説明

11−ベータ−水酸化ステロイド脱水素酵素−1の阻害剤としてのトリアゾール誘導体

構造式(I)のトリアゾール誘導体は、11β−水酸化ステロイド脱水素酵素−1の選択的阻害剤である。これらの化合物は、インシュリン非依存性糖尿病(NIDDM)などの糖尿病、高血糖、肥満症、インスリン抵抗性、異脂肪血症、高脂血症、高血圧、代謝症候群及びNIDDMに付随する他の症状の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、11−ベータ−水酸化ステロイド脱水素酵素I型酵素(11β−HSD−1又はHSD−1)の阻害剤としてのトリアゾール誘導体、及びこのような化合物を用いたある種の病態の治療方法に関する。本発明の化合物は、インシュリン非依存性2型真性糖尿病(NIDDM)などの糖尿病、インスリン抵抗性、肥満症、脂質疾患、高血圧、並びに他の疾病及び病態の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は複数の因子によって引き起こされ、最も端的には絶食状態における高レベルの血漿グルコース(高血糖)を特徴とする。一般に認められている糖尿病の形態には2つある。すなわち、グルコースの利用を調節するホルモンであるインスリンを患者がほとんど又はまったく産生しない1型糖尿病、すなわちインシュリン依存性糖尿病(IDDM)と、患者がインスリンを産生し、かつ高インスリン血症(非糖尿病患者と同じか、場合によっては、非糖尿病患者よりも高い血漿インスリンレベル)さえ示し、同時に高血糖を示す2型糖尿病、すなわち非インシュリン依存性糖尿病(NIDDM)である。1型糖尿病は、一般に、注射投与される外因性インスリンを用いて治療される。しかし、2型糖尿病は「インスリン抵抗性」を発症することが多く、その結果、主要なインスリン感受性組織、すなわち、筋肉、肝臓及び脂肪組織においてグルコース及び脂質代謝を刺激するインスリンの効果が減少する。インスリン抵抗性であるが、糖尿病性ではない患者は、インスリンレベルが高く、高いインスリンレベルが患者のインスリン抵抗性を埋め合わせるため、血清グルコースレベルが上昇しない。NIDDM患者においては、血漿インスリンレベルが上昇したときでさえ、顕著なインスリン抵抗性を克服するには不十分であり、その結果高血糖になる。
【0003】
インスリン抵抗性は、主として、まだ完全には理解されていない受容体結合の欠陥に起因する。インスリン抵抗性は、グルコース取り込みの不十分な活性化、筋肉中でのグルコース酸化及びグリコーゲン貯蔵の低下、脂肪組織における脂肪分解の不十分なインスリン抑制、並びに肝臓による不十分なグルコース産生及び分泌をもたらす。
【0004】
糖尿病患者に生じる持続的な高血糖又は制御されない高血糖は、罹患率及び若年死亡率の増加を伴う。異常なグルコースホメオスタシスも、肥満、高血圧、並びに脂質、リポタンパク質及びアポリポタンパク質代謝の変化と直接的にも間接的にも関連する。2型糖尿病患者は、心血管の合併症、例えば、アテローム性動脈硬化症、冠動脈性心疾患、発作、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害及び網膜症を発症するリスクが高い。したがって、グルコースホメオスタシス、脂質代謝、肥満症及び高血圧の治療による管理が、真性糖尿病の臨床管理及び治療に極めて重要である。
【0005】
インスリン抵抗性を有するが、2型糖尿病を発症していない多数の患者も、「X症候群」又は「代謝症候群」と呼ばれる症状を発症するリスクがある。X症候群又は代謝症候群は、インスリン抵抗性、並びに腹部肥満、高インスリン血症、高血圧、低HDL及び高VLDLを特徴とする。これらの患者は、顕性の真性糖尿病を発症していると否とにかかわらず、上記心血管合併症を起こすリスクが高い。
【0006】
2型糖尿病の治療は、一般に、運動、食事制限などである。すい臓β細胞を刺激して、より多量のインスリンを分泌させるスルホニル尿素(例えばトルブタミド及びグリピジド)若しくはメグリチナイドを投与することによって、及び/又はスルホニル尿素若しくはメグリチナイドが無効になったときにインスリンを注射することによって、インスリンの血しょうレベルを上昇させると、インスリン抵抗性組織を刺激するのに十分高いインスリン濃度を得ることができる。しかし、血しょうグルコースが危険なほど低レベルになる可能性があり、インスリン抵抗性のレベルの増大が最終的に生じ得る。
【0007】
ビグアナイドはインスリン感受性を増大させ、高血糖をある程度改善する。しかし、多数のビグアナイド、例えば、フェンホルミン及びメトホルミンは、乳酸アシドーシス、悪心及び下痢を起こす。
【0008】
グリタゾン(すなわち、5−ベンジルチアゾリジン−2,4−ジオン)は、高血糖、及び2型糖尿病の他の症状を軽減する可能性がある化合物の、さらに新しいクラスを形成する。これらの薬剤は、筋肉、肝臓及び脂肪組織におけるインスリン感受性を実質的に増大させ、低血糖を実質的に引き起こさずに、上昇した血漿グルコースレベルをある程度又は完全に是正する。現在市販されているグリタゾンは、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)ガンマサブタイプの作用物質である。PPAR−ガンマアゴニズムは、一般に、グリタゾンを用いたときに観察されるインスリン感作の向上の原因であると考えられる。2型糖尿病及び/又は異脂肪血症の治療用に開発中のより新しいPPAR作用物質は、PPARアルファ、ガンマ及びデルタサブタイプのうちの1種類以上の作用物質である。インスリン増感剤、及び2型糖尿病の他の治療機序の総説については、「M.Tadayyon and S.A.Smith、“Insulin sensitisation in the treatment of Type 2 diabetes,” Expert Opin.Investig.Drugs,12:307−324(2003)」を参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
糖尿病、及び代謝症候群などの関係する病態を治療する新しい方法が引き続き求められている。本発明は、この要求及びその他の要求を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、構造式Iのビシクロ[2.2.2]−オクト−1−イル−1,2,4−トリアゾールに関する。
【0011】
【化4】

【0012】
これらのビシクロ[2.2.2]−オクチルトリアゾール誘導体は、11β−水酸化ステロイド脱水素酵素1型(11β−HSD1)の阻害剤として有効である。したがって、これらの誘導体は、2型糖尿病、脂質疾患、肥満症、アテローム性動脈硬化症及び代謝症候群などの11β−HSD1の阻害に感応性のある疾患の治療、管理又は予防に有用である。
【0013】
本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容される担体を含む薬剤組成物にも関する。
【0014】
本発明は、本発明の化合物及び薬剤組成物を投与することによって、それを必要とする被検者において、11β−HSD1の阻害に感応性のある疾患、疾病又は症状を治療し、管理し、又は予防する方法にも関する。
【0015】
本発明は、本発明の化合物及び薬剤組成物を投与することによって、2型糖尿病、肥満症、脂質疾患、アテローム性動脈硬化症及び代謝症候群を治療し、又は管理する方法にも関する。
【0016】
本発明は、肥満を治療するのに有用であることが知られている別の薬剤の治療有効量とともに本発明の化合物を投与することによって肥満症を治療する方法にも関する。
【0017】
本発明は、2型糖尿病を治療するのに有用であることが知られている別の薬剤の治療有効量とともに本発明の化合物を投与することによって2型糖尿病を治療する方法にも関する。
【0018】
本発明は、アテローム性動脈硬化症を治療するのに有用であることが知られている別の薬剤の治療有効量とともに本発明の化合物を投与することによって、アテローム性動脈硬化症を治療する方法にも関する。
【0019】
本発明は、脂質疾患を治療するのに有用であることが知られている別の薬剤の治療有効量とともに本発明の化合物を投与することによって、脂質疾患を治療する方法にも関する。
【0020】
本発明は、代謝症候群を治療するのに有用であることが知られている別の薬剤の治療有効量とともに本発明の化合物を投与することによって、代謝症候群を治療する方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、11β−HSD1の阻害剤として有用なビシクロ[2.2.2]−オクト−1−イル−1,2,4−トリアゾール誘導体に関する。本発明の化合物には、式Iの化合物、並びに薬学的に許容されるその塩及びその溶媒和化合物が含まれる。
【0022】
【化5】

(式中、
各pは独立に0、1又は2であり、
各nは独立に0、1又は2であり、
Xは、単結合、O、S(O)、NR
【0023】
【化6】

からなる群から選択され、
及びRは、C1−8アルキル、C2−6アルケニル及び(CH−C3−6シクロアルキルからなる群から各々独立に選択され、アルキル、アルケニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、若しくはR及びオキソから独立に選択される1から3個の置換基で置換されており;又は、R及びRは、それらが結合している原子とともに、酸素、硫黄及び窒素から選択される追加の複素原子を必要に応じて含有し、必要に応じてベンゾ環系と縮合した7員から11員の縮合非芳香族複素環式環を形成し;又は、R及びRは、それらが結合している原子とともに、縮合4−アザトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン環を形成し;前記縮合環系は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−3アルキル及びC1−3アルコキシから独立に選択される1から3個の置換基で置換されており;
各Rは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、C1−3アルキル及びC1−3アルコキシからなる群から独立に選択され;
は、水素、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、(CH−C3−6シクロアルキル、(CH−アリール、(CH−ヘテロアリール及び(CH−ヘテロシクリルからなる群から選択され;アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、置換されていないか、又はRから独立に選択される1から3個の置換基で置換されており;アルキル、アルケニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はR及びオキソから独立に選択される1から5個の基で置換されており;
及びRは、水素、ホルミル、C1−6アルキル、(CH−アリール、(CH−ヘテロアリール、(CH−ヘテロシクリル、(CH3−7シクロアルキル、ハロゲン、OR、(CHN(R、シアノ、(CHCO、NO、(CHNRSO、(CHSON(R、(CHS(O)、(CHSOOR、(CHNRC(O)N(R、(CHC(O)N(R、(CHNRC(O)R、(CHNRCO、O(CHC(O)N(R、CF、CHCF、OCF、OCHCF及びOCHCFからなる群から各々独立に選択され;
ここで、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル及びヘテロシクリルは置換されておらず、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及びC1−4アルコキシから独立に選択される1から3個の置換基で置換されており;又は、2個のR置換基は、それらが結合している原子と一緒に、酸素、硫黄及び窒素から独立に選択される1から2個の複素原子を必要に応じて含有する5から8員環を形成し;R及びR中の任意のメチレン(CH)炭素原子は置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキルから独立に選択される1から2個の基で置換されており;又は、同一のメチレン(CH)炭素原子上にあるときには、2個の置換基は、それらが結合している炭素原子とともにシクロプロピル基を形成し;
各Rは、C1−8アルキル、(CH−アリール、(CH−ヘテロアリール及び(CH−C3−7シクロアルキル(式中、アルキル及びシクロアルキルは置換されていないか、又はハロゲン、オキソ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、ヒドロキシ及びアミノから独立に選択される1から5個の置換基で置換されており、アリール及びヘテロアリールは置換されていないか、又はシアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから独立に選択される1から3個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択され;
又は2個のR基は、それらが結合している原子と一緒に、O、S及びNC0−4アルキルから選択される追加の複素原子を必要に応じて含有する5から8員環単環構造又は二環系を形成し、
各Rは水素又はRである。)
【0024】
本発明の化合物の一実施態様において、R及びRは、それらが結合している原子とともに、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−3アルキル及びC1−3アルコキシから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている、7ないし9員の縮合非芳香複素環式環を形成する。本実施態様の一クラスにおいて、Rは水素である。
【0025】
本発明の化合物の第2の実施態様において、R及びRは、それらが結合している原子とともに、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−3アルキル及びC1−3アルコキシから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている、8員の縮合非芳香複素環式環を形成する。本実施態様の一クラスにおいて、Rは水素である。
【0026】
本発明の化合物の第3の実施態様において、RはC2−5アルキル又は(CHシクロプロピルであり、アルキル及びシクロプロピルは、置換されていないか、又はフッ素、C1−3アルキル、トリフルオロメチル、C1−3アルコキシ及びC1−3アルキルチオから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。本実施形態の一クラスにおいて、Rは、シクロプロピル、C1−3アルキル又はC2−3アルケニルであり、アルキル及びシクロプロピルは、置換されていないか、又はフッ素、C1−3アルキル、トリフルオロメチル、C1−3アルコキシ及びC1−3アルキルチオから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。本実施態様の一クラスにおいて、Rは水素である。
【0027】
11−ベータ−水酸化ステロイド脱水素酵素I型の阻害剤として有用である本発明の化合物の例示的な、ただし非限定的な例は、以下の化合物、又は薬学的に許容されるそれらの塩若しくはそれらの溶媒和化合物である。
【0028】
【化7】


【0029】
本明細書においては、以下の定義を使用する。
【0030】
「アルキル」、及びアルコキシ、アルカノイルなどの接頭語「アルク(alk)」を有する他の基は、炭素鎖を特に定義しない限り、線状でも分枝状でもよい炭素鎖、及びそれらの炭素鎖の組み合わせを意味する。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルなどである。指定された炭素原子数が許容する場合、例えば、C3−10である場合には、アルキルという用語は、シクロアルキル基、及びシクロアルキル構造と結合した線状又は分枝アルキル鎖の組み合わせも含む。炭素原子数を指定しないときには、C1−6とする。
【0031】
「アルケニル」は、炭素鎖を特に定義しない限り、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含有する炭素鎖を意味し、それらは線状でも、分枝でも、又はそれらの組み合わせでもよい。アルケニルの例は、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニルなどである。指定された炭素原子数が許容する場合、例えば、C5−10である場合には、アルケニルという用語は、シクロアルケニル基、並びに線状、分枝及び環構造の組み合わせも含む。炭素原子数を指定しないときには、C2−6とする。
【0032】
「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含有する炭素鎖を意味し、それらは線状でも、分枝でも、又はそれらの組み合わせでもよい。アルキニルの例は、エチニル、プロパルギル、3−メチル−1−ペンチニル、2−へプチニルなどである。
【0033】
「シクロアルキル」は、アルキルのサブセットであり、指定された数の炭素原子を有する飽和炭素環を意味する。シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどである。シクロアルキル基は、一般に、他に断らない限り、単環式である。シクロアルキル基は、他に定義しない限り、飽和である。
【0034】
「アルコキシ」という用語は、指定された炭素原子数(例えば、C1−6アルコキシ)、或いはこの範囲内の任意の数[すなわち、メトキシ(MeO−)、エトキシ、イソプロポキシなど]の直鎖又は分枝鎖アルコキシドを指す。
【0035】
「アルキルチオ」という用語は、指定された炭素原子数(例えば、C1−6アルキルチオ)、或いはこの範囲内の任意の数[すなわち、メチルチオ(MeS−)、エチルチオ、イソプロピルチオなど]の直鎖又は分枝鎖アルキルスルフィドを指す。
【0036】
「アルキルアミノ」という用語は、指定された炭素原子数(例えば、C1−6アルキルアミノ)、或いはこの範囲内の任意の数[すなわち、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノなど]の直鎖又は分枝鎖アルキルアミンを指す。
【0037】
「アルキルスルホニル」という用語は、指定された炭素原子数(例えば、C1−6アルキルスルホニル)、或いはこの範囲内の任意の数[すなわち、メチルスルホニル(MeSO−)、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニルなど]の直鎖又は分枝鎖アルキルスルホンを指す。
【0038】
「アルキルスルフィニル」という用語は、指定された炭素原子数(例えば、C1−6アルキルスルフィニル)、或いはこの範囲内の任意の数[すなわち、メチルスルフィニル(MeSO−)、エチルスルフィニル、イソプロピルスルフィニルなど]の直鎖又は分枝鎖アルキルスルホキシドを指す。
【0039】
「アルキルオキシカルボニル」という用語は、指定された炭素原子数(例えば、C1−6アルキルオキシカルボニル)、或いはこの範囲内の任意の数[すなわち、メチルオキシカルボニル(MeOCO−)、エチルオキシカルボニル、又はブチルオキシカルボニル]の本発明のカルボン酸誘導体の直鎖又は分枝鎖エステルを指す。
【0040】
「アリール」とは、炭素環原子を含有する単環又は多環式芳香族環構造を意味する。好ましいアリールは、単環式又は二環式6ないし10員環芳香族環系である。フェニル及びナフチルは、好ましいアリールである。最も好ましいアリールはフェニルである。
【0041】
「複素環」及び「ヘテロシクリル」とは、(さらに硫黄の酸化型、すなわちSO及びSOを含む)O、S及びNから選択される少なくとも1個の複素原子を含有する飽和又は不飽和非芳香族環又は環系を意味する。複素環の例としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジヒドロフラン、1,4−ジオキサン、モルホリン、1,4−ジチアン、ピペラジン、ピペリジン、1,3−ジオキソラン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピロリン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、オキサチオラン、ジチオラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、オキサチアン、チオモルホリンなどが挙げられる。
【0042】
「ヘテロアリール」とは、O、S及びNから選択される少なくとも1個の環複素原子を含有する芳香族又は部分芳香族複素環を意味する。したがって、ヘテロアリールは、アリール、シクロアルキル、非芳香族複素環などの他種の環に縮合したヘテロアリールを含む。ヘテロアリール基の例は、ピロリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、トリアジニル、チエニル、ピリミジル、ベンズイソキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、インドリニル、ピリダジニル、インダゾリル、イソインドリル、ジヒドロベンゾチエニル、インドリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾジオキソリル、キノキサリニル、プリニル、フラザニル、イソベンジルフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、インドリル、イソキノリル、ジベンゾフラニルなどである。ヘテロシクリル基及びヘテロアリール基の場合には、1ないし3環を形成する3ないし15個の原子を含有する環及び環系が含まれる。
【0043】
縮合4−アザトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン環とは、以下の構造:
【0044】
【化8】

を有する縮合環を意味する。
【0045】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。塩素及びフッ素が一般に好ましい。アルキル又はアルコキシ基上のハロゲンが置換されるときにはフッ素が最も好ましい(例えばCFO及びCFCHO)。
【0046】
薬学的組成物などの「組成物」という用語は、活性成分と担体を構成する不活性成分とを含む生成物、並びに任意の2種類以上の成分の組み合わせ、複合若しくは集合から、又は1種類以上の成分の解離から、又は1種類以上の成分の他のタイプの反応若しくは相互作用から、直接的又は間接的に得られる任意の生成物を包含するものとする。したがって、本発明の薬剤組成物は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを混合することによって調製される任意の組成物を包含する。
【0047】
化合物の「投与」、及び化合物を「投与すること」という用語は、必要とする個体に本発明の化合物又は本発明の化合物のプロドラッグを与えることを意味すると理解すべきである。
【0048】
構造式Iの化合物は、1個以上の不斉中心を含む場合があり、したがって、ラセミ体及びラセミ混合物、単一鏡像異性体、ジアステレオマー混合物、及び個々のジアステレオマーとして存在することができる。本発明は、構造式Iの化合物のこのような異性体形態のすべてを含むものとする。
【0049】
本明細書に記載する化合物の一部は、オレフィン二重結合を含有し、別段の指定がないかぎり、E幾何異性体とZ幾何異性体の両方を含むものとする。
【0050】
本明細書に記載する化合物の一部は、ケト−エノール互変異性体などの互変異性体として存在することができる。個々の互変異性体及びその混合物は、構造式Iの化合物に包含される。
【0051】
構造式Iの化合物は、例えば、適切な溶媒、例えばメタノール若しくは酢酸エチル若しくはそれらの混合物からの分別結晶によって、又は光学活性な固定相を用いた鏡像異性クロマトグラフィーによって、その個々のジアステレオ異性体に分離することができる。絶対立体配置は、既知の絶対配置の不斉中心を含有する試薬を用いて必要に応じて誘導体化される結晶性生成物又は結晶性中間体のX線結晶学によって決定することができる。
【0052】
あるいは、一般構造式Iの化合物の任意の立体異性体は、絶対配置が既知の光学的に純粋な出発材料又は試薬を用いた立体特異的合成によって得ることができる。
【0053】
本発明の異なる側面においては、構造式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和化合物を、薬学的に許容される担体とともに含む薬学的組成物を扱う。「溶媒和化合物」という用語は、結晶体の水和物、アルコラート、又は他の溶媒和化合物を意味する。
【0054】
本発明の別の側面においては、構造式Iの化合物又は薬剤的なその塩若しくは溶媒和化合物の有効量を哺乳動物患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする前記患者における高血糖、糖尿病又はインスリン抵抗性を治療する方法を扱う。
【0055】
本発明の別の側面においては、構造式Iの化合物の抗糖尿病に有効な量を哺乳動物患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする前記患者におけるインシュリン非依存性糖尿病を治療する方法を開示する。
【0056】
本発明の別の側面においては、肥満を治療するのに有効な量で構造式Iの化合物を哺乳動物患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする前記患者における肥満を治療する方法を開示する。
【0057】
本発明の別の側面においては、代謝症候群(X症候群)を治療するのに有効な量で構造式Iの化合物を哺乳動物患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする前記患者における代謝症候群を治療する方法を開示する。
【0058】
本発明の別の側面においては、異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLからなる群から選択される脂質疾患を治療するのに有効な量で構造式Iの化合物を哺乳動物患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする前記患者における前記脂質疾患を治療する方法を開示する。
【0059】
本発明の別の側面においては、アテローム性動脈硬化症を治療するのに有効な量で構造式Iの化合物を哺乳動物患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする前記患者におけるアテローム性動脈硬化症を治療する方法を開示する。
【0060】
本発明の別の側面においては、(1)高血糖、(2)低耐糖能、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質疾患、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)すい炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経障害、(20)代謝症候群、(21)高血圧症、並びにインスリン抵抗性が一構成成分である他の病態及び疾患からなる群から選択される病態を治療するのに有効な量で構造式Iの化合物を哺乳動物患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする前記患者において前記病態を治療する方法を開示する。
【0061】
本発明の別の側面においては、(1)高血糖、(2)低耐糖能、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質疾患、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)すい炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経障害、(20)代謝症候群、(21)高血圧症、並びにインスリン抵抗性が一構成成分である他の病態及び疾患からなる群から選択される病態の発症を遅延させるのに有効な量で構造式Iの化合物を哺乳動物患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする前記患者において前記病態の発症を遅延させる方法を開示する。
【0062】
本発明の別の側面においては、(1)高血糖、(2)低耐糖能、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質疾患、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)すい炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経障害、(20)代謝症候群、(21)高血圧症、並びにインスリン抵抗性が一構成成分である他の病態及び疾患からなる群から選択される病態の発症のリスクを軽減するのに有効な量で構造式Iの化合物を哺乳動物患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする前記患者において前記病態の発症のリスクを軽減する方法を開示する。
【0063】
本発明の別の側面においては、構造式Iで定義される化合物の有効量と、
(a)ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DP−IV)阻害剤、
(b)(i)PPARγ作用物質、(ii)PPARα作用物質、(iii)PPARα/γ二重作用物質及び(iv)ビグアナイドからなる群から選択されるインスリン増感剤、
(c)インスリン及びインスリン模倣物、
(d)スルホニル尿素及び他のインスリン分泌促進物質、
(e)α−グルコシダーゼ阻害剤、
(f)グルカゴン受容体拮抗物質、
(g)GLP−1、GLP−1模倣物又はアナログ及びGLP−1受容体作用物質、
(h)GIP、GIP模倣物及びGIP受容体作用物質、
(i)PACAP、PACAP模倣物及びPACAP受容体3作用物質、
(j)(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、(ii)金属イオン封鎖剤、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸及びその塩、(iv)PPAR−α作用物質、(v)PPARα/γ二重作用物質、(vi)コレステロール吸収阻害剤、(vii)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤及び(viii)抗酸化剤からなる群から選択されるコレステロール降下剤、
(k)PPARδ作用物質、
(l)抗肥満化合物、
(m)回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤、
(n)グルココルチコイド以外の抗炎症剤、
(o)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤、及び
(p)カプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラマプリル(ramapril)、ゾフェノプリル、カンデサルタン、シレキセチル、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタンなどのアンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗物質、又はレニン阻害剤などのアンジオテンシン系又はレニン系に作用する薬剤を含めた降圧薬
からなる群から選択される化合物とを、(1)高血糖、(2)低耐糖能、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質疾患、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)すい炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経障害、(20)代謝症候群、(21)高血圧症、並びにインスリン抵抗性が一構成成分である他の病態及び疾患からなる群から選択される病態を治療するのに有効な量で哺乳動物患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする前記患者において、前記病態を治療する方法。
【0064】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤としては、国際公開第03/004498号(2003年1月16日)、国際公開第03/004496号(2003年1月16日)、欧州特許第1 258 476号(2002年11月20日)、国際公開第02/083128号(2002年10月24日)、国際公開第02/062764号(2002年8月15日)、国際公開第03/000250号(2003年1月3日)、国際公開第03/002530号(2003年1月9日)、国際公開第03/002531号(2003年1月9日)、国際公開第03/002553号(2003年1月9日)、国際公開第03/002593号(2003年1月9日)、国際公開第03/000180号(2003年1月3日)及び国際公開第03/000181号(2003年1月3日)に開示されている阻害剤が挙げられる。具体的なDP−IV阻害剤化合物としては、イソロイシンチアゾリジド(isoleucine thiazolidide)、NVP−DPP728、P32/98及びLAF 237などが挙げられる。
【0065】
構造式Iの化合物と組み合わせることができる抗肥満化合物としては、フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オーリスタット、ニューロペプチドY又はY拮抗物質、カンナビノイドCB1受容体拮抗物質又は逆作用物質、メラノコルチン受容体作用物質、特に、メラノコルチン−4受容体作用物質、グレリン拮抗物質、メラニン凝集ホルモン(MCH)受容体拮抗物質などが挙げられる。構造式Iの化合物と組み合わせることができる抗肥満化合物の総説については、「S.Chaki et al., “Recent advances in feeding suppressing agents:potential therapeutic strategy for the treatment of obesity”, Expert Opin. Ther. Patents、11:1677−1692(2001)」、及び「D.Spanswick and K.Lee, “Emerging antiobesity drugs,” Expert Opin. Emerging Drugs,8:217−237(2003)」を参照されたい。
【0066】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるニューロペプチドY5拮抗物質としては、米国特許第6,335,345号(2002年1月1日)及び国際公開第01/14376号(2001年3月1日)に開示された物質、及びGW 59884A、GW 569180A、LY366377及びCGP−71683Aとして識別される具体的化合物などが挙げられる。
【0067】
式Iの化合物と組み合わせることができるカンナビノイドCB1受容体拮抗物質としては、国際公開第03/007887号;リモナバントなどの米国特許第5,624,941号;SLV−319などの国際公開第02/076949号;米国特許第6,028,084号;国際公開第98/41519号;国際公開第00/10968号;国際公開第99/02499号;米国特許第5,532,237号;及び米国特許第5,292,736号に開示された物質などが挙げられる。
【0068】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるメラノコルチン受容体作用物質としては、国際公開第03/009847号(2003年2月6日);国際公開第02/068388号(2002年9月6日);国際公開第99/64002号(1999年12月16日);国際公開第00/74679号(2000年12月14日);国際公開第01/70708号(2001年9月27日);及び国際公開第01/70337号(2001年9月27日)に開示された物質、並びに「J.D. Speake et al., “Recent advances in the development of melanocortin−4 receptor agonists, Expert Opin. Ther. Patents,12:1631−1638(2002)に開示された物質などが挙げられる。
【0069】
本発明の別の側面においては、構造式Iで定義される化合物の治療有効量及びHMG−CoAレダクターゼ阻害剤を哺乳動物患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする前記患者において、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び異脂肪血症からなる群から選択される病態を治療する方法を開示する。
【0070】
より具体的には、本発明の別の側面においては、前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がスタチンである、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高HDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び異脂肪血症からなる群から選択される病態を、そのような治療を必要とする哺乳動物患者において治療する方法を開示する。
【0071】
さらに具体的には、本発明の別の側面においては、前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン及びロスバスタチンからなる群から選択されるスタチンである、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高HDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び異脂肪血症からなる群から選択される病態を、このような治療を必要とする哺乳動物患者において治療する方法を開示する。
【0072】
本発明の別の側面においては、構造式Iで定義される化合物の治療有効量及びHMG−CoAレダクターゼ阻害剤を、そのような治療を必要とする哺乳動物患者に投与することを含む、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び異脂肪血症、並びにそのような病態の続発症からなる群から選択される病態を発症するリスクを軽減する方法を開示する。
【0073】
本発明の別の側面においては、構造式Iで定義される化合物の有効量及びHMG−CoAレダクターゼ阻害剤をヒト患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする前記患者におけるアテローム性動脈硬化症の発症を遅延させる、又はその発症リスクを軽減する方法を開示する。
【0074】
より具体的には、前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がスタチンである、そのような治療を必要とするヒト患者において、アテローム性動脈硬化症の発症を遅延させる、又はその発症リスクを軽減する方法を開示する。
【0075】
さらに具体的には、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤が、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン及びロスバスタチンからなる群から選択されるスタチンである、そのような治療を必要とするヒト患者において、アテローム性動脈硬化症の発症を遅延させる、又はその発症リスクを軽減する方法を開示する。
【0076】
さらに具体的には、前記スタチンがシンバスタチンである、そのような治療を必要とするヒト患者において、アテローム性動脈硬化症の発症を遅延させる、又はその発症リスクを軽減する方法を開示する。
【0077】
本発明の別の側面においては、前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がスタチンであり、コレステロール吸収阻害剤を投与することをさらに含む、そのような治療を必要とするヒト患者において、アテローム性動脈硬化症の発症を遅延させる、又はその発症リスクを軽減する方法を開示する。
【0078】
より具体的には、本発明の別の側面においては、前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がスタチンであり、前記コレステロール吸収阻害剤がエゼチマイブである、そのような治療を必要とするヒト患者において、アテローム性動脈硬化症の発症を遅延させる、又はその発症リスクを軽減する方法を開示する。
【0079】
本発明の別の側面においては、
(1)構造式Iの化合物と、
(2)
(a)DP−IV阻害剤、
(b)(i)PPARγ作用物質、(ii)PPARα作用物質、(iii)PPARα/γ二重作用物質及び(iv)ビグアナイドからなる群から選択されるインスリン増感剤、
(c)インスリン及びインスリン模倣物、
(d)スルホニル尿素及び他のインスリン分泌促進物質、
(e)α−グルコシダーゼ阻害剤、
(f)グルカゴン受容体拮抗物質、
(g)GLP−1、GLP−1アナログ及びGLP−1受容体作用物質、
(h)GIP、GIP模倣物及びGIP受容体作用物質、
(i)PACAP、PACAP模倣物及びPACAP受容体3作用物質、
(j)(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、(ii)金属イオン封鎖剤、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)コレステロール吸収阻害剤、(v)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤及び(vi)抗酸化剤からなる群から選択されるコレステロール降下剤、
(k)PPARδ作用物質、
(l)抗肥満化合物、
(m)回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤、
(n)グルココルチコイド以外の抗炎症剤、
(o)タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)阻害剤、及び
(p)カプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラマプリル、ゾフェノプリル、カンデサルタン、シレキセチル、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、タソサルタン、テルミサルタン及びバルサルタンなどのアンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗物質又はレニン阻害剤などのアンジオテンシン系又はレニン系に作用する薬剤を含めた降圧薬、
からなる群から選択される化合物と、
(3)薬学的に許容される担体と
を含む薬学的組成物を開示する。
【0080】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形で投与することができる。「薬学的に許容される塩」という用語は、無機又は有機塩基、及び無機又は有機酸などの、薬学的に許容される無毒の塩基又は酸から調製される塩を指す。「薬学的に許容される塩」という用語に包含される塩基化合物の塩とは、その遊離塩基を適切な有機又は無機酸と反応させることによって一般に調製される本発明の化合物の無毒な塩を指す。本発明の塩基化合物の代表的な塩としては、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、カンシラート、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシラート、エストラート、エシレート、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソシナート(hexylresorcinate)、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩化水素塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物、イソチオネート、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシラート、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモエート(エンボナート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド、及び吉草酸塩などがあるが、これらだけに限定されない。また、本発明の化合物が酸性部分を有する場合には、薬学的に許容されるその適切な塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの無機塩基から誘導される塩があるが、これらだけに限定されない。特に好ましい塩は、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。薬学的に許容される無毒の有機塩基から誘導される塩としては、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの第一級、第二級、及び第三級アミン、環式アミン及び塩基性イオン交換樹脂の塩などが挙げられる。
【0081】
また、本発明の化合物中にカルボン酸(−COOH)又はアルコール基が存在する場合には、メチル、エチル又はピバロイルオキシメチルなどのカルボン酸誘導体、又はアセテート、マレートなどのアルコールのアシル誘導体の薬学的に許容されるエステルを使用することができる。徐放性製剤又はプロドラッグ製剤として使用するために溶解性又は加水分解特性を改変する当分野で既知のエステル基及びアシル基が含まれる。
【0082】
本明細書において使用する構造式Iの化合物という表記は、薬学的に許容される塩も含み、遊離化合物の前駆体、又は薬学的に許容されるそれらの塩として使用されるとき、或いは他の合成操作において使用されるときには、薬剤として許容されない塩も含むものとすることを理解されたい。
【0083】
溶媒和化合物、特に、構造式Iの化合物の水和物も本発明に含まれる。
【0084】
本明細書に記載する化合物は、11β−HSD1酵素の選択的阻害剤である。すなわち、本発明は、コルチゾンをコルチゾルに転化させる11β−水酸化ステロイド脱水素酵素のレダクターゼ活性を阻害する11β−HSD1阻害剤の使用に関する。過剰のコルチゾルは、NIDDM、肥満、異脂肪血症、インスリン抵抗性及び高血圧を含む、多数の疾患と関連がある。本発明の化合物を投与すると、標的組織中のコルチゾル及び他の11β−水酸化ステロイドのレベルが低下し、それによって過剰量のコルチゾル及び他の11β−水酸化ステロイドの効果が抑制される。11β−HSD1の阻害は、NIDDM、肥満、高血圧及び異脂肪血症など、コルチゾル及び他の11β−水酸化ステロイドのレベルが異常に高いことによってもたらされる疾病の治療及び管理に使用することができる。コルチゾルレベルの低下などの脳内11β−HSD1活性の阻害は、不安、うつ病及び認知障害を治療し、又は軽減するのに有用なこともある。
【0085】
本発明は、哺乳動物患者、特にヒトにおいて、構造式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和化合物の有効量を投与することによって、過剰又は制御されていない量のコルチゾル及び/又は他のコルチコステロイドによってもたらされる、本明細書に記載する疾病及び病態を治療し、管理し、改善し、予防し、発症を遅延させ、又は発症リスクを軽減するための、11β−HSD1阻害剤の使用を含む。11β−HSD1酵素を阻害すると、通常は不活性であるコルチゾンが、過剰に存在する場合にこれらの疾病及び病態の症候を引き起こし得る、又は一因となり得るコルチゾルに転化するのが制限される。
【0086】
NIDDM及び高血圧:
本発明の化合物は、11β−HSD2よりも11β−HSD1の選択的阻害剤である。11β−HSD1の阻害は、コルチゾルレベルを下げ、それに関係する病態を治療するのに有用であるが、11β−HSD2を阻害すると高血圧などの重度の副作用を伴う。
【0087】
コルチゾルは、重要な抗炎症性ホルモンとして十分に認識されており、肝臓におけるインスリンの作用に対する拮抗物質としてもインスリン感受性が低下するように作用し、糖新生を促進し、肝臓におけるグルコースレベルを上昇させる。すでに耐糖能障害に罹っている患者は、異常に高レベルのコルチゾルの存在下では、2型糖尿病を発症する確率が高くなる。鉱質コルチコイド受容体が存在する組織における高レベルのコルチゾルは、高血圧をもたらすことが多い。11β−HSD1を阻害すると、特定の組織におけるコルチゾルとコルチゾンの比はコルチゾンに有利な方にシフトする。11β−HSD1阻害剤の治療有効量の投与は、NIDDMの症状を治療し、管理し、改善するのに有効であり、11β−HSD1阻害剤の治療有効量の定期的投与は、特にヒトにおけるNIDDMの発症を遅延させ、又は防止する。
【0088】
クッシング症候群:
上昇したコルチゾルレベルの効果は、血流中の高レベルのコルチゾルを特徴とする代謝病であるクッシング症候群の患者においても認められる。クッシング症候群患者は、NIDDMを発症することが多い。
【0089】
肥満症、代謝症候群、異脂肪血症:
コルチゾルレベルが過剰であると、おそらく肝臓糖新生が増大するために、肥満を伴う。腹部肥満は、糖不耐性、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、並びに高血圧、高VLDL及び低HDLなどの代謝症候群の他の要因と密接に関連している。Montague et al., Diabetes,2000,49:883−888。したがって、11β−HSD1阻害剤の有効量を投与することは、肥満症の治療又は管理に有用である。11β−HSD1阻害剤による長期治療は、特に患者が11β−HSD1阻害剤を食事制限及び運動と併用する場合に、肥満症の発生を遅延させ、又は予防するのにも有用である。
【0090】
本発明の化合物は、インスリン抵抗性を抑制し、血清グルコースを正常濃度に維持することによって、代謝症候群又はX症候群、肥満症、反応性低血糖及び糖尿病性異脂肪血症などの、2型糖尿病及びインスリン抵抗性に伴う病態の治療及び予防においても有用である。
【0091】
認知及び痴呆:
脳におけるコルチゾルレベルが過剰であると、神経毒が増強されて、神経細胞の損失又は機能不全をもたらすこともある。認知障害は、加齢、及び過剰な脳内コルチゾルレベルと関連がある。「J.R.Seckl and B.R.Walker,Endocrinology,2001,142:1371−1376」、及びその中の引用文献を参照されたい。11β−HSD1阻害剤の有効量を投与すると、加齢に伴う認知障害、及び神経細胞の機能不全が軽減し、改善し、管理され、又は予防される。11β−HSD1阻害剤は、不安及びうつ病を治療するのにも有用なことがある。
【0092】
アテローム性動脈硬化症:
上述したように、11β−HSD1活性の阻害、及びコルチゾル量の低下は、高血圧を治療し、又は管理するのに有利である。高血圧及び異脂肪血症は、アテローム性動脈硬化症を発症する一因となるので、本発明の11β−HSD1阻害剤の治療有効量の投与は、アテローム性動脈硬化症を治療し、管理し、その発症を遅延させ、又は予防するのに特に有利なことがある。
【0093】
すい臓に対する効果:
単離されたマウスすい臓β細胞において11β−HSD1活性を阻害すると、グルコースによって刺激されるインスリン分泌が改善される(B.Davani et al.,J.Biol.Chem.,2000,275:34841−34844)。グルココルチコイドは、インビボでインスリン分泌を抑制することが判明した。(B.Billaudel et al., Horm.Metab.Res.,1979,11:555−560)。
【0094】
眼内圧の低下:
最近のデータによれば、グルココルチコイド標的受容体及び11β−HSD酵素のレベルと、緑内障罹患率との間に関連があることが示唆されている(J.Stokes et al., Invest.Ophthamol., 2000,41:1629−1638)。したがって、11β−HSD1活性を阻害することは、緑内障治療において眼内圧を下げるのに有用である。
【0095】
免疫調節:
結核、乾せんなどのある病態においては、さらには過剰なストレスの条件下でさえ、細胞による応答が患者にとって、実際により有利となり得るときに、グルココルチコイド活性が高いと、免疫応答から液性応答へと移行する。11β−HSD1活性が阻害され、それに伴いグルココルチコイドレベルが低下すると、免疫応答は細胞による応答へと移行する。「D.Mason, Immunology Today,1991,12:57−60」、及び「G.A.W.Rook,Bailler’s Clin.Endocrinol.Metab.,1999,13:576−581」を参照。
【0096】
骨粗鬆症:
グルココルチコイドは骨形成を阻害し、骨組織を正味で喪失させ得る。11β−HSD1は、骨吸収において役割を果たす。11β−HSD1の阻害は、骨粗鬆症によって骨組織が失われるのを予防するのに有利である。「C.H.Kim et al.,J.Endocrinol.,1999,162:371−379;C.G.Bellows et al., Bone,1998,23:119−125;及びM.S.Cooper et al., Bone,2000,27:375−381」参照。
【0097】
他の効用:
本発明の化合物を用いた治療によって、以下の疾病、疾患及び病態、すなわち(1)高血糖、(2)低耐糖能、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質疾患、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高HDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)すい炎、(15)腹部肥満、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎症、(19)神経障害、(20)代謝症候群、(21)高血圧、及びインスリン抵抗性が一構成成分である他の疾患を治療し、管理し、予防し、又は遅延させることができる。
【0098】
上記疾病及び病態は、構造式Iの化合物を用いて治療することができ、或いは本明細書に記載する疾病及び病態を予防し、又はその発症リスクを軽減するためにこの化合物を投与することができる。11β−HSD2を同時に阻害することは、有害な副作用をもたらす恐れがあり、又はコルチゾルの減少が望ましい標的組織中のコルチゾル量を実際に上昇させる恐れがあるので、11β−HSD2をほとんど又は全く阻害しない11β−HSD1の選択的阻害剤が望ましい。
【0099】
構造式Iの11β−HSD1阻害剤は、一般に、阻害定数IC50が約500nM未満、好ましくは約100nM未満である。一般に、ある化合物の11β−HSD2と11β−HSD1のIC50比は、少なくとも約2以上、好ましくは約10以上である。11β−HSD2と11β−HSD1のIC50比が約100以上である化合物がさらに好ましい。例えば、本発明の化合物は、11β−HSD2に対する阻害定数IC50が約1000nMを超え、好ましくは5000nMを超えることが理想的である。
【0100】
構造式Iの化合物は、構造式Iの化合物又は他の薬物が有用である疾病又は病態を治療し、予防し、抑制し、又は改善するのに、1種類以上の他の薬物と併用することができる。一般には、薬物の併用は、各薬物単体よりも安全又は有効であり、或いは、個々の薬物の加成性に基づいて予想されるものよりも安全又は有効である。このような他の薬物は、一般に使用される経路及び量で、構造式Iの化合物と同時に、又は順次に投与することができる。構造式Iの化合物を1種類以上の他の薬物と同時に使用するときには、そのような他の薬物と構造式Iの化合物とを含有する混合生成物が好ましい。しかし、併用療法は、構造式Iの化合物と1種類以上の他の薬物とを異なる重複スケジュールで投与する療法も含む。他の活性成分と併用するときには、本発明の化合物又は他の活性成分又はその両方を、各々を単体で使用するときよりも低用量で有効に使用することができると考えられる。したがって、本発明の薬学的組成物は、構造式Iの化合物に加えて1種類以上の他の活性成分を含有する薬学的組成物を含む。
【0101】
構造式Iの化合物と併用して投与することができ、別個に投与することも、同じ薬学的組成物として投与することもできる他の活性成分の例は、
(a)ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害剤、
(b)(i)グリタゾン(例えばトログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾンなど)などのPPARγ作用物質、及びKRP−297などのPPARα/γ二重作用物質、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート及びベザフィブラートなどのPPARα作用物質を含む、他のPPARリガンド、並びに(ii)メトホルミン及びフェンホルミンなどのビグアナイドを含めたインスリン増感剤、
(c)インスリン及びインスリン模倣物、
(d)トルブタミド、グリピジド、メグリチナイド及び関連物質などのスルホニル尿素及び他のインスリン分泌促進物質、
(e)アカルボースなどのα−グルコシダーゼ阻害剤、
(f)国際公開第98/04528号、国際公開第99/01423号、国際公開第00/39088号及び国際公開第00/69810号に開示された物質などのグルカゴン受容体拮抗物質、
(g)GLP−1、GLP−1アナログ、及び国際公開第00/42026号及び国際公開第00/59887号に開示されたものなどのGLP−1受容体作用物質、
(h)GIP、国際公開第00/58360号に開示されたものなどのGIP模倣物、及びGIP受容体作用物質、
(i)PACAP、PACAP模倣物、及び国際公開第01/23420号に開示されたものなどのPACAP受容体3作用物質、
(j)(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン、ロスバスタチン及び他のスタチン)、(ii)胆汁酸金属イオン封鎖剤(コレスチラミン、コレスチポール、及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)エゼチマイブ、ベータ−シトステロールなどのコレステロール吸収阻害剤、(v)例えば、アバシミベ(avasimibe)などのアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、及び(vi)プロブコールなどの抗酸化剤などのコレステロール降下剤、
(k)国際公開第97/28149号に開示された物質などのPPARδ作用物質、
(l)フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オーリスタット、ニューロペプチドY又はY拮抗物質、CB1受容体逆作用物質及び拮抗物質、βアドレナリン受容体作用物質、メラノコルチン−受容体作用物質、特にメラノコルチン−4受容体作用物質、グレリン拮抗物質、メラニン凝集ホルモン(MCH)受容体拮抗物質などの抗肥満化合物、
(m)回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤、
(n)アスピリン、非ステロイド抗炎症薬、アザルフィジン及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤などのグルココルチコイド以外の炎症性疾患用薬剤、
(o)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤、及び
(p)カプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラマプリル、ゾフェノプリル、カンデサルタン、シレキセチル、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、タソサルタン、テルミサルタン及びバルサルタンなどのアンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗物質又はレニン阻害剤などのアンジオテンシン系又はレニン系に作用する薬剤を含めた降圧薬
などであるが、これらだけに限定されない。
【0102】
上記組み合わせは、構造式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和化合物と、1種類以上の他の活性化合物とを含む。非限定的な例としては、構造式Iの化合物と、ビグアナイド、スルホニル尿素、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、PPAR作用物質、PTP−1B阻害剤、DP−IV阻害剤及び抗肥満化合物からなる群から選択される2種類以上の活性化合物との組み合わせがある。
【0103】
哺乳動物、特にヒトに、本発明の化合物の有効投与量を与えるために任意の適切な投与経路を使用することができる。例えば、経口、直腸、局所、非経口、眼球、肺、経鼻などを使用することができる。剤形としては、錠剤、トローチ剤、分散剤、懸濁液剤、溶液剤、カプセル剤、乳剤、軟膏剤、エアゾール剤などがある。構造式Iの化合物を経口投与することが好ましい。
【0104】
活性成分の有効投与量は、使用する具体的な化合物、投与方法、治療する病態、及び病態の重篤度に応じて変わる。当業者は、このような投与量を容易に確認することができる。
【0105】
構造式Iの化合物の適応症である本明細書に記載する疾病及び病態を治療し、又は予防するときには、本発明の化合物を約0.1〜約100ミリグラム/キログラム(mpk)体重の一日量で投与し、好ましくは毎日単一用量で、又は1日当たり約2〜6回の分割用量で投与するときに、満足な結果が得られる。したがって、1日の全用量は、約0.1mg〜約1000mg、好ましくは約1mg〜約50mgである。典型的な70kgの大人の場合には、1日の全用量は約7mg〜約350mgとなるであろう。この投与量は、最適な治療応答を得るために調節することができる。
【0106】
本発明の別の側面は、構造式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和化合物と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物に関する。
【0107】
この組成物は、経口、直腸、局所、(皮下、筋肉内及び静脈内を含む)非経口、眼球(眼)、経皮、肺(鼻又は口からの吸入)又は経鼻投与に適切な組成物を含むが、任意の所与の症例において最も適切な経路は、治療する病態の性質及び重篤度、並びに活性成分に依存するであろう。これらの組成物は、都合よく単位剤形とすることができ、薬学分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。
【0108】
構造式Iの化合物は、従来の調剤技術によって薬剤担体と混合することができる。担体は多種多様な形態をとる。例えば、経口液体組成物用担体としては、例えば、水、グリコール、オイル、アルコール、矯味矯臭剤、防腐剤、着色剤、並びに経口懸濁液剤、エリキシル剤及び溶液剤の製造に使用される他の成分が挙げられる。デンプン、糖及び微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、バインダー、崩壊剤などの担体は、経口固体剤形、例えば、散剤、硬カプセル、軟カプセル及び錠剤を調製するために使用される。固体経口製剤は経口液剤よりも好ましい。
【0109】
経口固体剤形は、トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ又はゼラチンなどのバインダー;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;及びスクロース、ラクトース、サッカリンなどの甘味剤も含有することができる。カプセル剤は、脂肪油などの液体担体を含有することもできる。
【0110】
コーティングとして作用し、又は単位用量の物理的形態を改変する様々な他の材料が存在することもできる。例えば、錠剤は、シェラック、糖又はその両方で被覆することができる。
【0111】
錠剤は、標準の水系又は非水系技術によって被覆することができる。これらの組成物中の活性化合物の典型的な割合は、重量/重量基準で約2パーセントから約60パーセントの範囲で変動し得ることは言うまでもない。したがって、錠剤は、構造式Iの化合物、又はその塩若しくは水和物を約0.1mgから約1.5g、好ましくは約1.0mgから約500mg、より好ましくは約10mgから約100mgの範囲の量で含有する。
【0112】
シロップ剤、エリキシル剤などの経口液体は、活性成分に加えて、甘味剤としてスクロース、防腐剤としてメチル及びプロピルパラベン、色素、並びにサクランボ又はオレンジ風味などの矯味矯臭剤を含有することができる。
【0113】
非経口製剤は、一般に、溶液又は懸濁液の形態をとり、一般に水を用いて調製され、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤を場合によっては含んでもよい。分散剤は、グリセリン、液状ポリエチレングリコール、及びオイル中のそれらの混合物中で調製することができる。一般に、希釈製剤は防腐剤を含むこともできる。
【0114】
注射液剤又は分散剤をその場で調製するための水溶液剤、分散剤及び散剤などの、注射用薬学的剤形は無菌であり、容易に注射できる程度の流体でなければならず、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、通常は貯蔵される。したがって、担体としては、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリン、プロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散媒が挙げられる。
【0115】
アッセイ:阻害定数の測定:
試験化合物のインビトロでの酵素活性をシンチレーション近接アッセイ(SPA)によって評価した。端的に述べると、トリチウム化コルチゾン基質、NADPH補因子、及び滴定された化合物を11β−HSD1酵素とともに37℃でインキュベートしてコルチゾルへの転化を進めた。このインキュベーション後に、抗コルチゾルモノクローナル抗体と構造式Iの化合物とが予め混合された、タンパク質A被覆SPAビーズの調製物を各ウェルに添加した。この混合物を15℃で振とうし、次いで96ウェルプレートに適切な液体シンチレーションカウンターで読み取った。阻害されていない対照ウェルに対する阻害率を計算し、IC50曲線を作成した。このアッセイを11β−HSD2に同様に適用し、それによってトリチウム化コルチゾル及びNADをそれぞれ基質及び補因子として使用した。アッセイを開始するために、基質(25nM H−コルチゾン+1.25mM NADPHの50mM HEPES緩衝剤、pH7.4)40μLを96ウェルプレートの指定ウェルに添加した。この化合物を10mMでDMSOに溶解し、続いてDMSOで50倍に希釈した。次いで、希釈された材料を7回4倍滴定した。次いで、滴定された各化合物1μLを2つ組で基質に添加した。反応を開始するために、CHO形質移入体由来の11β−HSD1ミクロソーム10μLを、出発材料の約10%の転化率を得るのに適切な濃度で各ウェルに添加した。阻害率を最終的に計算するために、最小及び最大アッセイ、すなわち、基質を含み化合物も酵素も含まないセット(バックグラウンド)と、基質と酵素を含みいかなる化合物も含まない別のセット(最大シグナル)を一連のウェルに添加した。これらのプレートを低速で軽く遠心分離して試薬をプールし、接着剤片で密封し、静かに混合し、37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、抗コルチゾルモノクローナル抗体と式Iの化合物をあらかじめ懸濁したSPAビーズ45μLを各ウェルに添加した。これらのプレートを再度密封し、15℃で1.5時間以上静かに振とうした。Topcountなどのプレートベースの液体シンチレーションカウンターでデータを収集した。抗コルチゾル抗体/コルチゾル結合の阻害を制御するために、1.25nM[3]Hコルチゾルを加えた基質を指定の単一ウェルに添加した。200μMの化合物1μLを、酵素の代わりに緩衝剤10μLとともにこれらのウェルの各々に添加した。計算されたあらゆる阻害は、SPAビーズ上の抗体に結合したコルチゾルと干渉する化合物によるものであった。
【0116】
アッセイ:インビボでの阻害の測定:
一般に、試験化合物を哺乳動物に経口投与し、所定時間、通常1〜24時間置いた。トリチウム化コルチゾンを静脈内注射し、数分後に血液を採取した。分離した血清からステロイドを抽出し、HPLCで分析した。H−コルチゾン及びその還元生成物であるH−コルチゾルの相対レベルを、化合物及びビヒクルを投与した対照群について測定した。絶対転化率及び阻害率をこれらの値から計算した。
【0117】
より具体的には、化合物をビヒクル(5%ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンv/vHO、又は当量)に所望の濃度で溶解し、一般に10mg/kgで投薬することによって、それらを経口投薬用に調製した。終夜絶食後、(Charles Riverから入手)ICRマウスにその溶液を経口胃管栄養法によって、0.5mL/投与/動物、3匹の動物/試験グループで投与した。
【0118】
所望の時間後、通常1又は4時間が経過した後に、3μM H−コルチゾンのdPBS溶液0.2mLを尾静脈に注射した。動物を2分間檻に入れ、続いてCOチャンバに入れて安楽死させた。終了後、マウスを取り出し、心臓穿刺によって血液を採取した。血液を血清分離管中に30分間以上室温で放置して適切に凝固させた。インキュベーション期間後に、血液を3000Xg、4℃で10分間遠心分離して血清に分離した。
【0119】
血清中のステロイドを分析するために、ステロイドを有機溶媒でまず抽出した。0.2mL容量の血清を清浄なマイクロ遠心管に移した。これに1.0mL体積の酢酸エチルを添加し、続いて1分間激しく撹拌した。マイクロ遠心分離で高速回転させて血清タンパク質水溶液をペレット化し、有機上清を浄化した。上部有機相0.85mLを新しいマイクロ遠心管に移し、乾燥させた。乾燥試料を、高濃度のコルチゾンとコルチゾルを含有するDMSO 0.250mLに再懸濁してHPLCで分析した。
【0120】
30%メタノールで平衡にしたMetachem Inertsil C−18クロマトグラフィーカラムに試料0.200mLを注入した。線形勾配で徐々に50%メタノールにすると、標的ステロイドが分離された。再懸濁溶液中の冷標準(cold standard)を254nmのUVによって同時にモニタリングして内部標準とした。データをソフトウエアにアップロードして分析するラジオクロマトグラフィー検出器によってトリチウムシグナルを収集した。H−コルチゾンからH−コルチゾルへの転化率を、コルチゾルのAUCと、コルチゾンとコルチゾルの混合AUCとの比として計算した。
【0121】
本発明の化合物の調製:
本発明の構造式Iの化合物を以下のスキーム及び実施例の手順に従って、適切な材料を用いて調製することができ、以下の具体例によってさらに例証する。しかし、実施例に示されている化合物が、本発明とみなされる唯一の属(genus)を形成するものと解釈すべきではない。実施例は、本発明の化合物の調製をさらに詳細に示すものである。当業者は、以下の調製手順の条件及びプロセスの既知の変形例をこれらの化合物を調製するために使用できることを容易に理解できるはずである。本化合物は、一般に、中性の形で単離されるが、有機溶媒に溶解し、続いて適切な酸を添加し、その後蒸発、沈殿又は結晶化させて、トリアゾール部分を薬学的に許容される塩にさらに転化することができる。他に断らない限り、温度はすべて℃である。質量スペクトル(MS)は、エレクトロスプレーイオン質量分析(ESMS)によって測定された。
【0122】
「標準ペプチドカップリング反応条件」という句は、EDC、DCC、BOPなどの酸活性化剤(acid activating agent)を用いて、ジクロロメタンなどの不活性溶媒中、HOBTなどの触媒の存在下で、カルボン酸をアミンとカップリングさせることを意味する。所望の反応を促進し望ましくない反応を最小限に抑えるアミン及びカルボン酸官能基の保護基の使用は、これまでに十分述べられている。保護基を除去するのに必要な条件は、Greene,T及びWuts,P.G.M.、Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley&Sons,Inc.,New York,NY,1991などの標準的なテキストに記載されている。Cbz及びBOCは、有機合成において一般に使用される保護基であり、それらの除去条件は当業者に知られている。
【0123】
本発明の化合物の調製の説明に使用される略語:
【0124】
【表3】


【0125】
反応スキーム1から5に、本発明の構造式Iの化合物の合成に使用する方法を示す。すべての置換基は、特に断らない限り、上に定義したとおりである。
【0126】
反応スキーム1は、本発明の構造式Iの新規化合物の合成における重要な段階である。反応スキーム1に示すように、第二級アミド(1−1)(N−Me又はN−Etが好ましい)は、イミノエーテル(1−2)を得るために、純粋なメチルトリフレートとともに加熱することによってメチル化することができる。あるいは、ヨウ化メチル又は硫酸メチルなどの他のメチル化試薬をそのまま又は非求核性有機溶媒に溶かして使用することができる。スキーム1に示されているように、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボン酸(1−3)は、トリエチルアミンなどの第三級アミン塩基の存在下でカップリング試薬TFFH及びヒドラジンを用いることによってアシルヒドラジド(1−4)に転化される。あるいは、アミドの調製に一般に使用される他のカップリング試薬をヒドラジンとともにこの変換に使用することができる。あるいは、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボキシルエステルをヒドラジンとともに加熱してアシルヒドラジド(1−4)を調製することができる。こうして生成したアシルヒドラジド(1−4)及びイミノエーテル(1−2)は、トルエンなどの不活性高沸点有機溶媒中、トリエチルアミンなどの第三級アミン塩基の存在下で一緒に加熱して、構造式Iのビシクロ[2.2.2]オクチルトリアゾール(1−5)を得ることができる。
【0127】
【化9】

【0128】
あるいは、反応スキーム2によって示されるように、逆の方法で反応を実施することができる。この手順においては、第二級アミド(2−1)は、標準ペプチドカップリング反応を使用して、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボン酸から調製される。この化合物は、メチル化されてイミノエーテル(2−2)を形成し、反応スキーム1に示したようにアシルヒドラジドと反応して、構造式Iのビシクロ[2.2.2]オクチルトリアゾール(2−3)が得られる。
【0129】
【化10】

【0130】
反応スキーム3は、構造式Iの化合物を形成するための、さらに別の合成アプローチを記載している。この手法を用いて、4−(ビシクロ[2.2.2]オクチル)オキサジアゾール(3−1)は、メチルアンモニウムトリフルオロアセテートとの融解液中又は緩衝化されたMeOH溶液中で無水に、メチルアミンと脱水的に縮合される。これらの反応は、メチルアミンの喪失を防ぐために、高温で、高圧のリアクター中で行うのが最良である。
【0131】
【化11】

【0132】
[2.2.2]ビシクロオクチル中間体の調製:
本発明の化合物の調製に使用するための[2.2.2]ビシクロオクチル中間体の調製に使用される手順を以下に示す。
【0133】
中間体スキーム1及び2は、構造式Iによって示されているR位にヘテロアリール基を有するビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボン酸を調製するための好ましい方法を示している。R位のオキサジアゾールは、ビシクロ[2.2.2]オクチル−1−カルボン酸を中間体スキーム1に示されているアミドキシムと縮合させることによって調製することができる。このカップリングに有用な試薬はCDIである。あるいは、脱水又はペプチドカップリング反応に有用な他の試薬を使用することもできる。中間体スキーム2は、R位にチアゾール基を有する構造式Iの化合物の中間体の好ましい合成法を示している。
【0134】
【化12】


【0135】
中間体スキーム3から10に、R位に様々なアルキル又はアルケニル又は置換アルキル基を有する構造式Iの化合物の合成において、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボン酸中間体を調製する好ましい方法を示す。重要な反応は、中間体スキーム3に示されているように、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボキサルデヒドに対して実施されるウィッティヒ反応である。この反応の生成物中の二重結合は、中間体スキーム4に示されているように、水素化されてウィッティヒ試薬に応じて(構造式I中のR置換基になる。)様々な長さ及び特性のアルキル基を生成することができる。あるいは、二重結合は、中間体スキーム5に示されているように、ヒドロキシ基又はフルオロ基などの他の官能基を導入するために使用することができる。アルデヒド自体は、中間体スキーム6に示されているように、R位にジフルオロメチル基を設けるために使用することができる。ウィッティヒ反応のアルケン生成物は、中間体スキーム7に示されているように、多数の他の変換、例えば、シクロプロパン化を起こすことができる。あるいは、ウィッティヒ試薬は、中間体スキーム8に示されているように、離れた官能基、例えば、ケタールを含有することができる。この官能基は、一連のウィッティヒ/還元後に特徴的官能基変換、例えば、中間体スキーム8に示されているような、ケタールからケトンへの加水分解、又は中間体スキーム9に示されているような、ケタールからアルコールへの還元を行うことができる。スルフィド、スルホキシド及びスルホンは、中間体スキーム10に示されているように、調製することができる。このようにして、様々な異なるR置換基を有する構造式Iの化合物を得ることができる。示した具体例は、一般的な原理を与えるものであって、R置換基の範囲を限定するものではない。
【0136】
【化13】



【実施例】
【0137】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供するものであって、本発明の範囲を限定するものと決して解釈すべきではない。
(実施例1)
【0138】
【化14】

【0139】
3−(4−ペンチルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]アゾシン(1−C)
【0140】
【化15】

【0141】
段階A:
磁石で攪拌された、4−ペンチルビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボン酸(1−A)(0.500g、2.23mmol)の0.3M DMF溶液(7.4mL)に、TFFH(フルオロ−N,N,N’,N’−テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート、589mg、2.23mmol)を添加した。この混合物を5分間攪拌した後、トリエチルアミンを添加し(0.626mL、2.0当量)、その後ヒドラジン(0.135mL、1.25当量)を添加した。この反応物を室温で30分間攪拌した後、LCMSによる時間分析によって、反応が完結したことが示された。精製を行わずに、この溶液を次の段階で直接使用した。
【0142】
段階B:
4−ペンチルビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボヒドラジド(未精製、上記段階Aのとおりに調製)の0.3M DMF溶液7.000mLに、8−メトキシ−2,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロアゾシン(29.6mg、1当量)を添加し、この反応物を130℃まで一晩加熱した。この後、減圧下で溶媒を除去し、残留物をC−18逆相(グラジエント90%水から100%アセトニトリル、0.1%TFA)でのクロマトグラフィーを行った。化合物を含有する画分をLCMSによって決定し、200mLの塩化メチレンに添加し、飽和炭酸水素ナトリウムで抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で蒸発させた。残留物をベンゼンから凍結乾燥させて、3−(4−ペンチルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]アゾシン(1−C)を得た;MS(ESI)=300.3(M+1)
H NMR(600MHz,CDCl):δ0.89ppm(3H,t,J=7.3Hz),1.12(2H,m),1.22(4H,m),1.30(2H,quint,7.3Hz),1.40(2H,m),1.49(8H,m),1.85(4H,m),2.01(6H,m),2.90(2H,t,J=6.1Hz),4.16(2H,t,J=6.0Hz)。
(実施例2)
【0143】
【化16】

【0144】
3,4−ジシクロプロピル−5−(4−ペンチルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)−4H−1,2,4−トリアゾール(2−B)
【0145】
【化17】

【0146】
段階A:
磁石で攪拌された、シクロプロパンカルボン酸(1.00g、11.6mmol)とシクロプロピルアミン(0.995g、1.5当量)の塩化メチレン溶液8mLに、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン、2.13g、1.5当量)、続いてEDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、3.34g、1.5当量)を添加した。この反応物を室温で2時間攪拌した後、50mLの塩化メチレンで希釈し、0.5NのHCl水溶液で2回洗浄し、続いて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで塩水で洗浄した。減圧下で溶媒を除去し、1:1 ヘキサン/酢酸エチルで溶出するシリカクロマトグラフィーによって残留物を精製して、N−シクロプロピルシクロプロパンカルボキサミド(2−A)を得た。
【0147】
段階B:
N−シクロプロピルシクロプロパンカルボキサミド(2−A)(26mg、0.210mmol)の0.50mLトルエン溶液に、メチルトリフラート(1.45mg、1当量)を添加し、全てのアミンが溶液になるまで、この反応物を100℃で、5から7分間加熱した。この未精製溶液に、4−ペンチルビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボヒドラジドの0.3M DMF溶液0.740mL(1.1当量、未精製、実施例1の段階Aに記載されているとおりに調製)、続いてトリエチルアミン(0.059mL、2当量)を添加し、この混合物を130℃で4時間加熱した。この後、減圧下で溶媒を除去し、残留物をC−18逆相(グラジエント90%水から100%アセトニトリル、0.1%TFA)でのクロマトグラフィーを行った。化合物を含有する画分をLCMSによって決定し、200mLの塩化メチレンに添加し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で蒸発させた。残留物をベンゼンから凍結乾燥させて、3,4−ジシクロプロピル−5−(4−ペンチルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)−4H−1,2,4−トリアゾール(2−B)を得た;MS(ESI)=328.3(M+1)。
(実施例3)
【0148】
【化18】

【0149】
3−(4−ペンチルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)−6,7,8,9,10,11−ヘキサヒドロ−5H−5,9−:7,11−ジメタノ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]アゾニン
【0150】
【化19】

【0151】
段階A
4−アザトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン−5−オン 3−A(1.00g、6.05mmol)の塩化メチレン溶液10mLに、メチルトリフラート(2.98g、3当量)を添加し、この反応物を還流しながら20分間加熱した後、揮発成分を減圧下で全て除去して、未精製の5−メトキシ−4−アザトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデク−4−エン3−Bを取得し、さらなる精製を行わずに次の段階で使用した。
【0152】
段階B: 4−ペンチルビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボヒドラジン 1−Bの0.3M DMF溶液1.86mLに(実施例1に記載されているとおりに調製)、100mg(0.559mmol)の未精製5−メトキシ−4−アザトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデク−4−エン 3−Bを添加した。密封したチューブの中で、この反応物を120℃で14時間加熱した。この後、減圧下で溶媒を除去し、残留物をC−18逆相(グラジエント90%水から100%アセトニトリル、0.1%TFA)でのクロマトグラフィーを行った。この化合物を含有する画分をLCMSによって決定し、200mLの塩化メチレンに添加し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物をベンゼンから凍結乾燥して、3−(4−ペンチルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)−6,7,8,9,10,11−ヘキサヒドロ−5H−5,9:7,11−ジメタノ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]アゾニン(3−C)を得た;MS(ESI)=368.5(M+1)。
【0153】
H NMR(500MHz,CDCl):δ0.9ppm(3H,t,J=6.6Hz),1.13(2H,m),1.23(4H,m),1.31(2H,m),1.49(6H,m),1.83(6H,m),1.98(8H,m),2.08(2H,m),2.20(2H,m),3.55(1H,m),4.77(1H,m)。
【0154】
(実施例4−47)
上記手順と同様の手順に従って、以下の式IIの化合物も調製した。
【0155】
【表4】



【0156】
さらに、上記手順と同様の手順に従って、以下の式IIIの化合物も調製した。
【0157】
【表5】


【0158】
薬学的製剤の例
本発明の化合物の経口組成物の具体例として、実施例1の化合物50mgを、十分細かく砕かれたラクトースとともに調合して、580から590mgの総量を得、サイズOの硬ゼラチンカプセルを充填する。
【0159】
本発明をその具体的な実施態様を参照して記述し説明したが、当業者は、様々な変更、改変及び置換が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本明細書においてなされ得ることを理解されたい。例えば、特定の病気の治療を受けるヒトの応答性がばらつく結果、上記好ましい投与量以外の有効投与量を適用できることもある。同様に、観察される薬理学的応答は、選択する具体的な活性化合物、或いは薬剤担体が存在するかどうか、並びに製剤のタイプ及び使用する投与様式によって、また、それらに応じて変わることがあり、そのような予想される結果の変動又は相違も、本発明の目的及び実施によって企図される。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、そのような特許請求の範囲は妥当な限り広く解釈されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩若しくはその溶媒和化合物。
【化1】

(式中、
各pは独立に0、1又は2であり、
各nは独立に0、1又は2であり、
Xは、単結合、O、S(O)、NR
【化2】

からなる群から選択され、
及びRは、C1−8アルキル、C2−6アルケニル及び(CH−C3−6シクロアルキルからなる群から各々独立に選択され、アルキル、アルケニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、若しくはR及びオキソから独立に選択される1から3個の置換基で置換されており;又は、R及びRは、それらが結合している原子とともに、酸素、硫黄及び窒素から選択される追加の複素原子を必要に応じて含有し、必要に応じてベンゾ環系と縮合した7員から11員の縮合非芳香族複素環式環を形成し;又は、R及びRは、それらが結合している原子とともに、縮合4−アザトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン環を形成し;前記縮合環系は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−3アルキル及びC1−3アルコキシから独立に選択される1から3個の置換基で置換されており;
各Rは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、C1−3アルキル及びC1−3アルコキシからなる群から独立に選択され;
は、水素、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、(CH−C3−6シクロアルキル、(CH−アリール、(CH−ヘテロアリール及び(CH−ヘテロシクリルからなる群から選択され;アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、置換されていないか、又はRから独立に選択される1から3個の置換基で置換されており;アルキル、アルケニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はR及びオキソから独立に選択される1から5個の基で置換されており;
及びRは、水素、ホルミル、C1−6アルキル、(CH−アリール、(CH−ヘテロアリール、(CH−ヘテロシクリル、(CH3−7シクロアルキル、ハロゲン、OR、(CHN(R、シアノ、(CHCO、NO、(CHNRSO、(CHSON(R、(CHS(O)、(CHSOOR、(CHNRC(O)N(R、(CHC(O)N(R、(CHNRC(O)R、(CHNRCO、O(CHC(O)N(R、CF、CHCF、OCF、OCHCF及びOCHCFからなる群から各々独立に選択され;
ここで、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル及びヘテロシクリルは置換されておらず、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及びC1−4アルコキシから独立に選択される1から3個の置換基で置換されており;又は、2個のR置換基は、それらが結合している原子と一緒に、酸素、硫黄及び窒素から独立に選択される1から2個の複素原子を必要に応じて含有する5から8員環を形成し;R及びR中の任意のメチレン(CH)炭素原子は置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキルから独立に選択される1から2個の基で置換されており;又は、同一のメチレン(CH)炭素原子上にあるときには、2個の置換基は、それらが結合している炭素原子とともにシクロプロピル基を形成し;
各Rは、C1−8アルキル、(CH−アリール、(CH−ヘテロアリール及び(CH−C3−7シクロアルキル(式中、アルキル及びシクロアルキルは置換されていないか、又はハロゲン、オキソ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、ヒドロキシ及びアミノから独立に選択される1から5個の置換基で置換されており、アリール及びヘテロアリールは置換されていないか、又はシアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから独立に選択される1から3個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択され;
又は2個のR基は、それらが結合している原子と一緒に、O、S及びNC0−4アルキルから選択される追加の複素原子を必要に応じて含有する5から8員環単環系又は二環系を形成し、
各Rは水素又はRである。)
【請求項2】
及びRが、それらが結合している原子とともに、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−3アルキル及びC1−3アルコキシから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている、7から9員の縮合非芳香複素環式環を形成している、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が水素である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
及びRが、それらが結合している原子とともに、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−3アルキル及びC1−3アルコキシから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている、8員の縮合非芳香複素環式環を形成している、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が水素である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が、置換されていないか、又はC2−5アルキル又は(CHシクロプロピルであり、アルキル及びシクロプロピルは、フッ素、C1−3アルキル、トリフルオロメチル、C1−3アルコキシ及びC1−3アルキルチオから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が、置換されていないか、又はシクロプロピル、C1−3アルキル又はC2−3アルケニルであり、アルキル及びシクロプロピルは、フッ素、C1−3アルキル、トリフルオロメチル、C1−3アルコキシ及びC1−3アルキルチオから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が水素である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
【表1】


からなる群から選択される、構造式IIの、請求項1に記載の化合物。
【表2】


からなる群から選択される、構造式IIIの、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
【化3】


からなる群から選択される化合物、又は薬学的に許容されるその塩若しくはその溶媒和化合物。
【請求項11】
薬学的に許容される担体とともに、請求項1に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物の抗糖尿病有効量を哺乳動物患者に投与することを含む、非インシュリン依存性糖尿病の治療を必要とする前記哺乳動物患者における非インシュリン依存性糖尿病を治療する方法。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物を、肥満を治療するのに有効な量で哺乳動物患者に投与することを含む、肥満の治療を必要とする前記哺乳動物患者における肥満を治療する方法。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物を、X症候群を治療するのに有効な量で哺乳動物患者に投与することを含む、X症候群の治療を必要とする前記哺乳動物患者におけるX症候群を治療する方法。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物を、アテローム性動脈硬化症を治療するのに有効な量で哺乳動物患者に投与することを含む、アテローム性動脈硬化症の治療を必要とする前記哺乳動物患者におけるアテローム性動脈硬化症を治療する方法。

【公表番号】特表2007−500232(P2007−500232A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533418(P2006−533418)
【出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/016512
【国際公開番号】WO2004/106294
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】