説明

1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(DHNA)を含有する飲食品の製造方法

【課題】1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(DHNA)を含有する飲食品の製造方法として、安全性に優れ、かつ風味を損なわずに使用できる新しい方法を提供することを目的とする。
【解決手段】DHNAを産生する微生物を培養し、DHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を得る工程、および該DHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を、飲食品の原材料を含むベース溶液に添加してDHNA含有溶液を得る工程を少なくとも含み、該DHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を添加する前のベース溶液および該DHNA含有溶液の少なくとも一方の溶液の液中溶存酸素を低下させる、DHNAを含有する飲食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(以下、DHNAと称す)を含有する飲食品の製造方法およびDHNAを含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
DHNAは、染料、顔料及び感光材料等、工業材料として有用であることが知られており、これまでにも有機化学合成法による種々の合成法について報告されている(例えば特許文献1〜3参照)。上記方法は、有機溶媒中高温高圧下での反応、あるいは触媒などに飲食用には適さない試薬等を用いる必要があったことから、このような方法で得られたDHNAを飲食品や医薬品に用いることは今までになかった。
【0003】
そこで、本発明者らはこれらに変わる方法につき研究を進めたところ、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属菌によりDHNAを菌体内外に大量に産生させる方法を見出した。そして、この培養物から採取したDHNA含有組成物、又はDHNAもしくはその塩が、腸内フローラの改善や牛乳摂取時に牛乳不耐症患者にみられる腹部不快症状を低減する作用を有し、さらには骨芽細胞の分化と機能発現を促進し、破骨細胞の形成を抑制することから、代謝性骨疾患の予防治療等にも有用であることを見出した(特許文献4参照)。
【0004】
しかしながら、プロピオニバクテリウム属菌の培養液を、DHNAが有する生理機能を付加するための食品素材として飲食品或いは医薬品に利用するには、これらの製造時や保存中、DHNAの残存量が大幅に減少するという欠点があった。例えば、プロピオニバクテリウム属菌培養物に含まれるビフィズス因子の安定化に、アスコルビン酸、次亜硫酸、及び/又は無水酢酸を使用することが知られているが(特許文献5参照)、この方法を適用するには、飲食品本来の風味を損なう、あるいは食品添加物として認められていないため使用できない、等の問題点が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57ー128655号公報
【特許文献2】特開昭59−186942号公報
【特許文献3】特開昭60−104037号公報
【特許文献4】国際公開第03/016544号
【特許文献5】特開平10−108672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような技術の現状に鑑みてなされたもので、DHNAを含有する飲食品の製造方法として、安全性に優れ、かつ風味を損なわずに使用できる新しい方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために鋭意検討した結果、DHNAは酸化されやすく、特に酸素存在下における加熱処理がDHNAを容易に酸化させ、液中の含有量を著しく低下させることを確認した。そこで、本発明者らは、DHNAを含有する溶液を加熱処理する前に、液中の溶存酸素を減少せしめたところ、意外にも、安定剤を添加することなくDHNA含有
量の低下を有意に抑制できることを見出した。本発明は、これらの新知見に基づき完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下である。
1.1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(DHNA)を産生する微生物を培養し、DHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を得る工程、および
該DHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を、飲食品の原材料を含むベース溶液に添加してDHNA含有溶液を得る工程を少なくとも含み、
該DHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を添加する前のベース溶液および該DHNA含有溶液の少なくとも一方の溶液の液中溶存酸素を低下させる、DHNAを含有する飲食品の製造方法。
2.以下の工程(I)〜(III)を少なくとも含む、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(DHNA)を含有する飲食品の製造方法。
(I)DHNAを産生する微生物を培養し、DHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を得る工程
(II)工程(I)で得られたDHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を、前記飲食品の原材料を含むベース溶液に添加してDHNA含有溶液を得る工程
(III)工程(II)で得られたDHNA含有溶液の液中溶存酸素を低下させる工程
3.以下の工程(I)〜(III)を少なくとも含む、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(DHNA)を含有する飲食品の製造方法。
(I)DHNAを産生する微生物を培養し、DHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を得る工程
(II)前記飲食品の原材料を含むベース溶液の液中溶存酸素を低下させる工程
(III)工程(II)で液中溶存酸素を低下させた前記ベース溶液に、工程(I)で得られたDHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を添加してDHNA含有溶液を得る工程
4.さらにDHNA含有溶液を加熱処理する工程を含む前項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
5.加熱処理時に該DHNA含有溶液の液中溶存酸素を低下させる前項4に記載の製造方法。
6.加熱処理後の該DHNA含有溶液の液中溶存酸素を低下させる前項4または5に記載の製造方法。
7.飲食品が乳、乳製品を含有する飲料、乳酸菌飲料、豆乳、野菜汁、果汁、茶系飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、炭酸飲料、アルコール飲料および汁物類からなる群より選ばれる少なくとも1種の液状飲食品である前項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
8.飲食品が乳、又は乳製品を含有する溶液であることを特徴とする前項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
9.製造工程の一部または全工程において酸素を低減した状態にする前項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
10.前項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法によって製造される飲食品。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】DHNA含有プレーンヨーグルト調製中及び保存中のDHNA濃度変化を示すグラフである。
【図2】DHNA含有野菜飲料保存中のDHNA濃度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。
【0011】
本発明を実施するには、液中の溶存酸素を低下ないし除去しなければならない。その方法として、例えば、不活性ガスを液中に吹き込み、液中の溶存酸素と置換させ、窒素ガス等の不活性ガスを飽和状態にすればよい。不活性ガス(以下、窒素ガスをその代表として本発明を説明する)の吹き込みは、タンク内及び/又はライン内で行なうことができる。
【0012】
不活性ガスの吹き込みの際の温度はDHNA添加前であれば特に限定されない。添加後に行う場合には、DHNA添加時の温度と同等もしくはそれ以下で行うことが望ましく、上記のほか、タンク内の空気を予め窒素ガスで置換しておくこと、タンク内に液をいれてから、上部を窒素ガス通気し圧力をかけるなど、溶存酸素の除去方法として公知の方法(特開平4−36178号公報)が本発明において適用可能である。
【0013】
更に、溶中溶存酸素濃度が好ましくは5ppm以下、より好ましくは2ppm以下を保持できるよう製造工程の一部或いは全工程を酸素と遮断または不活性ガスで置換等により酸素を低減した雰囲気下にすることも好ましく、製品を充填、包装する際にも同様に行うことができる。
【0014】
DHNAが溶液中で安定であるためには、液中溶存酸素濃度は、5ppm以下、より好ましくは2ppm以下に調整される。液中溶存酸素濃度の下限は特に限定されないが、好ましくは0ppm以上である。
【0015】
ベースとなる溶液にDHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩(国際公開第03/016544号参照)を添加してDHNA含有液を調製する際は、ベース溶液の溶存酸素を窒素置換により除去した状態で添加を行なうことが好ましく、DHNA含有組成物の製造例は、国際公開第03/016544号に記載されている。
【0016】
具体的には、脱脂粉乳や脱脂粉乳のタンパク質分解処理物にビール酵母エキスを添加するなどして調製した培地に、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)を接種して培養することで、DHNA含有組成物を得ることができる。
【0017】
DHNAの添加量としては、用途、形態に応じて適宜増減し、特に限定されないが、上限値としては、好ましくは1mg/ml以下、さらに好ましくは500μg/ml以下、下限値としては、好ましくは0μg/mlより大きく、さらに好ましくは0.01μg/ml以上である。
【0018】
腹部不快症状改善を目的とする場合、一例として、最終製品100mlあたりDHNA含有量が11μg程度となるよう添加する(国際公開第03/016544号を参照)。その際、加熱殺菌条件や保存条件を考慮して、添加量を適宜調整することができる。
【0019】
DHNA添加時の温度は、90℃以下、好ましくは45〜40℃以下、より好ましくは10℃程度であり、DHNA添加後に液中の溶存酸素量を低減する場合には、温度が低いほど好ましい。DHNA添加時の温度の下限は特に限定されないが、好ましくは0℃以上である。
【0020】
窒素ガスの置換時期は特に限定されることはなく、製造工程のいずれにおいても行うことができるが、DHNAの液中残存量は加熱による影響を最も受けやすいため、DHNA含有液を加熱前、特に加熱殺菌処理する前に溶存酸素を減少せしめることが本発明において最も効果的である。
【0021】
加熱殺菌処理する際には、例えば牛乳の場合、乳等省令に定められており、一般に低温
保持殺菌、高温保持殺菌、高温短時間殺菌、超高温瞬間殺菌などの殺菌方法があるが、本発明はこれらを含む殺菌法、滅菌法ともに用いることができ、その際、バッチ式、連続式の両者とも適用可能である。
【0022】
殺菌方法により、処理温度、処理時間は異なるが、好ましくは50℃〜200℃、0.1秒〜1時間の範囲から上記殺菌方法に応じて選択される。前者を含め、加熱殺菌時、DHNA含有液が酸素と接触する機会が多い場合、液中の溶存酸素量は低減された状態に保たれることが望ましい。そこで、加熱殺菌中も継続して窒素ガス置換を行うことが好ましい。
【0023】
不活性ガスとしては、具体的に、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガス等が挙げられる。中でも、窒素ガスは、空気中に大量に存在し、比較的コストが低く、しかも安全性が確認されており、飲食品の風味・品質に影響を与えることがないことから好ましくは窒素ガスが用いられる。
【0024】
また、対象とする溶液への抗酸化剤の添加もDHNAの安定化に有用である。抗酸化剤の添加時期としては、DHNA添加前が好ましい。
【0025】
用いる抗酸化剤としては、例えば、次亜硫酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、カロチン、トコフェロール、抗酸化作用を有するポリフェノール類があげられ、ポリフェノール類としては、合成品の他、天然物としては、茶類、ぶどう、レモン、コーヒー、むらさき芋、大豆等が例示でき、これらのポリフェノールを多く含む果実類や野菜類、種子類、植物の葉等の搾汁液のほか、水や有機溶媒による抽出物を用いてもよく、これらの濃縮物や精製物、乾燥物を用いることもできる。
【0026】
抗酸化剤の添加量は、抗酸化剤の種類に応じて、通常抗酸化の用途として用いる添加量と同等もしくはそれ以上加えればよい。例えば、不活性ガスのバブリングを行わず、アスコルビン酸を単独で添加する場合には、溶液の全重量に対し、0.01重量%以上入れることが好ましい。
【0027】
本発明が適用可能な対象物は、溶存酸素を低減させる際、液状物であれば特に限定されない。例えば溶液が乳、乳製品を含有する飲料、乳酸菌飲料、豆乳、野菜汁、果汁(これらを含有する飲料を含む)、緑茶、紅茶、ウーロン茶等の茶系飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、アミノ酸、ビタミン等を含み、特にスポーツ時の水分補給や栄養補給に適したスポーツ飲料、健康増進を目的とし栄養成分が強化された栄養飲料、炭酸飲料等の清涼飲料、アルコール飲料、スープ、味噌汁、澄まし汁などの汁物類を始めとし飲用として食すことができる食品の他、最終的には、液状に限らず、流動状、ペースト状、ゲル状、粉状、顆粒状、タブレット状、固形状いずれの形態をとることも可能である。
【0028】
具体的には、上記飲食品をゼリー状、ゲル状、フリーズドライ状等に加工したものやとろみをつけたもの、ヨーグルト、チーズ、クリーム、バター、アイスクリーム、調製粉乳等の乳製品、スプレッド、ジャム等のペースト類、ゼリー、プリン、ババロア等のデザート類、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料類、流動食等が挙げられる。
【0029】
これらの食品に限らず、健康食品に利用することができ、この健康食品には、特定保健用食品、保健機能食品等の機能性食品が含まれる。また、DHNAは、有機溶媒への溶解性や安定性に優れているため、本発明を安全性に優れた医薬品の製造に利用することもできる。
【0030】
一般にDHNAとしては、ヒトまたは動物の体重1kgあたり1日量で好ましくは0.
03〜3μg、さらに好ましくは0.1〜1μg摂取される。
【0031】
また、DHNAを含有する最終製品においても、溶存酸素が低下した状態に保たれることが望ましい。保存の際、必要に応じてガスバリヤー性の高いプラスチック、例えばポリ塩化ビニルアルコールや金属箔等の単用、或いはこれらがラミネートされた容器、包装体を用いることができる。また、遮光性の高い容器、包装体を使用してもよい。
【0032】
以下、実施例をあげ本発明をさらに詳述するが、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0033】
実施例1 DHNAの定量法
メタノール5ml及び1%(w/v)アスコルビン酸ナトリウム水溶液4mlでコンディショニングした固相抽出カラム(Oasis HLB、Waters(社)製)に、サンプル5mlを通液する。次に1%(w/v)アスコルビン酸ナトリウム水溶液5mlで洗浄し、10%(w/v)アスコルビン酸ナトリウム水溶液/メタノール(1:9)4mlで溶出し、得られた溶出液を減圧濃縮する。
【0034】
そのうち1mlを取り、上記アスコルビン酸ナトリウム含有メタノールでフィルアップする。これを0.5μmフィルターでろ過したものをHPLC(カラム:Cadenza
CD−C18(4.6×150mm、インタクト(社)製)、移動相:アセトニトリル、メタノール、水及び酢酸(10:20:200:0.1、vol/vol/vol/vol、アンモニア水溶液でpH7に調整)、検出器:UV検出器、検出波長:254nm、流速:1.5ml/min、カラム温度:45℃、試料注入量:20μl)に供する。検量線は、DHNA標品(046−22422、和光純薬工業(株)製)の1mg/ml(メタノール溶液)標準原液を調製し、メタノールで適宜希釈した溶液を用いて作成する。
【0035】
実施例2 DHNA含有プレーンヨーグルトの製造法及び窒素ガス置換試験
DHNA含有組成物を添加したプレーンヨーグルトの調製を行うために、まずL.bulgaricus JCM 1002T、S.thermophilus ATCC 19258をそれぞれ10重量%脱脂粉乳培地に1重量%接種し、37℃で15時間培養してバルクスターターを調製した。
【0036】
DHNA含有組成物を除いた原材料、すなわち市販の牛乳80重量%、脱脂粉乳2重量%、水14.5重量%を窒素ガスでバブリングしながら調合した。ミックスの溶存酸素濃度は、バブリング前10ppm程度であったが、窒素ガスのバブリングにより1ppm未満まで低下した。
【0037】
このミックスに、国際公開第03/016544号の実施例2に従って調製したDHNA含有組成物(DHNA含有量 40μg/ml)を1.5重量%添加し、95℃、5分間バッチ式で加熱殺菌後、43℃まで冷却し、前記各バルクスターターを1重量%接種した後、滅菌済みの非バリヤ性のポリスチレン製容器(アサヒプラスチックス(株)製)に無菌充填し密封した。
【0038】
なお、窒素のバブリングは、スターターを接種するまで継続し、充填後、43℃で4時間発酵させた。発酵終了後は5℃で冷却を行い、得られたDHNA含有プレーンヨーグルトの保存は暗所で10℃で2週間行なった。プレーンヨーグルト調製中に窒素ガスによるバブリングを行わなかった場合をコントロールとした。
【0039】
本実施例のプレーンヨーグルトの製造において、ミックス殺菌前、殺菌後、パルクスターター接種直後、発酵終了までの各工程と、保存1週間及び2週間経過時のプレーンヨーグルト中に含まれるDHNA量を上記試験例に従って測定した。その結果を図1に示す。
【0040】
この図から明らかなように、調製中及び保存中のDHNAの損失は、プレーンヨーグルト調製中にミックスを窒素ガスでバブリングすることによりほぼ完全に抑制されることが判明した。一方、コントロールでは、加熱殺菌工程により加熱殺菌前と比較して約30%量までDHNA量が低下することが認められた。
【0041】
実施例3 DHNA含有野菜飲料の製造法及び窒素ガス置換試験
DHNA含有組成物を添加した野菜飲料の調製を行うために、まずニンジン濃縮汁Bx42 200Kg、トマト濃縮汁Bx60GY 20Kg、野菜ミックス汁36Kg(全てサンヨーフーズ(株)製)、アップル透明果汁Bx70 280Kg(三菱商事(株)製)を計量後、混合し、そこにアスコルビン酸 6Kg、及びレモン香料4Kg(湘南香料(株)製)を添加し、水を加え、4tにした。
【0042】
このミックスに、国際公開第03/016544号の実施例2に従って調製したDHNA含有組成物(DHNA含有量58μg/ml、ただし、乳糖の途中添加はせず、培養途中に窒素ガス通気からエアレーションに切り替える)を10℃で0.2重量%もしくは0.4重量%添加することでDHNA含有組成物を添加した野菜飲料を調製した。
【0043】
このミックスをプレートによって加熱する直前に50.0L/分の流量で10℃で溶存酸素が5ppmになるまで窒素をバブリングした。その後140℃、3秒間の殺菌、250Kg/cmに均質化したミックスを25℃まで冷却し、テトラ・ブリック−アセプティック(テトラパック(株)製)に無菌充填した。得られたDHNA含有組成物を添加した野菜飲料の保存は暗所で5、25、30、40、55℃にて2ヶ月間行った。
【0044】
図2に野菜飲料中のDHNA含有量(μg/250ml)を示す。その結果、常温(25℃)保存でもDHNA含有量の低下を長期に渡って抑制できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によって、液中の溶存酸素を低減させることで、飲食品本来の風味を損なうことなく、DHNA含有量の低下を有意に抑制できることが初めて可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(DHNA)を産生する微生物を培養し、DHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を得る工程、および
該DHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を、飲食品の原材料を含むベース溶液に添加してDHNA含有溶液を得る工程を少なくとも含み、
該DHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を添加する前のベース溶液および該DHNA含有溶液の少なくとも一方の溶液の液中溶存酸素を低下させる、DHNAを含有する飲食品の製造方法。
【請求項2】
以下の工程(I)〜(III)を少なくとも含む、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(DHNA)を含有する飲食品の製造方法。
(I)DHNAを産生する微生物を培養し、DHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を得る工程
(II)工程(I)で得られたDHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を、前記飲食品の原材料を含むベース溶液に添加してDHNA含有溶液を得る工程
(III)工程(II)で得られたDHNA含有溶液の液中溶存酸素を低下させる工程
【請求項3】
以下の工程(I)〜(III)を少なくとも含む、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(DHNA)を含有する飲食品の製造方法。
(I)DHNAを産生する微生物を培養し、DHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を得る工程
(II)前記飲食品の原材料を含むベース溶液の液中溶存酸素を低下させる工程
(III)工程(II)で液中溶存酸素を低下させた前記ベース溶液に、工程(I)で得られたDHNA含有組成物又はDHNAもしくはその塩を添加してDHNA含有溶液を得る工程
【請求項4】
さらにDHNA含有溶液を加熱処理する工程を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
加熱処理時に該DHNA含有溶液の液中溶存酸素を低下させる請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
加熱処理後の該DHNA含有溶液の液中溶存酸素を低下させる請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
飲食品が乳、乳製品を含有する飲料、乳酸菌飲料、豆乳、野菜汁、果汁、茶系飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、炭酸飲料、アルコール飲料および汁物類からなる群より選ばれる少なくとも1種の液状飲食品である請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
飲食品が乳、又は乳製品を含有する溶液であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
製造工程の一部または全工程において酸素を低減した状態にする請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法によって製造される飲食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−233577(P2010−233577A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129989(P2010−129989)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【分割の表示】特願2005−504118(P2005−504118)の分割
【原出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(000006138)明治乳業株式会社 (265)
【Fターム(参考)】