説明

18カラット3N金合金およびこれの析出方法

【課題】主成分として亜鉛もカドミウムも含まない、厚い、3Nの黄色に着色した18カラットの金合金層を析出させるための析出方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、金金属、有機金属化合物、湿潤剤、金属イオン封鎖剤および遊離シアン化物を含む浴に浸漬された電極上での金合金のガルバノプラスチック析出方法であって、合金金属は銅金属および銀金属であり、鏡のように輝く黄色の金合金は電極上に析出され、この浴は、21.53%の金、78.31%の銅および0.16%の銀の比率とすることを特徴とする方法に関する。本発明は、電気析出の分野に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚い金合金層の形態の電解析出物およびその析出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
装飾めっきの分野において、9カラット以上の品位を有し、延性があり、10ミクロンの厚さを有し、高度の耐変色性を有する、黄色に着色した金の電解析出物を製造する方法が知られている。これらの析出物は、金および銅に加えて、0.1〜3g・l-1のカドミウムを含むアルカリ性電解浴における電気分解によって得られる。
【0003】
しかし、これらの既知の方法で得られる析出物は、1〜10%のカドミウム含有率を有する。カドミウムは、厚い層、すなわち、1〜800ミクロンの層の析出を促進し、合金に含まれる銅の量を低下させながら、黄色に着色した合金をもたらす。しかし、カドミウムは極めて有毒であり、いくつかの国において禁止されている。
【0004】
カドミウムが含まれず、銅および亜鉛を含む18カラットの金合金も知られている。しかし、これらの析出物は、過度にピンク色の色調を有する(銅が過剰であるため)。最後に、これらの析出物は耐腐食性が乏しく、このことは、それらが急速に変色することを意味している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、その主成分として亜鉛もカドミウムも含まず、厚みのある3Nの黄色に着色した18カラットの金合金層を析出させるための製造方法を提供することによって、前述の欠点の全てまたは一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、金金属、有機金属化合物、湿潤剤、金属イオン封鎖剤および遊離シアン化物を含む浴に浸漬された電極上での金合金のガルバノプラスチック析出方法であって、合金金属は銅金属および銀金属であり、鏡のように輝く黄色の金合金は電極上に析出され、この浴は、21.53%の金、78.31%の銅および0.16%の銀の比率とすることを特徴とする方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
驚くべきことに、上述したような高い銅濃度に基づく浴であっても、本発明に従って、有利に、21.53%の金、78.31%の銅および0.16%の銀の比率とすることで、3Nの黄色の金合金、ならびに5Nの赤色の金合金がもたらされる。
【0008】
本発明の他の有利な特徴によると、
−浴は、複合の金およびカリウムシアン化物の形態の1〜10g・l-1の金金属を含み、
−浴は、銅ヨウ化物の形態の10〜60g・l-1の銅金属を含み、
−浴は、複合の銀およびカリウムシアン化物の形態の10mg・l-1〜1g・l-1の銀金属を含み、
−浴は、3〜35g・l-1のシアン化物を含み、
−湿潤剤は、0.05〜10ml・l-1の濃度を有し、
−湿潤剤は、ポリオキシアルケン、エーテルホスフェート、ラウリルスルフェート、ジメチルドデシルアミン−N−オキシド、ジメチル(ドデシル)アンモニウムプロパンスルホネートの中から選択され、
−浴は、0.01〜5ml・l-1のアミン濃度を有し、
−浴は、0.1〜20mg・l-1の減極剤濃度を有し、
−浴は、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩および/またはホスホン酸塩型の導電性の塩を含み、
−浴の温度は、50〜90℃に保持され、
−浴のpHは、8〜12に保持され、
−この方法は、0.05〜1.5A・dm-2の電流密度で実行される。
【0009】
また本発明は、請求項のいずれかに記載の方法から得られた金合金の形態の電解析出物であって、厚さは1〜800ミクロンであり、そして、銅を含み、第3の主要化合物として銀を含むこと、ならびに析出物は、75%の金、19%の銅および6%の銀から製造されて、輝く3N色が得られることを特徴とするものにも関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、3N色を有する金合金の電解析出物を提供するものであって、驚くべきことに、それぞれの主要化合物としてAu−Cu−Agの合金であって、3N色、すなわち輝く黄色を呈する。
【0011】
本発明に係る析出物では、有毒の金属またはメタロイドを含まない、特にカドミウムおよび亜鉛を含まない、3N黄色、200ミクロンの厚さ、優れた輝きを有し、極めて高度の摩耗および変色に対する耐性を有する金合金である。
【0012】
この析出物は、次の種類の電解浴において電気分解によって得られる。
−Au:5.5g・l-1
−Cu:20g・l-1
−Ag:40mg・l-1
−CN:5g・l-1
−pH:10.5;
−温度:80℃;
−電流密度:0.3A・dm-2
−湿潤剤:0.05ml・l-1 NN−ジメチルドデシルN−オキシド;
−イミノ二酢酸:20g・l-1
−エチレンジアミン:0.5ml・l-1
−ガリウム、セレンまたはテルル:10mg・l-1
【0013】
結果的に、この浴は、その主要化合物の間で、21.53%の金、78.31%の銅および0.16%の銀の比率とする。
【0014】
好ましくは、電気分解の後に、最適な品質の析出物を得るために、1〜30分間、200〜450℃の温度で熱処理を行う。
【0015】
これらの条件によって、この例の場合、1時間当たり約10μmの析出速度で、95mg・A・分-1の陰極収率がもたらされる。
【0016】
したがって、驚くべきことに、本発明による浴は、3N色、18カラット析出物に相当する、約75%の金、19%の銅および6%の銀の比率の析出物をもたらす。この比率は、約75%の金、12.5%の銅および12.5%の銀の析出物となる傾向がある、この色に関する通常の電解析出物の比率とは非常に異なる。
【0017】
浴は光沢剤を含んでもよい。これは、好ましくは、ブチンジオール誘導体、ピリジニオ−プロパンスルホネートまたはこれら二種の混合物、スズ塩、硫酸化ヒマシ油、メチルイミダゾール、チオカルバミドなどのジチオカルボン酸、チオバルビツール酸、イミダゾリジンチオンまたはチオリンゴ酸である。
【0018】
これらの例において、電解浴は、断熱コーティングを有するポリプロピレンまたはPVC浴保持器に収容される。この浴は、石英、PTFE、磁器、または安定化ステンレス鋼のサーモプランジャーを用いて加熱される。良好な陰極棒の動きおよび電解液の流れを保持する必要がある。陽極は、白金めっきチタン、ステンレス鋼、ルテニウム、イリジウムまたは後者二種の合金からなる。
【0019】
もちろん、本発明は、例示に限定されることはなく、当業者に明白な様々な変形および変更が可能である。特に、浴は、以下の金属:Zr、Se、Te、Sb、Sn、Ga、As、Sr、Be、Biを極微量で含み得る。
【0020】
さらに、湿潤剤は、アルカリ性シアン化物媒体中で湿潤可能ないかなる種類のものであってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金金属、有機金属化合物、湿潤剤、金属イオン封鎖剤および遊離シアン化物を含む浴に浸漬された電極上での金合金のガルバノプラスチック析出方法であって、合金金属は銅金属および銀金属であり、鏡のように輝く黄色の金合金は電極上に析出され、前記浴は、21.53%の金、78.31%の銅および0.16%の銀の比率とすることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記浴は、複合の金およびカリウムシアン化物の形態の1〜10g・l-1の金金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記浴は、銅ヨウ化物の形態の10〜60g・l-1の銅金属を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記浴は、複合の銀およびカリウムシアン化物の形態の10mg・l-1〜1g・l-1の銀金属を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記浴は、3〜35g・l-1のシアン化物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記湿潤剤は、0.05〜10ml・l-1の濃度を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記湿潤剤は、ポリオキシアルケン、エーテルホスフェート、ラウリルスルフェート、ジメチルドデシルアミン−N−オキシド、ジメチル(ドデシル)アンモニウムプロパンスルホネートのうちから選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記浴は、0.01〜5ml・l-1のアミン濃度を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記浴は、0.1〜20mg・l-1の減極剤濃度を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記浴は、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩および/またはホスホン酸塩型の導電性の塩を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記浴の温度は、50〜90℃に保持されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記浴のpHは、8〜12に保持されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
0.05〜1.5A・dm-2の電流密度で実行されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法から得られる金合金の形態の電解析出物であって、厚さは1〜800ミクロンであり、そして、銅を含み、第3の主要化合物として銀を含むこと、ならびに析出物は、75%の金、19%の銅および6%の銀から製造されて、輝く3N色が得られることを特徴とする電解析出物。

【公開番号】特開2012−214899(P2012−214899A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−83556(P2012−83556)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【出願人】(506425538)ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド (46)
【Fターム(参考)】