説明

1R,2S−メトキサミンを用いた便失禁および他の状態の処置

【課題】医薬としての使用のための1R,2S−メトキサミンが提供される。
【解決手段】1R,2S−メトキサミンは、局部的な副作用も全身性の副作用もなしに、例えば、血圧に影響することなく、低用量で便失禁を有効に処置するために局所的に用いることができる。1R,2S−メトキサミンは、胃腸の他の混乱および障害を処置するために、昇圧薬として、鼻詰まり薬として、眼科において、低用量でかつ重大な副作用なしに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(序文)
本発明は、便失禁および他の状態の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
便失禁は、成人の集団のうち約2%に影響する1。便失禁は、高齢者ではさらにより一般的であり、そしてそれらの症状について助けを求める人々はそれほど多くはないようである。便失禁の最も一般的な原因は、分娩の結果としての外陰部神経障害または直接の外傷のいずれかによる、分娩時の肛門括約筋複合体に対する損傷である2。便失禁はまた、構造的傷害がなくても見られる可能性がある;このような状況では、内肛門括約筋(IAS)の孤立した変性が、最も一般的な原因である3
【0003】
失禁の軽度の症状の保守的な処置としては、パッド(当てもの)4、プラグ(詰め物)5、抗下痢薬6、および食事の変更が挙げられる。しかし、いくつかの症例は、このような処置では管理されない。外肛門括約筋に対する傷害は、重複する外科的修復の影響を適用できる7が、内括約筋修復の結果は期待を裏切っていた8。より甚大な損傷に対して、外科的処置は、大がかりになるが、これには、人工腸括約筋9、仙骨神経刺激10、およびグラシロプラスティ(graciloplasty)が挙げられる。これらは、大きな介在物であり、そして多くの患者にとっては不適当であるか、または耐容性に劣るかのいずれかであり得る。
【0004】
便失禁の処置のための局所的な薬剤の使用は、長年の懸案に対する異なるアプローチである。WO98/27971は、便失禁の処置において種々の薬剤の使用を提唱している。それらの薬剤としては、αアドレナリン受容体アゴニスト、一酸化窒素シンターゼ阻害剤、プロスタグランジンF、ドーパミン、モルヒネ、β遮断薬、および5−ヒドロキシトリプタミンが挙げられる。しかし、実験的データは、フェニレフリン、および一酸化窒素シンターゼ阻害剤であるNω−ニトロ−L−アルギニンについてしか得られていない。
【0005】
便失禁についての局所治療に対する全ての臨床研究は、今日まで、α−1アドレナリン受容体アゴニストであるフェニレフリンに集中してきた。(このような薬剤は以前にはα−1アドレナリン作用性アゴニストと呼ばれた)。局所的フェニレフリンの使用は、正常なヒト被験体の休止期肛門管圧において用量依存性の上昇を生じると断言されている。正常なヒト被験体の肛門に対して塗布された場合、10重量%のフェニレフリンを含むゲルは、休止期の肛門圧の33%の上昇を生じ、それは中央値で7時間維持された12(WO98/27971も参照のこと)。局所的なフェニレフリンゲルの使用を、超音波検査で肛門括約筋が正常であるが、休止期肛門管圧が低く、失禁の症状を有する患者で繰り返した。しかし、この群では、10重量%〜20重量%のフェニレフリンゲルでは休止期肛門圧の有意な上昇は見られなかったが、30%および40%のゲルを用いて処置した被験体においては、上昇は統計学的に有意に達した13。このデータによって、失禁の患者の内肛門括約筋は、正常な被験体における括約筋よりもアドレナリン受容体アゴニストに対して感受性が低いということが示唆される。インビトロの研究からもこれを支持するデータが存在する14
【0006】
この事実によって、失禁を有し、かつ超音波検査で正常な括約筋である36例の患者を含む無作為化コントロール試験に対して、フェニレフリンを用いる研究を拡大した場合、失禁のスコア(10%のフェニレフリンゲルを用いた場合の休止期肛門管圧または肛門管上皮血流)に有意な全体的改善が見られなかった理由を説明することもできる15。対照的に、回腸嚢形成後の糞便漏出を伴う患者の小規模な無作為化コントロール試験においては、10%のフェニレフリンゲルは、プラセボに比べて自制の有意に大きい主観的な改善を生じることが見出された16
【0007】
これらの結果によって、便失禁の処置に有効であるためには、局所フェニレフリン調合物は、30〜40重量%程度の高濃度のフェニレフリンを含むことが必要であることが示される。これらのレベルでは、肛門周囲の炎症が報告されている15。この理由のみによって、このような調合物は処置での使用には適切でない。
【0008】
血管の筋肉組織のαアドレナリン作用性受容体に対して作用するフェニレフリンは、抗低血圧または昇圧効果としても公知である、血圧上昇効果を有しており、そして低血圧状態の処置において全身性に用いられている。便失禁の処置のためのフェニレフリンの局所使用に関する別の懸念は、便失禁を効果的に処置するために必要な高用量では、すなわち、30〜40重量%のフェニレフリンを含有する局所調合物を用いては、この局所投与されるαアドレナリン受容体アゴニストは、脈管構造に対して全身性に作用する可能性があり、血圧および/または心拍数に影響するということである。
【0009】
便失禁における処置に対する高用量のαアドレナリン受容体アゴニストの局所使用に関するこれらの懸念は、フェニレフリンが眼科学において局所適用される場合に心血管系の副作用がみられるという事実17、そして局部的な炎症も観察されるという事実18によって支持される。これらの懸念はまた、脈管構造のαアドレナリン作用性受容体に作用する他のαアドレナリン受容体アゴニストであって、フェニレフリンと同様の血管収縮特性および血圧上昇特性を有し、そしてフェニレフリンと同じ疾患のために、すなわち昇圧剤としておよび血管収縮剤として用いることができるアゴニストに対してもあてはまる。メトキサミン(2−アミノ−1−(2,5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール)は、このようなαアドレナリン受容体アゴニストの例である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
メトキサミンは、2つのキラル中心を有し、これによって4つの立体異性体を有する。現在、臨床上、昇圧剤として、そして血管収縮剤として用いられているメトキサミンは、異性体の混合物の形態である。
【0011】
FujitaおよびHiyama19は、酸性媒体中でヒドロシランによるα置換アルカノンのエリトロ方向還元のための方法であると言われているものを記載した。生成される化合物の1つは、(1R,2S)−2−アミノ−1−(2,5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノールと言われており、これは、FujitaおよびHiyamaによってL−erythro−メトキサミンとも呼ばれる。しかし、FujitaおよびHiyamaは、推定の1R,2S−メトキサミン異性体(または彼らが生成した任意の他の異性体)を明確には、すなわち、単結晶X線回折法によっては同定していないし、彼らは、推定の1R,2S−メトキサミン異性体(または彼らが生成した任意の他の異性体)の生物学的活性に関してはいかなる検討も行なっていない。さらに、記載される合成方法は、少量、約1gの生成物を生成するのには適切であるが、本発明者らは、この方法では、例えば約1gより多い量を生成するように、例えば、例えば、約30g〜50gの異性体を生成するようにスケールアップした場合、疑わしい1R,2S−異性体を選択的に生成できなかったことを見出した。
【0012】
FujitaおよびHiyamaの方法は、アルコールへのα−アミノケトンの還元を伴う。著者らは、α−アミノケトンを還元するための以前に記載された方法では、炭化水素への過剰な還元が通常観察されたということを指摘する。著者らは、かれらの方法を用いると、通常の分析的方法によっては炭化水素の形成が検出されなかったということを述べている。彼らは、さらに、高度にエリトロ選択性の還元が認められたことを述べている。99%を上回る選択性が観察されたと述べられた。
【0013】
本発明者らは、メトキサミンの疑わしい1R,2S−異性体(L−erythro−メトキサイン)を約1gという小規模で生成する場合、同様の結果を得たが、30g〜50gのバッチにスケールアップした場合、本発明者らは、FujitaおよびHiyamaの知見と対照的に、過剰な還元が生じ、ここでは、生成物のうち60%〜70%より多くが所望のアルコールではなく炭化水素であったということを見出した。さらに、そのプロセスは、エリトロ選択性ではなかった。かなりの量のトレオ異性体が形成された。
【0014】
FujitaおよびHuiyamaは、彼らの方法および生成された異性体について言及する場合、「R,S」命名法および「エリトロ/トレオ(erythro/threo)」命名法の両方を用いている。Cahn−Ingold−Prelong「R,S」命名法は一般に、異性体を明瞭に規定するとして受け入れられているので、「R,S」用語が、「エリトロ/トレオ」用語の代わりに、本明細書においてメトキサミン異性体を規定するために用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、L−erythro−メトキサミンとしても公知である1R,2S−メトキサミンを合成して、核磁気共鳴(NMR)分光法および単結晶X線回折法によって、この異性体が以下の構造を有することを確認した。
【0016】
【化1】

【0017】
本発明は、医薬としての使用のための1R,2S−メトキサミンを提供する。
【0018】
本発明は、αアドレナリン受容体アゴニストとしての使用のための1R,2Sメトキサミンを提供する。
【0019】
本発明は、胃腸管の平滑筋の緊張を増大するのにおける使用のため、および胃腸管の平滑筋の緊張の消失から生じる混乱または障害を処置するのにおける使用のための1R,2S−メトキサミンを提供する。
【0020】
本発明はまた、胃腸管の括約筋の緊張を増大するのにおける使用のため、および胃腸管の括約筋の緊張の消失から生じる混乱または障害を処置するのにおける使用のための1R,2S−メトキサミンを提供する。例えば、本発明は、幽門括約筋の緊張を増大するのにおける使用のため、および胃性下痢の処置における使用のため、および胃食道の括約筋の緊張を増大するのにおける使用のため、ならびに食道の逆流およびバレット病を処置するのにおける使用のための1R,2S−メトキサミンを提供する。
【0021】
本発明は、肛門括約筋の緊張を増大するのにおける使用のため、および便失禁を処置するのにおける使用のための1R,2Sメトキサミンを提供する。
【0022】
本発明はまた、心機能の混乱または障害、例えば心律動の混乱または障害の予防または処置における使用のための1R,2S−メトキサミンを提供する。
【0023】
本発明はまた、血管収縮薬としての使用のための使用のための1R,2S−メトキサミンを提供する。本発明はまた、鼻詰まり薬としての使用のための使用のため、および眼科の血管収縮薬として、および眼の瞳孔を拡大するための散瞳薬としての使用のための1R,2S−メトキサミンを提供する。
【0024】
本発明はまた、血圧上昇(昇圧)薬としての使用のための、例えば、低血圧の予防または処置における、例えば、麻酔の間および/または麻酔の後に血圧を維持するための1R,2S−メトキサミンを提供する。
【0025】
本発明はさらに、上記の任意の用途のための医薬の製造のための1R,2S−メトキサミンの使用を提供する。
【0026】
本発明はまた、αアドレナリン受容体アゴニストを用いた処置の必要な哺乳動物を処置する方法を提供する。この方法は、治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンをこの哺乳動物に対して投与することを含む。
【0027】
本発明は、哺乳動物の胃腸管の平滑筋の緊張を増大する方法を提供する。この方法は、治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンをこの哺乳動物に投与することを含む。
【0028】
本発明は、胃腸管の平滑筋の緊張の消失から生じる混乱または障害を処置する方法を提供する。この方法は、治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンをこの処置の必要な哺乳動物に投与することを含む。
【0029】
本発明は、哺乳動物の胃腸管の括約筋、例えば、幽門括約筋または肛門括約筋の緊張を増大する方法を提供する。この方法は、治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンをこの哺乳動物に投与することを含む。
【0030】
本発明は、胃腸管の括約筋の緊張の消失から生じる混乱または障害を処置する方法を提供する。この方法は、治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンをこの処置の必要な哺乳動物に投与することを含む。このような障害としては、胃性下痢および便失禁が挙げられる。
【0031】
本発明はまた、哺乳動物における心機能の混乱または障害の予防または処置のための方法を提供する。この方法は、治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンをこの予防または処置の必要な哺乳動物に投与することを含む。このような混乱および障害としては、心律動の混乱または障害が挙げられる。
【0032】
本発明はまた、血管収縮薬を用いて処置する必要がある哺乳動物を処置する方法を提供する。この方法は、治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンをこの処置の必要な哺乳動物に投与することを含む。このような処置は、鼻詰まり、もしくは眼の充血の処置であってもよく、または眼の瞳孔を拡大することであってもよい。
【0033】
本発明はまた、低血圧を処置または予防する方法を提供する。この方法は、例えば、麻酔の間に血圧を維持するために、治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンをこの処置の必要な哺乳動物に投与することを含む。
【0034】
この1R,2Sメトキサミンは、遊離の塩基の形態であってもその塩の形態であってもよい。処置における使用のためには、この塩は、生理学的に耐容性の塩でなければならない。
【0035】
本発明はまた、薬学的に適切なキャリアと混合されるかまたは組み合わされた、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩を含む薬学的組成物を提供する。
【0036】
本発明はまた、1R,2S−メトキサミンの生成のために適切なプロセスを提供する。このプロセスは、ジメチルフェニルシラン、および(S)−アミノ−1−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−プロパノンを含む溶液にトリフルオロ酢酸を滴下する工程であって、この(S)−アミノ−1−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−プロパノンのアミノ基が、例えば、アルコキシ基またはアリールオキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル基によって保護されている、工程と、得られたアミノ保護(1R,2S)−2−アミノ−1−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−プロパノールからこの保護基を除去する工程とを含む。シランおよびプロパノンの溶液のための溶媒は、詳細には、塩素化炭化水素、例えば、ジクロロメタンである。ジメチルフェニルシランを用いるプロパノンの還元は、冷却しながら実行されるべきである。この反応は一般に、氷冷を用いて、例えば0℃の領域の温度で実行される。このプロセスによって、1gより大規模で、例えば、30〜50gまたはそれを超える規模で1R,2S−メトキサミンの生成が可能になる。
【0037】
得られた1R,2S−メトキサミンは、その塩に、例えば、酸との塩に、例えば、上記のような塩に、例えば、酸との反応によって転化され得る。
【0038】
本発明はまた、メトキサミン異性体の混合物からメトキサミンの1R,2S異性体を単離するための方法を提供する。この方法は、シリカゲルに結合したβ−シクロデキストリンR,S−ヒドロキシプロピルエーテルを含むクロマトグラフィー媒体を用いる高圧液体クロマトグラフィーに、好ましくは続いてビニルアルコールコポリマーの水酸基へのオクタデシル(C18)基の導入によって誘導されたビニルアルコールコポリマーベースを含むクロマトグラフィー媒体を用いる逆相クロマトグラフィーに、この異性体の混合物を供することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、灌流臓器槽を示しており、ここでは、ブタの内肛門括約筋の細片を、メトキサミンラセミ化合物および4つの個々の異性体を用いて試験した。
【図2】図2〜5は、インビトロで試験した内肛門括約筋の用量/応答曲線を示す。図2および4においては、コントロールとしてフェニレフリンを用いた。実施例3に示した条件下で液体クロマトグラフィーを用いて4つのメトキサミン異性体を分離した。クロマトグラフィーによって分離されたとおり、それらを、ピーク1〜4として命名する。図2は、メトキサミンラセミ化合物(黒丸)およびフェニレフリン(白抜き四角)を用いた用量応答曲線を示す。
【図3】図3は、実施例3に示した条件下で液体クロマトグラフィーを用いて得た、4つのメトキサミン異性体、ピーク1(黒丸)、ピーク2(白抜き四角)、ピーク3(白抜き三角)およびピーク4(×)を用いる、用量応答曲線を示す。
【図4】図4は、メトキサミンラセミ化合物(黒丸)、ピーク2(白抜き三角)およびフェニレフリン(白抜き四角)を用いた用量応答曲線を示す。
【図5】図5は、実施例4に従って合成された1R,2S−メトキサミン(ピーク2(合成)(白抜き四角)に相当する)、および実施例3に従うクロマトグラフィー分離によって得られた1R,2S−メトキサミン(ピーク2(分離)(黒丸)に相当する)を用いた用量応答曲線を示す。
【図6】図6〜11は、実施例3に示した条件下で液体クロマトグラフィーを用いて得られたメトキサミンラセミ化合物および4つの異性体のクロマトグラムを示す。図6は、4つのピークを示すラセミ化合物のクロマトグラムである(WWD1 A、波長=225nM(サンプル\01−16−8.D)。
【図7】図7は、メトキサミンラセミ化合物のクロマトグラムであって、これは分離されたピーク1〜4を収集するために切断を行なった場所を示している。
【図8】図8は、ピーク3の純度を示すクロマトグラムである(WWD1 A、波長=225nM(サンプル\0116P3−5.D)。
【図9】図9は、ピーク4の純度を示すクロマトグラムである(WWD1 A、波長=225nM(サンプル\0116P4−1.D)。
【図10】図10は、ピーク1の純度を示すクロマトグラムである(WWD1 A、波長=225nM(サンプル\0116P1−4.D)。
【図11】図11は、ピーク2の純度を示すクロマトグラムである(WWD1 A、波長=225nM(サンプル\0116P2−4.D)。
【図12】図12はピーク1のnmrスペクトルを示す。
【図13】図13はピーク3のnmrスペクトルを示す。
【図14】図14はピーク2のnmrスペクトルを示す。
【図15】図15はピーク4のnmrスペクトルを示す。
【図16】図16は1R,2S−メトキサミン(ピーク2)の立体化学構造を示す。
【図17】図17は、ブタの末梢収縮期動脈血圧に対する0.5ml用量のプラセボおよび0.3%、1%、3%(w/w)の1R,2S−メトキサミンゲルの効果を示す。
【図18】図18は、ブタの末梢拡張期動脈血圧に対する0.5ml用量のプラセボ、ならびに0.3%、1%、および3%(w/w)の1R,2S−メトキサミンゲルの効果を示す。
【図19】図19は、ブタの平均末梢動脈血圧に対する0.5ml用量のプラセボ、ならびに0.3%、1%、および3%(w/w)の1R,2S−メトキサミンゲルの効果を示す。
【図20】図20は、ブタの平均肛門休止期圧に対する0.5ml用量のプラセボ、ならびに0.3%、1%、および3%(w/w)の1R,2S−メトキサミンゲルの効果を示す。
【図21】図21は、ブタの心拍数に対する0.5ml用量のプラセボ、ならびに0.3%、1%、および3%(w/w)の1R,2S−メトキサミンゲルの効果を示す。図17〜21の各々の場合、黒丸は平均値、白抜き丸はブタ1の値、白抜き三角はブタ3の値、そして白抜き四角はブタ4の値である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(発明の詳細な説明)
本発明は、1R,2S−メトキサミン、および例えば、αアドレナリン受容体アゴニストとしてのその治療用途に関する。
【0041】
本発明者らは、1R,2S−メトキサミンが、インビトロにおいて、そしてインビボで局所的に投与された場合、内肛門括約筋の収縮を誘導するのに低用量で有効であるということ、ならびにインビボにおけるこの効果が血圧の増大を伴わないということを見出した。
【0042】
本発明者らは、1R,2S−メトキサミンがインビトロで内肛門括約筋の収縮を誘導するのにフェニレフリンよりも少なくとも4倍強力であるということを見出した。本発明者らはまた、インビボにおけるブタでの試験において、1重量%の1R,2S−メトキサミンを含有する0.5mlのゲルの用量、およびさらに0.3重量%の1R,2S−メトキサミンを含有するゲルの0.5ml程度の少ない用量でさえ、すなわち、それぞれ、5mgおよび1.5mgの1R,2S−メトキサミンの用量が、局所的に与えられた場合、血圧に対してなんら影響なしに内肛門括約筋圧を増大するということを見出した。
【0043】
これらの知見は極めて有意である。なぜなら1R,2S−メトキサミンの局所投与によって、結果として肛門筋の緊張および肛門管圧が、局所的に適用されたフェニレフリンで見られたのと量的に同様に、ただし必要なフェニレフリンの濃度および用量のごく一部でのみ増大し、そして血圧の上昇は伴わないからである。
【0044】
異性体の混合物の形態であるメトキサミンは、血管筋組織のαアドレナリン作用性受容体において、αアドレナリン受容体アゴニストとして作用することが以前に記載されている。以下に限定するのではないが、本発明者らは、インビトロで肛門筋の緊張に対して、およびインビボで肛門括約筋の緊張に対して観察された1R,2S−メトキサミンの効果は、1R,2S−メトキサミンが筋に供給する血管の血管筋組織を間接的に介して作用するのではなく、括約筋自体におけるαアドレナリン作用性受容体を介して、肛門括約筋に対して直接作用する結果であると考えている。
【0045】
αアドレナリン作用性受容体は、胃腸管全体にわたって、この管自体の平滑筋組織に、そしてこの管の種々の括約筋(内肛門括約筋、胃食道括約筋、幽門括約筋、オッジ括約筋、および回結腸括約筋を含む)に存在する。胃腸(GI)管平滑筋または任意のGI管括約筋における緊張低下は、この管の正常な機能における混乱、または臨床的障害をもたらし得る。例えば、肛門括約筋の緊張の低下は、便失禁を生じ得る;幽門括約筋の緊張の低下は、胃性下痢の原因であり得る。
【0046】
1R,2S−メトキサミンは、胃腸管の平滑筋の緊張を増大するために、そして胃腸管の平滑筋の緊張の消失から生じる混乱または障害を処置するために用いることができる。1R,2S−メトキサミンはまた、胃腸管の括約筋の緊張を増大するために、そして胃腸管の括約筋の緊張の消失から生じる混乱または障害を処置するために用いることができる。
【0047】
例えば、1R,2S−メトキサミンは、肛門括約筋の緊張を増大するために、そして便失禁を処置するために用いることができる。1R,2S−メトキサミンの局所投与によって、有意な全身性副作用なしに、詳細には、例えば、血圧に対する有害な心血管系の影響なしに、かつ局部的な炎症なしに、便失禁の有効な処置を行なうことが可能である。1R,2S−メトキサミンは、幽門括約筋の緊張を増大するために、そして胃性下痢を処置するために用いることができる。
【0048】
αアドレナリン作用性受容体はまた、心筋にも存在する。心機能の混乱、例えば、心律動の混乱は、一般には全身性に投与される1S,2S−メトキサミンの使用によって予防または処置され得る。
【0049】
異性体の混合物の形態であるメトキサミンは現在、昇圧剤として用いられ、また血圧上昇剤または抗低血圧剤としても、そして血管収縮剤としても公知である。この昇圧効果および血管収縮効果は、血管筋肉組織のαアドレナリン受容体受容体に対するメトキサミンの作用によって達成される。1R,2S−メトキサミンは、αアドレナリン作用性アゴニストを用いることができる任意の疾患(兆候)の処置において、詳細には血管筋肉組織のαアドレナリン作用性受容体に対して作用するαアドレナリン受容体アゴニストとして、例えば、メトキサミンが異性体の混合物の形態であるか、またはフェニレフリンが用いられるかもしくは用いられている任意の疾患について、用いることができる。詳細には、1R,2S−メトキサミンは、昇圧薬として、または血管収縮薬として用いることができる。
【0050】
本発明に従って処置されるべき被験体は哺乳動物である。この哺乳動物は一般にヒトであるが、商業的に飼育された動物またはペットであってもよい。
【0051】
処置での使用について、1R,2S−メトキサミンはそれ自体で、すなわち、遊離塩基の形態で、またはその生理学的に耐容性の塩の形態で用いることができる。他に特に限定しない限り、「1R,2S−メトキサミン」という用語は、以下に用いる場合、遊離の塩基およびその生理学的に耐容性の塩の両方を包含する。1R,2Sメトキサミンまたはその塩の量または割合を規定する場合、この塩の量または濃度は好ましくは、遊離の塩基である1R,2S−メトキサミンに基づいて計算される。
【0052】
1R,2S−メトキサミンの塩は、例えば、酸付加塩を含む、酸との塩である。塩の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、ホスホン酸、酢酸、トリフルロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸 エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸、またはショウノウ酸との塩である。
【0053】
1R,2S−メトキサミンは、一般には本発明の薬学的組成物の形態で、全身性に投与されても、非全身性に投与されてもよい。1R,2S−メトキサミンの投与経路、適切な薬学的組成物、さらには好ましい用量も、意図される用途に依存する。
【0054】
本発明はまた、薬学的な用途のために、例えば、約1gより多い、例えば、約30g〜50gまたはそれを超える量で適切である規模での、1R,2S−メトキサミンの生成のために適切な方法を提供する。この方法は、上に記載されており、そして下にさらに詳細に記載される。Fujitaらによって以前に提唱された方法は、約1gまでの小規模でしか役立たない。このような規模は、臨床試験のための物質の生成としてでさえも小さ過ぎる。従って、本明細書で記載される用途は、本発明のプロセスの開発の前には不可能であった。
【0055】
本発明は、活性成分として1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩を、薬学的に適切なキャリアと混合して、または組み合わせて含む薬学的組成物を提供する。
【0056】
本発明の薬学的組成物は、全身性または局部的な効果を達成するために適切な形態であり得る。
【0057】
「全身性(systemic)」という用語を用いて、本明細書においては、「全体として身体に関するかまたは影響する(pertaining to or affecting the body as a whole)」ということを意味する。「局部的(local)」という用語を用いて、「全身ではなく;1つの局所または部分に限定されるかまたは関する(restricted to or pertaining to one spot or part; not general)」ことを意味する。「局所的(topical)」という用語は、「特定の表面領域に関する(pertains to a particular surface area)」ことを意味する。例えば、皮膚の特定の表面領域に対する局所投与のために適切な薬学的組成物は、一般に全身ではなく局部の効果を提供する。しかし、いくつかの局所的処方物は、活性な成分の主として全身投与のために設計され得る。他に特定しない限り、「局所的(topical)」という用語は、例えば、局所投与または局所薬学的組成物においてのように、「特定の表面領域に関して局部的効果を有する(pertaining to a particular surface area and having a local effect)」ことを意味するために本明細書において用いられる。
【0058】
本発明の薬学的組成物は、1R,2S−メトキサミンの注射または注入による投与のため;皮下投与のため;経皮投与のため;舌下投与を含む経口投与;直腸投与;および局所投与、例えば、皮膚、眼の表面、または鼻の粘膜への投与のために適切な組成物を含む。
【0059】
経口投与および舌下投与のための適切な薬学的組成物は公知である。錠剤およびカプセルは、経口投与のために広範に用いられ、他の処方物、例えば、丸剤、顆粒、糖衣錠、およびウエハー(wafer)は、それほど一般的ではない。遅延放出性処方物または標的放出処方物が用いられてもよい。例えば、GI管の予め決定された部分に対する放出を標的する処方物、例えば時間遅延性放出処方物またはpH依存性処方物、例えば、胃、十二指腸、または下部GI管、例えば結腸への放出を標的する処方物。例えば、結腸の細菌による分解を受けやすいコーティングを含む結腸標的処方物のような、結腸の周囲のpHで活性成分を放出するように設計されている処方物を用いてもよい。処方物は、胃腸管の他の部分に対して、例えば、胃または十二指腸に対して標的化されてもよい。液体調合物、例えばシロップ、または増粘液、例えば増粘ゲル、またはスラリーが経口投与のために用いられてもよい。
【0060】
直腸投与のために適切な薬学的組成物としては、坐剤、ゼラチン直腸カプセル、および浣腸液が挙げられる。
【0061】
鼻粘膜への投与に適切な薬学的組成物は、例えば、点滴薬、スプレー、およびエアロゾルである。眼の表面に対する投与のための組成物は、例えば、点滴薬、クリーム、および軟膏である。
【0062】
本発明の薬学的組成物は、例えば、皮膚への局所投与のために適切な形態で、例えば、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、発泡体、または接着性パッチであってもよい。
【0063】
薬学的組成物は、皮下投与のためであってもよい。いくつかの組成物、例えば、皮下デポ調合物および接着性パッチによって、遅延放出または徐放性放出を得ることができる。
【0064】
上記のような薬学的組成物はまた、1R,2S−メトキサミンに加えて1つまたは複数のさらなる活性成分を含んでもよい。例えば、便失禁の処置のための肛門領域への局所投与のための組成物は、この肛門領域への局所投与のための組成物に代表的に存在する、任意の薬学的に活性な成分、例えば炎症を軽減するように働き得るステロイド、および/または局部麻酔薬を含んでもよい。肛門領域における皮膚への局所投与のための薬学的組成物はまた、皮膚浸透増強剤、皮膚水和剤、および皮膚軟化剤から選択される任意の1つまたは複数の薬剤を含んでもよい。皮膚への投与のための局所組成物は、例えば、チューブ、ポンプ付きの容器、またはエアロゾル缶に入れてもよい。
【0065】
皮膚への局所投与のための本発明の薬学的調合物、例えば、ゲル、クリームまたは軟膏、特に便失禁の処置における使用を意図する組成物は一般に、10重量%以下の1R,2S−メトキサミン、そして通常は10%未満、例えば、8%以下、例えば、5%以下、例えば、4%以下、3%以下、2%以下または1%以下の1R,2S−メトキサミンを含む。1重量%以下のメトキサミン、例えば、0.8重量%以下、例えば、0.5重量%以下、例えば、0.3重量%以下、例えば、0.1重量%の1R,2S−メトキサミンを含む調合物を用いてもよい。組成物は、例えば、0.1重量%〜5重量%、例えば、0.3〜3重量%の1R,2S−メトキサミンを含んでもよい。この調合物は、1日あたり1回または複数回、例えば、1日2または3回、さらにそれより高頻度、例えば、1日あたり4または5回投与されてもよい。局所調合物の単位用量は代表的には、約1mlのゲル、軟膏、またはクリームであり、例えば上記のような所定量の1R,2S−メトキサミンを含む。1回の適用あたりに投与される1R,2S−メトキサミンの用量は、投与された組成物の体積およびこの組成物中の1R,2S−メトキサミンの濃度から算出できる。例えば、1mlの1重量%の1R,2S−メトキサミンゲルによって、10mg用量という1R,2S−メトキサミンの用量が提供される。
【0066】
本発明の薬学的組成物は、単位投薬形態であってもよい。全身性投与のための単位投薬形態の例は上記されている。経口または直腸投与のための単位投薬形態としては、例えば、錠剤、カプセル、および坐剤が挙げられ、注射または注入による投与のための単位投薬形態としては、例えば、水薬瓶およびアンプルが挙げられる。皮膚への局所投与のための単位投薬形態としては、ブリスター包装または子袋(sachet)が挙げられるが、各々のブリスターまたは子袋は、単位用量の、例えば、上記のようなゲル、クリーム、または軟膏を含有する。計量投薬装置としては、例えば、局所組成物、例えば、クリーム、軟膏、またはゲルの予め決定された体積を投薬するためのポンプ装置を備え得る。眼の瞳孔を拡大するための散瞳薬としての使用のためには、単回滴下単位用量が提供される。調合物は、デポ調合物または接着性パッチのために、徐放性の放出を提供し得る。
【0067】
上記の種々のタイプの薬学的組成物および上記の投与の経路に適切な他の組成物は、このような組成物のための処方およびそれらの調合のための方法と同様に公知である。当該分野の文献としては、ハンドブック、例えば、EW Martinによるレミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)が挙げられる。総説および文献論文には、標準的な処方物および装置、ならびにより洗練された処方物および装置の両方、例えば、種々のタイプの接着性パッチが記載されている。
【0068】
上記のように、1R,2S−メトキサミンの投与の経路、適切な薬学的組成物、および好ましい用量は、意図される用途に依存する。臨床的な処置において、所望の効果を達成する最低の用量を使用することが一般に好ましい。1R,2S−メトキサミンは、メトキサミンラセミ化合物、すなわち4つの異性体全ての等モル混合物の少なくとも4倍の力価を有する。従って、メトキサミンラセミ化合物が以前に用いられている疾患に用いる場合、1R,2S−メトキサミンの用量は、一般に、例えば、以前の容量の少なくとも半分まで、例えば、約四分の一まで減少されるべきである。さらに低い用量を用いてもよい。
【0069】
昇圧剤としての使用のために、高血圧の処置のために、1R,2S−メトキサミンは一般に全身性に投与される。例えば、麻酔の間の血圧の維持のために用いられる場合、1R,2S−メトキサミンは、注射または注入によって、一般には静脈内注射または静脈内注入によって投与される。
【0070】
麻酔の間に血圧を維持するための昇圧剤としての使用のための、市販される異性体の混合物の形態で20mg/mlのメトキサミンを含有する溶液の推奨される用量は、静脈内に投与される場合0.15〜0.25mlであり、筋肉内に投与される場合、1mlであり、すなわち、推奨される用量は、静脈内に投与される場合3〜5mgであり、そして筋肉内に投与される場合、約20mgである。麻酔の間に血圧を維持する昇圧剤としての使用のための1R,2S−メトキサミンの用量は、例えば、その用量の半分以下、例えば、その用量の四分の一以下、例えば、静脈内に投与される場合1mg以下、そして筋肉内に投与される場合5mg以下であってもよい。
【0071】
鼻詰まり薬としての使用のためには、1R,2S−メトキサミンは一般に、鼻粘膜に対して、例えば、点滴薬、スプレー、またはエアロゾルの形態で局所的に投与される。
【0072】
1R,2S−メトキサミンは、眼科の血管収縮剤として、例えば、アレルギー反応、乾燥、ほこりもしくは煙たい環境、正しくまばたきできないこと、または疲労によって生じる、例えば、眼の充血の処置のために、用いることができる。1R,2S−メトキサミンはまた、散瞳薬として、眼の瞳孔の拡張のために用いることができる。眼科の用途のために、1R,2S−メトキサミンは、例えば、点滴薬、クリーム、または軟膏の形態で、眼の表面に局所投与されてもよい。
【0073】
便失禁の処置のためには、1R,2S−メトキサミンは、局所的に、例えば、肛門および臀部の領域に投与され得る。このような局所投与に適切な薬学的組成物としては、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、および発泡体;液体組成物、特に増粘液;皮下デポ調合物;および経皮パッチが挙げられる。
【0074】
本発明による1R,2S−メトキサミンの局所投与、すなわち、局部的な効果を有する局所投与は、メトキサミンの全身性の影響、例えば血圧に対する影響を軽減するという利点を有する。
【0075】
肛門領域、すなわち、肛門周囲領域と呼ばれる、肛門、肛門管、および肛門周囲の領域の全てまたは一部に対する、例えば、肛門管上皮、肛門管、内肛門括約筋、および臀部のいずれかまたは全てに対する1R,2S−メトキサミンの投与は有利であり得る。例えば、クリーム、軟膏、ゲル、または発泡体は、肛門管および/または肛門周囲の皮膚へ塗薬用具または指を用いて塗布されてもよい。
【0076】
代替法は、肛門括約筋の筋肉へ、または肛門領域の他の組織へ1R,2S−メトキサミンを直接注射することである。臀部、詳細には肛門領域付近に適用された全身性の経皮パッチは、全身性の効果に加えて局部的な効果を有する。
【0077】
局所的調合物が、チューブ中の軟膏、クリーム、ゲル、またはペーストである場合、使用説明書は、例えば、このチューブから約2〜3cmの調合物を絞るように、適切な量を用いることを推奨し得る。局所的な調合物は、正確な投薬を補助するポンプおよび計量投薬装置を備える容器中に入れられてもよい。概して、約0.5〜約3ml、例えば、約1mlが、局所適用のためのクリーム、ゲル、または軟膏の適切な体積である。しかし、局所調合物を適用する場合、特に指を用いる場合、正確な用量を投与することはしばしば困難である。塗薬用具の使用によって、より正確な投薬を得ることができる。
【0078】
使用説明書は、適用の推奨される部位、例えば、調合物が肛門の周囲の皮膚に適用されるべきであるか、または調合物が肛門にも挿入されるべきであるかを示すべきである。
【0079】
便失禁を効果的に処置するために、局所調合物中で30〜40重量%の濃度でフェニレフリンを使用する必要がある。例えば、代表的には1mlの体積のゲルは、400mgの用量のフェニレフリンを与える。フェニレフリンの総用量および高濃度は、全身性および局部的な副作用、詳細には心血管系の副作用、例えば、血圧の上昇および局部的な皮膚の炎症を生じる。対照的に、1R,2S−メトキサミンを用いて、1重量%および0.3重量%の1R,2S−メトキサミンを含む0.5mlのゲルは、ブタでの試験において血圧に対してなんら影響なしに、内肛門括約筋圧を増大することが見出された。
【0080】
本発明によれば、便失禁の処置のためには、局所的な投与に適切な薬学的組成物、例えばゲル、クリーム、または軟膏であって、一般に10重量%以下の1R,2S−メトキサミン、そして通常10%未満、例えば8%以下、例えば、5%以下、例えば、4%、3%、2%、または1%以下の1R,2S−メトキサミンを含むものを使用することが好ましい。1重量%以下のメトキサミンを含む調合物は、例えば、0.8%以下、例えば、0.5%以下、例えば0.3%以下、例えば、0.1重量%の1R,2S−メトキサミンを用いてもよい。約0.5〜約2ml、好ましくは約1mlが、局所適用のためのクリーム、ゲル、または軟膏の適切な体積である。
【0081】
組成物は、1日あたり1回または複数回、例えば、1日あたり2または3回、さらにより高頻度には例えば、1日あたり4または5回投与されてもよい。局所調合物の代表的な単位用量は、ゲル、軟膏、またはクリームの約1mlであり、これは例えば、上記のような所定量の1R,2S−メトキサミンを含む。1回の適用あたりに投与される1R,2S−メトキサミンの用量は、投与された組成物の体積およびこの組成物中の1R,2S−メトキサミンの濃度から算出できる。例えば、1mlの1重量%の1R,2S−メトキサミンゲルによって、10mg用量という1R,2S−メトキサミンの用量が提供される。例えば、0.5mg〜40mgの範囲の用量が投与されてもよい。関連する部位に実際に投与される用量は、適用の間の損失のせいで理論的な用量よりも少ないかもしれないことが理解される。
【0082】
胃腸管の平滑筋の緊張を増大するのにおける使用のため、および胃腸管の平滑筋の緊張の消失から生じる混乱または障害を処置するのにおける使用のため、そしてまた胃腸管の括約筋の緊張を増大するのにおける使用のため、そして胃腸管の括約筋の緊張の消失から生じる混乱または障害を処置するのにおける使用のため、1R,2S−メトキサミンは好ましくは、所望されない全身性の副作用を回避するため、例えば、上記の薬学的組成物を用いて局所投与される。適切な遅延または標的化投与のための組成物が用いられてもよい。例えば、胃食道括約筋の緊張を増大するのにおける使用のため、そして逆流、例えば、バーネット病を処置するのにおける使用のため、1R,2S−メトキサミンは、増粘液、例えば、粘稠性のゲルまたはスラリーの形態で、投与されてもよい。幽門括約筋の緊張を増大するのにおける使用のため、および胃性下痢の処置における使用のため、1R,2S−メトキサミンは、増粘液、例えば粘稠性のゲルもしくはスラリー、または胃における放出を標的した固体の経口組成物の形態で投与されてもよい。
【0083】
心機能の混乱または障害、例えば、心律動の混乱または障害の予防または処置における使用のため、1R,2S−メトキサミンは、特に注射または注入によって、例えば、上記の適切な薬学的組成物の形態で、全身に投与される。
【0084】
一般的な原理として、局部効果が所望される場合、例えば、鼻詰まりの処置において、眼科の用途において、そして便失禁の処置において、全身性の影響なしに、例えば、血圧に影響することなく、局部効果を達成することが所望される。1R,2S異性体は、任意の他の異性体またはラセミ化合物自体よりも大きい活性を有するという事実は、望ましくない副作用のレベルを低下するかなり低用量でも、同じ薬理学的効果を達成することができるということを意味する。
【0085】
1R,2S−メトキサミンを全身性に用いることによって、より低用量を用いて、より高用量のメトキサミンラセミ化合物で得られるのと同じ効果を達成することができる。
【0086】
上記で説明されたように、本発明者らは、FujitaおよびHiyama20の方法では、極めて少量、例えば、約1gまでの1R,2S−メトキサミンしか生成できないということを見出したが、このような量は、実用的な目的には少なすぎる。従って、かなり大規模、例えば、少なくとも1バッチあたり30〜50gの生成が可能である本発明のプロセスによって、異性体を生成することが好ましい。
【0087】
本発明のプロセスは、ジメチルフェニルシランおよびアミノ基が保護されている(S)−アミノ−1−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−プロパノンを含む溶液にトリフルオロ酢酸を滴下して加える工程と、この得られたアミノ保護(1R,2S)−2−アミノ−1−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−プロパノールからこの保護基を除去する工程とを含む。この保護基は、例えば、アルコキシ基またはアリールオキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基またはt−ブトキシカルボニル基であってもよい。反応の立体特異性に対するこの保護基の影響を最小限にするために、他の保護基に対して小さくかつかさ高くない保護基を使用することが一般に好ましい。メトキシカルボニル保護基が一般に好ましい。シランおよびプロパノンの溶液のための溶媒は、詳細には、塩素化炭化水素、例えばジクロロメタンである。ジクロロメタンは、他の塩素化炭化水素、例えばクロロホルムよりも毒性が少ないという利点を有する。ジメチルフェニルシランを用いるプロパノンの還元は、冷却しながら実行されるべきである。なぜならこの反応では熱が生じるからである。この反応は一般に、氷冷、例えば、0℃の領域の温度で、トリフルオロ酢酸を添加しながら実行される。そして得られた反応混合物は好ましくは、その温度で、例えば約1時間維持される。
【0088】
この反応は、塩基、例えば、水酸化ナトリウムを添加することによって停止され得る。この生成物は、所望ならば結晶化によって精製することができる。保護基をこの生成物から除去して、それを、好ましくは塩基、例えば、水酸化カリウムを用いて、例えば、還流条件下で、例えば約20時間の還元によって、1R,2S−メトキサミンに転化する。
【0089】
本発明はまた、好ましくは上記のような、アミノ基が保護されている(1R,2S)−2−アミノ−1−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−プロパノールを生成するためのプロセスを提供する。このプロセスは、好ましくは上記のように、ジメチルフェニルシランおよびアミノ基が保護されている(S)−アミノ−1−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−プロパノンを含む溶液にトリフルオロ酢酸を滴下して加える工程を含む。この試薬および反応条件は好ましくは上記のとおりである。
【0090】
アミノ基が保護されている(S)−アミノ−1−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−プロパノンは、FujitaおよびHiyama20に記載の方法によってL−アラニンから生成することができる。まとめると、この方法は、L−アラニンのアミノ基を保護する工程、N−保護されたアラニンのカルボキシ基をその場で(インサイチュ)酸塩化物に転化し、続いてアミンとの反応によってN保護(S)−アラニンアミドを生成する工程、およびその化合物を、n−ブチルリチウムまたはマグネシウムベースの試薬、例えば、グリニャール試薬またはグリニャール型試薬の存在下で塩素化2,5−ジメトキシベンゼンとカップリングさせてアミノ基が保護されている(S)−アミノ−1−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−プロパノンを得る工程を含む。FujitaおよびHiyamaによって記載された方法では、アミノ保護基はメトキシカルボニル基であり、アミンはジメチルアミンであり、塩素化2,5−ジメトキシベンゼンはブロモ−2,5−ジメトキシベンゼンであり、そしてカップリング反応において用いられた試薬は、n−ブチルリチウムである。この反応スキームを以下に示す。
【0091】
【化2】

【0092】
FujitaおよびHiyamaは、上記に示された反応スキームにおける種々の中間体の生成のための詳細なプロトコルを記載している。しかし、FujitaおよびHiyamaの反応スキームにおける任意の中間体は、異なるプロセスまたは改変プロセスによって生成することができる。例えば、あらゆる詳細までそれらのプロトコルに従う必要はない。この試薬および/または反応条件は変えられてもよい。例えば、FujitaおよびHiyamaは、このカップリング工程において3当量のブロモ−2,5−ジメトキシベンゼンを用いる。しかし、このプロセスを約1gのバッチサイズから30g〜50gのバッチサイズへスケールアップした場合、得られた(S)−メトキシカルボニル)アミノ]−1−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−プロパノンは精製することが困難であるということが見出された。代わりにわずか1.5当量のブロモ−2,5−ジメトキシベンゼンおよびn−ブチルリチウムを用いれば、その生成物は精製することがかなり容易であり、驚くべきことに、収率の損失はなく、アラニンの出発物質から算出して、98%におよぶ収率が得られるということが見出されている。以下の実施例において、さらに詳細が記載される。
【0093】
この試薬および反応条件は、所望のとおり、例えば、上記のように変えられてもよい。例えば、異なるアミノ保護基、例えば、t−ブトキシカルボニル基を用いることができる。ジメチルアミンの代わりに、メトキシメチルアミンを用いることができる。ヨード−2,5−ジエメトキシベンゼンの代わりに、クロロ−2,5−ジエメトキシベンゼンまたはヨード−2,5−ジエメトキシベンゼンを用いてもよい。しかし、このような改変体は、収率の低下、および/またはこの反応の立体特異性の低下を生じる可能性が高い。従って、推奨される試薬および反応条件を用いることが好ましい。
【0094】
1R,2S−メトキサミンを生成する別の方法は、メトキサミンラセミ化合物、またはメトキサミン異性体の任意の混合物のクロマトグラフィー分離による。しかし、従来のクロマトグラフィーによる分離および単離は、ほとんど不可能である。キラル高圧液体クロマトグラフィー(hplc)が、唯一の現実的な方法であり、そしてその技術の使用には、特別な改変を使用することが必要である。
【0095】
キラルクロマトグラフィーは好ましくは、異性体の分離のために設計されたクロマトグラフィー媒体を用いて実行される。例えば、βシクロデキストリンR,S−ヒドロキシプロピルエーテルを含むクロマトグラフィー媒体。このような媒体は包接錯体を形成する特性を有する。例えば、Advanced Separation Technologies,1 Blake Street,Congelton,Cheshire,Englandから入手可能であるサイクロボンド(Cyclobond)1 2000 RSPを用いてもよい。その媒体は、シリカ粒子に対してβシクロデキストリンを共有結合させることによって製造された逆相クロマトグラフィー媒体である。シクロデキストリンの二級水酸基のいくつかは、ラセミ(R,S)ヒドロキシプロピル基で誘導体化され、溶質とさらなる水素結合相互作用を行なうことができる。溶質は、逆相中のシクロデキストリンの間隙に含まれるようになり、そしてヒドロキシプロピル側鎖相互作用と一緒に、エナンチオ−選択性が生じる。シクロデキストリンクロマトグラフィー技術の総説については、例えば、Ward&Armstrong21を参照のこと。0.1%のトリエチルアミン水溶液を含む移動相をクロマトグラフィーに用いてもよい。0.1%トリエチルアミン水溶液のpHを、例えば氷酢酸を用いて、4.1のpHに調節してもよい。
【0096】
サイクロボンド(Cyclobond)1 RSPの使用によって、2つのメトキサミン異性体をメトキサミンラセミ化合物から高純度で単離することができる。他の2つの異性体を分離するために、例えば、ビニルアルコールコポリマーの水酸基へオクタデシル(C18)基を導入することによって誘導体化されたビニルアルコールコポリマーベースを含むクロマトグラフィー媒体を用いて、この2つの異性体を含む溶離液をさらなるクロマトグラフィーに供することが好ましい。このような媒体は、例えば、これもAdvanced Separation Technologies,1 Blake Street,Congelton,Cheshire,Englandから入手可能であるC18カラムである。C18カラムは、移動相からこのサンプルを濃縮する。水で洗浄することによって、緩衝液を除去することができる。メトアンルを用いてカラムを溶離することによって、精製されたエナンチオマーの回収が可能になる。
【0097】
サイクロボンド(Cyclobond)1 RSP、続いてC18の使用によって、4つの異性体全ての純粋なサンプルを得る。さらなる詳細は、以下の実施例に示される。他の類似のクロマトグラフィー媒体を、サイクロボンド(Cyclobond)1 RSPおよびC18の一方または両方の代わりに用いることができる。例えば、同じもしくは同様の化学組成、および/または同じもしくは同様の物理化学的クロマトグラフィー特性を有するクロマトグラフィー媒体を用いることができる。
【0098】
分析目的に適切であるが、クロマトグラフィーは、実際的な目的のため、例えば、臨床用途のために十分大きい規模での1R,2S−メトキサミンの生成にとっては実際的ではない。
【0099】
キラルクロマトグラフィーを用いてさえ、クロマトグラフィー画分を異性体の化学的構造と明解に関連付けることはできない。1R,2S−メトキサミンとも呼ばれるメトキサミンの1R,2S異性体の最終的な同定を可能にするためには、nmr分光法および単結晶X線回折解析の組み合わせが必要であった。
【0100】
上記のように、1R,2S−メトキサミンが、インビトロにおいてフェニレフリンよりも内肛門括約筋の収縮を誘導するのに少なくとも4倍強力であることがここで見出されている。インビボでのブタに対する試験において、1重量%の1R,2S−メトキサミン(L−erythro−メトキサミン)および0.1重量%程度ですら少量を含むゲルが、血圧に対してなんら影響することなく、内肛門括約筋圧を増大することが見出された。この知見は極めて重要である。なぜなら、フェニレフリンで見られる増大と量的に同様の肛門管圧の増大が、必要なフェニレフリンの濃度のごく一部で達成されるからである。1R,2S−メトキサミンは、括約筋におけるαアドレナリン作用性受容体を介して内肛門括約筋に作用すると考えられる。
【0101】
以下の非限定的な実施例によって、本発明を例示する。
【0102】
(実施例1)
内肛門括約筋に対するメトキサミン異性体のインビトロ研究。
【0103】
(方法)
地方の食肉処理場から、雌性大型白色ブタ(Large White Pig)からの組織を得た。内肛門括約筋の小片を切断して、その組織を、4℃のクレブス(Krebs)液(120mM NaCl、5.9mM KCl、15.4mM Na2HCO3、1.2mM NaH2PO4、2.5mM CaCl2、1.2mM MgCl2、11.5mMグルコース、pHを7.4±0.05に維持するように97%酸素および3%二酸化炭素で平衡化)に直ちに移した。肛門管の上皮を粘膜下組織とともに切り出した。内肛門括約筋(IAS)の細片を切断したが、これは各々が約1×1×7mmの寸法であり、2mg〜8mgの重さであり、そして平行な筋束を含んでいた。細い5−0の絹の結紮糸を、各々の末端に結び付けて、その細片を等尺性の緊張状態に装着して、図1に示されるように灌流臓器槽(容量0.2ml)19中で記録した。筋肉の細片1を、糸2によって保持して、パースペックス(Perspex)ジャケット3内の位置に固定する。この細片を流入4を介して導入されてオーバーフロー5を介して出て行く、1ml/分の速度のクレブス液(37℃)を用いて連続的に灌流させた。この装置によって6つの細片を同時に研究することが可能になる。この細片を最初、1gの張力で配置して、少なくとも90分間平衡化させた。張力は、張力変換器6ならびにリング電極7および7aを備えるPiodenダイナモメーター UF1変換器(Pioden Controls,Canterbury,UK)によって測定して、6チャンネルTekman 900ペンレコーダー(Tekman Electronics,Leamington Spa,UK)で、そしてChart v3.6およびMacLab Data Acquisition System(AD Instruments,Australia)を用いて記録した。
【0104】
フェニレフリン(Sigma Chemical Co.,Poole,UK)、メトキサミンラセミ化合物、および4つのメトキサミン異性体を、クレブス液中に溶解して、IASの緊張状態に対するこれらの影響を試験した。メトキサミンラセミ化合物、すなわち、4つの異性体の等モル混合物を、Prosyth Limited,Acton,Sudbury,Suffolkによて生成された。4つの異性体(ピーク1〜4と呼ばれる)を、実施例3に記載のように分離した。ピーク2は、1R,2S−メトキサミンである。1R,2S異性体はまた、実施例4に記載のように合成した。ピーク2は、1R,2S−メトキサミンであることを結晶学によって確認した。
【0105】
IAS細片は、平衡期間中に、本来の緊張状態を明らかにした。平衡後、各々の試験化合物の漸増する濃度を20秒間添加したが、このとき、緊張状態がベースラインに戻るまで、少なくとも10分間のウォッシュアウト期間をはさんだ。
【0106】
結果を平均(平均の標準誤差)およびこれらの細片が由来する外科的標本の数として表す。各々の試験化合物について各々のブタから最大で6つの細片を用いた。
【0107】
試験化合物が誘導した緊張状態の増大は、試験化合物の適用後のピークの緊張をとること、およびこれを基準の緊張から差し引くことによって算出された。次いで、この数値を、用いた用量範囲[10-2M〜10-8M]にまたがって見られる緊張の最大上昇の百分率として表した。全ての解析は、Chart v3.6ソフトウェアを用いて実施した。
【0108】
EC50値は、各々の筋肉細片の濃度応答曲線をプロットすることによって算出した。直線回帰によって、最大収縮の50%を生じる用量を算出した。不釣合いな分散を想定し、かつp<0.05を有意とみなして、両側t検定を用いて、異なる薬物のEC50値を比較した。
【0109】
(結果)
(メトキサミンラセミ化合物およびフェニレフリン)
メトキサミンラセミ化合物およびフェニレフリンの両方ともが、IAS由来の平滑筋細片の用量依存性の収縮を生じた。メトキサミンラセミ化合物およびフェニレフリンのEC50値に有意な差はなかった(5.8×10-5M対7.5×10-5M;p=0.44)。濃度応答曲線を図2に示す。n=24(4)。
【0110】
(メトキサミン立体異性体)
全ての異性体(ピーク1〜4)が、IAS由来の平滑筋の用量依存性収縮を生じた。EC50値を表1に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
ピーク2の1R,2S異性体は、ピーク1、3および4よりも有意に強力であった(p<0.01)。4つの異性体についての濃度応答曲線を図3に示す。ピーク2の1R,2S異性体はまた、図4の濃度応答曲線に示されるように、メトキサミンラセミ化合物およびフェニレフリンよりも有意に強力であった(p<0.01)。
【0113】
(化学的に合成された1R,2Sメトキサミン(ピーク2))
実施例4に記載されるように化学的な合成によって生成された1R,2Sメトキサミンはまた、内肛門括約筋の細片の用量依存性の収縮を生じた。EC50は10.5(±1.97)μMであった。EC50は、ラセミ化合物からのクロマトグラフィー分離によって得られた同じ異性体である、ピーク2のEC50と有意な差はなかった(p=0.10)。図5を参照のこと。化学的に合成された1R,2S異性体はまた、メトキサミンラセミ化合物(p<0.01)、フェニレフリン(p<0.001)、ならびにピーク1、3および4よりも有意に強力であった。図3および4を参照のこと。
【0114】
(実施例2)
(メトキサミン異性体のクロマトグラフィー分離)
(分析的な精製)
Prosynth Limitedから入手したメトキサミンラセミ化合物のサンプル(実施例2を参照のこと)の4つの個々のエナンチオマーへの分析的な分割を、以下のクロマトグラフィー条件下で実行した。
【0115】
サイクロボンド 1 2000 RSP(Advanced Separation Technologies Ltd(Astec)37 Leslie Court,P.O.Box 297 Whippany,NJ 07981 USA,を、移動相5/95;v/v;アセトニトリル/0.1%酢酸トリエチルアミン、pH4.1を用いて、安定なベースラインが達成されるまで調整した。メトキサミンラセミ化合物(1mg/ml)のサンプルをメタノール中で調製した。調製したサンプルのうち10μlをカラムに注入して、これを0.6ml/分の流量で操作した。254nmに設定した波長を用いるUV検出器でカラム流出液をモニターした。4つのピークが観察された。図6を参照のこと。レーザー偏光計を用いてカラム溶離液をモニターした場合、最初の2つのピークはジアステレオマーであることが観察され、このことは、ピーク1および3、ならびにピーク2および4がエナンチオマー対であることを意味する。
【0116】
(調製的精製)
各々のエナンチオマーの100mgを精製するため、キラル固定相を最初に通液して、ピーク1および2を収集した。ジアステレオマーとして、これらの2つのピークを、Astec C18カラムでさらに精製(洗練)した。RSPカラムでの同じ通液において、純粋なピーク3および純粋なピーク4を収集した。ピーク1及び2を分割するC18通液と、サイクロボンド1 2000 RSP通液の両方が、不揮発性緩衝液を含むので、分割したメトキサミンエナンチオマーを、C18固定相に吸着させるための方法を開発した。C18カラムは、移動相からサンプルを濃縮し、そして水での洗浄によって緩衝液は除去される。最終的に、メタノールを用いたC18カラムの溶離によって、精製されたエナンチオマーの回収が可能になる。
【0117】
(調製的精製方法)
1.酢酸トリエチルアミンの調製:HPLC等級のトリエチルアミンの0.1%水溶液を撹拌して、試薬等級の氷酢酸を用いてpHを4.1に調整した。
【0118】
2.各々のエナンチオマーの100mgを精製するためには、80mlの移動相に800mgのメトキサミンラセミ化合物を溶解する必要があった。5ミクロンのサイクロボンド 1 2000 RSP(Astecカタログ番号#20344)を充填した22.1×250mmカラムを、分析カラム上に移動相を20ml/分で用いて調整した。このカラムを254nm UVでモニターして、全部で320回の注入について20分ごとに2.5mgの注入を行なった。図7の矢印に従って、分離されたピークを収集するための切断を行なった。ピーク1および2は、各々削り取ってプールしたが、ピーク3および4は個々に回収してプールした。
【0119】
(C18カラム上での分離されたピークの回収)
1.5ミクロンの固定相で充填した22.1×250mm C18カラムを水で洗浄した。プールされた溶液のpHを、トリエチルアミンを用いて7.0に調整して、HPLC等級の水で体積を二倍にした。
【0120】
2.次いで、pHを調整したサンプルをC18カラム上に10ml/分で送液した。
【0121】
3.フラスコを水でリンスして、そのリンス液もカラムに通した。254nmのUV検出下で安定なベースラインに戻すことによって測定されるように、このカラムから全ての酢酸トリエチルアミンを洗い流すまでこのカラムにさらに水を通した。メタノールを送液してカラムを通すことによってサンプルを溶離した。254nmでのUVモニタリングによって、溶離の終了を観察した。
【0122】
4.溶離後、次のサンプルの処理の準備のために水を用いて、このカラムを再度洗浄した。ピーク1、2、3およびピーク4は全てこの方式で個々に処理した。
【0123】
5.メタノール中に回収したサンプルを40℃の水浴条件下で乾燥するまで濃縮した。
【0124】
(ピーク3および4の処理)
メタノール/C18処理由来の残滓を20mlのメタノール JCL(0.1%)中に再溶解して、再蒸発させた。この残滓をエーテル(〜15ml)を用いて粉砕して、粉末を得た。図8は、ピーク3(140mg)の純度に関するアッセイであり、図9は、ピーク4(105mg)の純度に関するアッセイである。
【0125】
(ピーク1および2のさらなる精製)
1.250×30mm、5ミクロン C18カラムを移動相:20/80;0.1% TEAA、pH4.1を35ml/分の流量で用いて平衡化した。
【0126】
2.プールされたピーク1および2の回収されたC18カラムからの残滓を移動相中で溶解して、1mg積み重ね注入を行なった。
【0127】
(ピーク1およびピーク2の回収)
1.22.1×250mmのカラムをHPLC等級の水を用いて調整した。
【0128】
2.ピーク1およびピーク2の収集され、かつプールされた画分を、トリエチルアミンを用いてpH7.0に調整して、HPLC等級の水を用いて体積を二倍にした。
【0129】
3.個々のプールされた画分をC18カラム上に送液して、次いで水を用いてこのカラムを洗浄して、緩衝液を除去し、最終的にメタノールで溶離した。
【0130】
4.40℃の水浴条件でメタノールを乾燥するまで濃縮した。
【0131】
5.このメタノール残滓をメタノールHCLに再溶解して、再濃縮した。
【0132】
6.この処理に由来する残滓を、エーテルを用いて粉砕して粉末、ピーク1(44mg)を得た。そしてピーク1の収量は44mg、ピーク2の収量は29mgであった。
【0133】
(ピーク1および2の第二の通液)
提示されたピーク1およびピーク2の第一のサンプルは、低い収率および目標とするよりも低い純度を有し、そして粉末は高度に着色していた(淡緑色)。第一の試行からの繰り返された処理によってある程度の自動酸化がもたらされたかもしれないと考えられた。従って、最初に全てのラセミ化合物に対してRSPカラムを再通液することを決定した。この場合、ピーク1および2は、それらを再度クロマトグラフィーにかける必要がないように厳密に削り取られた。
【0134】
上記のように処理されたピーク1およびピーク2の得られた回収物は、実質的により高く、そして色は実質的により明るかった。図10は、ピーク1(45mg)の純度、そして図11は、ピーク2(34mg)の純度を示す。
【0135】
(NMR分光法による異性体のキャラクタリゼーション)
ジメチルスルホキシド(d6−DMSO)中における4つの画分(ピーク1〜4)のプロトンnmrスペクトルを、Briker DRX 500MHz nmr分光計)を用いて室温で得た。図12〜15を参照のこと。共鳴は、構造中の特定のプロトン環境に割り当てることができたが、関連する立体化学を割り当てる方法はなかった。
【0136】
ピーク1(図12)およびピーク3(図13)のスペクトルは、詳細には、構造およびnmrスペクトル両方における診断上の、4.8ppm(bとして同定される)および6.0ppm(d)のピークにおいてほとんど同一であり、これらのエナンチオマー対を形成する。同様に、ピーク2(図14)およびピーク4(図15)はまた、bおよびdの位置でお互いに全く同様であり、これもそれらのエナンチオマー対を形成するが、これはピーク1および3とは異なる。7.5ppm(c)を上回るアミンタンパク質でさえ同様に適合し得る。アミンまたはアルコールの共鳴に起因するような交換可能な環境はしばしば信頼できない。なぜならそれらの化学シフト位置は濃度および温度に依存するからである。アルコールのOH共鳴は、化学交換のせいで3.3ppmにおける残留する水の共鳴から識別不能である。従って、ピーク1および3は、ピーク2および4のジアステレオマーである。
【0137】
(実施例3)
1R,2S−メトキサミンの合成。
【0138】
((S)−N−メトキシカルボニルアラニン)
氷浴中で0℃のL−アラニン(300g、3.37モル 水酸化ナトリウム(1N,1800cm3)の撹拌溶液に、クロロギ酸メチル(274cm3、3.54モル)を2時間にわたって滴下して加えた。水酸化ナトリウム(5N)の添加によってこの溶液のpHを9に維持した。この反応混合物を0℃で3時間撹拌して、これを、リン酸溶液(15%)の添加によってpH1に酸性化して、ジエチルエーテル(5×1000cm3)を用いて抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥して(MgSO4)、減圧下で濃縮して粘性の緑色油状物として生成物を得た(386g、78%)。1H NMR(250MHz;C2HCl3)1.48(3H,d,J7.25,CH3)、3.72(3H,s,COCH3)、4.40(1H,五重線、J7.25,CH)、5.31(1H,bs,NH)。
【0139】
((S)−N−メトキシカルボニルアラニンジメチルアミド)
MeOC−アラニン(227g、1.54モル)およびジメチルホルムアミド(DMF)(25cm3)を含有する乾燥ジクロロウレタン(DCM)(2000cm3)の撹拌溶液に0℃で2時間にわたって、塩化オキサリル(146cm3、1.62モル)を滴下して加えた。この溶液を、ガスの発生が終わるまで0℃で撹拌して、ここに、ジメチルアミン(676g、7.70モル)を含有するNaOH(3N,2000cm3)の塩基性溶液を添加した。ジエチルエーテル(2×500cm3)を用いて水相を抽出して、合わせた有機相を乾燥させて(MgSO4)、減圧下で濃縮して、さらなる精製を必要としない白色結晶性固体として生成物を得た(230g,86%)。1H NMR(250MHz;C2HCl3)1.33(3H,d,J6.75,CH3)、2.99 3H,s,OCH3)3.08、(3H,s,OCH3),3.66(3H,s,COCH3)、4.66(H,五重線,J7.00,CH)、5.75(1H,d,J5.75,NH)。
【0140】
((S)−2−[(メトキシカルボニル)アミノ]−1−(2,5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノン)
ブロモ−2,5−ジメトキシベンゼン(55g、0.25モル)のTHF(1000cm3)溶液に、−20℃窒素下で、n−ブチルリチウム(100cm3、2.5Mでヘキサンに含有、0.25モル)を添加した。この混合物を−20℃で0.75時間撹拌し、ここにアミド(30g、0.17モル)のTHF溶液(100cm3)をカニューレを介して添加した。この溶液を−20℃で2時間撹拌し、次いで1時間にわたって室温まで暖めて、塩化アンモニウム溶液(700cm3)の添加によってクエンチした。この溶液をジエチルエーテル(1000cm3)を用いて希釈して、有機相を乾燥させて(MgSO4)、減圧下で濃縮して、黄色油状物を得た。この生成物をシリカ上でドライフラッシュクロマトグラフィーによって精製して(溶離液 4:1 ヘキサン/酢酸エチル、次いで3:2 ヘキサン/酢酸エチル)、白色結晶性固体として生成物を得た(45g,98%)。1H NMR(250MHz;C2HCl3)1.36(3H,d,J7.0,CH3)、3.70(3H,s,COCH3)、3.82、(3H,s,OCH3)、3.92(3H,s,OCH3)、5.43(1H,五重線,J7.3,H−2)、5.80(1H,bs,NH)、6.94(1H,d,J9.0、ArH)、7.10(1H,dd,J9.0,3.3、ArH)、7.32(1H,d,J3.3,ArH)。
【0141】
((1R,2S)−2−[(メトキシカルボニル)アミノ]−1−(2,5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール)
ケトンの撹拌溶液、すなわち、(S)−2−[(メトキシカルボニル)アミノ]−1−(2,5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノン(20g、74.9mmol)およびジメチルフェニルシラン(10.7g、78.6mmol)を含有する乾燥DCM(500cm3)に、氷浴中で0℃で、トリチオロ酢酸(trithioroacetic acid)(TFA)(50cm3)を滴下して加えた。この溶液を0℃で1時間撹拌し、次いで水酸化ナトリウム(500cm3、1N)の添加によってクエンチした。この有機相を乾燥して、減圧下で濃縮して、黄色油状物を得たが、これは静置すれば固化した。この固体を、エーテル/ヘキサンから結晶化して、白色結晶性固体として生成物を得た(15.6g、75%)。1H NMR(250MHz;C2HCl3)1.03(3H,d,J7.0,CH3)、3.04(1H,d,J4.3,OH)、3.68(3H,s,COCH3)、3.78(3H,s,OCH3)、3.80(3H,s,OCH3)、3.94−3.99(1H,m,H−2)、5.05−5.15(2H,m,H−1およびNH)、6.72−6.85(2H,m,ArH)6.97(1H,d,J2.0,ArH)。
【0142】
((1,R,2S)−メトキサミン)
メトキシカルボニル(MeOC)保護アルコールの撹拌溶液、すなわち(1R,2S)−2−[(メトキシカルボニル)アミノ]−1−(2,5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノール(4.0g,14.9mmol)を含有するメタノール(175cm3)に、KOHの溶液(4.06g、72.8mmolを含む水(60cm3)を添加した。この溶液を冷却して、リン酸(15%v/v)で酸性化した。この溶液をDCM(2×50cm3)を用いて抽出して、その水相をK2CO3の添加によって塩基性化した。この水相をジエチルエーテル(5×50cm3)を用いて抽出して、この合わせたエーテルの抽出物を乾燥して(MgSO4)、減圧下で濃縮して、透明な黄色油状物として生成物を得た(1.9g,61%)。1H NMR(250MHz;C2HCl3)0.84(3H,d,J7.0,CH3)、3.19−3.22(1H,m,H−2)、3.71(6H,s,2×OCH3)、4.67(1H,d,J5.0,H−1)、6.66−6.72(2H,m,ArH)、6.92(1H,d,J2.5,ArH)。
【0143】
((1R,2S)−塩酸メトキサミン)
(1R,2S)−メトキサミン(1.9g,9.00mmol)を含有する無水ジエチルエーテル(30cm3)の氷冷溶液に、45分間、乾燥HClガス流を通した。得られた沈殿物を吸引によって濾過して、冷却ジエチルエーテルで洗浄して、窒素下で乾燥して、白色固体として表題の化合物を生成した(1.5g,68%)。1H NMR(250MHz;[C232SO)0.89(3H,d,J6.8,CH3)、3.37−3.42(1H,m,H−2)、3.71(3H,s,OCH3)、3.75(3H,s,OCH3)、5.12(1H,s,H−1)、5.92(1H,d,J4.3,OH)、6.84(1H,dd,J8.8,3.0,ArH)、6.92−7.00(2H,m,ArH);HPLC。
【0144】
(メトキサミンの解析のための分析的方法)
以下の方法を用いて、メトヘサミンサンプルを解析した。
【0145】
方法
カラム : サイクロボンド I RSP 250×4.6mm
カラム温度: 23℃
移動相 : 0.1%テトラエチルアンモニウム pH4.1* 95%v/v
: アセトニトリル 5%v/v
流量 : 0.6ml/分
溶液濃度 : 5mg/l
注入体積 : 2.5μl〜20μl
検出 : UV 230nm。
【0146】
*酢酸テトラエチルアンモニウムpH4.1は毎日新鮮に調製した。
【0147】
(実施例4)
(単結晶X線解析による1R,2S−メトキサミンの立体化学的なキャラクタリゼーション)
単結晶X線解析は、構造的な割り当ての最終的な手段である。メトキサミンの推定の1R,2S異性体(L−エリトロ異性体とも呼ばれる)の塩酸塩を、実施例3に記載のように合成した。推定の1R,2Rの塩酸塩(D−トレオ異性体を、FujitaおよびHyamaの方法の変法によって合成したが、ここでは水素化ホウ素ナトリウムを還元剤として用いて、1R,2R−(D−トレオ)および1R,2S−(D−エリトロ)異性体の混合物を生成した。この1R,2R−異性体は、シリカカラムにおいてフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製した。
【0148】
ヘキサン雰囲気においてメタノール/酢酸エチル溶液から2つの化合物を結晶化した。得られた結晶は、極めて微細な板状であり、これによって優れたデータが得られ、これから信頼できる精密化因子で構造が解明された。Nonius KappaCCDを用いて、X線結晶学を実行した。原子座標および等価等方性変位パラメーターを表2に示す。結晶データおよび構造の精密化を表3に示す。結合の長さおよび角度を表4に示す。異方性変位パラメーターを表5に、そして水素座標および等方性変位パラメーターを表6に示す。
【0149】
【表2】

【0150】
【表3】

【0151】
【表6】

【0152】
【表4】

【0153】
【表5】

【0154】
これらの結果によって、実施例3において合成され、そして実施例2においてピーク2としてクロマトグラフィーによって単離された異性体を、メトキサミンの1R,2S−異性体として明白に同定することができる。異性体の構造を図17に示す。
【0155】
上記の実施例2に記載の分光法に基づく推論およびnmr結晶学的な結果によって、以下に示されるメトキサミン異性体の完全な割り当てが可能になる。
【0156】
【化3】

【0157】
(実施例5)
麻酔されたブタにおける肛門管上皮への局所投与後の、いくつかの心血管系のパラメーターおよび平均肛門休止期圧(MARP)に対する、1R,2S−メトキサミンの影響の検討。
【0158】
(方法)
本研究は、以下のプロトコルに従って実施した。
【0159】
(試験物質:)
a)4%(w/w)ゲルに含有されるプラセボ
b)4%(w/w)ゲルに含有される0.3重量%の1R,2S−メトキサミン
c)4%(w/w)ゲルに含有される1重量%の1R,2S−メトキサミン
d)4%(w/w)ゲルに含有される3重量%の1R,2S−メトキサミン
4%(w/w)ゲルは、96mlの0.5M酢酸緩衝液中に4gのヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。1重量%の1R,2S−メトキサミンを含有する4%(w/w)ゲルは、1gの1R,2S−メトキサミンを99gの4%ゲル中に含む。
【0160】
(動物/動物の飼育)
Ellegaard Goettingen Minipigs ApS,Soro Landevej 302,DK−4261 Dalmose,Denmarkから入手したGoettingen−ミニブタを検討のために用いた。4〜5ヶ月齢の動物は、各々が、検査の開始時点で6.9〜8.7kgの体重を有した。4匹の雄性動物を用いた。2番の動物を4番の動物と入れ換えた。以下を参照のこと。
【0161】
(食餌および飲料水)
ミニブタの食餌は、Ellegaard Goettingen Minipigs ApSから供給された。この食餌のうち200g/kg(体重)を、順応期間の間毎日2回、各々のブタに与えた。食欲の劣る動物の場合、この食餌をさらに長期間(8時間まで)供給した。投薬の前の日には、ミニブタには一切食餌を与えなかった。生水(水道水)は自由に与えた。
【0162】
(飼育施設)
22℃±3℃(最大範囲)の温度で、かつ自然な明暗サイクルに維持した、ワラの寝床上に約3m2の床のスペースがある室内の囲いの中で、ブタを一匹ずつ飼育する。
【0163】
(麻酔)
ミニブタを、クロラロース−ウレタン混合物(割合1+5)で麻酔した。必要に応じてさらに麻酔を与えた。ミニブタの安定な一般的条件を確実にするために、右または左の大腿動脈(a. femoralis)からとった血液中で、血液ガス分析器ABL 70(Radiometer,Copenhagen,Denmark)を用いて、実験開始の前に、血液ガスおよびpH値を測定した。リンゲル液(5ml/体重kg/h)を連続的に与えて、体液の損失を補償した。外部加熱の実験全体にわたって、動物の体温を38℃に維持した。
【0164】
(試験物質の投与)
試験物質を、動物1匹あたり0.5ml容積用いて、肛門管上皮に局所投与した。各々の観察期間の間隔は20分間であった。肛門管に約1cm挿入した1mlのシリンジを使用して投与を実施した。シリンジを回転させながら、試験物質をゆっくり投与した。準備および循環機能の安定化のための少なくとも15分間の後、プラセボ、または試験物質の選択された用量レベルを用いて肛門管上皮に投与することによって動物を処置した。
【0165】
最初の投与の前、および投与後さらなる適切な時点で、コントロールの目的でイソプロテレノールを静脈内投与した。コントロールの目的で、毒物動態学のための血液サンプルの収集の終了後にのみ、研究の終了時点で、アルテレノール(塩酸ノルエフィネフリン、L−ノルアドレナリンとしても公知)を投与した。
【0166】
(用量レベル)
以下の用量レベルで研究を実行した。
【0167】
【表7】

【0168】
2番のブタは、4番のブタと入れ換えた。なぜなら2番のブタの投薬前の値が、正常な範囲外であったからである。
【0169】
(測定したパラメーター)
(準備)
麻酔下で、ミニブタを作業台上に仰臥位に固定した。
【0170】
(末梢動脈血圧)
動脈内留置カテーテル(サイズ0.8×1.4mm、B.Braun Melsungen AG、D−34212 Melsungen,Germany)を圧力変換器(DTX,Pfrimmer−Viggo,Erlangen,Germany)に接続して、右または左の大腿動脈において、収縮期動脈圧および拡張期動脈圧を記録する。このシグナルをHellige Servomed SMV 178T増幅器(Hellige GmbH,D−79100 Freiburg,Germany)によってブースする。Hellige Cardiognost EK 512 P(紙速度:2.5mm/秒)を用いて血圧を記録し、かつモニターした。収縮期血圧および拡張期血圧[mmHg]を決定して、以下の式:に従って、平均圧力を算出した:
平均血圧[mmHg]=(収縮期圧+(2×拡張期圧))/3。
【0171】
(心拍数および心電図記録)
標準的な四肢のリードI、IIおよびIII、ならびに増幅四肢リードaVR、aVLおよびaVFを用いて、ECG記録を行なった。10mm/1 mVの標準化を用い、紙速度は50mm/秒であった。HELLIGE Marquette mac 5000 12SLを用いて記録を行なった。不整脈および電気的複合の異常のいずれかについて記録を視覚的に検査した。さらに、四肢のリードIIについて、以下のパラメーターを評価した:心拍数[拍動数/分];Pセグメント[msec];P−Q間隔[msec];QRS群[msec];Q−T間隔[msec]。ファン・デ・ウォーター式に従ってQTc値[msec]を算出した:QTc=QT−0.087(R−R距離−1000)。
【0172】
(平均圧および休止期圧)
直腸への検圧プローブ(Unisensor Microtipcatheter 8104−00−9409−D;Medical Measurement Systems b.v.,Collosseum 25,NL−7521 P.V.Enschede,The Netherlands)の3回の導入によって、肛門休止期圧を測定した。これら3回の測定の平均(MARP)としてとった肛門休止期圧を、Rikadenki Multipenrecorderを用いて記録した。
【0173】
(血液サンプリング)
投与開始の直前、ならびに投与開始の10、20、40、60、90、および120分間後に血液サンプル(1時点あたり5ml)をとって、リチウム−ヘパリン容器中に収集した。IsoTherm−Rackシステム(Eppendorf−Netheler−Hinz GmbH,D−22331 Hamburg,Germany)の使用によって、この血液サンプルを+2℃〜+8℃に直ちに冷却して、全血液をEDTA−血漿に処理した。遠心分離(5分間、4000rpm、+5℃において)によって血漿を調製して、各々約1mlのアリコートに分けた。両方の血漿アリコートを少なくとも−80℃で直ちに凍結して、解析のためのドライアイス上での1つのアリコートの処理までこの温度で保管した。
【0174】
研究の番号、種、動物の番号、サンプリング時間、サンプルのタイプ、日付けおよび用量レベルについてこのサンプルを標識した。
【0175】
このサンプルを、メトキサミンの血漿レベルについて解析した。結果を付表3に提示する。
【0176】
(肉眼的な検査)
この実験の間に、肛門管上皮の肉眼的な検査を実行した。試験物質処方物のかなり低いpH値によって生じるなんらかの明白な炎症および/または紅斑が報告された。
【0177】
(評価および記録の時間)
各々の測定期について、心拍数、ECGおよび大腿動脈の血圧を連続的に測定して、約30秒間の投与開始の直前、ならびに投与開始の5、10、15、20、40、および60分後に、次いで、なんらかの影響がおさまるまで20分間の間隔で記録した。
【0178】
(統計学)
各々の動物および投薬について、得られた値を開始値と比較した。プラセボコントロール群の平均値を、スチューデントの対応のあるt検定(Colquhoun,Lectures on Biostatistics,§10.6,167−9(1971),Clarendon Press,Oxford,England)によって比較した。以下の限界を用いた:p=0.01□t=4.604(4度の自由度について)。この表では、開始値からの有意な相違(p≦0.01)を示す。全ての計算は、できるだけ最高の正確性の程度まで実施し、次いで報告された数の小数位まで端数を丸めた。従って、端数の丸めによって、1%までの偏差が生じ得る。
【0179】
(研究の終了)
研究の終了時点で動物を屠殺した。
【0180】
(結果)
(末梢動脈血圧)
IR,2S−メトキサミンのいずれの試験された用量レベルでも、拡張期、収縮期、または平均の血圧は影響されなかった。
【0181】
検査した1R,2S−メトキサミンの全ての濃度で、個々の動物において血圧の変化が認められた。これらの変化は、物質に関連性であるとは考えられず、1時点あたり2匹の動物を使用する、長期の麻酔の正常な変動の範囲内である。
【0182】
個々の値および平均の値を提示する。図17〜19。図17は、収縮期末梢動脈血圧を示し、図18は、拡張期末梢動脈血圧を示し、そして図19は、平均末梢動脈血圧を示す。
【0183】
(平均肛門休止期圧(MARP))
0.3%の濃度でIR,2S−メトキサミンを用いる処置によって、両方のブタとも投与後5分間で開始して110分間の間隔の平均において、50mmHg(開始値に比べて73%)へのMARPの用量関連性の上昇が生じた。1%のゲルで、適用後20分間内に平均で64mmHgへのMARPのさらなる上昇(227%の上昇)が生じた。3%ゲルの投与によって、約70mmHgへのMARPの用量関連性の上昇が生じた。両方の動物とも同様の程度まで影響された。個々の値および平均値を図20に提示する。
【0184】
(心拍数およびECG)
心拍数およびECGパラメーターの評価によって、P−セグメント、P−Q間隔、Q−T間隔QTc値、およびQRS群に対して、試験したいずれの用量レベルでも、物質に関連する影響はないことが明らかになった。詳細には、QT間隔の延長についての証拠は認められなかった。
【0185】
ECG記録の視覚的評価によって、いかなる心室性早期群も示されなかった。
【0186】
1%および3%の1R,2S−メトキサミン濃度で、ブタ1および3において適用後2時間の平均で、約100拍動数/分(29%増大)の心拍数の増大が観察された。その後、正常化が極めて漸進的に生じた。これらの変化は、物質に関連性であるとは考えられず、1時点あたり2匹の動物を使用する、長期の麻酔の正常な変動の範囲内である。
【0187】
同様に、個々の動物においてこの研究で認められた他の全ての変化はまた、物質に関連性であるとは考えられず、1時点あたり2匹の動物を使用する、長期の麻酔の正常な変動の範囲内である。
【0188】
心拍数の個々の値および平均値を図21に示す。
【0189】
(循環機能の反応性)
アルテレノールまたはイソプロテレノールに対して予期された反応は、いずれの1R,2S−メトキサミンゲルによっても影響されなかった。
【0190】
(肉眼的な検査)
0.3%、1%、または3%の1R,2S−メトキサミンの適用後に病理学的な変化は観察されなかった。
【0191】
(メトキサミン血漿レベル)
サンプルをメトキサミン血漿レベルについて解析した。全ての動物において、メトキサミンの用量関連性の血漿レベルが認められた。
【0192】
0.3%ゲルの用量レベルによって、40分後に4.90ng/mlおよび6.97ng/mlの平均ピーク血漿レベルが生じた。
【0193】
1.0%ゲルの用量レベルによって、20分〜40分後に9.88ng/mlおよび11.0ng/mlの平均ピーク血漿レベルが生じた。
【0194】
3.0%ゲルの用量レベルによって、40〜60分後に50.4ng/mlおよび61.3ng/mlの平均ピーク血漿レベルが生じた。
【0195】
ブタの間ではほとんど差はなかった。
【0196】
(結論)
本実験の目的は、肛門管上皮への局所投与後の麻酔されたミニブタにおける、いくつかの心血管系パラメーター、および平均肛門休止期圧(MARP)に対する1R,2S−メトキサミンの影響を評価することであった。
【0197】
肛門管上皮への適用によって、プラセボ、0.3%、1%、または3%の1R,2S−メトキサミン(w/w)として、1匹の動物あたり0.5mlの試験物質を投与した。
【0198】
各々の適用の間に少なくとも2時間の間隔をあけた。この結果を対応する投薬前の値と比較した。
【0199】
この試験条件下で、0.3%、1%、または3%の1R,2S−メトキサミン(w/w)を用いた処置によって、心血管系のパラメーターに変化はもたらされなかった。MARPの用量関連性の上昇が、3つ全ての濃度で認められた。
【0200】
0.3%濃度の1R,2S−メトキサミンによって、開始値に比べて50mmHgへのMARPの増大が生じ、1%の濃度によって、64mmHgへのMARPの増大が生じ、そして3%の濃度によって、70mmHgへのMARPの増大が生じた。両方の動物とも同様の程度まで影響された。
【0201】
心拍数、ならびにECGパラメーター P−セグメント、P−Q間隔、Q−T間隔、QRS群、およびQTc値に対する影響は認められなかった。詳細には、Q−T間隔の延長についての証拠は認められなかった。アルテレノールまたはイソプロテレノールに対するミニブタの予想される反応は影響されなかった。
【0202】
肉眼的な検査の間、病理学的な変化は認められなかった。
【0203】
メトキサミンの血漿レベルは、それぞれ、0.3%、1%、および3%の処方物について、血漿1mlあたり6ng、10ngおよび56ngのメトキサミンの最大血漿レベルを伴う用量関連性の曝露を反映した。最大血漿レベルは適用の約40分後に観察された。ブタの間にはほとんど相違はなかった。
【0204】
ブタは、ヒトに特に関連することが公知の動物モデルである。上記で得られた結果は、局部性の副作用も全身性の副作用もない、詳細には局部の炎症がなく、かつ血圧に対する影響もない、低濃度、従って低用量の1R,2S−メトキサミンの局所投与に対する休止期の内肛門括約筋圧の増大を実証しているが、これによってヒトにおいても同様の結果が推測され、そして便失禁および同様の状態、詳細には括約筋の緊張の増大が所望される状態の処置における1R,2S−メトキサミンの局所投与の有効性が推測される。
【0205】
(引用文献)
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18Antibarro B, Barranco P, Ojeda JA. Allergic contact blepharoconjunctivitis caused by phenylephrine eyedrops. Contact Dermatitis 1991; 25:323-4.
19Brading AF, Sibley GN. A superfusion apparatus to study field stimulation of smooth muscle from mammalian urinary bladder. J Physiol 1983 334: 11-12P.
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21Ward TJ & Armstrong DW, Improved Cyclodextrin Chiral Phases: A Comparison & Review, J of Liq. Chrom. 9 (2&3), 407-423 (1986)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に適切なキャリアと混合して、または組み合わせて、1R,2S−メトキサミンまたは、その生理学的に耐容性の塩を含むことを特徴とする薬学的組成物。
【請求項2】
全身性投与または非全身性投与に適切な形態であることを特徴とする請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
肛門領域に対する局所投与に適切な形態であることを特徴とする請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項4】
ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、発泡体、または接着性パッチの形態であることを特徴とする請求項3記載の薬学的組成物。
【請求項5】
経口投与、直腸投与、または非経口投与に適切な形態であることを特徴とする請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項6】
遅延放出性経口組成物の形態であることを特徴とする請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記遅延放出性経口組成物は、結腸に対して標的された放出を有することを特徴とする請求項6記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記組成物は、時間遅延性放出組成物であるか、結腸のpHにおいて前記活性物質を放出する組成物であるか、または結腸細菌による分解を受けやすいコーティングを含む組成物であることを特徴とする請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項9】
鼻粘膜に対する投与に適切な形態であることを特徴とする請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項10】
形態点滴薬、スプレー、またはエアロゾルの形態であることを特徴とする請求項9記載の薬学的組成物。
【請求項11】
眼の表面に対する投与に適切な形態であることを特徴とする請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項12】
点滴薬、クリーム、または軟膏の形態であることを特徴とする請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項13】
注射または注入による投与に適切な形態であることを特徴とする請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項14】
単位投薬形態であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【請求項15】
10重量%以下の1R,2S−メトキサミンを含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【請求項16】
10重量%以下の1R,2S−メトキサミン、例えば、8重量%以下、5重量%以下の1R,2S−メトキサミンを含むことを特徴とする請求項3または請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項17】
4重量%以下、3重量%以下の1R,2S−メトキサミンを含むことを特徴とする請求項3または請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項18】
10重量%以下の1R,2S−メトキサミン、例えば、1重量%以下、0.5重量%以下の1R,2S−メトキサミンを含むことを特徴とする請求項3または請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項19】
0.3重量%以下、0.1重量%以下の1R,2S−メトキサミンを含むことを特徴とする請求項3または請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項20】
医薬としての使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項21】
αアドレナリン作用性アゴニストとしての使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項22】
便失禁の処置における使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項23】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその塩は、請求項3または請求項4記載の薬学的組成物の形態であることを特徴とする、請求項22記載の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項24】
前記薬学的組成物は、メトキサミンとして算出して、10重量%以下の1R,2S−メトキサミン、またはその生理学的に耐容性の塩を含むことを特徴とする、請求項23記載の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項25】
前記薬学的組成物は、請求項16記載の薬学的組成物であることを特徴とする、請求項23記載の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項26】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその塩は、肛門、肛門管、および肛門周囲の領域を含む領域の全てまたは一部に対する投与のためであることを特徴とする、請求項22〜25のいずれか1つに記載の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項27】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその塩は、肛門管上皮、肛門管、内肛門括約筋、肛門周囲の領域、および臀部を含む領域の全てまたは一部に対する投与のためであることを特徴とする、請求項22〜25のいずれか1つに記載の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項28】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその塩は、請求項5〜8のいずれか1つに記載の薬学的組成物の形態であることを特徴とする、請求項22記載の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項29】
血管収縮薬としての使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項30】
鼻詰まり薬としての使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項31】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその塩は、請求項9または請求項10記載の薬学的組成物の形態であることを特徴とする、請求項30記載の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項32】
眼科の血管収縮薬としての使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項33】
散瞳薬としての使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項34】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその塩は、請求項11または請求項12記載の薬学的組成物の形態であることを特徴とする、請求項32または請求項33記載の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項35】
昇圧薬としての使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項36】
低血圧の予防または処置における使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項37】
麻酔の間に血圧を維持するのにおける使用のための、請求項28記載の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項38】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその塩は、請求項13記載の薬学的組成物の形態であることを特徴とする、請求項35〜37のいずれか1つに記載の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項39】
胃腸管の平滑筋の緊張を増大するのにおける使用のため、または胃腸管の平滑筋の緊張の消失から生じる混乱または障害を処置するのにおける使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項40】
胃腸管の括約筋の緊張を増大するのにおける使用のため、または胃腸管の括約筋の緊張の消失から生じる混乱または障害を処置するのにおける使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項41】
幽門括約筋の緊張を増大するのにおける使用のため、または胃性下痢を処置または予防するのにおける使用のための、いずれかの請求項40記載の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項42】
心機能の混乱または障害の予防または処置における使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項43】
心の混乱または障害の予防または処置における使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項44】
請求項20〜43のいずれか1つに記載の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩の使用のための医薬の製造のための1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩の使用。
【請求項45】
請求項20〜43のいずれか1つに記載の使用、あるいは請求項44記載の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩の使用であって、該使用はヒトの処置におけることを特徴とする使用のための、1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩。
【請求項46】
治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩を被験体に投与することを含むことを特徴とする、αアドレナリン受容体アゴニストを用いた処置の必要な哺乳動物を処置する方法。
【請求項47】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩は、全身にまたは局所に投与されることを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項48】
治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩を処置の必要な哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、便失禁を処置する方法。
【請求項49】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩は、肛門領域に局所的に投与されることを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩は、肛門、内肛門管、および肛門周囲の領域を含む領域の全てまたは一部に対して局所的に投与されることを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項51】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩は、肛門管上皮、肛門管、内肛門括約筋もしくは外肛門括約筋、肛門周囲の領域、および臀部を含む領域の全てまたは一部に対して局所的に投与されることを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項52】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩は、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、発泡体、または接着性「パッチ」として処方されることを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項53】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩は、経口投与、直腸投与、または非経口投与に適切な形態であることを特徴とする請求項54記載の方法。
【請求項54】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩は、遅延放出性経口組成物として処方されることを特徴とする請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩は、結腸に対して標的された放出を有する遅延放出性経口組成物として処方されることを特徴とする請求項53記載の方法。
【請求項56】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩は、時間遅延性放出組成物、結腸のpHにおいて該1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩を放出する組成物、および結腸細菌による分解を受けやすいコーティングを含む組成物から成る群より選択される組成物として処方されることを特徴とする請求項53記載の方法。
【請求項57】
治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩を哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、血管収縮薬を用いて処置する必要がある哺乳動物を処置する方法。
【請求項58】
治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩を処置の必要な哺乳動物の鼻粘膜に投与することを含むことを特徴とする、鼻詰まりを処置する方法。
【請求項59】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩は、鼻粘膜に対する投与に適切な点滴薬、スプレー、またはエアロゾルとして処方されることを特徴とする請求項58記載の方法。
【請求項60】
治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩を哺乳動物の眼に投与することを含むことを特徴とする、眼科学的な血管収縮を必要とする哺乳動物を処置する方法。
【請求項61】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩は、前記眼の表面に対する投与に適切な点滴薬、クリーム、または軟膏として処方されることを特徴とする請求項60記載の方法。
【請求項62】
治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩を哺乳動物の眼に投与することを含むことを特徴とする、哺乳動物の眼の瞳孔を拡張する方法。
【請求項63】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩は、前記眼の表面に対する投与に適切な点滴薬として処方されることを特徴とする請求項62記載の方法。
【請求項64】
治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩を処置または予防の必要な哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、低血圧を処置または予防する方法。
【請求項65】
治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩を麻酔の間に哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、麻酔の間、および/または麻酔の後に哺乳動物の血圧を維持するための方法。
【請求項66】
前記1R,2S−メトキサミンまたはその生理学的に耐容性の塩は、注射または注入によって投与されることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項67】
治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンを哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、哺乳動物の胃腸管の平滑筋の緊張を増大する方法。
【請求項68】
治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンを処置の必要な哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、胃腸管の平滑筋の緊張の消失から生じる混乱または障害を処置する方法。
【請求項69】
治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンを哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、哺乳動物の胃腸管の括約筋の緊張を増大する方法。
【請求項70】
治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンを処置の必要な哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、胃腸管の括約筋の緊張の消失から生じる混乱または障害を処置する方法。
【請求項71】
前記混乱または障害は、胃性下痢であることを特徴とする請求項70記載の方法。
【請求項72】
治療上有効な量の1R,2S−メトキサミンを予防または処置の必要な哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、哺乳動物における心機能の混乱または障害の予防または処置のための方法。
【請求項73】
心律動の混乱または障害を処置するためであることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記哺乳動物は、ヒトであることを特徴とする請求項46〜73のいずれか1つに記載の方法。
【請求項75】
1R,2S−メトキサミンの生成のためのプロセスであって、アミノ基が保護されている(S)−アミノ−1−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−プロパノン、およびジメチルフェニルシランを含む溶液にトリフルオロ酢酸を滴下して加える工程と、得られたアミノ保護(1R,2S)−2−アミノ−1−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−プロパノールから該保護基を除去する工程とを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項76】
前記第一の工程は、冷却しながら実行されることを特徴とする請求項75記載のプロセス。
【請求項77】
前記得られた1R,2S−メトキサミンは、その塩に転化されることを特徴とする請求項75または請求項76記載のプロセス。
【請求項78】
アミノ基が保護されている前記(S)−アミノ−1−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−1−プロパノンは、アミノ基が保護されている(S)−N−アラニンジメチルアミドを酸塩化物に転化すること、および該得られた酸塩化物をその場で1.5当量のn−ブチルリチウムおよび1.5当量のブロモ−2,5−ジメトキシベンゼンと反応させることによって生成されることを特徴とする請求項74〜78のいずれか1つに記載のプロセス。
【請求項79】
アミノ基が保護されている(S)−N−アラニンジメチルアミドは、L−アナリンをクロロギ酸メチルと反応させることによって生成されることを特徴とする請求項78記載のプロセス。
【請求項80】
メトキサン異性体の混合物からメトキサミンの1R,2S−異性体を単離する方法であって、シリカゲルに結合したβ−シクロデキストリンR,S−ヒドロキシプロピルエーテルを含むクロマトグラフィー媒体を用いる高圧液体クロマトグラフィーに、異性体の該混合物を供することを含むことを特徴とする方法。
【請求項81】
ビニルアルコールコポリマーの水酸基へのオクタデシル(C18)基の導入によって誘導されたビニルアルコールコポリマーベースを含むクロマトグラフィー媒体を用いる逆相クロマトグラフィーに、前記溶離液が供されることを特徴とする請求項80記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−25782(P2012−25782A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−241937(P2011−241937)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【分割の表示】特願2003−556052(P2003−556052)の分割
【原出願日】平成14年12月20日(2002.12.20)
【出願人】(504236008)
【Fターム(参考)】