説明

18−メチル−19−ノル−17−プレグン−4−エン−21,17−カルボラクトンおよびこれを含有する製剤

本発明は、一般式 (I) の新規な18-メチル-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトンに関する: 式中、Zは酸素原子、2つの水素原子、=NORまたは=NNHSO2R基であり、ここでRは水素原子または1〜4または3〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基であり、R4は水素原子、ハロゲン原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であり、R6および/またはR7はα-またはβ-位置に存在することができ、互いに独立して、1〜4または3〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基であるか、あるいはR6は水素原子であり、そしてR7はα-またはβ-位置、または1〜4または3〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基であるか、あるいはR6およびR7の各々は水素原子であるか、あるいはR6およびR7は一緒になってα-またはβ-位置のメチレン基または追加の結合である。新規な化合物は、発情および抗ミネラルコルチコイド作用を有し、製剤、例えば、経口避妊薬の製造および閉経期前、閉経期付近または閉経期後の症候群の治療に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記一般式Iの18-メチル-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトンに関する:
【化1】

【0002】
式中、
Zは酸素原子、2つの水素原子、=NORまたは=NNHSO2R基であり、ここでRは水素原子または1〜4または3〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基であり、
R4は水素原子、ハロゲン原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であり、
R6および/またはR7はα-またはβ-位置に存在することができ、互いに独立して、1〜4または3〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基であるか、あるいは
R6は水素原子であり、そしてR7はα-またはβ-位置にある1〜4または3〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基であるか、あるいは
R6およびR7の各々は水素原子であるか、あるいは
R6およびR7は一緒になってα-またはβ-位置のメチレン基または追加の結合である。
Zは好ましくは酸素原子である。
【0003】
Zが=NORまたは=NNHSO2R基である場合、Rは好ましくは水素原子である。
1〜4または3〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソプロピル、イソブチルまたはt-ブチル基である。
R4は好ましくはハロゲン原子である。
ハロゲン原子R4として、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素は適当であり、なかでも、塩素は好ましい。
【0004】
R6および/またはR7が1〜4または3〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基である場合、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソプロピル、イソブチルまたはt-ブチル基がこれに関して考慮される。
R6およびR7は好ましくは水素原子およびメチル基であるか、あるいは一緒になってメチレン基または二重結合である。
【0005】
後述する化合物は本発明に従い特に好ましい:
18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグナ-4,6-ジエン-21,17-カルボラクトン、
18-メチル-6α,7α-15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
18-メチル-6β,7β-15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
7α,18-ジメチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
7β,18-ジメチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
【0006】
3-ヒドロキシルアミノ-18-メチル-6β,7β-15β,16β-ジメチレン-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
4-クロロ-18-メチル-6β,7β-15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
7α-エチル-18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
7β-エチル-18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-7α-プロピル-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-7β-プロピル-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン。
【0007】
ドロスピレノン (6β,7β-15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-17-プレグン-4-エン-21,17β-カルボラクトン) は新規なゲスタゲンであり、例えば、経口避妊薬YASMIN (商標) および閉経期後の症候群を治療するための製剤ANGELIQ (商標) (両方共SCHERING AG) 中に含有されている。ゲスタゲンレセプターに対する比較的低いアフィニティーおよび比較的高い排卵抑制投与量に基づいて、YASMIN (商標) 中の
【0008】
【化2】

【0009】
ドロスピレノンは、3 mgの比較的高い1日量で含有されている。ドロスピレノンは黄体ホルモン様作用に加えて、アルドステロン拮抗 (抗ミネラルコルチコイド) 作用ならびに抗アンドロゲン作用を有することを特徴とする。これらの2つの特性はドロスピレノンをその薬理学的面において自然のゲスタゲンプロゲステロンに非常に類似させる。しかしながら、ドロスピレノンと異なり、自然のゲスタゲンプロゲステロンは経口的に生物学的に利用可能ではない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、ゲスタゲンレセプターにドロスピレノンよりも強く結合し、こうしてドロスピレノンよりも高いゲスタゲン力を有する化合物を入手可能とすることである。これは究極的により低い1日量を表示し、活性化合物の要求量をより低くする。
【0011】
この目的は、本明細書に記載する一般式Iの18-メチル-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトンの製造により達成される。一般式Iの化合物 (および特に化合物3b、実験の部参照) は、ドロスピレノンの構成的異性体と見なすことができる。新規な化合物は、ゲスタゲン結合試験において区別される。この試験において、ウサギ子宮ヒモジネートからの細胞質ゾルおよび参照物質として3H-プロゲステロンを使用し、新規な化合物はドロスピレノンよりも高いアフィニティーをゲスタゲンレセプターに対して有し、そしてラット腎臓ホモジネートからのミネラルコルチコイドに対して匹敵するアフィニティーを有する。
【0012】
この場合において、ゲスタゲンレセプターに対する結合性は、十分に驚くべきことには、ドロスピレノンのそれに対して5倍まで強い。
本発明による化合物は、十分に驚くべきことには、強い黄体ホルモン様作用により区別され、皮下投与後、ラットにおける妊娠維持試験において大きく有効である。
【0013】
ラットにおける妊娠維持試験の評価:
妊娠したラットにおいて、黄体の除去または去勢は流産を誘導する。プロゲスチン (ゲスタゲン) を適当な投与量のエストロゲンと組合わせて外因的に供給することによって、妊娠を維持することができる。卵巣摘出したラットにおける妊娠維持試験は、化合物の抹消性ゲスタゲン活性を決定する働きをする。
【0014】
ラットを発情前期の一夜の間つがわせる。次の朝、膣スミア検査により交尾を検査する。この場合において、精子の存在は妊娠開始の第1日として考慮する。妊娠の第8日に、動物をエーテル麻酔下に卵巣摘出する。試験化合物および外因的エストロゲン (エストロン、5μg/kg/日) を使用する処置を、妊娠の第8日〜第15日または第21日に1日1回皮下的に実施する。第8日における最初の投与は去勢2時間前に実施する。健全な対照動物に、賦形剤のみを投与する。
【0015】
評価:
試験の終わり (第15日または第21日) において、動物をCO2雰囲気下に殺し、両方の子宮角中の生きている胎児 (拍動する心臓を有する) および着床部位 (初期の吸収および自己分解および萎縮胎盤を含む死亡した胎児) を計数する。さらに、第22日に、胎児を奇形について検査することができる。胎児または着床部位を含まない子宮において、10%の硫化アンモニウム溶液で染色することによって、卵着床部位の数を決定する。
【0016】
生きている胎児の数および卵着床部位の総数 (再吸収された胎児および死亡した胎児の両方ならびに卵着床部位) の商として、妊娠維持率を計算する。この場合において、試験物質18-メチル-6α,7α-15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン (化合物3a、実験の節参照) について、120μg/kg/日の妊娠維持投与量 (ED50) が決定された。ドロスピレノンについて、この値は3.5 mg/kg/日である。
【0017】
本発明による一般式Iの化合物は、非常に強いゲスタゲン作用を有すると同時にアンドロゲンレセプターに対してより弱い結合性 (解離性) を有する。
さらに、本発明による化合物は、副腎摘出したラットにおいてカリウム保持、ナトリウム排泄増加 (抗ミネラルコルチコイド) 作用を示すことが発見された。
それらのゲスタゲン作用に基づいて、一般式Iの新規な化合物はそれら自体で、またはエストロゲンと組合わせて避妊製剤において使用できる。
【0018】
それらの利点を有するために、本発明による化合物は、月経前の症候群、例えば、頭痛、抑鬱気分障害、水分貯留および乳房痛の治療にことに十分に適する。
避妊薬における本発明による化合物の投与量は、0.01〜5 mg/日、好ましくは0.01〜2 mg/日である。
月経前の症候群の治療における1日量は0.1〜20 mgである。
ゲスタゲン活性成分およびエストロゲン活性成分は、避妊製剤において一緒に経口投与することが好ましい。1日量は好ましくは1回で投与される。
【0019】
エストロゲンとして、合成エストロゲン、好ましくはエチニルエストラジオールが考えられるが、またメストラノールが考えられる。
エストロゲンは、毎日0.01〜0.04 mgのエチニルエストラジオールに対応する量で投与される。
一般式Iの新規な化合物は、また、閉経期前、閉経期付近および閉経期後の症候群、ならびにホルモン置換療法 (HRT) の製剤において使用することができる。
【0020】
このような製剤におけるエストロゲンとして、主として天然のエストロゲン、主にエストラジオールまたはそのエステル、例えば、バレリン酸エストラジオールまたは複合化エストロゲン (CEE = 複合化ウマエストロゲン) は、それらが、例えば、製剤PREMARIN (商標) 中に含有されるとき、使用される。
【0021】
新規な化合物に基づく製剤の配合は、この分野において知られている方法において、活性成分を、必要に応じてエストロゲンと組合わせて、ガレン製剤において普通に使用される賦形剤、希釈剤、必要に応じて香味補正剤とともの加工し、必要な投与形態に転化することによって実施される。
好ましい経口投与のために、特に錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、丸剤、懸濁液または溶液は適当である。
【0022】
非経口投与のために、特に油性溶液、例えば、ゴマ油、ヒマシ油および綿実油は適当である。安定性を増加させるために、可溶化剤、例えば、安息香酸ベンジルまたはベンジルアルコールを添加できる。
また、本発明による物質を経皮系に組込み、こうしてそれらを経皮的に投与することが可能である。
【0023】
一般式Iの新規な化合物は、後述するように本発明に従い製造される。ダイヤグラム1に従う新規な18-メチル-6,7-15,16-ジメチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトンの合成ルートは、化合物1の例において開始される (DE 3402329) 。
Δ6-二重結合の導入は、例えば、3,5-ジエンアミンの臭素化を使用して、または変性されたジエノールエーテルの臭素化ならびに引き続く臭化水素切断により実施される (例えば、下記の文献を参照のこと: J. Fried、J. A. Edwards、Organic Reactions in Steroid Chemistry、von Nostrand Reinhold Company 1972、pp. 265-374) 。
【0024】
【化3】

【0025】
ジエノールエーテルの臭素化は、例えば、下記の文献に記載されているようにして実施できる: J. A. Zderic、Humberto Carpio、A. BowersおよびCarl Djerassi、Steroids 1、233 (1963) 。臭化水素の切断は、6-臭素化合物を塩基性試薬、例えば、LiBrまたはLi2CO3とともに非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド中で50〜120℃の温度において加熱するか、あるいは6-臭素化合物を溶媒、例えば、コリジンまたはルチジンを加熱して化合物2する (実施例1) ことによって、達成することができる。
【0026】
次いでΔ6-二重結合を既知の方法に従い、例えば、ジメチルスルホキソニウムメチリドでメチレン化することによって、化合物2を化合物3に変換し (例えば、下記の文献を参照のこと: DE-A 11 83 500、DE-A 29 22 500、EP-A 0 019 690、US-A 4,291,029; E. J. CoreyおよびM. Chaykovsky、J. Am. Chem. Soc. 84、867 (1962)) 、ここでα-異性体およびβ-異性体の混合物 (化合物3a/3b) が得られ (比は使用する物質に依存し、ほぼ1:1である) 、これを、例えば、クロマトグラフィーにより、個々の異性体に分割できる。
【0027】
置換基R4の導入は、例えば、式3の化合物から出発して次のようにして実施できる。Δ4-二重結合を過酸化水素でアルカリ性条件下にエポキシ化し、生成するエポキシドを一般式H-R4の酸と反応させ、ここで-R4はハロゲンまたは擬ハロゲンであるか、あるいは触媒量の鉱酸と反応させ、そして必要に応じて得られる一般式Iの4-臭素化合物 (ここでR4 = 臭素) を2,2-ジフルオロ-2-(フルオロスルホニル)酢酸メチルエステルとジメチルホルムアミド中でヨウ化銅 (I) の存在下に反応させる。
【0028】
6-メチレン基の導入は次のようにして実施できる。例えば、3-アミノ-3,5-ジエン誘導体から出発して、アルコール溶液中でホルマリンと反応させて6α-ヒドロキシメチル基を形成し、引き続いて、例えば、ジオキサン/水中において塩酸で酸性的に脱水する。しかしながら、また、脱水はまずヒドロキシ基をよりすぐれた脱離基で交換し、次いで排除する方法で実施できる。脱離基として、例えば、メシレート、トシレートまたはベンゾエートは適当である (例えば、下記の文献を参照のこと: DE-A 34 02 3291、EP-A 0 150 157、US-A 4,584,288; K. Nickisch 他、J. Med. Chem. 34、2464 (1991)) 。
【0029】
6-メチレン化合物を製造する他の可能性は、4(5)-不飽和3-ケトンをホルムアルデヒドのアセタレンと、酢酸ナトリウムの存在下に、例えば、オキシ塩化リンまたは五塩化リンとともに適当な溶媒、例えば、クロロホルム中で直接反応させることである (例えば、下記の文献を参照のこと: K. Annen、H. Hofmeister、H. LaurentおよびR. Wiechert、Synthesis 34 (1982)) 。
6-メチレン化合物を一般式Iの化合物の製造に使用でき、ここでR6はメチルであり、そしてR6およびR7は一緒になって追加の結合が形成する。
【0030】
この目的で、例えば、下記の文献に記載されている方法を使用できる: D. Burn 他、Tetrahedron 21、1619 (1965) 、ここで二重結合の異性化は次のようにして達成できる。6-メチレン化合物を水素で前処理した5%パラジウム-炭素触媒とともにエタノール中で加熱するか、あるいは少量のシクロヘキサンとともに加熱する。また、少量のシクロヘキサンを反応混合物に添加する場合、異性化は非前処理触媒を使用して実施できる。小さい比率の水素化生成物の発生は、過剰量の酢酸ナトリウムの添加により防止できる。
【0031】
しかしながら、6-メチル-4,6-ジエン-3-オン誘導体の製造を、また、実施することができる (下記の文献を参照のこと: K. Annen、H. Hofmeister、H. LaurentおよびR. Wiechert、Lieb. Ann. 712 (1983)) 。
【0032】
R6がα-メチル官能基を表す化合物は、6-メチレン化合物から適当な条件下の水素化により製造できる。最良の結果 (エキソ-メチレン官能基の選択的水素化) は転移水素化により達成される (E. A. Brande、R. P. LinsteadおよびP. W. D. Mitchell、J. Chem. Soc. 3578 (1954)) 。6-メチレン誘導体を適当な溶媒、例えば、エタノール中で水素化物ドナー、例えば、シクロヘキセンの存在下に加熱する場合、6α-メチル誘導体の非常にすぐれた収率がこうして得られる。6β-メチル化合物の小さい部分は酸性形態で異性化される (例えば、下記の文献を参照のこと: D. Burn、D. N. KirkおよびV. Petrow、Tetrahedron、1619 (1965)) 。
【0033】
また、6β-アルキル化合物の特別の製造が可能である。これに関して、4(5)-不飽和3-ケトンを、例えば、エチレングリコール、トリメチルオルトホルメートとジクロロメタン中で触媒量の酸 (例えば、p-トルエンスルホン酸) の存在下に反応させて対応する3-ケタールを生成する。このケタール化間に、二重結合は5(6)-位置において異性化する。この5(6)-二重結合の選択的酸化は、例えば、有機過酸、例えば、m-クロロ安息香酸を使用して適当な溶媒、例えば、ジクロロメタン中で達成できる。これに対する別法として、例えば、ヘキサクロロアセトンまたは3-ニトロトリフルオロアセトフェノンの存在下に過酸化水素を使用してエポキシ化を実施することもできる。
【0034】
次いで生成する5,6α-エポキシドを対応するアルキルマグネシウムハロゲン化物またはアルキルリチウム化合物により軸方向に開環することができる。こうして、5α-ヒドロキシ-6β-アルキル化合物が得られる。5α-ヒドロキシ官能基が形成する間に温和な酸性条件 (0℃において酢酸または4N塩酸) 下の処理により、3-ケト保護基を切断できる。例えば、希薄水性水酸化ナトリウム溶液で5α-ヒドロキシ官能基を塩基的に排除することによって、β-位置に6-アルキル基をもつ3-ケト-4-エン化合物が生ずる。これに対する別法として、いっそう猛烈な条件 (水性塩酸または他の強酸) 下のケタール切断は対応する6α-アルキル化合物を生ずる。
【0035】
Zが酸素原子である、得られる一般式Iの化合物は、必要に応じて、ヒドロキシルアミン塩酸塩との反応により第三級アミンの存在下に-20℃〜+40℃の温度において、それらの対応するオキシムに転化することができる (Zが=NOHである一般式I、ここでヒドロキシ基はsyn-またはanti-位置であることができる) 。適当な第三級塩基は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン (DBN) および1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-5-エン (DBU) であり、ここでピリジンは好ましい。これはドロスピレノンの対応する3-オキシイミノ誘導体の製造についてのWO 98/24801中の説明に類似する。
【0036】
Zが2つの水素原子である、一般式Iの最終生成物を製造するための3-オキソ基の除去は、例えば、DE-A 28 05 490に示されているように、3-ケト化合物のチオケタールの還元的切断により実施することができる。
【実施例】
【0037】
下記の実施例により、本発明のさらに詳細に説明する。
実施例118-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグナ-4,6-ジエン-21,17-カルボラクトン
11 mlのo-ギ酸トリエチルエステルおよび11 mlのジオキサン/硫酸 (12+0.42) を、110 mlのジオキサン中の11.0 gの18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン (DE 3402329) の溶液に添加する。14.4 gの3-エトキシ-18-メチル-15β,16β-メチレン-19-ノル-17-プレグナ-3,5-ジエン-21,17-カルボラクトンが粗生成物として得られた。後者を380 mlのアセトン中に溶解し、2.3 mlのピリジン、10.3 gの酢酸ナトリウム、28 mlの水および7.6 gのN-ブロモスクシンイミドと混合し、それを氷浴温度において0.5時間攪拌した。
【0038】
次いで、それを氷水中に混合して入れ、沈殿を濾過し、水で洗浄し、ジクロロメタン中に取り、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧蒸発により濃縮した。17 gの6-ブロモ-18-メチル-3-オキソ-15β,16β-メチレン-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトンが粗生成物として得られた。後者を170 mlのジメチルホルムアミド中に溶解し、6.65 gの臭化リチウムおよび7.87 gの炭酸リチウムとともに100℃において1時間攪拌した。次いで、それを氷水中に混合して入れ、沈殿を濾過し、水で洗浄し、ジクロロメタン中に取り、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧蒸発により濃縮した。シリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン/アセトンで溶離すると、6.5 gの18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグナ-4,6-ジエン-21,17-カルボラクトン (スキーム1中の化合物2) 、融点187℃、が得られた。
【0039】
実施例218-メチル-6α,7α-15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン
200 mlのジメチルスルホキシド中の5.8 gの18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグナ-4,6-ジエン-21,17-カルボラクトンの溶液を9.06 gのヨウ化トリメチルスルホオキソニウムおよび1.613 gの水素化ナトリウム (油中の55%懸濁液) と混合し、それをアルゴン雰囲気下に室温において20時間攪拌した。次いで、それを氷水中に混合して入れ、弱酸性となり、沈殿を濾過し、水で洗浄し、ジクロロメタン中に取り、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧蒸発により濃縮し、シリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン/アセトンで溶離した。画分IIIを2-プロパノール/アセトンから再結晶化させると、0.8 gの18-メチル-6α,7α-15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン (化合物3a) が結晶として得られた、融点262℃、[α]D = +89.7°(メタノール、c = 10.15 mg/ml) 。
【0040】
実施例318-メチル-6β,7β-15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン
実施例2の方法に従い、クロマトグラフィー後に画分IVから0.9の18-メチル-6β,7β-15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン (化合物3b) が固体として得られた、融点189〜190℃、[α]D = -121.4°(クロロホルム、c = 10.7 mg/ml) および [α]D = +137.9°(メタノール、c = 10.63 mg/ml) 。
【0041】
実施例47α,18-ジメチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン
7 mlのテトラヒドロフラン中の0.4 gの18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグナ-4,6-ジエン-21,17-カルボラクトンの溶液に、12 mgの塩化銅 (I) を室温において添加し、10分間攪拌し、次いで-15℃に冷却し、75 mgの塩化アルミニウムと混合し、この温度において30分間攪拌し、0.8 mlの臭化メチルマグネシウム溶液 (ジエチルエーテル中の3 M) と滴々混合し、-10℃において1時間攪拌した。
【0042】
仕上げのために、反応混合物を4 N塩酸と-10℃において混合し、室温において1.5時間攪拌し、水に添加し、3回酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧蒸発により濃縮し、シリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン/酢酸エチルで溶離した。画分Iを再結晶化させた後、182 mgの7α,18-ジメチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトンが結晶として得られた、融点250℃、[α]D = 53.1±0.3°(クロロホルム、c = 10.3 mg/ml) 。
【0043】
実施例57β,18-ジメチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン
実施例4の方法に従い、クロマトグラフィー後に画分IIとして、36 mgの7β,18-ジメチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトンが固体として得られた、融点226℃、[α]D = 9.0±0.5°(クロロホルム、c = 10.2 mg/ml) 。
【0044】
実施例67α-エチル-18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン
15 mgの塩化銅 (I) を室温において10 mlのテトラヒドロフラン中の0.5 gの18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグナ-4,6-ジエン-21,17-カルボラクトンの溶液に添加し、10分間攪拌し、次いで-15℃に冷却し、93 mgの塩化アルミニウムと混合し、この温度において30分間攪拌し、1.0 mlの臭化エチルマグネシウム溶液 (ジエチルエーテル中の3 M) と滴々混合し、-10℃において1時間攪拌した。
【0045】
仕上げのために、反応混合物を3 mlの2 N塩酸と-10℃において混合し、室温において0.5時間攪拌し、水中に注ぎ、3回酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧蒸発により濃縮し、シリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン/酢酸エチルで溶離した。画分Iを再結晶化させた後、180 mgの7α-エチル-18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトンが結晶として得られた、融点205〜208℃、[α]D = +34.4±0.3°(クロロホルム、c = 10.3 mg/ml) 。
【0046】
実施例77β-エチル-18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン
実施例6の方法に従い、クロマトグラフィー後に画分IIとして、110 mgの7β-エチル-18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトンが固体として得られた、融点169〜171℃、[α]D = +30.8±0.5°(クロロホルム、c = 10.1 mg/ml) 。
【0047】
実施例818-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-7α-プロピル-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン
15 mgの塩化銅 (I) を室温において10 mlのテトラヒドロフラン中の0.5 gの18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグナ-4,6-ジエン-21,17-カルボラクトンの溶液に添加し、10分間攪拌し、次いで-15℃に冷却し、93 mgの塩化アルミニウムと混合し、この温度において30分間攪拌し、1.0 mlの臭化プロピルマグネシウム溶液 (テトラヒドロフラン中の2 M) と滴々混合し、-10℃において1時間攪拌した。
【0048】
仕上げのために、反応混合物を3 mlの2 N塩酸と-10℃において混合し、室温において0.5時間攪拌し、水中に注ぎ、3回酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧蒸発により濃縮し、シリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン/酢酸エチルで溶離した。画分Iを再結晶化させた後、177 mgの18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-7α-プロピル-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトンが結晶として得られた、融点167.5℃、[α]D = +31.2±0.3°(クロロホルム、c = 10.1 mg/ml) 。
【0049】
実施例918-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-7β-プロピル-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン
実施例8の方法に従い、クロマトグラフィー後に画分IIとして、105 mgの18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-7β-プロピル-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトンが固体として得られた、融点90.9℃、[α]D = +27.4±0.4°(クロロホルム、c = 10.3 mg/ml) 。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式I:
【化1】

(式中、
Zは酸素原子、2つの水素原子、=NORまたは=NNHSO2R基であり、ここでRは水素原子または1〜4または3〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基であり、
R4は水素原子、ハロゲン原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であり、
R6および/またはR7はα-またはβ-位置に存在することができ、互いに独立して、1〜4または3〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基であるか、あるいは
R6は水素原子であり、そしてR7はα-またはβ-位置にある1〜4または3〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基であるか、あるいは
R6およびR7の各々は水素原子であるか、あるいは
R6およびR7は一緒になってα-またはβ-位置のメチレン基または追加の結合である。)
で表わされる18-メチル-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン。
【請求項2】
Zが酸素原子である、請求項1に記載の一般式Iの化合物。
【請求項3】
Zが=NORまたは=NNHSO2R基であり、そしてRが水素原子である、請求項1に記載の一般式Iの化合物。
【請求項4】
R4が水素原子である、請求項1に記載の一般式Iの化合物。
【請求項5】
R4が塩素原子である、請求項1に記載の一般式Iの化合物。
【請求項6】
R6が水素原子であり、そしてR7がメチル基である、請求項1に記載の一般式Iの化合物。
【請求項7】
R6が水素原子であり、そしてR7がプロピル基である、請求項1に記載の一般式Iの化合物。
【請求項8】
R6およびR7が一緒になってメチレン基である、請求項1に記載の一般式Iの化合物。
【請求項9】
R6およびR7が一緒になって二重結合である、請求項1に記載の一般式Iの化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の一般式Iの化合物、すなわち、
18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグナ-4,6-ジエン-21,17-カルボラクトン、
18-メチル-6α,7α-15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
18-メチル-6β,7β-15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
7α,18-ジメチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
7β,18-ジメチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
3-ヒドロキシルアミノ-18-メチル-6β,7β-15β,16β-ジメチレン-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
4-クロロ-18-メチル-6β,7β-15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
7α-エチル-18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
7β-エチル-18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-7α-プロピル-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン、
18-メチル-15β,16β-メチレン-3-オキソ-7β-プロピル-19-ノル-17-プレグン-4-エン-21,17-カルボラクトン。
【請求項11】
請求項1に記載の少なくとも1種の化合物および薬学的に無害の賦形剤を含有する製剤。
【請求項12】
少なくとも1種のエストロゲンをさらに含有する、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
エチニルエストラジオールを含有する、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
天然のエストロゲンを含有する、請求項12に記載の製剤。
【請求項15】
エストラジオールを含有する、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
バレリン酸エストラジオールを含有する、請求項14に記載の製剤。
【請求項17】
少なくとも1種の複合化エストロゲンを含有する、請求項14に記載の製剤。

【公表番号】特表2008−526709(P2008−526709A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548774(P2007−548774)
【出願日】平成17年12月30日(2005.12.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/014205
【国際公開番号】WO2006/072467
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】