説明

17−AAGを含む医薬溶液製剤

(i)約40容量%〜約60容量%の量の、エタノールである第一成分、(ii)約15容量%〜約50容量%の量の、ポリエトキシル化ヒマシ油である第二成分、及び(iii)約0容量%〜約35容量%の量の、プロピレングリコール、PEG300、PEG400、グリセロール、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる第三成分を含むビヒクルに溶解された15mg/mLまでの量の17-AAGを含む医薬溶液製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(“17-AAG”)を含む医薬溶液製剤並びにそれらの調製方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルダナマイシンは天然産物のアンサマイシンファミリーに属し、その員はマクロラクタムを形成するために二つのメタ位で連結されたベンゼノイド核(典型的にはベンゾキノン核又はヒドロキノン核)を特徴とする。ゲルダナマイシンの他に、アンサマイシンはマクベシン、ヘルビマイシン、TAN-420、及びレブラスタチンを含む。
ゲルダナマイシン及びその誘導体はアンサマイシンの中で最も広範に研究されているものである。ゲルダナマイシンは初期に抗生物質活性についてのスクリーニングの結果として同定されたが、それについての現在の関心は主として腫瘍細胞に対するその細胞傷害、ひいては、抗癌剤としてのその潜在性に基づいている。それは熱ショックタンパク質-90(“Hsp90”)(これはシグナル伝達、細胞サイクル制御及び転写調節に関係する主要タンパク質を含む、広範囲のタンパク質(“クライアントタンパク質”)の折り畳み、活性化及び集合に関係する)のインヒビターである。Hsp90へのゲルダナマイシンの結合はHsp90-クライアントタンパク質相互作用を分断し、クライアントタンパク質を正確に折り畳むことから防止し、それらをプロテアソーム媒介分解に受け易くする。Hsp90クライアントタンパク質の中に、癌に関係する多くの突然変異又は過剰発現されたタンパク質:p53、Bcr-Ablキナーゼ、Raf-1キナーゼ、Aktキナーゼ、Npm-Alkキナーゼ、p185ErB2膜貫通キナーゼ、Cdk4、Cdk6、ウィール(細胞サイクル依存性キナーゼ)、HER2/Neu(ErbB2)、低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)がある。しかしながら、ゲルダナマイシンの肝毒性及び不十分な生物学的利用能が臨床候補としてのその中断をもたらしていた。
それにもかかわらず、関心がゲルダナマイシンのような生物活性を有するが、性質の一層医薬上許されるスペクトルを有するゲルダナマイシン誘導体又は類似体の開発に存続する。ゲルダナマイシンの17位は、化学的に言えば、ゲルダナマイシンの合成に魅力的な焦点であった。何とならば、そこのメトキシ基が求核試薬により容易に置換されて、17-置換-17-デメトキシゲルダナマイシンへの都合の良いエントリーを得るからである。更に、構造-活性関係(SAR)研究は化学的かつ立体的に多様な17-置換基が坑腫瘍活性を損なわないで導入し得ることを示していた。例えば、Sasakiらの米国特許第4,261,989号(1981年)、Schnurらの米国特許第5,932,566号(1999年)、Schnurら, J. Med. Chem., 38, 3806-3812 (1995)、Schnurら, J. Med. Chem., 38, 3813-3820 (1995)、及びSantiらのUS2003/0114450A1(2003)(これらの開示が参考として本明細書に含まれる)を参照のこと。SAR推論は17-置換基が結合ポケットから溶媒に突き出ていることを示す、Hsp90とゲルダナマイシン誘導体(17-DMAG、下記を参照のこと)の間の複合体のX線結晶共構造により支持される(Jezら, Chemistry & Biology, 10, 361-368 (2003))。こうして、17位は性質を変調する置換基、例えば、可溶化基の導入に魅力的なものである。最も良く知られている17-置換ゲルダナマイシン誘導体は先に引用されたSasakiらの文献に最初に開示され、現在臨床試験を受けている、17-AAGである。別の注目に値する17-置換ゲルダナマイシン誘導体はまた臨床試験を受けている、17-(2-ジメチルアミノエチル)アミノ-17-デメトキシ-ゲルダナマイシン(“17-DMAG”、Snaderらの2004/0053909A1(2004))である。





【0003】
【化1】

【0004】
特に非経口投与のための、ゲルダナマイシン化合物、例えば、ゲルダナマイシンそれ自体及び17-AAGを含む医薬製剤の調製における制限は、それらの非常に不十分な水溶性、17-AAGについて中性pHでわずかに約0.1mg/mLである(アルキルアミノ基を有する、17-DMAGは一層可溶性である)。この問題に取り組むために、Tabibiらの米国特許第6,682,758B1号(2004年)は(a)薬物、(b)薬物用の水混和性有機溶媒、(c)表面活性剤、及び(d)水を含む17-AAGの如き水不溶性薬物のための製剤を開示していた。その水混和性溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコールであってもよい。その表面活性剤はリン脂質(特に卵リン脂質)であることが好ましい。関係する別の開示はUlmらのWO 03/086381 (2003)であり、これは(a)エタノールに溶解されたアンサマイシンを用意し、(b)工程(a)の生成物を中間鎖トリグリセリドと混合して最初の混合物を生成し、(c)エタノールを最初の混合物から実質的に除去し、(d)工程(c)の生成物を乳化剤及び安定剤と合わせて第二の混合物を生成し、そして(e)第二の混合物を乳化することによるアンサマイシンのための医薬製剤の調製方法を開示している。乳化された第二の混合物は必要により凍結乾燥され、次いで再水和されてもよい。特別な組み合わせにおいて、その中間鎖トリグリセリドはカプリル酸及び/又はカプロン酸を含み、乳化剤はホスホチジルコリンを含み、安定剤は蔗糖を含む。更に、UlmらのWO 2004/082676 A1 (2004)は17-AAGの如きHsp90インヒビター、乳化剤、並びに中間鎖及び長鎖の両方のトリグリセリドを含む油を含む医薬組成物を開示している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一局面において、本発明は静脈内投与に適した、17-AAGのための改良された溶液製剤を提供する。このような製剤は(i)約40容量%〜約60容量%の量の、エタノールである第一成分、(ii)約15容量%〜約50容量%の量の、ポリエトキシル化ヒマシ油である第二成分、及び(iii)約0容量%〜約35容量%の量の、プロピレングリコール、PEG300、PEG400、グリセロール、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる第三成分を含むビヒクルに溶解された15mg/mLまでの濃度の17-AAGを含む。上記%は第一成分、第二成分、及び第三成分の合わされた容積を基準とする容積/容積%である。第三成分についての約0容量%の下限はそれが任意の成分であり、即ち、それが不在であってもよいことを意味する。
別の局面において、本発明は
(a) (i)約40容量%〜約60容量%の量の、エタノールである第一成分、(ii)約15容量%〜約50容量%の量の、ポリエトキシル化ヒマシ油である第二成分、及び(iii)約0容量%〜約35容量%の量の、プロピレングリコール、PEG300、PEG400、グリセロール、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる第三成分を含むビヒクルに溶解された15mg/mLまでの濃度の17-AAGを含む医薬溶液製剤を用意する工程、
(b) 工程(a)の医薬溶液製剤を水に希釈して3mg/mLまでの17-AAGを含む希釈された製剤を調製する工程、及び
(c) 希釈された製剤を患者に静脈内投与する工程
を含むことを特徴とする、17-AAGを必要とする患者に17-AAGを投与するための方法を提供する。
【0006】
更に別の局面において、
(a) 或る量の17-AAGを用意する工程、
(b) 工程(a)の17-AAGを(i)約40容量%〜約60容量%の量の、エタノールである第一成分、(ii)約15容量%〜約50容量%の量の、ポリエトキシル化ヒマシ油である第二成分、及び(iii)約0容量%〜約35容量%の量の、プロピレングリコール、PEG300、PEG400、グリセロール、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる第三成分を含む或る量のビヒクルと合わせる工程、
(c) 17-AAGが実質的に溶解されるまで工程(c)からの組み合わせを撹拌する工程、及び
(d) 必要により工程(c)からの撹拌組み合わせを濾過して17-AAGを含む医薬溶液製剤を生成する工程
を含み、
工程(a)の17-AAGの量及び工程(b)のビヒクルの量は医薬溶液製剤中の17-AAGの濃度が15mg/mLまでであるような量であることを特徴とする、17-AAGを含む医薬溶液製剤の調製方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の医薬溶液製剤は安定であり、透明な紫色の溶液を生成し、注射用の水(“WFI”)に都合良く希釈されて静脈内注射に適した、3mg/mLまで(好ましくは0.2〜3mg/mL)の17-AAGを含む透明な希釈された製剤を生成し得る。希釈された製剤は時間の期間、少なくとも10時間、通常約12〜24時間にわたって安定である。希釈された製剤の延長された貯蔵は、安定性及び無菌の問題のために推奨されない。未希釈の製剤の投与は推奨されない。
従来技術の製剤と較べて、本発明の医薬溶液製剤は幾つかの利点を与える。それは容易に調製され、貯蔵され、多くの溶媒添加、使用の前の最終希釈以外の、除去工程及び/又は再添加工程を必要としない。それはDMSO(これはその臭気(又はその一種以上の代謝産物の臭気)のために不十分な患者の許容を有する)の如き溶媒の使用を避ける。本発明の医薬溶液製剤は許容できる注入時間、約90分以内の必要量の17-AAGの送出を可能にする。
ビヒクルは約50容量%の量のエタノール(第一成分)、約20〜約30容量%の量のポリエトキシル化ヒマシ油(第二成分)、及び約20〜約30容量%の量の第三成分としてのプロピレングリコールを含むことが好ましい。
プロピレングリコールはPEG300(300平均分子量のポリ(エチレングリコール))、PEG400(400平均分子量のポリ(エチレングリコール))、グリセロール、又はこれらの組み合わせにより全部又は一部置換し得る。
エタノールは脱水USP等級であることが好ましい。プロピレングリコール、PEG300、PEG400、又はグリセロールはUSP等級であることが好ましい。
【0008】
ポリエトキシル化ヒマシ油は17-AAGのための可溶化剤/乳化剤として作用する。ポリエトキシル化ヒマシ油は商品名クレモフォーとしてBASF AGにより製造されるものであることが好ましい。クレモフォーELが特に好ましいが、クレモフォーのその他の銘柄、例えば、クレモフォーRH60、クレモフォーCO40、クレモフォーCO410、クレモフォーCO455、クレモフォーCO60、クレモフォーRH40、クレモフォーRH410及びクレモフォーWO7が使用されてもよい。当業者はクレモフォーをベースとする製剤が或る程度の注意でもって使用されるべきであることを認めるであろう。何とならば、或る患者が不利な副作用を経験していたからである。
種々の銘柄のクレモフォーが医薬品に関する製剤化除剤として使用されていたが、クレモフォーは従来アンサマイシンとともに使用されていなかった。実際に、アンサマイシン製剤中のクレモフォーの使用はSantiらのUS2003/0114450A1(2003)では反対に推奨された。背景のために、その他の医薬品を含むクレモフォー含有製剤の例示の開示として、Brahmの米国特許第5,583,153号(1996)、Gaoらの米国特許第6,121,313号(2000)、Kuoらの米国特許第6,214,803B1号(2001)、Chenらの米国特許第6,555,558B2号(2003)、Xiangらの米国特許第6,653,319B1号(2003)、WhittleらのUS2003/0021752A1(2003)、GaoらのUS2003/0044434A1(2003)、JiangらのUS2003/0091639A1(2003)、HauerらのUS2003/0104990A1(2003)、CaiらのUS2003/0114485A1(2003)、StanislausのUS2003/0119909A1(2003)、NaickerらのUS2003/0171264A1(2003)、DongらのUS2003/0198619A1(2003)、DongらのUS2003/0232078A1(2003)、MetcalfeらのUS2004/0033243A1(2004)、NamburiらのUS2004/0052847A1(2004)、及びDanishefskyらのUS2004/0053910A1(2004)が挙げられる。上記明細書の開示が参考として本明細書に含まれる。
ビヒクルの調製において、第一成分、第二成分、及び第三成分は、以下に詳述されるように、記載された順序で合わされることが好ましい。即ち、第一成分が第二成分と合わされ、その後に第三成分が合わされた第一成分及び第二成分に添加される。
【0009】
ビヒクルが調製された後に、医薬溶液製剤が以下のように調製し得る。前もって測定された量の17-AAGが適当な容器に計量され、次いでこれに前もって測定された量のビヒクルが添加される。次いで17-AAGが溶解されるまで(好ましくは少なくとも6時間、更に好ましくは少なくとも10時間、最も好ましくは12〜14時間又は一夜にわたって)17-AAG及びビヒクルが撹拌され、好ましくは0.22μのフィルターにより、濾過されて本発明の医薬溶液製剤を得る。撹拌は周囲温度又は冷凍下であってもよい。一旦つくられると、製剤は冷凍下、好ましくは-20〜4℃の温度で貯蔵されることが好ましい。17-AAGを光から保護するための褐色のガラスバイアル又はその他の好適な容器の使用が推奨される。上記のように、17-AAGの濃度は15mg/mLまで、好ましくは2〜15mg/mLであってもよい。
ビヒクルは第一成分、第二成分、及び第三成分を含むと言われ、それが更なる成分の混入を受け易いことを意味する。しかしながら、好ましい実施態様において、ビヒクルは上記された相対量の第一成分、第二成分及び第三成分から実質的になり、これはビヒクルが先に特定された3成分に限定されること、及びこれらが本発明の医薬溶液製剤の基本的かつ新規な一つ以上の特性に実質的に影響しないことを意味する。
ゲルダナマイシンは生産生物、ストレプトミセス・ヒグロスコピクス変種ゲルダヌスNRRL3602を培養することにより得られる、公知の天然産物である。17-AAGはSasakiらの米国特許第4,261,989号(1981)(その開示が参考として本明細書に含まれる)に記載されたように、ゲルダナマイシンとアリルアミンの反応により、ゲルダナマイシンから半合成でつくられる。
【0010】
本発明の医薬溶液製剤により投与される17-AAGは頭及び首の癌(これらは頭、首、鼻腔、副鼻腔、鼻咽頭、口腔、中咽頭、喉頭、下咽頭、唾液腺の腫瘍、及びパラガングリオーマを含む);肝臓及び胆道の木の癌、特に肝細胞性癌腫;腸の癌、特に結腸直腸癌;卵巣癌;小細胞肺癌及び非小細胞肺癌;乳癌肉腫、例えば、繊維肉腫、悪性繊維性組織球腫、胎児性黄紋筋肉腫、平滑筋肉腫、神経繊維肉腫、骨肉腫、滑膜肉腫、脂肪肉腫、及び胞状軟部肉腫;中枢神経系の腫瘍、特に脳の癌;リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫、リンパ形質細胞性悪性リンパ腫、小胞リンパ腫、粘膜関連リンパ系組織リンパ腫、外とう細胞リンパ腫、B系列大細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、及びT細胞退形成性大細胞リンパ腫を含む、高増殖性疾患の如き疾患(これらに限定されない)を治療するのに使用し得る。臨床上、本明細書に記載された方法及び組成物の使用の実施は癌の増殖のサイズもしくは数の減少及び/又は関連症候の減少(適用可能な場合)をもたらすであろう。病理学上、本明細書に記載された方法及び組成物の使用の実施は病理学上妥当な応答、例えば、癌細胞増殖の抑制、癌又は腫瘍のサイズの減少、更なる転移の予防、及び腫瘍血管形成の抑制を生じるであろう。このような疾患の治療方法は治療有効量の本発明の組み合わせを対象に投与することを含む。その方法は必要により繰り返されてもよい。
細胞の高増殖を特徴とする非癌疾患がまた本発明に従って投与される17-AAGにより治療し得る。このような疾患の例示の例として、萎縮性胃炎、炎症性溶血性貧血、移植体拒絶、炎症性好中球減少症、水疱性類天疱瘡、小児脂肪便症、脱髄性神経障害、皮膚筋炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及びクローン病)、多発性硬化症、心筋炎、筋炎、鼻ポリープ、慢性副鼻腔炎、尋常性天疱瘡、原発性腎炎、乾癬、手術の癒着、狭窄又は再狭窄、強膜炎、硬皮症、湿疹(アトピー性皮膚炎、刺激性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎を含む)、歯周病(即ち、歯周炎)、多発性のう胞腎臓疾患、及びI型糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。その他の例として、脈管炎(例えば、巨細胞動脈炎(側頭動脈炎、タカヤス動脈炎)、結節性多発性動脈炎、アレルギー性脈管炎及び肉芽腫症(チャーグ-ストラウス病)、多発性血管炎オーバーラップ症候群、過敏性脈管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)、血清病、薬物誘発脈管炎、感染性脈管炎、腫瘍性脈管炎、結合組織障害と関連する脈管炎、補体系の先天性欠乏と関連する脈管炎、ウェジナー肉芽腫、カワサキ病、中枢神経系の脈管炎、バージャー病及び全身性硬化症);胃腸道疾患(例えば、膵臓炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、原発性硬化性胆管炎、特発性を含むあらゆる原因の良性狭窄(例えば、胆管、食道、十二指腸、小腸又は結腸の狭窄);呼吸道疾患(例えば、喘息、過敏性肺炎、アスベスト肺、けい肺及びじん肺のその他の形態、慢性気管支炎並びに慢性閉塞性気道疾患);鼻涙管疾患(例えば、特発性を含むあらゆる原因の狭窄);及びエウスタキオ管疾患(例えば、特発性を含むあらゆる原因の狭窄)が挙げられる。
【0011】
17-AAGはアルキル化剤、血管形成インヒビター、坑代謝産物薬、DNA開裂剤、DNA架橋剤、DNAインターカレーター、DNA小溝バインダー、熱ショックタンパク質90インヒビター、ヒストンデアセチラーゼインヒビター、微小管安定剤、ヌクレオシド(プリン又はピリミジン)類似体、プロテアソームインヒビター、トポイソメラーゼ(I又はII)インヒビター、チロシンキナーゼインヒビターを含む、その他の抗癌剤又は細胞傷害剤と組み合わせて投与し得る。特別な抗癌剤又は細胞傷害剤として、β-ラパコン、17-DMAG、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、カペシタビン、カリスタチンA、CC-1065、シスプラチン、クリプトフィシン、ダウノルビシン、ジスコデルモリド、ドセタキセル、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、ダイネマイシンA、エポチロン、エトポシド、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオルウラシル、ゲフィチニブ、ゲルダナマイシン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イマチニブ、インターフェロン、インターロイキン、イリノテカン、レプトマイシンB、メトトレキセート、マイトマイシンC、オキサリプラチン、パクリタキセル、スポンジスタチン、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、チオテーパ、トポテカン、トリコスタチンA、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビンデシンが挙げられる。
共投与される抗癌剤又は細胞傷害剤はキナゾリン、特に4-アニリノキナゾリン、例えば、イレッサ(アストラゼネカ;N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-〔3-(4-モルホリニル)プロポキシ〕-4-キナゾリンアミン)及びタルセバ(ロシェ/ゲネンテク;N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)-4-キナゾリンアミン一塩酸塩);フェニルアミノ-ピリミジン、例えば、グリーベク(ノバルチス;4-〔(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル〕-N-〔4-メチル-3-〔〔4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル〕アミノ〕フェニル〕ベンズアミド);ピロロピリミジン及びピラゾロピリミジン、例えば、BIBX 1382(ベーリンガー・インゲルハイム;N8-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-N-2-(1-メチル-4-ピペリジニル)-ピリミド〔5,4-d〕ピリミジン-2,8-ジアミン);インドール及びオキシンドール、例えば、セマキシニブ(ファーマシア;3-〔(3,5-ジメチル-1H-ピロール-2-イル)メチレン〕-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン);ベンジリデンマロノニトリル;フラボン、例えば、フラボピリドール(アベンチス;2-(2-クロロフェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-〔(3S,4R)-3-ヒドロキシ-1-メチル-4-ピペリジニル〕-4H-1-ベンゾピラン-4-オン);スタウロスポリン、例えば、CEP-701(セファロン);抗生物質、例えば、ヘルセプチン(ゲネンテク);及びリボザイム、例えば、アンギオザイム(リボザイム・ファーマシューティカルズ)を含む、タンパク質キナーゼインヒビターであってもよい。
【0012】
本発明の医薬溶液製剤を使用して、17-AAGは投与の頻度に応じて、約4mg/m2から約4000mg/m2までの範囲の用量で投与し得る。17-AAGについての好ましい投薬養生法は毎週約450mg/m2である(Banerjiら, Proc. Am. Soc. Clin. Oncol., 22, 199 (2003, abstract 797),“熱ショックタンパク質90(HSP90)インヒビター17-アリル-17-デメトキシゲルダナマイシン(17AAG)の薬物速度論的(PK)-薬力学的(PD)指導フェーズI試験”)。また、毎週約308mg/m2の用量が投与し得る。Goetzら, Eur. J. Cancer, 38 (Supp. 7), S54-S55 (2002),“進行癌の患者における17-アリル-アミノ-ゲルダナマイシン(17-AAG)のフェーズI試験”を参照のこと。別の投薬養生法は毎週2回であり、用量は約220mg/m2から340mg/m2までの範囲(好ましくは220mg/m2又は340mg/m2)である。別の薬物、例えば、ドセタキセルとの組み合わせ治療に使用し得る投薬養生法は、その二種の薬物を3週毎に投与することであり、17-AAGの用量は夫々の投与で650mg/m2までである。
本発明の実施が下記の実施例を参照することにより更に理解でき、これらの実施例は説明のために示され、限定のためではない。
【実施例1】
【0013】
この実施例は50容量%のエタノール、20容量%のクレモフォーEL、及び30容量%のプロピレングリコールからなる、本発明の製剤中の使用のためのビヒクルの調製を記載する。脱水エタノール(USP、500mL、394.5g)をクレモフォーEL(BASFアクチエンゲゼルシャフト、200mL、210g)と混合した。以上の後に、2種の成分を混合して均一な液体を生成し、プロピレングリコール(USP、300mL、310.8g)を添加した。その組み合わせを再度均一まで混合し、0.22μのフィルターにより濾過して、ビヒクル1リットルを得た。
【実施例2】
【0014】
実施例1の一般操作に従って、エタノール450mL(355.1g)、クレモフォーEL280mL(294g)、及びプロピレングリコール270mL(279.5g)を使用して、ビヒクルの別の1Lのバッチを調製した。これは45容量%のエタノール、28容量%のクレモフォーEL、及び27容量%のプロピレングリコールからなるビヒクルをもたらした。
【実施例3】
【0015】
実施例1の一般操作に従って、エタノール500mL(394.5g)、クレモフォーEL150〜500mL(157.5〜525g)、及びプロピレングリコール0〜350mLを使用して、ビヒクルの付加的な1Lのバッチを調製した。これは50容量%のエタノール、15〜50容量%のクレモフォーEL、及び0〜35容量%のプロピレングリコールからなるビヒクルをもたらした。
【実施例4】
【0016】
この実施例は先の実施例で調製されたビヒクルを使用する本発明の医薬溶液製剤の調製を記載する。17-AAG(1.0g)をきれいなガラス容器へと分析天秤で正確に計量した。ビヒクル(95mL)を容器に添加し、17-AAGが完全に溶解されるまで撹拌した。その溶液の最終容積を追加のビヒクルで100.0mLに調節した。次いでその溶液を0.22μのフィルターにより濾過して無菌を確実にし、4℃で貯蔵した。
【実施例5】
【0017】
本発明の医薬溶液製剤の安定性を以下のように実証した。実施例1のサンプル製剤の2組を夫々5℃(“サンプルA”)及び25℃(“サンプルB”)で貯蔵した。夫々のサンプルのアリコートを0日目、17日目及び23日目に採取し、400μg/mLの17-AAGの最終理論濃度に希釈した。夫々のアリコート中の17-AAGの純度及びその濃度を逆相HPLCにより測定した。結果を表Aに示す。
【0018】

【0019】
*データは四つのサンプルの平均である。
本発明の製剤についての長期安定性データを表Bに示す。
【0020】

【0021】
上記結果は本発明の製剤が、少なくとも3週又はそれより長い期間にわたって、周囲温度で貯蔵される(冷凍下の貯蔵が推奨されるが)場合でさえも、安定であることを示す。
本発明の以上の詳細な記載は主として又は専ら本発明の特別な部分又は局面に関する節を含む。これは明瞭化及び便宜のためであること、特別な特徴がそれを開示する節よりも妥当であり得ること、及び本明細書中の開示が異なる節に見られる情報のあらゆる適当な組み合わせを含むことが理解されるべきである。同様に、本明細書中の種々の数値及び記載は本発明の特別な実施態様に関するが、特別な特徴が特別な数値又は実施態様に関して開示される場合、このような特徴はまた別の特徴と組み合わせて、又は一般に本発明において、別の数値又は実施態様に関して、適当な程度に、使用し得ることが理解されるべきである。
本明細書に引用された全ての書類が参考として本明細書に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)約40容量%〜約60容量%の量の、エタノールである第一成分、(ii)約15容量%〜約50容量%の量の、ポリエトキシル化ヒマシ油である第二成分、及び(iii)約0容量%〜約35容量%の量の、プロピレングリコール、PEG300、PEG400、グリセロール、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる第三成分を含むビヒクルに溶解された15mg/mLまでの量の17-AAGを含むことを特徴とする医薬溶液製剤。
【請求項2】
第二成分がクレモフォーELである、請求項1記載の医薬溶液製剤。
【請求項3】
第三成分がプロピレングリコールである、請求項1記載の医薬溶液製剤。
【請求項4】
ビヒクルが約45容量%〜約50容量%の量の第一成分、約20容量%〜約30容量%の量の第二成分、及び約20容量%〜約30容量%の量の第三成分を含む、請求項1記載の医薬溶液製剤。
【請求項5】
第二成分がクレモフォーELであり、かつ第三成分がプロピレングリコールである、請求項4記載の医薬溶液製剤。
【請求項6】
ビヒクルが約50容量%のエタノール、約20容量%のクレモフォーEL、及び約30容量%のプロピレングリコールを含む、請求項1記載の医薬溶液製剤。
【請求項7】
ビヒクルが約45容量%のエタノール、約28容量%のクレモフォーEL、及び約27容量%のプロピレングリコールを含む、請求項4記載の医薬溶液製剤。
【請求項8】
第三成分が不在である、請求項1記載の医薬溶液製剤。
【請求項9】
(a) (i)約40容量%〜約60容量%の量の、エタノールである第一成分、(ii)約15容量%〜約50容量%の量の、ポリエトキシル化ヒマシ油である第二成分、及び(iii)約0容量%〜約35容量%の量の、プロピレングリコール、PEG300、PEG400、グリセロール、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる第三成分を含むビヒクルに溶解された15mg/mLまでの濃度の17-AAGを含む医薬溶液製剤を用意する工程、
(b) 工程(a)の医薬溶液製剤を水に希釈して3mg/mLまでの17-AAGを含む希釈された溶液を得る工程、及び
(c) 工程(b)の希釈された溶液を患者に静脈内投与する工程
を含むことを特徴とする、17-AAGを必要とする患者に17-AAGを投与するための方法。
【請求項10】
第二成分がクレモフォーELである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
第三成分がプロピレングリコールである、請求項9記載の方法。
【請求項12】
ビヒクルが約45容量%〜約50容量%の量の第一成分、約20容量%〜約30容量%の量の第二成分、及び約20容量%〜約30容量%の量の第三成分を含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
第二成分がクレモフォーELであり、かつ第三成分がクレモフォーELである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
ビヒクルが約50容量%のエタノール、約20容量%のクレモフォーEL、及び約30容量%のプロピレングリコールを含む、請求項9記載の方法。
【請求項15】
ビヒクルが約45容量%のエタノール、約28容量%のクレモフォーEL、及び約27容量%のプロピレングリコールを含む、請求項9記載の方法。
【請求項16】
第三成分が不在である、請求項9記載の方法。
【請求項17】
17-AAGを約4mg/m2から約4000mg/m2までの量で投与する、請求項9記載の方法。
【請求項18】
17-AAGを毎週約450mg/m2の量で投与する、請求項9記載の方法。
【請求項19】
17-AAGを毎週約308mg/m2の量で投与する、請求項9記載の方法。
【請求項20】
(a) 或る量の17-AAGを容器中に用意する工程、
(b) 工程(a)の17-AAGを(i)約40容量%〜約60容量%の量の、エタノールである第一成分、(ii)約15容量%〜約50容量%の量の、ポリエトキシル化ヒマシ油である第二成分、及び(iii)約0容量%〜約35容量%の量の、プロピレングリコール、PEG300、PEG400、グリセロール、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる第三成分を含む或る量のビヒクルと合わせる工程、
(c) 17-AAGが実質的に溶解されるまで工程(c)からの組み合わせを撹拌する工程、及び
(d) 必要により工程(c)からの撹拌組み合わせを濾過して17-AAGを含む医薬溶液製剤を生成する工程
を含み、
工程(a)の17-AAGの量及び工程(b)のビヒクルの量は医薬溶液製剤中の17-AAGの濃度が15mg/mLまでであるような量であることを特徴とする、17-AAGを含む医薬溶液製剤の調製方法。
【請求項21】
第二成分がクレモフォーELである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
第三成分がプロピレングリコールである、請求項20記載の方法。
【請求項23】
ビヒクルが約45容量%〜約50容量%の量の第一成分、約20容量%〜約30容量%の量の第二成分、及び約20容量%〜約30容量%の量の第三成分を含む、請求項20記載の方法。
【請求項24】
第二成分がクレモフォーELであり、かつ第三成分がクレモフォーELである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ビヒクルが約50容量%のエタノール、約20容量%のクレモフォーEL、及び約30容量%のプロピレングリコールを含む、請求項20記載の方法。
【請求項26】
ビヒクルが約45容量%のエタノール、約28容量%のクレモフォーEL、及び約27容量%のプロピレングリコールを含む、請求項20記載の方法。
【請求項27】
第三成分が不在である、請求項20記載の方法。

【公表番号】特表2007−537258(P2007−537258A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513239(P2007−513239)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/016010
【国際公開番号】WO2005/110398
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(504269110)コーザン バイオサイエンシス インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】