説明

18β−グリチルレチン酸の誘導体

本発明は、18β-グリチルレチン酸の新規誘導体および該誘導体の合成方法に関する。本発明の誘導体を含む医薬組成物、およびレチノールデヒドロゲナーゼなどの酵素を阻害する際の該誘導体の使用を含めたそれらの医学的使用も、本発明の範囲内に含まれる。本発明は、過剰増殖性疾患、腫瘍、癌および光老化などの疾患の治療方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、18β-グリチルレチン酸(glycyrrhetinic acid)の新規誘導体および該誘導体の合成方法に関する。本発明の誘導体を含む医薬組成物、およびレチノールデヒドロゲナーゼなどの酵素を阻害する際の該誘導体の使用を含めたそれらの医学的使用も、本発明の範囲内に含まれる。本発明は、過剰増殖性疾患、腫瘍、癌および光老化などの疾患の治療方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
多くの疾患は、乾癬、魚鱗癬、癌および皮膚ウイルス感染を含めた細胞の過剰増殖に関連している。乾癬は、ケラチノサイトの過剰増殖および分化障害を特徴とする慢性の炎症性疾患である。現在、乾癬の症状は、患者へのレチノイドの局所投与を含むいくつもの方法で治療されている。尋常性座瘡および光老化などの他の疾患もレチノイド療法に対して反応を示し、それらの疾患はレチノイドが介する追加のメカニズムに関与すると考えられている。レチノイドは、癌の治療および発症の予防(例:急性前骨髄球性白血病の治療および腎移植患者における皮膚悪性腫瘍の発症の予防)の双方にも使用されてきた。
【0003】
現在のレチノイド療法は、ビタミンAのカルボン酸誘導体(特にレチノイン酸、内因的に活性な化合物)の効果に基づいて、標的遺伝子を転写段階で制御し得る。レチノイン酸およびレチノイドに曝すことによって、増殖性細胞は、細胞周期から離脱し、過剰となり得る300個の標的遺伝子のレチノイン酸誘発性転写に応答して分化する。これは、正常細胞の運命の再プログラミングを表す「強制」分化であり、指令的な分化として考えることができる。レチノイドを用いる治療は、乾癬、腫瘤の制御および光老化症状の軽減に効果的であることが見出されている。
【0004】
しかし、レチノイド治療の有利な効果にもかかわらず、その利点は、肝毒性、高脂血症、骨成長の阻害、皮膚過敏、光過敏性、脱毛症および催奇形性を含めた潜在する重篤な有害作用によって制限される(KemmettおよびHunter、Hospital Update、March 1988、1301〜1313頁)。これらの作用は、治療反応を得るのに必要な薬理量に関連している。レチノイド代替物質およびレチノイドを使用する代替方法の検討によれば、現在までその有害作用はわずかしか低減されていない。
【0005】
もっと最近では、過剰増殖性細胞に対するレチノイドの望ましい生理的効果、即ち増殖低減および/または分化増強ならびに光老化作用の後退は、過剰増殖性細胞または光老化を患っている細胞中のレチノイン酸の内因性レベルを低減することによっても達成され得ることが示唆されている(その全体を本明細書に組み込んだWO02/15920)。細胞中のレチノイン酸の内因性レベルの低減は、種々の方法で、例えばレチノールを細胞中に輸送するレチノール結合タンパク質受容体(RBPr)の活性を遮断することによって、またはレチノイン酸生合成に関与する経路中の酵素触媒反応のいずれかを阻害することによって達成できる。したがって、天然のレチノイド代謝経路は、レチノイドの内因性レベルの低減手段として対象とされ得る。
【0006】
レチノイン酸生合成での第1の、律速である段階には、レチノールデヒドロゲナーゼによる、レチノールのレチナールへの酸化が含まれる。次いでこのレチナールは、レチナールデヒドロゲナーゼによってさらにレチノイン酸へ酸化される。レチノールデヒドロゲナーゼの公知の阻害剤には、カルベノキソロン、フェニルアルシンおよびシトラールが挙げられる(WO02/15920)。
【0007】
カルベノキソロンは、18β-グリチルレチン酸の3-O-ヘミスクシネート誘導体である。18β-グリチルレチン酸[18β-グリチルレチン酸(glycyrrhetic acid)またはエノキソロンとも称される]およびその誘導体の18β-グリチルリジン酸(グリチルリジンとも称される)ならびにカルベノキソロンは、以下の構造:
【0008】
【化1】

18β-グリチルレチン酸: R=H
18β-グリチルリジン酸: R=GlcAβ1→2GlcAβ1(GlcA=D−グルクロン酸)
カルベノキソロン: R=CO(CH)CO
【0009】
を有する。18β-グリチルレチン酸および18β-グリチルリジン酸は、天然で生じる化合物であり、甘草[グリキリザウラレンシス(Glycyrrhiza uralensis)]から単離されている。これらの分子の利用は数も種類も多く、その利用には、例えば、抗潰瘍剤、抗炎症性剤、抗ホルモン剤および抗腫瘍剤ならびに工業用甘味剤としてのそれらの使用が挙げられる(Farinaら、Il Farmaco、1998、53、22〜32頁)。
【特許文献1】WO02/15920
【特許文献2】US5679644
【特許文献3】US5401733
【特許文献4】US5087619
【特許文献5】US5427916
【特許文献6】US4603146
【特許文献7】US3711602
【特許文献8】EP0267617
【特許文献9】WO87/03490
【非特許文献1】KemmettおよびHunter、Hospital Update、March 1988、1301〜1313頁
【非特許文献2】Farinaら、Il Farmaco、1998、53、22〜32頁
【非特許文献3】T.W.GreeneおよびP.G.M.Wutsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」(Wiley-Interscience、第2版、1991)
【非特許文献4】A.J.Fredericksson、B.C.Peterssonn、Dermatologies、1978、157、238〜244頁
【非特許文献5】Gollnick、Retinoids、1997、13、6〜12頁
【非特許文献6】Smithら、Journal of Clinical Oncology、1992、10、839〜864頁
【非特許文献7】Kraemerら、N Engl J Med、1988、318、1633〜7頁
【非特許文献8】Goldbergら、J Am Acad Dermatol、1989、21、144〜5頁
【非特許文献9】Meyskensら、J Am Acad Dermatol、1986、15、822〜5頁
【非特許文献10】Moriartyら、Lancet、1982、1、364〜5頁
【非特許文献11】Levineら、Arch Dermatol、1989、125、1225〜30頁
【非特許文献12】Stoneら、Blood、1988、71、690〜696頁
【非特許文献13】Wallace、Am J Hematol、1989、31、266〜268頁
【非特許文献14】Lippmanら、J Natl Cancer Inst、1992、81、241〜245頁
【非特許文献15】Whelan、Eur Urol、1999、35、424〜428頁
【非特許文献16】SinghおよびLippman、Oncology、1998、12、1643〜1659頁
【非特許文献17】BollagおよびHoldener、Annals of Oncology、1992、3、513〜526頁
【非特許文献18】Shi-YongおよびLotan、Drugs of the Future、1988、23、621〜634頁
【非特許文献19】Abe Eら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1981、78、4990〜4994頁
【非特許文献20】L.N.SongおよびT.Cheng、Biochem Pharmacol、1992、43、2292〜2295頁
【非特許文献21】J.Y.Zhouら、Blood、1989、74、82〜93頁
【非特許文献22】R.Bouillonら、Endocrine Reviews、1995、16(2)、233頁(表E)
【非特許文献23】Honmaら、Cell Biol、1983、80、201〜204頁
【非特許文献24】T.Kasukabeら、Cancer Res、1987、47、567〜572頁
【非特許文献25】J.Abeら、Endocrinology、1991、129、832〜837頁
【非特許文献26】J.A.Eismanら、Cancer Res、1987、47、21〜25頁
【非特許文献27】A.Kawauraら、Cancer Lett、1990、55、149〜152頁
【非特許文献28】A.Belleli、Carcinogenesis、1992、13、2293〜2298頁
【非特許文献29】H.Tsuchiyaら、J Orthopaed Res、1993、11、122〜130頁
【非特許文献30】Cork、J.Dermatol.Treat、1997、8、S7〜S13頁
【非特許文献31】Gilchrest、Br J Dermatol、1992、127、Suppl 41、14〜20頁
【非特許文献32】Gupta & Gupta、Journal of Dermatological Treatment、1996
【非特許文献33】Griffithsら、Griffiths、1992、7、261〜264頁
【非特許文献34】Fisherら、Nature、1996、379、335〜339頁
【非特許文献35】Olsenら、J Am.Acad.Dermatol.、1992、26、215〜224頁
【非特許文献36】Weinsteinら、Arch Dermatol、1991、127、659〜65頁
【非特許文献37】KligmanおよびGraham、J Dermatol.Treat、1993、4、113〜117頁
【非特許文献38】KligmanおよびLeyden、Skin Pharmacol、1993、6、78〜82頁
【非特許文献39】Griffithsら、Archives of Dermatology、1995、131、1037〜1044頁
【非特許文献40】Roger & Fuleihan、Facelift and adjunctive procedures in the treatment of photodamaged skin,in Photodamage,B.A.Gilchrest編、Blackwell Science、1995、259〜285頁
【非特許文献41】Pierardら、Maturitas、1996、23、273〜277頁
【非特許文献42】Pierardら、Dermatology、1997、194、398〜401頁
【非特許文献43】Humphreysら、Journal of American Academy of Dermatology、1996、34、638〜644頁
【非特許文献44】Thibaultら、Dermatology Surgery、1998、24、573〜577頁
【非特許文献45】Weissら、JAMA、1998、259、527〜532頁
【非特許文献46】Griffithsら、New England Journal of Medicine、1993、329、530〜535頁
【非特許文献47】Kligman、J Invest Dermatol、1987、88、12s〜17s頁
【非特許文献48】Kligmanら、Connect Tissue Res、1984、12、139〜50頁
【非特許文献49】Tsukaharaら、Br J Dermatol、1999、140、1048〜1053頁
【非特許文献50】Tajimaら、Dermatol Sci、1997、15、166〜7頁
【非特許文献51】FuchsおよびGreen、Cell、1981、25、617〜25頁
【非特許文献52】Kimら、Proc.Natl.Acad.Sci.、1984、81、4280〜4284頁
【非特許文献53】Kligmanら、J.Invest.Dermatol.、1982、78、181頁
【非特許文献54】Johnstonら、J.Invest.Dermatol.、1984、82、587頁
【非特許文献55】Uittoら、Lab.Invest.、1973、49、1216頁
【非特許文献56】Cravenら、J.Derm.Treatment.、1996、7、Suppl 2、S23〜S27頁
【非特許文献57】Guzzoら、in Goodman & Gilman's Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、1996、1593〜1595頁
【非特許文献58】Arndtら、Dermatology in General Medicine、1993、2、2838頁
【非特許文献59】Ostrengaら(R Pharm.Sci.、1971、60、1175〜1179頁)
【非特許文献60】Cooper、J.Pharm.Sci.、1984、73、1153〜1156頁
【非特許文献61】Hadgraft、Eur.J Drug Metab.Pharmacokinet、1996、21、165〜173頁
【非特許文献62】Kalbitzら、Pharmazie、1996、51、619〜637頁
【非特許文献63】Yamane、J.Pharmacy & Pharmacology、1995、47、978〜989頁
【非特許文献64】Harrisonら、Pharmaceutical Res.、1996、13、542〜546頁
【非特許文献65】Singhら、Pharmazie、1996、51、741〜744頁
【非特許文献66】W.G.ReinfenrathおよびG.S.Hawkins、The Weanling Yorkshire Pig as an Animal Model for Measuring Percutaneous Penetration、in Swine in Biomedical Research、M.E.Tumbleson編、Plenum、New York、1986
【非特許文献67】G.S.Hawkins、Methodology for the Execution of In Vitro Skin Penetration Determinations,in Methods for Skin Absorption、B.W.Kemppainen and W.G.Reifenrath編、CRC Press、Boca Raton、1990、67〜80頁
【非特許文献68】W.G.Reifenrath、Cosmetics & Toiletries、1995、110、3〜9頁
【非特許文献69】H.E.Junginger、Acta Pharmaceutica Nordica、1992、4、117頁
【非特許文献70】Thacharodiら、Biomaterials、1995、16、145〜148頁
【非特許文献71】R.Niedner、Hautarzt、1998、39、761〜766頁
【非特許文献72】D.H.WilliamsおよびI.Flemingによる、「Spectroscopic methods in organic chemistry」、McGraw-Hill Book Company、第4版、1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの化合物の生物活性は広範囲であるため、18β-グリチルレチン酸の誘導体がいくつも調製されてきたが、それらの初期のものの1つが3-O-ヘミスクシネート誘導体カルベノキソロンであった。カルベノキソロンのジナトリウム塩はヨーロッパにおいて消化性潰瘍の治療に汎用されてきたが、偽アルドステロン症、ナトリウムイオン貯留および高血圧などの有害な副作用の結果、ごく近年ではこの薬物への支持は下がってきている。したがって、当技術分野ではさらなるレチノールデヒドロゲナーゼ阻害剤の必要性があることは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、式I:
【0012】
【化2】

【0013】
[上記式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3Hまたは-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩を提供する。
【0017】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、
(a)R1が-ONaであり、R2
【0018】
【化5】

【0019】
であり;かつ/または
(b)R1が-OMeであり、R2
【0020】
【化6】

【0021】
(上記式中、RcはHまたはMeである)
であり;かつ/または
(c)R1が-OHであり、R2
【0022】
【化7】

【0023】
(上記式中、RdはHまたはnヘキシルである)
であり;かつ/または
(d)R1が-O-nヘキシルであり、R2
【0024】
【化8】

【0025】
であり;かつ/または
(e)R1が-OHもしくは
【0026】
【化9】

【0027】
であり、R2
【0028】
【化10】

【0029】
である
化合物ではない。
【0030】
別の実施形態では、本発明の化合物は、R1が-OHであり、R2
【0031】
【化11】

【0032】
(上記式中、R5は上記で定義した通りである)
である化合物あるいはその塩(ナトリウム塩もしくはジナトリウム塩などの);および/またはそのエステル(メチルエステルもしくはnヘキシルエステルなどの)ではない。
【0033】
別の実施形態では、本発明の化合物は、R1が-ORaであり、R2
【0034】
【化12】

【0035】
(上記式中、RaおよびR5は上記で定義した通りである)
である化合物あるいはその塩(ナトリウム塩もしくはジナトリウム塩などの);および/またはそのエステル(メチルエステルもしくはnヘキシルエステルなどの)ではない。
【0036】
別の実施形態では、本発明の化合物は、R2
【0037】
【化13】

【0038】
(上記式中、R5は上記で定義した通りである)
である化合物あるいはその塩(ナトリウム塩もしくはジナトリウム塩などの);および/またはそのエステル(メチルエステルもしくはnヘキシルエステルなどの)ではない。
【0039】
別の実施形態では、本発明の化合物は、R1が、-OH、-ONa、-OMeまたは-O-nヘキシルであり、R2
【0040】
【化14】

【0041】
(上記式中、Reは、H、Na、Meもしくはnヘキシルであるか、Reは、H、Na、もしくはC1〜6アルキルであるか、またはReは、H、Naもしくはアルキルである)
である化合物ではない。
【0042】
別の実施形態では、本発明の化合物は、R2
【0043】
【化15】

【0044】
(上記式中、Reは、H、Na、Meもしくはnヘキシルであるか、Reは、H、Na、もしくはC1〜6アルキルであるか、またはReは、H、Naもしくはアルキルである)
である化合物ではない。
【0045】
別の実施形態では、本発明の化合物は、R1が-OHであり、R2
【0046】
【化16】

【0047】
(上記式中、R2側鎖の二重結合はトランス配置である)
である化合物、またはその塩および/もしくはそのメチルエステルではない。
【0048】
別の実施形態では、本発明の化合物は、R2
【0049】
【化17】

【0050】
(上記式中、R2側鎖の二重結合はトランス配置である)
である化合物、またはその塩および/もしくはそのメチルエステルではない。
【0051】
別の実施形態では、本発明の化合物は、R1
【0052】
【化18】

【0053】
である化合物ではない。
【0054】
本発明の場合、「アルキル」基は、特に定義しない限り、直鎖もしくは分枝鎖であるか、または1つもしくは複数の環式基であるかもしくはそれを含んでもよい一価の飽和炭化水素として定義される。アルキル基は、任意選択で置換されてもよい。アルキル基は、その炭素骨格中に1、2または3個のヘテロ原子N、OまたはSを任意選択で含んでもよい。アルキル基の例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基およびn-ペンチル基である。一実施形態では、アルキル基は置換されていない。別の実施形態では、アルキル基は直鎖または分枝鎖である。さらに別の実施形態では、アルキル基はその炭素骨格中にヘテロ原子をまったく含まない。
【0055】
「アルケニル」基は、炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ含み、特に定義しない限り、直鎖もしくは分枝鎖であるか、または1つもしくは複数の環式基であるかもしくはそれを含んでもよい一価の炭化水素として定義される。アルケニル基は、任意選択で置換されてもよい。アルケニル基は、その炭素骨格中に1、2または3個のヘテロ原子N、OまたはSを任意選択で含んでもよい。アルケニル基の例は、ビニル基、アリル基、ブタ-1-エニル基およびブタ-2-エニル基である。一実施形態では、アルケニル基は置換されていない。別の実施形態では、アルケニル基は直鎖または分枝鎖である。さらに別の実施形態では、アルケニル基はその炭素骨格中にヘテロ原子をまったく含まない。
【0056】
「アルキニル」基は、炭素-炭素三重結合を少なくとも1つ含み、特に定義しない限り、直鎖もしくは分枝鎖であるか、または1つもしくは複数の環式基であるかもしくはそれを含んでもよい一価の炭化水素として定義される。アルキニル基は、任意選択で置換されてもよい。アルキニル基は、その炭素骨格中に1、2または3個のヘテロ原子N、OまたはSを任意選択で含んでもよい。アルキニル基の例は、エチニル基、プロパルギル基、ブタ-1-エニル基およびブタ-2-エニル基である。一実施形態では、アルキニル基は置換されていない。別の実施形態では、アルキニル基は直鎖または分枝鎖である。さらに別の実施形態では、アルキニル基はその炭素骨格中にヘテロ原子をまったく含まない。
【0057】
本発明の場合、任意選択で置換されてもよいアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基は、-F、-Cl、-Br、-I、-CF3、-CCl3、-CBr3、-CI3、-OH、-SH、-NH2、-CN、-NO2、-COOH、-ORb、-SRb、-N(Rb)2、-CO-Rb、-CO-ORb、-CO-N(Rb)2、または-Rbの、1つまたは複数で置換されてもよい。-Rbは、独立に、水素、または1、2もしくは3個の炭素原子を含有する、置換されていないアルキル基である。好ましい置換基は、-OH、-NH2、-NHMe、-NHEt、および-CO2Hである。
【0058】
任意選択の置換基(一つ又は複数)で置換された親基(parent group)中の炭素原子の全数を算出する際は、その任意選択の置換基(一つ又は複数)を考慮に入れない。置換された基は、1、2もしくは3つの置換基か1もしくは2つの置換基か、または1つの置換基を含むことが好ましい。
【0059】
任意選択の置換基は、いずれも保護されていてもよい。任意選択の置換基を保護するための適切な保護基は、当技術分野では、例えば、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wutsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」(Wiley-Interscience、第2版、1991)から知られている。
【0060】
本発明の第1の態様の化合物は、式IA:
【0061】
【化19】

【0062】
を有することが好ましい。
【0063】
R1は、-ORaまたは-N(Ra)2であり得る。R1は、-OHまたはOMeであることが好ましい。あるいは、R1は-ORaであってもよい。R1は、Raが、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基である-ORaであってもよい。あるいは、R1は、Raが、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を含有し、1、2または3個のヘテロ原子N、OまたはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されている直鎖または分枝鎖のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基である-ORaであってもよい。
【0064】
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であってもよい。Raは、置換されている場合、-OH、-NH2、-NHMe、-NHEt、または-CO2Hで置換されていることが好ましい。
【0065】
R1は、-ORaまたは-N(Ra)2であり得る。一実施形態では、R1は、-NH2、-NHMe、-NMe2、-NHEtまたは-NEt2;好ましくは-NMe2である。
【0066】
R2は、独立に、
【0067】
【化20A】

【化20B】

【0068】
のそれぞれであり得る。
【0069】
したがって、R2
【0070】
【化21】

【0071】
であってもよい。R2
【0072】
【化22】

【0073】
であってもよい。R2
【0074】
【化23】

【0075】
であってもよい。R2
【0076】
【化24】

【0077】
であってもよい。R2
【0078】
【化25】

【0079】
であってもよい。R2
【0080】
【化26】

【0081】
であってもよい。R2
【0082】
【化27】

【0083】
であってもよい。R2
【0084】
【化28】

【0085】
であってもよい。R2
【0086】
【化29】

【0087】
であってもよい。R2
【0088】
【化30】

【0089】
であってもよい。R2
【0090】
【化31】

【0091】
であってもよい。R2
【0092】
【化32】

【0093】
であってもよい。R2
【0094】
【化33】

【0095】
であってもよい。R2
【0096】
【化34】

【0097】
であってもよい。R2
【0098】
【化35】

【0099】
であってもよい。R2
【0100】
【化36】

【0101】
であってもよい。R2
【0102】
【化37】

【0103】
であってもよい。R2
【0104】
【化38】

【0105】
であってもよい。R2
【0106】
【化39】

【0107】
であってもよい。R2
【0108】
【化40】

【0109】
であってもよい。R2
【0110】
【化41】

【0111】
であってもよい。R2
【0112】
【化42】

【0113】
であってもよい。R2
【0114】
【化43】

【0115】
であってもよい。R2
【0116】
【化44】

【0117】
であってもよい。R2
【0118】
【化45】

【0119】
であってもよい。
【0120】
R2
【0121】
【化46A】

【化46B】

【0122】
であることが好ましい。
【0123】
R2
【0124】
【化47】

【0125】
であることが好ましい。
【0126】
R2
【0127】
【化48】

【0128】
であるとき、前記化合物は、シス型またはトランス型:
【0129】
【化49】

【0130】
(上記式中、nは、1、2、3または4である)
で存在し得る。
【0131】
R2
【0132】
【化50】

【0133】
であり、前記化合物は、1種のシス-エナンチオマー、1種のトランス-エナンチオマー、2種のシス-エナンチオマーの混合物、2種のトランス-エナンチオマーの混合物、または2種のシス-および2種のトランス-エナンチオマーの混合物であることが好ましい。前記化合物は、1種のシス-エナンチオマー、または2種のシス-エナンチオマーの混合物であることが好ましい。前記化合物は、1S,2S-エナンチオマー、または1S,2R-エナンチオマー、または1R,2S-エナンチオマー、または1R,2R-エナンチオマーであってもよい。
【0134】
R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基であり得る。R3および/またはR4は-Hまたは-Meであることが好ましい。
【0135】
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり得る。R5は、-OH、-CO2Hまたは-CO2R6であることが好ましい。
【0136】
すべてのR2基は下記サブ構造(sub-structure):
【0137】
【化51】

【0138】
を含むので、R5が-OHであるとき本発明の化合物は以下の互変異性型:
【0139】
【化52】

【0140】
で存在し得ることは、当業者であれば認識されよう。
【0141】
本発明は、これらの互変異性型をすべて含む。互変異性型を有し本発明の範囲内に入る化合物の例は化合物YP016であり、この化合物の合成および生物活性は以下で論じる。
【0142】
Xは、-CO-または-CH2-であり得る。Xは、-CO-であることが好ましい。
【0143】
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり得る。Yは、水素またはフッ素であることが好ましい。
【0144】
一実施形態では、本発明の化合物は、式:
【0145】
【化53】

【0146】
を有する化合物である。
【0147】
本発明の第2の態様は、本発明の化合物および医薬として許容できる賦形剤、担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0148】
本発明の化合物および医薬組成物は、薬剤として使用できる。好ましくは、治療すべき患者は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0149】
本発明の化合物および医薬組成物は、細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げるのにも使用できる。
【0150】
本発明の化合物および医薬組成物は、レチノイン酸の生合成を妨げるのにも使用できる。
【0151】
本発明の化合物および医薬組成物は、レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズするのにも使用できる。例示的なレチノールデヒドロゲナーゼは、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である。
【0152】
本発明の化合物および医薬組成物は、患者の過剰増殖性障害または光老化を治療するのにも使用できる。この治療は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。この治療は、前記患者の過剰増殖性細胞または光老化を患っている細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。この治療は、細胞増殖を低減もしくは予防する程度までかつ/または細胞分化を活性化もしくは増強する程度まで、その細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。例示的な過剰増殖性障害は、乾癬、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、光線性角化症、日光性角化症、扁平上皮内癌、基底細胞癌、魚鱗癬、角質増殖、ダリエー病などの角質化障害、掌蹠角皮症、毛孔性紅色粃糠疹、表皮母斑症候群、変異性紅斑角皮症、表皮剥離性角質増殖症、非水疱型魚鱗癬様紅皮症、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、癌、皮膚癌、黒色腫および皮膚線維腫である。好ましい過剰増殖性障害は、乾癬、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、光線性角化症、日光性角化症、扁平上皮内癌、魚鱗癬、角質増殖、ダリエー病などの角質化障害、掌蹠角皮症、毛孔性紅色粃糠疹、表皮母斑症候群、変異性紅斑角皮症、表皮剥離性角質増殖症、非水疱型魚鱗癬様紅皮症、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、または癌である。この治療は、レチノイン酸の生合成を妨げることが好ましい。この治療は、レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズすることが好ましい。例示的なレチノールデヒドロゲナーゼは、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である。
【0153】
本発明の化合物および医薬組成物は、患者の細胞の増殖を低減または予防するのにも使用できる。本発明の化合物および医薬組成物のこの使用により、その細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性が下がることが好ましい。その細胞は、過剰増殖性細胞であることが好ましい。この使用により、細胞分化が生じることが好ましい。この使用により、レチノイン酸の生合成を妨げることが好ましい。この使用により、レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズすることが好ましい。例示的なレチノールデヒドロゲナーゼは、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である。
【0154】
本発明の化合物および医薬組成物は、患者の細胞中の分化プログラムを活性化または増強するのにも使用できる。本発明の化合物および医薬組成物のこの使用により、その細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性が下がることが好ましい。この使用により、レチノイン酸の生合成を妨げることが好ましい。この使用により、レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズすることが好ましい。例示的なレチノールデヒドロゲナーゼは、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である。
【0155】
本発明の化合物および医薬組成物は、レチノイドの投与により治療できるレチノイド感受性障害であるか、その症状がレチノイドの投与により軽減できるレチノイド感受性障害であるか、またはレチノイドの薬理レベルの投与の副作用に相当する障害を患っている患者の症状を治療または軽減するのにも使用できる。この治療は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。この治療は、レチノイン酸の生合成を妨げることが好ましい。この治療は、レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズすることが好ましい。例示的なレチノールデヒドロゲナーゼは、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である。
【0156】
本発明の化合物および医薬組成物は、レチノイン酸受容体応答要素(RARE)応答性遺伝子、ビタミンD応答要素(VDRE)応答性遺伝子、甲状腺ホルモン受容体応答要素応答性遺伝子、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)応答要素応答性遺伝子の異所性の発現、過剰発現そうでなければ異常発現を特徴とする疾患を患っている患者の症状を治療または軽減するのにも使用できる。この治療は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。この治療は、レチノイン酸の生合成を妨げることが好ましい。この治療は、レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズすることが好ましい。例示的なレチノールデヒドロゲナーゼは、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である。
【0157】
本発明の化合物および医薬組成物は、増殖と分化との不均衡を特徴とする疾患を患っている患者の症状を治療または軽減するのにも使用できる。この治療は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。この治療は、レチノイン酸の生合成を妨げることが好ましい。この治療は、レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズすることが好ましい。例示的なレチノールデヒドロゲナーゼは、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である。
【0158】
本発明の化合物および医薬組成物は、ウイルス感染、HPV感染、HIV感染、HSV感染、HCV感染、EBV(Epstein-Barrウイルス)感染、いぼ、術後瘢痕化、肥厚性瘢痕化もしくはケロイド瘢痕化、メラニン発生障害、色素沈着障害、増強もしくは損傷された表皮バリア機能、骨成長障害、骨折、骨粗鬆症、脂質異常症、肝毒性、肝硬変、肝炎感染、皮膚過敏、脱毛症、受胎障害、精子形成障害、卵子の着床障害、うつ病、季節性情動障害、アテローム性動脈硬化症、または血管形成障害である疾患、障害または病状を患っている患者を治療するのにも使用できる。好ましい疾患、障害または病状は、ウイルス感染、HPV感染、HIV感染、HSV感染、HCV感染、いぼ、術後瘢痕化、肥厚性瘢痕化もしくはケロイド瘢痕化、メラニン発生障害、色素沈着障害、増強もしくは損傷された表皮バリア機能、骨成長障害、骨折、骨粗鬆症、脂質異常症、肝毒性、肝硬変、肝炎感染、皮膚過敏、脱毛症、受胎障害、精子形成障害、卵子の着床障害、うつ病、季節性情動障害、アテローム性動脈硬化症、または血管形成障害である。この治療は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。この治療は、レチノイン酸の生合成を妨げることが好ましい。この治療は、レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズすることが好ましい。例示的なレチノールデヒドロゲナーゼは、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である。
【0159】
本発明の化合物および医薬組成物は、酵素の阻害にも使用できる。酵素の阻害は、イン・ビトロ(in vitro)またはイン・ビボ(in vivo)で起こり得る。酵素は、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)などのレチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)であることが好ましい。
【0160】
本発明の第3の態様は、患者の過剰増殖性障害または光老化を治療するための薬剤を製造するための本発明の化合物の使用を提供する。この薬剤は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げ得ることが好ましい。この薬剤は、前記患者の過剰増殖性細胞または光老化を患っている細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げ得ることが好ましい。この薬剤は、細胞増殖を低減もしくは予防する程度までかつ/または細胞分化を活性化もしくは増強する程度まで、その細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げ得ることが好ましい。例示的な過剰増殖性障害は、乾癬、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、光線性角化症、日光性角化症、扁平上皮内癌、基底細胞癌、魚鱗癬、角質増殖、ダリエー病などの角質化障害、掌蹠角皮症、毛孔性紅色粃糠疹、表皮母斑症候群、変異性紅斑角皮症、表皮剥離性角質増殖症、非水疱型魚鱗癬様紅皮症、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、癌、皮膚癌、黒色腫および皮膚線維腫である。
【0161】
本発明の第3の態様は、患者の細胞の増殖を低減または予防するための薬剤を製造するための本発明の化合物の使用も提供する。この薬剤は、その細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げ得ることが好ましい。その細胞は、過剰増殖性細胞であることが好ましい。この薬剤は、細胞分化を誘発し得ることが好ましい。
【0162】
本発明の第3の態様は、患者の細胞中の分化プログラムを活性化または増強するための薬剤を製造するための本発明の化合物の使用も提供する。この薬剤は、その細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げ得ることが好ましい。
【0163】
本発明の第3の態様は、レチノイドの投与により治療できるレチノイド感受性障害であるか、その症状がレチノイドの投与により軽減できるレチノイド感受性障害であるか、またはレチノイドの薬理レベルの投与の副作用に相当する障害を患っている患者の症状を治療または軽減するための薬剤を製造するための本発明の化合物の使用も提供する。この薬剤は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げ得ることが好ましい。
【0164】
本発明の第3の態様は、レチノイン酸受容体応答要素(RARE)応答性遺伝子、ビタミンD応答要素(VDRE)応答性遺伝子、甲状腺ホルモン受容体応答要素応答性遺伝子、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)応答要素応答性遺伝子の異所性の発現、過剰発現そうでなければ異常発現を特徴とする疾患を患っている患者の症状を治療または軽減するための薬剤を製造するための本発明の化合物の使用も提供する。この薬剤は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げ得ることが好ましい。
【0165】
本発明の第3の態様は、増殖と分化との不均衡を特徴とする疾患を患っている患者の症状を治療または軽減するための薬剤を製造するための本発明の化合物の使用も提供する。この薬剤は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げ得ることが好ましい。
【0166】
本発明の第3の態様は、ウイルス感染、HPV感染、HIV感染、HSV感染、HCV感染、EBV感染、いぼ、術後瘢痕化、肥厚性瘢痕化もしくはケロイド瘢痕化、メラニン発生障害、色素沈着障害、増強もしくは損傷された表皮バリア機能、骨成長障害、骨折、骨粗鬆症、脂質異常症、肝毒性、肝硬変、肝炎感染、皮膚過敏、脱毛症、受胎障害、精子形成障害、卵子の着床障害、うつ病、季節性情動障害、アテローム性動脈硬化症、または血管形成障害である疾患、障害または病状を患っている患者を治療するための薬剤を製造するための本発明の化合物の使用も提供する。この薬剤は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げ得ることが好ましい。
【0167】
本発明の第3の態様の上記使用のすべてにおいては、薬剤は、レチノイン酸の生合成を妨げ得ることが好ましい。その薬剤は、レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズし得ることが好ましい。例示的なレチノールデヒドロゲナーゼは、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である。
【0168】
本発明の第3の態様は、酵素を阻害するための薬剤を製造するための本発明の化合物の使用も提供する。酵素の阻害は、イン・ビトロ(in vitro)またはイン・ビボ(in vivo)で起こり得る。酵素は、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)などのレチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)であることが好ましい。
【0169】
本発明の第4の態様は、過剰増殖性障害または光老化を患っている患者の治療方法であって、本発明の化合物の投与段階を含む方法を提供する。この方法は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。この方法は、前記患者の過剰増殖性細胞または光老化を患っている細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。この方法は、細胞増殖を低減もしくは予防する程度までかつ/または細胞分化を活性化もしくは増強する程度まで、その細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。例示的な過剰増殖性障害は、乾癬、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、光線性角化症、日光性角化症、扁平上皮内癌、基底細胞癌、魚鱗癬、角質増殖、ダリエー病などの角質化障害、掌蹠角皮症、毛孔性紅色粃糠疹、表皮母斑症候群、変異性紅斑角皮症、表皮剥離性角質増殖症、非水疱型魚鱗癬様紅皮症、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、癌、皮膚癌、黒色腫および皮膚線維腫である。
【0170】
本発明の第4の態様は、細胞増殖を低減または予防する方法であって、その細胞と本発明の化合物とを接触させる段階を含む方法も提供する。この方法は、その細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。その細胞は、過剰増殖性細胞であることが好ましい。この方法によって細胞分化が生じることが好ましい。
【0171】
本発明の第4の態様は、細胞中の分化プログラムを活性化または増強する方法であって、その細胞と本発明の化合物とを接触させる段階を含む方法も提供する。この方法は、その細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。
【0172】
本発明の第4の態様は、レチノイドの投与により治療できるレチノイド感受性障害であるか、その症状がレチノイドの投与により軽減できるレチノイド感受性障害であるか、またはレチノイドの薬理レベルの投与の副作用に相当する障害を患っている患者の症状を治療または軽減する方法であって、本発明の化合物をその患者に投与する段階を含む方法も提供する。この方法は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。
【0173】
本発明の第4の態様は、レチノイン酸受容体応答要素(RARE)応答性遺伝子、ビタミンD応答要素(VDRE)応答性遺伝子、甲状腺ホルモン受容体応答要素応答性遺伝子、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)応答要素応答性遺伝子の異所性の発現、過剰発現そうでなければ異常発現を特徴とする疾患を患っている患者の症状を治療または軽減する方法であって、本発明の化合物をその患者に投与する段階を含む方法も提供する。この方法は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。
【0174】
本発明の第4の態様は、増殖と分化との不均衡を特徴とする疾患を患っている患者の症状を治療または軽減する方法であって、本発明の化合物をその患者に投与する段階を含む方法も提供する。この方法は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。
【0175】
本発明の第4の態様は、ウイルス感染、HPV感染、HIV感染、HSV感染、HCV感染、EBV感染、いぼ、術後瘢痕化、肥厚性瘢痕化もしくはケロイド瘢痕化、メラニン発生障害、色素沈着障害、増強もしくは損傷された表皮バリア機能、骨成長障害、骨折、骨粗鬆症、脂質異常症、肝毒性、肝硬変、肝炎感染、皮膚過敏、脱毛症、受胎障害、精子形成障害、卵子の着床障害、うつ病、季節性情動障害、アテローム性動脈硬化症、または血管形成障害である疾患、障害または病状を患っている患者を治療する方法であって、本発明の化合物をその患者に投与する段階を含む方法も提供する。この方法は、その患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を下げることが好ましい。
【0176】
本発明の第4の態様の上記方法のすべてにおいては、その方法は、レチノイン酸の生合成を妨げる段階を含むことが好ましい。その方法は、レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズする段階を含むことが好ましい。例示的なレチノールデヒドロゲナーゼは、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である。
【0177】
本発明の第4の態様は、阻害量の本発明の化合物または医薬組成物をその必要のある患者に投与する段階を含む、酵素を阻害する方法も提供する。酵素の阻害は、イン・ビトロ(in vitro)、エクス・ビボ(ex vivo)、またはイン・ビボ(in vivo)で起こり得る。酵素は、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)などのレチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)であることが好ましい。
【0178】
本発明の第5の態様は、18β-グリチルレチン酸を出発物質として使用する、本発明の化合物を合成する方法を提供する。18β-グリチルレチン酸の3-ヒドロキシル基は、エステル化またはアルキル化されることが好ましい。18β-グリチルレチン酸の20-カルボキシル基は、エステル化されるか、またはアミド基に変換されることが好ましい。
【0179】
本発明は、これから例として添付図面を参照して説明する。
【0180】
図中、「Cont.」は対照を表し、「CBX」はカルベノキソロンを表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0181】
理論で縛られることを望まないが、本発明の化合物、組成物および方法は、内因性レチノイン酸のレベルまたは活性を通常その種の生理的濃度付近またはそれ未満に低減することにより効き目があると現在考えられている。内因性レチノイン酸のレベルは、本発明の化合物、組成物および方法により、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または80%超、低減されることが好ましい。
【0182】
本発明によれば、レチノイン酸の濃度は、治療効果または本明細書に記載の効果をもたらすためにスイッチ点付近で変化する。内因性レチノイン酸のレベルは、スイッチ点付近またはそれ未満に低減されることが最も好ましい。「スイッチ点」は、その濃度付近でどちらかの方向(即ち増加または減少)にあるレチノイン酸の濃度変化により細胞の分化または増殖の運命が変わることになる、細胞中のレチノイン酸の濃度である。スイッチ点を超えるレチノイン酸の濃度によって細胞は増殖され、一方、スイッチ点未満のレチノイン酸の濃度によって細胞は分化される。したがって、スイッチ点は、当技術分野で知られる方法によって、この基準に従って任意の細胞もしくは細胞種または病状において決定することができる。
【0183】
正常な非疾患細胞では、スイッチ点は、通常、生理的レチノイン酸濃度にまたはその濃度付近にある。正常細胞中の生理的レチノイン酸濃度は、約4×10-9モル〜1×10-8モル(即ち約4〜10ナノモル)であり、したがって、この範囲は、スイッチ点についての動作範囲と見なすことができる。
【0184】
本発明の好ましい実施形態では、レチノイン酸の内因性レベルは、スイッチ点未満に、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または80%超、低減される。したがって、一実施形態では、本発明の化合物、組成物および方法は、関連する細胞、例えば、疾患細胞または疾患個体の細胞中の内因性レチノイン酸レベルを、約10、5もしくは1ナノモル未満までまたはさらに約750、500、50もしくは1ピコモル未満まで低減することに応ずる。内因性レチノイン酸の濃度は、スイッチ点未満に低減されるが、細胞死を避けるのに十分高いレベルで維持されることが好ましい。
【0185】
内因性または細胞内レチノイン酸レベルは、当技術分野で知られるような様々な手段によってアッセイできる。
【0186】
本発明の化合物、組成物および方法の主な利点は細胞増殖の低減であるが、過剰増殖性細胞または光老化細胞の治療は、さらなる利点として分化を誘発し得る。
【0187】
本発明の化合物、組成物および方法は、乾癬および癌を含めた様々な過剰増殖性疾患の治療に有用である。特に、本発明の化合物、組成物および方法は、乾癬の治療に特に有用である。本発明は、光老化または光損傷の症状を治療または軽減するのにも有用である。皮膚過剰増殖性疾患を患っている患者の細胞(以下でさらに詳細に記載される)、光老化細胞または光損傷細胞および癌細胞が多くの特性を互いに共有し得ることは認識されよう。例えば、紫外線放射線に曝露された患者の細胞は光老化の症状を表す恐れがあり;さらにこれらの細胞は、このような曝露の結果として基底細胞癌または扁平上皮細胞癌などの様々な癌腫に発達する恐れがある。
【0188】
特定の実施形態では、本発明の化合物、組成物および方法は、過剰増殖性疾患、特に、皮膚を冒す過剰増殖性疾患の治療に適している。光老化、腫瘍および癌も適切に治療され、他の疾患および病状は以下に開示される。
【0189】
本発明の化合物、組成物および方法は、増殖と分化との不均衡がある任意の疾患を患っている患者の症状を治療または軽減するためにも使用できる。したがって、細胞の分化または増殖運命を制御する正常な制御ができない任意の病状を、治療できる。そのような疾患は、一般に、正常に(即ち発達段階もしくは組織種によって)増殖しないもしくはそうしないはずであるか、またはその相当する正常な細胞種もしくは組織種が分化状態にあるときに分化できない細胞種または組織種の増殖化を伴うことになる。
【0190】
特定の実施形態では、本発明の化合物、組成物および方法によって、過剰増殖性細胞の増殖、好ましくはイン・ビボ(in vivo)増殖が低減する。細胞母集団の増殖は、未治療細胞の同様の母集団と比較して90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%またはそれ未満に低減されることがより好ましい。増殖は0%に低減される、即ち、細胞が完全に分裂を停止することが最も好ましい。
【0191】
本明細書で使用される場合、用語「増殖」は、細胞分裂の結果としての組織の成長を意味することが意図される。増殖性細胞は、活発に分裂しており、DNA複製、有糸分裂、細胞分裂などのような細胞周期の過程を経る。増殖をアッセイできる様々な方法、例えば放射性ヌクレオチド三リン酸、トリチウム標識チミジン、ブロモデオキシウリジンなどを使用して有糸分裂細胞の目視検査などにより複製細胞を検出する放射能標識法が、知られている。増殖は、Ki-67などのマーカーの発現によってか、または異なる条件下で培養細胞を直接数えることにより細胞数の増加を測定することよってもアッセイできる。
【0192】
用語「過剰増殖」は、その発現段階および機能を考慮した予測される細胞種増殖と比較した増殖の増加を意味することが意図される。この用語は、母集団内での一過性の細胞増殖増加、例えば、その反応が予測される刺激に反応する場合のものを含むことは意図されない。例えば、組織中の細胞は、組織が損傷し組織の欠陥を修復するのにまたは死細胞を置き換えるのにより多くの細胞が必要であるとき、増殖増加を示すことになることが知られている。したがって、「過剰増殖」は、病状そうでなければ異常状態の状況での増殖増加、例えば、癌および乾癬の場合の増殖増加を指すことが明確に意図される。
【0193】
細胞中でのレチノイン酸レベルの低減により、その細胞が正常細胞の運命を達成し得る許容的な分化が誘発される。したがって、本発明の好ましい実施形態では、本発明の化合物、組成物および方法によって、治療される細胞の母集団の一部またはすべてにおいて細胞分化が生じる。過剰増殖性細胞母集団の10%以上は、未治療細胞の母集団と比較して本発明による治療後に分化されることが好ましい。この比率(%)は、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または80%超であることがより好ましい。その細胞母集団の90%、95%または100%は、分化されることが最も好ましい。
【0194】
「分化」は、組織の未分化の細胞が特定の機能のために分化される過程を指す。細胞の分化は、様々な方法で、例えば形態学的に、または当技術分野で知られるような、分化した細胞種に特異的なタンパク質マーカーの発現をアッセイすることによって評価できる。例えば、ケラチンK1およびK10は表皮ケラチノサイトの最終分化に関与するためのマーカーであり、細胞分化が生じるときに発現は増加する。ケラチンK1およびK10の他に、他のケラチン亜型、例えばK5、K14、K16およびK17は、異なる分化段階のマーカーとして使用できる。他の非ケラチンマーカー、例えばEGF-受容体およびβ-1インテグリンも、細胞分化のマーカーとして使用できる。
【0195】
レチノイド感受性障害は、レチノイン酸の内因性レベルを低減することによって治療できる。したがって、本発明の化合物、組成物および方法は、レチノイド感受性障害を治療するためにも使用できる。レチノイド感受性障害の例は、当技術分野で知られており、とりわけ、乾癬、座瘡、光老化、癌、急性前骨髄球性白血病、角質化障害、例えば魚鱗癬および角皮症、強皮症、白斑、湿疹、尋常性座瘡および酒さ性座瘡、扁平苔癬、皮膚エリテマトーデス、前癌状態、例えばメラノサイト母斑、骨髄異形成症候群を含める。
【0196】
細胞中の内因性レチノイン酸レベルを調節することによって、その細胞の増殖/分化運命が変化する。具体的には、内因性レチノイン酸レベルを下げることによって、細胞は増殖化を停止しかつ/または分化を開始する。したがって、本発明の化合物、組成物および方法は、一般に、本文献で詳述されるような癌、腫瘤、および他の皮膚過剰増殖性疾患を含めた増殖と分化との不均衡を特徴とする任意の疾患を患っている患者の症状を治療または軽減するのに適している。増殖と分化との不均衡は、有糸分裂を行っている組織中の細胞の比率が該組織にとって正常である細胞の比率を超える増加、または有糸分裂を行っている組織中の細胞の比率が該組織にとって正常である細胞の比率未満となる減少を指す。
【0197】
本発明の好ましい実施形態による化合物、組成物および方法は、過剰増殖性細胞中のレチノイン酸の内因性または細胞内濃度を特定の細胞のスイッチ点未満まで低減することにより、該細胞が増殖を低減または停止し、任意選択で分化されることに応ずる。レチノイン酸の内因性レベルは、増殖を低減または停止するような程度にまでだけ下がる、即ちスイッチ点直下まで下がることが好ましい。しかし、上記で示したように細胞中のレチノイン酸濃度をさらに低減(即ちスイッチ点未満まで、例えばレチノイン酸の完全喪失)することによってこれらの目的を達成してもよい。
【0198】
スイッチ点は、毒性を生ずるレチノイン酸の濃度に近接していないことは認識されよう。したがって、本発明による方法は、細胞傷害性の有害な副作用および細胞死がないと予想される点で好都合である。
【0199】
〔皮膚過剰増殖性疾患〕
本発明の化合物、組成物および方法を使用することにより治療できる皮膚過剰増殖性疾患には、乾癬、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、光線性角化症(日光性角化症-扁平上皮内癌)、魚鱗癬、角質増殖、ダリエー病などの角質化障害、掌蹠角皮症、毛孔性紅色粃糠疹、表皮母斑症候群、変異性紅斑角皮症、表皮剥離性角質増殖症、非水疱型魚鱗癬様紅皮症、皮膚エリテマトーデスおよび扁平苔癬が挙げられる。
【0200】
本発明によれば、皮膚過剰増殖性疾患と関連する症状の任意のもの、例えば上記に挙げた疾患を示す患者は、レチノールデヒドロゲナーゼの活性を低減し、それにより疾患した患者の過剰増殖性細胞中の内因性レチノイン酸レベルを低減するために、本発明の化合物を使用して治療できる。このような治療によって、疾患細胞の増殖が低減する。本発明の化合物は、そのままか、または以下でより詳細に記載する医薬組成物の形態で患者に塗布してもよい。皮膚増殖性疾患を有する宿主の治療効果は、落屑および紅斑の改善、病巣サイズの縮小などの客観的基準ならびに掻痒の停止などの主観的基準によって評価できる。
【0201】
特に、本発明の化合物、組成物および方法は、乾癬の症状の治療または軽減に適する。乾癬は、それ自体、銀白色の鱗屑で覆われた炎症性の腫脹した皮膚病巣として現れる。乾癬の特徴には、膿様水疱(膿疱性乾癬)、皮膚の重度の腐肉形成(紅皮性乾癬)、滴状斑点(滴状乾癬)および平坦な炎症性病巣(逆乾癬)が挙げられる。
【0202】
乾癬の原因は現在わかっていないが、乾癬は、遺伝要素を有する自己免疫性皮膚障害として確立されている。3人中1人に乾癬の家族歴が報告されているが、遺伝形式はない。しかし、その疾患の明確な家族歴がない小児が乾癬を発症する多くの症例がある。人が実際に乾癬を発症するかどうかは、連鎖球菌性咽頭炎、皮膚の損傷(ケブネル現象)、ワクチン接種、ある種の薬物、および筋肉注射または経口ステロイド薬などの全身性感染を含めた「トリガー因子」に依存し得る。一旦、何かが、乾癬を発症する、人の遺伝的傾向を誘発すると、免疫系が過剰な皮膚細胞の繁殖を誘発することが考えられる。
【0203】
皮膚細胞は、2つの可能なプログラム:正常成長または創傷治癒に従うようにプログラムされる。正常な成長パターンでは、皮膚細胞は、基底細胞層中に作られ、次いで表皮を経て皮膚の角質層、最外層に出てくる。この正常過程は、細胞の誕生から死まで約28日間かかる。皮膚が損傷すると、創傷治癒プログラム(再生的成熟)が誘発され、このプログラムでは、細胞がずっと大きい速度で生成し、血液供給が増加し、限局性炎症が起こる。病巣性乾癬は、その交互の成長プログラムでの細胞成長を特徴とする。皮膚細胞(ケラチノサイト)は正常成長プログラムから再生的成熟に切り替わり、細胞が作られ2〜4日間の短期間でその表面に押し進められ、その皮膚は十分な速さで細胞を削減できない。この過剰な皮膚細胞は、増大する鱗屑性病巣を蓄積および形成する。通常、病巣を覆う白色の鱗屑(「プラーク」)は、死んだ皮膚細胞から構成され、病巣の紅化は、急速に分裂する皮膚細胞の領域への血液供給が増加することによって生じる。
【0204】
乾癬は、2つの生物学的特質を特徴とする遺伝的に決定される皮膚疾患である。第1には、分化の促進および不完全に関連する深刻な表皮過剰増殖がある。第2には、Tリンパ球の動員が増加しいくつかの場合では好中球微小膿瘍が形成する、表皮と真皮との双方の著しい炎症がある。乾癬の多くの病理学的特徴は、皮膚表面の0.2mm以内に生じる表皮細胞の増殖増加を伴う、表皮ケラチノサイトの成長および成熟の変化が原因であり得る。乾癬の病因に対する従来の調査は、表皮の増殖増加および過形成に集中してきた。正常な皮膚では、細胞が基底層から顆粒層を経て移動する時間は4〜5週間である。乾癬病巣では、この時間は1/7〜1/10に減少するが、その理由は、細胞周期時間が短縮し、増殖し得る細胞の絶対数が増加し、実質的に分裂している細胞の比率が増加するからである。この過剰増殖性現象は、実質上より小さい程度ではあるが、乾癬患者の臨床的に無関係の皮膚でも発現する。
【0205】
通常の形態の乾癬、尋常性乾癬は、厚い銀色の鱗屑により覆われた境界の明瞭な紅斑性のプラークを特徴とする。特徴的な所見は、新規の乾癬病巣が皮膚外傷部位で生じる同形反応(ケブネル現象)である。
【0206】
病巣は、多くの場合、体肢の伸側面に限局され、爪および頭皮も通常含まれる。稀少な形態には、滴状乾癬、連鎖球菌咽頭炎後に発疹する場合が多い疾患の形態、ならびに手掌および足の裏の上にあるまたは身体全面に分布している直径が多くの場合2〜5mmのおびただしい無菌性膿疱を特徴とする膿疱性乾癬が挙げられる。
【0207】
本発明の化合物、組成物および方法は、座瘡の治療にも適する。座瘡は、大人口の患者に発症し、普通は顔上に限局される普遍的な炎症性皮膚障害である。幸いにも、この疾患は普通消え、発現から消散までの月間隔または年間隔で、治療は、治癒的ではないが、多数の患者の疾患を十分に抑えることができる。
【0208】
深刻な疾患を有する少数の座瘡患者は、高用量の経口テトラサイクリン、ダプソン、プレドニゾン、および女性の場合エストロゲンの使用を含めた必死の治療努力に対する反応をほとんどまたはまったく示さない。多くの場合では、これらの薬物は適度に制御し得るだけである一方、これらの薬剤の副作用のため、それらの薬物の実用性は大幅に制限される。結節性嚢胞性座瘡(nodulocystic acne)を有する患者は、顔上に、多くの場合、背部および胸部の上に現れる大きい炎症性の化膿性結節を患う。これらの発現の他に、この病巣は、圧痛があり、多くの場合、膿状滲出性および出血性である。多くの場合、外観を損なう瘢痕は避けられない。
【0209】
座瘡の治療には、レチノイドの局所投与および全身投与が含まれる。全トランス-レチノイン酸(トレチノイン)の局所塗布は特に面皰または黒色面皰に対して試行され、いくらか奏功はしたものの、この状態は治療をやめると元に戻る場合が多い。
【0210】
乾癬患者の治療効果を立証するのに採用される客観的方法は、目視監視および写真撮影によるプラークの消散を含む。目視採点法は、PASI[乾癬領域および重症度指数(Psoriasis Area and Severity Index)]スコアを使用して行う(A.J.Fredericksson、B.C.Peterssonn、Dermatologies、1978、157、238〜244頁参照)。
【0211】
〔腫瘍および癌〕
本発明の化合物、組成物および方法は、増殖を阻害し場合により過剰増殖性癌細胞の形質転換表現型を転換するのにも使用できる。
【0212】
レチノイドは、発癌物質活性化、成長因子、血管形成、コラゲナーゼ生成に影響を及ぼすことおよび宿主免疫応答を改変することを含めたいくつかのメカニズムにより腫瘤の発症および成長をもたらすことが実験的に示されている(Gollnick、Retinoids、1997、13、6〜12頁)。イン・ビトロ(in vitro)でレチノイン酸は、ヒト急性骨髄性白血病、神経芽腫、奇形癌、黒色腫およびラット横紋筋肉腫の細胞を含めたいくつかの腫瘤細胞系の分化を誘発しかつ/またはクローン増大を阻害することが示されている。レチノイン酸誘発分化に対して最も応答する細胞は、前骨髄球性白血病細胞である(Smithら、Journal of Clinical Oncology、1992、10、839〜864頁)。合成経口レチノイドのイソトレチノイン、エトレチネートおよびアシトレチンならびに局所イソトレチノインおよびレチノイン酸は、前癌およびいくつかの悪性非メラノサイト皮膚癌の消散を誘発することが比較臨床試験で示されている(Gollnick、Retinoids、1997、13、6〜12頁;Kraemerら、N Engl J Med、1988、318、1633〜7頁)。エトレチネートおよびアシトレチンは、小さい基底細胞癌(BCC)の成長を低下させ、ゴーリン-ゴルツ症候群を有する個体中に発現する新しいBCC病巣を予防することが示されている(Goldbergら、J Am Acad Dermatol、1989、21、144〜5頁)。経口および局所レチノイドは、前癌状態の光線性角化およびボーエン様角化の数を低減し/進行を予防すること(Meyskensら、J Am Acad Dermatol、1986、15、822〜5頁;Moriartyら、Lancet、1982、1、364〜5頁)と、樹立扁平上皮細胞癌を治療すること(Levineら、Arch Dermatol、1989、125、1225〜30頁)とが示されている。TRA(全トランス-レチノイン酸)の局所塗布でも、片側(half-sided)試験において形成異常母斑の消散が生じている(Meyskensら、J Am Acad Dermatol、1986、15、822〜5頁)。
【0213】
レチノイド療法に対して最も反応性のある悪性血液疾患は、急性前骨髄球性白血病(APL)であり、この場合、レチノイドは、骨髄形成不全期間がなく完全寛解を誘発し得る(Stoneら、Blood、1988、71、690〜696頁;Wallace、Am J Hematol、1989、31、266〜268頁)。頭部および頸部扁平上皮細胞癌が摘出された患者では、経口レチノイドは、第2の上皮腫瘤の発現を、プラセボ治療群の場合の24%と比較して4%に低減することが示されている(Smithら、Journal of Clinical Oncology、1992、10、839〜864頁)。レチノイン酸とIFN-αとの組合せによって進行性の頸部扁平上皮細胞癌の退縮が誘発された(Lippmanら、J Natl Cancer Inst、1992、81、241〜245頁)。レチノイドは、胸部、前立腺部および膀胱部を含めた他の固形腫瘤の動物モデルに効果があることも示されている(Smithら、Journal of Clinical Oncology、1992、10、839〜864頁;Whelan、Eur Urol、1999、35、424〜428頁)。しかし、既存のレチノイド療法は、複数のシグナル経路の活性化に起因する高い毒性によって制限される(SinghおよびLippman、Oncology、1998、12、1643〜1659頁)。
【0214】
特定のトリテルペノイド酸誘導体は、セレクチンリガンド活性およびロイコトリエン生合成阻害活性を示すことが見出され、したがって癌の治療に有用であると考えられている(US5679644)。
【0215】
レチノイドは、定着した病巣の治療よりむしろ腫瘤の予防に使用するのが最も効果的であった(BollagおよびHoldener、Annals of Oncology、1992、3、513〜526頁;KemmettおよびHunter、Hospital Update、March 1988、1301〜1313頁;Shi-YongおよびLotan、Drugs of the Future、1988、23、621〜634頁)が、本発明の化合物、組成物および方法は、予防および治療の双方に使用できる。
【0216】
したがって、上記の病状はいずれも、本発明の化合物、組成物および方法によって治療または軽減できる。特に、本発明の化合物、組成物および方法は、レチノイド療法での治療が奏功したまたは奏功しなかった任意の腫瘤、癌腫などの治療に有用である。本発明の方法および組成物は、前癌状態を治療する、即ち前癌状態が現実の悪性腫瘍へ進行するのを予防するためにも有用である。内因性レチノイン酸レベルの低下によって血管形成が阻害され、したがってそのような低下を使用して腫瘤の拡大を予防することができる。特に、内因性レチノイン酸レベルのそのような低下は、レチノールデヒドロゲナーゼを阻害することによりレチノイン酸の合成を阻害または阻止することによって達成できる。腫瘤の具体例には、メラノサイト母斑および骨髄異形成症候群が挙げられる。
【0217】
本発明の方法は、培養下の細胞上で、例えばイン・ビトロ(in vitro)もしくはエクス・ビボ(ex vivo)で実施でき、または被検動物中に存在する細胞上で、例えばイン・ビボ(in vivo)治療試験計画の一部として実施できる。この治療計画は、ヒトまたは他の動物の被検体に対して行うことができる。用語「抗腫瘍剤」および「抗増殖剤」は、本明細書では互換的に使用され、過剰増殖性細胞の増殖を阻害する機能特性を有する薬剤、例えば腫瘍の発現または進行を阻害する薬剤を含む。
【0218】
本発明の化合物は、治療上抗腫瘍的に有効な量で、即ち、単回または複数回用量患者に投与したときに、腫瘍性細胞の成長を阻害するのに効果的な量で、またはそのような腫瘍細胞をもつ患者の生存を、そのような治療がない場合に予期される生存を超越して延ばすのに効果的な量で使用することが好ましい。本明細書で使用する場合、腫瘍の「成長を阻害する」は、成長および転移の減速、中断、遅滞または停止を含み、腫瘍性成長の全消失を必ずしも示さない。本発明の化合物は、単回または複数回用量患者に投与したときに予防上抗腫瘍的に有効な量で、即ち、腫瘍病状の発症が起こるのを予防または遅延するのに効果的な量で、予防薬としても使用してもよい。本発明の方法および組成物を使用して治療できる特定の癌には、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、形成異常母斑、および悪性黒色腫が挙げられる。光老化細胞および多くの皮膚増殖性疾患が前癌状態癌細胞の特性を多く示し、本発明がそのような細胞の治療にも有効に採用され得ることは認識されよう。
【0219】
用語「新生組織形成」の一般的な医学的意味は、正常な成長制御に対する応答性の欠如として結果的に起こる「新しい細胞成長」、例えば、腫瘍性細胞成長を指す。「過形成」は、異常に大きい速度の成長を経る細胞を指す。しかし、本明細書で使用する場合、新生組織形成および過形成の用語は、互換的に使用でき、これらの状況が示すことになるように、異常な速度の細胞成長を経る細胞を一般に指す。新生組織形成および過形成は、良性、前癌状態または悪性のいずれかであり得る「腫瘤」を含める。
【0220】
本発明の化合物は、最初にイン・ビトロ(in vitro)で、腫瘍性細胞の増殖に対するそれらの化合物の阻害効果の試験を行ってもよい。使用できる細胞系の例は、形質転換細胞、例えば、ヒト前骨髄性白血病細胞系HL-60およびヒト骨髄性白血病細胞系U-937である(Abe Eら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1981、78、4990〜4994頁;L.N.SongおよびT.Cheng、Biochem Pharmacol、1992、43、2292〜2295頁;J.Y.Zhouら、Blood、1989、74、82〜93頁;US5401733;US5087619)。あるいは、このような薬剤の抗腫瘤効果は、参照により本明細書に組み込んだR.Bouillonら、Endocrine Reviews、1995、16(2)、233頁(表E)に要約されており当技術分野で知られる様々な動物モデルを使用してイン・ビボ(in vivo)で試験してもよい。例えば、SLマウスは、当技術分野ではMI骨髄性白血病用モデルとして慣用されている(Honmaら、Cell Biol、1983、80、201〜204頁;T.Kasukabeら、Cancer Res、1987、47、567〜572頁);乳癌の研究は、例えば、ヒトMX1(ER)用ヌードマウスモデルで実施できる(J.Abeら、Endocrinology、1991、129、832〜837頁);他の癌、例えば結腸癌、黒色腫、骨肉腫は、例えばヌードマウスモデルで特性化できる(J.A.Eismanら、Cancer Res、1987、47、21〜25頁;A.Kawauraら、Cancer Lett、1990、55、149〜152頁;A.Belleli、Carcinogenesis、1992、13、2293〜2298頁;H.Tsuchiyaら、J Orthopaed Res、1993、11、122〜130頁)。
【0221】
ある種の実施形態では、本発明の化合物は、癌の従来の化学療法との併用療法に使用できる。腫瘤の従来の治療計画には、放射線、薬物、またはその双方の組合せが挙げられる。急性腫瘤を治療するために、放射線に加えて、以下の薬物:ビンクリスチン、プレドニゾン、メトトレキサート、メルカプトプリン、シクロホスファミドおよびシタラビンを通常互いに組み合わせて使用する場合が多い。慢性白血病では、例えばブスルファン、メルファランおよびクロラムブシルは、組み合わせて使用できる。従来の抗癌剤のすべては、毒性が強く、治療を受けている間患者をひどく患わせる傾向がある。積極療法は、あらゆる癌性細胞が死滅するとは限らない場合、残留細胞が増殖し再発を起こすことになるという前提に基づいている。
【0222】
本発明の方法は、肺、胸部、リンパ球、消化管および尿生殖路を冒すような種々の臓器系の悪性腫瘍だけでなく、ほとんどの結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌および/または精巣腫瘤、肺の非小細胞癌、小腸の癌ならびに食道癌などの悪性腫瘍を含む腺癌も治療するのにも有用となり得る。
【0223】
用語「癌腫(カルシノーマ)」は、当技術分野で認識されており、呼吸器系癌腫、胃腸系癌腫、尿生殖器系癌腫、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌腫、および黒色腫を含めた上皮組織または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。例示的な癌腫には、頸部、肺、前立腺、胸部、頭部および首部、結腸ならびに卵巣の組織から形成する癌腫が挙げられる。この用語は、癌肉腫、例えば癌性組織および肉腫組織から構成される悪性腫瘤を含めた癌肉腫も含む。「腺癌」は、腺組織から誘導される癌腫、または腫瘤細胞が、認められる腺状構造を形成する癌腫を指す。
【0224】
用語「肉腫(サルコーマ)」は、当技術分野で認識されており、間葉誘導の悪性腫瘤を指す。
【0225】
レチノールデヒドロゲナーゼを阻害することにより内因性レチノイン酸レベルを低下させることが形質転換細胞の増殖の低減につながる一般的パラダイムによれば、本発明の方法に従って治療できる例示的な固形腫瘤には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛腫、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘤、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、および網膜芽腫などであるがその限りではない肉腫および癌腫が挙げられる。
【0226】
本発明の化合物の治療上抗腫瘍的に有効な量または予防上抗腫瘍的に有効な量は、当業者としての医師または獣医(「主治医」)が公知の技術を使用することによってかつ類似の状況下で得られる結果を観察することによって容易に決定できる。この投与量は、主治医が判断した患者の要件、治療される病状の重症度および採用される特定の化合物に応じて変えてもよい。治療上抗腫瘍的に有効な量または用量、および予防上抗腫瘍的に有効な量または用量を決定する際、病変している特定の過形成/腫瘍細胞;投与される特定の化合物;特定の化合物の薬力学的特性ならびにその投与様式および投与経路;治療の望ましい時間的経過;哺乳類の種類;その大きさ、年齢および総体的な健康状態;関与する特定の疾患;その疾患の程度、病変度または重症度;個々の患者の反応;投与される調製物のバイオアベイラビリティー特性;選択される投与計画;併用治療の種類(即ち他の同時投与される治療法と共に使用される化合物の相互作用);ならびに他の関連状況を含めるがそれらに限定されないいくつもの因子が、主治医によって考慮される。US5427916には、例えば、個々の患者における抗腫瘍療法の有効性を予測する方法が記載されており、本発明の治療試験計画と併せて使用できる特定の方法が説明されている。
【0227】
治療は、最適用量未満のより少ない投与量の化合物を使用して開始できる。次いで、この投与量を、そのような状況下で最適な効果が得られるまで少量ずつ増加すべきである。便宜上、1日の全投与量は、所望により、分割し、その日の間に数回で投与してもよい。動物、例えばイヌおよび齧歯類の腫瘤の予防または治療に効果があると決定される化合物は、ヒトの腫瘤の治療にも有用となり得る。ヒトの腫瘤を治療する当業者なら、動物実験で得られるデータに基づいて化合物のヒトへの投与量および投与経路がわかるであろう。一般に、ヒトの場合の投与量および投与経路は、動物の場合と同様であると予測される。投与量に関連するさらなる考慮すべき点を、以下に論じる。
【0228】
過形成/腫瘍性病状の予防的治療の必要がある患者の識別は、当業者の能力および知識の範囲内で十分できる。被検患者における特定の病状の発症の家族歴および該病状の発症と関連する危険因子の有無などの、本発明の化合物、組成物および方法により治療できる腫瘍性病状を発症する危険性のある患者の識別方法のいくつかは、医療分野で認識されている。本発明は、本発明の化合物、組成物および方法の使用についての臨床判断を行うためにまたはそれを高めるために使用できる他の予後検査も含む。当技術分野の臨床医は、例えば臨床検査、身体検査および病歴/家族歴の使用によってそのような候補患者を容易に識別できる。
【0229】
〔光老化〕
紫外線放射線への長期曝露の結果としての皮膚の構造要素および機能要素の変化は、まとめて光損傷、皮膚日射病(dermatoheliosis)または光老化と称される。
【0230】
正常な皮膚の滑らかで弾性的な特性は、表皮により与えられる保水バリア(Cork、J.Dermatol.Treat、1997、8、S7〜S13頁)ならびに真皮中の繊維状構造のタンパク質、コラーゲンおよびエラスチンによる支持によって維持される。紫外線放射線への慢性曝露によって、光老化と称される、皮膚中の巨視的変化および微視的変化が結果として起こる(Gilchrest、Br J Dermatol、1992、127、Suppl 41、14〜20頁)。光老化または光損傷した皮膚の臨床的特徴には、縮緬皺および粗い皺、色素変化、染み[光線性黒子(actinic lentigines)]、弛緩、荒れ、血色の悪さ、斑状の高色素沈着、毛細血管拡張症(目立つ微細血管)ならびに数種の良性、前癌状態および悪性の腫瘍が挙げられる。これらは、生活の質のある側面に重大な影響を及ぼす恐れがある(Gupta & Gupta、Journal of Dermatological Treatment、1996;Griffithsら、Griffiths、1992、7、261〜264頁)。組織学的には、表皮は、まず肥厚し、後期でケラチノサイトの異型および異形成を伴って萎縮性となる。皮膚弾性線維症およびメラニン細胞活性向上も認められる。光線性角化症ならびに基底細胞癌および扁平上皮細胞癌などの異形成変化および腫瘍性変化も、光損傷した皮膚の極端な特徴である。この真皮は、組織が破壊された塊として肥厚し劣化している増加した弾性繊維と減少したコラーゲンとを含有する。この皮膚血管は、拡張し蛇行している(Fisherら、Nature、1996、379、335〜339頁)。
【0231】
いくつかの二重盲検式臨床試験では、0.05%トレチノインが、光老化の臨床的特徴および組織学的特徴を低減し得ることが実証されている(Olsenら、J Am.Acad.Dermatol.、1992、26、215〜224頁;Weinsteinら、Arch Dermatol、1991、127、659〜65頁)。トレチノインの塗布後、表皮は厚くなり、奇形細胞核を有する不規則な大きさ、形の染色された細胞は、より健全に見えるケラチノサイトにとって代わられる(KligmanおよびGraham、J Dermatol.Treat、1993、4、113〜117頁;KligmanおよびLeyden、Skin Pharmacol、1993、6、78〜82頁)。これらの変化は、ケラチノサイトをより正常な分化パターンに「押し込む(pushing)」結果である(Marks、1996)。この仮説を支持して、レチノイドは、前癌状態の光線性角化症の急速な消失を起こすことが示されてきた。(Gilchrest、Br J Dermatol、1992、127、Suppl 41、14〜20頁;Moriartyら、Lancet、1982、1、364〜5頁)。
【0232】
老化は不可逆であると考えられてきたが、最近10年間で行われた研究では、いくつかの局所用化合物および外科手術が加齢による皮膚損傷を改善し得ることが示されてきた(Griffithsら、Archives of Dermatology、1995、131、1037〜1044頁;Roger & Fuleihan、Facelift and adjunctive procedures in the treatment of photodamaged skin,in Photodamage,B.A.Gilchrest編、Blackwell Science、1995、259〜285頁;Pierardら、Maturitas、1996、23、273〜277頁;Pierardら、Dermatology、1997、194、398〜401頁)。薬物治療は、日焼け止め剤、レチノイド、ビタミンCおよびEを含めた抗酸化剤ならびにβ-カロテン、α-ヒドロキシ酸およびエストロゲンからなる(Humphreysら、Journal of American Academy of Dermatology、1996、34、638〜644頁;Thibaultら、Dermatology Surgery、1998、24、573〜577頁;Weissら、JAMA、1998、259、527〜532頁)。様々な局所用処方薬および非処方薬は光損傷した皮膚を改善するために広く利用できるが、それらの効力は不明である。レチノイン酸の局所治療によって、真皮中のコラーゲンの合成が高まり、皺が消失する(Griffithsら、New England Journal of Medicine、1993、329、530〜535頁;Kligman、J Invest Dermatol、1987、88、12s〜17s頁;Kligmanら、Connect Tissue Res、1984、12、139〜50頁)。レチノイン酸の塗布によって、UV照射により生じた蛇行性弾性繊維にとって代わる線状弾性繊維の堆積も生じる。(Tsukaharaら、Br J Dermatol、1999、140、1048〜1053頁)。
【0233】
したがって、光老化皮膚に対する局所用および経口レチノイドの効果は、ケラチノサイトおよび線維芽細胞の分化プログラムの修正を含むと思われる。現在、光老化の治療および予防の際のレチノイドの使用は、それらの有害作用、主に催奇形性および皮膚刺激によって限定される。線維芽細胞の培養は、レチノイン酸によりイン・ビトロ(in vitro)でコラーゲンおよびエラスチンの生成が増加することを実証するために使用されてきた(Tajimaら、Dermatol Sci、1997、15、166〜7頁)。イン・ビトロ(in vitro)ケラチノサイト分化/増殖に対するレチノイン酸の効果は、ケラチン生成を定量化することによって研究されてきた(FuchsおよびGreen、Cell、1981、25、617〜25頁;Kimら、Proc.Natl.Acad.Sci.、1984、81、4280〜4284頁)。
【0234】
本発明の化合物、組成物および方法は、患者の光老化を治療するためにまたはその症状を軽減するために使用してもよい。光老化を患っている患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルを下げることによって、光損傷したまたは光老化した皮膚の組織学的改善および臨床改善が生じる。これらの改善は、阻害剤レチノールデヒドロゲナーゼの投与によって達成できる。
【0235】
したがって、本発明の化合物は、皮膚に局所塗布される場合、日光曝露により引き起こされた皮膚への損傷を和らげ遅らせるように光損傷に関連する病状を後退させる。日光曝露により引き起こされた損傷には、早期老化、弾性線維症および皺形成または前記の他の症状を挙げることができる。この損傷は、老齢な患者ほどより顕著である。光損傷に関連する病状を後退させるのに有効な量で本発明の化合物を皮膚に局所塗布することによって、より滑らかなより若い外観を有する皮膚を増強するように皮膚の修復が加速する。本発明の化合物は、光損傷により冒された皮膚の部分もしくは領域または治療するのが望ましいその部分もしくは領域に塗布されるべきである。本発明による本発明の化合物の使用によって、抗老化効果および抗皺形成効果が得られるだけでなく、日光により損傷した皮膚の修復を強化することもできる。
【0236】
本発明の化合物は、本発明に従って他で記載されるような従来の局所用組成物としてヒトの皮膚に塗布してもよい。これらの組成物は、本発明の化合物を体の皮膚、特に顔、脚、腕および手に塗布するために利用できる。最大の効果をもたらすための、本発明の化合物を局所塗布する好ましい方法は、患者の年齢が30〜55歳であって、弾性線維症が現れ始めより顕著になるときに開始すべきである。
【0237】
次いで、本発明の組成物は、患者に継続的に塗布することにより、日光曝露に関連する影響および傷害を低減することができる。通常、患者の年齢が約30歳に達するときに治療を開始し、弾性線維症の影響を低減するために一生を通じて治療を続け光損傷の任意のさらなる進行を予防することが好ましい。
【0238】
本発明の化合物は、本発明に従って、任意の従来の適切な局所用調製物として、即ち、局所投与に有用な任意の適切な従来の担体と組み合わせて投与できるが、これについては、本文献中の他の箇所でさらに詳細に記載する。したがって、本発明の化合物は、本発明に従って、クリーム、軟膏、石鹸、溶液、ローション、乳液、シャンプーなどの任意の適切な局所用組成物として投与できる。通常、最も有効な結果となるためには、これらの局所用組成物は、本発明の化合物を、全組成物の約0.01重量%〜約0.1重量%含有し、特に好ましくは組成物の約0.1重量%〜約0.01重量%の量を含有する。必要であれば、弾性線維症の性質および程度に応じて、もっと高濃度を利用してもよい。
【0239】
これらの組成物を処方する際には、本発明の化合物(複数も)がその中で安定できる任意の従来の非毒性で皮膚病薬として許容できる塩基または担体を利用してもよい。本発明で使用するための好ましい組成物は、化粧料として活性な成分を含有し得る従来の化粧料組成物であり、これをヒトの皮膚に局所投与することにより化粧料の効果が得られる。この組成物中に利用できる化粧料として活性な従来の材料には、日焼け止め剤、浸透促進剤、保湿剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、着色剤、調整剤、殺菌剤、収斂剤、洗浄剤などが挙げられる。本発明の局所用組成物は、所望により、適切な日焼け防止剤を含有してもよい。任意の従来の日焼け防止剤は、本発明に従って利用できる、本発明の化合物を含有する組成物を処方する際に利用できる。
【0240】
これらの局所用組成物は、局所用組成物を調製する際に汎用される従来の賦形剤および添加剤の任意のものを含有してもよい。本発明に従ってこれらの化粧料組成物を調製する際に利用できる従来の添加剤または賦形剤には、保存料、増粘剤、香料などがある。さらに、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸プロピル、クエン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エトキシキン、トコフェロールなどの従来の抗酸化剤をこれらの組成物中に組み込んでもよい。これらの局所用組成物は、局所塗布するために従来の許容できる担体を含有してもよい。これらの組成物は、一般に利用されているような増粘剤、保湿剤、乳化剤および粘度安定剤を含有してもよい。さらに、これらの組成物は、化粧料組成物を調製する際に常用されている香味料、着色剤、および香料も含有してもよい。この組成物中に含めてもよい他の成分は、本文献中の他の箇所に記載されている。
【0241】
本発明の化合物を含有する局所用組成物は、皮膚に塗布でき、好ましくは毎日1回皮膚に塗布すべきである。弾性線維症の後退を成し遂げることにより滑らかでより若い外観を皮膚に与えるには、局所用組成物を好ましくは6カ月間塗布すべきである。その後、本発明の化合物を含有する組成物は、より若くより滑らかな皮膚の効果を維持するために継続的に塗布すべきである。この調製物は、処方する医師により決定される患者の必要性に従って塗布してもよい。いずれにしても、その組成物を患者に塗布するための特定の計画は、通常、個人の年齢、体重および皮膚の病状によって決定されよう。
【0242】
UVB照射を受けた無毛マウスは、皮膚中の光線性弾性線維症用の好都合なモデルであることが見出されている(Kligmanら、J.Invest.Dermatol.、1982、78、181頁)。現実的な太陽曝露をシミュレートする低レベルのUVBを使用した照射によって、デスモシン含量により測定されるように皮膚エラスチンが著しく増加することがJohnstonらによって示されている(Johnstonら、J.Invest.Dermatol.、1984、82、587頁において)。エラスチンの酸加水分解から単離されるこのアミノ酸の量は、皮膚中に存在するエラスチンに比例する(Uittoら、Lab.Invest.、1973、49、1216頁)。局所用レチノイン酸を使用する、照射されたマウスの治療は、これまで弾性であった真皮が非照射組織の外観を有する皮膚の組織学的特徴を常態にすることが示されている(Kligmanら、Conn.Tissue Res.、1984、12、139頁;US4603146)。したがって、このモデルは、日光により損傷した皮膚を修復する上での化合物の効力を決定するために使用できる。
【0243】
ヒトに対する治療効力の評価は、医療専門家により容認される従来既知の任意の方法によって行うことができる。これは、例えば光老化の症状の臨床医による主観評価を含めてもよい。皮膚の皺形成または荒れは、関心のある領域、例えば、顔面皮膚の目尻の皺の領域のシリコーン模型の光学的形状計測法を使用して測定してもよい。顔および手の皺などの皮膚の臨床的測定も行うことができる。さらに、皮膚厚さの客観的測定は、Aスキャン型超音波パルス装置を使用して行うことができる。光老化を評価するこれらの方法および他の方法は、Cravenら、J.Derm.Treatment.、1996、7、Suppl 2、S23〜S27頁で概説されている。
【0244】
〔他の適応症〕
本発明の化合物、組成物および方法は、皮膚過剰増殖性疾患、癌および光老化以外に、他の軽病、病状および疾患を治療するために有用である。
【0245】
本発明の化合物、組成物および方法により治療または軽減し得る他の適応症には、任意のウイルス性疾患が挙げられる。
【0246】
レチノイドは、抗ウイルス効果を有することが知られており、ヒトパピローマウイルス(HPV)誘発性いぼなどのいくつかのウイルス性皮膚疾患は、レチノイド応答性である。HPVゲノムは、レチノイド応答要素を含有することが知られている。したがって、本発明の化合物、組成物および方法は、HPV、レンチウイルス感染、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス(BZLF1)、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、または肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルスもしくはC型肝炎ウイルス)感染を含めた任意のウイルス性疾患を治療するために使用してもよい。
【0247】
例えば、本発明の化合物、組成物および方法は、肥厚性瘢痕化およびケロイド瘢痕化の治療を含めた術後瘢痕化の治療に使用できる。さらに、本発明の化合物、組成物および方法は、メラニン形成刺激および色素形成調節のために使用してもよい。さらに、内因性レチノイン酸レベルの低減を使用して表皮バリア機能を調節してもよい。
【0248】
さらに、本発明の化合物、組成物および方法により治療し得る特定の病状、疾患などは、治療のためのレチノイド投与の副作用であるか、またはそれに相当することを特徴とするものである。したがって、現在のレチノイド療法は、薬理濃度のレチノイドを患者に経口投与または局所投与することを含むが、いくつもの望ましくない副作用を起こす結果となる。これらの副作用は、それ自体でレチノイド療法とは無関係の病状を呈する恐れがある。本文献中に提示する、内因性レチノイン酸レベルの低減を使用することにより、そのような病状を治療または軽減できる。
【0249】
したがって、経口レチノイドは骨成長を阻害することが知られている。患者の内因性レチノイン酸レベルの低減を使用することにより骨成長にプラスの影響を及ぼし得る。したがって、本発明の化合物、組成物および方法は、骨成長を阻害する任意の病状での骨成長を高める治療法として使用できる。そのような病状の例には、骨折修復および骨粗鬆症の治療が挙げられる。
【0250】
さらに、レチノイドの投与(例えば経口で)は、脂質異常症を起こす恐れがある。内因性レチノイン酸レベルの低減を使用することにより、高レベルの脂質が存在する任意の病状での脂質レベルを低減できる。レチノイドの投与は肝毒性も起こす恐れがあり、本発明の化合物、組成物および方法は、例えば肝硬変または肝炎感染に起因する肝臓の修復をもたらす手段として採用してもよい。内因性レチノイン酸レベルの低減を採用することにより、皮膚刺激を治療し、予防しまたは後退させることができる;レチノイドは、例えば、局所投与されると皮膚刺激を引き起こす恐れがあることが知られている。本発明の化合物、組成物および方法を使用することにより、様々な原因から生じる恐れのある脱毛症を治療しまたは後退させることができる;経口レチノイドは、脱毛症を引き起こすことが知られている。経口レチノイドは、精子形成および卵子の着床を妨げ、したがって受胎能を低下させることが知られているので、内因性レチノイン酸レベルの低減は、受胎能を高めるために、または不妊治療として使用できる。
【0251】
さらに、座瘡の治療としての経口レチノイド(例えばイソトレチノイン)の投与は、うつ病および自殺を引き起こすことが報告されている。したがって、本発明の化合物、組成物および方法は、他の公知の抗うつ薬を場合により組み合わせて、うつ病の治療として使用できる。例えば、季節性情動障害は、このように治療することができる。アテローム性動脈硬化症などの他の病状は、血管形成を伴う任意の病状と同様に治療できる。
【0252】
〔医薬組成物〕
本発明は、細胞内レチノイン酸レベルを低減し得る本発明の化合物を1種または複数含む医薬組成物にも関する。これらは、レチノールデヒドロゲナーゼの活性を阻害することによって作用し得る。
【0253】
本発明の化合物は単独で投与してもよいが、化合物を医薬製剤として処方することが好ましい。本発明の医薬組成物は、医薬として許容できる1種または複数の担体と合わせて有効量の本発明の化合物を含む。「有効量」は、細胞内レチノイン酸レベルを低減するのに、好ましくは細胞が増殖を停止し場合により分化を開始し得るのに、最も好ましくは皮膚増殖性疾患、癌、または光老化の症状を少なくとも1つ軽減するのに十分な量である。この有効量は、治療または軽減されるべき特定の疾患または症状だけでなく、患者の年齢および体重、病状の進行度、患者の総体的な健康状態、症状の重症度、ならびに本発明の化合物が単独で投与されているか他の治療法と組み合わせて投与されているかを含めた他の因子にも応じて変化するであろう。
【0254】
医薬組成物は、活性成分を複数含んでもよい。医薬組成物は、同時にまたは逐次的に、例えば順番に投与してもよい。
【0255】
医薬として許容できる適切な担体は、当技術分野では周知であり、医薬製剤の所望の投与形態および投与様式によって変化する。例えば、これらは、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、潤滑剤などの希釈剤または賦形剤を含んでもよい。通常、担体は、固体、液体もしくは揮発性の担体、またはその組合せである。各々の担体は、製剤中の他の成分と相容し患者に無害であるという意味で「許容し得る」べきである。この担体は、宿主に投与される際に有害反応(例えば免疫応答)を招くことなく生物に許容し得るべきである。
【0256】
本発明の医薬組成物には、局所投与および経口投与に適する医薬組成物が挙げられ、局所製剤は、冒された組織が主として皮膚または表皮である場合(例えば乾癬および他の表皮過剰増殖性疾患、光老化、皮膚癌など)に好ましい。局所製剤は、その組成物が、治療すべき皮膚表面と直接接触することにより外部から塗布される医薬形態を有する。局所塗布するための従来の医薬形態には、ソーク(soak)、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ジェル、スティック、スプレー、エアゾール、バスオイル、溶液などが挙げられる。局所治療の効果は様々な媒体によって送達され、媒体の選択は重要となり得るが、この選択は、一般に、治療すべき疾患が急性疾患か慢性疾患かに関連する。例として、急性皮膚増殖性疾患は、通常、水性の乾燥調製物を使用して治療される一方、慢性皮膚増殖性疾患は、含水調製物を使用して治療される。ソークは、急性の湿潤性皮疹を乾燥する最も簡単な方法である。ローション(水中粉末懸濁液)および溶液(溶媒中に溶解している薬物)は、有毛領域および間擦領域に理想的である。軟膏または油中水乳剤は、鱗屑様の乾性皮疹にふさわしい最も効果的な水和剤ではあるが、ベタベタしており、病巣の部位に左右され望ましくないこともある。適切な場合には、それらは、医薬組成物の病巣への浸透を高めることが望ましい場合に特に、帯具と組み合わせて塗布してもよい。クリームまたは水中油乳剤およびジェルは、吸収性があり、化粧料として最も患者に許容できる(Guzzoら、in Goodman & Gilman's Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、1996、1593〜1595頁)。クリーム製剤は、一般に、石油、ラノリン、ポリエチレングリコール、鉱油、グリセリン、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸グリセリル、セテアリルアルコール、酢酸トコフェリル、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリンアルコール、シメチコン、カルボマー、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、シクロメチコンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびにそれらの混合物などの成分を含む。局所塗布するための他の製剤には、洗髪剤、石鹸、振盪合剤など、特に、頭皮などの隠された皮膚の上に残留物を残すために配合されるものが挙げられる(Arndtら、
Dermatology in General Medicine、1993、2、2838頁)。
【0257】
一般に、局所製剤中の本発明の化合物の濃度は、組成物の約0.5〜50重量%、好ましくは約1〜30%、より好ましくは約2〜20%、最も好ましくは約5〜10%の量としてある。使用される濃度は、最初はその濃度範囲の上部であってもよく、治療が続くにつれて、その濃度を低減してもよいし製剤の塗布頻度を減らしてもよい。局所塗布は、多くの場合、毎日2回適用される。しかし、毎日1回のより大用量の塗布またはより高頻度のより小用量の塗布が効果的となり得る。角質層は、貯蔵所として作用することができ、成長し得る皮膚層中に薬物を徐々に長時間にわたって浸透させる。
【0258】
局所塗布では、所望の薬理効果を得るために、十分な量の本発明の化合物が患者の皮膚に浸透しなければならない。薬物の皮膚への吸収は、薬物の性質、媒体の挙動、および皮膚に左右されることが一般的に理解されている。3つの主要な変数は、異なる媒体中の異なる局所用薬物または同じ薬物の吸収速度または流動速度の差;媒体中の薬物の濃度、角質層と媒体との間の薬物の分配係数、および角質層中の薬物の拡散係数からなる。治療に効果的となるために、薬物は、皮膚のバリア機能を担う角質層を通過しなければならない。一般に、イン・ビトロ(in vitro)で高い皮膚浸透度を発揮する局所製剤は、イン・ビボ(in vivo)でも効果がある。Ostrengaら(R Pharm.Sci.、1971、60、1175〜1179頁)は、局所塗布されるステロイドのイン・ビボ(in vivo)効力がイン・ビトロ(in vitro)でのヒトの採取皮膚へのステロイド浸透速度に比例することを実証した。
【0259】
皮膚薬として許容でき本発明の化合物と相容する皮膚浸透促進剤を、皮膚表面から表皮ケラチノサイトへの化合物の浸透を高めるために製剤中に組み込んでもよい。皮膚への化合物の吸収を高めるスキンエンハンサー(skin enhancer)は、効果的な治療に必要な化合物の量を低減しかつ製剤のより長い持続的な効果をもたらす。皮膚浸透促進剤は、当技術分野で周知である。例えば、ジメチルスルホキシド(US3711602);オレイン酸および1,2-ブタンジオール界面活性剤(Cooper、J.Pharm.Sci.、1984、73、1153〜1156頁);エタノールおよびオレイン酸の組合せまたはオレイルアルコール(EP0267617);2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(WO87/03490);デシルメチルスルホキシドおよびAzone(Hadgraft、Eur.J Drug Metab.Pharmacokinet、1996、21、165〜173頁);アルコール、スルホキシド、脂肪酸、エステル、Azone、ピロリドン、尿素およびポリオール(Kalbitzら、Pharmazie、1996、51、619〜637頁);1,8-シネオール、メントン、リモネンおよびネロリドールなどのテルペン(Yamane、J.Pharmacy & Pharmacology、1995、47、978〜989頁);AzoneおよびTranscutol(Harrisonら、Pharmaceutical Res.、1996、13、542〜546頁);ならびにオレイン酸、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコール(Singhら、Pharmazie、1996、51、741〜744頁)は、活性成分の皮膚浸透を改善することが知られている。
【0260】
本発明の化合物の浸透レベルは、当業者に知られる技法によって決定できる。例えば、活性化合物を放射能標識し、次いで皮膚に吸収された放射能標識化合物の量を測定することによって、当業者は、試験化合物の皮膚浸透度を決定する数種の方法のいずれかを使用して吸収された組成物のレベルを決定できる。皮膚浸透研究に関連する文献には、W.G.ReinfenrathおよびG.S.Hawkins、The Weanling Yorkshire Pig as an Animal Model for Measuring Percutaneous Penetration、in Swine in Biomedical Research、M.E.Tumbleson編、Plenum、New York、1986;ならびにG.S.Hawkins、Methodology for the Execution of In Vitro Skin Penetration Determinations,in Methods for Skin Absorption、B.W.Kemppainen and W.G.Reifenrath編、CRC Press、Boca Raton、1990、67〜80頁;ならびにW.G.Reifenrath、Cosmetics & Toiletries、1995、110、3〜9頁が挙げられる。
【0261】
いくつかの塗布については、ポリマーなどの当技術分野で知られる製剤を使用して、長時間作用する形態で本発明の組成物を投与することが好ましい。さらに、本発明の化合物は、治療されるべき領域への薬物送達効率を高めるために、皮膚パッチ中に組み込んでもよいし(H.E.Junginger、Acta Pharmaceutica Nordica、1992、4、117頁;Thacharodiら、Biomaterials、1995、16、145〜148頁;R.Niedner、Hautarzt、1998、39、761〜766頁)、当技術分野で知られる方法に従って帯具中に組み込んでもよい。
【0262】
場合により、本発明の局所製剤は、賦形剤、例えば、メチルパラベン、ベンジルアルコール、ソルビン酸または第4級アンモニウム化合物などの保存料、EDTAなどの安定剤、ブチル化ヒドロキシトルエンまたはブチル化ヒドロキシアニソールなどの抗酸化剤、ならびにクエン酸塩およびリン酸塩などの緩衝液を追加で有してもよい。
【0263】
医薬組成物は、錠剤、カプセルまたは溶液の形態で経口製剤として投与してもよい。有効量の経口製剤は、増殖性疾患、癌または光老化などの症状が軽減されるまで毎日1〜3回患者に投与される。本発明の化合物の有効量は、患者の年齢、体重および病状に依存する。一般に、本発明の化合物の経口日用量は、100mg超、1200mg未満である。好ましい経口日用量は、約300〜600mgである。経口製剤は、単位投与量形態で便利に供給され、調剤分野で知られる任意の方法によって調製できる。その組成物は、医薬として許容できる適切な担体と共に、任意の望ましい投与量形態に処方できる。代表的な単位投与量形態には、錠剤、ピル、粉末、溶液、懸濁液、乳液、顆粒、カプセル、および坐剤が挙げられる。一般に、その製剤は、本発明の化合物と液体担体もしくは微粉化した固体担体またはその双方とを均一にかつ密接に組み合わせて、必要に応じて生成物を成形することによって調製される。有効量の活性成分を与えるために、液体、粉末、錠剤またはカプセルの形態で様々な基剤中に活性成分を組み込んでもよい。
【0264】
本発明での使用に適する他の治療薬は、意図される目的に対して効果のある任意の適合する薬物、または本製剤に対して補助的な薬物である。例として、本発明の製剤を使用する治療は、コルチコステロイド、カルシポトリエン、コールタール調製物を使用する局所治療、メトトレキセート、レチノイド、シクロスポリンAおよび光化学療法を使用する全身治療などの他の治療と組み合わせてもよい。併用治療は、急性または重度の皮膚増殖性疾患の治療に特に重要である。併用療法に利用される製剤は、併用効果が得られるように他の治療と併せて同時にまたは逐次的に投与してもよい。
【0265】
(合成実施例)
(実施例1)
(Z)-ブタ-2-エン二酸モノ-(11-メトキシカルボニル-4,4,6a,6b,8a,11,14b-ヘプタメチル-14-オキソ-1,2,3,4,4a,5,6,6a,6b,7,8,8a,9,10,11,12,12a,14,14a,14b-イコサヒドロ-ピセン-3-イル)エステル(YP013)
【0266】
【化54】

【0267】
無水マレイン酸(401mg、4.09mmol)を、室温でグリチルレチン酸メチル(150mg、0.310mmol)のトルエン(4ml)溶液に添加した。次いで、この溶液を加熱還流し(110℃)16時間撹拌した。次いで、この溶液を冷却しDCM(10ml)で希釈した。次いで、この有機溶液を2M HCl(10ml)で洗浄し、水層をDCM(3×10ml)で抽出し、有機層を乾燥した(MgSO4)。濾過後、溶液を、真空下で濃縮しフラッシュカラムクロマトグラフィー(2:1 DCM:EtOAc〜1:1 DCM:EtOAc)により精製することによって表題化合物YP013を白色固形物として得た(100mg、収率55%)。
LCMS純度89.63%(583.4=[M+H]+)。
1H NMR(250MHz,CDCl3)δ6.48(1H,d,J=12.8Hz,CO2HCH=CH)、6.36(1H,d,J=12.8Hz,CH=CHCO2C)、5.66(1H,s,C[O]CH=C)、4.70(1H,m,CO2CHCH2)、3.68(3H,s,CO2CH3)、2.88(1H,m,=CCHCH2)、2.36(1H,s,C[O]CHC)および2.14〜0.70(40H,m,ステロイドのCH,CH2およびCH3プロトン)。カップリング定数J=12.8Hzでは、化合物YP013はZ型であることを示している(D.H.WilliamsおよびI.Flemingによる、「Spectroscopic methods in organic chemistry」、McGraw-Hill Book Company、第4版、1989参照)。
【0268】
(実施例2)
フタル酸モノ-(11-メトキシカルボニル-4,4,6a,6b,8a,11,14b-ヘプタメチル-14-オキソ-1,2,3,4,4a,5,6,6a,6b,7,8,8a,9,10,11,12,12a,14,14a,14b-イコサヒドロ-ピセン-3-イル)エステル(YP015)
【0269】
【化55】

【0270】
無水フタル酸(468mg、3.16mmol)を、室温でグリチルレチン酸メチル(300mg、0.62mmol)およびDMAP(307mg、2.52mmol)のピリジン(10ml)溶液に添加した。次いで、この溶液を90℃まで加熱し16時間撹拌した。次いで、この溶液を冷却しDCM(20ml)で希釈した。次いで、この有機溶液を2M HCl(20ml)で洗浄し、水層をDCM(3×20ml)で抽出し、有機層を乾燥した(MgSO4)。濾過後、溶液を、真空下で濃縮しフラッシュカラムクロマトグラフィー(10:1 ヘプタン:EtOAc〜1:1 ヘプタン:EtOAc)により精製することによって表題化合物YP015を白色固形物として得た(280mg、収率71%)。
LCMS純度95.7%(631=[M-H]-)。
1H NMR(250MHz,MeOD)δ7.80〜7.56(4H,m,Ar-H)、5.58(1H,s,C[O]CH=C)、4.74(1H,m,CO2CHCH2)、3.68(3H,s,CO2CH3)、2.82(1H,m,=CCHCH2)、2.52(1H,s,C[O]CHC)および2.20〜0.74(41H,m,ステロイドのCH,CH2およびCH3プロトン)。
【0271】
(実施例3)
2,4a,6a,6b,9,9,12a-ヘプタメチル-13-オキソ-10-(3-オキソ-ブチリルオキシ)-1,2,3,4,4a,5,6,6a,6b,7,8,8a,9,10,11,12,12a,12b,13,14b-イコサヒドロ-ピセン-2-カルボン酸(YP016)
【0272】
【化56】

【0273】
N-ヒドロキシスクシンイミジルアセトアセテート(614mg、3.09mmol)を、室温でグリチルレチン酸(500mg、1.06mmol)のトルエン(10ml)およびDMF(2ml)からなる溶液に添加した。次いで、この溶液を加熱還流し(110℃)16時間撹拌した。次いで、この溶液を冷却しDCM(20ml)で希釈した。次いで、この有機溶液を2M HCl(20ml)で洗浄し、水層をDCM(3×20ml)で抽出し、有機層を乾燥した(MgSO4)。濾過後、溶液を、真空下で濃縮しフラッシュカラムクロマトグラフィー(10:1 ヘプタン:EtOAc〜1:1 ヘプタン:EtOAc)により精製することによって表題化合物YP016を黄色固形物として得た(90mg、収率15%)。
LCMS純度81.17%(556=[M+H]+)。
1H NMR(250MHz,CDCl3)δ5.68(1H,s,C[O]CH=C)、4.58(1H,m,CO2CHCH2)、3.44(3H,s,C[O]CH2CO2CH)、2.82(1H,m,=CCHCH2)、2.34(1H,s,C[O]CHC)、2.26(3H,s,CH3C[O]CH2)および2.22〜0.70(40H,m,ステロイドのCH,CH2およびCH3プロトン)。
【0274】
(実施例4)
フタル酸モノ-(11-カルボキシ-4,4,6a,6b,8a,11,14b-ヘプタメチル-14-オキソ-1,2,3,4,4a,5,6,6a,6b,7,8,8a,9,10,11,12,12a,14,14a,14b-イコサヒドロ-ピセン-3-イル)エステル(YP017)
【0275】
【化57】

【0276】
無水フタル酸(821mg、5.54mmol)を、室温でグリチルレチン酸(500mg、1.06mmol)およびDMAP(250mg、2.05mmol)のピリジン(15ml)溶液に添加した。次いで、この溶液を90℃まで加熱し16時間撹拌した。次いで、この溶液を2M HCl(20ml)で酸性化し、白色沈殿物が形成された。濾過後、粗固形物を、DCM(100ml)次いでMTBE(100ml)とともに粉砕することにより、表題化合物YP017を白色固形物として得た(50mg、収率8%)。
LCMS純度97.56%(617=[M-H]-、619=[M+H]+)。
1H NMR(250MHz,CDCl3)δ7.98(1H,m,Ar-H)、7.64〜7.46(4H,m,Ar-H)、5.68(1H,s,C[O]CH=C)、4.84(1H,m,CO2CHCH2)、2.92(1H,m,=CCHCH2)、2.38(1H,s,C[O]CHC)および2.22〜0.80(40H,m,ステロイドのCH,CH2およびCH3プロトン)。
【0277】
(実施例5)
2,2-ジメチル-コハク酸4-((3S,4aR,6aR,6bS,8aS,11S,12aR,14aR,14bS)-11-カルボキシ-4,4,6a,6b,8a,11,14b-ヘプタメチル-14-オキソ-1,2,3,4,4a,5,6,6a,6b,7,8,8a,9,10,11,12,12a,14,14a,14b-イコサヒドロ-ピセン-3-イル)エステル(YP022)
【0278】
【化58】

【0279】
ピリジン(15ml)中のグリチルレチン酸(0.5g、1.1mmol)、2,2-ジメチルコハク酸無水物(1.5g、11mmol)およびDMAP(130mg、1.1mmol)の混合物を、110℃で16〜20時間加熱し、冷却し、2M HCl水溶液(200ml)に添加し、固形物を収集した。乾燥後、粗固形物を、0〜10%メタノール入りDCMを溶出液として使用してシリカパッドを通して溶出することにより精製して、表題化合物YP022を白色固形物として得た(100mg)。
LCMS純度97.9%(597=[M-H]-)。
【0280】
(実施例6)
トランス-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸モノ-((3S,4aR,6aR,6bS,8aS,11S,12aR,14aR,14bS)-11-カルボキシ-4,4,6a,6b,8a,11,14b-ヘプタメチル-14-オキソ-1,2,3,4,4a,5,6,6a,6b,7,8,8a,9,10,11,12,12a,14,14a,14b-イコサヒドロ-ピセン-3-イル)エステル(YP023、立体異性体の混合物)
【0281】
【化59】

【0282】
グリチルレチン酸メチルエステル(500mg、1.0mmol)を、ピリジン(10ml)中に溶解した。DMAP(130mg、4.5mmol)およびトランス-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物(1.7g、11mmol)を添加し、この混合物を95℃に16時間加熱した。冷却後、この混合物を2M HCl水溶液(150ml)に添加し、固形物を濾過により収集した。このゴム状固形物を、DCMおよびメタノールの混合物中に溶解し、乾燥した(MgSO4)。1:1、次いで2:2のi-PrOAc:ヘプタンを使用して短いシリカパッドを通して溶出することにより精製を行うことによって、表題化合物YP023をオフホワイト色(off-white)固形物として得た(605mg)。
LCMS純度78.5%(637=[M-H]-)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ5.65(1H,s)、4.45(1H,m)、3.65(3H,s)、2.8〜2.6(3H,m)、2.4〜0.7(50H,m)。
【0283】
(実施例7)
シス-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸モノ-((3S,4aR,6aR,6bS,8aS,11S,12aR,14aR,14bS)-11-カルボキシ-4,4,6a,6b,8a,11,14b-ヘプタメチル-14-オキソ-1,2,3,4,4a,5,6,6a,6b,7,8,8a,9,10,11,12,12a,14,14a,14b-イコサヒドロ-ピセン-3-イル)エステル(YP024、立体異性体の混合物)
【0284】
【化60】

【0285】
ピリジン(15ml)中のグリチルレチン酸(0.5g、1.1mmol)、シス-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物(1.7g、11mmol)およびDMAP(130mg、4.5mmol)の混合物を、100℃で16〜20時間加熱することによって、黄色溶液を得た。冷却後、この混合物を、2M HCl水溶液(200ml)に添加し、固形物を収集し乾燥した。1:1の酢酸i-プロピル:ヘプタン、次いで2:1の酢酸i-プロピル:ヘプタンを使用してシリカパッドを通して溶出することにより、表題化合物YP024をオフホワイト色固形物として得た(135mg)。
LCMS純度88.2%(623=[M-H]-)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ5.68(1H,s)、4.55(1H,dd)、2.90〜2.70(6H,m)、2.45(1H,s)、2.45〜0.70(46H,m)。
【0286】
(実施例8)
シクロペンタ-1-エン-1,2-ジカルボン酸モノ-((3S,4aR,6aR,6bS,8aS,11S,12aR,14aR,14bS)-11-カルボキシ-4,4,6a,6b,8a,11,14b-ヘプタメチル-14-オキソ-1,2,3,4,4a,5,6,6a,6b,7,8,8a,9,10,11,12,12a,14,14a,14b-イコサヒドロ-ピセン-3-イル)エステル(YP026)
【0287】
【化61】

【0288】
ピリジン(15ml)中のグリチルレチン酸(0.5g、1.1mmol)、シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物(1.0g、7.2mmol)およびDMAP(130mg、4.5mmol)の混合物を、100℃で16〜20時間加熱することによって、黒色溶液を得た。冷却後、この混合物を、2M HCl水溶液(200ml)に添加し、暗色固形物を収集し乾燥した。この粗固形物を、1:1の酢酸i-プロピル:ヘプタンを使用してFlashMaster(商標)上の10gのシリカカートリッジを通して溶出することにより精製することで、表題化合物YP026を純粋な茶色固形物として得た(68mg)。
LCMS純度91.5%(607=[M-H]-)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ5.85(1H,s)、4.70(1H,dd)、3.0〜2.8(4H,m)、2.40(1H,s)、2.40〜0.80(43H,m)。
【0289】
(実施例9)
4-フルオロ-フタル酸1-((3S,4aR,6aR,6bS,8aS,11S,12aR,14aR,14bS)-11-カルボキシ-4,4,6a,6b,8a,11,14b-ヘプタメチル-14-オキソ-1,2,3,4,4a,5,6,6a,6b,7,8,8a,9,10,11,12,12a,14,14a,14b-イコサヒドロ-ピセン-3-イル)エステル、および4-フルオロ-フタル酸2-((3S,4aR,6aR,6bS,8aS,11S,12aR,14aR,14bS)-11-カルボキシ-4,4,6a,6b,8a,11,14b-ヘプタメチル-14-オキソ-1,2,3,4,4a,5,6,6a,6b,7,8,8a,9,10,11,12,12a,14,14a,14b-イコサヒドロ-ピセン-3-イル)エステル(YP032、位置異性体の混合物)
【0290】
【化62】

【0291】
トルエン(50ml)中に入ったグリチルレチン酸(1.0g、2.2mmol)および4-フルオロフタル酸無水物(1.0g、2.7mmol)の混合物を、48時間加熱還流し、次いでDMF(5ml)を添加して残留固形物をいくらか溶かし、加熱を24時間続けた。HPLCによれば新規生成物への変換は少ししか示されず、DMAP(27mg、0.22mmol)を添加し、加熱を3日間続け、次いで混合物を冷却した。濾過することにより固形物を得ることができなかったため、その混合物を濃縮しシリカクロマトグラフィー(溶出液:0〜5%メタノール入りDCM)により精製することによって、位置異性体の混合物である表題化合物YP032をオフホワイト色固形物として得た(220mg)。
LCMS純度97.9%(635.5=[M-H]-)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)(異性体の粗製混合物から選択した共鳴)δ8.11(1H,m,化合物1種)、7.8(1H,m,化合物1種)、7.7(1H,m,化合物1種)、7.35〜7.1(3H,m,化合物2種)、5.7(1H,s,化合物2種)、4.7(1H,m,化合物2種)、3.90(1H,d,化合物2種)、2.23(1H,br s,化合物2種)、2.2〜0.8(41H,m,化合物2種)。
【0292】
(実施例10)
ピラジン-2,3-ジカルボン酸モノ-((3S,4aR,6aR,6bS,8aS,11S,12aR,14aR,14bS)-11-メトキシカルボニル-4,4,6a,6b,8a,11,14b-ヘプタメチル-14-オキソ-1,2,3,4,4a,5,6,6a,6b,7,8,8a,9,10,11,12,12a,14,14a,14b-イコサヒドロ-ピセン-3-イル)エステル(YP034)
【0293】
【化63】

【0294】
グリチルレチン酸メチルエステル(1.0g、2.0mmol)をトルエン(25ml)中で撹拌し、2,3-ピラジン-ジカルボン酸無水物(1.7g、11.5mmol)を添加した。この混合物を、110℃で16〜20時間加熱した。冷却後、この混合物を、水(200ml)に添加し、酢酸i-プロピル(3×70ml)中に抽出し、乾燥し(MgSO4)、濃縮することによって、粗付加化合物を得た。シリカクロマトグラフィー(溶出液:0〜10%メタノール入りDCM)を使用して精製することによって、表題化合物を黄色固形物として得た(500mg)。
LCMS純度90.5%(633=[M-H]-)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ8.78(1H,br)、8.70(1H,br)、5.68(1H,s)4.88(1H,dd,J=11.6Hz,4.8Hz)、3.62(3H,s)、2.80(1H,br d)、2.35(1H,s)、2.1〜0.6(40H,m)。
【0295】
(生物学的実施例)
(実施例11)
〔正常ヒトケラチノサイト細胞の増殖に対する18β-グリチルレチン酸誘導体の効果〕
正常ヒトケラチノサイト細胞の増殖に対する5つの18β-グリチルレチン酸誘導体(カルベノキソロンナトリウムならびに本発明の化合物YP013、YP015、YP016およびYP017)の効果を測定するためのアッセイを実施した。正常ヒトケラチノサイト(NHEKa)細胞を、マルチウェルアッセイプレート(96)中で設定濃度の5つの各18β-グリチルレチン酸誘導体の存在下および不在下で5日間にわたって培養した。1ウェル当たり5000または2500個の細胞密度で播種したこの細胞をケラチノサイト成長培地(KGM)(Cascade Biologics)中で培養し、これに、KGMおよびDMSO中に溶解したレチノールおよび様々な濃度の18β-グリチルレチン酸誘導体を添加した。対照処理は、KGMのみ、KGMおよびレチノール、ならびにKGMおよびDMSOを含めた。
【0296】
5日後、市販のキット(CellTitre-Glo、Promega)を使用してATPレベル(細胞密度と直接関連する)のアッセイによって細胞増殖を決定した。適切な対照の存在下、増殖(ATPの生成により測定される細胞成長)の低減は、与えられた18β-グリチルレチン酸誘導体の抗増殖性効果を示す。
【0297】
図1aおよび1bは、カルベノキソロンナトリウムについて得られた結果を示す。図2a〜d、3a〜d、4a〜dおよび5a〜dは、それぞれ、本発明の4つの化合物、即ちYP013、YP015、YP016およびYP017について得られた結果を示す。本発明の化合物の場合、ATPレベルのアッセイを2回繰り返して行ったが、これらを、それぞれ、図a/b(標識(1))およびc/d(標識(2))に示す。
【0298】
図1aおよび1bから見てわかるように、カルベノキソロンナトリウムは、試験条件下でNHEKa細胞増殖を抑制する。
【0299】
図2〜5から見てわかるように、実施したアッセイの繰り返しの双方において、本発明の4つの各化合物を使用して細胞を処理した後のATPレベルは、本発明の化合物の濃度に依存する様式で、対照と比較して有意に低いことが判明した。この図は、少なくとも化合物YP013およびYP015が、抗増殖特性を有し、同等の濃度のカルベノキソロンナトリウムより効力があることも示す。
【0300】
(実施例12)
〔正常ヒトケラチノサイト細胞の増殖に対する18β-グリチルレチン酸誘導体の効果〕
カルベノキソロンおよび本発明の10個の18β-グリチルレチン酸誘導体(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP023、YP024、YP026、YP032およびYP034)を、これらの抗増殖活性を様々な濃度で決定するために、実施例11のNHEKa細胞バイアビリティーアッセイを使用して試験した。
【0301】
実施例11のNHEKa細胞バイアビリティーアッセイでは、特定の阻害剤を、適切な対照を含むシングルプレート上である範囲の濃度で試験した。カルベノキソロンと比較した各阻害剤の直接比較を得るために、各プレートが、カルベノキソロンに対して同じ濃度である範囲の異なる阻害剤を含有するように、アッセイの設計を修正した。この設計では、同じ濃度で使用する各阻害剤を比較したときのプレート間のばらつきを除いた。
【0302】
1ウェル当たり細胞5000個のマルチウェルプレート(96)で播種したNHEKa細胞を、最適化したNHEK成長培地(Medium 154、Cascade Biologics)中で5日間培養した時点で、細胞が溶解した懸濁液中に存在するATP量を間接的に定量した。この培地(各ウェル中に200μl)を、24時間成長後および72時間成長後に、レチノール(500nM最終濃度)と示した阻害剤とを含有する予熱した新鮮培地と取り替え、したがって治療期間は72時間であった。阻害剤、カルベノキソロン(CBX)および本発明の10個の18β-グリチルレチン酸誘導体(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP023、YP024、YP026、YP032およびYP034)を、1.0μM、2.5μM、5.0μMおよび10.0μMの最終濃度で含めた。CellTitre-Gloキット(Promega)を使用して定量化されるATPの量は、実験の終点で存在する生存細胞数の間接的な指標であり、対照培養(培地+レチノール)の比率(%)として示される発光として測定された。図6a〜dに示す結果は、標準誤差を示すエラーバーの付いた少なくとも3回の繰り返しの平均を示す。
【0303】
試験した阻害剤の最低濃度1.0μMでは、認められる発光の変化はほとんどまったくなかった(図6a)。この濃度を2.5倍に上げると、多くの処理した細胞の培養では、対照と比較して発光がかなり少ないことが示された(図6b)。これらの中には、誘導体YP022およびYP026以外に、カルベノキソロンにより処理された細胞も含まれる。阻害剤のその濃度を2倍にすることによって、発光に対する影響がかなり大きくなったが、このことは、未処理の対照と比較してカルベノキソロンにより処理された細胞中に検出された発光が41%しかないことによって例証される(図6c)。カルベノキソロンは、もはや最も活性な化合物ではなさそうであったことは興味深い。誘導体YP013では、結果として、対照と比較して発光が93%低下し、カルベノキソロンにより処理された細胞と比較して34%低下した。試験した最高濃度10.0μMの効果を、図6dに示す。10μMでは、試験したすべての阻害剤では、発光の低下が84%を超える結果であった。誘導体YP013では、発光を平均1000分の1に低下させることによって最大活性を実証した。
【0304】
ここで示した結果から、試験した本発明の10個の18β-グリチルレチン酸誘導体のすべてが、対照と比較して終点の発光を減少させることが実証される。本発明の10個の誘導体の内8個は、終点の発光を減少させる上でカルベノキソロンよりも高い能力を有する。発光量はATPの濃度に依存するので、発光の減少は、定量化可能なATPの減少と関連している。ATPの量は、存在する生存細胞の数にも同様に依存するため、ATPレベルが低下すると、結果として細胞の生存率が低下する。したがって、ここで試験した誘導体を用いた処理では、結果として生存細胞数が低下すると結論できる。
【0305】
(実施例13)
〔正常ヒトケラチノサイトの生存率に対する18β-グリチルレチン酸誘導体の効果〕
カルベノキソロンおよび本発明の6つの18β-グリチルレチン酸誘導体(YP013、YP015、YP016、YP023、YP024およびYP026)を使用して処理される場合の正常ヒトケラチノサイトの生存率を評価するためのアッセイを実施した。
【0306】
使用する細胞は、正常ヒトケラチノサイト(NHEKa)であった。すべての細胞は、ストックの維持管理のためのサプライヤーの指針に従ってT75フラスコ中で培養した。2代継代を経た細胞の凍結ストックを、T25フラスコ中で1cm2当たり細胞2.5×103個の播種密度で播種した。次いで、この細胞を5日間増殖させておき、2日毎に培地変更を行った。
【0307】
試験化合物すべてに対し4つの濃度、即ち1μM、2.5μM、5μMおよび10μM(最終濃度)で細胞処理培地を調製した。標準培地(処理なし)およびDMSOの細胞での対照処理も行った。
【0308】
すべての処理培地は、濾過によって滅菌し、使用済み培地の除去後T25フラスコに添加した。次いで、この細胞を37℃で24時間インキュベートした。
【0309】
処理培地をT25フラスコから除去し、5mlのPBSを使用して細胞を洗浄してから、1mlのトリプシン/EDTA(TE)(Cascade、Mansfield、UK)溶液を、そのフラスコに添加し、その細胞が増殖表面から離れるように約8〜10分間放置した。トリプシンを3mlのトリプシン中和剤(TN)(Cascade)を使用して中和した。次いで、この細胞を収集し各処理計画用の個別の15ml遠心分離管に移した。この細胞を180×gで7分間回転し、培地を除去した。
【0310】
その細胞を、1mlの氷冷PBS中で再懸濁してから微小遠心管に移し200×gで2分間回転した。PBSを除去し、その細胞を100μlの結合緩衝液(10mM Hepes、140mM NaCl、2.5mM CaCl2、pH7.4)中で再懸濁してから、5μlのヨウ化プロピジウム(PI)染色溶液(BD Biosciences、Cowley、UK)を添加した。この細胞を20℃で5分間インキュベートしてから、300μlの結合緩衝液を添加した後即時にフローサイトメトリー分析した。PI染色液を吸収した細胞は死んだものであり、PIで染色していない細胞は生存していた。細胞内での染色レベルは、フローサイトメトリーによって見ることができた。
【0311】
処理後の細胞の生存率は、DMSOのみ適用した場合を基準とする生存細胞の比率として記録した。この種の分析は、異なるバッチの細胞の増殖および生存の自然変動を考慮に入れる。バイアビリティー実験の結果を図7a〜gに示す。提示したデータは、3回繰り返した+SEMからのものである。
【0312】
図7aからから見てわかるように、SEMを考察すると1μMおよび2.5μMのカルベノキソロンの濃度で生存率はわずかに減少することが示され、低レベルのカルベノキソロンは、24時間経過後NHEKa細胞に対して若干細胞傷害性があり得ることが示唆される。図7b〜dの示すところによれば、化合物YP013、YP015およびYP016の4つの濃度のいずれででも生存率の減少がないことから、これらは、24時間経過後NHEKa細胞に対して細胞傷害性がないようであることが示唆される。生存率の若干の上昇は、化合物YP023、YP024およびYP026の4つの濃度すべてで示される(図7e〜g参照)。したがって、これらの化合物も、24時間経過後NHEKa細胞に対して細胞傷害性がないようであり、細胞の生存をいっそう促進し得る。
【0313】
したがって、カルベノキソロンを除外し得るとして、試験した化合物には、24時間のインキュベーション後NHEKa細胞の生存率を下げそうに思われるものは1つもない。カルベノキソロン自体は、1μMおよび2.5μMの濃度で若干の細胞傷害作用を有するようである。
【0314】
(実施例14)
〔イン・ビトロ(in vitro)での組み換え型ヒトレチノールデヒドロゲナーゼ酵素2(hRoDH-E2)活性に対する18β-グリチルレチン酸誘導体の効果〕
組み換え型ヒトレチノールデヒドロゲナーゼ酵素2活性に対するカルベノキソロンおよび本発明の8つの18β-グリチルレチン酸誘導体(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP024、YP026およびYP032)の効果は、これらの化合物がイン・ビトロ(in vitro)での組み換え型ヒトレチノールデヒドロゲナーゼ酵素2の活性を阻害し得るかどうかを決定するための分光アッセイを使用して評価した。
【0315】
過剰のレチノールを含有する緩衝液(10mM HEPES、150mM KCl、2mM EDTA、pH8.0;0.02% Tween 80;125μMレチノール)からなる反応混合液を調製した。予備実験から、十分な補因子が粗酵素源中に存在するため、これを反応緩衝液中に補完しないことにした。酵素源は、hRoDH-E2発現ベクターを形質移入された収集したE.coli RIL細胞から超音波処理した粗製上清(SS)としてBioCatalysis Centre、University of Exeterから提供を受けた。この超音波処理した上清は、広域スペクトルプロテアーゼ阻害剤(Roche Protease Inhibitor Cocktail錠剤)を含有する10mlの蒸留H2O中で1gの細胞ペーストを再懸濁することによって調製した。次いで、この細胞を、氷上の超音波処理によって機械的に破壊した。負の対照(ネガティブ・コントロール)として、E.coli RIL培養から発現ベクター(-hRoDH-E2)を除いた試料も提供を受けた。DMSO中に溶解した阻害剤、カルベノキソロン(Sigma Aldrich)および本発明の8つの18β-グリチルレチン酸誘導体(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP024、YP026およびYP032)を、DMSOが各場合において反応物全容積の2.5%のみを占めるように添加し、同時に2.5% DMSOのみを補充した対照アッセイを行った。阻害剤の低溶解性のため、達成し得る最高濃度は最終の250μMであった。この反応は、酵素の添加(反応物全容積の5%を占める)により開始し、レチノールからのレチナールの生成を測定するために400nmで監視した。レチナール生成率は、1分当たりのミリ吸光度単位(mAbs/分)の変化として決定した。
【0316】
マルチウェルアッセイプレート(96)には、阻害剤を必要な場合に含有するDMSO(最終反応物容積の2.5%)を予め入れた。必要数の反応物用の十分な基質緩衝液(反応物当たり185μl)とSS(反応物全容積の5%)とからなるマスター混合物を各プレート用に調製し、すぐに所望ウェル中に分注した。各ウェルの内容物を吸引混合し、プレートを、37℃に設定したマルチウェルプレートリーダー中に装填した。レチナールの生成を400nmで30分間監視し、その時間中に反応は、試験した各場合において、阻害されない条件下で600秒後に最大速度に達し1200秒後に減速し始めた。したがって、提示される各場合において反応率を決定するためにこれらのパラメータを使用した。
【0317】
E.coli RIL(-hRoDH-E2)を対照として使用し、これにより、30分後に吸光度の上昇はないことを実証した(データは示していない)ことから、レチナールはhRoDH-E2発現の不在下で生成しないことを実証した。DMSO(2.5%)を添加しても、組み換え型hRoDH-E2の不在下では吸光度の変化は生じなかった。DMSOは、2.5%を超える濃度でE.coli RIL(+hRoDH-E2)SS中で酵素活性を阻害することが判明したため、すべての阻害剤を、各場合において2.5%DMSOの全容積中に添加し、同容積のDMSOを含有する対照反応物と直接比較した。図8a〜hは、E.coli RIL(+hRoDH-E2)SS中のhRoDH-E2活性率に対する、カルベノキソロンと比較した本発明の8つの18β-グリチルレチン酸誘導体(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP024、YP026およびYP032)の、阻害剤の濃度を上げた際の効果を示す。250μMの濃度でのhRoDH-E2活性に対する9つの阻害剤すべての効果を図9にまとめる。
【0318】
E.coli RIL(+hRoDH-E2)SS中のレチノールデヒドロゲナーゼ活性を、実証した。この活性は、発現ベクターを持たないE.coli RIL対照細胞が活性を示さなかったことから、hRoDH-E2発現ベクターの有無に起因し得る。
【0319】
カルベノキソロンは、レチノールデヒドロゲナーゼ活性を阻害することが知られており、これは、400nmで吸光度を測定することにより測定される、レチノールからのレチナールの生成を低減するカルベノキソロンの能力によって検証した。アッセイに含めた対照反応から、カルベノキソロンまたはDMSOが存在してもしなくてもレチノールからレチナールへの非酵素的変換はないことを実証した。したがって、カルベノキソロンを含有する酵素反応でのレチナールの生成の減少は、組み換え型hRoDH-E2活性の阻害に起因すると結論できる。試験した本発明の8つの18β-グリチルレチン酸誘導体のすべては、カルベノキソロンと比較して同等か、またはより強く組み換え型hRoDH-E2を阻害することを示した。
【図面の簡単な説明】
【0320】
【図1a】図1a及び1bは、NHEKa増殖に対するカルベノキソロンナトリウムの効果を示す、比較のためのグラフである。
【図1b】図1a及び1bは、NHEKa増殖に対するカルベノキソロンナトリウムの効果を示す、比較のためのグラフである。
【図2a】図2a〜2dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP013)の効果を示すグラフである。
【図2b】図2a〜2dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP013)の効果を示すグラフである。
【図2c】図2a〜2dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP013)の効果を示すグラフである。
【図2d】図2a〜2dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP013)の効果を示すグラフである。
【図3a】図3a〜3dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP015)の効果を示すグラフである。
【図3b】図3a〜3dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP015)の効果を示すグラフである。
【図3c】図3a〜3dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP015)の効果を示すグラフである。
【図3d】図3a〜3dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP015)の効果を示すグラフである。
【図4a】図4a〜4dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP016)の効果を示すグラフである。
【図4b】図4a〜4dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP016)の効果を示すグラフである。
【図4c】図4a〜4dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP016)の効果を示すグラフである。
【図4d】図4a〜4dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP016)の効果を示すグラフである。
【図5a】図5a〜5dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP017)の効果を示すグラフである。
【図5b】図5a〜5dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP017)の効果を示すグラフである。
【図5c】図5a〜5dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP017)の効果を示すグラフである。
【図5d】図5a〜5dは、NHEKa増殖に対する本発明の化合物(YP017)の効果を示すグラフである。
【図6a】図6a〜6dは、カルベノキソロンおよび本発明の10個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP023、YP024、YP026、YP032およびYP034)の、NHEKa増殖に対する効果を示すグラフである。
【図6b】図6a〜6dは、カルベノキソロンおよび本発明の10個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP023、YP024、YP026、YP032およびYP034)の、NHEKa増殖に対する効果を示すグラフである。
【図6c】図6a〜6dは、カルベノキソロンおよび本発明の10個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP023、YP024、YP026、YP032およびYP034)の、NHEKa増殖に対する効果を示すグラフである。
【図6d】図6a〜6dは、カルベノキソロンおよび本発明の10個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP023、YP024、YP026、YP032およびYP034)の、NHEKa増殖に対する効果を示すグラフである。
【図7a】図7a〜7gは、カルベノキソロンおよび本発明の6個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP023、YP024およびYP026)の、NHEKa生存率に対する効果を示すグラフである。
【図7b】図7a〜7gは、カルベノキソロンおよび本発明の6個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP023、YP024およびYP026)の、NHEKa生存率に対する効果を示すグラフである。
【図7c】図7a〜7gは、カルベノキソロンおよび本発明の6個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP023、YP024およびYP026)の、NHEKa生存率に対する効果を示すグラフである。
【図7d】図7a〜7gは、カルベノキソロンおよび本発明の6個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP023、YP024およびYP026)の、NHEKa生存率に対する効果を示すグラフである。
【図7e】図7a〜7gは、カルベノキソロンおよび本発明の6個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP023、YP024およびYP026)の、NHEKa生存率に対する効果を示すグラフである。
【図7f】図7a〜7gは、カルベノキソロンおよび本発明の6個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP023、YP024およびYP026)の、NHEKa生存率に対する効果を示すグラフである。
【図7g】図7a〜7gは、カルベノキソロンおよび本発明の6個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP023、YP024およびYP026)の、NHEKa生存率に対する効果を示すグラフである。
【図8a】図8a〜8hは、E.coli RIL(+hRoDH-E2)SS中でアッセイし、400nmでのレチナールの生成を監視することにより決定されるhRoDH-E2活性率に対する、カルベノキソロンと比較した本発明の8個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP024、YP026およびYP032)の、阻害剤の濃度を上げた際の効果を示すグラフである。レチナール生成(mAbs/分)は、対照反応の比率(%)として表される(2.5%DMSO、阻害剤なし)。阻害剤はDMSO(最終濃度2.5%)中に溶解し、15.625〜250μMの範囲内の濃度で含まれる。カルベノキソロンの効果は、参照として含まれる。このアッセイは、SSの単一ストックに対して個別に3回繰り返され、SEMは、エラーバーによって示される。
【図8b】図8a〜8hは、E.coli RIL(+hRoDH-E2)SS中でアッセイし、400nmでのレチナールの生成を監視することにより決定されるhRoDH-E2活性率に対する、カルベノキソロンと比較した本発明の8個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP024、YP026およびYP032)の、阻害剤の濃度を上げた際の効果を示すグラフである。レチナール生成(mAbs/分)は、対照反応の比率(%)として表される(2.5%DMSO、阻害剤なし)。阻害剤はDMSO(最終濃度2.5%)中に溶解し、15.625〜250μMの範囲内の濃度で含まれる。カルベノキソロンの効果は、参照として含まれる。このアッセイは、SSの単一ストックに対して個別に3回繰り返され、SEMは、エラーバーによって示される。
【図8c】図8a〜8hは、E.coli RIL(+hRoDH-E2)SS中でアッセイし、400nmでのレチナールの生成を監視することにより決定されるhRoDH-E2活性率に対する、カルベノキソロンと比較した本発明の8個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP024、YP026およびYP032)の、阻害剤の濃度を上げた際の効果を示すグラフである。レチナール生成(mAbs/分)は、対照反応の比率(%)として表される(2.5%DMSO、阻害剤なし)。阻害剤はDMSO(最終濃度2.5%)中に溶解し、15.625〜250μMの範囲内の濃度で含まれる。カルベノキソロンの効果は、参照として含まれる。このアッセイは、SSの単一ストックに対して個別に3回繰り返され、SEMは、エラーバーによって示される。
【図8d】図8a〜8hは、E.coli RIL(+hRoDH-E2)SS中でアッセイし、400nmでのレチナールの生成を監視することにより決定されるhRoDH-E2活性率に対する、カルベノキソロンと比較した本発明の8個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP024、YP026およびYP032)の、阻害剤の濃度を上げた際の効果を示すグラフである。レチナール生成(mAbs/分)は、対照反応の比率(%)として表される(2.5%DMSO、阻害剤なし)。阻害剤はDMSO(最終濃度2.5%)中に溶解し、15.625〜250μMの範囲内の濃度で含まれる。カルベノキソロンの効果は、参照として含まれる。このアッセイは、SSの単一ストックに対して個別に3回繰り返され、SEMは、エラーバーによって示される。
【図8e】図8a〜8hは、E.coli RIL(+hRoDH-E2)SS中でアッセイし、400nmでのレチナールの生成を監視することにより決定されるhRoDH-E2活性率に対する、カルベノキソロンと比較した本発明の8個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP024、YP026およびYP032)の、阻害剤の濃度を上げた際の効果を示すグラフである。レチナール生成(mAbs/分)は、対照反応の比率(%)として表される(2.5%DMSO、阻害剤なし)。阻害剤はDMSO(最終濃度2.5%)中に溶解し、15.625〜250μMの範囲内の濃度で含まれる。カルベノキソロンの効果は、参照として含まれる。このアッセイは、SSの単一ストックに対して個別に3回繰り返され、SEMは、エラーバーによって示される。
【図8f】図8a〜8hは、E.coli RIL(+hRoDH-E2)SS中でアッセイし、400nmでのレチナールの生成を監視することにより決定されるhRoDH-E2活性率に対する、カルベノキソロンと比較した本発明の8個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP024、YP026およびYP032)の、阻害剤の濃度を上げた際の効果を示すグラフである。レチナール生成(mAbs/分)は、対照反応の比率(%)として表される(2.5%DMSO、阻害剤なし)。阻害剤はDMSO(最終濃度2.5%)中に溶解し、15.625〜250μMの範囲内の濃度で含まれる。カルベノキソロンの効果は、参照として含まれる。このアッセイは、SSの単一ストックに対して個別に3回繰り返され、SEMは、エラーバーによって示される。
【図8g】図8a〜8hは、E.coli RIL(+hRoDH-E2)SS中でアッセイし、400nmでのレチナールの生成を監視することにより決定されるhRoDH-E2活性率に対する、カルベノキソロンと比較した本発明の8個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP024、YP026およびYP032)の、阻害剤の濃度を上げた際の効果を示すグラフである。レチナール生成(mAbs/分)は、対照反応の比率(%)として表される(2.5%DMSO、阻害剤なし)。阻害剤はDMSO(最終濃度2.5%)中に溶解し、15.625〜250μMの範囲内の濃度で含まれる。カルベノキソロンの効果は、参照として含まれる。このアッセイは、SSの単一ストックに対して個別に3回繰り返され、SEMは、エラーバーによって示される。
【図8h】図8a〜8hは、E.coli RIL(+hRoDH-E2)SS中でアッセイし、400nmでのレチナールの生成を監視することにより決定されるhRoDH-E2活性率に対する、カルベノキソロンと比較した本発明の8個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP024、YP026およびYP032)の、阻害剤の濃度を上げた際の効果を示すグラフである。レチナール生成(mAbs/分)は、対照反応の比率(%)として表される(2.5%DMSO、阻害剤なし)。阻害剤はDMSO(最終濃度2.5%)中に溶解し、15.625〜250μMの範囲内の濃度で含まれる。カルベノキソロンの効果は、参照として含まれる。このアッセイは、SSの単一ストックに対して個別に3回繰り返され、SEMは、エラーバーによって示される。
【図9】図9は、15.625μMの濃度で使用されたカルベノキソロンおよび本発明の8個の化合物(YP013、YP015、YP016、YP017、YP022、YP024、YP026およびYP032)の、hRoDH-E2活性に対する効果を概略するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化2】

【化3】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
であり;
ただし:
R1が-ONaであるとき、R2
【化4】

ではなく;
R1が-OMeであるとき、R2
【化5】

(式中、RcはHまたはMeである)
ではなく;
R1が-OHであるとき、R2
【化6】

(式中、RdはHまたはnヘキシルである)
ではなく;
R1が-O-nヘキシルであるとき、R2
【化7】

ではなく;
R1が-OHまたは
【化8】

であるとき、R2
【化9】

ではない]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩。
【請求項2】
式IA:
【化10】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1が-OHである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R1が-OMeである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
R1が-ORaである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
R1が-ORaであり、Raが、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項7】
R1が-ORaであり、Raが、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を含有し、1、2または3個のヘテロ原子N、OまたはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されている直鎖または分枝鎖のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項8】
Raが、-OH、-NH2、-NHMe、-NHEt、または-CO2Hで置換されている、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
R1が、-NH2、-NHMe、-NMe2、-NHEtまたは-NEt2である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項10】
R1が-NMe2である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R2
【化11】

である、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
R2
【化12】

である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
R2
【化13】

である、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
R2
【化14】

とする、1種のシス-エナンチオマー、1種のトランス-エナンチオマー、2種のシス-エナンチオマーの混合物、2種のトランス-エナンチオマーの混合物、または2種のシス-および2種のトランス-エナンチオマーの混合物である、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
1種のシス-エナンチオマー、または2種のシス-エナンチオマーの混合物である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
R3および/またはR4が-Hまたは-Meである、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
R5が、-OH、-CO2Hまたは-CO2R6である、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
Xが-CO-である、請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
Yが水素またはフッ素である、請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
Yが水素である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
Yがフッ素である、請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
構造:
【化15】

を有する、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物および医薬として許容できる賦形剤、担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項24】
薬剤として使用するための、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を低減するための、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
レチノイン酸の生合成を妨げるための、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項27】
レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズするための、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)が、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である、請求項27に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項29】
患者の過剰増殖性障害または光老化を治療するための、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を低減し得る、請求項29に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項31】
前記患者の過剰増殖性細胞または光老化を患っている細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を低減し得る、請求項29または30に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項32】
細胞増殖を低減もしくは予防する程度までかつ/または細胞分化を活性化もしくは増強する程度まで前記患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を低減し得る、請求項29から31のいずれか一項に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項33】
前記過剰増殖性障害が、乾癬、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、光線性角化症、日光性角化症、扁平上皮内癌、基底細胞癌、魚鱗癬、角質増殖、ダリエー病などの角質化障害、掌蹠角皮症、毛孔性紅色粃糠疹、表皮母斑症候群、変異性紅斑角皮症、表皮剥離性角質増殖症、非水疱型魚鱗癬様紅皮症、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、癌、皮膚癌、黒色腫または皮膚線維腫を含む、請求項29から32のいずれか一項に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項34】
患者の細胞の増殖を低減または予防するための、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を低減し得る、請求項34に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項36】
前記細胞が過剰増殖性細胞である、請求項34または35に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項37】
細胞分化を誘発し得る、請求項34から36のいずれか一項に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項38】
患者の細胞中の分化プログラムを活性化または増強するための、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を低減し得る、請求項38に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項40】
レチノイドの投与により治療できるレチノイド感受性障害であるか、その症状がレチノイドの投与により軽減できるレチノイド感受性障害であるか、またはレチノイドの薬理レベルの投与の副作用に相当する障害を患っている患者の症状を治療または軽減するための、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項41】
レチノイン酸受容体応答要素(RARE)応答性遺伝子、ビタミンD応答要素(VDRE)応答性遺伝子、甲状腺ホルモン受容体応答要素応答性遺伝子、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)応答要素応答性遺伝子の異所性の発現、過剰発現そうでなければ異常発現を特徴とする疾患を患っている患者の症状を治療または軽減するための、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項42】
増殖と分化との不均衡を特徴とする疾患を患っている患者の症状を治療または軽減するための、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項43】
ウイルス感染、HPV感染、HIV感染、HSV感染、HCV感染、EBV感染、いぼ、術後瘢痕化、肥厚性瘢痕化もしくはケロイド瘢痕化、メラニン発生障害、色素沈着障害、増強もしくは損傷された表皮バリア機能、骨成長障害、骨折、骨粗鬆症、脂質異常症、肝毒性、肝硬変、肝炎感染、皮膚過敏、脱毛症、受胎障害、精子形成障害、卵子の着床障害、うつ病、季節性情動障害、アテローム性動脈硬化症、または血管形成障害である疾患、障害または病状を患っている患者を治療するための、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を低減し得る、請求項40から43のいずれか一項に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項45】
レチノイン酸の生合成を妨げ得る、請求項29から44のいずれか一項に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項46】
レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズし得る、請求項29から45のいずれか一項に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項47】
前記レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)が、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である、請求項46に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項48】
レチノイドの投与により治療できるレチノイド感受性障害であるか、その症状がレチノイドの投与により軽減できるレチノイド感受性障害であるか、またはレチノイドの薬理レベルの投与の副作用に相当する障害を患っている患者の症状を治療または軽減するための薬剤を製造するための、式I:
【化16】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化17A】

【化17B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩の使用。
【請求項49】
レチノイン酸受容体応答要素(RARE)応答性遺伝子、ビタミンD応答要素(VDRE)応答性遺伝子、甲状腺ホルモン受容体応答要素応答性遺伝子、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)応答要素応答性遺伝子の異所性の発現、過剰発現そうでなければ異常発現を特徴とする疾患を患っている患者の症状を治療または軽減するための薬剤を製造するための、式I:
【化18】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化19A】

【化19B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩の使用。
【請求項50】
患者の光老化を治療または予防するための薬剤を製造するための、式I:
【化20】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化21A】

【化21B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩の使用。
【請求項51】
患者の過剰増殖性障害を治療または予防するための薬剤を製造するための、式I:
【化22】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化23A】

【化23B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
であり;
ただし:
R1が-ONaであるとき、R2
【化24】

ではなく;
R1が-OHであるとき、R2
【化25】

ではない]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩の使用。
【請求項52】
前記化合物が構造:
【化26A】

【化26B】

【化26C】

を有する、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
前記過剰増殖性障害が、乾癬、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、光線性角化症、日光性角化症、扁平上皮内癌、基底細胞癌、魚鱗癬、角質増殖、ダリエー病などの角質化障害、掌蹠角皮症、毛孔性紅色粃糠疹、表皮母斑症候群、変異性紅斑角皮症、表皮剥離性角質増殖症、非水疱型魚鱗癬様紅皮症、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、癌、皮膚癌、黒色腫または皮膚線維腫である、請求項51または52に記載の使用。
【請求項54】
乾癬、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、光線性角化症、日光性角化症、扁平上皮内癌、基底細胞癌、魚鱗癬、角質増殖、ダリエー病などの角質化障害、掌蹠角皮症、毛孔性紅色粃糠疹、表皮母斑症候群、変異性紅斑角皮症、表皮剥離性角質増殖症、非水疱型魚鱗癬様紅皮症、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、皮膚癌、黒色腫または皮膚線維腫である、患者の過剰増殖性障害を治療または予防するための薬剤を製造するための、式I:
【化27】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化28A】

【化28B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩の使用。
【請求項55】
前記化合物が構造:
【化29A】

【化29B】

を有する、請求項54に記載の使用。
【請求項56】
患者の細胞の増殖を低減または予防するための薬剤を製造するための、式I:
【化30】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化31A】

【化31B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩の使用。
【請求項57】
患者の細胞中の分化プログラムを活性化または増強するための薬剤を製造するための、式I:
【化32】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化33A】

【化33B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩の使用。
【請求項58】
増殖と分化との不均衡を特徴とする疾患を患っている患者の症状を治療または軽減するための薬剤を製造するための、式I:
【化34】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化35A】

【化35B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩の使用。
【請求項59】
ウイルス感染、HPV感染、HIV感染、HSV感染、HCV感染、EBV感染、いぼ、術後瘢痕化、肥厚性瘢痕化もしくはケロイド瘢痕化、メラニン発生障害、色素沈着障害、増強もしくは損傷された表皮バリア機能、骨成長障害、骨折、骨粗鬆症、脂質異常症、肝毒性、肝硬変、肝炎感染、皮膚過敏、脱毛症、受胎障害、精子形成障害、卵子の着床障害、うつ病、季節性情動障害、アテローム性動脈硬化症、または血管形成障害である、患者の疾患、障害または病状を治療または予防するための薬剤を製造するための、式I:
【化36】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化37】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
であり;
ただし:
R1が-ONaであるとき、R2
【化38】

ではなく;
R1が-OMeであるとき、R2
【化39】

ではなく;
R1が-OHであるとき、R2
【化40】

ではなく;
R1が-O-nヘキシルであるとき、R2
【化41】

ではない]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩の使用。
【請求項60】
前記化合物が構造:
【化42】

を有する、請求項59に記載の使用。
【請求項61】
HPV感染、HIV感染、HCV感染、EBV感染、いぼ、術後瘢痕化、肥厚性瘢痕化もしくはケロイド瘢痕化、メラニン発生障害、色素沈着障害、増強もしくは損傷された表皮バリア機能、骨成長障害、骨折、骨粗鬆症、脂質異常症、肝毒性、肝硬変、肝炎感染、皮膚過敏、脱毛症、受胎障害、精子形成障害、卵子の着床障害、うつ病、季節性情動障害、アテローム性動脈硬化症、または血管形成障害である、患者の疾患、障害または病状を治療または予防するための薬剤を製造するための、式I:
【化43】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化44】

【化45】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩の使用。
【請求項62】
前記化合物が構造:
【化46A】

【化46B】

を有する、請求項61に記載の使用。
【請求項63】
前記薬剤が前記患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を低減し得る、請求項48から62のいずれか一項に記載の使用。
【請求項64】
前記薬剤が、前記患者の過剰増殖性細胞または光老化を患っている細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を低減し得る、請求項63に記載の使用。
【請求項65】
前記薬剤が、細胞増殖を低減もしくは予防する程度までかつ/または細胞分化を活性化もしくは増強する程度まで前記患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性を低減し得る、請求項63または64に記載の使用。
【請求項66】
前記薬剤が細胞分化を誘発し得る、請求項48から65のいずれか一項に記載の使用。
【請求項67】
前記薬剤がレチノイン酸の生合成を妨げ得る、請求項48から66のいずれか一項に記載の使用。
【請求項68】
前記薬剤がレチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズし得る、請求項48から67のいずれか一項に記載の使用。
【請求項69】
前記レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)が、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である、請求項68に記載の使用。
【請求項70】
レチノイドの投与により治療できるレチノイド感受性障害であるか、その症状がレチノイドの投与により軽減できるレチノイド感受性障害であるか、またはレチノイドの薬理レベルの投与の副作用に相当する障害を患っている患者の症状を治療または軽減する方法であって、式I:
【化47】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化48A】

【化48B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩を治療有効量で前記患者に投与する段階を含む方法。
【請求項71】
レチノイン酸受容体応答要素(RARE)応答性遺伝子、ビタミンD応答要素(VDRE)応答性遺伝子、甲状腺ホルモン受容体応答要素応答性遺伝子、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)応答要素応答性遺伝子の異所性の発現、過剰発現そうでなければ異常発現を特徴とする疾患を患っている患者の症状を治療または軽減する方法であって、式I:
【化49】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化50A】

【化50B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩を治療有効量で前記患者に投与する段階を含む方法。
【請求項72】
患者の光老化を治療または予防する方法であって、式I:
【化51】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化52A】

【化52B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩を治療有効量または予防有効量で前記患者に投与する段階を含む方法。
【請求項73】
患者の過剰増殖性障害を治療または予防する方法であって、式I:
【化53】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化54A】

【化54B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
であり;
ただし:
R1が-ONaであるとき、R2
【化55】

ではなく;
R1が-OHであるとき、R2
【化56】

ではない]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩を治療有効量または予防有効量で前記患者に投与する段階を含む方法。
【請求項74】
前記化合物が構造:
【化57】

【化58A】

【化58B】

を有する、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記過剰増殖性障害が、乾癬、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、光線性角化症、日光性角化症、扁平上皮内癌、基底細胞癌、魚鱗癬、角質増殖、ダリエー病などの角質化障害、掌蹠角皮症、毛孔性紅色粃糠疹、表皮母斑症候群、変異性紅斑角皮症、表皮剥離性角質増殖症、非水疱型魚鱗癬様紅皮症、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、癌、皮膚癌、黒色腫または皮膚線維腫である、請求項73または74に記載の方法。
【請求項76】
乾癬、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、光線性角化症、日光性角化症、扁平上皮内癌、基底細胞癌、魚鱗癬、角質増殖、ダリエー病などの角質化障害、掌蹠角皮症、毛孔性紅色粃糠疹、表皮母斑症候群、変異性紅斑角皮症、表皮剥離性角質増殖症、非水疱型魚鱗癬様紅皮症、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、皮膚癌、黒色腫または皮膚線維腫である、患者の過剰増殖性障害を治療または予防する方法であって、式I:
【化59】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化60A】

【化60B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩を治療有効量または予防有効量で前記患者に投与する段階を含む方法。
【請求項77】
前記化合物が構造:
【化61A】

【化61B】

を有する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
患者の細胞増殖を低減または予防する方法であって、治療有効量または予防有効量の式I:
【化62】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化63A】

【化63B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩と該細胞とを接触させる段階を含む方法。
【請求項79】
患者の細胞中の分化プログラムを活性化または増強する方法であって、治療有効量または予防有効量の、式I:
【化64】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化65A】

【化65B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩と前記細胞とを接触させる段階を含む方法。
【請求項80】
増殖と分化との不均衡を特徴とする疾患を患っている患者の症状を治療または軽減する方法であって、式I:
【化66】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化67A】

【化67B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩を治療有効量で前記患者に投与する段階を含む方法。
【請求項81】
ウイルス感染、HPV感染、HIV感染、HSV感染、HCV感染、EBV感染、いぼ、術後瘢痕化、肥厚性瘢痕化もしくはケロイド瘢痕化、メラニン発生障害、色素沈着障害、増強もしくは損傷された表皮バリア機能、骨成長障害、骨折、骨粗鬆症、脂質異常症、肝毒性、肝硬変、肝炎感染、皮膚過敏、脱毛症、受胎障害、精子形成障害、卵子の着床障害、うつ病、季節性情動障害、アテローム性動脈硬化症、または血管形成障害である、患者の疾患、障害または病状を治療または予防する方法であって、式I:
【化68】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化69A】

【化69B】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
であり;
ただし:
R1が-ONaであるとき、R2
【化70】

ではなく;
R1が-OMeであるとき、R2
【化71】

ではなく;
R1が-OHであるとき、R2
【化72】

ではなく;
R1が-O-nヘキシルであるとき、R2
【化73】

ではない]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩を治療有効量または予防有効量で前記患者に投与する段階を含む方法。
【請求項82】
前記化合物が構造:
【化74】

を有する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
HPV感染、HIV感染、HCV感染、EBV感染、いぼ、術後瘢痕化、肥厚性瘢痕化もしくはケロイド瘢痕化、メラニン発生障害、色素沈着障害、増強もしくは損傷された表皮バリア機能、骨成長障害、骨折、骨粗鬆症、脂質異常症、肝毒性、肝硬変、肝炎感染、皮膚過敏、脱毛症、受胎障害、精子形成障害、卵子の着床障害、うつ病、季節性情動障害、アテローム性動脈硬化症、または血管形成障害である、患者の疾患、障害または病状を治療または予防する方法であって、式I:
【化75】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化76】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩を治療有効量または予防有効量で前記患者に投与する段階を含む方法。
【請求項84】
前記化合物が構造:
【化77】

【化78A】

【化78B】

を有する、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性が低減される、請求項70から84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記患者の過剰増殖性細胞または光老化を患っている細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性が低減される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
細胞増殖を低減もしくは予防する程度までかつ/または細胞分化を活性化もしくは増強する程度まで前記患者の細胞中のレチノイン酸の内因性レベルまたは活性が低減される、請求項85または86に記載の方法。
【請求項88】
細胞分化が起こる、請求項70から87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
レチノイン酸の生合成を妨げる段階を含む、請求項70から88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)をアンタゴナイズする段階を含む、請求項70から89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)が、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
治療されるべき前記患者が哺乳動物である、請求項23から91のいずれか一項に記載の化合物、医薬組成物、使用または方法。
【請求項93】
前記哺乳動物がヒトである、請求項92に記載の化合物、医薬組成物、使用または方法。
【請求項94】
酵素を阻害するための、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項95】
前記酵素がレチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)である、請求項94に記載の化合物または医薬組成物。
【請求項96】
レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)である酵素を阻害するための薬剤を製造するための、式I:
【化79】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化80】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩の使用。
【請求項97】
阻害量の、式I:
【化81】

[式中、
R1は-ORaまたは-N(Ra)2であり;
Raは、水素、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を含有し、1、2もしくは3個のヘテロ原子N、OもしくはSをその炭素骨格中に任意選択で含んでいてもよい、置換されているもしくは置換されていない直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり;
R2
【化82】

(R3およびR4は、独立に、水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり;
R5は、-OH、-CO2H、-CO2R6、-SO3H、または-PO3H2であり;
R6は、1、2、3または4個の炭素原子を含有する、置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基であり;
Xは-CO-または-CH2-であり;
Yは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-Me、または-OMeであり;
Zは、-NH-、-O-、または-S-である)
である]
を有する化合物または医薬として許容できるその塩をその必要のある患者に投与する段階を含む、レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)である酵素を阻害する方法。
【請求項98】
前記レチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)が、RoDH1、RoDH2、RoDH3、RoDH4、CRAD1、CRAD2、RDH5、retSDR1またはhRoDH-E2(公式遺伝子記号DHRS9)である、請求項95から97のいずれか一項に記載の化合物、医薬組成物、使用または方法。
【請求項99】
前記酵素の阻害が、イン・ビトロ、エクス・ビボ、またはイン・ビボで起こる、請求項94から98のいずれか一項に記載の化合物、医薬組成物、使用または方法。
【請求項100】
18β-グリチルレチン酸を出発物質として使用する、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物を合成する方法。
【請求項101】
18β-グリチルレチン酸の3-ヒドロキシル基がエステル化またはアルキル化される、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
18β-グリチルレチン酸の20-カルボキシル基がエステル化されるか、またはアミド基に変換される、請求項100または101に記載の方法。

【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図8f】
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【図8g】
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【図8h】
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【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図7f】
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【図7g】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−529572(P2009−529572A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558912(P2008−558912)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050118
【国際公開番号】WO2007/105015
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(304051609)ヨーク・ファーマ・ピーエルシー (4)
【Fターム(参考)】