説明

193nmの放射波長において低屈折率を有する上面反射防止コーティング組成物

【課題】 193nm放射波長において低屈折率を有する上面反射防止コーティングを提供する。
【解決手段】 芳香族部分及び193nmの放射波長に対して1.5未満の屈折率値nを有する、塩基水溶液に可溶なポリマーの存在を特徴とする組成物は、193nmドライ・リソグラフィ工程における上面反射防止コーティングとして特に有用であることを見出した。エチレン型主鎖を有し、フッ素及びスルホン酸部分を有するポリマーが特に有用であることを見出した。この組成物は、193nmにおける上面反射の制御を可能にすると共に、アルカリ性水溶液現像液への溶解性により用い易いものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ工程に用いるための上面反射防止コーティングに関する。具体的には本発明は、193nmの放射波長に対して1.5未満の屈折率を有し、塩基水溶液現像液に可溶な上面反射防止コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクス産業において、並びに微細構造体(例えば、マイクロマシン、磁気抵抗性ヘッドなど)の作成を含むその他の産業において、構造的フィーチャのサイズを縮小するための要望が引き続いて存在している。マイクロエレクトロニクス産業におけるこうした要望は、マイクロエレクトロニクス・デバイスのサイズを縮小すること、及び/又は所与のチップ・サイズに対してより多くの回路を備えることである。
【0003】
フィーチャ・サイズを縮小するためには、効果的なリソグラフィ技術が必須である。リソグラフィは、所望の基板上にパターンを直接画像形成するという点だけでなく、こうした画像形成に通常使用されるマスクの作成という点からも、微細構造体の製造に強い影響を与える。典型的なリソグラフィ工程は、放射感応性レジストを画像形成用放射にパターン様式で露光することによって、パターン付けされたレジスト層を形成することを含む。この画像は、続いて、露光されたレジスト層を材料(通常はアルカリ性水溶液現像液)に接触させてレジスト層の部分を選択的に除去することによって現像し、所望のパターンをあらわにする。このパターンは、続いて、パターン付けされたレジスト層の開口部における材料をエッチングすることによって、下層にある材料に転写される。転写が完了した後、次いで残存するレジスト層が除去される。
【0004】
多くのリソグラフィ画像形成工程に関して、レジスト像の解像度は、屈折率のミスマッチ及び画像形成用放射の望ましくない反射に関連する異常な効果によって制限される可能性がある。これらの問題に対処するため、レジスト層と基板の間に反射防止コーティング(底面反射防止コーティング又はBARC)、及び/又はレジストと画像形成用放射が伝播する物理的経路における雰囲気との間に、反射防止コーティング(上面反射防止コーティング又はTARC)を用いることが多い。ドライ193nmリソグラフィのようなドライ・リソグラフィ工程(放射露光ステップに浸漬用流体を含まない)の場合、その雰囲気は、通常、空気である。液浸リソグラフィの場合は、雰囲気は、通常、水となる。
【0005】
反射防止コーティング組成物の性能は、所定の画像形成用放射の波長における光学特性に大きく依存する。通常望ましいTARCの光学特性に関する一般的な議論は、特許文献1に見出すことができる。重要な光学的パラメータのうちには、TARCの屈折率、反射率及び光学密度がある。
【0006】
反射防止コーティング組成物はまた、レジスト層と直接接触して、又は近接して用いられることに関連して、及びリソグラフィ工程全体(照射、現像、パターン転写など)に関連して、望ましい物理的及び化学的性能特性を有する必要がある。それ故に、TARCは、リソグラフィ工程全体に対して過度に妨げとなってはならない。通常アルカリ性水溶液現像液にレジストの一部分を溶解させることを含む画像現像ステップ中に除去できるTARCを有することが極めて望ましい。
【0007】
既存の市販のTARC組成物は、高解像度の193nmドライ・リソグラフィに必要とされる光学特性と物理的及び化学的性能特性とを合わせもってはいない。例えば、幾つかのTARC組成物は、1.5未満の望ましい屈折率を有するが、アルカリ性水溶液現像液に可溶でないため、別途のTARC除去ステップの余分な複雑さと費用をもたらす。他のTARC組成物は望ましい屈折率を有するが、レジストに悪影響を及ぼして、過剰なフィルム損失、及び生成するレジスト画像のコントラストの欠如をもたらし、又は望ましくないT型上面構造体の形成をもたらすことになる。他のTARC組成物は、アルカリ性水溶液現像液に対して望ましい溶解性を有するが、193nmにおける屈折率が高過ぎる。
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,274,295号
【特許文献2】米国特許出願公開公報第20050153232 A1号
【特許文献3】米国特許出願公開公報第20040063024 A1号
【特許文献4】米国特許第6,902,874号
【特許文献5】米国特許第6,730,452号
【特許文献6】米国特許第6,627,391号
【特許文献7】米国特許第6,635,401号
【特許文献8】米国特許第6,756,180号
【特許文献9】米国特許第4,855,017号
【特許文献10】米国特許第5,362,663号
【特許文献11】米国特許第5,429,710号
【特許文献12】米国特許第5,562,801号
【特許文献13】米国特許第5,618,751号
【特許文献14】米国特許第5,744,376号
【特許文献15】米国特許第5,801,094号
【特許文献16】米国特許第5,821,469号
【特許文献17】米国特許第5,948,570号
【非特許文献1】Wayne Moreau、「半導体リソグラフィ、原理、実際、及び材料」、Plenum Press(1988)、12及び13章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、特に下層の基板の地形上での画像形成に関連して、高解像度のリソグラフィを可能にするドライ193nmリソグラフィ工程に用いるのに適したTARC組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ドライ193nmリソグラフィ工程における上面反射防止コーティング組成物として有用である新規な反射防止コーティング組成物を包含する。これらの組成物は、193nmにおける上面反射の制御を可能にすると共に、アルカリ性水溶液現像液に対するそれらの溶解性によって使用を容易にする、際立った光学的、物理的及び化学的性能特性を備える。反射防止組成物は、193nm波長の放射に対して約1.5又はそれ以下の屈折率nと、芳香族部分を含有し、フォトリソグラフィ画像を現像するのに通常使用されるアルカリ性水溶液現像液に可溶であるポリマーの存在とによって特徴付けられる。本発明はまた、こうしたリソグラフィ構造体を用いて基板上の下層材料層をパターン付けする方法を包含する。
【0011】
1つの態様において、本発明は、193nmリソグラフィのための上面反射防止コーティング層として使用するのに適した組成物を包含し、この組成物は、芳香族部分、及び193nmの放射波長に対して約1.5未満の屈折率値nを有する、塩基水溶液に可溶なポリマーを含む。ポリマーは、塩基水溶液への組成物の溶解を促進する部分をさらに含むことが好ましい。ポリマーは、エチレン型主鎖を有することが好ましい。ポリマーは、さらにフッ素含有部分を含むことが好ましい。ポリマーは、さらに酸性硫黄部分を含むことが好ましい。
【0012】
別の態様において、本発明は、基板上にパターン付けされた材料フィーチャを形成する方法を包含し、この方法は、
(a)基板上に材料表面を設けるステップと、
(b)材料表面上に放射感応性レジスト層を形成するステップと、
(c)レジスト層上に本発明の上面反射防止コーティングを形成するステップと、
(d)レジスト層をパターン様式で放射に露光して、レジスト層内に放射露光領域のパターンを作成するステップと、
(e)レジスト層及び反射防止コーティングの部分を選択的に除去して材料表面の部分を露出させるステップと、
(f)材料の露出部分をエッチング又はイオン注入して、パターン付けされた材料フィーチャを形成するステップと
を含む。
画像形成用放射は193nm放射であることが好ましく、リソグラフィ工程はドライ・リソグラフィ工程であることが好ましい。
本発明のこれら及びその他の態様は、以下でさらに詳細に論ずる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ドライ193nmリソグラフィ工程における上面反射防止コーティング組成物として有用である新規な反射防止コーティング組成物を包含する。これらの組成物は、193nmにおける上面反射の制御を可能にすると共に、アルカリ性水溶液現像液に対するそれらの溶解性によって使用を容易にする、際立った光学的、物理的及び化学的性能特性を備える。反射防止組成物は、193nmの波長放射に対して約1.5又はそれ以下の屈折率nと、芳香族部分を含有し、リソグラフィ画像を現像するのに通常使用されるアルカリ性水溶液現像液に可溶であるポリマーの存在とによって特徴付けられる。
TARCのポリマーは、エチレン型主鎖を有することが好ましい。ポリマーは、アクリル酸ビニル及び/又はメタクリル酸ビニルのモノマー単位を含有することがより好ましい。ポリマーの主鎖は、不飽和炭素結合を含まないことが好ましい。
【0014】
芳香族部分は、好ましくは独立に、置換又は非置換の芳香族部分又はそれらの組合せから成る群から選択される。芳香族部分は、置換又は非置換型の縮合芳香族部分、複素環芳香族部分及びそれらの組み合わせから成る群から選択されることがより好ましい。置換型において、芳香族部分は、結合した環状構造を含有してもよい。幾つかの好ましい芳香族部分は、ナフタレン及びチオフェンである。環状構造を含有する置換されたナフタレンの例は、アセナフテン(即ち、アセナフチル基)及びヘキサヒドロピレン(即ち、ヘキサヒドロピレニル基)である。芳香族部分は、ペンダント基として存在することが好ましい。ポリマー中の芳香族部分の量は、屈折率nを1.5未満、より好ましくは約1.4未満、及び最も好ましくは1.3と1.4の間のn値に低下させるのに十分であることが好ましい。通常、上面反射防止コーティングは非常に薄く塗布されるが、193nmにおいて過大な吸収を引き起こす芳香族基を過剰量用いないことがさらに好ましい。本発明の組成物は、193nmの放射波長に対して約0.05から0.25までの吸光係数kを有することが好ましい。ポリマーは、好ましくは約10モル%から80モル%まで、より好ましくは約20モル%から70モル%まで、最も好ましくは25モル%から65モル%までの、芳香族部分を有するモノマー単位を含有する。
【0015】
ポリマーはさらに、塩基水溶液への組成物の溶解を促進する部分を含むことが好ましい。好ましい溶解促進部分は、ヒドロキシル基、スルホンアミジル基、N−ヒドロキシジカルボキシイミジル基、その他のジカルボキシイミジル基、その他のアミノ基及びその他のイミジル基から成る群から選択される。溶解促進部分は、TARCポリマーを構成する幾つかのモノマー単位に含まれることが好ましい。溶解促進部分は、芳香族部分に直接連結させることができ、又はポリマーのその他の部分に結合させることがきる。必要とされる溶解促進官能基の量は、芳香族成分の疎水性の程度及び用いる芳香族成分の量に依存する可能性がある。1つの実施例においては、溶解促進官能基は、カルボン酸部分を有するアクリレート又はメタクリレート・モノマーの形態で供給することができる。
【0016】
ポリマーは、さらにフッ素含有部分を含むことが好ましい。フッ素含有部分はトリフルオロメチル基であることが好ましい。フッ素部分はまた、芳香族部分の1つ又は複数の水素原子に対するフッ素原子置換として存在してもよい。フッ素部分はまた、芳香族部分から又はポリマーのその他の部分からのペンダント基とすることができる。幾つかの好適なフッ素含有モノマー単位の実施例は、次の構造体のうちの1つを有する。
【化1】

構造(i)はトリフルオロメチルメタクリル酸であり、より好ましいフッ素含有モノマー単位である。その他のフッ素含有構造体を用いることもできる。フッ素含有モノマー単位の量は、好ましくは約10〜90モル%、より好ましくは約20〜70モル%、最も好ましくは約30〜60モル%である。
【0017】
ポリマーは好ましくは酸性部分、より好ましくは酸性硫黄部分、最も好ましくはスルホン酸部分をさらに含む。酸性部分は、芳香族部分に直接連結させることができ、又はポリマーのその他の部分からのペンダント基とすることができる。スルホン酸部分を有するモノマー単位の実施例は次の構造体である。
【化2】

ここで構造体(i)がより好ましい。硫黄含有モノマー単位の量は好ましくは約3モル%から40モル%まで、より好ましくは約5〜30モル%である。
【0018】
幾つかの特定のポリマーの実施形態の例を以下に説明する。
第1の実施形態においては、ポリマーは次のモノマー単位を含有する。
【化3】

ここで、x、y及びzは0よりも大きい。好ましくは、xは約30〜65であり、yは約20〜65であり、zは約5〜30である。好ましくは、この実施形態のポリマーは、本質的にこれらのモノマー単位から成ることになる。
【0019】
第2の実施形態においては、ポリマーは次のモノマー単位を含有する。
【化4】

ここで、x、y及びzは0よりも大きい。好ましくは、xは約25〜60であり、yは約30〜70であり、zは約5〜25である。好ましくは、この実施形態のポリマーは、本質的にこれらのモノマー単位から成ることになる。一般に、第2の実施形態は第1の実施形態よりも好ましい。
【0020】
本発明のポリマーは、好ましくは少なくとも約1000の重量平均分子量、より好ましくは約1500〜50000の重量平均分子量を有する。本発明のポリマーは、市販のモノマー及び/又は容易に合成されるモノマーを用いて、従来の重合技術によって製造することができる。所望により、本発明の異なるポリマーの混合物を用いることができるが、或いは組成物はその他のポリマー成分を含有してもよい。しかし、一般に、本発明のTARC組成物のポリマー成分は本質的に本発明のポリマーから成ることが好ましい。
【0021】
本発明の組成物はさらに、下層のレジスト材料と非混和性であることが好ましい少なくとも1つの溶媒を含むことができる。好適な溶媒としては、水、1−ブタノール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、エチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、3−エチル−2−ペンタノール、1−メチルシクロペンタノール、2−メチル−1−ヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘキサノール、4−メチル−3−ヘキサノール、5−メチル−1−ヘキサノール、5−メチル−2−ヘキサノール、5−メチル−3−ヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、1,3−プロパンジオール、オクタノール、及びデカンが挙げられるが、これらに限定されない。基板に塗布するための組成物中の溶媒の量は、約0.5〜5重量%の固形分含量を達成するのに十分であることが好ましい。組成物は、当該技術分野において既知の界面活性剤又はその他の適切な薬剤を含むことができる。
【0022】
本発明は、基板上にパターン付けされた材料フィーチャを形成する方法を包含し、この方法は、
(a)基板上に材料表面を設けるステップと、
(b)材料表面上に放射感応性レジスト層を形成するステップと、
(c)レジスト層上に本発明の上面反射防止コーティングを形成するステップと、
(d)レジスト層をパターン様式で放射に露光して、レジスト層上に放射露光領域のパターンを作成するステップと、
(e)レジスト層及び反射防止コーティングの部分を選択的に除去して材料表面の部分を露出させるステップと、
(f)材料の露出部分をエッチング又はイオン注入して、パターン付けされた材料フィーチャを形成するステップと
を含む。
【0023】
半導体基板の材料層は、製造工程の段階及び最終製品の所望の材料の組に応じて、金属導電体層、セラミック絶縁体層、半導体層又はその他の材料とすることができる。本発明の組成物は、半導体基板上に集積回路を製造する際に用いられるリソグラフィ工程に対して特に有用である。本発明の組成物は、集積回路デバイス内に用いることができるような、金属配線ライン、コンタクト又はビアのための孔、絶縁区域(例えば、ダマシン・トレンチ又は浅いトレンチ分離)、コンデンサ構造体のトレンチ、トランジスタのイオン注入Si構造体、などのパターン付けされた材料層構造体を作製するためのリソグラフィ工程中で用いることができる。
【0024】
本発明のTARC組成物は、193nm放射に対する基板の反射率を実質的に減少させることになることが好ましい。所望により、底面反射防止コーティングを、レジスト層の形成前に基板に塗布することができる。レジストは、193nmの紫外放射により画像形成可能であることが好ましい。好適なレジスト材料の例は、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、及び特許文献8に記載されており、それらの開示は引用により本明細書に組み入れられる。通常、溶媒含有レジスト組成物は、スピン・コーティング又はその他の方法を用いて塗布される。レジスト・コーティングを有する基板は、次いで加熱(露光前ベーク)して溶媒を除去し、レジスト層の密着性を向上させることが好ましい。露光前ベークのステップは、好ましくは約10秒から15分まで、より好ましくは約15秒から1分まで実施する。露光前ベークの温度は、レジストのガラス転移温度に応じて変えることができる。
【0025】
本発明のTARC組成物は、スピン・コーティングによってレジスト層上に直接塗布することが好ましい。次いでTARC組成物中の溶媒を除去する。TARC層の厚さは、典型的には20〜60nmの程度である。
次にレジスト層は、所望の放射(例えば、193nm紫外放射)にパターン様式で露光させる。パターン様式の露光は、レジスト層の上に配置されたマスクを通して行われる。193nmUV放射に対して、全露光エネルギーは、好ましくは約100ミリジュール/cm又はそれ以下、より好ましくは約50ミリジュール/cm又はそれ以下(例えば、15〜30ミリジュール/cm)である。
【0026】
所望のパターン様式の露光後、レジスト層は通常、ベークして酸触媒反応をさらに完全にし、露光されたパターンのコントラストを向上させる。露光後ベークは、好ましくは約60〜175℃において、より好ましくは約90〜160℃において実施する。露光後ベークは、約30秒から5分までの間実施することが好ましい。
露光後ベークを行った場合、その後、ポジ型レジストの場合には放射に露光されたレジスト領域(又はネガ型レジストの場合は露光されていない領域)を選択的に溶解するアルカリ性水溶液にレジスト層を接触させることによって所望のパターンを有するレジスト構造体が得られる(現像される)。好ましいアルカリ性水溶液(現像液)は、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液である。基板上に得られたリソグラフィ構造体は、次いで通常は乾燥して全ての残留現像液を除去する。本発明のTARCはまた、このステップで現像液により溶解させる。
【0027】
レジスト構造体からのパターンは、次に、当該技術分野において既知の方法を用いて、好適なエッチング液を用いてエッチングすることにより、下層の基板材料の露出部分に転写することができる。転写は、反応性イオンエッチング又は湿式エッチングによって行うことが好ましい。一旦所望のパターン転写が行われたら、あらゆる残留レジストを従来の剥離法により除去することができる。或いは、パターンはイオン注入により転写して、イオン注入材料のパターンを形成することができる。
【0028】
本発明の組成物が有用であり得る一般的なリソグラフィ工程の例は、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、及び特許文献17に開示されており、それら特許の開示は引用により本明細書に組み入れられる。パターン転写工程の他の例は、非特許文献1に記載されており、その開示は引用により本明細書に組み入れられる。本発明は、いずれの特定のリソグラフィ法又はデバイス構造体に限定されないことを理解されたい。
本発明は、以下の実施例によってさらに説明する。本発明は実施例の具体的な詳細には限定されない。
【実施例1】
【0029】
2−ビニルナフタレンとアクリル酸t−ブチルのコポリマー(PVNTBA1(10/90))の合成。
0.77gの2-ビニルナフタレン、5.77gのアクリル酸t−ブチル及び0.41gの2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)開始剤を、30gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、3つ口フラスコに充填した。次にこの系をNで30分間パージした後、温度を70℃に上昇させた。反応は、N下において70℃で一晩行った。次いで溶液を1000mlの脱イオン(DI)水中で沈殿させた。沈殿した固体を約35gのアセトンに溶解させ、1000mlのDI水中に再沈殿させた。ポリマーを回収し、真空オーブン中65℃で一晩乾燥させた。収率は以下に示す構造を有するPVNTBA1(10/90)が81%であった。
【化5】

【実施例2】
【0030】
2-ビニルナフタレンとアクリル酸t−ブチルのコポリマー(PVNTBA2(20/80))及び(PVNTBA3(40/60))の合成。
異なる割合の2-ビニルナフタレンとアクリル酸t−ブチルを有する2つのコポリマーを、反応混合物中に加える反応物の量を除いて実施例1に記載されたのと同じ手順を用いて合成した。PVNTBA2(20/80)の合成に対しては、1.54gの2-ビニルナフタレン、5.13gのアクリル酸t−ブチル及び0.41gのAIBN開始剤を30gのTHF中に溶解し、一方、PVNTBA3(40/60)に対しては、3.08gの2-ビニルナフタレン、3.85gのアクリル酸t−ブチル及び0.41gのAIBN開始剤を30gのTHFに溶解した。PVNTBA2(20/80)の収率は84%であり、一方PVNTBA3(40/60)の収率は65%であった。これらのポリマーの構造を以下に示す。
【化6】

【実施例3】
【0031】
2-ビニルナフタレンとアクリル酸t−ブチルアクリレートのコポリマーの光学特性。
実施例1及び2で合成したポリマーのそれぞれをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)に溶解させて固形分が5重量%の溶液を得た。それぞれの調製した溶液をシリコン・ウェハ上にスピン・コーティングし、次いで110℃のホットプレート上で60秒間ベークした。次に、n及びkの値を、J.A.Woollam Co.Inc.製のVB−250型VASEエリプソメータで測定した。193nm放射に対して測定した膜の光学特性を次の表に示す。
【表1】

【実施例4】
【0032】
2-ビニルナフタレン、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸及び2-スルホエチルメタクリレート(PVNTFASM(45/40/15))のターポリマーの合成。
冷却器、温度計、窒素注入口及び磁性攪拌棒を備えた丸底フラスコに、2-ビニルナフタレン・モノマー(1.237g、0.00803モル)、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸モノマー(1.0g、0.00719モル)、2-スルホエチルメタクリレート(0.519g、0.002678モル)、AIBN(0.176g、モノマーの総モルの6%)、1-ドデカンチオール(0.108g、モノマーの総モルの3%)、及び約10gのTHFを加えた。反応混合物を室温で攪拌し、45分間Ar気流でバブリングした後、加熱マントルのスイッチを入れた。反応は、不活性アルゴン雰囲気下において70℃で一晩行った。次いで、反応溶液を室温に冷却し、ヘキサン中に沈殿させた。固体を回収し、真空オーブン中60℃で一晩乾燥させた。収率は89%であった。このポリマーを4−メチル−2−ペンタノール溶液によりスピン・コーティングし、そしてホットプレート上90℃で60秒間ベークした。得られた膜は、1.377のn値及び0.155のk値を示した。ポリマーの構造を以下に示す。
【化7】

【実施例5】
【0033】
1.5未満のn値を有する合成された幾つかの他のポリマー。
異なる量の種々のモノマーを組み合わせた幾つかの選択されたポリマーを実施例1又は実施例4に記載された方法により合成し、次いで実施例3に記載された方法により測定した。それらは、以下に示すように、1.5未満のn値の光学特性を示した。
【化8】

【実施例6】
【0034】
レジスト画像プロファイルに対する酸性部分の影響。
JSR社から市販の1つの193nmレジストAR1570Jを、AR40を含有する3つの300mmシリコン・ウェハの上にスピン・コーティングし、130℃で60秒間ベークした。得られたレジスト膜は約240nmの厚さであった。上記の実施例5において合成したTARC−P3及びTARC−P5ポリマーを1−ブタノールに溶解させて2つの1.1重量%のTARC溶液を調製した。次いで、各溶液を1つのレジスト・コーティングされたウェハ上にスピン塗布し、ホットプレート上90℃で60秒間ベークした。対照として1つのウェハをTARCのないままに残した。2つのコーティングされたウェハ上のTARC膜は約30nm厚であった。リソグラフィ露光は、減衰位相シフトマスク(attPSM)を用いて、0.75のNAを有するASML PAS 5500/1200型193nmリソグラフィ・ツール上で行った。露光後、レジストを125℃で90秒間ベークし、次に0.263NのTMAHを用いて60秒間現像した。SEM写真は、TARC−P3ウェハのレジスト画像上にいくつかの表皮を示した。TARC−P5ウェハのレジスト画像は、対照ウェハと比較するとより丸みのある頂部を有していた。TARC−P5のレジスト画像のライン幅は、同じ線量でプリントされたわずかに緩和した245nmピッチ・パターン(Cr上の118L245P)における目標とする80nmラインに関して、対照の77.01nmに比較して91.48nmであった。
【実施例7】
【0035】
スウィング縮小の評価。
実施例4で合成したPVNTFASM(45/40/15)ポリマーを4-メチル-2-ペンタノールに溶解させて1.2重量%の固形分含量を得た。次に、溶液をレジストの上にスピン・コーティングし、TARCとしてホットプレート上90℃で60秒間ベークして限界寸法(CD)のスウィングを縮小した。TARCを有していないHMDS下塗りのSiウェハの上にスピン・コーティングした実験用193nmレジストに関して、CDスウィング曲線を得た。50%未満のスウィング振幅が観測された。次いで、レジスト上のTARCとして27nm厚のPVNFASM(45/40/15)ポリマー膜を用いて同じ厚さ範囲(150nm〜240nm)において同じレジストについてCDスウィング曲線を生成した。8%未満のスウィング振幅が得られた。このスウィング振幅の縮小は、本発明の組成物によってもたらされる顕著な反射防止性能を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
193nmリソグラフィのための上面反射防止コーティング層として用いるのに適した組成物であって、芳香族部分及び193nmの放射波長に対して1.5未満の屈折率値nを有する、塩基水溶液に可溶なポリマーを含む、前記組成物。
【請求項2】
前記芳香族部分は、置換又は非置換の芳香族部分又はそれらの組合せから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記芳香族部分は独立に、置換又は非置換型の、縮合芳香族部分、複素環芳香族部分及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記芳香族部分は、ナフタレン、チオフェン及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーは、塩基水溶液中への前記組成物の溶解を促進する部分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶解を促進する部分は、ヒドロキシル基、スルホンアミジル基、N−ヒドロキシジカルボキシイミジル基、その他のジカルボキシイミジル基、その他のアミノ基及びその他のイミジル基から成る群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーはさらにフッ素含有部分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物はさらに硫黄含有酸性部分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマーはエチレン型主鎖を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマーは、アクリル酸ビニル、メタアクリル酸ビニル、及びそれらの組合せから成る群から選択されるモノマー単位を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記芳香族部分は前記エチレン型主鎖からのペンダント基である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記屈折率nは1.4又はそれ以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、193nmの放射波長に対して0.05から0.25までの吸光係数kを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリマーは、以下に示す構造から成る群から選択される構造を有する少なくとも1つのモノマー単位を含む、請求項7に記載の組成物。
【化1】

【請求項15】
前記ポリマーは、以下に示す構造から成る群から選択される構造を有する少なくとも1つのモノマー単位を含む、請求項8に記載の組成物。
【化2】

【請求項16】
前記ポリマーは以下に示すモノマー単位を含有する、請求項1に記載の組成物。
【化3】

【請求項17】
前記ポリマーは、本質的に以下に示すモノマー単位から成る、請求項16に記載の組成物。
【化4】

式中、xは35〜65であり、yは20〜65であり、zは5〜30である。
【請求項18】
前記ポリマーは以下に示すモノマー単位を含有する、請求項1に記載の組成物。
【化5】

【請求項19】
前記ポリマーは、本質的に以下に示すモノマー単位から成る、請求項18に記載の組成物。
【化6】

式中、xは25〜60であり、yは30〜70であり、zは5〜25である。
【請求項20】
前記ポリマーは1500〜50000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
基板上にパターン付けされた材料フィーチャを形成する方法であって、
(a)基板上に材料表面を設けるステップと、
(b)前記材料表面上に放射感応性レジスト層を形成するステップと、
(c)前記レジスト層上に上面反射防止コーティングを形成するステップであって、前記反射防止コーティングは、芳香族部分及び193nmの放射波長に対して1.5未満の屈折率値nを有する、塩基水溶液に可溶なポリマーを含む、ステップと、
(d)前記レジスト層をパターン様式で放射に露光して、前記レジスト層内に放射露光領域のパターンを作製するステップと、
(e)前記レジスト層及び反射防止コーティングの部分を選択的に除去して、前記材料表面の部分を露出させるステップと、
(f)前記材料の前記露出部分をエッチング又はイオン注入して、前記パターン付けされた材料フィーチャを形成するステップと
を含む方法
【請求項22】
前記放射は193nmの波長を有する紫外放射である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記材料層は、誘電体、金属、及び半導体から成る群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記芳香族部分は独立に、置換又は非置換型の、縮合芳香族部分、複素環芳香族部分及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリマーは、塩基水溶液中への前記組成物の溶解を促進する部分をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記溶解を促進する部分は、ヒドロキシル基、スルホンアミジル基、N−ヒドロキシジカルボキシイミジル基、その他のジカルボキシイミジル基、その他のアミノ基及びその他のイミジル基から成る群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリマーはさらにフッ素含有部分を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記反射防止コーティングはさらに硫黄含有酸性部分を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリマーはエチレン型主鎖を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリマーは、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、及びそれらの組合せから成る群から選択されるモノマー単位を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記芳香族部分は前記エチレン型主鎖からのペンダント基である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記屈折率nは1.4又はそれ以下である、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記反射防止コーティングは、193nmの放射波長に対して0.05から0.25までの吸光係数kを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリマーは、以下に示す構造から成る群から選択される構造を有する少なくとも1つのモノマー単位を含む、請求項27に記載の方法。
【化7】

【請求項35】
前記ポリマーは、以下に示す構造から成る群から選択される構造を有する少なくとも1つのモノマー単位を含む、請求項28に記載の方法。
【化8】

【請求項36】
前記ポリマーは以下に示すモノマー単位を含有する、請求項21に記載の方法。
【化9】

【請求項37】
前記ポリマーは、本質的に以下に示すモノマー単位から成る、請求項36に記載の方法。
【化10】

式中、xは35〜65であり、yは20〜65であり、zは5〜30である。
【請求項38】
前記ポリマーは以下に示すモノマー単位を含有する、請求項21に記載の方法。
【化11】

【請求項39】
前記ポリマーは、本質的に以下に示すモノマー単位から成る、請求項38に記載の方法。
【化12】

式中、xは25〜60であり、yは30〜70であり、zは5〜25である。
【請求項40】
前記ポリマーは1500〜50000の重量平均分子量を有する、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2009−511969(P2009−511969A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534956(P2008−534956)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065877
【国際公開番号】WO2007/042348
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】