説明

15価肺炎球菌多糖−タンパク質コンジュゲートワクチン組成物

本発明は、15種類の相違する多糖−タンパク質コンジュゲートを有する多価の免疫原性組成物を提供する。各コンジュゲートは、担体タンパク質、好ましくはCRM197にコンジュゲートさせた肺炎連鎖球菌の異なる血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23Fまたは33F)から調製された莢膜多糖からなる。該免疫原性組成物は、好ましくはアルミニウム系アジュバントにてワクチンとして製剤され、特に乳児および幼児において、肺炎球菌性疾患に対して高い接種率をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
なし
【技術分野】
【0002】
本発明は、15種類の相違する多糖−タンパク質コンジュゲートを有する多価の免疫原性組成物を提供する。各コンジュゲートは、担体タンパク質、好ましくはCRM197にコンジュゲートさせた肺炎連鎖球菌の異なる血清型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23Fまたは33F)から調製された莢膜多糖からなる。該免疫原性組成物は、好ましくはアルミニウム系アジュバント上のワクチンとして製剤され、特に乳児および幼児において、肺炎球菌性疾患に対する広範な接種率(coverage)を提供する。
【背景技術】
【0003】
肺炎連鎖球菌は、世界的に重篤な疾患の深刻な原因である。1997年、疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)(CDC)により、米国では、年間肺炎球菌性髄膜炎は3,000例、肺炎球菌性菌血症は50,000例、肺炎球菌性中耳炎は7,000,000例、そして肺炎球菌性肺炎は500,000例であると推定された。Centers for Disease Control and Prevention,MMWR Morb Mortal Wkly Rep 1997,46(RR−8):1−13参照。さらに、これらの疾患の合併症は深刻な場合があり得、一部の試験により、肺炎球菌性髄膜炎では8%までの死亡率および25%の神経系の続発症が報告されている。Arditiら,1998,Pediatrics 102:1087−97参照。
【0004】
長年にわたって認可されている多価の肺炎球菌多糖ワクチンは、成人、特に、高齢者および高リスクの人における肺炎球菌性疾患の予防に有益であることが証明されている。しかしながら、乳児および幼児では、非コンジュゲート肺炎球菌多糖に対する応答は不充分である。肺炎球菌コンジュゲートワクチンであるPrevnar(登録商標)は、最も高頻度に単離された7種類の血清型(4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F)を含有しており、米国で2000年2月に最初に認可されたが、当時、幼児および乳児において侵襲性の肺炎球菌性疾患が引き起こされた。米国でPrevnar(登録商標)が広く使用されるようになった後、Prevnar(登録商標)に存在する血清型により、小児では侵襲性肺炎球菌性疾患の有意な減少が見られている。Centers for Disease Control and Prevention,MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2005,54(36):893−7参照。しかしながら、世界の特定の地域ではPrevnar(登録商標)による血清型接種率に制限があり、米国では、特定の新生血清型(例えば、19Aなど)の証拠がいくつかある。O’Brienら,2004,Am J Epidemiol 159:634−44;Whitneyら,2003,N Engl J Med 348:1737−46;Kyawら,2006,N Engl J Med 354:1455−63;Hicksら,2007,J Infect Dis 196:1346−54;Traoreら,2009,Clin Infect Dis 48:S181−S189参照。
【0005】
米国特許出願公開第2006/0228380号には、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fを含む13価の肺炎球菌多糖−タンパク質コンジュゲートワクチンが記載されている。中国特許出願公開第101590224号には、血清型1、2、4、5、6A、6B、7F、9N、9V、14、18C、19A、19Fおよび23Fを含む14価の肺炎球菌多糖−タンパク質コンジュゲートワクチンが記載されている。
【0006】
他のPCVにも、PCV−15に含めた血清型のうちの7、10、11または13が含まれているが、一部の血清型で免疫干渉が観察されており(例えば、GSKのPCV−11中の血清型3に対する防御は低い)、PfizerのPCV−13中の血清型6Bに対する応答率は低い。Prymulaら,2006,Lancet 367:740−48およびKieningerら,Safety and Immunologic Non−inferiority of 13−valent Pneumoccocal Conjugate Vaccine Compared to 7−valent Pneumoccocal Conjugate Vaccine Given as a 4−Dose Series in Healthy Infants and Toddlers,(48th Annual ICAAC/ISDA 46th Annual Meeting,Washington DC,October 25−28,2008に提示)参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0228380号
【特許文献2】中国特許出願公開第101590224号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Centers for Disease Control and Prevention,MMWR Morb Mortal Wkly Rep 1997,46(RR−8):1−13
【非特許文献2】Arditiら,1998,Pediatrics 102:1087−97
【非特許文献3】Centers for Disease Control and Prevention,MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2005,54(36):893−7
【非特許文献4】O’Brienら,2004,Am J Epidemiol 159:634−44
【非特許文献5】Whitneyら,2003,N Engl J Med 348:1737−46
【非特許文献6】Kyawら,2006,N Engl J Med 354:1455−63
【非特許文献7】Hicksら,2007,J Infect Dis 196:1346−54
【非特許文献8】Traoreら,2009,Clin Infect Dis 48:S181−S189
【非特許文献9】Prymulaら,2006,Lancet 367:740−48
【非特許文献10】Kieningerら,Safety and Immunologic Non−inferiority of 13−valent Pneumoccocal Conjugate Vaccine Compared to 7−valent Pneumoccocal Conjugate Vaccine Given as a 4−Dose Series in Healthy Infants and Toddlers,(48th Annual ICAAC/ISDA 46th Annual Meeting,Washington DC,October 25−28,2008)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(1)担体タンパク質にコンジュゲートさせた肺炎連鎖球菌の15種類の異なる血清型由来の莢膜多糖からなる多価の多糖−タンパク質コンジュゲート混合物、および(2)薬学的に許容され得る担体、を含む免疫原性組成物を提供する。より詳しくは、本発明は、担体タンパク質にコンジュゲートさせた肺炎連鎖球菌の血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F由来の莢膜多糖からなる多価の多糖−タンパク質コンジュゲート混合物;ならびに薬学的に許容され得る担体、を含む15価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV−15)組成物を提供する。具体的な一実施形態において、該免疫原性組成物は血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、1A、19F、22F、23Fおよび33F由来の莢膜多糖を含み、そして担体タンパク質はCRM197である。
【0010】
一部の特定の実施形態では、該組成物は、さらにアジュバントを含む。一部の特定の実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウムなどのアルミニウム系アジュバントである。本発明の特定の一実施形態では、アジュバントはリン酸アルミニウムである。
【0011】
また、本発明は、ヒトに免疫学的有効量の上記の免疫原性組成物を投与することを含む、肺炎連鎖球菌莢膜多糖に対する免疫応答の誘発方法を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、6Bが4μgである以外は2μgの各多糖;約32μgのCRM197担体タンパク質;0.125mgの元素アルミニウム(0.5mgのリン酸アルミニウム)アジュバント;150mMの塩化ナトリウムおよび20mMのL−ヒスチジンバッファーを含むように製剤化された0.5mL単回用量として投与される免疫原性組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】乳児アカゲザルでのPrevnar(登録商標)とPCV−15とのGMCの比較である(Prevnar血清型,PD−2およびPD−3)。エラーバーは2標準誤差を表す。
【図2】PCV−15で免疫処置した乳児アカゲザルでの非Prevnar(登録商標)血清型に対する血清型特異的GMCである。エラーバーは2標準誤差を表す。
【図3】NZWR−1:APAなし(0xA)またはAPAあり(B1)で、PCV−15で免疫処置したウサギでの力価の幾何平均の比較である(2回目の投与後)。エラーバーは、差の倍数の幾何平均に対する95%CIを表す(APAなしのPCV−15/APAありのPCV−15)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、15種類の相違する多糖−タンパク質コンジュゲートを含む、本質的に該コンジュゲートからなる、あるいはまた該コンジュゲートからなる多価の免疫原性組成物を提供し、該コンジュゲートの各々は、担体タンパク質にコンジュゲートさせた異なる莢膜多糖を含み、該莢膜多糖は、薬学的に許容され得る担体とともに肺炎連鎖球菌の血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33Fから調製される。一部の特定の実施形態では、担体タンパク質はCRM197である。該免疫原性組成物は、さらに、アジュバント、例えば、アルミニウム系アジュバント(リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムなど)を含むものであってもよい。また、本発明は、ヒトに免疫学的有効量の上記の多価の免疫原性組成物を投与することを含む、肺炎連鎖球菌莢膜多糖コンジュゲートに対する免疫応答の誘発方法を提供する。
【0015】
本実施例(後述)において実例を示すように、乳児アカゲザルでの前臨床試験により、PCV−15の全15種類の血清型に対して、Prevnar(登録商標)の7種類の共通する血清型に対する応答と同等の強固な抗体応答が示された。血清型22Fおよび33Fを含む新たな多糖−タンパク質コンジュゲートの追加を含めた15価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンにより強固な抗体応答が提供されるという本出願人らの所見は、既存の肺炎球菌ワクチンではカバーされない肺炎球菌の血清型の接種率の拡張の実現可能性を示す。
【0016】
用語「〜を含む(comprise)」は、本発明の免疫原性組成物について用いる場合、任意の他の成分(該抗原混合物に対する「〜からなる」という文言の制限を受ける)、例えばアジュバントおよび賦形剤などの包含をいう。用語「〜からなる」は、多価の多糖−タンパク質コンジュゲート混合物について用いる場合、混合物が該15種類の特定の肺炎連鎖球菌多糖タンパク質コンジュゲートを有するが、異なる血清型由来の他の肺炎連鎖球菌多糖タンパク質コンジュゲートは有さないことをいう。
【0017】
肺炎連鎖球菌莢膜多糖−タンパク質コンジュゲート
肺炎連鎖球菌由来の莢膜多糖は、当業者に公知の標準的な手法によって調製され得る。例えば、多糖は、細菌から単離され得、既知の方法によって、好ましくはマイクロフルイダイゼーションによってある程度までサイジングしてもよい(例えば、欧州特許第497524号および同第497525号参照)。多糖は、多糖試料の粘度を低下させるため、および/またはコンジュゲート生成物の濾過性を改善するためにサイジングされ得る。本発明では、莢膜多糖は、肺炎連鎖球菌の血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33Fから調製する。
【0018】
一実施形態において、各肺炎球菌多糖の血清型はダイズベースの培地中で培養する。次いで、個々の多糖を、遠心分離、沈殿および限外濾過を含む標準工程によって精製する。例えば、米国特許出願公開第2008/0286838号および米国特許第5,847,112号を参照のこと。
【0019】
担体タンパク質は、好ましくは、無毒性かつ非反応原性であり、そして、充分な量および純度で入手可能なタンパク質である。担体タンパク質は、該多糖の免疫原性を増強するために肺炎連鎖球菌多糖とコンジュゲートまたは連接され得る。担体タンパク質は、標準的なコンジュゲーション手順に適したものであるのがよい。本発明の特定の一実施形態では、CRM197が担体タンパク質として使用される。一実施形態では、各莢膜多糖を同じ担体タンパク質にコンジュゲートさせる(各莢膜多糖分子は、単一の担体タンパク質にコンジュゲートされている)。別の実施形態では、莢膜多糖を2種類以上の担体タンパク質にコンジュゲートさせる(各莢膜多糖分子は、単一の担体タンパク質にコンジュゲートされている)。かかる実施形態において、同じ血清型の各莢膜多糖は、典型的には同じ担体タンパク質にコンジュゲートさせる。
【0020】
CRM197は、ジフテリア毒素の無毒性バリアント(すなわちトキソイド)である。一実施形態において、これは、カザミノ酸と酵母抽出物ベースの培地中で培養したCorynebacterium diphtheria株C7(β197)の培養物から単離される。別の実施形態では、CRM197は、米国特許第5,614,382号に記載の方法に従って組換えにより調製される。典型的には、CRM197は、限外濾過、硫酸アンモニウム沈殿およびイオン交換クロマトグラフィーの組合せによって精製される。一部の実施形態では、CRM197は、Pfenex Expression Technology(TM)(Pfenex Inc.,San Diego,CA)を用いて、Pseudomonas fluorescensにおいて調製される。
【0021】
他の好適な担体タンパク質としては、さらなる不活化細菌毒素、例えば、DT(ジフテリアトキソイド)、TT(破傷風トキソイド(toxid))またはTTの断片C、百日咳トキソイド、コレラトキソイド(例えば、国際公開第2004/083251号に記載のもの)、大腸菌LT、大腸菌ST、および緑膿菌由来の外毒素Aが挙げられる。細菌の外膜タンパク質、例えば、外膜複合体c(OMPC)、ポーリン、トランスフェリン結合タンパク質、肺炎球菌の表面プロテインA(PspA;国際公開第02/091998号参照)、肺炎球菌の吸着タンパク質(PsaA)、A群もしくはB群の連鎖球菌由来C5aペプチダーゼ、またはHaemophilus influenzaeのプロテインD、肺炎球菌のニューモリシン(Kuoら,1995,Infect Immun 63;2706−13)、例えば、なんらかの様式で無毒化されたply、例えば、dPLY−GMBS(国際公開第04/081515号参照)またはdPLY−ホルモール、PhtX、例えば、PhtA、PhtB、PhtD、PhtE およびPhtタンパク質の融合体、例えば、PhtDE融合体、PhtBE融合体(国際公開第01/98334号および同第03/54007号参照)もまた、使用され得る。他のタンパク質、例えば、オボアルブミン、スカシガイヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)またはツベルクリン(PPD)の精製タンパク質誘導体、PorB(N.meningitidis由来)、PD(Haemophilus influenzaeのプロテインD;例えば、欧州特許第0594610号参照)、またはその免疫学的機能等価体、合成ペプチド(欧州特許第0378881号および同第0427347号参照)、熱ショックタンパク質(国際公開第93/17712および同第94/03208号参照)、百日咳タンパク質(国際公開第98/58668号および欧州特許第0471177号参照)、サイトカイン、リンホカイン、増殖因子もしくはホルモン(国際公開第91/01146号参照)、種々の病原体由来抗原の多数のヒトCD4+ T細胞エピトープを含む人工タンパク質(Falugiら,2001,Eur J Immunol 31:3816−3824参照)、例えばN19タンパク質(Baraldoiら,2004,Infect Immun 72:4884−7参照)、鉄取込みタンパク質(国際公開第01/72337号参照)、C.difficileの毒素AもしくはB(国際公開第00/61761号参照)、ならびにフラジェリン(Ben−Yedidiaら,1998,Immunol Lett 64:9参照)もまた、担体タンパク質として使用され得る。
【0022】
他のDT変異型、例えば、CRM176、CRM228、CRM45(Uchidaら,1973,J Biol Chem 218:3838−3844);CRM9、CRM45、CRM102、CRM103およびCRM107、ならびにNichollsおよびYoule,Genetically Engineered Toxins,編:Frankel,Maecel Dekker Inc,1992に記載された他の変異;Glu−148からAsp、GlnもしくはSer、および/またはAla158からGlyへの変異または欠失、ならびに米国特許第4,709,017号または同第4,950,740号に開示された他の変異;残基Lys516、Lys526、Phe530および/またはLys534の少なくとも1つまたはそれ以上の変異、ならびに米国特許第5,917,017号または同第6,455,673号に開示された他の変異;あるいは米国特許第5,843,711号に開示された断片、を使用することもできる。
【0023】
精製した多糖は、糖質が担体タンパク質と反応することができるようにするために化学的に活性化させる。活性化させたら、各莢膜多糖を別々に担体タンパク質にコンジュゲートさせ複合糖質を形成させる。この多糖コンジュゲートは、既知のカップリング手法によって調製され得る。
【0024】
一実施形態において、多糖の化学的活性化およびその後の担体タンパク質へのコンジュゲーションは、米国特許第4,365,170号、同第4,673,574号および同第4,902,506号に記載の手段によって行われる。簡単には、この化学反応は、末端ヒドロキシル基をアルデヒドに酸化する任意の酸化剤、例えば過ヨウ素酸塩(例えば、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、または過ヨウ素酸)との反応による肺炎球菌多糖の活性化を伴う。この反応により、糖質のビシナルヒドロキシル基のランダムな酸化的切断がもたらされ、反応性アルデヒド基の形成を伴う。
【0025】
タンパク質担体(例えば、CRM197)とのカップリングは、該タンパク質のリジル基の直接アミノ化を経る還元的アミノ化によるものであり得る。例えば、コンジュゲーションは、活性化させた多糖と担体タンパク質との混合物を還元剤(ナトリウムシアノボロヒドリドなど)と反応させることにより行われる。次いで、未反応アルデヒドを、強力な還元剤(水素化ホウ素ナトリウムなど)の添加によってキャッピングする。
【0026】
別の実施形態において、コンジュゲーション方法は、糖質を1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)で活性化させ、シアン酸エステルを形成することに依存するものであり得る。活性化させた糖質は、かくして、直接、またはスペーサー(リンカー)基を介して担体タンパク質上のアミノ基にカップリングされ得る。例えば、スペーサーはシスタミンまたはシステアミンであり得、チオール化多糖が得られ、これは、マレイミド活性化型担体タンパク質(例えば、GMBSを使用)またはハロアセチル化担体タンパク質(例えば、ヨードアセトアミド[例えば、エチルヨードアセトアミドHCl]もしくはブロモ酢酸N−スクシンイミジルもしくはSIAB、もしくはSLA、もしくはSBAPを使用)との反応後に得られるチオエーテル結合によって担体にカップリングされ得る。好ましくは、シアン酸エステル(CDAP化学反応によって作製したものであってもよい)をヘキサンジアミンまたはアジピン酸ジヒドラジド(ADH)とカップリングさせ、アミノ誘導体化糖質を担体タンパク質に、タンパク質担体上のカルボキシル基を介するカルボジイミド(例えば、EDACまたはEDC)化学反応を用いてコンジュゲートさせる。かかるコンジュゲートは、国際公開第93/15760号、同第95/08348号および同第96/29094号;ならびにChuら,1983,Infect.Immunity 40:245−256に記載されている。
【0027】
他の適当な手法は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシンイミド、S−−NHS、EDC、TSTUを使用するものである。多くのものが国際公開第98/42721号に記載されている。コンジュゲーションは、カルボニルリンカーを伴うものであってもよく、これは、糖質の遊離ヒドロキシル基とCDIとの反応(Bethellら,1979,J.Biol Chem.254:2572−4;Hearnら,1981,J.Chromatogr.218:509−18参照)、続いて、タンパク質との反応によるカルバメート結合の形成によって形成され得る。これは、アノマー末端の第1級ヒドロキシル基への還元(場合により第1級ヒドロキシル基の保護/脱保護を行う)、第1級ヒドロキシル基とCDIとの反応によるCDIカルバメート中間体の形成、および該CDIカルバメート中間体とタンパク質上のアミノ基とのカップリングを伴うものであり得る。
【0028】
一実施形態において、製剤化の前に、各肺炎球菌莢膜多糖抗原を個々に肺炎連鎖球菌から精製し、活性化させて反応性アルデヒドを形成し、次いで、還元的アミノ化を用いて担体タンパク質CRM197に共有結合によりコンジュゲートさせる。
【0029】
担体タンパク質への莢膜多糖のコンジュゲーション後、多糖−タンパク質コンジュゲートを、さまざまな手法のうちの1つ以上によって精製する(多糖−タンパク質コンジュゲートの量に関して富化する)。このような手法の例は当業者に周知であり、濃縮/ダイアフィルトレーション操作、限外濾過、沈殿/溶出、カラムクロマトグラフィーおよびデプスフィルトレーションが挙げられる。例えば、米国特許第6,146,902号を参照のこと。
【0030】
医薬組成物/ワクチン組成物
さらに、本発明は、15種類の相違する多糖−タンパク質コンジュゲートを含む、本質的に該コンジュゲートからなる、あるいはまた該コンジュゲートからなる医薬組成物、免疫原性組成物およびワクチン組成物を含む組成物を提供し、ここで、該コンジュゲートの各々は、担体タンパク質にコンジュゲートさせた異なる莢膜多糖を含み、そしてここで、該莢膜多糖は、薬学的に許容され得る担体およびアジュバントとともに肺炎連鎖球菌の血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33Fから調製される。これらの肺炎球菌コンジュゲートは、別々のプロセスで調製され、単回投与製剤にバルクで製剤化される。
【0031】
本明細書において定義する場合、「アジュバント」は、本発明の免疫原性組成物の免疫原性を増強する機能を果たす物質である。免疫アジュバントは、単独で投与した場合は免疫原性が弱い(例えば、誘発される抗体力価もしくは細胞媒介性免疫応答がない、もしくは弱い)抗原に対する免疫応答を増強するもの、抗原に対する抗体力価を増大させるもの、および/または個体において免疫応答を得るのに有効な抗原の用量を低減させるものであり得る。したがって、アジュバントは、多くの場合、免疫応答を押し上げるために与えられ、当業者に周知である。該組成物の有効性を増強するための好適なアジュバントとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる。
【0032】
(1)アルミニウム塩(ミョウバン)、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど。
【0033】
(2)水中油型乳剤配合物(ムラミルペプチド(下記に定義)または細菌細胞壁成分などの他の特定の免疫賦活剤あり、またはなし)、例えば、(a)5%スクアレン、0.5%Tween 80、および0.5%Span 85を含み(種々の量のMTP−PEを含んでいてもよい)、マイクロフルイダイザー(例えば、Model 110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics,Newton,MA)を用いてサブミクロン粒子に配合されたMF59(国際公開第90/14837号)、(b)10%スクアレン、0.4%Tween 80、5%プルロニックブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含み、サブミクロン乳剤にマイクロフルイダイズされているか、またはボルテックスして大粒径の乳剤が生成されているかのいずれかであるSAF、(c)2%スクアレン、0.2%Tween 80、ならびに3−O−脱アセチル化モノホスホリルリピド(deaylated monophosphorylipid)A(MPL(TM))(米国特許第4,912,094号に記載)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(Detox(TM))からなる群の1種類以上の細菌細胞壁成分を含むRibi(TM)アジュバント系(RAS)(Corixa,Hamilton,MT);ならびに(d)Montanide ISAなど。
【0034】
(3)サポニンアジュバント、例えば、Quil AもしくはSTIMULON(TM)QS−21(Antigenics,Framingham,MA)(例えば、米国特許第5,057,540号参照)が使用され得るか、または該アジュバントから生成させた粒子、例えば、ISCOM(コレステロール、サポニン、リン脂質、および両親媒性タンパク質の組合せによって形成された免疫賦活性複合体)ならびにIscomatrix(登録商標)(ISCOMと本質的に同じ構造を有するが該タンパク質を含まない)。
【0035】
(4)細菌リポ多糖、合成リピドA類似体、例えばアミノアルキルグルコサミンホスフェート化合物(AGP)、またはその誘導体もしくは類似体、これらは、Corixaから入手可能であり、米国特許第6,113,918号に記載されている;かかるAGPの一例は、2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ}−b−D−グルコピラノシドであり、529としても知られており(以前はRC529として公知であった)、水性形態または安定な乳剤として配合されたものである。
【0036】
(5)合成ポリヌクレオチド、例えばCpGモチーフ(1つまたは複数)を含むオリゴヌクレオチド(米国特許第6,207,646号)。
【0037】
(6)サイトカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12、IL−15、IL−18など)、インターフェロン(例えば、γインターフェロン)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、共起刺激分子B7−1およびB7−2など。
【0038】
(7)補体、例えば、補体成分C3dの三量体
別の実施形態では、アジュバントは、上記のアジュバントの2種類、3種類またはそれ以上の混合物、例えば、SBAS2(3−脱アセチル化モノホスホリルリピドAおよびQS21も含有している水中油型乳剤)である。
【0039】
ムラミルペプチドとしては、限定されないが、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)などが挙げられる。
【0040】
一部の特定の実施形態では、アジュバントはアルミニウム塩である。アルミニウム塩アジュバントは、ミョウバン沈殿ワクチンまたはミョウバン吸着ワクチンであり得る。アルミニウム塩アジュバントは当該技術分野で周知であり、例えば、Harlow,E.およびD.Lane(1988;Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory)ならびにNicklas,W.(1992;Aluminum salts.Research in Immunology 143:489−493)に記載されている。アルミニウム塩としては、限定されないが、水和アルミナ、アルミナ水和物、アルミナ三水和物(ATH)、アルミニウム水和物、アルミニウム三水和物、アルハイドロゲル、Superfos、Amphogel、水酸化アルミニウム(III)、硫酸ヒドロキシリン酸アルミニウム(リン酸アルミニウムアジュバント(APA))、非晶質アルミナ、三水和アルミナ、またはトリヒドロキシアルミニウムが挙げられる。
【0041】
APAは、ヒドロキシリン酸アルミニウムの水性懸濁液である。APAは、塩化アルミニウムとリン酸ナトリウムを1:1の容量比でブレンドし、ヒドロキシリン酸アルミニウムを沈殿させることにより製造されたものである。ブレンドプロセス後、その物質をハイシェアミキサーを用いてサイズリダクションし、2〜8μmの範囲の目的の凝集体粒径を得る。次いで、生成物を生理食塩水に対してダイアフィルトレーションし、蒸気滅菌する。
【0042】
一部の特定の実施形態では、市販のAl(OH)(例えば、Denmark/Accurate Chemical and Scientific Co.,Westbury,NYのAlhydrogelまたはSuperfos)を使用し、タンパク質を、50〜200gのタンパク質/mg水酸化アルミニウムの比率で吸着させる。タンパク質の吸着は、別の実施形態において、タンパク質のpI(等電pH)および媒体のpHに依存性である。pIが低いタンパク質は、pIが高いタンパク質よりも強力に正荷電アルミニウムイオンに吸着される。アルミニウム塩は、2〜3週間の期間にわたってゆっくり放出されるAgの貯蔵部を構築し、マクロファージの非特異的活性化および補体活性化に関与し、および/または先天性免疫機構を刺激する(おそらく、尿酸の刺激によって)ことがあり得る。例えば、Lambrechtら,2009,Curr Opin Immunol 21:23を参照のこと。
【0043】
一価のバルク水性コンジュゲートは、典型的には一緒にブレンドし、6Bでは目標の16μg/mLまで希釈した以外は、すべての血清型を目標の8μg/mLまで希釈する。希釈したら、バッチを濾過滅菌し、等容量のリン酸アルミニウムアジュバントを目標最終アルミニウム濃度250μg/mLまで無菌的に添加する。アジュバントを加えた製剤バッチを、単回使用の0.5mL/用量バイアル内に充填する。
【0044】
一部の特定の実施形態では、アジュバントはCpG含有ヌクレオチド配列、例えば、CpG含有オリゴヌクレオチド、特に、CpG含有オリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)である。別の実施形態では、アジュバントはODN 1826であり、これは、Coley Pharmaceutical Groupから取得され得る。
【0045】
「CpG含有ヌクレオチド」、「CpG含有オリゴヌクレオチド」、「CpGオリゴヌクレオチド」および類似した用語は、非メチル化CpG部分を含む6〜50ヌクレオチド長のヌクレオチド分子をいう。例えば、Wangら,2003,Vaccine 21:4297を参照のこと。別の実施形態では、該用語の任意の他の当該技術分野で認知された定義が意図される。CpG含有オリゴヌクレオチドは、任意の合成ヌクレオシド間結合を用いた修飾オリゴヌクレオチド、修飾塩基および/または修飾糖鎖を含むものである。
【0046】
CpGオリゴヌクレオチドの使用方法は当該技術分野で周知であり、例えば、Surら,1999,J Immunol.162:6284−93;Verthelyi,2006,Methods Mol Med.127:139−58;およびYasudaら,2006,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst.23:89−110に記載されている。
【0047】
投与/投薬量
本発明の組成物および製剤は、ワクチンを全身経路または粘膜経路によって投与するという手段によって肺炎球菌感染に易感染性のヒトを保護または処置するために使用され得る。一実施形態において、本発明は、ヒトに免疫学的有効量の本発明の免疫原性組成物を投与することを含む、肺炎連鎖球菌莢膜多糖コンジュゲートに対する免疫応答の誘発方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、ヒトに免疫学的(immunogically)有効量の本発明の免疫原性組成物を投与する工程を含む、ヒトに肺炎球菌感染に対するワクチンを接種する方法を提供する。
【0048】
本発明の組成物の「有効量」は、後の抗原刺激の際に肺炎連鎖球菌の感染(infectivitiy)の尤度または重症度を有意に低減させる抗体を誘起するに必要とされる用量をいう。
【0049】
本発明の方法は、肺炎連鎖球菌によって引き起こされる主要な臨床症候群(侵襲性感染(髄膜炎、肺炎、および菌血症)と、非侵襲性感染(急性中耳炎、および副鼻腔炎)の両方を含む)の予防および/または低減のために使用され得る。
【0050】
本発明の組成物の投与は、筋肉内、腹腔内、皮内もしくは皮下経路による注射;または口道/消化管、呼吸道もしくは尿生殖路への粘膜投与のうちの1つまたはそれ以上を含むものであり得る。一実施形態では、鼻腔内投与が肺炎または中耳炎の処置に使用される(肺炎球菌の鼻咽頭通過がより有効に抑制され得、したがって、初期の段階で感染が減弱されるため)。
【0051】
各ワクチン用量中のコンジュゲートの量は、有意な有害効果なく免疫防御応答を誘発する量として選択される。かかる量は、肺炎球菌の血清型に応じて異なり得る。一般的に、各用量は、0.1〜100μg、特に0.1〜10μg、より特別には1〜5μgの各多糖を含む。例えば、各用量は、100、150,200、250、300、400、500、もしくは750ngまたは1、1.5、2、3、4、5、6、7、7.5、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、22、25、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100μgを含み得る。
【0052】
特定のワクチンのための諸成分の最適量は、被検体における適切な免疫応答の観察を伴う標準的な試験によって確認され得る。例えば、別の実施形態では、ヒトへのワクチン接種のための投薬量は、動物試験をヒトデータに外挿することによって決定される。別の実施形態では、該投薬量は経験的に決定される。
【0053】
一実施形態において、アルミニウム塩の用量は、10、15、20、25、30、50、70、100、125、150、200、300、500もしくは700μg、または1、1.2、1.5、2、3、5mgもしくはそれ以上である。また別の実施形態では、上記のミョウバン塩の用量は、組換えタンパク質1μgあたりのものである。
【0054】
本発明の特定の一実施形態では、PCV−15ワクチンは、CRM197に個々にコンジュゲートさせた血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33Fの肺炎球菌莢膜多糖の滅菌された液状製剤である。各々0.5mL用量が、6Bが4μgである以外は2μgの各糖質;約32μgのCRM197担体タンパク質(例えば、32μg±5μg、±3μg、±2μg、または±1μg);0.125mgの元素アルミニウム(0.5mgのリン酸アルミニウム)アジュバント;ならびに塩化ナトリウムおよびL−ヒスチジンバッファーを含むように製剤化される。塩化ナトリウム濃度は約150mM(例えば、150mM±25mM、±20mM、±15mM、±10mM、または±5mM)であり、L−ヒスチジンバッファーは約20mM(例えば、20mM±5mM、±2.5mM、±2mM、±1mM、または±0.5mM)である。
【0055】
本発明のいずれかの方法によれば、一実施形態において、被検体はヒトである。一部の特定の実施形態では、ヒト患者は乳児(1歳未満)、よちよち歩きの子供(およそ12〜24ヶ月)、または幼児(およそ2〜5歳)である。他の実施形態では、ヒト患者は高齢患者(>65歳)である。また、本発明の組成物は、年長児、青年および成人(例えば、年齢18〜45歳または18〜65歳)での使用にも適している。
【0056】
本発明の方法の一実施形態では、本発明の組成物は単回接種物として投与される。別の実施形態では、ワクチンは、2回、3回または4回またはそれ以上、充分に間隔をあけて投与される。例えば、該組成物は、1、2、3、4、5もしくは6ヶ月間隔で、またはその任意の組合せの間隔で投与され得る。免疫化スケジュールは、肺炎球菌ワクチン用に設計されたものに従ったスケジュールであり得る。例えば、肺炎連鎖球菌によって引き起こされる侵襲性疾患に対する乳児およびよちよち歩きの子供での常套的なスケジュールは、年齢が2、4、6、および12〜15ヶ月のときである。したがって、好ましい実施形態では、該組成物は、年齢が2、4、6、および12〜15ヶ月のときに一連の4回の用量で投与される。
【0057】
また、本発明の組成物は、肺炎連鎖球菌由来の1種類以上のタンパク質も含んでいてもよい。含めるのに適した肺炎連鎖球菌タンパク質の例としては、国際公開第02/083855号および同第02/053761号において特定されるものが挙げられる。
【0058】
製剤
本発明の組成物は、被検体に当業者に公知の1種類以上の方法、例えば、非経口、経粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、鼻腔内、皮下、腹腔内にて投与され得、それに応じて製剤化され得る。
【0059】
一実施形態において、本発明の組成物は、液状製剤の表皮注射、筋肉内注射、静脈内、動脈内、皮下注射、または呼吸粘膜内注射によって投与される。注射のための液状製剤としては液剤などが挙げられる。
【0060】
本発明の組成物は、単回投与バイアル、複数投与バイアルまたは充填済シリンジとして製剤化され得る。
【0061】
別の実施形態では、本発明の組成物は、経口投与され、したがって、経口投与に適した形態、すなわち、固形または液状の調製物として製剤化される。固形経口製剤としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、ペレット剤などが挙げられる。液状経口製剤としては、液剤、懸濁剤、分散剤、乳剤、油性剤などが挙げられる。
【0062】
液状製剤用の薬学的に許容され得る担体は、水性もしくは非水性の溶液、懸濁液、乳液または油類である。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および注射用有機エステル(オレイン酸エチルなど)である。水性担体としては、水、アルコール性/水性の溶液、乳液または懸濁液、例えば、生理食塩水および緩衝媒体が挙げられる。油類の例は、動物、植物または合成起源のもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、オリーブ油、ヒマワリ油、魚肝油、別の魚油、または乳汁もしくは卵に由来する脂質である。
【0063】
医薬組成物は、等張性、低張性、または高張性であってよい。しかしながら、多くの場合、注入または注射用の医薬組成物は、投与されるとき本質的に等張性であることが好ましい。したがって、保存の際、医薬組成物は、好ましくは等張性または高張性であり得る。医薬組成物が保存の際に高張性である場合、投与前に等張性溶液となるように希釈するのがよい。
【0064】
等張性薬剤は、イオン性等張性薬剤(塩など)であっても非イオン性等張性薬剤(糖類など)であってもよい。イオン性等張性薬剤の例としては、限定されないが、NaCl、CaCl、KClおよびMgClが挙げられる。非イオン性等張性薬剤の例としては、限定されないが、マンニトール、ソルビトールおよびグリセロールが挙げられる。
【0065】
また、少なくとも1種類の薬学的に許容され得る添加剤はバッファーであることが好ましい。ある目的の場合では、例えば、医薬組成物が注入または注射を意図したものである場合、たいていは該組成物にバッファーを含めることが望ましく、バッファーは、溶液を4〜10の範囲(5〜9など、例えば、6〜8)のpHに緩衝する能力を有するものである。
【0066】
バッファーは、例えば、TRIS、酢酸バッファー、グルタミンバッファー、乳酸バッファー、マレイン酸バッファー、酒石酸バッファー、リン酸バッファー、クエン酸バッファー、炭酸バッファー、グリシン酸バッファー、ヒスチジンバッファー、グリシンバッファー、コハク酸バッファーおよびトリエタノールアミンバッファーからなる群から選択され得る。
【0067】
さらに、バッファーは、例えば、特に、医薬製剤が非経口使用のためのものである場合、非経口使用のためUSP適合バッファーから選択されるものであり得る。例えば、バッファーは、一塩基酸(酢酸、安息香酸、グルコン酸、グリセリン酸および乳酸など);二塩基酸(アコニット酸、アジピン酸、アスコルビン酸、炭酸、グルタミン酸、リンゴ、コハク酸および酒石酸など)、多塩基酸(クエン酸およびリン酸など);ならびに塩基(アンモニア、ジエタノールアミン、グリシン、トリエタノールアミンおよびTRISなど)からなる群から選択されるものであり得る。
【0068】
非経口ビヒクル(皮下、静脈内、動脈内、または筋肉内注射用)としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液および揮発油が挙げられる。静脈内用ビヒクルとしては、体液補給液および栄養補給液、電解質補給液(例えば、リンゲルデキストロース主体のもの)などが挙げられる。例は、界面活性剤および他の薬学的に許容され得るアジュバントの添加を伴うまたは伴わない、滅菌液状物(水および油類など)である。一般に、水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連糖溶液、グリコール(プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど)、ならびにポリソルベート−80が好ましい液状担体である(特に、注射用液剤に)。油類の例は、動物、植物または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、オリーブ油、ヒマワリ油、魚肝油、別の魚油、または乳汁もしくは卵に由来する脂質である。
【0069】
また、本発明の製剤に界面活性剤を含めてもよい。好ましい界面活性剤としては、限定されないが、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般的にはTweenと称される)、特に、ポリソルベート20およびポリソルベート80;エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー(商標名DOWFAX(TM)で販売)、例えば、直鎖EO/POブロックコポリマー;オクトキシノール(これは、反復エトキシ(オキシ−l,2−エタンジイル)基の数が種々であり得、オクトキシノール−9(Triton X−100、またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に重要である);(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);リン脂質、例えばホスファチジルコリン(レシチン);ノニルフェノールエトキシレート、例えばTergitol(TM)NPシリーズ;ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコールから誘導されたポリオキシエチレン脂肪族エーテル(Brij界面活性剤として知られている)、例えばトリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30);ならびにソルビタンエステル(一般的にはSPANとして公知である)、例えばソルビタントリオレエート(Span 85)およびソルビタンモノラウレートが挙げられる。本乳剤に含めるのに好ましい界面活性剤はTween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)である。
【0070】
界面活性剤の混合物(例えば、Tween 80/Span 85混合物)を使用することもできる。また、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80)など)とオクトキシノール(t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)など)の組合せも好適である。別の有用な組合せは、ラウレス9+ポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールを含むものである。
【0071】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は:ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween 80など)が0.01〜1%、特に約0.1%;オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton X−100、またはTritonシリーズの他の洗浄剤)が0.001〜0.1%、特に0.005〜0.02%;ポリオキシエチレンエーテル(ラウレス9など)が0.1〜20%、好ましくは0.1〜10%、特に0.1〜1%または約0.5%である。
【0072】
別の実施形態では、医薬組成物は制御放出系にて送達される。例えば、該薬剤は、静脈内注入、経皮パッチ、リポソーム、または他の投与様式を用いて投与され得る。別の実施形態では、ポリマー物質が、例えばマイクロスフィアまたはインプラントにおいて使用される。
【0073】
また、本発明には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはポリプロリンのような水溶性ポリマーの共有結合によって修飾された化合物も包含される。かかる修飾は、水溶液中での化合物の溶解性を増大させるもの、凝集を解消するもの、化合物の物理的および化学的安定性を増強するもの、ならびに化合物の反応原性を大きく低減させるものであり得る。別の実施形態では、かかるポリマー−化合物付加体(abduct)の、非修飾化合物よりも少ない頻度または少ない用量での投与によって所望のインビボ生物学的活性が得られる。
【0074】
好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、塩化ナトリウムを含むL−ヒスチジンバッファーを用いて製剤される。
【0075】
添付の説明文および図面に関して本発明の種々の実施形態を記載したが、本発明は、詳述した該実施形態に限定されないこと、および当業者には、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲または精神から逸脱することなく種々の変更および修正が行われ得ることを理解されたい。
【0076】
以下の実施例により本発明を例示するが、本発明を限定するものではない。
【0077】
実施例
実施例1:肺炎連鎖球菌莢膜多糖の調製
肺炎球菌の培養方法は当該技術分野で周知である。例えば、Chase,1967,Methods of Immunology and Immunochemistry 1:52を参照のこと。また、肺炎球菌莢膜多糖の調製方法も当該技術分野で周知である。例えば、欧州特許第0497524号を参照のこと。肺炎球菌サブタイプの分離菌はATCCから入手可能である。
【0078】
該細菌は、莢膜を有し、非運動性であり、グラム陽性であり、ランセット形状の双球菌(これは、血液寒天上でα−溶血性である)として特定される。サブタイプは、特異的抗血清を用いたQuelling反応に基づいて識別される。例えば、米国特許第5,847,112号を参照のこと。
【0079】
細胞バンク
PCV−15に存在させる各肺炎連鎖球菌血清型に相当する細胞バンクを、Merck Culture Collection(Rahway,NJ)から凍結バイアルにて入手した。
【0080】
接種
解凍した種培養物を、予備滅菌した適切な増殖培地を入れた種醗酵槽に移した。
【0081】
種醗酵
培養物は、温度とpHを制御した種醗酵槽内で培養した。種醗酵槽内の全容量を、予備滅菌した増殖培地を入れた醗酵生産槽に移した。
【0082】
醗酵生産
醗酵生産は、当該プロセスの最終細胞増殖段階とした。温度、pHおよび撹拌速度を制御した。
【0083】
不活化
醗酵プロセスは、不活化剤の添加によって終了させた。不活化後、バッチを不活化槽に移し、このとき、該槽は、制御された温度および撹拌下に保持した。
【0084】
精製
遠心分離と濾過の組合せを用いて細胞残屑を除去した。バッチを限外濾過し、ダイアフィルトレーションした。次いで、バッチを溶媒での分別に供し、これによって不純物を除去し、多糖を回収した。
【0085】
実施例2:肺炎球菌多糖−CRM197コンジュゲートの調製
活性化プロセス
異なる血清型の糖質を、個々に精製CRM197担体タンパク質に、一般的なプロセスフローを用いてコンジュゲートさせる。このプロセスでは、糖質を溶解させ、目標分子量にサイジングし、化学的に活性化させ、限外濾過によってバッファー交換する。次いで、精製CRM197に、この活性化糖質をコンジュゲートさせ、得られたコンジュゲートを限外濾過によって精製した後、膜濾過によって最終0.2μmにする。各工程におけるいくつかのプロセスパラメータ(pH、温度、濃度、および時間など)は、この実施例に記載のように、血清型特異的である。
【0086】
工程1:溶解
精製多糖を水に2〜3mg/mLの濃度まで溶解させた。溶解多糖を、圧力を0〜1000バールに予め設定した機械式ホモジナイザーに通した。サイズリダクション後、この糖質を濃縮し、滅菌水を用いて10kDa MWCO限外濾過器でダイアフィルトレーションした。透過液を廃棄し、保持液を、酢酸ナトリウムバッファー(終濃度50mM)でpH4.1に調整した。血清型4および5では、pH5.0の100mMの酢酸ナトリウムを使用した。血清型4では、溶液を50±2℃でインキュベートした。20〜24℃まで冷却することにより加水分解を停止させた。
【0087】
工程2:過ヨウ素酸反応
肺炎球菌の糖質の活性化に必要とされる過ヨウ素酸ナトリウムのモル当量を、総糖質含量を用いて決定した。充分な混合により、5、7Fおよび19Fでは温度を2〜6℃とした以外はすべての血清型で20〜24℃にて、酸化を3〜20時間進行させた。
【0088】
工程3:限外濾過
酸化させた糖質を濃縮し、pH6.4の10mMのリン酸カリウム(血清型5ではpH4.3の10mMの酢酸ナトリウム)を用いて10kDa MWCO限外濾過器でダイアフィルトレーションした。透過液を廃棄し、保持液を3Mリン酸カリウムバッファーの添加によってpH6.3〜8.4に調整した。
【0089】
コンジュゲーションプロセス
工程1:コンジュゲーション反応
濃縮した糖質を、CRM197担体タンパク質と0.2〜2対1の電荷比で混合した。ブレンドした糖質−CRM197混合物を0.2μmフィルターに通して濾過した。
【0090】
コンジュゲーション反応は、糖質1モルあたりナトリウムシアノボロヒドリドが1.8〜2.0モルとなるようにナトリウムシアノボロヒドリド溶液を添加することにより開始させた。反応混合物を20〜24℃で48〜120時間インキュベートした(血清型3、5、6A、7F、19Aおよびl9Fでは8〜12℃)。
【0091】
工程2:ボロヒドリド反応
コンジュゲーションインキュベーションの終了時、反応混合物を4〜8℃に、そして1.2M重炭酸ナトリウムバッファーまたは3Mリン酸カリウムバッファー(血清型5以外)のいずれかでpHを8〜10に調整した。糖質1モルあたり水素化ホウ素ナトリウム0.6〜1.0モル(血清型5では、0モルのボロヒドリドを添加)となるように水素化ホウ素ナトリウム溶液を添加することにより、コンジュゲーション反応を停止させた。反応混合物を45〜60分間インキュベートした。
【0092】
工程3:限外濾過工程
反応混合物を、最小限の20容量の100mMのリン酸カリウム、pH8.4バッファーを用いて、100kDa MWCO限外濾過器でダイアフィルトレーションした。100kDa限外濾過器での保持液を、最小限の20ダイア容量(diavolume)の150mMの塩化ナトリウムを用いて300kDa MWCO限外濾過器で、20〜24℃にてダイアフィルトレーションした。透過液は廃棄した。
【0093】
工程4:滅菌濾過
300kDa MWCOダイアフィルトレーションでの保持液を0.2μmフィルターに通して濾過し、放出試験、プロセス内対照、および製剤(血清型19F以外)に適切な容量でホウケイ酸ガラス製容器内に充填した。血清型19Fコンジュゲートは、0.2μmフィルターに通して保持槽に入れ、20〜24℃でインキュベートした。インキュベーション後、コンジュゲートを最小限の20ダイア容量の150mMの塩化ナトリウムを用いて300kDa MWCO限外濾過器で、20〜24℃にてダイアフィルトレーションした。透過液を廃棄し、保持液を0.2μmフィルターに通して濾過し、放出試験、プロセス内対照、および製剤に適切な容量でホウケイ酸ガラス製容器内に充填した。最終バルク濃縮物を2〜8℃で保存した。
【0094】
実施例3:15価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンの製剤化
必要とされるバルク濃縮物の容量を、バッチ容量およびバルク糖質濃度に基づいて計算した。合わせた15種類のコンジュゲートを、塩化ナトリウムおよびL−ヒスチジン(pH5.8)含有バッファーの添加によって、目標吸着濃度までさらに希釈した。充分に混合した後、このブレンド物を0.2μm膜に通して滅菌濾過した。この滅菌製剤バルクを、バルクのリン酸アルミニウムとのブレンド中およびブレンド後に、静かに混合した。この製剤化ワクチンを2〜8℃で保存した。
【0095】
別のプロセスにおいて、合わせた15種類のコンジュゲートを、塩化ナトリウムおよびL−ヒスチジン(pH5.8)含有バッファーの添加によって目標濃度までさらに希釈した。ポリソルベート80を終濃度0.005%まで添加し、希釈緩衝コンジュゲート混合物にした後、滅菌濾過した。滅菌濾過後、製剤化ワクチンを2〜8℃で保存した。
【0096】
表1は、PCV−15のアジュバント添加形態およびアジュバント無添加形態の最終組成を示す。
【表1】

【0097】
実施例4:免疫原性試験
多種類の肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤の免疫原性を乳児アカゲザル(IRM)およびニュージーランド白ウサギ(NZWR)動物モデルにおいて評価するための実験を設計した。乳児アカゲザルでの実験は、米国における肺炎球菌コンジュゲートワクチンに対する推奨スケジュールに充分適合するように設計し、年齢が取得時に2ヶ月、4ヶ月および6ヶ月の一連の乳児サルを使用した。したがって、乳児アカゲザルには、年齢が2〜3ヶ月のときに免疫処置を開始し、2ヶ月間隔でワクチンを投与した。4回目の投与(これも、米国の小児に対する推奨スケジュールの一部である)は行わなかった。成体ウサギ(NZWR)は、多種類のワクチン製剤を評価するために使用した。NZWR試験は、2つのワクチン用量を用いて行い、加速(2週間隔)免疫化レジメにて行われた。免疫応答の前臨床評価のため、ヒト用量の全量をウサギに送達し、一方、乳児サルにはヒト用量の半分を与えた。乳児サルに対してヒト用量の半分を選択した理論的根拠は、乳児アカゲザルの単一の筋肉内部位に投与してもよい容量の制限によるものであった。
【0098】
血清型特異的IgG応答の評価
電気化学的刺激を受けると発光するSULFO−TAG(TM)標識を利用したメソスケールディスカバリー(MSD)技術を用いるヒトアッセイに基づいた、ウサギおよびアカゲザル血清での使用のための多重電気化学的発光(ECL)アッセイを開発した。Marcheseら,2009,Clin Vaccine Immunol 16:387−96参照。専用のECLプレートリーダーを使用し、プレート付属電極に電流を流して一連の電気誘導性反応をもたらし、発光シグナルを生じさせる。開発および確認に使用した多スポット構成は、96ウェルプレート形式で10スポット/ウェルのものとし、各ウェルに5ngの肺炎球菌(Pn)多糖(Ps)/スポットをコートした。2プレート形式は、交差反応性の多糖(すなわち、6Aと6B、および19Aと19F)が別々のプレート内で試験されることを確実にするために使用した。プレートフォーマット1には、血清型3、4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fを含め、一方、プレートフォーマット2には、血清型1、5、6A、7F、19A、22Fおよび33Fを含めた。また、各ウェルに、2つのウシ血清アルブミン(BSA)スポットも含め、これは、アッセイのバックグラウンド反応性(すなわち、PnPsの非存在下での血清および標識二次抗体に関連する応答)を評価するために使用した。アッセイ標準(89SF−2)、対照、および試験血清を、0.05%のTween 20、1%のBSA、5μg/mlのC−多糖(CPs)、10μg/mlの血清型25多糖(PnPs25)および10μg/mlの血清型72多糖(PnPs72)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で適切なレベルに希釈し、4℃(2〜8℃)で一晩または周囲温度で45分間インキュベートした。乳児サル試料を試験する場合はヒト抗体試薬および標準を使用し、一方、ウサギ血清試料を試験する場合では、SULFO−TAG(TM)標識抗ウサギIgGを二次抗体として使用した。各抗原コートプレートを、ブロック剤を伴って振盪機プラットフォームで周囲温度にて1時間インキュベートした。プレートを0.05%PBS−Tで洗浄し、予備吸着させて希釈した25μL/ウェルの試験血清を添加し、振盪機プラットフォームで周囲温度にて45分間インキュベートした。プレートを0.05%PBS−Tで洗浄し、次いで、MSD SULFO−TAG(TM)標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(アカゲザル血清の場合)および標識ヤギ抗ウサギIgG二次抗体(ウサギ血清の場合)を各ウェルに添加し、振盪機プラットフォームで周囲温度にて1時間インキュベートした。プレートを0.05%PBS−Tで洗浄し、水で1:4に希釈した150μLのMSD Read Buffer−T 4×(界面活性剤を含む)を各ウェルに添加した。MSD Sector Imager Model No.2400または6000を用いてプレートの読み値を得た。ウサギ試験については、結果を力価の幾何平均(GMT)またはGMTの比で示す。乳児アカゲザル試験については、結果を、ヒト参照標準(89 SF−2)に帰属させた血清型特異的IgG濃度を用いた標準曲線からの濃度の読み値の幾何平均で表示した。
【0099】
機能性(オプソニン作用性)応答の評価
乳児アカゲザル試験2の試料を4重MOPAアッセイ(MOPA−4)において試験した。Burtonら,2006,Clin Vaccine Immunol 13:1004−9参照。このアッセイでは、アッセイの第一部(分化HL−60細胞内におけるオプソニン作用および取込み)が一度に4種類までの血清型を用いて行われ得るように、4種類の抗生物質のうち1種類に耐性であるように選択した細菌株を使用する。細菌死滅の読出しは、各特異的血清型の死滅力価を調べるため、対応する株が耐性である4種類の各抗生物質の存在下でパラレルで行う。結果を、50%の死滅が観察された希釈度の逆数で表示する(内挿後)。
【0100】
前臨床試験のための統計学的方法論
どちらの動物モデルも、標本サイズに関して制限を有する。一般に、試験群あたり8匹の乳児サルまたは8匹のウサギを使用した。8匹の動物/群では、処置群間の力価の幾何平均の臨界差の倍数が2.5倍を意義のある応答閾値とみなした。2.5倍の差は、各血清型について、処置群における自然対数変換力価の標準偏差はln(2)という仮定に基づいて決定した。
【数1】

【0101】
はi番目の処置群におけるIn変換力価の平均、nはi番目の処置群の動物の数、σはi番目の処置群の動物間のIn変換力価の既知分散を表すとし、すべてのiについて、n=8およびσ=(ln(2))と設定すると、
【数2】

【0102】
を解くことにより2.5の値が得られ、このとき、
【数3】

【0103】
であり、Z0.995は、標準的な累積正規分布の逆関数を表し、確率は0.995(すなわち、Z0.995=2.576)である。計算値2.44は、丸めを行って2.5にしていることに注意のこと(2.5では、簡便な0.4という逆数が得られるためでもある)。
【0104】
PCV−15に対する乳児アカゲザル(IRM)の血清型特異的IgG応答
免疫原性のパイロット試験(IRM−1)を行い、乳児アカゲザル(IRM)が、Pn多糖CRM197コンジュゲートワクチンを評価するための良好なモデルとなり得るかどうかを調べた。実験の主な目的は、IRM(ヒト乳児と類似)が、遊離Pn多糖には非応答性であるが、コンジュゲートワクチンには良好に応答し得るかどうかを調べることであった。5匹のIRMの群に、Pn多糖であるPrevnar(登録商標)またはPCV−15のいずれかの注射を、年齢が2〜3ヶ月のときに開始した。3つの用量のワクチンを2ヶ月間隔で筋肉内(IM)投与し、血清型特異的IgG応答を、初回投与前ならびに2回目の投与の1ヶ月後および3回目の投与の1ヶ月後にマルチアレイ電気化学発光(ECL)アッセイを用いて測定した(データ表示せず)。
【0105】
その結果により、IRMは、遊離Pn多糖に対して応答するとしても不充分であるが、コンジュゲートワクチンには非常に良好に応答することが示された。結果は、乳児アカゲザルにおけるPn多糖に対するIgG応答の誘発が担体タンパク質に対する多糖のコンジュゲーションに依存性であり、したがって、古典的T細胞依存性応答であることを示していた。したがって、IRMモデルは、PCV−15製剤の評価に適していると判定した。
【0106】
遊離(非コンジュゲート)多糖および非コンジュゲートCRM197を最小限にするバルクコンジュゲーションプロセスを使用したPCV−15製剤を評価するため、第2の試験(IRM−2)を行った。図1は、Prevnar(登録商標)(4、6B、9V、14、18C、19F、23F)に含まれた7種類の血清型についての、2回目の投与後(PD−2)および3回目の投与後(PD−3)のPrevnar(登録商標)(対比)に対するPCV−15のIgG応答を示す。PCV−15に対するPD−2応答は、Prevnar(登録商標)の対応する応答と同等であるか、または若干低かったが、PCV−15に対するPD−3応答は、ほぼすべての血清型で、Prevnar(登録商標)によって誘起されるものよりもいくぶん高かった。
【0107】
PCV−15中の非Prevnar血清型に対するIRM応答を図2に示す。PCV−15中の非Prevnar血清型に対するPD−2応答はすべて、ベースライン(ワクチン接種前)IgG濃度よりも少なくとも10倍高く、PD−3では力価が上昇し続けた。
【0108】
結果は、PCV−15およびPrevnar(登録商標)に対する抗体応答が、
7種類の共通の血清型では同等であったこと、ならびに追加した8種類の血清型では、PCV−15に対するワクチン接種後の応答がベースラインよりも>10倍高かったことを示す。
【0109】
PCV−15に対するIRMの機能性(オプソニン作用性)免疫応答
乳児サルにおいてPCV−15によって機能性抗体応答が誘発されるかどうかを調べるため、オプソニン作用性死滅(OPA)アッセイを、IRM−2での血清において行った。ワクチン接種前、PD−2、およびPD−3でのPCV−15およびPrevnar(登録商標)に対する応答を表2に示す。示した結果は、二連でアッセイした各時間点における7〜8匹のサル由来の血清試料でのGMTである。また、PD−3の時間点での応答動物(すなわち、OPA力価が≧8のもの)の割合も示す。PCV−15により、1型および33F型以外のすべての血清型で高いPD−2 GMTが誘発された。3回のワクチン投与後、PCV−15により、各血清型に対して高いOPA GMT、およびワクチンに含まれた全15種類の血清型で100%のOPA応答率が誘導された。また、注目すべきことに、PCV−15により、ワクチン中に入れていない血清型6Cに対して良好な交差反応性のOPA応答も誘発された。Prevnar(登録商標)では、ワクチンに含まれたすべての血清型で高いOPA力価および100%応答率が誘導されたが、サル画分中の血清型6Aおよび6Cに対して誘発された交差反応性の応答は弱いものにすぎなかった。
【表2】

【0110】
ニュージーランド白ウサギでのPCV−15製剤の評価
PCV−15製剤を、成体ニュージーランド白ウサギ(NZWR)での4つの試験において、圧縮免疫処置レジメを用いて評価し、ここで、このレジメでは、ウサギに、ヒト用量の全量のワクチンを0日目と14日目に与え、解析のために血清を0、14および28日目に収集した。試験はすべて、Prevnar(登録商標)を比較の基準とし、表3(NZWR実験1〜4)にまとめる。
【0111】
表3には、両ワクチンに共通する血清型について、Merck PCV−15に対するIgG応答の幾何平均をPrevnar(登録商標)に対する比で示した、ニュージーランド白ウサギの2回目の投与後の応答の結果を示す。
【表3】

【0112】
血清型特異的IgG応答は、一般的に、Prevnar(登録商標)の対応する応答の2.5倍以内であった。例外は血清型(23F)であり、これは、4つの実験のうち2つで、Prevnar(登録商標)に対するものよりも>2.5倍低かった。0日目から28日目まで(2回目の投与後,PD−2)の非Prevnar(登録商標)血清型に対する抗体レベルの上昇倍数を表4にまとめる。
【表4】

【0113】
NZWRにおける免疫原性に対する多糖コンジュゲートワクチン用量の効果
また、増大用量(倍用量,2×)の多糖コンジュゲートの免疫原性も、PCV−15に含まれるすべての血清型について、計画したヒト用量(1×)のワクチンと比較して評価した。2×多糖コンジュゲート製剤では、ほとんどのコンジュゲートがアルミニウムアジュバントに結合され得ることを確実にするため、APA濃度を1.5×に増大した。表5に示されるように、ワクチン中の多糖−コンジュゲートの量の増加に有意な有益性はないようであった。すべての血清型間での差は2倍以内であり、比率の倍数(1×PCV−15/2×PCV−15+1.5×APA)の幾何平均は1.1であった。
【表5】

【0114】
NZWRにおけるPCV−15の免疫原性に対するアルミニウムアジュバントの効果
抗体応答に対するアルミニウムアジュバント(APA)の影響を一例のウサギ試験において評価した。計画したヒト用量のAPA(PCV−15 1×APA)を配合した、2倍の計画したヒト用量のAPA(PCV−15 2×APA)を配合し、そしてアルミニウムアジュバントは全くなしの(PCV−15 0×APA)PCV−15を試験した。また、Prevnar(登録商標)群も試験に含めた。
【0115】
PD−2の結果により、APAの濃度の倍加は、PCV−15に対する血清型特異的IgG応答に対してほとんど影響がないことが示された。力価の差の倍数(1×APA/2×APA)は0.6(血清型6B)〜2.3(血清型22F)の範囲であり、15種類の血清型間の比率の倍数の幾何平均は1.1であった。アルミニウムアジュバントがない場合では、抗体力価は、多くの血清型で、1×APAを含むPCV−15と比べて低いようであった。力価の差の倍数(1×/0×)は0.5(血清型5)〜2.9(血清型23F)の範囲であり、15種類の血清型間の比率の倍数の幾何平均は1.4であった。全体的に、アルミニウムアジュバントのレベルを倍加することは純然たる利点にはならないようであり、この動物モデルにおいてアジュバントを除外すること(表6)は不都合なようである。
【0116】
PD−2の結果により、リン酸アルミニウムアジュバント(APA)を含まない群の多くの血清型で、APA含有PCV−15と比べて抗体力価の低減がみとめられ(図3)、これは、ウサギにおける最適なPCV−15の免疫原性にはアルミニウムアジュバントを含めることが要件であることを示すことが示された。また、倍加量のAPAをワクチンに含めた場合、有益性は見られなかった(データ表示せず)。
【表6】

【0117】

【0118】
考察および結論
前臨床データは、PCV−15製剤(APAを配合)が2つの種(乳児アカゲザルおよびウサギ)において高度に免疫原性であることを示す。PCV−15に対する血清型特異的応答は、両ワクチンに共通する7種類の血清型で、Prevnar(登録商標)によって誘起されるものと同等であった。PCV−15の新たな8種類の血清型では、乳児アカゲザルとウサギの両方において強固な応答が誘起され、両方の種において2回のワクチン投与後、すべての血清型でIgG応答≧10倍上昇した。限界用量範囲での実験で、多糖コンジュゲートの量の2倍増により抗体応答の増大はもたらされないことが示された。同様に、アルミニウムアジュバント濃度の2倍増でも、PCV−15の免疫原性プロフィールは有意に改善されないようであった。しかしながら、アジュバントを除外すると一部の血清型に対して応答の低下がもたらされ、これは、ヒトにおいてアジュバントが必要である可能性を示唆する。ワクチン中の全15種類の血清型ならびにPCV−15の成分でない血清型6Cに対してPCV−15による機能性(OPA)抗体応答が誘起された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)担体タンパク質にコンジュゲートさせた肺炎連鎖球菌の血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23Fおよび33F由来の莢膜多糖からなる多価の多糖−タンパク質コンジュゲート混合物;ならびに
(2)薬学的に許容され得る担体、
を含む、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記担体タンパク質がCRM197である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
さらにアジュバントを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記アジュバントがアルミニウム系アジュバントである、請求項3に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記アジュバントが、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択される、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記アジュバントがリン酸アルミニウムである、請求項5に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
ヒトに免疫学的有効量の請求項1に記載の免疫原性組成物を投与することを含む、肺炎連鎖球菌莢膜多糖に対する免疫応答の誘発方法。
【請求項8】
投与される免疫原性組成物が、6Bが4μgである以外は2μgの各糖質;約32μgのCRM197担体タンパク質;0.125mgの元素アルミニウム(0.5mgのリン酸アルミニウム)アジュバント;150mMの塩化ナトリウムおよび20mMのL−ヒスチジンバッファーを含むように製剤化された0.5mL単回用量である、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−518891(P2013−518891A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552069(P2012−552069)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2011/023526
【国際公開番号】WO2011/100151
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】