説明

17−AAG又は17−AG又はどちらかのプロドラッグをプロテアソーム阻害剤と組み合わせて使用する多発性骨髄腫の治療方法

17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)又は17-アミノゲルダナマイシン(17-AG)又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグをプロテアソーム阻害剤と組み合わせて患者に投与することによる当該患者における多発性骨髄腫の治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン又は17-アミノゲルダナマイシン又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグをプロテアソーム阻害剤と組み合わせて使用する多発性骨髄腫の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫(“MM”、骨髄腫又は形質細胞性骨髄腫としても知られる)は、不治であるが治療可能な形質細胞の癌である。形質細胞は、免疫系の重要な部分であり、感染症及び疾患との闘いを助ける免疫グロブリン(抗体)を産生する。MMは、骨髄(“BM”)中の過剰な数の異常な形質細胞及びインタクトモノクローナル免疫グロブリン(IgG、IgA、IgD若しくはIgE;“M-タンパク”)若しくはベンス・ジョーンズタンパク(遊離型モノクローナルL鎖)の過剰産生により特徴付けられる。高カルシウム血症、貧血、腎障害、増大した細菌感染への感受性及び正常な免疫グロブリンの障害性の産生は、MMの一般的な臨床所見である。MMはしばしばまた、広範性(diffuse)骨粗鬆症、通常、骨盤、脊椎、肋骨及び頭蓋骨における骨粗鬆症によっても特徴付けられる。
【0003】
MMの治療は、化学療法、幹細胞移植、幹細胞移植を伴う高投与量化学療法及び救済療法を含む。化学療法は、Thalomid(登録商標)(サリドマイド)、Valcade(登録商標)(ボルテゾミブ)、Aredia(登録商標)(パミドロネート)、ステロイド及びZometa(登録商標)(ゾレドロン酸)での治療を含む。しかしながら、多くの化学療法薬剤は、BMの細胞、胃及び腸の内壁並びに毛包のような活発に分裂する非癌性細胞に毒性を有する。従って、化学療法は結果として血球数の減少、悪心、嘔吐、下痢及び脱毛をもたらすかもしれない。
【0004】
従来の化学療法又は標準的投与量の化学療法は、概してMMの患者に関する基礎的な若しくは初期の治療である。患者はまた、高投与量化学療法及び幹細胞移植に向けた化学療法を受けてもよい。導入療法(幹細胞移植に先立つ従来の化学療法)を、移植に先立って腫瘍量を削減するために用いることができる。特定の化学療法薬剤は、他のものと比べて導入療法により適しており、その理由はそれらがBM細胞により低毒性であり、結果としてBM細胞からより多い幹細胞の産生をもたらすことである。導入療法に適した化学療法薬剤の例としては、デキザメタゾン、サリドマイド/デキサメタゾン、VAD(ビンクリスチン、Adriamycin(登録商標)(ドキソルビシン)及びデキサメタゾンを組み合わせて)及びDVd(ペグ化リポソームドキソルビシン(Doxil(登録商標)、Caelyx(登録商標))、ビンクリスチン及び削減されたスケジュールのデキサメタゾンを組み合わせて)が挙げられる。
【0005】
MMの標準的な治療は、プレドニゾン(副腎皮質ステロイド薬剤)と組み合わせたメルファランであり、50 % の奏効率を達成する。残念なことに、メルファランはアルキル化剤であり、導入療法により適さない。副腎皮質ステロイド(とりわけ、デキサメタゾン)は、時々単独でMM治療として、とりわけ年配の患者で化学療法に耐えられない人々に使用される。デキサメタゾンはまた、導入療法の形態としても、単独で又は他の薬剤と組み合わせて使用される。VADは、最も広く使用される導入療法であるが、DVdが最近導入療法として有効であることが明らかとなってきた。ボルテゾミブは最近MMの治療に関して承認されたが、極めて毒性が高い。しかしながら、治療への大きな潜在的可能性を提供する既存の治療は全く存在しない。
【0006】
17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(“17-AAG”、時々17-アリルアミノゲルダナマイシンとも称される)は、自然発生化合物であるゲルダナマイシンの半合成アナログである(Sasaki et al., 1981)。ゲルダナマイシンは、Streptomyces hygroscopicus var. geldanus NRRL 3602 のような産生生物体を培養することにより入手可能である。他の生物学的活性のあるゲルダナマイシン誘導体は、17-アミノゲルダナマイシン(“17-AG”)であり、これは17-AAGの代謝によりヒトの体内で産生される。17-AGはまた、ゲルダナマイシンから作ることができる(Sasaki et al., 1979)。ゲルダナマイシン及びそのアナログが1990年代に抗癌剤として集中的に研究されてきたが(例えば、Sasaki et al., 1981; Schnur, 1995; Schnur et al., 1999)、それらは一つとして抗癌用途に関して承認されていない。
【化1】

【0007】
17-AAG及びゲルダナマイシンは、熱ショックタンパク-90(“Hsp90”)に結合してその活性を阻害することにより作用すると考えられている(Schulte and Neckers, 1998)。Hsp90は多くの細胞性タンパク(“クライアントタンパク”)の正常プロセシングに関するシャペロンとして作用し、あらゆる哺乳動物細胞において発見される。ストレス(低酸素、熱など)により、その発現の数倍の上昇が誘導される。熱ショックタンパク-70(“Hsp70”)のような他のストレス誘導タンパクが存在し、これもまた、ストレスへの細胞応答及びストレスからの回復に関与する。
【0008】
癌細胞において、Hsp90阻害は結果として、Hsp90とerbB2、ステロイドレセプター、raf−1、cdk4及びAktのようなそのクライアントタンパクとの間の相互作用の崩壊をもたらす。例えば、17-AAGへの曝露は結果として、SKBr3乳癌細胞におけるerbB2の枯渇及びRaf−1及び変異型p53の不安定化(Schulte and Neckers, 1998)、乳癌細胞におけるステロイドレセプターの枯渇(Bagatell et al., 2001)、MEXF276Lメラノーマ細胞におけるHsp90の枯渇及びRaf−1及びerbB2の下方制御(Burger et al., 2004)、結腸腺癌細胞におけるRaf−1、c−Akt及びErk1/2の枯渇(Hostein et al., 2001)、白血病細胞における細胞内Bcr−Ablタンパク及びc−Rafタンパクの下方制御及びAktキナーゼ活性の低減(Nimmanapalli et al., 2001)、野生型Rbを有する肺癌細胞におけるcdk4、cdk6及びCyclinEの分解(Jiang and Shapiro, 2002)並びにNSCLC細胞におけるerbB1(EFGR)レベル及びerbB2(p185)レベルの枯渇(Nguyen et al., 2000)をもたらす。
【0009】
Hsp90並びに発癌及び癌細胞の転移に関与する他のタンパクに関連する17-AAGの活性に起因して、数々の臨床研究者達がその抗癌剤としての有効性をヒトの臨床試験において評価してきた。これらの種々の試験から、国立癌研究所の癌治療評価プログラム(CTEP)は、さらなる研究に向けたこれらのフェーズ2投与量/スケジュールレジメンを推奨した:220 mg/m2(患者又は被験者の体表面面積1平方メートルあたりのmg)を3週間の内2週間毎週2回投与する、450 mg/m2 を一週間に一回継続的に又は休薬若しくは中断しながら投与する並びに 300 mg/m2 を4週間の内3週間一週につき一回投与する。17-AAGでの種々の臨床試験(ほぼ例外なく固形癌を有している患者)の結果は、概して制限された臨床活性を示すが、下記に要約する。
【0010】
(a)固形癌を有する成人患者におけるフェーズ1試験は、患者に17-AAGを3週間毎に5日間毎日投与して行われた。開始投与量は 10 mg/m2 であり、56 mg/m2まで段階的に増量され、最大耐投与量(“MTD”)及び推奨フェーズ2投与量は 40 mg/m2 と決定された。当該プロトコルは、重大な既に存在する肝疾患を有する患者を除外して、その後患者を同一のスケジュールで 110 mg/m2 までの投与量で治療するように修正された。客観的な腫瘍反応は全く観察されなかった。投与量を制限する可逆的な肝毒性に起因して、当該プロトコルは、1日につき 40 mg/m2 の投与量から始めて隔週のスケジュールで1週間につき2回患者に投与するようにさらに修正された。5日間の間 40 mg/m2 及び 56 mg/m2 の1日投与量で、ピーク血漿濃度はそれぞれ、1,860 ± 660 nM 及び 3,170 ± 1,310 nM であった。56 mg/m2 で治療した患者に関し、17-AAG及び17-AGに関する平均AUC値はそれぞれ 6,708 nM×時間 及び 5,558 nM ×時間 であり、平均t1/2 はそれぞれ 3.8時間及び8.6時間であった。17-AAG及び17-AGのクリアランスはそれぞれ 19.9 L/時間/m2 及び 30.8 L/時間/m2 であり、Vz値はそれぞれ 93 L/m2 及び 203 L/m2 であった(Grem et al., 2005)。
【0011】
(b)2つ目のフェーズ1試験において、進行性固形癌を有する患者に、5 mg/m2 の開始投与量で毎日5回のスケジュールで17-AAGを投与した。80 mg/m2 で、投与量を制限する毒性(肝炎、腹痛、悪心、呼吸困難)が観察されたが、それにもかかわらず、投与量の段階的増量は、当該投与量が 157 mg/m2/日 に達するまで続けられた。さらなる投与スケジュールの修正が、毎週2回の投薬を可能にするために実施された。80 mg/m2 の投与量レベルで、t1/2 は1.5時間であり、血漿Cmaxは 2,700 nM であった。同様に、17-AGに関しては、t1/2 は1.75時間であり、Cmaxは 607 nM であった。血漿濃度は、インビトロ及びインビボ異種移植モデルにおいて殺細胞を達成するのに必要な濃度(10 nM − 500 nM)を越えた(Munster et al., 2001)。
【0012】
(c)17-AAGのフェーズ1試験は進行性固形癌を有する患者を 10 mg/m2 の開始投与量で4週間毎に3週間の間毎週治療して行われ、推奨フェーズ2投与量は 295 mg/m2 であった。投与量の段階的増量は 395 mg/m2 の投与量まで達し、その時点で、悪心並びに膵炎及びグレード3の疲労に続発する嘔吐が観察された。当該投薬スケジュールは、4週間毎に3週間毎週2回の投薬及び3週間毎に2週間毎週2回の投薬を可能にするように修正された。母集団薬物動態(PK)解析が、当該試験から得られたデータで行われた。17-AAGに関するVd(分布容積)は、体循環コンパートメント(central compartment)に関して 24.2 L であり、末梢コンパートメントに関して 89.6 L であった。クリアランス値は、17-AAG及び17-AGに関してそれぞれ 26.7 L/時間 及び 21.3 L/時間 であった。代謝クリアランスは、17-AAGの 46.4 % が17-AGへ代謝されたことを示唆した。客観的な腫瘍反応は現在までのところ当該試験において全く観察されていない(Chen et al., 2005)。
【0013】
(d)固形癌及びリンパ腫を有する患者での他のフェーズ1試験が、4週毎に3週間で毎週1回の投薬サイクルを用いて実施された。開始投与量は、15 mg/m2 であった。投与量の段階的増量は重大な毒性なく 112 mg/m2 まで達し、“生物学的”活性の投与量範囲まで達するという目標を持って続けられた。毎週の17-AAG投与に関するMTDは、308 mg/m2 に達した。当該試験において現在までに客観的な腫瘍反応は全く観察されておらず、測定されたHsp90クライアントタンパクのレベルは、治療期間中不変であった。シャペロンタンパクレベル又はクライアントタンパクレベルと17-AAGのPK又は17-AGのPKとの間の相関関係は見られなかった。17-AAGのPKとその臨床毒性との相関関係も全くなかった(Goetz et al., 2005)。
【0014】
(e)転移性黒色腫を有する11人の患者を含む他のフェーズ1試験が、毎週1回の投与スケジュールを用いて実施された。開始投与量は 10 mg/m2 であり、投与量を制限する毒性が 450 mg/m2/週 で観察された(グレード3/4のASTの上昇)。より高い投与量(16 mg/m2/週 − 450 mg/m2/週)で、採用された17-AAG配合物は一回の注入中に 10 mL − 40 mL のジメチルスルホキシド(DMSO)を含み、これがおそらく当該試験において観察された胃腸毒性をもたらした。320 mg/m2 − 450 mg/m2 で治療した患者のうちで、2人が、放射線学的に記録された長期間の安定した疾患を示した。完全反応又は部分的反応は、全く記録されなかった。最高投与量レベル(450 mg/m2)で、17-AAGの血漿濃度は 10 μM を越え、24時間を超える間 120 nM を上回ったままであった。450 mg/m2 の最高投与量で、平均分布容積は 142.6 L であり、平均クリアランスは 32.2 L/時間であり、平均ピーク血漿レベルは 8,998 μg/L であった。投与量と試験された投与量レベルに関する曲線下面積(AUC)との間の線形相関が存在した。薬力学(PD)パラメータも測定され、コシャペロンタンパクHsp70の誘導が 320 mg/m2/週 − 450 mg/m2/週 で治療された9人の患者の8人で観察された。腫瘍生険標本中でクライアントタンパクの枯渇も観察された(24時間時点で、9人の患者の内8人におけるCDK4枯渇及び6人の患者の内4人におけるRaf−1枯渇)。これらのデータは、腫瘍中のHsp90が1日間−5日間で阻害されることを示唆した(Banerji et al., 2005)。
【0015】
17-AAGのインビボにおける抗-MM活性が、SCID/NODマウスでの広範性GFP陽性MM病変モデルを用いて研究された(Mitsiades et al., 2006)。生存率分析は、治療が全体的な生存の中央値を著しく延長させることを示唆したが、非臨床データはしばしば臨床活性を予測できない。上記で検討されたとおり、これはとりわけ固形癌における17-AAGの場合であり、非臨床データの見込みはフェーズ1臨床試験で実証されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、抗癌剤として17-AAGを開発するための集中的な取り組みにもかかわらず、いずれの癌の治療に関しても17-AAGを規制当局は全く承認していない。その潜在的な治療効果を実現することができるような17-AAG及び17-AAGのプロドラッグ(及びその代謝対応物である17-AG)を投薬する方法及び投与する方法に関する必要性が依然として存在する。本発明は、17-AAGを用いるMMの治療に有効な当該方法を提供する。
【0017】
最近、前臨床試験及び臨床試験は、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標)、BZ、PS−341)が従来の化学療法又は高投与量の細胞毒性を有する化学療法へのMM細胞の抵抗性を克服し(Hideshima et al., 2001; Mitsiades et al., 2001; Mitsiades et al., 2003)、MMにおける患者予後を改善することができることを明らかにしてきた。ボルテゾミブは最近再燃性及び難治性MMの治療に関して承認された(Richardson et al., 2003a)。非臨床試験はまた、MM細胞のボルテゾミブでの処理がMM細胞における主要なストレス応答として著しいHsp90の上方制御を引き起こすことを明らかにしてきた。ボルテゾミブは患者予後を改善することができる一方で、極めて毒性が高い。
【0018】
本発明は、多発性骨髄腫の治療に効果的な17-AAG若しくは17-AG又はどちらかのプロドラッグとボルテゾミブとの組み合わせ治療を提供する。
【0019】
本明細書で引用される参考文献のリストは、本明細書の最後で提供される。本明細書で引用される全ての文献は、あたかも各々の当該出版物又は文献が具体的かつ個別に参照によって本明細書に取り込まれるかの如く、参照により本明細書に取り込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の要約)
本発明は、当該治療を必要とする被験者における多発性骨髄腫(MM)の治療方法を提供し、前記方法は前記被験者へ治療的に有効な投与量の17-AAG若しくは17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグ及び治療的に有効な投与量のプロテアソーム阻害剤を投与するステップを含み、必要に応じてさらなる治療効果が得られなくなるまで前記ステップを繰り返すことを含む。
【0021】
ある実施態様において、当該方法はMMを有する被験者への少なくとも2週間を超える期間の多様な投与量の17-AAG又はそのプロドラッグの投与を含み、各々の当該投与量は約 100 mg/m2 − 約 340 mg/m2 の範囲の17-AAG又は17-AAGプロドラッグ若しくは17-AGプロドラッグの相当量である。ある実施態様において、当該投与量は、約 340 mg/m2 の17-AAG又は17-AAGプロドラッグ若しくは17-AGプロドラッグの相当量である。ある実施態様において、ある実施態様において、当該投与量が少なくとも2週間の間毎週2回投与される。ある実施態様において、当該投与量が3週間の期間に少なくとも2週間の間毎週2回投与され、3週間の期間あたりの投薬のこの速度をサイクルと呼び、複数サイクルの当該治療が当該MM患者に投与される。
【0022】
ある実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な投与量は、結果として一投与量あたり約 2,300 ng/mL×時間 − 19,000 ng/mL×時間 の範囲の17-AAGのAUCtotalをもたらす投与量である。ある実施態様において、当該投与量が、17-AAG(又はプロドラッグ)のCmaxが 9,600 ng/mL(又はプロドラッグのモル相当量)を越えないような速度及び頻度で投与される。ある実施態様において、当該投与量が、17-AAGのCmaxが 1,300 ng/mL を超えるような速度及び頻度で投与される。ある実施態様において、当該投与量が、17-AAGのCmaxが 1,800 ng/mL を超えるような速度及び頻度で投与される。ある実施態様において、当該投与量が、17-AAGのCmaxが 1,300 ng/mL を超えるが 9,600 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される。ある実施態様において、当該投与量が、17-AAGのCmaxが 1,800 ng/mL を超えるが 9,600 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される。
【0023】
ある実施態様において、17-AG又は17-AGのプロドラッグ(このプロドラッグは17-AAGを含んでいてもよい)の治療的に有効な投与量は、結果として一投与量あたり約 800 ng/mL×時間 − 約 17,000 ng/mL×時間 の範囲の17-AGのAUCtotalをもたらす投与量である。ある実施態様において、当該投与量が、17-AGのCmaxが 1,400 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される。ある実施態様において、当該投与量が、17-AGのCmaxが 140 ng/mL を超えるような速度及び頻度で投与される。ある実施態様において、当該投与量が、17-AGのCmaxが 230 ng/mL を超えるような速度及び頻度で投与される。ある実施態様において、当該投与量が、17-AGのCmaxが 140 ng/mL を超えるが 1,400 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される。ある実施態様において、当該投与量が、17-AGのCmaxが 230 ng/mL を超えるが 1,400 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される。
【0024】
ある実施態様において、17-AAG、17-AAGのプロドラッグ、17-AG又は17-AGのプロドラッグの治療的に有効な投与量は、結果として一投与量あたり 約 3,500 ng/mL×時間 − 約 35,000 ng/mL×時間 の範囲の17-AAGと17-AGの総合体としてのAUCtotalをもたらす投与量である。ある実施態様において、当該投与量が、17-AAGのCmaxが 9,600 ng/mL 越えない及び/又は17-AGのCmaxが 1,400 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される。ある実施態様において、当該投与量が、17-AAGのCmaxが 1,300 ng/mL 超える及び/又は17-AGのCmaxが 140 ng/mL を超えるような速度及び頻度で投与される。ある実施態様において、当該投与量が、17-AAGのCmaxが 1,800 ng/mL 超える及び/又は17-AGのCmaxが 230 ng/mL を超えるような速度及び頻度で投与される。ある実施態様において、当該投与量が、17-AAGのCmaxが 1,300 ng/mL 超えるが 9,600 ng/mL を越えない及び/又は17-AGのCmaxが 140 ng/mL を超えるが 1,400 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される。ある実施態様において、当該投与量が、17-AAGのCmaxが 1,800 ng/mL 超えるが 9,600 ng/mL を越えない及び/又は17-AGのCmaxが 230 ng/mL を超えるが 1,400 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される。
【0025】
ある実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な投与量は、結果として1.6時間 − 5.6時間の範囲の17-AAGの終末T1/2をもたらす投与量である。ある実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な投与量は、結果として上述の範囲の17-AAGの終末T1/2及び一投与量あたり約 2,300 ng/mL×時間 − 約 19,000 ng/mL×時間の範囲の17-AAGのAUCtotalをもたらす投与量である。
【0026】
ある実施態様において、17-AG又は17-AGのプロドラッグの治療的に有効な投与量は、結果として3.7時間 − 9.1時間の範囲の17-AGの終末T1/2をもたらす投与量である。ある実施態様において、17-AG又は17-AGのプロドラッグの治療的に有効な投与量は、結果として上述の範囲の17-AGの終末T1/2及び一投与量あたり約 800 ng/mL×時間 − 約 17,000 ng/mL×時間の範囲の17-AGのAUCtotalをもたらす投与量である。
【0027】
ある実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な投与量は、結果として 56 L − 250 L の範囲の17-AAGの分布容積Vzをもたらす投与量である。ある実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な投与量は、結果として上述の範囲の17-AAGの分布容積Vz及び一投与量あたり約 2,300 ng/mL×時間 − 約 19,000 ng/mL×時間の範囲の17-AAGのAUCtotalをもたらす投与量である。
【0028】
ある実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な投与量は、結果として 13 L/時間 − 85 L/時間 の範囲のクリアランスをもたらす投与量である。ある実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な投与量は、結果として上述の範囲の17-AAGのクリアランス及び一投与量あたり 約 2,300 ng/mL×時間 − 19,000 ng/mL×時間の範囲の17-AAGのAUCtotalをもたらす投与量である。
【0029】
ある実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な投与量は、結果として 96 L − 250 L の範囲のVssをもたらす投与量である。ある実施態様において、17-AAG又は17-AAGのプロドラッグの治療的に有効な投与量は、結果として上述の範囲の17-AAGのVss及び一投与量あたり約 2,300 ng/mL×時間 − 19,000 ng/mL×時間 の範囲の17-AAGのAUCtotalをもたらす投与量である。
【0030】
ある実施態様において、17-AAG、17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグ及びプロテアソーム阻害剤が別々の医薬配合物で各々投与される。他の実施態様において、17-AAG、17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグ及びプロテアソーム阻害剤は同じ医薬配合物中に存在する。医薬配合物は各々さらに医薬的に許容されるキャリア又は希釈剤を含んでいてもよい。
【0031】
ある実施態様において、プロテアソーム阻害剤はボルテゾミブである。ある実施態様において、各々の投与量の17-AAG、17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグが点滴として90分間若しくは120分間を超えて投与され、各々の投与量のボルテゾミブが3秒間−5秒間の静脈内急速ボーラスとして投与される。ある実施態様において、各々の投与量のボルテゾミブが各々の投与量の17-AAG、17-AG又は17-AAG若しくは17-AGどちらかのプロドラッグの前に投与される。ある実施態様において、当該方法は多様な投与量のボルテゾミブをMMの患者へ少なくとも2週間を超える期間投与することを含み、各々の当該投与量は少なくとも 1mg/m2 のボルテゾミブ又は約1mg/m2 − 約 1.3 mg/m2 の範囲のボルテゾミブである。
【0032】
ある実施態様において、当該方法は多様な投与量のボルテゾミブ及び17-AAG、17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグをMM患者へ少なくとも2週間を超える期間投与することを含み、ボルテゾミブの各々の当該投与量は少なくとも 1mg/m2 のボルテゾミブ又は約1mg/m2 − 約 1.3 mg/m2 の範囲のボルテゾミブであり、17-AAGの各々の投与量は少なくとも 100 mg/m2 の17-AAG(又は、17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグの相当量)又は約 100 mg/m2 − 約 340 mg/m2 の範囲の17-AAG(又は、17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグの相当量)である。好ましい実施態様において、当該方法は多様な投与量のボルテゾミブ及び17-AAG、17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグをMMの患者へ少なくとも2週間を超えて投与することを含み、ボルテゾミブの各々の当該投与量は1mg/m2 のボルテゾミブ又は約1mg/m2 − 約 1.3 mg/m2 の範囲のボルテゾミブであり、17-AAGの各々の投与量は少なくとも 150 mg/m2 の17-AAG(又は、17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグの相当量)又は約 150 mg/m2 − 約 340 mg/m2 の範囲の17-AAG(又は、17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグの相当量)である。
【0033】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本発明の理解及び実施を助けるために、本明細書で用いられる特定の用語に関する定義が以下に提供される。
本発明を記載する際に、17-AAGの濃度は17-AAGのプロドラッグのモル当量濃度であってもよいように定義される。
本発明を記載する際に、17-AGの濃度は17-AGのプロドラッグのモル当量濃度であってもよいように定義される。
【0034】
“副作用”は、国立癌研究所で定義されるとおりである(2003)。
“投与量を制限する毒性”(DLT)は、国立癌研究所を参照するいずれの以下の臨床毒性としても定義される(2003)。血液学的毒性としては、(1)連続的な5日間を超えるグレード4の好中球減少症(好中球絶対数(ANC)< 0.5×109 /L)又は発熱性好中球減少症(ANC< 1.0×109 /L、熱≧38.5℃)、(2)グレード4の血小板減少症(血小板< 25.0×109 /L 若しくは血小板輸血を必要とする出血症状)、及び/又はグレード4の貧血(ヘモグロビン< 6.5 g/dL)が挙げられる。非血液学的毒性としては、(1)グレード3以上のいずれの非血液学的毒性(グレード3の注射部位反応、脱毛症、食欲不振、疲労を除く)、(2)最大限の医療介入及び/又は予防の使用にもかかわらずグレード3以上の悪心、下痢及び/又は嘔吐、及び/又は(3)薬剤関連性の毒性からの長期の回復に起因する4週間を超える治療遅延が挙げられる。
【0035】
“完全反応(CR)”は、少なくとも6週間維持される血清及び尿の両方の陰性免疫固定法(“IF”)に基づいて定義される。5%未満の形質細胞を含む骨髄吸引(“BMA”)をCRの確認に使用することができる。トレフィン生検を行い、結果が5%未満の形質細胞を示す。非分泌性骨髄腫においては、CRの確認のために6週間の間隔で骨髄生検が繰り返される。渙散性病変のサイズ又は数の上昇は全く観察されず(圧迫骨折の進展は反応を排除しない)、軟組織形質細胞腫の消失を伴う(Blade et al., 1998)。
【0036】
“KPS一般状態”は表1で定義されるとおりであり、またECOGスケールとの比較も提供する。
【表1】

【0037】
“最小反応”は、以下の1つ以上として定義される:少なくとも6週間維持される血清M−タンパクの 25 % − 49 % の減少;少なくとも6週間維持されるまだ 200 mg/24時間 を超える尿中L鎖排泄の 50 % − 89 % の減少;非分泌性骨髄腫のみを有する患者に関する少なくとも6週間維持されるBMA又は骨トレフィン生検(生検が行われる場合)中の形質細胞の 25 % − 49 % の減少;軟組織形質細胞腫のサイズの 25 % − 49 % の減少(X線検査又は臨床監査による);及び渙散性病変のサイズ又は数の上昇が全くないこと(圧迫骨折の進展は反応を排除しない)(Blade et al., 1998)。
“変化なし”は、最小反応又は進行性疾患のどちらかの判定基準を満たさないものとして定義される(Blade et al., 1988)。
【0038】
“部分的反応(PR)”は、CRに関する判定基準のいくつかを満たすが全てを満たすわけではない患者であって、日常的な電気泳動法が陰性であるがIFが行われていない患者であってもよい患者が発生することとして定義される。例えば、Blade et al.(1988)を参照のこと。
“プラトーフェーズ”は、最低3ヶ月間安定的なパラプロテインレベルに基づいて定義される。プラトーは、反応が評価される際に当該値が 25 % の範囲内に観察されることが必要であり、25 % を超える上昇は疾患の進行に関する当該判定基準の一つである(Blade et al., 1998)。
【0039】
“疾患の進行”は、CRにない患者に関して、部分寛解又はプラトーフェーズの患者における疾患活動性の明確な上昇として定義され、一方で再燃という用語は、以前にCRであった患者における明らかな疾患の再発に適用される。例えば、Blade et al.,(1998)を参照のこと。
“難治性癌”は、一つ以上の前治療に反応しない癌を意味する。
【0040】
“再燃”は、一つ以上の前治療による改善の期間後に癌の兆候及び症状が戻ることを意味する。“CRからの再燃”は、以下の一つ以上として定義される:少なくとも一つのさらなる検査及びオリゴクローナルな再構成を除外することにより確認されるIF又は日常的な電気泳動法での血清パラプロテイン又は尿中パラプロテインの再出現;BMA中又はトレフィン骨生検における 5 % を超える形質細胞;新たな溶解性骨病変軟若しくは軟組織形質細胞腫の発生又は残りの骨病変のサイズの明確な上昇(圧迫骨折の発生が持続的な反応を排除せず、かつ進行を示唆しなくてもよい);並びにいかなる他の原因にも起因しない高カルシウム血症(11.5 mg/dL を超える補正血清カルシウム値)の発生。
【0041】
“治療的に有効な投与量”は、特に指示されない限り、好ましい治療効果を達成するために投与されるのに必要とされる薬剤の量を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
(実施態様)
本発明は、MMを治療するための17-AAG又は17-AG及びインビボでの17-AAG又は17-AGの形成を介したそれらの制癌効果を発揮するプロドラッグの重要な新規の使用方法を提供する。本発明は一つには、管理し難い毒性を引き起こしそうな血中レベルに到達することなくAUCtotal、Cmax、終末T1/2、クリアランス、分布容積及び/又はVssとして表される17-AAG又はその主要な代謝産物である17-AGの治療的に有効な血中レベル(又は、これらの成分が細胞アッセイで等しい効力を有している場合には、17-AGと共に加えられる17-AAGの血中レベル)を達成し維持するために17-AAGを投薬するための及び投与するための新たな方法の発見から生じる。
【0043】
ある実施態様において、本発明の方法は3週間を超える期間多様な投与量の17-AAG又は17-AAGのプロドラッグ及び多様な投与量のプロテアソーム阻害剤を投与することを含む。集合的に、3週間の期間を超えるこれらの投与量は、サイクルと呼ばれる。患者は、複数のサイクルの処置で治療されてもよい。本明細書に記載される治療的に有効な投与量が達成される限りは、本明細書に特に記載されるよりもより長い持続時間若しくはより短い持続時間のサイクルを含むか又はより多い若しくはより少ない投与量を含む種々のサイクルを本発明を実施するために使用することができる。ある実施態様において、1サイクルあたり4回の投与で投与され、各々の投与の間には3日間−4日間の期間が存在する。他の実施態様において、1サイクルあたり4回の投与で投与され、1週間あたり2回の投与で3週間のサイクルの内初めの2週間投与される。
【0044】
ある実施態様において、当該治療的に有効な投与量はMMを有する患者へ少なくとも3週間を超える期間17-AAG又は17-AAG若しくは17-AGのプロドラッグの多様な投与量をプロテアソーム阻害剤と組み合わせて(互いに少なくとも1週間の範囲内の別々の投与であってもよい)投与することによって達成され、当該多様な投与量は、結果として一投与量あたり少なくとも 2,300 ng/mL×時間の17-AAGに関するAUCtotalをもたらすが、19,000 ng/mL×時間を超えない。ある実施態様において、1サイクルあたり4回の投与で投与され、各々の投与量は少なくとも 100 mg/m2 又は150 mg/m2 であり、さらに各々の投与の間に3日間−4日間の期間が存在する。他の実施態様において、1サイクルあたり4回の投与で投与され、1週あたり2回の投与で当該3週間サイクルの内最初の2週間投与される。
【0045】
インビボで17-AAG又は17-AGに変換される(プロドラッグ)17-AAG又は17-AG以外の化合物を投与することができる。あるタイプのプロドラッグは、当該ベンゾキノン環がヒドロキノン環に還元されているが、当該被験者において代謝されてベンゾキノン環に戻されるものである。17-AAGプロドラッグの1つの具体的な例は、17-アリルアミノ-18,21-ジヒドロ-17-デメトキシゲルダナマイシン(Adams et al., 2005)である。本発明の方法は従って、ある実施態様においては、前記治療を必要とする患者におけるMMの治療方法であって、当該方法がMMを有する患者への多様な投与量の17-AAG若しくは17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのプロドラッグを少なくとも3週間を超える期間投与することを含み、当該多様な投与量が結果として一投与量あたり少なくとも 5,000 ng/mL×時間の17-AGに関するAUCtotalをもたらすが、18,000 ng/mL×時間 を超えない、前記方法であってもよい。ある実施態様において、1サイクルあたり4回の投与で投与され、各々の投与量は少なくとも 150 mg/m2 であって、さらに各々の投与の間に3日間−4日間の期間が存在する。他の実施態様において、1サイクルあたり4回の投与で投与され、1週間あたり2回の投与で当該3週間サイクルの内最初の2週間投与される。
【0046】
従って、本発明はその発明の範囲内に17-AAGのプロドラッグの使用を含み、“投与する”という用語はそれを必要とする当該患者への投与後にインビボで17-AAG又は17-AGへ変わる化合物の医薬的な相当量でのMMの治療を包含する。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製に関する従来の方法は、Wermuth, 2003 に記載される。
【0047】
プロテアソーム阻害剤は、プロテアソームによるタンパク分解を阻害するあらゆる化合物、17-AAG、17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのいずれのプロドラッグと組み合わせてもMMを患う被験者の治療に効果的なあらゆる化合物又はボルテゾミブと実質的に同様のメカニズムによりその治療効果を発揮するあらゆる化合物である。ある実施態様において、プロテアソーム阻害剤は、抗悪性腫瘍薬であり哺乳類細胞の26Sプロテアソームのキモトリプシン様活性を有する可逆的な阻害剤である。プロテアソーム阻害剤は、天然又は合成であってもよい。適切な天然のプロテアソーム阻害剤としては、ラクタシスチン、エポキシケトン及びTMC-95環状ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。エポキシケトンの例としては、エポキソミシン及びエポネマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。適切な合成のプロテアソーム阻害剤としては、ペプチドアルデヒド及びペプチドビニルスルホンが挙げられるが、これらに限定されない。ペプチドアルデヒドの例としては、Z-Leu-Leu-Leu-al (MG132)、Z-Ile-Glu(Obut)-Ala-Leu-al (PSI) 及び Ac-Leu-Leu-Nle-al (ALLN) が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Kisselev and Goldberg (2001) 及び Richardson et al. (2003b) を参照のこと。プロテアソーム阻害剤の例としては、PS-519 (Shah et al. (2002))、NPI-0052 (Cusack et al. (2005))、ZL3VS (Kadlcikova et al. (2004))、AdaAhx3L3VS (Kadlcikova et al. (2004))、efrapeptin (Abrahams, et al. (1996)) が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、ペプチドアルデヒドはボロン酸で置換されるアルデヒド基を有しておりペプチドボロナートを形成する。ある実施態様において、ペプチドボロナートは、ジペプチドボロン酸、好ましくはボルテゾミブである。
【0048】
ボルテゾミブは哺乳類細胞の26Sプロテアソームのキモトリプシン様活性を有する可逆的な阻害剤である修飾型ジペプチジルボロン酸の抗悪性腫瘍薬である。ボルテゾミブの製造及び使用並びに適切な医薬配合物並びにその投与方法は、Adams et al. (1998, 2000, 2001, 2003, and 2004) 及び Gupta (2004) に教示されている。ボルテゾミブは商品名Velcade(登録商標)(Millennium Pharmaceuticals, Inc., Cambridge, MA)として市販で入手可能であり、少なくとも1つの前治療を受けて当該前治療後に疾患の進行を示したMM患者の治療に関して承認されている。ボルテゾミブを含む医薬配合物は、約 0.9 % の生理食塩水及び約 1.0 mg/mL のマンニトールを含んでいてもよい。ボルテゾミブの1回の投与量は少なくとも約 0.7 mg/m2 − 約 1.3 mg/m2 であってもよい。ボルテゾミブは注入によって投与されてもよく、全投与量が当該被験者に直接注射によって又は点滴静注によって3秒間−5秒間以内で注入される。
【0049】
治療を必要とする被験者は、本発明の目的のために、概してMMを患うヒトの患者であるが、本発明の方法は所定の特定の哺乳動物(ネコ、ウシ、イヌ、ウマなどを含む)に関して本明細書に記載されるAUCtotal又は他のPKパラメータ及びPDパラメータと等価であることを達成するための当該単位投与量の適切な調整と共に獣医学的目的のために実施することができる。薬学の当業者は、所定の種に適用できる換算因子を知っているか又はヒトの治療に関する投与量及びPKパラメータの本発明の開示から容易に割り出すことができる。しかしながら概して、当該方法はヒト被験者の利益になるように実施され、それらの被験者は概して以下の一つ以上を含むMMのいくつかの組織学的証拠を提示するであろう:血清中若しくは尿中のM−スパイク、30 % を超えるBM形質細胞増加症、貧血、腎不全、高カルシウム血症及び/又は溶解性骨病変。
【0050】
ある実施態様において、被験者はデューリーサーモンシステム(Durie-Salmon system)に基づいてステージIIIのMMと診断されており、これらの症状の一つ以上を提示する:ヘモグロビン値 < 8.5 g/dL、血清カルシウム値 > 12 mg/dL、進行型の溶解性骨病変(スケール3)、高いM−コンポーネント産生率(IgG値 > 7g/dL;IgA値 > 5g/dL;ベンス・ジョーンズタンパク > 12 g/24時間)。あるいは、被験者は国際病気分類基準(ISS)システムに基づきステージIIIのMMと診断されており、β-2ミクログロブリンの血清レベル > 5.5 g/dL を有する。
【0051】
他の実施態様において、被験者はデューリーサーモンシステム(Durie-Salmon system)に基づいてステージIIのMMと診断されているが、被験者はステージIIIのMMと診断されておらず、これらのいくつかの症状を有しているが全ての症状を有しているわけではない:ヘモグロビン値 > 10 g/dL、血清カルシウム値 ≦ 12 md/dL、骨X線、正常な骨格(スケール0)若しくは孤立性の骨の形質細胞腫のみ、低いM−コンポーネント産生率(IgG値 < 5g/dL;IgA値 < 5g/dL)。あるいは、被験者はISSシステムに基づきステージIIのMMと診断されているが、被験者はステージIIIのMMと診断されておらず、β-2ミクログロブリンの血清レベル < 3.5 g/dL かつ アルブミン ≧ 3.5 g/dL を有していない。
【0052】
他の実施態様において、患者は以下のMMの兆候又は症状の一つ以上を有している:高いレベルの血清Mタンパク(>3g/dL のような)及び/又は被験者からのBMサンプル中の 10 % を超える細胞が形質細胞である。他の実施態様において、患者のカルノフスキー(Karnofsky)一般状態(KPS)は、少なくとも 70 % である。他の側面において、治療前の患者のKPSは、少なくとも 60 %、50 %、40 %、30 %、20 % 又は 10 % である。ある側面において、患者のECOGは、少なくとも 0、1、2又は3である。
【0053】
17-AAG、17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグの治療的に有効な投与量及びプロテアソーム阻害剤の治療的有効量は、治療効果をもたらす被験者へ1治療サイクルを超えて各々の投与で組み合わせて投与されるそれぞれ17-AAG、17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのどちらか及びプロテアソーム阻害剤の量である。治療効果は、癌の進行速度又は癌の伝播速度がある程度の期間遅らせられるか又は停止されることであってもよい。何人かの患者において、治療効果はMMの部分的消失又は完全消失であってもよい。何人かの患者において、治療効果は1治療サイクルで達成される。他の患者において、治療効果は複数サイクルの治療後においてのみ達成される。しかしながら、当業者はすべてのMM患者がいずれの抗癌治療と同様に治療効果を達成するという保証が全くないこともあり得ることを十分に理解することができる。
【0054】
上述のとおり、ある実施態様において、各々の治療サイクルは3週間である。他の実施態様において、本明細書に記載されるAUCtotal又は他のPKパラメータ及びPDパラメータと等価であることが達成される限りは、2週間又は4週間(又は1ヶ月)のような他の治療サイクル回数を採用することができる。各々のサイクルで採用される単位投与量が1治療サイクルあたり少なくとも1回で最大で8回まで投与される。概して、当該投与量が1治療サイクルあたり2回−4回投与される。ある実施態様において、当該投与量が3週間の各々の治療サイクルの内2週間毎週2回投与される。例えば、第一の投与量の投与でサイクルを開始する場合、ある実施態様において、当該単位投与量が当該治療サイクルの初めの2週間で1回又は2回投与され、3週目の間は投与されない。ある実施態様において、当該投与量が各々の治療サイクルの1日目、4日目、8日目及び11日目に投与され、1日目が第一の投与量が投与される日である。
【0055】
17-AAGの各々の単位投与量は最大耐投与量(“MTD”)を超えない投与量であり、これは、当該治療方法を受けている6人の被験者の1人以下が対症療法に敏感に反応しない血液学的毒性又は非血液学的毒性を経験する最大の投与量として定義される。好ましくは、投与される17-AAGの量はMTDと同じ又はMTD未満である。好ましくは、投与される17-AAGの量は、結果として容認できない及び/又は扱いにくい血液学的毒性又は非血液学的毒性をもたらさない量である。好ましくは、MTDは1投与量あたり約 340 mg/m2 である。
【0056】
17-AAG若しくは17-AG又はどちらかのプロドラッグの単位投与量の治療的に有効な量は、本発明に従う投与の1回以上のサイクルの後に、結果として完全反応(CR)、部分的反応(PR)、最小反応(MR)、安定的疾患状態(StD)、血清モノクローナルタンパク(血清Mタンパク)の減少又は当該被験者のBMにおける形質細胞の減少(Blade et al., 1998)を、少なくとも3週間、6週間、2ヶ月間、6ヶ月間、1年間又は数年間といった期間もたらす量である。ある実施態様において、17-AAGの投与は結果として、MM患者において血清Mタンパク及び/又は尿中Mタンパクの減少、BM形質細胞増加症、貧血の緩和、腎不全の緩和、高カルシウム血症の緩和及び/又は溶解性骨病変の減少/緩和をもたらす。ある実施態様において、何人かの患者はCRから再燃しない又は当該疾患の進行の顕著な遅延を経験する。
【0057】
1単位投与量で投与される17-AAGの量は、一投与量あたり 100 mg/m2 − 340 mg/m2 であってもよい。17-AAGが3週間毎に2週間毎週2回投与される場合には、投与される17-AAGの量は一投与量あたり 100 mg/m2 − 340 mg/m2 である。好ましくは、投与される17-AAGの量は、一投与量あたり 150 mg/m2 − 340 mg/m2 である。投与される17-AAGの量はまた、一投与量あたり 220 mg/m2 − 340 mg/m2 であってもよい。当業者は、17-AAG又は17-AGのプロドラッグ若しくは17-AG自身の単位投与量が17-AAGに関して本明細書に提供される投与量並びに17-AAG及び17-AGに関して提供されるPKパラメータ並びに当該プロドラッグ又は17-AGの分子量並びに当該プロドラッグ又は17-AGの相対的なバイオアベイラビリティから計算することができることを理解することができる。
【0058】
本発明の方法はまた、1治療サイクルあたりに投与される17-AAGの量の形で記載されてもよい。1サイクルあたりの量は概して 400 mg/m2 を超え、さらにより通常は 600 mg/m2 を超える。概して、1サイクルあたりの量は少なくとも 880 mg/m2 である。種々の実施態様において、投与される17-AAGの量は少なくとも1治療サイクルあたり 600 mg/m2 − 1,360 mg/m2;1治療サイクルあたり 880 mg/m2 − 1,360 mg/m2;及び 1治療サイクルあたり 1,100 mg/m2 − 1,360 mg/m2 である。
【0059】
プロテアソーム阻害剤がボルテゾミブである際には、1回の投与量で投与される量は一投与量あたり 0.7 mg/m2 − 1.3 mg/m2 であってもよい。1回の単位投与量で投与される量は一投与量あたり 0.7 mg/m2、1.0 mg/m2 又は 1.7 mg/m2 であってもよい。ボルテゾミブが3週間毎に2週間毎週2回で投与される際には、投与される量は一投与量あたり 0.7 mg/m2 − 1.3 mg/m2 であってもよい。本発明の方法はまた1治療サイクルあたりに投与されるボルテゾミブの量の形で記載することもできる。1治療サイクルあたりの量は概して、2.8 mg/m2 を超え、より通常は 4.0 mg/m2 を超える。概して、1サイクルあたりの量は、少なくとも 5.2 mg/m2 である。あるいは、投与されるボルテゾミブの量は、1治療サイクルあたり少なくとも 2.8 mg/m2 − 5.2 mg/m2 又は 4.0 mg/m2 − 5.2 mg/m2 である。
【0060】
上述のとおり、単位投与量の投与頻度は毎週1回又は毎週2回である。本発明の方法のある実施態様において、当該医薬配合物は3週間毎又は4週間毎に2週間毎週2回静脈内に投与される。ある実施態様において、患者は治療に関連する毒性を回避する又は改善するために前治療医薬を投与される。実例となる前治療医薬の例は以下に記載される。本発明の方法のある実施態様において、17-AAG若しくは17-AG又はどちらかのプロドラッグの投与が各々のサイクルの1日目、4日目、8日目及び11日目に行われ、当該サイクル期間は3週間である。17-AAGは概して、少なくとも30分間、60分間、90分間又は120分間の間に注入される点滴静注によって投与される。2.4 m2 を超える体表面積(“BSA”)を有する患者に関しては、投薬は2.4 m2 の最大BSAを用いて本明細書の方法に従って計算することができる。
【0061】
本発明の方法のヒト臨床試験において、以下の投与レジメンがいずれの治療される患者においても投与量を制限する毒性(“DLT”)に達することなく採用されている:1投与あたり275 mg/m2 の17-AAGを3週間の内2週間毎週2回(21日間のサイクル期間で、1日目、4日目、8日目及び11日目)。
【0062】
上述のとおり、17-AAGが投与される後、それ自体で抗癌活性を有する主要な代謝産物である17-AGが当該被験者において出現する。17-AAG及び17-AGは従って各々、そして共に、本発明の方法の治療効果に寄与する。治療的に有効な投与量及び17-AAGの投薬レジメンは、本明細書に記載されるとおりの当該被験者における17-AAG及び/又は17-AGの曲線下面積(AUCtotal)を実現するものである。種々の治療的に有効な投与量及び投薬レジメンが以下の実施例で明らかにされる。本発明によって提供される17-AAG及び/又は17-AGの治療的に有効な投与量及び投薬レジメンはまた、終末半減期(t1/2);クリアランス(CL);及び/又は消失相又は定常状態における分布容積(Vz及び/又はVss)の形で記載することもできる。
【0063】
本発明の治療方法の治療効果は、治療の開始から3週間、6週間、12週間、18週間又は24週間ですぐに反応する被験者において観察され得る。ある実施態様において、当該治療の治療効果は、当該患者の血清タンパクの減少及び/又はBUNの減少又は血清カルシウムの減少である。種々の実施態様において、当該減少は少なくとも 25 % ;少なくとも 50 % − 80 %;少なくとも 90 % ;及び、100 % である。血清Mタンパクの減少は例えば、血清タンパクの電気泳動法又は免役固定法技術によって判断することができる。パーセント減少は、治療期間後に測定され次に治療の直前に測定された当該患者における血清Mタンパク、BUN又はカルシウムのレベルと比較した当該患者における血清タンパク、BUN又はカルシウムのレベルである。血清タンパクは、血清中に高いレベルで存在する際に当該被験者がMMを患っていることを示唆するタンパクである。当該血清タンパクの例としては、血清Mタンパク(血清Mパラプロテインとしても知られる)、β2-ミクログロブリン、L鎖及び総タンパクが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明によって実現することができる他の治療効果は、以下の一つ以上であってもよい:BM形質細胞増加症の減少、貧血の緩和、腎不全の緩和、高カルシウム血症の緩和及び/又は溶解性骨病変の減少/緩和。他の治療効果は、少なくとも約 10 %、少なくとも約 20 %、少なくとも約 30 %、少なくとも約 40 % 又は少なくとも約 50 % の当該患者のKPSの改善である。他の治療効果は、少なくとも約1、少なくとも約2又は少なくとも約3の当該患者のECOGの改善である。
【0065】
理想的には、本発明の実施は結果的に扱いにくい血液学的毒性又は非血液学的毒性をもたらさない。回避されるべき血液学的毒性の例としては、グレード4の好中球減少症、グレード4の血小板減少症及び/又はグレード4の貧血が挙げられる。非血液学的毒性の例としては、いずれのグレード3以上の非血液学的毒性(グレードの注射部位反応、脱毛症、食欲不振、疲労を除く)、グレード3以上の悪心、下痢及び/又は嘔吐(最大限の医療介入及び/又は予防の使用にもかかわらず)、及び/又は薬剤関連性の毒性からの長期の回復に起因する4週間を超える治療遅延が挙げられる。当業者は、種々の毒性が癌患者において起こるかもしれず、本発明の方法が当該毒性の発生を削減する又は除去する利益を提供することを理解することができる。
【0066】
当該医薬配合物がアナフィラキシー反応を引き起こすかもしれない追加的な化合物(Cremophor(登録商標)のような)を含む場合には、(a)ロラタジン(loratidine)又はジフェンヒドラミン、(b)ファモチジン、及び(c)メチルプレドニゾン又はデキサメタゾンのような追加的な医薬を当該アナフィラキシー反応を回避し又は低減するために投与することができる。
【0067】
本発明はまた、種々の実施態様において、プロテアソーム阻害剤並びに例えば、Thalomid(登録商標)、Aredia(登録商標)及びZometa(登録商標)又はRevlimid(登録商標)(レナリドマイド)であってもよい第3の抗癌化合物と組み合わせて17-AAG若しくは17-AG又はどちらかのプロドラッグを投与することによるMMの治療方法を提供する。当該他の抗癌剤又は薬剤は、当業界で現在採用される単位投与量及び投薬レジメンで投与することができる。
【0068】
本発明は少なくとも1つの従来の抗癌治療レジメンに失敗した、すなわち難治性MM又は再発性難治性MMを有するMM患者を治療するために使用することができる。これらの従来の抗癌治療の例としては、単独療法(単一の薬剤治療)又は以下の治療と抗癌剤:化学療法、幹細胞移植、Thalomid(登録商標)、Velcade(登録商標)及びRevlimid(登録商標)、の併用療法が挙げられるが、これらに限定されない。化学療法の例としては、メルファランとプレドニゾンの組み合わせ(MP)での治療、VADでの治療又は、アルキル化剤単独又はシクロホスファミド+エトポシド若しくはエトポシド、デキサメタゾン、ドキソルビシンの組み合わせのような他の薬剤と組み合わせた治療が挙げられる。
【0069】
本発明の実施に有効であってもよい診断及び実験室の方法及び検査は、当業者によく知られている。例えば、Pagana and Pagana, Mosby's Manual of Diagnostic and Laboratory Tests, 2d Ed., Mosby-Year Book, 2002 及び Jacobs & DeMott Laboratory Test Handbook, 5th Ed., Jacobs et al. (eds), Lexi-Comp, Inc., 2001(各々は、参照によって本明細書に取り込まれる)を参照のこと。血清中の遊離κL鎖濃度及び遊離λL鎖濃度は、Freelite(登録商標)(The Binding Site Inc., Birmingham, United Kingdom)を使用して測定することができる。
【0070】
本発明の方法で有用な活性医薬成分(“API”、17-AAG、17-AG、プロドラッグ、プロテアソーム阻害剤、他の抗癌化合物など)は、適切な固体形態又は液体形態で経口的な投与用又は静脈内投与用に処方することができる。参照によって本明細書に取り込まれる Gennaro, ed., Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 2003)を参照のこと。当該APIは例えば、溶液、エマルション、懸濁液又は経腸的な投与若しくは非経口的な投与に適したいずれの他の形態用の無毒性の医薬的に許容されるキャリア又は賦形剤と共に構成することができる。医薬的に許容されるキャリアの例としては、水及び液化形態で製剤を製造する際の使用に適した他のキャリアが挙げられる。さらに、補助的な安定化剤、増粘剤及び着色剤が使用されてもよい。
【0071】
本発明の方法において有用なAPIは、マイクロカプセル、ナノ粒子又はナノ懸濁液として処方されてもよい。当該配合物用の一般的なプロトコルは例えば、Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy by Max Donbrow, ed., CRC Press (1992) 及び Bosch et al. (1996), De Castro (1996), 及び Bagchi et al. (1997)に記載される。体積に対する表面積の割合の増加によって、これらの配合物は17-AAG又は他の比較的不溶性のAPIにとりわけ適している。
【0072】
17-AAGは、ビタミンEを含有するエマルションで又はPEG化されたその誘導体で処方することができる。当該賦形剤を含有する配合物への一般的なアプローチは、Quay et al.(1998)及び Lambert et al.(2000)に記載される。17-AAGは、エタノールを含む(好ましくは、1% w/v 未満)水溶液に溶解することができる。ビタミンE又はPEG化されたビタミンEが加えられる。次にエタノールが除去されて静脈内経路又は経口経路の投与用に処方することができるプレエマルションを形成する。
【0073】
本発明の方法で有用な医薬配合物の他の調製方法は、17-AAGをリポソーム中に被包することであってもよい。薬物送達ビークルとしてのリポソームの形成のための方法は、当業界でよく知られる。本発明に適合性の適切なプロトコルとしては、パクリタキセルに関して Boni et al. (1997), Straubinder et al. (1995) 及び Rahman et al. (1995) により記載されたもの、並びにエポチロン, mutatis mutandis に関して Sonntag et al. (2001) により記載されたものが挙げられる。当該配合物中に使用されてもよい種々の脂質の内、ホスファチジルコリン及びポリエチレングリコール-誘導体化されたジステアリルホスファチジル-エタノールアミン(distearyl phosphatidyl-ethanoloamine)が注目に値する。
【0074】
単一剤形又は単位剤形を製造するために当該キャリア材料と組み合わせてもよい17-AAG又は他のAPIの量は、治療される当該被験者及び特定の投与形態に応じて変わる。例えば、静脈内用途用の配合物は、約1mg/mL − 約 25 mg/mL の範囲の量の17-AAGを含み、好ましくは約5mg/mL −、さらにより好ましくは約 10 mg/mL − である。静脈内投与用配合物は概して、使用の前に、注射用蒸留水(WFI)、生理食塩水又は5% デキストロース溶液で約2倍−約30倍に希釈される。多くの場合、当該希釈度は約5倍−約10倍である。
【0075】
本発明の方法のある実施態様において、17-AAGは、Zhong et al.(2005)に開示されるとおり、(i)エタノールである第一の成分;(ii)ポリエトキシレート化ヒマシ油である第二の成分;及び(iii)プロピレングリコール、PEG300、PEG400、グリセロール及びそれらの組み合わせから選択される第三の成分、を含むビークル中に溶解される17-AAGを含む薬剤溶液配合物として処方される。
【0076】
使用されてもよい17-AAGの他の配合物は、Tabibi et al.(2004)で教示されるとおり、ジメチルスルホキシド(“DMSO”)及び卵レシチン(卵リン脂質)を基盤とするものである。しかしながら、DMSOのいくつかの特性(匂い、患者の副作用)に起因して、当該配合物は本明細書で教示されるDMSOを含まない配合物よりもより好ましくない。
【0077】
本発明の方法において採用されてもよい17-AAGのための他の配合物は、Ulm et al. (2003), Ulm et al. (2004), Mansfield et al. (2006), Desai et al. (2006) 及び Isaacs et al. (2006) に記載される。
【0078】
他の実施態様において、当該医薬配合物は投与前に無菌のWFI、USPで1:7に希釈することができる(6の割合の無菌WFIに対して1の割合の無希釈の薬剤製品)。希釈は、無菌状態管理下で行われる。最終的な希釈された薬剤製品濃度は、例として17-AAGを使用して、約 1.43 mg/mL、約 2.00 mg/mL 又は約 10.00 mg/mL のように少なくとも 1.00 mg/mL である。
【0079】
BSA及び当該被験者へ割り当てられる投与量に応じて、17-AAG又は他のAPIの投与量は、当該混合バッグへ加えられる薬剤製品の種々の容積を必要とする。オーバーフィル(overfill)を計算することができ、さらに当該投与セットにおける損失を補填するために採用することができる。好ましくは、当該希釈された薬剤製品を含有する医薬配合物は中性pHであり、当該溶液は約 600 mOsm の高浸透圧性である。当該医薬配合物は、遮光して -20 ℃ で保管することができる。薬剤製品は混合前に室温に達することが許容され、次に穏やかな転置により混合される。希釈後、当該薬剤製品は室温で約10時間まで安定なはずである(1:7の希釈で)。
【0080】
要約的な様式及び詳細に上記で記載されてきた本発明は、以下の実施例で説明される。
【実施例】
【0081】
実施例1:ボルテゾミブと組み合わせた17-AAGでの多発性骨髄腫患者の治療
本発明の方法を、非盲検の投与量漸増臨床試験で試験した。当該試験を、3週間続く投薬サイクルの1日目、4日目、8日目及び11日目にボルテゾミブと共投与される60分間を超えるIV注入によって投与して17-AAGのMTDを確立するように設計した。本試験の投与量漸増成分をその推奨投与量の約 50 % で投与されるボルテゾミブで開始し、17-AAGの開始投与量をその単剤投与量の 50 % をわずかに下回る投与量に先の配合物(100 mg/m2)を用いて設定した。次に各々の薬剤の投与量を、当該組み合わせに関するMTDを確認することができるまで段階的に増量した。
【0082】
疾患反応の評価を、次の2回の治療サイクル毎に(約6週間毎)行った。安定した患者又は反応する患者における抗癌効果の判定は、標準化された骨髄腫反応評価システムに従ってなされた客観的な腫瘍評価を基盤とした。
【0083】
ベースラインの画像を基盤とする腫瘍評価を治療開始前28日以内に行い、その後6週間毎に(約2サイクル毎)に再評価した。反応性腫瘍(CR又はPR)を有する全ての患者を反応の初めての記述の6週間後に検査して当該反応を確認した。使用した反応の判定基準は、Blade et al.(1998)に従った。
【0084】
薬物動態学的(PK)及び薬力学的(PD)な試料採取は、初めの治療サイクルの期間にのみ行った。薬剤関連性の重篤有害事象(SAE)及び/又はグレード4の毒性の事象の際に、追加的なPKサンプルを採取した。
【0085】
当該試験に登録されるMM患者は、少なくとも2つの従来の抗癌治療レジメンに失敗した人々であった。登録判定基準は:(1)患者が少なくとも18歳である;(2)患者が 70 % 以上のKPS一般状態を有している;(3)患者がMMの組織学的証拠を有しているが必ずしも測定可能な疾患を有していない、しかしながら疾患が治療開始前28日以内に評価されなければならない;(4)患者が、いずれの従来の化学療法、外科手術又は放射線治療の全ての有害事象に関して、NCI CTCAE(v. 3.0)グレード2以下と判定された;並びに(5)患者が17-AAGの投与の10日以内に以下の検査結果を有していた:ヘモグロビン≧8g/dL、好中球絶対数≧1.5×109/L、血小板数≧75×109/L、血清ビリルビン≦正常上限(ULN)×2、AST≦2.5ULN及び血清クレアチニン≦2×ULN であった。
【0086】
患者を、表1に記載されるとおりのKPS一般状態スケール及び判定基準に従ってグレード付けした。患者が事前の神経障害、妊娠、授乳、つい最近行われた化学療法などのような状態を有している場合には、患者を当該試験から除外した。登録に関して適格であるために、患者はまたいくつかの血液学的条件を満たしていなければならなかった。
【0087】
17-AAGは血清中で高度にタンパク結合するが(ヒト血液を用いたインビトロアッセイで約 95 %)、薬剤が結合する血清タンパク及び結合の親和性は知られていない。高度にタンパク結合することが知られる薬剤を受けている患者を、当該試験に登録されている間、綿密な臨床モニタリングを受けさせた。インビトロ研究は、17-AAGの代謝にチトクロムp450が関与することを示す。17-AAG及びチトクロムp450−3A4の基質、阻害剤又は誘導物質である薬剤での正式な薬剤−薬剤相互作用研究は行われていない。17-AAGとのいずれの医薬の併用に対する禁忌は全く存在しないけれども、17-AAGを、やはり高度にタンパク結合する薬剤(例えば、ワルファリン)及びチトクロムp450−3A4の基質、阻害剤又は誘導物質である薬剤と組み合わせて慎重に使用した。当該試験に登録される妊娠の可能性がある女性において、ホルモン避妊薬は使用しなかった。当該試験の継続期間全体を通して、他の治験薬は全く許可しなかった(初めの投与の3週間前から治療評価の終点まで)。
【0088】
PK評価は以下の試験を含んでいた:親化合物及びその一次代謝産物の血漿濃度測定用の血液サンプルを、1回目の17-AAGの投与及び4回目の17-AAGの投与でのみ(1日目及び11日目)採取した。採取されたPKサンプルの総数は、約 115 mL の全血(テーブルスプーンで7−8杯)であった。患者が潜在的に薬剤関連性のSAEを経験した場合には、追加的なPKサンプルを採取した。血液は、留置カテーテルを使用して注入部位と反対側の腕から採取して何度も注射するのを避けた。17-AAGのサンプルに関して、5mLの血液を、抗凝血剤としてヘパリンを含む真空チューブ中に採取した。当該血液チューブを数回転置し、当該チューブをウェットアイス中に直ちに置いて血漿の分離をペンディングした。カテーテルが血液採取に使用された場合には、カテーテル中の当該流体を各々のサンプル採取前に完全に回収し、廃棄した。血漿サンプルを、採取及び遠心分離の間ウェットアイス上に保持した。血漿サンプルを、−70 ℃ で凍結する前に2つの冷凍バイアルに分けた。17-AAG及びその一次代謝産物17-AGの血漿濃度を、バリデートされた(validated)LC/MS法によって測定した(Egorin et al, 1998)。
【0089】
PD評価は以下の試験を含んでいた。(1)臨床的相関:興味の対象となる特定の毒性の発現(例えば、重症度、持続期間及び可逆性)を、PKパラメータ(例えば、クリアランス、曝露量(exposure)、消失半減期、最大血漿濃度及び標的血漿濃度を超える時間)を比較した。これらは、肝毒性及び胃腸毒性を含んでいた。(2)多発性骨髄腫細胞:(i)MM細胞におけるIL−6R、インスリン様増殖因子レセプター1(IGF−1)の表面発現;(ii)MM細胞におけるリン酸化AKT、Akt、Hsp90及びHsp70の総発現;及び(iii)薬剤感受性 対 薬剤耐性に関する他の潜在的なバイオマーカーを確認するための遺伝子発現プロファイリング。MM細胞を、ベースライン(初めの試験薬剤投与前3週間まで)で、17-AAG及びボルテゾミブの4回目の注入後3時間−4時間(11日目)で、並びに治療の終点の後(又は、進行性疾患の時点)におこなわれる骨髄(BM)吸引物から精製した。MM細胞を電磁ビーズ技術を使用してCD138発現に基づいてBM吸引物から精製し、フローサイトメトリー分析によってCD138+ MM細胞が 95 % を超えることを確認した。フローサイトメトリー分析でフルオレセインチオシアナート(FITC)-抱合型抗ヒトIGF−1Rモノクローナル抗体(R&D Systems, Minneapolis, MN)を使用してIGF−1R表面発現を評価した。免疫ブロット分析でリン酸化AKT、Akt、Hsp90及びHsp70の総レベルを評価した。(3)末梢血単核球:PBMCを取得し(1日目及び11日目の治療前及びボルテゾミブの静脈内ボーラスの4時間後)、ウェスタンブロットによりHsp70、Hsp90及び表示されるとおりの他のタンパクの変化を試験した。PBMCの単離のために、血液を保存料なしのヘパリン中に採取し、PBMCをFicoll-Paque密度勾配遠心分離によって単離した。(4)プロテアソーム機能のパーセント阻害(20Sプロテアソーム活性の測定によって評価される)を、Lightcap et al (2000) の方法に従って評価した。全血可溶化液を、1日目及び11日目の、注入前、ボルテゾミブのIVボーラスの1時間後、4時間後及び24時間後に取得した。(5)血漿:全血(1つの時点あたり8cc)を、EDTAを含むチューブ中に採取した。
【0090】
治療終点の評価を、以下のとおり行った。計画された治療期間は、24週間(8サイクル)であった。進行性疾患又は容認できない治療に伴う毒性がない限り、患者を治療した。当該試験薬剤の少なくとも1回投与を受けていずれかの理由(死亡を除く)で治療を中止した全ての患者で治療終点の評価を行った。当該評価は17-AAGを最後に受けた後28日間まで行われ、体重測定及びバイタルサイン測定を含む身体検査、KPS一般状態の記録、血液学、凝固及び化学/電解質測定、尿検査、患者の現在の投薬の評価並びに患者の進行中の臨床有害事象(もしあれば))を含んでいた。腫瘍評価(骨髄腫の実験室検査、骨髄外疾患の評価、BM吸引物及び他のX線検査的ステージ付け(radiographic staging)(適切な場合)を、前回の評価が退薬の4週間よりも前に行われていた場合に限りその時点で行った。
【0091】
ボルテゾミブ(商業的に入手した)を、急速(3秒間−5秒間)注射として投与される漸増投与量(計算される mg/m2)で3週間毎に2週間毎週2回で静脈内投与した。ボルテゾミブは、その添付文書(参照によって本明細書に取り込まれる)に従って投与した。ボルテゾミブの開始投与量は 0.7 mg/m2 であった;投与量を観察される毒性に基づいて段階的に増量した。当該投与量を、当該個体群(1.3 mg/m2)において単剤治療用のその推奨投与量を超えて増量しなかった。
【0092】
17-AAGを、3週間毎に2週間毎週2回(1日目、4日目、8日目及び11日目)漸増投与量で(計算された mg/m2)前治療(pre-medication)後60分を超えて注入した。体表面積が 2.4 m2 を超える患者に関しては、投薬を 2.4 m2 の最大BSAを使用して計算した。
【0093】
17-AAGの調製及び投与は以下のとおりであった。17-AAGを、30 % プロピレングリコール、20 % Cremophor(登録商標)EL 及び 50 % エタノールに 10 mg/mL の濃度になるようにバイアル中で溶解した。薬剤製品は、20 mm の仕上げ(finish)を有する 20 mL の1型透明ガラスバイアル(200 mg/バイアル で含む)で入手可能であった。当該バイアルは、灰色の 20 mm のテフロン(登録商標)コートした血清栓及び 20 mm のフリップオフの(flip-off)白色のラッカー塗装した押し上げ式のふたで閉じられていた。それを投与前に無菌のWFI、USP(6の割合の無菌のWFIに対して1の割合の無希釈の薬剤製品)で1:7に希釈した。希釈は、無菌状態管理下で行った。最終的な希釈された薬剤製品は、約 1.43 mg/mL の濃度を有していた。17-AAGは、ガラス真空容器又は適合性の非−PVC、非−DEHP(ジ(2-エチルヘキシル)フタラート)IV混合バッグのどちらかを使用して調製した。両方のシステムともに、投与セット及びインラインの 0.22 μm フィルター又はそのようなフィルターを含む増設セットの使用のどちらかを含む非−PVC、非−DEHPを必要とする。17-AAGの光感受性に起因して、遮光が推奨される。
【0094】
ガラス採取ユニット用に適合性の供給物の例としては、Baxter 1A8502(又は、等価物)、Baxter 2C1106 の使用又は 0.22 μm の空気除去フィルター(Baxter 1C8363 又は等価物)を有する拡張セットを備える等価なIV投与セットが挙げられる。非−PVC混合バッグ、非−DEHP混合バッグに適合性の混合バッグは、中身が空であるか又は 250 cc のWFIを前もって充填しておいてもよい。適合性混合バッグの例としては、Excel(250 cc のWFI;ポリオレフィンでできている)が挙げられる。
【0095】
体表面積及び個々の患者に割り当てられた投与量に応じて、17-AAGの投与量は当該混合バッグに加えられる薬剤製品の種々の容積を必要とした。オーバーフィル(overfill)を計算して当該投与セットにおけるいずれの損失をも補填した。
【0096】
上述のとおり、17-AAGを3週間毎に2週間毎週2回60分間を超えて静脈内に投与した。運搬される総投与量は、最も近いミリグラムの概算で表した。
【0097】
前薬物治療は、以下の通り行った。全ての患者を、17-AAGの各々の注入前に前治療した。適切な前治療レジメンを、潜在的なCremophor(登録商標)誘導性過敏症反応の既往歴並びに17-AAGでの治療後に観察される過敏症反応の種類及び重症度に基づいて各々の患者に関して使用した。標準的な前治療レジメンは、17-AAGの注入の前に、ロラタジン(loratidine)10 mg p.o.、ファモチジン 20 mg p.o. 及び 30分間のメチルプレドニゾロン 40 mg − 80 mg IV又はデキサメタゾン 10 mg − 20 mg IVのどちらかで前治療することであった。抗ヒスタミン剤及び副腎皮質ステロイド剤、投与経路並びに17-AAGの注入前の投与量の選択は治験責任医師(investigator)の裁量に委ねられていたが、他のCremophor(登録商標)含有製品(例えば、Taxol(登録商標)(パクリタキセル)のような)に関する予防と同様であった。患者がプレドニゾンの併用を受けている場合には、副腎皮質ステロイド剤の投与量を下げた。高投与量の前治療レジメンは、17-AAGの注入前に少なくとも30分前に、ジフェンヒドラミン 50 mg IV、ファモチジン 20 mg IV及びメチルプレドニゾロン 80 mg IV又はデキサメタゾン 20 mg IV(又は、注入前6時間及び12時間で各々 10 mg の経口投与量としての分割)のどちらかで前治療することであった。抗ヒスタミン剤及び副腎皮質ステロイドの選択は、治験責任医師(investigator)の裁量に委ねられていた。
【0098】
試験薬剤の投与量及びスケジュールは以下のとおりであった。患者を、3週間のサイクルにおいて1日目、4日目、8日目及び11日目に治療した。治療は、ボルテゾミブが静脈内急速(3秒間−5秒間)ボーラスとして投与され、続いて17-AAGが60分間を超えて点滴静注(IV)によって投与されることから構成されていた。17-AAGの注入は、投与体積に起因してより高投与量が必要とされる際には、90分間又は120分間まで延長した。最初の投与に関して、試験登録の直前にボルテゾミブ治療に失敗した患者を除いて、全ての患者に17-AAGをボルテゾミブと共に投与した。
【0099】
最初の患者コホートに、 0.7 mg/m2 の投与量のボルテゾミブ、続いて 100 mg/m2 の投与量の17-AAGの点滴静注を受けさせた(コホート1)。次の患者コホートを以下のとおりの漸増計画毎に登録した:1.0 mg/m2 の投与量のボルテゾミブ及び 100 mg/m2 の投与量の17-AAG(コホート2)、1.0 mg/m2 の投与量のボルテゾミブ及び 150 mg/m2 の投与量の17-AAG(コホート3)、1.3 mg/m2 の投与量のボルテゾミブ及び 150 mg/m2 の投与量の17-AAG(コホート4)、1.3 mg/m2 の投与量のボルテゾミブ及び 220 mg/m2 の投与量の17-AAG(コホート5)、1.3 mg/m2 の投与量のボルテゾミブ及び 275 mg/m2 の投与量の17-AAG(コホート6)並びに 1.3 mg/m2 の投与量のボルテゾミブ及び 340 mg/m2 の投与量の17-AAG(コホート7)。
【0100】
各々のコホートに3人の患者を割り当てた。投与量漸増判断に関して評価可能な(“評価可能な”は、ここでは3週間の期間で4回治療を受けている又は薬剤関連性の毒性が原因で中止されていることとして定義される)1人の患者のコホートにおいてDLTが全く観察されなかった場合には、次の投与量レベルで評価した。3人の評価可能な患者のうち1人がDLTを経験した場合には、当該コホートを6人の評価可能な患者まで増やした。コホートに入れられた6人の評価可能な患者の1人以上がDLTを経験した時には、MTDを超えていた;全てのさらなる増加(accrual)は前の投与量レベルであった。6人の患者のわずか1人がDLTを経験した場合には、次の投与量レベルで評価した。MTDが規定されたらすぐに、当該MTD投与量レベルで累積総数12人の患者に達するまで追加的な数の患者を登録した。18人の患者を、当該プロトコルに従って治療した。
【0101】
当該18人の患者の内、9人が男性で9人が女性であった。彼らの年齢の中央値は、63歳であった(44歳−81歳の範囲を有する)。彼らのサブタイプは、72 % がIgGであり 28 % がIgAであった。KPSの中央値は90であった(70−100の範囲を有する)。前化学療法の数は4であった(2−16の範囲を有する)。前化学療法としては、特にボルテゾミブ、サリドマイド、VAD/VdD、メルファラン及びレナリドマイドを含んでいた。前移植を有する患者の数は12人であった(67 %)。骨髄外疾患を有する患者の数は4人であった(22 %)。ベースラインのβ-2ミクログロブリンの中央値は3.7であった(1.4−9.7の範囲を有する)。MMの診断からの時間の中央値は61ヶ月であった(14ヶ月−238ヶ月の範囲を有する)。
【0102】
3人の患者(コホート1;患者101−103)に初めに 0.7 mg/m2 のボルテゾミブ(急速な3秒間−5秒間の静注として注入される)を投与し、次に 100 mg/m2 の投与量の17-AAG(1時間の点滴静注)を3週間毎に2週間毎週2回で(初めの治療サイクルの1日目及び11日目)投与した。患者は平均 3.3 サイクルの治療を受けた。DLTは当該3人の患者のいずれにおいても観察されなかった。当該3人の患者の内、治療後に、安定的な疾患が5サイクルの治療を受けた一人の患者において観察され(この投与量レベルで治療された全ての患者の 33 %)、進行性疾患が2人の患者において観察された(この投与量レベルで治療された全ての患者の 67 %)。
【0103】
3人の患者(コホート2;患者201、203及び204)に初めに 1.0 mg/m2 のボルテゾミブ(急速な3秒間−5秒間の静注として注入される)を投与し、次に 100 mg/m2 の投与量の17-AAG(1時間の点滴静注)を3週間毎に2週間毎週2回で(初めの治療サイクルの1日目及び11日目)投与した。患者は平均 11.3 サイクルの治療を受けた。DLTは当該3人の患者のいずれにおいても観察されなかった。当該3人の患者の内、治療後に、治療により結果として3人の患者全てに関してMRがもたらされた(この投与量レベルで治療された患者の 100 %)。当該3人の患者の内1人は、ボルテゾミブの投薬を受けたことがない患者であった。2人の患者に、少なくとも9サイクルの治療を受けさせた。1人の患者にこの投与量レベルの9サイクルの治療を受けさせ、次にMRが観察された10番目のサイクルに関して投与量レベル3まで増量した。当該患者は、少なくとも13サイクルの治療を受けた。
【0104】
8人の患者(コホート3;患者301−308)に初めに 1.0 mg/m2 のボルテゾミブ(急速な3秒間−5秒間の静注として注入される)を投与し、次に 150 mg/m2 の投与量の17-AAG(1時間の点滴静注)を3週間毎に2週間毎週2回で(初めの治療サイクルの1日目及び11日目)投与したが、以下の例外を有していた:3人は1.6時間−2時間の長さの注入であった(患者303、305及び306)。患者は平均 4.3 サイクルの治療を受けた(また、治療はまだ進行中である)。6.0サイクル以上の治療によって、1人の患者で、肝臓中に 1.4 cm の形質細胞腫を伴うグレード4の肝毒性、肝臓及び心臓でのアミロイドーシス並びにALT/ASTの上昇が確認された。関係のない原因(心アミロイドーシス)で引き起こされた1人の死亡があった。nCRが2人の患者で観察された。当該2人の患者の内1人は、ボルテゾミブの投薬を受けたことがない患者であった。MRが1人の患者で観察された。StD(SD)が2人の患者で観察された。当該2人の患者の内、1人がボルテゾミブの投薬を受けたことがなかった。1人の患者がPDを有していることが観察された。2人の患者は評価可能でなかった。
【0105】
4人の患者(コホート4;患者401−404)に初めに 1.3 mg/m2 のボルテゾミブ(急速な3秒間−5秒間の静注として注入される)を投与し、次に 150 mg/m2 の投与量の17-AAG(1時間の点滴静注)を3週間毎に2週間毎週2回で(初めの治療サイクルの1日目及び11日目)投与した。患者は平均 4.5 サイクルの治療を受けた(また、治療はまだ進行中である)。1人の患者がグレード3の膵炎を有していることが確認された(当該評価は、未だ未決定である)。3人の患者がMRを有していることが観察された。当該3人の患者の内、1人がボルテゾミブの投薬を受けたことがなかった。
これらの患者において観察された他の薬剤関連性の毒性は、グレード1−2のトランスアミナーゼの上昇、悪心、疲労、下痢、貧血、筋肉痛、発疹、注入性反応(infusional reactions)及び血小板減少を含んでいた。
【0106】
血液を、血漿薬剤濃度分析に関するPK解析用に以下のとおり採取した:投与前、注入最中の30分、注入の終点(EOI)の直前、並びに注入後 5分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間及び24時間。全ての患者に関して(患者 #301を除いて)、親化合物も代謝産物もどちらも4日目までに検出されず、各々の3週間サイクルの11日目にPKを繰り返した。
血漿プロファイルは、親化合物(17-AAG)の迅速な消失及びはるかによりゆっくりとした代謝産物(17-AG)の消失を示した。
【0107】
コホート1及び2の6人の患者全てに、100 mg/m2 の17-AAGを受けさせた。代謝産物は、6人の患者の1人(患者103)の72時間サンプル中に 10.2 ng/mL で検出された。図1及び図2は、これらの2つの投与量レベルに関する17-AAG及び17-AGに関しての血漿濃度プロファイルを示す。
注入の終点に続いて、17-AAG及び17-AGの血漿プロファイルは、1日目投与及び11日目投与に関して同様であった。11日目の注入の終点のサンプルを採取しなかったという事実を考慮すれば、当該曲線はおそらく区別不能であった。11日目の投薬前の血漿中に代謝産物濃度もまた検出された。
【0108】
血漿濃度 対 時間 の結果を、Kinetica version 4.3 ソフトウェア(Innaphase, Champs sur Marne, France)を用いて非コンパートメント法により解析して17-AAG及び17-AGの薬物動態を決定した。患者の結果の平均値及び統計的概要が、表2(17-AAG)及び表3(7-AG)に提示される。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0109】
表2及び表3の統計解析のデータは、親薬剤17-AAGに関するAUCtotalに対する17-AGに関するAUCtotalの平均割合が 82.5 ± 90.5 % であったことを示す。平均結合曝露量(average combine exposure)(17-AAG + 17-AG)は、100 mg/m2 の投与量に関して 7,513 ± 3,891 ng/mL×時間 であり、150 mg/m2 の投与量に関して 10,313 ± 6,076 ng/mL×時間 であった。図5は、代謝産物及び親薬剤に関するAUCtotalの相対値を示す。図6は、代謝産物及び親薬剤の一体としての総曝露量を示す。投与量と総曝露量との相関は極めて強いわけではなく、R2=0.682 であった。終末消失半減期は、17-AAGに関して 2.43 ± 0.9 時間であり、17-AGに関して 6.52 ± 1.74 時間であった。17-AAGの総全身性クリアランスは、51.58 ± 16.16 L/時間 又は 28.83 ± 8.51 L/時間/m2 であった。17-AAGに関する分布容積は:Vz=174.88 ± 68.2 L 又は 98.05 ± 36.41 L/m2 及び Vss=153.44 ± 62.3 L 又は 85.25 ± 31.60 L/m2 であった。
初めの4つの投与量コホートに関する結果に基づいて、ボルテゾミブは17-AAGの代謝へ何ら影響を及ぼさない。
【0110】
薬力学的解析
プロテアソーム機能の評価は、注入の終点で試験した4つの投与量レベルに関して 37 % − 50 % の減少を示した(図11)。形質細胞(CD138+)におけるアポトーシスの誘導及びAKTレベルの減少もまた観察された(図12)。AKTは、骨髄腫細胞において上方制御される骨髄腫細胞の増殖及び発達に重要なRas/Raf/MAPK細胞内経路上のシグナル伝達タンパクである。異常なミトコンドリア電位が、細胞のアポトーシス前に観察される(プログラム細胞死)。
【0111】
抗-骨髄腫活性が、ボルテゾミブの投薬を受けたことのない患者及びボルテゾミブ抵抗性の患者で観察された。患者201、204、307及び308の血清中及び尿中の種々のタンパクの減少が観察された。
患者201は、VAD、毎週のメルファラン−副腎皮質ステロイド及びサリドマイド(登録商標)と組み合わせたVADの前治療を有していた。疾患の進行がこれらの全ての前治療に関して観察された。患者201は9サイクルの治療を受け、結果としてMRがもたらされた。図7及び表4は、血清中M−スパイク、総IgA及び尿中M−タンパクの減少を示す。
【表8】

【0112】
患者204は、MP及びVelcade/Doxil/サリドマイド(登録商標)の前治療を有していた。患者204は、少なくとも6サイクルの治療を受け、結果としてMRがもたらされた。図8及び表5は、患者204における血清中M−スパイク及び総IgGの減少を示す。
【表9】

【0113】
患者307は、VAD、エトポシド/cytoxan、インターフェロン、サリドマイド(登録商標)及びボルテゾミブ/Doxil/サリドマイド(登録商標)の前治療を有していた。患者307は少なくとも8サイクルの治療を受けた。図9は、患者307における血清中M−スパイクの減少を示す。患者307に関する治療は結果としてnCRをもたらした。
患者308は、デキサメタゾン及びサリドマイド(登録商標)/デキサメタゾンの前治療を有していた。患者308は、少なくとも8サイクルの治療を受けた。図10は、患者308における血清中M−スパイク及び尿中M−タンパクの減少を示す。患者308に関する治療は結果としてnCRをもたらした。
【0114】
本発明は特定の実施態様に関して詳細に記載されてきたが、当業者は変更及び改良が本発明の範囲内及び精神の範囲内にあることを理解することができる。本発明はここに書面による記載を手段として記載されてきたが、当業者は、本発明を様々な実施態様で実施することができ、さらに上述の記載が以下の特許請求の範囲の限定でなく例示の目的のためであることを理解することができる。
【0115】
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【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】図1は、投与量レベル1(0.7 mg/m2 のボルテゾミブ及び 100 mg/m2 の17-AAG)関する17-AAG及び17-AGの血漿濃度 対 時間を示す(1日目及び11日目に関する組み合わせた平均値及び標準偏差(SD))。
【図2】図2は、投与量レベル2(1.0 mg/m2 のボルテゾミブ及び 100 mg/m2 の17-AAG)に関する17-AAG及び17-AGの血漿濃度 対 時間を示す(1日目及び11日目に関する組み合わせた平均値及びSD)。
【図3】図3は、投与量レベル3(1.0 mg/m2 のボルテゾミブ及び 150 mg/m2)に関する17-AAG及び17-AGの血漿濃度 対 時間を示す(1日目及び11日目に関する組み合わせた平均値及びSD)。
【図4】図4は、投与量レベル4(1.3 mg/m2 のボルテゾミブ及び 150 mg/m2 の17-AAG)に関する17-AAG及び17-AGの血漿濃度 対 時間を示す(1日目及び11日目に関する組み合わせた平均値及びSD)。
【図5】図5は、個々の患者に関する17-AAG及び17-AGのAUCtotalを示す。
【図6】図6は、個々の患者に関する総曝露量(AUCtotal(17-AAG)とAUCtotal(17-AG)の合計)を示す。
【図7】図7は、患者(患者201)における血清中M−スパイク、総IgA及び尿中M-タンパクのパーセント減少を示す。
【図8】図8は、患者(患者204)における血清中M−スパイク及び総IgGのパーセント減少を示す。
【図9】図9は、患者(患者307)における血清中M−スパイクのパーセント減少を示す。
【図10】図10は、患者(患者308)における血清中M−スパイク及び尿中M-プロテインのパーセント減少を示す。
【図11】図11は、0.7 mg/m2 のボルテゾミブ及び 100 mg/m2 の17-AAG;1.0 mg/m2 のボルテゾミブ及び 100 mg/m2 の17-AAG;1.0 mg/m2 のボルテゾミブ及び 150 mg/m2 の17-AAG;並びに、1.3 mg/m2 のボルテゾミブ及び 150 mg/m2 の17-AAG の投与後の20Sプロテアソーム活性のパーセント減少を示す(治療サイクル1、11日目)。
【図12A】図12Aは、17-AAGの4回注入後のCD138+骨髄腫細胞におけるアポトーシスの誘導及びAKTレベルの減少を示す。
【図12B】図12Bは、17-AAGの4回注入後のCD138+骨髄腫細胞におけるアポトーシスの誘導及びAKTレベルの減少を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当該治療を必要とする患者における多発性骨髄腫(MM)の治療方法であって:
治療的に有効な投与量の17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)又は17-アミノゲルダナマイシン(17-AG)又は17-AAG若しくは17-AGのどちらかのプロドラッグ及び治療的に有効な投与量のプロテアソーム阻害剤を前記患者へ投与するステップ、並びに
必要に応じてさらなる治療効果が全く得られなくなるまで前記投与ステップを繰り返すことを含む、前記治療方法。
【請求項2】
当該治療を必要とする患者におけるMMの治療方法であって:
それぞれの投与量が17-AAGの約 100 mg/m2 − 約 340 mg/m2 の範囲内又は17-AG若しくは17-AAGプロドラッグ若しくは17-AGプロドラッグの相当量である多様な投与量の17-AAG又は17-AG又はどちらかのプロドラッグ及び多様な投与量のプロテアソーム阻害剤を前記患者へ少なくとも2週間の期間を超える時間投与するステップを含み;
前記プロテアソーム阻害剤がボルテゾミブでありかつ当該それぞれの投与量が少なくとも約 1 mg/m2 である、前記方法。
【請求項3】
17-AAGの当該それぞれの投与量が約 150 mg/m2 − 約 340 mg/m2 の範囲の17-AAG又は相当量の17-AG又は17-AAG若しくは17-AGのプロドラッグである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記投与量が少なくとも2週間毎週2回投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記投与量が3週間の期間中に少なくとも2週間毎週2回投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
複数のサイクルの治療が患者へ施され、それぞれのサイクルの治療が前記投与量を3週間の期間中に少なくとも2週間毎週2回投与されることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
当該治療を必要とする患者におけるMMの治療方法であって:
治療的に有効な投与量のプロテアソーム阻害剤及び結果として一投与量あたり 約 2,300 ng/mL×時間 − 約 19,000 ng/mL×時間 の範囲の17-AAGのAUCtotalをもたらす治療的に有効な投与量の17-AAG又は17-AAGのプロドラッグを前記患者へ投与するステップを含む、前記方法。
【請求項8】
前記投与量が、17-AAGのCmaxが 9,600 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記投与量が、17-AAGのCmaxが 1,300 ng/mL を越えるような速度及び頻度で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記投与量が、17-AAGのCmaxが 1,800 ng/mL を越えるような速度及び頻度で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記投与量が、17-AAGのCmaxが 1,300 ng/mL を越えるが 9,600 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記投与量が、17-AAGのCmaxが 1,800 ng/mL を越えるが 9,600 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
当該治療を必要とする患者におけるMMの治療方法であって:
治療的に有効な投与量のプロテアソーム阻害剤及び結果として一投与量あたり 約 800 ng/mL×時間 − 約 17,000 ng/mL×時間 の範囲の17-AGのAUCtotalをもたらす治療的に有効な投与量の17-AG又は17-AGのプロドラッグを前記患者へ投与するステップを含む、前記方法。
【請求項14】
前記投与量の17-AGが、17-AAGのCmaxが 1,400 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記投与量の17-AGが、17-AAGのCmaxが 140 ng/mL を越えるような速度及び頻度で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記投与量の17-AGが、17-AAGのCmaxが 230 ng/mL を越えるような速度及び頻度で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記投与量の17-AGが、17-AAGのCmaxが 140 ng/mL を越えるが 1,400 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記投与量の17-AGが、17-AAGのCmaxが 230 ng/mL を越えるが 1,400 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
当該治療を必要とする患者におけるMMの治療方法であって:
治療的に有効な投与量のプロテアソーム阻害剤及び結果として一投与量あたり 約 3,500 ng/mL×時間 − 約 35,000 ng/mL×時間 の範囲の17-AAGと17-AGの総合体としてのAUCtotalをもたらす治療的に有効な投与量の17-AAG、17-AAGのプロドラッグ、17-AG又は17-AGのプロドラッグを前記患者へ投与するステップを含む、前記方法。
【請求項20】
前記投与量の17-AAG、17-AAGのプロドラッグ、17-AG又は17-AGのプロドラッグが、17-AAGのCmaxが 9,600 ng/mL 越えない又は17-AGのCmaxが 1,400 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記投与量の17-AAG、17-AAGのプロドラッグ、17-AG又は17-AGのプロドラッグが、17-AAGのCmaxが 1,300 ng/mL 越える又は17-AGのCmaxが 140 ng/mL を越えるような速度及び頻度で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記投与量が、17-AAGのCmaxが 1,800 ng/mL 越える又は17-AGのCmaxが 230 ng/mL を越えるような速度及び頻度で投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記投与量の17-AAG、17-AAGのプロドラッグ、17-AG又は17-AGのプロドラッグが、17-AAGのCmaxが 1,300 ng/mL 越えるが 9,600 ng/mL を越えない又は17-AGのCmaxが 140 ng/mL を越えるが 1,400 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記投与量が、17-AAGのCmaxが 1,800 ng/mL 越えるが 9,600 ng/mL を越えない又は17-AGのCmaxが 230 ng/mL を越えるが 1,400 ng/mL を越えないような速度及び頻度で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
当該治療を必要とする患者におけるMMの治療方法であって:
治療的に有効な投与量のプロテアソーム阻害剤及び結果として1.6時間 − 5.6時間の範囲の17-AAGの終末T1/2をもたらす治療的に有効な投与量の17-AAG又は17-AAGのプロドラッグを前記患者へ投与するステップを含む、前記方法。
【請求項26】
前記投与量の17-AAG又は17-AAGのプロドラッグが結果として一投与量あたり約 2,300 ng/mL×時間 − 約 19,000 ng/mL×時間の範囲の17-AAGのAUCtotalをもたらす、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
当該治療を必要とする患者におけるMMの治療方法であって:
治療的に有効な投与量のプロテアソーム阻害剤及び結果として3.7時間 − 9.1時間の範囲の17-AGの終末T1/2をもたらす治療的に有効な投与量の17-AG又は17-AGのプロドラッグを前記患者へ投与するステップを含む、前記方法。
【請求項28】
前記投与量の17-AG又は17-AGのプロドラッグが結果として投与量あたり約 800 ng/mL×時間 − 約 17,000 ng/mL×時間 の範囲の17-AGのAUCtotalをもたらす、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
当該治療を必要とする患者におけるMMの治療方法であって:
治療的に有効な投与量のプロテアソーム阻害剤及び結果として 56 L − 250 L の範囲の17-AAGの分布容積Vzをもたらす治療的に有効な投与量の17-AAG又は17-AAGのプロドラッグを前記患者へ投与するステップを含む、前記方法。
【請求項30】
前記投与量の17-AAG又は17-AAGのプロドラッグが結果として一投与量あたり約 2,300 ng/mL×時間 − 約 19,000 ng/mL×時間 の範囲の17-AGのAUCtotalをもたらす、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
当該治療を必要とする患者におけるMMの治療方法であって:
治療的に有効な投与量のプロテアソーム阻害剤及び結果として 13 L/時間 − 85 L/時間 の範囲の17-AAGのクリアランスをもたらす治療的に有効な投与量の17-AAG又は17-AAGのプロドラッグを前記患者へ投与するステップを含む、前記方法。
【請求項32】
前記投与量の17-AAG又は17-AAGのプロドラッグが結果として一投与量あたり 約 2,300 ng/mL×時間 − 19,000 ng/mL×時間 の範囲の17-AGのAUCtotalをもたらす、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
当該治療を必要とする患者におけるMMの治療方法であって:
治療的に有効な投与量のプロテアソーム阻害剤及び結果として 96 L − 250 L の範囲の17-AAGの分布容積Vssをもたらす治療的に有効な投与量の17-AAG又は17-AAGのプロドラッグを前記患者へ投与するステップを含む、前記方法。
【請求項34】
前記投与量の17-AAG又は17-AAGのプロドラッグが結果として一投与量あたり約 2,300 ng/mL×時間 − 19,000 ng/mL×時間 の範囲の17-AGのAUCtotalをもたらす、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ボルテゾミブのそれぞれの投与量が約 1.0 mg/m2 − 約 1.3 mg/m2 の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項36】
前記プロテアソーム阻害剤がペプチドアルデヒドである、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記ペプチドアルデヒドがペプチドボロナートである、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記ペプチドボロナートがジペプチドボロン酸である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ジペプチドボロン酸がボルテゾミブである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記投与ステップが結果として前記患者の末梢血単核球におけるHSP70の誘導をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記HSP70の誘導が前記投与ステップの一日後に観察可能である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記投与ステップが結果として前記患者の骨髄穿刺液細胞の中でCD138+細胞のアポトーシスの増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記CD138+細胞のアポトーシスの増加が前記投与ステップの4時間後に観察可能である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記投与ステップが結果として前記患者の骨髄穿刺液細胞における総AKTの減少をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記総AKTの減少が前記投与ステップの4時間後に観察可能である、請求項44に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【公表番号】特表2008−539273(P2008−539273A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509175(P2008−509175)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/016283
【国際公開番号】WO2006/119032
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(504269110)コーザン バイオサイエンシス インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】