記Rの意味を有するが、水素を表さず、
そして、Xは、ハロゲン、メシレート、トシレートまたはトリフレートなどの脱離基を表す)
の化合物と、塩基の存在下で反応させ、式(V−B)
【化10】

(式中、A、T、R、R2A、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、次いで、不活性溶媒中でブロム化し、式(VI−B)
【化11】

(式中、A、T、R、R2A、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、式(VII)
−NH−NH (VII)
(式中、Rは上記の意味を有する)
のヒドラジン誘導体と、環化を伴って反応させ、式(I−B)
【化12】

(式中、A、R、R2A、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、かくして得られる式(I−A)または(I−B)の化合物を、必要に応じて、当業者に公知の方法により、そのエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーに分離し、かつ/または、適当な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸で、その溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換することを特徴とする。
【0063】
工程(II)+(III)+(IV)→(V−A)に適する溶媒は、反応条件下で変化しない常套の有機溶媒である。これらには、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサンまたはテトラヒドロフランなどのエーテル類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールまたはtert−ブタノールなどのアルコール類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロメタンまたはクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、または、酢酸エチル、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドまたはN,N−ジメチルホルムアミドなどの他の溶媒が含まれる。上述の溶媒の混合物を使用することも可能である。好ましいのは、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサンの使用である。
【0064】
工程(II)+(III)+(IV)→(V−A)に適する酸は、常套の無機または有機酸または酸無水物である。これらには、好ましくは、例えば、酢酸またはトリフルオロ酢酸などのカルボン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸などのスルホン酸、塩酸、硫酸、リン酸、ホスホン酸、または、リン酸またはホスホン酸の無水物またはエステル、例えば、ポリリン酸、リン酸トリエチルエステル、ポリリン酸エチルエステル、五酸化リンまたはプロパンホスホン酸無水物が含まれる。好ましいのは、リン酸トリエチルエステルを五酸化リンと組み合わせて使用することである。酸は、一般的に、化合物(III)1molを基準として、0.25molないし100molの量で用いる。
【0065】
工程(II)+(III)+(IV)→(V−A)は、一般的に、+20℃ないし+150℃の温度範囲で、好ましくは+50℃ないし+100℃で実施する。この反応は、大気圧、加圧または減圧で実施できる(例えば、0.5ないし5bar)。一般に、この工程は大気圧で実施する。
【0066】
工程(V−A)→(VI−A)および(V−B)→(VI−B)のブロム化は、好ましくは、元素の臭素を使用して、常套の不活性溶媒、例えばクロロホルム中で、−20℃ないし+40℃の温度で実施する。
【0067】
工程(VI−A)+(VII)→(I−A)および(VI−B)+(VII)→(I−B)のジヒドロピリダジノン形成は、好ましくは、不活性溶媒としての、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンまたはジオキサンなどのエーテル中、+20℃ないし+120℃の温度で実施する。ここで、式(VII)のヒドラジン誘導体は、塩の形態で、例えば塩酸塩として、用いることもできる;この場合、反応は、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの三級アミンの塩基、または、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは炭酸セシウムまたはポリマーに支持された炭酸塩などの、炭酸塩の塩基の存在下で実施する。
【0068】
工程(V−A)+(VIII)→(V−B)に適する溶媒は、反応条件下で変化しない常套の有機溶媒である。これらには、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサンまたはテトラヒドロフランなどのエーテル類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロメタンまたはクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、または、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルtert−ブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N'−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)またはN−メチルピロリドン(NMP)などの他の溶媒が含まれる。上述の溶媒の混合物を使用することも可能である。好ましいのは、テトラヒドロフラン、アセトニトリルまたはジメチルホルムアミドの使用である。
【0069】
工程(V−A)+(VIII)→(V−B)に適する塩基は、常套の無機または有機塩基である。これらには、特に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸塩、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムまたは炭酸セシウム、アルカリ金属アルコキシド類、例えば、ナトリウムtert−ブトキシドまたはカリウムtert−ブトキシド、アルカリ金属水素化物、例えば、水素化ナトリウムまたは水素化カリウム、アミド類、例えば、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはカリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはリチウムジイソプロピルアミド(LDA)、有機アミン類、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、ピリジンまたは4−N,N−ジメチルアミノピリジン、または、ホスファゼン塩基(「Schwesinger 塩基」)、例えば、P1−t−Bu、P2−t−BuまたはP4−t−Buが含まれる。好ましいのは、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、トリエチルアミンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンの使用である;特に好ましいのは、炭酸カリウムおよび水素化ナトリウムである。塩基は、一般的に、化合物(V−A)1molを基準として、0.1molないし10mol、好ましくは1molないし3molの量で用いる。
【0070】
工程(V−A)+(VIII)→(V−B)は、一般的に、−20℃ないし+100℃の温度範囲で、好ましくは0℃ないし+80℃で実施する。この反応は、大気圧、加圧または減圧で実施できる(例えば、0.5ないし5bar)。一般に、この工程は大気圧で実施する。
【0071】
好都合であれば、さらなる本発明による式(I)の化合物を、個々の置換基の官能基、特に、R、RおよびRで挙げたものの変換により、上記の方法により得た他の式(I)の化合物から出発して、製造することもできる。これらの変換は、当業者に公知の常套の方法に従って実施し、例えば、求核または求電子置換反応、遷移金属に媒介されるカップリング反応(例えば、鈴木またはヘック反応)、酸化、還元、水素化、アルキル化、アシル化、アミノ化、ヒドロキシル化、エーテル化、エステル化、エステル開裂およびエステル加水分解、ニトリル、カルボキサミド、スルホンアミド、カルバメートおよびウレアの形成、並びに、一時的な保護基の導入および除去などの反応を含む[下記の反応スキーム2−4および例示的実施態様を参照]。
【0072】
本発明による化合物の、対応するエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーへの分離は、都合に応じて、化合物(I−A)または(I−B)の段階で、または、化合物(V−A)または(V−B)の段階で可能であり、次いで、後者は、分離形態で、さらに上記の工程に従って反応させることができる。そのような立体異性体の分離は、当業者に公知の常套の方法で実施できる;好ましいのは、クロマトグラフィーの方法、特にキラル相のHPLCクロマトグラフィーである。
【0073】
式(III)、(IV)、(VII)および(VIII)の化合物は、購入できるか、文献から知られているか、または、文献に記載の常套の方法により製造できる。
【0074】
式(II)の化合物のいくつかは、文献から知られているか、または、それらは、文献に記載の方法と同様に製造できる[例えば、下記の反応スキーム5および6、並びに、そこで引用する文献も参照]。
【0075】
上記の方法では、適するならば、式(II)の化合物の代わりに、先ず、式(II−A)
【化13】

(式中、Aは上記の意味を有し、
そして、Yは、交換可能な基、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロまたはアミノを表す)
の化合物を、上記の連続反応で用い、次いで、所望のアリール置換基Rを、ジヒドロピリミジノン(これは、化合物(V−A)または(V−B)に対応する)の段階で、ラジカルYに換えて導入するのが、合成上で好都合であり得る。式(II−A)の化合物のいくつかは、同様に、文献から知られているか、または、文献から知られている方法と同様に製造できる。
【0076】
上記の方法は、下記の反応スキームにより例示的に説明できる:
スキーム2
【化14】

【0077】
スキーム3
【化15】

【0078】
スキーム4
【化16】

【0079】
スキーム5
【化17】

【0080】
スキーム6
【化18】

[例えば、W.K. Fife, J. Org. Chem. 48, 1375 (1983); H. Vorbrueggen and K. Krolikiewicz, Synthesis, 316 (1983); R.T. Shuman et al., J. Org. Chem. 55, 738 (1990); C.S. Burgey et al., J. Med. Chem. 46 (4), 461 (2003); J.J. Li et al., J. Med. Chem. 39, 1846 (1996); K.N. Dack et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 8 (16), 2061 (1998)]。
【0081】
本発明による化合物は、有用な薬理的特性を有し、ヒトおよび動物の障害の予防および処置に使用できる。
【0082】
本発明による化合物は、ヒト好中球エラスターゼの強力な低分子量の非反応性かつ選択的な阻害剤である。さらに、本発明による化合物は、例えば、良好なバイオアベイラビリティーおよび/または半減期、または、経口投与、または、低い血漿タンパク質結合などの有利な薬物動態特性を有する。
【0083】
従って、本発明による化合物は、障害および病的過程、特に、好中球エラスターゼ(HNE)が炎症性事象および/または組織または血管リモデリングに関与しているものの処置および/または予防に特に適する。
【0084】
本発明の目的上、これには、特に、肺動脈高血圧(PAH)および他の形態の肺高血圧症(PH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺傷害(ALI)、アルファ−1−アンチトリプシン欠損症(AATD)、肺線維症、肺気腫(例えば、煙草の煙に誘導される肺気腫)、嚢胞性線維症(CF)、急性冠症候群(ACS)、心筋の炎症(心筋炎)および他の自己免疫性心疾患(心膜炎、心内膜炎、弁膜炎、大動脈炎、心筋症)、心筋梗塞、心原性ショック、心不全、動脈瘤、敗血症(SIRS)、多臓器不全(MODS、MOF)、アテローム性動脈硬化症、腎臓の炎症性障害、腸の慢性炎症(IBD、CD、UC)、膵炎、腹膜炎、リウマチ性障害、炎症性皮膚障害、並びに、炎症性眼障害のような障害が含まれる。
【0085】
本発明による化合物は、さらに、断続的または持続的経過を伴う様々な重篤度の喘息障害(難治性喘息、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、薬剤または粉塵によって誘発される喘息)、様々な形態の気管支炎(慢性気管支炎、感染性気管支炎、好酸球性気管支炎)、閉塞性細気管支炎、気管支拡張症、肺炎、農夫肺および関連する疾患、咳および風邪(慢性炎症性の咳、医原性の咳)、鼻粘膜の炎症(薬剤に関連する鼻炎、血管運動性鼻炎および季節性アレルギー性鼻炎、例えば、枯草熱)およびポリープの処置および/または予防のために使用できる。
【0086】
加えて、本発明による化合物は、また、微小および大血管の傷害(脈管炎)、再灌流障害、動脈および静脈血栓、糖尿病性および非糖尿病性腎症、糸球体腎症、糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症、微量アルブミン尿、急性および慢性腎機能不全、急性および慢性腎不全、膀胱炎、尿道炎、前立腺炎、精巣上体炎、卵巣炎、卵管炎、外陰膣炎、勃起機能不全、ハンナー(Hunner)潰瘍、ペイロニー病、動脈性高血圧症、ショック、心房性および心室性不整脈、一過性および虚血性発作、心不全、脳卒中、内皮機能不全、末梢および心血管障害、末梢灌流の障害、例えば、肺浮腫、脳浮腫、腎浮腫および心不全に関連する浮腫などの浮腫形成、例えば、血栓溶解療法、経皮経管血管形成術(PTA)、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)、心臓移植およびバイパス手術後の再狭窄、高レベルのフィブリノーゲンおよび低密度LDLレベル、並びに、高濃度のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI−1)、脂質異常症(高コレステロール血症、高グリセリド血症、高濃度の食後の血漿トリグリセリド、低アルファリポ蛋白血症、複合型高脂血症)、並びに、代謝障害(メタボリック症候群、高血糖症、インシュリン依存性糖尿病、非インシュリン依存性糖尿病、妊娠性糖尿病、高インシュリン血症、インシュリン抵抗性、耐糖能障害、脂肪過多症、並びに、網膜症、腎症およびニューロパシーなどの糖尿病続発症)、腫瘍性障害(皮膚がん、脳腫瘍、乳がん、骨髄腫瘍、白血病、脂肪肉腫、消化管、肝臓、膵臓、肺、腎臓、尿道、前立腺および生殖管の癌腫、並びに、例えば、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫などのリンパ球増殖系の悪性腫瘍)、消化管および腹部の障害(舌炎、歯肉炎、歯周炎、食道炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、結腸炎、直腸炎、肛門そう痒症、下痢、セリアック病、肝炎、肝線維症、肝硬変、膵臓炎および胆嚢炎)、中枢神経系の障害および神経変性障害(脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、てんかん、うつ病、多発性硬化症)、免疫障害、甲状腺障害(甲状腺機能亢進(hyperthyreosis))、皮膚障害(乾癬、アクネ、湿疹、神経皮膚炎、例えば、アバクリブス皮膚炎(dermatitis abacribus)、日光過敏性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アンモニア性皮膚炎(ammonia dermatitis)、作為性皮膚炎(facticial dermatitis)、自家性皮膚炎(autogenic dermatitis)、アトピー性皮膚炎、熱性皮膚炎(dermatitis calorica)、火傷性皮膚炎(dermatitis combustionis)、凍傷性皮膚炎(dermatitis congelationis)、化粧品皮膚炎、痂皮性皮膚炎(dermatitis escharotica)、剥脱性皮膚炎、壊疸性皮膚炎(dermatitis gangraenose)、うっ滞性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、苔癬様皮膚炎(lichenoid dermatitis)、線状皮膚炎(dermatitis linearis)、悪性皮膚炎(dermatitis maligna)、薬剤発疹性皮膚炎(medicinal eruption dermatitis)、手掌または足裏の皮膚炎(dermatitis palmaris and plantaris)、寄生虫性皮膚炎(parasitic dermatitis)、光アレルギー性接触皮膚炎、光毒性皮膚炎、膿疱性皮膚炎(dermatitis pustularis)、脂漏性皮膚炎(seborrhoeic dermatitis)、日光皮膚炎、中毒性皮膚炎(toxic dermatitis)、メレニー潰瘍(Meleney's ulcer)、接触性皮膚炎(dermatitis veneata)、感染性皮膚炎(infectious dermatitis)、発熱性皮膚炎(pyrogenic dermatitis)および口囲皮膚炎などの様々な形態の皮膚炎、並びに、角膜炎、水疱症、血管炎、蜂巣炎、脂肪織炎、エリテマトーデス、紅斑症、リンパ腫、皮膚がん、スウィート症候群、ウェーバー・クリスチャン症候群(Weber-Christian syndrome)、瘢痕形成、疣贅形成、凍瘡)、炎症性眼疾患(サルコイドーシス、眼瞼炎、結膜炎、虹彩炎、ブドウ膜炎、脈絡膜炎、眼球炎)、ウイルス性疾患(インフルエンザ、アデノおよびコロナウイルス、例えば、HPV、HCMV、HIV、SARSに起因する)、骨格の骨および関節並びに骨格筋の障害(多種多様の形態の関節炎、例えば、アルカプトン尿性関節炎(arthritis alcaptonuria)、強直性関節炎(arthritis ankylosans)、赤痢型関節炎(arthritis dysenterica)、滲出性関節炎(arthritis exsudativa)、真菌性関節炎(arthritis fungosa)、淋菌性関節炎(arthritis gonorrhoica)、破壊性関節炎、乾癬性関節炎(arthritis psoriatica)、化膿性関節炎(arthritis purulenta)、リウマチ性関節炎、漿液性関節炎(arthritis serosa)、梅毒性関節炎(arthritis syphilitica)、結核性関節炎(arthritis tuberculosa)、尿酸関節炎(arthritis urica)、色素性絨毛結節性関節炎(arthritis villonodularis pigmentosa)、非定型関節炎、血友病性関節炎、若年性慢性関節炎、関節リウマチおよび転移性関節炎(metastatic arthritis)、さらに、スティル症候群(Still syndrome)、フェルティー症候群、シェーグレン症候群、クラットン症候群(Clutton syndrome)、ポンセット症候群(Poncet syndrome)、ポット症候群(Pott syndrome)およびライター症候群(Reiter syndrome)、多種多様な形態の関節症、例えば、変形性関節症(arthropathie deformans)、神経障害性関節症(arthropathie neuropathica)、更年期関節症(arthropathie ovaripriva)、乾癬性関節症(arthropathie psoriatica)および脊髄ろう性関節症(arthropathie tabica)、全身性強皮症、多種多様な形態の炎症性ミオパチー、例えば、流行性ミオパチー(myopathie epidemica)、線維性ミオパチー(myopathie fibrosa)、ミオグロビン尿性ミオパチー(myopathie myoglobinurica)、骨化性ミオパチー(myopathie ossificans)、神経症性骨化性ミオパチー(myopathie ossificans neurotica)、多発性進行性骨化性ミオパチー(myopathie ossificans progressiva multiplex)、化膿性ミオパチー(myopathie purulenta)、リウマチ性ミオパチー(myopathie rheumatica)、旋毛虫性ミオパチー(myopathie trichinosa)、熱帯性ミオパチー(myopathie tropica)およびチフス性ミオパチー(myopathie typhosa)、並びに、ギュンター症候群およびミュンヒマイアー症候群(Muenchmeyer syndrome))、動脈の炎症性変化(多種多様な形態の動脈炎、例えば、動脈内膜炎、動脈中膜炎(mesarteritis)、動脈周囲炎、汎動脈炎、リウマチ性動脈炎、変形性動脈炎(arteritis deformans)、側頭動脈炎(arteritis temporalis)、頭蓋動脈炎(arteritis cranialis)、巨細胞性動脈炎(arteritis gigantocellularis)および肉芽腫性動脈炎(arteritis granulomatosa)、並びに、ホートン症候群、チャーグ・ストラウス症候群および高安動脈炎)、マックル・ウェルズ症候群、菊池病、多発性軟骨炎、強皮症(dermatosclerosis)、並びに、炎症性または免疫性成分を有する他の障害、例えば、白内障、悪液質、骨粗鬆症、痛風、失禁、ハンセン病(lepra)、セザリー症候群および腫瘍随伴症候群の処置および/または予防のために、臓器移植後の拒絶反応のために、そして、創傷治癒および血管形成(特に慢性創傷の場合)のために使用され得る。
【0087】
その特性プロファイルによって、本発明による化合物は、特に、肺動脈高血圧(PAH)および他の形態の肺高血圧症(PH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺傷害(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、肺気腫、アルファ−1−アンチトリプシン欠損症(AATD)、嚢胞性線維症(CF)、敗血症および全身性炎症反応性症候群(SIRS)、多臓器不全(MOF、MODS)、炎症性腸疾患(IBD、クローン病、大腸炎)、慢性気管支炎、喘息、鼻炎、関節リウマチ、炎症性皮膚および眼疾患、動脈硬化症および癌性疾の処置および/または予防に適する。
【0088】
本発明は、さらに、障害、特に、上記の障害の処置および/または予防のための、本発明による化合物の使用を提供する。
本発明は、さらに、障害、特に、上記の障害の処置および/または予防用の医薬を製造するための本発明による化合物の使用を提供する。
本発明は、さらに、障害、特に、上記の障害の処置および/または予防方法における、本発明による化合物の使用を提供する。
本発明は、さらに、有効量の少なくとも1種の本発明による化合物を使用する、障害、特に上記の障害の処置および/または予防方法を提供する。
【0089】
本発明による化合物は、単独で、または、必要であれば、他の活性化合物と組み合わせて用いることができる。従って、本発明は、さらに、少なくとも1種の本発明による化合物、および、1種またはそれ以上の更なる活性化合物を含む、特に上記の障害の処置および/または予防用の医薬を提供する。組み合わせに適する活性化合物は、例えば、そして好ましくは、以下のものである:
【0090】
・シグナル伝達カスケードを阻害する化合物、例えば、そして好ましくは、キナーゼ阻害剤類の群から、特に、チロシンキナーゼおよび/またはセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤の群からのもの;
【0091】
・細胞外マトリックスの分解およびリモデリングを阻害する化合物、例えば、そして好ましくは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害剤、特に、ストロメライシン、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼおよびアグリカナーゼ(ここでは、特に、MMP−1、MMP−3、MMP−8、MMP−9、MMP−10、MMP−11およびMMP−13)およびメタロエラスターゼ(metalloelastase)(MMP−12)の阻害剤;
・セロトニンのその受容体への結合を遮断する化合物、例えば、そして好ましくは、5−HT2b受容体のアンタゴニスト;
【0092】
・有機硝酸塩およびNO供給源、例えば、ニトロプルシドナトリウム、ニトログリセリン、一硝酸イソソルビド、二硝酸イソソルビド、モルシドミンまたはSIN−1、並びに、吸入NO;
・NOに依存しないが、ヘムに依存する可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤、例えば、特に、WO00/06568、WO00/06569、WO02/42301およびWO03/095451に記載の化合物;
・NOおよびヘムに依存しない可溶性グアニル酸シクラーゼの活性化剤、例えば、特に、WO01/19355、WO01/19776、WO01/19778、WO01/19780、WO02/070462およびWO02/070510に記載の化合物;
【0093】
・プロスタサイクリン類似体、例えば、そして好ましくは、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニルまたはエポプロステノール;
・可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)を阻害する化合物、例えば、N,N'−ジシクロヘキシルウレア、12−(3−アダマンタン−1−イルウレイド)ドデカン酸または1−アダマンタン−1−イル−3−{5−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]ペンチル}ウレア;
・心臓のエネルギー代謝に影響を与える化合物、例えば、エトモキシル、ジクロロ酢酸、ラノラジンまたはトリメタジジン;
【0094】
・環状グアノシン一リン酸(cGMP)および/または環状アデノシン一リン酸(cAMP)の分解を阻害する化合物、例えば、ホスホジエステラーゼ(PDE)1、2、3、4および/または5の阻害剤、特にPDE5阻害剤、例えば、シルデナフィル、バルデナフィルおよびタダラフィル;
・抗血栓作用を有する物質、例えば、そして好ましくは、血小板凝集阻害剤、抗凝固剤または線維素溶解促進性物質の群からのもの;
【0095】
・血圧を下げる活性化合物、例えば、そして好ましくは、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、ACE阻害剤、バソペプチダーゼ阻害剤、エンドセリンアンタゴニスト、レニン阻害剤、アルファ−受容体遮断薬、ベータ−受容体遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト、Rhoキナーゼ阻害剤および利尿剤の群からのもの;
【0096】
・気管支拡張効果を有する物質、例えば、そして好ましくは、ベータ−アドレナリン受容体アゴニストの群からのもの、例えば、特に、アルブテロール、イソプロテレノール、メタプロテレノール、テルブタリン、フォルモテロールまたはサルメテロール、または、抗コリン作用薬の群からのもの、特にイプラトロピウム臭化物;
【0097】
・抗炎症作用を有する物質、例えば、そして好ましくは、糖質コルチコイドの群からのもの、特に、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルニソリド、ブデソニドまたはフルチカゾン;および/または
【0098】
・脂質代謝を改変する有効成分、例えば、そして好ましくは、甲状腺受容体アゴニスト、コレステロール合成阻害剤、例えば、そして好ましくは、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤またはスクアレン合成阻害剤、ACAT阻害剤、CETP阻害剤、MTP阻害剤、PPAR−アルファ、PPAR−ガンマおよび/またはPPAR−デルタアゴニスト、コレステロール吸収阻害剤、リパーゼ阻害剤、ポリマー性胆汁酸吸着剤、胆汁酸再吸収阻害剤およびリポタンパク質(a)アンタゴニスト。
【0099】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、キナーゼ阻害剤、例えば、そして好ましくは、ボルテゾミブ、カネルチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ロナファーニブ、ペガプタニブ、ペリチニブ(pelitinib)、セマキシニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、タンズチニブ(tandutinib)、ティピファニブ、バタラニブ、ファスジル、ロニダミン、レフルノミド、BMS−3354825またはY−27632と組み合わせて用いる。
【0100】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、セロトニン受容体アンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、PRX−08066と組み合わせて用いる。
【0101】
抗血栓作用を有する物質は、好ましくは、血小板凝集阻害剤、抗凝血剤または線維素溶解促進性物質の群からの化合物を意味する。
【0102】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、血小板凝集阻害剤、例えば、そして好ましくは、アスピリン、クロピドグレル、チクロピジンまたはジピリダモールと組み合わせて投与する。
【0103】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、トロンビン阻害剤、例えば、そして好ましくは、キシメラガトラン、メラガトラン、ビバリルジンまたはクレキサンと組み合わせて投与する。
【0104】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、GPIIb/IIIaアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、チロフィバンまたはアブシキシマブと組み合わせて投与する。
【0105】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、Xa因子阻害剤、例えば、そして好ましくは、リバロキサバン、DU−176b、フィデキサバン(fidexaban)、ラザキサバン(razaxaban)、フォンダパリナックス、イドラパリナックス、PMD−3112、YM−150、KFA−1982、EMD−503982、MCM−17、MLN−1021、DX9065a、DPC906、JTV803、SSR−126512またはSSR−128428と組み合わせて投与する。
【0106】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、ヘパリンまたは低分子量(LMW)ヘパリン誘導体と組み合わせて投与する。
【0107】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、ビタミンKアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、クマリンと組み合わせて投与する。
【0108】
血圧を下げる物質は、好ましくは、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、ACE阻害剤、エンドセリンアンタゴニスト、レニン阻害剤、アルファ−受容体遮断薬、ベータ−受容体遮断薬、鉱質コルチコイド受容体アンタゴニスト、Rhoキナーゼ阻害剤および利尿剤の群からの化合物を意味する。
【0109】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、カルシウム拮抗薬、例えば、そして好ましくは、ニフェジピン、アムロジピン、ベラパミルまたはジルチアゼムと組み合わせて投与する。
【0110】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、アルファ−1受容体遮断薬、例えば、そして好ましくは、プラゾシンと組み合わせて投与する。
【0111】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、ベータ−受容体遮断薬、例えば、そして好ましくは、プロプラノロール、アテノロール、チモロール、ピンドロール、アルプレノロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ブプラノロール、メチプラノロール、ナドロール、メピンドロール、カラザロール(carazalol)、ソタロール、メトプロロール、ベタキソロール、セリプロロール、ビソプロロール、カルテオロール、エスモロール、ラベタロール、カルベジロール、アダプロロール、ランジオロール、ネビボロール、エパノロールまたはブシンドロールと組み合わせて投与する。
【0112】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、ロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタンまたはエンブサルタン(embusartan)と組み合わせて投与する。
【0113】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、ACE阻害剤、例えば、そして好ましくは、エナラプリル、カプトプリル、リシノプリル、ラミプリル、デラプリル、ホシノプリル、キノプリル(quinopril)、ペリンドプリルまたはトランドプリル(trandopril)と組み合わせて投与する。
【0114】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、エンドセリンアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、ボセンタン、ダルセンタン(darusentan)、アンブリセンタンまたはシタクスセンタンと組み合わせて投与する。
【0115】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、レニン阻害剤、例えば、そして好ましくは、アリスキレン、SPP−600またはSPP−800と組み合わせて投与する。
【0116】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、鉱質コルチコイド受容体アンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、スピロノラクトンまたはエプレレノンと組み合わせて投与する。
【0117】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、Rhoキナーゼ阻害剤、例えば、そして好ましくは、ファスジル、Y−27632、SLx−2119、BF−66851、BF−66852、BF−66853、KI−23095、SB−772077、GSK−269962AまたはBA−1049と組み合わせて投与する。
【0118】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、利尿剤、例えば、そして好ましくは、フロセミドと組み合わせて投与する。
【0119】
脂質代謝を改変する物質は、好ましくは、CETP阻害剤、甲状腺受容体アゴニスト、コレステロール合成阻害剤、例えばHMG−CoAレダクターゼ阻害剤またはスクアレン合成阻害剤、ACAT阻害剤、MTP阻害剤、PPAR−アルファ、PPAR−ガンマおよび/またはPPAR−デルタアゴニスト、コレステロール吸収阻害剤、ポリマー性胆汁酸吸着剤、胆汁酸再吸収阻害剤、リパーゼ阻害剤およびリポタンパク質(a)アンタゴニストの群からの化合物を意味する。
【0120】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、CETP阻害剤、例えば、そして好ましくは、トルセトラピブ(CP−529414)、JJT−705またはCETPワクチン(Avant)と組み合わせて投与する。
【0121】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、甲状腺受容体アゴニスト、例えば、そして好ましくは、D−チロキシン、3,5,3'−トリヨードサイロニン(T3)、CGS23425またはアキシチロム(axitirome)(CGS26214)と組み合わせて投与する。
【0122】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、スタチン類のクラスからのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤、例えば、そして好ましくは、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチンまたはピタバスタチンと組み合わせて投与する。
【0123】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、スクアレン合成阻害剤、例えば、そして好ましくは、BMS−188494またはTAK−475と組み合わせて投与する。
【0124】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、ACAT阻害剤、例えば、そして好ましくは、アバシミブ(avasimibe)、メリナミド、パクチミブ(pactimibe)、エフルシミブ(eflucimibe)またはSMP−797と組み合わせて投与する。
【0125】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、MTP阻害剤、例えば、そして好ましくは、インプリタピド(implitapide)、BMS−201038、R−103757またはJTT−130と組み合わせて投与する。
【0126】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、PPAR−ガンマアゴニスト、例えば、そして好ましくは、ピオグリタゾンまたはロシグリタゾンと組み合わせて投与する。
【0127】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、PPAR−デルタアゴニスト、例えば、そして好ましくは、GW−501516またはBAY68−5042と組み合わせて投与する。
【0128】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、コレステロール吸収阻害剤、例えば、そして好ましくは、エゼチミブ、チクエシド(tiqueside)またはパマクエシドと組み合わせて投与する。
【0129】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、リパーゼ阻害剤、例えば、そして好ましくは、オーリスタットと組み合わせて投与する。
【0130】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、ポリマー性胆汁酸吸着剤、例えば、そして好ましくは、コレスチラミン、コレスチポール、コレソルバム(colesolvam)、コレスタゲル(CholestaGel)またはコレスチミドと組み合わせて投与する。
【0131】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、胆汁酸再吸収阻害剤、例えば、そして好ましくは、ASBT(=IBAT)阻害剤、例えば、AZD−7806、S−8921、AK−105、BARI−1741、SC−435またはSC−635と組み合わせて投与する。
【0132】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、リポタンパク質(a)アンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、ゲンカベン(gemcabene)カルシウム(CI−1027)またはニコチン酸と組み合わせて投与する。
【0133】
本発明は、さらに、少なくとも1種の本発明による化合物を、通常、1種またはそれ以上の、不活性、非毒性の医薬的に適する補助剤と組み合わせて含む医薬、および、上記の目的でのそれらの使用を提供する。
【0134】
本発明による化合物は、全身的および/または局所的作用を有し得る。この目的で、それらは、適する方法で、例えば、経口で、非経腸で、肺に、鼻腔に、舌下に、舌に、頬側に、直腸に、皮膚に、経皮で、結膜もしくは耳の経路で、またはインプラントもしくはステントとして、投与できる。
本発明による化合物を、これらの投与経路に適する投与形で投与できる。
【0135】
経口投与に適するのは、先行技術に準じて機能し、本発明による化合物を迅速に、かつ/または、改変された方法で送達し、本発明の化合物を結晶形および/または無定形および/または溶解形で含有するものであり、例えば、錠剤(非被覆および被覆錠剤、例えば、胃液耐性であるか、または、不溶であるかもしくは遅延して溶解し、本発明の化合物の放出を制御する被覆を有する錠剤)、口中で迅速に崩壊する錠剤、またはフィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、粉末剤、乳剤、懸濁剤、エアゾル剤または液剤である。
【0136】
非経腸投与は、吸収段階を回避して(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内に)、または吸収を含めて(例えば、吸入、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内)、行うことができる。非経腸投与に適する投与形は、とりわけ、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤または滅菌粉末剤形態の注射および点滴用製剤である。
【0137】
他の投与経路に適するのは、例えば、吸入用医薬形態(とりわけ、粉末吸入器、噴霧器エアロゾル)、点鼻薬、液、スプレー;舌、舌下または頬側投与用の錠剤、フィルム/オブラートまたはカプセル剤、坐剤、耳および眼用製剤、膣用カプセル剤、水性懸濁剤(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、パッチ)、ミルク、ペースト、フォーム、散布用粉末剤(dusting powder)、インプラントまたはステントである。
経口または非経腸投与、特に経口および静脈内投与並びに吸入による投与が好ましい。
【0138】
本発明による化合物は、上述の投与形に変換できる。これは、不活性、非毒性、医薬的に適する補助剤と混合することにより、それ自体既知の方法で行うことができる。これらの補助剤には、とりわけ、担体(例えば結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例えばアルブミン)、安定化剤(例えば抗酸化剤、例えばアスコルビン酸など)、着色料(例えば無機色素、例えば酸化鉄など)および香味および/または臭気の隠蔽剤が含まれる。
【0139】
一般に、非経腸投与で約0.001ないし1mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし0.5mg/体重kgの量を投与するのが、有効な結果を達成するために有利であると明らかになった。経口投与では、投与量は、約0.01ないし100mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし20mg/体重kg、ことさら特に好ましくは約0.1ないし10mg/体重kgである。
【0140】
それにも拘わらず、必要に応じて、特に、体重、投与経路、有効成分に対する個体の応答、製剤のタイプおよび投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から逸脱することが必要であり得る。従って、上述の最小量より少なくても十分な場合があり得、一方上述の上限を超えなければならない場合もある。比較的大量に投与する場合、これらを1日に亘る複数の個別用量に分配するのが望ましいことがある。
【0141】
下記の例示的実施態様は、本発明を例示説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
以下の試験および実施例における百分率のデータは、断りの無い限り、重量パーセントである;部は、重量部である。液体/液体溶液の溶媒比、希釈比および濃度のデータは、各場合で体積に基づく。
【実施例】
【0142】
A. 実施例
略語および頭字語:
【表1】

【0143】
HPLC、LC−MSおよびGC−MSの方法:
方法1(LC−MS):
MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:Waters Alliance 2795;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%濃度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%濃度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0144】
方法2(LC−MS):
MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:HP 1100 Series; UV DAD;カラム:Phenomenex Gemini 3μ 30 mm x 3.0 mm;移動相A:水1l+50%濃度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+0.5ml50%濃度ギ酸;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0145】
方法3(LC−MS):
装置:HPLC Agilent Series 1100を備えたMicromass Quattro LCZ;カラム:Phenomenex Onyx Monolithic C18, 100 mm x 3 mm;移動相A:水1l+50%濃度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%濃度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2分65%A→4.5分5%A→6分5%A;流速:2ml/分;オーブン:40℃;UV検出:208−400nm。
【0146】
方法4(LC−MS):
MS装置タイプ:Waters ZQ;HPLC装置タイプ:Waters Alliance 2795;カラム:Phenomenex Onyx Monolithic C18, 100 mm x 3 mm;移動相A:水1l+50%濃度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%濃度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2分65%A→4.5分5%A→6分5%A;流速:2ml/分;オーブン:40℃;UV検出:210nm。
【0147】
方法5(LC−MS):
装置:Waters UPLC Acquityを備えたMicromass QuattroPremier;カラム:Thermo Hypersil GOLD 1.9μ 50 mm x 1 mm;移動相A:水1l+50%濃度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%濃度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→0.1分90%A→1.5分10%A→2.2分10%A;流速:0.33ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0148】
方法6(LC−MS):
MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:Waters Alliance 2795;カラム:Merck Chromolith SpeedROD RP-18e 100 mm x 4.6 mm;移動相A:水+50%濃度ギ酸500μl/l;移動相B:アセトニトリル+50%濃度ギ酸500μl/l;グラジエント:0.0分10%B→7.0分95%B→9.0分95%B;流速:0.0分1.0ml/分→7.0分2.0ml/分→9.0分2.0ml/分;オーブン:35℃;UV検出:210nm。
【0149】
方法7(LC−MS):
MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:Waters Alliance 2795;カラム:Phenomenex Synergi 2.5μ MAX-RP 100A Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%濃度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%濃度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→0.1分90%A→3.0分5%A→4.0分5%A→4.01分90%A;流速:2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0150】
方法8(分析HPLC):
装置:DAD 検出を備えたHP 1100;カラム:Kromasil 100 RP-18, 60 mm x 2.1 mm, 3.5 μm;移動相A:HClO(70%濃度)5ml/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→9分90%B→9.2分2%B→10分2%B;流速:0.75ml/分;カラム温度:30℃;UV検出:210nm。
【0151】
方法9(分析HPLC):
装置:DAD 検出を備えたHP 1100;カラム:Kromasil 100 RP-18, 60 mm x 2.1 mm, 3.5 μm;移動相A:HClO(70%濃度)5ml/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→6.5分90%B→6.7分2%B→7.5分2%B;流速:0.75ml/分;カラム温度:30℃;UV検出:210nm。
【0152】
方法10(分取HPLC):
装置:Abimed Gilson Pump 305/306, Manometric Module 806;カラム:GromSil C18, 250 mm x 30 mm, 10 μm;移動相A:水+0.1%トリフルオロ酢酸、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0−3分10%B、勾配3.01−34分95%B、34.01−38分95%B、38.01−40分10%B;流速:50ml/分;UV検出:210nm。
【0153】
方法11(分取HPLC):
装置:Abimed Gilson Pump 305/306, Manometric Module 806;カラム:GromSil 120 ODS-4HE, 250 mm x 40 mm, 10 μm;移動相A:水+0.1%トリフルオロ酢酸、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0−3分30%B、勾配3.01−40分95%B、40.01−50分95%B、50.01−55分30%B;流速:50ml/分;UV検出:210nm。
【0154】
方法12(分取HPLC):
装置:Abimed Gilson Syringe Pump 402, Gilson 231XL Autosampler, Gilson Fraction Collector; software: Gilson UniPoint 2.10;カラム:Kromasil C18, 125 mm x 20 mm, 5 μm, 100 Å;移動相A:水+0.01%ギ酸、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分10%B→2分10%B→9分90%B→12分90%B→12.1分10%B→15分10%B;流速:0.35ml/分;UV検出:254nm。
【0155】
方法13(分取HPLC):
カラム:Gemini C 18, 5 μm, 250 mm x 21.2 mm (Phenomenexより);移動相:水/アセトニトリル2:3(v/v);流速:25ml/分;温度:30℃;UV検出:210nm。
【0156】
方法14(分取HPLC):
カラム:XBridge C 18, 5 μm OBD, 150 mm x 19 mm (Watersより);移動相:0.1%ジエチルアミンを含む水/アセトニトリル3:2(v/v);流速:25ml/分;温度:30℃;UV検出:235nm。
【0157】
方法15(分取HPLC):
カラム:Sunfire C18 OBD, 5 μm, 250 mm x 20 mm;移動相:0.2%トリフルオロ酢酸を含む水/アセトニトリル6:4(v/v);流速:25ml/分;温度:24℃;UV検出:210nm。
【0158】
方法16(GC−MS):
装置:Micromass GCT, GC 6890;カラム:Restek RTX-35, 15 m x 200 μm x 0.33 μm; 一定流速のヘリウム:0.88ml/分;オーブン:70℃;入口:250℃;グラジエント:70℃、30℃/分→310℃(3分間維持)。
【0159】
出発物質および中間体:
実施例1A
4−メチル−3−(メチルスルファニル)ベンゾニトリル
【化19】

方法A:
この反応は、アルゴン下で実施した。3−フルオロ−4−メチルベンゾニトリル(3000mg、22.2mmol)およびナトリウムメタンチオラート(1572mg、20.2mmol)を、先ず、DMF(30ml)に加え、炭酸カリウム(6973mg、50.5mmol)を添加し、混合物を還流下で終夜撹拌した。次いで、反応を濃縮し、残渣を塩化メチレン/メタノール(10:1)に懸濁し、不溶性の炭酸カリウムを濾過した。濾液を再濃縮し、残渣をシリカゲルでクロマトグラフィーした(移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル10:1)。これにより、所望の化合物2.51g(理論値の64%)を得た。
【0160】
方法B:
この反応は、次亜塩素酸ナトリウム溶液で満たしたウォッシャーを利用して実施した。3−フルオロ−4−メチルベンゾニトリル(200g、1479.9mmol)を、先ず、DMF(1.5l)に加え、40℃に温め、ナトリウムメタンチオラート(全部で126.8g、1627.9mmol)を少しずつ(約25gずつ)添加した。添加中に、温度は100℃に上昇した。反応混合物を、先ず175℃の浴温度で1.5時間、次いで室温で終夜撹拌した。次いで、反応混合物を水(7.5l)に注ぎ、酢酸エチル(各1875ml)で2回抽出した。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(1875ml)で洗浄し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣をシリカゲルでクロマトグラフィーした(移動相:石油エーテル/酢酸エチル95:5、約30l)。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、高真空下で乾燥させ、所望の化合物172g(理論値の71%)を得た。
GC-MS (方法 16): Rt = 5.25 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 163.0 (100) [M]+
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 2.30 (s, 3H), 2.54 (s, 3H), 7.38 (d, 1H), 7.52 (dd, 1H), 7.58 (br. s, 1H).
【0161】
実施例2A
4−メチル−3−(メチルスルホニル)ベンゾニトリル
【化20】

方法A:
4−メチル−3−(メチルスルファニル)ベンゾニトリル(14050mg、80.1mmol;実施例1A)を、ジクロロメタン(700ml)に溶解し、0℃に冷却し、3−クロロ過安息香酸(50923mg、206.6mmol)をゆっくりと添加した。次いで、混合物を先ず0℃で40分間、次いで室温で終夜撹拌した。沈殿した3−クロロ安息香酸を濾過し、濾液を1N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル1:1、1:2)により精製した。これにより、所望の化合物13.65g(理論値の81%)を得た。
【0162】
方法B:
3−クロロ過安息香酸(2501g、10144.4mmol)を、ジクロロメタン27.2lに溶解し、10℃に冷却し、4−メチル−3−(メチルスルファニル)ベンゾニトリル(552g、3381.5mmol;実施例1A)を少しずつ添加した。添加終了後、混合物を室温で5時間撹拌した。沈殿した3−クロロ安息香酸を吸引濾過し、固体をジクロロメタン(3l)で洗浄した。合わせた濾液を1N水酸化ナトリウム水溶液(15l)で撹拌し、混合物を濾過し、有機相を分離した。後者をもう一度1N水酸化ナトリウム水溶液(15l)と撹拌し、水酸化ナトリウム溶液から分離し、乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残渣をジエチルエーテル(4l)に懸濁し、10分間撹拌し、次いで濾過した。固体を少量のジエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥させた。これにより、所望の化合物613g(理論値の93%)を得た。
GC-MS (方法 16): Rt = 6.59 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 195.0 (100) [M]+
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 2.30 (s, 3H), 2.54 (s, 3H), 7.38 (d, 1H), 7.52 (dd, 1H), 7.58 (br. s, 1H).
【0163】
実施例3A
4−[2−(ジメチルアミノ)エテニル]−3−(メチルスルホニル)ベンゾニトリル
【化21】

【0164】
方法A:
この反応は、アルゴン下で実施した。140℃で、4−メチル−3−(メチルスルホニル)ベンゾニトリル(13.0g、66.6mmol;実施例2A)および1,1−ジメトキシ−N,N−ジメチルメタンアミン(10.315g、86.6mmol)を、DMF(200ml)中で14時間撹拌した。次いで、反応を完了させるために、さらに1,1−ジメトキシ−N,N−ジメチルメタンアミン(3.967g、33.3mmol)を添加し、混合物を140℃でさらに24時間撹拌した。次いで、DMFをロータリーエバポレーターで除去し、残渣をさらに精製せずに次の段階で反応させた。
【0165】
方法B:
反応をアルゴン下で実施した。4−メチル−3−(メチルスルホニル)ベンゾニトリル(612g、3134.6mmol;実施例2A)を、先ず、DMF(6.12l)に加え、1,1−ジメトキシ−N,N−ジメチルメタンアミン(859g、7209.5mmol)を添加し、混合物を140℃で7時間撹拌した。次いで、反応混合物を10%濃度塩化ナトリウム溶液35lに注ぎ、酢酸エチル各10lで2回抽出した。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(5l)で洗浄し、乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣を高真空下で終夜乾燥させた。これにより、所望の化合物1098g(理論値の98%)を得た。
GC-MS (方法 16): Rt = 8.95 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 250.0 (10) [M]+.
【0166】
実施例4A
4−ホルミル−3−(メチルスルホニル)ベンゾニトリル
【化22】

方法A:
4−[2−(ジメチルアミノ)エテニル]−3−(メチルスルホニル)ベンゾニトリル(16666mg、66.6mmol;実施例3A)を、先ず、水/THF(1:1、500ml)に加え、過ヨウ素酸ナトリウム(42722mg、199.7mmol)を添加し、混合物を室温で終夜撹拌した。沈殿した固体を濾過し、酢酸エチルで洗浄した。合わせた有機相を飽和重炭酸ナトリウム溶液、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル1:1)により精製した。これにより、所望の化合物4.6g(理論値の33%)を得た。
【0167】
方法B:
4−[2−(ジメチルアミノ)エテニル]−3−(メチルスルホニル)ベンゾニトリル(1098g、3070.5mmol;実施例3A)を、先ず、THF/水(1:1、13.8l)に加え、過ヨウ素酸ナトリウム(1970g、9211.4mmol)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。沈殿した固体を吸引濾過し、酢酸エチル(17l)で洗浄した。水(17l)を合わせた濾液に添加し、抽出後、水相を除去した。有機相を飽和重炭酸ナトリウム溶液(8.5l)、飽和塩化ナトリウム溶液(8.5l)で洗浄し、次いで、乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相:ジクロロメタン/酢酸エチル9:1、60l)により精製した。生成物画分を濃縮し、残渣を石油エーテルに懸濁し、次いで吸引濾過し、固体を高真空下で終夜乾燥させた。これにより、所望の化合物436g(理論値の65%)を得た。
GC-MS (方法 16): Rt = 6.89 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 191.1 (15) [M-18]+, 161.0 (100)
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 3.57 (s, 3H), 8.10 (d, 1H), 8.39 (dd, 1H), 8.45 (d, 1H), 10.63 (s, 1H).
【0168】
実施例5A
エチル(4R)−4−(4−シアノフェニル)−6−メチル−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化23】

表題化合物を、WO2008/003412(実施例1)に記載の通りに製造した。
【0169】
実施例6A
エチル(4R)−6−(ブロモメチル)−4−(4−シアノフェニル)−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化24】

実施例5Aに記載の化合物20g(46.576mmol)を、クロロホルム350mlに溶解し、臭素8.2g(51.234mmol)を0℃で添加した。氷浴を除去し、混合物を1時間撹拌した。次いで、混合物を10%濃度チオ硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、有機相を除去し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣をジエチルエーテルでトリチュレートした。固体を吸引濾過し、減圧下で乾燥させた。これにより、標的化合物21.1g(理論値の87%)を得た。
LC-MS (方法 1): Rt = 2.41 分; MS (ESIpos): m/z = 510 [M+H]+.
このラセミ化合物のH−NMRデータについて、WO2004/024700(実施例19)参照。
【0170】
実施例7A
[(6R)−6−(4−シアノフェニル)−5−(エトキシカルボニル)−4−メチル−2−オキソ−3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−3,6−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル]酢酸
【化25】

表題化合物を、WO2008/003412(実施例13)に記載の通りに製造した。
【0171】
実施例8A
エチル(4R)−3−(2−アミノ−2−オキソエチル)−4−(4−シアノフェニル)−6−メチル−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化26】

表題化合物を、WO2008/003412(実施例22)に記載の通りに製造した。
【0172】
実施例9A
エチル(4R)−4−(4−シアノフェニル)−3−[2−(ジメチルアミノ)−2−オキソエチル]−6−メチル−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化27】

表題化合物を、WO2008/003412(実施例30)に記載の通りに製造した。
【0173】
実施例10A
エチル(4R)−4−(4−シアノフェニル)−6−メチル−2−オキソ−3−(2−オキソ−2−ピロリジン−1−イルエチル)−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化28】

実施例7Aに記載の化合物500mg(1.026mmol)を、DMF1.5mlに溶解し、ピロリジン161mg(2.257mmol)、DMAP251mg(2.052mmol)、HOBt305mg(2.257mmol)およびEDC393mg(2.052mmol)を連続的に添加した。混合物を室温で終夜撹拌し、次いで、さらに後処理せずに、分取HPLC(方法10)により直接精製した。これにより、標的化合物239mg(理論値の41%)を得た。
LC-MS (方法 2): Rt = 2.67 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 541.2 (100) [M+H]+.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 1.12 (t, 3H), 1.74 (m, 2H), 1.84 (m, 2H), 2.04 (s, 3H), 3.29 (m, 4H), 3.58 (d, 1H), 4.05 (m, 2H), 4.35 (d, 1H), 5.53 (s, 1H), 7.61 (d, 1H), 7.67 (d, 2H), 7.72 (t, 2H), 7.81 (d, 1H), 7.88 (d, 2H).
【0174】
実施例10Aの方法と同様に、下表の化合物を、実施例7Aで製造した出発物質および2−(メチルアミノ)エタノールから製造した:
【表2】

【0175】
実施例12A
エチル(4R)−3−(2−アミノ−2−オキソエチル)−6−(ブロモメチル)−4−(4−シアノフェニル)−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化29】

実施例8Aの化合物600mg(1.233mmol)を、クロロホルム15mlに溶解し、臭素197mg(1.233mmol)を0℃で添加した。氷浴を除去し、混合物を1時間撹拌した。次いで、混合物を10%濃度チオ硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣を分取HPLC(方法11)により精製した。これにより、標的化合物479mg(理論値の69%)を得た。
LC-MS (方法 4): Rt = 3.43 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 567.1 (100) [M+H]+.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 1.16 (t, 3H), 3.41 (d, 1H), 4.11 (m, 3H), 4.27 (br. s, 1H), 4.46 (br. s, 1H), 5.58 (s, 1H), 7.13 (s, 1H), 7.43 (s, 1H), 7.66 (d, 2H), 7.75 (d, 2H), 7.81 (s, 1H), 7.87 (d, 1H), 7.92 (d, 2H).
【0176】
実施例12Aの方法と同様に、上述の出発物質を使用して、下表の化合物を製造した:
【表3】

【0177】
実施例16A
エチル(4R)−4−(4−シアノフェニル)−3−(2−メトキシ−2−オキソエチル)−6−メチル−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化30】

実施例5Aの化合物500mg(1.164mmol)を、メチルブロモアセテート220mg(1.397mmol)および炭酸カリウム322mg(2.329mmol)と共に、DMF20ml中、60℃で終夜撹拌した。次いで、固体を濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣をジクロロメタンに溶解し、この溶液を水で3回洗浄した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーによりシリカゲルで精製した(移動相トルエン/酢酸エチル3:1)。これにより、所望の生成物419mg(理論値の72%)を得た。
LC-MS (方法 4): Rt = 3.76 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 502.1 (100) [M+H]+; MS (ESIneg): m/z (%) = 500.2 (100) [M-H]-.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 7.89 (d, 2H), 7.83 (d, 1H), 7.79 (s, 1H), 7.74 (t, 2H), 7.70 (s, 1H), 7.67 (d, 1H), 5.64 (s, 1H), 4.19 (d, 1H), 4.05 (m, 2H), 3.93 (d, 1H), 3.56 (s, 3H), 2.07 (s, 3H), 1.12 (t, 3H).
【0178】
実施例17A
エチル(4R)−6−(ブロモメチル)−4−(4−シアノフェニル)−3−(2−メトキシ−2−オキソエチル)−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化31】

実施例16Aに記載の化合物100mg(0.199mmol)を、クロロホルム2mlに溶解し、臭素35mg(0.219mmol)を0℃で添加した。30分後、氷浴を除去し、混合物を終夜撹拌した。次いで、混合物を10%濃度チオ硫酸ナトリウム溶液で3回洗浄した。合わせた水相をジクロロメタンで再抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を分取HPLC(方法10)により精製し、標的化合物65mg(理論値の54%)を得た。
LC-MS (方法 2): Rt = 2.83 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 582.0 (100) [M+H]+.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 7.91 (d, 2H), 7.88 (d, 1H), 7.79 (br. s, 1H), 7.78-7.71 (m, 2H), 7.69 (d, 2H), 5.69 (s, 1H), 4.60 (br. d, 1H), 4.19 (d, 1H), 4.17-4.09 (m, 3H), 4.02 (d, 1H), 3.54 (s, 3H), 1.15 (t, 3H).
【0179】
実施例18A
(rac)−エチル4−(4−シアノ−2−(メチルスルホニル)フェニル)−6−メチル−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化32】

反応をアルゴン下で実施した。リン酸トリエチル(4.18g、22.9mmol)および五酸化二リン(2.17g、15.3mmol)を、50℃で終夜撹拌した。次いで、混合物をメチルtert−ブチルエーテル(60ml)で希釈し、4−ホルミル−3−(メチルスルホニル)ベンゾニトリル(4.00g、19.1mmol;実施例4A)、1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ウレア(3.90g、19.1mmol)およびエチルアセトアセテート(3.73g、28.7mmol)を添加した。混合物を還流で終夜撹拌した。形成された沈殿を吸引濾過し、ジエチルエーテル(300ml)で洗浄した。反応が完了しなかったので、さらなるリン酸トリエチル(5.36g、29.4mmol)および五酸化二リン(2.71g、19.1mmol)を50℃で終夜撹拌し、次いで、事前に単離した固体およびメチルtert−ブチルエーテル(25ml)と共に、還流下でさらに一晩撹拌した。形成された沈殿をもう一度吸引濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。これにより、標的化合物5.93g(理論値の61%)を得た。
HPLC (方法 8): Rt = 4.56 分; MS (DCI/NH3): m/z = 508.1 [M+H]+, 525 [M+NH4]+
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 0.94 (t, 3H), 2.13 (s, 3H), 3.50 (s, 3H), 3.89-4.02 (q, 2H), 6.41 (s, 1H), 7.25 (s, 1H), 7.68-7.90 (m, 4H), 8.09 (d, 1H), 8.26 (d, 1H), 8.39 (s, 1H).
【0180】
実施例19A
(rac)−エチル6−(ブロモメチル)−4−[4−シアノ−2−(メチルスルホニル)フェニル]−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化33】

実施例18A(3.00g、5.62mmol)に記載の化合物を、クロロホルム(50ml)に溶解し、臭素(987mg、6.18mmol)を0℃で添加した。氷浴を除去し、混合物を1時間撹拌した。次いで、混合物を10%濃度チオ硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣をジエチルエーテルでトリチュレートした。固体を吸引濾過し、減圧下で乾燥させた。これにより、標的化合物2.97g(理論値の90%)を得た。
HPLC (方法 8): Rt = 4.73 分; MS (DCI/NH3): m/z = 586, 588 [M+H]+, 603, 605 [M+NH4]+
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 0.97 (t, 3H), 3.50 (s, 3H), 3.96-4.07 (q, 2H), 4.13-4.24 (d, 1H), 4.65-4.75 (d, 1H), 6.48 (d, 1H), 7.46 (d, 1H), 7.72-8.12 (m, 5H), 8.31 (d, 1H), 8.42 (s, 1H).
【0181】
実施例20A
(rac)−エチル6−メチル−4−[4−シアノ−2−(トリフルオロメチル)フェニル]−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化34】

この反応は、アルゴン下で実施した。4−ホルミル−3−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(996mg、5.0mmol;製造には、WO98/37058参照)、1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ウレア(1.02g、5.0mmol)およびエチルアセトアセテート(651mg、5.0mmol)を、THF(25ml)中のポリリン酸エチル(2.0g;リン酸トリエチルおよび五酸化二リンから、実施例18Aの方法と同様に製造)の溶液に連続的に添加した。混合物を還流下で19時間撹拌し、次いで濃縮した。酢酸エチル(150ml)を残渣に添加し、混合物を水(50ml)、飽和重炭酸ナトリウム溶液(50ml)および飽和塩化ナトリウム溶液(50ml)で連続的に洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相:シクロヘキサン→シクロヘキサン/酢酸エチル2:1)により精製した。これにより、標的生成物1.55g(理論値の62%)を得た。
LC-MS (方法 2): Rt = 2.81 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 498 (100) [M+H]+; MS (ESIneg): m/z (%) = 453.0 (100), 469.2 (80) [M-H]-.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 0.85 (t, 3H), 2.10 (s, 3H), 3.90 (q, 2H), 5.75 (s, 1H), 7.70-7.90 (m, 4H), 8.00-8.15 (m, 2H), 8.20 (d, 1H), 8.30 (s, 1H).
【0182】
実施例21A
(rac)−エチル6−(ブロモメチル)−4−[4−シアノ−2−(トリフルオロメチル)フェニル]−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化35】

実施例20Aに記載の化合物(497mg、1.0mmol)を、クロロホルム(10ml)に溶解し、臭素(176mg、1.10mmol)を0℃で添加した。氷浴を除去し、混合物を室温で1.5時間撹拌した。次いで、ジクロロメタン(100ml)を添加し、反応混合物を10%濃度チオ硫酸ナトリウム水溶液(70ml)および濃塩化ナトリウム水溶液(50ml)で連続的に洗浄した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。これにより、標的化合物735mg(定量的)を得、これをさらに後処理せずにさらに反応させた。
LC-MS (方法 3): Rt = 4.08 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 576 (40) [M+H]+.
【0183】
実施例22A
N−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ウレア
【化36】

4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)アニリン2500mg(13.957mmol)を、1N塩酸15mlに溶解し、シアン酸カリウム1132mg(13.957mmol)を添加した。懸濁液を室温で終夜撹拌し、次いで、澄んだ二相溶液が形成されるように、酢酸エチルで希釈した。有機相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、次いで、粗生成物をシリカゲルでクロマトグラフィーした(移動相:ジクロロメタン/メタノール80:1、次いで10:1)。これにより、表題化合物2180mg(理論値の70%)を得た。
LC-MS (方法 2): Rt = 1.82 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 223.0 (100) [M+H]+.
【0184】
実施例23A
エチル4−(4−シアノフェニル)−1−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−6−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化37】

この反応は、アルゴン下で実施した。連続的に、4−ホルミルベンゾニトリル(656mg、5.0mmol)、1−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ウレア(1.11g、5.0mmol)およびエチルアセトアセテート(651mg、5.0mmol)を、THF(25ml)中のポリリン酸エチル(2.0g;リン酸トリエチルおよび五酸化二リンから、実施例18Aの方法と同様に製造)の溶液に添加した。混合物を還流下で19時間撹拌し、次いで濃縮した。酢酸エチル(150ml)を残渣に添加し、混合物を水(50ml)、飽和重炭酸ナトリウム溶液(50ml)および飽和塩化ナトリウム溶液(50ml)で連続的に洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相:シクロヘキサン→シクロヘキサン/酢酸エチル2:3)により精製した。これにより、標的生成物1.40g(理論値の63%)を得た。
LC-MS (方法 1): Rt = 2.42 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 448.2 (100) [M+H]+; MS (ESIneg): m/z (%) = 446.2 (100) [M-H]-.
【0185】
実施例24A
エチル4−(4−シアノフェニル)−1−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−6−(ブロモメチル)−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化38】

エチル4−(4−シアノフェニル)−1−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−6−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(447mg、1.0mmol)を、クロロホルム(10ml)に溶解し、臭素(176mg、1.10mmol)を0℃で添加した。氷浴を除去し、混合物を室温で0.5時間撹拌した。次いで、反応混合物をクロロホルム(20ml)で希釈し、10%濃度チオ硫酸ナトリウム水溶液(10ml)、濃塩化ナトリウム水溶液(10ml)で連続的に洗浄した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。これにより、標的化合物570mg(定量的)を得、さらに精製せずにさらに反応させた。
LC-MS (方法 2): Rt = 2.79 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 526.0 (100) [M+H]+.
【0186】
例示的実施態様:
実施例1
4−{(4R)−7−メチル−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5d]ピリダジン−4−イル}ベンゾニトリル
【化39】

エチル(4R)−6−(ブロモメチル)−4−(4−シアノフェニル)−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(実施例6A)101g(198.7mmol)を、先ず、ジオキサン2400mlに加えた。メチルヒドラジン27.46g(596.1mmol)を溶液に滴下して添加し、次いで、反応混合物を沸点で3時間撹拌した。次いで、混合物を濃縮し、残渣をジクロロメタンに溶解し、水で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。残った残渣をシリカゲル(移動相:ジクロロメタン/メタノール95:5)でクロマトグラフィーした。生成物画分の濃縮後に得られた固体をジエチルエーテルでトリチュレートし、吸引濾過し、次いで、50℃で、減圧下で、4日間乾燥させた。これにより、表題化合物56.8g(理論値の66%)を得た。
LC-MS (方法 2): Rt = 1.99 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 428.1 (100) [M+H]+; MS (ESIneg): m/z (%) = 426.2 (100) [M-H]-.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 2.36 (s, 3H), 3.06-3.14 (d, 1H), 3.60-3.69 (d, 1H), 5.42 (d, 1H), 7.64-7.74 (m, 4H), 7.78-7.86 (d, 2H), 7.88-7.90 (d, 2H), 8.30 (d, 1H), 8.86 (s, 1H).
【0187】
実施例2
(rac)−4−{7−メチル−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5d]ピリダジン−4−イル}−3−(メチルスルホニル)ベンゾニトリル
【化40】

エチル6−(ブロモメチル)−4−[4−シアノ−2−(メチルスルホニル)フェニル]−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(150mg、0.256mmol;実施例19A)を、先ず、ジオキサン(3.5ml)に加えた。メチルヒドラジン(35.4mg、0.767mmol)を反応混合物に滴下して添加し、次いで、混合物を沸点で3時間撹拌した。次いで、反応混合物を分取HPLC(方法12)により直接分離した。これにより、標的化合物55mg(理論値の39%)を得た。
HPLC (方法 8): Rt = 3.95 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 505.9 (100) [M+H]+
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 2.52 (s, 3H), 3.23-3.29 (d, 1H), 3.55 (s, 3H), 3.55-3.62 (d, 1H), 6.53 (s, 1H), 7.70-7.95 (m, 5H), 8.19 (d, 1H), 8.26 (d, 1H), 8.31 (s, 1H), 8.93 (s, 1H).
【0188】
実施例3
4−{(4S)−7−メチル−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5d]ピリダジン−4−イル}−3−(メチルスルホニル)ベンゾニトリル
【化41】

(rac)−4−{7−メチル−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−4−イル}−3−(メチルスルホニル)ベンゾニトリル(実施例2;55mg)を、キラル相のHPLCクロマトグラフィー[サンプル調製:サンプルをTHF/酢酸エチル1:10(22ml)に溶解;注入量:11ml;カラム:セレクターのポリ(N−メタクリロイル−L−ロイシン−d−メンチルアミド)をベースとするキラルシリカゲル相、450mmx30mm;移動相:酢酸エチル;流速:50ml/分;温度:25℃;UV検出:260nm]により、エナンチオマーに分離した。これにより、4S−エナンチオマー16mgを無色無不定形固体の形態で得た。
=7.84分;ee=99.0%[カラム:セレクターのポリ(N−メタクリロイル−L−ロイシン−D−メンチルアミド)をベースとするキラルシリカゲル相、250mmx4.6mm;移動相:酢酸エチル;流速:2ml/分;温度:25℃;UV検出:265nm]
HPLC (方法 9): Rt = 3.86 分; MS (DCI/NH3): m/z = 506.1 [M+H]+
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 2.52 (s, 3H), 3.22-3.29 (d, 1H), 3.55 (s, 3H), 3.56-3.62 (d, 1H), 6.53 (s, 1H), 7.68-7.97 (m, 5H), 8.19 (d, 1H), 8.26 (d, 1H), 8.31 (s, 1H), 8.93 (s, 1H).
【0189】
実施例4
(rac)−4−{7−メチル−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5d]ピリダジン−4−イル}−3−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル
【化42】

アルゴン保護気体の雰囲気下、エチル6−(ブロモメチル)−4−[4−シアノ−2−(トリフルオロメチル)フェニル]−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(576mg、1mmol;実施例21A)を、先ず、ジオキサン(20ml)に加えた。メチルヒドラジン(128mg、3mmol)を反応混合物に滴下して添加し、次いで、混合物を沸点で8時間撹拌した(浴温度120℃)。次いで、反応混合物を濃縮し、残渣を分取HPLC(カラム:Gromsil C18 10 μm;移動相:アセトニトリル/水+0.1%TFA10:90→90:10)により精製した。これにより、標的化合物を固体として得、これをアセトニトリル/水から再沈殿させた(収量:205mg、理論値の41%)。
LC-MS (方法 4): Rt = 2.87 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 496.2 (100) [M+H]+; MS (ESIneg): m/z (%) = 451.2 (100), 494 (20) [M-H]-.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 2.55 (s, 3H), 3.25 (d, 1H), 3.55 (d, 1H), 5.70 (s, 1H), 7.70-7.80 (m, 3H), 7.90 (s, 1H), 8.10-8.30 (m, 4H), 8.75 (s, 1H).
【0190】
実施例5
4−{(4R)−7−メチル−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5d]ピリダジン−4−イル}−3−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル
【化43】

4−{(rac)−7−メチル−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−4−イル}−3−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(実施例4;180mg)を、キラル相のHPLCクロマトグラフィー[カラム:Daicel Chiralpak IA, 5 μm, 250 mm x 20 mm;サンプル調製:サンプルを、メタノール/MTBE1:1(20ml)に溶解;注入量:1ml;移動相:MTBE/メタノール95:5;流速:15ml/分;温度:30℃;UV検出:220nm]により、エナンチオマーに分離した。これにより、4R−エナンチオマー75mg(理論値の83%)を、固体の形態で得た。エナンチオマー過剰率(ee値)を、クロマトグラフィーで測定した[カラム:Daicel Chiralpak IA, 5 μm, 250 mm x 4.6 mm;移動相:メタノール/MTBE1:9;流速:1ml/分;温度:25℃;UV検出:220nm;R=6.17分;ee=99.5%]。
LC-MS (方法 3): Rt = 3.06 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 496.2 (100) [M+H]+; MS (ESIneg): m/z (%) = 451.1 (100), 494 (20) [M-H]-.
【0191】
実施例6
4−{(4R)−2,5−ジオキソ−7−フェニル−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5d]ピリダジン−4−イル}ベンゾニトリル
【化44】

エチル(4R)−6−(ブロモメチル)−4−(4−シアノフェニル)−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(実施例6A)80mg(0.16mmol)を、ジオキサン2mlに溶解し、フェニルヒドラジン51mg(0.47mmol)を添加し、混合物を120℃で3時間撹拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残った残渣を分取HPLC(方法10)により精製した。生成物画分を合わせ、濃縮し、残った固体を減圧下で乾燥させた(収量:24.0mg、理論値の31%)。
HPLC (方法 8): Rt = 4.31 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 490 (100) [M+H]+
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 3.92-4.02 (d, 1H), 4.22-4.33 (d, 1H), 5.40-5.45 (d, 1H), 6.61-6.70 (d, 2H), 6.70-6.91 (t, 1H), 7.12-7.19 (t, 2H), 7.21-7.27 (d, 2H), 7.43-7.57 (m, 1H), 7.57-7.64 (br. s, 1H), 7.64-7.70 (d, 2H), 7.72-7.80 (t, 1H), 7.85-7.90 (d, 1H), 8.27-8.34 (d, 1H), 9.79 (s, 1H).
【0192】
実施例7
4−{2,5−ジオキソ−7−フェニル−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−4−イル}−3−(メチルスルホニル)ベンゾニトリル
【化45】

エチル6−(ブロモメチル)−4−[4−シアノ−2−(メチルスルホニル)フェニル]−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(150mg、0.256mmol;実施例19A)を、先ず、ジオキサン(3.5ml)に加えた。フェニルヒドラジン(83.0mg、0.767mmol)を反応混合物に滴下して添加し、次いで、混合物を沸点で3時間撹拌した。次いで、反応混合物を分取HPLC(方法12)により直接分離した。これにより、標的化合物9mg(理論値の6%)を得た。
HPLC (方法 8): Rt = 4.38 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 568.0 (100) [M+H]+; MS (ESIneg): m/z (%) = 566.0 (100) [M-H]-
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 3.54 (s, 3H), 4.04-4.11 (d, 1H), 4.23-4.30 (d, 1H), 6.45 (s, 1H), 6.75 (d, 2H), 7.05 (t, 1H), 7.21-7.32 (m, 3H), 7.64-7.91 (m, 6H), 8.27 (d, 1H), 9.88 (s, 1H).
【0193】
実施例8
4−{(4R)−7−(2−フルオロベンジル)−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−4−イル}ベンゾニトリル
【化46】

エチル(4R)−6−(ブロモメチル)−4−(4−シアノフェニル)−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(実施例6A)150mg(0.30mmol)を、ジオキサン3.5mlに溶解した。o−フルオロベンジルヒドラジン124mg(0.89mmol)を添加し、混合物を120℃で終夜撹拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残った残渣を分取HPLC(方法10)により精製した。生成物画分を合わせ、濃縮し、残った固体を減圧下で乾燥させた(収量:35.0mg、理論値の22.7%)。
LC-MS (方法 4): Rt = 3.23 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 522.2 (100) [M+H]+; MS (ESIneg): m/z (%) = 520.2 (100) [M-H]-.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 2.93-3.07 (d, 1H), 3.49-3.62 (d, 1H), 3.71-3.85 (m, 2H), 5.44 (s, 1H), 7.00-7.10 (t, 2H), 7.13-7.22 (m, 1H), 7.23-7.33 (m, 1H), 7.59-7.67 (m, 2H), 7.68-7.76 (m, 3H), 7.80 (br. s, 1H), 7.86-7.95 (d, 2H), 8.28-8.35 (d, 1H), 9.09 (s, 1H).
【0194】
実施例8の方法と同様に、実施例6Aで製造した出発物質および適当な購入できるヒドラジン誘導体を使用して、下表の化合物を製造した:
【表4】

【0195】
【表5】

【0196】
【表6】

【0197】
実施例17
4−{(4R)−7−エチル−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−4−イル}ベンゾニトリル
【化47】

エチル(4R)−6−(ブロモメチル)−4−(4−シアノフェニル)−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(実施例6A)200mg(0.393mmol)を、ジオキサン1mlに溶解し、蓚酸エチルヒドラジン71mg(0.472mmol)を添加し、混合物を120℃で3時間撹拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残った残渣を分取HPLC(方法10)により精製した。生成物画分を合わせ、濃縮し、残った固体を減圧下で乾燥させた(収量:26.0mg、理論値の15%)。
LC-MS (方法 3): Rt = 2.97 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 442.3 (100) [M+H]+.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 9.03 (s, 1H), 8.28 (d, 1H), 7.87 (d, 2H), 7.82 (d, 2H), 7.72 (t, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.65 (d, 2H), 5.42 (br. s, 1H), 3.67 (d, 1H), 3.14 (d, 1H), 2.61 (q, 2H), 0.77 (t, 3H).
【0198】
実施例18
4−[4−シアノ−2−(メチルスルホニル)フェニル]−7−エチル−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−7−イウムトリフルオロアセテート
【化48】

エチル6−(ブロモメチル)−4−[4−シアノ−2−(メチルスルホニル)フェニル]−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(150mg、0.256mmol;実施例19A)を、先ず、ジオキサン(3.5ml)に加えた。蓚酸エチルヒドラジン(115mg、0.767mmol)を反応混合物に添加し、次いで、混合物を沸点で3時間撹拌した。次いで、反応混合物を2回の分取HPLCで直接分離した(先ず方法12に従い、次いで方法15に従う)。これにより、標的化合物18mg(理論値の14%)を得た。
HPLC (方法 9): Rt = 4.04 分; MS (DCI/NH3): m/z (%) = 520.1 (100) [M+H]+.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 0.85 (t, 3H), 2.77 (q, 2H), 3.26-3.34 (d, 1H), 3.55 (s, 3H), 3.57-3.64 (d, 1H), 6.52 (s, 1H), 6.70-7.99 (m, 5H), 8.17 (d, 1H), 8.26 (d, 1H), 8.31 (s, 1H), 9.08 (s, 1H).
【0199】
実施例19
4−(4R)−2,5−ジオキソ−7−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−4−イルベンゾニトリル
【化49】

エチル(4R)−6−(ブロモメチル)−4−(4−シアノフェニル)−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(実施例6A)150mg(0.295mmol)を、ジオキサン3mlに溶解し、[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]ヒドラジン168mg(0.885mmol)を添加し、混合物を120℃で終夜撹拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残った残渣を分取HPLC(方法10)により精製した。生成物含有画分を合わせ、濃縮した。残渣をさらなる分取HPLC(方法13)により再度精製した。生成物画分を濃縮し、標的化合物38mg(理論値の23%)を得た。
LC-MS (方法 2): Rt = 2.59 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 572.1 (100) [M+H]+.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 9.08 (s, 1H), 8.32 (d, 1H), 7.92 (d, 2H), 7.84 (s, 1H), 7.75 (d, 2H), 7.71 (d, 1H), 7.63-7.57 (m, 4H), 7.37 (d, 2H), 5.45 (d, 1H), 3.83 (dd, 2H), 3.53 (d, 1H), 2.97 (d, 1H).
【0200】
実施例20
4−(4R)−7−(シクロプロピルメチル)−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−4−イルベンゾニトリル
【化50】

エチル(4R)−6−(ブロモメチル)−4−(4−シアノフェニル)−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(実施例6A)150mg(0.295mmol)を、ジオキサン2mlに溶解し、(シクロプロピルメチル)ヒドラジン254mg(2.951mmol)を添加し、混合物を120℃で終夜撹拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残った残渣を分取HPLC(方法10)により精製した。生成物含有画分を合わせ、濃縮した。残渣をさらなる分取HPLC(方法14)により再度精製した。生成物画分を濃縮し、標的化合物5mg(理論値の4%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 8.94 (s, 1H), 8.27 (d, 1H), 7.86 (br. d, 3H), 7.81-7.80 (m, 1H), 7.73-7.70 (m, 2H), 7.64 (d, 2H), 5.42 (s, 1H), 3.74 (d, 1H), 3.29 (d, 1H), 2.46 (dd, 1H), 2.34 (dd, 1H), 0.51 (m, 1H), 0.25 (m, 1H), 0.16 (m, 1H), -0.12 (m, 1H), -0.19 (m, 1H).
【0201】
実施例21
エチル[(4R)−4−(4−シアノフェニル)−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−2,3,4,5,6,8−ヘキサヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−7(1H)−イル]アセテート
【化51】

エチル(4R)−6−(ブロモメチル)−4−(4−シアノフェニル)−2−オキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(実施例6A)300mg(0.59mmol)を、ジオキサン5mlに溶解した。メタノールに溶解し、事前に StratoSphere カートリッジ (PL-HCO3 MP SPE, Polymere Laboratoriesより)を通したエチルヒドラジノアセテート塩酸塩456mg(2.95mmol)を添加した。次いで、混合物を還流下で終夜撹拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残った残渣を分取HPLC(方法10)により精製した。生成物画分を合わせ、濃縮し、残った固体を減圧下で乾燥させた(収量:45.0mg、理論値の15%)。
LC-MS (方法 5): Rt = 1.05 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 500.2 (100) [M+H]+; MS (ESIneg): m/z (%) = 498.3 (100) [M-H]-.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 1.05-1.13 (t, 3H), 3.36-3.41 (d, 1H), 3.42-3.47 (s, 1H), 3.55-3.63 (d, 1H), 3.67-3.77 (d, 1H), 3.91-4.05 (m, 2H), 5.42 (s, 1H), 7.62-7.74 (m, 4H), 7.78-7.85 (m, 2H), 7.86-7.92 (d, 2H), 8.27-8.33 (d, 1H), 8.97 (s, 1H).
【0202】
実施例21の方法と同様に、実施例6Aで製造した出発物質および適当なヒドラジン塩酸塩を使用して、下表の化合物を製造した:
【表7】

【0203】
実施例23
2−[(4R)−4−(4−シアノフェニル)−7−メチル−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−3(2H)−イル]−N,N−ジメチルアセトアミド
【化52】

実施例13Aの化合物100mg(0.169mmol)を、ジオキサン2mlに溶解し、メチルヒドラジン23mg(0.506mmol)を添加した。混合物を120℃で2時間撹拌し、次いで濃縮した。残渣をDMSOに取り、分取HPLC(方法10)により精製した。これにより、標的化合物53mg(理論値の61%)を得た。
HPLC (方法 8): Rt = 3.98 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 513.2 (100) [M+H]+
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 2.34 (s, 3H), 2.81 (s, 3H), 2.85 (s, 3H), 3.06 (d, 1H), 3.52 (d, 1H), 3.77 (d, 1H), 4.50 (d, 1H), 5.53 (s, 1H), 7.87 (d, 1H), 7.71 (d, 1H), 7.73 (d, 2H), 7.82 (d, 2H), 7.88 (d, 2H), 8.87 (s, 1H).
【0204】
実施例23の方法と同様に、上述の出発物質および適当なヒドラジン誘導体を使用して、下表の化合物を製造した:
【表8】

【0205】
実施例27
2−[(4R)−4−(4−シアノフェニル)−7−(2−ヒドロキシエチル)−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−3(2H)−イル]アセトアミド
【化53】

実施例12Aの化合物200mg(0.393mmol)を、ジオキサン2mlに溶解し、2−ヒドラジノエタノール32mg(0.425mmol)を添加し、混合物を120℃で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残渣を水と塩化メチレンの混合物に取った。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、殆ど乾燥するまで濃縮した。少量のシリカゲルをこの残渣に添加し、次いで、残っている溶媒を減圧下で除去した。次いで、この粗生成物を2回のシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製した(各場合で、移動相ジクロロメタン/メタノール10:1)。これにより、標的化合物13mg(理論値の7%)を得た。
LC-MS (方法 2): Rt = 1.71 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 515.0 (100) [M+H]+; MS (ESIneg): m/z (%) = 513.2 (100) [M-H]-.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 8.93 (s, 1H), 7.89 (d, 2H), 7.82 (d, 2H), 7.74-7.69 (m, 4H), 7.40 (s, 1H), 7.15 (s, 1H), 5.54 (s, 1H), 4.43 (t, 1H), 4.17 (d, 1H), 3.76 (d, 1H), 3.30-3.21 (m, 4H), 2.71-2.57 (m, 2H).
【0206】
実施例28
メチル[(4R)−4−(4−シアノフェニル)−7−メチル−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−3(2H)−イル]アセテート
【化54】

実施例17Aの化合物65mg(0.112mmol)を、ジオキサン2mlに溶解し、メチルヒドラジン16mg(0.336mmol)を添加した。混合物を120℃で終夜撹拌し、次いで濃縮した。残渣をDMSOに取り、分取HPLC(方法10)により精製した。これにより、標的化合物40mg(理論値の72%)を得た。
LC-MS (方法 4): Rt = 2.96 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 500.3 (100) [M+H]+; MS (ESIneg): m/z (%) = 498.3 (100) [M-H]-.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 8.90 (s, 1H), 7.88 (br. d, 3H), 7.85-7.82 (m, 1H), 7.76-7.72 (m, 4H), 5.66 (s, 1H), 4.19 (d, 1H), 3.82 (d, 1H), 3.78 (d, 1H), 3.55 (s, 3H), 3.08 (d, 1H), 2.36 (s, 3H).
【0207】
実施例29
4−{(4R)−7−(3−メチルブチル)−2,5−ジオキソ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−4−イル}ベンゾニトリル
【化55】

実施例6Aの化合物150mg(0.295mmol)を、ジオキサン3mlに溶解し、(3−メチルブチル)ヒドラジン91mg(0.885mmol)を添加した。混合物を120℃で3時間撹拌し、次いで濃縮した。残渣をDMSOに取り、分取HPLC(方法10)により精製した。これにより、標的化合物43mg(理論値の29%)を得た。
LC-MS (方法 4): Rt = 3.31 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 484 (100) [M+H]+.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 9.00 (s, 1H), 8.29 (d, 1H), 7.88-7.64 (m, 8H), 5.45 (d, 1H), 3.70 (d, 1H), 3.07 (d, 1H), 2.57-2.45 (m, 2H), 1.38 (m, 1H), 1.03 (m, 2H), 0.71 (d, 3H), 0.66 (d, 3H).
【0208】
実施例30
(rac)−4−{1−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−メチル−2,5−ジオキソ−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−4−イル}ベンゾニトリル
【化56】

エチル4−(4−シアノフェニル)−1−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−6−(ブロモメチル)−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート527mg(1.0mmol)をジオキサン25mlに溶解し、メチルヒドラジン138mg(3.0mmol;3eq.)を添加した。混合物を120℃で1時間撹拌し、次いで濃縮した。残渣を分取HPLC(カラム: Gromsil C-18 10 μm;移動相:アセトニトリル/水+0.1%TFA10:90→90:10)により直接精製した。これにより、標的化合物270mg(理論値の55%)を得た。
LC-MS (方法 3): Rt = 2.91 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 446.1 (100) [M+H]+; MS (ESIneg): m/z (%) = 401.0 (100), 444.2 (50) [M-H]-.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 2.37 (s, 3H), 3.14-3.18 (d, 1H), 3.65-3.70 (d, 1H), 5.43 (s, 1H), 7.60-7.90 (m, 7H), 8.30 (d, 1H), 8.84 (s, 1H).
【0209】
実施例31
(4R)−4−{1−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−メチル−2,5−ジオキソ−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−4−イル}ベンゾニトリル
【化57】

(rac)−4−{1−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−7−メチル−2,5−ジオキソ−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロピリミド[4,5−d]ピリダジン−4−イル}ベンゾニトリル(250mg)を、キラル相のHPLCクロマトグラフィー[サンプル調製:サンプルをTHF/酢酸エチル2:5(14ml)に溶解;注入量:14ml;カラム:セレクターのポリ(N−メタクリロイル−L−ロイシン−ジシクロプロピルメチルアミド)をベースとするキラルシリカゲル相、250mmx20mm;移動相:酢酸エチル;流速:50ml/分;温度:24℃;UV検出:260nm]によりエナンチオマーに分離した。4Rエナンチオマー118mgを、無色無定形固体の形態で、画分2として得た(4Sエナンチオマーを、早く溶出する画分1として得た)。次いで、4Rエナンチオマーをキラル相の分取HPLC(カラム:Gromsil C-18 10 μm;移動相:アセトニトリル/水+0.1%TFA10:90→90:10)により再精製した。これにより、表題化合物117mgを得た。
=4.91分;ee>99.0%[カラム:セレクターのポリ(N−メタクリロイル−L−ロイシン−ジシクロプロピルメチルアミド)をベースとするキラルシリカゲル相、250mmx4.6mm;移動相:酢酸エチル/メタノール10:1;流速:2ml/分;温度:25℃;UV検出:260nm]。
LC-MS (方法 1): Rt = 1.78 分; MS (ESIpos): m/z (%) = 446.2 (100) [M+H]+; MS (ESIneg): m/z (%) = 401.2 (100), 444.2 (50) [M-H]-.
1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ = 2.37 (s, 3H), 3.14-3.18 (d, 1H), 3.65-3.70 (d, 1H), 5.43 (s, 1H), 7.59-7.89 (m, 7H), 8.29 (d, 1H), 8.83 (s, 1H).
【0210】
B. 薬理活性の評価
本発明の化合物の薬理的効果は、下記のアッセイで示すことができる:
略号:
【表9】

【0211】
B−1. インビトロHNE阻害アッセイ
本発明の化合物の効力を、インビトロの阻害アッセイで確認する。これに関して、HNEに媒介される適当なペプチド基質のアミド分解的開裂は、蛍光の増大を導く。蛍光のシグナル強度は、酵素活性に直接的に比例する。酵素の半分が阻害される(蛍光のシグナル強度50%)試験化合物の有効濃度を、IC50として示す。
【0212】
方法:
酵素(80pM HNE;Serva, Heidelbergより)および基質(20μM MeOSuc−Ala−Ala−Pro−Val−AMC;Bachem, Weil am Rhein より)を、全部で50μlのアッセイバッファー(0.1M HEPES pH7.4、0.5M NaCl、0.1% w/v BSA、1% v/v DMSO)のアッセイ体積で、384ウェルのマイクロタイタープレート中、試験物質の存在下および非存在下で、37℃で、2時間インキュベートする。アッセイ混合物からの蛍光の強度を測定する(Ex.380nm、Em.460nm)。蛍光の強度を活性物質の濃度に対してプロットすることにより、IC50値を決定する。
【0213】
本発明の化合物の代表的なIC50値を、下記表Aに示す:
表A:ヒト好中球エラスターゼ(HNE)の阻害
【表10】

【0214】
B−2. 肺動脈高血圧の動物モデル
ラットでモノクロタリンにより誘導される肺高血圧は、幅広く使用される肺動脈高血圧の動物モデルである。ピロリジジンアロカロイドのモノクロタリンは、皮下注射後、肝臓で毒性のモノクロタリンピロールに代謝され、数日の内に肺循環に内皮損傷をもたらし、続いて小さい肺動脈のリモデリングが起こる(中膜肥厚(media hypertrophy)、新規筋肉化(de novo muscularization))。単回の皮下注射は、ラットで4週間以内に明白な肺高血圧を誘導するのに十分である [Cowan et al., Nature Med. 6, 698-702 (2000)]。
【0215】
雄の Sprague-Dawley ラットをこのモデルに使用する。0日目に、動物はモノクロタリン60mg/kgの皮下注射を受ける。動物の処置は、モノクロタリン注射の14日後より早くには開始せず、少なくとも14日間続く。試験の終了時に、動物は血行動態的調査を受け、動脈および中心静脈の酸素飽和度を測定する。血行動態的測定のために、まず、ラットをペントバルビタール(60mg/kg)で麻酔する。次いで、動物を気管切開し、人工呼吸器をつける(速度:呼気数60/分;呼気・吸気比:50:50;呼気終末陽圧:1cmHO;一回換気量:10ml/体重kg;FIO:0.5)。イソフルラン吸入麻酔により麻酔を維持する。Millar マイクロチップカテーテルを使用して、全身の血圧を左頸動脈で測定する。ポリエチレンカテーテルを、右頸静脈を通して右心室に進め、右室圧を測定する。熱希釈法により心拍出を測定する。血行動態測定に続き、心臓を取り出し、右心室と、中隔を含む左心室との比を決定する。加えて、血漿サンプルを得、バイオマーカー(例えばproBNP)および血漿の物質レベルを測定する。
【0216】
B−3. 急性肺不全の動物モデル
マウス、ラットまたはハムスターにおけるエラスターゼに誘導される肺不全は、広く使用されている急性肺不全(また:「急性肺傷害」、「急性呼吸窮迫性症候群」)の動物モデルである[Tremblay et al., Chest 121, 582-588 (2002); Kuraki et al., Am. J. Resp. Crit. Care Med. 166, 596-500 (2002)]。動物を、ヒト好中球エラスターゼ(HNE)の経口気管内点滴の1時間前に処理する。経口気管内HNE点滴の2時間後に、気管支肺胞洗浄を実施し、ヘモグロビン含量および洗浄液の示差的細胞像(differential cell picture of the lavage)を決定する。
【0217】
B−4. 肺気腫の動物モデル
マウス、ラットまたはハムスターにおけるエラスターゼに誘導される肺気腫は、広く使用されている肺気腫の動物モデルである [Sawada et al., Exp. Lung Res. 33, 277-288 (2007)]。動物は、ブタ膵臓エラスターゼの経口気管内点滴を受ける。動物の処理は、ブタ膵臓エラスターゼの点滴の日に開始し、そして3週間の期間にわたる。研究の終了時に、肺コンプライアンスを測定し、肺胞の形態計測を実施する。
【0218】
B−5. 静脈内および経口投与後の薬物動態パラメーターの測定
試験物質を動物(例えば、マウス、ラット、イヌ)に液剤として静脈内投与し、経口投与を液剤または懸濁剤として胃管を通して実施する。物質の投与後、血液サンプルを動物から一定の時点で採取する。この血液をヘパリン化し、次いで、遠心分離により血漿を得るために使用する。血漿中の物質を、LC/MS−MSにより分析的に定量する。かくして決定した血漿濃度/時間曲線を使用して、AUC(濃度/時間曲線の下の面積)、Cmax(最大血漿濃度)、+T1/2(半減期)およびCL(クリアランス)などの薬物動態パラメーターを、有効な薬物動態算出プログラムを使用して算出する。
【0219】
B−6. 血漿タンパク質結合の測定
様々な種の血漿中での試験物質のタンパク質結合を、限外濾過法により測定する。ここで、アセトニトリル原液から物質をピペットで血漿に、通常は最終濃度1000ng/mlで取るが、アセトニトリルの最終濃度は1%を超えない。血漿をセルロース膜(例えば、Centrifree Micropartition Device, Amicon-Millipore, Wittenより)で濾過し、タンパク質とタンパク質に結合した物質を分離する。濾液中の結合していない物質の濃度を測定する。加えて、物質の濾過ユニットへの非特異的結合(血漿なし)を、同様に測定する。この濾過ユニットへの非特異的結合(20%を超えるべきではない)を、物質のタンパク質結合を算出する際に考慮する。
【0220】
C. 医薬組成物の例示的実施態様
本発明の化合物は、以下の方法で医薬製剤に変換できる:
錠剤:
組成:
本発明の化合物100mg、ラクトース(一水和物)50mg、トウモロコシデンプン(天然)50mg、ポリビニルピロリドン(PVP25)(BASF, Ludwigshafen, Germany より)10mgおよびステアリン酸マグネシウム2mg。
錠剤重量212mg、直径8mm、曲率半径12mm。
製造:
本発明の化合物、ラクトースおよびデンプンの混合物を、5%濃度PVP水溶液(m/m)で造粒する。乾燥後、顆粒をステアリン酸マグネシウムと5分間混合する。この混合物を通常の打錠機で打錠する(錠剤の形状について、上記参照)。打錠のためのガイドラインの打錠力は、15kNである。
【0221】
経口投与できる懸濁剤:
組成:
本発明の化合物1000mg、エタノール(96%)1000mg、Rhodigel(登録商標) (FMC のキサンタンガム、Pennsylvania, USA)400mgおよび水99g。
経口懸濁剤10mlは、本発明の化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
Rhodigel をエタノールに懸濁し、本発明の化合物を懸濁液に添加する。撹拌しながら水を添加する。混合物を、Rhodigel の膨潤が完了するまで、約6時間撹拌する。
【0222】
経口投与できる液剤:
組成:
本発明の化合物500mg、ポリソルベート2.5gおよびポリエチレングリコール400 97g。経口液剤20gは、本発明による化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
本発明の化合物を、ポリエチレングリコールとポリソルベートの混合物中に撹拌しながら懸濁する。本発明による化合物が完全に溶解するまで、撹拌過程を継続する。
【0223】
i.v.液剤:
本発明の化合物を、生理的に耐容される溶媒(例えば、等張生理食塩水、5%グルコース溶液および/または30%PEG400溶液)に、飽和溶解度より低い濃度で溶解する。溶液を濾過滅菌し、無菌のパイロジェンを含まない注射容器に充填するのに使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
Aは、CHまたはNを表し、
は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、(C−C)−アルキル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノを表すか、
または、式−NH−C(=O)−R、−NH−C(=O)−NHR、−NH−SO−Rまたは−S(O)−Rの基を表し
{式中、
は、水素または(C−C)−アルキルを表し、
は、(C−C)−アルキルを表し、
は、(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、(C−C)−シクロアルキルまたはフェニルにより置換されていてもよいか、または、(C−C)−アルケニル、(C−C)−シクロアルキルまたはフェニルを表し
(ここで、上述の(C−C)−シクロアルキル基は、(C−C)−アルキル、ヒドロキシルおよび(C−C)−アルコキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよく、
そして、上述のフェニル基は、フッ素、塩素、シアノ、(C−C)−アルキル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシ、ジフルオロメトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)、
そして、nは、0、1または2の数を表す}、
は、水素を表すか、(C−C)−アルキルまたは(C−C)−アルケニル{これらの各々は、3個までのフッ素により置換されていてもよい}を表すか、または、フェニル、ピリジルまたはピリミジニルを表し
{ここで、フェニル、ピリジルおよびピリミジニルは、フッ素、塩素、シアノ、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシおよびトリフルオロメトキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい}、
または、
は、式−C(=O)−O−R、−L−C(=O)−O−R10、−L−C(=O)−NR1112、−L−SO−NR1112、−L−C(=O)−NR13−NR1112または−L−SO−R14の基を表し
{式中、
は、(C−C)−アルカンジイルを表し、
は、結合または(C−C)−アルカンジイルを表し、
は、(C−C)−アルキルを表し、
10は、水素または(C−C)−アルキルを表し、
11およびR12は、同一であるかまたは異なり、相互に独立して、水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキルまたは4員ないし6員の複素環を表し
(ここで、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキルおよび4員ないし6員の複素環は、フッ素、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、オキソ、アミノ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノ、ヒドロキシカルボニル、(C−C)−アルコキシカルボニルおよびアミノカルボニルからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよく、(C−C)−アルキル中、CH基は、化学的に安定な化合物をもたらすならば、酸素原子に置き換えられていてもよい)、
または、R11およびR12は、それらが結合している窒素原子と一体となって4員ないし6員の複素環を形成し、これは、N、O、S、SOおよびSOからなる群からさらなる環内ヘテロ原子を含有してもよく、(C−C)−アルキル、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、オキソ、アミノ、モノ−およびジ−(C−C)−アルキルアミノからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよく
(ここで、(C−C)−アルキルは、ヒドロキシルまたは(C−C)−アルコキシにより置換されていてもよい)、
13は、水素または(C−C)−アルキルを表し、
そして、
14は、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキル、フェニルまたは5員または6員のヘテロアリールを表す
(ここで、(C−C)−アルキルは、フッ素、塩素、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノにより置換されていてもよく、
そして、フェニルおよび5員または6員のヘテロアリールは、フッ素、塩素、シアノ、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシおよびトリフルオロメトキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)}、
は、(C−C)−アルキルまたは(C−C)−アルケニルを表し、これらの各々は、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノ、ヒドロキシカルボニル、(C−C)−アルコキシカルボニル、アミノカルボニルまたはモノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノカルボニルにより置換されていてもよいか、
または、式−L−R15の基を表し
{式中、
は、結合または(C−C)−アルカンジイルを表し、
そして、
15は、(C−C)−シクロアルキル、4員ないし7員の複素環、フェニルまたは5員または6員のヘテロアリールを表す
(ここで、(C−C)−シクロアルキルおよび4員ないし7員の複素環は、(C−C)−アルキル、オキソ、ヒドロキシルおよび(C−C)−アルコキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよく、
そして、フェニルおよび5員または6員のヘテロアリールは、フッ素、塩素、シアノ、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシおよびアミノからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)}、
は、ニトロまたはトリフルオロメチルを表し、
そして、
は、水素、フッ素または塩素を表す]
の化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは塩の溶媒和物。
【請求項2】
式中、
AがCHを表し、
が、水素、フッ素、塩素、シアノ、ニトロ、(C−C)−アルキル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノを表すか、
または、式−NH−C(=O)−R、−NH−SO−Rまたは−SO−Rの基を表し
{式中、
およびRは、各々(C−C)−アルキルを表し、
そして、
は、(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、(C−C)−シクロアルキルまたはフェニルにより置換されていてもよいか、または、(C−C)−シクロアルキルまたはフェニルを表す
(ここで、上述のフェニル基は、フッ素、塩素、シアノ、メチル、トリフルオロメチル、メトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)}、
が、水素、(C−C)−アルキルまたは(C−C)−アルケニルを表すか、
または、式−L−C(=O)−O−R10、−L−C(=O)−NR1112または−L−SO−R14の基を表し
{式中、
は、メチレンまたはエタン−1,2−ジイルを表し、
は、結合、メチレン、エタン−1,1−ジイルまたはエタン−1,2−ジイルを表し、
10は、水素または(C−C)−アルキルを表し、
11は、水素または(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシルまたは(C−C)−アルコキシにより置換されていてもよく、
12は、水素、(C−C)−アルキルまたは(C−C)−シクロアルキルを表し
(ここで、(C−C)−アルキルは、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、ヒドロキシカルボニル、(C−C)−アルコキシカルボニルおよびアミノカルボニルからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよく、そして、(C−C)−アルキル中、CH基は、化学的に安定な化合物をもたらすならば、酸素原子に置き換えられていてもよい)、
または、R11およびR12は、それらが結合している窒素原子と一体となって5員または6員の複素環を形成し、それは、N、OおよびSからなる群からさらなる環内ヘテロ原子を含有してもよく、(C−C)−アルキル、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシまたはオキソにより置換されていてもよく
(ここで、(C−C)−アルキルは、ヒドロキシまたは(C−C)−アルコキシにより置換されていてもよい)、
そして、
14は、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキルまたはフェニルを表す
(ここで、フェニルは、フッ素、塩素、シアノ、メチル、トリフルオロメチル、メトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)}、
が、(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、ヒドロキシカルボニル、(C−C)−アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノカルボニルまたは5員または6員のヘテロアリールにより置換されていてもよいか、(C−C)−アルケニルを表すか、または、式−L−R15の基を表し
{式中、
は、結合または(C−C)−アルカンジイルを表し、
そして、R15は、(C−C)−シクロアルキル、4員ないし6員の複素環またはフェニルを表す
(ここで、4員ないし6員の複素環は、オキソにより置換されていてもよく、
そして、フェニルは、フッ素、塩素、シアノ、メチル、トリフルオロメチル、メトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)}、
が、トリフルオロメチルを表し、
そして、
が、水素またはフッ素を表す、
請求項1に記載の式(I)の化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは塩の溶媒和物。
【請求項3】
式中、
AがCHを表し、
が、水素、フッ素、塩素、ニトロ、メチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシまたは式−SO−Rの基を表し
{式中、Rは、(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシル、メトキシまたはエトキシにより置換されていてもよい}、
が、水素、(C−C)−アルキルまたは式−CH−C(=O)−O−R10もしくは−CH−C(=O)−NR1112の基を表し
{式中、
10は(C−C)−アルキルを表し、
11は、水素またはメチルを表し、
12は、水素または(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシル、メトキシまたはエトキシにより置換されていてもよいか、
または、
11およびR12は、それらが結合している窒素原子と一体となって、ピロリジノ、ピペリジノまたはモルホリノ環を形成する}、
が、(C−C)−アルキルを表し、これは、ヒドロキシル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノまたはピリジルにより置換されていてもよいか、アリルを表すか、または、式−L−R15の基を表し
{式中、
は、結合、メチレンまたはエタン−1,2−ジイルを表し、
そして、R15は、(C−C)−シクロアルキルまたはフェニルを表す
(ここで、フェニルは、フッ素、塩素、シアノ、メチルおよびトリフルオロメチルからなる群からの2個までの同一かまたは異なる置換基により置換されていてもよい)}、
が、トリフルオロメチルを表し、
そして、
が水素を表す、
請求項1または請求項2に記載の式(I)の化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは塩の溶媒和物。
【請求項4】
式中、
AがCHを表し、
が、水素、トリフルオロメチルまたはメチルスルホニルを表し、
が、水素または式−CH−C(=O)−NR1112の基を表し
{式中、
11およびR12は、相互に独立して、水素またはメチルを表すか、
または、
11およびR12は、それらが結合している窒素原子と一体となって、ピロリジノ環を形成する}、
が、メチル、エチル、2−ヒドロキシエチルまたは2−(モルホリン−4−イル)エチルを表し、
が、トリフルオロメチルを表し、
そして、
が水素を表す、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の式(I)の化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは塩の溶媒和物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の式(I)の化合物の製造方法であって、先ず、式(II)
【化2】

(式中、AおよびRは、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の意味を有する)
の化合物を、酸または酸無水物の存在下で、3成分ワンポット反応で、または、連続的に、式(III)
【化3】

(式中、Tは、メチルまたはエチルを表す)
のアセト酢酸エステル、および、式(IV)
【化4】

(式中、RおよびRは、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の意味を有する)
のフェニルウレア誘導体と縮合させ、式(V−A)
【化5】

(式中、A、T、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、次いで、この化合物を、
[A]式(I)中のRが水素を表す場合、不活性溶媒中でブロム化し、式(VI−A)
【化6】

(式中、A、T、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、式(VII)
−NH−NH (VII)
(式中、Rは請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の意味を有する)
のヒドラジン誘導体と、6員環の形成を伴って反応させ、式(I−A)
【化7】

(式中、A、R、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得るか、
または、
[B]式(I)中のRが水素ではない場合、先ず、式(VIII)
2A−X (VIII)
(式中、R2Aは、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のRの意味を有するが、水素を表さず、そして、
Xは、ハロゲン、メシレート、トシレートまたはトリフレートなどの脱離基を表す)
の化合物と、塩基の存在下で反応させ、式(V−B)
【化8】

(式中、A、T、R、R2A、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、次いで、不活性溶媒中でブロム化し、式(VI−B)
【化9】

(式中、A、T、R、R2A、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、式(VII)
−NH−NH (VII)
(式中、Rは請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の意味を有する)
のヒドラジン誘導体と、環化を伴って反応させ、式(I−B)
【化10】

(式中、A、R、R2A、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、かくして得られる式(I−A)または(I−B)の化合物を、必要に応じて、当業者に公知の方法により、そのエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーに分離し、かつ/または、適当な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸で、その溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換することを特徴とする、方法。
【請求項6】
疾患の処置および/または予防のための、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
肺動脈高血圧(PAH)または他の形態の肺高血圧症(PH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺傷害(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、肺気腫、アルファ−1アンチトリプシン欠損症(AATD)または嚢胞性線維症(CF)の処置および/または予防方法において使用するための、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
肺動脈高血圧(PAH)または他の形態の肺高血圧症(PH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺傷害(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、肺気腫、アルファ−1アンチトリプシン欠損症(AATD)または嚢胞性線維症(CF)の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項9】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物を、1種またはそれ以上の不活性な非毒性の医薬的に許容し得る補助剤と組み合わせて含む、医薬。
【請求項10】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物を、キナーゼ阻害剤、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤および活性化剤、プロスタサイクリン類似体、エンドセリン受容体アンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、ベータアドレナリン受容体アゴニスト、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、セロトニンアンタゴニスト、抗コリン作用薬および糖質コルチコイドからなる群から選択される1種またはそれ以上のさらなる活性化合物と組み合わせて含む、医薬。
【請求項11】
肺動脈高血圧(PAH)または他の形態の肺高血圧症(PH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺傷害(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、肺気腫、アルファ−1アンチトリプシン欠損症(AATD)または嚢胞性線維症(CF)の処置および/または予防用の請求項9または請求項10に記載の医薬。
【請求項12】
有効量の少なくとも1種の請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物または請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の医薬を使用する、肺動脈高血圧(PAH)または他の形態の肺高血圧症(PH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺傷害(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、肺気腫、アルファ−1アンチトリプシン欠損症(AATD)または嚢胞性線維症(CF)の処置および/または予防方法。

【公表番号】特表2011−519880(P2011−519880A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507813(P2011−507813)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003006
【国際公開番号】WO2009/135599
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(507113188)バイエル・シェーリング・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Schering Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】