説明

18−F標識放射性製剤の安定化

種々の薬局方基準によって定められた限界値を考慮し、18Fの放射能濃度に応じて選択された量のエチルアルコールを使用して、放射線分解に起因する放射化学的純度の低下に対して18F同位体標識FDG放射性製剤が安定化される。公知のFDG製法のいずれも使用することができ、いくつかの段階において、好ましくは標準的な加水分解ステップの部分としてエチルアルコールが添加されればよい。この放射性製剤は陽電子放出断層撮影による画像診断用に広く使用される。

【発明の詳細な説明】
【背景】
【0001】
この発明は18F放射性同位体を含むグルコース化合物の、放射線分解に対する安定化に係わる。安定化された化合物は陽電子放出断層撮影による画像診断に使用される。
【0002】
18F同位体標識グルコースである[18F]2−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース(以下FDG)は陽電子放出断層撮影(PET)人体スキャニングシステムを用いる診断学的研究のための核医学の分野で広く使用されるようになった。18F同位体はその半減期が短いから(109min)、この生成物は、製造工場から患者へ配送する過程での崩壊を考慮して、比較的多量に製造されなければならない。従って、交代制勤務は、先ず(車を利用しても)遠距離の病院向けの製造が夜半に始まり、近距離の病院向けの製造が早朝に始まる。典型的な配送時間は5乃至8時間に及ぶ。到着してから、最終の患者に使用されるまでにさらに4時間が経過する可能性がある。即ち、製造の時点から患者に投与される時点までに8乃至12時間が経過する可能性がある。これは半減期の4.4乃至6.6倍に相当し、投与の時点で実際に必要とされる放射能濃度の20乃至100倍の初期放射能濃度での調製が必要となる。
比較的高濃度、例えば、3.7GBq/ml(100mCi/ml)以上の濃度で調製されると、放射線に誘発されたFDGの分解が起こる。このプロセスは放射線分解と呼称される。それは、主に18F同位体からの電離放射線と溶媒の水及び、場合によっては空気との相互作用で発生するフリーラジカルによる酸化によって引き起こされる。これらのプロセスは、次にFDGの分解を引き起こす可能性があり、FDGの分解は、低下した放射化学的純度(RCP)という形で定量化することができる。RCPは、一般的に、試料中に存在する総放射能に対するFDGとしての放射能%で表される。
典型的には、製造完了時において、FDGは、98乃至100%のRCPを有する。放射線分解の結果、一部のFDG分子が分解し、FDG放射性物質以外のもの(主として遊離18Fイオン)と成る。これが、後述する実験によって立証されるように、12時間未満の時間に亙ってRCPを90%未満にまでに低下させることがある。米国薬局方(USP)がFDGに関して定める品質基準は「90%を下回らないRCP」である。当然のことながら、最良のPET画質を達成するためには、できるだけ長時間にわたって、RCPをできるだけ高く維持することが望ましい。
【0003】
FDGの製造は、18F標識化合物の合成と、これに続く精製とを含む。合成は、FDGのアセチル化誘導体(中間生成物)を形成することになる18Fのフッ素化ステップと、これに続く、保護アセチル基が除去されて最終生成物が得られる加水分解ステップとを含む。加水分解ステップは僅か約10分間に過ぎないが、放射性物質の濃度は最終生成物における放射性物質濃度の約5倍であり、FDG中間生成物の製造の過程でその著しい分解が起こる。累積した放射性不純物は精製ステップにおいて除去されるから、中間生成物の分解は最終生成物のRCPに直接的には影響しない。しかし、いかなる分解も低い放射化学的収量を招くだろうことを認識することが重要である。従って、加水分解ステップにおいて、最終生成物だけでなく中間生成物についても放射線分解を減らすか、または制御することが極めて有用である。
配送及び使用のためには、12時間の貯蔵能力が実用上の必要条件である。従って、12時間以上経過した後のRCPが安定化効果の有用な指標である。
要するに、FDGの安定性を高め、投与時におけるRCPを高めることがFDG製造の重要な目標である。生成物の放射化学的収量を高めるには、FDG製造工程における放射線分解を制御することも重要である。
【0004】
18F−標識FDGの製造は今ではもう公知である。情報は、1)Fowlerら、"2-Deoxy-2-[18F]Fluoro-D-Glucose for Metabolic Studies: Current Status," Applied Radiation and Isotopes, vol.37, no.8, 1986年, 663-668頁, 2)Hamacherら、"Efficient Stereospecific Synthesis of No-Carrier-Added 2-[18F]-Fluoro-2-Deoxy-D-Glucose Using Aminopolyether Surpported Nucleophilic Substitution," Journal of Nuclear Medicine, vol.27, 1986年, 235-238頁, 3)Coenenら、"Recommendation for Practical Production of [2-18F]Fluoro-2-Deoxy-D-Glucose," Applied Radiation and Isotopes, vol.38, no.8, 1987年, 605-610頁(良い概説), 4)Knustら、"Synthesis of 18F-2-deoxy-2-fluoro-d-glucose and 18F-3-deoxy-3-fluoro-D-glucose with no-carrier added 18F-fluoride, "Journal of Radioanalytic Nuclear Chemistry, vol.132, no.1, 1989年, 85+頁, 5)Hamacherら、"Computer-aided Synthesis (CAS) of No-carrier-added 2-[18F]Fluoro-2-Deoxy-D-Glucose: An Efficient Automated System for the Aminopolyether-supported Nucleophilic Fluorination," Applied Radiation and Isotopes, vol.41, no.1, 1990年, 49-55頁及び 6)ヨーロッパ特許第0 798 307 A1号明細書(NKK Plant Engineering Corp.ら)1997年10月1日, "Fluoro-deoxyglucose synthesizer using columns."に見られる。
【0005】
放射性製剤の安定化に関して、ヨーロッパ特許第0 462 787号は、例えば、153Smで標識された放射性製剤エチレンジアミン−テトラエチレンホスホン酸(EDTMP)を保存するための凍結/融解技術を開示している。経時的な放射能分解を、0.9%ベンジルアルコールを含有する溶液、5.0%エタノールを含有する溶液、及びノープリザーベーションコントロールを用いて比較している。ベンジルアルコール溶液は分解の開始を遅らせ、開始後、速度は緩やかである。これとは反対に、5.0%という高濃度であっても、エタノールは分解を僅かだけ遅らせただけで、開始後、分解はコントロールよりも速く進行する。種々の放射性製剤を安定化させるその他の添加物について、米国特許第5,384,113号(Deutschら1995年1月24日)、第6,027,710号(Higashiら2000年2月11日)、第6,066,309号(Zamaraら2000年5月23日)及び第6,261,536号(Zamaraら2001年7月17日)において論じられた。
PET法ではFDG溶液を注入する必要があるから、毒性の可能性がある成分を適正な限界値に制限するための米国薬局方が存在する。現在ヨーロッパ薬局方及び米国薬局方が定めている上述したエタノールの許容投与量は0.5%(EDTMPに使用される濃度の1/10)である。また、適合には、1回またはそれ以上の有効限界試験による立証が必要である。現実的な見地からすれば、毒性の可能性がある成分の濃度を限界値の1/2、即ち、0.25%以下に制限することが極めて望ましい。測定の不確実性と安全性を考慮して、限界値の約1/2を超える量を使用するには、自信をもって適合性を立証するために、より多くの試験が必要である。
【概要】
【0006】
従って、この発明の目的は、FDGの安定性を高め、それによって、使用時における生成物のRCPを高めることにある。さらに他の目的は、FDGの製造過程において放射線分解を制御することによって製造効率を高めることにある。これらは、毒性を有する恐れのある添加物を実際的(practical)に安全な範囲内に維持することと同時に達成されなければならない。
【0007】
意外にも、最終生成物における濃度が、実際的(practical)な薬局方の限界値以下で、最少有効安定化量の範囲内であるエタノールを含有する18F−標識FDGにおいて上記目的が達成され得る。有効最少濃度とは、12時間以上に亙って90%RCPを維持する濃度である。18Fの放射能濃度が約10GBq/mlである場合、最少有効エタノール濃度が約0.1%(v/v)であることが実験でわかった。このような実験結果に照らせば、実際的(practical)な放射能濃度に対して、最少有効エタノール濃度を線形近似すると、18Fの放射能濃度の約0.01%(v/v)/GBq/mlであることが理論上示された。
エタノール濃度の上限は各国の薬局方によって定められている。今のところ、FDG溶液中のエタノール濃度の上限は0.5%(v/v)であるが、規制遵守を徹底する上では、上限を約0.25%(v/v)にまで下げるのが現実的である。少なくとも18Fの放射能濃度が約10GBq/ml以下なら、約0.1%乃至0.25%のエタノール濃度が有効且つ安全なFDG溶液安定化剤である。
求核18Fフッ素化ステップと、これに続く後述の加水分解ステップとによってFDGを合成する場合、エタノールは、NaOH加水分解試薬液、希釈水、採取ビン、採取ビンに注入されたNaCl溶液に、またはこれらの組み合わせに添加されればよい。NaOH溶液に添加されれば、製造工程のできるだけ早い時点で安定化効果が達成される。どの時点で添加されるにしても、上述した最終生成物における濃度が得られるようにエタノール量が調整されることが好ましい。
【詳細な説明】
【0008】
ここに述べるFDGの製造工程はNuclear Interface GmbH(ミュンスター、ドイツ)製の自動FDG合成装置システムに基いている。システム及び放射化学的合成の説明は1例に過ぎない。FDGの合成に好適な装置や方法は多様であり、先般来公知である。FDGの合成自体はこの発明の一部であるとはみなさず、ここでは基本的な製法の説明のみがここに含まれる。
【0009】
合成装置システムは、合成モジュール制御ユニット、化学プロセス制御ユニット及びコンピューターを含む。制御ユニットは、鉛遮蔽空間内に配置され、多数の試薬用チューブ、ビン、弁;反応容器、生成物回収容器;及び精製用カラムとカートリッジのためのコネクションを含む。
【0010】
FDGの通常の合成は、2つの化学反応、即ち、求核18Fフッ素化とこれに続く加水分解から成る2ステップ製法である。
フッ素化ステップにおいて、有機前駆物質1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロ−メタンスルフォニル−β−D−マンノピラノース(マンノーストリフラート)に18F標識を組み込む。置換反応は、相間移動触媒を、照射された標的物質から抽出された18Fフッ化物と組合わせることによって達成される。混合物は、不活性ガス流中で乾燥させられる。この乾燥させられた混合物がマンノーストリフラートのアセトニトリル溶液に添加され、この溶液が加熱されて不活性ガス流中で乾燥させられる。
アセチル保護基の塩基触媒加水分解などの加水分解ステップは、最終製剤の遊離水酸基を発生させる。所定量のNaOH水溶液が乾燥状態のフッ素化マンノーストリフラートに加水分解試薬として加えられ、得られた溶液が、アセチル基の完全な除去を達成するために加熱される。
得られた混合物を精製してFDG水溶液を得るため、それは、所定量の水で希釈されて、精製用カートリッジでろ過される。
この発明は上記ステップの細部に左右されるものではなく、求核フッ素化ステップとこれに続く加水分解ステップを利用する如何なる製法にも適用される。
【0011】
4つの実施例:
エチルアルコールの添加がFDG水溶液の安定性に及ぼす影響を調べるため、それは上述のように製造された。それぞれの試料は、水9ml中のFDGが82乃至106Bq(2.3乃至2.8Ci)となるように製造された。従って、製造直後における初期放射能濃度は約8乃至11GBq/ml(263乃至320mCi/ml)であった。
すべての実験において、アルテック(Alltech)社(イリノイ州ディアフィールド)製の10cmシリカ被覆ガラスプレートを使用する標準的な薄層クロマトグラフィー(TLC)法によってRCPが測定された。アセトニトリルと水の95:5混合物が移動相として使用され、バイオスキャン(Bioscan)社(ワシントンD.C.)製のTLCプレートスキャナを使用してプレート上の放射能分布が測定された。殆どの場合、試料のサイズは1ml未満であった。
エタノール濃度は、アルテック(Alltech)社製のDB WAXタイプ50mキャピラリカラムを装備したHP5890ガスクロマトグラフを使用したガスクロマトグラフ(GC)分析及び標準的なHP水素炎イオン化検出器(FID)によって測定された。キャリヤーガスは4乃至10ml/minのヘリウムであった。FIDインジェクターは、スプリット比1:50で、200℃で加熱された。カラム温度は、20℃/minで昇温させながら50乃至200℃であった。FID検出器の反応は、外部標準を用いてキャリブレートされた。
RCPは、14乃至21時間貯蔵した後に測定された。しかし、放射能濃度が時間とともに1.82時間の半減期で指数関数的に低下するために、放射線分解は最初の3乃至6時間の間に起こることに留意すべきである。6時間後には、放射能の約10%しか残らず、生成物の著しい分解を引き起こすのには十分ではないだろう。
【0012】
実験1:最終FDG生成物に添加されるエタノール
この実験では、最終生成物が10.8GBq/ml(292mCi/ml)の初期放射能濃度で調製された。生成物を2mlずつに4等分して試料1−4とし、マイクロシリンジを使用して、それぞれに異なる量のエタノールが添加された。試料は、FDGの貯蔵及び顧客への配送に使用されるのと同じ密閉されたビン中に保管された。製造時と14時間後にRCPが測定された。それぞれの試料中のエタノール濃度が、上述したGC法を利用して測定された。表1はその結果を示す。
【0013】
(表1)
試料番号 エタノール(%) 初期RCP 14時間後RCP
1 0.05% 97.2% 87%
2 0.24% “ 97%
3 0.48% “ 96%
4 1.07% “ 97%
【0014】
表1が示すように、0.05%は米国薬局方の条件に合致するRCPを維持できるほど高い濃度ではないが、実験誤差の範囲内で、0.24%以上の濃度は、RCPは無視できる分解を受けた。1.07%は明らかに薬局方の限界値を超え、0.48%は限界値に近すぎる。
【0015】
実験2:NaOH溶液に添加されるエタノール
この実験では、製造工程を簡略化するとともに、中間生成物を安定化するという付加された利点を与えるため、エタノールが、加水分解ステップにおいて使用されるNaOH加水分解試薬液に添加された。それは、水で希釈された後、最終生成物における濃度が約0.05%濃度となるように算出された量で添加された。この実験では、最終生成物が約11.8GBq/ml(320mCi/ml)の初期放射能濃度を有していた。
最終生成物から、それぞれが2mlの試料1、2及び3が採取された。貯蔵条件が結果に影響したかどうかをみるため、試料1及び2はビンで貯蔵され、試料3は利用者へFDGを配送するために使用されるのと同じシリンジで貯蔵された。15時間の待機期間終了時に、上述したTLC及びGC法によってそれぞれの試料が分析された。表2はその結果を示す。
【0016】
(表2)
試料番号 エタノール(%) 初期RCP 14時間後RCP
1 0.04% 98.9% 89.7%
2 0.04% “ 89.8%
3 0.05% “ 87.8%
【0017】
実験結果は、NaOH溶液に添加されるとしても、0.04%乃至0.05%というエタノール濃度が十分ではないことを示している。生成物が、貯蔵期間終了時に、米国薬局方が定めるRCP限界値である90%のRCPが得られないほど大きなRCPの損失があった。シリンジによる貯蔵は最悪であったようにみえるが、おそらく実験誤差の範囲内であろう。
【0018】
実験3:NaOH溶液に添加される増量エタノール
これらの実験は、NaOH溶液に添加されるエタノールの量が倍加され、その結果、最終生成物中のエタノール濃度が約0.1%となった点を除けば、実験2と同じであった。2通りの異なる放射能濃度及び貯蔵時間が試みられた。それぞれ、試料1及び2はビンで貯蔵され、試料3及び4はシリンジで貯蔵された。
表3は初期放射能濃度が9.7GBq/ml(263mCi/ml)の場合の21時間後の結果を示す。
【0019】
(表3)
試料番号 エタノール(%) 初期RCP 21時間後
1 0.09% 99.5% 94.4%
2 0.09% “ 94.7%
3 0.11% “ 95.6%
4 0.11% “ 95.2%
【0020】
表4は初期放射能濃度が11.2GBq/ml(303mCi/ml)の場合の15時間後の結果を示す。
【0021】
(表4)
試料番号 エタノール(%) 初期RCP 15時間後
1 0.08% 98% 94.6%
2 0.09% “ 94.2%
3 0.10% “ 94.5%
4 0.11% “ 95.1%
【0022】
RCPのかなりの損失が認められるものの、いずれの試料も15時間及び21時間の貯蔵期間終了時に90%のRCPという米国薬局法の限界値を満たした。従って、0.1%というエタノール濃度の安定化効果は少なくとも11.2GBq/ml(303mCi/ml)までのFDG放射能濃度においては充分である。0.1%というエタノール濃度はヨーロッパ薬局方及び米国薬局方が定める限界値0.5%をはるかに下回る。
予想どおり、18Fの崩壊の減少及び放射能濃度の低下により、21時間後のRCP損失は15時間後と比較して著しく悪くはない。貯蔵方法の違いはRCPに殆ど影響を与えなかった。
要約すれば、放射能濃度が約10GBq/mlのFDG溶液に対して、少なくとも約0.1%(v/v)のエタノール濃度は、12時間後に90%のRCPを得るために放射線分解に対して溶液を安定化するのに有効である。薬局方の限界値はこれよりも高いが、原則として、製剤に対してできるだけ低濃度の添加物を使用することが常に望ましい。既に指摘したように、量が少ないほど限界値を超過しないことが確実になる。
【0023】
従って、他の放射能濃度に対しても、最少有効量を知ることが有用である。0.1%のエタノール濃度が10GBq/mlの放射能濃度に有効であるということを示した上記実験結果に基づいて、当業者が異なる実用的な放射能濃度のFDGを調製し、必要なエタノール濃度を決定するのに、多少の努力をすることが好ましい。
【0024】
しかし、放射能濃度に正比例するエタノール濃度、即ち、0.01%(v/v)/GBq/mlを使用すれば、その努力はかなり軽減される。これは、18F−標識FDG及びエタノール分子の密度が低いからである。水溶液中において、両者それぞれの分子どうしの間の相互作用は殆ど無い。10GBq/mlの場合、密度は約10^14FDG分子/ccであって、それらの間は約20,000nmである。密度が約3x10^22分子/cc、分子間スペーシング約0.3nmの水溶液中において、0.1%エタノールの場合、その密度は約1.3x10^19分子/cc、スペーシングは約500nmである。
【0025】
18F陽電子放出は、エタノール分子によって阻止されなければ、O、OH及びその他のFDGと反応するフリーラジカル種のカスケードを発生させると考えられる。本当かどうかは別にして、陽電子の大部分が水の分子と相互作用することは明白である。これは溶液中の18F放出体(emitter)の数の一次関数である。エタノールが保護効果を有するとすれば、その必要量はフリーラジカルの数及び18F密度に対して直線性を有することが好ましい。
【0026】
注入される放射性製剤を扱う時には常に実験による確認が望ましいが、最少有効エタノール濃度に対する線形近似が、少なくとも薬局方の0.5%のエタノールという限界値にかなり近いことが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射能濃度を有する18F同位体標識FDG水溶液と;
最終生成物中での濃度が実際的な薬局方の限界値までの最少有効安定化量の範囲内であるエタノール
を含む放射性組成物。
【請求項2】
最少有効エタノール濃度が、18Fの放射能濃度の約0.01%(v/v)/GBq/mlであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
最少有効エタノール濃度が、10GBq/mlの18Fの放射能濃度に対して、約0.1%(v/v)であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
エタノールに関する実際的な薬局方の限界値が0.5%(v/v)、より好ましくは約0.25%(v/v)であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項5】
エタノール濃度が約0.1%乃至0.25%(v/v)の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
求核18Fフッ素化ステップと、これに続く加水分解ステップとで調整された18F同位体標識FDG水溶液を安定化する方法であって、実際的な薬局方の限界値を上限とするエタノールの有効安定化濃度が、製造の過程で最終生成物中に達成されることを特徴とする方法。
【請求項7】
エタノールが加水分解ステップにおいて使用される加水分解試薬に添加されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
エタノールの最少有効量が18Fの放射能濃度の約0.01%(v/v)GBq/mlであることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項9】
エタノールに関する実際的な薬局方の限界値が0.5%(v/v)、より好ましくは約0.25%(v/v)であることを特徴とする請求項6、7または8に記載の組成物。
【請求項10】
エタノール濃度が約0.1%乃至0.25%(v/v)の範囲内であることを特徴とする請求項6または7に記載の放射性組成物。

【公表番号】特表2006−505610(P2006−505610A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551350(P2004−551350)
【出願日】平成14年11月5日(2002.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2002/033616
【国際公開番号】WO2004/043497
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(502017227)
【Fターム(参考)】