説明

1,4−ジ置換3−シアノピリドン誘導体とそれらのポジティブmGluR2−受容体モジュレーター

【課題】
【解決手段】本発明は新規な化合物、特に、新規な式(I)のピリジノン誘導体(その任意の立体化学的異性体形態も含む)あるいはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物に関する。
【化60】


式中の全ての基は明細書および請求項において定義されている。本発明の化合物は、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ2(「mGluR2」)のポジティブアロステリックモジュレーターであり、グルタミン酸機能障害と関連する神経障害および精神障害ならびに代謝型受容体のmGluR2サブタイプが関与する疾患の治療または予防に有用である。特に、このような疾患は、不安、統合失調症、片頭痛、うつ病およびてんかんからなる群から選ばれる中枢神経系障害である。本発明はまた、医薬組成物、このような化合物およびこのような組成物の調製方法、ならびにmGluR2が関与するこのような疾患の予防または治療のためのこのような化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ2(「mGluR2」)のポジティブアロステリックモジュレーターであり、かつグルタミン酸機能障害と関連する神経および精神障害ならびに代謝型受容体のmGluR2サブタイプが関与する疾患の治療または予防に有用である新規なピリジン−2−オン誘導体に関する。本発明はまた、このような化合物を含む医薬組成物、このような化合物およびこのような組成物の調製方法、ならびにmGluR2が関与する神経障害および精神障害および疾病の予防または治療のためのこのような化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタミン酸塩(エステル)は、哺乳類の中枢神経系における主要なアミノ酸神経伝達物質である。グルタミン酸塩(エステル)は、学習および記憶だけでなく、知覚、シナプス可塑性の発達、運動制御、呼吸、および心臓血管機能の調節などの多くの生理機能に大きな役割を果たす。さらにグルタミン酸塩(エステル)は、グルタミン酸神経伝達の不均衡が存在する様々な神経疾患および精神病の中核をなす。
【0003】
グルタミン酸塩(エステル)は、イオンチャネル型グルタミン酸受容体チャネル(iGluR)ならびに急速な興奮性伝達に関与するNMDA受容体、AMPA受容体およびカイニン酸受容体の活性化を通じてシナプス神経伝達を仲介する。
【0004】
加えて、グルタミン酸塩(エステル)は、シナプス効果の微調整に寄与するさらに修飾的な役割を有する代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)を活性化する。
【0005】
グルタミン酸塩(エステル)は、本明細書ではオルソステリック結合部位と呼ばれる受容体の大きな細胞外N末端ドメインへ結合することによってmGluRを活性化する。この結合は受容体における構造変化を引き起こし、Gタンパク質および細胞内シグナル伝達経路の活性化をもたらす。
【0006】
mGluR2サブタイプは、Gαiタンパク質の活性化を介してアデニル酸シクラーゼと負の結合(negatively coupled)をし、その活性化はシナプスにおけるグルタミン酸放出の阻害を引き起こす。中枢神経系(CNS)において、mGluR2受容体は主に、皮質、視床領域、副嗅球、海馬、扁桃、尾状核被殻および側坐核にわたって豊富にある。
【0007】
mGluR2の活性化は不安障害の治療に効果的であることが臨床試験で示された。さらに、様々な動物モデルにおいてmGluR2の活性化が有効なことが示され、したがって、統合失調症、てんかん、中毒/薬物依存症、パーキンソン病、疼痛、睡眠障害およびハンチングトン病の新規な治療手段である可能性があることを示している。
【0008】
現在まで、mGluRを標的とする利用可能な薬理学的手段のほとんどは、mGluRファミリーのいくらかのメンバーを活性化するオルソステリックリガンド(グルタミン酸塩(エステル)の構造的アナログであるので)である。
【0009】
mGluRにおいて作用する選択的化合物を開発するための新規な経路としては、高度に保存されたオルソステリック結合部位とは異なる部位に結合することによって受容体を修飾するアロステリック機構を通して作用する化合物を同定することである。
【0010】
mGluRのポジティブアロステリックモジュレーターは、新規な薬理学的存在として最近になって出現し、この魅力的な選択肢を提供している。種々の化合物がmGluRのポジティブアロステリックモジュレーターとして記載されている。
【0011】
WO2004/092135(NPS社およびアストラゼネカ社)(特許文献1)、WO2004/018386(特許文献2)、WO2006/014918(特許文献3)およびWO2006/015158(メルク社)(特許文献4)、WO2001/56990(イーライリリー社)(特許文献5)ならびにWO2006/030032(アデックス社およびヤンセンファーマ社)(特許文献6)は、それぞれフェニルスルホンアミド、アセトフェノン、インダノン、ピリジルメチルスルホンアミドおよびピリジノン誘導体をmGluR2のポジティブアロステリックモジュレーターとして記載している。具体的に開示された化合物はいずれも本発明の化合物とは構造的に関連していない。
【0012】
WO2007/104783(特許文献7)は、代謝型受容体サブタイプ2(「mGluR2」)のポジティブアロステリックモジュレーターである1,4−二置換3−シアノ−ピリドン誘導体を記載している。
【0013】
このような化合物は、自身は受容体を活性化しないことが示され、むしろ、このような化合物は、受容体のみでは最小応答が誘発されるグルタミン酸塩(エステル)濃度に対して最大応答を受容体に奏させることができる。変異解析では、mGluR2のポジティブアロステリックモジュレーターの結合はオルソステリック部位では起こらず、むしろ受容体の7回膜貫通型領域内に位置するアロステリック部位で起きることがはっきりと示された。
【0014】
動物データは、mGluR2のポジティブアロステリックモジュレーターが不安症および精神病モデルにおいて、オルソステリックアゴニストで得られたものに類似する効果があることを示唆している。mGluR2のアロステリックモジュレーターは、恐怖増強的驚愕、およびストレス誘発性異常高熱の不安症モデルにおいて活性があることが示された。さらに、このような化合物は、ケタミンまたはアンフェタミン誘発性の運動過剰の改善ならびにアンフェタミン誘発性の聴覚性驚愕効果のプレパルス阻害の破壊を伴う統合失調症モデルの改善において活性があることが示された(「ジャーナル・オブ・ファーマコロジー・アンド・エクスペリメンタルセラピーズ(J. Pharmacol. Exp. Ther.)」2006年、318、173〜185(非特許文献1);「サイコファーマコロジー(Psychopharmacology)」2005年、179、271〜283)(非特許文献2)。
【0015】
最近の動物研究はさらに、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ2であるビフェニル−インダノン(BINA)の選択的なポジティブアロステリックモジュレーターは幻覚剤の精神病モデルをブロックすることを示し、これは統合失調症におけるグルタミン酸作動性機能障害の治療のためのmGluR2受容体を標的化する戦略をサポートするものである(「モレキュラーファーマコロジー(Mol. Pharmacol.)」2007年、72、477〜484(非特許文献3))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2004/092135号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/018386号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2006/014918号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2006/015158号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2001/56990号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006/030032号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2007/104783号パンフレット
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・ファーマコロジー・アンド・エクスペリメンタルセラピーズ(J. Pharmacol. Exp. Ther.)、2006年、318、173〜185.
【非特許文献2】サイコファーマコロジー(Psychopharmacology)、2005年、179、271〜283.
【非特許文献3】モレキュラーファーマコロジー(Mol. Pharmacol.)、2007年、72、477〜484
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ポジティブアロステリックモジュレーターは、グルタミン酸塩(エステル)応答を増強できるが、LY379268またはDCG−IVなどのオルソステリックmGluR2アゴニストに対する応答を増強することも示されている。これらのデータは、mGluR2が関連する上記の神経障害および精神障害を治療するための、mGluR2のポジティブアロステリックモジュレーターとmGluR2のオルソステリックアゴニストとの組み合わせを用いるさらに別の新規な治療手法の根拠を示す。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の化合物は、3位がシアノそして4位が置換されていてもよいフェニル(このフェニルの4位は、置換されたピリジニルオキシで置換されている)で置換された中心にあるピリジン−2−オン部分を特徴とする。本発明の化合物は、強力なmGluR2のポジティブアロステリックモジュレーターであり、向上した心血管系の安全性プロフィールを有する。
【0020】
発明の説明
本発明は、代謝型グルタミン酸受容体2修飾活性を有する化合物に関する。本発明は式(I)の化合物(その任意の立体化学的異性体形態も含む)あるいはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物を提供し、
【0021】
【化1】

【0022】
式中、R1はC4-6アルキル、またはC3-7シクロアルキルで置換されたC1-3アルキルであり;
2は水素またはハロであり;
Aは1個または2個の置換基で置換されたピリジニルであり、当該置換基はそれぞれ独立してハロまたはC1-4アルキルから選ばれ;
nは値が1または2の整数であるが;
但しR2が2−フルオロである場合、Aは1個または2個の置換基で置換された3−ピリジニルではなく、当該置換基はそれぞれ独立してハロまたはC1-4アルキルから選ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明はまた、ヒトを含む哺乳類における症状の治療または予防(特に治療)用薬剤の製造のための式(I)の化合物あるいはその任意のサブグループの使用に関し、この症状の治療または予防は、mGluR2のアロステリックモジュレーター(特にポジティブアロステリックモジュレーター)の神経修飾効果により作用されるかまたは促進される。
【0024】
本発明の一実施形態は、式(I)の化合物(その任意の立体化学的異性体形態も含む)あるいはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物であり、
【0025】
【化2】

【0026】
式中、R1はC4-6アルキル、またはC3-7シクロアルキルで置換されたC1-3アルキルであり;
2は水素またはハロであり;
Aは1個または2個の置換基で置換されたピリジニルであり、当該置換基はそれぞれ独立してハロまたはC1-4アルキルから選ばれ;
nは値が1または2の整数であるが;
但しR2が2−フルオロである場合、Aは1個または2個の置換基で置換された3−ピリジニルではなく、当該置換基はそれぞれ独立してハロまたはC1-4アルキルから選ばれ;かつ上記化合物は下記のもの以外である。
【0027】
【化3】

【0028】
【表1】

【0029】
本発明の一実施形態は、R1がC4-6アルキル、特にC4-5アルキル、例えば、1−ブチル、2−メチル−1−プロピル、3−メチル−1−ブチル;特に1−ブチルまたは3−メチル−1−ブチル;より具体的には1−ブチルである式(I)の化合物である。
【0030】
本発明の一実施形態は、R1がC3-7シクロアルキルで置換されたC1-3アルキル、特にシクロプロピルメチルまたは2−(シクロプロピル)−1−エチル、より具体的にはシクロプロピルメチルである式(I)の化合物である。
【0031】
本発明の一実施形態は、R2が水素またはフルオロ、特にフルオロである、実施形態として上記された式(I)の化合物またはその任意のサブグループである。
【0032】
本発明の一実施形態は、R2がハロ、特にフルオロである、実施形態として上記された式(I)の化合物またはその任意のサブグループである。
【0033】
本発明の一実施形態は、nが1であり、R2が水素である、実施形態として上記された式(I)の化合物または、可能な場合は常に、その任意のサブグループである。
【0034】
本発明の一実施形態は、nが1であり、R2がハロ、特にフルオロである、実施形態として上記された式(I)の化合物または、可能な場合は常に、その任意のサブグループである。
【0035】
本発明の一実施形態は、nが2であり、R2がハロ、特にフルオロである、実施形態として上記された式(I)の化合物または、可能な場合は常に、その任意のサブグループである。
【0036】
本発明の一実施形態は、nが1であり、R2がハロ、特にフルオロで、ピリジノン部分に対してオルト位(すなわち、2位)にある、実施形態として上記された式(I)の化合物または、可能な場合は常に、その任意のサブグループである。
【0037】
本発明の一実施形態は、nが1であり、R2がハロ、特にフルオロで、ピリジノン部分に対してメタ位(すなわち、3位)にある、実施形態として上記された式(I)の化合物または、可能な場合は常に、その任意のサブグループである。
【0038】
本発明の一実施形態は、nが2であり、R2がハロ、特にフルオロであり、当該R2置換基がピリジノン部分に対してメタ位(すなわち、3位および5位)にある、実施形態として上記された式(I)の化合物または、可能な場合は常に、その任意のサブグループである。
【0039】
本発明の一実施形態は、nが2であり、R2がハロ、特にフルオロであり、当該R2置換基がピリジノン部分に対してオルト位(すなわち、2位および6位)にある、実施形態として上記された式(I)の化合物または、可能な場合は常に、その任意のサブグループである。
【0040】
本発明の一実施形態は、Aが置換された2−ピリジニルである、実施形態として上記された式(I)の化合物または、可能な場合は常に、その任意のサブグループである。
【0041】
本発明の一実施形態は、Aが置換された3−ピリジニルである、実施形態として上記された式(I)の化合物または、可能な場合は常に、その任意のサブグループである。
【0042】
本発明の一実施形態は、Aが置換された4−ピリジニルである、実施形態として上記された式(I)の化合物または、可能な場合は常に、その任意のサブグループである。
【0043】
本発明の一実施形態は、Aで表されるピリジニル環が、ハロ、特にフルオロ、またはC1-4アルキル、特にメチルから選ばれる1個の置換基で置換されている、実施形態として上記された式(I)の化合物または、可能な場合は常に、その任意のサブグループである。
【0044】
本発明の一実施形態は、Aで表されるピリジニル環が、ハロ、特にクロロ、またはC1-4アルキル、特にメチルからそれぞれ独立して選ばれる2個の置換基で置換されている、実施形態として上記された式(I)の化合物または、可能な場合は常に、その任意のサブグループである。
【0045】
本発明の一実施形態は、R1がC4-6アルキル、特に1−ブチルもしくは3−メチル−1−ブチル;またはC3-7シクロアルキルで置換されたC1-3アルキル、特にシクロプロピルメチルもしくは2−(シクロプロピル)−1−エチルであり;
2が水素またはフルオロであり;
nが1または2であり;
Aが1個または2個の置換基(当該置換基はそれぞれ独立してメチルまたはクロロから選ばれる)で置換されたピリジニルである、式(I)の化合物である。
【0046】
本発明の一実施形態は下記から選ばれる式(I)の化合物あるいはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物である。
【0047】
【化4】

【0048】
【表2】

【0049】

【0050】
本発明の一実施形態は下記から選ばれる式(I)の化合物あるいはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物である。
【0051】
【化5】

【0052】
【表3】

【0053】

【0054】
上記または下記に用いられるように、基または基の一部としてのC1-3アルキルなる記載は、メチル、エチル、1−プロピルおよび1−メチル−1−エチルなどの、飽和し、直鎖または分岐鎖であり、1〜3個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルを規定する。好ましくは、C1-3アルキルはメチルを表す。
【0055】
上記または下記に用いられるように、基または基の一部としてのC1-4アルキルなる記載は、メチル、エチル、プロピル、1−メチル−1−エチル、1−ブチル、2−メチル−1−プロピルなどの、飽和し、直鎖または分岐鎖であり、1〜4個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルを規定する。好ましくは、C1-4アルキルはメチルを表す。
【0056】
上記または下記に用いられるように、基または基の一部としてのC4-6アルキルなる記載は、1−ブチル、2−メチル−1−プロピル、1−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、1−ヘキシルなどの、飽和し、直鎖または分岐鎖であり、4〜6個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルを規定する。好ましくは、C4-6アルキルは1−ブチルを表す。
【0057】
上記または下記に用いられるように、基または基の一部としてのC4-5アルキルなる記載は、1−ブチル、2−メチル−1−プロピル、1−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチルなどの、飽和し、直鎖または分岐鎖であり、4個または5個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルを規定する。
【0058】
上記または下記に用いられるように、C3-7シクロアルキルなる記載は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルなどの、飽和した3〜7個の炭素原子を有する環式炭化水素ラジカルを規定する。好ましくは、C3-7シクロアルキルはシクロプロピルを表す。
【0059】
上記または下記に用いられるように、ハロなる記載は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードに対する総称である。
【0060】
治療上の使用に関して、式(I)の化合物の塩とは、対イオンが薬学的に許容されるものである。しかしながら、薬学的に許容されるものではない酸および塩基の塩もまた、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製に用いられる可能性がある。薬学的に許容されてもされなくても塩はすべて本発明の範囲内に包含される。
【0061】
上記薬学的に許容できる塩は、式(I)の化合物が形成することができる治療上効果のある非毒性の酸付加塩形態を含むと定義される。当該塩は、式(I)の化合物の塩基形態を適切な酸、例えば、無機酸(例えば、ハロゲン化水素酸、特に、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸);有機酸(例えば、酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロパン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸およびパモ酸)で処理することにより得ることができる。
【0062】
逆に、当該酸性塩形態は、適切な塩基で処理することにより遊離塩基形態に変換することができる。
【0063】
酸性プロトンを含む式(I)の化合物はまた、適切な有機および無機塩基で処理することにより、治療効果があり非毒性であるそれらの塩基性塩形態に変換され得る。適切な塩基性塩形態としては、例えば、アンモニウム塩、アルカリおよびアルカリ土類金属塩(特に、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウム塩)、有機塩基(例えば、ベンザチン、N−メチル−D−グルカミン)との塩、ヒブラミン塩、ならびにアミノ酸(例えば、アルギニンおよびリジン)との塩が挙げられる。
【0064】
逆に、当該塩基性塩形態は、適切な酸で処理することにより遊離酸形態に変換することができる。
【0065】
式(I)の化合物の薬学的に許容される酸付加塩形態は、式(I)の化合物の薬学的に許容される好ましい塩形態である。
【0066】
溶媒和物なる語は、式(I)の化合物が形成することができる溶媒付加形態およびその薬学的に許容される塩形態を包含する。このような溶媒付加形態の例としては、例えば、水和物、アルコラートなどが挙げられる。
【0067】
なお、式(I)化合物ならびにその塩および溶媒和物のうちのいくつかは、1つ以上のキラル中心を含み立体化学的異性体形態として存在し得る。
【0068】
上記に用いられるような「立体化学的異性体形態」なる語は、式(I)の化合物が有し得る考えられる異性体をすべて規定する。特に記載または表示が無ければ、化合物の化学名称は、考えられるすべての立体化学的異性体形態の混合物を表わし、当該混合物は、基本となる分子構造のジアステレオマーおよびエナンチオマーをすべて含む。しかし本発明はまた、他の異性体を実質的に含まない(すなわち、10%未満、好ましくは5%未満、特に2%未満、最も好ましくは1%未満の他の異性体を伴う)式(I)の単一の異性体形態およびその塩または溶媒和物のそれぞれも包含する。したがって、式(I)の化合物が例えば(R)と明記される場合、これはこの化合物が(S)異性体を実質的に含まないことを意味する。
【0069】
特に、立体中心はR配置またはS配置を有する可能性があり、二価の環式(部分)飽和ラジカル上の置換基はシス配置またはトランス配置のいずれかを有する可能性がある。
【0070】
CAS命名法の取り決めに従って、化合物中に既知の絶対配置の立体中心が2つ存在する場合、最も小さい数字のキラル中心(すなわち標準となる中心)に対してRまたはSの表示が割り当てられる(カーン−インゴールド−プレログ順位則に基づく)。第2の立体中心の配置は、相対的な記述子[R*、R*]または[R*、S*]を用いて示され、ここでR*は常に標準となる中心として特定され、[R*、R*]は同一のキラリティーの中心を示し、[R*、S*]は異なるキラリティーの中心を示す。例えば、化合物中の最も数字の小さいキラル中心がS配置をとり2番目の中心がR配置の場合、その立体表示は、S−[R*、S*]と特定されることになる。「α」および「β」が用いられる場合、最も少ない環番号を有する環系における非対称炭素原子上の最も優先順位が高い置換基の位置は、任意的に常に環系により決定される平均面の「α」位置にある。環系におけるもう一方の非対称炭素原子上の優先順位が最も高い置換基(式(I)の化合物における水素原子)の位置は、基準原子上における優先順位が最も高い置換基の位置に対して、それが環系により決定される平均面の同じ側にある場合、「α」と特定され、またはそれが環系により決定される平均面の反対側にある場合、「β」と特定される。
【0071】
「式(I)の化合物」なる語またはその任意のサブグループは、以下で用いられる場合は常にそれらの立体化学的異性体形態、それらの薬学的に許容される塩およびそれらの溶媒和物も含むように意図される。立体化学的に純粋な式(I)の化合物が特に興味深い。
【0072】
本出願の範囲内では、元素(特に、式(I)の化合物に関して言及された場合)はこの元素の全ての同位体および同位体混合物を包含し、天然に存在しても合成されても、天然に豊富にあってもまた同位体的に濃縮された形態であってもよい。特に、水素に言及する場合、1H、2H、3Hまたはこれらの混合物を指すと理解され、炭素に言及する場合、11C、12C、13C、14Cまたはこれらの混合物を指すと理解され、窒素に言及する場合、13N、14N、15Nまたはこれらの混合物を指すと理解され、酸素に言及する場合、14O、15O、16O、17O、18Oまたはこれらの混合物を指すと理解され、かつフルオロに言及する場合、18F、19Fまたはこれらの混合物を指すと理解される。したがって本発明の化合物はまた、1種以上の元素の1種以上の同位体を有する化合物およびその混合物を包含する(1個以上の非放射性原子がその放射性同位体の1個以上と置換されている放射性標識化合物とも呼ばれる放射性化合物を含む)。特に、放射性原子は、水素、炭素、窒素、硫黄、酸素およびハロゲンからなる群から選ばれる。好ましくは放射性原子は、水素、炭素およびハロゲンからなる群から選ばれる。特に、放射性同位体は、3H、11C、18F、122I、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Brおよび82Brからなる群から選ばれる。好ましくは放射性同位体は、3H、11Cおよび18Fからなる群から選ばれる。
【0073】
定義のものの一覧から置換基をそれぞれ独立して選択することができるということが上記または下記に適用される場合は常に、化学的に可能性のあるすべての組み合わせが意図される。
【0074】
置換基から環構造の中まで引かれた線は、適切な環原子のうちのいずれに結合してもよいことを示す。
【0075】
一般に、式(I)の化合物は下記の実験手順1に従って調製することができる。
【0076】
[実験手順1]
式(I)の化合物は、反応スキーム(1)に従って式(II)の中間体(式中Yは、ボロン酸またはボロン酸エステルとのPdが介在するカップリングに適切な基(例えば、ハロまたはトリフラートなど)を表わす)を式(III)の中間体(式中R3およびR4は、水素またはC1-4アルキルを表わすか、あるいはR3およびR4は一緒になって、例えば、式−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−または−C(CH32C(CH32−の二価のラジカルを形成してもよい)と反応させることにより調製することができる。この反応は、適切な反応不活性溶媒(例えば、1,4−ジオキサンなど)または不活性溶媒の混合物(例えば、1,4−ジオキサン/DMFなど)中で、適切な塩基(例えば、NaHCO3またはNa2CO3水溶液など)および適切な触媒(例えば、Pd(PPh34などのPd錯体触媒など)の存在下に、加熱条件下(例えば、マイクロ波照射下150℃で、例えば、10時間反応混合物を加熱する)で行われてもよい。反応スキーム(1)では、すべての変数は式(I)に関してとまたは上記と同様に規定される。
【0077】
【化6】

【0078】
本発明における式(I)の化合物および中間体のいくつかは不斉炭素原子を含む可能性がある。これら化合物および中間体の純粋な立体化学的異性体形態は、当該技術分野で公知の手順を適用することにより得ることができる。例えば、ジアステレオマーは、選択的結晶化またはクロマトグラフ法(例えば、向流分配、キラル液体クロマトグラフィー等の方法)などの物理的方法により分離することができる。エナンチオマーは、まず適切な分割剤(例えば、キラル酸など)でラセミ混合物をジアステレオマー塩または化合物の混合物に変換し、例えば、選択的結晶化またはクロマトグラフ法(例えば、液体クロマトグラフィー等の方法)により当該ジアステレオマー塩または化合物の混合物を物理的に分離し、最後に分離されたジアステレオマー塩または化合物を対応するエナンチオマーに変換することにより当該ラセミ混合物から得ることができる。純粋な立体化学的異性体形態はまた、介在する反応が立体特異的に起こるという条件で、純粋な立体化学的異性体形態の適切な中間体および出発物質から得られ得る。
【0079】
エナンチオマー形態の式(I)の化合物および中間体を分割する別の方法は、特にキラル固定相を用いる液体クロマトグラフィーまたはSCF(超臨界流体)クロマトグラフィーを含む。
【0080】
中間体および出発物質のいくつかは公知の化合物であり、市販されている可能性があり、また当該技術分野で公知の手順に従って調製されてもよい。
【0081】
中間体はまた下記の実験手順2〜10に従って調製することができる。
【0082】
[実験手順2]
Yがハロを表す式(II)の中間体(当該中間体は式(II−a)で表される)は、反応スキーム(2)に従って式(IV)の中間体を適切なハロゲン化剤(例えば、P(=O)Br3など)と反応させることにより調製することができる。この反応は、適切な反応不活性溶媒(例えば、DMFなど)中でやや高温(例えば、110℃)で行われてもよい。反応スキーム(2)では、すべての変数は式(I)に関してと同様に規定される。
【0083】
【化7】

【0084】
[実験手順3]
YがF3C−S(=O)2−O−を表す式(II)の中間体(当該中間体は式(II−b)で表される)は、反応スキーム(3)に従って式(IV)の中間体をトリフル酸無水物(トリフルオロメタンスルホン酸無水物とも呼ばれる)と反応させることにより調製することができる。この反応は、適切な反応不活性溶媒(例えば、ジクロロメタンなど)中で適切な塩基(例えば、ピリジンなど)の存在下に低温(例えば、−78℃)で行われてもよい。反応スキーム(3)では、すべての変数は式(I)に関してと同様に規定される。
【0085】
【化8】

【0086】
[実験手順4]
式(IV)の中間体は、反応スキーム(4)に従って当該技術分野で公知の手順により式(V)の中間体を適切なメチルエーテル開裂試薬(例えば、NaOHなど)と反応させることにより調製することができる。この反応は、適切な溶媒(例えば、水、THFなど)中でやや高温(例えば、100℃)で行うことができる。反応スキーム(4)では、すべての変数は式(I)に関してと同様に規定される。
【0087】
【化9】

【0088】
[実験手順5]
式(V)の中間体は、反応スキーム(5)に従って当該技術分野で公知の手順により市販の4−メトキシ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリルを式(VI)のアルキル化剤(式中Zは、例えば、ハロ(例えば、臭素など)などの適切な脱離基を表す)と反応させることにより調製することができる。式(VI)のアルキル化剤の例としてはシクロプロピルメチルブロミドがある。この反応は、不活性溶媒(例えば、アセトニトリルなど)中で適切な塩基(例えば、K2CO3など)および必要に応じてヨウ素塩(KIなど)を用いてやや高温(例えば、120℃)で行うことができる。反応スキーム(5)では、すべての変数は式(I)に関してと同様に規定される。
【0089】
【化10】

【0090】
[実験手順6]
式(III)の中間体は、反応スキーム(6)に従って当該技術分野で公知の手順により式(VII)の中間体(式中A’は、式(I)に関して上記に定義されたピリジニル部分AまたはそのN−オキシドを表す)を、例えば、適切なパラジウム触媒(例えば、1、1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリドなど)の存在下に、適切なホウ素源(例えば、ビス(ピナコラト)ジボロンなど)と反応させることにより調製することができる。この反応は、不活性溶媒(例えば、ジクロロメタンなど)中で適切な塩(例えば、酢酸カリウムなど)の存在下にやや高温(例えば、110℃)で、例えば、16時間行われてもよい。
【0091】
あるいは、式(III)の中間体はまた、当該技術分野で公知の手順である金属−ハロゲン交換とそれに続く適切なホウ素源との反応によっても式(VII)の中間体から調製することができる。例えば、式(VII)の中間体を、やや低温(例えば、−40℃)で不活性溶媒(例えば、THFなど)中で有機リチウム化合物(例えば、n−ブチルリチウムなど)と反応させ、続いて適切なホウ素源(例えば、トリメトキシボランなど)と反応させることができる。
【0092】
反応スキーム(6)では、すべての変数は式(I)に関してとまたは上記と同様に規定される。
【0093】
【化11】

【0094】
[実験手順7]
式(VII)の中間体は、反応スキーム(7)に従って当該技術分野で公知の手順により式(VIII)のヒドロキシフェノール中間体を適切な式(IX)の中間体(式中Xは、適切な脱離基(例えば、ハロまたはニトロなど)である)と反応させることにより調製することができる。式(IX)の中間体の例としては、2,3−ジメチル−4−ニトロ−ピリジン1−オキシドおよび2−ブロモ−4,6−ジメチルピリジンが挙げられる。この反応は、不活性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミドまたはキシレンなど)中で、適切な塩基(例えば、水素化ナトリウムまたは炭酸カリウムなど)の存在下に、古典的な加熱下またはマイクロ波照射の加熱下のいずれかでやや高温(例えば、180℃)で、例えば、60分間行われてもよい。
【0095】
反応スキーム(7)では、すべての変数は式(I)に関してと同様に規定される。
【0096】
【化12】

【0097】
[実験手順8]
A’がAを表す式(VII)の中間体(当該中間体は式(VII−a)で表わされる)は、反応スキーム(8)に従って当該技術分野で公知の手順により式(X)のアニリン様の中間体からザンドマイヤー型反応を介して調製することができる。
【0098】
反応スキーム(8)では、すべての変数は式(I)に関してと同様に規定される。
【0099】
【化13】

【0100】
[実験手順9]
式(X)の中間体は、反応スキーム(9)に従って当該技術分野で公知の手順により、対応する式(XI)のニトロ中間体から、適切な触媒(例えば、10%パラジウム活性炭など)を用いることによるまたは還元剤としての塩化スズ(II)二水和物を用いることによる接触水素化などの当該技術分野で公知の手順によるアミノ官能基までのニトロ基の還元を経て調製することができる。
【0101】
反応スキーム(9)では、すべての変数は式(I)に関してと同様に規定される。
【0102】
【化14】

【0103】
[実験手順10]
式(XI)の中間体は、反応スキーム(10)に従って当該技術分野で公知の手順により式(XII)の中間体を適切な式(XIII)のヒドリキシピリジル中間体(例えば、2−メチル−3−ヒドロキシピリジンなど)と反応させることにより調製することができる。この反応は、不活性溶媒(例えば、テトラヒドロフランなど)中で適切な塩基(例えば、炭酸セシウムなど)の存在下に、やや高温(例えば、140℃)で、例えば、16時間行うことができる。
【0104】
反応スキーム(10)では、すべての変数は式(I)に関してと同様に規定される。
【0105】
【化15】

【0106】
[薬理]
本発明で提供される化合物は代謝型グルタミン酸受容体のポジティブアロステリックモジュレーターであり、特にmGluR2のポジティブアロステリックモジュレーターである。本発明の化合物は、グルタミン酸認識部位(オルソステリックリガンド部位)へ結合するのではなく、むしろ受容体の7回膜貫通型領域内のアロステリック部位に結合するようである。グルタミン酸塩(エステル)またはmGluR2のアゴニストの存在下では、本発明の化合物はmGluR2応答を増加させる。本発明で提供される化合物は、グルタミン酸塩(エステル)またはmGluR2アゴニストに対するこのような受容体の応答を増加させる能力によりmGluR2において効果がある(これにより受容体の応答が増強される)と予想される。したがって本発明は、薬として用いられる本発明の化合物、ならびにヒトを含む哺乳類における症状の治療または予防(特に治療)用薬剤の製造のための本発明の化合物または本発明の医薬組成物の使用に関し、この症状の治療または予防はmGluR2のアロステリックモジュレーター(特にそのポジティブアロステリックモジュレーター)の神経修飾効果により作用されるかまたは促進される。本発明はまた、ヒトを含む哺乳類における症状の治療または予防(特に治療)用薬剤の製造で用いる本発明の化合物あるいは本発明の医薬組成物に関し、この症状の治療または予防はmGluR2のアロステリックモジュレーター(特にそのポジティブアロステリックモジュレーター)の神経修飾効果により作用されるかまたは促進される。本発明はまた、ヒトを含む哺乳類における症状の治療または予防(特に治療)のための本発明の化合物あるいは本発明の医薬組成物に関し、この症状の治療または予防はmGluR2のアロステリックモジュレーター(特にそのポジティブアロステリックモジュレーター)の神経修飾効果により作用されるかまたは促進される。
【0107】
また、本発明はヒトを含む哺乳類におけるグルタミン酸機能障害と関連する様々な神経障害および精神障害の治療、予防、改善、制御、またはその危険性の減少用薬剤の製造のための本発明の化合物あるいは本発明の医薬組成物の使用に関し、この症状の治療または予防はmGluR2のポジティブアロステリックモジュレーターの神経修飾効果により作用されるかまたは促進される。
【0108】
本発明が薬剤(例えば、哺乳類の治療用)の製造のための本発明の化合物または組成物の使用に関すると記載されている場合、特定の司法権限の管轄域ではこのような使用は、例えば、このような治療を必要とする哺乳類に有効量の本発明の化合物または組成物を投与することを含む、例えば、哺乳類の治療方法として理解される。
【0109】
特に、グルタミン酸機能障害と関連する神経障害および精神障害としては、以下の1種以上の症状または疾患が挙げられる。心臓バイパス手術および移植後の脳欠損などの急性神経障害および急性精神障害、卒中、脳虚血、脊髄損傷、頭部外傷、周生期低酸素症 、心停止、低血糖性神経細胞損傷、認知症(エイズ誘発認知症を含む)、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、視覚障害、網膜症、認識障害、特発性および薬物誘発性パーキンソン病、振戦を含む筋痙直と関連する筋肉痙攣および障害、てんかん、痙攣、片頭痛(片頭痛性の頭痛を含む)、尿失禁、物質耐性、物質禁断症状(アヘン剤、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、鎮静剤、睡眠薬などの物質を含む)、精神病、統合失調症、不安症(全般性不安障害、パニック障害、および強迫観念障害を含む)、気分障害(うつ病、躁病、両相性障害)、三叉神経痛、難聴、耳鳴り、眼の黄斑変性症、嘔吐、脳浮腫、疼痛(急性および慢性の状態、激痛、難治性疼痛、神経因性疼痛、および外傷後の疼痛を含む)、遅発性ジスキネジア、睡眠障害(ナルコレプシーを含む)、注意欠陥/多動性障害および行為障害。
【0110】
特に本発明は、不安障害、精神障害、人格障害、物質関連障害、摂食障害、気分障害、片頭痛、てんかんまたは痙攣性障害、幼児期障害、認知障害、神経変性、神経毒症状および虚血からなる群から選ばれる中枢神経系障害の治療または予防(特に、治療)用薬剤の製造のための式(I)の化合物の使用に関する。
【0111】
上記中枢神経系障害は好ましくは、広場恐怖症、全般性不安障害(GAD)、強迫観念障害(OCD)、パニック障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、対人恐怖および他の恐怖症からなる群から選ばれる不安障害である。
【0112】
上記中枢神経系障害は好ましくは、統合失調症、妄想性障害、統合失調性感情障害、統合失調症様障害および物質誘発性精神障害からなる群から選ばれる精神障害である。
【0113】
上記中枢神経系障害は好ましくは、強迫性人格障害および統合失調症、統合失調型障害からなる群から選ばれる人格障害である。
【0114】
上記中枢神経系障害は好ましくは、アルコール乱用、アルコール依存症、アルコール禁断症状、アルコール禁断せん妄、アルコール誘発性精神障害、アンフェタミン依存症、アンフェタミン禁断症状、コカイン依存症、コカイン禁断症状、ニコチン依存症、ニコチン禁断症状、オピオイド依存症およびオピオイド禁断症状からなる群から選ばれる物質関連障害である。
【0115】
上記中枢神経系障害は好ましくは、神経性食欲不振症および神経性過食症からなる群から選ばれる摂食障害である。
【0116】
上記中枢神経系障害は好ましくは、両相性障害(IおよびII)、気分循環性障害、うつ病、気分変調性障害、大うつ病性障害および物質誘発性気分障害からなる群から選ばれる気分障害である。
【0117】
上記中枢神経系障害は好ましくは、片頭痛である。
【0118】
上記中枢神経系障害は好ましくは、非痙攣性全般てんかん、痙攣性全般てんかん、小発作性てんかん重積、大発作性てんかん重積、意識障害を伴うかまたは伴わない部分てんかん、幼児痙攣症、持続性部分てんかんおよび他の形態のてんかんからなる群から選ばれるてんかんまたは痙攣性の障害である。
【0119】
上記中枢神経系障害は好ましくは、注意欠陥/多動性障害である。
【0120】
上記中枢神経系障害は好ましくは、せん妄、物質誘発持続性せん妄、認知症、HIV疾患による認知症、ハンチントン病による認知症、パーキンソン病による認知症、アルツハイマー型認知症、物質誘発持続性認知症および軽度認知障害からなる群から選ばれる認知障害である。
【0121】
上記障害のうち、不安症、統合失調症、片頭痛、うつ病およびてんかんの治療が特に重要である。
【0122】
現時点では、米国精神医学会(American Psychiatric Association)の「精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic & Statistical Manual of Mental Disorders)」第4版(DSM−IV)が本明細書に記載の障害を識別するための診断用手段を提供している。当業者であれば、本明細書に記載した神経障害および精神障害について別の命名法、疾病分類および分類体系が存在すること、そしてこれらは医学および科学の進歩とともに発展することを認識しているであろう。
【0123】
式(I)の化合物を含むこのようなmGluR2のポジティブアロステリックモジュレーターはグルタミン酸塩(エステル)に対するmGluR2の応答を増強させるため、本発明の方法は内因性のグルタミン酸塩(エステル)を利用するのが有利である。
【0124】
式(I)の化合物を含むmGluR2のポジティブアロステリックモジュレーターはアゴニストに対するmGluR2の応答を増強させるため、本発明は、有効量のmGluR2のポジティブアロステリックモジュレーター(式(I)の化合物を含む)をmGluR2アゴニストと組合せて投与することによりグルタミン酸機能障害と関連する神経障害および精神障害を治療することにまで及ぶと理解される。
【0125】
本発明の化合物は、薬剤を互いに組み合わせたものがいずれかの薬剤単独よりも安全であるかまたはより有効である場合、式(I)の化合物または他の薬剤が効用を有する疾患または症状の治療、予防、制御、改善、またはその危険性の低減において1種以上の薬剤と組み合わせて利用されてもよい。
【0126】
[医薬組成物]
本発明はまた、薬学的に許容される担体または希釈剤と、有効成分として治療上有効な量の本発明の化合物、特に式(I)の化合物(その立体化学的異性体形態またはその薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物を含む)とを含有する医薬組成物に関する。
【0127】
本発明の化合物、特に式(I)の化合物(その立体化学的異性体形態、またはその薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはその任意のサブグループもしくは組み合わせを含む)は、投与目的に関して種々の剤型に処方されてもよい。適切な組成物としては薬剤を全身投与するために通常用いられる全ての組成物が挙げられる。
【0128】
本発明の医薬組成物を調製するため、有効成分として有効な量の特定の化合物(必要に応じて塩形態)は薬学的に許容される担体または希釈剤と完全な混合物として組み合わされる。この担体または希釈剤は投与に関して所望される剤型に応じて種々様々の形態であってもよい。上記医薬組成物は、特に、注射または吸入による経口、経直腸、経皮投与に適切な単回投与形態であることが望ましい。例えば、経口投薬形態に組成物を調製する際、例えば、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤および液剤などの経口液体製剤の場合は、例えば、水、グリコール、オイル、アルコールなど;あるいは散剤、丸剤、カプセル剤および錠剤の場合は、例えば、デンプン、糖、カオリン、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などの固体担体などの通常の製剤媒体のいずれが使用されてもよい。投与の容易さのため、経口投与が好ましく、錠剤およびカプセル剤が最も有利な経口投薬単位形態であり、この場合言うまでもなく固体医薬担体が用いられる。非経口組成物に関して、担体は通常少なくとも大部分が滅菌水を含むことになるが、例えば、溶解性を増加させるため他の成分が含まれもよい。例えば、担体が食塩水、グルコース溶液、または食塩水とグルコース溶液との混合物を含む注射液が調製されてもよい。注射用懸濁液が調製されてもよく、この場合適切な液体担体、懸濁化剤などが用いられてもよい。また使用直前に液体形態の製剤に変換されることが意図される固体形態の製剤も含まれる。経皮投与に適した組成物において、担体は必要に応じて浸透促進剤および/または適切な湿潤剤を含んでもよく、任意の性質を有する適切な添加剤(この添加剤は皮膚に著しい有害作用をもたらさない)と低い割合で必要に応じて組み合わされてもよい。当該添加剤は、皮膚への投与を容易にしかつ/または所望の組成物の調製に役立つ可能性がある。これら組成物は様々な様式、例えば、経皮パッチとして、スポットオンとして、軟膏として投与されてもよい。
【0129】
投与のしやすさおよび用量の均一性のため、上記医薬組成物を単位用量形態に処方することが特に有利である。本明細書では単位用量形態とは、単一の用量として適切な物理的に別々の単位を指し、各単位は必要な製剤担体と関連して所望の治療効果を生むように計算された所定量の有効成分を含む。このような単位用量形態の例としては、錠剤(刻線付き錠剤またはコーティングされた錠剤を含む)、カプセル剤、丸剤、散剤包、ウエハー、坐剤、注射液または注射用懸濁液など、ならびにそれらの分割された複数回分が挙げられる。
【0130】
正確な用量および投与頻度は、当業者に周知のように、使用される特定の式(I)の化合物、治療されている特定の症状、治療されている症状の重症度、年齢、体重、性別、障害の程度、および特定の患者の全身的な健康状態、そして個体が服用している可能性のある他の薬剤によって異なる。さらに、上記の有効な1日量は、治療されている被験者の応答に応じておよび/または本発明の化合物を処方する医師の評価に応じて減量または増量されてもよいことは明らかである。
【0131】
投与様式によって、上記医薬組成物は、有効成分を0.05〜99重量%、好ましくは0.1〜70重量%、より好ましくは0.1〜50重量%、そして薬学的に許容される担体を1〜99.95重量%、好ましくは30〜99.9重量%、より好ましくは50〜99.9重量%を含むこととなる。ここでパーセントは全て組成物の全重量に基づいている。
【0132】
上述のように、本発明はまた、式(I)の化合物または他の薬物が効用を有する可能性のある疾患または症状の治療、予防、制御、改善、あるいはその危険性の低減における、本発明の化合物と1種以上の他の薬物とを含む医薬組成物に関し、そして薬剤の製造のためのそのような化合物の使用に関する。本発明はまた、本発明の化合物とmGluR2のオルソステリックアゴニストとの組み合わせに関する。本発明はまた、薬として用いられるこのような組み合わせに関する。本発明はまた、ヒトを含む哺乳類における症状の治療または予防における、同時に、個別にまたは順次に使用される併用薬剤として(a)本発明の化合物、その薬学的に許容される塩またはその溶媒和物と(b)mGluR2のオルソステリックアゴニストとを含む製品に関し、この治療または予防はmGluR2のアロステリックモジュレーター(特にポジティブアロステリックモジュレーター)の神経修飾効果により作用されるかまたは促進される。このような組み合わせまたは製品中の異なる薬物は、薬学的に許容される担体または希釈剤と共に単一の製剤中で組み合わされてもよいし、それぞれ薬学的に許容される担体または希釈剤と共に別々の製剤中に存在してもよい。
【0133】
下記実施例により本発明の範囲を示すことが意図されるが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0134】
[実験の部]
下記実施例において本発明の化合物を調製するためのいくつかの方法が示される。特に明記しない場合、出発物質はすべて民間の供給業者から入手され、さらなる精製を行わないで使用された。特に、以下の略称が実施例および明細書全体にわたって使用される場合がある。
【0135】
【表4】

【0136】
塩水に対する言及はすべて飽和NaCl水溶液を指す。特に明記しない場合、温度はすべて℃(摂氏)で表される。特に明記しない場合、反応はすべて室温で不活性雰囲気下でない条件で行われた。
【0137】
マイクロ波を使った反応は、単一モード反応器であるEmrys(登録商標)Optimizerマイクロ波反応器(パーソナルケミストリー社(Personal Chemistry A.B.)、現在はバイオタージ社)またはマルチモード反応器であるMicroSYNTH Labstation(マイルストーン社(Milestone, Inc.))中で行なわれた。
【0138】
[A.中間体の調製]
[実施例A.1]
1−シクロプロピルメチル−4−メトキシ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(中間体1)
【0139】
【化16】

【0140】
アセトニトリル(250ml)中の4−メトキシ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(12.2g、81.48mmol)の溶液に、ブロモメチル−シクロプロパン(11g、81.48mmol)および炭酸カリウム(22.48g、162.9mmol)を加え、この混合物を110℃で24時間加熱した。この混合物を室温まで冷却し、固形物をろ去した。ろ液を蒸発乾固させ、次いで、得られた粗残渣をジエチルエーテルでトリチューレションして純粋な中間体1(15.72g、94%)を白色の固形物として得た。
【0141】
[実施例A.2]
1−ブチル−4−メトキシ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(中間体2)
【0142】
【化17】

【0143】
アセトニトリル(800ml)中の4−メトキシ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(20g、133mmol)の溶液に、1−ブロモブタン(15.8g、146mmol)および炭酸カリウム(36.7g、266mmol)を加え、この混合物を110℃で24時間加熱した。この混合物を室温まで冷却し、固形物をろ去した。ろ液を蒸発乾固させ、次いで、得られた粗残渣をジエチルエーテルでトリチューレションして純粋な中間体2(27.39g、>99%)を白色の固形物として得た。
【0144】
[実施例A.3]
1−シクロプロピルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(中間体3)
【0145】
【化18】

【0146】
中間体1(15.7g、76.8mmol)を室温で水酸化ナトリウムの1N水溶液(300ml)とTHF(50ml)に加えた。反応混合物を140℃(油浴温度)で16時間加熱した。この混合物を室温まで冷却し、THFをほぼ真空蒸発させた。水層を0℃まで冷却し、2N HCl水溶液を加えて酸性化させてpHを約3まで調節すると、この時点で白色の固形物が析出した。この固形物をろ去し、Et2Oで洗浄し、真空乾燥させて、中間体3を白色の固形物(10.44g、71%)として得、これをさらなる精製をしないで使用した。
【0147】
[実施例A.4]
1−ブチル−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(中間体4)
【0148】
【化19】

【0149】
中間体2(27.39g、133mmol)を室温で水酸化ナトリウムの1N水溶液(500ml)とTHF(100ml)に加えた。反応混合物を110℃(油浴温度)で24時間加熱した。この混合物を室温まで冷却し、容量がほぼ250mlに減少するまで溶媒を真空蒸発させた。次いで、水層を0℃まで冷却し、2N HCl水溶液を加えて酸性化させてpHを約3まで調節すると、この時点で白色の固形物が析出した。この固形物をろ去し、Et2Oで洗浄し、真空乾燥させて、中間体4を白色の固形物(25g、98%)として得、これをさらなる精製をしないで使用した。
【0150】
[実施例A.5]
4−ブロモ−1−シクロプロピルメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(中間体5)
【0151】
【化20】

【0152】
DMF(250ml)中の中間体3(10.4g、54.67mmol)の溶液に三臭化リン(phosphoric tribromide)(31.3g、109.3mmol)を加え、この混合物を110℃で1.5時間加熱した。氷浴中で冷却後、溶液を水とEtOAcで分液した。EtOAcで3回抽出後、合わせた有機画分を塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を真空蒸発させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液としてDCM)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、中間体5(8.83g、64%)を得た。
【0153】
[実施例A.6]
4−ブロモ−1−ブチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(中間体6)
【0154】
【化21】

【0155】
DMF(600ml)中の中間体4(39g、203mmol)の溶液に三臭化リン(phosphoric tribromide)(116g、406mmol)を加え、この混合物を110℃で1.5時間加熱した。氷浴中で冷却後、この溶液を水とEtOAcで分液した。EtOAcで3回抽出後、合わせた有機画分を塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、溶媒を真空蒸発させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液としてDCM)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、中間体6(36.7g、72%)を得た。
【0156】
[実施例A.7]
2−(4−ブロモ−3−フルオロ−フェノキシ)−4,6−ジメチル−ピリジン(中間体7)
【0157】
【化22】

【0158】
2−ブロモ−4,6−ジメチルピリジン(1g、5.4mmol)と4−ブロモ−3−フルオロ−フェノール(1.03g、5.4mmol)と炭酸カリウム(0.89g、6.4mmol)との混合物をシールドチューブ内にて150℃(油浴温度)で7日間加熱した。室温まで冷却後、この混合物をDCMで希釈し、ケイソウ土のパッドに通してろ過した。このろ液を蒸発乾固させ、このようにして得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液としてDCM)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、中間体7(1.1g、53%)を得た。
【0159】
[実施例A.8]
2−[3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノキシ]−4,6−ジメチル−ピリジン(中間体8)
【0160】
【化23】

【0161】
1,4−ジオキサン(9ml)およびDMF(1ml)中の中間体7(0.5g、1.69mmol)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボラン(0.643g、2.53mmol)および酢酸カリウム(0.497g、5.06mmol)を加えた。この混合物を脱気し、次いで、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)(DCMとの錯体(1:1)、0.0413g、0.05mmol、CAS[95464−05−4])を加えた。この反応混合物をマイクロ波照射下150℃で40分間加熱した。室温まで冷却後、水を加え、この混合物をEtOAcで抽出した。有機画分を乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空蒸発させて所望の中間体8(0.6g、100%)を粗生成物として得、これをさらなる精製をしないで使用した。
【0162】
[実施例A.9]
3−(2−フルオロ−4−ニトロ−フェノキシ)−2,6−ジメチル−ピリジン(中間体9)
【0163】
【化24】

【0164】
THF(30ml)中の2,6−ジメチル−3−ピリジノール(3g、24.35mmol)の室温溶液に、炭酸セシウム(15.87g、48.71mmol)および3,4−ジフルオロ−1−ニトロ−ベンゼン(3.87g、24.35mmol)を加えた。この反応混合物を還流状態で2時間加熱した。室温まで冷却後、固形物をろ去し、ろ液を蒸発乾固させた。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/MeOH(NH3)、2%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、中間体9(5.88g、92%)を得た。
【0165】
[実施例A.10]
4−(2,6−ジメチル−ピリジン−3−イルオキシ)−3−フルオロ−フェニルアミン(中間体10)
【0166】
【化25】

【0167】
エタノール(200ml)中の中間体9(5.88g、22.44mmol)の溶液を室温で10%パラジウム活性炭(0.58g)の存在下で3時間水素化させた。固形物をろ去し、ろ液を蒸発乾固させて、中間体10(5.20g、>99%)を得、これをさらなる精製をしないで使用した。
【0168】
[実施例A.11]
3−(4−ブロモ−2−フルオロ−フェノキシ)−2,6−ジメチル−ピリジン(中間体11)
【0169】
【化26】

【0170】
0℃まで冷却したHBr(75ml、48%水溶液)中の中間体10(7.7g、33.2mmol)の溶液に、水(75ml)中の亜硝酸ナトリウム(4.57g、66.3mmol)の溶液を45分間にわたって滴下した。この反応混合物を室温まで温め、さらに15分間撹拌した。この混合物を0℃まで冷却し、臭化銅(I)(4.0g、28.4mmol)を回分的に加えた。撹拌を0℃で15分間継続し、次いで、この混合物を室温まで温めさらに15分間撹拌した。次いで、この反応混合物を140℃で1.5時間加熱した。この混合物を室温まで冷却し、炭酸カリウムの飽和水溶液で慎重に中和した。次いで、EtOAcを加え、層を分離させた。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、蒸発乾固させた。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてヘプタン〜ヘプタン/EtOAc、10%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、中間体11(8.75g、89%)を得た。
【0171】
[実施例A.12]
3−[2−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノキシ]−2,6−ジメチル−ピリジン(中間体12)
【0172】
【化27】

【0173】
1,4−ジオキサン(9ml)およびDMF(3ml)中の中間体11(1.5g、5.07mmol)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボラン(3.86g、15.2mmol)および酢酸カリウム(1.48g、15.2mmol)を加えた。この混合物を脱気し、次いで、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)(DCMとの錯体(1:1)、0.16g、0.20mmol、CAS[95464−05−4])を加えた。この反応混合物をマイクロ波照射下150℃で10分間加熱した。室温まで冷却後、水を加え、この混合物をEtOAcで抽出した。有機画分を乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空蒸発させて所望のボロン酸中間体12(1.74g、100%)を粗生成物として得、これをさらなる精製をしないで使用した。
【0174】
[実施例A.13]
4−(4−ブロモ−3−フルオロ−フェノキシ)−2−メチル−ピリジン1−オキシド(中間体13)
【0175】
【化28】

【0176】
N−メチルピロリドン(20ml)中の4−ブロモ−3−フルオロフェノール(6g、31.41mmol)の室温溶液に水素化ナトリウム(1.34g、56mmol、鉱油中60%)を回分的に加えた。10分間撹拌後、4−ニトロ−2−ピコリンN−オキシド(5.6g、36.12mmol)を加えた。この反応混合物をマイクロ波照射下180℃で60分間加熱した。室温まで冷却後、この混合物をEtOAc(250ml)で希釈し、水(250ml)で洗浄した。次いで、この溶液を追加のEtOAc(2×150ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空蒸発させた。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/MeOH(NH3)、2%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、中間体13(3.61g、39%)を得た。
【0177】
[実施例A.14]
2−フルオロ−4−(2−メチル−4−ピリジルオキシ)フェニルボロン酸(中間体14)
【0178】
【化29】

【0179】
1,4−ジオキサン(9ml)およびDMF(4ml)中の中間体13(1.05g、3.52mmol)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボラン(2.68g、10.56mmol)および酢酸カリウム(1.035g、10.56mmol)を加えた。この混合物を脱気し、次いで、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)(DCMとの錯体(1:1)、0.115g、0.141mmol、CAS[95464−05−4])を加えた。この反応混合物をマイクロ波照射下150℃で15分間加熱した。室温まで冷却後、水を加え、この混合物をEtOAc(20ml)で抽出した。有機画分を乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空蒸発させて、所望のボロン酸中間体14(0.87g、100%)を粗生成物として得、これをさらなる精製をしないで使用した。
【0180】
[実施例A.15]
4−(4−ブロモ−2−フルオロ−フェノキシ)−2−メチル−ピリジン1−オキシド(中間体15)
【0181】
【化30】

【0182】
N−メチルピロリドン(20ml)中の4−ブロモ−2−フルオロフェノール(3.44ml、31.41mmol)の室温溶液に水素化ナトリウム(1.34g、56mmol、鉱油中60%)を回分的に加えた。20分間撹拌後、4−ニトロ−2−ピコリンN−オキシド(5.6g、36.12mmol)を加えた。この反応混合物をマイクロ波照射下180℃で60分間加熱した。室温まで冷却後、この混合物をEtOAc(250ml)で希釈し、水(250ml)で洗浄した。次いで、この溶液を追加のEtOAc(2×150ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空蒸発させた。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/MeOH(NH3)、2%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、中間体15(4.36g、47%)を得た。
【0183】
[実施例A.16]
3−フルオロ−4−(2−メチル−4−ピリジルオキシ)フェニルボロン酸(中間体16)
【0184】
【化31】

【0185】
1,4−ジオキサン(9ml)およびDMF(4ml)中の中間体15(1.05g、3.52mmol)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボラン(2.68g、10.56mmol)および酢酸カリウム(1.035g、10.56mmol)を加えた。この混合物を脱気し、次いで、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)(DCMとの錯体(1:1)、0.115g、0.141mmol、CAS[95464−05−4])を加えた。この反応混合物をマイクロ波照射下150℃で15分間加熱した。室温まで冷却後、水を加え、この混合物をEtOAc(20ml)で抽出した。有機画分を乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空蒸発させて、所望のボロン酸中間体16(0.87g、100%)を粗生成物として得、これをさらなる精製をしないで使用した。
【0186】
[実施例A.17]
4−(4−ブロモ−3−フルオロ−フェノキシ)−2,6−ジメチル−ピリジン(中間体17)
【0187】
【化32】

【0188】
キシレン(2ml)中の4−ブロモ−2,6−ジメチル−ピリジン(1g、5.4mmol)と4−ブロモ−3−フルオロ−フェノール(0.59g、5.4mmol)と炭酸カリウム(0.89g、6.4mmol)との混合物をシールドチューブ内にて150℃(油浴温度)で48時間撹拌した。室温まで冷却後、この混合物をEtOAcで希釈し、ケイソウ土のパッドに通してろ過した。ろ液を蒸発乾固させ、このようにして得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/EtOAc、10%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、中間体17(1.18g、72%)を得た。
【0189】
[実施例A.18]
4−[3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノキシ]−2,6−ジメチル−ピリジン(中間体18)
【0190】
【化33】

【0191】
1,4−ジオキサン(10.8ml)およびDMF(1.2ml)中の中間体17(1g、3.37mmol)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボラン(1.286g、5.06mmol)および酢酸カリウム(0.994g、10.13mmol)を加えた。この混合物を脱気し、次いで、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)(DCMとの錯体(1:1)、0.0827g、0.101mmol、CAS[95464−05−4])を加えた。この反応混合物をマイクロ波照射下150℃で10分間加熱した。室温まで冷却後、水を加え、この混合物をEtOAcで抽出した。有機画分を乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空蒸発させて所望のボロン酸中間体18(1.14g、100%)を粗生成物として得、これをさらなる精製をしないで使用した。
【0192】
[実施例A.19]
4−(4−ブロモ−2−フルオロ−フェノキシ)−2,6−ジメチル−ピリジン(中間体19)
【0193】
【化34】

【0194】
キシレン(2ml)中の4−ブロモ−2,6−ジメチル−ピリジン(1g、5.4mmol)と4−ブロモ−2−フルオロ−フェノール(0.59ml、5.4mmol)と炭酸カリウム(0.89g、6.4mmol)との混合物をシールドチューブ内にて150℃(油浴温度)で48時間撹拌した。室温まで冷却後、この混合物をEtOAcで希釈し、ケイソウ土のパッドに通してろ過した。ろ液を蒸発乾固させて、このようにして得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/EtOAc、10%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、中間体19(1.28g、80%)を得た。
【0195】
[実施例A.20]
4−[2−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノキシ]−2,6−ジメチル−ピリジン(中間体20)
【0196】
【化35】

【0197】
1,4−ジオキサン(10.8ml)およびDMF(1.2ml)中の中間体19(1g、3.37mmol)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボラン(1.286g、5.06mmol)および酢酸カリウム(0.994g、10.13mmol)を加えた。この混合物を脱気し、次いで、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)(DCMとの錯体(1:1)、0.0827g、0.101mmol、CAS[95464−05−4])を加えた。この反応混合物をマイクロ波照射下150℃で10分間加熱した。室温まで冷却後、水を加え、この混合物をEtOAcで抽出した。有機画分を乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空蒸発させて、所望のボロン酸中間体20(1.15g、100%)を粗生成物として得、これをさらなる精製をしないで使用した。
【0198】
[実施例A.21]
4−(4−ブロモ−3−フルオロ−フェノキシ)−2,3−ジメチル−ピリジン1−オキシド(中間体21)
【0199】
【化36】

【0200】
DMF(50ml)中の4−ブロモ−3−フルオロフェノール(15g、78.53mmol)の室温溶液に水素化ナトリウム(3.32g、85.67mmol、鉱油中60%)を回分的に加えた。10分間撹拌後、2,3−ジメチル−4−ニトロ−ピリジン1−オキシド(1.05g、6.28mmol)を加えた。この反応混合物をマイクロ波照射下180℃で60分間加熱した。室温まで冷却後、この混合物をケイソウ土のパッドを通してろ過し、次いで、ろ液をEtOAcで希釈し、水で洗浄した。次いで、この溶液を追加のEtOAc(2×150ml)で抽出した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空蒸発させた。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/MeOH、5%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、中間体21(3.44g、19%)を得た。
【0201】
[実施例A.22]
2−フルオロ−4−(2,3−ジメチル−4−ピリジルオキシ)フェニルボロン酸(中間体22)
【0202】
【化37】

【0203】
1,4−ジオキサン(2.6ml)およびDMF(0.8ml)中の中間体21(0.40g、1.28mmol)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボラン(0.97g、3.84mmol)および酢酸カリウム(0.37g、3.84mmol)を加えた。この混合物を脱気し、次いで、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)(DCMとの錯体(1:1)、0.042g、0.051mmol、CAS[95464−05−4])を加えた。この反応混合物をマイクロ波照射下150℃で15分間加熱した。室温まで冷却後、水を加え、この混合物をEtOAcで抽出した。有機画分を乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空蒸発させて、所望のボロン酸中間体22(0.334g、100%)を粗生成物として得、これをさらなる精製をしないで使用した。
【0204】
[実施例A.23]
4−(4−ブロモ−2−フルオロ−フェノキシ)−2,3−ジメチル−ピリジン1−オキシド(中間体23)
【0205】
【化38】

【0206】
N−メチルピロリドン(10ml)中の4−ブロモ−2−フルオロフェノール(1g、5.23mmol)の室温溶液に水素化ナトリウム(0.27g、6.79mmol、鉱油中60%)を回分的に加えた。10分間撹拌後、2,3−ジメチル−4−ニトロ−ピリジン1−オキシド(1.05g、6.28mmol)を加えた。この反応混合物をマイクロ波照射下180℃で60分間加熱した。室温まで冷却後、この混合物をケイソウ土のパッドを通してろ過し、次いで、ろ液をEtOAcで希釈し、水で洗浄した。次いで、この溶液を追加のEtOAc(2×150ml)で抽出した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空蒸発させた。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/MeOH、3%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、中間体23(0.75g、46%)を得た。
【0207】
[実施例A.24]
4−[2−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノキシ]−2,3−ジメチル−ピリジン(中間体24)
【0208】
【化39】

【0209】
1,4−ジオキサン(6ml)およびDMF(2ml)中の中間体23(0.420g、1.36mmol)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボラン(1.025g、4.03mmol)および酢酸カリウム(0.385g、4.03mmol)を加えた。この混合物を脱気し、次いで、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]−ジクロロパラジウム(II)(DCMとの錯体(1:1)、0.044g、0.054mmol、CAS[95464−05−4])を加えた。この反応混合物をマイクロ波照射下150℃で10分間加熱した。室温まで冷却後、水を加え、この混合物をEtOAcで抽出した。有機画分を乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空蒸発させて、所望のボロン酸中間体24(1.41g、100%)を粗生成物として得、これをさらなる精製をしないで使用した。
【0210】
[実施例A.25]
4−(4−ブロモ−フェノキシ)−2−メチル−ピリジン(中間体25)
【0211】
【化40】

【0212】
DMF(5ml)中のNaH(鉱物油中60%、0.13g、3.25mmol)の溶液に、市販の4−ブロモフェノール(0.50g、2.89mmol)を加え、この反応物を室温で10分間撹拌した。次いで、4−クロロ−2−ピコリン(0.30g、2.40mmol)を加え、次いで、得られた反応混合物を150℃で10分間マイクロ波照射した。冷却後、この混合物を水で希釈し、Et2Oで抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空濃縮させた。このように得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(DCM)により精製して、中間体25(0.52g、81%)を得た。
【0213】
[実施例A.26]
4−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノキシ]−2−メチル−ピリジン(中間体26)
【0214】
【化41】

【0215】
DMSO(5ml)中の中間体25(0.50g、1.89mmol)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボロン(0.72g、2.84mmol)およびKOAc(0.56g、5.68mmol)を加え、次いで、この溶液を窒素気流を用いて脱気し、次いで、この反応混合物に1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド、DCM(0.05g、0.06mmol)を加えた。次いで、この反応混合物を窒素雰囲気下110℃で16時間加熱した。次いで、この反応物を室温まで冷却し、水で希釈して、得られた溶液をAcOEtで抽出した。次いで、有機画分をNa2SO4で乾燥させ、真空濃縮させて、中間体26(0.58g、100%)を得、これをさらなる精製をしないで次の反応工程で使用した。
【0216】
[B.最終化合物の調製]
[実施例B.1]
1−シクロプロピルメチル−4−[4−(4,6−ジメチル−ピリジン−2−イルオキシ)−2−フルオロ−フェニル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(化合物1)
【0217】
【化42】

【0218】
1,4−ジオキサン(6ml)およびNaHCO3の飽和溶液(5ml)中の中間体8(1.42mmol)の溶液に、中間体5(0.329g、1.3mmol)を加えた。得られた溶液を窒素気流を用いて脱気し、これにPd(PPh34(0.15mg、0.13mmol)を加えた。次いで、この反応物をシールドチューブ内にて140℃で5分間マイクロ波照射した。次いで、得られた反応混合物を冷却後にEtOAcで希釈し、ケイソウ土のパッドに通してろ過した。ろ液を水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空濃縮させた。次いで、この粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/EtOAc、10%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、化合物1を得、これをジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥させた(0.207g、41%)。
融点:137.0℃。
【0219】
[実施例B.2]
1−ブチル−4−[4−(2,6−ジメチル−ピリジン−3−イルオキシ)−3−フルオロ−フェニル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(化合物2)
【0220】
【化43】

【0221】
1,4−ジオキサン(6ml)およびNaHCO3の飽和溶液(6ml)中の中間体12(2mmol)の溶液に、中間体6(0.51g、2mmol)を加えた。得られた溶液を窒素気流を用いて脱気し、これにPd(PPh34(0.231mg、0.2mmol)を加えた。次いで、この反応物をシールドチューブ内にて150℃で10分間マイクロ波照射した。得られた反応混合物を冷却後にケイソウ土のパッドに通してろ過し、真空濃縮させた。次いで、この粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/MeOH、3%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、化合物2(0.405g、52%)を得た。融点:156.4℃
化合物12、14および16(表1を参照)は、化合物2に関して記載のプロトコルに従って調製することができる。
【0222】
[実施例B.3]
1−シクロプロピルメチル−4−[4−(2,6−ジメチル−ピリジン−3−イルオキシ)−3−フルオロ−フェニル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(化合物3)
【0223】
【化44】

【0224】
1,4−ジオキサン(6ml)およびNaHCO3の飽和溶液(6ml)中の中間体12(2mmol)の溶液に、中間体5(0.51g、2mmol)を加えた。得られた溶液を窒素気流を用いて脱気し、これにPd(PPh34(0.231mg、0.2mmol)を加えた。次いで、この反応物をシールドチューブ内にて150℃で10分間マイクロ波照射した。得られた反応混合物を冷却後にケイソウ土のパッドに通してろ過し、真空濃縮させた。次いで、この粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/MeOH、3%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、化合物3(0.445g、58%)を得た。融点:152.7℃。
【0225】
[実施例B.4]
1−ブチル−4−[2−フルオロ−4−(2−メチル−ピリジン−4−イルオキシ)−フェニル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(化合物4)
【0226】
【化45】

【0227】
1,4−ジオキサン(6ml)およびNaHCO3の飽和溶液(6ml)中の中間体14(1.77mmol)の溶液に、中間体6(0.451g、1.77mmol)を加えた。得られた溶液を窒素気流を用いて脱気し、これにPd(PPh34(0.204mg、0.177mmol)を加えた。次いで、この反応物をシールドチューブ内にて150℃で10分間マイクロ波照射した。得られた反応混合物を冷却後にケイソウ土のパッドに通してろ過し、真空濃縮させた。次いで、この粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/MeOH、3%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、化合物4(0.45g、68%)を得た。融点:127.1℃
化合物13、17、19および20(表1を参照)は、化合物4に関して記載のプロトコルに従って調製することができる。
【0228】
[実施例B.5]
1−ブチル−4−[3−フルオロ−4−(2−メチル−ピリジン−4−イルオキシ)−フェニル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(化合物5)
【0229】
【化46】

【0230】
1,4−ジオキサン(6ml)およびNaHCO3の飽和溶液(6ml)中の中間体16(1.77mmol)の溶液に、中間体6(0.451g、1.77mmol)を加えた。得られた溶液を窒素気流を用いて脱気し、これにPd(PPh34(0.204mg、0.177mmol)を加えた。次いで、この反応物をシールドチューブ内にて150℃で10分間マイクロ波照射した。得られた反応混合物を冷却後にケイソウ土のパッドに通してろ過し、真空濃縮させた。次いで、この粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/MeOH、3%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、化合物5(0.45g、68%)を得た。融点:125.4℃
化合物15(表1を参照)は、化合物5に関して記載のプロトコルに従って調製することができる。
【0231】
[実施例B.6]
1−ブチル−4−[4−(2,6−ジメチル−ピリジン−4−イルオキシ)−2−フルオロ−フェニル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(化合物6)
【0232】
【化47】

【0233】
1,4−ジオキサン(6ml)およびNaHCO3の飽和溶液(5ml)中の中間体18(1.078mmol)の溶液に、中間体6(0.25g、0.979mmol)を加えた。得られた溶液を窒素気流を用いて脱気し、これにPd(PPh34(0.113mg、0.098mmol)を加えた。次いで、この反応物をシールドチューブ内にて150℃で10分間マイクロ波照射した。得られた反応混合物を冷却後にケイソウ土のパッドに通してろ過し、このケイソウ土のパッドをEtOAcで洗浄した。合わせたろ液を水で洗浄し、有機層を分離、乾燥(Na2SO4)、真空濃縮させた。次いで、この粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/MeOH、2%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、化合物6を得、これをジエチルエーテルから析出させた(0.220g、57%)。融点:169.9℃。
【0234】
[実施例B.7]
1−ブチル−4−[4−(2,6−ジメチル−ピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロ−フェニル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(化合物7)
【0235】
【化48】

【0236】
1,4−ジオキサン(6ml)およびNaHCO3の飽和溶液(5ml)中の中間体20(1.078mmol)の溶液に、中間体6(0.25g、0.979mmol)を加えた。得られた溶液を窒素気流を用いて脱気し、これにPd(PPh34(0.113mg、0.098mmol)を加えた。次いで、この反応物をシールドチューブ内にて150℃で10分間マイクロ波照射した。得られた反応混合物を冷却後にケイソウ土のパッドに通してろ過し、このケイソウ土のパッドをEtOAcで洗浄した。合わせたろ液を水で洗浄し、有機層を分離、乾燥(Na2SO4)、真空濃縮させた。次いで、この粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/MeOH、2%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、化合物7を得、これをジエチルエーテルから析出させた(0.225g、59%)。融点:205.4℃。
【0237】
[実施例B.8]
1−シクロプロピルメチル−4−[4−(2,6−ジメチル−ピリジン−4−イルオキシ)−2−フルオロ−フェニル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(化合物8)
【0238】
【化49】

【0239】
1,4−ジオキサン(4.5ml)およびNaHCO3の飽和溶液(4.5ml)中の中間体18(1.05mmol)の溶液に、中間体5(0.22g、0.892mmol)を加えた。得られた溶液を窒素気流を用いて脱気し、これにPd(PPh34(0.13mg、0.114mmol)を加えた。次いで、この反応物をシールドチューブ内にて150℃で10分間マイクロ波照射した。得られた反応混合物を冷却後にケイソウ土のパッドに通してろ過した。ろ液をEtOAcで希釈し、次いで、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空濃縮させた。次いで、この粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/MeOH、5%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて残渣を得、これをさらにカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/EtOAc、10%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、化合物8を得、これをジイソプロピルエーテルから析出させた(0.176g、51%)。融点:分解した。
【0240】
[実施例B.9]
1−シクロプロピルメチル−4−[4−(2,6−ジメチル−ピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロ−フェニル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(化合物9)
【0241】
【化50】

【0242】
1,4−ジオキサン(4.5ml)およびNaHCO3の飽和溶液(4.5ml)中の中間体20(1.066mmol)の溶液に、中間体5(0.23g、0.906mmol)を加えた。得られた溶液を窒素気流を用いて脱気し、これにPd(PPh34(0.12mg、0.106mmol)を加えた。次いで、この反応物をシールドチューブ内にて150℃で10分間マイクロ波照射した。得られた反応混合物を冷却後にケイソウ土のパッドに通してろ過した。ろ液をEtOAcで希釈し、次いで、水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空濃縮させた。次いで、この粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/EtOAc、50%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、化合物9を得、これをジエチルエーテルから析出させた(0.144g、42%)。融点:201.2℃。
【0243】
[実施例B.10]
1−シクロプロピルメチル−4−[4−(2,3−ジメチル−ピリジン−4−イルオキシ)−2−フルオロ−フェニル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(化合物10)
【0244】
【化51】

【0245】
1,4−ジオキサン(5.5ml)およびNaHCO3の飽和溶液(5.5ml)中の中間体22(0.34g、1.321mmol)の溶液に、中間体5(0.28g、1.123mmol)を加えた。得られた溶液を窒素気流を用いて脱気し、これにPd(PPh34(0.15mg、0.132mmol)を加えた。次いで、この反応物をシールドチューブ内にて150℃で10分間マイクロ波照射した。得られた反応混合物を冷却後にケイソウ土のパッドに通してろ過した。ろ液をEtOAcで希釈し、次いで、水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空濃縮させた。次いで、この粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/AcOEt(1:1))により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、残渣を得、これをEt2Oでトリチュレーションして化合物10を得た(0.068g、16%)。
【0246】
[実施例B.11]
1−シクロプロピルメチル−4−[4−(2,3−ジメチル−ピリジン−4−イルオキシ)−3−フルオロ−フェニル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル(化合物11)
【0247】
【化52】

【0248】
1,4−ジオキサン(7ml)およびNaHCO3の飽和溶液(7ml)中の中間体24(1.769mmol)の溶液に、中間体5(0.38g、1.504mmol)を加えた。得られた溶液を窒素気流を用いて脱気し、これにPd(PPh34(0.2mg、0.176mmol)を加えた。次いで、この反応物をシールドチューブ内にて150℃で10分間マイクロ波照射した。得られた反応混合物を冷却後にケイソウ土のパッドに通してろ過した。ろ液をEtOAcで希釈し、次いで、水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空濃縮させた。次いで、この粗反応混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてDCM〜DCM/MeOH、5%まで)により精製した。所望の画分を採取し、真空蒸発させて、化合物11を得、これをジイソプロピルエーテルから析出させた(0.190g、32%)。融点:分解した。
【0249】
[実施例B.12]
3−シアノ−1−ブチル−4−[4−(2−メチル−ピリジン−4−イルオキシ)−フェニル]−ピリジン−2(1H)−オン(化合物18)
【0250】
【化53】

【0251】
中間体6(0.48g、1.89mmol)および中間体26(0.59g、1.89mmol)を、1,4−ジオキサン(4ml)およびNaHCO3の飽和溶液(4ml)中で混合した。得られた溶液を窒素気流を用いて脱気し、これにPd(PPh34(0.22mg、0.19mmol)を加えた。次いで、この反応物をシールドチューブ内にて150℃で10分間マイクロ波照射した。次いで、得られた反応混合物をケイソウ土のパッドに通してろ過し、AcOEtで洗浄した。このろ液を塩水で洗浄した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥させ、真空濃縮させた。このようにして得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH混合物)で精製して化合物18(0.16g、25%)を得た。

表1は、上記の実施例の1つ(実施例番号)に従って調製された式(I)の化合物を記載している。
【0252】
【化54】

【0253】
【表5】

【0254】

【0255】
[C.分析の部]
本発明の化合物のLCMS特性解析に関して下記の方法を使用した。
【0256】
[LCMS−基本手順]
HPLC測定は、下記それぞれの方法において規定されているように脱気装置付きポンプ(クォータナリまたはバイナリ)、オートサンプラー、カラムオーブン、ダイオードアレー検出器(DAD)およびカラムを有するアジレントテクノロジー社(Agilent Technologies)からのHP1100を用いて行った。カラムからの流れはMS検出器に分配された。このMS検出器はエレクトロスプレーイオン化源が装備されていた。窒素をネブライザーガスとして使用した。イオン化源温度を140℃に維持した。データ収集はMassLynx−Openlynxソフトウェアで行った。
【0257】
[方法1]
上記基本手順に加えて、アギレント社(Agilent)からのXDB−C18カートリッジ(1.8μm、2.1×30mm)上で1ml/分の流量および60℃で逆相HPLCを行なった。用いた勾配条件は次のとおりである。A(0.5g/lの酢酸アンモニウム溶液)を90%、B(アセトニトリル)を5%、C(メタノール)を5%から、6.5分でBを50%およびCを50%まで、7分時点でBを100%まで、そして7.5分時点で初期条件まで平衡化し9.0分まで維持した。注入量は2μlであった。高分解能質量スペクトル(飛行時間、TOF)は、0.1秒の滞留時間を用いて0.5秒で100から750まで走査することにより陽イオン化モードでのみ得られた。キャピラリーニードル電圧は2.5kVであり、コーン電圧は20Vであった。ロイシン−エンケファリンが質量較正(ロックマス)に用いた標準物質であった。
【0258】
[方法2]
上記基本手順に加えて、アギレント社(Agilent)からのXDB−C18カートリッジ(1.8μm、2.1×30mm)上で1.0ml/分の流量および60℃で逆相HPLCを行なった。用いた勾配条件は次のとおりである。A(0.5g/lの酢酸アンモニウム溶液)を90%、B(アセトニトリル/メタノール混合物)を10%から、6.5分でBを100%まで、7分まで維持し、そして7.5分時点で初期条件まで平衡化し9.0分まで維持した。注入量は2μlであった。低分解能質量スペクトル(ZQ検出器、四重極)は、0.3秒の滞留時間を用いて1.0秒で100から1000まで走査することにより得られた。キャピラリーニードル電圧は3kVであった。コーン電圧は陽イオン化モードでは20Vおよび50Vであり、陰イオン化モードでは20Vであった。
【0259】
[方法3]
上記基本手順Bに加えて、アドバンスドクロマトグラフィーテクノロジーズ社(Advanced Chromatography Technologies)からのACE−C18カラム(3.0μm、4.6×30mm)上で1.5ml/分の流量および40℃で逆相HPLCを行った。用いた勾配条件は次のとおりである。A(0.5g/lの酢酸アンモニウム溶液)を80%、B(アセトニトリル)を10%、C(メタノール)を10%から、6.5分でBを50%およびCを50%まで、7分時点でBを100%まで、そして7.5分時点で初期条件まで平衡化し9.0分まで維持した。注入量は5μlであった。高分解能質量スペクトル(飛行時間、TOF)は、0.1秒の滞留時間を用いて0.5秒で100から750まで走査することにより陽イオン化モードでのみ得られた。キャピラリーニードル電圧は陽イオン化モード用では2.5kVであり、コーン電圧は20Vであった。ロイシン−エンケファリンが質量較正(ロックマス)に用いた標準物質であった。
【0260】
[融点測定]
融点測定はメトラーFP62装置上で行なわれた。
【0261】
【表6】

【0262】
[D.薬理例]
本発明で提供される化合物は、mGluR2のポジティブアロステリックモジュレーターである。当該化合物は、グルタミン酸塩(エステル)結合部位以外のアロステリック部位に結合することによりグルタミン酸塩(エステル)応答を増強させると考えられる。式(I)の化合物が存在すると、グルタミン酸塩(エステル)濃度に対応するmGluR2の応答が増加される。式(I)の化合物は、受容体の機能を増強する能力によって実質的にmGluR2においてその効果を有すると考えられる。下記の[35S]GTPγS結合アッセイ法を用いてmGluR2において試験されたポジティブアロステリックモジュレーターの挙動を表3に示す。このアッセイ法は、そのような化合物(特に式(I)の化合物)の同定に適している。
【0263】
35S]GTPγS結合アッセイ
35S]GTPγS結合アッセイは、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の機能の研究に用いられる機能性の細胞膜に基づくアッセイであり、これによりGTPの非加水分解性形態である[35S]GTPγS(ガンマ線を放射する35Sで標識されたグアノシン5’‐三リン酸)の取り込みが測定される。Gタンパク質γサブユニットは、グアノシン三リン酸(GTP)によりグアノシン5’−二リン酸(GDP)の交換を触媒し、アゴニスト([35S]GTPγS)によりGPCRが活性化された場合に取り込まれて交換サイクルを継続するための開裂ができなくなる(ハーパー(Harper)(1998年)「カレントプロトコルズ・イン・ファーマコロジー(Current Protocols in Pharmacology)」2.6.1−10、ジョンワイリーアンドサンズ社(John Wiley & Sons, Inc.))。放射性[35S]GTPγSの取り込み量はGタンパク質の活性の直接的な尺度であり、したがってアゴニストの活性を測定できる。mGluR2受容体は、Gγiタンパク質に優先的に共役することが示されており(本方法のための優先的な共役)、したがって組み換え細胞株中そして組織中の両方でmGluR2受容体の受容体活性化を研究するために広く使用されている(シャフハウザー(Schaffhauser)ら(2003年)、ピンカートン(Pinkerton)ら(2004年)、ムテル(Mutel)ら1998年「ジャーナル・オブ・ニューロケミストリー(Journal of Neurochemistry)」71:2558〜64;シャフハウザーら(1998年)「モレキュラーファーマコロジー(Molecular Pharmacology)」53:228〜33)。ここでは、我々は、本発明の化合物のポジティブアロステリック修飾(PAM)特性を検出するために、ヒトmGluR2受容体でトランスフェクトされシャフハウザーら(2003年)「(モレキュラーファーマコロジー」4:798〜810から作成された細胞に由来する細胞膜を用いた[35S]GTPγS結合アッセイの使用を記載する。
【0264】
[細胞膜調製]
CHO細胞をプレコンフルエントまで培養し5mMの酪酸で24時間刺激した後、PBS中で洗浄し、次いで、均質化用緩衝液(50mMトリス−HCl緩衝液、pH7.4、4℃)中ですくい取って採取した。細胞溶解物をウルトラタラックスホモジナイザーを用いて短時間(15秒)均質化した。ホモジネートを23500×gで10分間遠心分離し、そして上清を廃棄した。ペレットを5mMトリス−HCl(pH7.4)に再懸濁し、再び遠心分離した(30000×g、20分、4℃)。最終的なペレットを50mM HEPES(pH7.4)に再懸濁し、使用前は適切なアリコート中で−80℃で保存した。タンパク質濃度をウシ血清アルブミンを標準としてブラッドフォード法(バイオラッド社(Bio-Rad)、米国)により測定した。
【0265】
35S]GTPγS結合アッセイ
ヒトmGluR2を含む細胞膜における試験化合物のmGluR2のポジティブアロステリック修飾活性の測定は、前培養前に解凍され短時間均質化された凍結細胞膜を用いて、96ウェルマイクロプレート(15μg/アッセイウェル、30分、30℃)中でポジティブアロステリックモジュレーターの濃度を増加させながら(0.3nMから50μMまで)所定の最小濃度のグルタミン酸塩(エステル)を加える(PAMアッセイ)かまたはグルタミン酸塩(エステル)を加えないでアッセイ緩衝液(50mM HEPES(pH7.4)、100mM NaCl、3mM MgCl2、50μM GDP、10μg/mlサポニン)中で行った。このPAMアッセイのため、細胞膜はEC25の濃度(すなわちグルタミン酸塩(エステル)の最大応答の25%が得られ、出版済みデータ(ピン(Pin)ら(1999年)ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Eur. J. Pharmacol.)375:277〜294)と一致する濃度)のグルタミン酸塩(エステル)で前培養された。[35S]GTPγS(0.1nM、f.c.)を加えて総反応容量を200μlとした後、マイクロプレートを短時間振とうし、さらに培養して、活性化させて[35S]GTPγSを取り込ませた(30分、30℃)。96ウェルプレートセルハーベスター(フィルターメート、パーキンエルマー社、米国)を用いてグラスファイバーフィルタープレート(ユニフィルター96ウェルGF/Bフィルタープレート、パーキンエルマー社、ダウナーズグローヴ、米国)マイクロプレート上で急速に真空ろ過し、次いで、300μlの氷冷した洗浄用緩衝液(10mM Na2PO4・2H2O、10mM NaH2PO4・H2O、pH7.4)で3回洗浄することにより反応を停止させた。次いで、フィルターを風乾し、各ウェルに40μlの液体シンチレーションカクテル(Microscint-O)を加え、細胞膜に結合した[35S]GTPγSを96ウェルシンチレーションプレートリーダー(トップカウント、パーキンエルマー社、米国)中で測定した。非特異的[35S]GTPγS結合は、10μMの冷GTPの存在下で測定される。各曲線は、データ点毎に試料をデュプリケートで用いて11種類の濃度で少なくとも1度作成した。
【0266】
[データ分析]
ポジティブアロステリック修飾(PAM)を調べるため、添加されたEC25のmGluR2アゴニストグルタミン酸の存在下での本発明の代表的な化合物の濃度応答曲線をプリズムグラフパッドソフトウェア(グラフパッド社(GraphPad)、サンディエゴ、米国)を用いて作成した。当該曲線は4変数ロジスティック方程式
【0267】
【数1】

【0268】
にフィッティングされ、EC50値が決定された。EC50は、グルタミン酸塩(エステル)応答の増強の最大半量をもたらす化合物濃度である。これは、ポジティブアロステリックモジュレーターの非存在下のグルタミン酸塩(エステル)応答から完全飽和濃度のポジティブアロステリックモジュレーターの存在下のグルタミン酸塩(エステル)の最大応答を引くことにより計算される。次いで、最大半量効果を生む濃度をEC50として求める。
【0269】
[表3:本発明の化合物に関する薬理学的データ]
全ての化合物を所定のEC25濃度のmGluR2アゴニスト(グルタミン酸塩(エステル))の存在下で試験して、ポジティブアロステリック修飾(GTPγS−PAM)を調べた。示されている値は、少なくとも1つの実験からの11種類の濃度応答曲線のデュプリケートの値の平均である。試験化合物はすべて5.0を超えるpEC50(−logEC50)値を示した。1実験におけるpEC50値の測定誤差は約0.3log単位であると推測される。
【0270】
【表7】

【0271】
[E.組成物例]
これらの実施例にわたって用いられる「有効成分」は、式(I)の最終化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物および立体化学的異性体形態に関する。
【0272】
本発明の製剤の代表的な処方例は以下のとおりである。
【0273】
1.錠剤
有効成分 5〜50mg
第二リン酸カルシウム 20mg
ラクトース 30mg
滑石 10mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
バレイショデンプン 200mgまで
この実施例において、有効成分は、同じ量の本発明の化合物のいずれとも、特に、同じ量の例示された化合物のいずれとも置き換えられ得る。
【0274】
2.懸濁剤
1ミリリットル毎に有効化合物1種を1〜5mg、カルボキシルメチルセルロースナトリウムを50mg、安息香酸ナトリウムを1mg、ソルビトールを500mg、および水を1mlまで含むように経口投与用水性懸濁剤が調製される。
【0275】
3.注射剤
非経口組成物は、10容量%のプロピレングリコール水溶液中で1.5重量%の本発明の有効成分を撹拌することにより調製される。
【0276】
4.軟膏
有効成分 5〜1000mg
ステアリルアルコール 3g
ラノリン 5g
白色ワセリン 15g
水 100gまで
この実施例において、有効成分は、同じ量の本発明の化合物のいずれとも、特に、同じ量の例示された化合物のいずれとも置き換えられ得る。
【0277】
妥当な変更は本発明の範囲から逸脱すると見なされるべきではない。上記発明は当業者によって様々に変更される可能性があることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物(その任意の立体化学的異性体形態も含む)あるいはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物
【化55】

(式中、R1はC4-6アルキル、またはC3-7シクロアルキルで置換されたC1-3アルキルであり;
2は水素またはハロであり;
Aは1個または2個の置換基で置換されたピリジニルであり、前記置換基はそれぞれ独立してハロまたはC1-4アルキルから選ばれ;
nは値が1または2の整数であるが;
但しR2が2−フルオロである場合、Aは1個または2個の置換基で置換された3−ピリジニルではなく、前記置換基はそれぞれ独立してハロまたはC1-4アルキルから選ばれる)。
【請求項2】
下記のもの以外である請求項1に記載の化合物。
【化56】

【表8】

【請求項3】
Aが1個の置換基で置換されたピリジニルであり、前記置換基がハロまたはC1-4アルキルから選ばれる、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
1がC4-6アルキルである、請求項1、2または3に記載の化合物。
【請求項5】
1が1−ブチルまたは3−メチル−1−ブチルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
1がC3-7シクロアルキルで置換されたC1-3アルキルである、請求項1、2または3に記載の化合物。
【請求項7】
1がシクロプロピルメチルまたは2−(シクロプロピル)−1−エチルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
2が水素またはフルオロである、先行する請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
2がハロである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
2がフルオロである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
nが1であり、R2がハロである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
nが2であり、R2がハロである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
前記Aで表されるピリジニル環が、クロロまたはメチルから選ばれる1個の置換基で置換されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
前記Aで表されるピリジニル環が、クロロまたはメチルからそれぞれ独立して選ばれる2個の置換基で置換されている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
1が1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、シクロプロピルメチルまたは2−(シクロプロピル)−1−エチルであり;R2が水素またはフルオロであり;nが1または2であり;Aが1個または2個の置換基(前記置換基はそれぞれ独立してメチルまたはクロロから選ばれる)で置換されたピリジニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
下記から選ばれる請求項1に記載の化合物あるいはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物。
【化57】

【表9】


【請求項17】
下記から選ばれる請求項1に記載の化合物あるいはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物。
【化58】

【表10】


【請求項18】
薬として用いられる請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
治療上有効な量の請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項20】
ヒトを含む哺乳類における症状の治療または予防のための請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物あるいは請求項19に記載の医薬組成物であって、前記症状の治療または予防がmGluR2のポジティブアロステリックモジュレーターの神経修飾効果により作用されるかまたは促進されることを特徴とする化合物あるいは医薬組成物。
【請求項21】
ヒトを含む哺乳類における症状の治療または予防用薬剤の製造のための請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物あるいは請求項19に記載の医薬組成物の使用であって、前記症状の治療または予防がmGluR2のポジティブアロステリックモジュレーターの神経修飾効果により作用されるかまたは促進されることを特徴とする使用。
【請求項22】
不安障害、精神障害、人格障害、物質関連障害、摂食障害、気分障害、片頭痛、てんかんもしくは痙攣性障害、幼児期障害、認知障害、神経変性、神経毒症状および虚血からなる群から選ばれる中枢神経系障害の治療または予防用薬剤の製造のための請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物あるいは請求項19に記載の医薬組成物の使用。
【請求項23】
前記中枢神経系障害が、広場恐怖症、全般性不安障害(GAD)、強迫観念障害(OCD)、パニック障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、対人恐怖および他の恐怖症からなる群から選ばれる不安障害である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記中枢神経系障害が、統合失調症、妄想性障害、統合失調性感情障害、統合失調症様障害および物質誘発性精神障害からなる群から選ばれる精神障害である、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
前記中枢神経系障害が、強迫性人格障害および統合失調症、統合失調型障害からなる群から選ばれる人格障害である、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
前記中枢神経系障害が、アルコール乱用、アルコール依存症、アルコール禁断症状、アルコール禁断せん妄、アルコール誘発性精神障害、アンフェタミン依存症、アンフェタミン禁断症状、コカイン依存症、コカイン禁断症状、ニコチン依存症、ニコチン禁断症状、オピオイド依存症およびオピオイド禁断症状からなる群から選ばれる物質関連障害である、請求項22に記載の使用。
【請求項27】
前記中枢神経系障害が、神経性食欲不振症および神経性過食症からなる群から選ばれる摂食障害である、請求項22に記載の使用。
【請求項28】
前記中枢神経系障害が、両相性障害(IおよびII)、気分循環性障害、うつ病、気分変調性障害、大うつ病性障害および物質誘発性気分障害からなる群から選ばれる気分障害である、請求項22に記載の使用。
【請求項29】
前記中枢神経系障害が片頭痛である、請求項22に記載の使用。
【請求項30】
前記中枢神経系障害が、非痙攣性全般てんかん、痙攣性全般てんかん、小発作性てんかん重積、大発作性てんかん重積、意識障害を伴うかまたは伴わない部分てんかん、幼児痙攣症、持続性部分てんかんおよび他の形態のてんかんからなる群から選ばれるてんかんまたは痙攣性の障害である、請求項22に記載の使用。
【請求項31】
前記中枢神経系障害が幼児期障害である、請求項22に記載の使用。
【請求項32】
前記幼児期障害が注意欠陥/多動性障害である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記中枢神経系障害が、せん妄、物質誘発持続性せん妄、認知症、HIV疾患による認知症、ハンチントン病による認知症、パーキンソン病による認知症、アルツハイマー型認知症、物質誘発持続性認知症および軽度認知障害からなる群から選ばれる認知障害である、請求項22に記載の使用。
【請求項34】
前記中枢神経系障害が、不安症、統合失調症、片頭痛、うつ病およびてんかんからなる群から選ばれる、請求項22に記載の使用。
【請求項35】
ヒトを含む哺乳類における請求項21〜34のいずれか1項に記載の症状の治療または予防用薬剤の製造のための、mGluR2のオルソステリックアゴニストと組み合わせた請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項36】
前記症状または障害の治療のための、請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物の請求項21〜34のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
式(II)の中間体(式中Yは、ボロン酸またはボロン酸エステルとのPdが介在するカップリングに適切な基を表わす)を、適切な反応不活性溶媒中で、適切な塩基および適切な触媒の存在下、加熱条件下で、式(III)の中間体(式中R3およびR4は、水素またはC1-4アルキルを表わすか、あるいはR3およびR4は一緒になって式−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−または−C(CH32C(CH32−の二価のラジカルを形成してもよい)と反応させること
【化59】

(R1、R2、Aおよびnは、請求項1で定義されたとおりである);
あるいは、所望であれば、式(I)の化合物をさらに当該技術分野で公知の転換法に従って互いに変換すること;あるいはさらに、所望であれば、式(I)の化合物を酸で処理することによって治療効果のある非毒性の酸付加塩に変換すること、または逆に酸付加塩形態をアルカリで処理することによって遊離塩基に変換すること;あるいは、所望であれば、その立体化学的異性体形態を調製することを特徴とする、請求項1に記載の化合物の調製方法。

【公表番号】特表2010−520264(P2010−520264A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552215(P2009−552215)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052767
【国際公開番号】WO2008/107480
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(509067496)オルソ−マクニール−ジャンセン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (4)
【出願人】(506417670)アデックス ファーマ ソシエテ アノニム (13)
【Fターム(参考)】