説明

1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物及びその製造方法

【課題】1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物、及び該化合物を簡便かつ効率的に製造方法を提供する。
【解決手段】ロジウム錯体触媒の存在下、一般式(2)で示される末端アセチレン化合物と、一般式(3)で示されるアルファクロロカルボン酸塩化物を反応させることを特徴とする、一般式(4)で示される1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4−クロロ−3−ブテン−2−オン化合物は、アセチレンへの酸塩化物の付加反応、塩化ビニルへの酸塩化物のフリーデルークラフツ型の反応等によって合成され、生理活性物質として有用なピラゾール、イソキサゾール、1,2,3−トリアゾール誘導体等の合成原料として用いられるほか、1,3−ジエン類とのDiels−Alderやアミンによる塩素の置換反応等の多くの変換反応を受けるため、極めて有用な一群の化合物であり(非特許文献1,2)、この範疇の化合物として既に多くの化合物が知られている。
【0003】
これらの化合物の内、1位の炭素も塩素置換された1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物については限られた化合物しか知られていないが、ビニルペニシリン化合物(特許文献1)、4−アミノ−1−クロロ−3−ブテン−2−オン化合物(非特許文献3−5)、ピラゾール誘導体(非特許文献6及び7)、及び抗菌性の1,2,3−トリアゾールやイソキサゾール誘導体の合成(非特許文献8)に用いる例が報告されている。しかし、1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物の合成は、(i)塩素化されたクロロ−1,3−ブタジエンを硝酸で処理する方法(非特許文献3及び5)、又は、(ii)酸塩化物を内部アセチレンと反応させる方法(非特許文献9)によって行われてきたが、(i)の方法では収率が低く、(ii)の方法では多量の塩化アルミニウムを必要とするため、合成的に満足するべきものではなかった。
【特許文献1】US3360527
【非特許文献1】Russian Chemial Rceviews、1969年、p.433
【非特許文献2】Chemial Rceviews、1966年、66巻、p.161
【非特許文献3】Russian Journal of Organic Chemistry、2004年、40巻、p.1508
【非特許文献4】Journal of Organic Chemistry,1967年、32巻、p.2661
【非特許文献5】Journal of Organic Chemistry,USSR、1983年、18巻、p.1606
【非特許文献6】Russian Journal of Organic Chemistry, 2001年、37巻、p.1795
【非特許文献7】Russian Journal of Organic Chemistry, 2002年、38巻、p.1501
【非特許文献8】Pharmaceutical Chemistry Journal、1984年、18巻、p.108
【非特許文献9】Tetrahedron、1975年、31巻、p.177
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物を提供すること、及び1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物の簡便かつ効率的な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、錯体触媒を用いる反応条件下では容易に脱カルボニル化すると信じられてきた酸塩化物の反応について鋭意研究を重ねてきた。その結果、ロジウム錯体触媒の存在下においても、アルファ炭素に塩素原子が結合すると脱カルボニル化が著しく抑制されること、これにより、酸塩化物を脱カルボニル化を伴うことなく末端アセチレン化合物に付加させることが可能となることを見いだし、こられの知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は、以下の項に示す1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物及びその製造方法を提供する。
項1.一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rは、炭素数10以下の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数12以下の芳香族炭化水素基、炭素数13以下のアラルキル基、フェロセニル基、シリル基を表し、R及びRは、水素原子、炭素数10以下の脂肪族飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数12以下の芳香族炭化水素基、炭素数13以下のアラルキル基、フェロセニル基を表し、R及びRは互いに同じであっても異なっていても良く、R、R及びRが芳香族炭化水素基又はアラルキル基で構成される場合の芳香族炭化水素基又はアラルキル基中の芳香環は複素芳香環であっても良い。また、R、R及びRはハロゲン原子を除く官能基で置換されていても良い。)で表される1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物。
【0009】
項2.一般式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Rは、水素原子、炭素数10以下の脂肪族飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数12以下の芳香族炭化水素基、炭素数13以下のアラルキル基、フェロセニル基、シリル基を表す。Rが芳香族炭化水素基又はアラルキル基で構成される場合の芳香族炭化水素基又はアラルキル基中の芳香環は複素芳香環であっても良く、また、官能基によって置換されていても良い。)で表される末端アセチレン化合物と、一般式(3)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R及びRは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数10以下の脂肪族飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数12以下の芳香族炭化水素基、炭素数13以下のアラルキル基、フェロセニル基を表し、RとRは互いに同じであっても異なっていても良い。R及びRが芳香族炭化水素基又はアラルキル基で構成される場合の芳香族炭化水素基又はアラルキル基中の芳香環は複素芳香環であっても良く、また、官能基によって置換されていても良い。)で表されるアルファクロロカルボン酸塩化物とを、ロジウム錯体触媒の存在下に反応させることを特徴とする、一般式(4)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、R、R及びRは、前記と同じ意味を表す。)で表される1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物の製造方法。
【0016】
本明細書において示される各基は、具体的には以下の通りである。
【0017】
炭素数10以下の脂肪族飽和炭化水素基としては、n−デシル基、n−ノニル基、n−オクチル基、エチルヘキシル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、エチル基、メチル基等の直鎖、分枝又は環状の脂肪族飽和炭化水素基を例示することが出来る。
【0018】
炭素数12以下の芳香族炭化水素基としては、アルファナフチル基、ベータナフチル基、フェニル基、パラトリル基、メタトリル基、パラクミル基、オルトビフェニル基、メタビフェニル基、パラビフェニル基等の芳香族炭化水素基を例示することが出来る。
【0019】
炭素数13以下のアラルキル基をしては、ベンジル基、アルファ又はベータフェニルエチル基、アルファ又はベータナフチルエチル基等のアラルキル基を例示することが出来る。
【0020】
炭素数10以下の脂肪族不飽和炭化水素基としては、ビニル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテン−1−イル基、2−ブテン−1−イル基、3−ブテン−1−イル基、3−ブテン−2−イル基、2,2−ジメチルビニル基、1−ペンテン−1−イル基、2−ペンテン−1−イル基、3−ペンテン−1−イル基、3−ペンテン−2−イル基、4−ペンテン−1−イル基、4−ペンテン−2−イル基、4−ペンテン−3−イル基、4−ペンテン−4−イル基、1,2−ジメチル−1−ブテンー1−イル基、1−オクテン−1−イル基、1−デセン−1−イル基、1−シクロヘキセン−1−イル基、1−シクロヘキセン−3−イル基、1−シクロオクテン−1−イル基、1−メチル−1−シクロヘキセン−2−イル基等の直鎖、分枝又は環状の脂肪族不飽和炭化水素基を例示することが出来る。
【0021】
シリル基としては3種の炭素数6以下の芳香族又は脂肪族飽和炭化水素基で置換されたトリオルガノシリル基が包含され、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基を例示することが出来る。
【0022】
複素芳香環としては、ピリジン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環等を例示することが出来る。
【0023】
、R又はRが官能基によって置換されている場合の官能基としては、エーテル基、エステル基、カルバモイル基、アシル基、アミノ基、スルフィド基、シリル基、シロキシキ基、シアノ基等の官能基を例示することが出来る。エーテル基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基等のエーテル基を例示することが出来る。エステル基としては、カルボメトキシ基、カルボフェノキシ基、カルボ−t−ブトキシ基等のエステル基を例示することが出来る。カルバモイル基としては無置換のカルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基等を例示することが出来る。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、パラトルイル基、アルファ又はベータナフトイル基等を例示することが出来る。アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリル基等を例示することが出来る。スルフィド基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基を例示するが出来る。シリル基としては、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等を例示することが出来る。シロキシキ基としては、トリメチルシロキシ基、t−ブチルジメチルシロキシ基、フェニルジメチルシロキシ基等を例示することが出来る。
【0024】
、R又はRが官能基によって置換されている場合の官能基としては、エーテル基、エステル基、カルバモイル基、アシル基、アミノ基、スルフィド基、シリル基、シロキシキ基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基を例示することが出来る。エーテル基、エステル基、カルバモイル基、アシル基、アミノ基、シリル基、シロキシキ基、スルフィド基については、R、R又はRについてそれぞれ前記したものを例示することが出来る。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素等を例示することが出来る。
【0025】
以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0026】
一般式(4)
【化5】

【0027】
(式中、R、R及びRは、前記と同じ意味を表す。)で表される1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物は、一般式(2)
【0028】
【化6】

【0029】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)で表される末端アセチレン化合物と、一般式(3)
【0030】
【化7】

【0031】
(式中、R及びRは、前記と同じ意味を表す。)で表されるアルファクロロカルボン酸塩化物とを、ロジウム錯体触媒の存在下に反応させることにより製造される。
【0032】
一般式(2)で表される末端アセチレン化合物に対する一般式(3)で表されるアルファクロロカルボン酸塩化物のモル比に制限はないが、一般的には、0.3〜2.0の範囲から選ばれる。
【0033】
本発明の反応は、遷移金属錯体触媒、殊にロジウム錯体触媒の存在下において好ましい速度で進行する。ロジウム錯体としては種々の構造のものを用いることが出来るが、好適なものは、いわゆる低原子価のロジウム錯体である。具体的には、RhCl(PPh、RhCl(CO)(PPh、RhCl(CO)(PPhMe、RhCl(CO)(PMe、RhCl(CO)[PhP(CHPPh]、RhCl(CO)(AsPh、RhCl(CO)(dpaf)、RhCl(CO)(dppf)、RhCl(cod)(PPh)、RhCl(cod)(PPhMe)、RhCl(cod)(PMe)、RhCl(cod)(AsPh)、Rh(acac)(CO)(PPh)、Rh(acac)(CO)(AsPh)、RhCl(CO)(o−ジフェニルホスフィノフェニルオキサゾリン)、RhCl(CO)[1,2−エチレンビス(オキサゾリン)]、[RhCl(CO)、[RhCl(cod)]、[RhCl(CH=CH、Rh(acac)(cod)、Rh(acac)(CO)等が例示される(上記具体例の記載中、dpafは1,1’−ビス(ジフェニルアルシノ)フェロセンを示し、dppfは1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを示し、codは1,5−シクロオクタジエンを示し、acacはアセチルアセトナトを示す。)。これらの内でも、AsPhのような3価のヒ素化合物を配位子とするロジウム錯体が特に好適に用いられる。
【0034】
また、反応系中でロジウム錯体に補助配位子を添加して活性種を発生させそのまま触媒として用いる方法も、本発明の好適な態様に含まれる。この場合のロジウム錯体としては、[RhCl(CO)、[RhCl(cod)]、[RhCl(CH=CH、Rh(acac)(cod)、Rh(acac)(CO)等が例示される。また、補助配位子としては3価のリン、3価のヒ素、窒素を配位元素とするものが好ましく、各種のホスフィン類、ホスファイト類、アルシン類、イミンやジイミン等のイミン型窒素配位子、3価リンとイミン結合の両者を含むもの等が包含され、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリメチルホスファイト、トリフェニルアルシン、1,1−ビス(ジフェニルアルシノ)フェロセン、[o−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]オキサゾリン、1,2−エチレンビス(オキサゾリン)等が例示されるが、3価のヒ素化合物が特に好ましい効果を示す。ロジウム錯体に対する補助配位子の添加量は、ロジウム錯体中のロジウム原子に対する補助配位子中の配位元素のモル比で1:0.5から1:10の範囲、好ましくは1:1から1:2の範囲から選択される。
【0035】
これらのロジウム錯体の使用量はいわゆる触媒量で良く、アセチレン化合物に対して20モル%以下で十分である。
【0036】
本発明の反応は空気等の酸素の存在下でも進行するが、反応中間体が酸素にやや敏感であるため、窒素やアルゴン、メタン等の不活性ガス雰囲気で実施するのが好ましい。本発明の反応は特に溶媒を用いなくてもよいが、必要に応じて溶媒中で実施することもできる。溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン等の炭化水素系溶媒;クロロホルム、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、アニソール、シクペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒などの種々のものが使用できる。また、これらは単独又は2種以上の混合物として使用される。
【0037】
本発明の反応は、冷却下、室温下、加熱下のいずれで行っても良い。具体的には、通常0℃から200℃、好ましくは40〜160℃の範囲から選ばれる。
【0038】
反応時間は、反応温度や、溶媒使用の有無、使用するアセチレン化合物の種類その他により自ずから異なるが、通常数時間〜数十時間である。
【0039】
反応混合物からの精製物の分離は、各種クロマトグラフィー、蒸留或いは再結晶等通常行われる精製法により容易に達成される。
【発明の効果】
【0040】
本発明の一般式(1)で示される1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物は文献未収載の新規化合物であり、医薬・農薬等の合成原料として有用である。また、本発明の製造方法によれば、容易に入手できる末端アセチレン化合物及びアルファクロロカルボン酸塩化物から容易かつ高収率に1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物を製造することが出来、その分離精製も容易である。従って工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
実施例
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0042】
実施例1 1−オクチンとクロロアセチルクロリドの反応
アルゴン雰囲気下、1−オクチン(2mmol)、クロロアセチルクロリド(2mmol)、ロジウム錯体としてRh(acac)(CO)(0.04mmol)、補助配位子としてAsPh(0.04mmol)、及びガスクロマトグラフィー分析用内部標準物質としてn−テトラデカン(26.5mg)をアセトン(2mL)に加え、80℃で60時間加熱攪拌した。ガスクロマトグラフィー分析の結果、1,4−ジクロロ−3−デセン−2−オンが39%(Z/E=73/27)の収率で生成していることが判明した。反応液を減圧下に濃縮し、ヘキサン次いでヘキサン−酢酸エチル(96:4)混合液を用いてカラムクロマトグラフィーに伏し、さらにヘキサン−酢酸エチル(99:1)混合液を用いて分取薄層クロマトグラフィーで繰り返し精製することで、(Z)−及び(E)−1,4−ジクロロ−3−デセン−2−オンが単離された。
【0043】
本生成物はいずれも文献未収載の新規化合物であり、その性状、物性値や分光学データ等は以下の通りであった。
【0044】
(Z)−1,4−ジクロロ−3−デセン−2−オン:
淡黄色液体;
N NMR(300MHz,CDCl)δ6.49(s,1H,CH),4.26(s,2H,ClCH),2.46(t,J=7.5Hz,2H,ClCCH),1.62(m,2H,6位CH),1.10−1.34(m,6H,7−9位CH),0.88(t,J=7.3Hz,3H,CH);
13C{H}NMR(75MHz,CDCl)δ189.3(C),151.7(C),120.6(C),49.1(C),41.7(C),31.4(C),28.2(C),27.2(C),22.4(C),14.0(C10);
GCMS(EI,70ev,%相対強度)m/z222(3,M),187(45),173(100),109(61),77(18),67(71);
IR(液膜,cm−1)1699(vCO),1608(vC=C);
HRMS C1016ClOとしての計算値222.0578、実測値222.0574。
元素分析C1016ClOとしての計算値C,53.83;H,7.29、実測値C,54.19;H,7.23。
【0045】
(E)−1,4−ジクロロ−3−デセン−2−オン:
淡黄色液体;
H NMR(300MHz,CDCl)δ6.53(s,1H,CH),4.09(s,2H,ClCH),2.96(t,J=7.3Hz,2H,ClCCH),1.58(m,2H,6位CH),1.24−1.38(m,6H,7−9位CH),0.86(t,J=6.8Hz,3H,CH);
13C{H}NMR(75MHz,CDCl)δ189.0(C),161.2(C),121.7(C),49.1(C),36.6(C),31.4(C),28.5(C),27.7(C),22.4(C),14.0(C10);
IR(液膜,cm−1)1698(vCO),1599(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z222(4,M),187(11),173(29),109(20),77(18),67(39),55(100)。
【0046】
実施例2〜16 1−オクチンとクロロアセチルクロリドの反応:操作条件の影響
実施例1と同様の手法で、ロジウム錯体(ロジウム原子あたり0.04mmol)、補助配位子、溶媒、反応温度又は反応時間を種々変えて反応し、ガスクロマトグラフィーで分析した。1,4−ジクロロ−3−デセン−2−オンの収率及びZ/Eを第1表にまとめて示した。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例17 t−ブチルアセチレンとクロロアセチルクロリドの反応
アルゴン雰囲気下、t−ブチルアセチレン(2mmol)、クロロアセチルクロリド(2mmol)、ロジウム錯体としてRh(acac)(CO)(0.1mmol)、補助配位子としてAsPh(0.1mmol)、及びガスクロマトグラフィー分析用内部標準物質としてn−テトラデカン(26.5mg)をトルエン(2mL)に加え、110℃で24時間加熱攪拌した。ガスクロマトグラフィー分析の結果、(Z)−1,4−ジクロロ−5,5−ジメチル−3−ヘキセン−2−オンが98%の収率で生成していることが判明した。(E)−体の生成は認められなかった。反応液を減圧下濃縮し、カラムクロマトグラフィー及び分取薄層クロマトグラフィーで分離精製することにより、(Z)−1,4−ジクロロ−5,5−ジメチルー3−ヘキセン−2−オンを単離した。
【0049】
本生成物は文献未収載の新規化合物であり、その性状、物性値や分光学データ等は以下の通りであった。
【0050】
(Z)−1,4−ジクロロ−5,5−ジメチル−3−ヘキセン−2−オン:
無色液体、沸点100℃/11mmHg;
H NMR(CDCl300MHz)δ6.40(s,1H,CH),4.20(s,2H,CH),1.24(s,9H,CH);

(C(CH),28.6(CH);
IR(KBr,cm−1)1707(vCO),1603(vC=C);
MS(EI,70ev,%相対強度)m/z145(66,[M−CHCl]),109(74),82(100),57(60);
元素分析C12ClOとしての計算値C,49.25;H,6.20、実測値C,49.54;H,6.46。
【0051】
実施例18〜28 種々のアセチレンとクロロアセチルクロリドの反応
構造の異なるアセチレン類の反応を、t−ブチルアセチレンに代えてフェニルアセチレン、p−メトキシフェニルアセチレン、p−フロロフェニルアセチレン、5−ヘキシン酸メチル、トリメチルシリルアセチレン、2−エチニルチオフェン、5−クロロ−1−ペンチン、5−ヘキシンニトリル、4−t−ブチルジメチルシロキシ−1−ブチン、3−フェニル−1−プロピン、エチニルフェロセンを用い、反応時間をそれぞれ14、12、14、12、18、14、14、14、14、14、14時間とした他は実施例17と同様の操作で行った。結果を第2表にまとめて示した。
【0052】
【表2】

【0053】
実施例18〜28の反応の生成物はいずれも文献未収載の新規化合物であり、その性状、物性値や分光学データ等は以下の通りであった。
【0054】
(Z)−1,4−ジクロロ−4−フェニル−3−ブテンー2−オン:
無色結晶、融点68.8−68.9℃;
H NMR(CDCl,300MHz)δ7.71−7.68(m,2H,o−H),7.48−7.39(m,3H,m−及びp−H),6.76(s,1H,CH),4.32(s,2H,CH);

(o−C),127.4(p−C),119.8(CH),49.2(CH);
IR(KRr,cm−1)1697(vCO),1583(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z214(9,M),165(100),137(18),102(49);
元素分析C10ClOとしての計算値:C,55.84:H,3.75,実測値;C,55.66;3.87。
【0055】
(E)−1,4−ジクロロ−4−フェニル−3−ブテン−2−オン:
淡黄色液体;
H NMR(CDCl300MHz)δ7.46−7.37(m,5H,Ph),6.75(s,1H,CH),4.03(s,2H,CH);

IR(KBr,cm−1)1712(vCO),1589(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z214(23,M),165(100),137(14),102(38);
HRMS C10ClOとしての計算値213.9952、実測値213.9957。
【0056】
(Z)−1,4−ジクロロ−4−(p−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン:
白色固体、融点71.8−72.5℃;
H NMR(CDCl,300MHz)δ7.27(d,J=8.79Hz,2H,o−H),7.02(s,2H,CH),6.95(d,J=8.79Hz,2H,m−H),4.32(s,2H,CH),3.86(s,3H,CH);

IR(KBr,cm−1)1700(vCO),1568(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z244(6,M),195(100),132(60),89(49),63(27);
元素分析C1110Clとしての計算値C,53.90;H,4.11.実測値C,53.76;H,3.79。
【0057】
(E)−1,4−ジクロロ−4−(p−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン:
淡黄色液体;
H NMR(CDCl,300MHz)δ7.46(d,J=8.42Hz,2H,o−H),6.90(d,J=8.42Hz,2H,m−H),6.68(s,2H,CH),3.98(s,2H,CH),3.84(s,3H,CH);

IR(KBr,cm−1)1689(vCO),1604(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z195(100,[M−CHCl]),132(51),89(80),77(45),63(83);
HRMS C1110Clとしての計算値244.0058、実測値244.0056。
【0058】
(Z)−1,4−ジクロロ−4−(p−フロロフェニル)−3−ブテン−2−オン:
無色固体、融点73.8−75.1℃;
H NMR(CDCl,300MHz)δ7.72(dt,2H,J=9.1Hz,JFH=5.7Hz,o−H),7,11(dt,2H,J=9.1Hz,JFH=7.2Hz,m−H),6.90(s,1H,CH),4.31(s,2H,CH);

49.6(CH);
19F NMR(CDCl,282MHz)δ−108.1(tt,J=5.7,7.2Hz);
IR(KBr,cm−1)1697(VCO),1597(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z183(100,[M−CHCl]),155(23),120(97),99(11),77(10),75(20),51(14);
元素分析C10FClOとしての計算値C,51.53;H,3.03.実測値C,51.64;H,3.02.
【0059】
(E)−1,4−ジクロロ−4−(p−フロロフェニル)−3−ブテン−2−オン:
黄色液体;
H NMR(CDCl,300MHz)δ7.45(dt,2H,J=9.0Hz,JFH=5.7Hz,o−H),7.13(dt,2H,J=9.0Hz,JFH=7.2Hz,m−H),6.76(s,1H,CH),4.01(s,2H,CH);
19F NMR(CDCl,282MHz)δ−108.5(tt,J=5.7,7.2Hz);
IR(KBr,cm−1)1699(vCO),1589(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z183(98,[M−CHCl]),120(100),75(64),51(23).
【0060】
(Z)−5,8−ジクロロ−7−オキソ−5−オクテン酸メチル:
無色液体;
H NMR(CDCl,300MHz)δ6.64(s,1H,CH),4.06(s,2H,CHCl),3.65(s,3H,CH),2.99(t,J=7.3Hz,2H,C(O)CH),2.35(t,J=7.5Hz,2H,CHCCl=),1.95(quint,J=7.3Hz,2H,CHCHCH);
13C{H}NMR(CDCl,75MHz)δ189.5(C),173.6(C),159.6(C),123.0(C),52.1(C)49.4(OCH),35.9(C),33.0(C),23.0(C);
IR(KBr,cm−1)1734(vCO),1695(vCO),1603(vC=C);
GCMS(EI,70eV,%相対強度)m/z189(44,[M−CHCl]),157(43),119(100),74(49);
HRMS C10ClO(=M−CHCl)としての計算値189.0318、実測値189.0322。
【0061】
(E)−5,8−ジクロロ−7−オキソ−5−オクテン酸メチル:
黄色液体;
H NMR(CDCl,300MHz)δ6.50(s,1H,CH),4.21(s,2H,CHCl),3.66(s,3H,CH),2.53(t,J=7.2Hz,2H,C(O)CH),2.34(t,J=7.2Hz,2H,CHCCl=),1,96(quint,J=7.2Hz,2H,CHCHCH);
13C{H}NMR(CDCl,75MHz)δ189.2(C),173.0(C),150.0(C),121.2(C),51.6(C)49.0(CH),40.6(C),32.3(C),22.3(C);
IR(KBr,cm−1):1736(vCO),1699(vCO),1614(vC=C);
GCMS(EI,70ev,%相対強度)m/z189(27,[M−CHCl]),157(49),131(75),119(54),74(100);
元素分析C12Clとしての計算値C,45.21;H,5.13.実測値C,45.04;H,5.41。
【0062】
(Z)−1,4−ジクロロ−4−トリメチルシリル−3−ブテン−2−オン:
無色液体、沸点100℃/11mmHg;
H NMR(CDCl,300MHz)δ6.71(s,1H,CH),4.38(s,2H,CH),0.24(s,9H,CH);

29Si{H}NMR(CDC1,60MHz)δ3.46;
IR(KBr,cm−1)1703(vCO),1576(vC=C);
MS(EI,70ev,%相対強度)m/z161(83,[M−CHCl]),137(19),93(50),73(100);
HRMS C10ClOSi(=M−CHCl)としての計算値161.0189、実測値161.0183。
【0063】
(Z)−1,4−ジクロロ−4−(2−チエニル)−3−ブテンー2−オン:
淡黄色結晶、融点62.6−62.9℃;
H NMR(300MHz,CDCl)δ7.62(d,J=3.6Hz,1H,チオフェン環),7.48(d,J=5.0Hz,1H,チオフェン環),7.09(m,1H,チオフェン環),7.04(s,1H,CH),4.27(s,2H,CH);
13C{H}NMR(75MHz,CDCl)δ188.7(C),140.8(C),139.8(C),130.8,130.5,128.5,116.2(チオフェン環),49.2(C);
IR(KBr,cm−1)1695(vCO),1573(vC=C);
GCMS(EI,70eV,%相対強度)m/z220(8,M),185(27),171(100),142(24),108(30);
元素分析C12OSとしての計算値C,43.46;H,2.74;S,14.50、実測値C,43.52;H,2.80;S,14.58。
【0064】
(E)−1,4−ジクロロ−4−(2−チエニル)−3−ブテン−2−オン:
黄色液体;
H NMR(CDCl,300MHz)δ8.03(d,J=3.0Hz,1H,チオフェン環),7.59(d,J=4.5Hz,1H,チオフェン環),7.09(m,1H,チオフェン環),6.72(s,1H,CH),4.14(s,2H,CH);
13C{H}NMR(CDCl,75MHz)δ188.5(C),144.2(C),137.5(C),135.1,133.1,127.9,120.0(チオフェン環),49.3(C);
IR(KBr,cm−1)1695(vCO),1569(vC=C);
GCMS(EI,70eV,%相対強度)m/z220(6,M),185(29),171(100),143(22),108(28);
HRMS CClOSとしての計算値215.9516、実測値215.9524。
【0065】
(Z)−1,4,7−トリクロロ−3−ヘプテン−2−オン:
無色液体、沸点80℃/4mmHg;
H NMR(CDCl300MHz)δ6.50(s,1H,CH),4.21(s,2H,CHCO),3.55(t,J=6.4Hz,2H,=CClCH),2.66(t,J=7.16Hz,2H,ClCHCH),2.10(tt,J=7.16,6.40Hz,2H,CHCHCH);


IR(KBr,cm−1)1716(vCO),1612(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z214(0.1,M),165(100),129(13),101(21),65(32);
元素分析CClOとしての計算値C,39.01;H,4.21、実測値C,39.57;H,4.37;
HRMS CClO(=M−CHCl)としての計算値164.9874、実測値164.9875。
【0066】
(E)−1,4,7−トリクロロ−3−ヘプテン−2−オン:
無色液体;
H NMR(CDCl300MHz)δ6.66(s,1H,CH),4.07(s,2H,CHCO),3.56(t,J=6.78Hz,2H,=CClCH),3.10(t,J=7.91Hz,2H,ClCHCH),2.09(tt,J=7.91,6.78Hz,2H,ClCHCH);

IR(neat,cm−1)1701(vCO),1603(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z214(0.3,M),165(100),129(24),101(33),65(37);
HRMS CClO(=M−CHCl)としての計算値164.9874、実測値164.9870。
【0067】
(Z)−1,4−ジクロロ−7−シアノー3−ヘプテン−2−オン:
薄黄色液体:
H NMR(CDCl300MHz)δ6.74(s,1H,CH),4.12(s,2H,CHCl),3.10(t,2H,J=7.54Hz,=CClCH),2.66(t,2H,J=7.54Hz,NCCH),2.10(quint,J=7.54Hz,2H,CHCHCH);

IR(neat,cm−1)2249(vCN),1709(vCO),1604(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z206(0.1,M),170(0.2),156(100),128(22),115(35),101(13),92(7);
HRMS CClNO(=M−CHCl)としての計算値156.0216、実測値156.0212。
【0068】
(E)−1,4−ジクロロ−7−シアノ−3−ヘプテン−2−オン:
薄黄色液体;
H NMR(CDCl300MHz)δ6.64(s,1H,CH),4.24(s,2H,CHCl),2.70(t,J=7.16Hz,2H,=CClCH),2.44(t,J=6.78Hz,2H,NCCH),2.063(m,2H,CHCHCH);

IR(neat,cm−1)2247(vCN),1716(vCO),1616(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z206(0.3,M),170(2),156(72),128(20),120(100),115(26),101(18),92(34);
HRMS CClNO(=M−CHCl)としての計算値156.0216、実測値156.0215。
【0069】
(Z)−6−(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,4−ジクロロ−3−ヘキセン−2−オン:
無色液体;
H NMR(CDCl,300MHz)δ6.76(s,1H,CH),4.07(s,2H,ClCH),3.87(t,J=6.39Hz,2H,SiOCH),3.19(t,J=6.39Hz,2H,CClCH),0.86(s,9H,t−Bu),0.05(s,6H,SiMe);
13C{H}NMR(CDCl,75MHz)δ189.0(CO),157.0(=CCl),123.4(CH),60.5(OCH),48.9(ClCH),

29Si{H}NMR(CDCl,60MHz)δ20.3;
IR(neat,cm−1)1693(vCO),1603(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z281(2,[M−CH),239(100),209(35),183(11),169(16),93(86);
HRMS C1119ClSi(=M−CH)としての計算値281.0531、実測値281.0539。
【0070】
(E)−6−(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,4−ジクロロ−3−ヘキセン−2−オン:
無色液体;
H NMR(CDCl,300MHz)δ6.56(s,1H,CH),4.21(s,2H,ClCH),3.85(t,J=5.82Hz,2H,SiOCH),2.64(t,J=5.82Hz,2H,CClCH),0.85(s,9H,t−Bu),0.03(s,6H,SiMe);
13C{H}NMR(CDCl,75MHz)δ189.4(CO),148.6(CCl),122.7(CH),60.0(OCH),49.5(ClCH),

29Si{H}NMR(CDCl,60MHz)δ20.6;
IR(neat,cm−1)1699(vCO),1610(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z297(0.05,M),239(41),209(87),123(22),93(100);
HRMS C13ClSi(=M−(t−Bu))としての計算値239.0062、実測値239.0062。
【0071】
(Z)−1,4−ジクロロ−5−フェニル−3−ペンテン−2−オン:
淡黄色液体;
H NMR(CDCl300MHz)δ7.35−7.20(m,5H,Ph),6.43(s,1H,CH),4.22(s,2H,CHCl),3.76(s,2H,PhCH);

IR(KBr,cm−1)1716(vCO),1614(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z228(5,M),179(100),144(72),115(63);
元素分析C1110ClOとしての計算値C,57.67;H,440、実測値C,57.91;H,4.51;
【0072】
(E)−1,4−ジクロロ−5−フェニルー3−ペンテンー2−オン:
淡黄色液体;
H NMR(CDCl300MHz)δ7.29−7.16(m,5H,Ph),6.69(s,1H,CH),4.29(s,2H,CHCl),4.13(s,2H,PhCH);

IR(KBr,cm−1)1693(vCO),1597(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z228(2,M),179(39),144(24),115(100);
HRMS C1110ClOとしての計算値228.0109、実測値228.0101。
【0073】
(Z)−1,4−ジクロロ−4−フェロセニル−3−ブテン−2−オン
紫色固体;
H NMR(CDCl300MHz)δ6.79(s,1H,CH),4.72(br−s,2H,ClCCCH),4.32(br−s,2H,ClCCCHCH),4.24(s,2H,CHCl),4.21(s,5H,Cp);

(無置換Cp),70.9(3−Cp),70.6(1−Cp),49.7(CHCl);
IR(KBr,cm−l)1697(vCO),1568(vC=C);
MS(EI,70eV,%相対強度)m/z322(87,M),304(20),210(17),156(50),131(100),89(94);
HRMS C1412ClOFeとしての計算値321.9615、実測値321.9610。
【0074】
実施例29 1−オクチンとフェニルクロロアセチルクロリドの反応
アルゴン雰囲気下、1−オクチン(1mmol)、フェニルクロロアセチルクロリド(1mmol)、ロジウム錯体としてRh(acac)(CO)(0.02mmol)、補助配位子としてAsPh(0.02mmol)をトルエン(1mL)に加え、110℃で14時間加熱攪拌した。反応終了後H NMRスペクトル分析用内部標準物質として1,1,2,2−テトラクロロエタン(17.9mg)を加えた。H NMRスペクトル分析の結果、(Z)−1,4−ジクロロ−1−フェニル−3−デセン−2−オンが75%の収率で生成していることが判明した。(E)体の生成は認められなかった。反応液を減圧下に濃縮し、ヘキサン、次いでヘキサン−メチルターシャリーブチルエーテル(95:5)混合液を用いてカラムクロマトグラフィーに伏し、さらにヘキサン−ジクロロメタン(99:1)混合液を用いて分取薄層クロマトグラフィーで繰り返し精製することで、(Z)−1,4−ジクロロ−1−フェニル−3−デセン−2−オンが単離された。
【0075】
本生成物は文献未収載の新規化合物であり、その性状、物性値や分光学データ等は以下の通りであった。
【0076】
(Z)−1,4−ジクロロ−1−フェニルー3−デセン−2−オン:
無色液体;
H NMR(CDCl,300MHz)δ7.41−7.20(m,5H,Ph),6.52(s,1H,CH),5.35(s,1H,Ph(Cl)CH),2.93(t,J=8.16Hz,2H,5位CH),1.57(m,2H,6位CH),1.40−1.15(m,6H,7−9位CH),0.87(t,J=6.59Hz,3H,10位CH);
13C{H}NMR(CDCl,75MHz)δ189.04(CO),161.2(CCl),134.7(ipso−C),129.2(p−C),129.1

22.5(C),14.0(C10);
IR(neat,cm−1)1699(vCO),1599(vC=C);
MS(70eV,%相対強度)m/z298(7,M),263(10),207(100),171(7),115(17),107(44),91(20);
HRMS C1620ClOとしての計算値298.0891、実測値298.0892。
【0077】
実施例30 1−オクチンとジクロロアセチルクロリドの反応
アルゴン雰囲気下、1−オクチン(2mmol)、ジクロロアセチルクロリド(2mmol)、ロジウム錯体としてRh(acac)(CO)(ロジウム原子あたり0.1mmol)、補助配位子としてAsPh(0.1mmol)をトルエン(2mL)に加え、110℃で14時間加熱攪拌した。反応終了後H NMRスペクトル分析用内部標準物質としてp−ジメトキシベンゼン(20.0mg)を加えた。H NMRスペクトル分析の結果、(Z)−1,1,4−トリクロロ−3−デセン−2−オンが70%の収率で生成していることが判明した。(E)体の生成は認められなかった。反応液を減圧下に濃縮し、ヘキサン、次いでヘキサン−アセトン(99:1)混合液を用いてカラムクロマトグラフィーに伏し、さらにヘキサン−アセトン(99:1)混合液を用いて分取薄層クロマトグラフィーで繰り返し精製することで、(Z)−1,1,4−トリクロロ−3−デセン−2−オンが単離された。
【0078】
本生成物は文献未収載の新規化合物であり、その性状、物性値や分光学データ等は以下の通りであった。
【0079】
(Z)−1,1,4−トリクロロ−3−デセン−2−オン:
無色液体;
H NMR(300MHz,CDCl)δ6.76(s,1H,CHCl),5.85(s,1H,=CH),2.54(t,J=7.9Hz,2H,=CHCH),0.78(m,2H,6位CH),1.4−1.2(m,6H,7−9位CH),0.88(t,J=7.16Hz,3H,CH);
13C{H}NMR(75MHz,CDCl)δ183.0(CO),157.1(=CCl),115.6(=CH),70.1(CHCl),42.1(C),31.3(C),28.1(C),27.2(C),22.4(C),14.0(C10);
GCMS(70eV,%相対強度)m/z222(0.06,[M−Cl]),173(100),109(39),109(61);
IR(neat,cm−1)1708(vCO),1606(vC=C);
HRMS C1015ClOとしての計算値256.0188、実測値256.0182。
【0080】
実施例31 p−ジエチニルベンゼンとクロロアセチルクロリドの反応
アルゴン雰囲気下、p−ジエチニルベンゼン(1mmol)、クロロアセチルクロリド(2mmol)、ロジウム錯体としてRh(acac)(CO)(ロジウム原子あたり0.1mmol)、補助配位子としてAsPh(0.1mmol)をトルエン(2mL)に加え、110℃で14時間加熱攪拌した。反応終了後p−ジメトキシベンゼン(28.6mg)をGC、H NMRスペクトル分析用内部標準物質として加えた。H NMRスペクトル分析の結果、1,4−ビス(1,4−ジクロロ−3−オキソー1−ブテン−1−イル)ベンゼンが41%の収率で生成していることが判明した。その他の異性体の生成は認められなかった。反応液を減圧下に濃縮し、ヘキサン、次いでヘキサン:メチル−t−ブチルエーテル(70:30)混合液を用いてカラムクマトグラフィーに伏し、さらにヘキサン:メチル−t−ブチルエーテル(70:30)混合液を用いて分取薄層クロマトグラフィーで繰り返し精製することで、1,4−ビス(1,4−ジクロロ−3−オキソ−1−ブテン−1−イル)ベンゼンが単離された。
【0081】
本生成物は文献未収載の新規化合物であり、その性状、物性値や分光学データ等は以下の通りであった。
【0082】
1,4−ビス(1,4−ジクロロ−3−オキソ−1−ブテン−1−イル)ベンゼン:
黄色固体、融点132.2℃(分解);
H NMR(CDCl,300MHz)δ7.71(s,4H,Ph),7.10(s,2H,CH),4.31(s,4H,ClCH);
13C{H}NMR(CDCl,75MHz)δ189.4(CO),145.0(CCl),139.3(Ph基ipso位),127.8(Ph基2,3,5,6位),120.8(CH),49.1(ClCH);
IR(neat,cm−1)1700(vCO),1585(vC=C
GCMS(70ev,%相対強度)m/z350(5,M),301(52),189(100),139(47),126(95),77(20);
HRMS C1410Clとしての計算値349.9435、実測値349.9435。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、炭素数10以下の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数12以下の芳香族炭化水素基、炭素数13以下のアラルキル基、フェロセニル基、シリル基を表し、R及びRは、水素原子、炭素数10以下の脂肪族飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数12以下の芳香族炭化水素基、炭素数13以下のアラルキル基、フェロセニル基を表し、R及びRは互いに同じであっても異なっていても良く、R、R及びRが芳香族炭化水素基又はアラルキル基で構成される場合の芳香族炭化水素基又はアラルキル基中の芳香環は複素芳香環であっても良い。また、R、R及びRはハロゲン原子を除く官能基で置換されていても良い。)で表される1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

(式中、Rは、水素原子、炭素数10以下の脂肪族飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数12以下の芳香族炭化水素基、炭素数13以下のアラルキル基、フェロセニル基、シリル基を表す。Rが芳香族炭化水素基又はアラルキル基で構成される場合の芳香族炭化水素基又はアラルキル基中の芳香環は複素芳香環であっても良く、また、官能基によって置換されていても良い。)で表される末端アセチレン化合物と、一般式(3)
【化3】

(式中、R及びRは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数10以下の脂肪族飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数12以下の芳香族炭化水素基、炭素数13以下のアラルキル基、フェロセニル基を表し、RとRは互いに同じであっても異なっていても良い。R及びRが芳香族炭化水素基又はアラルキル基で構成される場合の芳香族炭化水素基又はアラルキル基中の芳香環は複素芳香環であっても良く、また、官能基によって置換されていても良い。)で表されるアルファクロロカルボン酸塩化物とを、ロジウム錯体触媒の存在下に反応させることを特徴とする、一般式(4)
【化4】

(式中、R、R及びRは、前記と同じ意味を表す。)で表される1,4−ジクロロ−3−ブテン−2−オン化合物の製造方法。
【請求項3】
3価のヒ素化合物を配位子とするロジウム錯体を触媒として用いる請求項2の製造方法。
【請求項4】
反応系中でロジウム錯体に3価のヒ素化合物を補助配位子として添加して活性種を発生させそのまま触媒として用いる請求項2の製造方法。

【公開番号】特開2008−189646(P2008−189646A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54811(P2007−54811)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】